岡部「はあ……」
ダル「ん? どしたんオカリン、元気無さそうだけど」
岡部「うむ……少し疲れているのかもしれん」
紅莉栖「それ、夏バテとかじゃないの? ちゃんと食べてるの、あんた」
岡部「食欲もあまりなくてな……だが、そういうのではないと思うのだが」
まゆり「トゥットゥルー☆ みんないるー?」
紅莉栖「ハロー、まゆりは今日も元気そうね」
まゆり「うん♪ 今日もまゆしぃは元気なのです」
ダル「まゆ氏の元気が少しでもオカリンにあれば」
まゆり「ええー? オカリン、元気ないの?」
岡部「ああ……疲れが溜まっているみたいでな」
まゆり「うーん……それはきっと、マユリニウムが不足しているからだよ」
紅莉栖・ダル「……は?」
岡部「なっ……!」
ダル「まゆりにうむ……? なんぞそれ?」
まゆり「あのね、マユリニウムっていうのは」
岡部「ま、まゆり! それはまた今度にしろ! ほら、俺はこの通り元気だ!」
紅莉栖「……その態度、明らかに怪しいわね。まゆり、説明してくれる?」
まゆり「えっと、マユリニウムは」
岡部「ストップ! ストーップ! まゆり、その話はするな!」
まゆり「ええー?」
ダル「オカリンが必死すぎる件について」
岡部「き、気にするな! ……ともかく、この話はここまでだ!」
ダル(怪しい)
紅莉栖(……なにかありそうね)
まゆり「?」
ダル「牧瀬氏、ちょいちょい」
紅莉栖「ん? なによ橋田」
ダル「いいからいいから。……ちょいとお耳を」
ダル「(……牧瀬氏、どう思う?)」
紅莉栖「(まゆりにうむ、のことね。……怪しいにも程があるわ)」
ダル「(僕も同感だお。牧瀬氏、ここは一つ――)」
紅莉栖「(――それはいい考えね、乗らせてもらうわ)」
岡部(あの二人、内緒話などしてなにを企んでいる……嫌な予感しかしないな)
ダル「まゆ氏、フェイリスたんはメイクイーンにいる?」
まゆり「うん、今日はフェリスちゃんはお店にいるはずだよ」
ダル「おk、把握。オカリン、僕はフェイリスたんに会いに行ってくるお!」
岡部「そ、そうか。フェイリスによろしく言っておいてくれ」
紅莉栖「あっ、私もホテルに忘れ物取りに行こうと思ってたのよ」
まゆり「忘れ物? クリスちゃんも出かけちゃうの?」
紅莉栖「そういうことになるわね。一、二時間したらまた戻ってくるわ」
岡部「そうか、……機関の計画が進んでいるらしい、十分警戒するように」
紅莉栖「はいはい、厨二病乙。じゃあ、行ってくるわ」
ダル「さらばだオカリン、まゆ氏」
まゆり「いってらっしゃーい、気を付けてねー」
岡部(二人とも行ってしまったか。ということは……)
まゆり「二人とも行っちゃったねー。まゆしぃは少し寂しいのです……」
岡部「あ、ああ、そうだな……」
まゆり「でも、オカリンと一緒にいられるのは嬉しいよ。ねっ、オカリン?」
岡部「……恥ずかしいことを言うな。と、ところでまゆり」
まゆり「どうしたの?」
岡部「その……アレをお願いしたいのだが」
まゆり「アレ? うーん、アレって言われてもわからないよー」
岡部「だ、だからだな……その、マユリニウムがだな」
まゆり「えっ? あっ、アレってアレのことだったんだね。うん、いいよ♪」
岡部「済まないな。……では、頼む」
岡部がそう言うとまゆりはソファーから立ち上がり両手を広げた。
まゆり「オカリン、はい♪」
岡部「うむ……」
岡部はまゆりの方に歩き出し、そのまま止まらずまゆりの身体と腕に包まれた。
岡部「……はあん」
まゆり「どう、オカリン? マユリニウムちゃんと出てる?」
岡部「ああ……ちゃんと摂取できているぞ。むう……はあ……」
まゆり「えへへ、オカリンは甘えん坊だね」
岡部「あ、甘えてなどいない! ただ俺はこう、マユリニウムをだな……」
その光景を陰から覗く二人の姿があった。
紅莉栖「(なっ……なっ、ななな、なにやってんのよあの二人!?)」
ダル「(お、落ち着くんだ牧瀬氏……二人に気づかれるお)」
紅莉栖「(これが落ち着いていられるか! マユリニウムとか言って抱きしめてるだけだろうが!)」
ダル「(うーん、これにはさすがの僕も驚愕しますた。いや、二人がまさかそんな仲だったとは)」
紅莉栖「(そ、そんな仲って……どういう意味?)」
ダル「(いや、だからつまり二人は)」
紅莉栖「(二人は……?)」
ダル「(恋人同士だったのである、リア充憎し)」
紅莉栖「(い、いやあああああああ!!)」
ダル「(お、落ち着け牧瀬氏!)」
ダル「(ま、まあ、まだ恋人と決まった訳じゃないし様子を見てみるとか)」
紅莉栖「(そ、そうね。あの二人は幼馴染ってだけだし)」
ダル「(いや、その可能性は薄いかと)」
紅莉栖「(……ああ?)」
ダル「(ま、牧瀬氏……僕を脅してもなんにもならないお……)」
紅莉栖「(お、脅してなんかいないわよ……)」
ダル「(とりあえず、様子見ってことでおk?)」
紅莉栖「(おk。……どうせすぐ離れるわよね)」
ダル「(こんな暑い日に十分も二十分も抱き合っていられる訳が――)」
五分後
岡部「はあ……まゆり……」
まゆり「えへへー」
紅莉栖「…………」
ダル(牧瀬氏が震えている……これは怒りなのか、それとも別の感情なのだろうか)
――――――――――――
十分後
岡部「すう……むう……はあん」
まゆり「もうー……くすぐったいよー」
紅莉栖「…………」
ダル(牧瀬氏の顔に青筋が……まさにビキビキいってるお)
二十分後
まゆり「オカリン、苦しいよー」
岡部「す、済まない、少し力を入れ過ぎたな……」
まゆり「大丈夫だよ、まゆしぃは逃げないから」
紅莉栖「…………」
ダル「(牧瀬氏……いつまでも見てるのもアレなので僕はそろそろ)」
紅莉栖「…………」ガシッ
ダル(……ダルしぃは逃げられませんでしたお)
三十分後
まゆり「ねえ、オカリン。まだこうしてるの?」
岡部「あ、ああ、マユリニウムは貴重な成分だからな……もう少しだ」
まゆり「そうなの?」
岡部「お前は人質なのだ、俺の言う通りにしていればいい……はあん」
紅莉栖「…………」
ダル「(牧瀬氏、さすがにこれ以上覗くのは……)」
紅莉栖「…………ふ」
ダル「ふ?」
紅莉栖「ふ、ふふふ……フフフフフ……」
ダル「ま、牧瀬氏?」
紅莉栖「――ふっざけんなああああああ!!」
ダル「ひ、ひいっ!?」
岡部「……っ!? だ、誰かいるのか?」
まゆり「あれ? この声は……クリスちゃん?」
紅莉栖「岡部えええええ!!」
岡部「ど、どうしたのだ助手よ」
紅莉栖「なーにがマユリニウムよ! ただ抱き合ってるだけじゃない!」
岡部「なっ……お前、見ていたのか!?」
ダル「オカリン、全て僕の責任だお……許してくれ」
紅莉栖「……陰から全部見させてもらったわ」
まゆり「ええー……まゆしぃは恥ずかしいのです」
ダル「おお、恥ずかしがるまゆ氏というのもなかなか……」
紅莉栖「橋田、ちょっと黙ってて」
ダル「は、はい! 自重します!」
紅莉栖「さて、岡部。全部説明してもらうわよ」
岡部「な、なにを説明しろと言うのだ」
紅莉栖「決まってるじゃない、マユリニウムについてよ」
岡部「ぐっ……そ、それは」
紅莉栖「あんたが話さないんだったらまゆりに聞いてもいいのよ。ねえ、まゆり?」
まゆり「えっ? うーん……オカリン、クリスちゃんに話してもいいかな?」
岡部(まゆりのことだ、全て包み隠さず話すだろう……それなら自分で話した方がまだマシか)
岡部「わかった、そこまで知りたいと言うのならば話してやろう……」
ダル「さすがのオカリンも牧瀬氏のプレッシャーには勝てなかったのである」
紅莉栖「橋田、なにか言った?」
ダル「き、気のせいだと思われ」
紅莉栖「で、岡部。マユリニウムっていったいなんなのかしら?」
岡部「その、マユリニウムとは……」
ダル「マユリニウムとは?」
岡部「……つまり」
紅莉栖「つまり?」
岡部「…………まゆりから発生する疲れを癒す成分だ」
紅莉栖・ダル「……はあ?」
ダル「疲れを癒す成分、マユリニウム……そんなの聞いたことない件について」
岡部「それは……俺が発見した成分だから、というか……」
紅莉栖「要するに、まゆりを抱きしめたらマユリニウムが出て疲れが取れると」
岡部「あ、ああ、そういうことだ。さすが我が助手、理解が早いではないか」
紅莉栖「岡部」
岡部「な、なんだ」
紅莉栖「それ、言ってて恥ずかしくないの?」
岡部「うぐっ……い、言っている意味がわからんな」
紅莉栖「まゆりから出る、マユリニウムねえ……ある意味厨二よりイタイこと言ってるわよ、アンタ」
岡部「い、イタイとか言うな! それとその可哀想な者を見るような目はやめろ!」
まゆり「そうだよー。オカリンはマユリニウムがあったから大学に合格できたんだよ?」
ダル「へっ? なにそれ?」
まゆり「えっと、あれは去年の秋だったかな――」
岡部高校三年の秋 岡部の部屋
岡部(んんっ……疲れたな。昨日は遅くまで勉強してたからか……)
まゆり「オカリーン、トゥットゥルー♪」
岡部「まゆりか。俺は受験生なのだから邪魔をするなと言っているだろうが」
まゆり「大丈夫だよ、まゆしぃは邪魔なんてしないのです。ほら、お菓子持ってきたよー」
岡部「おお、でかしたぞまゆり。丁度小腹が空いていたところでな……」
まゆり「えへへー。……あれ? オカリン、目の下にクマができてるよ?」
岡部「ああ、昨日は寝るのが遅かったからな」
まゆり「遅くまでお勉強してたの? えらいねオカリン」
岡部「当然だ。まあ、この鳳凰院凶真が真の力を解放すればその様な必要もなくなるがな……」
まゆり「真の力?」
岡部「それを解放すればこの世界が混沌に満ち溢れてしまうだろう。だから抑えねばならんのだ」
まゆり「そっかー。オカリンはやっぱりすごいんだねー」
岡部「当り前だ、何故なら俺は……鳳凰院凶真だからな! フゥーハハ……ふわぁ」
まゆり「眠そうだね、オカリン」
岡部「うむ……来てすぐで悪いが少し仮眠を取りたいのだが」
まゆり「まゆしぃのことは気にしなくていいよ。ほら、休んで休んで」
岡部「済まないな、まゆり。……一時間位寝るとするか」
まゆり「オカリン、おやすみー」
岡部「ああ……」
――――――
――――
――
―
一時間後
岡部「んっ……ん?」
岡部(……布団で寝ていたはずだが、やけに狭く感じる……なっ!?)
まゆり「すぅ……すぅ……」
岡部(まゆりのヤツ……勝手に布団に入ってきたのか)
まゆり「すぅ……んんっ……」
岡部(まったく……まあいい、このまま寝させておくか。……ん?)
岡部「体が……軽くなった気がする」
岡部(一時間しか寝ていないはずなのに疲れがどこかに行ってしまったようだ……)
岡部(疲労感も眠気も無い。むしろ頭はスッキリしている……)
岡部(これなら勉強すれば捗りそうだな……よし、やるか)
さらに一時間後
まゆり「んー……あれ? オカリン、起きてたの?」
岡部「ああ、まゆりは気持ち良さそうに寝ていたから起こさなかったぞ。感謝しろ」
まゆり「オカリン、ぐっすり眠れた?」
岡部「それが普通に何時間眠るよりもよく眠れたのだ。おかげで疲れは取れた」
まゆり「それは良かったねー。でも、どうしてだろう?」
岡部「むう……別に気候の問題では無いだろう、室温も特に変わったことはない」
まゆり「時間が短かったのが良かったのかな」
岡部「短時間寝るだけの方が効果がある、という説もあるが……」
まゆり「あっ、もしかして……」
岡部「どうしたまゆり、なにか心当たりでもあるのか?」
まゆり「えっとね、まゆしぃと一緒に寝たからだと思うのです」
岡部「……うん?」
岡部「まゆりと一緒に寝たからだと? なにを馬鹿なことを」
まゆり「でもそれしか考えられないよー」
岡部「……まあいい。それなら今度俺が疲れた時にでも試してみるか」
まゆり「じゃあ、今日も遅くまで頑張って、明日また試してみようよ」
岡部「まゆり……俺に二日連続で寝るなと言いたいのか」
まゆり「あっ……それもそうだね」
岡部「また疲れた時、お前がいたら実験してやろう。ほら、もう遅い。家に帰れ」
まゆり「うん、じゃあねオカリン。がんばってねー」
岡部(実験、か……ん? もしそれをするとなると俺はまたまゆりと一緒の布団に……?)
岡部(さ、さすがにそれは無いな……別の方法にしよう)
それから数日後 またまた岡部の部屋
まゆり「トゥットゥルー☆」
岡部「また邪魔をしに来たのかまゆり」
まゆり「邪魔なんてしないって言ってるのに……オカリンは意地悪なのです」
岡部「フン、人質は人質らしく俺の言う通りに……ふわぁ」
まゆり「あっ、オカリン今日も眠そうだね。じゃあ……ほら、ほらほら」
岡部「布団をポンポン叩いて何のつもりだ……」
まゆり「だから、一緒に寝ようよ。疲れが取れるんでしょ?」
岡部(こ、これはやはり恥ずかしいな……別の方法にするとしよう)
岡部「あれから考えたのだが……別に共に睡眠を取る必要は無いのではないか?」
まゆり「えっ? どういうこと?」
岡部「つまり、近くにまゆりがいれば良いだけなのではないか、ということだ」
まゆり「まゆしぃが隣にいればいいってことなの?」
岡部「そうだ。だから寝る必要は無い」
まゆり「そうなのー? オカリンとお昼寝するの、子供の頃みたいで楽しかったのに……」
岡部「ええい、恥ずかしいことを言うな! ……ともかく、寝る必要は無い」
まゆり「……あっ、そうだ」
岡部「ん? どうしたんだ?」
まゆり「じっとしててね、オカリン……」
岡部「な、なんだ……何故こっちに近づいてくるんだ!?」
まゆり「んー……えいっ!」
岡部「ぬおっ!? ま、まゆり!?」
岡部「な、何故俺に抱き着いているのだ!?」
まゆり「えへへー、隣よりもっと近くに行けば効果が出るかなって思ったのです」
岡部「なにを馬鹿なことを…………ん?」
まゆり「んー……オカリンあったかーい……」
岡部(……気のせいだろうか、疲れが取れていくような……なんだこの感じは)
まゆり「あれ? オカリン、どうしたの?」
岡部「いや……昨日と同じように疲労感が消えていっている……気がする」
まゆり「本当に? ほら、まゆしぃの考えは正しかったのです!」
岡部(しかし、これは一体……まゆりに何か力があるというのか?)
岡部(まゆりと密着すると疲れが取れる……温泉の様に、まゆりから何か特殊な成分でも出ているかのようだな)
岡部(特殊な成分……まゆりから……まゆりの成分……マユリニウム)
岡部「――そうか! まゆりからはマユリニウムが出ているのか!」
まゆり「――ってオカリンが急に言ったんだよね」
岡部「あ、ああ……」
ダル「…………」
紅莉栖「…………」
まゆり「あれ? 二人とも、急に黙ってどうしたの?」
ダル「オカリン」
紅莉栖「岡部」
岡部「……うん?」
ダル「リア充、乙」
紅莉栖「爆発しろ。つーか爆ぜろ、もげろ」
岡部「な、なんだその言い方は!? 俺はリア充などでは……」
ダル「聞きました、牧瀬さん? あれでリア充ではない、なんて言ってますわよ?」
紅莉栖「有り得ないですわね、橋田さん。もう何て言うか死ねばいいのに、って感じですわね」
岡部「ええい、その気持ち悪い話し方もやめろ!」
まゆり「それからオカリンはマユリニウムのおかげで大学に合格できたんだよね?」
岡部「ま、まあ、そういうことになるな……疲れはそのおかげで吹き飛んだのだから」
ダル「疲れたらまゆ氏に抱き着いてたってこと? それってどん位のペースで?」
岡部「それは……」
まゆり「えっと、二日に一回は会ってたからその度にだったかな」
紅莉栖「……へえ、そうなの」
岡部「な、なぜ怖い顔をしているのだ助手よ……」
紅莉栖「別に、なんでもないわ。……つーか、高校生同士で抱き合うとか……ねえ」
ダル「それ、誰がどう見ても恋人同士にしか見えない件について」
岡部「なっ……!? こ、恋人だと!?」
まゆり「ええっ? そ、そうなの……?」
岡部「い、いや、そういうつもりは無かったのだ。まゆりはその、別に……」
ダル「オカリン、オカリン」
岡部「なんだダル、人の話は最後ま――はっ」
まゆり「そっか……まゆしぃはそういう風にはなれないんだね……」
岡部「ま、まゆり? なぜ悲しそうな顔をするんだ?」
紅莉栖「あんた……最低ね」
岡部「ま、待て! 俺は研究のためにもマユリニウムを摂取していたのであって……」
ダル「オカリンの立場がどんどん危うくなっている……これはメシウマだお」
岡部「人の不幸を喜ぶな! と、ともかく! マユリニウムは存在するんだ!」
ダル「へえ、それならさ――クリスニウムも存在したりして」
紅莉栖「……へっ?」
岡部「く、クリスニウム?」
ダル「まゆ氏がマユリニウムなら牧瀬氏はクリスニウムかと」
紅莉栖「そ、それってつまり……その」
ダル「そう、牧瀬氏からもオカリンを元気にさせる特殊な成分があるかもしれない」
岡部「なに……? いや、それはさすがに……」
ダル「でも、まゆ氏だって普通の女の子だお。それなら牧瀬氏にも可能性は十分ある訳で」
紅莉栖「な、なるほど……橋田の言うことにも一理あるわね」
まゆり「えー……まゆしぃが特別だった訳じゃないの……?」
ダル「それでオカリンが元気にならなかったら、マユリニウムは存在するってことになるんじゃね?」
岡部「それは……そうかもしれないが」
紅莉栖「そ、それって……私が岡部と抱き合う必要があるわよね」
岡部「なっ……待て! なぜそうなる!?」
紅莉栖「だ、だって、同じ条件でやらないと意味が無いじゃない」
ダル「その通り。さあ、オカリン。牧瀬氏をガバッと、ほらガバッと」
紅莉栖「べ、別に私もしたくてやってる訳じゃないんだからな! これは研究のためであって……」
まゆり「オカリン、クリスちゃんもぎゅーってするの……?」
岡部「ぐっ……だ、だが……」
ダル(まっ、マユリニウムとかある訳ないだろ常考。女の子を抱きしめたら元気になるのは男として当然だお)
ダル(……牧瀬氏も羨ましそうだったし、これで満足してくれるだろう)
ダル(しかし、なぜオカリンはモテるのだろうか……)
ダル(……なんだか、悲しくなってきたお)
紅莉栖「こ、こうでいいの……?」
顔を赤らめながら紅莉栖は腕を広げ岡部を待つ。
岡部(ど、どうしてこうなった!? こればかりは回避せねばならん……)
岡部(……なにか無いか、この場を切り抜ける方法は)
岡部(例えば……まゆりでなければならない理由、それがあれば……)
岡部(まゆりの特徴――っ! そ、そうだ! これなら、問題はあるかもいしれないが切り抜けられる……!)
紅莉栖(……マダー?)
紅莉栖(で、でも私……よく考えたら岡部に抱きしめられるのよね……)
紅莉栖(……これは、恥ずかしいけど……チャンス?)
紅莉栖(って、なんで私はチャンスとか思ってるんだ!?)
ダル(……両者黙ったまま動かず、なにが起きているのだろうか)
まゆり「……むー」
ダル(むくれるまゆ氏可愛すぎワロタ)
岡部「ま、待ってくれ! 助手ではその……疲れを取る成分は生成されないのだ」
ダル「えっ? そうなん?」
岡部「ああ、実はその成分を出す人間は特徴があってな……」
紅莉栖「特徴……つまり、まゆりにはその特徴があるけど私には無い」
岡部「そういうことになるな……だから助手はこの実験には不適切である!」
ダル「ふーん。で、その特徴ってなんぞ?」
岡部「と、特徴は特徴だ」
紅莉栖「だからそれについて説明しなさいよ。……私じゃダメな理由を」
岡部「ど、どうしても言わなくては駄目か?」
まゆり「まゆしぃも気になるのです。オカリン、教えてよ」
岡部「それは……」
三人「それは?」
岡部「……胸部が発達しているかどうかだ」
ダル「へっ?」
助手「はあ?」
まゆり「……?」
岡部「い、以上だ!」
まゆり「胸部って、えーっと……」
ダル「つまり、おぱーいが大きいかどうかってことでおk?」
岡部「……そういう言い方もできるな」
ダル「ふーん……」
まゆり「へーえ……」
岡部「な、何だその目は」
まゆり「オカリン、えっちだねー」
ダル「オカリンもそういうのに興味があったんだな」
岡部(ぐっ……ここは我慢だ、こうしなければこの状況を回避できん……)
ダル「まあ、男としては大いに賛同できるというか納得できるという――あ」
岡部「どうしたダル」
ダル「……牧瀬氏が」
岡部「助手が? ……なっ!?」
助手「……どーせ私は小さいですよ。ええ、そうですとも……ふふ、フフフ」
まゆり「クリスちゃんが部屋の隅っこでいじける……」
岡部「ど、どうしたのだクリスティーナ!?」
紅莉栖「…………」
ダル「哀れ牧瀬氏……」
岡部「……ダル、助手はなぜあんなに落ち込んでいるのだ?」
ダル「うーん、それを僕が言うとちょっとアレなんだお。まあ、つまり」
岡部「つまり、何なのだ」
ダル「まゆ氏に胸の差で完敗したのがショックだったという訳」
岡部「なにっ!? べ、別に勝ち負けではなく適しているかしていないかの問題であって」
紅莉栖「……適していない。胸が、……適していない」
ダル「牧瀬氏は息していない……」
まゆり「クリスちゃん、元気出して。大丈夫、貧乳は正義なんだよ?」
紅莉栖「……くっ」
ダル「まゆ氏の無自覚で無慈悲な言葉が牧瀬氏にクリーンヒット……これは立ち上がれない」
岡部(……思ったよりマズイことになってきている気がする)
ダル「しかし、胸の大きさとは。それがマユリニウムに必要なん?」
岡部「……まゆりは年下だ。年下の者に頼っても不安や疲れは解消されない、と俺は考えている」
ダル「あれ? でもまゆ氏も年下な件について」
岡部「だが、胸部の発達したまゆりならばその点をカバーできる」
ダル「胸の大きさが包容力を生むと」
岡部「そういうことだな」
ダル「年下である場合は巨乳である必要がある……オカリンがただのおっぱい星人という可能性が」
岡部「そ、それは無い! ……と思う、多分」
ダル「んじゃ、年下で巨乳ならマユリニウムみたいなのが出るってことでおk?」
岡部「まあ、そういうことになるかもしれんな」
岡部(……本当はその場で考えたでまかせだが)
??「ふっふー……それはイイことを聞いたニャン」
岡部「……っ!? だ、誰だ!」
まゆり「あれ? この声は……」
このSSまとめへのコメント
こういうのがいいんだよ・・・イチャラブチュッチュとかセクロスとかじゃなくてこういうのがいいんだ。まゆりみたいな人にこんなことされたら即落ちだよ。