吹雪「ジャングルの王者! ターちゃんです!!」 (417)

ジャングル・上空//

深夜、、、



バババババババババババ


「おい、今どの辺だ?」

「えー、今はちょうどケニアとタンザニアの間くらいですね」

「ったく、下は色気のないジャングルで明かり一つ見えやしねえ。前の任務地も寂しい場所だったが、
 今回はそれに輪をかけたようなとこだなぁ」

「いっそこのままヨーロッパにでも行きますか!」

「馬鹿野郎、司令に殺されちまうよ」

「でも私もこうやってヘリでアフリカを東西に横断するだけの空輸任務に飽きてきたんですよねぇ」


ギギギ


「ま、聞いた話によるとこの任務もそろそろ終わりらしいぞ?」

「本当ですか!?」


ガコ


「ちょうどいま運んでる素体どもが居ればほぼ研究は完成するんだと。もうこの上空も今夜でオサラバかもしれねえな!」

「そうだったんですか! ならちょっとは寂しさも――」




ドッポーン!




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1426844554


「あれ? 今何か聞こえました?」

「ん? いや、ヘリの風切り音じゃなくて?」

「いえ、なんか、水音のような……」

「気のせいじゃね? ……あぁ! そうだ、確かこの辺りに豪邸があってな、その金持ちの庭に巨大な金色の鯉がいるとか。
 今作戦で協力してくれた違法ハンターどもが言ってたよ。大方そいつが飛び跳ねたんだろう」

「なるほど、下はジャングルですもんね」

「あぁ湖にデカイ魚が居ても不思議じゃないだろ」

「確かに!」




ババババババババババ……



ジャングル奥地・湖//



バババババ……




チャプ……

???「…………」



タッタッタ


???「!」




アナベベ「おいおい! なんだなんだこんな時間に飛び跳ねて! ビックリして目が覚めちまったじゃねえか!
     腹減ったのか? 金粉入りのエサならたんまりやったろう……、って」



???「……」








アナベベ「なんだお前ら?」






???「……ヲッ!」






            







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*注意書き



「ジャングルの王者ターちゃん(アニメ版)」と「艦隊これくしょん」のクロス。




雰囲気とか進行はターちゃんの長編の感じをベースに。
また、基本はアニメ版ですが、いくつか漫画版ターちゃんの要素も出てきます。


文字数は約8万字。



前置きは以上。よろしくお願いします。



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鎮守府・部屋//


吹雪「……」カリカリ


吹雪「(○月×日)」

吹雪「(この鎮守府に配属になって早数か月)」

吹雪「(最初はどうなることかと思ったけど、軽巡の皆さんの特訓や駆逐艦の皆の応援があって、
    ようやく一人前の艦娘に近づいてきました)」

吹雪「(炎天下の遠征もなんのその! 提督の的確な采配のおかげもあって、今のところ失敗0!
    近海に散発的に表れた深海棲艦相手の戦闘も、今では怯えたりなんてせず、的確に魚雷を撃てたり
    なんてできるようになりました。先日はついにMVPをとっちゃいました)」


吹雪「えへへ」




吹雪「(先日と言えば別件で、この間のトラック泊地での迎撃戦。昨日書きそびれたけれど、
    泊地周辺の敵潜水艦掃討の功績を提督に表彰されました。第三水雷船隊の皆で喜びました)」

吹雪「(ちなみに赤城さんや秘書艦の長門さんで編成された特別第一艦隊は、戦艦水鬼という強力な敵戦艦の
    討伐に参戦し、これを見事撃沈させたと聞きました。いつか赤城と同じ艦隊で、という夢がありますが、
    まだまだ届きそうにありません。精進あるのみです。以上)」



吹雪「……」

吹雪「……」カリカリ



吹雪「(追記)」

吹雪「(昨日の間宮での祝賀会。睦月ちゃんはとても楽しそうにしていました。)」

吹雪「(如月ちゃんの   作戦行動中行方不明で、悲しそうにしていた睦月ちゃんだったけど、
    私が金剛さんと出撃した帰りの日に、泣きあって、それ以来明るい睦月ちゃんに戻った気がします)」



吹雪「(忘れられるものじゃないけれど、)」



吹雪「……」カリカリ



吹雪「(皆で、前を向いていけたらいいなと思います)」


カリ





吹雪「……ふぅ」パタン







バタン!



吹雪「きゃあう!」ビク


夕立「あ! 吹雪ちゃんやっぱりここにいたっぽい~!」

睦月「探したよ吹雪ちゃん!」

吹雪「び、びっくりした……。もう、戸はゆっくりあけてよー」ドキドキ

睦月「ごめんね、思ったよりも勢いよくあいちゃって……」


夕立「あれ? 日記つけてるっぽい?」

吹雪「え? うん、習慣になっちゃってね。夜は川内さんの特訓に混ぜてもらってるから、
   空いた時間に書いてるの」

睦月「そうだったんだ。実は気になってたんだよ? 日記帳はあるけど書いてる姿見たことがないから」

吹雪「えへへ、実はこんな時間とかに書いてましたー」

夕立「真面目ー!」

吹雪「で、私を探してたんだっけ? どうしたの?」


夕立「あ! そうそう! 提督さんがお呼びっぽい!」

睦月「そうだった! 急遽、遠征を組むことになったんだって!」

吹雪「えええ! じゃあこんなにゆっくりしてるヒマないじゃん!」

夕立「二人とも急ぐっぽい!!」タッタッタ


鎮守府・提督執務室//

数分後、、、



バタン!

夕立「第三水雷船隊夕立! 入ります!」

睦月「同じく睦月です!」

吹雪「同じく吹雪です! 遅れてすみません!!」

那珂「吹雪ちゃん! 睦月ちゃん! 夕立ちゃん! 遅刻~~!」

川内「遅いぞ吹雪ー! 私との特訓で寝るのが遅かったなんて言い訳は聞かないよ!」

吹雪「す、すみません! 寝坊じゃないです! というか川内さん早朝まで起きてたのに大丈夫なんですか?」

川内「遠征といえば出撃! 出撃と言えば夜戦! 夜戦ときけば私の身体は絶好調だよ!」


長門「うるさいぞお前たち! 提督の話を聞け!」

吹雪「す、すみません」


提督「構わないよ。……じゃあ、始めようか」


川内「第三水雷船隊、敬礼!」ザッ!

ザッ!


提督「楽にしていい」




吹雪「(……あれ?)」

長門「既に聞き及んでいるとは思うが、諸君らに遠征の任務があてられた」

水雷船隊「「「「「……」」」」」


長門「本作戦の遠征先は西方海域。目的地はカスガダマ沖だ」


ざ わ っ



夕立「遠いっぽい~」ボソ

吹雪「カスガダマ……、たしかアフリカ大陸のそばの海域の?」

長門「そうだ。なお本遠征作戦の目的は資源収集ではない。深海棲艦の調査だ」

川内「調査?」


長門「西方海域は帝国海軍の力が及んだ海域としてはまだ新しい海域だ。
   よって我々の既知の外にいる深海棲艦と出くわすこともある。装甲空母鬼などはそのいい例だが、
   他にも既存の艦種にない深海棲艦や、または異なる習性を持つ個体などが存在する可能性が考えられる」

長門「そういった個体がいないか、調査をするのが今回の遠征目的だ」


提督「期間は、まぁ向こうで1週間だな。カスガダマ方面基地の司令とは話を付けてある。その基地を中心に
   海域を調査するのが基本事項。問題が起きた時は向こうの司令の指示に従うこと」


長門「以上だ。何か質問はあるか?」


水雷船隊「「「「「 …… 」」」」」


川内「……あの、」スッ




長門「なんだ?」


川内「すっごい気になってはいたんですが、今作戦に神通は参加しないんですか?」

吹雪「!」コクコク

川内「第三水雷船隊を川内姉さんに任せるね、って言われたんですけど、何か別件とか?」

那珂「あ、那珂ちゃんもそれ言われました! というかそうなると旗艦は誰になるんですか!
   那珂ちゃんがセンターですか!? ですよね!」

川内「那珂、うるさい」

那珂「ぶー!」


長門「その件はこれから話す。彼女には――」


ガチャ




神通「あの、神通です。お話し中失礼いたします」

那珂「あ、神通ちゃん!」

長門「ちょうどいい。神通、後は頼む」



神通「はい。ただ今を以って、前任の長門に代わり提督の秘書艦を務めさせていただきます、神通です。どうか、よろしくお願い致します」



夕立「え!?」

川内・那珂「「 秘書艦んんんんん!?!? 」」



神通「そしてこの度、第三水雷船隊の旗艦として本遠征に加わる長門さんです」


長門「神通秘書艦から紹介賜った、長門だ。本作戦では前任の神通に代わり、第三水雷船隊の旗艦を務める。皆、よろしく頼む」




吹雪「え……」






水雷船隊「「「「「ええええええええええええええええええぇぇぇっ!!?」」」」」


















ジャングル奥地・湖の中//


ゴポゴポ……


鯉「~~♪」


鯉「~~。」


ブク……


鯉「?」キョロ


イ級「イッ!」


鯉「!?!?!?」ビクッ!



ジャングル奥地・湖//



バシャアアア!!!


鯉「~~~!!!!」





アナベベ「おいコラァ! 急に飛び跳ねてんじゃねえ!! この服高いんだぞ!
     そんでイ級も! うちの可愛い金色の鯉ちゃんをビビらせてんじゃねえ!!」

イ級「イッ! イッ!」キャッキャッ!

アナベベ「てめぇ、エサやんねえぞ!」

イ級「イッ……」ショボ


アナベベ「ったく、わかったらやめろよ? 次やったら承知しねえぞ」


イ級「イーッ!」パァ!



ターちゃん「アナベベの奴、随分と仲良くなったのだー」

ヂェーン「最初はあんなに怖がってたのにねぇー」

アナベベ「うっせえ! 俺が怖がってたわきゃねえだろ!」

ヂェーン「よくいうわよ! だってあんた急ーに夜中に来たと思ったらさ……」



回想。。。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

深夜

アナベベ「あ゛ああああ!!! ターちゃあああああん!!!!」

ヂェーン「ん゛ぁー、な゛んなのよウッサいわねぇ、人がせっかく気持ちよく寝てんのに……」


ターちゃん「どうしたのだアナベベー?」

アナベベ「み、みず、みずうみに、みずうみに……!」

ターちゃん「湖がどうかしたのかー?」

アナベベ「か、かい! カイー! かいぃー! ぶ、つがあぁ!!」

ターちゃん「かいー、ぶ、つ? 蒸れた靴が湖に浮かんでたって?」

アナベベ「そりゃ『痒(かい)いブーツ』だろー!!! じゃなくて怪物! かーいーぶーつ!」


ターちゃん「貝……、ぶつ……? 打(ぶ)つ? ……あぁ、湖にラッコが来たんだねー」

アナベベ「ちげえよ!!!」

ターちゃん「はっ! アフリカのジャングルにラッコだとー!? 棲息域じゃないから大変だぁ!」

アナベベ「大変なんだけどそっちじゃねーーー!!!」

ターちゃん「あわわ早く海に戻してあげないと!」

ヂェーン「あぁーー! もうあんたらうっさい!!! よそでやらんかーい!!!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ヂェーン「……だもん。で、来てみたら弱ったイ級ちゃんたちが居たってオチ。
     どう見てもビビりまくってたじゃないの」




アナベベ「うっせえやい! 夜中になぁ! 見たこともないくらいデカイ生き物たちと
     変な女が居たらそらビックリするわ!」

ヂェーン「あんたってホント、昔あったはずの戦士の魂はどこに行ったのよ」

アナベベ「ぐぬっ」


「いくぞー!」

ターちゃん「ん?」



ペドロ「せぇのっ!」ポイッ

ト級「パクッ」「バク」「パクン」

ト級「「「ムシャムシャ……」」」


ペドロ・梁・エテ吉「「おぉー!」」「ウキー!」


ペドロ「三つ首でこの反射神経。視点の切り替え方。いやぁ、すごいもんですね!」

梁師範「ターちゃん流格闘術は自然に習うのが基本だからな。一つの脳で複数の視点と行動を処理する
    方法は、格闘家にとって学ぶところが大きいぜ」




エテ吉「ウキャーキャキャ!」ヒョイヒョイヒョイヒョイ

ト級「トトッ!」パクバクバクンパク!


ペドロ・梁・エテ吉「「おぉー!」」「ウキー!」


ペドロ「ならば更に早く!」

梁師範「俺も本気で行くぞ!」

エテ吉「キィーッ!」

ト級「トーッ……トッ!」パクバクバクンパク!


ペドロ・梁・エテ吉「「そりゃあーーー!!」」「ウキィーーッ!」




ターちゃん「あっちも仲がよさそうでなによりなのだー」




ヲ級「ヲッ! ヲッ!」

ターちゃん「お、ヲ級ちゃん! バナナ食べるかい?」

ヲ級「ヲーッ」パクパク

ターちゃん「食べられるようになったなら大丈夫! ヲ級ちゃんたちの怪我が治ってよかったね」

ヲ級「ヲッ!」

ターちゃん「うんうん、よかったのだ」

ヂェーン「あんたも大概懐かれたわね」

ターちゃん「うんうん、よかったのだ」デヘー

ヂェーン「なに鼻の下のばしてんぢゃい!」バシッ!

ターちゃん「ぐぇあ」



ヲ級「ヲッ! ヲ、ヲー……」

ターちゃん「うーん、そればっかりは私もよくわかんないのだ」

ヂェーン「故郷の海かぁ。拉致されて空中で逃げ出したんじゃちょっとどこから来たのか分かんないわよねぇ」

ヲ級「ヲー……」


ターちゃん「大丈夫! 海の事は詳しくないけれど、きっといつかヲ級ちゃんが居た海の場所を見つけてみせるのだ!
      なーに、海はどこかもつながってるし、見つからないはずがないのだ!」

ヲ級「ヲッ!」

ヂェーン「そうね。ターちゃんもこれを機に海のことを良く知っとくといいわ。
     海も、資源のためにハンターたちに殺される動物たちが後をたたない場所なんだから」

ターちゃん「ふんふん、よーし! これからは、ジャングルの王者であり、海の王者のターちゃんにもなるぞー!」


ヂェーン「その意気よターちゃん!」

ヲ級「ヲーッ!」


ターちゃん「よーし、そうと決まれば、ヲ級ちゃんの回復祝いも兼ねて、明日近くの海に行くのだー!」


ヲ級「ヲーッ!」キャッキャッ























川内「あ゛ぁ つ ぃ ~」グデー






西方海域//


吹雪「川内さん、大丈夫ですか?」

川内「の? おぉ、吹雪。カスガダマはまだなの~?」

吹雪「地図によるともう少しですよ」

川内「それもうさっきも聞いたよ~!」

吹雪「まぁ、川内さんの『カスガダマはまだなの~?』って質問もついさっきしたばかりですからね」


川内「ぬ、うおぉー……。那珂~、特型駆逐艦がいじめる~」

那珂「川内ちゃんってば出発前もそうだけど、最近生活が、深夜に起きて朝寝るってパターンだからリズム
   崩れちゃったんだよ。そりゃ身体は怠いし、暑さにも負けちゃうよ」

川内「那珂が真面目なこといってるぅ……」


那珂「女の子にとって睡眠は百薬の長! 健康に効き、美容にも効く万能薬なんだよっ♪」
那珂「それにアイドルを目指すならこのくらいの暑さに負けてちゃダメ! ライブはもっと熱いんだぞっ♪」
那珂「熾烈なセンター争いを勝ち抜くには、何より普段の生活からきっちりするのが大事なんだねっ♪」
那珂「だから明日から川内ちゃんも艦隊アイドル目指して一緒に頑張ろうねっ♪ センターは譲らないけどねっ♪」


川内「あ、那珂。いまそのテンションだめだわ」

那珂「えー!」

川内「胸焼けする」

吹雪「あはは……」




夕立「でも暑さと距離で疲れたのはホントっぽい~」

睦月「確かにそうだねー……。長門さん、かなり飛ばしてるもんね……」

川内「本来の速力は私たちの方が早いのにねぇ。つまり私たちが余力もって走ってる中、長門さんはほぼ全力で走ってるってことだもんね」

那珂「さすが、艦隊のセンター、秘書艦ですね!」


長門「現在、秘書艦は神通だ。今の私は平艦娘だよ」


川内「いやー、人事異動も大変ですよねー! ……ちょっと、吹雪こっち」ボソ

吹雪「? どうしました?」ボソ

川内「あんた頭良いから聞くけどさ? この任務おかしくない?」

吹雪「……神通さんと長門さんが役割を交代したことですか?」

川内「それもそうだし、今まさに長門秘書艦がほぼ全力で走り続けてることもだよ。これって遠隔地の、しかもたかだか調査任務でしょ?
   なのになんでこんなに急いでんの、って話」

吹雪「た、確かに」

川内「しかもだよ? 提督は向こうでの任務期間は1週間くらいってかなり長めにとってるし。その悠長さに反して、この移動速度。
   そして極め付けは旗艦・長門。……これってさ、普通の任務なのかな?」

吹雪「何か隠してる、ってことですか?」




川内「……、まぁそういいたかないけどさ」

吹雪「まさかぁ、考えすぎですよ。同じ鎮守府の仲間ですよ? しかも提督が信頼を寄せる長門さんに限ってそんな……」

川内「んー……」

吹雪「川内さん?」

川内「でも提督も長門秘書艦もなーんか隠してそうな目つき――」


那珂「川・内・ちゃーーーん!! 顔怖いよーー! そんなんじゃ、宣材写真撮り直しになっちゃうゾ♪ きゃは♪」


川内「……那珂、空気」

那珂「だーってぇー、こんな空気ヤなんだもーん!」

川内「……、はぁ。ま、考えすぎか」

吹雪「そうですよ。ほら、向こうに着いた時のこと考えましょ! カスガダマは珍しくてかわいい動物がいっぱいいるそうですよ!」

那珂「あ! それいいよねー! 動物とー、アイドルはー、互いをかわいく見せ合う相乗効果を発揮するんだよねー!」




キャッ キャッ!



睦月「後ろの3人、凄い楽しそうだねー」

夕立「全く。黙々と任務を続ける夕立を見習って欲しいっぽい~」

睦月「およ? 喋る体力もなくなっちゃったのです?」

夕立「そうともゆー」

睦月「頑張って、夕立ちゃん。あと少しだよ」

夕立「はいはーい。 ……ん? あれ?」

睦月「どうしたの? 夕立ちゃ、……!」






ズズズズ……




長門「11時の方向、敵艦見ゆ!」






水雷船隊「「「「「 !! 」」」」」


那珂「敵艦隊、戦艦ル級2隻、輸送ワ級3隻の計5隻です」

長門「陣形、単縦陣! 各艦、周囲に他の深海棲艦が居ないか注意しつつ、敵艦隊との距離をとれ!」
   吹雪、睦月は後ろについて敵潜水艦の存在に注意を配れ!」

吹雪、睦月「「 はい! 」」


長門「残るは接近してきた戦艦ル級に一斉砲撃だ!」


ガシャ!







長門「……、近づきも離れもしないか、……不気味な奴め」









ル級1「――――」

ル級2「――――」







夕立「全く動く様子がないっぽい……」

川内「…………」


ル級1「――――――」


長門「……チッ」


吹雪「長門さん! 周囲に敵潜らしき影は見当たりません」

睦月「睦月も、見当たりません。あの戦艦2隻と輸送3隻で全てだと思います」


長門「……、そうか」


ル級2「――――」




長門「よし、全艦、右のル級に一斉砲撃だ」

水雷船隊「「「「「 了解 」」」」」






ル級1「―――」




長門「打ちー方ー始めー!!!」





ドォン! ドドン! ドゴォン!!



ル級1「――-‐」ギギギ、ズン



ズズズズ……




那珂「戦艦ル級1、轟沈です!」

川内「何アレ……、応戦も防御もなし?」

長門「やはりか……」

吹雪「え?」


長門「全艦。もう一体のル級にも砲撃開始! 反撃が始まる前に仕留めろ!」


ドン! ドン! ドカン! ドーン!





那珂「ル級、撃破! 沈んでいきます!」





睦月「終わり、かな?」

夕立「なんだかぶきみっぽい~」

川内「結局、反撃どころか、防御も、回避すらしてこなかったね」

那珂「なんだったんだろ……」

長門「…………」



吹雪「! 長門さん、ワ級! 一体いなくなってます!」

長門「何?」



ワ級2「―――」
ワ級3「―――」




那珂「あれ? 本当だ、さっきまで3隻いたのに」

夕立「んー? 戦艦と戦ってる間にどっかにひそんだっぽい?」

睦月「隠れてやり過ごすつもりかな?」


川内「まぁワ級は攻撃力ないしね。大方、深海棲艦らしく海の中に沈んで隠れてんじゃないの?」

吹雪「でも、潜水艦級じゃないからすぐに浮かんできますよね?」


川内「あいつらもなんだかんだ動物だからさ。やっぱり死にたくないってのはあるんじゃない?
   だからこういうピンチになった時とか、無駄とわかってんのに足掻いたりするんだよ」

吹雪「なるほど」


川内「戦場にでてると時々見かけるんだよねー」

夕立「まぁどっちにしても、さっさと倒しにいきましょ~」

川内「おう、行きましょうか、長門さん」


長門「あぁ。全艦、ワ級を包囲し、離脱を防ぎつつ仕留めろ」

川内「はーい」


吹雪「了解で――」



 ザ パ ッ




吹雪「す……?」




ワ級1「――――」




吹雪「うわぁああっ!!!?」





長門「ワ級!?」

睦月「なんでこんなところに!?」



吹雪「え!? え!?」



ワ級1「――――」



川内「吹雪! 下がって!」

吹雪「川内さん!」

川内「安心しなよ。こいつは何にもできないよ。だって砲もなんにもついてないような奴だしさ」



ワ級1「――――」


川内「凄いじゃんか。ワ級なのに敵陣のど真ん中にくるなんて。囮?」


ワ級1「――――」




川内「でも、ウチのかわいい吹雪を驚かせた罰! ……きっちり沈んでよ、ねっ!!」ズドン!













 
                
                 ド ォ ン !











































 吹雪「川内さん!! しっかりしてください!! 目を開けて!」

                   
                睦月「っ、夕立ちゃん!? 聞こえる!?」
   
            夕立「大丈、夫。だけど、ちょっと動けない、っぽい……」

   
    吹雪「川内さん! 川内さん! やだっ!」


        那珂「吹雪ちゃん! 落ち着いて! 沈んだりしないよ! しないから!!」



  長門「全艦! E地点の海岸まで離脱!! 動けるものは負傷艦を曳航しろ!」

























いったん休憩

再開

アフリカ某所・ビーチ//


昼、、、






ターちゃん「海だぁーーー!」


ヲ級「ヲッ!」ピョン!

ト級「トッ!」バッ!


ザッパーン!!



ヂェーン「んー! 海なんていつ以来かしらー?」

ターちゃん「MAXの格闘大会で島に行った時以来だから、だいたい1年くらい前だね」

ヂェーン「ジャングルの湖も悪くないけど、やーっぱたまには海もいいわねー。ターちゃん、オイル!」

ターちゃん「はいはーい! よくなじませて、まんべんなく、濃すぎないように……」コネコネ

ヂェーン「わたしは食材かなんかかぁーーーっ!!」ベシーン!




ヲ級「ヲーー……」プカプカ

ト級「トッ! トーッ!」ザバザバ




ブーン、キキーッ!


アナベベ「ったく、あいつ、こっちは車だぞ? なのになんでリヤカー引いて走ってきたターちゃんの方がはええんだよ?」

ペドロ「先生の走りはチーターより早いですから」

アナベベ「つくづく、ほんとに人間かよあいつ」

梁師範「それにアナベベ、お前も重量級のイ級乗っけて車走しらせてんだ。そりゃ車も速力が落ちるってもんだ」

アナベベ「まぁそりゃそうだがよ。おい! イ級! 海についたぞ! 行ってこい!」


イ級「イッ! イーッ!」ピョイン、ザブーン!


アナベベ「ったくはしゃいじまって。溺れんじゃねーぞー!」

ペドロ「海の生き物相手に何言ってんですか」

アナベベ「それもそうか」

梁師範「あー、しかし、ジャングルでも暑かったが、海は段違いだな……」

ペドロ「僕たちのがいる辺りは湖も多くて涼しい方ですからねぇ」

梁師範「中国山間の寒さが恋しいぜ」

アナベベ「しっかし、せっかく海に来たってのに女どころか人っ子一人いやしねえな」

ヂェーン「あらいるじゃない♪ ここにアメリカ史上最高のビューティーが?」

アナベベ「いやー、人っ子の女が一人もいやしねえなー」

ヂェーン「どういう意味ぢゃい!」




<――! ―――!!



アナベベ「お?」ピクッ





アナベベ「なんか今あっちの方で声しなかったか?」

ペドロ「確かに、しましたね。岩場の向こうでしょうか?」

アナベベ「しかも俺の耳に間違いがなければありゃ若い女の声だぜ! うっへへ! なんだいるじゃねえか!」


梁師範「おいおい、よしとけよしとけ。悲鳴を上げて逃げられるのがオチだ。……俺が行こう!」

アナベベ「てめぇ、おったてといて説得力ねえぞ!」


梁師範「お前がいくよか100倍マシだぜ!」

アナベベ「なにおぅ!?」


ペドロ「お二人とも落ち着いて。見てくるだけなら僕が行きましょうか?」

梁師範「ばっか野郎! テメーが一番初対面の好感度高そうだろうが!!」

ペドロ「ダメなんですか!?」



アナベベ「今だ! 抜け駆けごめんね~!」バヒュン!


梁師範「あっ! アナベベの野郎! 待てこら!」ダッ!

ペドロ「ちょっと二人とも!」タッタッタ!



<――! ――シテクダサイ!

<カクジ――、――ホウコクシ――セヨ!


アナベベ「お、こっちだ! うっへへへ、かっわいこちゃーん! お待たsへぶぅ!」


梁師範「ふざけやがってこの野郎! 一番最初は俺だ!」

アナベベ「んだとゴラァ!」

ペドロ「もう、喧嘩するなら僕が行きますって」

アナベベ「ざけんな! このムッツリ!」

ペドロ「なっ!」


梁師範「よーし、わかった。全員で話しかける。OK?」


アナベベ「ちっ、しゃーねーな。じゃあ1歩ずつ近づくぞ」

梁師範「抜け駆けするなよ」


ペドロ「じゃあ、せーので行きましょう。……せーの!」




ビーチ・岩場//



那珂「陸地には到達しましたけど、目標のE地点からはかなり南にそれました」


長門「くそ、使えない羅針盤め」

那珂「陸路で向かうにはかなり距離があります。なにより、艦隊の体力が持ちません」

長門「……損害が軽微なのは私と吹雪だけ。那珂、睦月が中破、夕立は小破だが、艤装に甚大な被害が認められる」


夕立「も~、これじゃあ戦えないっぽいー」

睦月「怪我がないだけ、本当に、よかったよ夕立ちゃん」


長門「そして……」チラ



川内「――ハァ、……っ、ゼェ」

吹雪「川内さん、大丈夫です。すぐ基地で入渠できますから……」


長門「大破した川内、か」






吹雪「長門さん川内さんの容態……、かなり危険な域です……」


長門「分かっている。轟沈しなかっただけ奇跡だ」

吹雪「でもこのままじゃ、……このままじゃ!」


川内「だいじょうぶ……、だいじょう、ぶ」ゼェゼェ

那珂「川内ちゃん、喋っちゃダメ」

川内「だいじょうぶ……、ゼェだいじょぶ、だいじょぶ……」



長門「…………」

吹雪「長門さん!」

長門「分かっている。だがE地点に向かうとしても、向こうの基地にはドックはあるが応急処置並みの機能しかない。
   今の川内に移動を強いる労力を考えれば焼け石に水だ。そして本来の目的地であったH地点なら、我が鎮守府並みの設備が整っている。
   だからぜひともH地点に向かいたいところだが、この損害状況だ。途中で深海棲艦に出くわせば終わりだ」

吹雪「なら怪我のない私と長門さんでH地点に向かうのはどうでしょう!? 全速力で突破し、H地点で現地の艦隊と編隊を組むんです!
   その後ここに戻ってきて怪我をした皆を中心に輪形陣でH地点の基地に向かえば深海棲艦の脅威は限りなく軽減できます!!」

長門「それは考えた。しかし、……川内がそれまでもつか」

吹雪「ぅ……」




川内「――ぐ、あぁ、づぅ……!」

那珂「川内ちゃん……」ギュ


吹雪「……。一か八かでも、やらなきゃどうしようもありません」

長門「そう、だな。よし、吹雪。これよりH地点に向かう。那珂、睦月は現地点の護衛と通信を――」


<イエー! オレガヌケガケイチバンノリー!

<テメーハヤッパリソウイウヤツダヨ、アナベベ!


長門「なんだ?」




ぴょーん




アナベベ「どーもーー! お嬢さんがた! 本場アフリカのナイスガイ、アナべぶぅ!――」ボカッ!

梁師範「ったく油断も隙もねえ。ははは、すみませんね。この辺は野獣が多いんですよ、アフリカですから。
    え? 俺かい? 俺は中国拳法の達人にしてナイスミドル、梁です」

ペドロ「押っ忍! フランス出身の空手チャンピオンでターちゃん先生の一番弟子! ペドロ・カズマイヤーです!」

梁師範「お困りでしたら俺たちが……、って」



吹雪・夕立・睦月・長門・那珂「「「「「 ………… 」」」」」ポカーン





ペドロ「なんというか、その、服、どうされたんですか? 随分ボロボロですけど……」

梁師範「全身煤けちゃいるが血は出てねえみてぇだが……、あんたらヒッピーか何かかい?」


吹雪「あ、あの! もしかしてこの辺りの警備の人ですか!?」

ペドロ「え? えぇ、まぁ、警備?というか、平和を守ってますが……」

吹雪「良かった! じゃああの、基地に通じる無線は持ってますか!? 至急連絡してほしいんです! お願いします!」

ペドロ「えっと、なにがなにやら……」

梁師範「お嬢ちゃん、何かよく知らんが、落ち着け。とりあえず俺たちはその『基地』とやらの関係者じゃないことは確かだ。」

吹雪「え……」

梁師範「というか嬢ちゃんらはなんなんだ? 一体こんなとこで何を――」






那珂「川内ちゃん!!」





那珂「川内ちゃん! 川内ちゃん! 聞こえてる! ねぇってば! ねぇ!」


川内「」


那珂「息、してないよぉ」


吹雪「そんな……! そんな、っ!」ガク

長門「くっ!」



ペドロ「梁師範、あの子……」

梁師範「……。ただごとじゃねえな」スッ

那珂「えっ?」

梁師範「そこの娘、どいてろ」

那珂「えっ? えっ?」

長門「待て。彼女は私の部下だ。貴様がだれか知らんが、離れてもらおうか?」

梁師範「どくのはテメェの方だよ、女」

長門「何?」




ペドロ「大丈夫です。けが人の手当てをするだけですから」

夕立「よくわかんないけど、工兵の人っぽい?」

睦月「でも、機材も何もないのに……」


長門「ダメだ。事態は一刻を争う。アジア人の様だが基地関係者ではない者に、任せるわけにはいかない」

梁師範「うるせえぞ。そいつを助けたきゃ黙って見てろ」

長門「貴様……」グッ


ガシッ



ターちゃん「大丈夫。事情はよくわからないけど、僕たちは敵じゃないよ」


長門「新手か! くっ、離せ!」グググ

ターちゃん「君たちもだ。梁師範に任せておくんだ」



梁師範「いくぞ」スゥ



梁師範「通明賢気……、骨禎拘根……、黄考延口……」




ボウ



睦月「!? 光ってる!」







梁師範「通明賢気、骨禎拘根、黄考延口」






梁師範「通明賢気! 骨禎拘根! 黄考延口!」








川内「――っ、ゲホっ!」ビクン


吹雪・夕立・睦月・那珂・長門「「「「「 !? 」」」」」





川内「ゲホッ、ゴホッ!」


那珂「 川内ちゃん!!!! 」



川内「あ……、なか……?」ゼェハァ

那珂「そう! そうだよ! 聞こえる!?」

川内「あー……、うん、……聞こえてるよ、うるさいっての」

那珂「よかった! よかった、ぁ……!!」


川内「基地、ついたんだ……」

那珂「ううん、ちがくて、」

梁師範「嬢ちゃん、まだ治療途中だ。大人しくしてろ」ボウ

川内「……、オジサンだれ?」

梁師範「お兄さんは中国拳法の達人にしてナイスミドル、梁だ」




ターちゃん「お友達、助かってよかったのだ」

長門「……あれは、一体?」

ターちゃん「あれは『内養功』の術と言って気を使って身体を治療する技だよ。梁師範は白華拳と呼ばれる中国武術の達人なんだ」

長門「中国拳法……」


梁師範「よし、とりあえずはこんなもんだろ。後は自然の治癒に任せるといい」

吹雪「川内さん! 大丈夫ですか!?」

川内「お、吹雪。無事だったんだねー。よかったよかった」

吹雪「私は大丈夫です。でも、代わりに川内さんが」

川内「いいって。それに怪我してたっぽいけどなんか今、身体すんごい軽いんだよね!」


夕立「もう大丈夫っぽい?」

川内「もう大丈夫っぽい! っ、痛づつ」



梁師範「無茶するな。完治したわけじゃない。しばらくは安静だ」


那珂「ありがとうございます! ナイスミドルさん!」




ペドロ「後はアニマル湯に浸かれば大分治るんじゃないですか?」

ターちゃん「そうだね。ダメージはあるみたいだけど、傷はないみたいだし、お湯に浸かってもよさそうだね」

梁師範「ほかの嬢ちゃんらもそうするといい。見た目では気づかなかったが、内側の気が随分弱っている。疲労も激しい」


吹雪「えっと、どうしましょう、長門さん」

長門「……どのみち回復しない限り我々は動けん。申し訳ないが、世話になる」


ターちゃん「なぁに困った時はお互い様さ。よーし、ペドロはアナベベと一緒にヂェーンたちといてあげて。
      梁師範は私と一緒に彼女たちをアニマル湯に連れて行こう」


梁師範「おう」
ペドロ「押忍!」




ターちゃん「そうと決まればヂーェンにこのことを伝えに行かないと……」


ヂェーン「聞いてたわよ」


ターちゃん「げぇっ! ヂェーン!」


ヂェーン「げぇっ! とはなによ! げぇっとは!」

ターちゃん「あ、あの、これは違うのだ! 別に温泉に連れて行くからといって下心があったわけじゃなくてその」

ヂェーン「でも温泉に行って下心が生まれなかったって誓える?」

ターちゃん「……」

ヂェーン「なんかいわんかい」


梁師範「おいヂェーンさん、そりゃないぜ、俺たちは彼女たちを思って言ってるんだから」ギンギン

ヂェーン「おったてといて世話ないわい!!」

ターちゃん「でも連れて行くべきなのは本当なのだー! 信じてくれよヂェーン!」

ヂェーン「……、全く、流石にそれは私も分かってるわよ。それにあんな子供たち相手に欲情するとは思えないしね」


梁師範「そうだぜ!」
ターちゃん「そうなのだ!」


ヂェーン「じゃああの長い黒髪の女は?」



梁師範・ターちゃん「「 ………… 」」

ヂェーン「なんかいわんかい」



ヂェーン「というわけで、気を付けなさいよあんた」ポン

長門「あ、あぁ」

ヂェーン「じゃああたしはまだ彼女たちと一緒にビーチを満喫してくるから、いってらっしゃい」


ターちゃん「いってくるのだー。よぉし! それじゃあみんな!私がここまで使ってきたリヤカーに乗りなさい!
      アニマル湯までひとっ走り! 最速で直行なのだー!」


ペドロ「アナベベさん、いい加減起きてください」ユサユサ

アナベベ「……はっ! ここはどこ? 私はアナベベ」

ペドロ「はいはい、こっちですよー」




梁師範「よし、アニマル湯行きのメンバーは全員乗ったぞ」

ターちゃん「よーし! 全速力ぅ~だ~!!!」



バヒュン!




睦月「にゃっ!?」

那珂「早っ!? これ何ノット出てる!? エンジンとかついてないよね!?」

夕立「すっごい……」



吹雪「あの……、」

ターちゃん「ん?」













吹雪「あなたは一体?」








ターちゃん「私はジャングルの王者、ターちゃんなのだ!」





































                艦隊これくしょん × ジャングルの王者ターちゃん























                    初めまして! ターちゃん!の巻
























ジャングル・ターちゃんの家//


夜、、、



ガラガラガラ


川内「いや~、いいお湯だった!」

夕立「心なしか身体が軽くなったっぽい!」

ターちゃん「あそこは怪我した動物たちが浸かって身体を癒すんだよ。身体の疲れと傷を治すにはアニマル湯での湯治が一番効くんだ」

吹雪「鎮守府のドック、とまでは行かないですけど、ほとんど入渠した時の感覚ですよ」

長門「確かなことは言えないが、もしかしたら高速修復材などの成分が微量に含まれた天然の湯なのかもしれない」

睦月「なるほど~」

那珂「那珂ちゃんもー、心なしかお肌がピチピチになった気がする♪」

ターちゃん「ヂェーンもよく美容のためにアニマル湯に行くんだよ」

那珂「ヂェーンさん、って、さっき話してた人ですか?」

ターちゃん「うん、私の奥さんなのだ」

那珂「え゛えっ!? あ、そ、そうですか。なんか、はい」

梁師範「いわんとしてることは分かるが、本人を前にして言うなよ? 死ぬぞ」

那珂「は、はい」



睦月「そういえば、あの温泉、色んな動物たちが居ましたけど、お肉を食べる動物さんが来たら大変じゃないですか?」


ターちゃん「ううん。あの温泉では肉食獣も草食獣もみんな一緒に入れるんだ。あそこだけは、敵味方のない場所なんだよ」


睦月「そんなことがあるんですね……。その、恐い動物さんとかでもですか?」


ターちゃん「どの動物も怪我をして湯治にきてるからね。獰猛なライオンでも、あそこでは決して他の動物を襲わないんだ」


睦月「わーっ! 素敵ですねそういうの! いいなぁー!」


ターちゃん「普段は命のやり取りをする仲でも、同じアフリカの大地に生きる動物同士だからね」



梁師範「さっ、着いたぞ」

ターちゃん「ヂェーン! ただいまー!」



ヂェーン「おかえりターちゃん、お腹すいたでしょ。アンタたちもごはん出来てるから食べなさい」

ターちゃん「まさかヂェーンが料理を!?」

ヂェーン「作ったのはペドロちゃんよ」

ターちゃん「だよね」


長門「いや、そこまで世話になっては……」

ヂェーン「何いってんの。こんなの世話の内に入んないわよ。けが人は黙って世話になればいいの」

梁師範「先を急いでいるのかは知らんが、俺の内養功と湯治で体内の気は大分回復したとはいえ、
    完全に復調させるにはまだ一両日かかるだろう」

ヂェーン「悪いことはいわないわ。あんたの仲間のためを思うなら休んできなさい」

長門「……」


夕立「まぁ調査遠征ですし、ゆっくりしてもいいんじゃないですかー?」

那珂「一応川内ちゃんと私の零式水偵ちゃんたちをさっきの海岸に待機させてますから、
   もし味方の艦娘さんたちが来たらすぐに飛んで知らせに来てくれるはずですから大丈夫です」


長門「……しかし、」

夕立「?」


長門「……、そうだな。せめて川内が復調するまで、世話になろう」

夕立「ぽい!」







川内「……」ジッ



ヂェーン「はいはいじゃあ心置きなく食べなさい」

夕立「ごっはん~ごっはん~♪」

ペドロ「比較的身体に優しそうな食事を用意しました。お口にあうといいんですが」コトッ


川内「どれどれ、……あ、美味しい!」

那珂「ホントだ! おいしー!」


ペドロ「よかった! 味のバリエーションはないですけど、量はまだまだありますのでどうぞ」

川内・那珂「「 はーい! 」」


ヂェーン「そういやアンタら服、替え持ってたのね」

睦月「遠s、あー、遠出の予定でしたから」

ヂェーン「そっ。一応葉っぱは用意しといたんだけどいらないわね」

睦月「にゃっ!?」

夕立「葉っぱ! それどうしちゃうの!?」ワクワク


ヂェーン「そりゃアンタ、胸と股間に当てて服にするのよ」

夕立「わぁ~~!」キラキラ


睦月「夕立ちゃん!? 駄目だよ!?」

夕立「えー、睦月ちゃんお堅いっぽいー」

睦月「駄目だよぉ、恥じらいを持とうよ」

夕立「それは失礼っぽい! ここではこれが普通よ! ね、ヂェーンさん!」

ヂェーン「あたしもこれはどうかとおもうわ」

夕立「っぽい!?」



夕食後、、、


夕立「お腹いっぱいっぽい!」

睦月「だねー」

吹雪「ん? なんか音しない?」




ブロロロロロロロ



ターちゃん「あぁ、あれは、アナベベの車だね」

ペドロ「彼女たちを少しでも長い間海に居させようとして一人残ったんですよ」

梁師範「あいつもいいとこあるじゃねえか。ん? じゃあ二人はどうやって帰ってきたんだ?」

ヂェーン「ペドロちゃんは走って、私はダチョウで」




川内「彼女たち? 他にも誰かいるの?」

ターちゃん「あぁ、前に君たちと同じように怪我をしていた子たちだよ」

川内「へぇー」

那珂「妙な偶然もあるんだねー」

川内「どんな子だろ」





ブロロロロロロロロ……、キィーッ!



アナベベ「よう、遅くなったけど、海開き済ませてきたぜー」





イ級「イッ!」

ト級「トッ!」

ヲ級「ヲッ!」




川内「」
那珂「」






川内・那珂「「 うわあああああああぁぁっ!!!?? 」」ビクゥ!



ヲ級「ヲッ!?」ビクッ



吹雪「え!? なに? どうしま、ってうわあああああああああぁっ!!!??」

睦月「な、なにかあ、ひああああああああああぁぁっ!??!」

夕立「っぽい? ぽいっ!? ぽいいいいいいいいぃぃっ!?!!?」



ト級「ト……」オロオロ

イ級「ィ……」アセアセ



長門「な、深海棲艦!!??」

川内「なんでこんなところに!?」

那珂「え、えっと、敵艦、空母ヲ級、軽巡ト級、駆逐イ級の三隻! 
   T字戦、というか奇襲戦!? ええっととにかく我が方不利です!! わぁーー!!!」アワワ

睦月「ぎ、艤装つけなきゃ!」モタモタ

夕立「私も、って艤装壊れてたっぽい!」

吹雪「え、えっと、空母は夜戦で攻撃できないから脅威じゃなくて、……そうだ魚雷! ……、陸地だ!? うわあぁどうしたら!!」ワタワタ





長門「落ち着け! 全艦艤装装備! 私が時間を稼ぐ!」グッ



ペドロ・梁師範「「 ! 」」



アナベベ「おいおい、なんだお前ら? イ級らが怯えてるだろーが」

吹雪「離れてください! 危険です!」

アナベベ「あん?」

睦月「殺されちゃいますよぉ!!」

アナベベ「何言ってんだお前ら?」

ヂェーン「そうよぉ、事情はわかんないけど落ち着きなさい」

睦月「え、でも……」

ペドロ「しばらく一緒に居ますけど、別に彼女たちは危険なんかじゃないですよ」

ターちゃん「うん。どっちかというと気のいい子たちだよ」

吹雪「え、えぇ?」


ヲ級「ヲッ!」ピョン

ターちゃん「ヲ級ちゃん、おかえりー」

ヲ級「ヲッ!!」パァ




ト級「トトトッ!」

ペドロ「ははは、そうか、よかったな!」


イ級「イ……」

アナベベ「ったく、帰ったらメシ食わせてやるからな」

イ級「イーッ!」ワッ!


 わ い わ い

  が や が や




吹雪「えっと……、」チラ

長門「……、とりあえず、全員、その、落ち着こうか」




ターちゃん「事情はよくわかんないけど、皆は知り合いなのかい?」

長門「質問に質問で返すようで悪いが、そちらはどういう知り合いなんだ?」

ターちゃん「さっきも言ったけど、怪我してるのを助けたんだよ」

アナベベ「何週間か前にウチの湖にいたんだよ。ちょっと向こうにある豪邸のそばの湖に。
     ちなみにその豪邸というのは俺の豪邸だ! なんせ俺は金持ちだからな!」

長門「……ここから海まで遠かったはずだが?」


アナベベ「空から降ってきたんだと」

長門「はぁ?」


アナベベ「だーかーら、空から降ってきたんだよ。そいつらが言ってた」

吹雪「空、って、あの空ですか?」


ターちゃん「気づいたら狭い所に閉じ込められてたらしいんだ。で、そこのト級ちゃんがガリガリ壁を削ってたら割れて、
      外に出たら空で、そのまま下の湖に落ちてきたんだって」


アナベベ「飛び去って行くヘリは俺が見た。状況から見ても間違いねえぞ」




夕立「あのー、分からないことがあるんだけど」

ターちゃん「なんだい?」


夕立「その証言って明らかに、その深海棲艦たちが言った言葉よね? だったらおかしいっぽい。なんでわかるの?」


ターちゃん「なんで、って言われても。動物たちと心を通わせれば、大体何が言いたいのか分かるようになるよ」


夕立「深海棲艦と喋れるの!?」

ペドロ「横からで悪いけど、その深海棲艦、というのは彼女たちの事なのかい?」

吹雪「そうです。海軍では彼女たちの事をそう呼称します」

ペドロ「海軍、って……。じゃあ君たちは軍人だったのか!?」

吹雪「艦娘、っていいます。まぁ、大体そんな感じで」

長門「吹雪、喋りすぎだ」

吹雪「あ、と、すみません」



梁師範「ま、一般人じゃないのは分かってたぜ。あからさまに大砲背負ってるしな。
    そして何より、お前たちは普通の人間の身体じゃねえ」

吹雪「!」

長門「わかるか?」

梁師範「当然だ。誰がそいつの身体を治したと思ってる」

川内「え? 私?」

梁師範「気の流れ、というより、気の構造が人間のものではなかった」


長門「……もう隠せんか。そうだ。私たちは日本帝国海軍所属の軍艦だ」

梁師範「ならさっき、こいつらを見て戦闘態勢に入ったのは」

長門「あぁ、我々の任務は、この世界の深海棲艦を撃滅し、制海権を取り戻すことにある」


ターちゃん「ヲ級ちゃんたちを!?」

イ級「イッ! イ~ッ……」ガクガク

アナベベ「おーよしよしよし。おい日本女! 黙って聞いてりゃなんだ! なんでこいつらが殺されなきゃなんねえ!?
     みてくれはイカツイけど、こいつら悪い奴じゃねえぞ!!?」

ターちゃん「そうだよー! 彼女たちもその仲間も歌と踊りが好きなのんびりとした生活をしてるらしいし、
      そんな、戦争みたいなことは……」


長門「こちらも任務だ。それに、多くの戦友たちがそいつらの同類に沈められてきた。
   例えばそこにいる睦月も、最近深海棲艦に姉妹を殺された」

睦月「っ」



長門「殲滅は至上命題だ」




一同「…………」




 し ん





ヂェーン「……大変だったのは分かるわ。でも、それをやったのはこの子たちじゃないのよ?
     あんたのいう深海棲艦がどういうものか知らないけど、今ここにいるこの子たちは別、
     それじゃあ駄目何かしら?」


長門「……」

那珂「な、長門さん? そのー、襲ってこないなら大丈夫じゃないですか?
   なによりこれからお世話になるんですし、その……」


長門「……、そうだな」





長門「全艦、艤装を降ろせ」



 ゴトン





ターちゃん「ふーぅ、良かった良かった!」


睦月「……」

長門「……」

梁師範「……」

吹雪「……あー、えっと」


ヂェーン「はいはい! 全員何ぼさっとしてんの! ご飯食べたら後片付けでしょ!」

ターちゃん「はいなのだー」

ペドロ「押っ忍!」


ヂェーン「あんたたちもよ! 日本ではそんなことも教わってないのかしら?」

夕立「むっ、ちゃんとしてるっぽい! 睦月ちゃん、吹雪ちゃん、手伝うっぽい!」

吹雪「そ、そうだね! 睦月ちゃん、ほら?」

睦月「……うん」


ト級「ト! トトト!」バタバタ

ヲ級「ヲ~~ッ」グゥー


アナベベ「おう帰ってメシにするか。よし、お前ら、帰るぞ」

イ級「イッ!」
ト級「トッ!」
ヲ級「ヲッ!」




ブロロロロロロロ……








――――――――――――

―――――――

―――

ジャングル・ターちゃんの家近く//


深夜、、、



ヒュッ、シッ、ブオン!


長門「ふーっ、……シッ!」


ボッ!



長門「……ふぅ」



長門「……、」




長門「提督……」




ザッザッザ


長門「! ……誰だ!?」






梁師範「わりぃな。覗くつもりはなかったんだが」






長門「中国拳法の、梁師範と言ったか」

梁師範「そういうアンタは長門、だったよな」


長門「あぁ。長門型 1番艦 戦艦、長門だ」

梁師範「戦艦、ねぇ。俺には意味がよく分からんが、さっきの鍛錬で良い拳をしてたってのは分かるぜ」

長門「自己鍛錬は欠かしたことがない」

梁師範「だろうな。その拳は一朝一夕のものじゃない。格闘に人生を捧げた奴の拳だ」

長門「フッ、光栄だな」


梁師範「そしてそれは、殺しの拳だ」

長門「何?」




梁師範「お前、歴戦の戦士の目をしている。身体もきっちり絞られているし、
    何より立ち居振る舞いが、……殺しをしてきたもののそれだ。」

長門「……、それで?」

梁師範「ん? あぁ、すまん。責めるつもりはない。俺たちだって同類だ。明るい道ばかり歩いちゃいないさ。
    何やら抱えてそうな様子をしているが、それでもお前さんが真っ直ぐな奴だということは大体わかる」

長門「中国武術というのは凄いな。気でそこまでわかるのか。だが、話が読めないな。結局何が言いたい?」

梁師範「いや、すまない。気を悪くするな。俺は不器用なもんでね、言いたいことが伝わらなかったらしい」



梁師範「率直に、言おう」



スッ



梁師範「その帝国海軍の自慢の拳、見させては貰えないだろうか?」グッ


長門「なるほど、……いいだろう!」ブォン!


梁師範「うぉっ!」ヒョイ



長門「まだまだ行くぞ!」フォッ!

ブン! ブオッ! ボッ!


梁師範「甘い!」シッ!


長門「くっ!」


梁師範「そこだ――」

長門「はあぁっ!!」ビュン!


梁師範「なぁっ!」ドガッ!



ズザッドシャ!

梁師範「ちぃ!」




梁師範「(攻撃を躱した後の無茶な体勢から、この大砲のような威力の拳!)」


長門「ふん!」ドガ!

梁師範「ぐおっ!」バシ!

長門「そらっ!」ブン!

梁師範「(そして狂戦士のようなこの連撃! 鍛錬こそ日本空手の皮をかぶっちゃいるが、
     拳筋に型は無ぇ! 我流、それも理知的な野獣のようなスタイル……!)」

長門「ふっ!」ビュオン!

梁師範「だが――!」クルッ、


ズオッ


長門「なにっ!」

梁師範「懐ががら空きだぜ!!」ボッ!



ドカッ!


長門「っ」ビリ


梁師範「トドメだ!」グッ



長門「っ、舐めるなっ!!」ブン!


梁師範「なんだとっ!?」




ドゴッ!



梁師範「が、はっ……!」



ザッ、ザッ、


長門「勝負ありだな」




梁師範「……、あぁ、負けたぜ。俺の拳をものともしない、体勢すら変わらないタフネスまでもっているとはな」


梁師範「(この女、まぎれもない強者だ!)」


長門「いや、こんなに充実した戦闘をできたのは久しぶりだ。中国拳法は門外漢だが、
   これほどの使い手は他にはいないだろう。いい手合せだった。礼をいう」

梁師範「俺もだ。日本にこんな使い手がいるとは知らなかったぜ」

長門「それと、もう一つ。川内の事、改めて礼を言わせてもらう」

梁師範「おいおいよしてくれ。当然のことをしたまでだ」

長門「それでもだ。心から礼をいう。ありがとう」


梁師範「……、変な空気になっちまったぜ」



長門「ではな、今日は疲れた。眠らせてもらう」ザッザッザ






梁師範「日本人ってのは生真面目だねぇ。なぁペドロ」



ガサガサッ

ペドロ「僕から見れば、梁師範も十分生真面目ですけどね」

梁師範「ペドロはいいのか? あの女と一戦交えねえでよ」

ペドロ「まさか、梁師範と戦った後の疲労した女性相手に戦えませんよ。それに師範、いい一撃入れてたでしょう?」

梁師範「いやさ、沈めるにはまだ数発決めなきゃならなかった。あの女相手にゃ至難の業だ。  
    侮ると痛い目をみるぞペドロ。あれはいい女だが、それ以上にいいファイターだ」

ペドロ「わかります。いずれ、手合せ願いたいものです」





梁師範「そういやペドロ、戦艦長門、って知ってるか?」

ペドロ「戦艦長門、ですか? 戦艦ってあの?」

梁師範「あの海に浮かぶ兵器の戦艦の事だと思うんだが、あの女がそう自称していてな」

ペドロ「なるほど。戦艦長門ですか。恐らく長門さんの名前からついた異名みたいなものでしょうね!
    タフネスなハードパンチャー。まさしく日本のバトルシップ、長門の名にふさわしいファイターです」


梁師範「ははぁ、日本の戦艦の名前か。大層強かったんだろうな」

ペドロ「えぇ、逸話はたくさんありますよ。世界のビッグ7と呼ばれた名戦艦です」

梁師範「さすがは日本通の空手家。その辺はよく知ってんな」

ペドロ「それほどでも!」



梁師範「で、逸話って、例えばどんなのがあるんだ?」

ペドロ「そうですね、例えばクロスロード作戦とか」

梁師範「クロスロード作戦」


ペドロ「アメリカの核実験の一環で、戦艦や空母に向けて爆発させてその威力をみる、という作戦だったんです。」

梁師範「戦い、ってわけじゃねえのか」


ペドロ「まぁそうです。でも凄かったらしいですよ。その実験の際に、戦艦長門だけは甲板に爆弾付けた状態で、
    核兵器の大爆発を受けたんです。で、実験後、同じ距離にいたアメリカの空母サラトガは7時間後、その日には沈みました。
    一方で、戦艦長門はいつ沈んだと思います?」


梁師範「そうだな……、ん?」








川内「あー、ジャングルの夜もいいね~」



梁師範「おい怪我人、何やってんだ」

川内「あ、オジサン」


梁師範「お兄さんだ」

川内「お兄さん、って年でもないでしょ」

梁師範「俺はまだ20代だが」


川内「うぉぇぇええぇええ!!??!」

梁師範「傷に障るぞ」

川内「えぇええええぇええ!!?! だって、ええぇ!? どう見ても40代くらいじゃん!!!」


梁師範「テメェ、仮にも命の恩人に相手に失礼すぎやしねえか? あぁ?」

川内「あ、それはホントにありがとう! これでもっと夜戦で暴れられるよ!」

梁師範「ったく、良いからもう戻れ。しばらくは安静にしてろ、ガキ」


川内「はーいはい」


どこかの基地//





「司令、本日の結果をまとめたものをお持ちしたしました」



ギィ……


???「ご苦労。口頭でいい、データを報告しろ」

「はっ。本日の時点で目標としていた個体数を大幅に超え、作戦に投入する戦力は十二分かと」

???「数はいい、問題は精度だ」

「精度に関しましても、なんら問題はありません。特攻実験の成功率は、初期こそ数パーセントでしたが、
 現在ではほぼ100パーセント成功します。掌握に関しても、完全に当初の目標を達成できたといえるでしょう」


???「なるほど、いいだろう」


「そういえば、本日こちらの海域に遠征にきた帝国海軍艦6隻と戦闘に入り、これを撃退しました。
 その際に司令が発案されたワ級運用戦術が功を奏したそうです」


???「……あぁ、輸送ワ級に高性能爆薬を運ばせ敵艦の至近距離で被弾させる戦法か」


「敵軽巡の砲撃により起爆し、かなりの損害を与えたようです」


???「さすがに一撃で全滅させるには程遠い、か。あの艦娘とかいう怪物ども、本当にこちらの予想以上の
    戦闘能力を保持しているな。並みの人間どころか並みの兵器ですら一撃で沈みうる威力だというのに」



「我々基地の人間だけでは艦娘には到底かなわないですからね。過去の実験体がいた頃ですら、勝てていたかどうか」

???「かまわん。その為にわざわざ脱出用の船まで用意したんだ。もしもの時はまず装置を守り抜くことを主眼に置け」

「了解しております!」


???「よし、もう下がっていいぞ」


「はっ、……あの、司令」

???「なんだ」

「その、司令の実験体の方はどうなっているのでしょうか?」


???「安心しろ、想像以上の出来だ」

「では……!」

???「いつでも動けるようにしておけ」

「かしこまりました! 失礼いたします!」


ガチャ、バタン




???「……、ふ、くくく、」


???「検体の輸送中に脱走され、しかも気づかなかったなどという馬鹿共のせいで少し遅れたが、
    まぁいい。後は奴の意識が覚醒するのを待つばかりだ」




???「見ていろ……、今度こそ世界最強のバケモノを生み出してやる……!」





???「そしてその時は、俺の屈辱を100倍にして奴に返してやるっ!
    貴様の大切なものが破壊される姿を特等席で眺めてやるぞ……」





???「なぁ……、ターちゃんよ!!」


















小刻みに休憩。またちょっとしたら再開しまする。

ターちゃんと艦これ両方知ってる人ってここにどれくらいいるんだろうか。
再開。

ジャングル・ターちゃんの家//

翌日



昼ごろ、、、





象「パオーーーーーッ!」


夕立「ぽいーーーーッ!」


イ級「イィーーーーッ!」




のっしのっし



夕立「ふふふ、怖い? 超弩級戦艦夕立よ!」 

イ級「イ!」

夕立「なにー敵発見ですってー!? よーし、主砲! あの畑に向かって~撃てーーっ!!」


象「プァオーン!」シャワァー





夕立「着弾!」

イ級「イッ!」




ターちゃん「ありがとう、水撒き助かるよ」


イ級「イーッ!」

夕立「どういたしまして! おもーかーじいっぱーい、よーそろー!」




 き ゃ っ き ゃ



吹雪「……夕立ちゃんはね、馴染みすぎだと思うんだ」

睦月「う、うん」



夕立「あ! 9時の方向に吹雪ちゃんと睦月ちゃん発見!」



のっしのっし




夕立「二人ともー、やっほー」


吹雪「夕立ちゃん、テンションあがりすぎ」


夕立「えー、でもゴリラと一緒に木の実割ってる吹雪ちゃんも結構大概っぽい」


ゴリさん「ウホ」

吹雪「ち、違うよ! 別に好奇心で手伝ってるんじゃなくて、これがここの家事なの!」

夕立「なら夕立も畑仕事のお手伝いっぽい!」

吹雪「ぐぬぬ」

夕立「なら吹雪ちゃんも一回乗ってみて! テンションあがるっぽい!」

吹雪「え、いいよ。私は別に」

夕立「まぁまぁそういわず」

吹雪「えー、でもなー」

夕立「もー、ゴリさん! 私降りるから、吹雪ちゃんを乗せてあげて」

ゴリさん「ウホウホホ」ガシッ

吹雪「え、うわわ! ホントにいいってば! っ、ととと!」


象「パオーーン!」

吹雪「うわー、高い。でも、これ難しいなぁ」

夕立「象さんの動きに逆らわないでいると安定するっぽい」

吹雪「なるほど……」


象「パオォーーーン!」




のっしのっし



吹雪「うわぁー! なんかすごいねー!」ワクワク

夕立「でしょー!」

イ級「イイイー!」

夕立「吹雪提督! 前方に果物のなった木が見えるであります!」

吹雪「鹵獲せよーー!」


象「パオオーーン!」



 わ い わ い

   き ゃ っ き ゃ


睦月「……はぁ」


ターちゃんの家//



川内「あ゛ぁーーヒマーーーー」グデッ


那珂「もうそれ12回目だよ?」

川内「私も外出たい象乗りたい夜戦したい!」

那珂「だーめっ、養生しないと長門さんにも怒られるよ!」

川内「ぐぬぬ」


那珂「それより川内ちゃんも一緒にヂェーンさんの美容マッサージ一緒に覚えようよ! 
   帰ったら神通ちゃんにも教えてあげなきゃだし!」

川内「んー、嫌」

那珂「えぇー? 元アメリカのトップモデルが教える美容術だよ!? 聞かないと損だよ!?」

川内「てか、そもそもそれ自体眉唾なんだけど。ホントにこのポスターの金髪美人がヂェーンさんなの?」

ヂェーン「そうよ」


川内「このボンキュッボンが? だってヂェーンさん――」

ヂェーン「太ったのよ」



那珂「もーう、川内ちゃんの目は節穴だね! ヂェーンさんは全然変ってないじゃない!」

川内「どこが」


那珂「ほーら、指紋なんか昔とそっくりぃ♪」


ヂェーン「おどれ沈めたってもええんやど小娘ェ!」メキメキィ!


那珂「あぎゃーーーーーーーーー!! 顔はやめて顔は、あああああ!! 那珂ちゃん解体されちゃうううう!!!!」


ヂェーン「ったく」パッ

那珂「あいたた……。でも変わってないのはホントだよ? 肌とか髪質とかすんごい綺麗だし」

ヂェーン「当たり前でしょ。そりゃもう美容にかける時間と努力が違うのよ、うっふん」


川内「美容ねぇ、私たちなんてお化粧しても遠征だの出撃だのですぐにボロボロになるし」

ヂェーン「馬鹿ねぇ。ならなおさらアフターケアをしっかりしないと将来泣きを見ることになるわよ?
     アフリカで暮らしてもうそろそろ10年経つけど、アメリカと違ってエステサロンも美容室もない
     この場所で、この肌と髪を保つのにどれだけ苦労したことやら」


川内「じゃあなおさらそんだけ太ったら意味ないじゃんか」

那珂「ち、ちょ川内ちゃん」


ヂェーン「フン、ここで生きていくには強さも大事なのよ。ほっそいだけの女っ子が生きていける場所じゃないの。
     でも、それでも綺麗でいたいもの。強く生きるからって、女であることを捨てちゃもったいないわよ」

那珂「ヂェーンさん! いいこというー!」

川内「……」

ヂェーン「あんたも小奇麗な顔してんだからもうちょっと着飾ればいいのに」


川内「いや、でも、着飾るって言っても、この服指定だしなぁ」

ヂェーン「ならまた衣替えしてもらえるときにでも直談判しなさい。せめて頭にアクセサリの一つでもつけるだけで
     ずっと可愛くなるわよ。あと露出も増やしなさい。肩のとことか袖切っちゃいなさい」

川内「え、えぇー、いや、かわいいって、いわれても、だって装甲は大事だし」


那珂「もうー川内ちゃんテレちゃってー」

川内「照れてない!!」

那珂「改二になったらこんな衣装にしてほしいって提督に言えばいいじゃん! ね?」

川内「……まぁいいけど」


那珂「ヂェーンさんヂェーンさん! 私は? 私はどんな服が似合います!?」

ヂェーン「あんたは、そうね。もっと白を基調とした衣装にしなさい。もっとフリルつけて、ソックス上げて……。
     ちょ、待ってなさい。今デザインに起こすから」カキカキ

川内「うわ、よくわかんないけど本格的」


ヂェーン「フランスでデザインの賞とったこともあるのよ。あたしの腕を信じなさいな」

ジャングル・ターちゃんの家近く//




長門「…………」









アナベベ「おい、あの女、木を見上げてずっと固まってるんだが? かれこれ10分はたつぜ?」

梁師範「さぁな。だが軍人なんだろ? こうして怪我して作戦が遅延してるであろうことを反省してるとか、
    もしくは新しい作戦プランを考えてるとか、そんなんだろう」

ペドロ「帝国海軍は厳しいと聞きますからね。隊を束ねる者としての責任を感じているんでしょうか」


アナベベ「しかしあれだな。昨日はなんかきっついチャンネーかと思ったが、こうして後ろ姿を見る分には
     中々の美人さんじゃねえか、なぁペドロ」

ペドロ「え? えぇ、まぁ」

アナベベ「いやー、日本美人かぁ! ゲイシャさんって奴だな! くぅー! 蓮苞ちゃんのような
     儚げな中国美人も捨てがたいけど、凛々しい日本美人もいいねぇ」」


梁師範「てめぇ、人の嫁を捨てがたいとか言ってんじゃねえぞ」

アナベベ「よーし、俺、あの女ひっかけてこよーっと!」ダッ

ペドロ「あ! ちょっと!」






長門「…………」







(木の上)

リス「キュッキュツ」







長門「…………」






リス「……」もひもひ


リス「キュ!」ケプ








長門「~~!」にへら






アナベベ「よぅ、姉ちゃん!」



長門「……! なんだ?」ピクッ




アナベベ「アフリカは初めてかい? なんなら俺と一緒に『サバンナの象』でも見に行かないかい?
     その後は俺の『盛んな巨象』も見せてやるぜー? 生い茂るジャングルも生えて――」


長門「あいにくだが」ギロッ

アナベベ「――て、お、得……」


長門「この身は我が提督、そして帝国海軍と、英霊たちに捧げている。せっかくの誘いだが、他を当たって貰おうか?」


アナベベ「……ひ、ひゃい」スタコラ



長門「ふぅ……」



長門「……」






リス「キッキュイ」


リス「くるるるるぅ~」









長門「~~!」にへら



ジャングル・ターちゃんの家//



夕立「ぽいぽい、ぽーい?」

イ級「イッ、イィーッ!」

ト級「トットトト!」

夕立「ぽい!」

ト級「トォ!」


吹雪「会話、できるの?」

夕立「コツはつかんだっぽい」

吹雪「えぇ~……」

夕立「妖精さんと会話する感覚かしら」

吹雪「そういうものかなぁ……、あ」




睦月「……」ぼー


吹雪「睦っ月ちゃん♪」

睦月「にゃぁ! な、なに? 吹雪ちゃん」

吹雪「暑い? 大丈夫?」

睦月「う、うん。大丈夫だよ?」

吹雪「そっか。……ねぇ、睦月ちゃん」

睦月「んん?」


吹雪「やっぱり――」




   ―――!

                                    

ターちゃん「はっ! いかん!!」

睦月・吹雪「「 え? 」」

夕立「どうしたの?」



ターちゃん「銃の音がした。密猟者の奴らが動物たちを襲ってるんだ!」

夕立「そんなの聞こえなかったけど……」

ターちゃん「助けにいかねば!」

ペドロ「先生! 密猟者ですか!?」

ターちゃん「ペドロ! 一緒に来てくれ!」ダッ!

ペドロ「押っ忍!」ダッ!



吹雪「え!? ターちゃん! ペドロさん! 二人じゃあぶないですよ!」

睦月「追いかけよう!」

夕立「うん!」

ジャングル//


ダラララララララララ! ダラララララララララララ!!


ハンター1「撃って撃って撃ちまくれぇい!」ダダダダダ

ハンター2「やっぱハンターはこれでないとアカン!」ダダダダダ

ギャラスキー「トラやヒョウはなるべく体を傷つけるなよ! 後は好きに撃てぇーー!」



ターちゃん「やめろ!」




ギャラスキー「げっ、出たなターちゃん!」



吹雪「はぁ、はぁ、追いついた……」

ペドロ「君たち!? なんでここに来たんだ!?」

吹雪「相手は銃を持ってるんですよね!? 二人じゃ危険だと思って」

ペドロ「いやそれを言うなら君たちが……」

睦月「ねぇ、ターちゃんは!?」

夕立「いた! あそこよ!」





ターちゃん「ジャングルの動物たちは私が守る!」


ギャラスキー「ほざけ! ハンター共! ターちゃんを殺せぇ!」

ハンター2「言われんでもそうしまんがな!」ガチャ


吹雪「あれは、自動小銃っ!?」

夕立「ターちゃん! 逃げてぇ!」




ハンター1「今日こそ、死ねぇ! ターちゃん!!」





ダララララララララララ!!!






睦月「あぁっ!」

ペドロ「大丈夫だ!」

睦月「えっ?」




ターちゃん「おっ! よっ! はっ! とう!」ヒョイヒョイ




睦月「す、すごい……」

吹雪「自動小銃の弾を避けてる!」



ターちゃん「しっ! ほう! はっ! ぽう!」ヒョイヒョイ



夕立「人間業じゃないっぽい」




ギャラスキー「えぇい! ハンターども! バラバラに撃たず照準を集中させろ!」

ハンター2「わかってまんがな!」

ハンター2「今度こそ、死ねぇ! ターちゃん!!」





ダララララララララララララララ!!!!!





睦月「あぁっ! 今度こそ大変!」

ペドロ「大丈夫!」

睦月「えっ?」




ターちゃん「ふにふにふにふに」フニフニフニフニ




睦月「す、すごい……」

吹雪「自動小銃の弾を避け、っていうかアレなんですか!? どうやってるんですか!?」

ペドロ「フニフニ避けだよ。先生の超人的な柔軟性を活かした達人技で、タコの様に体をくねらせて
    ミリ単位で攻撃を避けていくんだ!!」

吹雪「達『人』技……?」

夕立「人辞めてるっぽい」


カチッ、カチッ


ハンター1「……チィッ! 弾切れかっ!」

ハンター2「逃げるで!」

ターちゃん「そうはさせん!」ダッダッダ

ハンター1・2「「ヒェー!!」」


ターちゃん「ターちゃーん! パーンチ!!」ドカァ!

ハンター1・2「「うぎゃあーーーーー!!!!」」


ドサッ、ドサッ


ギャラスキー「ひ、ひぃ! 逃げ……」

ペドロ「逃がしはせん!」ブン!

ギャラスキー「うびゃあ! お、お助け~~!」

ペドロ「はあぁ! 正拳、上d」


???「「そこまでだ!」」


ペドロ・ターちゃん「「!?」」


???「動くな」ガチャ

吹雪「うひゃあ!」

ペドロ「!? 吹雪ちゃん!?」

???「くくく……」

ターちゃん「お、お前は……」

???「そう! 俺は! 世界を股にかける乱れ撃ちの男!」

???「そして俺は超硬質鉄鋼製バトルスーツに身を包んだ怪力無双の男!」


???「「その名も――!」」


ターちゃん「確か『アッパラパー』と『マスカキパパ』なのだ」



???「「だぁーー!」」ドテーン!


アッパパ「ちがぁーーう! 俺は乱れ撃ちの賞金稼ぎ、ワイアット・アッパパだぁー!」

マッスルパワー「そして俺はバトルスーツのバイオレンス・マッスルパワーだっ!!」


ターちゃん「あぁそうそう、そんな名前だったのだー」

ペドロ「貴様ら、1年前にやられたはず!」


アッパパ「はん! あの傷ならとっくに癒えたぜぇ! 今は新家業に勤しんでるよぉ」

ペドロ「新家業?」

マッスルパワー「小遣い稼ぎに動物たちを毛皮にしようとしていたギャラスキーの付き添いで来ただけのつもりだったが、
        にっくきターちゃんファミリーにリベンジの機会とあっては黙ってられねえぜ!」

ペドロ「黙ってやられると思ったら大間違いだぞ!」

アッパパ「ほう、お前、目が悪いみたいだな。このガキがどうなってもいいのかぁ?」ガチャ

吹雪「……」


ターちゃん「吹雪ちゃん!」

ペドロ「お前らぁ! 卑怯だぞ!」


アッパパ「にょがーっはっはっは! 卑怯で結構! お前たちは動けず、一方的にやられるんだよ!」

マッスルパワー「なぶり殺しにしてやるぜ、へっへっへ」

ペドロ「くっ……!」


ゴソゴソ


アッパパ「にょはっはっはっはっは! にょがーっはっはっはっは、……ニョ?」


夕立「吹雪ちゃん大丈夫っぽい?」

吹雪「いや、急に後ろから来られたからちょっとびっくりしただけ……」

睦月「睦月もターちゃんさんたちに気がとられてたからビックリしちゃったよー」


アッパパ「お、おいこらメスガキどもテメェら! 動くなっつってんのがわかんないんけぇー!?」


吹雪「ペドロさん! ターちゃんさん! 私たちには構わずそちらの重装備の人を倒してください」

ペドロ「いや、だが!」

吹雪「私たちは大丈夫です!」


アッパパ「……おいおい、『大丈夫です』だぁ? お前、自分が女子供だからって殺されないと思ってるだろ……」イラッ



ガチャリ


吹雪「!」


アッパパ「でも残念だなぁ、俺にとっちゃ人殺しは日常! 舐めやがって、ぶっ殺してやるよメスガキィいいいいい!!!!」






ズダダダダダダダダダダダダダダダッダダダダダダダダダダダダダダッ!!!!!!!




ターちゃん・ペドロ「「吹雪ちゃん!!!」」





吹雪「」ドサッ




アッパパ「にょははは。女を武器にすれば大丈夫だと思ったのか? 馬鹿な奴だぜ、にょがーっはっは!!!」



夕立「……」
睦月「……」


アッパパ「おいおい、ビビッて声も出ねえか? わかったらおとなしく人質に――」




吹雪「あ痛ぁ……」ヒリヒリ


アッパパ「にょおおおおお!?!?!?!?」


ペドロ「なっ!?」


アッパパ「馬鹿な! てめぇ、いま全弾直撃したはずじゃ!!!」


吹雪「しましたよ。でも7.7mm機銃以下の口径の銃なんて打っても駆逐艦は沈みませんよ」

アッパパ「な、なに、はぁ!? なんだそりゃあ!?」


睦月「というわけで」

夕立「お縄につくっぽい!」

吹雪「それっ!」グワッ


アッパパ「ちぃ! くっしょお!!」ズダダダダダダダダ


吹雪「あいたたたた!」

夕立「でも効きはしないっぽい!」ガシッ

アッパパ「は、はなせ!」

睦月「それっ!」

アッパパ「ぐあっ!」ズテッ


夕立「おっさえ込めー!」

吹雪・睦月「「おー!」」


アッパパ「がっ、うごけ、ねぇ!」グギギ


ペドロ「おぉ! 綺麗な抑え込みだ!」

睦月「軍所属だと、一応こういうの憶えさせられるんです」

ペドロ「日本柔道か。お見事!」


アッパパ「にょがあああああああ!!!!!」

吹雪「動いても無理ですよ。腱を傷めちゃいます」


夕立「ねーえ? ヒゲのおじさん、機関銃を武器にすれば大丈夫だと思ったっぽい~?」

アッパパ「くっ……離せガキ共おおおおおおおぉっ!!!!!」

夕立「にゃあぁっ! もぉ~、とりあえずこれ以上暴れられても困るから絞めるっぽい!」グイ

アッパパ「にゅ、……ぐぅ」ドサ


夕立「一丁上がりっぽい!」



吹雪「ご心配おかけしました」



ターちゃん「それはいいよ。でも、君の身体は大丈夫なのかい?」

吹雪「えぇ、これくらいへっちゃらです!」

ペドロ「はぁー……、おみそれしました」

睦月「それより、もう一人の大男さんは?」



全員「あ」



ペドロ「あれ!? さっきまでいたのに……、って車も無くなってます!」

ターちゃん「あ! あそこだ!」





ギャラスキー「ったくお前ら護衛だろうが! 役に立たんなぁ!」

マッスルパワー「冗談じゃねえ! ターちゃんとペドロだけでも大変なのにあんなわけのわからん
        小娘も一緒に相手できるか!」ブーン




ペドロ「あいつら……! もうあんなところに! 間に合うか!?」

ターちゃん「分からん。だが追うぞ、ペドロ!」

ペドロ「はい!」


夕立「ん? あれ……」




ギャラスキー「な!? おい! 右に! 右に!」

マッスルパワー「あん、……げ! なんでこんなとこn――!」




ドカーン!!



ギャラスキー「」ピクピク
マッスルパワー「」チーン




ペドロ「爆発!? いったい何が!」


ターちゃん「上を見てごらん、ペドロ」

ペドロ「え? ……あぁ! あれは、ヲ級ちゃんの!」


ヲ級艦爆「!」ブゥウウン


ターちゃん「彼女が仕留めてくれたのだー」





ヲ級「ヲッ!」ブイ



現段階で5分の2くらい消化。











どこかの基地//



「実験体の覚醒は数日中とのことです」


???「構わん。寝かしつけておけ。目覚めれば奴には四六時中働いてもらわねばならなくなる」


「はっ!」


???「それよりももう制御装置の方の確認は怠っていないだろうな」


「勿論です。万全の体勢です。こちらのものは全体とは別に独立した装置を用いておりますので、
 万が一にも効力が切れるようなことはないかと」


???「ならいい。あの装置が今後の我が組織の要だ。基地備え付けの本体は勿論、実験体用の独立装置も
    スペック通り100%の稼働ができるようにしておけ」


「了解しました、司令!」



???「資料で見た、あの力」



???「帝国の大艦隊を前に猛威を振るったあのパワー。俺の改造を経て数倍となったその能力値を前に、
    果たして何人死ぬだろうか。研究結果が、楽しみだ」




ジャングル・ターちゃんの家//



ギャラスキー「この通りだー! 反省してます! 反省してます! だから許してください~!」

ヂェーン「あんたら前もおんなじこと言ったでしょうが」

ハンター2「スマン! 全部出来心やったんやー!」

ハンター1「罪を憎んで人を憎まずだろ? な?」

アナベベ「ったく、今日という今日は許さねえぞ」

マッスルパワー「フン、今日は捕まったが次は覚悟しとけよぉ」

アッパパ「そうだぁ、次会ったらてめえをハチの巣にしてや――」

梁師範「とう!」バキッ

マッスルパワー・アッパパ「「 ぐぇ 」」


梁師範「うるせえ、しばらく寝てろ」


マッスルパワー「」
アッパパ「」


ヂェーン「さーて、どうしてやろうかしらねぇ~?」


三人「ヒェー!」




ヲ級「……」ボソボソ

ト級「……」コク

イ級「……」ソワソワ


ヲ級「ヲッ、ヲヲッ?」


ターちゃん「ん? どうしたんだい? ヲ級ちゃん?」


ヲ級「ヲヲ、ヲヲヲ、ヲッ!」


ターちゃん「なんだって!?」


ヂェーン「とりあえずトイレ掃除でも、」

ターちゃん「ヂェーン待ってくれ! 先に聞きたいことがある!」

ヂェーン「なによ?」

ターちゃん「さっきヲ級ちゃんたちから聞いたんだ。彼女たちを拉致したのはこいつらだ、って」

ヂェーン「ええぇ!?」

アナベベ「なんだと!? てめぇら……!」


ハンター1「ま、待ってくれ! 誤解だ!」

ハンター2「そうだそうだ! 俺たちゃ確かにそいつに見覚えあるけど、俺は責任者やない!」

ハンター1「この男が責任者や!」

ギャラスキー「き、貴様ら!」

ターちゃん「どういうことか説明してもらおうか、ギャラスキー」

ギャラスキー「ひ、ひぃ! 言う! 言うから!」


ギャラスキー「と、言うわけなんです、はい」

アナベベ「つまり、謎の団体に金積まれて西アフリカの海岸でイ級達を捕獲してた、と」

ハンター1「西アフリカの深海棲艦は全然戦争しないから捕獲が簡単だ、っていわれてな。
      網で罠作って、コンテナに入れて出荷してたんだよ」

ハンター2「もし暴れてもアッパパやマッスルパワーで無理やり入らせたんや。実入りのエエ仕事やったで」



長門「私たちも聞かせてもらおうか」

ターちゃん「長門ちゃん!」

川内「深海棲艦の鹵獲作戦ねぇ……」

梁「日本では行われていないのか?」

那珂「すくなくともウチの鎮守府の任務に鹵獲作戦はありませんね」


長門「密猟者、吐け、その依頼主は誰だ?」


ギャラスキー「あー、なんだったか。お前ら、覚えてるか?」

ハンター2「えーっとなんやっけな。なんか知ってる名前でー……」

ハンター1「そうだ! 犬みたいなやつだ!」


夕立「犬?」

イ級「イッ! イッ!」

夕立「もーう、夕立は犬っぽくないっぽいー!」


吹雪「犬……、犬?」


睦月「えっと、甲斐犬?」

那珂「秋田犬とか?」

川内「土佐犬なんてどう? 強いし」

那珂「えーっ、那珂ちゃんカワイイ犬の方がいいー!」

吹雪「かわいい犬だと、柴犬? 賢くて愛嬌もありますし」

睦月「甲斐犬も目がパッチリしててかわいいよ?」

那珂「北海道犬とか真っ白で綺麗だよー」

夕立「みんなわかってないっぽい! それなら強くて賢くてかわいい紀州犬が一番よ!」

川内「おぉ! それいいねー!」


那珂「長門さんはどんな犬が好きですか?」

長門「……私は、」


水雷船隊「「「「?」」」」

長門「…………、……チワワだ」


吹雪「か、かわいい!」

睦月「海外犬!?」

川内「その手があったか!」

夕立「ん~~、いい~じゃないですか~!」

那珂「那珂ちゃんを差し置いて可愛さアピールとは!」


ヂェーン「お前らええかげんに話に戻ってこんかーい!」


夕立「で、この中に正解はあったっぽい?」

ハンター2「そんな犬、俺たち聞いたことあれへんわ」

睦月「……良く考えたらこの人たち外国の人だもんね」

川内「つまり海外の犬の名前かぁ」

吹雪「つまり、チワワな感じですね」

長門「吹雪! 掘り返すな!」

ギャラスキー「なんだったっけか。あの依頼者の名前……」





ターちゃん「ケルベロス」


長門「……!?」


ギャラスキー「それだ!」

ハンター2「おぉー! せやせや! ケルベロス! そんな名前やった!」

ハンター1「そうだそうだ! 間違いない!」


ターちゃん「やはり!」

ペドロ「ケルベロス、まだ生きていたのか」

梁師範「まったくしぶとさだけは一人前だぜ、クソッ」


吹雪「ける、べろす?」

アナベベ「…………うむ」

睦月「アナベベさん。それはその、どういった人なのですか?」

アナベベ「…………うむ」

睦月「? アナベベさん?」


アナベベ「うむ、ケルベロスとはだな……」

睦月「ケルベロス、とは……?」

吹雪「……」ゴクリ


アナベベ「……、だーれだっけ!?」

睦月・吹雪「「ありゃ」」スッテーン!



梁師範「お前は知っとけよ!」

ヂェーン「あんた、いつも肝心なとこ逃げてばっかりだから覚えてないんでしょ」

アナベベ「ぎくぅ! そ、そんなこと言わなくてもいいじゃないか! ド、ド忘れだよド忘れ! ダーッハッハッハ!」


川内「で。ケルベロスってなんなの?」


ペドロ「ケルベロスとは非合法な闇の医学組織の事です。世界中の科学者が集まって、非人道的な実験などをしていたんです」


梁師範「奴らの技術は恐ろしい。人間を強力なサイボーグにしたり、クローンで最強の戦士を作り出したり……。
    やつらの犠牲になった人間は数知れねえ。ヘドが出るような連中だぜ」


那珂「んー、そんな恐ろしい組織、聞いたことないけどなー」

ペドロ「当然です。当時奴らはMAXという、リングで人殺しも辞さない裏の格闘技団体と手を組んでいましたから。
    表の世界で奴らの名前を耳にすることはなかったと思います」


川内「なるほどねー。それでそいつらは結局どうなっちゃったの?」

ペドロ「最終的には俺や梁師範、そして先生たちとでやつらの思惑を打ち破り、MAXとケルベロスはCIAの制圧作戦によって
    完全に壊滅した。……と、思っていたんですが」


アナベベ「俺もいたけどね」
ヂェーン「いいから黙ってなさい」


梁師範「CIAの制圧を逃れた野郎どもが居た、ってことだ。なぁ、ターちゃん」

ターちゃん「あぁ」

ヂェーン「また、戦うのね? ターちゃん」


ターちゃん「ケルベロス……。あいつらのせいで、何人もの、何人ものかけがえのない命が失われた。そしてその命はもう戻ってこない。
      だから恨みなんて持ち合わせちゃいない。だけど……、」


ターちゃん「だけど! もし、ケルベロスが動くことで、また誰かが傷つき、死んでしまうかもしれないのだとしたら!」
      


ターちゃん「私は、奴らを放ってはおけない!!」グッ



梁師範「その通りだぜターちゃん! 今度は何をしようとしてるのかは知らねえが、また俺たちで返り討ちにしてやろうぜ!」

ペドロ「ええ! 俺も当然お供させてもらいますっ!」

アナベベ「俺もまぁ、イー感じのイー具合に手を貸したりなんだかんだ云々するぜ!?」

ターちゃん「うん! 皆! 絶対にケルベロスの好きにはさせないのだー!」



ターちゃんファミリー「「「「「おぉーーーーー!!!!」」」」」




アナベベ「よし、……で、だ」

ターちゃん「ん?」


アナベベ「結局、具体的にケルベロスは何をしようとしてるんだ?」

ターちゃん「……。……ぬぅう、具体的にケルベロスは何をしようとしてるんだ?」グヌヌ

アナベベ「お前のそういう勢いだけのとこ好きよ」

ターちゃん「あらヤダん」


夕立「その辺はもう既に把握してるっぽい~」

ターちゃん「え? 本当に?」

夕立「そっちで熱くなってる間に夕立たちが密猟者さんたちから聞き出したっぽい!」


ペドロ「あれ、ハンター共がいつの間にかのされてる」

睦月「中々話してくれないから、長門さんが頑張っちゃって……」

ペドロ「軍隊仕込みの尋問術か……」ゾゾゾ


ヂェーン「それでなんて言ってたの?」

吹雪「密猟者さん曰く、ケルベロスの関係者は『かつての同僚たちで集まって再起した海洋生物取扱い企業』だと自称していたようです」

ターちゃん「海洋生物……、というと」

ヲ級「ヲッ!」

ヂェーン「つまりヲ級ちゃんたちを研究材料に、なにかあくどいことをするってことね」


吹雪「恐らくは。で、詳細についてなんですが……」

長門「私から、話がある」

ヂェーン「長門ちゃんが?」


長門「あぁ。今遠征作戦の理由ともなった重要な事項だ。全員聞いてくれ」


川内「……」




長門「今作戦について、私が提督に聞いたことを全て話そう」










鎮守府・提督執務室//


回想。。。



長門「深海棲艦に不審な動き?」

提督「そうだ。昨夜の間にカスガダマ方面軍の司令から帝国上層部に連絡があったらしい」

長門「カスガダマか……。装甲空母鬼を倒して以来大した騒動のない場所だと思っていたが」

提督「あぁ、その通りだ。それにこの報告も大きな実害があったというわけでもなく、
   反攻作戦の動きをつかんだというものではないしな」

長門「そもそもあのあたりの深海棲艦は我々を含めた帝国海軍が完全に殲滅したはずだ。
   我が軍の脅威となるほどの深海棲艦が存在しているとは考えがたい」

提督「あぁ」

長門「ではなんなんだ? 実害もなく戦争準備でもない、不審な動きというのは」


提督「……、まだ確定ではないんだが、深海棲艦の『特攻』が何度か見られたらしい」

長門「何!?」


提督「始めは駆逐艦級、次に軽巡、重巡と来て、最近は戦艦級まで。事例こそ少ないが、
   その内容は大体、集中砲火にさらされる中、一切の防御姿勢を取らずただ突撃するというものだったらしい」


長門「それは……、不可解だな。深海棲艦といってもそのようにむざむざ命を捨てるような真似はしないだろう」

提督「俺もそう思う。中には砲撃の中、ただ棒立ちして沈められたという例もあったそうだ」


長門「……」

提督「それで現地に部隊を遠征させて、原因を調査してこいとのお達しだ。ちょうどいま手透きの第三水雷船隊に遠征を任せたい」

長門「……了解した。では旗艦の神通と打ち合わせておこう」


提督「あぁ、そのことなんだが、長門」

長門「なんだ?」


提督「今回の調査遠征隊、お前には第三水雷船隊の旗艦として、指揮を執ってもらいたい」

長門「なぜだ。あの艦隊は結束力がある。神通自身も能力のある艦娘だし、みだりに私と替えることで部隊内に不和を生みかねないぞ」

提督「……それに関しては申し訳ないと思っている。先のトラック泊地の反撃作戦を終えて間もない君に重荷を背負わすことに
   なるであろうことは重々承知している。しかし、長門。君が旗艦となってカスガダマ沖の調査を敢行してもらいたい」


長門「……。提督。私も長く貴方の秘書艦をしている。だから本件が機密事項であることは感づいているし、提督にも多くを
   語らないだけの理由があるのだろう。だが、それでも、提督の意見を聞かせてほしい」

提督「…………」

長門「…………」


提督「……、不審な行為をした深海棲艦共の沈みゆく姿を、間近で見た艦娘たちが何人かいてな。
   彼女たち曰く、それらの深海棲艦の頭部には謎の傷跡があったそうだ」

長門「傷跡?」

提督「あぁ。そして更によく見ると、額部分に何かの小さな機械のようなものが埋め込まれていたらしい」

長門「つまり、何者かが何かしらの施術した、と」

提督「そう考えていいだろう」


長門「馬鹿な! 現状どの国もそのような技術を有していないはずだ! もし深海棲艦に干渉できるのなら
   とっくに戦争が終わっている」

提督「そうだ。だからこの技術を持っているのは『国』じゃない。国から独立した『組織』なんだよ。
   世界中の科学者が秘密裏に結束し、ありとあらゆる実験を独自に積み上げていく組織……、」


提督「『ケルベロス』の仕業だと考えている」


長門「ケルベロス? 聞いたことがないな」

提督「1年前、裏の世界を騒がせた悪の秘密科学結社だよ。壊滅したがな。今回の事件はその残党の仕業じゃないかと俺は睨んでいる。
   もしそうだとすれば、この実験を放置すれば西方海域だけでなく帝国全体の、いや、世界全体の危機につながる」

長門「それほどに、か」


提督「あぁ。だが今回のお達しは『確認して来い』だ。それに俺の推理も、伝聞を伝聞で推理したような不確か極まりないものだしな。
   まさか主力を出すわけにはいかない。だが万一のために戦力は多い方がいい。よって、第三水雷船隊に、比較的俺の自由裁量で
   動かせる秘書艦である君をあてようと、そういうことだ」

長門「……なるほど、了解した。しかし、悪の秘密結社か。実に眉唾な話だ」

提督「まぁな。外れればいいと思っているよ」



長門「ケルベロス、か」










ジャングル・ターちゃんの家//



長門「しかしながら、現実は提督の不安が的中した形となった、と。そういうわけだ」


ペドロ「つまり深海棲艦たちを使って軍事作戦を行おうとしているわけですね」

長門「そういうことだ。他に質問などはあるか?」


川内「……」スッ


長門「川内?」

川内「なんで、特攻の事とか、もっと早く教えてくれなかったんですかね?」

那珂「ちょっと、川内ちゃん」

長門「構わない。最初は真偽不明で機密レベルも高い極秘作戦だったからな。皆に伝えられなかったんだ」


川内「いやぁまぁ理屈は分かりますよ。分かります。でもなぁー、もし教えてくれてたら
   昨日の海戦でも後れを取らなかったんじゃないか、って、思ったりしましてねっ!!」


那珂「川内ちゃんっ!!」




長門「…………」


川内「ごめん、ちょっと頭冷やしてくる」




吹雪「えっ、と」




長門「……以上だ。明日にはカスガダマ方面基地に向かう。全員体を休めるように」












ジャングル・ターちゃんの家付近//




川内「あー、夜はいいよねぇ」

那珂「現実逃避してないで戻ってきて」

川内「ごめん那珂。あーーー、なんであんなこと言ったかなー、私」

那珂「川内ちゃん懲罰房行きだね」

川内「怖いこと言わないでよ」

那珂「えへへ」


ガサガサ


川内「? 誰、……って長門さん!」

長門「ここにいたのか、川内、那珂」


川内「あー、えっと……」

長門「川内、さっきのことだが」


川内「さっきはすいませんでした!!」

那珂「長門さん川内ちゃんもこうして反省してるんで許してあげてください!!」

長門「え? あ、いや」


那珂「お願いします!」

長門「いや、その、なんだ」


那珂「長門さん?」

長門「……頭を下げるのは私の方だ」

川内「いやいや! 秘書艦かつ指導役でエース戦艦相手に偉そうな口聞いたのは私の方で、」

長門「前も言ったが、今の秘書艦は神通だ。畏まる必要はない」

川内「あー、うー」

長門「お前たちも神通が旗艦であった方が良かったとは思う。上官に出張られて、重要事項を隠されて、
   海戦でヘマをされたとあっては、反感を買われるのも当然だ」


川内「いや……」

長門「未知の戦法とはいえ、これは戦争だ。一回の判断ミスが一生の後悔になりかねない。
   だから、川内。私の指揮でお前に大けがを負わせてしまったこと、心から詫びよう。すまなかった」

川内「いや! それはいいんです! だって結局オジサンに治してもらえたし、こうしてピンピンしてますし!
   それに長門さんの判断を仰がず攻撃したのも私ですし。でも、あー、でもですね、」

長門「?」

川内「……なんていうか、私だから良かったけど、っていうか。もしあの時一番近くにいた吹雪が喰らっていたら、とか。
   夕立もそうです。後ろからの爆風だから艤装で済みましたけど、前から受けてたら、とか。睦月も、那珂だって。
   大破してたら、とか、考えちゃって」

長門「……」

川内「あー、今おかしなこと言ってるのは分かってます。でもですね、相手の出方が分からなかったあの時、もし一つの行動が
   変わってたら、例えば吹雪は轟沈してました。あの子は駆逐艦です。軽巡の私でああなったんだから、きっと」


長門「……本当に、すまなかった」


川内「なんていうか、大事な後輩なんです」


長門「あぁ」



川内「あと、睦月も、まだ如月のこと引きずってる節があるから、ここで親しい誰かが沈んだら、次はないです」


長門「……肝に銘じる」


川内「偉そうにごめんなさい。以上です」


長門「…………」

川内「…………」

長門「……」


川内「……、えっと」


那珂「はい! 仲直り! これでおしまい! ね?」



川内「え? あ、うん」

那珂「暗い、暗いよー! 川内ちゃんも長門さんも!」

長門「あ、私もか?」


那珂「もーあれだ! 歌いましょう!」


川内「おま、那珂。空気」


那珂「那珂ちゃんこんなジメジメした空気いやっ! よーし、皆で『恋の2-4-11』歌っちゃおー!」

川内「えぇ……」

長門「分かった。合いの手はどうする」

川内「長門さん!? え? 知ってるんですか合いの手!?」


那珂「えー、だって長門さんよく聞きに来てくれるよ?」

川内「い、意外だ。チワワといい、もしかして長門さんああいうカワイイの結構好k――」


長門「ん、んっ!」ゴホン

ジャングル・ターちゃんの家の中//


夕立「ぽーいぽいぽい」

イ級「イッ! イッ!」キャッキャ


ターちゃん「夕立ちゃんはイ級ちゃんと随分仲良くなったね」

夕立「他の深海棲艦は知らないけど、この子はじっくり話してみると中々愉快っぽい!」

ターちゃん「象やキリンやシマウマくんたちも、夕立ちゃんと話してて楽しいって言ってたよ」

夕立「夕立、外交官の才能があるのかもー!」


ターちゃん「夕立ちゃんには皆を惹きつける才能があるのかもしれないね」

イ級「イィー」

夕立「えへー」



夕立「でもターちゃんだってその才能あるっぽいよ?」

ターちゃん「ん?」

夕立「ターちゃん、私の妖精たちにすっごく評判良かったっぽい」

ターちゃん「妖精、……あぁ! もしかしてあの小人みたいな子たちかい?」

夕立「ぽい! というか見えるのね」

ターちゃん「なんか気づいたら居たのだ。びっくりしたけど気のいい子たちだったよ」


夕立「普通のは人間には見えないっぽいんだけど……、やっぱりターちゃんは人間辞めてるっぽい」

ターちゃん「それみんなによく言われるよ」

夕立「それでね。ターちゃん、夕立の艤装ピッカピカに磨いてくれたでしょ? 鏡みたいになってるっぽーい」


ターちゃん「なんかやり始めたら止まらなくなっちゃってー」

夕立「いいの。その頑張りに妖精たちも懐いたんだと思うっぽい。でね? ターちゃんをすっごく気に入った
   妖精さんが居たの。煤けた艤装をよくここまできれいにしてくれた、って。それでねー」


夕立「じゃーん!」


「!」ピョンピョン


ターちゃん「あ、妖精さんなのだ」

夕立「この子がターちゃんと一緒に居たいって言うっぽい。受け取ってくれる?」

ターちゃん「いいのかい?」


「!」コクコク


夕立「ターちゃんは妖精が見えるっぽい! だからきっと困った時は妖精に助けてもらえるっぽい!」

ターちゃん「それは安心だ。じゃあ、よろしくお願いするのだ」

夕立「一件落着っぽい! あ、長門さんには内緒よ?」



「!」ワーイワーイ



夕立「イ級ちゃんも内緒よ?」

イ級「イイッ!」コクコク


ジャングル・ターちゃん家の前//


<ポーイ!
<イーイ!


 わ い わ い

     が や が や



睦月「…………」


吹雪「? 睦月ちゃん?」


睦月「あ、吹雪ちゃん……」

吹雪「入らないの、って、あぁ。夕立ちゃんと……、か」

睦月「……うん」


吹雪「ねえ、睦月ちゃん。やっぱり、嫌、かな。深海棲艦と一緒に居るの」

睦月「…………」


睦月「……」コクン


吹雪「そっか」

睦月「私、夕立ちゃんがわからないよ。なんであんなに仲良くできるの?
   攻撃してこないかもしれないけど、でも、深海棲艦って、敵でしょ?」

吹雪「……」


睦月「敵と仲良くするなんておかしいよ。深海棲艦には、きs、仲間を、いっぱい殺されて、
   傷つけあって、してたのに」

吹雪「睦月ちゃん……」


睦月「今は大人しいけど、いつ攻撃してくるか分からないよ。油断させてるだけ。
   あいつらは、みんな敵――」

吹雪「む、睦月ちゃん!」



ヲ級「ヲっ?」ヒョコ



吹雪「! あ、ヲ級……、」

睦月「……!」


ヲ級「ヲーー?」パタパタ

ト級「トッ?」ヒョコ


吹雪「えっと、これは、その」

睦月「……」



ヲ級「ヲヲ、ヲッ!」トテトテ

ト級「トトーー」ドスドス




吹雪「あぁ、よかった。怒ってなさs――」


睦月「こないでっ!!!」



ヲ級「!」ビクッ

ト級「ト?」



吹雪「ちょ、ちょっと、睦月ちゃん」

睦月「……っ」ポロポロ

吹雪「えっと、」


ヲ級「ヲヲー……」オロオロ

ト級「ト、トト」チョンチョン

ヲ級「……ヲ」コク



ト級「……」ドスドス

ヲ級「……」トテトテ




吹雪「……、帰って行ったよ」

睦月「……」グシッ

吹雪「睦月ちゃん……」


睦月「ごめんね、吹雪ちゃん。私、今日はあの木の所で寝るね」

吹雪「あ、うん」

睦月「おやすみなさい」

吹雪「……おやすみ」


スタスタ






吹雪「…………」




















どこかの基地//



  「グルルルルルァァァアア……!!」





「司令! 実験体が目を覚ましました!」


???「あぁ、報告は受けている!」


「数日中とのことでしたが、まさかこれほど早く目が覚めるとは驚きです!」


???「サンプルの適合が上手くいった証だ! もはやこのバケモノに敵う者はいない!」


「制御装置も支障なし、いつでも行けます司令!」


???「あぁ、明朝より行動を開始する」


「ついに、我々ケルベロス再興の時ですね!」


???「あー、それなんだが、一度潰れた組織の名前を継ぐのは縁起が悪い。ひとつ俺が改名しようと思う」


「改名、ですか? どのように?」


???「恒星を卵の殻のように覆ってしまう仮説上の人工構造物。恒星の発するエネルギーすべてを吸収し、
    利用可能なエネルギーに変換する宇宙コロニーの計画を知ってるか?」


「……いえ、すみません」


???「アメリカの宇宙物理学者の考えた究極の宇宙コロニーだ。余すことなく、星が発生するエネルギー全てを
    利用し、自身の力とする。素晴らしいとはおもわないか? 自然や人を科学に利用するだけでなく、
    まさか星そのものを利用するとは」



「なるほど確かに! その通りです!」


???「科学者とはかくあるべきだ。身の回りにある森羅万象を利用し、利用し、利用し! そして目的を遂げなくてはならない。
    よって新たな組織の目的は、世界中の天才医学者が何の束縛もなく、この星の森羅万象を利用して、その才能を自由に
    開花させることができるようにすることだ! 倫理も、人の命も、全てを利用するのだ!!」



「す、素晴らしい! 司令! ならば、改名はどのように!?」



???「その究極の宇宙コロニーの名を頂く。そしてその第一歩たるこのバケモノにも、栄えある我が組織の名を分け与えるぞ」




「では!! 新たな組織の名前はっ!?」



???「闇の医学組織、『ダイソン・スフィア』だ!!」



「ダイソン・スフィア……!」






???「そして新たなるダイソン・スフィアの要として、こいつにはこの名を与える」










???「さぁ、暴れるぞ、ネオダイソン!!!」










戦艦水鬼「グォオォオオオオオオオォォォオオオアアアアアアアアア!!!!!!!!」


























中断。次回、戦闘開始。

読んでる人がいてくれたらありがとう。
こっからおよそ4万字。ラストまで一気に行きます。
再開は12時超えたら始めるつもりです。

じゃあ再開します!

ジャングル・ターちゃんの家//


早朝、、、


ウッキキー!






吹雪「う、うーん。猿の声で目覚める朝って慣れないよ……」パチ



ムクリ



吹雪「ふぁ……、ちょっと早く起きすぎたかな」




吹雪「でも二度寝もなぁ。ちょっと顔でも洗いに行こう」




水場//



吹雪「えぇっと水場はたしかこっちに、」



ヲ級「ヲ?」


吹雪「え? うわぁあ! ヲ、ヲ級、……ちゃん」


ヲ級「ヲヲヲー」ペコ

吹雪「え? あぁ、おはよう、かな?」ペコ

ヲ級「ヲッ!」パァ

吹雪「よかった、合ってるみたい?」


ヲ級「ヲー」チャプチャプ


吹雪「…………」



吹雪「ねぇヲ級ちゃん?」

ヲ級「ヲ?」

吹雪「昨日は、その、ごめんね? 色々と――」


ヲ級「ヲッ!」パチャッ

吹雪「わぷ!」


ヲ級「ヲ! ヲ!」パタパタ

吹雪「な、なんで水かけたの!?」

ヲ級「ヲー、ヲヲ。ヲ?」ナデナデ

吹雪「なんだろうこれ。仲直り、みたいな?」

ヲ級「ヲー!」

吹雪「ありがとうね、ヲ級ちゃん」

ヲ級「ヲッ! ヲヲヲッヲーヲ、ヲヲヲーヲ?」


吹雪「そ、そんなにいっぱい言われたらわかんないよ」

ヲ級「ヲー?」

吹雪「あはは」

ヲ級「ヲー。 ……ヲッ?」






ブゥゥゥウウン


吹雪「ん? この音。……あれって!」



零式水上偵察機「……!」フラフラ



吹雪「川内さんの零水!!」



ジャングル・ターちゃんの家//




長門「カスガダマ基地が攻撃を受けているだとっ!?」



川内「はい、さっき戻ってきた水上偵察機がそう報告してました」

長門「連絡用として海岸に待機させておいたんだったな。那珂の方のゲタバキはどうしている?」


那珂「距離の問題もあって今は通信できてませんけど、川内ちゃんの零式水偵ちゃんから聞いたところ、
   カスガダマ方面本拠地のH地点を偵察してくれているはずです」

長門「くっ、あそこが落とされればまた西方海域での制海権争いが始まってしまう!」


吹雪「長門さん、もしかしてこれはケルベロスの仕業なんでしょうか?」

長門「恐らくはそうだろう」


吹雪「だとすれば、相当計画された攻撃です。早急に動かないと、一帯の制海権が奪われ、
   私たちもここから動けなくなります!」

長門「あぁ、今すぐにでも海へ出よう!」

睦月「ちょ、ちょっと待ってください! 海からここまでターちゃんの足でも何時間もかかったんですよ!?」

夕立「今から数時間でも遅いのに、夕立たちの足で走ってたら手遅れっぽい!」

吹雪「う、それは、確かに」


ターちゃん「大丈夫だ!」


吹雪「ターちゃん?」

ターちゃん「皆、このリアカーに乗ってくれ」

夕立「もー! だからリヤカーで向かっても間に合わないっぽい!」

ペドロ「大丈夫です! アテがあります!」

ヂェーン「良いから全員乗りなさい」

ヲ級「ヲッ!」ビッ

梁師範「あのバカもたまには人の役に立たねえとな」

ジャングル・湖//


アナベベ「で、俺んとこに来たと」

梁師範「お前確かヴァンパイアの国でケルベロスからヘリかっぱらってきただろ? あれ使うぞ」

アナベベ「やれやれ梁ちゃんよぉ、簡単に行ってくれるけど、アレ一回使うのに費用がどれだけ、」

ヂェーン「この豪邸をあばら家に変えられたくなかったら言うこと聞きなさい、アナベベ」パキポキ

アナベベ「脅し怖ぇえええええ!」



吹雪「アナベベさん! どうしても早急に海岸まで行かなくちゃいけないんです! おねがいします!」


アナベベ「……ったく、わーったよ」


イ級「イィイーッ! イイイイッ!」

アナベベ「よせよ、俺はそんないい人だなんて甘ちゃんじゃねえ」

吹雪「ほんと、よく言葉分かりますよね」


川内「へぇ~、これがそのヘリかぁー」

吹雪「思ってたより本格的、っていうか、これ本物軍用ヘリですよね」

アナベベ「おうよ。最大速度270km! こっから海岸まで片道一時間ちょっとで行ける!」

夕立「この豚の絵はなぁに?」

アナベベ「俺が書いたエンブレムだ!」


ターちゃん「よぉし、これに乗って行けば間に合うぞ!」

アナベベ「……それはいいんだけどよ。ターちゃん。皆で行くのか?」

ターちゃん「あぁ!」

アナベベ「そうかー、なるほどなー、って思いっきり定員オーバーじゃねーかっ!!」

ターちゃん「前も耐えたのだ! いける!」

アナベベ「前は5人で死にかけたんだぞ! 今回14人てなんだよ! 無理だろ!!」

梁師範「その分死ぬほど近場だろ。死ぬほど頑張れ」

アナベベ「できねえよ!」


ターちゃん「うぬぬ」

アナベベ「ったく……。……あ、そうだ。これ使えばいいじゃん」

ペドロ「ん?」


アナベベ「以前大量の果物運ぶ時に使ってな。こいつを使えば万事解決だな!」


夕立「まさか……」

ト級「トォー……」


アナベベ「ヲ級達はこうやってジャングルまできたんだろ? ならいけるいける」





ヘリ運転席//



アナベベ「いやー快適快適♪」





----------------------------------
コンテナ内//


グ ワ ン グ ワ ン



吹雪「ヘリにコンテナ吊るして人員輸送とか!」

夕立「死ぬっぽい~!!」

睦月「よ、酔うよこれ!」

那珂「ていうかヘリの安定性悪すぎーっ!」


アナベベ『おいおい、一気にしゃべるなよ。無線にはゆっくり落ち着いて一人一人話せ』



川内「滅茶苦茶揺れるんだけど!?」


アナベベ『まぁ輸送用ヘリじゃないしなぁ』


夕立「これ人がのっていいやつじゃないっぽい」


アナベベ『大丈夫大丈夫。お前らもターちゃんらもヲ級らも、そこにいる奴全員人間とちょっと違うから』


睦月「よ、酔う~~!」


アナベベ『着いたら吐けい!』


ヲ級「ヲッ! ヲッ!」


アナベベ『をっををー?』



「「「「アナベベ着いたら覚えてろ!(ヲッ!)」」」」



-------------------------------------------
ヘリ運転席//



アナベベ「はーい、通信終わり♪」ブチッ





ビーチ・岩場//


睦月「うっぷ」

吹雪「う、大丈夫? 睦月ちゃん」クラクラ


川内「おいゴラァ! アナベベー! 降りてこぉーーい!!!」


夕立「そうよ! 素敵なパーティしてあげるっぽいぃっ!!!」


アナベベ『やーだよーー! 誰が殴られに降りてやるかっての!!
     金持ちの俺はお前らを高所から見下ろす権利があるのだ、ダーッハッハッハ!!』


川内「うぅ~~!! 撃ち落としたいいーーー!!!」


ヲ級「ヲ~~~~」フラフラ

イ級「イ~~」グテー



長門「連絡はどうだ?」


那珂「さっきコンテナ内で零式水偵ちゃんから連絡が来ました。戦況は、かなり厳しいようです。
   同時多発攻撃で、あちこちの基地が壊滅状態になっていて、基地同士の連絡もおぼつかない、って」

長門「壊滅状態か……」

那珂「H地点も、時間の問題かもしれません」


長門「相当な兵力だろう。概算でいい、敵はどれくらいの数だ?」


那珂「情報が錯綜していて詳しくは分かりませんが、深海棲艦は数百単位、最悪、1000に届く位いるようです」


長門「1000、隻……」


那珂「それらが一斉に攻勢をかけたみたいです」

睦月「そんなの、帝国海軍総出でもどうにかできる攻勢じゃないですよ!」

夕立「あー、もう! これじゃあ全滅っぽい!」

川内「弱音を吐くなー! 夜まで待てば勝てる!」

夕立「まだ明け方っぽい!!」


吹雪「……、おかしい」

夕立「! 吹雪ちゃん! 何かわかるっぽい!?」

吹雪「いや、わかんないけど……」

睦月「吹雪ちゃん座学得意だから大丈夫だよ! 何が分かったの!?」

吹雪「いや分かったって言うか……」

長門「吹雪、気づいたことがあるなら言ってくれ。このまま戦えば我々は負ける。
   そしてこの海域はまた奴らの手に落ち、また多くの犠牲が生まれるんだ」


吹雪「……わかりました。那珂さん!」

那珂「? 私?」


吹雪「零水が敵の攻勢を観測したって言ってましたよね? どんな感じだったんですか!?」

那珂「分かんないけど、緻密な陣形で包囲され、苛烈な攻撃で基地が壊滅したとしか」

吹雪「……、うん、やっぱりおかしい」


夕立「んー、もう! 一斉攻撃したら苛烈なのは当然だし、やられるのも当たり前っぽい!!」

吹雪「それだよ!」

夕立「ぽい?」


吹雪「だって、今の今まで全然攻撃してこなかったんだよ? 隊列も組んでないし、攻撃もまともにせずに
   一方的にやられるような行動しかとれなかったんだよ? それがいきなり緻密な陣形を組んで、
   一斉に攻撃し始めた。これって変じゃない?」


夕立「……ぽい?」


睦月「それは洗脳する装置があったからなんじゃないかな?」

吹雪「んと、その装置なんだけど……、あー、夕張さんがいてくれたらよかったんだけどなぁ……。
   自動で操ってこんな風に、なるのかな、って。そういうのって難しくないかな、って」


川内「んもー! 吹雪! 簡潔に! 分かりやすく!」


吹雪「えっとつまり! えぇと、それぞれの深海棲艦は予め受けた命令をもとに自律行動してるわけじゃなくて、
   逐次命令を受けてるんじゃないかって!」

川内「ほうほう?」


吹雪「今まで隊列も組まず動かずに沈んだりしてたのは命令を受けていなかったから、
   逆にこうまで緻密に動き出したのは、今まさに、統括する人間の指示を逐次受けているからなんじゃないですかね?」

那珂「なるほどー」


夕立「だとすればどういうことっぽい!?」

吹雪「だとすれば、指示をする人間がいて、その命令を全体に届かせる、例えば強力な電波を送る施設が必要です。
   ですが一つのアンテナから出せる電波の出力には限度があります。なら、恐らく、その施設はこの付近にあるということです」

川内「つまり!?」


吹雪「敵の基地を見つけ出し、電波装置を停止させれば、深海棲艦の攻撃は止むということです!」


夕立・川内「「 わかりやすい! 」」



吹雪「と、おもった、んですが……。正直推測の域を出てないので何とも……」

那珂「ううん、吹雪ちゃん、多分だいせーかい♪」

吹雪「え?」

那珂「この先の海岸から東に大体4~50kmのところの島に、あっやしー電波塔があるよ♪
   って、たったいま零式水偵ちゃんから連絡があったの」


長門「ならばそれが、敵の本拠地か」

那珂「はい! おそらく!」


睦月「やったね吹雪ちゃん!」

夕立「お手柄っぽい!」

吹雪「えへへ」


川内「さすがー、私が育てた特型駆逐艦・吹雪なだけあるねー!」

那珂「川内ちゃん全然意味わかってなかったくせにー♪」

川内「うっさい!」


ターちゃん「話はまとまったかい?」

梁師範「とりあえず、簡潔に、俺たちのやることを説明してくれ」


長門「あぁ、これより全員で敵の本拠地を――」



ゴゴゴゴゴゴゴ……



長門「なんだ!?」

ヲ級「ヲッ!」

ヂェーン「見て! 海が割れてるわ!」




???『はははははっ! この混乱の折によくそこまで推理で来たな、帝国海軍の艦娘共』





ペドロ「!? この声は……、まさか」

梁師範「あぁ、聞き覚えがあるぜ」


???『覚えていてくれて嬉しいよ。俺も忘れたことはない。ずっと貴様たちに復讐をしたいと思っていた。
    あの暗く湿った檻の中は辛かったぞぉ……、なぁターちゃんよ』


睦月「何者なんですか!?」

ヂェーン「……あたしたちが戦ってきたなかでも屈指のクソヤローよ」



夕立「!? 海から何か出てきたっぽい!」

川内「なに、あの大きさ……!?」

ペドロ「10メートル、いや、もっとありますよ!」





戦艦水鬼「ゴォォォアオオオアオアオアアオアアアアアアア!!!!!!!」






長門「馬鹿な、あいつは……!」

ターちゃん「また、貴様はっ! 勝手な都合で人を傷つけたのか!」




???『帝国の娘どもと共に、この海に沈めぇえ!!!』



ターちゃん「許せないぞ!!!」





ザパァーン!!









ターちゃん「エドガーぁぁぁああああああああああああ!!!!!!!!」




エドガー『死ねぇぇええええ!!!! ターちゃぁぁあぁあああああああああああん!!!!!!!』








   ド ゴ ォ ン ! !

















ビーチ・上空//


バババババババババ





アナベベ「おいおいおいおいおいおい……」


アナベベ「おいおいおい! おい!!」



アナベベ「急に海が荒れたと思ったらなんだよアレ、なんだよバケモン!!?」



アナベベ「拳一発で地形が変わってんじゃねえか!!!」




アナベベ「おい! ターちゃん! ガキ共! 応答しろ! 聞こえてるか! 生きてるか!? どこいった!?」



ビーチ・岩場//



ペドロ「大丈夫ですアナベベさん、全員無事です。いま岩場に隠れてます」


ト級「トッ!」



アナベベ『なんだそうか! それならよかった……。それよりあのバケモンはなんだ!?
     あの巨体! あの見た目! あのパワー! どう見ても強そうだぜありゃ』


ターちゃん「とっさに避けはしたけど、恐らくあの拳まともに直撃したら私でも相当やばいのだ」

アナベベ『ターちゃんでもやばいのか。一体ありゃ何者だ?』


長門「あれは、戦艦水鬼。火力・耐久・装甲、どれをとっても冗談のような数値を誇る、深海棲艦でも最強の怪物だ」

睦月「戦艦水鬼!? あれが!」

吹雪「あれが、帝国海軍の精鋭が総攻撃の末に倒したと言われている深海棲艦……!!」

川内「機密だからって、反撃作戦に参加してない私たちは名前しか知らされてないけど、あんな馬鹿でかい奴だったんですね」


長門「いや、トラック島で相対した時は、強力ながらもあそこまでの威力はなかったし、大きさも、もっと3メートルくらいだった」


那珂「ということは、もっと強くなってるかも、ってこと……?」


長門「そして何より、前はあの怪物を従える黒ドレスの深海棲艦が居たが、今はいない。
   また、逆にあの怪物の背中についている馬鹿デカイ甲羅の様なものはなかった。見た目の差異はこれくらいか」


アナベベ『よくわからんが、知り合いの怪物が更に怪物になってきたってことか』



ターちゃん「そして恐らく操ってるのはエドガーだ」


アナベベ『エドガー? ……あぁ! あのヴァンパイヤ王国の時にダン国王を操ったくそ科学者か! でも幽閉されてたはずじゃ……』


ターちゃん「どうやったかは知らない。だけど、間違いなく奴はいまここにいる」


アナベベ『ケッ、あの野郎、人に迷惑しかかけねえな』


梁師範「アナベベ、上空から見て、そっちはどうなってる」



アナベベ『今か? 今は洗脳された深海棲艦がウヨウヨあつまってきてるぜ。どうするのか知らねえが、
     早く動かねえと俺たち防戦一方だぜ』


ターちゃん「なるほど。だとしたらここで別れた方がいいかもしれない」

梁師範「だな。基地攻略は俺が行こう。悪いがこの海辺の戦いで俺が活躍するとは思えん」

ターちゃん「そういや梁師範ってカナヅチだったのだ」

梁師範「しーっ! 今のタイミングは恥ずかしいから隠しといて!」

夕立「聞こえてるっぽい」


ターちゃん「ペドロも頼まれてくれるかい?」

ペドロ「押っ忍! 俺も梁師範と共に基地攻略に行きます!」

ターちゃん「アナベベ、お前は空からエドガーと戦ってくれ」

アナベベ『ったく、このヘリもミサイルも幾らするとおもってんだ』

ペドロ「いやそれ盗ったヘリじゃないですか」

アナベベ『もう俺のもんだもーん』




ターちゃん「それから……、ヂェーン、君はここから離れるんだ」

ヂェーン「嫌よ」

ターちゃん「危険だ」

ヂェーン「巻き込まれたって大丈夫よ。無視して自分のやることやりなさい」

ターちゃん「でも……」

ヂェーン「あぁもう! だったらあたしを守りながら頑張んなさい!! あたしはここを動かないからね!」


ドッカリ



ターちゃん「うーん、困ったのだ。こうなるとヂェーンは手が付けられないのだ」


ヂェーン「そうよ。だから早くエドガーを倒してらっしゃい」

ターちゃん「でも本当に危険だよ?」

ヂェーン「くどい! 大体今まで何回も危険な目にあってきたっちゅーねん!」

ターちゃん「……」


ヂェーン「大丈夫よ」

ターちゃん「……、わかった。でも危なくなったら逃げるんだよ?」

ヂェーン「はいはい」


ターちゃん「そっちは決まったかい?」


長門「あぁ、速力と攻撃力から判断して、私・吹雪・睦月を対深海水鬼に、川内・那珂・夕立を基地攻略に回す」

ペドロ「失礼ですが、お二人の攻撃があの巨体にきくでしょうか?」


吹雪「私と睦月ちゃんは速力が高いので、基本ヒットアンドアウェイです」

長門「ダメージを与える仕事をするのは私だ」


長門「そして敵基地を把握できる水零をもっている軽巡二人と、現在艤装損傷により海戦が困難で、
   かつ二人の速力と同じくらいの夕立が基地攻撃に回る。今ある限りの戦力を活かせば、これが最善だ」


ペドロ「なるほど! 夕立ちゃんも、例え武器が無くても、並みの銃弾はきかない身体ですもんね! 通常戦力としては十分です」



長門「つまり、基地攻撃組が川内、那珂、夕立、梁師範、ペドロの5人」


ターちゃん「エドガーと戦うのが私とアナベベ、吹雪ちゃん、睦月ちゃん、長門ちゃん、それからヲ級ちゃんたち3人の、8人だね」



長門「深k……、ヲ級たちも攻撃に参加するのか」

ターちゃん「一緒にジャングルと海の平和を守ってくれるみたいだよ」

長門「彼女らにしてみれば洗脳されているとはいえ僚艦だと思うのだが」


ト級「ト! トーッ!」

ヲ級「ヲ! ヲヲ!」

ターちゃん「この辺の仲間はあんまり知らないんだって。だから洗脳されてるのはかわいそうだけど、
      僕たちを守るのが優先みたいだ」


イ級「イッ! イイッ!」


ターちゃん「後、洗脳を解くまでの時間稼ぎだから、って言うのもあるみたい。出来る限り助けてほしいみたいだよ」


イ級「イッ!」
ト級「トッ!」
ヲ級「ヲッ!」


長門「……、承知した。川内!」

川内「はいっ!」

長門「基地攻略組の旗艦として、即座に、必ず、洗脳装置を破壊しろ!」


川内「了解!! こうまで期待掛けられちゃうと燃えるよなぁー! 全員! 最大船速で向かうよーっ!!」

那珂「おーっ!」


長門「作戦開始っ!!!」

ビーチ・海上//


ザザーン……


エドガー『出てこいターちゃん!』



ザザーン……


エドガー『……』



ィイイン


???「……」スッ




エドガー『 ! そこだ! 撃てぇっ!!』



深海棲艦「「「―――」」」ドン! ドォン! ドン!



???「――っ!」



ドガァン!




エドガー『やったか! ……いや、あれは!』


長門「……」グッ


エドガー『帝国海軍の戦艦級か!』


長門「エドガーとかいったな。この程度か!」



エドガー『旗艦がなぜ出張って、……ん?』







ザザザザー


梁師範「泳げない俺が悪いとは思ってる! だがおんぶは止めてくれ! 俺のプライドが……」

川内「カナヅチの時点でプライドもなにもないっつの! いいから大人しくしてよ!」

梁師範「うぅ、一回り下の女に背負われるなんて……」

ペドロ「僕も男としてちょっと居心地悪かったり……」

那珂「何々~? 那珂ちゃんの背中が不満~?」

ペドロ「い、いえそういうことでは。ただ僕は泳げる分、より申し訳なくて」

夕立「どうせ泳げても人間が35ノットで泳げるわけないし仕方ないっぽい」





エドガー『チッ、今の攻撃の隙に乗じたか。深海棲艦共! 追え!』





夕立「うぁ、気づかれたっぽい!」

川内「撒くよ! 最大船速ーぅ!!」

那珂「りょーかい!」


ザザザザー……





エドガー『くっ』



長門「戦艦を目くらましにするという戦法、勉強になったよ」


エドガー『意趣返しのつもりか戦艦級! ならば直接拳で葬ってやる!!』


吹雪「当たってー!」ドォン! 
睦月「えい!」ドォン!




エドガー『ちぃ、猪口才! 手駒共! あの駆逐のガキを沈めろ!』バス、ビス


吹雪「睦月ちゃん! 引くよ!」
睦月「うん!」


エドガー『逃げられると思ったか! 戦艦タ級! 回り込め!』

タ級「――」ゾゾゾ


エドガー『手駒共! あのガキを横に逃がすな!』


睦月「吹雪ちゃん! 回り込まれちゃったよ!」
吹雪「! 大丈夫! まっすぐ走って!」


エドガー『タ級! 仕留めろぉ!』



ターちゃん「うぉおおおおおおお!!!!!!」バキ!

タ級「――」ガク ドォン!


睦月「主砲殴って砲撃をそらした!?」

吹雪「睦月ちゃん、このまま包囲を抜けるよ!」



タ級「――――」

ターちゃん「うぅ、腰のそれ、殴っちゃってごめんなのだ」



エドガー『馬鹿な! ターちゃんめ、どうやって海の上に立ってるんだ!?』


ターちゃん「簡単なことだ、私の下を見ろ!」


エドガー『あれは、駆逐イ級!? そうか、ターちゃんの奴、駆逐イ級をサーフィンのように足場にすることで
     海上での戦闘を可能にしたのかっ!』

ターちゃん「動物と心を通わせあえば、このくらいなんてことないのだ!」




エドガー『考えたな。だが、その不安定な足場でどこまで戦える? そして何より貴様たちは今、』






戦艦水鬼「グルルロォオオ!」




深海棲艦「―――」

     
     「―――」   

            「――」        「-」
                  「――」        「―――」
       「―――」               
               「―」  「―」
        「――」           「―――」
 「――」          「――」           「―」

        「―――」       「―――」   「――」
             「―」  「――」         
    「――」                      「――」
             「―――」        「-」

   「―――」
            「――」        「-」
                  「――」        「―――」
        「――」           「―――」

 「――」          「――」           「―」

        「―――」       「―――」   「――」
             「―」  「――」         
    「――」                      「――」
             「―――」        「-」

   「―――」






エドガー『圧倒的に、物量負けしているというのに』






ターちゃん「……」
長門「くっ!」





エドガー『手駒共。じわじわ包囲し、なぶり殺しにしろ』




ビーチ・砂浜//


ヂェーン「ちょっと! なによあの数! 反則じゃないの!?」

アナベベ『やべえぞドンドン増えてやがる』

ヂェーン「アナベベぇ! あんたのヘリにミサイル沢山ついてんでしょうが! 撃たんかい撃たんかい!」

アナベベ『んなもん焼け石に水だっつの! ペドロたちが何とかするまで待つしかねえよ!』

ヂェーン「くっそう! 見てるだけなんて歯がゆいわね……!」

アナベベ『そうはいっても……、――おい! ヂェーン!!』

ヂェーン「なによ?」

アナベベ『前見ろ前!』

ヂェーン「前? なにg――」



リ級「――」
ホ級「――」


ヂェーン「 ぎ ゃ ん ! ? 」




アナベベ『上陸してきやがった! ヂェーン逃げろ!』

ヂェーン「あんたが何とかしなさいよ!」

アナベベ『んなことしたらヂェーンごとフッ飛ばしちまうぜ!』

ヂェーン「役に立たないわね!」



ホ級「――」ギギギ


ヂェーン「ちょ、まっ」


ホ級「――」ドォン!



ヂェーン「ぎゃっ!」ピョン!



チュドン!




ヂェーン「あ、危ないじゃないの! 弾当たったら人間は死ぬのよ!?」

ホ級「――」

ヂェーン「ぐぬぬ……」

アナベベ『いいから逃げろって! ターちゃんにも言われたろ!』

ヂェーン「……、仕方ないわね」

ヂェーン「……」フゥ




ヂェーン「あらー! そこのあなた! ステキなファッションしてるわねー流行り?
     この黒髪綺麗ねー、でお胸も大きくて、もしかしてモデルやってらっしゃるー?」サワサワ



ホ級「――――」

リ級「――」




アナベベ『おい、何やって……』


ヂェーン「羨ましいわー、痩せてらして。あたしも最近ダイエットしたんだけど全然痩せないのよねー。
     チーター育てたりとか色々試してみたんだけど、全然痩せなくって……、」

ホ級「―――」ギギギ


ヂェーン「でもかわりにねー、」グッ


ホ級「- 」


ヂェーン「どっせーーーい!!!!」ポーイ!




ひゅるるるるるる



どっぽーん!





ヂェーン「身体、すんごい鍛えられちゃったのよチクショーーー!!!!」




ホ級「」プカプカ




ヂェーン「痩せるためのダイエットしたはずなのに、バーベル片手で挙げられるくらい筋力がつくわ、
     走ったら96km/hも出るわ、シバいたらターちゃん殺しかけるわ、ってもう散々よ……。
     未だにマイケルジャクソンの顔がプリントされた服着ても小錦の顔だと間違えられるし!!」


リ級「―――」


ヂェーン「あんたはスレンダーでいいわよね。おっぱいも全然ないけど」


リ級「―――」ギギギ、ガコン



ヂェーン「来んかい小娘! あたしはターちゃんみたいに優しくないわよ!!」



ニヨロロ島付近・海上//




那珂「川内ちゃんあれ!」

川内「あの島かぁ。確かになんか電波塔見えるね」

梁師範「あいつらケルベロスは崩壊する前もこうやって孤島に施設立ててたからな。
    悪の科学者とやらは皆考えることが同じなのかね」

ペドロ「なんとか乗り込みたいんですけどね……」

夕立「深海棲艦が無茶苦茶いるっぽーい!!」




               「―」  「―」
        「――」           「―――」
 「――」          「――」           「―」

        「―――」       「―――」   「――」
             「―」  「――」         
    「――」                      「――」
             「―――」        「-」




川内「これどうしようね」

那珂「人気アイドルの出待ちってこんな感じかなぁ」

夕立「全員武器持って待機してる出待ちとか嫌すぎるっぽい」



ペドロ「! 見てください! 島の陰から、船が!」

川内「なにあれ、戦艦? でもなんか色々ゴテゴテついてるなぁ……」


梁師範「察するに、ここから逃げようって腹積もりか」

川内「この戦力差で逃げるとか臆病ってレベルじゃないよね」

那珂「つまり、ぜーったいに、万が一でも、攻撃されるとマズイものを持って逃げ出した、ってことだよね?」


ペドロ「要するにあれを抑えればいいわけですね」

那珂「分かりやすくていいねっ♪」


夕立「でも、あれ戦艦のくせに結構速いっぽい!」

川内「30はでてるね……。さっさと追いつかないと」

夕立「でもこのすごい数の深海棲艦が邪魔でどうしようもないっぽいー!」

那珂「この数を壁にされちゃうと無理に突破しても包囲されちゃうよね」

川内「なんとかして殲滅させなきゃだけど……」



梁師範「安心しろ、お嬢ちゃん」

夕立「ぽい?」

梁師範「俺が年頃の小娘におんぶされるだけのお兄さんでないことを見せてやる」



ポワ……



那珂「それ! 川内ちゃんの怪我を治した気のやつだ!」




梁師範「あぁ、だが、これは治すんじゃないぜ」






梁師範「!」グッ





梁師範「 煉精化気 」




梁師範「 煉気化神――! 」







梁師範「百 歩 神 拳 !!」ゴウ!!!!







   ド オ ォ ッ !!!







深海棲艦「」




川内・那珂・夕立「「「 ・・・・・ 」」」ポカーン




梁師範「これでいい。さっさと追うぞ」

夕立「い、今のは?」

梁師範「百歩神拳。俺の奥義だ。内側の気のエネルギーを収束させ、帯状に打ち出す技、簡単に言えば、」

川内「ビーム! ビームだ! 手からビームが出た!!!」

梁師範「……そういうことだ」


川内「オジサン凄いじゃん! ホントに人間!? 中国拳法ってそんなに凄いの!?」

梁師範「フッ、当然だ。だが並みの拳法ではこうはいかない。秘奥たる白華拳を学び、打ち込み、極めて、
    その中でもようやくごく一握りの人間ができる究極奥義だ。そうそう真似なんざできねえよ」

川内「すごい!! 私もこれ覚えられたら最強じゃん!」

梁師範「だから奥義だって言ったろ。そう簡単に出来ねえよ。それに短所もあるしな」

川内「短所?」


梁師範「気が、ほとんどなくなってしまうこと、だ……」ガク

川内「オジサーーーーン!!!」


梁師範「悪いが全力で掃討したからな、動けねえ。川内の嬢ちゃん、引き続き頑張っておぶってくれ」ヨロヨロ

夕立「なんか色々台無しっぽい!」



川内「よぉし活路は開けた! 今からあの前方のゴテゴテした戦艦追いかけるよ! 夕立、オジサンを頼むね」ヒョイ

夕立「ぽい? うわわ!」グラッ

川内「うーん、ちょっとバランス悪いかー。でもこの後も連れて行くのは邪m、危険だしなー」

梁師範「邪魔っていったろう!」

夕立「そうだ! お姫様抱っこにすれば持てるっぽい~!」

川内「それいいじゃん! それでよろしく!」


梁師範「ちょっとは見た目に気を使ってよね!」


ビーチ・海上//




深海棲艦「「「―――」」」ギギギ、ガコン



   ドン!    ドゴン!
ドォン!  バァン!       ドン!ドン!

           チュガン! 
       ドン!  
   ドゴン!        ドォン!

        ゴォン!
 ドン!  ダン!      ダアン!  

          ドガン!      ガァン!
  ボォン!






長門「10時方向、最大船速ーーーーっ!!!!!」ゴォッ




ボーン! ドォーーン!!




ターちゃん「皆! 大丈夫か!?」

吹雪「ゲホ、な、なんとか!」




睦月「でも、無茶な機動が連続してて、機関の疲労が酷いです!」

吹雪「それに補給ができてませんでしたから、応戦の弾薬と、回避のための燃料がなくて、
   継戦は既に困難な域に達しています!」

長門「このままでは、いつ食い殺されてもおかしくないか……」

吹雪「! 上空! 敵機来ます!」

ターちゃん「いや、大丈夫だ!」



ブゥウウウン



ヲ級艦戦「!」ダダダダダ!

敵戦闘機「」ドカァン!


吹雪「ヲ級の戦闘機!」

ターちゃん「ヲ級ちゃーん! ト級ちゃーん! そっちは大丈夫かい!?」

ヲ級「ヲッ! ヲッ! ヲーッ!」パタパタ


ターちゃん「戦闘機の素材? よくわからないけど、この飛行機を飛ばす素となるものが足りないみたいだ。
      ヲ級ちゃんの支援もかなり厳しくなりそうだね」

ト級「ト、トトト! トッ!」ブンブン



ターちゃん「後方からの攻撃もそろそろ尽きるから、合流したいそうだ」

睦月「えっ」

ターちゃん「なんだい?」

睦月「い、いえ」

長門「そうだな……。各個撃破されると不味い、っちぃ!」ドォン!


ヘ級「」ボガァン! ズズズ


エドガー『逃げの一手とはつまらないなぁ。帝国海軍は勇猛と聞いていたんだが?』


深海棲艦「「「「「 ――― 」」」」」ギギギ、ガコン




長門「くっ!」


エドガー『ターちゃん! じわじわと殺される感覚はどうだ? じっくり楽しんでくれよ?』

ターちゃん「それが俺に対する復讐か、エドガー!」


エドガー『あぁそうだ! そうだとも! 馬鹿な部下共と一緒くたにして、
     俺をあの暗くて恐ろしい檻の中に一年も閉じ込めた! 貴様への復讐だ!』


ターちゃん「お前、そんな檻からどうやって逃げ出したんだ!」
  

エドガー『フン、食事に出されたスプーンで岩肌を削り続けたんだよ。毎日毎日、出されたスプーンでな!
     だから大好きなカレーが出ても泣く泣く諦めてそのスプーンを使って掘り続けたんだ!
     カレーだぞ! 美味しいカレー! おかわりもあったのに!!!』


吹雪「……、部下の人のスプーン使って食べればよかったんじゃないですか?」


エドガー『関節キスなどできるかっ! ただでさえ男が一年牢屋にいるんだぞ! 溜まるモノも溜まってるのに!
     見た目の良い俺が性の対象になったらどうするつもりだっ!!』



睦月「うわわ……」カァ




エドガー『まぁ、あんな地獄の話はいい。今を生きよう。……ターちゃん!』

ターちゃん「なんだ!」

エドガー『実はさっきまで攻撃を緩めていたんだ。だがこれからは容赦しないからな』

睦月「なんでそんなこと……」


エドガー『少し意識を別の所に向けていたんだよ。だがそのおかげで、
     たった今、カスガダマ沖の軍司令本拠地であるH地点が陥落した』


長門「なんだと!?」

エドガー『この意味がわかるか? そこの賢しい小娘』


吹雪「……、カスガダマ本拠地を攻略した深海棲艦の大戦力が、ここに増援にくる!」


睦月「そんな!」

エドガー『正解だ! 貴様は中々頭が回るな。もし生きて鹵獲できたら何かと使ってやろう』

吹雪「絶対に嫌です!」


エドガー『強がるな。今から来る手駒の数は1000体にも上る! 止めようがあるまい?』

吹雪「……っぅ」


ターちゃん「大丈夫だ吹雪ちゃん。信じて耐え抜こう!」



エドガー『さぁ、再び総攻撃だ! 撃ち殺せ!!』




長門「全艦退避っ!!」




ビーチ・砂浜//



ヂェーン「どっこいしょーー!!」バゴン!


リ級「――」


ヂェーン「効きなさいよっ!」バチーン!


リ級「――」


ヂェーン「ちっ!」


リ級「――」ギギギ、ガコン



ヂェーン「ヤバ!」バッシャーン!




ドゴォン!!





ヂェーン「あ゛ぁーー! 超危ないんだけどこの子!!」


リ級「――」クルッ



ヂェーン「……殴っても効かない、攻撃は当たれば死ぬ、か」


ヂェーン「よし、やっぱり、ターちゃんに言われた通りに逃げるとするか!」



リ級「――」ギギギ





ザ


ヂェーン「ちょっと! あんた! 聞きなさい! よーく聞きなさい!!」





リ級「――」ピタッ


ヂェーン「わかった! あんたは強いわ! なんか他と違って赤いし? エリート様って感じじゃない?
     だからよく聞きなさい! 私は降参! 今から森に帰るから! ここは好きにして!」

リ級「――」




ヂェーン「聞こえたかしら? 私は、逃げるから! 聞こえたわね? 信じるからね?」


ヂェーン「頼むわよ!!」ドヒュン!



リ級「―――」ガコン、ドォン!




ドカーーン!!



ヂェーン「やっぱり撃ってきたぁーーー!!」ピョーン!!






リ級「――」ザッザッ




ヂェーン「ふふふ、やっぱりやってくるとは思ったわ。……でも、時速96キロのあたしの足なら
     本気出せば一息でこんなに距離を開けられるのよ! ざまーみろ、距離さえ開けば……、」



リ級「――」ギギギ、ガコン





ヂェーン「もう遅いわよ、バーカ」






シュウウウウウ!








リ級「――」クルッ





アナベベ『ロケット弾一丁お届けに上がりましたぁあああああああ!!!!』







リ級「――」




 チュドオオオオオオオオン!!!!






パラパラ


リ級「」


ヂェーン「……、やった?」


アナベベ『当然だろ? このヘリはすんげえ強いから空飛ぶ戦車だなんて呼ばれてんだぜ?』

ヂェーン「盗ったやつだけどね」

アナベベ『おいていくケルベロスが悪い』

ヂェーン「そうね」



アナベベ『しかし、ヂェーンよぉ。意味深な無線にしなくても直接言ってくれりゃよかったのに。
     「急いで砂浜から離脱するからミサイル撃て」って』

ヂェーン「馬鹿ねぇ、こっちが攻撃に転じようとしてるのがバレたらあの子本気出すかもしれないじゃないの」

アナベベ『ま、俺は賢いからヂェーンが何を言いたいか即座に理解したがな!』

ヂェーン「念押しして『逃げる逃げる』言い続けた甲斐があったわ」

アナベベ『ところでヂェーン、そいつ、どうなったんだ?』


ヂェーン「……、どうやらやったみたい」ツンツン

アナベベ『……そうか』


ヂェーン「敵とはいえ、哀れな最後だわね」

アナベベ『……』

ヂェーン「……」ツンツン


リ級「……!」ムクッ



ヂェーン「うわあああああああああああああああああああ!!!!!」

アナベベ『生きてるじゃねえかあああああああああああああ!!!!』


リ級「!?」オロオロ


アナベベ『ヂェーン! 海に放り投げろ!』

ヂェーン「それだわ!」ガッシ!


リ級「!? !?」


ヂェーン「そおおおおぉおおおぉれええぇぇぇええええええ!!!!!!」ブゥン!







ドッポーン!






ヂェーン「ふぅ、一件落着ね!」

アナベベ『ったくビビるぜ』















ざざーん



リ級「……、リッ?」プカプカ



ニヨロロ島付近・海上//



川内「走れ走れーっ! 標的は目の前だーっ!」


那珂「川内ちゃん急ぎすぎだよ! 私ペドロさんおぶってるんだよ?」


川内「敵はまっちゃくれない、って、主砲来るよ! 散開!」


那珂「うわぁーーん!」





ボォーン!



川内「さっすが戦艦の主砲だね。でもそんな見え見えのノロマ、当たるわけないじゃん!!」



戦艦内部//



「帝国海軍軽巡、追走してきます!」

「このままでは2分後には戦闘に突入していしまいます」


「くそっ! まさか盾となる深海棲艦が全滅するとは……! 予備の手駒は!?」


「いません! 最低でも30分の距離です」


「ぐぅうう! 何とか30分耐えねば……! そうだ! 一か八か!!」


「な、何を!?」


「いざって時の装置だよ! 一度きりだが、恐らく普通の艦娘相手に一番効く対策だ!」ポチ



ニヨロロ島付近・海上//



シューーーーー……




ペドロ「! 戦艦からすごい勢いで何か出てます! 煙、……いや、黒い霧?」


那珂「機関部の炎上? ってわけじゃないよね霧だし」

川内「うわ、てか、霧の量多っ! なにこれ!」

那珂「いやー! 顔が真っ黒になっちゃううーー!!」


ペドロ「まさか、これ、目くらまし!?」



戦艦内部//


「霧発生装置、ですか?」


「そうだ。艦娘という奴らは未だにレーダーなしの有視界戦闘で戦う奴らだ。ならば視界を遮るのが一番」


「ですがこちらも見えませんよ!?」


「大丈夫だ。俺たちは逃げるか撃つかしていればいいだけだ」


「それでいいんでしょうか……」



「そもそも艦娘は小ささと非金属部分が多いせいかレーダーには捉えられん。武装にしても同じだ。妖精とやらの秘匿技術を
 使っているかららしいが、理由はどうでもいい。とにかくこの状況こそが戦況をイーブンにさせる方法なんだよ。
 そして戦況がイーブンになれば、軽巡より戦艦の方が強いに決まってる!」



ニヨロロ島付近・海上//



川内「視界を遮りさえすれば、通常戦艦でも軽巡艦娘相手に有利に立てる」


那珂「え? どうしたの?」

川内「いや、向こうはそう考えてんじゃないかな、って」

那珂「あー、そうかも」


ペドロ「ですが、実際有効な手なのでは? 今、声こそ聞こえますけど川内さんの姿も見えないくらい
    辺り一面真っ黒ですよ」


川内「いやー、そうなんだよねー。明け方とはいえ太陽出てきてるのにさ。凄いよね。夜みたいだ」

ペドロ「そうですよ。これじゃあまるで夜だ」


那珂「……ですねー」

川内「いやーほんと、夜だねーこれじゃ。ホントにねー……」


川内「やっぱ思うよ」





川内「夜は良いよね~、夜はさぁ!」




ペドロ「え? でも、普通は夜の航海って危険なんじゃ……」



川内「まぁねぇ。でも、やっぱり艦娘は危険くぐってナンボでしょ!」ワクワク



ペドロ「は、はぁ」

那珂「構わない方がいいよ。川内ちゃんは夜戦バカだから」

ペドロ「夜戦バカ?」

那珂「視界のない真っ暗な中で戦うと士気があがっちゃうの」



川内「やったぁ! パチモノとはいえ待ちに待った夜戦だぁ!」


那珂「あんなふうに」

ペドロ「えぇ……」

那珂「那珂ちゃん的にはスポットライト当たるほうがいいんだけどなー!」


川内「ひゃっふう!」




ドォン! ドォン!!





那珂「ちょ! 撃ってきた! 回避回避!」

川内「あーあ、バッカだなぁ、素直に逃げとけばいいのに」


ペドロ「川内さん! 砲弾来ますよ!」


川内「だーいじょうぶだって。3時の方向に外れるよ」


ペドロ「え?」




ボーン! ドボーン!



川内「ね?」


ペドロ「す、すごい」




川内「私ねー、実は生まれてこの方夜戦でほとんど被弾したことないんだー!
   夜戦だとこうしてなんか神経研ぎ澄まされる、っていうか、なんか感じるんだよね。
   だから私、多分撃沈されるその時まで、あんまし当たんないんじゃないかって思うの」

那珂「那珂ちゃんとしては毎回毎回心臓がキュってなるからやめてほしいんだけど」


川内「あはは、ごめんごめん」

ペドロ「つまりこの暗闇の中、気を把握してると」

川内「そうかも。あ! それじゃあ私もあの中国拳法使えるかも。気を操ってさ」


那珂「川内ちゃん。お喋りはそこまでにして、そろそろ行こう?」



川内「うん、せっかく視界遮ったのに自分で砲炎晒して居場所バラしてちゃ世話ないよ」


那珂「多分、指揮してる人も動かしてる人も、海戦は素人なんだろうね」

川内「そだねー。だからちょっと物足りないけどさ、やっちゃおうか」



川内「さあ、二人とも!」






川内「私と夜戦しよっ!」




戦艦内部//


「どうだ!? 撃沈したか!?」


「い、今までレーダーありきの操作しかしたことがないので……」


「だから! 砲撃先で爆発が起こったかどうかって聞いてるんだ!」


「いえ、恐らく、着水したかと」


「いいか! レーダーはあいつら相手には使えん! 音と目で判断するんだ!
 外にいる兵士共に監視を徹底させろ! プロの傭兵だ、目と耳は効く!」


「は、はい!」


「いいか! こっちは戦艦だ! あんな小娘相手に翻弄されるような――」





 ド ガ ァ ン !




「なっ!!?」


「ぎ、魚雷です! 敵の魚雷です!」


「ちぃい!! 兵士は何をしてる!」


「ですが、今兵士から入っている伝達によると、音も雷跡もなにもないそうです!」


「なんだと!?」


「帝国海軍の、九三式酸素魚雷です!!」





 ド ガ ァ ン !




「うわぁっ!」

「魚雷、また食らいました!!」

「畜生! 妖精技術ってなんだよっ! レーダーに映らなきゃ最新装備なんて意味ねえよ!!」


「……敵の居場所が分からない。どこから撃ってくるのかも、いつ撃ってくるのかも」


「ど、どうしましょう!?」



「チッ、もういい! 離脱だ! 離脱しろ! 今しがた陥落したH地点にさえ行けば我々の勝ちだ!」


「りょ、了解!」


「どのように?」


「……なに?」


「このまま面舵ですか? そもそも離脱でよいのですか? 相手もそれを読んでるのでは?」


「ぐ、ぅ」



  しん……






「相手も同じ、暗闇の条件で、攻撃が当たるかどうかもほぼ勘なのに、なんでこんなにあてられるんだ……」


「土台無理な話だったんだ。機材は動かせても、俺たちは海戦の素人だ……」




「……だが、なんとしてもこの海域を脱出しなければならん」






「決めた! 取り舵いっぱいだ! すすめ!!」













 ド ガ ァ ン !





ニヨロロ島付近・海上//



川内「夜戦がお家芸の帝国海軍の、中でも夜戦特化の水雷戦隊の、更にその中でも夜戦好きな私に、」
   

川内「素人が戦艦持って戦っても勝てるわけないじゃん」





那珂「ま、あのまま有視界戦闘続けててもこうなったんだろうけどね♪」


川内「だねー。あの梁のオジサンが護衛の深海棲艦壊滅させた時点でもう勝負ついてたようなもんだよ」



那珂「じゃ、送ってくるねー。後は任せて!」








ペドロ「押っ忍! 行ってきます!」




戦艦甲板//


「大丈夫! この戦艦は最新式だ! この程度じゃ沈まねえ!」


「全員破損個所を修復しろ! 警備兵も全員だ!」


「お、おう!」


ダン!




「ん、今なんか音しなか――ぐえ」バキィ!




「な、なんだ!」ジャキ

「警備兵! 構えろ!」ガチャ




ペドロ「私はジャングルの王者ターちゃん!!」



「こ、こいつがターちゃんかっ!!」



ペドロ「の、一番弟子!! ペドロ・カズマイヤーだっ!」


「ありゃ」ドテーン


「たかが弟子か! 撃ち殺せっ!!」ダダダダダ!


ペドロ「オレを知らないなら自己紹介しましょう」ヒュッ!


「ぐぉっ」バキ!




ペドロ「空手のチャンピオンとして格闘トーナメントに多数出場!」ブン!


「ギャッ!」ドゴッ!


ペドロ「得意技は、有数の達人しかできない氷割り!」バキィ!


「こ、こいつ、甲板をぶち抜きやがった……!」


「ウソだろ……、漫画かよ……!?」



ペドロ「そして回転後ろ回し蹴りだぁああっ!!!」ブゥン!



「「 ぎゃーーーーーっ!!! 」」ドッカー!





ペドロ「押忍っ!」



 













ビーチ・海上//




エドガー『満身創痍じゃないか、ターちゃん、そして帝国海軍』






ターちゃん「ゼェ、ゼェ……」



エドガー『そうだそうだ、これこそ正しい形だ! 今までが間違っていてんだ!
     アフリカとアジアの未開な野蛮人ども相手に西洋科学が鉄槌を下す。これぞ正しい形だ!』


ターちゃん「皆、大丈夫か?」

長門「私は大丈夫だが、」

吹雪「……、もう、私たち、弾数は後1発だけです」

睦月「燃料ももう切れかかっていて、高速戦闘は、もって後1分くらい……」

長門「しかも大破寸前か」


ターちゃん「長門ちゃん、彼女たちは引いてもらった方がいいかもしれない」

長門「あぁ、……そうだな」


睦月「うぅ」

吹雪「……」

ヲ級「ヲーッ……」フラフラ

ターちゃん「ヲ級ちゃんたちもそろそろ限界だな」



エドガー『あと10分で1000体の手駒が結集する。それまでに遺言でも残しておくんだな』


ターちゃん「エドガー……っ!」


エドガー『はははははははは――!!』





ピ――――ッ!






エドガー『何っ!?』





ビーチ・砂浜//


ヂェーン「もう! 梁ちゃんとペドロちゃんは何してんのよ!! 敵の大軍がすぐそこまで来てるじゃなーい!!」


アナベベ『駄目だ、今あんな数来られちゃどうしようもねえ!』


ヂェーン「もうどうしようもないの!?」


アナベベ『畜生! 一か八かあいつ等にミサイル撃ってちょっとでも減らし……、っておい! ヂェーン見てみろ!』


ヂェーン「何よ、どうしたの!?」




アナベベ『……、間違いねえ、敵が退いてやがる!』


ヂェーン「なんですって!!!」



ビーチ・海上//




エドガー『馬鹿な!? 艦隊の指揮権がロストしただと!? あのバカども、こんなに早く制圧されたのか!?』



ターちゃん「間に合ったーーっ!!」

長門「どうやらやったみたいだな」


吹雪「川内さん!」



エドガー『ぐぅ……っ! 役に立たぬ、忌々しい! ガラクタ共めぇ!!』



ターちゃん「さぁエドガー! これで切り札は消えたぞ!」



エドガー『…………ふ、くくく』






長門「何がおかしい?」




イ級「イッ! イーッ!」ザブザブ!

ターちゃん「……なんだって!?」



睦月「長門さん! 深海棲艦の動き、変化してません!」





エドガー『クハハハハハハッ!』




ビーチ・上空//




アナベベ「大軍はひいたのに何でターちゃんたちの方は動きが変わんねえんだ!?」



『ザザ――、ザ――こえる!? アナベベさん!?』



アナベベ「! アイドルの小娘! どうなってんだそっちは!」



戦艦内部//


那珂「電波装置はペドロさんが破壊してくれたの! だから増援は居なくなったと思うんだけど……」


アナベベ『あぁ! 確かに退却していった! でもまだエドガーの周りにいた奴らは全然変わってねえ!』


夕立「それがー……」

ペドロ「エドガーの乗る深海棲艦、ダイソンには小さいながらも周囲に洗脳電波を飛ばせる装置が独立してついているそうです!」


アナベベ『なにぃ!? てか、エドガーってあの怪物に乗ってんのか!?』


那珂「後ろに大きい甲羅みたいなのあるよね? その中に直接乗って操作してるの!
   だからそいつは独立した電波装置を装備できたんだよ!」


アナベベ『なんだよ、じゃあここにいる奴らは止まらねえってことかよ!』



川内「いや、手はあるよ! 要するに電波を飛ばしてるそいつのアンテナを破壊すればいいんだ!」


アナベベ『アンテナ? どれだ?』


梁師範「二つ頭のトコにそれぞれ赤いルビーみたいなのがついてるな?」


アナベベ『おぉ! あるある! ちっさいけど!』



梁師範「それが電波を飛ばしてるアンテナだ! そいつを破壊しろ!」




ビーチ・砂浜//


アナベベ『――ということだ!』

ヂェーン「なるほど、確かに見えるわ!」

アナベベ『なんとかターちゃんに伝えてくれないか!?』

ヂェーン「わかったわ!」



ヂェーン「とはいっても気づいたことをエドガーに悟られると不味いわね」



ヂェーン「! そうだわ!」



ヂェーン「ターちゃぁあああん!!」



ビーチ・海上//


ターちゃん「! ヂェーン?」



< ウッキー! キーー! キッキー!! キーキキー!!



ターちゃん「! そうなのか! ありがとうヂェーン!」


吹雪「え!? なんですか今の!?」


ターちゃん「サル語だよ。多分サル達と私とヂェーンくらいしか分からないからね、大声で内緒話ができるんだよ」


吹雪「えぇ……」


睦月「なんの話をしたんです?」


ターちゃん「梁師範たちからの伝言だ。あの巨体の二つの頭の先にそれぞれあるルビーの結晶を破壊すれば
      深海棲艦ちゃんたちは自由になれるらしい!」

ト級「トーッ!」



ターちゃん「だが、あんな小さい所に当てるなんて……、しかも割るには相当の威力が必要だ」


ヲ級「ヲ、ヲッ!」

ターちゃん「ヲ級ちゃんの申し出は嬉しいけど、その飛行機の火力だとちょっと無理だね」


長門「私が行こうか? 私の主砲なら余裕で破壊できる」

ターちゃん「そうだね。ただ、一発当てた時点でエドガーに悟られる。二発目を当てるのは至難の業になる」

長門「くっ」


ターちゃん「吹雪ちゃんたちなら2艦でそれぞれ一発ずつ当てることができるんじゃないか?」

長門「しかし道中で沈められるぞ」

ターちゃん「エドガーまでの道は我々で護衛しよう」


睦月「待ってください! そんなことをしたらターちゃんと長門さんが大ダメージを受けます!」

吹雪「そうすればだれも戦艦水鬼を倒せなくなります!」


長門「だが川内たちが戻ってくるまで待つこともできん……!」





ヲ級「……」チラ

ト級「……」コク

ヲ級「……」コク


ヲ級「――ヲッ!」




ターちゃん「! ヲ級ちゃんたちが!?」


ト級「トッ!」コク

長門「彼女たちはなんと?」

ターちゃん「自分たちが吹雪ちゃんたちの攻撃に協力したい、って」




睦月「……えっ」


長門「確かにヲ級とト級の支援があれば、戦艦水鬼へ到達できるかもしれない、が……」チラ



睦月「……っ」



吹雪「……ねぇ、睦月ちゃん。如月ちゃんの相手だった空母とこのヲ級は別物だよ」

睦月「……わかってるよ」


吹雪「目をみて」

睦月「……」


吹雪「睦月ちゃん、いまこの海はアニマル湯なんだよ」


睦月「え?」


吹雪「普段反目しあっていた動物も、同じ目的のために休戦する」




吹雪「如月ちゃんを忘れろなんていわない。深海棲艦を恨むななんて言わない」


吹雪「でも、今は、今だけは、二人は仲間。それじゃダメかな?」



睦月「私は、」チラ


ヲ級「ヲ……?」


睦月「っ」ゴクッ


睦月「……、ねぇ、ヲ級さん」


ヲ級「ヲ」




睦月「…………」




睦月「……、すぅ」






睦月「ヲ級さん」



睦月「今から、戦艦水鬼の所へ行きます」





睦月「吹雪ちゃんと私を、援護してくれる?」





ヲ級「ヲッ!!!」グッ






睦月「……、ターちゃんや夕立ちゃんの言ったとおりだね。不思議。意外と何言ってるのか分かるかも……」


吹雪「睦月ちゃん……!」




睦月「行こう。皆で、戦艦水鬼の所まで」







睦月「(如月ちゃん……)」




睦月「――!」グイッ








睦月「……皆で、前に、進もう!」










ブゥウウウウウン



ヲ級艦戦「……!」ダダダダダダダ


ボン! ドーン!


ヲ級「ヲッ!」



ターちゃん「戦闘機が散らばった! 今だ!!」


長門「3人とも! いけっ!」





吹雪「行くよ!」

睦月「うん!」

ト級「トォッ!!」




エドガー『ん? あれは?』



吹雪「ト級さん砲撃、今!」

ト級「トーーーッ!!」ドゴン!



ドォーーン!



エドガー『あんなボロボロのガキに何ができる! 全艦、ひねりつぶせ!』


吹雪「酸素魚雷、一斉発射!」

睦月「えぇい!!」



ドガガーーン!



長門「上手い! 艦が包囲のための移動に意識を向けた一瞬に魚雷を撃ったか!」



吹雪「後は懐に潜り込むだけ! 皆、行くよ!」



ターちゃん「よし! これでエドガーへの道ができた!」





敵艦爆「――---」ボカァン



ヲ級艦戦「!」ダダダダダダダダダダ




ヲ級艦戦「……」フラフラ


キィイイイイン、


ヲ級艦戦「!?」


敵航空機「――」ダダダダダ


ヲ級艦戦「!」バス、ドカァン!





ヲ級「――ッ!」






ヲ級「――ッ!」


敵戦闘機「――」ダダダダダ


ヲ級「ヲ、ッッ!!」


敵艦爆「――」ボッ、ヒュルルルル



ヲ級「ッ!!」グッ




ボカァン!





睦月「ヲ級さんが!」


吹雪「(航空支援が全滅っ!)」



ブゥゥウウウン


睦月「敵機、こっちに来るよ!」

吹雪「前へ! 前へ!! 最大船速!!!」


ドーン! ドーン!




吹雪「3時へ躱して!」


睦月「吹雪ちゃん! ダメ! 狙われた!」

吹雪「っ!」



エドガー『終わりだ小娘ぇ!』



睦月「避けられないっ!」

吹雪「睦月ちゃん!!!」




ト級「トォッ!!」ガシ





ドカァン!




長門「ト級が、睦月をかばった!?」


睦月「ト級、さ、」

ト級「……!」グラ


吹雪「睦月ちゃん止まらないで!!!! そのまま走って!!!!」

睦月「!」


ト級「……ト」


睦月「ぅ、うああああああああっ!!」




エドガー『くそっ! 再装填まだか!』



睦月「吹雪ちゃん、あれ!」

吹雪「うん、睦月ちゃん! 額のルビー、撃つよ!」

睦月「――うん!」



エドガー『ルビー!? あいつら、まさかアンテナを――!』




戦艦水鬼「グォォォオオアアアアアアア!!!!!」





吹雪「当たってえぇえーー!!」

睦月「てぇえええぇーーい!!」











パリィン!





戦艦水鬼「ゴギャアアァアアアアアアア!!!!!!!」


吹雪「や、やった!」



エドガー『なぜ、いつの間に、キサマらそのことを!!!』




ターちゃん「お前が慢心している間にだ、エドガー」

イ級「イッ!」






エドガー『ターちゃんっっ!!!』





長門「よくやった二人とも。すぐに陸地へ避難しろ」


ターちゃん「後は私たちがケリをつけるのだ」



ビーチ・海岸近く//


ト級「ト……」ヨロヨロ

睦月「ト級、……ト級、ちゃん」

ト級「ト?」

睦月「ごめん、ごめんね、ありがとう、っ!」ポロポロ

ト級「トーッ」グッ


ヲ級「ヲー……」グラグラ

吹雪「ヲ級ちゃん!」

ヲ級「ヲ? ヲー!」

吹雪「ヲ級ちゃんも無事だったんだね!」

睦月「っ!」ガバッ


ト級「ト!?」
ヲ級「ヲ!?」


睦月「無事じゃないよ! こんなにボロボロで! 無茶しすぎだよ!」グスグス




ヲ級「ヲー……?」


睦月「ひっく、ヲ級ちゃんも、ト級ちゃんも、えぐ、……ありがとう、っ、本当に、ありがとうっ……!」ポロポロ


ト級「ト……」オロオロ

ヲ級「ヲー……」ナデナデ


睦月「ひっく、えぐ、うえぇぇぇん……」

吹雪「睦月ちゃん、皆で陸地にもどろ?」

睦月「……」コク



吹雪「ゆっくり戻ろう。急がなくていいんだよ。皆で、一緒に」


ヲ級「ヲッ!!」




ビーチ・海上//



エドガー『…………』



ターちゃん「今度こそ貴様一人だぞ、エドガー!」



エドガー『ふ、くくく、勘違いしちゃあいないか? こいつ一体相手なら勝てると思ったか!』


長門「どんな相手だろうと、私の拳で打ち砕くのみだ!」



エドガー『威勢のいい。……さぁ、出番だぞ! バケモノ!!』





戦艦水鬼「ガアアアアアアアアァアァ!!!」ブン!



バゴォン!

ターちゃん「ぐっ、速いっ!」

エドガー『フハハ!』


長門「だが隙だらけだぞっ! エドガー!」バキィ!



戦艦水鬼「グルル!」

長門「な、効いていないのか!?」


エドガー『そんな蚊トンボみたいな攻撃が通用すると思ったのか帝国戦艦!!』



戦艦水鬼「ガルルルロオオオッ!」バギィ!


長門「ぐああぁぁっ!!」




ターちゃん「長門ちゃん! っ、このっ!」



エドガー『ちょうど死角となる位置からのとび膝蹴りか。発想は褒めてやるが……』


戦艦水鬼「グゥワアアァ!」バゴン!


ターちゃん「ぐはぁっ!」



エドガー『そんなものが通用するとおもったかターちゃん!』




長門「大丈夫か!?」

ターちゃん「大丈夫。それよりアイツ、隙がない!」

長門「加えて太くて重い剛腕に硬い筋肉と皮膚の鎧! そして類まれな速度!」


ターちゃん「間違いない。アイツ、めちゃくちゃ強い!」


エドガー『ようやく分かったか! これが私が手掛けて改善改良した最強生物だ!
     加えて私が直々に管制につくことで、ただでさえ広い視野をもつ双頭のバケモノに完璧な視野を与えた!』


ターちゃん「カンセイ……」


アナベベ『つまりその後ろ側の甲羅部分に乗ってパイロットしてるってこったろ!』






エドガー『んん?』


ターちゃん「アナベベ!」


アナベベ『これで看板だ! ミサイルもチェーンガンも、全弾もってけやぁ!!!』



キュィーン、ズダダダダダダダダダダダダダダダダ!


ドゴーン!




アナベベ『決まったーーー!』





アナベベ『見たかぁー! これがアフリカ最強の戦士アナベベ様の実力じゃーーー!! うっはっは、』




戦艦水鬼「グルルル……」


アナベベ『……は?』



エドガー『馬鹿め、効くか』



アナベベ『な、なにぃいいいいい!?!?』



エドガー『この甲羅は超超々硬質素材でできている。対爆も対衝撃にも強い。自分を守るんだ、当然、一番堅牢じゃないとね』




戦艦水鬼「グゥオオ」ガコンガコン


アナベベ『げっ!』


長門「アナベベ逃げろ!」


エドガー『対空砲火、撃て』


ドン! ドン! ドォン!



アナベベ『どわぁぁああああああああああああ!!!!』



ボカアァアアン!




エドガー『ははは! とんだ馬鹿野郎だぜ!』


長門「エドガーっ! くっ、ターちゃん! アナベベの救助を!」

ターちゃん「大丈夫だ。あれ」



アナベベ「ふぅ、パラシュート積んどいてよかったぜー」フワフワ

長門「いや爆発しただろう!?」

ターちゃん「アナベベも頑丈だ。ヘリの爆発程度ならなんとかなる」

長門「やはりお前たちは人間じゃないな!」

アナベベ「ターちゃん! 悪いが後は頼んだぜ!」ヒラヒラ

ターちゃん「任せろアナベベ!」





エドガー『さぁ、小うるさいアパッチも消えた。後は貴様らだけだ』


ターちゃん「皆がここまで繋いでくれたんだ! 負けるわけにはいかない!」


エドガー『アビリティはこちらが上だ! 死ね! 沈め! 恐怖し逝け!』


戦艦水鬼「グルルルァアアアアアアアアアッ!」


エドガー『さぁネオダイソン! やつらを海の藻屑としてしまえ!』



戦艦水鬼「グォアアアァオオオオ!」ブゥン!

長門「くっ!」シュッ


戦艦水鬼「ギャオオオォォッ!!」ガコン、ダダダダン!

ターちゃん「うぐっ!」

長門「ターちゃん!」


ターちゃん「大丈夫だ! この程度の砲撃! そりゃあああああぁっ!!」バキッ!

戦艦水鬼「ガアッ!」


ターちゃん「もう一発! もう一発!」ガッ、ゴッ!

エドガー『上から押しつぶせ!』


戦艦水鬼「グガアアアアァァア!」グワッ!


ターちゃん「ターちゃんキーーック!!!!」バキ!



バシイイィィ!


エドガー『チッ、相打ちか!』

ターちゃん「今だ長門ちゃん!」





長門「全主砲、斉射!てーーッ!!」ドォーン!



ボカァン!


戦艦水鬼「ギャオオオオオオオオオオォォッ!」





長門「よしっ!」

ターちゃん「直撃した!」


ビーチ・砂浜//


ボカン!





吹雪「長門さんの攻撃がクリティカルした!!」

睦月「やった!!」

ト級「トーー!」

ヲ級「ヲッ! ヲッ!」

睦月「もう! 二人は休んでないと駄目だよ! 大けがしてるんだから!」

ト級「トー……」


吹雪「あの直撃は致命打、これで轟沈、良くて大破だね!」

アナベベ「なぁ、轟沈とか大破ってなんなんだ?」

吹雪「えーっと、簡単に言うと損傷具合です。言い換えるなら、轟沈が死亡、大破が致命的な大けが、ですね」

アナベベ「てことはこれで最悪でもほぼ倒したってわけか!」

吹雪「そうです!」


ヂェーン「ねぇ」

吹雪「はい?」



ヂェーン「あれ、そんな大けがしてるように見えないんだけど……」


ビーチ・海上//


長門「馬鹿な……っ!」


戦艦水鬼「ウグゥオオオオ」ゴポポポポ



長門「再生している、だと!?」



エドガー『ふ、くくく。驚いたか帝国戦艦』


ターちゃん「エドガー、これは、まさか!」


エドガー『見覚えがあるだろうターちゃん。まだ朝だからその効果は最大限に発揮できていないが……』





ターちゃん「まさか! ヴァンパイア細胞!?」



エドガー『その通りっっ!!』




戦艦水鬼「グォアアアアォオォオアオオアオアア!!!!」





エドガー『トラック泊地で沈んだこいつを兵器転用しようとサルベージした際、まだ息があった。
     研究の意味で絶命寸前のこいつに、かつて研究していたヴァンパイア細胞のサンプルを注入したところ、上手く適合したんだ』


長門「ターちゃん、ヴァンパイア細胞とはなんだ!?」

ターちゃん「ヴァンパイアと言う吸血人間に備わった細胞だ。これをひとたび体に入れれば、その人物もヴァンパイアになってしまうんだ!」


エドガー『そのヴァンパイア細胞により奴は以前の数倍のパワー・タフネス・スピード、そして究極の再生能力を手に入れた!
     感謝されど恨まれる筋合いはない!』


ターちゃん「ふざけるな! ヴァンパイア細胞は体を強くするだけじゃない! 耐え難い副作用ももたらしたはずだ!」


エドガー『あぁー、大したことじゃない。精々日に当たれば焼けるような苦しみがあるのと、血を吸わなければ死ぬほど渇きに襲われるだけだ』




戦艦水鬼「ギャアアアアアァアオ! グギャアアアァアアアアァアアァ!!」




長門「なんてむごい……!」

ターちゃん「貴様はっ、またそんな命を弄ぶような真似を!」



エドガー『最強生物を生み出せるなら安いものだっ!!!』


ターちゃん「エドガーっ! お前はっ、本当のクズだぜっ!!」




エドガー『やかましいっ! ネオダイソン!』


戦艦水鬼「ギュウウァアアアアアアアアアガァッ!!」バギィ!


ターちゃん「ぐあああぁぁっ!」

エドガー『動きが鈍ったな? このバケモノがかわいそうになったか? 攻撃してみろっ! 
     耐え難い苦痛をネオダイソンに与えて見せろ!』



長門「貴様ああああああ!」ドン! ドォン!


戦艦水鬼「ギャアアアゴオオオオオオ!」グチャッ


ゴポポポポ


エドガー『敵の怒りすらも自らの利にする! それこそダイソンの名を付けた甲斐があったというものだ!』



戦艦水鬼「グブァアアアアァァッ!!!」バギィ!


長門「ぐっ、が、はっ……!」ヨロ




エドガー『ハーッハッハハハハハハ!!』


戦艦水鬼「グギャアアアァアアアアァアアァ!!」






ターちゃん「ぐうぅ!」


イ級「イ? イイ?」

長門「ターちゃん、どうした!?」


ターちゃん「俺は、あんな哀れな姿にされた生き物を倒さなくてはならないのか!」

長門「ターちゃん……」

ターちゃん「くそぉ」


長門「気持ちは分からんでもない。だが、このままだとあの生き物は一生生き地獄を味わう。私たちが止めるしかない」

ターちゃん「……あぁ、わかっている。……せめて、苦しまないように」


長門「私が奴の動きを止める。ターちゃんは、奴の隙ができたらイ級で急接近して攻撃してくれ」


ターちゃん「頼んだよ」


イ「イイイィ!」




エドガー『作戦会議は終わったか?』


ターちゃん「エドガー、お前を倒す」


エドガー『ぬかせ』



ターちゃん「イ級ちゃん、全力であいつの方へ走ってくれ」


イ級「イッ!!」


ターちゃん「皆、行くぞ!」



長門「応!」
イ級「イ!」




エドガー『やれ! ネオダイソン!』


戦艦水鬼「ゴアアアアアアァァアアアアァァアア!!!!!」ブォン!


長門「うらぁっ!!」ビュオン!


ガキィィン!


長門「ぐ、あっ!」


エドガー『拳同士で相打ちとは流石戦艦。だが、体格の差による重心がこちらが上である以上、殴り合いでは負けん!』


長門「ふざけろ!」バキッ!

戦艦水鬼「ゴガアッ!?」

長門「私も敵戦艦との殴り合いには覚えがあってな!」ボゴン!



戦艦水鬼「ゴオオオオオ!」

長門「まだまだっ!」


エドガー『蹴り上げろ』


長門「何っ!?」


戦艦水鬼「ガアアァァアア!!」ドゴッ!



長門「ぐああああぁぁあっ!!」




バシャ


エドガー『大ダメージだな』

長門「し、しまった……っ!」


エドガー『そいつを絞め殺せ、バケモノ』

戦艦水鬼「グルルルア」ギュウゥ


長門「がっ……あ゛あああぁ!」

エドガー『くくくくく』




ターちゃん「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」




長門「ター、ちゃん!」グググ



エドガー『また囮作戦か。芸がないな』


ターちゃん「今なら両手が塞がっている! これで、終わりだエドガー!」


長門「ぐっ、だ、駄目だ! 奴には、ま、だ、砲撃が残ってる!!」


戦艦水鬼「ゴオオオォォ」ギギギ



ターちゃん「大丈夫! さっきのなら十分に避けられる!」





ガコン




長門「違う!!! 奴の、主砲が!!!!」





エドガー『20inch連装砲、撃て』





   ド ド ガ ア ァ ン ! ! !
















ビーチ・海上//



ドゴッ!  バキッ!  ボゴッ!  ガッ!  ドグッ!




戦艦水鬼「グルアアアァ!」ゴスッ!


長門「が、ぐっ!」


戦艦水鬼「ギャアアアァ!」バゴッ!


長門「ぐ、っ!」




エドガー『いいぞいいぞネオダイソン! 奴らはもう何もできん! なぶり殺しにしろ! 
     一方的に殴られる痛さと怖さを教えてやれ! 』


戦艦水鬼「ゴギャアアァ!」バギャッ!


長門「ぐぅぅっ!」





バゴッ!  ドガッ!  ボゴッ!  バキッ!  ボゴッ!  ガッ! 



ビーチ・砂浜//



ヂェーン「離しなさい! 離せったら! アナベベ!」


アナベベ「やめろヂェーン無茶だ! 今行ってもエドガーに殺されるのがオチだ!」



ヂェーン「なら誰が沈んでいったターちゃんを助けるのよ! このままだとターちゃん本当に死んじゃうかもしれないのよ!?」


アナベベ「分かってるよそんなことは!!! でも俺たちが行ったってどうしようもねえだろ!!!!
     海じゃ俺たちの力なんてたかが知れてる!! 頼みの綱のイ級も砲撃の余波でボロボロ!!
     こんな状況で助けに行けるわけないだろ!!!」


ヂェーン「な、ならアンタ達はどうにかならないの!?」

吹雪「私達だって助けに行きたいですよ! 長門さんも! ターちゃんも!!」

睦月「でも、さっきの作戦でもうみんな海に出れるような状態じゃないんです……!」

ヲ級「……」

ト級「トォ……」


ヂェーン「そんな、じゃあどうすりゃいいのよ。殴られてる長門ちゃんも、沈んでいったターちゃんも、
     あたしたち見てることしかできないの!?」


アナベベ「それは、」





ヂェーン「ターちゃん、死なないで。タァーーーーーちゃぁああああん!!!!」




ビーチ・海中//




ゴポゴポ……




ターちゃん「(ジェーンの声だ……)」




ターちゃん「(ここは、どこだ。暗い、つめたい)」




ターちゃん「(おれはどうなったんだ)」





ターちゃん「(そうだ、確か、大きな大砲に撃たれて)」







ブクブクブクブク


ターちゃん「(イ級、ちゃん?)」



イ級「イ! イィ!」



ターちゃん「(そうだ、私はたたかわないといけなかったんだ)」






ターちゃん「(はやくいかないと)」






ターちゃん「(……あ、)」



ターちゃん「(ごめん)」




ターちゃん「(からだ、うごかないや)」



ゴポポポ……






ターちゃん「(くらい、つめたい、くらい、くらい)」


ターちゃん「(もう、だめか)」




ポワ……





ターちゃん「(? あたたかい?)」



???『ターチャン、ターチャン』



ターちゃん「(あかるい)」



???『ターチャン、ガンバレ、ターチャン、ガンバレ』



ターちゃん「(からだに、力が湧いてくる)」





???『ターチャン、ミンナヲ、タスケテ!』










―――



―――――――――――




――――――――――――――――――――――



ビーチ・海上//



長門「……」ゼェゼェ




エドガー『フフフフフ、ハハハハハハ、ざまあないぜ! あの帝国海軍ご自慢の戦艦が
     こうまでみじめに嬲られるなんてな!』



長門「……」グッ



エドガー『立っているのも辛いだろう? 心置きなく沈め。やれ、ダイソン』



戦艦水鬼「グオオオオオォォオォ!!!!」





エドガー『轟沈させてしま――!』





ヒィィィィィ!!




長門「! あれ、は!」


エドガー『な、なんだ!? 水面に、光があふれて……!?』



海上//



川内「えぇ!? 装備品をターちゃんに渡したぁ!?」


夕立「ぽ、ぽい……」


川内「ちょ、それ提督に怒られるよー」


夕立「ごめんなさい、妖精ちゃんがターちゃんのことすっごく気に入ってたから……。
   提督から念のために、って持たされてた装備を、ちょーっと」



川内「まぁ、提督には誤魔化せばいいけどさ」




那珂「それで? ターちゃんに何の妖精を渡したの?」



夕立「えーっとね、」









夕立「応急修理女神の妖精っぽい」




ビーチ・砂浜//



ヲ級「ヲ! ヲッ!!」ピョンピョン


吹雪「あれは!」


アナベベ「あいつ!! やっぱり生きてやがったか!!!」








ヂェーン「ターちゃん!!!」












https://www.youtube.com/watch?v=KxRGo3jdVMM







ビーチ・海上//




ターちゃん「エドガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」




長門「ターちゃん!!」



エドガー『馬鹿な!!! 馬鹿な!!!! 貴様どうやって!!!!?』



ターちゃん「イ級ちゃん、エドガーの元まで頼む!」



イ級「イィイイッ!!!」



エドガー『ふざけるな、ふざけるな!! なんだこれはっ!!?』





ターちゃん「妖精ちゃんが助けてくれたのだ!」



応急修理女神「!」エッヘン!



長門「応急修理女神!」




ターちゃん「傷も治ったし、体中に色んなパワーがみなぎってくるみたいだ!!」グググッ!



エドガー『くっ、帝国海軍の妖精技術か!! ふざけやがって!!!』






ターちゃん「覚悟しろっ! エドガー!!!」



エドガー『ふざけろっ! 返り討ちにしてやる! ネオダイソン!! 拳で打ち砕けぇっ!!』 


戦艦水鬼「グガアァァアアァァアアア!!!!」



ガシッ!



戦艦水鬼「グ、ガッ?」グググ



エドガー『なっ!?』





長門「右腕、とらえたぞ」グググ






戦艦水鬼「グガッ! ゴガッ!」グイ、グイ



長門「絶対に離すかっ!!」グギギ






戦艦水鬼「グギャアアァアア」グググ


エドガー『何をしているバケモノ!! そんなアマさっさと殴り殺せ!!!』


戦艦水鬼「ゴギャアアアアァッ!!!」バゴッ! ドゴッ!


長門「ぐっ、き、効かぬわっ!」ヨロ



エドガー『ラッシュだ! 一気に決めろ! 早くしろ!!!!』



戦艦水鬼「グギャアアアアアアアアア!!!」ブゥン



ドゴッ!  


長門「ぐっ」

バキッ! 

長門「がぁっ!」


ボゴッ! 

長門「く、うぅ!」


ガッ!  

ドグッ!


長門「……っ!」




エドガー『くぅううううぅぅ!!!』



長門「ハァ、ハァッ、ゼェ」ヨロヨロ







エドガー『何をしているぅっ!!! 早く! 早くしろバケモノっ!!!! 殺せええええええええ!!!』




長門「フッ、な、長門型の装甲は、伊達ではないよ……」







戦艦水鬼「グッギャアアガガアアアアアアア!!!」ブゥン






      ガッ!




海上//



梁師範「そういや、聞きそびれてたが。ペドロ」


ペドロ「なんでしょう?」


梁師範「あのクロスロード作戦とやらの話だ。核爆発受けて、サラトガは7時間後に沈んだんだったな。
    機雷付き長門はいつ沈んだんだ? 倍の14時間後くらいか?」

川内「ん? 梁のオジサン、クロスロード作戦に興味あるの?」


梁師範「『長門』の名を冠するあいつがどんなもんか知りたくてな」


ペドロ「残念ですが、はずれです。もっと後ですよ」


梁師範「じゃあ3倍で翌日まで、いや、2日後くらいまで耐えたとか?」


川内「はい、ざんねーん。正解は、」


ペドロ「4日後です」



梁師範「よっ……!?」






川内「『長門』と言う名前は、幾万もの水兵たちの遺志によって水底を支えられているんだってさ。
   だからあの程度の怪物相手には絶対に負けたりしないよ、オジサン」




ペドロ「そうですよ。その奇跡的な耐久力を見て、アメリカ水兵が驚愕したんですよ。
    で、その際に、なんて言ったっけな、」




川内「あぁ、あれでしょ、確か、"Old Navy Never Die"――」






     ガッ!





戦艦水鬼「グゥゥゥウウ!?」ガクン



長門「」ニッ



エドガー『馬鹿な、両腕とも抑えられ……っ! ありえない!!! どこにそんな力がっ!!!!?』



長門「当然だろう」





エドガー『ひっ!』





長門「ビッグ7の力、侮るなよ」ギロ




エドガー『――っうう!!!』ゾクッ







------------------------------





川内「海の古強者は死なず、ってね」








長門「ターちゃん、抑えたぞ、やってくれっ!」



ターちゃん「まかせろ。行くぞ、エドガーっ!!」



エドガー『や、やめろ、やめろおっ!!! バケモノ!! 何とかしろっ!! そうだ、蹴り上げろ!!』



戦艦水鬼「ゴギャアアアアア!!!!」


ガンッ!



エドガー『沈め! 沈め! 沈めっ! 沈めぇっ! 沈めえっ!! 沈めえええええええぇぇっ!!!!!!!』



ガンッ! ガンッ! ガンッ!




エドガー『沈めよぉぉおおおおおおお!!!!!』






長門「この程度で、戦艦長門は、沈まんっ!!!!」





エドガー『~~~~~~!!!!!!』







ターちゃん「今だ! イ級ちゃん!」


イ級「イィッ!!!」




エドガー『ヒッ、く、くそぉっ!! バケモノ! 20inchで沈めろっ!!!』




戦艦水鬼「ゴオォォオオオ!!!!」ギギギ、ガコン




エドガー『撃t――』




ドドガァン!




戦艦水鬼「ギャアアオオア」ガクッ


エドガー『砲撃!? どこから!!?』





那珂「地方巡業終えてきました、なっかちゃんでーーす♪」キャピ

川内「ナイスタイミングだね!」

夕立「主役は遅れてやってくるっぽい!」



エドガー『あいつらっ!!!』



ペドロ「先生!!」

梁師範「やっちまええ!!」






ターちゃん「これで終わりだエドガァーーーっ!!!!」




エドガー『やめろ! 来るな!! 来るな!!! 嫌だ!!!!!』




ターちゃん「うおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!」




エドガー『なんとかしろ! なんとかしろバケモノおおおぉぉぉおおぉぉぉおお!!!!!!』







ターちゃん「くらえーーーっ!!!」ググッ






エドガー『うぎゃああぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁあぁぁああああああああ!!!!!!!!』















            ターちゃん「ターちゃん、パーーーーンチ!!!!!!!」ドガアアッ!















 バゴォンッ!!





戦艦水鬼「ゴギャアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」







ペドロ・梁師範「「 決まったあっ!!」」











戦艦水鬼「ゴ、ガ……」ガクッ




ゴポポポポ




ターちゃん「…………」


戦艦水鬼「グ、ググ」


ゴポポポ



戦艦水鬼「ゴォォ」


ゴポポ


長門「…………」


戦艦水鬼「グ」


ゴポ、




戦艦水鬼「」ガクッ






ドボーン




しーん……




長門「やったのか?」



ターちゃん「あぁ、強烈なダメージで細胞が追いつかなくなったんだ。
      でも、いずれ再生する。その前に燃やさないといけない」



長門「そうか」










ヂェーン「おーーーい! ターちゃーーん」


ターちゃん「ヂェーン!」


吹雪「長門さーーん!! ターちゃーん!!!」




長門「そのクルーザーは?」

那珂「これですか? 敵の基地から持ってきちゃいました!」

長門「? 燃料が厳しかったのか?」

川内「いや、その、オジサンが約1名ダダこねて」

梁師範「何言ってやがる! あるものは使う! それが当然だろうが!」

ペドロ「お姫様抱っこで戻ってくるのはちょっと、ってことで」

梁師範「ペドロ!」


ヂェーン「馬鹿ー! もう、ホント馬鹿! 死んだかと思ったじゃないの馬鹿!」ポカポカ

ターちゃん「ごめんね、心配かけた」

ヂェーン「この! この! ターちゃんのアホ! 馬鹿! この!」ポコ、ポカ、ボコ、バキ、ドゴッ

ターちゃん「ヂェーン! 今死んじゃう! これで死んじゃう!!」


睦月「でもよかった、みんなが、みんなが全員無事で、本当によかった……」

ヲ級「ヲッ! ヲッ!」

睦月「うん、うん」




ババババババババババ



ト級「ト?」

夕立「? なんか変な音がするっぽい?」


イ級「イ! イィーー!!!」

ターちゃん「甲羅から何か出てくるだって?」

吹雪「あ、あれ! ヘリだ!」



エドガー『これで全部終わったと思ったか!』



ペドロ「エドガー!?」

アナベベ「しつけえぇえええ!!! いい加減諦めろよ!!」


エドガー『くははは!! 俺はいつまでも諦めんぞ! 何度でもやってやる!!』



吹雪「長門さん!」

長門「くっ、無理だ、今の私にあの高さは仕留められん」

睦月「そんな、このままじゃ逃がしちゃいますよ!」




エドガー『そして今度こそ殺してやるからなっ!! 覚えていろターちゃんっ!!!!』





梁師範「むっ」

ペドロ「どうしたんですか?」

梁師範「気を、感じる」


夕立「あ」

睦月「? あ!」




エドガー『ハーッハハッハハハ!! さらばだ! 次に会うときは――』



ドゴォン





エドガー『――ん?』





 ボガァン!





ガコン、



ヂェーン「あの子、さっきの」





リ級「……」




リ級「……」クルッ



ザブザブ




アナベベ「あいつが仕留めたのか」


ヂェーン「深海棲艦のみんなの仇を討ったのよ、きっと」





















メラメラメラ……




長門「……」

ターちゃん「……」


長門「……、なぁ、ターちゃん」

ターちゃん「? どうしたんだい?」


長門「いや、なんだ。上手く言えないんだが、……どうにも、スッキリしなくてな」


ターちゃん「うん」


長門「戦艦水鬼といえば、連合艦隊の総力を挙げて、多大な犠牲をだして倒した仇敵だ。
   だから、いま炎に焼かれている敵の死を喜びこそすれ、悲しむことなんてないはずなんだが、な」


ターちゃん「この戦いで、一番苦しんだのは、きっとこいつなんだとおもう」


長門「……あぁ」



ターちゃん「さっきまでは、どうあれ殺し合いをしていた。だからやるしかなかった、って一生言い訳できる。
      でも、なんだろう。それは自分への言い訳でしかないんだよ。だから、戦いが終わった今は、

      弔ってもいいんだから、せめて、手を合わせよう」


長門「そう、だな」


ターちゃん「……」パン



長門「……」



長門「……」パン






メラメラメラメラメラ


ゴメン、>>354訂正↓



ターちゃん「さっきまでは、どうあれ殺し合いをしていた。だからやるしかなかった、って一生言い訳できる。
      でも、なんだろう。それは自分への言い訳でしかないんだよ。だから、戦いが終わった今は、
      弔ってもいいんだから、せめて、手を合わせよう」


長門「そう、だな」


ターちゃん「……」パン



長門「……」



長門「……」パン






メラメラメラメラメラ






―――――――――――

――――――

――





ペドロ「結構な荷物になりましたね」

ヂェーン「当然じゃない。あのデカい子焼いた灰全部入ってんだから」


夕立「うぅー、これホントに輸送するっぽい~?」

睦月「補給も入渠も受けて元気いっぱいだし大丈夫だよ」

吹雪「でも、手分けしても凄い量だなぁ」


長門「すまないな。私の感傷につき合わせて」

吹雪「い、いえ! でもびっくりしました。戦艦水鬼の遺灰を持って帰るだなんて」


長門「せめてトラック泊地の海に撒こうと思ったんだ」




吹雪「え? どうして?」

ターちゃん「以前戦った時にはあの子と一緒に女の子が居たそうなんだ。その女の子がやられた海に還してあげて、 
      せめて一緒に眠ってもらうみたいだよ」

長門「日頃、軍律や軍務に忠実であれ、という私がこんなことをするのは示しがつかないとは思っている。
   だがどうか、聞いてはくれないか」

川内「いや、まぁそれはいいですけど」


長門「ありがとう。……全く、今後は私も電や潮のことを叱れないな」


吹雪「敵を助けたい、っていう?」


長門「あぁ。敵に情けをかけてしまった。軍艦失格だ」


睦月「そ、そんな。私なんてヲ級ちゃんやト級ちゃんたちに助けてもらったし、ね?」


ヲ級「ヲ! ヲッ」ワタワタ
ト級「トッ!」グッ





ターちゃん「じゃあ敵じゃなかったらいいのだ」

吹雪「え?」


ターちゃん「敵と仲良くするのがダメなんだったら、敵だってしなければいいんじゃないかな」


夕立「いや、そうはいっても夕立たちは戦争してるっぽいし、向こうも攻撃してくるっぽい」


ターちゃん「うーん、でも、アフリカのジャングルにいる動物たちだって喧嘩するよ。
      食べ物の為、家族の為、時には同じジャングルの仲間同士で命のやりとりだってする。
      でも、そんな動物たちも、同じ大地の上で同じ太陽の光を浴びて癒されたりするし、
      ハンターたちに力を合わせて立ち向かったりするんだ」


睦月「アニマル湯、とかもそんな感じですよね」


ターちゃん「そうだね。だからさ、えーっと、皆もさ、同じ海で生きている仲間同士っていうか、その、
      命のやり取りはあるけれど、決して分かり合えないわけじゃない。でももし存在そのものを『敵だ』って
      してしまうと、絶対に戦わなくちゃいけなくなる。一緒にご飯を食べたりするのが変なことになる、よね?」




一同「……」


ターちゃん「だから、なんだ、えっと、戦っても、敵になっちゃいけないというか、みんなもジャングルの動物たち
      みたいに、いつか一緒に生きていくことができるんじゃないか、って思う。うん、」


吹雪「ターちゃん……」



ターちゃん「あー、ごめんね。おれ、頭が悪いのでこれ以上説明できないのだ」




夕立「んー、言葉にするとよくわかんないっぽい」


ターちゃん「だよねー」


吹雪「でも、私、なにか分かった気がします。よくわかんないですけど」


ターちゃん「うんうん、私もいま同じ思いをしてるのだ!」



夕立「難しいっぽーい」

イ級「イィー」コクコク

夕立「ぽぃー」ウンウン




長門「さぁ、そろそろ行くとしよう」



那珂「お世話になりましたー!」

ヂェーン「帰ったら提督とやらにあたしのデザイン画渡しときなさいよ」

那珂「ヂェーンさん式の美容体操も広めてきます!」

ヂェーン「あんたもね」

川内「わ、私はいいよ」

梁師範「そうだな。若いうちに色気づくもんじゃねえ」

川内「……オジサンにそういわれると逆にオシャレしたくなるなぁ」

梁師範「あ? なんでだよ」

川内「だって色気づかなかった結果が、今の『見た目40代』でしょ?」

梁師範「てめっ!」



睦月「ヲ級ちゃん、ト級ちゃん、イ級ちゃん、ありがとうね」


ヲ級「ヲヲ……」シュン

ト級「トォー……」


睦月「また会おうね」


ヲ級「ヲッ!」パァ
ト級「トォォオウ!!」ワイワイ


夕立「ぽいぽい?」

イ級「イ、イィ」

夕立「ぽーーい!!」

イ級「イーッ! イッ!」


夕立「ぽい!」グッ

イ級「イッ!」グッ




アナベベ「畜生、イ級のやつ、大人になりやがって……!」グス

吹雪「いや全然わかんないんですけど」



長門「世話になった」

ターちゃん「ううん、また遊びに来てね」


ペドロ「次は、私と手合せをお願いします! 押忍!」

長門「あぁ、絶対だ」




吹雪「長門さん、みんな用意できました」





長門「よし、全艦。これより鎮守府に帰投する」


吹雪・睦月・夕立・川内・那珂「「「「「 了 解 ! 」」」」」






吹雪「あ、あの。ターちゃん!」



ターちゃん「ん?」




吹雪「私も、また来ていいですか?」


ターちゃん「もちろんだよ! 歓迎するよ!」


吹雪「よかった。……じゃあ、お世話になりました!」







ターちゃん「みんなーーーー!! またねーーーーーーー!!!!」




吹雪「はい! また、いずれーーーっ!!」






















鎮守府・部屋//



吹雪「……」カリカリ



吹雪「(×月◎日)」


吹雪「(カスガダマ沖事件が起こって1か月と少し)」


吹雪「(西方海域の方面基地の復興任務であちこち慌ただしかったけど、ようやく落ち着いてきました)」


吹雪「(私自身はあれからアフリカへと向かったことはないですが、あの事件に関わったみんなのことは
    風の便りでいくつか耳にしました)」








吹雪「(事件の首謀者であるエドガーとダイソン・スフィアの部下たちは、あの後すぐに帝国海軍に捕まりました。
    その後、エドガーは元々の投獄地であった国に送り返されたようです)」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ヴァンパイアの国・牢屋//



エドガー「ここから出してぇーー! 出してぇーー! 暗いよ狭いよ、じめじめしてるよぉおお!!」



アラン「出すわけがないだろ。ヴァンパイア王国の人間だけでなく、恩人であるターちゃんにまで
    牙をむいた貴様に、もはや2度と日は見せん」

エドガー「シーマ! 頼むよ! 俺は今回のことでもう心を入れ替えたんだー!」


シーマ「よくもまぁ私に向かって助けを求められたものね、エドガー」


アラン「シーマ、下がってなさい。君の目にこいつが写っていることだけでも私は我慢ならない」


エドガー「なんだと! アラン、貴様なんぞダン国王に胴体切られてりゃよかったんだ!」


アラン「……同情の余地はないな。門番、戸を閉めろ」


エドガー「あぁ、嘘! 嘘だ! 冗談に決まってるじゃないか。いやだああああ!!!! もう牢屋はいやだああああ!!!!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




吹雪「(エドガーは以前より厳しく堅固な牢屋に入れられたそうで、もう2度と、外に出てくることは出来ないみたいです)」








吹雪「(ヲ級ちゃん達は、ターちゃんたちのおかげで本来の故郷の海に戻れたそうです。ですが、)」





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
アフリカ東海岸・海上//



ビチビチビチ!


ハンター1「へっへっへ! 魚の密漁も悪くねえな!」

ハンター2「ホンマやで! うっへっへ、ん? なんやあれ」



ざっぱーん!


ヲ級「ヲッヲヲ、ヲ、ヲッ!(海の仲間たちに手出しはさせん!)」ビシッ


ト級「トットトト!(海の平和を乱す奴は私達が許さな)」ピシッ


イ級「イーッ!(いーっ!)」バッ


リ級「リ……(です)」ギギギ、ガコン



ハンター1「ちょ、ま」







リ級「リリリ、リッ (リ級、パンチ)」ドォン!




ボガアァン!!



ハンター1・2「「 ぎゃあああああああああああ!!!!! 」」





ヲ級「ヲッヲーー!(やったーー!)」ピョンピョン


リ級「リリッ!(海の王者!)」ムフー


ヲ級「ヲーヲ!(ヲーちゃん!)」ビシッ!
リ級「リーリ!(リーちゃん!)」バシッ!
ト級「トート!(トーちゃん!)」ピシッ!
イ級「イーイ!(イーちゃん!)」バッ!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






吹雪「(時々、海の密猟者をやっつけにカスガダマ沖に現れたりするそうです。
    最初はみんな驚いていましたが、あの辺の治安はすっかりよくなったそうです)」







吹雪「(それと、戦艦水鬼の遺灰は、カスガダマ遠征をした皆で撒きに行きました)」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
トラック泊地・海上//


サラサラ……




長門「…………」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



吹雪「(あの時、長門さんの顔を私は見ることができませんでした)」

吹雪「(長門さんは、トラック泊地で、それからカスガダマで、合計2回、戦艦水鬼と戦っています)」

吹雪「(恐らく世界でただ一人、2戦交えた人です。だから、こういう言い方は変だけど、世界で一番、
    戦艦水鬼の気持ちが分かりうる人なんだと思います)」


吹雪「(長門さんは、戦艦水鬼をどう思っていたんだろう)」


吹雪「(ただ、憎んでいたようには見えなかったなぁ)」





吹雪「(最後に、ターちゃんファミリーの皆のこと)」

吹雪「(残念ながら、ターちゃんたちのことは話に聞きません。ジャングルに居て、海から遠いせいかも)」

吹雪「(やっぱり、私自身が行かなきゃいけないんだと思います)」



吹雪「……」カリカリ


吹雪「(深海棲艦と戦うことに疑問を持ったことはありません。でも、ただ戦うことだけが目的になるのもおかしいと思います)」


吹雪「(何のために戦うかといえば、平和の為です。その為に、水平線の向こうに勝利を刻む)」


吹雪「(刻んで。それから、先)」


吹雪「(いつか、未来の、静かな海で。どんな平和を見たいのか)」


吹雪「(そして、どうすればそんな平和な未来へとたどり着けるのか)」



吹雪「(今はまだ、わかりません)」





吹雪「……」カリカリ




吹雪「(もし、この大きな戦争が一息ついて、まだ私がこのことについて迷っていたなら、)」


吹雪「(あのアフリカ大地の、自然豊かな、あのジャングルへと行こう。あの大自然に住む動物たちを見に行こう)」





吹雪「(この問いには、きっと、ずっと、言葉で言い表せる答えを得ることは出来ないだろうけど、)」






吹雪「(でもあの場所には、確かに、その答えがあったんだから――)」













                       「艦隊のセンター、なっかちゃんでーす♪」   
  「吹雪ちゃん! 象だよ象!」
                              「駄目ね、ポージングに色気がないわ」
              「イ! イィ!」

      「ト! トト!」        「ちょっとぉ! 私着飾る気ないんだけど!?」

  
  「よーし、イ級もト級もついてくるっぽい」    「そうだ、こんなガキにゃまだ早ええ」     
 
                           
        「イ~~~!!」      「あぁ!? じゃあ私、絶対着る! 着てやるううう!!!」        
 
             「トォォオウ!」                
  「ぽい~~~!!」                                                                                        ペドロ「押っ忍! よろしくお願いします!」

        「ヲ級ちゃんもいく?」 「ヲ! ヲッ!」                                       

                                 長門「全力でこい」

 「よーし、象に乗ってない奴は俺の車にのれー、汚すなよ!」                
                              

               「ヲッ!」         ペドロ「はぁああああああっ!!」       

                                                                                
                                              
                「う~ん、今日も平和なのだ」    








何度もゴメン、訂正ww









                       「艦隊のセンター、なっかちゃんでーす♪」   
  「吹雪ちゃん! 象だよ象!」
                              「駄目ね、ポージングに色気がないわ」
              「イ! イィ!」

      「ト! トト!」        「ちょっとぉ! 私着飾る気ないんだけど!?」

  
  「よーし、イ級もト級もついてくるっぽい」    「そうだ、こんなガキにゃまだ早ええ」     
 
                           
        「イ~~~!!」      「あぁ!? じゃあ私、絶対着る! 着てやるううう!!!」        
 
             「トォォオウ!」                
  「ぽい~~~!!」                    ペドロ「押っ忍! よろしくお願いします!」

        「ヲ級ちゃんもいく?」 「ヲ! ヲッ!」                                       

                                 長門「全力でこい」

 「よーし、象に乗ってない奴は俺の車にのれー、汚すなよ!」                
                              

               「ヲッ!」         ペドロ「はぁああああああっ!!」       

                                                                                      
                              
               
                 「う~ん、今日も平和なのだ」    






     






吹雪「(皆で、……誰も欠けることなく、皆で、)」





吹雪「(皆で、前を向いて行こうと思います!)」







カリ





吹雪「……ふぅ」パタン











バタン!


吹雪「ひゃあう!」ビク




金剛「Wow! ブッキー! ここにいたネー!」



吹雪「も、もう、金剛さん! びっくりしましたよ!」ドキドキ





金剛「ソーリーソーリー! お茶会に誘いに来ましたヨー!
   第五遊撃部隊の懇親会デース!」


吹雪「お茶会、ですか。あの面子で。うぅ、胃が痛いなぁ」

金剛「頑張ってくだサーイ! ブッキーは我が部隊のフラグシップなんデスから!」

吹雪「が、頑張ります」



金剛「おや? ブッキー、それはダイアリーデスか?」ヒョコ

吹雪「はい。前からつけてるんです」

金剛「ブッキーは真面目ネー。私もやったことありマスけど3日で止めちゃったネー」

吹雪「あはは、夕立ちゃんと同じです」


金剛「で? なんで今書いてるのデスか?」

吹雪「最近忙しかったからちょっとおざなりになってて。最近の出来事を纏めて書いてるんです」

金剛「ほほー、最近というと、カスガダマの事件デスネー?」

吹雪「はい!」




金剛「そういえばあの辺りで最近色々な話を聞きマス! 正義の深海棲艦がパトロールしてるとか、
   恐ろしきヴァンパイアの姿を見たとか、ヒェー、デースネ! まぁどうせ噂話デス!」

吹雪「あはは……」タラ


金剛「アフリカは魔境ネー。他にもメニーメニーありマスヨー。アフリカの湖に住むゴールデンの巨大魚とか、
   天然のドックになるスパがあるだとか、世界征服を目論む考古学者の野望を打倒したターザンの話とか」



吹雪「えっ!?」

金剛「OH!? どうしたネー、ブッキー!?」



吹雪「さ、最後のってどんな噂なんですか!?」





金剛「HAHAHA! 聞くに眉唾な話デース! 腰蓑1枚つけた金髪オールバックのターザンが
   リザレクションさせられた古代帝国の軍神をやっつけて世界の危機を救ったらしいネー! 
   いくらなんでも嘘が大きすぎデース! HAHAHA!」ケラケラ


吹雪「ターちゃんだ……!」



金剛「ター、……Ah、ワッツ? ブッキー、もしかしてその人のこと知ってるんデスか?」


吹雪「はいっ! 絶対に知ってます!」








金剛「へぇー、なんて人デース?」






吹雪「はい! その人は――」


















 
     吹雪「ジャングルの王者! ターちゃんです!!」                                






   


                               END







以上、終わりっ!!

ごめんねこんな時間まで。

遅くまで乙

原作版ターちゃんみたく、誰かが犠牲にならなくて済んでよかったわぁ

一応両方共アニメ設定で良いんだろうか

おぉ、皆さん読んでくれてありがとう!
やっぱターちゃんは偉大や。


>>391
アニメ版はなんだかんだ皆生き残るから安心。
原作版だときっとト級辺り轟沈してた。

>>395
一応アニメ艦これがベースなんだけど、トラック泊地を入れたかったから
ゲームとアニメの合体版みたいな感じで。

最高のクロスだが、あえて一つだけ物足りなかった点を挙げるとすれば、ターちゃんといえばアニマルパワーだから応急修理女神で復活した後にアニマルパワーについての描写も欲しかった
でももしかして沈むターちゃんに声をかけたのが動物達か?

乙!
他に何か書いたのがあれば教えてください

>>408-9
ごめん、あそこ一応妖精さんが声かけて、妖精さんが治した設定だったんだ。
アニマルパワーと見せかけて応急修理妖精でした、みたいにしたかった。
でもよく考えたらアニメルパワーと妖精パワーの二倍掛けでパワーアップしたほうが
カッコいいなと今気づいた。

>>411
シャルロッテ「病気をなおして!」 【まどマギss】
古美門「……765プロで、はじめての裁判♪」
P「目指せ!」 涼「トップアイドル!」
雪歩「伊良部総合病院の神経科?」

こんな感じ。で、5作目がこれです。

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