prrrr・・・
男「はい」
女「今何かしてた?」
男「いや、なんもしとらんかったけど」
女「じゃあさ、浜に行かない?」
男「行ったってなんもないやん」
女「いいの。ただ海が見たいだけだから」
男「まぁいいか。じゃあ今からお前の家の近くの公園に行くけん」
女「うん。よろしくー」
男「おっ、きたきた」
女「ごめん、待った?」
男「いや、今来たとこやけど」
女「えへへ。何か今の恋人っぽかったね」
男「ふざけとらんで行こうぜ。あれ?お前チャリは?」
女「乗せてもらおうと思って」
男「たまには運動とかした方がいいっちゃない?太るよ」
女「うっ、人が気にしてることを」グサッ
男「そうと?すまんすまん」
女「罰として後ろ乗せて」ヒョイッ
男「結局そうなるったいね。まぁいいっちゃけどさ」
女「じゃあ、レッツゴー」
男「はいはい」
ザブーン
女「着いたね」
男「何度見ても変わらん光景たい」
女「いいの。海は何度見てもロマンチックだから」
男「そういうもんと?」
女「そうなの」
男「しかし来たところでやることがないけんねー」
女「いいじゃん。海見ながらおしゃべりでもしよ。ほら、ここ座って」
男「はいはい」
女「男は好きな人とかいる?」
男「ずいぶん急やな」
女「まぁ、定番じゃん」
男「今はおらんかな。お前はどうと?」
女「うーん、い、いないかな」
男「そうったいねー。お前男子とばっかつるんどーけんさ、誰か好きな人でもおるんかと思っとった」
女「そ、そんなわけないじゃん」///
男「そうと?じゃあ何でいっつも俺らとばっかつるんどーと?」
女「女子より男子の方が話しやすいんだよねー」
男「そんなこと言っとーけん女子の友達が少ないったい。お前だって友達増やしたいやろ?」
女「まぁ・・・、それはそうなんだけどさ」
男「みんな言っとーよ、女さんは話しかけにくいって」
女「そ、そうなの?わたしは普通に接してるつもりなんだけどなぁ・・・」
男「まぁずっと標準語やけんってのはあるかもな」
女「え?言葉って関係あるの?」
男「標準語ってこっちの人にとっては冷たい感じがするけんさ。お前って方言伝染らんったいね?」
女「ちょっとだけ都会出身のプライドが邪魔するんだよねー」
男「転校してきてどんだけ経ってんだよ。郷に入っては郷に従えって言うやろ?」
女「でもさー」
男「何でそんなに嫌がると?方言の女の子って可愛いやん」
女「か、かわいい?」
男「標準語よりは断然いいと思う」
女「そ、そっかー。じゃあやってみよーかな・・・」///
男「よし、じゃあ今から方言指導をするけん。ビシビシいくぞ」
女「方言って指導するものかな?」
男「最初は無理やり使っとっても、慣れたら自然に言えるようになっとーやろ」
女「わかった。よろしくお願いします、先生」
男「えー、じゃあ女ー、ここ分かるかー?」
女「古典教師のモノマネはいいから」
男「コホン、じゃあまず基本から。この辺の方言は語尾が特徴的やけん、そこからたい」
女「『と』、『けん』、『ちゃん』、『たい』とかだよね?」
男「そう。『と』は、そうと? みたいに使うっちゃけど、標準語で言う、そうなの? って感じやな」
女「さすがにそれぐらいはもう分かるよ。『けん』も『から』って意味だよね」
男「なんだ、分かっとーやん」
女「まぁ会話聞いてたら大体分かるよ。でも『ちゃん』の使い方がよく分かんない』
男「『ちゃん』は・・・、何かよくよく考えると説明すんの難しいな」
女「先生、しっかり」
男「大丈夫、任せろ。えーと・・・、そうっちゃん ってどういう意味か分かる?」
女「そうなんだよね って意味じゃない?」
男「正解です。まぁこのぐらいは会話聞いてたら分かるな。こっからは実践編でいこう」
女「先生、早くも投げやりな感じが見えてきました」
男「そこ、うるさい。大丈夫、話しながらの方が身につく気がしてきたから」
女「本当に大丈夫かなぁ・・・」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
男「まぁこんなところか。暗くなってきたし、そろそろ帰ろうか」
女「そうだね。夜の海はロマンチックだからいいなー」
男「そこはロマンチック『やけん』やろ?」
女「そんなすぐには無理だよ。ずっと標準語だったんだし」
男「結局海に来た意味ってなんやったとかいな?」
女「いいの。わたしが見たかったっちゃけん・・・、でいいのかな?」
男「おっ、今のは自然に言えとーやん」
女「えへへ。なんかむず痒い感じ」
男「よし、最後に特訓の成果を見せてもらおう。何でもいいから方言で話してみて」
女「えっ?急にそんなこと言われてもさ・・・」
男「適当でいいけんさ」
女「(ここはチャンス?方言は可愛いって言ってたし・・・、ここまで付き合ってくれたんだから少しは気があるよね?)」
男「ほら、早くなんか言ってよ」
女「じゃあ・・・。えーと、きょ、今日は付き合ってくれてありがとう」
男「方言入ってないやん」
女「今のはこっちでもそういう風になるでしょ!」
男「まぁそうか。続けていいよ」
女「まったく・・・。えーと・・・、男はさ、わたしが転校してきてすぐの頃、なんも分からんけん校内で迷っとった時に助けくれたやん?」
女「その時はすごい不安やったっちゃけど、男が来てくれて本当に助かったったいね。・・・合ってる?」
男「いい感じ、いい感じ」
女「うん。でね、そっから男のことばっかり見とったったいね。男は気づいてたか分かんないけど」
女「な、何が言いたいかっていうと・・・」
女「わたし、男のことが好きっちゃん」
女「(キャー、言っちゃった!早くなんか言って///)」
男「・・・・・・」
女「(あっそういえば、方言話したところでみんなそうじゃん!これ意味ないのかな?ってか早く何か言ってよ!)」
男「・・・、うん」
女「うんって・・・、okってことだよね?」///
男「うん、ok。いい感じで話せとーよ。今度から学校でもその感じで話せば打ち解けられるって」
女「・・・・・・、は?」
男「やっぱり俺の教え方がよかったけん1日でマスターできたっちゃろうね。いやー練習とはいえ、告られるってのはキュンとくるなー」
女「(わたしの一世一代の告白が・・・)」
男「さて、さすがに遅くなるし帰るか。後ろ乗れよ」
女「・・・・・・」
男「ちょっととばすけん、しっかり捕まっとけよ」
女「・・・・・・、バカ」ボソッ
男「ん?なんか言った?」
女「・・・別に」ギューッ
男「ちょ、痛い。捕まりすぎ」
―――後日
女「み、みんな休日はなんしよったと?」
女生徒1「あっ、女さん、前まで標準語やったのにどうしたと?」
女「やっぱり標準語だと浮くみたいだし・・・、ダメ、かな?」
女生徒2「そっちの方がいいっちゃない?やっぱり他人行儀みたいやったし」
女「えへへ、ありがと。ところで休日は、な、なんしよったと?」
女生徒2「うちはねー、彼氏とデートやったっちゃん。よかろー?」
女「へー、女生徒1さんって彼氏おるったいねー」
女生徒3「この子の彼氏超チャラいとってー」
女生徒1「そんなことないし。常識はあるっちゃけんねー」
女「うちの学校の人なの?・・・、じゃなかった。うちの学校の人と?」
女生徒2「あー、言い直した。女さんかわいいー」
アハハハハハ
オンナサンオモシローイ
男「うんうん、俺の指導のおかげやな」
男友「おい男、お前この間女とデートしとったやろ?他のクラスの奴が見かけたってよ」
男「はぁ?まぁこの間海に一緒に行ったけど、デートとかそんなんじゃねぇよ。方言指導しとった」
男友「意味分からん。女は明らかにお前に気があるっちゃけん、付き合えばいいやん」
男「え?そうと?」
男友「はぁ・・・、女かわいそう」
男「(もしかしてあの時の告白って・・・)」
おわり
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