雪風「また廻り逢う時まで沈まない」 (562)
艦これSSです
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私は何の為に生まれてきたのだろう
私は誰の為に生きてきたのだろう
あの日から私は誰一人助ける事が出来なかった
誰も護る事が出来なかった
私の代わりに沢山の仲間が消えていった
私が殺した
私が幸運艦だったから
私が殺した
私が死神だったから
私が殺した
私が殺した 私が殺した 私が殺した 私が殺した 私がコロシタ 私がコロシタ 私がコロシタ 私ガコロシタ ワタシガコロシタ ワタシガコロシタ
ミンナヲコロシタノハワタシダ
ダレカ………タスケテ…………
雪風「っ!!」ガバッ
雪風「ハア………ハア……ハア……」
雪風「…………夢……?」
雪風「良かった…………」
雪風「初風……」
初風「………」スウスウ
雪風「天津風……」
天津風「………」スウスウ
雪風「時津風……」
時津風「………」スウスウ
雪風「みんな…生きてる……」
雪風「よかっ……た……」
雪風「………みんな……」
雪風「………」スウスウ
…………………
………
…
雪風「しれぇ!!」
提督「どうしたんだ、雪風」
雪風「雪風、今日もMVP取っちゃいました!!」
提督「神通から聞いているぞ。よく頑張ったじゃないか」
雪風「はい!雪風、頑張りました!!」
提督「この調子で今後も頑張りなさい」
雪風「ありがとうございます!司令!!」
提督「お迎えが来たようだ。下がっていいぞ」
雪風「お迎え?」
時津風「あ、いた〜!!雪風〜先に行くよ〜!」
雪風「時津風!!」
時津風「しれぇ!雪風もう連れて行っていいの?」
提督「ああ。いいぞ」
時津風「うん!雪風、行こ!行こ!」
雪風「はい!では、司令!雪風退室しますね!!」
提督「ああ」
雪風「時津風〜みんなはどこにいるのでしょうか?」
時津風「天津風と初風は食堂で待ってるって!」
雪風「そういえば、もうお昼ですもんね!」
時津風「そうだよそうだよ〜おっ昼!ごっはん!!」
雪風「おっ昼!ごっはん!!」
時津風「マネしないでよ〜雪風〜」
雪風「あはは!!」
時津風「雪風はいつも楽しそうだね」
雪風「だって、みんながいますから!!」
時津風「そうだね〜みんなが集まれば楽しいもんね〜!」
雪風「………そうですね!!」
時津風「ん?どうしたの?」
雪風「何でも無いですよ!」
時津風「ふ〜ん。ま、いっか」
時津風「あ、み〜つけた!天津風〜!初風〜!お待たせ〜!!」
天津風「時津風、あんまり大声は出さないでよ」
時津風「でも、大声じゃないと聞こえないでしょ!!」
天津風「そうじゃなくて…」
初風「ほら、時津風も雪風も間宮さんのところで注文して来なさい」
時津風「む〜初風はつれないなぁ」
雪風「でも、確かに雪風もお腹が空きました!時津風も早くいきましょう!!」
時津風「んあ!待ってよ雪風!まだ話が…」
初風「私からはもう何も無いわ。いってらっしゃい」
時津風「初風のうらぎりもの〜!!」
雪風「ほら、早く早く!!」
時津風「む〜」
雪風「おっ昼!ごっはん!!」
時津風「あ!また!!」
雪風「時津風も一緒に!!おっ昼!ごっはん!!」
初風「………ほんと、仲がいいわね…」
天津風「羨ましいのかしら?」
初風「そんなんじゃないわよ」
天津風「ふぅん」
初風「何よ、その目は」
天津風「何でも無いわ」
雪風「間宮さん!こんにちは!!」
間宮「あら雪風ちゃん。こんにちは、何が食べたいの?」
雪風「え〜っと………中華丼で!!」
間宮「中華丼ね?」
雪風「はい!時々食べたくなっちゃうんです!」
間宮「うん。それは分かるわ……はい、どうぞ」
雪風「ありがとうございます、間宮さん!」
間宮「どういたしまして!時津風ちゃんはカレーでいいの?」
時津風「カレー!!」
間宮「はいはい。時津風ちゃんのお昼はいつもカレーなのね」
時津風「間宮さんのカレーはおいしーからね!」
間宮「ありがとう。はい!」
時津風「ありがと〜」
間宮「ごゆっくり〜」
雪風「時津風、初風のところに戻りましょう!」
時津風「はいよ〜」
雪風「お待たせしました!!」
天津風「おかえりなさい」
初風「天津風の隣と私の隣の席は確保してるから好きに座りなさい」
時津風「じゃ、時津風はこっち!!」
天津風「もっと落ち着いて座りなさいよ。吹き流しが取れちゃう」
時津風「そういえばさ、私気になっていたんだけどさ〜」
天津風「だ、だめよ!」
時津風「その吹き流しってどうなってんのさ〜触らせて!!」
天津風「ダメダメダメダメ!!取れちゃうから!!」
時津風「えぃ!」
天津風「きゃーー!!」
時津風「ほうほう!ふむふむ!そうなっているのか〜!!えいっ!!」
天津風「お願い止めて!!取れちゃう!!取れちゃうってば!!」
時津風「動かないでって……あ…」
天津風「あ……?」
時津風「ごめん、取れた」
天津風「あー!時津風の馬鹿っ!!」
時津風「ごめんごめん。ほら、福神漬けあげるから気分直して」
天津風「いらないわよ!!あーん…どうしよ………!」
初風「ほら、貸しなさいよ」
天津風「でも…」
初風「それくらい私が治してあげるから貸しなさい」
天津風「うん………」
初風「…………ほら、出来たわよ」
天津風「ありがと……」
初風「どうも。それより時津風」
時津風「ん?何?あ、この人参おいしー」
初風「…………もういいわ…」
時津風「も〜なんなのさ〜…んむっ……うま〜!!」
雪風「あむっ……んむっ……」
初風「あんたもあんたでマイペースだし、十六駆逐ってホント………」
雪風「なんでしょうか?」
初風「何でもないから早く食べちゃいなさい。外で待っている人もいるんだから」
雪風「雪風、全力で頑張ります!!」
初風「ほら、こぼした…」
雪風「んむっ!んむっ!っぷは!!」
雪風「ご馳走様でした!!」
初風「よくあの量をこの短時間で掻き込んだわね…」
雪風「はい!頑張りました!」
初風「………はぁ…」
時津風「雪風速〜い」
初風「あんたは遅い!もう少し急ぎなさい!」
時津風「はいはい」
時津風「ごちそうさま〜!!」
初風「……遅い…」
時津風「しょうがないじゃん!カレーは美味しく食べなきゃだからね!」
初風「…訓練に行くわよ。神通さんが待ってる」
時津風「え〜やだやだ〜!!今日はもうお休みがいい〜!!」
初風「そんな事したら、次の訓練の時に半殺しになるまで猛特訓されるわね」
時津風「う…それは………」
初風「いいの?」
時津風「無理………」
初風「なら行くわよ」
時津風「鬼〜!!鬼〜!!」
初風「私が鬼なら神通さんは修羅ね」
天津風「初風……声抑えて………」
神通「もうご飯は終わったの?」
時津風「は、はい!はい!!」
神通「他の3人は?」
初風「食べ終わりました!」
天津風「私もです!!」
雪風「はい!!」
神通「それは良かったです…では……」
神通「修羅の様な訓練をしましょうか?」
初風「ふぇっ!?」
神通「10分後に偽装を着けて港に集合です。いいですね?」
初風「は、はい!!」
神通「いい返事です…では、また後ほど……」
時津風「…………初風…?」
初風「…………ごめん…」
天津風「やっちゃったわね…」
雪風「が、頑張って行きましょう!!」
…………………
神通「まずは海上でのメニューです。身体慣らしに艦隊運動を私の指示通りに行って下さい。その後は砲撃、雷撃の訓練をし、十七駆逐の子と実戦形式で演習して頂きます」
神通「演習後は陸上でのトレーニングとして15分以内に鎮守府の周りを2周。それから直ぐに腹筋、背筋、腕立て、スクワットを100回3セット。その後はシャトルラン、対人訓練です」
時津風「あの…」
神通「なんですか?」
時津風「いつもよりも項目が多い気がし…」
神通「いつまでも同じ内容では成長出来ません。慣れたら負荷を増やすのが大切なのですよ?」
時津風「あ、はい」
神通「他には?……なさそうですね」
神通「では、午後の訓練を行います。私について来て下さい…」
四人「はい!!」
神通「次」
初風「はい!!」
初風「仰角調整…36度……」
神通「初風。考えて撃っていては実戦でやられてしまいます。訓練だからこそ直感で調整出来るようにするのですよ」
神通「自分の速度、目標の速度、風向き、風速、自転。それらを感覚で瞬時計算出来るようになるまで何度も何度も撃つのです」
初風「はい!!」
神通「では、もう一度。砲撃開始」
初風「っ!!!」ズドン
ザバーン
神通「遠。次弾装填急いで下さい」
初風「はい!!」ズドン
ザバーン
神通「遠。殆ど変わっていませんよ」
初風「はい!!」
神通「元の位置からやり直しです」
初風「はい!行きます!!」
神通「始めて下さい」
初風「てぇ〜!!」ズドン
ザバーン
神通「近。次弾装填」
初風「はい!!」ズドン
神通「遠。挟叉」
初風「当たれ!!」ズドン
神通「遠。さっきよりは近づきましたが、まだまだですね」
神通「次は天津風です。前へ」
天津風「はい!!」
………………………
神通「ご苦労様でした。今日の訓練は終わりです。明日の訓練に備えて休んで下さい」
四人「はい!」
神通「では、お先に失礼します…」
時津風「も…もう……無理……」
天津風「脚が……がくがく…」
雪風「雪風ももう…初風?」
天津風「どうしたの?」
雪風「初風が……」
初風「」
天津風「目を開けたまま気絶してる!?」
時津風「ホントだ〜」
天津風「ど、どうしましょう!!」
時津風「何にも反応な〜い!あはははは!!」
天津風「と、時津風!!止めなさい!!」
時津風「ちぇ…ま、とりあえずお風呂には入れさせよ?このまま布団に入れたら明日大変な事になるし…主に臭いで」
天津風「確かに………雪風、左支えてくれない?」
雪風「分かりました!!」
天津風「せ〜の!!」
時津風「頑張れ頑張れ〜」
天津風「時津風も手伝って!!」
時津風「分かったって…」
天津風「う〜重〜い…」
時津風「なんだかんだで天津風が一番失礼…」
天津風「う、うるさい!!」
雪風「あと少しですよ!頑張りましょう!!」
天津風「着いた……」
時津風「とりあえず服脱がしちゃうよ!!」
時津風「うっわぎ!シャーツ!スッカートしったぎ!はい脱〜げた!」
天津風「全裸で放置は可哀想じゃない…?」
時津風「私も脱ぐからちょっと待ってよ〜」
時津風「先にシャワー浴びさせとくね〜」
天津風「分かったわ。直ぐに行くから」
時津風「行くよ〜初風、雪風!!」
雪風「待って下さ〜い!」
天津風「走っちゃダメよ!!」
雪風「雪風は転びません!!」
天津風「もう…」
時津風「雪風〜こっち向いて!」
雪風「何です…うわっ!!冷たいです!!」
時津風「引っかかった引っかかった!」
雪風「反撃なのです!!」
時津風「うわっ!?やったな!!」
二人「ワーワー!!」
天津風「もう…子供じゃないんだから…」
初風「………んん………あれ…?」
天津風「あ、気がついた?」
初風「私………っ!?神通さん!!」
天津風「もう終わってお風呂よ。初風、目を開けたまま気絶してたのよ?」
初風「………ごめん…」
天津風「どういたしまして。それより、身体全部洗っといてあげたわよ」
初風「えっ?えっ!?ええっ!!?」
天津風「大丈夫、大切なところだけは触ってないから」
初風「………………う…ん」
天津風「私はあの二人止めて来るから手早く済ましちゃってね」
初風「………うん……」
天津風「じゃ、行ってくるわね」
初風「天津風………ごめん…ありがと…」
天津風「お互い様よ。こら、時津風!雪風!!他のみんなに迷惑でしょ!!」
初風「…………はぁ…」
……………………
初風「電気、消すわよ」
時津風「いいよ〜!」
天津風「よろしく」
雪風「…………はい…」
初風「雪風、どうしたの?」
雪風「いえ、何でもありません」
初風「そう?じゃ…」パチン
雪風「…っ!?」
時津風「おやすみ〜」
天津風「おやすみ」
雪風「はい…おやすみなさい……」
初風「……………」
天津風「……………」スウスウ
時津風「……………」スウスウ
雪風「……………うぅ…」
初風「雪風……」
雪風「は、はい!?」
初風「あんた、寝れないの?」
雪風「そういう訳では…」
初風「おいで」
雪風「え?」
初風「こっちの布団に入りなさいってこと」
雪風「でも…」
初風「いいから早く」
雪風「はい…」
初風「………何があったかは知らないけど、安心しなさい。私がここにいるでしょ?」
雪風「はい………」
初風「今日はゆっくり寝れるといいね」
雪風「はい………」
初風「おやすみ雪風」
雪風「…ありがとう………初風お姉ちゃん…」
初風「ん……」
雪風「…………あったかい……………」
…………………
…………
……
……………………
時津風「雪風〜おっきて!!おっきて!!」
雪風「はい……雪風は沈みましぇん…」
時津風「雪風〜!おっきてよ〜!」
雪風「ふぁ……時津風…?」
時津風「朝だよ!朝!!」
雪風「朝……」
時津風「それよりどうして雪風が初風の布団にいるのさ?」
雪風「それは……」
初風「湯たんぽ代わりよ。この子、体温高いから布団に入れておくと丁度いいのよ」
時津風「へ〜そうなんだ!」
雪風「そ、そういう事です」
時津風「なら、今日は時津風と寝よ!最近は冷えてきてキツイんだよね〜」
雪風「いいですよ!じゃあ、雪風は今日時津風と一緒に寝ますね!!」
時津風「そうこなくっちゃ!!」
天津風「ほら、二人とも早く布団を片しなさいよ?朝ごはん食べれなくなるわよ」
時津風「面倒くさいな〜天津風がやってよ〜」
天津風「だめよ。自分でしっかり片しなさい」
時津風「天津風のケチー!」
天津風「駄目なものは駄目」
時津風「うえ〜」
コンコン
時津風「誰〜?」
比叡「比叡よ」
夕立「夕立もいるっぽい!」
天津風「何か用でしょうか?」
比叡「十六駆逐に召集がかかっているから、早く執務室に向かってくれるかな?」
天津風「わかりました。わざわざありがとうございます!」
比叡「いいからいいから。ほら、急いで〜」
雪風「はい!初風、天津風、時津風行きましょう!」
初風「そんなに慌てなくてもいいわよ」
時津風「雪風待って〜!」
天津風「あ、待ってってば!」
…………………
提督「揃ったな」
初風「はい。十六駆逐四名全員揃っています」
時津風「で、話って何なのさー」
天津風「こら、時津風!なんて口を…」
提督「天津風、もういい。こいつには何度も言ったが治らなかった。諦めたよ」
時津風「こいつって言うなよ〜」
天津風「でも…」
提督「天津風、ありがとう」
天津風「へっ!?」
時津風「あ、ハートの煙出てる」
天津風「ば、馬鹿!!見ないで!!」
時津風「痛い痛いって!」
提督「ごほん…そろそろ本題に入るぞ」
初風「よろしく」
提督「今回お前達には輸送艦の護衛をして貰いたい」
雪風「船団護衛ですか?」
提督「そうだ。本来ならば6〜8人ぐらいで行って貰いたいのだが、どうしても数が足りないのだよ」
初風「最近多くの駆逐艦を輸送任務に借り出しているものね」
提督「ああ。資源が無ければ戦争の継続は不可能だ。その為に駆逐艦や軽巡の子達に負担させるのは申し訳ないところではあるのだがな」
初風「ま、これが私達駆逐艦の大切な役割だし、しょうがないわね」
提督「そう言って貰えれば有難いよ」
初風「勘違いしないで、別に認めたい訳では無いから」
提督「分かってるよ」
初風「で、場所は?」
提督「パプアニューギニアだ」
初風「油ね」
提督「そうだ」
初風「分かったわ。出立はいつにするのかしら?」
提督「明日出立してくれ。その代わり今日一日は訓練や任務は全て取り消しにして自由にしてくれていい」
初風「了解。他には?」
提督「特に無い」
初風「じゃ、退室するわよ」
提督「ああ」
初風「じゃ、戻るわ。失礼しま…」
提督「そうだ、一つだけ言い忘れてた」
初風「何よ?」
提督「くれぐれも、対空装備は充実させておけよ」
雪風「どうしてですか?」
初風「ガ島よ」
雪風「どうしてガ島?」
初風「雪風…あんた聞いてなかったの?ガ島に敵の飛行場が出来てるって」
雪風「あ!聞きました!!」
初風「忘れてちゃ意味がないわよ!」
雪風「ごめんなさい…」
初風「説教は後!話が逸れたわね」
提督「ああ。まあ、初風が言っている通りガ島の飛行場から攻撃機が送られるやもしれん」
初風「了解。なら、10cm高角砲と13号の使用許可をくれない?出来たら94式高射装置も欲しいけど」
提督「いいぞ。全員積み替えておけ」
初風「どうも。じゃ、今度こそ退室していいのかしら?」
提督「ああ。すまなかったな」
初風「いいのよ。失礼します」
時津風「じゃーねー!」
天津風「失礼しますね」
雪風「しれぇ!失礼します!!」
……………
乗組員「よう、お嬢ちゃん達。今日から暫く頼んだぞ」
初風「貴方達が輸送艦の?」
乗組員「そうだ。佐渡丸、笹子丸、吾妻山丸、淡路山丸の四隻で輸送船団を組む」
初風「よろしくお願いします。後ほど基本陣形や戦闘時の陣形や艦隊としての動きなどを打ち合わせしましょう」
乗組員「了解だ。後で各艦の人間を呼び寄せよう」
初風「はい」
雪風「おじさん!今日からよろしくお願いします!」
乗組員「おじさんは酷いな…お嬢ちゃん」
雪風「ごめんなさい…」
乗組員「しょげるなよ…悪いことした気分になる」
雪風「そうなんですか?」
乗組員「まあいいや。おじさんでもおじいちゃんとでも好きな様に呼びな」
雪風「はい!おじさん!!」
乗組員「ははは。ま、お互い仲良くしようじゃないか」
乗組員「航海長!こっちに来て下さい!ちょっとお話しが…」
乗組員「了解だ。じゃ、また後でな!」
……………………
雪風「目的地が見えて来ました!!」
時津風「ホントだ!!」
天津風「いつもよりも遠いからしょうがないとはいえ、少し疲れたわ」
初風「あんた達、気を引き締めなさい。こういう時に限って敵は来るんだから」
時津風「そうは言っても、まともな戦闘なんて無かったし」
初風「戦闘にまともも不真面目もないから。たとえ駆逐艦1隻が相手でも、下手したら一発轟沈するのは分かってる?」
時津風「分かってはいるけどさ〜」
初風「だったら気を引き締める!」
時津風「はいはい…」
天津風「ちゃんと初風の言うこと聞き……」
雪風「対空電探に感有り!!」
初風「やっぱり来たわね!雪風、数は?」
雪風「この距離だと正確じゃないですが…」
初風「大体でいいから」
雪風「………100ぐらいです!」
初風「確実にこの輸送船を殺りに来ているわね………」
天津風「初風どうする?敵機接近までそんなに時間がないわよ」
初風「どうもこうも、逃げ切るのは不可能だから迎撃するしかないわ」
初風「全艦陣形変更!輪形陣!!全ての輸送船は輪形陣の内側に!艦娘は打ち合わせ通りの位置について!」
雪風「はい!!」
初風「天津風は輸送艦の人達に打電を!」
天津風「分かったわ!」
初風「雪風は東、時津風は西を警戒!私は南、天津風は北!他の方角の対空射撃援護中でも、絶対に自分の受け持った方角は見落とすな!いい?」
雪風「はい!」
天津風「全ての輸送艦に打電完了したわ」
初風「了解。天津風も対空戦闘準備して」
天津風「了解っ!」
天津風「連装砲くん対空射撃準備完了。10cm高角砲も機銃も大丈夫よ!」
初風「さ、来るわよ!南方より敵戦闘機10、攻撃機5、爆撃機10接近!!対空射撃撃ち方始め!!」
雪風「主砲3基6門、機銃2基4門全門開きます!!」
時津風「撃つよ〜!」
天津風「連装砲くん、最大仰角!」
初風「敵機6機撃墜!対空砲火が足りない!!」
天津風「敵機、全機輸送艦の方へ向かってるわ!!」
初風「あいつら、輸送艦しか狙っていないの!?」
雪風「東から敵爆撃機10接近です!!」
時津風「南西から攻撃機8、戦闘機8接近してるよ!」
初風「まずい!分散して弾幕が更に薄くなる!!」
天津風「敵爆撃機、輪形陣内側に到達!!」
初風「駄目っ!」
ヒューン ズドーン!!
天津風「淡路山丸被弾!!そんな…艦尾から火が!!」
雪風「東からの爆撃機7機が雪風の頭上を突破しました!!」
時津風「攻撃機2に突破された!」
雪風「敵爆撃機、淡路山丸上空に到達!!急降下!!」
時津風「攻撃機も航空魚雷投下!!」
ズドーン!!!!
天津風「淡路山丸、左舷に被弾!機銃の対空射撃も停止!速度低下!傾斜が始まってるわ!!」
初風「……………淡路山丸は囮になってもらう。沈没までは時間の問題。それより他の輸送艦を無事に送り届けるわよ!」
雪風「助けないんですか!?淡路山丸には沢山の人が乗っているんですよ!」
初風「他の艦を救うのが優先なのよ。このままだと全滅する!」
雪風「でもっ!」
初風「綺麗事を言っている場合じゃないの!喋っている暇があるなら対空に集中しなさい!」
雪風「………はい。雪風、対空射撃に戻ります」
初風「了解。次が来るわ!」
……………………
初風「………敵艦載機全機撤退を確認…
対空戦闘終了…………雪風は水上電探で索敵を、時津風は対空電探で対空警戒。天津風はパプア・ニューギニアに救助の為の艦艇を出して貰えるように依頼の打電をして…」
天津風「…うん」
初風「たった1隻しか護れなかった…」
雪風「笹子丸の皆さん!吾妻山丸の皆さん!あと少しで援軍が来ます!!あと少しですから頑張って下さい!!」
乗組員「寒い………寒い…」
乗組員「上杉……おい…上杉答えろよ……何で……動かねえんだよ…上杉………」
乗組員「死にたくねぇよ…こんなところで………」
雪風「皆さんお願いです!!頑張って下さい!!あと少しで助かるんです!!」
雪風「雪風に掴まって下さい!!雪風は絶対に沈みませんから!!ほらっおじさんも!」
乗組員「すまねえ………嬢ちゃん……」
雪風「ごめんなさい…ごめんなさい……雪風が昔みたいな艦だったら…みんな助けられたのに……今の雪風は……数人しか助けられないんです……!ごめんなさい!」
乗組員「泣く必要はない。お嬢ちゃん達のお陰で全滅はしないで済んだんだ」
雪風「でも…」
乗組員「佐渡丸を救ったのは間違いないんだ。本当にありがとう」
雪風「うぅ………」
乗組員「ほら、泣くな」
雪風「は…い……」
天津風「救助が来たわ!!」
乗組員「助かった……お嬢ちゃん。これだけは覚えていて欲しい…」
乗組員「お嬢ちゃんに助けられた命もあるんだってことを忘れないでくれ」
雪風「おじさん…」
乗組員「頑張れよ!」
今日はこれで終わりです
また来ますね!
………………………
初風「提督……十六駆逐隊、海上護衛任務から帰投しました………」
提督「ああ。大雑把には耳に挟んでるが……まずはこれだけ言っておこう。お疲れ様」
初風「………ごめんなさい…提督……」
提督「いや、あのような小人数で行かした私が悪いんだ。私こそ謝らねばならない。辛い想いをさせてしまったな…すまなかった」
初風「あれは私の指揮がダメだったから起きたわけで!」
提督「初風。私が悪かったと言っているんだ。分かるか?」
初風「………はい…」
提督「責任の在りかについては終わりだ。それよりも聞きたいことがあったんだ」
初風「聞きたいこと?」
提督「敵の攻撃について詳しく教えてくれないか?」
初風「それは、航空機で…」
提督「そうではない。俺の聴き方が悪かった。敵は輸送艦のみを狙っていたのか?それともお前達と輸送艦を全体的に狙っていたのか?」
初風「輸送艦のみを狙っていたわ。私達には全くと言っても良いほど興味を持たなかった」
提督「もう一ついいか?お前達は偵察機を見たか?」
初風「いや、見てないわ。勿論見落とした可能性はあるけど」
提督「天気はどうだった?」
初風「海は荒れていたわね。空はそうでも無かったけど」
提督「もしかしたらだが…」
初風「もしかしたら何?」
提督「いや、順を追って話そう。少し長くなりそうだからソファーに座りなさい」
初風「分かったわ」
提督「さて………初風。お前は、戦争で最も重要なのは何だと思う?」
初風「資源ね。これが底を着けば自然と国は破滅へ向かっていく。兵器を始め、弾薬や燃料などが供給されないから戦力は消耗する一方になる。で、日本は資源が少ない。だからこそ海上護衛輸送で資源を持ち帰らなければならないわ」
提督「そうだ。資源が無くなれば日本国民の不満が積もりに積もって暴動がおきて内部からも崩壊するなどといった回答もあるが、それは別にいい。初風が言った通り、この国は海上護衛輸送が出来なければ滅亡するだろう」
提督「そこでだ…お前がもしも日本を攻撃する立場だったら、何をする?」
初風「資源が底を着くように………あっ……!」
初風「でも、深海棲艦がそんな知恵を持っているなんてありえない!今までだってそんな事はして来なかったし!!」
提督「あり得るか有り得ないかじゃない。実際に現実に起こり始めているんだ。それに初風、お前は昨日まであったものは今日もあるなんて考えているのか?」
初風「ごめん…少しだけ取り乱した…」
提督「感情では否定したいのは痛いほどよく分かっている。しかし、それに振り回される論外だ」
初風「うん…続けて頂戴」
提督「深海棲艦がもしも我々の輸送を邪魔したいのならば、理由は二つある」
初風「日本の資源を枯渇させるためってのと……」
提督「よっぽどガ島を護りたい何かがある…だ。沈められた輸送艦はガ島に送り込む兵士や艦娘を乗せているわけでは無かったが、敵からは確実に乗っていないと確認することは出来ないはずだ。そこで、敵航空機はそのブラックボックスたる輸送艦を集中的に攻撃した」
提督「そしてもう一つ。いづれの説をも裏付ける根拠になるのが、潜水艦の存在だ」
初風「潜水艦?私達、潜水艦には出くわしていないわよ?」
提督「お前達もソナーなどは使っていたとは思うが、海が荒れていたのならば見落とす可能性もあるだろう?」
初風「それはしょうがないじゃない」
提督「それはそうだ。しかし、言いたいのはそこではない。海が荒れていれば敵も同じくソナーで水上艦を発見するのは難しい。すると、潜望鏡などで見つけたのだろうな」
初風「それがどうしたのよ?」
提督「おかしいと思わないか?天気は仕方がないにしても、たまたまガ島近郊でたまたま潜望鏡を出していた潜水艦がたまたま海上護衛輸送中の艦隊を発見し、たまたま飛 航空機の大編隊が現れる」
提督「輸送航路は同じものではなく、毎回別のルートを使う。そのため、たまたまそこのルートが待ち伏せされているとは考えられ辛い」
初風「ねえ…もしかして……」
提督「日本からパプアニューギニアへの輸送ルートとして考えられる箇所には全て潜水艦が密に監視していた…」
初風「………あり得る…」
提督「そう考えた方が全ての辻妻が合う」
初風「じゃあ…ガ島からの輸送は殆ど不可能になるってことなんじゃ…」
提督「そういうことだ。敵が日本の資源輸送の妨害の為にやっているのか、はたまたガ島を護る為にやっているのかまでは分からん。しかし、どちらにせよ我々の脅威になるのは間違いない」
初風「じゃあ、どうするの…?」
提督「ガ島を攻略する」
初風「…………分かってて言っているの?」
提督「ああ。分かった上で言ってる。こんな胸糞悪い冗談なんて言うつもりは無い…」
提督「悪夢の作戦の再現なんて…」
今日は終わりです!
ナイトメアパーティーっぽい!
提督「………以上だ。お前達は金剛達第一夜襲艦隊に続いてトラックから出撃しなさい」
比叡「第一夜襲部隊の後ですね!了解です!」
霧島「かしこまりました!司令!」
夕立「夕立頑張るっぽい!」
雪風「はい!!」
天津風「分かったわ」
提督「質問がある者はいるか?………いないようだな」
提督「よし、全員戻っていいぞ。すぐにトラックへ向かってくれ。トラックの司令官には私から伝えておく」
提督「検討を祈る!」
比叡「はい!!」
天津風「さて…出港の準備しなきゃ」
雪風「天津風、頑張りましょうね!」
天津風「そうね」
雪風「あ、初風!」
初風「………雪風…天津風…」
雪風「どうしたのですか?」
初風「いや………何でもない…」
雪風「そうですか?」
初風「あんた達………この前の戦いの事は大丈夫なの…?」
天津風「ま、まあ……」
雪風「………はい!!雪風は大丈夫ですよ!」
初風「ならいいけど……」
天津風「初風…大丈夫?」
初風「私は大丈夫。それより……」
雪風「はい?」
初風「絶対に…帰ってきて」
天津風「どうしたの初風?本当にへんよ?」
初風「そうね……もしかしたら調子か悪いかもしれないわ…風邪かしら……」
天津風「無理しちゃだめよ?」
初風「ありがと。とりあえず頑張って来なさい」
天津風「ええ」
雪風「行ってきます!!また帰ってくるまでには風邪も直して下さいね!」
初風「頑張るわ………いってらっしゃい」
………………………………………
比叡「こちら比叡!先行していた第一夜襲艦隊が敵飛行場に大打撃を与えたようです!」
霧島「さっすが金剛お姉様と榛名ね!」
比叡「あ、金剛お姉様から更に伝聞が…」
霧島「金剛お姉様は何と?」
比叡「えっと……次は比叡と霧島の番ネ!頑張るデース!また後で会いまショウとのこと!!」
霧島「私、霧島は金剛お姉様の為に頑張ります!」
比叡「私も気合!入れて!行きます!!」
長良「でも、敵の飛行場が機能停止したお陰で昼になっても追撃は受けないで済みそう!」
比叡「そう!だからこそ次は私達で決める!」
霧島「霧島の分析では長良が言う通り、敵飛行場の追撃がない以上、その分長い襲撃が可能になる筈です」
比叡「流石は霧島!金剛型の頭脳だね〜!」
霧島「いえ、比叡お姉様に褒められて大変光栄です」
比叡「霧島はかわいいな〜!」
霧島「ひ、比叡お姉様!おやめ下さい!!眼鏡が取れちゃいます!!」
比叡「あ、ごめんごめん!」
霧島「いえ、問題ないです」
…………
金剛「Hey!比叡!!霧島!!ただいまデース!」
比叡「お姉様!!お帰りなさい!!お待ちしてました!」
榛名「霧島、榛名達第一夜襲艦隊は帰投しました」
霧島「お疲れ様、榛名。金剛お姉様」
金剛「ノンノン!私達はエネミーのフライトロードに向けてたっくさんのバーニングアタックをしたデス!楽しかったデスよー!」
榛名「そうですね、金剛お姉様」
比叡「見てて下さい金剛お姉様!次は私が決めてきますから!」
金剛「期待してマスからねー比叡!霧島!」
比叡「はい!!」
霧島「お任せ下さい」
金剛「その勢デス!!あ、そだ」
比叡「どうしました?」
金剛「私達の出番は終わったノデ比叡と霧島に残りの弾薬を渡しておきマスね?」
比叡「お、お姉様の弾薬!!」
金剛「そうデスよ〜はい!比叡?」
比叡「ありがとうございます!!」
金剛「霧島も…ハイ!」
霧島「ありがとうございます!!」
金剛「ノープロブレム!比叡達はそろそろこのトラックから出撃デスよね?」
比叡「はい!」
金剛「気をつけるのデスよ?油断は大敵デス」
比叡「はい!!」
金剛「いい返事デス。じゃあ、私と榛名は入渠して来マス。いい報告を待ってるネ!」
比叡「はい!行ってきます!!金剛お姉様!」
時雨「みんな。比叡さん達から伝言だよ」
雪風「伝言ですか?」
時雨「うん。二時間後出撃をするよって」
雪風「二時間後ですね!」
天津風「了解」
夕立「っぽい!!」
時雨「僕は他の人にも伝えて来るから、また後でね」
夕立「また後でね、時雨!」
時雨「うん。また後でねみんな」
夕立「いよいよ楽しいパーティーが始まるっぽいよ!!」
春雨「そうですね!夕立姉さん」
雪風「みなさん、頑張っていきましょう!!」
………
比叡「みんな!準備はいい?」
霧島「はい!」
長良「もっちろん!」
白露「白露が一番最初に準備出来たよ!」
時雨「僕は大丈夫」
村雨「大丈夫よ!」
夕立「大丈夫っぽい!」
春雨「大丈夫です…」
五月雨「はい!大丈夫です!!」
暁「暁に任せて!」
雷「私に任せて!」
暁「雷!私に譲りなさいよ!」
電「喧嘩しちゃダメなのですー!」
朝雲「もう、第六の子は…」
天津風「私は大丈夫よ」
雪風「雪風も大丈夫です!」
比叡「今回の作戦は大変かもしれない!だけど、みんななら乗り越えられる!!みんなで助け合って行くよ!それに、後方には愛宕達も控えてる!!」
比叡「よし…全艦抜錨!!私についてきて!!」
今日はここまでです
また来ますね!
比叡「そろそろガダルカナルの付近だから、全員警戒態勢を取ったほうがいいかな」
霧島「そうですね。敵の艦隊が待ち受けている可能性があります。ご注意を」
比叡「でも、今のところ水上電探に感は無しだよ?」
霧島「もしかしたら、島の沿岸に沿って待機している可能性があります」
比叡「そうね…誰か前衛になって警戒してくれない?」
夕立「夕立がいくっぽい!!」
比叡「夕立ね?他にはいる?」
春雨「では……夕立姉さんが行くなら春雨も行きます…」
夕立「春雨も来るっぽい!!嬉しいわね!!」
春雨「夕立姉さんの為ですから」
比叡「分かった。じゃあ、夕立と春雨を前衛に配置するよ」
比叡「全艦、鶴翼の陣形!!五月雨と村雨、朝雲は私達の左方で待機!春雨と夕立は前衛として索敵、警戒に当たって!」
春雨「敵がいないですね…夕立姉さん」
夕立「………春雨、戦闘体制に移行よ」
春雨「えっ!?」
夕立「見つけた!春雨、一緒に突撃するっぽい!!」
春雨「比叡さん達に連絡はどうします?」
夕立「そんなことしてたら敵にバレるっぽい!!それよりも先に攻撃して混乱させるよ!!」
春雨「わ、分かりました!!」
夕立「目標、敵艦隊!!全艦突撃するっぽい!!」
春雨「はい!!」
夕立「春雨!!右舷に敵艦隊っぽい!!砲撃開始っぽい!!」ズドン!
春雨「はい!!」ズドン!
イ級「!!?」
夕立「敵艦隊を混乱させるっぽい!!第二射砲撃開始よ!!」ズドン
イ級「!!?」
夕立「命中!!撃って撃って撃ちまくるっぽい!!」
春雨「はい〜!!」
夕立「春雨、恐いっぽいの?」
春雨「こ、恐いですけど、夕立姉さんと一緒に頑張ります!!」
夕立「その意気っぽい!!全速力で走り抜けるっぽい!!」ズドン!
春雨「はい〜!!」ズドン!
比叡「あの子たち戦闘を始めた!!?」
霧島「どうします?比叡お姉様」
比叡「私達が何もやらない訳にはいかない!」
霧島「しかし、私達は三式弾を装填してしまっていますよ?」
比叡「徹甲弾に換装している暇はない!霧島と私はこのまま三式弾を使用!全艦攻撃準備!!」
霧島「完了しました!!」
比叡「まずは私が探照灯を照射するから、霧島!指揮は任せたよ!」
霧島「はい!」
比叡「探照灯照射始め!!全艦攻撃開始!!」
比叡「ひえっ!?」
霧島「敵艦隊がこちらを囲い込もうとしてる!!?」
比叡「霧島!」
霧島「はい!!全艦、敵陣形に突撃開始!!」
霧島「第一主砲砲撃開始!!」ズドーン!!
暁「比叡さんだけじゃ敵艦隊が殆ど見えないわ!!私が探照灯を照射するわ!」
電「あ、暁ちゃん!それは危ないのです!」
雷「そうよ!危険だわ!!」
暁「大丈夫よ!暁に任せなさい!!」
電「でも…」
暁「大丈夫よ、電!私は一人前のレディー何だからこれくらい何てこと無いわ!!むしろ、一人前のレディーならやらなきゃいけないのよ!」
電「でも、暁ちゃん震えているのです…」
暁「そ、そんなこと無い!!だって私は…一人前のレディーなんだから!!探照灯照射!!」
電「暁ちゃん!!」
暁「今よ!!みんな撃ち始めて!!」
リ級「!!」ズドーン!
ツ級「!!?」
霧島「て、敵重巡の砲撃が敵軽巡に命中!?」
比叡「長良!私と一緒に軽巡を砲撃するわよ!」ズドーン!
長良「まっかせて!!」ズドン!
ツ級「!!?」
長良「雷撃開始!」
ズドーン!!
ツ級「」
長良「敵軽巡沈黙!!」
比叡「よし!!」
リ級「……」ズドーン!
イ級「……」ズドン!
ロ級「……」ズドン!
比叡「くっ……!!」
霧島「比叡お姉様!このままだと危険です!!早く探照灯を閉じて下さい!」
比叡「そうは言ってられない!!私が探照灯を閉じてたら他の子が危険に晒される!主砲砲撃!!」ズドーン!! ビリリッ
比叡「きゃぁぁぁ!!!」
霧島「お姉様!!?」
比叡「だ、大丈夫……今の砲撃で電路かイカれただけ……」
霧島「まさか!!?」
比叡「統一射撃が出来なくなった。それよりも私に構わずに敵を!」
霧島「………はい!」
暁「うぁあっ!!あぁぁぁぁぁ!!」
電「暁ちゃん!!」
雷「暁!!早く探照灯を閉じて!!」
暁「だめ!今やめたら電達が…」
イ級「……」ズドン!
暁「ガハッ!!?」
電「暁ちゃん!!」
雷「暁!!」
暁「わ……私は…一人前……のレディーなんだ……から…………あ……かつき型…の長女なんだか…ら……みんな……を護……」
電「そんな……そんなの嫌なのです!暁ちゃん!!」
暁「やさしい…ね……電は……」
電「お願いなのです!!暁ちゃん!!目を開くのです!!」
暁「ごめん…ね…………あか…つきが……いなく…ても………みんな……でな…か…よ…く…………」
電「暁ちゃん!!嫌なのです!!死んじゃ嫌なのです!!」
暁「いなず…ま……てを…かして……」ギュッ
暁「がんば……って……ね……」
電「暁ちゃん!!」
暁「ごめ……んね……しれ……………い……………か…………」
暁「…………………」
電「暁ちゃんっ!!お願い!!死なないで!!お姉ちゃん!!雷ちゃんも一緒に!!」
雷「…………………電…手を離して戦うのよ…」
電「でも!そしたら沈んじゃう!!」
雷「離すのよ!!電!!泣くのは後!!」
電「雷ちゃんは悲しくないのですっ……あ……」グイッ
雷「…………………戦うのよ…電」ポロポロ
電「…………分かったのです…」
雷「敵が左弦より接近。迎え撃つわよ」
雷「暁の分まで!!」
ズドーン!
春雨「きゃっ!!?」
夕立「春雨!!?」
春雨「や…やられました……缶室に被弾しました…」
夕立「まだ動けるっぽい?」
春雨「はい!」
夕立「充分敵陣を掻き乱したっぽいし、北上するわよ」
春雨「分かりました…ごめんなさい…」
夕立「気にしなくていいっぽい」
春雨「ありがとうございます…」
…………
春雨「敵も見えなくなってきましたね…」
夕立「うん……そろそろ、いいっぽいね…」
春雨「夕立姉さん?」
夕立「春雨はこのまま北へ向かって」
春雨「夕立姉さん…?」
夕立「夕立はちょっと忘れ物をしたっぽい」
春雨「ど、どういうことですか?」
夕立「春雨は怪我してるからちょっと危ないっぽい。だから夕立は一人で戻るっぽい」
春雨「い、嫌です!!私も!春雨も一緒に行きます!!」
夕立「怪我人は大人しく帰る。これはお姉ちゃんの命令よ」
春雨「嫌です!!夕立姉さんと一緒じゃないと嫌です!!」
夕立「……夕立と一緒ならいいの?」
春雨「はい!!だから…」
夕立「はい、夕立の髪留め預けるわ。無くしたら酷いっぽいよ?」
春雨「夕立姉さん…?」
夕立「うん、似合ってる。春雨?」
春雨「な、何ですか?」
夕立「夕立が戻るまでは絶対に無くさないで」
春雨「夕立……姉さん…」
夕立「じゃ、気を付けて泊地まで戻ってね。春雨、また今度っぽい!!」
春雨「夕立姉さん!!」
夕立「両舷全速力!夕立、突撃するっぽい!」
春雨「夕立姉さん!!!!」
春雨「………夕立姉さん…………置いて行かないで…………」
春雨「夕立姉さん……………」
夕立「さいっこうに素敵なパーティーしましょ!!」ズドン!!ズドン!!
イ級「!!?」
夕立「あははは!!面白い反応っぽい!!」
夕立「全魚雷発射!!」
ズドーン!!
夕立「より取り見取りっぽい!!こんな面白い所中々ないっぽい!!」ズドン!!ズドン!!
夕立「っぽい!!っぽい!!」ズドン!!ズドン!!
バッシャーン!!
夕立「あれ?………しまった!!みんなと敵の中間に…」
ズドーン!!
夕立「っ!!?被弾!!?」
夕立「とりあえず動く……動く……動かない…っぽい?」
夕立「機関停止………こうなったら…」
夕立「ハンモック張ってでも戦うよ!!」ズドン!!
夕立「これからがナイトメアパーティーの始まりっぽい!!」ズドン!!ズドン!!
霧島「比叡お姉様!一旦北に退避しましょう!」
比叡「………うん。全艦北上。一旦退避して体勢を整えよう」
霧島「了解。みんな動ける者は近くにいる曳航が必要な子を曳航して北上して!比叡お姉様も急いで下さい!」
比叡「うん。後で行くから霧島は先行ってて」
霧島「はい!」
比叡「じゃあ、一旦回線切るね。一応霧島も気をつけてね」
霧島「比叡お姉様もお気をつけ下さい!」
比叡「うん…ありがと」
比叡「雪風、天津風、白露、時雨……ちょっと私の所へ来てくれない?お願いしたいことがあるから」
……………
雪風「比叡さん、どうしたのですか?」
天津風「何かあったのかしら?」
比叡「何かあったと言えば何かあったのかな…?」
白露「なら、早く言っちゃおう!」
比叡「………私は操艦機能を失った…………これ以上は……動けない……」
時雨「比叡さん…?」
比叡「みんなにはお願いがあるの。この碇や旗を形見として霧島やお姉様、榛名に渡してあげて……」
天津風「諦めちゃ駄目!!私達が曳航しますから!」
比叡「この人数じゃ難しいよ。それに、出来たとしてもスピードは絶対に出せないから敵の航空機に攻撃されるリスクが高い」
時雨「それでも、僕らは見捨てることなんて出来ない!」
比叡「ありがとう、時雨……だけど無理なものは無理だよ。せめて、もう少しあまりダメージを受けていない子がいれば…」
雪風「なら、一度みんなのところに戻って沢山の駆逐艦の子を連れてきます!!それまで他の3人を残しておけば」
比叡「それはだめ。残っている3人とも私への攻撃に巻き込まれる可能性があるから」
雪風「なら、どうしたらいいのですか!?」
比叡「みんなで帰ってみんなで戻ってきて。それまで残っている事が出来たら曳航をお願いしようかな?」
雪風「………分かりました!!天津風!白露!時雨!急いで戻りましょう!」
白露「うん!分かった!!」
天津風「少し待ってて下さい!比叡さん!」
比叡「ありがとね」
時雨「必ず…戻って来ますから…」
その後、10人くらいの駆逐艦のみんなと一緒に雪風達は比叡さんの所へ戻って来ました
しかし、そこに残っていたのは……紅く染まった水と少し焦げた白い布片だけ
比叡さんを助ける事は出来なかった
ただ、雪風達が比叡さんを見捨てた。それだけの事でした
この後すぐに雪風達は北方へ退却したので、比叡さんの形見を無事本土に送り届ける事が出来ました
後から聞いた話ですが、戦艦2、重巡1、駆逐艦3名の命が亡くなりました………
このサーモン沖の戦いは雪風達の敗北に終わりました
尊い犠牲だけを残して……
今日はこれで終わりです
一応ですが、史実の第三次ソロモン海戦からアレンジをしています。
またいつか来ますね!
コンコン
初風「どなた?」
神通「神通です。入ってもよろしいでしょうか?」
初風「神通さん!?はい!どうぞお入り下さい!」
神通「失礼します」
初風「すみません!神通さんが来られると分かっておりましたら部屋も整理しておいたのですが…」
神通「いえ。充分整理整頓されてますよ。それよりも話すべきことがあります」
初風「はい、何でしょうか?」
神通「初風、時津風。雪風と天津風が帰投した様ですよ」
初風「本当ですか!?」
神通「ええ。しかし、二人共…特に雪風はかなり憔悴しています。早く二人の元へ向かってあげて下さい」
初風「分かりました!ありがとうございます神通さん!」
神通「今日の訓練は免除しますので、その代わりに二人ケアを頼みます」
初風「はい!時津風行くわよ!」
時津風「うん!」
初風「では、神通さん。失礼します!」
神通「はい」
初風「雪風!!天津風!!」
雪風「初風………時津風……」
天津風「二人とも……お迎えに来てくれたの…?」
時津風「そうだよ。雪風も天津風も大変だったね」
天津風「もう…全て知っているの?」
初風「話は聞いてる」
天津風「そう……なら、私達に何があったかは知っているわね…?」
初風「まあ……だけどあれはあんた達がわ…」
雪風「雪風は……また護ることが出来ませんでした……」
初風「雪風?」
雪風「雪風はまた護ることが出来なかったんです」
初風「雪風、それは…」
雪風「この前の輸送艦の殆どは護ることが出来なくて、今度は比叡さんを護ることが出来ませんでした」
雪風「比叡さんをあの時頑張って曳航していれば助けられたかもしれないのに、雪風がみんなを連れてくるなんて言ったから…」
初風「それは違う!」
雪風「何が違うんですか!?雪風があんな事を言わなければ助けられたのに!!」
雪風「雪風が悪いんです!!雪風がみんなで曳航すればみんな助かるなんて甘いことを考えたから!」
雪風「雪風が!!雪風が全部!!」
バシン!
雪風「………え?」
初風「それは違う!」
雪風「違うって何がですか!?雪風があんな事を言わなければ比叡さんは!」
初風「そんなのは結果論だ!!もし比叡さんの立場が雪風だったら、あんたはみんなが沈むような危険なことをやらせたの!?」
雪風「それは…」
初風「でしょう?やらせないよね?結果的には出来たかもしれない。だけどあの時は駄目だったかもしれないんだよ。比叡さんはあんた達を護りたくてあのような決断をしたんだ!」
雪風「そんなの想像に過ぎません!比叡さんだって死にたい訳が無いじゃないですか!」
初風「そうよ。想像に過ぎないわ。それに誰も死にたいなんて考える訳がない!だけど、自分の命を賭してみんなを護ろうとしたんだよ!雪風、あんたそれすらも分からなくなってるの?」
雪風「でも……」
初風「全てを背負いこむな!あんたは全てを背負い込もうとしているだけ!そんなのは間違ってる!」
雪風「……雪風は間違っているのですか…?」
初風「間違ってる。全てを背負い込む必要は無い。それに責任を追求するのなら責任はあんたにない」
初風「死ぬ選択をした比叡さんが悪い。比叡さんを死に追い込むような作戦のきっかけを作った私達が悪い。もっと言えばこの作戦を決定した提督が悪いし、攻撃をしてきた深海棲艦が悪い」
初風「ねえ?誰が悪いの?責任は誰にあるの?雪風?答えられるの?」
雪風「………分かりません…」
初風「それでいい。責任なんて誰にも分からないのよ。だから…」ギュッ
雪風「初風!?」
初風「あんたは姉に抱きついて泣いていればいいのよ。それだけでいい」
雪風「初風………」
初風「雪風、あんたは良くやった。十分頑張ったよ」
雪風「う……うぅ………」ギュー
初風「お疲れ様、雪風」
雪風「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
初風「思いっきり泣いてスッキリしなさい…」
雪風「うわぁぁぁぁ!!比叡さん!!うわぁぁぁぁぁん!!」
初風「よしよし…辛かったね……」
雪風「うう……うううううう…」
……………………
…………
……
ちょっと短いですが今日は終わりです。
書いていて正直辛いです。雪風ごめんよ
前のスレでも似たような事をした気もしますが…ミニアンケートを取ります。
雪風に救いが欲しいですか?それとも絶望に叩き落としますか?
まだまだ先ですが、このアンケートの結果でほんの少しだけエンディングを変えます。なお、終盤まで内容は全く変化はしません。
今回は内容的にHappy Endルートなんてことはやらないのでご了承を…
時津風「朝〜! あさ〜! あさだよ〜!! 起きて〜!! 起きてよ〜!!」バタバタ
初風「時津風……五月蝿い!!」
時津風「初風じゃないよ〜! 雪風だよ〜!」
初風「ならそんな大声を出さないでくれない? 私達まで目が覚めたじゃない」
天津風「ふあぁぁぁ……時津風五月蝿いわよ……もう……」
時津風「初風が起きたのは自分の勝手でしょ〜!」
初風「あんたね……いい加減にしないとぶつわよ……」
時津風「あっ!! 初風あれ見て!!」
初風「……引っかからないわよ」
時津風「えぇ!!? どうして!?」
初風「子供じゃあるまいし……」
時津風「おっかしいなぁ。雪風はいっつも引っかかるんだけどなぁ〜」
初風「それは……」
天津風「うん……」
時津風「なになに! 何なのさ〜!」
初風「お子様には分からないことよ」
時津風「初風のイジワル!!」
雪風「…………あぁ……」
時津風「あっ! 雪風!!起きた!?」
雪風「……しず…………ぃゃ……」
時津風「ゆ〜き〜か〜ぜ〜!!お〜きて〜よ!!」ユッサユッサ
雪風「ひゃあ!!?」バッ
初風「うるさっ!!?」
天津風「きゃっ!!?」
雪風「時津風……どうしたのですか……?」
時津風「どうしたもこうもないよ〜! 暇だよ〜!!」
雪風「ごめんなさい……雪風が寝てたから……」
初風「いや、寝てるのはしょうがないって」
雪風「しかし……」
時津風「あ〜も〜!! 面倒臭い話は良いいから遊ぼうよ〜!」グイッ
雪風「わっ! …時津風!!?」
時津風「とりあえず外に行こう!!ほら!いっくよ〜!!」
雪風「時津風! 離して下さい!!」
時津風「やだよ〜 雪風が居ないと面白くないもん!」
時津風「じゃ、初風! 天津風! 雪風と遊んで来るね〜!」ガチャン
時津風「こっちこっち〜!!」
雪風「時津風……痛いです……」
時津風「いいの! いいの! 部屋に籠ってたっていいこと無いしね!!」
雪風「でも……」
時津風「そんなに悲痛な顔したって誰も戻って来ないよ」
雪風「えっ!!?」
時津風「私だったら嫌だな〜 自分が沈んだせいで友達が笑えなくなるなんてさ。多分今回沈んだ誰もがそんなこと望んでないよ」
雪風「時津風……?」
時津風「笑えばいいんだよ? 誰かが沈んだって笑えばいいんだよ ーー例え私が沈んでも雪風には笑っていて欲しいし、逆に雪風が沈んだら私は笑うよ」
雪風「本当に……それでいいんでしょうか?」
時津風「いいんだよ。それで」
金剛「そうデスヨ!! ユッキ〜!!」
雪風「金剛さん!?」
時津風「あ、こんご〜さん!! おはよ〜」
金剛「グッドモーニング、トッキー!!ユッキ〜!!今日も良い天気ネ〜!!」
雪風「金剛さん……どうしてそんなに元気なのですか……?比叡さんと霧島さんが沈んだのに……」
金剛「アウチ!!痛い所を突いて来るデスネー」
雪風「金剛さん……どうして…………」
金剛「それはデスネー……」
金剛「ワタシがもしも二人の死を悲しんで全く動けなくナッタらテートクやみんなはどうなりマスカ?」
雪風「それは……」
時津風「金剛さんが居ない所為で他の人が沈んじゃうかもね〜」
金剛「That's right トッキー! トッキーが正解デース! ワタシはワタシの所為でみんなが傷付くのはNo thank you デス」
雪風「だから明るく振舞っているのですか?」
金剛「それだけでは無いデスがネ」
雪風「それは……どういうことですか?」
金剛「…………ソレは……」
金剛「私は弱いからです……私は弱いから……笑う事を忘れたら多分壊れてしまう……」
雪風「…………っ!!?」
金剛「Oh! 今のは失言デシタ!! この発言はシークレットにして下さいネ!」
雪風「金剛さん…………」
金剛「ユッキ〜も藪からスティックにこんな事を言われても困りマスよネ?」
雪風「いえ……雪風は大丈夫です」
金剛「ユッキ〜は榛名みたいな事を言いマスネ〜!」
雪風「そ、そうなんですか?」
金剛「Yes! 榛名はよく『榛名は大丈夫デス』と言っているネ」
雪風「あ……ごめんなさい……」
金剛「謝る必要はNo デス!デスが、一つだけ言っておいた方が良さそうデスネ」
雪風「はい?」
金剛「溜め込むのは良くアリマセン。時には吐き出さないとダメデスヨ?」
雪風「はい……ありがとうございます、金剛さん」
金剛「どう致しましてデス! では、ワタシは行くネ!」
時津風「ばいば〜い〜」
金剛「Good by トッキー!ユッキー!」
雪風「失礼します」
時津風「ほらね、こんご〜さんも私と一緒の事を言ってるでしょ?」
雪風「はい……」
時津風「だから雪風は笑えばいいんだって!! 苦しくても笑えばいいの!!」
雪風「笑えば……?」
時津風「そう!! そう!! 苦しくても笑うんだよ!!」
雪風「善処します……」
時津風「そうそう! それにさ、折角今日は外出許可になってるんだからさ! お出かけしよ? ねっ!」
雪風「そうですね」
時津風「ほら! もっと元気出して!! そんな顔してたら面白くないよ〜」
雪風「はい」
時津風「駄目だって! こうやって〜」グニー
雪風「ひはい!! ひはいれす!! ほひふはへひはいれす!!」
時津風「ほい!」パッ
雪風「もう! 何をするんですか!!」
時津風「やっといい表情に戻ったね」
雪風「へ?」
時津風「それくらい表情変えてくれないとダメだよ〜」
雪風「あ……」
時津風「じゃ、改めてお外行こうよ〜雪風〜!!」トテトテ
雪風「はい!」
雪風(比叡さん、霧島さん、暁さん、綾波さん……雪風が笑えば救われるんですかね?)
雪風(雪風は笑えば哀しまないんですかね?)
雪風(それなら雪風は頑張って笑い続けますから……)
雪風(雪風は笑いますから……)
時津風「雪風〜!! 遅いよ〜!!」
雪風「分かりました!!」
雪風(雪風が……)
………………………………。
時津風「雪風〜 今日の訓練も大変だったね〜」
雪風「そうですね……大変でした……」
初風「時津風は動きが大雑把過ぎるから神通さんに叱られるのよ」
天津風「もう少し普段から気を付けないと……」
時津風「初風だって考え過ぎだって怒られてるじゃないか〜!!」
初風「私は直そうとしているわよ」
時津風「ほんとかな〜?」
初風「ねえ、時津風……喧嘩売ってるの?」
時津風「あ、面白そうだから売ってみよ〜!!」
天津風「はいはい……時津風は大人しくしてなさい」
時津風「変態下着の癖に何言うのさ〜」
天津風「へっ、変態っ!!?」
時津風「流石に天津風みたいなのはムッリム〜リ」
天津風「い…言ったわね……私……変態じゃ無いのに……」
時津風「わっ!天津風が怒った!! 逃げる〜!!」パタパタ
天津風「こら〜!! 時津風!! 待ちなさい!!」パタパタ
時津風「あはははははは!!」
天津風「このっ!!時津風だって変態パンツじゃない!!」バシバシ
時津風「痛っ!! 痛いって天津風〜! そんなことないよ〜 普通だよ〜」
天津風「充分変態よ!!変態時津風!!」
時津風「うわー!!」バタバタ
天津風「あ、こら!!」バタバタ
ドンッ!!
時津風「うぁっ!!?」
瑞鶴「きゃっ!!」
時津風「ん……? 甲板…………胸……?」
瑞鶴「誰が甲板胸ですって!?」
時津風「ああ、瑞鶴さんか〜納得納得」
瑞鶴「納得してるんじゃないわよ!!」
時津風「ごめんなさ〜い」
瑞鶴「許しはしないけど、今は流してあげる」
時津風「怒らないでよ〜」
瑞鶴「なら、あんたはまずその性格をどうにかしなさい」
時津風「え〜 それは無理〜」
瑞鶴「ふ〜ん……」
初風「すみません瑞鶴さん。この馬鹿が…」
時津風「馬鹿じゃないよ〜!!」
初風「とりあえず黙りなさい。この馬鹿が失礼しました」
瑞鶴「まあいいわ。それより雪風と時津風を借りてってもいい?」
初風「ええ。好きなだけ酷使して下さい」
天津風「時津風は特にボロボロになるまで使ってやって下さい」
瑞鶴「それは前向きに考えておくわ」
時津風「酷い〜」
瑞鶴「でも、残念ながら時津風を酷使するような内容じゃないのよ」
初風「残念ですね」
瑞鶴「全くだわ」
雪風「雪風と時津風は何をすればいいのですか?」
瑞鶴「提督さんから召集がかかってるの。貴女と時津風に任務だってさ」
雪風「はい!」
時津風「何で瑞鶴さんがそんなこと連絡しに来てるのさ〜」
瑞鶴「今日は私が秘書艦なのよ」
時津風「ふ〜ん。しれぇもモノ好きだね〜」
瑞鶴「……どういうこと?」
時津風「だってかんぱ…」
瑞鶴「せいっ!!」ドンッ
時津風「うわっ!!」
瑞鶴「じゃ、この馬鹿と雪風借りて行くわね」ズルズル
時津風「いや〜! 引っ張らないで〜!! 服が伸びる〜!!」
雪風「行ってきますね」パタパタ
初風「え、えぇ……」
天津風「ねぇ、初風……」
初風「……何?」
天津風「瑞鶴さんって……」
初風「うん……ちょっと子供っぽい……」
天津風「よね……」
………………………………。
提督「さて、全員集まったな」
提督「みんなも既に聞いたと思うが、我等はガ島の制圧、占領に失敗した。あの後もガ島の戦力は増強され続けている為、今現在の戦力では制圧は不可能と言っても良いだろう」
提督「そこで、我等はガ島周辺の島々から全ての人材や資材などを撤収することに決めた。今、この広い戦線を維持するのは大変困難だ。無理してこの戦線を維持するよりは戦線を縮小して防衛にに努めた方が賢明だろう」
提督「ここまでで何か質問がある者はいるか?」
朝潮「はい! 司令官!一点御質問をしてもよろしいでしょうか!?」
提督「いいぞ」
朝潮「司令官は縮小した戦線を回復させる予定などはあるのですか?」
提督「流石に痛いところを突いてくるな……答えよう。今の所暫くは戦線を奪還する予定はない。理由は簡単だ。余りにも戦力を喪い過ぎた。最近で言えば虎の子の比叡と霧島を喪い、その穴を埋める建造計画も立っていない。そんな状態で戦線の拡大など死にに行くようなものだ……こんな返答でいいかな?」
朝潮「はい!! ありがとうございました!!」
提督「ああ。他にはいるか? ………………居ないようだな。では、作戦の概要と参加する者を伝える」
提督「先ずは参加者からだ。参加者はここにいる全員で白雪、敷波、朝潮、荒潮、満潮、朝雲、時津風、雪風の八名だ」
提督「そして作戦概要は先程も行ったがガ島近辺の島々から人材や資材を撤収する。輸送艦8隻をお前達8人で護衛するのが任務になる。前回の轍を踏まないように護衛艦の数を倍に増やした。装備は出来得る限りの対空装備を載せて行ってくれ」
提督「今回はかなり難易度の高い危険な任務になるだろう。私は提督として冷徹な命令を下さねばならない。だが、あえて私個人の本心を語らせて欲しい」
提督「私の願いはただ一つ……みんな無事に戻って来てくれ……それだけだ」
朝潮「司令官! 私達は必ず司令官の前に戻って来ます!!」
荒潮「こんなこと言われたらおいそれとは[ピーーー]ないわよね〜」
白雪「絶対に私達は帰ります。ご安心下さい」
時津風「ほんと、しれぇはみんなが大好きだよね〜」
提督「ああ、大好きだ。だから必ず帰って来てくれ……」
雪風「大丈夫です! 雪風は必ず帰って来ます!」
提督「頼む……」
朝潮「では司令官! 私達は輸送艦護衛に行って参ります!!」
提督「ああ。頑張ってくれ」
全員「はい!!」
今日はこれで終わりです
まさかの投稿中に1レス分のデータがぶっ飛ぶ事件が生じました。急遽書き直しましたが、やはり若干変わってしまった……メモ帳め……………………
またいつか来ますね!
そろそろ予告していた瑞鶴SSも始動したいな……
saga付けなきゃ[ピーーー]って書けないから注意な
一応sagaつけて>>94修正
提督「さて、全員集まったな」
提督「みんなも既に聞いたと思うが、我等はガ島の制圧、占領に失敗した。あの後もガ島の戦力は増強され続けている為、今現在の戦力では制圧は不可能と言っても良いだろう」
提督「そこで、我等はガ島周辺の島々から全ての人材や資材などを撤収することに決めた。今、この広い戦線を維持するのは大変困難だ。無理してこの戦線を維持するよりは戦線を縮小して防衛にに努めた方が賢明だろう」
提督「ここまでで何か質問がある者はいるか?」
朝潮「はい! 司令官!一点御質問をしてもよろしいでしょうか!?」
提督「いいぞ」
朝潮「司令官は縮小した戦線を回復させる予定などはあるのですか?」
提督「流石に痛いところを突いてくるな……答えよう。今の所暫くは戦線を奪還する予定はない。理由は簡単だ。余りにも戦力を喪い過ぎた。最近で言えば虎の子の比叡と霧島を喪い、その穴を埋める建造計画も立っていない。そんな状態で戦線の拡大など死にに行くようなものだ……こんな返答でいいかな?」
朝潮「はい!! ありがとうございました!!」
提督「ああ。他にはいるか? ………………居ないようだな。では、作戦の概要と参加する者を伝える」
提督「先ずは参加者からだ。参加者はここにいる全員で白雪、敷波、朝潮、荒潮、満潮、朝雲、時津風、雪風の八名だ」
提督「そして作戦概要は先程も行ったがガ島近辺の島々から人材や資材を撤収する。輸送艦8隻をお前達8人で護衛するのが任務になる。前回の轍を踏まないように護衛艦の数を倍に増やした。装備は出来得る限りの対空装備を載せて行ってくれ」
提督「今回はかなり難易度の高い危険な任務になるだろう。私は提督として冷徹な命令を下さねばならない。だが、あえて私個人の本心を語らせて欲しい」
提督「私の願いはただ一つ……みんな無事に戻って来てくれ……それだけだ」
朝潮「司令官! 私達は必ず司令官の前に戻って来ます!!」
荒潮「こんなこと言われたらおいそれとは死ねないわよね〜」
白雪「絶対に私達は帰ります。ご安心下さい」
時津風「ほんと、しれぇはみんなが大好きだよね〜」
提督「ああ、大好きだ。だから必ず帰って来てくれ……」
雪風「大丈夫です! 雪風は必ず帰って来ます!」
提督「頼む……」
朝潮「では司令官! 私達は輸送艦護衛に行って参ります!!」
提督「ああ。頑張ってくれ」
全員「はい!!」
>>96
ありがとうございます。NGワードが無いと慢心してたらやってしまいました
反省……
………………………………。
朝潮「そろそろガ島敵航空隊の予想攻撃可能範囲に入ります!」
白雪「そうですね。では、補給艦の皆さんを囲う陣形に致しましょう」
荒潮「そうねぇ〜 じゃあ、輸送艦を4 4の二列に分けて私達が更にその外側を4 4で囲うのはどうかしら〜?」
白雪「それが一番確実に輸送艦の皆さんをお護り出来ますね。では、陣形の変更を指示しますね」
白雪「こちら対潜警戒中の朝潮です。現在的のガダルカナル常駐の航空機が攻撃可能な海域に突入致しました。なので現在の対潜陣形を解除し防空重視の陣形へと変更致します!」
白雪「輸送艦の皆さんは先頭2隻の複縦陣を組んで下さい。艦娘の私達は左右から輸送艦を挟み込む形で同じく複縦陣を組んで下さい!」
雪風「分かりました!!」
時津風「は〜い」
満潮「わざわざ指揮らなくてもいいわよ!」
朝雲「満潮、あんまり突っかかってると姉さんに嫌われるわよ?」
満潮「う、うるさい!!」
朝潮「あんまり喧嘩は……」
敷波「こんな時になにやってるのさ!」
満潮「何よみんなして! そうよ! どうせ私が悪いのよ!!」
荒潮「そんなことより〜 あれ……敵の飛行機じゃないのぉ?」
満潮「はあ!!?」
朝潮「く、九時の方向より敵爆撃機接近です!!」
満潮「数は10よ! ほら全員対空射撃の準備をしなさいよ!!」
荒潮「私〜、あんまり爆撃機にいい思い出ないのよね〜」
満潮「そんなことどうでもいいじゃない!!」
荒潮「冷たいわね〜」
満潮「うっさい!!」
時津風「みんな〜 あと十分ちょいで来るよ〜」
朝潮「でしたら高射装置の使用は出来そうですね」
白雪「了解しました。 全艦94式高射装置による測定を開始して下さい」
時津風「了か〜い!!」
………………
敷波「方位角と仰角算出完了!!」
荒潮「10cm連装高角砲諸元入力完了よ〜」
満潮「94式、自動追尾開始!」
雪風「全火器の射撃準備完了です!」
時津風「白雪〜 いつでもいいよ〜」
白雪「全艦、対空射撃始め!!」ズダダダダ
朝雲「4機撃墜! 6機突入して来るわよ!」ズダダダダ
朝潮「敵機の高度は中空!」ズダダダダ
満潮「水平爆撃よ! 爆弾投下前に何としても落として!!」ズダダダダ
朝潮「このっ!! この海域から出て行け!!」ズダダダダ
白雪「更に一機撃墜しました」
荒潮「残り5ね〜」
時津風「敵機爆弾投下!!」ズダダダダ
朝潮「輸送艦の皆さん!! 面舵いっぱい急いで下さい!!」ズダダダダ
朝雲「ダメ! 間に合わない!!」ズダダダダ
ヒューン ズドーン!!
朝潮「旭盛丸被弾!!」
雪風「野島も被弾!!」
敷波「旭盛丸からひ……火が……!!」
満潮「旭盛丸艦速低下……」
白雪「旭盛丸より入電!! 『我、缶室ニ被弾。誘爆繰リ返シ右舷ヨリ浸水開始……諸君……ラノ……無事ヲ祈ル……』…………嘘……」
満潮「旭盛丸、隊列から落伍!!」
朝雲「艦の傾斜が急速に始まってるわ……」
雪風「た、助けないと!!」
時津風「無理だよ雪風。今は不可能」
雪風「でも!!」
時津風「雪風は他の輸送艦も犠牲にするつもり?」
雪風「それは……」
時津風「今は諦めて。この前の任務でもそうだったけど、私達は人を助けられない。護るしか出来ないんだって」
雪風「うぅ……」
時津風「雪風?」
雪風「はい……」
朝潮「白雪さん、意見具申いいですか?」
白雪「何でしょうか?」
朝潮「もう敵に私達の存在と場所はバレています。なので、航路をラエへの最短距離を取り少しでも到着時間を短縮しましょう」
白雪「…………分かりました。全艦に伝達します。これより艦隊はラエへ向けて最短距離で航行致します」
満潮「朝潮!なんでこんな事を言うのよ!?旭盛丸の乗員はどうするつもりなの!?」
朝潮「見捨てます。今はまだお昼真っ只中なので救援を呼べば2次災害を引き起こす可能性があります」
満潮「なら今私達が他の輸送艦に運べばいいじゃない!」
朝潮「救助活動中に第二波が来る可能性があります。そんなことになれば被害は更に増大してしまいます」
満潮「アンタ……それでも本当に日本人なの!?仲間を見棄てるなんて日本人としてありえないわ!!」
朝潮「……いくら罵倒してもいいわ、満潮。私も人道的には許せない行為だと思っているから……だけど、私は今生きてるこの艦隊のみんなの命を最優先した。それに任務も輸送艦を護衛するのが最優先。だから一人でも被害が少なくなり、任務も完遂出来る可能性があるこの選択を選んだの」
満潮「くっ……」
朝潮「分かって欲しい何て言わない。だけど、今は私や白雪さんに従って」
満潮「…………」
朝潮「みなさん申し訳ありません。私事に回線を使ってしまいました」
白雪「いえ、大丈夫です。先程も伝えた通り、この艦隊は急ぎラエへ寄港します」
朝雲「一応朗報。手離す海域の人材や資材などは全てラエに集められているみたい。だからラエに寄港後は引き返すのみよ」
白雪「了解です。それは助かりますね」
白雪「ラエに急ぎますよ。全艦続いて下さい」
ラエ
朝潮「皆さん! 積み込みは出来る限り急いで下さい!!」
朝雲「いつガ島から敵機が来るか分からないからね」
荒潮「急いだ方が良いわね〜」
時津風「雪風〜 あそこ綺麗だよ〜」
雪風「時津風……今は遊んでちゃ駄目です……」
時津風「だって暇じゃん」
雪風「でしたら皆さんのお手伝いをしましょう」
時津風「え〜 やだやだ〜 面倒臭いじゃん」
雪風「ですが……」
満潮「ぼさっとしてるならあんた達も手伝いなさい」ゴンッ
時津風「痛い!!」
満潮「ほら、行くわよ」ズルズル
時津風「うわ〜!! やだ〜!! 鬼〜!!」
満潮「誰が鬼よ!!」
雪風「今回は時津風の自業自得です」
時津風「雪風の裏切り者〜!!」
………………………………。
朝潮「輸送艦の皆さん、出来る限り急いで下さい。ここはまだまだ敵航空機の攻撃範囲です。夜の内にラエから脱出出来ましたが、そろそろ陽が上って来ます」
荒潮「確かにそろそろちょっとマズイかもしれないわね〜」
白雪「そうですね。敵機の来襲に備えて対潜陣形から昨日と同じような対空防御の陣形にします。正確には、旭盛丸が抜けた穴はそのままに輸送艦隊を作って下さい」
白雪「そして、艦娘は右最前列から順に満潮、朝潮、朝雲。左最前列から順に荒潮、時津風、雪風。左の輸送艦隊先頭には敷波、右の輸送艦隊先頭に私白雪。取り急ぎ陣形の展開をして下さい」
朝潮「はい!」
時津風「ほら、輸送艦のみんな急げ急げ〜」
白雪「朝雲と荒潮の二人は十四号を起動して下さい。少しの反応も見逃さないように。次に満潮と時津風は三十三号で敵水上艦の警戒。そして敷波と雪風は前方と後方から敵潜水艦の警戒を」
朝潮「私はどうすれば?」
白雪「私に何かあった際には朝潮に艦隊指揮を執って貰います」
朝潮「了解!」
白雪「では皆さん、任せました」
全員「了解!!」
………………。
白雪「ダンピール海峡に入ります。少々艦隊運動がし辛くなると思いますが、抜ければまた広いビスマルク海に出られます」
朝雲「ん?」
白雪「どうしました?」
朝雲「何かを電探が探知……っ!?」
荒潮「あらあら〜 これは艦載機ね〜 ……敵よ」
白雪「敵機の数は?」
朝雲「沢山。少なくとも50以上は居そう。一応高空、中空、低空の高度で接近してくるわね」
白雪「了解。では、雪風と時津風以外は高空の敵に対して94式に諸元入力を行って下さい。雪風と時津風は中空の敵をマークして下さい」
雪風「低空の敵機はどうしますか?」
白雪「低空の敵機は恐らく途中で上昇して中空の航空機と合流か第二波として来るでしょう。それでしたら初めから中空に標準を合わせておいた方が良いです」
雪風「分かりました!」
白雪「全艦に告げます。これより本艦隊は回避行動に入ります。私の指示に従い各々回避行動を行って下さい」
…………。
朝潮「敵機第一波接近!!」
白雪「全艦対空射撃!!」ズダダダダ
満潮「このっ!! 落ちろ!!」ズダダダダ
時津風「うら〜!!」ズダダダダ
朝潮「高空に位置していた敵爆撃機全機無力化!!」ズダダダダ
時津風「中空の水平爆撃隊は全然落とせていないよ!!」ズダダダダ
白雪「全艦中空の敵爆撃機を狙って」
雪風「みなさん!! 低空から突撃して来る爆撃機がそのまま突っ込んで来ます!!」
白雪「嘘っ!?」
雪風「速度落ちません!! どうして!?」
朝潮「中空の敵爆撃機、爆弾投下しました!!」
敷波「白雪!! 危ない!! 逃げて!!」
白雪「…………ぁ……」
ズドーン!!
今日はこれで終わりです
少々投稿間隔が空いてしまい申し訳ありません。
戦闘経緯がなかなか決まらなかったのと、まだプロット段階のSSを立ち上げる際にどうしても行きたい場所があったので更新が遅れました
また明日来れたらいいな……
何しているんだ私は……メール欄にずいずいとか打ってるよ
ちょっと瑞鶴に爆撃されてきます
敷波「白雪!! 白雪!! 嘘だろ……血が流れて……」
朝潮「白雪さんに構っている暇はありません!! 低空から突入して来た艦爆が爆弾を投下!! 何なのこの速度は!!?」
ヒュン ズドーン!! ズドーン!!
満潮「建武丸と愛洋丸の右舷の喫水線に被弾!! ま……真っ二つに!?」
時津風「速い!! なんなのこいつら!! こんな爆撃見たことないよ!!」
朝雲「第二波来るわよ!! 今度は全機低空から!!」
ヒュン ズドーン!! ズドーン!!
荒潮「きゃぁぁぁ!!」
時津風「うぐっ!!?」
満潮「荒潮!!?」
雪風「時津風!!」
荒潮「機関……停止。缶が全滅したわね……」
満潮「荒潮!、 手を貸しなさい!! 曳航を」
荒潮「駄目よ……先に行きなさい」
満潮「早く!! 時間が!!」
荒潮「朝潮……聞こえるわね?」
朝潮「ええ」
荒潮「私を置いて先に行って……」
朝潮「分かりました」
満潮「やだっ!! 嫌だ!! お願いだから一緒に来てよ!!」
荒潮「それはムリよ〜 だって満潮には……」
荒潮「生きていて貰いたいから」
満潮「私なんかよりも荒潮が!!」
朝雲「敵機接近!! 満潮避けて!!」
満潮「え?」
ヒュン
荒潮「っ!!」バッ
ズドーン!!
満潮「う、そ……」
満潮「荒潮……? ねえ、荒潮!! ねえってば!!」ユッサユッサ
満潮「ねえ答えてよ!! 荒潮!! お願いだから!! 目を開いてよ!!」
満潮「お願……い、だから……荒潮……」ギュッ
朝潮「満潮!! 感傷に浸るのは後にして!! 第四波来ます!!」
朝雲「雪風!! 敵機接近!!」
ヒュン
雪風「さ、避けれません!!」
時津風「雪風!!」
ガンッ
雪風「えっ!?」
時津風「……不発?」
朝潮「対空戦闘終了!! 敵の第一次攻撃隊が撤退していきます!!」
敷波「助かったのか……?」
朝潮「いえ、まだまだ敵の航空隊が襲って来る可能性があります。全艦それぞれに不具合が出ているか確認をして下さい」
雪風「時津風は大丈夫ですか?」
時津風「右舷の隔壁が破られて少し浸水したのと、缶が何個か壊された」
雪風「航行は?」
時津風「まだ大丈夫。行ける行ける」
時津風「それよりも、雪風こそ爆弾は?」
雪風「不発弾でした。当たりどころは悪かったので、もしも爆発していたら沈んでいたかもしれません」
時津風「みたいだね。ラッキーだったね」
雪風「まあ……そうですね」
時津風「とりあえず私達は大丈夫そうだね」
雪風「はい」
朝潮「全艦確認は終わりましたか?ーー終わった様ですね。では、直ぐにこの海峡を抜けてビスマルク海に出ます!」
………………。
朝潮「艦隊ダンピール海峡抜けます」
朝雲「やっと抜けれる! これで思う存分回避運動は出来るようにな」
敷波「喜んでいられないよ! 敵機群南東より接近!! 数はかなり多い!! さっきと同じく急降下、水平、水切りの3パターンで来てるよ!!」
朝雲「朝潮!! どうする?」
朝潮「私が急降下を抑えます! 荒し……ごめんなさい。朝雲は水平への対処、他は水切り爆撃の迎撃をお願いします!」
全員「了解!!」
満潮「敵爆撃機こちらの射程に入った」
朝潮「そっちの指揮は満潮に頼みます!」
満潮「雪風、時津風。対空射撃始め」
時津風「当たれ〜!!」ズダダダダ
朝潮「こちらも対空射撃始めます!!」ズダダダダ
朝雲「くっ!!」ズダダダダ
雪風「朝潮さん!! 高空の敵爆撃機が更に来てます!!」
朝潮「砲が足りない!! あっ!?」
雪風「朝潮さん! 敵艦爆が!!」
朝潮「輸送艦の皆さん!! お願い、避けて!!」
ヒューン ズドーン!!
敷波「神愛丸、太明丸被弾!! 大破炎上!!」
朝潮「あ……あぁ……」
朝雲「抜かれた!! マズイ!!」
ヒューン ズドーン!!
敷波「帝洋丸右舷に被弾!! 浸水が始まった!! 朝潮!! ボケっとするな!! 上空!!」
ヒューン ズドーン!!
敷波「大井川丸被弾!! 艦速低下! 急速に浸水してる!!」
朝潮「あ……あぁ……」
敷波「朝潮!!」
雪風「低空の艦爆に抜けられました!! 野島が!!」
朝潮「うぁあぁぁぁぁ!!」バッ
満潮「朝潮!! あんた何を!!」
朝潮「野島だけはやらせない!! 私が護る!! 司令官に頼まれた任務を完遂するんだから!!」
ヒュン ズドーン!!
朝潮「アァァ!!」
満潮「朝潮!!」
雪風「もう一機抜け…」
ヒュン ズドーン!!
朝潮「…………ぅそ……の……じま……」
時津風「野島が!! 」
雪風「時津風!! 後ろ!!」
時津風「うし」
ズドーン!!
雪風「時津風っ!!」
敷波「敵航空機……全機帰還して行きます……」
朝雲「もう、敵は全ての爆弾を使ったのね……」
満潮「朝潮!! ねえ! 朝潮!! どうして返事をしないのよ!!に」
雪風「時津風!! 時津風!! 目を覚まして下さい!! 時津風!!」
時津風「……ぅるさ、いよ……雪風……」
雪風「時津風!! 雪風が分かりますか!?」
時津風「わか、る……」
雪風「今すぐ曳航します!! このロープに掴まって下さい!!」
時津風「もう、無理だよ……」
雪風「そんなことありません!! 入渠さえすれば助かりますから!!」グイッ
時津風「……無駄、だよ」
雪風「無駄じゃありません!! 第一戦速で航行します!!」
時津風「ねぇ、雪風……」
雪風「何ですか!?」
時津風「今まで……楽しかったね……」
雪風「楽しかったですよ! 当たり前じゃないですか!?」
時津風「初風も……天津風も優しかったね……」
雪風「二人とも優しいに決まってます!!」
時津風「私たち、一緒になれて良かったね……」
雪風「はい!!」
時津風「ねぇ、私との約束……覚えてる?」
雪風「当たり前です! 雪風は笑顔でいますから!!」
時津風「良かった……頑張れ……」
雪風「何を言ってるんですか!! こんなの最期の別れみたいじゃないですか!!」
時津風「雪……風……?」
雪風「何ですか!! 時津風!!」
時津風「おやす……み……」
………………………………。
雪風「時津風。あと少しで横須賀ですよ」
雪風「初風も天津風もみんな……みんな待ってます」
雪風「やっと入渠出来るんですよ。良かったですね」
雪風「そうだ、入渠が終わったら一緒に遊びましょう」
雪風「初風も天津風も巻き込んで一緒に遊ぶんです」
雪風「絶対に楽しいですよ」
雪風「絶対に楽しいんです……」
雪風「だから時津風……目を開けて下さい……時津風!!」
輸送艦8 駆逐艦4轟沈
この一方的な虐殺は後にダンピールの悲劇と呼ばれるようになりました
この闘いで私は大切な人を一人喪いました
決して喪ってはいけない人を
今日はこれで終わりです
明日来れるかはまだ未定です
とうとうスイッチが入りました
>>126
ちょびっと修正
満潮「朝潮!! ねえ! 朝潮!! どうして返事をしないのよ!!に」
修正
満潮「朝潮!! ねえ! 朝潮!! どうして返事をしないのよ!!」
今日少しだけ更新します
エイプリルフール
ガチャン
雪風「戻りました……」
初風「雪風! 戻ったのね。お帰り」
天津風「お帰り雪風。あれ、一人なの?」
雪風「…………はい」
天津風「時津風は入渠? どれくらい時間がかかるか聞いてる?」
雪風「…………ぃぇ……」
天津風「雪風?」
初風「雪風、あんたどうしたの?変だわ」
雪風「と……かぜは……」
初風「全然聞こえないんだけど」
雪風「時津風は……」
初風「時津風がどうしたの?」
雪風「時津……風…………は……」ポロポロ
初風「嘘……でしょ!?」
天津風「時津風がなんなの!? ねえ、雪風!!」
雪風「死に……」
雪風「……う、うぅ……うぁぁぁ……うぐっ」ポロポロ
天津風「雪風、悪い嘘は良くないわよ。流石に言っていい事と悪い事があるわよ!!」
雪風「時津風ぇ……うわぁぁぁあ!」ポロポロ
天津風「嘘!! 嘘よ!! 時津風が死ぬなんて!! だってこの前はあんなに元気にイタズラしてたじゃない!! なのに死ぬ筈が無い!!」
雪風「雪風が! 雪風が護れなかった!! 雪風なら助けられたのに!! 何も! 何も出来ませんでした!!」
天津風「雪風っ!! 貴女が殺したの!? ねえ! 時津風は雪風が!!」
雪風「そうです!! 全部雪風が悪いんです!!」
天津風「ふざけるな!! ねえ、 私の時津風を返してよ!! 私の大切な妹を返してよ雪風!!」
雪風「ごめんなさい!! ごめんなさい!! ごめんなさい!! ごめんなさい!! ごめんなさい!! ごめんなさい!!」
天津風「謝ったって時津風は返って来ない!! 雪風!! どうして……どうして時津風が……」ポロポロ
天津風「時津風……時津風ぇ……」ポロポロ
初風「天津風、泣くなとは言わない。だけど雪風を責めるのはやめなさい」
天津風「初風……貴女は哀しくないの? どうして泣いてないの?」
初風「一番辛いのは雪風だから……」
雪風「初風……」
初風「雪風、辛かったよね。本当に辛かったよね。今は沢山泣いていいから。気がすむまで泣きなさい。もしも耐えれなかったら私に縋ってくれてもいい。だから、絶対に貴女一人で抱えこんでは駄目。いい?」
雪風「えぐっ……ぅう、は、い」
初風「天津風も哀しいのは分かるよ。だけど、雪風も労ってあげて。いい?」
天津風「う……ぇえ……」
初風「うん……私、提督に報告することがあるからちょっと行ってくるわね。すぐ戻るから」
ガチャン
パタン
初風「………………」
初風「う……時津風…………」
初風「どうしてあんたは……」
初風「うわぁぁぁああぁああああ!!」
……………………
…………
……
今日はこれで終わり
優しい嘘
初風「雪風、天津風、朝よ」
天津風「うぅ……おはよう初風」
雪風「おはようございます……」
初風「ほら、顔洗って着替えて来なさい。あと少しで神通さんの訓練が始まるわ」
天津風「私が先に着替えるから雪風は顔を洗って来なさいな」
雪風「はい」
天津風「あれ?私の上着は……」ゴソゴソ
初風「これ?」
天津風「ありがと」
初風「どういたしまして」
天津風「ねえ、初風」
初風「何?」
天津風「静かね」
初風「そうね」
……………………。
神通「では、午前の訓練を始めます。本日は砲雷撃戦の訓練から始めます。雪風前へ」
雪風「はい!」
神通「第一戦速で航行しながら的を撃ち抜いて下さい」
雪風「はい!」
神通「では、始めて下さい」
雪風「雪風行きます!」ザッ
雪風「ふっ!!」ズドン! ズドン!
ズバン ズバン
神通「その場で急制動して反転。左舷側に出ている的を真ん中、左、右の順番で撃ち抜いて下さい」
雪風「はい!」ズドン! ズドン! ズドン!
ズバン ズバン
雪風「あ……」
神通「まだまだですね。動きに迷いがありますよ」
雪風「はい! ありがとうございます!」
神通「では雪風は後ろに下がって下さい。次は初風前へ」
初風「はい!」
神通「雪風と同じく第一戦速で航行しつつ砲撃して下さい」
初風「はい!」
神通「始めて下さい」
初風「行きます!!」
初風(考えないで撃つ!) ズドン! ズドン!
ズバン ズバン
神通「その場で反転。左舷側に出ている的を右、左、真ん中の順番で撃ち抜いて下さい」
初風「はい!」ズドン! ズドン! ズドン!
ズバン ズバン ズバン
神通「よく出来ました。ちゃんと考えないでも撃てるようになっていますね」
初風「はい!」
神通「初風は後ろへ。天津風は前へ」
天津風「はい!」
神通「天津風は遠距離の目標に対して砲撃して貰います。あの目標を動きながら四射以内に撃ち抜いて下さい」
天津風「はい!」
神通「始めて下さい」
天津風「はい!」
天津風「行くわよ!」ズドン!
ザバーン
天津風「遠! 第二射始め!」ズドン!
ザバーン
天津風「近! 兇叉!! 第三射砲撃始め!」ズドン!
ザバーン
天津風「近! 第四射始め!」ズドン!
ズバン
天津風「やった!!」
神通「これで喜んでいてはいけません。敵を捉える為にはより少ない砲撃の方が良いのは当たり前です。次は3射以下で当てるように気を付けて下さい」
天津風「はい!」
神通「次は砲雷撃戦の訓練です。これが終わったらまた砲撃の訓練に戻ります」
全員「はい!!」
神通「模擬弾頭を使用します。貴女達は私にその模擬弾頭を当てて下さい」
全員「はい!!」
神通「私が無線で合図したら訓練開始です。所定の位置に向かって下さい」
…………。
神通「訓練を開始します」
初風「はい! 雪風、天津風は私の後ろに単縦陣で続いて!」
雪風「分かりました!」
天津風「任せて」
初風「全艦砲雷撃戦用意! 魚雷装填! 速度、最大戦速!! 突撃開始!」
天津風「神通さん、砲撃開始しました!」
初風「取り舵! 全艦第一、第二主砲砲撃開始!」
初風「てぇ!!」ズドン! ズドン!
天津風「弾着今! 近! 近!」
初風「面舵! 弾幕を張って! 第二射開始!」ズドン! ズドン!
雪風「命中1!」
初風「了解!」
天津風「神通さんが突っ込んで来るわ! このままだと衝突しちゃう! 針路変更をしましょう!」
初風「ううん。まだまだ……ギリギリまで近付く」
天津風「危ないわ!」
初風「神通さんも命懸けでやってくれてるのよ。ここで私達が命懸けなくてどうするの?」
天津風「そうだけど……でも……」
初風「これは先に針路を変えた方が負ける。まさにチキンファイトね」
天津風「分かった。初風に従うから」
初風「雪風は?」
雪風「雪風もです!」
初風「良い子達ね。 針路そのまま、合図と同時に面舵いっぱい」
……。
天津風「距離200!」
初風「まだまだ!」
天津風「距離150!」
初風「まだ行ける!」
天津風「距離100!」
初風「まだ!」
天津風「距離50!」
初風「あと少し!」
天津風「30、20、10」
神通「よく頑張りました」ザッ
初風「今!! 面舵いっぱい! 魚雷全門発射!!」ザッ バシュン
天津風「くっ!」バシュン
雪風「えい!」バシュン
ズドーン!!
神通「…………よく頑張りました。魚雷2発命中です」
初風「あ、ありがとうございます!!」
神通「その勇気と忍耐をこれからも持ち続けて下さい」
初風「はい!!」
神通「では、砲撃の訓練に戻りますよ。先程の海域に戻りましょう」
全員「はい!!」
………………………………。
今日はここまでです
色んな意味でのエイプリルフールでした
また来ますね!
提督「どうだ瑞鶴。そっちの山は片付きそうか?」サラサラ ペラッ
提督「うん。もうそろそろ終わるかな」ペラッ
瑞鶴「あれ? なにこれ……う、嘘!?」
提督「どうした? 瑞鶴」ペラッ サラサラ
瑞鶴「提督さん、この司令書を見てくれない?」
提督「ああ」ペラッ
瑞鶴「これって……」
提督「ありえん……大本営の上層部は何を考えているんだ!」
瑞鶴「あんなに大きな犠牲を払った作戦だって失敗したのにどうしてこんな……」
提督「大方、私が独断で行った南方海域からの撤退が御不満なのだろう」
瑞鶴「でも、これ以上戦線を拡大するどころか維持するのだって現場は難しいのは瑞鶴でも分かるよ!」
提督「ああ。しかしそれは、最前線のお前達や直接お前達を指揮する私だからこそよく分かっている事なんだ。だが、結果や数字、己の出世の事しか見ていない大本営の奴らには本質が全く分かっていないのだろう。資源が手に入り辛くなったのは南方を手離したからで、元に戻す為には南方を取り戻せばいい。恐らくはそんなところだろう」
瑞鶴「あり得ない……」
提督「そうだな。現場の人間から見ればあり得ない事だ。しかし、こんなことは軍隊に限らず社会では幾らでも例はある」
瑞鶴「それにしたって、こんな作戦やったらまた犠牲者が沢山出るに決まってるよ!!」
提督「同感だ。私から一度、この作戦を取りやめるように大本営に連絡しよう。だが……」
瑞鶴「だが?」
提督「難しいだろうな」
………………………………。
コンコン コン
初風「どなた?」
神通「私です」
初風「神通さん!?お、お入り下さい!」 ガチャ
神通「お邪魔します」
初風「御用があるのでしたら私達からそちらに赴きましたのに、わざわざ申し訳ございませんでした!」
神通「いえ、いいのです」
初風「すぐにお茶をお出しします!」
神通「大丈夫です。それよりもお話しても宜しいですか?」
初風「はい!」
神通「初風と雪風と天津風の3人と他の子達、そして私に提督より収集がかかっています」
初風「急ぎですか?」
神通「いえ、一時間後の1300に執務室に集まるようにとの事です」
初風「了解しました。神通さん、わざわざそれだけの為に来て頂いてしまい申し訳ございません!」
神通「他の子達にも声をかける必要があったので気にしなくていいですよ。では、私はこれで失礼します」
初風「はい!また後ほどお願いします」
神通「はい。失礼します」ガチャ パタン
………………。
提督「すまないな、突然呼び出してしまって」
神通「いえ」
浜風「どのようなご用件なのでしょうか?」
卯月「しれ〜か〜ん! 早く教えてくれないとくすぐっちゃうぴょ〜ん!」
文月「うづきちゃん、だめだよぉ〜」
三日月「司令官、すみません。姉達がご迷惑をおかけして」
卯月「三日月はうーちゃんに対しての敬意がたりないぴょん」
三日月「今は司令官のお話を聞きましょうね、卯月姉さん」
初風「で、何なの?」
提督「ごほん……単刀直入に言おう。これから私達は南方海域へ再侵攻する。その第一歩の足係りとして、ラエとコロンバンガラ島とブーゲンビル島に前進基地を作る。これは決定事項だ。反論は認めない」
カランカラン
雪風「ど…………」プルプル
提督「何だ、雪風」
雪風「どうしてですか!! 今まで南方の戦いで散っていったんです!! それに白雪さんや朝潮さん、荒潮さん、時津風は……時津風はラエからの撤退の所為で亡くなったんですよ!! そんな南方で散って逝った沢山の人々の死を不意にするんですかっ!!?」
提督「雪風、それは感情論だ。それに、例え今よりも沢山の戦死者がいても、誰も犠牲になっていなくてもこの作戦は行われた。ただそれだけのことだ」
雪風「なら、どうしてーー ムグッ」
神通「お辞めなさい、雪風」
神通「提督、失礼しました。他に何かお話はございますか?」
提督「今回は輸送艦隊の護衛部隊と敵艦、敵機の警戒部隊に分かれる。護衛部隊は卯月、望月、皐月、文月の四人。警戒部隊は神通、初風、雪風、天津風、浜風、三日月の6人とする。全員明日の0800に横須賀を出港。補給艦隊と共にラバウルへ向かい、補給を済ませて夜間にコロンバンガラ島へ侵攻せよ」
神通「了解致しました。最後に一つだけ質問をしても宜しいですか?」
提督「ああ、何だ?」
神通「この作戦は提督自らがお考えになったのですか?」ジッ
提督「勿論だ。私が考えた」
神通「………………そうですか……ありがとうございます」
提督「ああ。では、今日は解散してくれ。明日から頼むぞ」
神通「はい。失礼しました」
ガチャ バタン
雪風「プハッ!」
雪風「神通さん、どうしてあのようなことを!」
神通「あれは上司に向かって言うべき言葉ではありません。そして、あれ以上言われても提督が困り、傷付き、心が弱るだけだからです」
天津風「それはどういうことですか?」
神通「あれは提督の考えた作戦ではありません」
天津風「えっ!?」
浜風「しかし、司令は自分で考えたとおっしゃっていたのですが」
神通「あれは嘘です。これは想像の話になりますが、更に上ーーつまり大本営からの命令でしょう」
浜風「ならば、そう言って下されば私達だって多少は納得し、提督に不信感を持たずに済みますのにどうして……」
神通「明確な責任の在り処を作って下さったのですよ。例え全ての艦娘から憎まれ、怨まれてでも、全ての責任を提督自らが受け止めるつもりなのでしょう。そうすれば、艦娘の感情の行き所を失うことはありませんから」
浜風「…………そうだったのですか……しかし、神通さんは何故それを私達に」
神通「もしも私が居なくなってもこの事を知っている人が居て欲しいからです。例え貴女達以外全ての艦娘が提督を憎んでも貴方達には真実を知っていて欲しい。ーー私はそう思ったのですよ」
浜風「分かりました」
神通「雪風、この件で提督に怒りをぶつけるのは間違っているのは分かりましたか?」
雪風「はい……」
神通「よろしいですーーでは、私はこれで失礼します。また、明日」スタスタ
………………。
瑞鶴「提督さん、本当にあれでよかったの? みんなから嫌われちゃうよ?」
提督「いいんだ。それに、大本営の命令を変えられなかった私が悪いのは事実だ」
瑞鶴「損な性格をしてるね、提督さんは」
提督「これは生まれつきだ。変えることは出来ないし、変えるつもりも無い」
瑞鶴「ホント……馬鹿なんだから」ボソッ
提督「何か言ったか?」
瑞鶴「何も言ってないわよ」
提督「そうか」
瑞鶴「提督さん、お茶淹れて来てあげるよ」
提督「ありがとう。頼む」
瑞鶴「うん。ちょっと待っててね」
提督「ああ」
………………………………。
今日はここまでです
申し訳ありませんが、明日から数日の間投下出来ないかもしれません。5日以内に更新出来たらいいな……と思っていたり……
・別プロット2個分のSS執筆(一つは瑞鶴SSです)
・次に書くとある海戦の研究、戦闘シーンの構築
の以上二点が理由になります
では、また数日後に……
ラバウル
神通「みなさん、これよりコロンバンガラ島への上陸作戦を開始します。先ずは私達警戒部隊が先行し航路を確保。その後に輸送部隊が続いて下さい」
卯月「了解だぴょ……」
望月「卯月は黙ってろ! 了解しました」
卯月「んむ〜!! んむ〜!!」ジタバタ
浜風「では、神通さん。そろそろ出港しますか?」
神通「そうですね。出港しましょう」
全員「はい!!」
神通「警戒部隊抜錨! 全艦私について来て下さい !」
………………………………。
神通「そろそろコロンバンガラ島です」
初風「今のところ会敵は無し……」
神通「しかし、この重要海域に敵艦が全くいないとは考え難いです」
雪風「あれ?」
神通「どうしましたか?」
雪風「逆探に何かが……」
神通「…………全艦単縦陣。雪風、方角は分かりますか?」
雪風「いえ……方角までは……」
神通「……………………」
雪風「神通さん?」
神通「見えました。東5キロ先に敵艦隊を確認」
雪風「えっ!?」
初風「神通さん!?」
神通「夜戦は先手必勝です。これより私が探照灯で敵艦隊を照らし出します。貴女達は陰から敵艦隊に肉薄、雷撃をして下さい」
浜風「しかし、神通さんが」
神通「心配の必要はありません。曲りなりとも私は二水戦の旗艦です。おいそれとはやられませんよ」
浜風「…………御武運を」
神通「最後に一言だけ言っておきましょう。貴女達は並みの駆逐艦よりも練度が高く、生き残る力があります。みなさん、自信を持って下さい」
初風「神通さん……」
神通「初風もとても成長しました。貴女が貴女の妹達を引っ張って行って下さい……全艦初風を先頭に突撃開始。二水戦の誇りを見せて下さい」
初風「はい! 全艦突撃!!」
神通「…………やはり、こうなる運命なのですね……」ボソッ
神通「探照灯照射!!」ピカッ
神通「全主砲主砲照準合わせ。一番砲塔砲発射」ズドン!
バシャーン
神通「近。第二主砲発射」ズドン!
ズドーン!
イ級「!!?」
神通「敵駆逐艦に着弾確認」
イ級「……」ズドン!
ホ級「……」ズドン!
ホ級「……」ズドン!
ホ級「……」ズドン! バシュッ
ズドーン!
神通「うっ……第二缶室に被弾。しかし、まだ動けます」ズドン! ズドン!
ズドーン!
ホ級「!!?」
神通「敵軽巡に命中。魚雷全門発射」バシュッ
神通「自発装填、魚雷発射準備……白線……雷跡……!?」
ズドーン!!
神通「ぬ……ぬかりました……浸水発生、浮翌力低下……機関停止」
神通「やはり、同じ運命を……辿るのですか……」
ホ級「……」ズドン! ズドン! バシュッ
ズドーン!
神通「くっ……あと少し……あと少し粘ればあの子達が……」ズドン! ズドン!
ズドーン!
ホ級「!!?」
神通「次!」
初風「神通さん! これより雷撃します!!もう探照灯を閉じて下さい!!」
神通「此処までですね……みなさん……あとは、頼みましたよ……」
神通(佐藤大佐……また、私もそちらに参ります…………逢えると良……)
ズドーン!!
初風「全艦取り舵いっぱい! 深度調整! 93式酸素魚雷発射!!」バシュッ
雪風「発射!!」バシュッ
天津風「行くわよ!」バシュッ
浜風「雷撃開始!」バシュッ
三日月「当たって!」バシュッ
ズドーン!!
浜風「敵駆逐艦に命中!」
初風「自発装填の為に一度北方に逃れる! 自発装填装置がない三日月は退却して!」
三日月「分かりました。では、私は神通さんの護衛に向かいます」
初風「よろしく。さっきから神通さんと連絡が取れないから、何か分かったら教えて」
三日月「お任せ下さい」
初風「みんな、あの神通さんが沈む事は無いから安心して。それよりも、あいつらを全艦叩きのめすわよ」
雪風「はい!」
天津風「そうね」
浜風「では、行きましょうか」
初風「全艦反転! もう一発、この酸素魚雷をお見舞いしてやるわよ! 突撃開始!!」
浜風「敵艦隊発見。こちらにはまだ気付いていない模様」
初風「なら好都合。ギリギリまで肉薄してやる」
浜風「それは危険では……」
初風「神通さん仕込みの逆落とし戦法をやる。ただ、気付かれるまでは探照灯は使わない」
天津風「いいわね、それ」
初風「流石私の妹。分かってるわね」
天津風「ええ、当たり前よ」
初風「両舷全速! 私の指示があるまでは絶対に舵を切るな!」
ズドン! ズドン!
天津風「神通さんの援護射撃よ! 敵の注意が向こうに逸れたわ!」
初風「やっぱり神通さんは最高ね!」
ホ級「!!?」ズドン! ズドン!
雪風「敵軽巡、こちらに気付きました!」
バッシャーン!
雪風「痛っ!」
初風「雪風!?」
雪風「大丈夫です。ただの至近弾ですから!」
初風「なら、速度落とさずに続いて! 行くわよ、探照灯照射!!」ピカッ
初風「目は潰した! 弾幕張って! 主砲射撃開始!!」ズドン! ズドン!
浜風「このままだとぶつかりますよ!」
初風「こんなもんじゃない! もっと接近する!!」
浜風「ぶつかる!」
ホ級「!!?」サッ
初風「今! 面舵いっぱい! 全艦酸素魚雷1番発射!!」バシュッ
ズドーン!
天津風「敵軽巡大破! 艦首が無くなってるわ!」
初風「追い打ちは不要。別の敵を食う! 魚雷一斉射!!」バシュッ
天津風「当てるわ!!」バシュッ
ズドーン! ズドーン! ズドーン!
天津風「水柱を3つ確認!」
雪風「3体撃沈しました!」
初風「分かった。みんな離脱するわよ! 針路そのまま、神通さんの元へ戻る」
浜風「了解です」
初風「どう、浜風? 16駆逐はどうだった?」
浜風「みんな命知らずです」
初風「それ、二水戦では褒め言葉なんだけど?」
浜風「ええ。誉めてます。私達17駆逐もそれくらい出来るようになりたいですね」
初風「なんなら雪風を貸し出そうか?」
浜風「では、お借りしま……」
雪風「嫌です! もう離れ離れは嫌です!」
初風「雪風!?」
雪風「あっ! い、いえ、何でも無いです……」
浜風「雪風が嫌がっているので、遠慮しておきます」
初風「そうね。そうしてくれると助かるわ」
雪風「ごめんなさい……」
浜風「いえ、その反応は当たり前のものです。何せ、時津風を喪った直後なのですから……」
雪風「はい……」
浜風「もう、誰も沈まなければいいですね?」
雪風「はい……」
三日月「みなさん! 大変です!!」
初風「どうしたの!? 何かあったの!?」
三日月「神通さんが!」
初風「神通さんが? 今も援護射撃をしてくれているじゃない」
三日月「そうなんですけれど、そうじゃないんです!!」
初風「三日月、貴女一度落ち着きなさい」
三日月「神通さんが……神通さんが……」
三日月「亡くなっています!!」
初風「なっ!!?」
天津風「でも、今砲撃をしているじゃない!」
三日月「そうなんですが、もう脈が無いんです! 何を話しても反応が無いんです! 私には訳がわかりません!」
初風「みんな急いで! 神通さんのところまで急行するわよ!」
浜風「了解!」
……………………。
ズドン! ズドン!
初風「神通さん!!」
三日月「初風!!」
初風「ちょっとそこをどいて!!」
初風「神通さん! 聞こえますか? 神通さん!!」
神通「 」ズドン! ズドン!
初風「神通さん! もう作戦は終わりました! 神通さんのお陰で雷撃に成功しました!! もう、戦闘は終わったんですよ!!」
神通「 」ズドン! ズドン!
初風「もう戦闘は終わったんですよ、神通さん!! 戦いは終わりました!!」
神通「 」
天津風「砲撃が止まった……?」
神通「 」
初風「神通さん! 浸水してますよ!?」
浜風「轟沈……」
初風「神通さん! お願いです! 目を覚まして下さい!! 沈んじゃいますよ!! このままじゃ沈んじゃいます!! お願いですから目を覚まして下さい!!」
神通「 」
初風「まだ……まだ神通さんに教えて貰っていないことが沢山あります! 神通さんに教えて貰いたいことが沢山あります!! 感謝の言葉だって伝え切れていないです!! 嫌です!! こんなところで沈むなんて嫌です!! 神通さん!!」
天津風「神通さん……」ポロポロ
雪風「また…………ですか……」
初風「嫌だ……死なないで…………神通さんが沈むなんて嫌……!!」
────ポチャン────
初風「うわぁぁぁあああああああああ!!」
………………………………。
皐月「こちら護衛部隊の皐月。輸送艦全てコロンバンガラ島に接舷、積荷の積み下ろし成功したよ」
初風「そう……」
皐月「今からラバウルに戻るね」
初風「了解……」
皐月「じゃ、また後でね」ブツッ
初風「……一体…………この作戦に……」
初風「………………何の意味があったのだろう………」
………………………………。
今日はここまでです
お時間空けてしまい申し訳ありません。お陰様で瑞鶴SSは投稿までこじ付けることが出来、もう一つも少し書きためる事が出来ました
こちらの雪風SSを中心に進めるので、あまりペースには影響が出ないようにします
また来ますね
天津風「ブーゲンビル島通過。あと少しでラバウルね」
浜風「そうですね」
天津風「ねえ、初風……」
初風「…………」
浜風「さっきから反応しません」
天津風「そうね……」
浜風「やはり……かなりショックだったのですね」
天津風「私達も凄く辛いわ……だけど、初風は特に辛いと思うの」
浜風「私はあまり姉さん達とはあまり一緒に居なかったので詳しいことは分かりませんが、それでも初風姉さんが神通さんを慕っていたのはすぐに分かりました……大切な人を喪うのは辛いですよね……」
天津風「17駆逐はみんな揃っているじゃない。……大切にしてあげてね。喪った後では取り返しがつかないから」
浜風「はい。ですが、私は17駆逐から犠牲を出すつもりはありません」
天津風「そうね。浜風はその気持ちを忘れないでね」
浜風「はい」
ドーン
天津風「爆発音!? どうして後方から!?」
浜風「距離は少し遠いですね」
天津風「初風!!」
初風「……何?」
天津風「何って……今の聞こえなかったの!?」
初風「ごめん……聞いてなかった……」
天津風「初風! 神通さんが亡くなって辛いのは私もよく分かるわ! だけど戦闘中にまで引きずるのは駄目!」
初風「…………」
天津風「…………初風。私に旗艦の権限を移して」
初風「……どうぞ…………」
天津風「雪風、逆探で敵を探って! 三日月と浜風は……」
卯月「こちら護衛部隊だぴょん!! 聞こえるぴょん!? 繰り返すぴょん!! こちら護衛部隊だぴょん!! 警戒部隊は聞こえてるぴょん!?」
天津風「聞こえるわよ! 何かあったの!?」
卯月「繋がった……繋がったぴょん……うえぇぇぇん!!」
天津風「落ち着いて卯月! 一体何があったの!?」
皐月「僕が変わる!」
天津風「皐月、何があったの!? 今の爆発音は何!?」
皐月「今爆撃を受けたんだ!! その爆撃で望月が……」
天津風「望月が何!?」
皐月「……沈んだ」
天津風「嘘!?」
皐月「文月と卯月が取り乱してる! それに航空機に爆撃されたってことは……」
雪風「天津風! 島の方から何か出てきてます!」
天津風「島影に隠れていたの!? 皐月! 敵艦隊がそっちに向かってるわ!」
皐月「僕たちには対処しきれないよ!」
天津風「私達が敵を引き寄せるわ! その間に退避をして!」
皐月「でも、それじゃあ天津風達が!」
天津風「輸送艦の護衛が最優先だもの。私達はそれに従うだけよ」
皐月「分かった。頼んだよ天津風」
天津風「ええ」
皐月「絶対に……絶対にみんなラバウルで会おうね」
天津風「頑張るわ」
天津風「みんな! これから反転して護衛部隊の救助に向かうわよ!」
浜風「姉さん、その前にラバウルに援軍依頼をしてはどうでしょうか?」
天津風「そうね。浜風、電文頼んでいい?」
浜風「はい。お待ち下さい──終わりました」
天津風「じゃあ、助けに行くわよ! 全艦両舷全速!!」
………………………………。
羽黒「コロンバンガラ島攻略に出ていた艦隊から援軍の要請の電文が入りました!」
妙高「どうしたのですか?」
羽黒「今ブーゲンビル島沖で護衛部隊が敵航空機による爆撃を受け、望月ちゃんが轟沈。さらに敵艦隊が追撃にかかっているみたいです!」
妙高「警戒部隊の方は何をしているんです!?」
羽黒「今護衛部隊の救助に向かっているみたいです!」
妙高「神通は沈んで、今は駆逐艦の子達のみでしたね?」
羽黒「はい!」
妙高「分かりました。今すぐ援軍に向かいましょう。今出撃可能な艦を集めて下さい」
羽黒「すぐに集めて来ます!」タタッ
妙高(あの時とは状況が異なります……大丈夫な筈です)
……………………。
長良「お待たせ!」
川内「妙高、話は聞いたよ! 駆逐の子達がヤバいって!?」
妙高「そうです! 今すぐ援軍に向かわないと間に合わない可能性がどんどん上がっていきます!」
川内「だろうね…… ほら、さっさと行くよ!」
妙高「ええ! 全艦今すぐ出撃して下さい!」
羽黒「妙高姉さん! 装備は大丈夫ですか?」
妙高「大丈夫です。皆さんも大丈夫ですか?不備があれば直ぐに整えて下さい!」
長良「私は大丈夫!」
川内「大丈夫だから! そんなことよりもこの時間が勿体無い!! 私は先に行くよ!!」
妙高「全艦出撃して下さい!」
羽黒「はい!!」
長良「うん!!」
………………………………。
今日はこれで終わりです
もしかしたら明日は来れない可能性があります。
戦闘シーンを練らせて下さい
では、また来ますね!
おはようございます
今日の22〜23時に投下予定です
何とか戦闘パート全て投稿出来ると思います。
では、また後ほど
皐月「航空隊の追撃は振り切った!」
文月「うえぇぇぇん!! もちづきちゃん……」
卯月「う〜ちゃんが悪いんだぴょん……う〜ちゃんがちゃんとちゃんとしてれば望月は…………うぅ……うぐっ」
皐月「泣くのは後だよ! それよりも後ろから来る艦隊をどうにかしないと!」
文月「でも、どうすればいいの……?」
皐月「とりあえずSOSを出そう! 確か近辺の海域に他の艦隊が居たはずだから!」
卯月「そんなことしたら敵にもう〜ちゃん達の場所がバレるかもしれないぴょん」
皐月「このままでもやられちゃうよ! それなら、少しでも生き残ることの出来る可能性がある方を選びたいよ」
卯月「…………分かったぴょん」
皐月「SOSを出すよ! 僕たちはブーゲンビル島を島沿いに迂回して、島々の沿岸に沿ってラバウルを目指す!」
文月「わかったよ!」
卯月「了解ぴょん」
………………………………。
天津風「敵艦隊捕捉したわ!! 全艦砲撃準備!」
三日月「陽炎型の皆さんは魚雷の残弾はどうなってますか?」
天津風「全員撃ち尽くしてるわ。三日月は?」
三日月「私はあと6発、一斉射分残しています」
天津風「分かったわ。大事に使ってね」
三日月「はい」
天津風「今回は敵艦隊の注意を引くのが目的よ。深追いはする必要は無いわ」
浜風「分かりました」
天津風「浜風、少し貴女に指揮を任したいのだけれど、大丈夫?」
浜風「はい」
天津風「じゃあ、頼むわね」
浜風「ええ」
天津風「隊を二つに分けるわ。合図と共に浜風と雪風、初風は私達より先行、敵の目を引いて。私と三日月で敵を挟んで逆側から魚雷を撃つわ。三日月は2本魚雷を撃って貰うわね」
三日月「分かりました」
天津風「左先頭から順に浜風、雪風、初風。そして右側が私、三日月の並びで複縦陣を形成。合図と共に2隊に分離。いいわね?」
浜風「了解」
雪風「はい!」
三日月「分かりました」
初風「……ええ」
天津風「行くわよ! 突撃開始、並びに全艦砲撃開始!!」ズドン! ズドン!
三日月「敵艦隊反転! こちらに向かってきます!」
天津風「いいわ! じゃあ、そっちは任せたわよ、浜風!」
浜風「御武運を」
天津風「浜風達もね──艦隊分離して!!」
浜風「取り舵!」
天津風「面舵!」
…………。
ホ級「.……」ズドン! ズドン!
バッシャーン!
浜風「っ!? だんだん狙いが正確になってますね」
雪風「でも、雪風達に攻撃を集中させればその分三日月は確実に雷撃が出来ます」
浜風「ええ。なのでもう少し頑張って耐えましょう」
雪風「はい」
天津風「三日月、雷撃準備は大丈夫?」
三日月「もちろん。 いつでも行けます」
天津風「ここらは島の近くで浅いから魚雷の深度調整気を付けて」
三日月「ちゃんと調整済みです!」
天津風「ならもう少し接近し……えっ?」ガガガ
三日月「天津か……っ!?」ガガガ
天津風「暗礁に乗り上げた!? こんな時にどうして!?」
三日月「早く離礁しないと!!」
天津風「浜風!」
浜風「どうしましたか? 今はあまり喋っている余裕が……」
天津風「今すぐ離脱して! 私と三日月は暗礁に乗り上げちゃったの!」
浜風「離礁出来ないのですか?」
天津風「今試みてるわ! ただ、絶対に雷撃は出来ないから、この戦法はもう取れない! だから距離をとって!」
浜風「今すぐ助けに……」
天津風「ダメよ! 今すぐ逃げて体勢を整えて!」
浜風「分かりました……」
天津風「もし離礁出来たら合流するわ」
浜風「絶対に戻って来て下さい」
天津風「ええ。努力するわ」
浜風「では、私達は一旦この海域から離脱します」
天津風「折角敵を引き寄せて貰ったのにごめんね」
浜風「謝ってくれるのでしたら、直接顔を見てお願いします」
天津風「うん……じゃあ、通信切るわね」
浜風「はい」
………………。
天津風「はあ……はあ……三日月、どう? そっちは抜けれそう?」
三日月「駄目……全く動きません」
天津風「このままだと2人揃って……くぅぅうう!!」ガッ! ガガガ
天津風「抜けれた!!? 三日月、離礁に成功したわ! 」
三日月「良かった……何処か破損は?」
天津風「左舷の推進軸を破損しただけ。まだ動ける」
三日月「動けるなら何とかなる……わね」
天津風「今、三日月も助けるわね!」
三日月「それは駄目です」
天津風「駄目? 何を言っているの!?」
三日月「天津風は近寄ってはいけません」
天津風「どうして!? 訳が分からないわ!」
三日月「私に近寄ればまた座礁する可能性があります。推進軸を破損した天津風が次も離礁出来る可能性は低いです」
天津風「私に三日月を見捨てろって言うの!?」
三日月「はい」
天津風「そんなの出来ないわよ!」
三日月「出来ます。それに、私はもう離礁は不可能ですから、私に費やす時間があるのならば、少しでも遠くまで逃げて下さい」
天津風「ふ、不可能なんて言わないで!」
三日月「左舷の推進軸が曲がり使用不可。そして離礁作業中に右舷の推進軸も脱落しました。更に浸水も始まっています。天津風も推進力が大きく落ちているので曳航も出来ません。もう、助かる見込みはありません」
天津風「そんな……嫌よ! 一緒に帰る!」
三日月「天津風……貴女は優しすぎる…………だけど、今はその優しさが仇になっています。今だけは非情になって下さい。それに、もしも私の所為で天津風までもが沈む事になったら私は悔やんでも悔やみきれません。だから……だから天津風はラバウルへ逃げて下さい」
天津風「…………嫌……」
三日月「そうですか……行かないのなら……」ジャキッ
三日月「魚雷で貴女を処分します。敵に殺させるよりは私が手を下しましょう。嫌なら、他の貴女の姉妹が大切ならば今すぐこの場から去って下さい」
天津風「三日月……」
三日月「二番、三番魚雷発射」バシュッ
シュー
天津風「!?」
三日月「次は当てます。さあ、行って下さい」
天津風「戦闘が終わったら救援を呼ぶから……それまで頑張って……」
三日月「ありがとうございます、天津風」
天津風「ありがとうなんて……私……何もしていないのに……」
三日月「十分してくれました。さあ、早く」
天津風「…………右舷前進半速」
三日月「さよなら、天津風……負けないでね」
天津風「うっ…………うぅ……」ポロポロ
………………………………。
天津風「ごめんなさい……! 三日月ごめんなさい……」ポロポロ
時雨「川内さん、誰かいるよ!!」
川内「味方?」
時雨「いや、僕にはまだこの距離じゃ……」
天津風「せ……んだいさん?」
川内「時雨。あんたはすぐに砲撃出来るように準備して」
時雨「うん……」
川内「そこの誰か、一旦止まりな。変な動きをしちゃダメだからね。もし少しでも怪しい動きをしたら穴だらけになるから覚悟してよ」
天津風「川内さん! 天津風です! 一体どうしてここに!?」
川内「天津風か! 時雨、兵装は下ろしていいよ!」
時雨「ふう……」
川内「浜風からの電文を聞いてこの海域に急いだら丁度、時雨や阿賀野達とバッタリ出くわして合流したんだよね〜 ちなみに妙高と羽黒はもう少し後方にいるね」
時雨「僕達は別任務で近くまで来ていたんだけれども、もう少し東の方から出ていたSOSをキャッチたんだ」
川内「ま、そういうこと。それで天津風、あんたどうしたの? 一人で行動して。それに速度も殆ど出ていないみたいじゃん」
天津風「私と三日月はさっきまで座礁してたんです! 私は何とか抜け出せたんですが、三日月が両舷の推進軸が使用不可になってしまって、そして私も左舷の推進軸が曲がって曳航出来なかったんです! でも、川内さん達なら助けられます!!」
川内「じゃあ、三日月が座礁している座標を教えて。長良は天津風を曳航してラバウルに戻る。そして五月雨と白露は三日月の救援に向い、私と阿賀野、長波、時雨で敵艦隊を叩く。異論はある?」
白露「ないよ〜! 私がいっちば〜ん最初に三日月を見つけるよ〜!!」
川内「阿賀野はと長良は?」
阿賀野「ないよ〜」
長良「私も無い!」
川内「それじゃ、作戦開始するよ! ん?」
ヒューン ズドーン!!
川内「んあー!!?」
阿賀野「川内!? 爆撃!!?」
長良「まだ夜間なのに!!?」
時雨「川内さん!!」
ズドーン
長波「今度は何の音だ!?」
白露「ねえ、あれ!!」
長波「おいおい、火の手が上がってるぞ!?」
天津風「う……そ…………」
五月雨「天津風さん、あれが何か分かるんですか!?」
天津風「あそこ……三日月がいるところ……」
長良「天津風! それ本当!?」
天津風「私……戻らなきゃ……」フラフラ
川内「駄目よ!」
阿賀野「川内! 大丈夫なの!?」
川内「こんなのかすり傷よ! それより天津風、あんたは今すぐ長良と一緒にラバウルに戻りなさい。長良、縛り付けてもいいから曳航急いで!」
長良「分かった! ほら、天津風行くよ!!」
天津風「嫌です!! 嫌です!! 三日月!! 三日月が待ってるの!!」ジタバタ
川内「行って!」
長良「うん!」
天津風「長良さん離して!! 三日月!! 三日月〜!!!!」
川内「よし……次は」
時雨「川内さん! 何かが接近してるよ!」
川内「敵!?」
浜風「そこに居るのは誰ですか!?」
川内「この声……」
浜風「反応がない。どうやら味方が爆撃された訳では無かったみたいですね。雪風、初風、砲撃準備を! 」
川内「浜風、川内よ!」
浜風「川内さんですか? 救援に来て頂けたのですね!?」
川内「そうだね。三人とも無事?」
浜風「雪風がコロンバンガラで小破して、全弾魚雷を撃ち尽くしてますが、何とか健在です」
川内「そりゃ良かった。因みに天津風がさっきまでいたんだけど」
浜風「天津風は無事なんですか!?」
川内「たった今長良が無理やりラバウルに連れて行った」
浜風「三日月は?」
川内「多分……あの火の手が上がっている奴だよ」
浜風「………………そうですか……」
川内「とりあえず今から救援に行こうと思っているんだけれど」
浜風「なら、私達も!」
ズドーン! バッシャーン
雪風「敵襲です!」
浜風「後を付けられた!?」
川内「いや、敵の観測機だ! クソッ!! 三日月を救出する場合じゃなくなった!! 阿賀野! 浜風と初風、雪風、長波を率いて指揮を執って!」
阿賀野「えっ!? 阿賀野が!?」
川内「グダグダしてる時間は無いよ! ほら、早く!」
阿賀野「う、うん! 四人は阿賀野について来て! 」
浜風「はい!」
川内「白露、時雨、五月雨は私の指揮下に! 」
時雨「分かったよ!」
川内「妙高聞こえる!?」
妙高「聞こえますよ」
川内「敵艦隊が接近中! 照明弾を撃ちながら戦闘に合流して!」
妙高「分かりました。羽黒、照明弾を装填して下さい。あと偵察機を射出しましょう」
羽黒「はい! 妙高姉さん!」
川内「阿賀野! 私達が前に出る! そっちは回避専念で合間合間に援護射撃をよろしく!」
阿賀野「わかったわ!!」
川内「110度の方向9000mに敵艦隊発見!! 妙高、照明弾頼んだよ!」
妙高「照明弾発射!」ズドーン!
羽黒「は、発射!!」ズドーン!
川内「これで見えやすくなった!! 全艦、目標敵軽巡! てぇー!!」ズドン! ズドン!
ホ級「……」ズドン! ズドン!
ロ級「……」ズドン! ズドン!
ズドーン!
川内「うぁっ!! このぉ! まだまだ!!」ズドン! ズドン!
ホ級「……」ズドン! ズドン!
ズドーン!
川内「あぁ!! ふ、ざけるな!!」バシュッ
時雨「川内さん!! 危険です! 下がって下さい!!」
川内「時雨、近い!!」
時雨「えっ? あっ!? 」ザッ
ホ級「……」ズドン!
ズドーン!
川内「くっ!! あ……」
ロ級「……」ズドン!
バッシャーン!
白露「危なっ!! えぇ!!?」ザッ
五月雨「白露!!? あぁ!!?」
ズドーン!!
時雨「白露!? 五月雨!?」
五月雨「うわあぁん、痛ぁい……!」
白露「きゃあっ! 痛いって!!」
ズドーン!!
ロ級「!!?」
川内「ど……どんなもんよ……」
時雨「川内さん! どんどんスピードが落ちてますよ!」
川内「ごめん、時雨」
時雨「川内さん、まさか……」
川内「主機械が停止、舵故障、航行不能。艦隊行動は取れないね」
時雨「嘘……だよね?」
川内「これより旗艦は時雨に譲る。後は頼むよ。私はここから射撃を続けるからさ」
時雨「川内さん……またここで沈む積もりなのかい!? 」
川内「今度こそ繰り返さないと思ってたんだけどね……駄目だったわ」
時雨「でも……そんなの酷いじゃないか……」
川内「いや、そんなことはないね。今回は天津風を救う事が出来たしさ」
時雨「…………それでも……」
川内「時雨。記憶持ち同士だから教えてあげる」
時雨「…………何をだい?」
川内「確かに最期は大差ないかもしれない。だけど、私は今回艦娘として生きる事が出来て本当に良かった」
時雨「どうして……?」
川内「そりゃ、楽しかったからね。妹達と馬鹿やってみんなで騒いで。前には体験する事が出来なかった事を体験して、自分がやりたい様にやる事が出来た。それって凄く幸せな事なんだ」
時雨「うん……」
川内「時雨、悔いを残さない様に生きなよ。それが多分この『生』の意味だと思うから」
時雨「……うん…………」
川内「分かったなら行きな。それぞれにそれぞれの因果があるとしても、その因果がズレる事があるんだからさ。時雨も自分の所為で誰かを沈めたくはないでしょ?」
時雨「川内さん……最後に一つだけ」
川内「何?」
時雨「今までお勤めご苦労様でした! 貴女の意思は僕が受け継ぐから安心して逝って下さい!」ピシッ
川内「うん。ありがと」ピシッ
時雨「じゃあ、行くね」ザッ
川内「時雨ったら……最後に泣かせてくれちゃって……さて、あの子達を護る為にも最後の一仕事行くわよ!!」ズドン! ズドン!
川内「私はここよ!! 私と刺し違える覚悟がある奴は来なさい!」ズドン! ズドン!
………………………………。
時雨「白露! 五月雨!! 撤退するよ!!」
白露「ぶつかった衝撃で速度が落ちた……」
五月雨「痛いです……」
時雨「スピードは出来る限りでいいから! 川内さんが護ってくれている内に撤退をするよ!」
五月雨「川内さん、どうしたんですか!?」
時雨「川内さんは……後で逢えるよ」
五月雨「良かった〜」
時雨「ほら、僕たちは撤退を命令されたんだ。行くよ、三人とも」
五月雨「はい!」
白露「私が一番艦なのに〜」
時雨「白露、今だけは我慢してくれないかい?」
白露「う〜ん……しょうがないな〜」
時雨「ありがとう。じゃあ、撤退を始めよう」
羽黒「時雨ちゃん達が撤退を始めたみたいです」
妙高「やっぱり……彼女は…………」
羽黒「はい……」
妙高「私達も撤退しましょう。先に阿賀野達を逃がして最後に私達が撤退で良いですか?」
羽黒「は、はい!!」
妙高「阿賀野、聞こえますか?」
阿賀野「はい〜! 聞こえま〜す!」
妙高「阿賀野達もこれより撤退して下さい。輸送艦隊が逃げ切る時間は稼げた筈です」
阿賀野「分かりました〜 みんな、撤退するよ〜!! 取り舵一杯〜!」
妙高「今回は衝突しないで済みましたね」
羽黒「妙高姉さん! 魚雷が接近してます!!」
妙高「面舵は間に合わない! 取り舵!!」
羽黒「取り舵!!」
阿賀野「うわぁぁあ〜!! 危な〜い!!」ザッ
浜風「面舵一杯!!」ザッ
雪風「面舵です!」ザッ
初風「…………」フラフラ
雪風「初風!!」
妙高「初風!!?」
初風「……あっ!?」
ズドーン!!
雪風「初風!?」
初風「あ……あぁ……」
妙高「また…………またやって……!!」
羽黒「敵駆逐艦が追撃に来てます!!」
雪風「初風!! 動けますか!?」
初風「雪風……駄目…………動けない……」
雪風「手を出して下さい!!」
初風「手を……?」
雪風「雪風が曳航します!! しっかり握ってて下さい!!」ギュッ
雪風「曳航を始めます!! 」
初風「どうして……私なんかの為に……」
雪風「もう、姉妹を喪うのは嫌なんです!! あんな思いはもう沢山なんです!」ポロポロ
初風「神通さんの時は涙すら流さなかったのに……どうして私の時は泣いてるのよ……」
雪風「初風は雪風のことをいつも助けてくれました! いつも雪風の心を支えてくれました!! 初風は雪風の特別なんです!」
初風「あぁ……そっか……」
ハ級「……」ズドン! ズドン!
バッシャーン! バッシャーン!
初風「雪風……私を曳航してたら後ろの奴らに追いつかれる……」
雪風「大丈夫です!! 絶対に大丈夫ですから!」
初風「雪風……聞いて欲しい事があるの」
雪風「何ですか!?」
初風「もう私が直接雪風を護る事は出来ない……もう一緒に日々を過ごす事は出来ない……」
雪風「な、何を言っているんですか!?」
初風「だけど、これからは別の所から雪風を見守っているから、安心して……ね」
雪風「初風……意味が分かりません……どうしてそんな事を……」
初風「雪風……ありがとね……」スッ
雪風「初風!!?」
初風「頑張れ……雪風」
初風(ごめんなさい神通さん、貴女の元にはまだ行けないみたいです……)
ハ級「……」ズドン!
ズドーン!!
雪風「初風ぇぇぇぇ!!!!」
……。
雪風「…………はは」
雪風「ははははははは」
雪風「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
雪風「雪風は……雪風はまた大切な人を殺した!!!! あははは!! 雪風が!! 雪風が殺した!!」
雪風「雪風は死神なんです!! 雪風は死神だったんです!! 輸送艦の人達も比叡さんも霧島さんも夕立も暁も綾波も朝潮も荒潮も白雪も神通さんも川内さんも時津風も初風も
『雪風』が殺したんです!!」
雪風「許せない!! 私は『雪風』が許せない!!」
雪風「絶対にこの死神を私は許さない!!」
雪風「でも……」ギロッ
ハ級「……」
雪風「お前だけは殺してやる!!」
雪風「うあぁぁぁぁぁぁ!!」ズドン! ズドン! ズドン!
ズドーン! ズドーン! ズドーン!
ハ級「!!?」
雪風「絶対に殺す!! お前だけは絶対に殺す!!」ズドン!
ズドーン!!
ハ級「」
雪風「殺す!! 肉片一つ残してたまるか!! うわぁぁあ!!」ズドン! ズドン!
ズドーン! ズドーン!
ハ級「」
雪風「うわぁぁぁぁぁ!! うわぁぁあ!!」ズドン! ズドン! ズドン!
……………………
…………
……
雪風「はあ……はあ……はあ……はあ……」
チャプッ
雪風「…………これ、は……?」スッ
雪風「……初風の手袋…………」
雪風「う……うぅ…………」
雪風「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 初風!! 初風!! うわぁぁあ!!」
雪風「初風ぇぇ!!!!」
………………………………。
ラバウルに撤退後、天津風は修理の為にシンガポールに回航されました
これで第十六駆逐隊は雪風独りになり解体
雪風は第十七駆逐隊に移ることになりました
そして……ラバウルを最後に、天津風と出逢うことは二度とありませんでした
時津風、天津風、初風……
私は仲間を、大切な家族を全て喪った
今日はこれで終わりです
流石に1日で20レスの執筆は無謀でした……
また来ますね
見たいです
雪風と新しい仲間の絆が深まればこそ絶望が際立つので
悲劇を目の当たりにしてもいいし自分の知らぬところで知り合いが沈むというのも……ッ愉悦
横須賀鎮守府
コンコン
谷風「おや? そこにいるのは誰だい?」
雪風「雪風です」
谷風「おお、雪風か! 入りな!」
雪風「失礼します」
ガチャッ パタン
浜風「もう既に話してるけど、雪風がこの第17駆逐艦に入る事になりました」
雪風「……よろしくお願いします」
浦風「なぁ、雪風」
雪風「はい、なんでしょうか?」
浦風「ウチらは話に聞いただけじゃが、ぶち辛かったよん? お疲れ様なぁ」
雪風「いえ、そんなことはありませんよ」
浦風「無理せんでええんよ?」
雪風「私は本当に大丈夫です」
浜風(え?)
雪風「浜風、どうしましたか?」
浜風「あ、いえ……なんでも無いです」
雪風「そうですか」
谷風「ここは一つ、雪風の歓迎会ってことで間宮で卓を囲もうじゃねぇか!」
浦風「ウチは良いと思うよ」
浜風「私も良いと思います。磯風は?」
磯風「勿論賛成だ」
雪風「すみません、私はこの後用事があるんです。お誘いは嬉しいのですが……」
谷風「ちぇ! 分かった分かった! ほら、早く行くところに行っちまえばいいさ! かぁーっ! 付き合いが悪いねぇ!!」
浜風「谷風!」
雪風「はい……そうします」
ガチャッ パタン
谷風「なんだいなんだい! あいつ谷風達の誘いを蹴りやがった! 前に会った時はあんな奴じゃ無かったのにさ!!」
浜風「谷風そんなこと……」
谷風「それに、あいつ谷風達と仲良くするつもりねぇや! 谷風さんはあんなの背中合わせて戦うなんて無理無理!」
磯風「谷風、それは違うぞ」
谷風「あん? 何が違うんだい?」
浦風「ウチも磯風と同意見じゃな」
谷風「へぇ、浦風もか。なら、理由を教えてくれねぇか?」
磯風「私が説明しよう」
谷風「おう、頼むよ」
磯風「恐らくだが、雪風はあれが素だ」
谷風「…………は?」
磯風「そして雪風は仲良く出来ない。どうだ、分かったか?」
谷風「いや……谷風さんにはさっぱりだよ……」
浦風「磯風……やっぱしアンタは抜けとるのぉ…………」
浜風「…………はぁ……」
磯風「そんなことある訳が無いだろう」
谷風「浦風、説明してよ」
磯風「ウチにまかしとき」
磯風「そうか……無視か……」
浦風「雪風はなぁ、時津風と初風を亡くして、天津風とも離れ離れになった雪風は、誰かと仲ようなるんがいびせぇんじゃゆぅて思うよ。じゃけぇ相手を突っぱねるんじゃないんかのぉ?」
谷風「い、いびせぇんじゃゆぅて……? 谷風さんに分かる様に話してくれねぇかい?」
浦風「うーん……怖い、じゃね」
谷風「あぁ……まあ、何となく分かったよ」
浦風「それでな、磯風が言ぅとった、あれが雪風の性格だってことじゃが、昔のあの明るい雪風は自分を護る為に仮面を被っとった雪風で、ほんまの雪風は今の雪風なんじゃないかっちゅうことじゃの」
谷風「えっと……つまりは、今の雪風が本来の雪風で、昔は無理をしていたと?」
浦風「そうじゃね」
谷風「かぁーっ! 失敗した! 谷風は雪風があんな態度を取るのは17駆逐が嫌いだからだと思っちまった!! 逆にあんなこと言った谷風さんは悪人じゃねぇか!!」
浦風「ふふふ、そうじゃねぇ」
谷風「ちょっくら雪風に謝ってくるよ。そして雪風に谷風さんの胸を貸してやろうじゃねえか」
磯風「貸す胸が見当たらないが?」
谷風「磯風、ちょっと表出な」
磯風「何故だ?」
谷風「いいねぇ、谷風さん久しぶりにキレちまったよ。その邪魔なバルジをもぎ取ってやろうじゃねえかい」
磯風「すまないが、これは後付けでは無くて自前なのだ。分けたくても分けてやれないな」
浦風「磯風、ちぃと黙ろうか?」
浜風「谷風、落ち着いて! それにこんなの戦闘の時は邪魔だから無い方が……」
浦風「浜風!!」
谷風「なんでぇ! なんでぇ! どうせ谷風さんは名前負けした貧相な胸だよ! だから磯風に谷無風とか言われるんだ!」
磯風「いや、それは言ったことがないぞ……」
谷風「みんなして馬鹿にしやがって!! ちっくしょーめー!!」ダッダッダ
ガチャン バタン!
浦風「磯風、浜風……」
磯風「何だ?」
浜風「…………」
浦風「あんたら二人とも説教じゃ」ニコッ
………………………………。
瑞鶴「提督さん、これ……」ペラッ
提督「…………書いてある通りだ」
瑞鶴「提督さん、ここに書いてある次の作戦ってまた?」
提督「ああ……大本営からだ」
瑞鶴「どうしてあいつら、こんな無茶な作戦を立てるの!?」
提督「さあ、な……私も聞きたいぐらいだ……」
瑞鶴「でも、他の子には提督が考案した作戦って伝えるんでしょ?」
提督「当たり前だ」
瑞鶴「ほんと…………まあいいわ。どうなろうと私は最後まで貴方の味方だから」
提督「ああ、ありがとう瑞鶴」
瑞鶴「うん……」
瑞鶴「でも、なんか聞いた事がある気がするんだよな〜」
提督「………………そうか?」
瑞鶴「マリアナ諸島……気のせいかな?」
提督「そうだ……気のせいだよ」
………………………………。
今日はここまでです
>>209、>>210
ご意見を参考にしつつ、こちらのルートにしました。御回答ありがとうございました
また例によって戦闘考えたり、瑞鶴ssの方を書いたりする為に、数日こちらは休むと思います。ご了承お願いします。
では、またいつか来ますね!
>>203
訂正
解体→解隊
駆逐隊をカンカンするってなんなんだよ……
アホすぎるのでちょっと雷撃処分されて来ます
那珂「那珂ちゃんセンター! 唯一の見せ場! いっけぇ〜!!」バシュッ
ズドーン!
>>213
訂正
磯風「ウチにまかしとき」
↓
浦風「ウチにまかしとき」
やっちまった…………
墓地
雪風「皆さん、お待たせしました」
雪風「これ、皆さんが好きな飲み物です。好きな時に飲んで下さいね」コトッ
雪風「私はもう大丈夫です。もう気持ちの整理はつきました」
雪風「初風はどうですか? 時津風や神通さんとは逢えましたか?」
雪風「いえ、逢っていますよね。そうしなければ報われませんから」
雪風「今日雪風は初風達と一つの約束をすることにしました」
雪風「聞いてくれていますよね?」
雪風「私は不沈艦みたいです。初風達の後を追いたくても追えません」
雪風「それに私は皆さんを殺した元凶です。この責任を逃れることは出来ません。この罪は何時までも私に罰を与えて続けてくれないといけません」
雪風「そこで私は一つの名案を思いつきました」
雪風「延々と私を蝕み続け罰を与えてくれる約束です」
雪風「それは……」
雪風「また廻り逢う時まで沈まない」
………………………………。
瑞鶴「提督さん、みんな集まったみたい」
提督「これで全てだな」
瑞鶴「うん……」
提督「随分と少なくなってしまったな……」
瑞鶴「うん……でもしょうがないよ……」
提督「全ては私の指揮能力が劣っていたからだ」
瑞鶴「そんなこと無いよ。私、提督さんのこと隣でずっと見てきたんだから」
提督「そうだな……今まで助かったよ」
瑞鶴「ううん、これからも頑張るから」
提督「ああ、頼むよ」
瑞鶴「提督さん、そろそろ始めよ?」
提督「そうしよう」
提督「全員聞いてくれ。ここに集まって貰った理由は大規模な作戦の発令をする為だ」
榛名「お姉様もしかして…………」
金剛「やはり……こうなってしまうのデスね……」
提督「先日マーシャル諸島が敵の手に落ちたのはみんなの知っての通りだ。そして、奴らはさらに進行の気配を見せている。そこで我々は空母機動部隊をもってしてマリアナに防衛線を張ることにした」
隼鷹「なあ、提督……まさか本気で言っているわけじゃないよね?」
提督「いいや、本気だ」
隼鷹「そしたら、飛」
摩耶「おいっ提督! ふっざけるなっ!!」
鳥海「摩耶姉さん、止めて下さい! それ以上は絶対に駄目です!」
摩耶「離せ鳥海! これ以上許せねぇ!」
鳥海「姉さん!!」
提督「摩耶、お前が言いたいことは私もよく分かっている。だが、それでも尚この命令を下している。従ってくれ」
摩耶「従えるわけねえだろ!! あたしはもう限界だ!!」
提督「摩耶っ!! 従え!!」
摩耶「提督、あんた達普通の人間があたし達に愛想を尽かされたらどうなるか分かっているだろ? 滅ぶんだぜ?」
提督「ほう、愛想を尽かすのか?」
摩耶「そうだ! お前みたいに艦娘を兵器としてしか考えていないような奴になんてついて行く事なんて出来ねえよ! お前なんてくたばっちまえ!」
バシン!
摩耶「瑞鶴……」
瑞鶴「摩耶……今すぐ提督さんに謝って」
摩耶「やなこった! こんなクソみてえな命令を下す奴になんか絶対に頭下げてたまるかよ!」
瑞鶴「今すぐ謝れ!!」
摩耶「嫌だって言ってんだろ!!」
瑞鶴「あんたが突然この作戦はクソだとか言っている意味は私には分からない。だけど、それを提督さんにぶつけるのは間違ってる!」
摩耶「何でだよ? この作戦を立案したのはあいつだろ!」
瑞鶴「そこが間違ってるのよ!!」
提督「瑞鶴、止めろ!」
瑞鶴「あの作戦は、提督さんが立案したんじゃない! 大本営からの指示なんだから!」
提督「瑞鶴!!」
摩耶「おい、どういう事だよ」
瑞鶴「提督さんは、たとえ大本営の命令でも、絶対に自分が考えた作戦だと言い続けてきたの!」
摩耶「そんなことをする訳が分からねえ。全部自分の手柄にする為か? いや、絶対にそうだ!」
瑞鶴「違う!! そんな小さなプライドの為に提督さんは行動しない!!」
摩耶「じゃあ何でか言ってみろよ!」
瑞鶴「あんたみたいな奴を受け止める為よ!」
摩耶「は?」
瑞鶴「あんたみたいな、『命令を下した張本人』を憎む艦娘の捌け口になる為に提督さんは絶対にこの事を匂わせなかった!! 例え嫌われても責任の在り処を示し続けてきた!!」
摩耶「嘘……だろ……」
瑞鶴「なのに……なのに、そんな優しい提督さんが こんなに言われるなんておかしいよ!! 提督さんが可哀想だよ……!」ポロポロ
摩耶「提督……この話、マジなのか?」
提督「…………」
摩耶「提督、答えろよ!」
提督「…………本当だ」
摩耶「じゃあ、あたしは……くそっ! 最低じゃねえか!!」
提督「いや、お前の主張は正しい。そしてその怒りをぶつける相手も私で合っている」
摩耶「提督、あたしは提督に暴言を吐いた。これは処罰の対象になる筈だ。今すぐ処分してくれ」
提督「…………分かった。処分を下そう」
摩耶「ああ」
提督「処分を言い渡す。重巡洋艦摩耶、お前は今回の作戦で、戦況をひっくり返す働きをせよ。これがお前への処分だ」
摩耶「おい、こんなの処分じゃねえよ!」
提督「処分を決めるのは私だ。それに、これ以上戦力を削るなどという愚を犯すわけにはいかない」
摩耶「提督は甘えよ」
提督「そうかもしれんな」
摩耶「……すまなかった。あたしはこの失態の分取り戻してみせるよ」
提督「期待してるぞ」
提督「話が中断してまったな……すまない。これより艦隊編成を発表する」
提督「第三艦隊旗艦大鳳。本隊・甲部隊所属艦、翔鶴 瑞鶴 妙高 羽黒 矢矧 朝雲 雪風 浦風 磯風 谷風 秋月」
提督「第三艦隊、本隊・乙部隊所属艦、飛鷹 隼鷹 龍鳳 長門 最上 満潮 浜風は野分 山雲 白露 時雨 五月雨 早霜」
提督「第二艦隊旗艦愛宕。前衛部隊所属艦、大和 武蔵 金剛 榛名 瑞鳳 千歳 千代田 高翌雄 摩耶 鳥海 鈴谷 熊野 利根 筑摩 長波 朝霜 島風」
提督「補給部隊旗艦名取、所属艦は、響 初霜 卯月だ」
提督「全艦隊、明日にここ横須賀より出港。そのままタウイタウイに向かってくれ。上陸後はそこで敵艦隊接近まで待機し、私からの命令を待て」
瑞鶴「はい!」
提督「では、幸運を祈る。 全艦出撃準備をせよ!!」
全員「はい!!」ビシッ
………………………………。
お久しぶりです。瑞鶴の方でも言いましたが、あまりの忙しさに全く更新出来ませんでした。申し訳ございません。
なんとか戦闘シーンは固まりつつあるので進められそうです。
また来ますね!
今夜更新される約70隻の二周年記念ボイス、瑞鶴と瑞鳳、陽炎、舞風に来たら歓喜のあまりどうにかなってしまいそうです。期待
>>227
訂正
高翌翌翌雄→高翌雄
浜風は野分→浜風 野分
高翌翌翌雄って……お前誰だよ
すみません、忙しすぎて一レスしか書けませんでした。とりあえず投下しておきます
また来ますね
タウイタウイ
谷風「かーっ!! タウイタウイは暑すぎて谷風さん溶けちまいそうだよ!」パタパタ
浦風「そうじゃね。ちぃとこりゃぁ暑すぎるかものぉ」
谷風「暑い〜 溶けてアメーバになっちまいそうだ。な、雪風もそう思うだろ?」パタパタ
雪風「そうですね」
谷風「浜風さんや、谷風さんはアイスを食べたいよ」パタパタ
浜風「馬鹿言ってないでシャキッとしなさい。それに女が胸元を扇ぐのは良くないです」
谷風「ん? 何か問題があるのかい?」
浦風「確かに、あまりやらん方がええかもしれんのぉ。扇ぐと谷風の」
磯風「谷風の胸は小さいから中身が全部見えるな」
谷風「そうか、谷風さんの中身が……んあっ!?」
磯風「まあ、下着を着けたくない理由も私には分かる。実際私も全て下着は脱いでいる」
浦風「またっ! 磯風!!」
谷風「待った! 待った!! 谷風さん、ついこないだ同じネタでイジられたんだよ!! もうこれ以上は谷風さんのガラスのハートも崩壊しちまうよ!!」
磯風「まあ、谷風が胸元を扇ぐにはまだ早いのでは無いのだろうか?」
浜風「磯風! みんなそれを思っていても言わないでいたのに、どうして言ったのですか!?」
浦風「浜風も余計な事をええんさんな!」
谷風「なんでい! なんでい!! また谷風さんはこの貧相な胸のネタで虐められるんだ!! 浜風も磯風も浦風も大っ嫌いだ!! でっけえ胸なんて滅んじまえ!! ちくしょーめー!!」タッタッタッ
磯風「谷風、まだ話は終わっていないのだが」
浦風「馬鹿もん!! 今日っちゅう今日は許さんよ!! 浜風と磯風はそこに正座しんさい!!」
磯風「訳が分からないのだが、浦風」
浦風「つべこべゆわんとぉに正座をしんさい!! このアホが!」」
磯風「……納得できん」
………………………………。
瑞鶴「ねぇ、翔鶴姉」
翔鶴「どうしたの、瑞鶴?」
瑞鶴「そろそろさ、艦載機の発着艦訓練をしたいなって」
翔鶴「そうね。確かにこっちに来てからはそこまで出来ていないわね」
瑞鶴「でしょ? 今からやろうよ。大鳳や瑞鳳も誘ってさ」
翔鶴「ええ。じゃあ、瑞鶴は大鳳や瑞鳳を呼んできて……私は……あら?」
瑞鶴「サイレン? 敵襲!?」
谷風「てぇへんだ〜! てぇへんだ〜! 大量の潜水艦が接近中!!」
瑞鶴「潜水艦!? そうか……私達を封鎖するために……」
翔鶴「対潜部隊を出した方がいいかもしれないわね」
瑞鶴「うん! まずは指揮所に!」
翔鶴「急ぐわよ、瑞鶴」
…………。
ガチャ
瑞鶴「ごめん、お待たせ!」
長門「ああ」
瑞鶴「一体何事なの?」
長門「哨戒の為に外洋に出ていた17駆逐の第一小隊が敵潜水艦群を捕捉した。その時点で対潜装備はほぼ無い状態だった為一旦帰投させた」
瑞鶴「ありがと、よく分かったわ。このまま敵潜水艦を放っておくことは出来ない。すぐに迎撃部隊を出そう」
長門「私も同意見だ」
瑞鶴「提督さんから、緊急時の指揮権は私に委ねられてるから私が指揮を執るけどいいよね?」
長門「ああ。文句など無い」
翔鶴「もちろんよ、瑞鶴」
瑞鶴「うん。……今から対潜部隊を臨時で結成させる。悪いんだけど、磯風と谷風、島風、早霜を呼んできて」
長門「良いだろう。少し待っててくれ」
ガチャ バタン
…………。
長門「これで全員だ。説明を頼むぞ」
瑞鶴「4人に今集まって貰ったのは、もう分かってると思うけど、敵潜水艦を迎撃して貰う為なんだ」
磯風「だろうな。では、この4人で艦隊を組んで行くということでいいのか?」
瑞鶴「うん。その認識で合ってるわ」
磯風「なら、司令艦を決めないといけないな」
瑞鶴「それは、17駆逐の司令艦である磯風に任せてもいい?」
磯風「問題ない」
瑞鶴「じゃあ、磯風よろしくね」
磯風「ああ」
瑞鶴「これから30分以内に対潜装備を充実させて出撃して。何か質問はある?」
谷風「ちょいと良いかい?」
瑞鶴「何?」
谷風「今回は敵の潜水艦を全滅させるのかい? それとも出来る限り減らすのかい?」
瑞鶴「出来れば全滅と言いたいところだけど、4人だけでそれは多分無理ね。だから出来る限り撃滅でよろしくね」
谷風「がってん!!」
瑞鶴「他には? ……無さそうね」
翔鶴「皆さん、頑張ってきて下さいね」
瑞鶴「みんなが無事に帰って来ることを祈って待ってるわ」
磯風「大丈夫だ。ここに居るのは皆歴戦の者だ。そう簡単には沈まぬ」
瑞鶴「うん、そうだね。じゃ……30分後に作戦決行! 健闘を祈るわ!」
全員「はい!!」
…………。
浜風「磯風、谷風。気を付けて下さいね」
浦風「磯風も谷風もおっちょこちょいじゃけぇのぉ。絶対に油断しちゃ駄目じゃね」
磯風「私はそんな事無いぞ」
谷風「何を言ってるんだい! 磯風は一番頭のネジがぶっ飛んでやがる」
磯風「傷付くな」
谷風「心にも無い事を言いやがって。谷風さんの方がもっと傷つけられてるんだよ」
磯風「それはあれか? 谷無風とか言われるからなのか?」
谷風「また! そろそろ谷風さん、我慢の限界だよ! 谷風さん豊胸手術も考えてるんだよ!」
浜風「この前も言いましたが、これは邪魔で……」
浦風「あんた達、なんべんウチに叱られても学習せんね」
谷風「で、雪風。雪風からは何か言ってくれねえのか?」
雪風「私からですか?」
谷風「うん」
雪風「私からは何も……」
谷風「あのさ、雪風」
雪風「何でしょうか?」
谷風「初風と時津風を喪って天津風とも離れ離れになって辛いのかもしれないけどさ、出来れば谷風さん達を受け入れてくれると結構嬉しいんだよ?」
雪風「…………」
谷風「今すぐってのは無理かもしれねぇけど、少しずつ17駆逐の雪風になって欲しいねぇ」
雪風「…………はい」
谷風「まあ、頭の片隅にでも入れておいてくんな」
雪風「あの……谷風、磯風」
谷風「なんだい?」
磯風「なんだ?」
雪風「…………ご無事で」
谷風「がってん!!」
磯風「この磯風に任せるがいい」
浦風「ほら、そろそろ時間じゃ。いってらっしゃい」
谷風「ちょっくら行って来るよ」
浜風「二人とも気を付けて下さい」
磯風「ああ」
………………………………。
………………………………
………………
……
磯風「谷風!! 早くこっちへ!! 魚雷が!!」
谷風「ぬかった……ごめん磯風、谷風さん、これまでみてぇだ」
磯風「何を言ってる!! まだ諦めるな!!」
谷風「磯風、みんなに伝えといて欲しいんだ。ごめんって」
磯風「嫌だ! そんな役受けたく無い!」
谷風「雪風とちゃんと話しときゃよかったな……」
磯風「おい! 谷風!!」
谷風「…………谷風さんが最初で最後の17駆逐の犠牲艦であるように……神様頼むよ……」
谷風「…………神様……」
磯風「谷風ぇーっ!!」
ズドーン!!
………………………………。
タウイタウイ
浦風「おっ、艦隊が帰投したようじゃの」
浜風「磯風と谷風を迎えに行きましょう。雪風も一緒に来ますよね?」
雪風「私は……」
浜風「雪風が一緒に来てくれた方が谷風も喜びますから来てくれませんか?」
雪風「分かりました」
浦風「ほら、行くよ」
浜風「はい」
ガチャッ パタン
…………。
浜風「磯風、お疲れ様です」
磯風「…………」
浦風「どうしたん? それに、谷風が見当たらんのぉ。入渠に行ったんかのぉ?」
磯風「…………ぃ」
浦風「ん? 何かゆぅた?」
磯風「す……ぃ」
浜風「磯風?」
磯風「すまない」
浦風「なぁ、どうしたん? 谷風は何処に行ったん?」
磯風「し…………」
浦風「し?」
磯風「しず……」
浦風「しず……………………まさか!?」
磯風「しず……んだ……」
浜風「沈んだ……轟沈……? え?」
磯風「谷風が沈んだ! すまない! 私が指揮を執っていたばかりに!! 私の所為だ! 私が至らなかったから!!」
浜風「冗談ですよね? 磯風らしくないつまらない冗談ですね」
磯風「すまない……本当にすまない…………私の所為で谷風が……」
浦風「とりあえず磯風はお風呂に入ってご飯を食べて来んさい。ご飯が喉を通らんかもしれんが、それでも無理矢理食べて来んさい」
磯風「…………」フルフル
浦風「行きんさい、磯風!!」
磯風「…………」フラフラ
浦風「ゆっくり休んで来んさい。後でウチが何でも聞いちゃりるから」
磯風「…………」フラフラ
雪風「磯風さん」
磯風「…………」ピタッ
雪風「悪いのは磯風さんではありません。悪いのは……」
雪風「……死を運ぶ私ですから」
………………………………。
私はまた人を殺した
性懲りも無く仲間になろうとしたから
次は……誰が死ぬのかな
………………………………
………………
……
今日はここまでです。
昨日更新かけられなくてごめんなさい……
また来ますね!
大鳳「瑞鶴、提督から電文が入ったわ」
瑞鶴「出撃って?」
大鳳「そう。敵艦隊が接近中との事です」
瑞鶴「分かった。谷風達のお陰で敵潜水艦は掃討出来たから出撃は出来るわね」
翔鶴「発着艦訓練は出来なかったけど……」
瑞鶴「うん……でも、ずっと一緒に戦ってきたこの子達なら負けないよ」
翔鶴「えぇ……ただ、大鳳は習熟訓練が……」
大鳳「大丈夫。それを補う為にこのボウガンでの発艦を選びました。そして翔鶴達から分けて貰った優秀な子達もいます」
瑞鶴「その子達、大切にしてあげてね。そうしないと私と翔鶴姉が怒っちゃうよ」
大鳳「勿論です!」
瑞鶴「慣れない戦闘かもしれないけど頑張ってね」
大鳳「はい!」
瑞鶴「じゃ、みんなにも知らせに行くよ」
………………。
瑞鶴「みんな、正式に作戦が発表されたよ」
翔鶴「作戦は前にも提督がおっしゃっていたマリアナ諸島での迎撃です」
瑞鶴「敵の戦力は私達の倍が想定されてるの。この場合真正面からぶつかっても量ですり潰されるのが目に見えている」
鈴谷「なら、どうするのさ? まさか自分から進んで死ぬ為に出撃するって訳じゃないよね?」
瑞鶴「うん。そうならないようにするよ」
熊野「具体的にはどうするのですか?」
瑞鶴「アウトレンジ戦法をとる」
鈴谷「アウトレンジ?」
瑞鶴「そう。アウトレンジっていうのは、敵艦載機の攻撃範囲外からこちらの艦載機を出して敵空母を破壊、そして帰還させる。ざっくりいう時に、こんな戦法よ」
鈴谷「ふえ〜」
翔鶴「この戦法は圧倒的な航続力を持つ日本の艦載機だから出来ます」
瑞鶴「うん。だから今回は最大限の射程を稼ぐ為に艦載機も固定する」
翔鶴「天山12型甲、彗星33型、そして零戦21型」
鈴谷「21型!? 正気なの!?」
瑞鶴「うん、これはしょうがないんだ。32型や52型は航続力が足りないから……」
熊野「満足なアウトレンジ戦法が取れなくなるという訳ですわね?」
瑞鶴「うん……」
熊野「よく分かりました。しかし、本当に大丈夫なのですか?」
瑞鶴「大丈夫! みんな私達と一緒に死線を潜り抜けた腕利きだから!」
熊野「そうですか」
瑞鶴「とりあえずみんな、今日はゆっくり休んでね。明日の朝に出航するからさ」
翔鶴「出航前に何人かの駆逐艦の子に敵潜水艦がいるかを確認して貰います」
瑞鶴「出航を狙われる訳にはいかないからね」
翔鶴「何か質問がある人はいらっしゃいますか?」
瑞鶴「いないみたいね。じゃあ、最後に一つだけ……」
瑞鶴「みんな……谷風達に顔向け出来るように何としてもこの作戦成功させるわよ! だから、みんなの命を私達に預けて!!」
全員「オー!!」
瑞鶴「また明日ね。全員解散!!」
………………。
翌日
瑞鶴「みんな揃ったね? 翔鶴姉、敵の潜水艦の存在はどうだった?」
翔鶴「大丈夫、いないみたい」
瑞鶴「うん! じゃ、大鳳」
大鳳「はい!?」
瑞鶴「大鳳がこの艦隊の旗艦なんだから、あとは任せたよ」
大鳳「はい! では、全艦隊抜錨! 目標マリアナ諸島!! 出撃!!」
………………………………
………………
……
少し短いですが、今日はこれで終わりです
次回から正式にマリアナやります
また来ますね
今晩は
23時頃に少し更新します。
読むべき資料が多すぎて捗らない……
マリアナ沖
大鳳「索敵機より入電! 敵艦隊発見! サイパン西方海域です!」
瑞鶴「詳しい座標は後で教えて。翔鶴姉、攻撃隊発艦の準備は出来てる?」
翔鶴「私は大丈夫よ」
瑞鶴「大鳳も大丈夫よね? このまま攻撃アウトレンジで叩く。それでいい?」
大鳳「はい、もちろんです! 第一次攻撃隊発艦準備! 第三航空戦隊、別称乙部隊も第一次攻撃隊の発艦準備をお願いします!」
瑞鳳「了解! 千歳、千代田。第一次攻撃隊発艦準備するわよ!」
千歳「分かりました」
千代田「千歳お姉、頑張ろ!」
千歳「ええ、そうね」
大鳳「全艦、艦首風上最大戦速! 随伴艦の駆逐艦の皆さんもお願いします!」
瑞鶴「風力良し、船速良し! 零戦発艦! 続いて彗星、天山の順に発艦!!」バシュッ
大鳳「数が少ない第三航空戦隊から空中集合完了後目標に先行して下さい。こちらも完了次第後を向かわせます!」
瑞鳳「了解です!」
瑞鶴「瑞鳳、千歳、千代田。分かってるとは思うけど、敵本隊50kmの地点までは超低空を飛行させて接近させてね」
千代田「今回は腕利きが揃ってるから出来るはず!!」
千歳「千代田!」
瑞鳳「今回は?」
千代田「ほら、最近なかなかこんなに沢山の艦載機を飛ばさないからね……アハハ」
瑞鳳「へ?」
千歳「気にしないで瑞鳳。千代田ったら時々変な事を言い出すから」
瑞鳳「う、うん……?」
大鳳「これで最後っ!」バシュッ
瑞鶴「壮観ね……過去最高だね、こんなに艦載機を発艦したの」
翔鶴「そうね。もうこんな機会は無いかも知れないわね」
瑞鶴「これで暫くは待つだけね……あれ?」
翔鶴「瑞鶴、どうしたの?」
瑞鶴「あの彗星……大鳳所属よね? こっちに戻って来てる」
大鳳「故障かしら……?」
瑞鶴「この軌道、着艦じゃ……ああっ!!?」
翔鶴「危ない!」
ズドーン!!
大鳳「なっ! どうして海面に!!?」
瑞鶴「故障……いやっ!! 大鳳、魚雷!!」
大鳳「っ!!?」
ズドーン!
瑞鶴「大鳳!!」
浦風「大鳳さん!!」
大鳳「うっ……皆さん、私は大丈夫です。右舷に被雷しましたが、航行に影響無し。被害は軽微です」
瑞鶴「よ……良かったぁ……」
翔鶴「ふぅ……」
秋月「本当に大丈夫ですか!?」
大鳳「ええ、大丈夫よ。何せ、私は装甲空母。飛行甲板だけでは無くて、その他の防御も万全を期して建造されたから」
瑞鶴「さっすがね」
大鳳「ありがとうございます。それより駆逐艦、軽巡の皆さん、この辺りに潜水艦が潜んでます! 直ぐに掃討へ移って下さい! 逃げられたら危険です」
矢矧「了解、雪風、浦風、磯風。私に続いて」
雪風「はい」
浦風「了解じゃ!」
磯風「了解だ」
大鳳「出来る限り迅速にお願いします」
矢矧「分かりました」
……………………。
零戦妖精「くそっ、曇ってて見通しが悪い!」
天山妖精「しゃあないだろう。こればかりは文句を言ってもどうしようもない」
爆戦妖精「上空には気を付けろよ。雲の中からこんにちはとか洒落にならねえからよ」
零戦妖精「ああ。残り50浬だ、もう少し低空を飛ぶか? それとも上空に上がるか?」
爆戦妖精「もう少しこのままで行こう。タダでさえ機体が敵の性能と段違いなんだ。迎撃は少ない方が良いだろう」
零戦妖精「分かった。もう少しこのまま……」
零戦妖精「三番機から隊長機へ!! 敵襲!! 雲の上から敵機がっ!! 敵の新型機、数は約400!!」
零戦妖精「クソッタレがっ!! 俺達緑小隊は上空からの急襲を防ぐ!! 全機機首を上げろ! 戦闘開始だ!! 爆戦と天山は何としても敵艦を叩いてくれ!! 健闘を祈るっ!!」
零戦妖精「他の小隊の奴らも援護に来てくれ!!」
ズダダダダ バシュッ
零戦妖精「おい! 四番機!! 大丈夫か!?」
零戦妖精「小隊長、すみません……燃料に引火……靖國で待ってます……」
バッシャーン!
零戦妖精「くっそぉ!!」
……。
天山妖精「こちら2番機! 敵艦隊発見!!」
天山妖精「こちらでも確認した。爆戦隊と連携を取って敵空母を叩くぞ」
天山妖精「了解!」
爆戦妖精「爆戦隊全機に告ぐ。全機急降下爆撃を行う。離脱の際には隊を解除して2機を交差させることを忘れるな」
零戦妖精「敵対空砲火圏内に入るぞ! 気を付けろ!」
爆戦妖精「敵艦隊対空戦闘始めました!」
爆戦妖精「何としても潜り抜けろ!」
バンッ
爆戦妖精「五号機被弾! 高度が落ちていきます!」
爆戦妖精「何だあれは!? 追尾して来るぞ!?」
艦戦妖精「こんなの見た事ねぇぞ!!」
バンッ
艦戦妖精「 」
艦戦妖精「おい、二号機どうした!? 応答せよ!! そのままだと墜落するぞ!」
バッシャーン!
艦戦妖精「何なんだ!! この砲撃は!!?」
爆戦妖精「駄目だ! このままこいつらを野放しにしていたら後続の奴等もやられちまう!!」
爆戦妖精「……全機目標変更! 攻撃目標はあの戦艦だ。全機続け!!」
爆戦妖精「小隊長!! 殆どの爆戦が撃墜されました! うわっ!」
爆戦妖精「どうした!?」
爆戦妖精「燃料タンクがやられました……もう幾らかも飛べないでしょう……小隊長、御武運を!」
爆戦妖精「目標、敵重巡! 死なば諸共だ!! ばんざーいっ!!」
ズドーン!!
爆戦妖精「くそっ!! くそっ!!」
爆戦妖精「許せねぇ……お前ら絶対に許せねぇ!!」
爆戦妖精「お前だけは絶対に沈めてやるっ!! 沈めぇっ!! うぉぉぉぉぉぉ!!」
ヒューン ズドーン!!
………………………………。
今日はここまでです
例の如く艦これイベントに参加するので、更新出来なくなる可能性が高いです。ぱぱっと終わらせてぱぱっと更新出来るように頑張ります。
余裕があればイベント中も更新するようにします
では、また来ますね!
瑞鶴「翔鶴姉、みんな……みんな帰ってこない……」
翔鶴「大丈夫よ瑞鶴……今に帰って来るわ」
瑞鶴「でも……でもこんな時間が経ったらもう燃料も……」
翔鶴「大丈夫、大丈夫よ」
瑞鶴「翔鶴姉……」
翔鶴「雪風さん、磯風さん。いつでも艦載機の皆さんが帰ってきてもいいように私の前方と後方に移動して下さい」
磯風「承知した。雪風、私が前を担当する。後方は任せたぞ」
雪風「分かりました」
瑞鶴「じゃあ、私も。浦風と秋月よろしく」
秋月「分かりました。では、浦風は後方に。秋月は前方の対空警戒も担当します」
浦風「うん、分かったよ」
瑞鶴「あれ!? ねぇ、翔鶴姉!お」
翔鶴「どうしたの?」
瑞鶴「向こうの方に飛行機が数機見えない?」
翔鶴「どこ?」
瑞鶴「ほら、あれ! かなり遠いけど」
翔鶴「私には見えないわ。磯風さん、雪風さん。2人には見える?」
磯風「いや、さっぱりだ。雪風は?」
雪風「私も見えません」
瑞鶴「翔鶴姉、見てる方向が違うんじゃ……」クルッ
瑞鶴「っ!!!? 翔鶴姉!! 逃げて!!」
翔鶴「え!? どうしたの!?」
瑞鶴「翔鶴姉の右舷から魚雷が!!」
翔鶴「あ……」
瑞鶴「翔鶴姉ぇーーーーーーっ!!」
ズドーン!!
磯風「なっ!!?」
雪風「また、ですか」
瑞鶴「翔鶴姉!! 翔鶴姉!!」
翔鶴「う……あ……ずぃか……く……ど、こ……」
瑞鶴「翔鶴姉!! 私はここよ!!」
翔鶴「ずいかく、は……ぶじ?」
瑞鶴「私は何も被害は無いわ! そんな事よりも翔鶴姉が!!」
翔鶴「ご、めん、なさ……い……私はもう……」
秋月「瑞鶴さん……離れましょう…………まだ潜水艦が狙っているかもしれません……」
瑞鶴「やだ!! 嫌!!私は翔鶴姉と一緒に帰るの!!」
秋月「無理です……瑞鶴さん、無理なんです……」
瑞鶴「どうして!? 翔鶴姉はまだ生きてる!! 生きているのなら助ける事だって!」
翔鶴「あ……きづ……きさ、ん……いも、う……と、をたの……み……」
秋月「はい……この秋月の命に代えても瑞鶴さんをお護りします!」
翔鶴「ぁ…………ぅ」
瑞鶴「翔鶴!! 諦めないでよ!! ねえ!! 雪風も曳航手伝ってよ!!」
雪風「瑞鶴さん、無理ですよ」
瑞鶴「どうして!!? 何で!!? まだ翔鶴姉は生きてるのにっ!!」
雪風「だって、翔鶴さんには腰から下がもう無いのですから」
瑞鶴「でもこのまま見捨てるなんて出来ないっ!! 可能性があるなら」
雪風「瑞鶴さん、貴女は本当に近しい人を喪ったのはこれが初めてでしたね。だからあえてはっきり言っておきます。これが戦争です。誰だって簡単に死ぬんです。こんな事に一々動揺していたら貴女、兵器失格ですよ」
磯風「雪風、よせ」
浦風「雪風!!」
雪風「一々誰かの死に反応していたら貴女の心は直ぐに壊れます。分かっていないみたいなのでもう一つ言っておきましょう。この世に奇跡なんてあり得ません。ただ作戦の内容と運が良いか悪いかで死ぬんですよ。翔鶴さんは運が悪かった。ただそれだけです」
瑞鶴「あんたっ!!」
雪風「あと少しで確実に死ぬ翔鶴さんなんかに付き添う無駄な時間はありません。それよりも早く移動した方がいいでしょう。秋月は瑞鶴さんを連れてっ行って下さい。浦風も対空対潜の為に着いてって下さい」
秋月「……分かりました。行きましょう、瑞鶴さん」グイッ
浦風「…………」
瑞鶴「翔鶴姉!! 翔鶴姉!! まだ生きてるのにヤダよ!! 秋月離してよ!! お願い! お願いだから!! 翔鶴姉!!!!」
翔鶴「うぅ……………………ぁぁ……!」
雪風「翔鶴さん、瑞鶴さんは移動して貰いました。もう痛みに耐える必要はありません。今までお疲れ様でした」
──チャプン──
雪風「磯風、行きましょう」
磯風「なあ雪風……お前……まさか…………」
雪風「何ですか?」
磯風「仲間を棄てたのか……」
雪風「いえ、仲間は棄てていません。貴女達を敵に回す必要はありませんから」クルッ
磯風「では……」
雪風「ただ、私は『兵器』に近付いただけですよ、磯風」
磯風「そんな事あって良い訳が無」
ズドーン!!
磯風「!!? 今度は何なんだ!!?」
雪風「あれは……」チャッ
雪風「ああ……大鳳さんが大爆発したみたいです。肉片が飛び散っていますが、大鳳さんの跡形は残ってないですね」
磯風「嘘……だ……」
雪風「いえ、本当です。この双眼鏡使いますか?」スッ
磯風「ああ……頼む」
雪風「どうぞ」
磯風「…………っ!!?」
雪風「この通りです。磯風、瑞鶴さんに達に合流しましょう。恐らくもう戦闘の継続は不可能でしょう」
磯風「…………あぁ……」
雪風「……………………」ボソッ
磯風「何か言ったか?」
雪風「いえ、何も」
………………………………。
今日はこれで終わりです。
鶴姉妹の改二が来るとのことなので、とある海戦の最期をちょろっと変えることにしました。
恐らくこの海戦もあと少しで終わり、あの戦いへ進みます。
また来ますね
瑞鶴「ぁあ…………翔鶴姉…………翔鶴姉…………翔鶴姉を私は……」
妙高「瑞鶴、しっかりして下さい! 大鳳と翔鶴が居なくなった今艦隊旗艦になるのは貴女なんですよ!」
瑞鶴「あは、あはははははは……翔鶴姉を助ける事が出来なかった……何が幸運艦よ…………何が一航戦よ……結局何も出来なかったじゃない……」
羽黒「妙高姉さん……」
妙高「駄目ね……瑞鳳、聞こえますか?」
瑞鳳「はい」
妙高「瑞鶴が目の前で翔鶴を喪い精神が壊れかけています。今の彼女には全体の旗艦を務めるのは不可能です。なので瑞鳳にその任をお任せしてもよろしいですか?」
瑞鳳「……分かりました」
妙高「ありがとうございます。では、瑞鳳。ご指示を」
瑞鳳「全艦に告げます。これより撤退行動に移ります。航空戦力が壊滅した今、私達には敵の機動部隊を撃退する事は不可能です。幸い、まだ敵の機動部隊は私達に対して航空機で攻撃は出来ないです。皮肉な事ですが、私達がアウトレンジに拘ったので撤退の猶予はあるでしょう。だけど、あまり時間はありません。出来る限り急いで下さい」
全員「了解」
瑞鳳「潜水艦にだけは気をつけて下さいね。唯一の脅威となり得る存在ですから」
矢矧「本隊甲部隊は私達と所属の駆逐艦で対潜警戒をするわ」
瑞鳳「お願い」
矢矧「ええ。秋月は瑞鶴さんの護衛を続けて。他の子は対潜警戒を」
……………………。
雪風「あれは……」
浦風「あれは……敵の艦載機……!?」
磯風「あり得ない! 航続距離が圧倒的に劣っている敵の艦載機がこんなところまで来るなんて!」
矢矧「瑞鳳! 敵だ! 敵の艦載機が接近中!!」
瑞鳳「う、嘘!? どうして!?」
隼鷹「おい、飛鷹! 早く逃げろ!! 今すぐ逃げるんだ!!」
飛鷹「何で私だけなの!?」
隼鷹「良いから! 急いで逃げるんだ!!」
飛鷹「私だけ逃げるのは嫌!」
隼鷹「頼むよ飛鷹!! 本当に頼むから!」
飛鷹「どうして!? どうして隼鷹はそんな事を言うの!?」
隼鷹「それは言えないんだって! そんな事より早く!!」
飛鷹「訳が分からないわ!!」
野分「敵しゅーう!!」
長門「爆撃機だ!! 急降下をしてくる爆撃機を何としても狙え!!」
瑞鳳「どうして……!! どうしてこんな事になったのよ!!」
秋月「三時の方向より敵爆撃機群接近!! 高射装置自動追尾良し! 撃てぇ〜!!」ズドン!
秋月「次射の準備を! 機銃は弾幕を途切れせないで!!」ズダダダダ
矢矧「秋月、凄いわね。でも、私も負ける訳にはいかないわ!」ズダダダダ
秋月「次弾装填良し、砲撃開始!」ズドン
秋月「くっ!! 長10センチ砲ちゃんの砲身が……皆さん、交換が完了するまで持ち堪えて下さい!!」
磯風「無理だ! 爆撃機に抜けられた!!」
秋月「まだ間に合わせない!!」
瑞鶴「私が……私が…………」
浦風「瑞鶴さん!! 敵機直上! 急降下!!」
瑞鶴「私が……」
秋月「逃げて!!」
ズドーン!!
瑞鶴「キャア!!?」
秋月「瑞鶴さん!!?」
雪風「瑞鶴さん、無事ですか?」
瑞鶴「痛い……直撃ってこんなに痛かったんだ…………翔鶴姉がずっと庇ってくれてたから私……」
雪風「瑞鶴さん、ちょっと歯を食いしばってて下さい」
バキッ!!
瑞鶴「いっ!!?」
雪風「そんなことやってると貴女死にますよ? もしも死にたいならそのままどうぞ御勝手に。しかし、他の人を貴女の我儘に巻き込まないで下さい。死ぬなら勝手に一人でお願いします」ズダダダダ
瑞鶴「どうして……そんなに冷たくなれるの?」
雪風「私は兵器ですから心は邪魔です。そんな事よりも早く死ぬか生きるか決めて下さい」
瑞鶴「ごめん、今はまだ死にたく無い」
雪風「分かりました。私達で護衛もしますが、常に空には気を付けて下さい」
瑞鶴「分かった」
矢矧「瑞鳳から連絡よ! ……輸送艦2隻が轟沈。そして飛鷹が機関停止、隊列から落伍……ですって」
雪風「そうですか。曳航や救助の話は出てますか?」
矢矧「いいえ、出てないみたい」
雪風「なら良かったです。もしもそんな事をしたら被害が広がるだけですから」
矢矧「………………そうね……」
雪風「矢矧さん、意見具申よろしいですか?」
矢矧「いいわよ」
雪風「はい。瑞鶴さんが正気を取り戻したので、この部隊の指揮を瑞鶴さんに戻しましょう」
矢矧「分かった。妙高さんも宜しいですか?」
妙高「はい」
瑞鶴「じゃあ、私が旗艦を引き継ぎます。みんな、私に続いて。全速力で逃げるから」
全員「了解」
瑞鶴「全艦33ノットで航行! いいわね?」
全員「はい!」
………………………………
………………
……
ブルネイ
隼鷹「クソッ!! 飛鷹……またあんたは……!! どうしてだよ飛鷹!! 今度こそ……今度こそ護れると思ったのによ!!」
瑞鶴「う、うぅぅ……翔鶴姉……」
妙高「羽黒、今回の最終的な被害のデータは分かりましたか?」
羽黒「はい。基地航空隊、母艦航空隊は共に壊滅。そして玄洋丸、清洋丸、大鳳、翔鶴、飛鷹が轟沈。瑞鶴と瑞鳳、龍鳳、千代田、榛名、摩耶、速吸が小破、隼鷹が中破です」
妙高「最悪ですね……」
羽黒「はい。あの時と全く変わりません」
妙高「やはりこの世界は」
────繰り返すのでしょうか────
横須賀鎮守府
提督「はい……そうですか…………分かりました」
提督「では、その前に一点確認したいのですが、…………はい、その事です」
提督「………………その中将が……間違いありませんね?」
提督「分かりました。では、私は出立します。前々から約束していた通り私は朝霧型駆逐艦一番艦の朝霧に乗艦致します。……いえ、乗組員は私の方で決めさせて頂きます。では、失礼します……」
ガチャン
提督「仕方ないか…………さて、もう一仕事だ」チャッ カチッ
提督「鎮守府別棟に待機する朝霧全乗組員に告ぐ。今すぐ講堂に集まってくれ。繰り返す、鎮守府別棟に待機する朝霧全乗組員に告ぐ。今すぐ講堂に集まってくれ」カチッ
提督「これで最後か……」
ガチャッ パタン
……………………。
提督「すまないなみんな。突然呼び出してしまって」
乗組員「何をおっしゃるんですか! 中将、らしくないですよ!! なあ?」
乗組員「ああ、そうだな」
提督「そんな事は無い。私はいつも感謝の心でいっぱいだ」
乗組員「中将、冗談がキツイっすよ」
提督「ほう、お前潜水艦のスクリューに括り付けられたいのか? あまりにも反抗的だと実行も止むなしだな」
乗組員「勘弁して下さいよ〜」
提督「まあいい。そんな事よりも、大切な用事があって全員をここに呼び出した。先に行っておくが反論は許さない。必ず命令に従って貰う。それだけは肝に命じておいてくれ」
乗組員「……どうしたんです?」
提督「では、最初に……この中で家庭を持っている者と25歳以下の者は挙手してくれ」
バッ
提督「今挙手した者は全員ここを出て行け」
乗組員「は?」
乗組員「あの、中将。それはどういう事ですか? 私には訳が分かりません」
提督「挙手した者は全員ここを出て部屋や朝霧艦内以外の持ち場に戻れと言うことだ。反論は許さないと言ったぞ」
乗組員「どうしてですか!!? 俺たちに落ち度でもあったのですか!?」
提督「いいや、お前達は良くやってくれたよ。私の数少ない誇りの一つだ」
乗組員「でしたら、どうして!!」
提督「…………もはや絶望的なこの戦争だが、だからと言って死に急ぐ必要は無い。特に若いのは国の未来だ。お前達が生きていればもしかしたら何かが変わるかもしれない」
乗組員「嫌です!! 私は中将と生死を共にすると決めたのです!! ですから、どうか私を連れて行って下さい!! それに中将も私達と歳は変わらないではないですか!!」
提督「上官命令だ!! 命令に従わない者はこの場で射[ピーーー]る!!」チャッ
乗組員「中将!!」
乗組員「おい、お前達落ち着け! 俺達の中将の最期かもしれねぇんだ。これ以上中将を困らせてどうする! そんな顔でお前達は中将を見送るのか!!?」
乗組員「中将、あんたとはそれなりに長い付き合いになったが、あっという間だったな」
提督「そうだな、副長。世話になったな」
乗組員「もしもあんたが帰ってきたらまた一杯やろう」
提督「ああ」
乗組員「俺達は本国に残るが何時でも心は中将の元にある!! 検討を祈る! 全員系列!!」ビシッ
提督「……」ビシッ
乗組員「退出を命ぜられた者は全員俺に続け」
────パタン────
提督「…………行ったか……では、全員目を潰れ」
乗組員「…………」
提督「恐らくこの航海で朝霧は沈むだろう。乗組員が生き残れる可能性も少ない。場合によっては全員死ぬ可能性もある」
乗組員「…………」
提督「死にたい者以外はこの場から去ってくれ。お前達には家族が生きてる者もいるだろう。その者は自分が死んだ時の家族の顔を思い浮かべろ。家族がいない者は最も大切な友人や彼女の事を考えろ。」
提督「この場に限っては、辛いと感じたは逃げていい。怖くなったら逃げてしまえばいい。生きたいと思うのなら退出するんだ。ここに残るのは愚か者と馬鹿だけでいい」
提督「これで最期だ。退出する意思のある者はこのまま去ってくれ。それを非難することはしないし、した者がいれば私が責任を持って罰せよう」
乗組員「…………」
提督「………………お前達は馬鹿ばっかりだ。わざわざ死を選ぶなんて愚か者だぞ」
乗組員「俺達は、愚か者ですよ。なんせ中将の部下なのですから」
提督「愚か者め……しかし、お前達を私と共に死なせる気は毛頭無い。それだけは覚えておけ。ここに残った全乗組員は朝霧に搭載している魚雷を全て撤去し、そこにデカイ木の板やボート、浮き輪等をありったけ載せるんだ。いいな?」
乗組員「はい!!」
提督「準備が出来次第出航。ブルネイに向うぞ」
乗組員「はい!!」
提督「解散してくれ」
…………………………。
ブルネイ
瑞鶴「……翔鶴姉ごめんね…………私が空を見てなんて言わなければ…………」
コンコン
瑞鶴「だ、誰!?」
金剛「私ネ! 金剛デース! 入りマスよ?」
瑞鶴「うん、どうぞ」
金剛「Hey 瑞鶴! 提督からLove letterが届いてるヨー!」ガチャッ
瑞鶴「………………提督さんから?」
金剛「イエース!」
瑞鶴「どうせ、今回の責任を取って旗艦の任を略奪とかでしょ……」
金剛「それはNo〜デスよ! これを読めば分かりマース!」スッ
瑞鶴「…………え!?」
金剛「分かりマシたか、瑞鶴?」
瑞鶴「どうして提督さんがここに来るの!?」
金剛「私には分かりマセん。But、瑞鶴が都合が良いように解釈しちゃえば良いのデス。提督が瑞鶴の事を心配シテ来てくれるとかデスね」
瑞鶴「でも…………」
金剛「マリアナは瑞鶴には辛すぎる出来事デシた。瑞鶴も沢山busyでショウ? 傷を癒す為にも提督とLove nightを過ごせば良いと思いマスよ?」
瑞鶴「金剛、いいの? 貴女も提督さんの事……」
金剛「何の事デスかネー?」
瑞鶴「そういえば、貴女は改二になってから提督さんにベタベタしなくなったもんね……もしかして、私の所為なの?」
金剛「それは違いマス。瑞鶴は勘繰りすぎデスね」
瑞鶴「ごめん……」
金剛「問題Nothing! では、私はこれで失礼するネ!」
瑞鶴「あ、うん……」
ガチャッ パタン
………………………………
………………
……
提督「やっと着いたか。長い船旅だった」
乗組員「足元にはお気を付け下さい」
提督「大丈夫だ。流石にお前達にこの様な事で心配されるのはどうかと思うぞ」
乗組員「へぇ」
提督「まあいい。私はブルネイの司令官に挨拶をして来る。その後は恐らく宿舎で艦娘達と会議をする。もしも何かあれば遠慮なく呼び出してくれ」
乗組員「了解。中将、お迎えが来てますよ」
長門「久しいな、提督よ」
提督「ああ。久しぶりだな、長門」
長門「すまないな……あのような結果に終らせてしまい……」
提督「お前達は良くやってくれた。悪かったのは、あの作戦の命を下した私だよ」
長門「それは違うのだろうに」
提督「それより、瑞鶴はどうした?」
長門「ああ、あいつはまだ部屋に籠っている。翔鶴の件でよっぽど響いているのだろう」
提督「分かった。また後で瑞鶴のところに行ってみるとしよう」
長門「提督よ、頼む」
提督「ああ。だが、先にブルネイの司令官に挨拶をして来るとしよう」
長門「了解だ」
…………………………。
コンコン
提督「瑞鶴、いるか?」
瑞鶴「提督さん!?」
ガチャッ
提督「ほう、わざわざ開けてくれるとは……と、泣いていたのか?」
瑞鶴「うん…………」
提督「とりあえず入ってもいいか?」
瑞鶴「うん。どうぞ」
パタン
提督「ずっと泣いていたのか?」
瑞鶴「だって…………翔鶴姉を殺したのは私だもん……」
提督「他の者から話は聞いたが、それは違うだろう。お前は当たり前の事をした。その結果としては翔鶴の轟沈に繋がったのかもしれないが、お前の所為とは言えない」
瑞鶴「でも、生きていた翔鶴姉を見捨てたのは事実だもん!!」
提督「それはお前の思い込みだ。それに翔鶴はお前が離れた後すぐに息を引き取ったらしい。それでも見捨てたと言うのか?」
瑞鶴「そうよ! 私が見捨てなければ……」
提督「どうしてそうやって一人で背負い込もうとする? それを言い始めたらあの作戦を命じたのは私だ。恨むなら私を恨め」
瑞鶴「そんなの、出来るわけないじゃない!」
提督「何故?」
瑞鶴「だって……提督さんが…………」
提督「ならば、私をお前の感情の捌け口にすればいい。傷を癒すのは無理だが、それ位ならば私でも出来る」ギュッ
瑞鶴「ありがと……提督さん…………」ギュー
瑞鶴「う、うぅ……うわぁぁぁぁぁぁん!!」
提督「……辛かったな、瑞鶴……」ナデナデ
瑞鶴「翔鶴姉!! うわぁぁぁぁ〜!!」
………………………………
………………
……
今日はこれで終わりです
この後瑞鶴と提督の間で何があったのかはご想像にお任せします
では、また来ますね!
翌日
提督「すまないな、こんな朝早くに呼び出して:
金剛「こんなアーリーモーニングに、突然どうしたんデスか提督?」
提督「金剛、榛名。お前達に言っておきたい事があってな」
榛名「お姉さまと榛名にですか?」
提督「そうだ。特に金剛、お前には本当に長い間世話になったな」
金剛「提督?」
提督「榛名にも今まで世話になりっぱなしだったが、これからも面倒を頼む事になりそうだ」
榛名「一体どうしたのですか……?」
提督「今までずっと迷惑をかけてすまなかった。それに、比叡と霧島の二人を死なせたのは全て私の所為だ。本当にすまなかった……」
榛名「提督、一体どうして今……」
金剛「提督……まさか……」
提督「金剛、私はお前よりも少し先に逝くことになりそうだ」
金剛「提督……どういうことですか!? 私よりも先ということは…………まさかレイテに!!?」
提督「察しがいいな。流石だ」
金剛「駄目です!! 提督が行く必要はありません!!」
提督「これは命令だ。私には抗え無い」
金剛「どうして!! どうして提督が死ななければならないのですか!!?」
提督「命令に抗おうとし続けたのが仇になったな」
金剛「それは私達を護ろうとしたからなのに!」
提督「だが、護れなかった。それが現実だ」
金剛「でも!! でも!!」
提督「いいんだ金剛。それに、私は安心しているんだ」
金剛「どういうことですか?」
提督「死ぬ事が出来れば私は他の子を死なす為の命令を下さなくて済む……ハハ、司令官失格だな」
金剛「提督……」
提督「榛名、今後の事でお前には話しておきたい。私の代わりに別の中将が来る事になっている。横須賀に戻ったらお前達はその中将の指示に従ってくれ」
榛名「提督がこのまま指揮を執り続けるという選択肢は無いのですか?」
提督「無い。私は瑞鶴と共に消えることになるだろう」
金剛「…………」
提督「すまないな、金剛」
金剛「いえ、何となく分かっていました。ですが、こうなるのでしたら私……」
提督「やはりそうだったか……」
金剛「やっぱり提督は気付いていましたか」
提督「何となく、だがな」
金剛「ねえ、提督」
提督「何だ?」
金剛「運命っていうのは酷くて残酷で、それでいて時には縋りたくなる本当に嫌な物ですね」
提督「全くだ」
金剛「私もすぐに後を追います。瑞鶴と一緒に待っていて下さいね」
提督「本来ならば後を追うなと言うべきなのだがな……約束だ」
金剛「よかった……」
提督「二人とも、よりにもよってこんな話で悪かったな。戻ってくれ……しかし」
榛名「他の皆さんには言わないっということで宜しいでしょうか?」
提督「ああ」
榛名「分かりました。では、失礼します……金剛お姉様、参りましょう」
金剛「グッバイ提督。また来るネ」
パタン
榛名「金剛お姉様……」
金剛「シー」キョロキョロ
金剛「うん、大丈夫ネ。何デスか榛名?」
榛名「一体榛名達は誰の為に戦っているのでしょうか?」
金剛「難しい話デスね……これはヒトそれぞれだと思いマス」
榛名「それは榛名も分かっています。今までは榛名にも戦う理由はありました。ですが榛名の戦う理由を全て喪う事になりました……」
金剛「それは、私と提督デスか?」
榛名「はい。提督にならば榛名は命を預けても良いと思っておりました。提督は榛名達艦娘の事を兵器としてでは無く、一人の兵士として扱ってくれました。しかし、無理矢理榛名の大切な人達を奪って行った、榛名達を兵器やそれ以下の存在として扱う人間は……私には許せません」
金剛「それだけデスか?」
榛名「後は……榛名は前の戦いで生き残りました。金剛お姉様や比叡お姉様、そして霧島を護れませんでした……だから、だからこそこの新しい生を受けた時は、お姉様達を榛名が護ろう、お姉様達を榛名より先に逝かせ無いと榛名は榛名に誓いました。なのに……蓋を開けてみれば、前と全く同じ事になってしまいました!! 榛名が運命を、因果を変える事が出来なかった!!」
金剛「サンキュー榛名。榛名は優しいデスね……だけど、榛名の話を聞いて一つ分かったコトがありマス。榛名が私達を助けようとしてくれたのと同じヨウに、私は妹達のワガママを全て受け止めてあげようと思ってまシタ」
榛名「え?」
金剛「比叡と霧島は私が不甲斐なかった所為で命を落としてしまいまシタ。榛名には、私の轟沈で辛い思いをさせてしまったネ。デスが、榛名は私に護って貰う存在では無く私を護る存在で在ろうとしてマス。つまりこれは、お互いのエゴのぶつかり合いネ。榛名を護りたい私、私を護りたい榛名。恐らく比叡も霧島も優しいですから同じヨウなエゴを持っていたでショウ。デスが、お互いこれでは意地の張り合いになってしまいマス。だから、榛名……」
榛名「はい」
金剛「これから榛名は榛名の為に生きて下サイ。思い上がりかもしれまセンが、私が沈んだら悲しんでくれると思いマス。だけど、それを負い目に思わないで下サイ。そうしてくれるダケでも私は幸せデス」
榛名「お姉様……」
金剛「OK 榛名?」
榛名「……はい」
金剛「Yes それで良いネ」ナデナデ
榛名「お姉様……」
金剛「もしも提督がいなくなった世界が最低で最悪でどうしようもない世界ならば榛名は好きにすれば良いネ。その時に榛名が戦う意味を決めれば良いのデスよ」
榛名「はい……お姉様……」
金剛「榛名は泣き虫ネ」ナデナデ
榛名「榛名は……泣き虫です……」
金剛「強くなって下さいネ、榛名」ナデナデ
榛名「はい……!」
金剛「その言葉が聞けて安心しまシタ。では、そろそろ行きまショウ」ポンポン
榛名「はい……!」
………………………………。
磯風「雪風は?」
浜風「さっき一人で埠頭に居ました。多分夕方まで帰って来ないでしょう」
浦風「うん。でも万が一があるから早目に話そうのぉ」
磯風「そうだな」
浜風「雪風の精神状態が危険だという事はなんと無く分かって居ましたが、こんな会議を開くなんて一体何があったのですか?」
浦風「あんじゃね、この前の戦いで翔鶴さんが亡くなった時に雪風が、こがぁな事を言ぅとったんで」
浦風「『ただ、私は”兵器”に近付いただけですよ』って」
浜風「それは一体……」
浦風「雪風は心を手離しかけておる」
浜風「しかし、それは無理……いや、雪風だからこそですか……」
浦風「そうじゃのぉ。雪風はあまりにもえっとの人の命を目の前でのぉなってきた。特に初風や時津風はかなりキツかったゆぅて思う。辛い思いをするくらいなら何も感じん方がええ、雪風は多分そう思うとるはずじゃ」
磯風「だが、雪風は心を手離しきれていない。亡くなる寸前の翔鶴さんに向かって労りの言葉をかけていた」
浜風「まだ完全には壊れていないという事ですか?」
磯風「多分だが……」
浦風「じゃが、人の死に目を見てもいっこも動揺をせんどころか、『死』に対して恐怖感の様なマイナスの感情は完全に抜け落ちとる。多分雪風自身の『死』すらも抵抗なく受け入れとるじゃろうね」
浜風「死を恐れない兵士……確かに兵器と何ら変わりはありませんね」
浦風「じゃが、それがええわけが無い。せめて雪風にゃぁ……」
コンコン
磯風「だ、誰だ!?」
雪風「私です。戻りました」
磯風「ゆ、雪風か。入っていいぞ」
ガチャ
浦風「早かったのぉ。どこ行っとったん?」
雪風「訓練の後は少し散歩してました」
浜風「そうですか……」
雪風「はい」
全員「…………」
磯風「そうだ、今から夕飯を作ろうと思うのだが、雪風も食べるか?」
雪風「いえ、いいです」
磯風「そうか……」
雪風「私は寝ますが、好きにしてて下さい」
磯風「あ、あぁ……」
雪風「では」バサッ
浜風「雪風に迷惑になります。外に出ましょう」
浦風「そうじゃね」
パタン
浜風「驚きましたね……夕方までは帰って来ないと思ってたのですが……」
浦風「もしかすると聞かれたかもしれんのぉ」
磯風「あまりこの話題をしない方が良さそうだな」
浦風「なら、一つだけ聞いて欲しぃんじゃ。もうわしらが沈む訳にゃぁいかん。沈んだらまた雪風を追い詰めることになるから。こればっかしゃぁ約束」スッ
磯風「ああ」スッ
浜風「はい」スッ
浦風「指切りげんまん。嘘ついたら……ついたら?」
磯風「そうだな……」
浜風「磯風の手料理を一週間食べ続けるというのは?」
磯風「ん? どうして私なんだ?」
浦風「浜風、見た目以上にエゲツないのぉ。採用じゃ。指切りげんまん。嘘ついたら磯風の手料理喰わす、指切った」
磯風「何故……」
浜風「これで絶対に死ぬわけには行かなくなりましたね」
浦風「そうじゃな」
浜風「では、夕食を作りますか」
浦風「ウチに任しとき」
浜風「雪風にも後で持って行ってあげましょう。雪風、最近まともに食べてないように思えるので」
浦風「うん」
磯風「解せぬ……」
………………………………。
今日はこれで終わりです。
4月に入ってからは忙しくて更新ペースがかなり落ちてますが、必ず完結させますのでそれだけはご安心下さい。
また来ますね!
大淀「提督!!」バタン
提督「どうした」
瑞鶴「わっ、大淀!? どうしたのよそんなに慌てて!」
大淀「今闇夜に紛れてレイテ島へ深海棲艦が上陸したとの情報が入りました! その後すぐに打電をしたのですが、レイテ島守備隊との通信が繋がらなくなりました!!」
提督「通信機器をやられたか、又は全滅したか……どちらにせよ無駄な犠牲者を出してしまった事が悔やまれるな」
大淀「あれ程提督が陸軍に撤退要請を出されたのに、それを黙殺した陸軍上層部が悪いのでは」
提督「そうなんだが、残念だ」
大淀「提督、如何なさいますか!?」
提督「大淀、すぐに全員を集めてくれ。すぐに行動に移る」
大淀「了解しました! 失礼します!」
提督「遂にこの時が来てしまったか……瑞鶴、前に話した作戦を開始するぞ」
瑞鶴「うん…………」
提督「すまない……」
瑞鶴「ううん、提督さんの所為じゃないもん。それに、提督さんと一緒だから、私、怖くないよ」
提督「瑞鶴……」
瑞鶴「行こ、提督さん。みんなを待たせちゃう」
…………。
提督「大淀、これで全員だな?」
大淀「はい! 間違いありません!!」
提督「時間が無い為要点のみを伝える。先程レイテ島に深海棲艦が上陸し、陸軍の守備隊からの連絡が途絶えた。そして近辺には多くの敵艦艇が待ち構えている事が予想される」
大淀「そして、少し前より日本の基地に対して航空機による攻撃を受けており、友軍の基地航空隊はほぼ壊滅しております。援護は望めないでしょう」
提督「そこで我らはレイテ島の奪還作戦……捷一号作戦を発動することをここに宣言する。本作戦には日本海軍の保有戦力のほぼ全てを投入する。また、敵からも大規模な反撃が予想される。恐らくここにいる全員が無事に顔を合わせることは無いだろう。それだけは覚悟して欲しい」
長門「艦娘として生を受けた時より覚悟は出来ておる。そんな事よりも編成を発表してくれないか? もう出来ているのだろう?」
提督「分かった。編成を発表しよう」
提督「これより出撃する艦娘について発表する。参加人数が多い為一気に読み上げるが、後ほど掲示板にリストを貼っておく。では、読み上げるぞ」
提督「第一遊撃部隊第一部隊。戦艦 大和、武蔵、長門。重巡洋艦 高翌雄、愛宕、摩耶、鳥海、妙高、羽黒軽巡洋艦 能代駆逐艦 長波、早霜、朝霜、島風」
提督「第一遊撃部隊第二部隊。戦艦 金剛、榛名。重巡洋艦 利根、筑摩。軽巡洋艦 鈴谷、熊野、矢矧。 駆逐艦 雪風、浜風、浦風、磯風、野分、清霜」
提督「第一遊撃部隊第三部隊。戦艦 扶桑、山城。軽巡洋艦 最上。駆逐艦 満潮、朝雲、山雲、時雨。随行油槽船として、八紘丸 萬栄丸 御室山丸 日栄丸 雄鳳丸 厳島丸 日邦丸 良栄丸も艦隊に加える」
提督「第二遊撃部隊。重巡洋艦 青葉、那智、足柄。軽巡洋艦 鬼怒、阿武隈。駆逐艦 曙、潮、霞、不知火、初春、若葉、初霜」
提督「機動部隊本隊。航空母艦 瑞鶴、瑞鳳、千歳、千代田。航空戦艦 伊勢、日向。軽巡洋艦 多摩、五十鈴、大淀。駆逐艦 秋月。そして私が乗り込む朝霧だ」
ザワザワザワザワ
提督「何か質問は…………ありそうだな」
千代田「提督! 一体この編成はどういう事ですか!? それにどうして提督まで!」
提督「順番に答えよう。編成については、この編成こそ最も適切だと私が判断した。次に私が出る理由だが、私が何時までも引っ込んでいたらお前達の士気が下がるのは目に見えている。だからこそ大将自ら出張って来たという訳だ」
千代田「それ嘘だよね! ねえ、千歳お姉もそう思うよね!?」
千歳「提督……それは本当なのですか?」
提督「ああ、勿論だ。嘘偽りなど全く無い」
千歳「そうですか……ならば私は提督を信じましょう」
千代田「千歳お姉!!」
金剛「提督はこんな事で嘘をつきまセン! 私達が提督の事を信頼出来なくてどうするのデース!」
榛名「はい。榛名も同感です」
千代田「うぅ……」
提督「納得出来たな? では、他にはいるか?」
熊野「では、私からも……先にお詫び申し上げますわ。失礼な事を言わせて頂きます。今回提督も出撃されるとの事ですが、万が一、億が一にお亡くなりになったらどうするのか教えて頂けないでしょうか?」
鈴谷「ちょ、くま」
提督「有事の際には後継者を決めている。私が死んだとしても指揮系統の壊滅的混乱には陥らない筈だ」
熊野「そうですか。この様な質問をしてしまい申し訳ありませんでした」
提督「謝る必要はない。他の者も気になっていた事だろう。他にはあるか?」
不知火「司令、発言して宜しいでしょうか?」
提督「勿論だ」
不知火「其々の艦隊の動きや作戦の概要について何も話されて無い様ですが、それについてご教授願いたく存じます」
提督「この場で話すと混乱を招く恐れがある。その為、其々の艦隊から数人を呼び出し作戦内容などを話す」
不知火「混乱ですか?」
提督「ああ。間違いなく起きるだろう」
不知火「…………そうですか、分かりました。ありがとうございます」
提督「では、解散してくれ。夜が明けたらすぐに出港する」
全員「了解!!」
……………………。
コンコン
瑞鳳「瑞鳳、千歳、伊勢入ります!」
提督「ご苦労。入ってくれ」
ガチャ パタン
提督「お前達で最後だ。とりあえずそこに座ってくれ」
瑞鳳「はい!」スッ
伊勢「私たちは何をすればいいの?」
提督「お前達には最も危険で最も辛い作戦を実行して貰う事になる」
伊勢「え?」
提督「先程集まって貰った時に作戦内容を言えなかったのはこれの所為だ。言ったら最後、暴動すら起きる可能性があった」
瑞鳳「一体何を……」
千歳「囮……」ボソッ
伊勢「千歳?」
瑞鳳「お、囮……!?」
提督「その通りだ。お前達機動部隊には囮となって貰う」
伊勢「提督、貴方自分が何を言っているのか分かってるよね?」
提督「当たり前だ。最もストレートにすれば、お前達に死んでくれと言っている」
伊勢「…………確かにこんな事をあの場で言ったら提督、殺されたかもね」
提督「今殺される訳にはいかないからな。こんな卑怯な手段を取ったというわけだ」
伊勢「とりあえず続けて」
提督「深海棲艦は私達と比べ物にならない戦力を保持している。特に機動艦隊は脅威だ。もしも奴らの艦載機がそれぞれの艦隊に襲いかかってきたら一たまりも無い。場合によっては各個撃破されてしまい、連合艦隊は壊滅するだろう」
千歳「…………」
提督「それだけは避けねばなら無い。ならば、こちらは敵にとっても最優先撃破目標である空母を囮にして敵の艦載機を引き付ければいい。この艦隊は壊滅するだろう。しかし、総合的に判断すればその方が被害は抑えられ、そして作戦の成功率も上がるだろう」
伊勢「それはそうだけど……」
提督「更に、艦娘の司令官、つまり戦力を掌握している私が共に出撃する。その情報を敵に傍受されれば敵は間違いなくこちらを狙う様になるだろう」
千歳「それだけではないですよね?」
提督「どういうことだ?」
千歳「提督、作戦の成功率の為だけに出撃する訳ではないですよね」
提督「それは聞かなければならない情報では無いだろう」
千歳「いえ、必要です」
提督「何故だ」
千歳「本心を話してくれなければ、私は貴方について行けないです」
提督「…………お前達だけにこの様な非情な責務を負わせたくなかった。これで満足か?」
千歳「それが聞けただけで十分です。この作戦の意味を見出す事が出来ました」
提督「そうか」
瑞鳳「瑞鶴はこの事を……」
瑞鶴「知っている」
瑞鳳「やっぱり……」
提督「瑞鳳、伊勢。二人にもこの作戦の実行を承認して貰いたい」
瑞鳳「私……頑張ります!」
伊勢「…………」
提督「伊勢はどうだ?」
伊勢「提督が自らの命を犠牲にする覚悟があるのに私が拒否する訳がないじゃない。承認する」
提督「ありがとう」
伊勢「もしも生きて帰ってこれたら美味しいお酒奢ってね」
瑞鳳「私もお願いね」
瑞鶴「私も……貰いたいな」
伊勢「千歳は?」
千歳「私はいいわ。果たせるか分からない約束はしない主義だから」
伊勢「そう?」
提督「酒については約束しよう。生きて帰れたら好きなだけ呑ませてやる。これから私は簡単な暗号化をした電文を大本営に向けて送る。出港まであと少しだが、好きにしてくれ」
瑞鳳「はい」
提督「また後程」
ガチャ パタン
………………………………。
提督「これより我等連合艦隊はレイテ島奪還に向けて出撃する!! この中にもう二度と逢うことが出来なくなる者もいるだろう。だが、これだけは胸に刻んでくれ」
提督「私はお前達の事を死んでも忘れない! そしてお前達の誇りはいつまでも生き残った者に受け継がれる! 絶望だけはするな! 最後まで死に抗え! 最後まで生きようと足掻け! 生きてさえいれば何かが変わるかもしれない! この呪われた世界に打ち勝つんだ!!」
提督「Z旗を掲げよ!! 皇国の興廃此の一戦に在り!! 各員一層奮励努力せよ!!」
提督「全艦抜錨!!」
今日はこれで終わりです
また来ますね
パラワン島沖
摩耶「姉貴、提督が乗ってる朝霧からの電文が届いたぜ。あたし達の艦隊だけじゃなくて、全艦隊、そして大本営宛にも送っているみたいだ」
愛宕「内容は分かるかしら?」
摩耶「我ら機動艦隊はこれよりブルネイより退避し、レイテ沖の北方よりアウトレンジにて敵艦隊への攻撃を図る。艦隊司令長官」
鳥海「摩耶姉さん……」
高雄「普通こんなことは電文で送らないわ。どういうこと?」
愛宕「敵に傍受されて解読されたら大変よね〜」
高雄「提督がそれを知らない訳がないわ。一体どうして……」
愛宕「提督に打電してみる?」
高雄「駄目です。提督は無線封鎖とおっしゃっておりました」
愛宕「でも、提督がこんな電文打ってるのよ?」
高雄「何か理由がある筈……何か……」
摩耶「……囮だ」
愛宕「囮?」
摩耶「そうだ。提督は空母と司令という二つの餌で敵を釣るつもりだろうな」
高雄「そんな馬鹿な話があってたまりますか! どうして提督がそんな事をする訳がありません!」
摩耶「いいや、あいつならやる」
高雄「提督は艦娘を大切にする人です! そんな提督が囮なんてするわけが」
摩耶「あいつの判断ならな。多分艦娘の内訳は大本営の指示だろうさ。だけど朝霧を瑞鶴達の艦隊に所属させたのは提督の意思だ」
高雄「どうして……」
摩耶「さあな。んなの提督にしか分からないね。あたしには推測しか出来ねえ」
高雄「……愛宕。どうする?」
愛宕「摩耶ちゃんや鳥海ちゃんが提案していたパラワン水道の迂回を却下してパラワン水道へ突入するわよ」
摩耶「なっ!!? 何でだよ!! それだけは駄目だ!あそこは危険だって言ったろ!! 岩礁の所為でまともに艦隊運動が出来ねぇ! そんなとこに潜水艦が待ち受けていたら間違いなく鴨だぞ!」
愛宕「私達が早くレイテ沖にたどり着ければ敵の機動艦隊を目下一番の脅威である私達の艦隊に引きつけられるわ。そうすれば提督を護ることに繋がるのよ?」
摩耶「姉貴や他の奴らが危険に晒される!」
愛宕「摩耶ちゃん。私達の為に提案は命をかけてくれたのよ? なのに私達が提督の為に命をかけないわけには行かないわ。ねえ、高雄?」
高雄「そうね。私も賛成」
摩耶「そうじゃねえんだよ! そうじゃねえんだよ姉貴!!」
愛宕「何がそうじゃないの?」
摩耶「それは……くそっ! 鳥海、お前からも頼む!」
鳥海「ごめんなさい、摩耶姉さん……私には反対出来ません……」
摩耶「鳥海!? 何でだよ! 何でお前が反対するんだよ!!」
鳥海「提督を護りたいというのは私も思ってます。なので……愛宕姉さん、一つ意見具申してもよろしいですか?」
愛宕「なあに?」
鳥海「私と位置を代わって下さい。私が先頭に行きます」
摩耶「いいや、あたしが先頭だ。その代わりお前はあたしの後ろに来てくれ」
鳥海「いえ、私が先頭です」
摩耶「末っ子はあたしの言う事を聞け! あたしが先頭だ! 姉貴、パラワン水道を通るならこれくらいの我儘を聞いてくれよ! 頼む!!」
愛宕「駄目って言ったらどうするの?」
摩耶「姉貴達を撃って大破させて近くの泊地に送り返す」
愛宕「摩耶ちゃんがそんなこと出来ないのは知っているわよ?」
摩耶「いいや、今だけは出来る。何なら試してみっか?」
愛宕「……分かったわ。高雄、後方の隊に下がって。私と摩耶ちゃんと鳥海ちゃんで前衛を……」
摩耶「駄目だ。姉貴は二人とも後衛に行ってくれ。その代わりに何人か駆逐艦を回してくれ。対潜警戒をして貰いたい」
愛宕「んもう……摩耶ちゃんってば我儘ね。分かったわ、私も後衛に下がるわね。摩耶ちゃんも鳥海ちゃんも絶対に無茶しちゃダメよ?」
摩耶「ああ、安心してくれ」
愛宕「雪風ちゃん、浜風ちゃん聞こえる〜? 配置換えよ〜」
浜風「配置換えですか? 私達はどこに行けば宜しいのでしょうか?」
愛宕「摩耶ちゃんと鳥海ちゃんと一緒に前衛になって貰いたいのよ〜」
浜風「分かりました。すぐに向かいます」
愛宕「よろしくね〜」
浜風「磯風、浦風。私と雪風は前衛に行くので、後ろは任せます」
磯風「任せてくれ」
浦風「行ってらっしゃい」
浜風「雪風、行きましょう」
雪風「はい」
…………。
浜風「お待たせしました」
摩耶「待ってたぜ。早速で悪いんだが、ソナーで敵潜水艦を探ってくれ」
雪風「はい」
浜風「…………とりあえずこの近辺に反応はありませんね」
摩耶「了解だ。じゃあ、パラワン水道に突入するぞ。鳥海、お前も気を付けろよ」
鳥海「はい」
摩耶「雪風と浜風も厳重注意だ。特に潜水艦には気を付けろ。ソナーで潜水艦を探り続けてくれ」
浜風「了解!」
摩耶「姉貴、これよりあたし達前衛はパラワン水道に突入する! 間を空けて姉貴達は後について来てくれ」
愛宕「分かったわ〜」
…………。
摩耶「浜風、雪風。敵の潜水艦の反応はないか?」
浜風「はい。全く反応はありませんね」
摩耶「おかしい……既にあの場所は通り過ぎたぞ……本来ならもうあたし達が……なあ、鳥海。何かがおかしくないか?」
鳥海「はい……本当ならもう既に……」
摩耶「潜水艦が動いている反応は無かった。あんだけ念入りに確認したにも関わらずだ。まさか本当にいないのか……?」
鳥海「潜水艦が動い…………摩耶姉さん」
摩耶「なんだ?」
鳥海「もしも潜水艦が居なかったのでは無く、完全に停止していたのだとしたら……」
摩耶「っ!!? くそっ!! 姉貴! 姉貴聞こえるか!!?」
愛宕「なあに、摩耶ちゃん? そんなに慌てちゃってどうしたのかしら〜?」
摩耶「潜水艦だ!! 潜水艦に気を付けろ!! 魚雷が来るぞ!!」
愛宕「でも摩耶ちゃん達が確認してくれたんでしょ?」
摩耶「出し抜かれたかもしれねえ!! 頼む! せめて警戒を!!」
高雄「愛宕!! 雷跡が!! 危ないっ!!」
愛宕「え?」
摩耶「姉貴!! 姉貴!! どうしたんだ姉貴!!?」
ズドーン!!
摩耶「今のなんなんだよ!! 姉貴!! おい、愛宕姉さん!! おい!! おいっ!!」
高雄「摩耶!」
摩耶「どうしたんだよ!! 今の音は何なんだよ!!」
高雄「愛宕が被雷して沈みました……これから私が指揮を……」
摩耶「まだ来る!! 今すぐ回避行動をとれ!! 次は高雄姉さんの番なんだよ!! 頼むから逃げてくれ!! 愛宕姉さんと高雄姉さんを失うのは嫌なんだよ!! 鳥海! 姉貴達の救援に向かうぞ!!」
鳥海「しかし、摩耶姉さんが!」
高雄「ごめんなさい、摩耶。鳥海……私も駄目みたい……直撃コースよ。避けられないわ」
摩耶「嘘だろ!! 諦めるなよ!! どうして!!」
高雄「二人とも……ごめんなさ……」
ズドーン!!
摩耶「…………後衛の駆逐艦の全員はすぐに対潜攻撃を行え!! 絶対に逃がすな!! 皆殺しにしてやれ!! そして高雄姉さんが沈んでいなければ救助をやるんだ!」
鳥海「摩耶姉さん! 雷跡が!!」
摩耶「なっ!!?」
鳥海「今なら避けられます! 摩耶姉さんは避けて下さい!!」
摩耶「駄目だ! あたしが避けたらお前や雪風、浜風に命中するぞ!!」
鳥海「それでも避けて下さい!! 過去を打ち破って下さい!」
摩耶「……すまねえな、鳥海。結局あたしには何も変えることが出来なかった」
鳥海「姉さん!?」
摩耶「これからが本番だがお前がみんなを引っ張ってやれ。そしてお前は過去を乗り越えろ」
鳥海「摩耶姉さん!!」
摩耶「言い忘れてた……今までサンキューなっ、鳥海!!」ニコッ
鳥海「っ!!」
ズドーン!!
………………………………
………………
……
浜風「……すみません……逃げられてしまいました……」
鳥海「いえ、しょうがないわ。大和さん、そちらの様子はどうですか? こちらの潜水艦は見失ってしまいました」
大和「こちらも逃げられてしまいました……」
鳥海「分かりました。それと、高雄姉さんの容態は?」
大和「被雷した衝撃で意識を失ってしまってます。それに、装備は大破していて、さらに出血も多量で正直危険な状態です」
鳥海「まだ息はあるのですね?」
大和「はい。しかし……あっ、高雄!! 高雄!! 高雄の意識が戻りました!!」
鳥海「本当ですか!?」
大和「…………はい、はい……鳥海、高雄は何とか自力で航行は出来るようです。これより朝霜ちゃんと長波ちゃんを護衛につけてブルネイへ撤退させます」
鳥海「お願いします」
高雄「…………ちょう、かい」
鳥海「はい! 何ですか!?」
高雄「摩耶ちゃんは……?」
鳥海「摩耶姉さんは……沈みました……」
高雄「そう…………鳥海、せめて貴女だけでも帰って来て……お願いだから……」
鳥海「努力します」
高雄「先に、ブルネイで、待って、いるわ……ね」
鳥海「はい。お気を付けて下さい」
高雄「ええ……」
ブツッ
鳥海「大和さん、これからは以前の取り決めの通り貴女が旗艦になって下さい」
大和「分かりました。では、私大和が旗艦の任を引き受けます」
鳥海「よろしくお願いします」
大和「では、高雄と朝霜、長波以外はレイテへ向かいましょう」
長波「悪い、後は頼んだ」
朝霜「あたい達の分も頑張ってくれよな」
大和「艦隊、目標レイテ島。進軍再開して下さい!!」
………………………………。
今日はここまでです。
レイテが終わったら一つだけ安価を取ろうと思います。安価の内容はエンディングに影響する事柄についてになります。
別のスレでやっていた通常の安価とは異なる安価方式にしようかと思いますので、今現在このスレを追ってくださっている方の人数を把握したいと思います。
この投稿に対する反応レスで人数を判断しますので、今回だけは句読点のみでも何でもレスを残して下さると幸いです
では、また来ますね
シブヤン海
大和「おかしいですね……敵が見当たりません……」
武蔵「この武蔵に恐れをなして逃げ出したか」
長門「奴らがそんな事で逃げ出す訳が無いだろう」
武蔵「分かっている。ただ言ってみただけだ」
大和「提督や瑞鶴達も心配です。どうしましょう……」
利根「空からじゃな」
大和「はい?」
利根「敵は空から来るぞ」
大和「空……航空機ですか?」
利根「そうじゃ。吾輩達は大艦隊じゃ。なのに真っ向から勝負を挑むなんて愚の骨頂、最も効果的に打撃を与える事が出来る航空機で攻撃して来るのが定石じゃろうな」
大和「確かにそうですね……分かりました。航空機に備えましょう。ですが、レイテへの突入は急ぎますよ」
利根「うむ! そうするが良いぞ!」
矢矧「こちら二水戦旗艦矢矧! 敵の攻撃隊が接近中! 大和、指示を!!」
利根「言ってる側から来おったの!」
大和「全艦対空戦闘準備! 戦艦と重巡の皆さんは三式弾、又は零式弾装備!! 対空電探や高射装置を装備している人は全員使用して下さい!」
武蔵「卑怯者め……海に生きる者なら撃ち合いこそ至高と分かっているだろうに……赦さんぞ!!」
大和「この大和が矢面に立ちます。皆さんは私が敵の攻撃を集めている間に敵機の撃退をして下さい!」
武蔵「いいや、その役目は私が引き受ける」
大和「いいえ、私が引き受けるべきです」
武蔵「大和は艦隊の旗艦だ。旗艦が何度も変わっては他の者も混乱するだろう。私は戦艦の誇りと矜持にかけて敵と闘いたい。それに私は生きて帰る事など望んでいない。この色はその覚悟の証だ。私がいることで他の者を護る……ふっ、これこそ戦艦冥利に尽きるってものだな」
大和「最初から死ぬつもりなら、認めません」
武蔵「いいや、蝿に殺されるつもりなんて無い。この武蔵が目指すはその先、戦艦同士の砲撃戦だ。そうやすやすと沈んでられんよ」
大和「分かりました。では、引き付け役は武蔵に任せます」
妙高「大和、私からもいいですか?」
大和「はい、何でしょうか」
妙高「私も武蔵と共に囮になります」
武蔵「駄目だ。それは私一人で十分だ」
妙高「いいえ、私はその役目を担うにはうってつけです」
大和「どういう事ですか?」
妙高「私は沈めませんから」
武蔵「何を言っている! 未来の事が分かるとでもいうのか!?」
妙高「いえ、未来は見えないですが……そうですね、夢を見たとでも言いましょう」
武蔵「貴様……からかっているのか?」
金剛「Hey 武蔵! 私はそれでGood だと思いマース!」
武蔵「どういう事だ、金剛」
金剛「夢は大切デス! それにイギリスにはデスね〜こんな言い伝えがありマース! 1827年にイギリスのサフォーク州にあるポルスティッドという小さな村での事デス。その村にはマリア・マーティンというso cute なガールが居マシタ。そのマリアは……」
武蔵「いや、もういい」
金剛「Oh どうしてデスか〜!? ココからが良いところなのデスよ!?」
武蔵「詰まる所、正夢は存在するとかだろう?」
金剛「ど、どうシテ分かったのデスか!?」
武蔵「……大和、妙高はどうする? 意見を採用するか? それとも却下するか?」
大和「絶対に沈まない自信はあるのですか?」
妙高「勿論です」
大和「時間がありません。妙高はすぐに武蔵の元に行って下さい」
妙高「分かりました」
大和「……皆さん、武蔵と妙高を何としても護り抜いて下さい! これより戦艦は三式弾、零式弾を敵艦載機群に撃ち込みます! 重巡は射程に入り次第砲撃開始!」
長門「弾幕だけは絶対に切らすな! 帝國海軍の力を奴等に見せてやれ!!」
大和「距離、方位、速度良し。 信管時限設定良し。 戦艦全艦、撃ち方始め!! ってえ〜っ!!」ズドーン!! ズドーン!!
……………………。
矢矧「雪風! 右舷から敵雷撃機が接近!! 迎撃を!」
雪風「はい」ズダダダダ
矢矧「このっ! 落ちなさい!!」ズダダダダ
浜風「敵機、弾幕を抜けました! 武蔵さん!!」
武蔵「使用可能な機銃で撃ち落としてやる! 機銃全門ってえ!!」ズダダダダ
妙高「危ないっ!!」バッ
武蔵「妙高!! やめろ!!」
ズドーン!!
妙高「っつ!! 機関がやられてしまいましたか……しかし、まだやれます! もう一発来ますので私の影にいて下さい!!」ズダダダダ
武蔵「馬鹿者!! 重巡如きに、この大和型の武蔵が庇われる必要など無い!!」
妙高「もう一発右舷より魚雷接近です! 私の因果なら大丈夫です!!」
武蔵「やめろ!! 妙高離れろ!!」
妙高「いいえ、私は沈めませんから」
武蔵「何を言っているんだ妙高!! 早く回避を!」
ズドーン!!
妙高「うああっ!!」
武蔵「おい、妙高!! しっかりしろ妙高!!」
妙高「ま、だ……まだ行け……ます」
武蔵「大和! 妙高をこの戦闘海域から離脱させてくれ!!」
大和「今は無理! 敵機が飛び回る中離脱させるのは危険すぎるわ!!」
武蔵「だが、このままだと妙高がやられる!!」
矢矧「第十戦隊! 妙高と武蔵の護衛に向かうわよ!! 陣形は崩すな! 絶対に弾幕を切らすな! いいわね? ……最大戦速!!」
野分「はい!!」
清霜「武蔵さんは絶対に護る!!」
雪風「10時の方向より敵爆撃機接近中です」
浜風「まだ射程外ですが8時の方向より攻撃機接近してます!」
矢矧「清霜と雪風、浦風は爆撃機へ攻撃。浜風、磯風は攻撃機。私も攻撃機に応対するわ」
雪風「分かりました。高角砲撃ち方始め」ズドン! ズドン! ズダダダダ
清霜「撃て〜!!」ズダダダダ
浦風「落ちた!!」ズダダダダ
矢矧「敵攻撃機が射程に入った! 撃ち方始め!!」ズダダダダ
磯風「落ちろ」ズダダダダ
矢矧「高度が低くて当たらない! このままじゃ!」ズダダダダ
浜風「抜かれます!!」ズダダダダ
ズダダダダ ズバン!
浜風「えっ!?」
武蔵「私のことは心配するな。この通り私一人でも戦えるさ」
矢矧「しかし……」
野分「敵機が退却を始めました。第一波は凌いだようです!!」
武蔵「それは朗報だ。大和、今の内に妙高を戦列から離脱させてくれ。今しか機会は無いやもしれん」
大和「分かりました。妙高、すぐに戦線から離脱して下さい」
妙高「まだ……戦えます」
大和「いいえ、戦える戦えないでは無いです。今の妙高は12ノット前後まで速度が落ちていて艦隊行動の足を引っ張ってしまいます。妙高がいる事で艦隊が危機に晒されます」
妙高「くっ…………」
大和「分かって貰えましたか?」
妙高「分かりました……羽黒……第五戦隊を任せ、ましたよ」
羽黒「はい、妙高姉さん」
妙高「重巡妙高、戦列から離脱します……どうか御武運を……」
大和「本当ならば駆逐艦の子を護衛に付けてあげたいのだけれども……ごめんなさい」
妙高「大丈夫、です。 私は一人、でも、帰れますから」
大和「…………気を付けて下さい」
妙高「はい…………では……」
武蔵「妙高、また逢おう」
妙高「ええ。またいつか」
大和「では、作戦を継続する艦は陣形を整えて下さい。武蔵は……」
武蔵「私は引き続き敵の攻撃を引き付ける。妙高の分まで戦い抜いてみせる」
大和「分かりました。矢矧達はどうしますか?」
武蔵「元の位置に戻ってくれ。援護感謝する」
矢矧「了解」
大和「恐らく第二次攻撃隊が直ぐに来るでしょう。今の内に艤装の不具合を確認しておいて下さい」
全員「了解!!」
………………。
今日はここまでです
ご返答下さった皆様、ありがとうございました。安価の参考にさせて頂きます
安価を実際に取るのはもう少し先になるかと思いますが、一度の安価でハッピーエンドとバッドエンドが決まります
詳しくはまたその時に……
では、また来ますね
大和「敵の第二次攻撃隊を捕捉!」
鈴谷「オッケー!」
熊野「言葉遣いが下品ですわ、もう少し品のある言葉遣いをしなさいな」
鈴谷「そんなお堅いこと言わなくていいじゃーん!」
熊野「また……まあいいですわ。敵機に備えますわ」
利根「筑摩、分かっとるな?」
筑摩「はい、利根姉さん」
利根「妙高があれだけ頑張ったんじゃ。吾輩も頑張れば武蔵を救えるやもしれん」
鈴谷「どーしたの? 鈴谷も話に混ぜてよ」
利根「それは少し難しいのぅ」
鈴谷「どーしてなのさ?」
利根「それは……」
筑摩「私と利根姉さんは愛を深めている途中ですので、私達の間には鈴谷さんは割り込んではいけません」
利根「そうじゃ、そうじゃ! 吾輩と筑摩は愛を深めて……って筑摩!?」
鈴谷「うわ……キッモ〜…………」
筑摩「もしも私達のように愛を深めたいのでしたら、熊野さんと深めてみてはいかがでしょうか?」
鈴谷「……ちょっと鈴谷には早過ぎるかな〜 お、お幸せに」
筑摩「ありがとうございます」
浜風「敵機が来ます。準備は大丈夫ですか?」
浦風「うちは大丈夫じゃけぇ」
磯風「大丈夫だ」
清霜「うん! 清霜は大丈夫だよ!」
野分「大丈夫です、姉さん」
浜風「その呼び方は……少し恥ずかしいですね」
野分「そうですか?」
磯風「浜風姉さん」
浜風「…………いえ、慣れないですが、嫌では無いので大丈夫です」
野分「助かります」
磯風「浜風姉さん」
浜風「雪風は?」
雪風「いつでも大丈夫です」
浜風「皆さん、何としても生き残りましょう。そろそろ射程に入りますね。矢矧さん」
矢矧「さっきと同じよ。出来る限りの弾幕を張って武蔵や他のみんなを護る。ただそれだけ。指示は出すけど、それ以外は各自で臨機応変に動いて」
浜風「はい!」
矢矧「撃ち方始め! 矢尽き刀折れるまで撃ち尽くせ!!」
……………………。
ズドーン!!
武蔵「くっ!!? やるじゃないか!!」
大和「武蔵!!」
武蔵「たった十数発爆弾や魚雷を食らっただけだ。全く問題無い」
大和「だけど!」
武蔵「妙高があれだけ頑張ってくれたんだ。ここで諦めたら妙高に見せる顔が無い」
大和「ならばせめて護衛を付けさせて貰います」
武蔵「護衛なんて要らないぞ!」
利根「なら吾輩に任せてくれないか?」
大和「分かりました。他には……」
利根「清霜を借りても良いかの?」
大和「はい。ですが、どうして?」
利根「吾輩は勿論じゃが、清霜は沈まない気がするんじゃよ」
大和「また夢ですか?」
利根「そうじゃな。吾輩も夢を見たのじゃ」
大和「納得行きませんが、今は時間が惜しいです。武蔵の護衛をお願いします」
利根「うむ! 清霜、聞こえるかの?」
清霜「聞こえるよ!!」
利根「今から清霜は吾輩と共に武蔵の護衛をするのが任務じゃ。矢矧、清霜を借りるぞ?」
矢矧「了解。清霜は利根と一緒に武蔵の護衛を」
清霜「うん! 清霜、頑張るよ!」
利根(これで吾輩が武蔵の分まで攻撃を受ければ護れるやもしれんな)
……。
清霜「武蔵さん! 敵の爆撃機が右舷から接近してます!!」ズダダダダ
武蔵「落とせないか! 取り舵一杯!!」
ズドーン!!
武蔵「くっ!!」
清霜「武蔵さん!」
武蔵「清霜にみっともない姿を見せてしまったな」
清霜「そんな事ないもん! 武蔵さん、すっごくかっこいいよ!!」
武蔵「そうか……かっこいいか」
清霜「みんなの代わりにこんな頑張ってるんだもん!! かっこ悪い訳がないよ!」
武蔵「そう言ってもらえると嬉しいな……さあ来い、深海棲艦よ!! この武蔵が全ての攻撃を受け止めてやる!!」
利根「清霜! 右舷から敵機が来とるぞ!!」
清霜「武蔵さんは清霜が護……え?」
ズドーン!!
利根「清霜!!」
武蔵「利根! お前にも爆撃機が来てる!!」
利根「しまった!! このっ!!」
ズドーン!!
武蔵「利根……清霜……」
清霜「武蔵さん……は大丈夫……?」
利根「ぬ、ぬかった……吾輩がもっと気を引き締めておれば……」
武蔵「大和! 聞こえるか!!」
大和「聞こえるわ! だけど、出来れば手短にお願いします!! こちらも敵の艦載機の攻撃が熾烈になってます」
武蔵「そっちの被害は?」
大和「浜風、矢矧、長門、そして私大和が爆撃を受けてしまい損傷してます」
武蔵「そうか……ならば、利根と清霜をそちらで引き取ってくれ。二人とも爆撃で傷付いている。もう十分だ」
大和「それでしたら、武蔵も合流をして下さい。もう夕暮れも近いです」
武蔵「いいや、無理だ」
大和「どうして!!」
武蔵「ほら、大和。時間が無いのだろう? 後は任せたぞ。では……さらばだ」
大和「武蔵!! む」ブツッ
武蔵「もう6ノットも速度が出ないんだ。ついて行くのはもう無理なんだよ、大和……」
武蔵「利根。清霜を連れて大和達の元へ向かえ」
利根「嫌じゃ」
武蔵「嫌だと?」
利根「そうじゃ。吾輩は気がすむまでここにいるぞ」
武蔵「何を馬鹿なことを!」
利根「分かっとるぞ武蔵。お主、もう6ノットも速度が出ない。それに沈むのも時間の問題だと思っとるのじゃろう?」
武蔵「…………」
利根「沈黙は肯定と取るぞ?」
武蔵「…………そうだ。その通りだ」
利根「うむ! ならば吾輩も最期まで付き合うぞ」
武蔵「何故そこまで私に拘るんだ?」
利根「何となく、では駄目かの?」
武蔵「駄目だな」
利根「ならば、武蔵が好きな様に解釈せい。吾輩はずっとお主の側に居続けるからの!」
武蔵「清霜はどうする?」
利根「大丈夫じゃ。清霜も沈まない筈だからのう」
武蔵「何故言い切れる?」
利根「おっと、口が滑ってしもうた。聞かなかった事にしておくれ」
武蔵「……利根、貴様……まさか」
利根「敵機じゃ」
武蔵「貴様等、私の邪魔をするな!!」ズダダダダ
利根「清霜、迎撃じゃ!」ズダダダダ
清霜「う……うん!」ズダダダダ
利根「また武蔵に向って爆撃を仕掛けてくるぞ!!」
武蔵「そうだ、ここだ!! 私はここにいる!! 全機私を狙えっ!!」
ズドーン!!
武蔵「くっ、まだまだ沈まんぞ!! もっとだ! もっと来るんだ!!」
ズドーン!!
武蔵「ふははははは、ふははははははははははは!! もっとだ!! もっとだ!!」
………………………………
………………
……
武蔵「利根よ……近くにいるか?」
利根「ここじゃ。ここにおるぞ」
清霜「ううう……武蔵さん…………武蔵さん……」
武蔵「その声……清霜か? 何だ、泣いているのか?」
清霜「だって……武蔵さんが……武蔵さんが!」
武蔵「利根よ、敵機の音が聞こえない様だが、今どうなっている?」
利根「もう日は暮れ、敵機は退却したのじゃ」
武蔵「そうか……もう夜なのか…………」
利根「ああ、お主は十分戦ったぞ。お主の勝利じゃ」
武蔵「私は……勝ったのか…………光栄だ……なあ、利根よ」
利根「なんじゃ?」
武蔵「出来る範囲で良い……私の身嗜みを整えてはくれないか?」
利根「うむ……」
武蔵「清霜も……頼む」
清霜「うっ……うん……」
利根「…………出来たぞ」
武蔵「すまない…………もう、私を支えなくて良いぞ。離してくれ……」
清霜「武蔵さん……」ポロポロ
利根「世界一を名乗るに相応しい勇姿だったぞ。流石は大和型戦艦武蔵じゃ」
武蔵「ああ…………仲間に見送られるのも……いい…………もの、だ……な……」
──チャプン──
利根「…………清霜……本隊に戻るぞ……」
清霜「ねえ、利根さん……」
利根「なんじゃ?」
清霜「武蔵さん……カッコ良かったね……」
利根「ああ。そうじゃな……」
………………………………。
今日はここまでです
また来ますね!
エンガノ岬沖
提督「高角砲、機銃全て撃ち続けろ! 弾のある限り撃て!!」
乗組員「はい!!」
ズドーン!
乗組員「3番、4番、5番機銃に被弾!!撃ち手は即死、これで機銃は全て大破し使用不可能です!! っ、高角砲も全門大破!! 」
提督「そうか……」
乗組員「航空母艦瑞鶴に向けて大量の敵機が接近中!!」
提督「瑞鶴、朝霧に乗り込め!!」
瑞鶴「でも……!」
提督「命令だ!」
瑞鶴「……分かった」
乗組員「中将、どうなさるおつもりですか?」
提督「簡単さ……全乗組員に次ぐ、総員退艦せよ。繰り返す、総員退艦せよ。救命ボートに乗り込み大淀について行け」
乗組員「中将!?」
提督「言っただろう。お前たちの命は出来る限り護りたいと……大淀聞こえるか? 今から救命ボートに乗った乗組員がお前の元へ向かう。お前は救命ボートと共に呉か横須賀へ退却してくれ。頼んだぞ……」
乗組員「私は認めません! もしも中将が朝霧に残るおつもりならば私も残ります!」
提督「いいや、駄目だ。お前達は生き残れ」
乗組員「私は中将以外の者に尽くしたくはありません!」
提督「私よりも素晴らしい人間など幾らでもいる。軍人を続けろなどとは言わない。ただ、生き残って後の世をお前達が導いて欲しい。それだけが私の望みだ」
乗組員「嫌です! 中将を残して行くなんて私には……!!」
提督「しばしの別れだ。あと数十年もすればまた逢える」
乗組員「長すぎます! そんなに私には待てません!」
提督「出来る。それに考えて欲しい。私は愛する女と共に逝こうとしているんだ。それを邪魔するつもりか? 出来ればそんな野暮な事はして欲しくない」
乗組員「中将は……ズルイです」
提督「そうだ。私はズルくて弱くて力も無い存在なんだ。見損なってくれていい」
乗組員「そんな事出来るわけありません…………」
提督「そうか。だが、もう時間が無い……今までご苦労だったな。ありがとう」
乗組員「うぅ……中将……」
提督「さあ行け。生きて日本に帰るんだ。また、いつか逢おうじゃないか」
乗組員「……はい! また、いつか……!」ビシッ
タッタッタッ
提督「行ったか……瑞鶴、出てきて良いぞ」
瑞鶴「うん……」
提督「すまないな、私の我儘に付き合わせてしまって」
瑞鶴「ううん、いいの……それより、私、今のやり取りを見ていて思い出した事が……」
提督「その前に場所を移動しよう。朝霧をボートや他の艦娘達と逆方向に進めねばならない。移動しながら話そう」スタスタ
瑞鶴「うん……」スタスタ
提督「それで、何を思い出したっていうんだ?」
瑞鶴「ずっと前の記憶……みんな、私の上に集まって泣いてた……軍艦旗を下ろして、傾いている私。海の中に沈んでた……他にも翔鶴姉が私を遺して沈んだことや、囮作戦……一航戦や二航戦の先輩がいなくなった事……本当に色々、色々思い出したんだ……」
提督「そうか……」
瑞鶴「その記憶と、この世界で起きている事も全く同じ……ねえ、どういうことなの? 提督さん……」
提督「瑞鶴もとうとう思い出したか……」
瑞鶴「提督さん、教えて。何なの、この記憶は? ……何なの、この世界は?」
提督「瑞鶴、それが改二だ。それが改二の正体なんだ」
瑞鶴「改二……? 改二って……え?」
提督「軍艦だった時の記憶を取り戻すことだ。記憶を取り戻せばかつての戦い方を始め、様々なものを取り戻す事が出来る。だから強化もされるのだよ」
瑞鶴「提督さん、知ってたの?」
提督「ああ。お前達の過去は全て知っている。もちろん、この戦いがどうなるのかもな」
瑞鶴「じゃあ、五十鈴や千歳、千代田はこの戦いの事、この戦いで起きること全てを知っているの?」
提督「そうだ。彼女達は自分がほぼ確実にこの戦いで死ぬ事を知っている。だが、そうならないかもしれない。だから必死に抗おうとするんだ」
瑞鶴「抗えるものなの?」
提督「ほぼ不可能だ。だが、三日月や望月を思い出してくれ。あの子達は沈んだ場所や時期が全く異なる」
瑞鶴「あ……」
提督「だが、自分がかつて沈んだ戦いに参加してしまえば、今のところ100%沈んでる」
瑞鶴「だから、提督さんは大本営に抵抗してたの?」
提督「そうだな。しかし、大本営の奴らの命令を変える事は一度も出来なかった。抵抗しなかったのと何ら変わりは無い。何も知らない子を沈めたのは私の所為だ」
瑞鶴「…………どうして……」
提督「何だ?」
瑞鶴「どうして提督さんはみんなに自分の最期とかの知識を教えなかったの? 教えてくれれば、助かった子がいたかもしれないのに」
提督「教えたさ……」
瑞鶴「え?」
提督「なあ、瑞鶴。お前は私の最初の秘書艦を知っているか?」
瑞鶴「え? 電ちゃんじゃないの?」
提督「そうだ……表向きはな」
瑞鶴「どういうこと?」
提督「あれは嘘だ。もちろん知っている者など大本営の人間以外にはいない。電自身も自分が初めての秘書艦だと思っていた」
瑞鶴「…………前の秘書艦はどうしたの?」
提督「…………死んだ」
瑞鶴「死んだ……?」
提督「あれは最悪だった。当時改二などというものは無く、何もかもが手探りの時代だった。私と彼女は共に深海棲艦を討っていた。彼女は自分がかつては艦だったというぼんやりとした記憶以外は持ち合わせていなかった。私は彼女の過去の出来事を事細やかに調べ尽くし、彼女に彼女の生誕から最期までの全てを教えた」
瑞鶴「それで……その子は改二になれたの?」
提督「いいや、彼女は事実を聞いた後狂ったように暴れ始め、泣き叫び、自らを傷付けた……そして最後は……私の拳銃を抜き取り頭を撃ち抜いて死んだ……」
瑞鶴「うそ…………」
提督「悔しかった。愚かな私自身に嫌悪し、死のうと思った時もあった。しかし、大本営は新しい子を送り込んで来た。それが電だ……私はもう二度とあんな想いを艦娘にさせたく無い。もう誰も喪いたくない。そう願い提督を続ける事にしたんだ。だがな、そうは行かなかった……ある程度人数も揃い、戦力と言える様になってから大本営から指示を出される様になった」
瑞鶴「指示?」
提督「瑞鶴も既にいたはずだ。指示を受け始めた最初の戦いはウェーク島攻略作戦だった。もちろん、私は反対したが大本営に脅されたんだよ……命令を聞かねば全ての艦娘に過去を教えるってな」
瑞鶴「どうして!? 大本営の人達は私達の事を分かっているんじゃないの!?」
提督「ああ。大将が大本営内で台頭してからこのような指示を受けるようになったんだ。そして、命令に従わねば艦娘の全員に過去を教えるとな……私は脅され続ける以外に何も出来なかった」
瑞鶴「そういえば、どうして記憶を取り戻したのにみんな生きてるの……?」
提督「自分で思い出す分には壊れない様だ。もちろんショックを受けたり情緒不安定に陥る子もいた。だが、あれほど取り乱す事は無かった。勿論あの子が特別だった可能性は捨てられない。しかし、もう二度とその様なリスクを侵すわけにはいかない。だから私は改二になった子には、絶対に過去を他人に伝えるなと厳命してきた」
瑞鶴「そうなんだ……」
提督「その所為でみんなには本当に辛い思いをさせてしまった。救えたかもしれない命を奪ってしまったかもしれない……最低な提督だな……私は……」
瑞鶴「そんなことないよ……提督さんはいつも頑張っていたもん……」
提督「しかし、何も変わらなかったんだ。あの子に会わせる顔が無い……」
瑞鶴「ねえ、提督さんの最初の秘書艦って誰なの?」
提督「……朝霧だ」
瑞鶴「え!?」
提督「特型駆逐艦13番艦の朝霧だ。この艦の名前は彼女にあやかって付けたんだ。もう二度とあの様な事を繰り返さない為にも……」
瑞鶴「そうなんだね……提督さん……辛かったね……」
提督「そうだな……だが、すぐに私はその苦しみから開放される。この艦の役割は初月の再現だ。この命で他の子の命を漸く護ることが出来るよ」
瑞鶴「今更だけど、私もお供するわ。いいよね?」
提督「ああ、ありがとう」
瑞鶴「私もどうせ死ぬのなら、提督さんの横がいい」
提督「もし……」
瑞鶴「もし?」
提督「もしもこの様な世界で無ければ、瑞鶴と婚約し、死ぬまで寄り添って生きるという道もあったのやもしれんな……」
瑞鶴「そしていつかは子供が出来て、幸せな家庭を築く……そんな夢の様な世界……」
提督「本当に夢の様な世界だな……」
瑞鶴「でも、私はこんな世界でも幸せだった。提督さんと逢えたのだから」
提督「私もだ……瑞鶴と共に死ねるのが私の最大の幸せだ」
瑞鶴「うん」
提督「そろそろ朝霧も限界のようだ……敵艦隊のど真ん中で自爆する。いいな?」
瑞鶴「じゃあ、最後のお願いを聞いて欲しい」
提督「何だ?」
瑞鶴「絶対に離れないで済むように私と提督さんを何かで結んで欲しいな……」
提督「そうだな…………これでいいか、」
瑞鶴「ありがとう、提督さん」
提督「覚悟はいいか? 時限装置を入れるぞ?」
瑞鶴「いいよ」
提督「ああ……」
瑞鶴「提督さん、私の事を抱き締めて」
提督「ああ……」
瑞鶴「うん……私、今凄く幸せよ……」
提督「瑞鶴……君には苦しい想いばかりさせてすまなかった……これからはいつも一緒だ。これが……私達の結婚式だ」
瑞鶴「うん! 提督さん、愛してい────
………………………………
………………
……
今日はこれで終わりです
大和「…………」
金剛「大和、どうしまシタか? 顔からスマイルが消えてマスよ?」
大和「少し思うところがありまして……」
金剛「他の艦隊のことデスね?」
大和「はい……墜落してしまった瑞鳳航空隊の生き残りから聞いた機動部隊の壊滅と朝霧……提督の死、そして時雨以外の第三部隊の全員が沈んだという報告。果たして今から私達がレイテ島に突入してもそれに意味はあるのか、成功する可能性があるのかが分からないんです……」
金剛「私は退却するべきだと思いマス。これ以上は無駄になる気がするのデス」
大和「しかし、これは日本の最後の反抗作戦でもあります。この作戦が失敗に終わると日本はいよいよ完全に補給ラインは断たれ、本土の危機に追い込まれるでしょう」
金剛「そうデスね。確かにそれには一理あるネ。デスが、大和?」
大和「はい?」
金剛「命さえあればまた何かをする事が出来マス。死んでしまえば出来る事筈だった事も出来なくなりマス。命があるに越した事はありまセン」
大和「…………そう、ですね……」
金剛「このまま帰りマスか? それとも戦いに戻りマスか?」
大和「…………決めました。ありがとうございます、金剛」
金剛「決めたのは大和デス。私はただお話を聴いただけデス」
大和「ふふ……全艦隊に告げます! 全艦き」
榛名「大和! SOS信号を受信しました!!」
大和「何処からですか!?」
榛名「場所は……レイテ島の方角からです」
大和「う…………」
金剛「敵の罠かもしれまセン」
大和「しかし……」
金剛「罠だった場合、敵が準備を整えて待ち構えているでショウ。そのリスクは分かってマスね?」
大和「…………ここで何もせずに見捨てるのは日本の恥、そして人間としてやってはいけないことです。……行きましょう」
金剛「OK」
雪風「私は反対です」
大和「雪風?」
雪風「これ以上戦力を消耗させるのは今後の為にも避けるべきです。それに、人間として、日本艦としてという感情論は戦場では邪魔なものです。それに従っていては正しい判断は出来ません」
浦風「雪風、止め……」
雪風「大切な事を話しているんです。横槍を入れないで下さい」
大和「続けて」
雪風「大和さんはたった一人の人間か艦娘の為に艦隊を動かそうとしてます。たった一人の為に犠牲を強いるつもりですか? SOSを出しているのが人間だった場合、戦力にすらならない人物の為に絶対な戦力を誇る艦娘が犠牲になるのは、全く割りに合いません。無視するべきです」
大和「…………雪風、あなた兵器みたい」
雪風「はい。私は兵器です」
大和「雪風、それは間違ってるわ。艦娘は兵器では無く兵士……つまりは人間。心を棄てるのは無理」
雪風「私はもう既に棄てました」
大和「私にはそうは見えない。雪風はちゃんと人間だわ」
雪風「そんな訳がありません」
大和「間違った選択をしているかもしれない大和に意見をして、決断を止めさせる。この行動にだって十分雪風の感情は含まれているわ」
雪風「っ……」
大和「兵器なら、命令にただ従うだけ。そこに何の感情も疑問も抱かない。少なくとも雪風は兵器ではないわ」
雪風「そんなこと……ありません……」
大和「意固地ですね……まあいいわ。今はあまり時間が無いから、続きはまた帰ったらやりましょう。帰ったら……」
雪風「…………」
大和「全艦に告げます。これより我が艦隊はレイテ島の方面から発信されたSOSの主を救助に向かいます。もしかしたらこれは敵の罠かもしれません。ですが、私達はそれでもあえて突入します。それが、『人間』として通さねばならない仁義というものです」
雪風「…………」
大和「救助が完了出来次第直ちに本土へ帰投します。皆さんは絶対に生きて帰るという意思を忘れないで下さい。それが生死を分ける時があるのですから」
雪風「…………そんな綺麗事……」ボソッ
大和「本土に帰ったらみんなでお祝いをしましょう。そして、この戦いで散った仲間を弔いましょう。そう、生きて帰るんです。生きてみんなで横須賀へ帰りましょう!!」
全員「はい!!」
雪風「…………」
大和「艦隊進路レイテ島へ! 全艦大和について来て下さい!!」
………………………………
………………
……
サマール沖
矢矧「…………あれは……っ!!?」
野分「どうしましたか?」
矢矧「大和、敵影!」
大和「方角は!?」
矢矧「11時の方向!」
大和「…………! こちらでも確認出来ました!」
矢矧「どうするの?」
大和「先ずは先制で戦艦の私達で砲撃を行います! 水雷戦隊は突撃の準備を整えて下さい!」
矢矧「了解」
大和「長門、金剛、榛名。砲撃を行います。徹甲弾を装填。目標、敵空母!」
長門「やっと私達の出番か……胸が熱いな」
金剛「榛名、準備はOKデスか?」
榛名「はい、金剛お姉様!」
大和「…………武蔵にもこの戦いを味わらせたかったな……」
長門「大和、全員準備出来たぞ」
大和「あ、はい!」
金剛「いつでもOKデスよ!!」
大和「方角、仰角共に良し……戦艦、砲撃開始!! 薙ぎ払え!!」
ズドーン!!
今日はこれで終わりです
また来ますね
大和「やはり、この距離では当たらない……」
長門「大和! 敵空母が逃げ始めたぞ!!」
大和「このまま逃すわけには行きませんね。熊野、第七戦隊と水雷戦隊は直ちに敵空母の追撃を行って下さい!」
熊野「承りました。第七戦隊の皆さん、この熊野に続いて下さいな」
鈴谷「や〜っと鈴谷達の出番だね!!」
利根「そうじゃな。じゃが、あまり羽目を外すでないぞ。敵は空母じゃ。艦載機を飛ばされたらひとたまりも無いからの」
鈴谷「大丈夫だって! 鈴谷も熊野も艦載機なんかにゃ負け無いよ〜!」
熊野「そうですわね。ですが、利根の忠告は御尤もですわ。気を付けさせて頂きます」
利根「うむ!」
筑摩「利根姉さん、そろそろ参りましょう」
利根「筑摩」
筑摩「はい、なんでしょう?」
利根「最後まで足掻くのじゃ」
筑摩「そうですね。最期まで抗います」
利根「やはり筑摩は吾輩の自慢の妹じゃな!」
筑摩「いえ、利根姉さんには敵いません」
利根「では……参ろうか」
筑摩「お供致します」
熊野「第七戦隊、追撃に移りますわ!! 全艦隊列を保ったまま艦隊運動を行って下さいな!」
………………。
浜風「矢矧さん! 敵駆逐艦が第一戦隊に急速接近中!!」
矢矧「こちら矢矧! 第一戦隊に向けて敵駆逐艦が急速接近してるわ!! 迎撃に移行するわね!」
大和「いえ、矢矧達はそのまま敵空母を追撃して下さい!」
矢矧「了解!」
矢矧「第十戦隊、目標を敵駆逐艦に変更! 反航戦でいくわよ!」
全員「了解!」
矢矧「全艦、砲撃開始!!」ズドン!
野分「てー!!」ズドン!
ハ級「……」
浜風「弾着今!」
バッシャーン!!
浜風「遠! 直撃弾無し!!」
矢矧「次弾装填急いで!」
浦風「分かったんじゃ!!」
矢矧「第二射始め!!」ズドン!
浦風「おんどりゃあ〜!!」ズドン!
浜風「遠!! 先程と殆ど距離が変わってません!」
矢矧「何としても落とすわよ! 第三射撃て!!」ズドン!
浜風「遠! 駄目です!!」
雪風「敵空母より艦載機が発艦し始めてます。このまま駆逐艦を狙いますか?」
矢矧「くっ……最後にもう一発撃ち込んで終わりにするわよ。第四斉射撃て!!」ズドン!
磯風「当たれ」ズドン!
浜風「弾着今! 遠!! 有効弾無し!」
矢矧「…………敵空母を追うわよ! 全艦対空射撃準備!」
全員「了解!」
ハ級「……」バシュッ
長門「大和! 敵駆逐が魚雷を発射したぞ!!」
榛名「大和と長門と榛名が直撃コースです!」
長門「このまま魚雷を受けて攻撃に転じるか? それとも反転して魚雷を避けるか? 時間が無いぞ」
大和「直撃コースの私を含めた戦艦は回頭! 金剛はそのまま敵を追撃して下さい!」
榛名「はい! 金剛お姉様、御武運を!!」
金剛「Yes! 私がやっつけるネ!」
大和「っ!!?」
長門「まずい! そのままだと直撃するぞ!!」
大和「ならば、一発は覚悟して……」
長門「大和!! 絶対に左右にズレるな!! 魚雷と並走するんだ!!」
大和「並走すればするほど敵艦隊との距離が離れてしまいます!」
長門「金剛が向かっている。 それに、回頭して被害を減らすと決めたのはお前だ」
大和「分かりました。魚雷の脅威が去るまではそのまま直進します」
長門「了解だ」
大和「暫く任せましたよ、皆さん」
…………。
熊野「敵艦隊捕捉しましたわ!!」
鈴谷「ねえ熊野。あれ、空母もっといるよね?」
熊野「報告より多いようですわね。鈴谷は大和達に敵艦隊の編成を打電して下さいな」
鈴谷「オッケー!」
熊野「第七戦隊、敵艦隊に向けて砲撃開始ですわ!」
利根「なあ、熊野よ。一部の敵が突っ込んで来てるぞ?」
熊野「お二人は出来る限り敵空母を重点的に砲撃して下さいませ。私と鈴谷は突撃して来る部隊を叩きますわ」
利根「了解じゃ」
熊野「では、行動を開始しますわよ」
鈴谷「大和達への打電しゅーりょー!! さっ熊野、行っくよ〜!!」
熊野「第一、第二主砲砲撃開始!」
…………。
熊野「とぉぉおぉおおおお!!」ズドン! ズドン!
鈴谷「熊野! 敵駆逐艦が突っ込んでくるよ!!」
熊野「分かってますわ! このままうしろを取られる訳には……っくぅ、どうして当たらないんですの!」ズドン!
鈴谷「大和に敵駆逐がそっちに行くかもしれないって打電を……あれ……?」
熊野「ひゃぁぁぁぁあぁあ!!」ズドン! ズドン!
鈴谷「駆逐艦の動きが……っ!?」
熊野「そろそろ当たりなさいな!!」ズドン! ズドン
鈴谷「熊野!! 逃げて!! そいつは大和が狙いじゃない!! 狙いは熊野だ!! あいつが魚雷を撃つ前に早く!!」
熊野「へ?」
ロ級「……」バシュッ
鈴谷「熊野ぉぉぉぉぉぉ!!!!」
熊野「……っ」
ズドーン!!!!
鈴谷「熊野!! 熊野!! 熊野!! 熊野!!」
熊野「…………」
鈴谷「熊野!! 生きてる!! ……えっ」
熊野「鈴谷…………ですの……?」
鈴谷「熊野…………目が……目が……それに髪も……」
熊野「ふふ…………左目はもう駄目ですわね……この髪も自慢の髪だったのに、残念ですわね……」
鈴谷「熊野、早くこっちに!! 鈴谷が熊野の事を護るから!!」
熊野「鈴谷……」
鈴谷「熊野!! 手を出して!」
熊野「ありがとう」スッ
バッシャーン!!
鈴谷「うわっ!!?」
熊野「至近弾!? 鈴谷!!」
鈴谷「嘘……」
熊野「どうしたんですの!?」
鈴谷「燃料タンクが浸水……それに左推進器が……」
熊野「一応動けますわね?」
鈴谷「スピードは落ちたけど一応……でも…………」
熊野「曳航は不可能ですわね。筑摩、応答して下さいませ」
筑摩「どうしましたか?」
熊野「私熊野は戦闘力を大きく喪失してしまいました」
筑摩「そう、ですか……」
熊野「鈴谷も至近弾で私ほどでは無いですが、戦闘力は落ちてしまっております」
筑摩「旗艦……ですか?」
熊野「そうですわ。旗艦を筑摩にお譲りしたいのです」
筑摩「…………申し訳ありませんが、お断りします」
熊野「ですが、私がこのまま旗艦を続けるのは不可能ですわ!」
筑摩「わかってます。なので」
熊野「なので?」
筑摩「利根姉さんに私から伝えておきます。利根姉さんならば必ず最後まで旗艦の任を全う出来ますから」
熊野「……分かりました。では、そのようにお願いしますわ」
筑摩「熊野さんはこれからどうするのですか?」
熊野「熊野は……このまま一人で戦線を離脱致します」
筑摩「危険ですよ?」
熊野「これ以上戦力を削る訳にはいきません。大丈夫ですわ、私一人でも必ずや本国に帰ってお見せします」
筑摩「そう、ですか……」
熊野「あとは、お任せしますわ……必ず皆さんは生きて本国に帰って下さいな。武運を祈ってます」
筑摩「熊野さん」
熊野「はい」
筑摩「またすぐに逢えますわ。先に待ってますわね」
熊野「ええ。御機嫌よう」
筑摩「はい。御機嫌ようです」
…………。
熊野「鈴谷」
鈴谷「熊野……」
熊野「そろそろ行きますわね」
鈴谷「待って!」
熊野「泣くなんて鈴谷らしくありませんわ」
鈴谷「だって、もう会えなくなるような気がするんだもん!! 嫌だよ! 鈴谷、熊野と離れるなんて嫌だ!!」
熊野「そんなこと言わないで下さいな。それに、私鈴谷ともすぐに逢える気がしますわ」
鈴谷「でも……! でも……!!」
熊野「鈴谷……少し失礼しますわね」
鈴谷「くま……!?」ギュッ
熊野「私が居なくても鈴谷は大丈夫ですわ。だって、鈴谷はこの熊野のお姉様なのですから」
鈴谷「くま、の……」
熊野「大丈夫。鈴谷ならばこの戦いを生き抜く事は出来ますわ。だから約束ですわ」
鈴谷「約……束?」
熊野「熊野が帰ってきたら鈴谷が一番に熊野の事を出迎えて下さいな」
鈴谷「分かった、分かった!! 絶対に鈴谷は熊野の事を待ってるから!! だから絶対に熊野も帰ってきて!!」
熊野「ええ」
鈴谷「約束、だから……」
熊野「では、行きますわね。鈴谷……」
鈴谷「う……ん……」ポロポロ
熊野「鈴谷……いつか……また……」
鈴谷「行ってらっしゃい、熊野」
熊野「行ってきますわね」
………………………………。
今日はここまでです
更新遅れてしまいすみません……
また来ますね!
金剛「ファイヤー!!」ズドーン!!
鳥海「左舷砲撃開始!!」ズドン! ズドン!
バッシャーン
金剛「Shit!!」
鳥海「やはり、この距離では当たりませんね……」
羽黒「どうしましょう……」
金剛「私が敵に接近しマス。近距離からの砲撃でシたら……」
鳥海「私は反対です。金剛さんは追撃部隊の主力です。ここで金剛さんが沈んでしまったら、この艦隊は決定打を喪失することになってしまいます」
金剛「代案はあるのデスか?」
鳥海「私が敵艦隊中央に突入します」
金剛「そんなことしたら鳥海はまた私の砲弾が当たってしまいマス!!」
鳥海「姉さん達は因果に囚われてしまいました。そして、私もその因果に囚われてしまうでしょう。例え金剛さんの砲弾が当たらなくても、恐らく別の砲弾が命中して致命傷を受ける筈です。なので、少しでも艦隊の皆さんの為になる事をしたいです」
金剛「鳥海……」
羽黒「鳥海さん……」
鳥海「大丈夫です。誰の砲弾が当たっても私は恨む事はありません。だから、遠慮なく砲撃して下さいね」ニコッ
金剛「…………OK」
鳥海「ありがとうございます。では……鳥海、行きます!!」
…………。
鳥海「左舷に敵艦隊! 取り舵一杯! 砲撃開始!!」ズドーン!
金剛「私達も砲撃するネ!」ズドーン!
羽黒「お願い、鳥海さんには当たらないで下さい!!」ズドーン!
バッシャーン!
鳥海「近、近! 金剛さんの弾は遠、近で挟叉! 羽黒の弾は近、近です!」
金剛「了解したネ! 仰角微調整! 全砲門ファイヤー!!」ズドーン!
鳥海「ってぇ〜!!」ズドーン!
バッシャーン!!
ヌ級「!!?」
鳥海「金剛さんの弾が敵空母に至近弾! 艦速低下してます!」
金剛「OK! この調子で打ち続けるネ!!」
鳥海「お願いします!」
金剛「全主砲門、装填完了! 一番、二番斉射! 続けて三番、四番斉射! ファイヤー!!」
イ級「……」バシュッ
羽黒「鳥海! 敵駆逐艦が雷撃を!!」
鳥海「っ! 艦速一杯!! 」
金剛「鳥海!! そっちはダメデスっ!!」
ズドーン!!
羽黒「鳥海っ!!」
鳥海「やは、り……こうなりましたね……魚雷に誘爆。魚雷発射管一基が使用不可……炎が広がっていますね……」
金剛「また…………また私が……」
鳥海「金剛さん……こうなるのは宿命でした……気に病まないで下さい……皆さん、今すぐそこからも離れて下さい……」
羽黒「…………分かりました。金剛さん、行きましょう」
金剛「鳥海……本当に、ごめんなさい……」
鳥海「ありがとうございます、羽黒。引き続き艦隊をお願いします……」
羽黒「はい……」
鳥海「……生き残っている魚雷、発射…………」バシュッ
鳥海「後は……これで……愛宕姉さん、摩耶姉さん。待ってて下さいね……すぐに私も追いつきます。深海棲艦の皆さんは……」
鳥海「…………死んで下さい。道連れです」
ズドーン!!!!
…………。
羽黒「鳥海さんが自爆しました……周囲にいた敵艦は全滅した様です……」
金剛「鳥海……」
利根「鳥海の死を哀しむ余裕は無いみたいじゃぞ。敵じゃ」
羽黒「て、敵の艦載機が接近中!!」
金剛「零式弾装填!」
利根「筑摩、他の隊にも空襲が来る事を伝えるのじゃ」
筑摩「はい!」
利根「金剛も吾輩の指揮下に入って輪形陣を形成! 皆の者、生き残るんじゃぞ!」
筑摩「利根姉さん! 敵艦隊もこちらへ向かって来てます!」
利根「空と海両方を相手にとるのは危険じゃな……敵艦隊とは逆の方向に針路を取る! 空襲が終わり次第反転し、敵艦隊を討つのじゃ!」
全員「了解!」
利根「皆の者、所定の位置に着くのじゃ! 忙しくなるぞ! 全艦、対空射撃始め!!」
金剛「零式弾、ファイヤー!!」ズドーン!
羽黒「敵機撃墜の確認出来ずです!」
金剛「Shit!」
利根「20.3センチの射程に入るぞ! 吾輩達も零式弾を撃つのじゃ! 吾輩の号令に合わせて討つのじゃ! ……撃てぇい!」ズドーン!
羽黒「一機撃墜!!」
利根「やはり、一網打尽は難しいよのぅ」
金剛「あと何発か撃つ時間はありマス。次弾装填を急いで下サイ!」
利根「当たり前じゃ。一機でも多く落とすのが吾輩達の仕事じゃからの」
羽黒「全艦装填完了しました!」
利根「よし! 撃てぇい!!」ズドーン!
羽黒「撃墜無しです!」
利根「むぅ……零式弾は次弾装填。じゃが、そろそろ高角砲や機銃の出番じゃな。対空装備を全て使い尽くすつもりで撃って撃って撃ちまくれぃ!!」
全員「了解!」
利根「各々の判断で対空戦闘始めじゃ!!」ズダダダダダダ
…………。
鈴谷「ヤッバ!! 敵爆撃機が7時の方向から突入して来た!!」
羽黒「敵攻撃機、1時の方向から突っ込んで来てます!」
利根「爆撃機は急降下直後に取り舵で躱すのじゃ! 全艦1時の方向からの攻撃機を何としても撃ち落とせ!!」
金剛「10時の方向からも攻撃機が来てるネ!」
利根「しまった! 挟み撃ちか!! 少なくとも片方を撃ち落とさねば危険じゃ!! 逃げ場を失ってしまうぞ!」
鈴谷「もー!! ヤバイって!!」
ズダダダダダ
鈴谷「一時の方向のが全滅した!? 何で!?」
利根「急降下爆撃が来るぞ! 取り舵一杯!!」
筑摩「敵攻撃機、魚雷投下しました!!」
利根「上はもう見るな! 敵の魚雷の航跡を見て躱すのじゃ!」
ヒューン ズドーン!!
利根「無事か!?」
羽黒「全員無事です! 回避成功しました!」
利根「ふぅ……」
鈴谷「でも、何で攻撃機が……」
矢矧「待たせたわね。第十戦隊、到着」
鈴谷「矢矧!」
矢矧「間に合って良かったわ」
利根「すまぬ、助かった」
矢矧「これくらいなんてこと無いわ」
利根「色々と話したい事があるが、まだ空襲の最中じゃ。また後程改めて礼を申すぞ」
矢矧「そうね。雪風、浦風、磯風、野分。気を引き締めなさい。気を抜いたらその瞬間に死ぬものと思いなさいよ」
全員「はい!」
矢矧「第七戦隊の援護を開始! 敵の攻撃機の進路の先に弾幕を張りなさい!」
雪風「3時の方向から敵攻撃機が向かって来ます」
矢矧「利根、こちらは任せて!」
利根「うむ!」
羽黒「9時の方向から爆撃機、7時の方向から攻撃機! また同時攻撃が来ます!」
鈴谷「敵の艦隊が追い付いて来た!!」
利根「なんじゃと!? ええい、今は無視じゃ! 攻撃機と爆撃機を優先じゃ!!」
利根「急降下爆撃が来るぞ! 全艦取り舵一杯!! 筑摩、敵の攻撃機は!?」
筑摩「魚雷投下し、ません!? どうして!?」
利根「何故じゃ!? 攻撃機は何処に向かっている!?」
筑摩「これは……私です! 私だけに向かってます!」
利根「爆撃は虚。まさか一隻に集中するとは……ぬかった……」
筑摩「衝撃に備えます。魚雷命中まで3秒、2、1……0」
ズドーン!!
鈴谷「そんな……筑摩まで……」
利根「筑摩、状況は?」
筑摩「痛た……火災発生、そして舵がやられました。速力も低下、艦隊行動困難です」
利根「そうか……筑摩は艦隊から離脱するのじゃ。分かったな?」
筑摩「はい、利根姉さん。御達者で」
利根「うむ。御苦労じゃったな、筑摩」
鈴谷「ちょっと……待ってよ……」
利根「なんじゃ?」
鈴谷「ねえ! どうして見捨てるの!? ねえ!! どうしてそんな簡単に置いていけるの!? あり得ないよ! 筑摩はあんたの妹なんでしょ!? こんなの酷すぎるよ!!」
利根「吾輩と筑摩はこれでいいんじゃ。これはかつてより二人で決めていた事じゃ」
鈴谷「それにしたって!!」
利根「また艦載機が来た!! その話は後じゃ!」
ズドーン!! バッシャーン!!
利根「今度はなんじゃ!!?」
羽黒「敵の砲撃射程内に捕えられました!!」
利根「このままだと一方的にやられてしまう……」
矢矧「私達が食い止めるわ!」
利根「じゃが……」
矢矧「この距離ならば魚雷の射程内に潜り込む事は可能よ。任せて頂戴」
利根「……うむ。お主らに任せるぞ」
矢矧「了解。第十戦隊のみんな、この酸素魚雷で敵を食い止めるわよ!」
浦風「了解じゃ!」
磯風「ああ」
野分「了解しました!」
雪風「はい」
矢矧「空には気を付けて。だけど気を取られ無いように。あくまでも目標は敵艦隊よ。この魚雷を叩き込む事だけを考えなさい」
利根「頼むぞ、矢矧」
矢矧「朗報を待ってて」
利根「うむ!」
矢矧「第十戦隊単縦陣!! 突撃開始!! 」
…………。
今日はここまでです
また来ますね!
ズドーン!
矢矧「敵艦砲撃! 回避運動! 取り舵一杯!!」
野分「敵攻撃機、右舷より接近!」
矢矧「第二戦速に変更! 速度差をつけて!」
野分「敵攻撃機、魚雷を投下! ……魚雷は艦隊の前方を通過!」
矢矧「最大戦速に戻せ! 雪風、対空電探に反応は!?」
雪風「こちらに向かってくる敵機は確認出来ません」
矢矧「なら敵艦隊に集中! 雪風は対空電探にも注意を払って」
雪風「了解」
磯風「敵駆逐艦が真横をこちらに向けて来たぞ」
矢矧「魚雷よ! 雷撃した駆逐艦の方向に針路変更!」
磯風「大丈夫か?」
矢矧「このまま進むよりは被弾するリスクは少ないわ」
磯風「了解だ」
浦風「敵駆逐艦発砲!」
矢矧「回避運動!」
磯風「矢矧、一ついいか?」
矢矧「何? 手は止めないで簡潔に説明して」
磯風「煙幕は焚かなくていいのか? 煙幕があれば多少とはいえ、我々の姿を隠す事が出来る筈だ」
矢矧「恐らく敵はレーダー射撃をしているわ。煙幕の有無で殆ど差は出ないわ。それに今は敵の空襲の中。煙幕を焚くことによって、私達は敵の艦載機の姿を視認する事が難しくなる。結局、煙幕を焚くメリットがあるどころか、デメリットの方が多くなるわ」
磯風「確かにそうだな。すまない」
矢矧「気にする必要は無いわ。それよりも、敵の砲撃を躱す事に集中して」
磯風「ああ」
矢矧「ん? 大和から入電……? 一体何が……なっ!?」
野分「何かありましたか?」
矢矧「作戦中止……全艦撤退せよですって……!?」
野分「えっ!?」
磯風「しかし、筑摩や鈴谷は艦隊に着いて行くだけの速度が出ないぞ」
矢矧「何にせよ、この艦隊を近づけさせる訳には行かないわ。何としても時間を稼ぐわよ」
野分「どうやってですか?」
矢矧「幸いなことに、酸素魚雷の射程内に敵がいるわ。だから、魚雷をここから撃って敵の針路を変更させる。当たれば御の字、かわされても、敵の行き足を止める事は出来る。全艦雷撃準備。取り舵一杯! 敵に側面を見せろ!」
野分「準備完了です!」
矢矧「出来る限り広範囲に撃ち込む! 角度は7度! 雷撃開始!」バシュッ
矢矧「舵はそのまま指示があるまで固定! 離脱するわよ!!」
全員「了解!」
…………。
長門「大和」
大和「はい」
長門「本当にいいのか? 本当に救難信号を見捨てるというのか?」
大和「このままだと我々は全滅してしまいます……ここで全滅してしまえば、今後日本を護る事が出来る者は居なくなってしまいますから……」
長門「そう、か……」
大和「恥ずかしいですね。助けに行かねば仁義に反するなどと大事を言ったこの口で全滅させない為に逃げると言っているのですから」
長門「そうだな。だが、それが責任を背負った者の性だ」
大和「長門……弱音を吐く事を少しの間だけ許して下さい」
長門「今、私は何も聞いていない。好きにするがいいさ」
大和「…………口惜しいです……!! 私が、連合艦隊旗艦たる私が判断を見誤った所為で沢山の仲間が海の泡と消えて逝しました!! なのに私は何も出来なかった! 何も出来ずにのうのうと生きているんです! 世界最強と言われた主砲を持って、それに耐え得る装甲で身を固めていたって何も出来なかったんです! どうして……どうして私はこんなにも無力なの……!!」
…………
長門「気が治ったか?」
大和「多少は……申し訳ありません。お見苦しいところをお見せしました」
長門「私は何も聞いていないぞ」
大和「そうでしたね。ありがとうございます」
長門「先程入った電文によると、矢矧や利根達も退却の準備が整ったようだ」
大和「しかし……」
長門「筑摩が厳しいな。筑摩が艦隊に着いてくるのは難しいだろう」
大和「そうしましたら、矢矧の下にいる駆逐艦に護衛をして貰いましょう」
長門「そうだな」
大和「矢矧、聞こえますか?」
矢矧「聞こえるわ」
大和「今から矢矧の下に所属する駆逐艦にお願いしたい事があるの」
矢矧「内容を聞かせて」
大和「筑摩に護衛をつけたい。だから、駆逐艦をそれぞれ一隻ずつ出してくれない?」
矢矧「その様な頼み事なら引き受けるわ」
大和「ありがとう」
矢矧「雪風。貴女はすぐに筑摩の護衛に向かって。一刻を争うかもしれないから時間に余裕が無いわ。いいわね?」
雪風「分かりました」
野分「あ、待って下さい!」
矢矧「どうしたの?」
野分「筑摩さんなら私の方が近い場所にいます。宜しければ、私が行きましょうか?」
矢矧「分かった。じゃあ、野分は筑摩のところへ向かって」
野分「了解です!」
矢矧「頼んだわよ! じゃあ、また後ほど落ちあいましょう」
雪風「敵編隊襲来!!」
矢矧「またなの!?」
磯風「私も捉えた! まずい、こっちへ向かって来てる!!」
矢矧「利根や大和にも伝えて! 輪形陣形成急いで! 野分、敵機がまた来てる! 気を付けなさい!!」
…………。
矢矧「最大戦速を維持して! 左舷から魚雷が来てるわよ! 動きを予測して回避して!!」
利根「矢矧!!」
矢矧「何!?」
利根「鈴谷がやられた!!」
矢矧「鈴谷まで!?」
利根「敵の爆弾が鈴谷の魚雷に誘爆したのじゃ! 鈴谷は航行不能。意識も落ちたままじゃ!」
矢矧「今雪風を向かわせるわ! もう少し耐えて!」
「ズドーン!!」
矢矧「どうしたの!? それに今の火柱は何!?」
利根「鈴谷っ!! 鈴谷! しっかりせい!!」
矢矧「利根! 鈴谷がどうしたの!!? 利根!!」
利根「鈴谷の左舷におった魚雷と高角砲に誘爆しおった!! そのせいで鈴谷の……」
矢矧「鈴谷の何!?」
利根「左半分が吹っ飛んだ……」
矢矧「嘘……」
利根「再起不能じゃ……まだ息はあるが、時間の問題じゃな……これ以上鈴谷を苦しめとうない。吾輩が介錯する。だから雪風は呼ばなくていいぞ」
矢矧「分かったわ……」
利根「すまないのう鈴谷……吾輩が不甲斐ないばかりに……またあの世で逢おうぞ」
「ズドーン!! ブツッ」
矢矧「くそっ!」
雪風「敵機が暫く途切れます。また来る可能性はありますが、暫くは大丈夫でしょう」
矢矧「分かったわ……」
浦風「野分と筑摩さんが心配じゃねえ……」
磯風「そうだな……」
………………………………。
今日はここまでです
また来ますね!
野分「筑摩さん! 右舷より敵爆撃機が接近中です!!」ズダダダダ
筑摩「了解!」ズダダ ガキンッ
野分「どうしたんですか!? 弾幕を張らないとやられてしまいます!」ズダダダダ
筑摩「弾切れね……」
野分「えっ!? そんな……!」
筑摩「野分ちゃん。命令を下します」
野分「嫌です! 絶対に離れません!!」
筑摩「ずっと言ってきたけど、野分ちゃんはここに居るべきではないの。今すぐに一人でこの海域から出て行きなさい」
野分「そんなこと出来ません! 逃げるなら筑摩さんと一緒じゃないと嫌です!」
筑摩「私は速度が出ないわ。このままだと野分ちゃんの足を引っ張る事にしかならないわ」
野分「それでも、仲間を見棄てるなんて出来ません! もう仲間を助けられないのは嫌なんです! 私は姉妹艦で、一番の友達だった舞風すら助ける事が出来なかったんですよ!?」
筑摩「絶対に譲る事は出来ないの?」
野分「はい! 絶対に私は筑摩さんと一緒に本国へ帰ります!!」
筑摩「……そう」ガチャッ
野分「筑摩……さん?」
筑摩「残念ね……」ズドーン!!
バッシャーン!!
野分「うわっ!! 筑摩さん!? どうして!!?」
筑摩「1分経っても立ち退かないのなら次は当てるわよ?」
野分「そんな! 私は筑摩の事を助けようと!」
筑摩「貴女が動かなければ、私はまた余計な弾を使わなければならないわ。もう数える程しか無い主砲の弾をね。貴女が此処から動かなければ動かない程、私は自分の命を繋ぐ為の弾薬を使う事になるの。つまり……」
野分「嫌……」
筑摩「私は貴女の所為で死ぬ事になるのよ。貴女が動かなければ私は死ぬ瞬間も死んだ後も……陽炎型駆逐艦野分を恨み続けるわ。そう、いつまでもね」
野分「どうして……そんな……何でこんな……」
筑摩「あと10秒ね。もしも私を殺したいのならば残りなさい」
野分「ごめんなさい……ごめんなさい筑摩さん!! ごめんなさい! ごめんなさい!! 本当にごめんなさい!!」クルッ
筑摩「行ってくれるのね?」
野分「ごめんなさい!! 私が無力でごめんなさい!! 私が……私が!!」
筑摩「野分ちゃん、ありがとう」
野分「うぅ…………筑摩さん……!!」ポロポロ
筑摩「…………行ったわね……さて…………演習弾でまた戦う事になるのね」ガチャッ
筑摩「筑摩の最期の戦いを始めようかしら」
……………………………………。
翌日 ミンドロ島沖
磯風「筑摩や野分はまだ帰って来ないのか」
矢矧「連絡は途絶えたままよ。多分まだあの子は危険な海域を通過中で、自分達の位置を敵に知らせない為に連絡を入れないのだと思うわ」
浦風「そうじゃのぉ。筑摩さんやあの子がそう簡単に沈むわけ無い」
矢矧「私達に出来る事は、あの二人が帰って来るのを待つ事だけよ」
磯風「そうだな。すまなかった、このような不安を煽る様な事を言ってしまって」
浦風「そがぁなこと、気にせんでええよ」
磯風「ああ」
雪風「もう、待つ必要はありませんよ」
磯風「何だと?」
浦風「雪風!!」
雪風「野分は生きているか死んでいるのか分かりません。それなのに、帰ってくるかもしれないなんていう未確定な願望に振り回されるのは間違ってます」
浦風「雪風……自分が今何を言ぅとるんか分かっとるん?」
雪風「はい。私は艦隊が取るべき行動を述べたまでです」
浦風「雪風! あんた、最低じゃ!!」バチン!
雪風「…………」
浦風「うちは、雪風が心に負ぉた傷を癒さにゃぁいけんゆぅて思うとったけぇあんたの事を助けようゆぅて見守って来た! おおかたの事は見逃すつもりじゃったんで! じゃが、この戦いでの言動はあまりに酷い! 仲間の命を何じゃゆぅて思うとるん!? 雪風は大切な仲間の死を見すぎて死に対する感情が欠落しとる! でも、それじゃあいけんのんで! 例えどがぁに大切な仲間を喪って傷付いて心がめげそうでも仲間を見棄てるなんか以ての外じゃ!! 目を覚ますんじゃ雪風!! 傷付く事を恐れるな! 大切ななぁ今なんじゃけぇ!!」
雪風「うるさい!!」バチン
浦風「うぐっ!!」
磯風「おい雪風!!」
雪風「私を助けようと思って来た……? 私が傷付いてる……? 勝手に私の心を決めつけるな!! 私の心を決めるのは私だ!! それに私を助けようと思った? そんな自分勝手で自己満足な偽善はやめてよ!! そんなの私は望んでない!!」
浦風「この分からず屋!! どうしてあんたはそがぁに意固地なんじゃ!! 今の雪風は絶対に間違っとる!!」バキッ!
磯風「矢矧! 雪風を抑えてくれ!! 私は浦風を抑える! 浦風落ち着け! 落ち着くんだ!!」グイッ
矢矧「雪風、止めなさい!」
雪風「離せ! 離せ!! 私はこいつを殴らないと!!」
矢矧「艦隊の規律を乱すな雪風! これは旗艦命令よ! もう一度言うわ。雪風、止めなさい」
雪風「くっ………………うぅ……うぅぅ……!!」
矢矧「二人共、本国に戻ったら覚えてなさい」
浦風「はい……」
矢矧「雪風」
雪風「はい」
矢矧「私は今から大和に意見具申するわ」
磯風「雪風と浦風に関してか?」
矢矧「そうじゃないわ。雪風の言う通りいつまでも野分と筑摩の合流を待つのは危険だから、出航の時間を話し合うわ」
磯風「そうか……」
矢矧「じゃあ、ちょっと待ってて」
矢矧「大和、矢矧よ」
大和「矢矧……」
矢矧「意見具申をしていいかしら?」
大和「そろそろ移動しようってことね?」
矢矧「ええ。もう陽が昇って相当時間が経つわ。敵も既に偵察機や追撃隊を出していても可笑しく無い。これ以上は危険よ」
大和「分かっていたわ……あの二人が戻って来ることを信じたかったとは言え、留まり過ぎたわね……」
矢矧「正午になったら出航しましょう」
大和「分かりました。皆に伝えます」
矢矧「よろしく」
大和「ちょっと待って下さい。榛名が何か……」
大和「もうこれ以上は待てない? 今すぐ出航? 確かにずっと反対をされていましたが、あと少しだけ……」
矢矧「大和? どうしたの?」
大和「金剛まで……分かりました。そこまで言うのでしたら出航準備を進めましょう」
矢矧「大和、一体何を話しているの?」
大和「すぐに出航します」
矢矧「金剛と榛名に何か言われたのね?」
大和「ええ……すみませんが、出航準備を急いで下さい」
矢矧「了解」
矢矧「第十戦隊全艦出航準備」
浦風「了解……じゃ」
雪風「了解」
磯風「ああ」
「敵しゅーう!! 敵の航空機が接近!! 防空戦闘急げ!! 敵しゅーう!!」
ヒューン ズドーン!!
矢矧「敵襲!? 爆撃!? 全艦出航準備が出来次第すぐに出航して防空戦闘を開始! このままだと恰好の的になるわ!!」
雪風「出ます」ザッ
磯風「私も出よう」ザッ
矢矧「早い!? あの子達、何でこんな早く動けるの!? まさかこのままタイミングを考慮して……」
浦風「あとちぃと……あとちぃと」
矢矧「浦風、急いで! って、大和から連絡!? 大和! さっきの爆発は一体……能代!? 分かったわ。すぐに動く」
矢矧「浦風急ぎなさい! 能代がやられたわ ! だから早く!」
浦風「なっ!? 能代さんが!?」
矢矧「そうよ! そんな事よりも早く出航準備を!!」
浦風「完了じゃ!」
矢矧「行くわよ! 抜錨!! 全速力で当海域より撤退するわ! それと防空戦闘準備!」
浦風「了解!!」
矢矧「両舷一杯! 機関が壊れそうでも今は脱出が優先よ!」
浦風「両舷一杯!!」
………………………………。
今日は終わりです。
また来ますね
>>400
訂正
矢矧「早い!? あの子達、何でこんな早く動けるの!? まさかこのままタイミングを考慮して……」
↓
矢矧「早い!? あの子達、何でこんな早く動けるの!? まさか緊急事態を考慮して缶を……」
ブルネイ
浜風「磯風! 浦風! 雪風!」
浦風「浜風!」
磯風「浜風か。久しく見ていなかった気がするな」
浜風「それ程離れていた訳では無いはずですが」
磯風「まあ、な」
浦風「浜風はあの後どうしたん?」
浜風「マニラに一旦退却してからここ、ブルネイに移動しました」
浦風「無事でげにえかったよ」
浜風「私も浦風や磯風、雪風と会う事が出来てよかったです。ですが、野分や不知火姉さんの姿が見当たりませんね……やはり……」
浦風「不知火姉さんは分からんが、野分とは連絡が取れ無いんじゃ。多分……もう……」
浜風「そうですか……」
雪風「………………」
磯風「すまない」
浦風「あれ? 大和さん?」
磯風「大和か」
大和「お疲れ様です。十七駆逐隊、揃っているわね」
浜風「揃っていますが、どうしたんですか大和さん?」
大和「貴女達に今後の事を話そうかと思います」
浜風「今後の事とは?」
大和「私達戦艦の大半と、第十戦隊は一番初めにこの泊地より出発します」
浜風「すぐにですか?」
大和「いいえ、まだ時間はあります。急ぎたいのは山々なのですが、今の状態ですと日本に辿り着く前に力尽きてしまうでしょう。なので、あくまでも短期間ですが、暫くはブルネイに留まります」
浜風「分かりました」
大和「それまではゆっくりは出来ないかもしれませんが、出来る限り戦いの疲れを癒して下さい。では、私は用事があるので失礼しますね」スタスタ
浦風「ウチらもじゃが、大和さん疲れ切っとるね」
浜風「それはしょうが無いですね。全ての責任を背負ってここまで指揮をしてきたのですから」
磯風「仲間を見棄てる決断を何度も下したのだからな」
浜風「……この艦隊の旗艦ですからね…………」
磯風「辛いだろうな」
浦風「あまり気が滅入る話をしてもしょうがないよ」
浜風「そうですね」
浦風「そーゆやぁ高雄さんや長波、朝霜がブルネイにおるはずじゃけぇ会いに行かん?」
浜風「長波や朝霜ならば大丈夫ですが、まだ高雄さんは意識が戻らないままなんです。更に、怪我があまりにも酷いのであまり行かない方が良いです」
浦風「そうなんだ……」
浜風「それより、三人ともお風呂に入ったらどうですか?」
浦風「そうじゃね」
磯風「雪風と浜風はどうするんだ?」
浜風「私は大丈夫です」
雪風「私は後にします」スタスタ
浜風「雪風?」
磯風「ふぅ……」
浦風「…………」
浜風「何かあったのですか?」
磯風「まあ、色々とな」
浜風「教えて下さい」
磯風「言ってもいいのか?」
浦風「ウチから言うよ」
磯風「分かった」
浦風「あのな……」
…………。
浦風「……というわけなんじゃ」
浜風「分かりました。ありがとうございます」
浦風「うん……」
浜風「私は雪風の様子を見て来るので、二人はお風呂に入って来て下さい」
磯風「ああ。そうする」
浦風「スマンのぉ……迷惑かけちゃって」
浜風「いえ。大丈夫です」スタスタ
浜風(雪風は何処に行ったのだろう……)
朝霜「よお浜風」
長波「どうしたんだ? 浮かない顔してるぞ」
浜風「長波と朝霜ですか」
長波「なんだよその反応は。あたし達じゃ不満か〜?」
浜風「いえ、そういう訳ではありません」
長波「そうか? まあ冗談はこれくらいでいいか。で、何かあったのか?」
浜風「雪風を見ませんでしたか?」
長波「雪風? ああ、あいつなら宿舎の方に歩いて行ったぞ」
浜風「宿舎ですか?」
長波「ああ。何かあったのか?」
浜風「いえ、特に何かがあった訳ではないのですが、話しておきたい事があったので」
長波「ふーん。ま、頑張れよ」
浜風「はい。ありがとうございます」
長波「おう! んじゃ朝霜行こうぜ」
朝霜「そうだな! じゃあな浜風!」
浜風「はい」
…………。
高雄「…………」スウスウ
雪風「…………」
高雄「…………ぁ……ゃ……ぅ、ぃ」スウスウ
雪風「…………」
高雄「ぃゃ……行かな…………わ……も……」
雪風「…………っ」ガチャッ パタン
浜風「雪風」
雪風「……なんでしょうか」
浜風「高雄さんの病室……やはり気に病んでいるんですね」
雪風「いえ、そうではありません。艦隊の主力である高雄さんがどの様な状態なのかを確認したかっただけです」
浜風「…………」
雪風「では、私はもう行きますね」スタスタ
浜風「…………重症ですね」
雪風「…………」ピタッ
浜風「何でもありません。ただの独り言です」
雪風「そうですか」スタスタ
浜風「偽りの仮面……か」
浜風「雪風は自分自身を騙して心を護っている……私が何とかしないと……」
浜風「まずは雪風を一番よく知っている…………」
………………………………。
大和「八人とも揃いましたね」
矢矧「そうね」
大和「これより大和、長門、金剛。第十戦隊改め第二水雷戦隊の矢矧、雪風、浦風、磯風、浜風の艦隊で本国へ戻ります」
長門「ああ。榛名達はブルネイを頼むぞ。レイテなどから敵の航空隊が攻めて来るやもしれん」
榛名「はい……」
長門「どうした。元気が無いじゃないか」
榛名「そんな事は……」
金剛「大丈夫デス長門。ここは私に任せて下サイ」
長門「良いだろう」
金剛「榛名、後は頼みマスね」
榛名「金剛お姉様……」
長門「今生の別れになる訳ではないのだからそんな顔をするもんじゃない」
榛名「……そうですね…………」
金剛「大丈夫デスよ榛名。榛名は大丈夫デス」
榛名「榛名は……大丈夫ですか?」
金剛「Of course! 榛名は大丈夫デス!」
榛名「榛名は……大丈夫です……」
金剛「そうデス。それでこそ私の妹ネ!」
榛名「榛名は……大丈夫です」
金剛「強くなるんデスよ榛名」ナデナデ
榛名「金剛お姉様……」
金剛「行きまショウ大和」
大和「はい……全艦抜錨して下さい」
台湾沖
大和「本国まであともう一息です。対空警戒を忘れずにお願いします」
金剛「このままだと…………」
大和「どうかしましたか?」
金剛「そういえば……大和、ちょっと良いデスか?」
大和「はい。何でしょうか?」
金剛「あのデスね……言い難いのデスが……」
長門「何だ金剛。はっきりと話せ」
金剛「…………自然が呼んでるネ……」
大和「へ?」
長門「金剛……貴様……」
金剛「こればかりはしょうがないデスか! 出すなというのは無理な話デース!! ウ〜漏れてしまいそうデ〜ス!」
長門「大和……旗艦の判断に任せる」
大和「分かりました。急いで戻ってきて下さいね」
金剛「Thanks!! 助かるネ! 恥ずかしいので少し離れマスが、気にしないで先に行ってて下さいネ」
金剛「あとは…………浦風、聞こえマスか?」
浦風「金剛さん? 」
金剛「これから言う事を絶対に護って下サイ」
浦風「分かったが、何をか?」
金剛「今から浦風は、『絶対に沈まない。沈みたくない』と強く心に願うのデス」
浦風「金剛さん、何を言ぅとるんか!?」
金剛「もしかしたらそれで何かが変わるかもしれまセン。……約束ですよ、浦風?」
浦風「金剛さん、一体何をするつもりなんか!? 金剛さん!!」
金剛「私を自然が呼んでマス。心配しなくて大丈夫デスよ。今のは私の気まぐれデスから。恥ずかしいノデ通信切りマスね」ブッ
金剛「やれる事は全てやり切りましたね……あとは浦風が生きたいと願ってくれれば運命を覆す事が出来るかもしれませんから」
金剛「榛名……あとは頼みマス。比叡、霧島……私も逝くネ。自分の運命に最期まで抗う事が出来ない弱い姉でごめんなさい…」
金剛「私はもう運命に抗う強さは無いです。ただ、私の命で浦風を護る事が出来るのならば喜んで差し出します。多分それが私に出来る最期の事ですから………」
金剛「……カモン、シーライオン。私は逃げも隠れもしません。昔と同じ様に私を沈めなさい」
シュー
金剛「…………来ましたね……これで艦娘としての命も終わりですね……」
金剛「提督…………約束は護ってくれていますよね? 例え貴方が瑞鶴を愛していても私は貴方の側に居たいのです。その為ならば何処までもお供します。だから待っていて下さい提督…………」
「 」
金剛「!?」
金剛「あぁ…………提督、瑞鶴……ずっと待っていてくれたのですね……私も今そこに────」
磯風「どうした浦風!?」
浦風「金剛さんが!! 金剛さんが危険じ
ゃ!! 助けに!!」
浜風「浦風! 落ち着いて下さい!」
浦風「金剛さんを止めに行かんと!!」
矢矧「浦風、金剛から何を言われたの?」
浦風「絶対に生きたいゆぅて願いんさいってゆわれたのじゃ! 普通じゃったら絶対にこがぁな事はゆわんのに突然ゆわれたんじゃ!」
ズドーン!!
矢矧「爆発音!?」
磯風「矢矧! 大きな煙が上がってるぞ!!」
矢矧「まさか!!」サッ
矢矧「……金剛が……」
浜風「金剛さんが何ですか!?」
矢矧「沈んだ……今から行っても絶対に間に合わないわ……」
浦風「嘘じゃ! 嘘じゃ嘘じゃ!! どうして金剛さんが死なんにゃぁいけんの!? そがぁなん可笑しい!!」
雪風「矢矧さん。何もいないところで爆発したという事は敵の潜水艦の可能性が高いです。そして未だに潜水艦を探知出来ておりません。直ぐに海域を離脱しませんか?」
矢矧「大和! 金剛が沈んだわ!! 救助は間に合わない! そして、敵の潜水艦が潜んでいる可能性がかなり高いわ! 直ぐにこの海域から離脱しましょう!」
大和「了解! 全艦26ノットで海域を離脱! 敵の潜水艦と魚雷に厳重注意!! 行動開始して下さい!!」
浦風「金剛さん! 嫌じゃ!! 金剛さん!! 金剛さんを助けるんじゃ!!」
磯風「嘆くのは後だ!! 浜風! 浦風を引っ張れ!!」
浜風「了解!!」
矢矧「雪風は対潜警戒を重点的にやりなさい! 磯風は対潜警戒と対空警戒の両方を! 浜風は対潜警戒と対水上警戒! そして全艦爆雷の投下準備は完了させなさい!」
全員「了解!」
矢矧「もうこれ以上誰一人たりとも欠けずにで横須賀へ戻るわよ!」
………………………………
………………
……
今日はこれで終わりです!
長かったレイテ編はこれで終了です。
恐らく次かその次の投稿で安価を取ります。出来るならば明日にでも更新をかけて安価を取りたいと思っております。
宜しければ、安価参加希望者は今回だけは無言コメでもなんでもいいので反応を下さると助かります。前回からかなり間が空いてしまったので、今回の反応で最終確認とさせて頂きます。
では、余裕があればまた明日の夜に来ますね!
安価ヒント……浦風の生存
横須賀鎮守府
大和「艦隊帰投しました!」
響「やっと帰ってきたね……おかえり」
大和「お出迎えありがとうございます。伊勢や日向達は戻って来てませんか?」
響「帰って来たよ。ただ、帰って来てすぐに資源確保の為に遠征に出されたよ」
大和「え?」
長門「どういう事だ!? あの戦いから帰って来てすぐにだと!?」
大和「榛名さんから聞いた限りですが、新しい提督となられる方はその様な事をする筈がありません!」
響「大和さん、一つ聞いていいかい? 榛名さんが言ってた新しい司令官の階級は?」
大和「今まで私達を導いて下さった提督と同じく中将です」
響「……それは間違ってるよ」
大和「何ですって?」
響「新しい司令官は大将。その情報は間違ってる」
大和「どうして……一体何が……」
長門「中将はどうした! この長門が直接連絡を取らせてもらう!」
大将「それは無理な話だ」コツコツ
長門「……貴様は誰だ?」
大将「私はお前の提督だよ。この横須賀鎮守府の提督である大将だ」ニヤッ
長門「中将はどうした? 我々は中将がここに着任すると聞いている」
大将「ああ、中将か。確かに中将は死んだ前提督の代わりに着任予定だった。だが……」
長門「勿体振るな。早く吐け」
大将「不幸な事に突然暴漢に襲われ死亡したよ。大方、中将は怨みを買う様な事をし続けていたのだろうな。因果応報とでも言っておこうか」
長門「…………貴様……何を企んでいる」
大将「企んでいるだと? ほう、私ほど『国』の為に尽くしている人間はいないと自負しているのだがな。分かって貰えず残念だ」
長門「性根が腐りきってる! 貴様はそれでも日本男児か!? 大和魂の欠片も持ち合わせていないのか!?」
大将「これは僥倖。私は大和魂やら日本男児やら侍魂等といった物は心底憎いのだよ。私はその様な馬鹿げた恥ずべき物を持ち合わせていない様でとても嬉しいよ」
長門「貴様っ!!」
大将「上官に手を出すのか? 私に少しでも触れてみろ。すぐさまお前をこの場で解体するぞ」
長門「卑怯者め……!!」
大将「おい、鉄パイプを持ってこい」
部下「しかし、その様な物を使ったら命が……」
大将「艦娘にはこれくらいではないと効かない。むしろこれでも優しい方だ。分かったのならば早く持ってこい!」
部下「はっ!」スッ
大将「御苦労。さて、生意気なこの尼には軍隊という物を思い知らさねばならないな……なぁっ!」バキッ!
長門「グッ……」キッ
大将「生意気な目だ。気に入らない!!」バキッ! グシャッ!
長門「ウグッ!」
大将「まだまだ物足りないなぁ! ほら立て」グイッ
長門「この……下衆が……」
大将「オラッ! その顔が気に入らない! フッ! その顔を潰してやろう!!」バキッ! バキッ! バキッ! グシャ!
大和「やめて下さい!! 長門はこの戦いで傷付いています! そのような事をしたら死んでしまいます!」
大将「これくらいで死ぬのならば私には不要だ! 死ぬがいい!! 死ねっ!!」グシャ!
長門「ガッ!!」バタン
大将「まだ息があるな? ほら、立て! さもなければ、そうだな……そこの青髪を同じ目に合わせようか」
長門「ぅ……この……!!」
大将「そんなにこの餓鬼が大切か? オラッ!!」グシャ! バキッ!
長門「うぁぁぁ!!」
大将「次を耐えたら今回は見逃してやろう。おい、青髪と茶髪。こいつを両方から抑えて動かないようにしろ。従わないのならばこいつを殺す」
浦風「そんな……」
雪風「…………はい」グイッ
浦風「長門さん……」
長門「やれ……」
浦風「ごめんなさい長門さん!! ごめんなさい!」グイッ
雪風「…………」
大将「死ねっ!!」バキンッ
グシャッ
長門「」
浦風「長門さん!!? 長門さん!!」
矢矧「長門!!」
大将「私に逆らったらこうなると分かったな? お前達で掃除をしておけ。汚れが残っていたらお前達全員同じ目に合わせよう。これは処分しておけ」
部下「はっ!」
大将「言い忘れていた。今後お前達はこの鎮守府より外に出る事を禁じる。命に背いた者は殺す。掃除が済み次第すぐに各自の部屋に戻れ」コツコツ
浦風「長門さん、死んじゃ嫌じゃ! 嫌なんじゃ……」ポロポロ
大和「長門の容態は」
矢矧「息はあるけど全身骨折してるわ。顔も骨折で済んでいればマシ……一刻を争うわ」
大和「長門をすぐに医務室へ連れて行って下さい。矢矧以外はここの掃除をすぐに済まして下さい。もうこれ以上被害を増やす訳には行きません」
矢矧「了解! 長門、あと少し頑張って」
大和「こちらは急いで片付けましょう」
磯風「……」ブツブツ
浜風「磯風?」
磯風「殺す……あいつだけは殺す……絶対に許せん」
浜風「耐えて下さい。磯風まで傷付くのは耐えられません!」
磯風「ならば先に殺してしまえば……!」
浜風「私もその気持ちは良く分かります! ですがそのような事をしたら貴女も無事ではすみません!」
磯風「この磯風の命で他の命を救えるのならば進んで受け入れよう!」
浜風「落ち着いて下さい! 今の磯風は冷静さを失っています!お願いですから落ち着いて下さい!」
磯風「無理だ! 今なら他の犠牲者は出ない! 今しか無いのだ!」
浜風「雪風も手伝って!」
雪風「磯風、上官の命令は絶対です。そして私達兵器は主に逆らってはなりません。間違ってるのは貴女です。不良品は長門さんの様に処分されます」
磯風「雪風……お前……」
浜風「涙が……」
雪風「…………」
磯風「どうしてお前はそうなんだ……どうしてお前は……」グイッ
雪風「…………」
磯風「雪風……本当に私は間違っているのか? あの様な仕打ちをされても許さねばならないのか? 目を瞑らねばならないのか? 私は絶対に認めない。お前の考えを否定はしなく無かった。だが、私はお前の言ったことが兵器としての在り方なのならば、私は否定せねばならない。私は兵器になど絶対にならない。それに……お前は自分でも気付いている筈だ。自分が間違っているのだと」
雪風「いえ、その様な事はありません。艦娘は兵器であるべきです。心を持ってはいけないのです」
磯風「ならばその涙は何だ。それこそ感情の証なのではないか?」
雪風「……そんなわけありません。感情などいらないのに……」
磯風「…………すまん浜風。取り乱した」
浜風「いえ……しかし、浦風が……」
浦風「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
磯風「あれは…………まずいな……」
浜風「下手をしたら雪風の様になってしまうかもしれません」
磯風「浜風。お前が浦風の側にいてやるがいい。私と大和で掃除を終わらせる」
浜風「分かりました……」
磯風「すまない。お前が一番適任とはいえ、負担をかけてしまうな」
浜風「いえ」
磯風「頼んだぞ」
………………………………。
ガチャッ
磯風「浜風、艦隊が帰投したそうだぞ……礼号作戦とやらに行ってた霞や大淀達だ」
浜風「そう、ですか……ゴホッ」
磯風「大丈夫か……?」
浜風「大丈夫です……昨日殴られた腹が少し痛むだけです……」
磯風「やはり……あの時殺しておけば……」
浜風「私はこの生活よりも磯風が殺される世界の方が嫌です……だから、これでいいんです……」
磯風「しかし、浦風が……」
浦風「………………」
浜風「どの道あれから壊れてしまっていたでしょう……むしろ、暴力されても何も感じていない様ですので……現状は関係無いでしょう」
磯風「何故だ……何故こんな事に……」
浜風「雪風もずっと部屋に戻って来ません……もう、十七駆逐隊は崩壊ですね……」
コンコン
大和「磯風、浜風、雪風、浦風4名に召集がかかってます。……司令室に来て下さい」
浜風「分かりました……しかし、雪風はここにはおりません。何処にいるかも……」
大和「分かりました。私が雪風を探しておきます。3人はすぐに向かって下さい」
磯風「浦風、行くぞ。立ってくれ」グイッ
浦風「…………」
磯風「自分で歩くんだ。ほら、しっかりしてくれ」
浜風「浦風……しっかりして下さい」
浦風「…………」
…………。
司令室
大和「お待たせしました」
大将「よく来てくれたな」
大和「私達に何の用ですか?」
大将「今度はお前達の出番だ。さっさと出撃の仕度しろ。以上だ」
霞「今度は……ですって!? あんた、この前の礼号作戦とやらに何の意味があったのか説明すらしなかったわよね!? このカス! あんたの言う事に従ってたまるか! あんたみたいなカスの所為で清霜が沈んだのよ!? 清霜が死んだことに意味はあったの!? 答えなさいよこのゴミ屑!」
大将「生意気な口だ」
大和「お待ち下さい。作戦内容等何も伝えられないのはどう考えても貴方がおかしいです」
大将「それくらい自分で考えるのがお前の仕事だろう!」バシンッ!
大和「…………軍法会議にかけられたいのですか?」
大将「フハハハハハ、軍法会議だと? 馬鹿馬鹿しい。日本軍など、もはや私の操り人形。実権は全て私が握っているのだよ? 私がルールの今、軍法会議など糞の役にも立たんよ。それに、反乱分子はもう全て消し去ったからな。私に刃向かう者もいない」
大和「…………貴方……いえ、お前が提督を殺したんですね」
大将「はて、何の事やら。あの愚か者は自ら死んだ筈だったのだがな」
大和「許さない……! 私は絶対にお前を許さない!」
大将「反乱するつもりか? ならばいいだろう。呪われた運命に踊らされて来るがいい。ここにいる大和、矢矧、雪風、磯風、浦風、浜風、霞に加え、初霜と響、朝霜を加えて沖縄へ向かえ。作戦名は天一号作戦と命名する」ニヤリ
大和「沖縄に向かう理由は?」
大将「貴様らが知る必要は無い。すぐに行け」
霞「絶対にいつか殺す……」
大将「生きて帰ってから言うんだな。死に行く者達よ」
大和「くっ……」バタンッ
…………。
港
大和「皆さん、よく聞いて下さい。これから私達は無駄死にする為に沖縄へ向かう事になります。ですが、私は貴女達が死ぬ事を良しとはしません。なので、沖に出たら全員好きな場所へ行って下さい。もう二度とこの横須賀へ戻って来てはいけません。辿り着いた地でいつまでかは分かりかねますが、生きて下さい」
矢矧「大和、貴女はどうするの?」
大和「私があいつを止める事が出来なかった故にこの自体を招いてしまいました。それにレイテで私は沢山の仲間を見捨てて来ました。私がこの運命から逃れることはあってはなりません。私が一人でこの物資を沖縄の方々へ届けに行きます」
矢矧「なら、私も付き合うわ。大和も一人で逝くのは寂しいわよね? 私も一緒に逝ってあげる」
大和「ですが……」
矢矧「それに、私も二水戦の旗艦としてケジメは付けたいもの」
大和「矢矧……」
矢矧「貴女達は? 今回ばかりは全員の意思を尊重するわ。例え逃げるとしても絶対に恨まないし、むしろ随伴しなければ良いと思ってる」
響「私は、もう置いて行かれたくない」
朝霜「アタイが逃げる訳ネェだろ!」
浜風「浜風もお供します」
磯風「私もだ。逃げるつもりなどない」
雪風「命令ですから」
霞「馬鹿ばっかね……私も付き合うわよ」
初霜「…………最期まで見届けます」
浦風「…………」
矢矧「浦風?」
浦風「…………ウチは……死にたい……」
矢矧「浦風……」
浦風「ウチの所為で……ウチの所為で……」ガタガタ
浜風「恐らく浦風は私達が居なくなったらさらに壊れてしまいます……出来る限り安全な場所に居させれば……」
矢矧「離れれば結局心が死ぬか……分かったわ。出来る限り同伴して貰います」
浜風「すみません……」
朝霜「なあ、みんな。最期かもしれねえし、大和みたいな菊水のマークをアタイ達の煙突に描かねえか?」
大和「菊水? ああ、これですか」
朝霜「そうそう! 決死の証としてさ! どうよ?」
霞「いいんじゃない?」
響「賛成」
磯風「いいんじゃないか」
浜風「いいですよ」
初霜「…………やはりそうなるのね……」
朝霜「なんだ? 嫌なのか?」
初霜「いえ、賛成です」
朝霜「あとは浦風は……しょうがないとして、雪風は?」
【安価】
菊水を煙突に
1.描く
2.描かない
安価方法
明日、8/3(月)の22:00以降の解答で先に3票取った方のルートに分岐します。
・解答方法は番号でも内容でも大丈夫ですが、その他の番号や内容の場合は対象外です。
・22:00より前の解答は対象外です。あくまでも22:00の0秒以降が対象になります。
・同じIDがあった場合、最初の解答以外は対象外になります。(出来れば飛行機でのID替え等はお控え下さい)
この分岐で雪風にとってハッピーエンドになるかバッドエンドになるかが決まります。
「今回の分岐で選ばれなかった方の物語」に関しましてはアナザーストーリーとして書くつもりはございませんので、ご了承願います。
ちなみにこのエピソードに関しては、wikiのとある駆逐艦のページに載っておりました。多少は参考になるかと思います。
では、また明日!
いつもありがとうございます!
安価に関しては、出来る限り沢山の方に参加して頂きたいので、明日の22:00丁度から安価を取ります。宜しければ、また明日御参加頂けますと幸いです!
安価取ります
私より前に投稿している人は22時を越えてるので対象になります。
安価が揃い次第執筆を始めます
すみません。締め切りです
1番のルートへ向かいます。2番を選んで下さった方、すみません……
今から1時間以内にある程度書けたら今日中に投稿します。無理だった場合はまた後日で……
また来ますね!
雪風「いいですよ」
朝霜「よし! なら、一人だけ省くのは良くねぇから浦風のにも描こう! これで全員お揃いだな!」
浦風「…………」
矢矧「大和、いいのかしら?」
大和「はい。これくらいならば」
矢矧「そう」
響「いいな……みんなでこうやって何かをするのは……」
初霜「はい……」
霞「私のは描けたわ……って、朝霜。あんた何描いてるのよ!」
朝霜「何って菊水の……」
霞「信じられない! そんなんじゃないわよ!! ほら、貸しなさい!」
朝霜「おぉっ! ありがたい!」
霞「絵のセンス皆無ね。それでいてよくこんな事言い始めたわね! 出来たわよ」
朝霜「凄え!! 上手いじゃねえか!」
霞「ふん! こんなの当たり前よ! 浦風のにも描いておくわよ」
浦風「…………」
霞「…………よし」
浦風「…………」
霞「浦風……辛かったらいつでも離脱しなさいよ。それだけは心に留めておいて……」ボソッ
浦風「…………」
霞「他の子で描けない子はいるの? こんなのに時間かけるのは勿体無いから私に貸しなさい!」
磯風「では頼んだ」
霞「あんた……ほら、出来たわよ」
磯風「助かった。感謝する」
霞「もういないわね?」
大淀「ちょっと待って下さい!」
矢矧「大淀!? どうしたの?」
大淀「良かった……間に合った……雪風、これを」スッ
雪風「これは?」
大淀「天津風からの手紙です。読んで下さい」
雪風「っ!?」
大淀「大和、まだ大丈夫ですか?」
大和「はい」
大淀「ならば今読んであげて下さい。今しか読む事が出来ないかもしれないのですから」
雪風「私は……」
大淀「読んで下さい」
雪風「……分かりました」
カサッ
拝啓 雪風様
桜前線の待ち遠しい今日この頃、お元気でお過ごしですか。今、私が滞在しているシンガポールは日本よりも暑く、これから段々と過ごし辛い時期へと移り変わって行くところです。私が日本に戻る頃には桜が丁度満開になっているのかもしれませんね。その時が楽しみです。
少々前置きが過ぎましたね。雪風に報告したい事があります。ようやく私の艤装の修理が完了しました。貴女と離れ離れになって永い永い時間が過ぎた様な気がしますが、実際にはそれ程離れていなかったりするみたいです。時間って不思議なものね……
いけない、また話が脱線してしまったわ。あと少ししたら私は横須賀に戻ります。もしかしたら、この手紙が届く頃には出発してるかもしれません。この手紙を雪風が読む前に私が横須賀に戻ってしまったらどうしましょう。ううん、ちゃんとそれまでに着いている筈ね。大丈夫。
雪風にお願いがあります。私が横須賀の港に着いたら一番に雪風が私の事を迎えて下さい。私は最初は貴女に言いたいの、「ただいま」って。私はずっと雪風に逢いたかったんだもん。ずっと離れ離れなんて辛かった……
離れている間、雪風に色々なことがあったと思います。そして、私にも積もる話はいっぱいあります。私が帰ったら沢山沢山お話ししましょう。
じゃあ、続きは横須賀でね。再会の時を心より楽しみにしてます。
敬具
天津風
雪風「天津……風……」ポロポロ
浜風「良かったですね、雪風」
雪風「私は……私は……」
磯風「また雪風と天津風が十六駆逐を結成するのか、十七駆逐に天津風が加わるのかは分からんが、良かったな」
雪風「うぁぁ……あまつ、かぜ……! あまつかぜぇ!!」ポロポロ
矢矧「大淀、ありがとう。感謝するわ」
大淀「いえ、私はただこれを持ってきただけですから」
矢矧「それでもよ。でも、もう行かなければならないわ……大和」
大和「みなさん、行きましょう……沖縄へ……」
………………………………。
今日はこれで終わりです
また来ますね!
響「初霜、顔色が良くないよ。何かあったの?」
初霜「響さん」
響「なんだい?」
初霜「……そろそろなんです」
響「そろそろ……ああ、確か朝霧が……」
初霜「はい……機関の故障を起こして艦隊から落伍します」
響「そういう事か……大体予想は出来たけど、初霜は何に迷っているのかな?」
初霜「本当ならば私は命をかけて他のみんなを救いたい。ですが……」
響「今の鎮守府の状態、かな?」
初霜「そうです。響さんは今の鎮守府はどう思いますか?」
響「……最悪だね」
初霜「私も同感です。大将やその部下は何かある度、いえ……何もなくとも私達に暴力を振るいます。そして、多くの方々が奴等に無理矢理犯されました。ずっと気丈に振舞っている大和さんや矢矧さんも犯されたと聞きます。今やあの場所は地獄です。あの惨劇を知っている人ならば、誰一人としてあの場所に帰りたいと願う方はいないでしょう」
響「そうだね」
初霜「果たして生きてあの場所に帰る事が『幸せ』なのでしょうか? それともここで死んであの地獄に戻らずに済むことが『幸せ』なのでしょうか? 私には分からないんです」
響「難しいね……生きるという事を幸せと定義する人がいる。その一方で苦しみから逃れる事を幸せと定義する人もいる」
初霜「響さんはどう思いますか? 生き残ってでもあの場所に帰りたいですか? あの苦しみから解放される為に死にたいですか?」
響「初霜はどっちがいい?」
初霜「私は…………分かりません……」
響「そうか……初霜には悪いけど、私はそのどちらでもないかな」
初霜「どういうことですか?」
響「そうだね……私は生きなければならないんだ。私が死んだら暁や雷、電がここに居たという証が消えてしまうかもしれない。彼女達を語り継ぎ他者の中に残す人が居なくなるかもしれない。私は一人はもう嫌だ。みんなの後を追いたい。だけど、それよりも彼女達の記憶がこの世から抹消されるのはもっと嫌なんだ。だから私は沈む訳にはいかないんだ」
初霜「響さんは他人の為に沈みたくないってことですか」
響「うん。例えその先が地獄でも」
初霜「ありがとうございます。ならば私はみんなを護った方が……」
響「ちょっと待ってくれ。あくまでも今のは私だけの考えだよ。他の人が皆そうとは限らない。ここにいる全員が日常的に理不尽な暴力に晒されて、更に強姦される毎日に耐えれるとは到底考えられない。あそこでは心を休ませる事が出来る筈がない」
初霜「では、私はどうすれば……」
響「どっちを選んでもそれはエゴの押し付け以外の何物でもないよ。仲間を護りたい、助けたいという気持ちは分かる。だけど、それを望むか望まないかは人それぞれなんだ」
初霜「私には何も出来ないの……?」
響「選択には覚悟が必要だ。例え助けた相手から怨まれ、嫌われ、蔑さまれてでも後悔しないと思う事が出来たのならば、その選択に則ればいいと思うよ」
初霜「分かりました……ありがとうございます響さん」
響「ううん。私は初霜の悩みを解決させる事が出来ないどころか、もっと混乱させた。申し訳ない」
初霜「いえ、本当にありがとうございました。現時点では分かりませんが、私は後ほど後悔しないで済むように、やりたいようにやってみようと思います。例えそれが自己満足だとしても」
響「うん。それがいいと思う」
………………。
朝霜「あ? あれ!? なんだよこれ!?」
初霜「!!」
響「これか……」
大和「どうかしましたか?」
朝霜「まさかこんなところでガタが来るなんてね……流石に無理し過ぎたか……」
矢矧「何があったの?」
朝霜「機関が故障した。これだと精々10ノット程度しか出せない」
霞「朝霜……あんた!」
朝霜「あたいの事は置いていってくれや。なあに、ちゃんと後ろから付いて行くから安心してくれよ」
浦風「…………」
朝霜「みんなすまねえ。あたいの事は気にしないで行ってくれよ。頼むからさ!」
大和「朝霜。貴女には戻るという選択肢があります。まだ大隅半島とそれほど離れていません。出来れば退却を」
朝霜「断る! あたいは誇り高く散りたくてこの闘いに参加しているんだ!! あんな糞野郎共の遊び道具にされる位ならあたいは今すぐここで死んでやる!」
大和「……分かりました」
朝霜「んじゃ、またな。武運を祈るよ」
初霜「朝霜」
朝霜「ん? なんだい?」
初霜「……さよなら」
朝霜「ああ。またな!」
…………。
坊ノ岬沖
大和「針路変更します。取り舵いっぱい、沖縄への針路に戻して下さい」
矢矧「大和」
大和「はい」
矢矧「さっき私達の上空を飛んでいた敵艦載機にもう発見されていて、情報は向こうに渡った筈。……分かってるわね?」
大和「はい。そろそろ敵艦載機群が襲来するでしょう」
矢矧「それも、波状攻撃になるでしょうね」
大和「怖くなりましたか?」
矢矧「まさか。二水戦の旗艦がそんな事を恐れる訳が無いわ」
大和「頼もしいです」
矢矧「褒めたって何も出ないわよ?」
大和「事実ですから」
矢矧「ありがと」
大和「……対空電探に感あり。敵編隊を発見しました」
矢矧「大和……」
大和「矢矧、覚悟して下さい」
矢矧「ええ。分かってる」
大和「全艦にお知らせ致します。敵の編隊が接近中です。次の命令と共に対空射撃を始めて下さい」
矢矧「二水戦全艦対空射撃準備!」
大和「対空射撃、撃ち方始め!」
朝霜「大和、聞こえるかい!?」
大和「聞こえますよ! ですが、こちらは対空戦闘に入ってますので、手短にお願いします!」
朝霜「あたいの方にも敵の編隊が向かって来てる。対空戦闘に入るぜ!」
大和「了解しました。そちらは頼みますよ」
朝霜「ああ、あたいに任せな! 絶対に引き付けてやっからさ!」
大和「朝霜。貴女は後悔なき様思う存分闘って下さい」
朝霜「あたぼうよ! あんがとな、大和! またな!」
大和「はい。また」
ブツッ
大和「私も後悔はしたく無いものですね。一番、二番主砲に三式弾装填! 仰角最大! 薙ぎ払え!!」ズドーン!!
大和「……戦果なしですか……良いでしょう。高角砲、全砲門一斉射!!」ズドン ズドン ズドン
矢矧「大和! 敵機直上!! 爆撃が来るわよ!!」
大和「取り舵一杯!」
ヒューン ズドーン!
大和「くっ……」
矢矧「被害は!?」
大和「二発爆弾の直撃を貰いましたが軽微です」
矢矧「そう? ならまだ闘えるわね」
大和「勿論です。矢矧、聞いて下さい」
矢矧「何?」
大和「私、とても幸せです。私は闘いの中で傷付き、痛みを感じ、死に逝く事が出来るのですから」
矢矧「同感よ」
大和「敵攻撃機が艦隊の左右から接近。私を狙っているのね」
矢矧「輪形陣外周に位置する駆逐艦は接近中の敵攻撃機を撃墜して」
浜風「ダメです! 敵の数が多過ぎます!」
磯風「敵の艦攻が輪形陣内部に進入! まずい、爆撃機も進入したぞ!!」
雪風「こちらも突破されました!」
矢矧「挟撃来るわよ!」
ズドーン!!
浜風「大和さん!」
矢矧「無事!?」
大和「このくらい……っ!? 矢矧、前!! 浜風も!!」
矢矧「これなら躱せるわ!! 浜風!!」
浜風「あっ……」
ヒューン ズドーン!
浜風「……」バシャッ
磯風「浜風! おい、浜風!!」
雪風「浜風、機関停止。 意識も無くなってます」
初霜「矢矧さん、攻撃機が接近してます!」
矢矧「これは……回避は無理ね」
ズドーン!
矢矧「くっあぁぁ!」
響「矢矧さん、大丈夫?」
矢矧「機関停止。航行不能……でも、まだ戦えるわ」
磯風「浜風! 目を覚ませ!! 浜風!!」
雪風「磯風危険です、離れて下さい」
磯風「断る! おい浜風!! 何をやってるんだ目を覚ませ!!」
初霜「磯風さん、浜風さんは爆発する可能性があります! 近寄ってはいけません!」
浜風「う……」パチッ
磯風「浜風!! 目が覚めたか!?」
雪風「ダメです!」
浜風「磯か……」
ボンッ ズドーン!!
磯風「浜風?」
雪風「……っ」
磯風「嘘だろ……浜風……」
響「事実だよ。これは事実だ」
浦風「…………」
大和「響さん、上空に爆撃機!!」
響「なんだって!? そうか、私は……」
ヒューン ズドーン!!
今日はここまでです!
明日はパシフィコ横浜で第二回観艦式夜の部に一人で行って来ます……
朝イチのグッズの待機列で恐らく執筆するので、明日は更新出来ると思います
では、また来ますね!
初霜「響さん!? どうして!?」
響「初霜……私は……涼月の代わりらしいよ……」
大和「響、どうしますか? かなり難しいですが、撤退という選択がありますよ」
響「私はまだ死ぬ訳にはいかない。撤退するよ」
大和「分かりました。無事を祈ります」
響「うん……」
初霜「響さん……」
響「鎮守府で待ってるよ」
初霜「はい……」
響「みんな……すまない……Счастливо」
大和「航行不能の矢矧以外は輪形陣を再形成。第二波に備えて下さい! 直ぐに来ます」
矢矧「みんな、絶対に悔いは残さないようにしなさい」
磯風「駄目だ……感情的になってしまっては駄目だ……落ち着くんだ……磯風……!」
浦風「…………」
雪風「…………」
霞「この馬鹿……!」
…………。
大和「来ました! 第二波接近中! 数は約50! 対空戦闘準備!!」
雪風「高射装置起動済みです。何時でも対空戦闘可能です」
矢矧「こちらでも確認したわ。死ぬまで戦い続けてみせる」
磯風「矢矧……」
浦風「死ぬ……」ボソッ
霞「散開し始めたわよ!! 大和、号令を!」
大和「砲撃始め!!」
……。
霞「何なのよこの量は!! ありえない!!」
ズドーン!
大和「くっ! 4番、5番機銃が大破! 今度は攻撃機……取り舵一杯!!」
ズドーン!!
大和「ああっ!! 左舷に浸水発生!! 注水開始!!」
磯風「霞! 逃げろ!!」
ズドーン!!
霞「あぁぁぁあぁあああっ!!」
磯風「霞!!」
霞「許さない……絶対に許さないんだからぁ!!」
磯風「霞! 浸水している! 応急処理を!」
霞「敵の手にかかるくらいならっ!」
磯風「駄目だ! 早まるな!!」
霞「深海棲艦も人間共も全員呪い殺してやる!! 絶対に!!」
磯風「か」
ズドーン!!
磯風「もう駄目だ……もう耐えられない……!」クルッ
雪風「何をするつもりですか?」
磯風「ずっと耐えてきた。だが、もう無理だ……見棄てるのはもう嫌だ! 私は矢矧を助けに行く!」
雪風「無謀です」
磯風「それでも私はもう自分自身を殺したく無い」
雪風「貴女がいなくなれば戦力の低下に繋がります」
磯風「それでも最期くらいは我を通したい。こんな死に逝く為だけの作戦なんだ。大和や矢矧も言っているが、悔いを残したくない」
雪風「それが自分よがりの偽善だとしても?」
磯風「そうだ。この磯風は今まで感情に流されず合理的な判断の上で闘って来た。例え仲間を見棄てる事になろうともな。だからこそ最期くらいは好きにしたい」
雪風「止めても無駄な様ですね」
磯風「ああ」
雪風「好きにして下さい」
磯風「そうさせて貰おう」
雪風「…………」
磯風「感謝するぞ、雪風」
ズドーン!!
矢矧「ぐっ……! この!!」ズダダダダ
矢矧「はあ……はあ……ここまで、か……」
ヒューン
磯風「矢矧!!」ズダダダダ
ズドン
矢矧「磯風?」
磯風「どうやら間に合った様だな」
矢矧「何故此処に来たの? 私は救援に来いなんて命じていない筈よ」
磯風「そうだな。だが、それでも来た」
矢矧「理由を答えなさい」
磯風「磯風がそうしたかったからだ。最期くらい好きな様にしたい」
矢矧「……そう。なら、あと少しの時間だけど付き合って頂戴」
磯風「無論だ」
…………。
磯風「大和……聞こえるか?」
ザー
磯風「大和? おい、大和!」
ザー
磯風「初霜! 聞こえるか初霜!」
初霜「聞こえますよ」
磯風「大和と通信が通じない! 一体何が起きてる!」
初霜「大和さんは通信関連の機器が被弾し使用不可になってます」
磯風「そうか……」
初霜「磯風さんは矢矧さんの救援に向かったと雪風さんから聞きましたが何かありましたか?」
磯風「矢矧が沈んだ……壮絶な討ち死だった」
初霜「そうですか……そして、磯風さんの身にも何か起きていますね?」
磯風「……9ああ。敵機の攻撃により浸水が発生し機関が停止した。航行不能だ」
初霜「……分かりました。あと少し頑張って下さい……もう、終わる筈ですから」
磯風「……どういう事だ?」
初霜「言えません」
磯風「何故だ?」
初霜「言えません」
磯風「……どうしてもか?」
初霜「はい……」
磯風「分かった……もう詮索はやめよう」
初霜「ありがとうございます」
磯風「あとは、頼んだ」ブツッ
雪風の眼に映った大和の姿は壮絶極まりないものであった。
もう殆ど機能していないだろう主機に鞭を振り、
破壊尽くされた対空火器の生き残りを全て使い、
一機でも多くこれから向かう世界へ送り届けようと数の暴力に抗い続けていらた。
敵の戦闘機が機銃やロケット砲で彼女の武装を破壊し、
爆撃機は彼女の身体を焼き、攻撃機は雷撃で彼女の命に深い傷を刻み続けていた。
だが彼女の顔には苦悶の表情は無く、それどころか恍惚としたそれを浮かべていた。
敵の戦闘機が彼女に近付き攻撃する度に彼女を護る針は消えた。
もう限界であった。執拗に左舷へと魚雷を叩き込まれた為、彼女の身体は左へと傾いていく。
そこへ敵機から放たれた一条の白い航跡が吸い込まれた。
空をつん裂く轟音と共に大和の命は奪われた。
左へと徐々に、そして確実に傾いて逝く大和の眼が彼女を見続ける雪風を捕らえる。
大和は精一杯の笑みを浮かべ、全艦撤退の一言を口にし……
消滅した
雪風の眼に映った大和の姿は壮絶極まりないものであった。
もう殆ど機能していないだろう主機に鞭を振り、
破壊尽くされた対空火器の生き残りを全て使い、
一機でも多くこれから向かう世界へ送り届けようと数の暴力に抗い続けていた。
敵の戦闘機が機銃やロケット砲で彼女の武装を破壊し、
爆撃機は彼女の身体を焼き、
攻撃機は雷撃で彼女の命に深い傷を刻み続けていた。
だが彼女の顔には苦悶の表情は無く、それどころか恍惚としたそれを浮かべていた。
敵の戦闘機が彼女に近付き攻撃する度に彼女を護る針は消えた。
もう限界であった。執拗に左舷へと魚雷を叩き込まれた為、彼女の身体は左へと傾いていく。
そこへ敵機から放たれた一条の白い航跡が吸い込まれた。
空を裂く轟音と共に大和の命は奪われた。
左へと徐々に、そして確実に傾いて逝く大和の眼が彼女を見続ける雪風を捕らえる。
大和は精一杯の笑みを浮かべ、全艦撤退の一言を口にし……
消滅した
磯風「修理不可能……自力での航行は無理だな……ここまでか」
雪風「……お待たせしました」
磯風「雪風? 浦風も」
雪風「曳航します」
磯風「何故だ。私はもう航行はおろか、弾切れで何一つ出来ないお荷物だ。置いて行くがいい」
雪風「いえ、曳航します。敵機の追撃が来てしまうので急いで下さい」
磯風「それならば尚更だ。行ってくれ」
雪風「これは鎮守府の戦力維持の為です。今貴女が沈んだら戦力の更なる低下に繋がります」
磯風「お前らしく無い。私の曳航によって、今健在な雪風と浦風、そして初霜が沈むリスクの方が高い。少なくとも合理的な判断をするのならば私を曳航するという選択はあり得ない」
雪風「私は鎮守府の為に!」
磯風「違うな。それは雪風の意志だ」
雪風「違います!! 私は鎮守府の為に貴女を!!」
磯風「恐いのだろう? これ以上自分の周りの者が沈むのが」
雪風「っ!? そ、そんなことありません!!」
磯風「初風、時津風、神通、矢矧、浜風、そして次は私がお前の側から消えて行った。お前は浦風の様に自分が作り出した空に籠るという選択もあった筈だ。しかし、お前は闘いから逃げ出す事は選ばなかった。その代わりにお前は、自分が傷付く事を恐れ感情や意志を抑えようとした」
雪風「違う! 違う!! 私は兵器!! 感情なんて持つべきではない!! 感情は判断を鈍らせ、その人を壊す!! そんなの要らない! 要らないんです!!」
磯風「ふふ……雪風、お前はやはり兵器になり切れなかった様だな。浦風」
浦風「…………」
磯風「雪風を頼むぞ。お前が護ってやってくれ」
浦風「!?」
磯風「浦風?」
浦風「駄目……」
磯風「浦風どうした!?」
浦風「また……見殺しに……!!」
磯風「浦風一体何が!?」
浦風「雪風邪魔じゃ!!」ドンッ サッ
雪風「うっ!?」
浦風「これで、ウチ、みんなを護れるんじゃね……」
ズドーン!!
雪風「え……?」
磯風「魚雷……だと? 潜水艦!!」
雪風「嘘……嘘……嘘……嘘……」
磯風「逃げるんだ雪風!! 私を曳航なんてしていたら死ぬだけだ!! いや……雪風!」
雪風「嘘……嘘……嘘……嘘……嘘……嘘……」ガタガタ
磯風「雪風!! 今すぐ私を雷撃処分してくれ!! 死ぬなら雪風に介錯して欲しい!」
雪風「そ、そんな事出来るわけ無い!!」
磯風「頼む! 魚雷を放ったら直ぐに逃げてくれ!!」
雪風「嫌だ!! 嫌だ!! 嫌だ!! もう仲間を喪うのは嫌だ!! 私の所為で死ぬのは嫌だ!! 嫌だ!! 嫌だ!! 嫌だ!!」
磯風「私の事は気に病むな! これは私の願いなのだ!! 頼む!! 急いでくれ!!」
雪風「嫌だ!! 嫌だ!! 嫌だ!!」
シュー
磯風「!? 敵が魚雷を撃った!! 頼む!! 速く!!」
雪風「う、うわぁあぁぁあぁぁあああああ!!!!!!」バシュッ
磯風「ありがとう」ニコッ
ズドーン!!
また仲間を!! 仲間を殺してしまった!!
仲間を殺してしまった!!
私が殺した!! 私が殺した!! 私が殺した!! 私が殺した!! 私が殺した!!
また私の所為で仲間が死んだ!!
なんで!? なんで!!? ねえ! どうして私ばかりこんな目に遭うの!!?
もう嫌だ!! 嫌だ!! 嫌だ!! 私の所為で人が死ぬのは嫌だ!!
もう一人は嫌だ!! 一人は嫌だ!!
助けてよ天津風!! 私を助けてよ天津風!!
天津風天津風天津風天津風天津風天津風天津風天津風天津風天津風天津風天津風天津風天津風天津風天津風天津風天津風天津風天津風
助けて!! 私を助けて!!
助けて!! 助けて!! 助けて!! 助けて!! 助けて!! 助けて!! 助けて!!
天津風!!!!!!
横須賀
初霜「只今戻りました」
大淀「ゲホッ、お帰りなさい……」
初霜「大淀さん……大丈夫ですか?」
大淀「私は大丈夫……だけど……」
雪風「天津風は! 天津風はどこですか!?」
大淀「っ……」
雪風「天津風は帰って来ていますよね? 合わせて下さい! 天津風に合わせて下さい!! 早く!! 早く!!」
大淀「雪風、落ち着いて聞いて」
雪風「天津風は!? 天津風は何処!!? 何処なんですか!!? 天津風!! 天津風!!」
大淀「天津風は…………戦死したわ」
雪風「大淀さん……何、を言っている……んです……か? 冗談ですよね?」
大淀「天津風は……アモイで戦死しました。それは見事な死を……」
雪風「嘘を言うな!!」ガッ
大淀「事実です。これが真実なんですよ」
雪風「嘘だ!! 嘘だ!! そんなの嘘だ!! 天津風は、天津風は手紙に書いてたんです!! 再開の時を楽しみにしているって!! 嘘だと言って下さい大淀さん!! 嘘だって言って下さい大淀さん!! 嘘だって言ってよ!!」
大淀「やめて……もう、やめて……!!」
雪風「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」バタンッ
初霜「雪風!!」
大淀「今直ぐ自室へ!!」
初霜「医務室ではないのですか!?」
大淀「あそこに行ったらもっと悪化するから! 早く!!」
初霜「はい!!」
………………………………
………………
……
観艦式まで時間があり過ぎたので、続きも書いてしまいました。
次の更新は8/15になります
8/15に雪風の話を完結させ、別ルートの御要望がありましたら、前作のようにとある海戦から話を分岐させ、全く異なるエンディングを書こうかと思っております。(この別ルートとは、安価で選ばれなかったルートではありません)
御要望の場合はその旨をコメントして頂けますと幸いです
コンコン
初霜「雪風さん……起きてますか?」
雪風「…………」
初霜「私と雪風さんに出撃命令が下されました。陸路で舞鶴へ赴き、輸送艦と合流。そのまま大湊まで輸送艦を護衛とのことです」
雪風「私が護衛?」
初霜「はい」
雪風「あははははははは!!」
初霜「雪風さん?」
雪風「無駄です。どうせ死にます。みんな死にます。私以外全員死ぬんです。みんな死ぬんですよ」
初霜「雪風さん……」
雪風「私は死ねない。私は死ねない。私は沈みたくても沈めない! 私は死ぬことが出来ない」
初霜「…………ねえ、雪風さん……」
雪風「死ねない……死ねない……」
初霜「雪風さん!」
雪風「私は……」
初霜「雪風さん……もう苦しむのは終わりにしましょう」
雪風「え……?」
初霜「次で貴女が苦しむのは最後になる筈です。安心して下さい」
雪風「どうして……」
初霜「私、やっと分かりました。私が生まれ変わったのは貴女を救う為だったのかもしれません」
雪風「初霜……一体何を?」
初霜「行きましょう雪風。最後の任務へ……」
………………………………。
雪風さん
……なんですか?
これまで私も雪風さんも色々ありましたね
…………
貴女の苦しみについて私は殆ど知ってます。どれだけ貴女が苦しんだのか私は知ってます
…………
貴女が幸運であるが故に、幸運の対価を支払わねばならない。それが世の中の真理です
っ……
幸運の持ち主にとってそれは自分が殺したかの様に思えてしまうでしょうね
……はい
でもね、それは違うんですよ……
違う?
はい。だって……
それが運命だったのですから
…………
それに、みんな消えてしまった訳ではありません
消えてない?
みんなは私の、そして貴女の奥底に生きているのですから
……そんなの綺麗事です
そうかもしれません。ですが、貴女の中には今まで散っていったみんなの記憶が残っていますよね?
…………
全ての人からその記憶が消えた時にその人は死ぬ事になるんです。でも、覚えてさえいれば……
────いつか、また廻り逢う時が来るかもしれませんね────
舞鶴
初霜「輸送艦の皆さん、この度護衛をさせて頂く初霜と雪風です。どうかよろしくお願いします」
乗組員「おう、よろしく頼むって……ん?」
初霜「どうかしましたか?」
乗組員「雪風……どっかで聞いた気が……あ、ああ!」
初霜「雪風がどうかしましたか?」
乗組員「おい、お嬢ちゃん!! 俺だ俺! 覚えてるか!?」
雪風「…………ぁ」
乗組員「やっぱりお前さんか!! 久しぶりだな!! まさかまた会えるとは思ってなかったぞ!」
雪風「あの時の……!」
乗組員「そうだ! 覚えていてくれたか! お嬢ちゃん達に助けてもらった時の事、ずっと感謝してるんだぜ!!」
雪風「あ……あぁ……い……」
乗組員「ん? なんだ?」
雪風「い、生きてた……!! 私は殺すだけじゃなかったんだ……!!」
乗組員「お、おう? 俺らは生きてるぞ?」
雪風「良かった……! 良かったです! 本当に良かった!!」
乗組員「そうかそうか。大変だったんだな、お嬢ちゃんも」ナデナデ
雪風「うぁぁぁぁぁぁ!」
乗組員「ほら泣きやめ……今回も頼むぞ。今日護衛して貰うのはお嬢ちゃん達が護ってくれた佐渡丸だ」
雪風「グスッ……はい……はい!」
乗組員「んじゃ、頼むぞお嬢ちゃん!」
雪風「はい!」
宮津湾
乗組員「さーて、今回もちゃんと大湊へ辿り付く事は出来るかな」
初霜「佐渡丸の皆さん、少しお話しをして宜しいでしょうか?」
乗組員「ん、何だ?」
初霜「確証はありませんが、もうすぐここに敵の爆撃機や攻撃機が飛んでくるでしょう」
乗組員「ほう……続けてくれ」
初霜「私が囮になります。佐渡丸の皆さんは雪風と共に最大速で海域を離脱して下さい」
乗組員「お前さんはどうなる? 場合によっちゃぁ許可出来ねえぜ」
初霜「私は大丈夫です。気にしないで下さい」
乗組員「死ぬつもりか?」
初霜「いいえ、私はここで最期を迎えるんです」
乗組員「気が向かねえな。嬢ちゃんの犠牲で助けて貰うのはよぉ」
初霜「いえ、私は皆さんや佐渡丸の生死に関わらずに沈みます」
乗組員「何故そんな事が分かる?」
初霜「極秘です。口外出来ません。ですが、これだけは言わせて下さい……絶対に雪風は佐渡丸の護衛につけて下さい」
乗組員「どういう事だ?」
初霜「あの子は沢山……本当に沢山の仲間の死を見てきました。もうこれ以上は誰かの死を目の当たりにさせたく無いんです。だから……私が護衛から離れても雪風は引き止めて下さい」
乗組員「……分かった」
初霜「ありがとうございます……では、時間がありませんので行きますね」
乗組員「ああ……」
初霜「雪風さん、聞こえますか?」
雪風「はい」
初霜「今から私は対潜警戒の為に一時隊列から離脱します。雪風さんは佐渡丸と一緒に大湊へ向かって下さい」
雪風「分かりました」
初霜「佐渡丸の皆さんも雪風さんと共に行動をお願いします」
乗組員「……ああ」
初霜「では、行って来ます。雪風さん、お気をつけて下さいね」
雪風「はい」
初霜「では、後はお任せします」
…………。
初霜「来ましたね……」
初霜「私が敵機を少しでも長い間引きつけます。だから……無事に逃げ切って下さいね……雪風……」
初霜「対空戦闘開始!! 初春型駆逐艦4四番艦初霜、押して参ります!!」
………………。
ズドーン!!
雪風「爆発音!? 今のは!?」
乗組員「くそったれ!」
雪風「初霜! 初霜! 応答を!」
ザー
雪風「駄目、か……」
乗組員「おい、お嬢ちゃん。どうする?」
雪風「…………」
乗組員「お嬢ちゃん!」
雪風「…………必ず護りますから。必ず」ボソッ
雪風「佐渡丸の皆さん。目的地まで最短距離で、なおかつ最大速で逃げて下さい。私が何があっても貴方達を護り抜きます」
乗組員「分かった。だが、回避の為には進路を変える必要がある」
雪風「大丈夫です。私が全部引き受けますから」
乗組員「分かった。信じよう」
雪風「では、すぐに増速をして下さい」
乗組員「了解だ。嬢ちゃん……絶対に死ぬなよ」
雪風「それは無理でしょう。ただ、私は私の命を懸けて貴方達をお護りしますから」
乗組員「なっ!? 何故だ! 何故そのような事を言う! 最初から死ぬ事を考えるんじゃねえ!!」
雪風「私はもう既に死んでいる様なモノなんです」
乗組員「っ!?」
雪風「私は決死の覚悟を決めたあの戦いでみんなと一緒に死ぬべきでした。ましてや、天津風も死んでしまった今となっては生きる意味はもうありません。ただ……」
雪風「貴方達をお護り出来るのならば、今まで生きてきた意味はあったのかもしれないと思えます。ありがとうございます……私は貴方達のお陰で、少しだけ救われました。少しだけかつての私を見つける事が出来ました」
乗組員「やめろ! そんな事を言わないでくれ!」
雪風「敵が来ます。さようなら、佐渡丸の皆さん。さようなら……いつかのおじさん」
乗組員「雪風!!」
雪風「ここは絶対に通しません!! 絶対に!!」
雪風「敵爆撃機補足!! 10cm高角砲標準合わせ! 発射!!」ズドン!!
雪風「一機撃退! 全機銃は佐渡丸上空に弾幕展開!」
雪風「敵爆撃機爆弾を破棄! 次、6時の方角から来る艦爆群!!」
ヒューン バッシャーン!!
雪風「今度は雪風を狙って来る様ですね。 なら、もっと来て下さい!!」
…………
乗組員「おい、あれなんなんだよ……」
乗組員「悉く、あの子に命中した爆弾が爆発しないだと……」
乗組員「いいや、至近弾や機銃で傷ついている……」
乗組員「お嬢ちゃん……がんばってくれ……死ぬな……」
…………
ヒューン バッシャーン!
雪風「うあっ!? 右舷タービンが!」
雪風「でも、まだ闘えます!! 当たれ!!」ズドン! ズドン!
バシュッ
雪風「敵艦爆一機撃墜! あと少し!!」
ヒューン
雪風「急降下! 面舵一杯!」
バッシャーン
雪風「あっ! あぁぁ!!」
雪風「まずい!! 缶が!! あっ!!?」
ヒューン ズドーン!!
雪風「うっぁぁぁ……!」
雪風「ま、だ……まだ……たたかえま……す」ズドン!
ズダダダダ
雪風「くっ…………き、じゅうが……」チラッ
雪風「ぜったい、に……まも、る……」
ヒューン ズドーン!!
………………。
雪風(全機撤退しましたね……)
??「お…………ん!! おい、………ん!!」
雪風(良かった……空襲から護りきることが出来た……)
雪風(あの乗組員の方々に報告をしないと……ですが、もう身体が言う事を聞いてくれない……)
??「お……! ……嬢……ん! 駄目……こん……ろで死……な!!」
雪風(誰かが……叫んでる……でも……よく聞こえませんね……)
雪風(何も見えない……何も聞こえない……ああ、そうか……これが沈むって事なんだ……)
雪風(やっと私は…………だけど……みんなとの誓いが……約束が……)
??「雪風……雪風」
??「起きてよ〜雪風〜!」
??「ほら、目を開けない、雪風」
雪風「っ!?」
初風「やっと目を覚ましたわね……」
雪風「天津風……!?」
時津風「起きた起きた〜や〜っと起きたね〜ほら遊ぼうよ〜雪風〜!!」
雪風「時津風!?」
初風「私もいるわよ」
雪風「初風!!」
雪風「何で……! どうして!? だってみんな……」
時津風「え〜だってね〜」
天津風「貴女の事、ずっと見てたのよ」
雪風「でも……でも……!!」
初風「落ち着きなさい。雪風はどうだったのよ? 私達に逢いたかったの? 逢いたくなかったの?」
雪風「逢いたかったです!ずっと、ずっと逢いたかったんですよ!! いつも! いつも!! いつもっ!! すごく苦しかったです! すごく寂しかったです! 本当に逢いたかったんですよ!!」
初風「うん……ほら雪風、こっち向きなさい」
雪風「はい……わっ!?」
初風「お疲れ様、雪風……本当によく頑張ったわね……」ギュー
雪風「初風……」
初風「ごめんね、雪風を一人にしちゃって。ごめんね、雪風を苦しめてしまって……」
雪風「そんなことないです!! 初風達の所為なんかじゃありません!!」
初風「ありがと。でも、雪風が苦しむのはもう終わり。貴女の呪いはもう解けたでしょ? 私達のお墓の前で自らに枷せた呪いを」
雪風「はい……はい!!」
初風「ほら、泣かないの」
雪風「でも、どうしてこんな奇跡が……」
初風「ずっとずっと雪風は一人で苦しんで来たんだもん。最期くらいこんな奇跡があってもいいんじゃない? それに貴女は……」
三人「幸運の駆逐艦なのだから」
雪風「みんな……!!」
初風「ほら、そろそろ行くわよ。みんなが待ってるわ」
天津風「うん。私達に付いて来るのよ」
時津風「ほら、もう離れちゃダメだよ〜!」
雪風「はい! 雪風はもう絶対に離れません!! ずっと……ずっと一緒です!!」
雪風「また廻り逢う事が出来たのですから!!」
雪風「また廻り逢う時まで沈まない」
TRUE END
これで雪風の物語は終わりになります。ここまでご覧になって下さった方々、誠にありがとうございます。完結までに長い期間を費やしてしまい申し訳ありません……
もしも何か質問や、分からない事がありましたらお書き下さい。出来る限りの範囲になりますがお答え致します
乙です
>全ての人からその記憶が消えた時にその人は死ぬ事になるんです。
これでワンピースのDr.ヒルルクの最期の言葉思い出したわ。
「人はいつ死ぬと思う?~以下略
人に忘れられた時さ」
っての
安価の分岐についてお話ししたいと思います
安価の意味ですが、菊水の文字を煙突に描くか描かないかには二つの意味がありました
描く→決死の覚悟と脱史実
描かない→絶対に死なない、史実通り
では、何故坊ノ岬を生き残ったのかですが、それは「天津風の存在」があったからです。
雪風はお墓のシーンで死ぬ事が出来ない「呪い」を自らにかけます。ですが、菊水の紋を描くことにより「死」を受容してしまいます。しかし、その直後に天津風の手紙を受け取る事によりまた「生」を欲求してしまいます。その為坊ノ岬は生き残ることになりました。
坊ノ岬の後、雪風は天津風の死を知らされ、死を上書きした天津風の存在が消え、そこには「死」が残る事になります。
そして最後に、雪風の幻覚ではありましたが、呪いの原因でもあった三人と再会する事により雪風は完全に解放されました。
もしも菊水の紋を描かないを選んでいた場合、雪風は心を完全に抑圧し、兵器化してしまいます。そして、どんな損傷を受けても絶対に沈む事の出来ずに、延々と闘い続けるという内容になりました。
>>489
ありがとうございます!
似たような台詞がワンピースにもあったのですか……
ワンピースはサンジが出てきて少しぐらいの所までしか読んでいないのであまり分からないのです……
そして、この物語における設定を少しだけ
艦娘には漠然と「昔は艦艇だった」という記憶はありますが、詳細に関しては無意識の内に抑圧しています。それは、自分の死や仲間の死などといった辛い記憶がある為であり、無理矢理思い出させられると崩壊を起こしてしまいます。
ですが、改二となる事で崩壊する事なく記憶を取り戻す事が出来ます。
次に史実をへし折る原因についてですが、それは史実の影響を受ける艦娘の強い意志と状況の二つが揃った時に史実の影響から逃れる事が出来ます。
望月や三日月に関しては自分が沈んだ史実の作戦に参加しなかった為に生き残ってましたが、
浦風は金剛が作り出した死なない状況と死なないという意志の二つが揃った為に生き残る事が出来ました。
では、何故史実の作戦を行なわされていたのか……それはまたの機会のお楽しみで
因みに、今回世界観は最悪でしたし、大将などの謎をあえて残しております。なので、「別ルート」という形でそちらは補完します。暫くしたらこのスレ内で書き始めますね
そして、最後にステマというかダイレクトマーケティングになりますが……
このSSのタイトル「また廻り逢う時まで沈まない」の元ネタであり、私がこれを書こうと思った原因であるキネマ106の「ながれぼし」が入ったアルバム「雪月花」が、明日のコミケで発売されます。メロンブックスの通販や店舗でも買えるので、もしもよろしければ(笑)
終戦記念日にとりあえずこの物語を完結出来て本当に良かったです。
そして、質問、感想、問題点等がありましたら今後もお答えします。是非コメントして下さい。
では、また来ますね!
お待たせしました。これより雪風「また廻り逢う時まで沈まない」のアナザールートを開始します。
本編では雪風の変化や苦悩、史実をメインとした物語となりましたが、こちらのアナザーエンドは、世界観と提督がメインの物語になります。出来る限り雪風も描きたいとは思っていますが、少々難しそうです……。御容赦下さいませ。
なお、本編>>306から分岐しますが、流れが分かり易くなる様に10レスほど前から若干修正を加えつつ投下して行きます。
今日の更新はあまり多くはありませんが、物語がどの様な方向へ動くのかを掴んで貰えればと思っております。
では、お楽しみ下さい……
ブルネイ
瑞鶴「……翔鶴姉ごめんね…………私が空を見てなんて言わなければ…………」
コンコン
瑞鶴「だ、誰!?」
金剛「私ネ! 金剛デース! 入りマスよ?」
瑞鶴「うん、どうぞ」
金剛「Hey 瑞鶴! 提督からLove letterが届いてるヨー!」ガチャッ
瑞鶴「………………提督さんから?」
金剛「イエース!」
瑞鶴「どうせ、今回の責任を取って旗艦の任を略奪とかでしょ……」
金剛「それはNo〜デスよ! これを読めば分かりマース!」スッ
瑞鶴「…………え!?」
金剛「分かりマシたか、瑞鶴?」
瑞鶴「どうして提督さんがここに来るの!?」
金剛「私には分かりマセん。But、瑞鶴が都合が良いように解釈しちゃえば良いのデス。提督が瑞鶴の事を心配シテ来てくれるとかデスね」
瑞鶴「でも…………」
金剛「マリアナは瑞鶴には辛すぎる出来事デシた。瑞鶴も沢山busyでショウ? 傷を癒す為にも提督とLove nightを過ごせば良いと思いマスよ?」
瑞鶴「金剛、いいの? 貴女も提督さんの事……」
金剛「何の事デスかネー?」
瑞鶴「そういえば、貴女は改二になってから提督さんにベタベタしなくなったもんね……もしかして、私の所為なの?」
金剛「それは違いマス。瑞鶴は勘繰りすぎデスね」
瑞鶴「ごめん……」
金剛「問題nothing! では、私はこれで失礼するネ!」
瑞鶴「あ、うん……」
ガチャッ パタン
………………………………
………………
……
提督「やっと着いたか。長い船旅だった」
乗組員「足元にはお気を付け下さい」
提督「大丈夫だ。流石にお前達にこの様な事で心配されるのはどうかと思うぞ」
乗組員「へぇ」
提督「まあいい。私はブルネイの司令官に挨拶をして来る。その後、宿舎で艦娘達と会議をする。もしも何かあれば遠慮なく呼び出してくれ」
乗組員「了解です。中将、お迎えが来てますよ」
提督「ふむ」
長門「久しいな、提督よ」
提督「ああ。久しぶりだな、長門」
長門「すまないな……あのような結果で終わらせてしまい……」
提督「お前達は良くやってくれた。悪かったのは、あの作戦の命を下した私だよ」
長門「それは違うのだろうに」
提督「私の所為だ。それより、瑞鶴はどうした?」
長門「ああ、あいつはまだ部屋に籠っている。翔鶴の死がよっぽど響いているのだろう」
提督「分かった。また後程瑞鶴のところに行ってみるとしよう」
長門「提督よ、頼む」
提督「ああ。だが、先にブルネイの司令官に挨拶をして来るとしよう」
長門「了解だ」
…………………………。
コンコン
提督「瑞鶴、いるか?」
瑞鶴「提督さん!?」
ガチャッ
提督「ほう、わざわざ開けてくれるとは……と、泣いていたのか?」
瑞鶴「うん…………」
提督「とりあえず入ってもいいか?」
瑞鶴「うん。どうぞ」
パタン
提督「ずっと泣いていたのか?」
瑞鶴「だって…………翔鶴姉を殺したのは私だもん……」
提督「他の者から話は聞いたが、それは違うだろう。お前は当たり前の事をした。その結果としては翔鶴の轟沈に繋がったのかもしれないが、お前の所為とは言えない」
瑞鶴「でも、生きていた翔鶴姉を見捨てたのは事実だもん!!」
提督「それはお前の思い込みだ。それに翔鶴はお前が離れた後すぐに息を引き取ったらしい。それでも見捨てたと言うのか?」
瑞鶴「そうよ! 私が見捨てなければ……」
提督「どうしてそうやって一人で背負い込もうとする? それを言い始めたらあの作戦を命じたのは私だ。恨むなら私を恨め」
瑞鶴「そんなの、出来るわけないじゃない!」
提督「何故?」
瑞鶴「だって……提督さんが…………」
提督「ならば、私をお前の感情の捌け口にすればいい。傷を癒すのは無理だが、それ位ならば私でも出来る」ギュッ
瑞鶴「ありがと……提督さん…………」ギュー
瑞鶴「う、うぅ……うわぁぁぁぁぁぁん!!」
提督「……辛かったな、瑞鶴……」ナデナデ
瑞鶴「翔鶴姉!! うわぁぁぁぁ〜!! 翔鶴姉!!」
………………………………
………………
……
翌日
提督「すまないな、こんな朝早くに呼び出して」
金剛「こんなアーリーモーニングに、突然どうしたんデスか提督?」
提督「金剛、榛名。お前達に言っておきたい事があってな」
榛名「お姉さまと榛名にですか?」
提督「そうだ。特に金剛、お前には本当に長い間世話になったな」
金剛「提督?」
提督「榛名にも今まで世話になりっぱなしだったが、これからも面倒を頼む事になりそうだ」
榛名「一体どうしたのですか……?」
提督「今までずっと迷惑をかけてすまなかった。それに、比叡と霧島の二人を死なせたのは全て私の所為だ。本当にすまなかった……」
榛名「提督、一体どうして今……」
金剛「提督……まさか……!」
提督「金剛、私はお前よりも少し先に逝くことになりそうだ」
金剛「提督……どういうことですか!? 私よりも先ということは…………まさかレイテに!!?」
提督「察しがいいな。流石だ」
金剛「駄目です!! 提督が行く必要はありません!!」
提督「これは命令だ。私には抗え無い」
金剛「どうして!! どうして提督が死ななければならないのですか!!?」
提督「命令に抗おうとし続けたのが仇になったな」
金剛「それは私達を護ろうとしたからなのに!」
提督「だが、護れなかった。それが現実だ」
金剛「でも!! でも!!」
提督「いいんだ金剛。それに、私は安心しているんだ」
金剛「どういうことですか?」
提督「死ぬ事が出来れば私は他の子を死なす為の命令を下さなくて済む……ハハ、司令官失格だな」
金剛「提督……」
提督「榛名、今後の事でお前には話しておきたい。私の代わりに別の中将が来る事になっている。横須賀に戻ったらお前達はその中将の指示に従ってくれ」
榛名「提督がこのまま指揮を執り続けるという選択肢は無いのですか?」
提督「無い。私は瑞鶴と共に消えることになるだろう」
金剛「…………」
提督「すまないな、金剛」
金剛「いえ、何となく分かっていました。ですが、こうなるのでしたら私……」
提督「やはりそうだったか……」
金剛「やっぱり提督は気付いていましたか」
提督「何となく、だがな」
金剛「ねえ、提督」
提督「何だ?」
金剛「運命っていうのは酷くて残酷で、それでいて時には縋りたくなる本当に嫌な物ですね」
提督「全くだ」
金剛「私もすぐに後を追います。瑞鶴と一緒に待っていて下さいね」
提督「本来ならば後を追うなと言うべきなのだがな……約束だ」
金剛「よかった……」
提督「二人とも、よりにもよってこんな話で悪かったな。戻ってくれ……しかし」
榛名「他の皆さんには言わないっということで宜しいでしょうか?」
提督「ああ」
榛名「分かりました。では、失礼します……金剛お姉様、参りましょう」
金剛「グッバイ提督。また来るネ」
パタン
榛名「金剛お姉様……」
金剛「シー」キョロキョロ
金剛「うん、大丈夫ネ。何デスか榛名?」
榛名「一体榛名達は誰の為に戦っているのでしょうか?」
金剛「難しい話デスね……これはヒトそれぞれだと思いマス」
榛名「それは榛名も分かっています。今までは榛名にも戦う理由はありました。ですが榛名の戦う理由を全て喪う事になりました……」
金剛「それは、私と提督デスか?」
榛名「はい。提督にならば榛名は命を預けても良いと思っておりました。提督は榛名達艦娘の事を兵器としてでは無く、一人の兵士として扱ってくれました。しかし、無理矢理榛名の大切な人達を奪って行った、榛名達を兵器やそれ以下の存在として扱う人間は……私には許せません」
金剛「それだけデスか?」
榛名「後は……榛名は前の戦いで生き残りました。金剛お姉様や比叡お姉様、そして霧島を護れませんでした……だから、だからこそこの新しい生を受けた時は、お姉様達を榛名が護ろう、お姉様達を榛名より先に逝かせ無いと榛名は榛名に誓いました。なのに……蓋を開けてみれば、前と全く同じ事になってしまいました!! 榛名が運命を、因果を変える事が出来なかった!!」
金剛「サンキュー榛名。榛名は優しいデスね……だけど、榛名の話を聞いて一つ分かったコトがありマス。榛名が私達を助けようとしてくれたのと同じヨウに、私は妹達のワガママを全て受け止めてあげようと思ってまシタ」
榛名「え?」
金剛「比叡と霧島は私が不甲斐なかった所為で命を落としてしまいまシタ。榛名には、私の轟沈で辛い思いをさせてしまったネ。デスが、榛名は私に護って貰う存在では無く私を護る存在で在ろうとしてマス。つまりこれは、お互いのエゴのぶつかり合いネ。榛名を護りたい私、私を護りたい榛名。恐らく比叡も霧島も優しいですから同じヨウなエゴを持っていたでショウ。デスが、お互いこれでは意地の張り合いになってしまいマス。だから、榛名……」
榛名「はい」
金剛「これから榛名は榛名の為に生きて下サイ。思い上がりかもしれまセンが、私が沈んだら悲しんでくれると思いマス。だけど、それを負い目に思わないで下サイ。そうしてくれるダケでも私は幸せデス」
榛名「お姉様……」
金剛「OK 榛名?」
榛名「……はい」
金剛「Yes それで良いネ」ナデナデ
榛名「お姉様……」
金剛「もしも提督がいなくなった世界が最低で最悪でどうしようもない世界ならば榛名は好きにすれば良いネ。その時に榛名が戦う意味を決めれば良いのデスよ」
榛名「はい……お姉様……」
金剛「榛名は泣き虫ネ」ナデナデ
榛名「榛名は……泣き虫です……」
金剛「強くなって下さいネ、榛名」ナデナデ
榛名「はい……!」
金剛「その言葉が聞けて安心しまシタ。では、そろそろ行きまショウ」ポンポン
榛名「はい!」
………………………………。
磯風「雪風は?」
浜風「さっき一人で埠頭に居ました。多分夕方まで帰って来ないでしょう」
浦風「うん。でも万が一があるから早目に話そうのぉ」
磯風「そうだな」
浜風「雪風の精神状態が危険だという事はなんと無く分かって居ましたが、こんな会議を開くなんて一体何があったのですか?」
浦風「あんじゃね、この前の戦いで翔鶴さんが亡くなった時に雪風が、こがぁな事を言ぅとったんで」
浦風「『ただ、私は”兵器”に近付いただけですよ』って」
浜風「それは一体……」
浦風「雪風は心を手離しかけておる」
浜風「しかし、それは無理……いや、雪風だからこそですか……」
浦風「そうじゃのぉ。雪風はあまりにもえっとの人の命を目の前でのぉなってきた。特に初風や時津風はかなりキツかったゆぅて思う。辛い思いをするくらいなら何も感じん方がええ、雪風は多分そう思うとるはずじゃ」
磯風「だが、雪風は心を手離しきれていない。亡くなる寸前の翔鶴さんに向かって労りの言葉をかけていた」
浜風「まだ完全には壊れていないという事ですか?」
磯風「多分だが……」
浦風「じゃが、人の死に目を見てもいっこも動揺をせんどころか、『死』に対して恐怖感の様なマイナスの感情は完全に抜け落ちとる。多分雪風自身の『死』すらも抵抗なく受け入れとるじゃろうね」
浜風「死を恐れない兵士……確かに兵器と何ら変わりはありませんね」
浦風「じゃが、それがええわけが無い。せめて雪風にゃぁ……」
コンコン
磯風「だ、誰だ!?」
雪風「私です。戻りました」
磯風「ゆ、雪風か。入っていいぞ」
ガチャ
浦風「早かったのぉ。どこ行っとったん?」
雪風「訓練の後は少し散歩してました」
浜風「そうですか……」
雪風「はい」
全員「…………」
磯風「そうだ、今から夕飯を作ろうと思うのだが、雪風も食べるか?」
雪風「いえ、いいです」
磯風「そうか……」
雪風「私は寝ますが、好きにしてて下さい」
磯風「あ、あぁ……」
雪風「では」バサッ
浜風「雪風に迷惑になります。外に出ましょう」
浦風「そうじゃね」
パタン
浜風「驚きましたね……夕方までは帰って来ないと思ってたのですが……」
浦風「もしかすると聞かれたかもしれんのぉ」
磯風「あまりこの話題をしない方が良さそうだな」
浦風「なら、一つだけ聞いて欲しぃんじゃ。もうわしらが沈む訳にゃぁいかん。沈んだらまた雪風を追い詰めることになるから。こればっかしゃぁ約束」スッ
磯風「ああ」スッ
浜風「はい」スッ
浦風「指切りげんまん。嘘ついたら……ついたら?」
磯風「そうだな……」
浜風「磯風の手料理を一週間食べ続けるというのは?」
磯風「ん? どうして私なんだ?」
浦風「浜風、見た目以上にエゲツないのぉ。採用じゃ。指切りげんまん。嘘ついたら磯風の手料理喰わす、指切った」
磯風「何故……」
浜風「これで絶対に死ぬわけには行かなくなりましたね」
浦風「そうじゃな」
浜風「では、夕食を作りますか」
浦風「ウチに任しとき」
浜風「雪風にも後で持って行ってあげましょう。雪風、最近まともに食べてないように思えるので」
浦風「うん」
磯風「解せぬ……」
………………………………。
乗組員「中将!!」バタン
提督「どうした」
瑞鶴「わっ!? どうしたのよそんなに慌てて!」
乗組員「今闇夜に紛れてレイテ島へ深海棲艦が上陸したとの情報が入りました! その後すぐに打電をしたのですが、レイテ島守備隊との通信が繋がらなくなりました!!」
提督「通信機器をやられたか、又は全滅したか……どちらにせよ無駄な犠牲者を出してしまった事が悔やまれるな」
乗組員「あれ程中将が陸軍に撤退要請を出されたのに、それを黙殺した陸軍上層部が悪いのでは」
提督「そうなんだが、残念だ」
乗組員「中将、如何なさいますか!?」
提督「すぐに全員を集めてくれ。すぐに行動に移る」
乗組員「了解しました! 失礼します!」
提督「遂にこの時が来てしまったか……瑞鶴、前に話した作戦を開始するぞ」
瑞鶴「うん…………」
提督「すまない……」
瑞鶴「ううん、提督さんの所為じゃないもん。それに、提督さんと一緒だから、私、怖くないよ」
提督「瑞鶴……」
瑞鶴「行こ、提督さん。みんなを待たせちゃう」
…………。
提督「大淀、これで全員だな?」
瑞鶴「はい! 間違いありません!!」
提督「時間が無い為要点のみを伝える。先程レイテ島に深海棲艦が上陸し、陸軍の守備隊からの連絡が途絶えた。そして近辺には多くの敵艦艇が待ち構えている事が予想される」
提督「そして、少し前より日本の基地に対して航空機による攻撃を受けており、友軍の基地航空隊はほぼ壊滅している。援護は望めないだろう」
提督「そこで我らはレイテ島の奪還作戦……捷一号作戦を発動することをここに宣言する。本作戦には日本海軍の保有戦力のほぼ全てを投入する。また、敵からも大規模な反撃が予想される。恐らくここにいる全員が無事に顔を合わせることは無いだろう。それだけは覚悟して欲しい」
長門「艦娘として生を受けた時より覚悟は出来ておる。そんな事よりも編成を発表してくれないか? もう出来ているのだろう?」
提督「分かった。編成を発表する」
提督「これより出撃する艦娘について発表する。参加人数が多い為一気に読み上げるが、後ほど掲示板にリストを貼っておく。では、読み上げるぞ」
提督「第一遊撃部隊第一部隊。戦艦 大和、武蔵、長門。重巡洋艦 高雄、愛宕、摩耶、鳥海、妙高、羽黒軽巡洋艦 能代駆逐艦 長波、早霜、朝霜、島風」
提督「第一遊撃部隊第二部隊。戦艦 金剛、榛名。重巡洋艦 利根、筑摩。軽巡洋艦 鈴谷、熊野、矢矧。 駆逐艦 雪風、浜風、浦風、磯風、野分、清霜」
提督「第一遊撃部隊第三部隊。戦艦 扶桑、山城。軽巡洋艦 最上。駆逐艦 満潮、朝雲、山雲、時雨。随行油槽船として、八紘丸 萬栄丸 御室山丸 日栄丸 雄鳳丸 厳島丸 日邦丸 良栄丸も艦隊に加える」
提督「第二遊撃部隊。重巡洋艦 青葉、那智、足柄。軽巡洋艦 鬼怒、阿武隈。駆逐艦 曙、潮、霞、不知火、初春、若葉、初霜」
提督「機動部隊本隊。航空母艦 瑞鶴、瑞鳳、千歳、千代田。航空戦艦 伊勢、日向。軽巡洋艦 多摩、五十鈴、大淀。駆逐艦 秋月。そして私が乗り込む朝霧だ」
ザワザワザワザワ
提督「何か質問は…………ありそうだな」
千代田「提督! 一体この編成はどういう事ですか!? それにどうして提督まで!」
提督「順番に答えよう。編成については、この編成こそ最も適切だと私が判断した。次に私が出る理由だが、私が何時までも引っ込んでいたらお前達の士気が下がるのは目に見えている。だからこそ大将自ら出張って来たという訳だ」
千代田「それ嘘だよね! ねえ、千歳お姉もそう思うよね!?」
千歳「提督……それは本当なのですか?」
提督「ああ、勿論だ。嘘偽りなど全く無い」
千歳「そうですか……ならば私は提督を信じましょう」
千代田「千歳お姉!!」
金剛「提督はこんな事で嘘をつきまセン! 私達が提督の事を信頼出来なくてどうするのデース!」
榛名「はい。榛名も同感です」
千代田「うぅ……」
提督「納得出来たな? では、他にはいるか?」
熊野「では、私からも……先にお詫び申し上げますわ。失礼な事を言わせて頂きます。今回提督も出撃されるとの事ですが、万が一、億が一にお亡くなりになったらどうするのか教えて頂けないでしょうか?」
鈴谷「ちょ、くま」
提督「有事の際には後継者を決めている。私が死んだとしても指揮系統の壊滅的混乱には陥らない筈だ」
熊野「そうですか。この様な質問をしてしまい申し訳ありませんでした」
提督「謝る必要はない。他の者も気になっていた事だろう。他にはあるか?」
不知火「司令、発言して宜しいでしょうか?」
提督「勿論だ」
不知火「其々の艦隊の動きや作戦の概要について何も話されて無い様ですが、それについてご教授願いたく存じます」
提督「この場で話すと混乱を招く恐れがある。その為、其々の艦隊から数人を呼び出し作戦内容などを話す」
不知火「混乱ですか?」
提督「ああ。間違いなく起きるだろう」
不知火「…………そうですか、分かりました。ありがとうございます」
提督「では、解散してくれ。夜が明けたらすぐに出港する」
全員「了解!!」
乗組員「お待ち下さい!!」バタンッ
提督「…………」
瑞鶴「えっと……朝霧の……」
乗組員「たった今横須賀に残した元副長から緊急の連絡が入りました!!」
提督「時間が無いと言った筈だ。その報告は後ほど別の部屋で聞こう」
乗組員「いいえ! 駄目です!! 横須賀鎮守府に大将が乗り込んで来ました!」
提督「何だと……!?」
乗組員「横須賀に着任する筈であった中将は謎の死を遂げております。そして、何より……」
乗組員「今横須賀鎮守府に残っている艦娘が暴力と性欲の捌け口にされているとの事です!!」
提督「っ!!?」
摩耶「おいっ!! 一体どういう事だ!! 提督!! 答えろよ提督!!」
鳥海「摩耶姉さん! 提督がその様な事を仕組む筈がありません! 落ち着ついて下さい!」
摩耶「クソったれが……!」
乗組員「中将、今すぐ横須賀へ戻って下さい!! このままでは鎮守府も艦娘達も壊されてしまいます!!」
提督「だが……私が戻ってしまっては…………艦娘達が……」
金剛「提督、戻るべきです」
提督「金剛!?」
金剛「提督はあの事で艦娘が壊される事を恐れていますね? だから今まで逆らう事が出来なかった。ですが、もしもこのままレイテに突入して私達も提督も死んだとしても生き残った艦娘は皆壊されてしまいます。それも、もっと酷い形でです。提督はどちらを選びたいのですか?」
提督「…………俺は……」
瑞鶴「提督さん……私には金剛が何を言っているのかが分からない。だけど私、提督さんが何を選んでも絶対に着いて行くから……提督さんがやりたいと思う事を選んで」
金剛「瑞鶴の言う通りネ。私も提督の決断に私の人生を委ねマス。他のみんなはどうですか? 提督に着いていけないと思う人はいマスか?」
全員「…………」
金剛「反対者はいないデスね」
榛名「榛名達は皆、提督が私達の為に頑張って下さっていた事を知っています。そして感謝をしています。ですから、一度くらい提督も、提督自身がやりたい事を仰って下さい。絶対に提督に着いて行きます!」
提督「…………この決断により、私達全員は國を棄て、敵に回す事になるやもしれない」
金剛「そんな事はNo problemデス!」
提督「深海棲艦では無く、多くの人間、艦娘を殺める事になるやもしれない。いや、殺める事になる」
榛名「それでも榛名は大丈夫です!」
提督「ここにいる皆が壊され、そして殺されるかもしれない」
瑞鶴「提督さんと一緒なら、瑞鶴はそれでもいいよ」
提督「それでもいいのか? 全員、それでも私に着いて来てくれるというのか!?」
全員「はい!」
提督「愚か者……私もお前達も皆愚か者だ……」
瑞鶴「うん! だって、ここに居る全員は提督さんの為に闘っているんだもん!」
提督「ありがとう、瑞鶴……みんな」
瑞鶴「今度は私達が提督さんに恩を返す番だよ」
提督「先に出した命令は全て破棄! これより我等は日本本土へ攻撃を行う!! 全艦娘、乗組員は朝霧に乗り込め!」
全員「はい!!」
提督「目標、日本本土! 全艦隊出撃!!」
……………………。
朝霧
提督「大本営に打電をするんだ。内容は、『我、レイテニムケ出撃セリ』だ」
乗組員「了解!」
提督「これで奴等は私がレイテに向かったと考えるだろう」
乗組員「恐らくは。中将、横須賀に残った者に連絡はしますか?」
提督「大本営に知らせていない緊急用の回線があったな」
乗組員「はい」
提督「私達が横須賀に攻撃をする寸前に艦娘を別の場所に誘導し保護させる様に伝えてくれ」
乗組員「実行はかなり難しいかと思いますが」
提督「無茶を承知で言っている。だが、それでももしかしたら成功するかもしれない。何もせずに座して待っていれば横須賀に残る艦娘の未来はない。しかし、動きさえすれば何かが起きるやもしれない」
乗組員「そうですね。了解しました! 横須賀に伝えます」
提督「頼むぞ」
乗組員「はい!」
提督「出港後、各艦隊の旗艦となる予定の艦娘と朝霧のメインクルー全員で作戦を立てる。艦娘の方には私から招集をかける。お前に朝霧関係の方は任せる」
乗組員「了解です! 失礼します!」ガチャッ バタン
…………。
今日はこれで終わりです
恐らくそこまで長くはならないとおもいますが、どうかもう暫くの間よろしくお願いします。
また来ますね!
大本営
コンコン コンコン
元帥「入れ」
構成員「元帥様!! 緊急の御報告です!」
元帥「ふむ、内容は?」
構成員「佐世保に引き続き、呉、舞鶴との連絡が途絶えました!!」
元帥「佐世保のそれは通信機器の故障だと報告されたはずだが」
構成員「はい。ですが、呉、舞鶴も同時期に故障を起こすとなると話は変わって参ります!」
元帥「そうだな……確認の為に何人か私の側近を派遣しよう」
構成員「ありがとうございます!」
元帥「横須賀に漸く送り込む事が出来た大将には連絡をしたか?」
構成員「いえ、先ずは元帥様にお伝えすべきだと判断した為、まだ連絡はしておりません!」
元帥「そうか。ならば直ぐに伝えなさい。大将が上手くやればあと少しでこの計画も完了するだろう。ここで失敗があってはならない」
構成員「はっ! 了解致しました!!」
元帥「うむ……ん?」
構成員「如何なさいましたか?」
元帥「何やら、エンジン音が……」
構成員「エンジン音ですか?」
元帥「段々大きく……」
ズドーン!!
元帥「なんだ!!? なんの音だ!!? 一体何が!!?」
バタンッ!
少尉「元帥!! 逃げて下さい!!」
元帥「何が起きている!!?」
少尉「爆撃です!! 通信基地がやられました! そしてこの大本営に向かって多数の爆撃機が押し寄せて来ています!!」
元帥「何故だ!!? 深海棲艦は艦娘がいない陸地を攻撃しないのでは無いのか!?」
少尉「そうではありません!! 日帝の彗星です!」
元帥「何だと!!? 所属は!!? 」
少尉「不明です! 元帥、このままでは!」
元帥「逃げるぞ! この國を潰すまでは死ぬ訳にいかない!!」
少尉「はい! 絶対に我々が死ぬ訳には……」
ヒューン
元帥「何だ……この笛の様な音は……」
少尉「はっ!? 元帥、逃げて下」
ズドーン!!
横須賀
瑞鶴「爆撃隊より連絡。大本営の破壊完了。全壊との事です!」
瑞鳳「同じく艦戦対より連絡。大本営の人間はほぼ全員爆撃と機銃掃射で排除完了したとの事です!」
提督「了解。すまないな、この様な事をさせてしまって」
瑞鶴「大丈夫よ」
提督「……機は熟した。全艦娘、全隊員、配置についたな?」
大和「はい」
乗組員「はい!」
摩耶「横須賀の包囲はすぐに完了させてやるよ!」
矢矧「大丈夫よ」
磯風「ああ、いつでも行けるぞ」
提督「内部にいる友軍に作戦開始を伝えろ」
乗組員「完了しました!」
提督「現時刻を持って作戦を開始する。横須賀砲撃部隊、砲撃開始!! 同時に外部工作部隊は鎮守府の防壁や敵の逃走ルートを破壊! 私や矢矧率いる鎮守府襲撃部隊の突入のフォローと敵の逃走妨害を行え!」
大和「全艦、三式弾装填! 味方の逃走ルートには絶対に砲撃しないように厳命致します!」
武蔵「それ如き、この武蔵にとって容易いものだ」
金剛「やっと、私も誰かを救う事が出来るのですね……」
榛名「金剛お姉様、如何なさいましたか?」
金剛「何でも無いデスよ」
長門「大和、三式弾の装填が完了した。いつでも行けるぞ」
大和「提督、宜しいですか?」
提督「ああ」
大和「全艦、砲撃開始!! 薙ぎ払え!!」
ズドーン!!
磯風「始まったな。扉と壁を爆破する」
浦風「まさかウチが鎮守府をめぐ立場になるなんて思うてもいなかったんじゃ」
浜風「同感です」
浦風「雪風は?」
雪風「そうですね」
磯風「火薬の設置を完了した。いくぞ」
浜風「爆破します!」
ズドーン!
浦風「おお!」
磯風「司令、矢矧、大穴が開いた。突入してくれ」
提督「ああ。摩耶」
摩耶「言わなくても分かってる。包囲を開始するぜ!」
提督「頼むぞ」
摩耶「摩耶様に任せろ!」
提督「襲撃部隊全員に告ぐ。打ち合わせ通り、行動は二人一組で必ず行え。もしも片方が戦闘不能となった場合は別の班と合流し退却だ。絶対にこれだけは守るんだ」
全員「了解!」
提督「襲撃部隊突入せよ!」
…………。
今日はこれで終わりです。
また来ますね!
少尉「全艦娘の収容が完了しました。部屋を厳重にロックしている為反乱可能な者は皆無であります」
大将「うむ。御苦労」
少尉「いえ。以上で報告を終わります」
大将「ん?」
少尉「今の音は……?」
大将「聞こえたか?」
少尉「はい」
ズバンッ!
大将「何だ!?」
少尉「大将! 通信基地が!!」
大将「何だと!? 一体!!」
ズバンッ! ズバンッ! ズバンッ! ズドーン!
少尉「っ!? これは三式弾による砲撃です!!」
大将「誰だ!? 誰がこんな!」
少尉「大将、ここは危険です!! 今すぐ地下へ退避して下さい!! さあ!」
大将「くそっ!! 何故私が!!」
少尉「私が先行しま」
ズバン!! ガッシャーン!
大将「ぐあっ!!」バタン
大将「このままでは殺される……少尉、早く行くぞ!! おい少尉!」グイッ
少尉「」
大将「うっ!?」ビクッ
大将「こ、この私がこんな所で死んでたまるか!!」ガチャ
大将「!!?」
部下「たす、けて……はら、がいたい……だれ、か……」
部下「がぁぁぉぁぁぁぁぁ!!」
部下「祖国に帰りたい……こんな小日本なんかで死にたくない……!!」
部下「嫌だ!! 嫌だ!! 死にたくない!! どうして猿どもよりも先に俺らが死なないといけないんだ!!」
部下「おい! 死ぬなよ!! おい!!」
部下「さ、きに……い……」
部下「おい!! おい!! 何でだよ!! 約束しただろ! 一緒にこの国を潰すって!! おい!! 」ブンブン
大将「…………」
部下「大将……逃げ、て下……」
ズダダダダダダ
乗組員「こちら赤小隊! 最上階の要制圧区域に到着!」
乗組員「生き残りがいるぞ!! こっちだ!!」
乗組員「識別は?」
乗組員「指定箇所にマーキング無し。的です!」
乗組員「排除だ。殺せ」
乗組員「了解」
部下「嫌だ……殺さないで……」
部下「俺を見逃せばお前達の為に働」
乗組員「黙れ、この『非国民共』め!!」
ズダダ ズダダ ズダダダダ
部下「」
部下「」
乗組員「確認」
乗組員「…………」スッ
乗組員「瞳孔の収束及び脈の動作無し。敵兵の死亡を確認」
乗組員「了解。内部に潜伏していた仲間の情報によるとここの近くに大将が居る筈だ。見つけ次第捕獲し中将に連絡を」
ズドン
乗組員「!?」パッ
乗組員「おい、どうした!?」
乗組員「」
乗組員「!!?」
ズドン
乗組員「」パタン
大将「あいつがやったのか……あいつが!!」
大将「フハハハハハハハハ」
大将「ならば……あのゴミ虫の大切なモノを殺してやろう……」スタスタスタスタ
乗組員「中将、赤小隊との連絡が途絶えました!」
提督「敵も反撃に回り始めたか」
乗組員「いかがなさいますか?」
提督「そうだな……内部に居た艦娘と友軍の退避の状況は?」
乗組員「もう既に全員指定のポイントに退去しております」
提督「陸上から鎮守府を包囲している艦娘達に合流する様に指示を」
乗組員「了解!」
提督「矢矧。お前達は二階の残党を狩れ。殺生は判断に任せるが、確実に全員戦闘能力を奪え」
矢矧「了解!」
提督「私と朝霧乗組員は分散して一階と三階を抑える。一階は残党狩りである為三分の一の戦力とする」
乗組員「了解! では、私が指揮を」
提督「頼む。私は赤小隊との連絡が途絶えた三階攻略の指揮を執る。ついて来い!」
…………。
提督「…………」スッ
乗組員「…………」コクリ
カチャッ キー
提督「っ!」バッ
提督「…………クリア」
提督「どういう事だ……?」
乗組員「中将。こちらも全て確認しましたが、敵の確認出来ずです」
提督「そっちは?」
乗組員「赤小隊の亡骸と敵の死骸以外誰一人として確認出来ませんでした」
乗組員「大将は……もう既に逃走した……?」
提督「いや、これを見てくれ」
乗組員「煙草の消しカスですか?」
提督「そうだ。まだ熱を持っている。ここは元々私が使っていた部屋だ。今は奴がここを使っていると考えるのが自然だろう」
乗組員「ならばまだこの鎮守府内にいる可能性が高いですね」
提督「ああ。そういう事だ」
乗組員「一階の班から連絡。一階にも敵はいないとの事です」
提督「あとは……二階か」
乗組員「中将! 二階の艦娘より連絡! 敵を捜索していた二名の艦娘が消息が不明になったとの事です!!」
提督「今すぐ二階へ向かう。三階には警備の為に四人残し、それ以外は二階へ向かえ!」
乗組員「了解!」
…………。
今日はここまでです!
また来ますね!
翔鶴嫁の人おめでとうございます。かなり翔鶴改二甲が強くなっていたので私も狂喜乱舞してました
矢矧「提督!」
提督「矢矧、概要は聞いたが一体何があった?」
矢矧「申し訳ありません……私の失態で……」
提督「今はお前の責任を追求している暇は無い。何があったのかだけを伝えろ」
矢矧「はい……提督が3階に攻め込んだのと同時刻にで2階に攻め込みました。2階に居た敵はほぼ皆無だった為、比較的短時間で大体の制圧が完了しました」
提督「残りの区画を制圧している間に事が起きたのだな?」
矢矧「はい。これまで通り、2階の踊り場に筑摩と利根を残し、その他の人員で各部屋の確認をしていました。途中二手に別れ、部屋の数が多い左側の区画には私と能代、多摩、鬼怒、阿武隈、五十鈴で確認に回り、数部屋しかない右側に鈴谷と熊野を向かわせました。ですが……」
提督「姿を消したのだな」
矢矧「本当に申し訳ありません」
提督「今は気にするなと言った筈だ。それよりも、右側の区画はどうなっている?」
矢矧「提督の判断を仰いだ方が良いと判断し、部屋の前に五十鈴と鬼怒、阿武隈を配置しています」
提督「分かった。ならば私の手勢で突入する。三人は退かせてくれ」
矢矧「了解」
提督「私がドアを開けて部屋の左側を警戒する。お前は前方と右側を頼む」
乗組員「了解!」
提督「いくぞ……GO!」
ガチャ バタンッ
鈴谷「」
提督「!!?」
乗組員「前方及び右側敵影無し! 中将?」パッ
乗組員「なっ!!?」
提督「先ずは安全の確認からだ! 部屋を全て確認しろ! 彼女にはまだ息がある!」
乗組員「はっ!」
乗組員「敵影、トラップ共に確認出来ず!」
提督「こちらもその形跡は無い。クリアだ」
乗組員「直ぐに医療班に連絡を入れます!」
提督「頼む。急いでくれ」
乗組員「はっ!!」
鈴谷「」
提督「鈴谷。聞こえるか、鈴谷」
鈴谷「うぅ…………うぁぁ……」
提督「鈴谷、私の声は聞こえるか? 私が誰だか分かるか?」
鈴谷「ていと、あぁぁぁぁぁ!! 痛い! 痛いよ!! く、くま、熊野! 熊野が!!」
提督「動くな鈴谷!! 腹部に刺さったナイフが動く! 死ぬぞ!!」
鈴谷「でも!! でも!! く、熊野が死んじゃう!! あいつ、に連れて行かれ、た! こ殺されちゃう!!」
提督「私が殺させはしない。」
乗組員「医療班到着しました!!」
提督「鈴谷の治療は任せる。直ぐに手当をしてくれ」
乗組員「はっ!!」
提督「鈴谷、必ずお前は助かる。大丈夫だ、安心して待っていろ」
鈴谷「提督、お願い……熊野を、熊野を助けて……!!」
提督「ああ、約束だ。もしも果たせなければその時は私の命で償おう」
鈴谷「やくそ、く……だ、よ……」パタン
提督「約束だ」
提督「医療班はこの子を連れて行ってくれ。絶対に死なせてはならない」
乗組員「了解! 可能な限り動かすなよ! お前は上半身、お前が背中、俺が下半身を持ち上げて担架に乗せる。123で行くぞ! 1、2、3、ソレッ!!」
提督「……」
提督「強襲部隊全員に告ぐ。これより2階の制圧地点をもう一度洗う。各階の要所に残した者以外は全員2階に来てくれ」
能代「あの、一つ宜しいでしょうか?」
提督「なんだ?」
能代「それは、私達の確認が甘いという事ですか?」
提督「いや、そうではない」
能代「では、何故でしょうか?」
提督「能代、お前は確実に敵を殲滅し制圧した場所をもう一度制圧に向かうか?」
能代「いえ、その様な事は致しません」
提督「何故だ?」
能代「それは……そこに敵がいる筈が無いからです」
提督「そうだな。では、能代。お前が敵に追われる立場に立ったとしたらお前は何処に逃げる?」
能代「それは、勿論外に……」
提督「多くの敵が待ち構えているとしてもか?」
能代「そうですね……すると…………あっ!」
提督「気付いたか」
能代「はい。敵が来る可能性が低く、来たとしてもさほど警戒していない可能性が高い場所……敵に制圧された地点ですね」
提督「そういう事だ。奴も馬鹿では無い。恐らくは2階の何処かの部屋に潜伏し、警戒が解けてから逃亡を図るだろう」
能代「そうですね。分かりました!」
提督「ならば行動に移れ」
能代「はい! 私達も行動に移ります」
…………。
提督「GO!」
ガチャ バタンッ
乗組員「……ここにもいませんね」
提督「まだクリアリング出来ていない。気を緩めるな」
乗組員「すみません」
提督「右の壁沿いに部屋を回れ。上や床にも気を付けろ。それと、この部屋には小部屋がある。まだ開けるなよ」
乗組員「了解」
提督「なんだ……この臭いは…………血か……?」
乗組員「中将。この大部屋には誰もいません」
提督「その様だな」
乗組員「では、小部屋への扉を開けます。カバーをお願いします」
提督「ああ」
カチャッ バタンッ
乗組員「……」バッ
提督(血の臭いが強くなった……!?」
乗組員「パーテーションの奥をを確認して来ます」スタスタ
提督「待て!」
ズドンッ!
乗組員「グアッ!!?」バタン
今日はここまでです
やっと終わりが見えました。恐らくあと数回の更新で完結になります。
また来ますね!
提督「少尉!!」
大将「残念だよ。邪魔者が現れてしまって」
提督「貴様……!!」
乗組員「」
大将「折角の愉しみを邪魔しに来るとは何たる無礼。この罪は大きいぞ」
提督「愉しみだと?」
大将「もうこのパーテーションは必要ないな」バタン
熊野「……!」
提督「熊野……!」
熊野「んんー!! んんんー!! んー!!」ジタバタ
大将「手足を縛られていて身動きも取れずに隠す所も隠せない。好いている男に自分がこの様な一糸纏わぬ淫らな姿を曝け出す事しか出来ぬ絶望。ふはは、何たる愉悦! そうだ、その泣き顔を私にもっと見せるのだ!」
熊野「んんんー!! んん!」ポロポロ
大将「素晴らしい、その羞恥と悲痛に歪む顔が実に素晴らしい」
提督「貴様! 何をするつもりだ! 何故脱がす必要があった!」
大将「当たり前の事を聞くで無い。この小娘を犯す為に決まっているではないか」
提督「下衆が……!」
熊野「ん……んん……」ポロポロ
大将「小娘よ、本番はお預けだ。それまでは私の指の感触を味わうがいい」ズブッ グチュッ
熊野「んんんー!! んんんー!!」ジタバタ
提督「貴様ぁ!!」チャッ
大将「おっと、撃つなよ。私の手元を見ろ。撃った時にはこの小娘の頸動脈は真っ二つだ」
熊野「んんっ!! んんん!」ピタッ
提督「くっ……」
大将「一応聞いておこう。何故この様な事をした。この小娘共に情でも湧いたか? 己の命が惜しくなったか?」
提督「貴様の事は調べさせて貰った」
大将「ほう」
提督「この国が大東亜戦争に敗れ、満州や朝鮮を始めとしたかつての領土からは大量の日本人が引き返して来た」
提督「だが、それら中には数多の日本人以外の者が混じっていたと言う。そして原爆や本土への無差別爆撃によって多くの民間人が犠牲になっていた当時ならば戸籍を欺く事も可能だった」
提督「敗戦から1年もしない間に帝國海軍は再軍備する事になった。米国側資本主義とソ連側共産主義の対立によって日本は共産主義の脅威に晒される事となった」
提督「米国は自国を護る為に日本を共産主義の防波堤に仕立て上げたかったのだろう。米国は日本の再軍備化の為に莫大な資金を提供し、日本は軍隊や完全に壊滅させられた重工業の復活を遂げることが出来た」
提督「だが、軍隊や政府の要職に就く人間は大幅な変更を余儀なくされた。米国としては、再軍備化が整えた途端復讐心で歯向かわれるのは避けねばならなかった。まあこれは仕方ない事だったのだろう」
提督「その為、米国主導により選抜が行われた。米国に従順であり、能力的にも遜色無い人物。その選抜で選ばれた人物には元軍人等はいたが、何故か一般人が多く選ばれた。それも、軍隊経験が皆無な人物ばかりだ」
提督「まず間違いなく、その大半は引き上げ時に紛れ込んだ他国のスパイだったのだろう。その元一般人は凄まじい勢いで出世して行き、また元軍人等はほぼ全員が公職を追放されたり謎の死を遂げたりした」
提督「佐世保や呉、舞鶴を制圧してお前達の経歴等を洗わせて貰った。お前達が其々の鎮守府に着任する度に一般人が側近として雇われた。そしてその一般人はすぐに出世する。逆らう者は全員死んだ」
提督「本来ならば私の後釜としてここにいる筈だった中将も殺され、私も弱みを握られて殺されかけた。貴様等はこの国をどうするつもりだ? 我が物として乗取りたいのか、それとも祖国とやらの領土にしたいのか?」
大将「そこまで調べていたか。ならば分かっているだろう。私を殺したところで大本営には私の同胞がいくらでも……」
提督「大本営は既に壊滅した。皆殺しだ」
大将「なっ!?」
提督「もう既に大本営に対して空襲を行った。日本を破滅させようとする害虫の巣窟は真っ先に潰さねばならない拠点であったからな」
大将「まさか私への復讐よりも優先していたとはな……ふ、ふふふ……」
提督「貴様もここで死ぬがいい」
大将「死ぬのは貴様だ! 銃を床に置け。さもなくばこの小娘を殺すぞ!」
提督「…………」ジャキッ
大将「このナイフが見えていないのか!」
提督「私はこの手であまりにも多くの艦娘の命を奪ってしまった。一人余分に命を奪う事になったとしても何ら変わりは無い」
大将「嘘を言うな! 先程は動きを止めたではないか!」
提督「貴様には念の為に確認を取らねばならなかったからな。貴様等の野望や行動理念について等だ」
提督「熊野、私がお前の命を奪う事を許してくれ」
熊野「んん……」コクン
提督「お前を一人では逝かせない。私もすぐに後を追う」チャッ
大将「少しでも動いてみろ! 指一本動いたしゅ」
ズドン! カランカラン
大将「なぜ……きさ、ま…………が……」
バタン
提督「良くやってくれたな。助かった」
乗組員「いえ、中将があいつの注意を引いてくれていたお陰で気付かれずに撃つことが出来ました」
提督「被弾した部分は大丈夫か?」
乗組員「何とか防弾チョッキで防ぐ事が出来ました。まあ、若干骨が逝ったかもしれませんがね」
提督「戻ったらすぐに医療班に診てもらってくれ」トン
乗組員「痛たいですよ。了解です」
提督「一応奴の生死の確認を……」スッ
提督「確実に死んでるな。終わったな」
熊野「んん! んんんー!!」
提督「分かっている。恥ずかしいかも知れないが脚と腕の縄を斬る。後ろを向いてくれ」
熊野「んん……」クルッ
乗組員「よろしければ私は出ていましょうか?」
提督「ああ。そうしてくれ」
乗組員「では、失礼します」
提督「絶対に動くなよ」ザク ザク
提督「よし、斬れたぞ。その猿ぐつわも外した」
熊野「ゲホッ……提督…………」ポロポロ
提督「私の軍服で申し訳ないがこれを着なさい」パサッ
熊野「ありがとうございます……」
提督「こんなに殴られて……辛かっただろう」
熊野「身体の傷は大丈夫ですわ……ただ…………男性器は挿れられなかったとはいえ……私は穢されて……うっ……」
提督「……慰めにはならないかも知れないが、熊野は穢されてなどいない。少なくとも私はそう思っているよ」
熊野「なら……なら、私を抱いては頂けませんか? 提督に抱いて頂ければ悪夢のようなアレも上書き……いえ忘れる事が出来ると思うのですわ」
提督「それは出来ない。私には瑞鶴がいる。ここでそれを許してしまったら私は瑞鶴を裏切る事になってしまう」
熊野「じょ、冗談ですわ。今のは聞かなかった事に……」
瑞鶴「良いよ提督さん。熊野を抱いてあげて」
提督「瑞鶴!? 何故ここに」
瑞鶴「最後の攻撃隊の回収が完了したからよ。それよりも、熊野の願いを叶えてあげて」
提督「本当にいいのか?」
瑞鶴「もちろん今回に限ってだからね! 浮気は許さないから!」
提督「分かった……ありがとうと言うのも変だが、ありがとう瑞鶴」
瑞鶴「うん」
提督「熊野はそれでいいか? 私にとって熊野は大切な部下であり、間違いなく好意は抱いている。だが、私にとっての一番は瑞鶴だ。それだけはあらかじめ言わせて確認しておきたい」
熊野「ええ、大丈夫ですわ。まあ、悔しいと言えば悔しいですわ。だけど、私の初めては穢らわしい男ではなく、命を救ってくれた人になります。それだけで私は救われますわ。ただ……」
提督「何だ?」
熊野「私と交わる時だけで良いので……その時だけは私の事だけを考えて愛して下さいな」
提督「約束しよう」
熊野「ありがとうございます。では、私は0時を回ったら提督の元に参ります。それでよろしいですわね?」
提督「ああ」
瑞鶴「自分から言っといてあれだけど、何か複雑な気分……」
提督「必ず穴埋めをするから、今日だけは耐えてくれ」
瑞鶴「うん。楽しみにしてるね」
提督「過度な期待はするなよ?」
瑞鶴「はいはい」
提督「では、二人ともとりあえず外に出よう」
瑞鶴「うん!」
熊野「了解ですわ」
………………………………。
今日はこれで終わりです
また来ますね!
翌日
提督「さて……」
熊野「…………」スウスウ
コンコン
提督「誰だ。まだ就寝時間の筈だが」
瑞鶴「私よ」
提督「熊野が寝ている。起こすのは可哀想だ。私がそっちに行こう」
瑞鶴「うん」
カチャッ
提督「どうしたんだ? こんな時間に」
瑞鶴「私も行くよ」
提督「何の話だ?」
瑞鶴「惚けても無駄よ。提督さん、誰も起きて来ない内にクーデターの責任を取りに行くつもりだったんでしょ?」
提督「……………………」
瑞鶴「やっぱりね」
提督「そんな素振りを見せた覚えも話した覚えも無いが何故分かった?」
瑞鶴「提督さんの事だもん。私には手に取るように分かるよ」
提督「……流石だな、瑞鶴」
瑞鶴「どういたしまして。でも、私以外にもう一人いるわよ」
提督「……全く、私は部下に恵まれ過ぎている様だな」
乗組員「中将、何も言わないなんて水臭いではありませんか。私もお供します」
提督「……撃たれた箇所は大丈夫なのか?」
乗組員「ええ。あんなのは鳩に豆鉄砲ですよ」
提督「その用法は間違っているぞ」
乗組員「……冗談です。話を戻しますが、私も中将のお供をさせて下さい」
提督「駄目だ」
乗組員「何故ですか!?」
提督「私がここから去ってしまったら誰がこの鎮守府の指揮を執る?」
乗組員「それは……ブルネイの提督等が……」
提督「あの方は確かに向こう側の人間ではない。それに加え信用も置ける。だが、一つ忘れていないか?」
乗組員「分かりません。何をでしょうか?」
提督「ブルネイは前線基地だ。ブルネイに限らずラバウル、タウイタウイ、マカオ、ビルマ、トラック等生き残っている、又は壊滅してしまったものの再建せねばならない泊地や基地は沢山ある。その様な重要な拠点から優秀な人材を引き抜いてはならぬ」
乗組員「……ですが、しかし……」
提督「せめて今度こそは、私自身の手で全面的に信用出来る者にこの鎮守府を委ねたい」
乗組員「中将……」
提督「必ずお前達は私が護り抜いてみせる。それ位の事をしてみせないと、愚かな私所為で犠牲となったみんなに顔向けすら出来ない」
乗組員「私ではその様な大任を全う出来るとは思えません」
提督「お前なら出来る。私が能力の無い者を私の片腕として扱う筈が無いだろう。こんな滅茶苦茶な状態で受け渡すのは本当に悪いが、私の願いを聞き入れてくれないか?」
乗組員「…………分かりました。中将の意思は私が受継ぎましょう」
提督「ありがとう」
乗組員「もう二度とあの様な歴史の繰り返しはさせません。必ず私が平和な海を艦娘や貴方の仲間達と共に取り戻します」
提督「頼む。だがその言葉で己を『呪う』なよ」
乗組員「はっ!」
提督「では、私は行くよ。また廻り逢う時を楽しみにしている」ビシッ
乗組員「はっ! 中将! 今まで本当に……本当にありがとうございました!!」ビシッ
提督「ああ。後は頼んだ」ポン
提督「瑞鶴、行こう」
瑞鶴「うん」
………………………………
……………
……
提督さん
なんだ?
私達、これからも生きる事が出来るのかな?
難しいだろうな。何せ私一人でクーデターの責任を負うのだからな。瑞鶴は生きたいのか?
ううん、提督さんと一緒ならどっちでもいい
そうか
ねぇ、提督さん。もしもだよ? もしも私達が生き残る事が出来たらさ……
ん?
ううん。やっぱりなんでも無い
そうか?
あ、でももう一つ言いたい事があったよ
これからは何があってもずっと、ず〜っと瑞鶴と提督さんは一緒だからね!
数ヶ月後
大和「提督からの伝言です! 皆さん聞いてください」
武蔵「これより鎮守府の総力を挙げて破壊され尽くされた戦線と艦隊を整える事となった」
摩耶「やっと上のゴタゴタが収まったのかい?」
長門「ああ、漸くな。長かった」
鈴谷「鈴谷は病院暮らしの所為であっという間だったよ〜」
熊野「鈴谷の背中の傷が治って本当に良かったですわ」
鈴谷「まあね〜」
武蔵「私語は慎め」
鈴谷「ちえっ、は〜い」
大和「艦隊編成の辞令等は後ほど追って知らせます。ですが、長い間本国の外にいた艦娘が一人戻って来ました。雪風」
雪風「はい」
大和「正式な辞令はまた後ほどになりますが、先に通達します。陽炎型駆逐艦八番艦雪風、貴方は本日付けで第十八駆逐隊から除籍とします」
浜風「!?」
雪風「はい」
大和「その代わり、貴女には第十七駆逐隊に所属して貰います……いえ、復帰と言った方が良いかもしれませんね……さあ、入って来て下さい」
カチャッ
雪風「あ……」
天津風「皆さんお久しぶりです。陽炎型駆逐艦九番艦天津風、帰還しました」
武蔵「天津風は今朝方シンガポールより帰投した。配属先は第十七駆逐隊となる。雪風、頼んだぞ」
雪風「…………」
スタスタスタスタ
天津風「雪風」
雪風「あまつ……風」
天津風「やっとこの言葉が言えるわね。ずっと言いたかったわ」
雪風「…………」
天津風「ただいま、雪風!!」
雪風「おかえりなさい、天津風」
雪風「また廻り逢う時まで沈まない」
HAPPY END
長い間お付き合い下さり誠にありがとうございました。この物語はこれで完結とさせて頂きます。
もしも何か疑問点や質問があれば是非書き込んで下さい。基本的には全て御回答致します。また、感想を頂ければとても嬉しいです。
もしかしたらですが、このSSをリアルタイムで読めなかった方もいらっしゃると思いますので、SS専用のメールアドレスを載せておきます。
ご質問やこのSSへの感想、ご意見等がございましたら、お気軽にメールをして下さい。
今後、暫くは瑞鶴SS一本に絞って更新していきますが、そちらも完結した後は前作の続編をやってみようかと思っております。確定では無いのでご了承下さいませ。
最後に繰り返しになってしまいますが、7ヶ月もの間お付き合い下さいましてありがとうございました。
そして毎回コメントをして下さった方々、貴方達のお陰でモチベーションを失わずに完結させる事が出来ました。本当にありがとうございました。
皆様とまた逢える時を楽しみにしております。
SS専用メールアドレス
zuizuigt@gmail.com
前作
提督「瑞鳳、瑞鶴……いつか……また…」
提督「瑞鳳、瑞鶴……いつか……また…」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1415367714/)
乙です
乙です。
そして向こうの方もどんな感じで終わるか楽しみにしています
このSSまとめへのコメント
絶望に叩きおとしてもらいたいw
逆落とし戦法出てくる辺り、マニアですねw
と思ったら、艦これで既出だったかw
なんでもないですw
雪風が少しずつ壊れて行く……
辛えなあ.....雪風のせいじゃないのに.....
もしかして、金剛「提督のハートを掴むのは~」の人?
スレ主…磯風は陽炎型12番艦、浜風は陽炎型13番艦なのです(≧▽≦)
タイトル見て思ったけど、これって艦これvocalの流れ星の歌詞の一部?
※8
前作で作者が、キネマ106のながれぼしを聴いて雪風のシナリオを閃いたって書いてたし、歌詞の解釈を間違えたって言って、スレタイ修正の為にスレを建て直してたから間違いないと思う
無能が…指揮官か…最悪だな(;・ω・)
雪風の目の前で…浦風、磯風、浜風が…史実とは違うと言っても…かなりきついな…(;・ω・)
そして…天津風(´;ω;`)
とうとう完結したのか。艦これSSでも比較的良作だったと思う
最終的には生き残った艦娘全員が救われたみたいだし、雪風も立ち直るきっかけも出来たしで良かったね
18駆ではなく17駆…そして17駆ではなく16駆なのでは( ̄▽ ̄;)
…最後まで楽しめました♪
史実メインなのか。最近あまり史実系見ない気がする