女「……え?」
男「なんで不思議そうな顔をしているの?」
女「ん、いや、え? ごめんなさい、少し疲れて聞き間違いをしたみたい。
さっき貴方は何と言ったのかしら?」
男「だからね、安価で君に告白しようと思うんだ」
女「……聞き間違いじゃなかったのね」
女「そもそも、どうしてそういう結論に到ったの?」
男「君に告白したいと思ったけれど勇気が出なくてさ……」
女「いや、もう充分すぎる程の勇気はあると思うの。限りなく蛮勇に近いものではあるけれど」
男「そこで、ネットの力を利用すれば僕は君にようやく一歩踏み出せるんじゃないかなって」
女「いくらなんでも勇み足すぎるわ」
男「でも、どうだろう。やっぱりネットだから茶化した内容の安価とか踏んじゃうのかなぁ……」
女「……これはもしかして、私の方がおかしいのかしら?」
男「女さんはどう思う?」
女「私はその“どう”の選択肢が多すぎて答えを絞りきれないわ」
男「やっぱり女性への告白って、言葉だけじゃなくシチュエーションも考慮したほうがいいのかな?」
女「……そうね」
男「そうだよね。いきなり『好きです』なんて突拍子が無さ過ぎるからね」
女「……」
男「何でそんな難しそうな顔しているの?」
女「……なんでもないの、気にしないで」
女「一つ、いいかしら?」
男「ん?」
女「……いつから、好きだったの?」
男「初めて会った時から。ずっと、ずっと好きだった。
この人になら全てを注ぎたい、そう思えるほど深く愛している。僕の初恋なんだ」
女「……そう」
男「え、なんで女さん顔真っ赤なの?」
女「……なんでもないわ」
男「それでさ。本題に戻るんだけど、どういう安価ならグッとくる告白になると思う?」
女「もしかしなくても、私に聞いているの?」
男「今は女さん以外に誰もいないじゃないか」
女「……そうね」
男「また複雑そうな顔するね。何か悩み事?」
女「その種を蒔いている人から言われると威力が高いわね」
男「?」
女「……まぁいいわ。兎に角、どういう内容なのか予想しがたいから、いくつかパターンを知っておきたいの」
男「つまり?」
女「た、た、た、試しに一つ、ど、どういうのか……あ、安価出してみたら?」
男「女さん、ゆでダコみたいな頬になってるよ」
女「五月蝿いわね。誰の所為だと思っているのよ」
男「よし、それじゃあ……>>20辺りで!」
女「地味に遠い所を狙ってくるのね」
男「ほら、告白って緊張するし…心の準備がいるからさ」
女「そ、そうね。確かに心の準備は必要ね!」
たらこ
男「女さん!」
女「……は、は、はい!」
男「……」
女「……」
男「……」
女「……」
男「たらこ!」 >>20
女「は、はい! 交際経験なんて皆無のふ、不束者ですが……」
女「……」
女「……は?」
女「ん、え? 今なんて?」
男「いや、だからね。 『たらこ』だって」
女「何が?」
男「告白の台詞に決まってるじゃないか」
女「ちょっと待って、もう少しだけ私と同じスピードで生きて頂戴」
女「状況を整理しましょう」
男「うん」
女「貴方は正座していなさい」
男「……はい」
女「まず、今回の安価について。“告白の台詞”。これに間違いはないのね?」
男「exactly(その通りでございます)」
女「それで、貴方が言った台詞は?」
男「『たらこ』」
女「なんっっっでよ!! どうして告白の台詞が『たらこ』の一言なのよ!?」
男「い、いや、ほら、気持ちが伝われば言葉なんて飾りかなって、ね?」
女「男くん。貴方の美点であり欠点は優しいところ。クソ安価はクソ安価と正直に言うべきよ」
男「で、でもほら。たまたま当たった安価に罪は無いし。
それに皆が居てくれないと、僕は告白一つ出来ない臆病者だし……」
女「いやだから貴方の当初の目的はとっくに……」
女「……」
女「……はぁ。 仕方ないわね、もう一度くらいは安価を確かめてみましょう」
男「ほ、本当!?」
女「えぇ、本当よ。だからその子犬のような目で見つめてこないで。……照れるから」
男「じゃあ……>>40」
女「今度は丁度いい感じの遠さね」
男「うん」
女「……」
男「……」
女「……」
男「……」
女「……なんで、喋らないの?」
男「き、緊張して……」
女「ちょっと止めなさい私にまで伝わるからねぇ何か少し話ましょう最近読んだ本の話とかでも」
男「お、女さん!落ちついて!」
処女と童貞のSSのひとかな
月が綺麗でs…と思ったらまだ昼か…
男「女さん!」
女「……は、は、はい!」
男「……」
女「……」
男「……」
女「……」
男「月が綺麗でs…と思ったらまだ昼か…」 >>40
女「は、はい! わ、私も初めて貴方を見たときから……」
女「……」
女「そうね、見えないわよね……。まだお日様が出ている時間帯だもの……」
男「もしかして、キュンとした!?」
女「この気持ちがときめきなら、きっと私は今生ずっと楽しく過ごせるでしょうね……」
男「う~ん。その様子だとダメだったみたいだね」
女「さっきの台詞のどこに良いと思える要素があったのか教えてほしいのだけれど」
男「“月が綺麗でs”…の辺りかな!」
女「言い切ったら良かったのに! もぅ! 貴方の告白待ってるのに!」
男「あれ? もしかして、怒ってる?」
女「コホン……別に怒ってないわ。少し声を出したくなっただけ。気にしないで」
女「ねぇ男くん」
男「どうしたの?」
女「そこに正座しなさい」
男「……はい」
女「そもそも、貴方本気なの? 本当に好きなの?」
男「好き。大好き。他の誰も目に入らないくらい大好き」
女「そ、そぅ、なの……?」
男「僕はこの気持ちにだけは嘘はつけない」
女「う、うん……」
女「せ、正座を解いて良し。 仕切りなおしを許可するわ」
女「もぅ、次はちゃんとした安価に当ててほしいのだけれど」
男「こればかりは時の運だから仕方ないよ。安価の醍醐味でもあるんだからさ」
女「そういうものなのかしら?」
男「ちなみに次は、遠めに>>60くらいにしようと思うんだ」
女「あら? 人の居ない時間帯に遠めにしても大丈夫なの?」
男「少しずらしたほうが安価の人も考えやすいかなって」
女「……優しいのね。 それじゃあ、心の準備でもして待っていようかしら」
男「うん!」
お前のことが好きだったんだよ!
男「女さん!」
女「……は、は、はい!」
男「……」
女「……」
男「……」
女「……」
男「お前のことが好きだったんだよ!」 >>60
女「わ、私も! 私も、ずっと、ずっと貴方の事、好きでした!」
男「……え?」
女「にぶちん。本当、気付くのが遅いわよ、馬鹿……」
男「う、ウソ、ほ、本当に……!?」
女「うん。貴方じゃなきゃ、嫌。これからは、か、か、…彼女として、宜しく願うわ」
男「いやったあああああああぁぁぁ!!」
女「ふふっ。もぅ、喜びすぎなんだから」
男「嬉しいよ! だって、ようやく君に好きって言えて、しかも彼女になってくれるんだから!」
女「そ、そこまで想われると…て、照れくさいわ」
女(まぁ、男くんの当初の目的って最初から達成していた事実は……お墓の中にでも持っていこうかな)
女「それにしても、気の利いた安価だったわね」
男「そうだね。あの言葉のおかげで、これからの僕達が始まるんだ」
女「ありきたりだけれど、それ故に心に響くものを感じるわ」
女(少女漫画みたいな台詞で素敵よね。どういう時に皆使っているのか、ちょっと気になるなぁ)
ttp://www.google.co.jp/
女「」
女「…」
女「……」
女「……男くん、さっきの告白、やっぱり無しで」
男「なんでさ!!?」
【エピローグ】
女「なんだかんだで、私達も付き合い始めて長いわね」
男「そうだね」
女「告白の時は本当に大変だったわ」
男「うん……安価って、怖いんだね」
女「やっぱり大事な事は自分の口で言うべきという教訓を得ただけでも良しとしましょう」
男「面目ない限りだよ……」
女「別に貴方を攻めているわけじゃないわ。昔を振り返って、少しノスタルジックになっていただけよ。
それにね……」
男「?」
女「あの後に受けた貴方の“告白”、凄く……素敵だった。今でも私は貴方の虜よ、男くん」
男「それでさ、女さん。今日は僕らが付き合い始めて10年目の記念日だって、覚えてる?」
女「忘れる筈がないでしょう。貴方の誕生日と同じくらい大事な日よ」
男「もうそろそろ、僕も男としてケジメをつけようと考えたんだ」
女「え、ウソ……それって、それってひょっとして……!」
男「ほら、女さん。口に両手を当てると顔が見えないじゃないか」
女「ううん。嬉しい、すごく、すごく嬉しいの。今、泣くのを堪えるので精一杯なの」
男「ありゃりゃ、察しちゃったのかな?」
女「ふふ、きっとこれは“女の勘”ね」
男「だけどね、どうしても君に告げる為の勇気が足りなくてさ……」
女「それだけはやめてください」
男「まだ何も言ってないじゃない」
お付き合い有難う御座いました。
またどこかで。
>>36
懐かしい話を覚えていてくれて光栄です
>>36
タイトル教えてくれ
>>87
【男「ど、童 貞じゃねーし!」女「しょ、処 女じゃないわよ!」】
暇潰しのお供になれば幸いです
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