紅莉栖「岡部、IS学園に転入して」(1000)
Steins;GateとIS〈インフィニット・ストラトス〉のクロスオーバーなSSです。
時間軸はシュタゲ→アニメ終了後。 IS→原作7巻まで。
自身、どちらも原作アニメゲーム視聴読了プレイ済みです。
世界線、時間軸等難しい作品ですので、矛盾等あるかと思いますが生暖かい目でお願いします。
NIPでのSS投稿はこれが初めてになりますので、作法マナー至らない点がありましたら申し訳ありません。
まま長くなると思うので、よろしくお願いします。
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ツッコみ大歓迎! ヽ(*゚д゚)ノ イクヨー
岡部「助手? 何を言ってるのだ……藪から棒に」
紅莉栖「ちょっと信じ難いんだけど……アンタにIS適性があるみたいなの」
岡部「おいクリスティーナよ、先ほどから何を訳の解らんことを……。
IS-インフィニット・ストラトス-は女しか動かせん。
常識ではないか」
紅莉栖「例外が居るでしょうが」
岡部「あぁ、何だったか日本人の男子が一人……動かして話題になっていたな」
紅莉栖「そ。だからアンタも──」
岡部「おい、助手。お前頭平気──」
紅莉栖「だーかーらー! アンタもその例外の一人だったって言ってんの!」
ダル「マジですか……」
まゆり「ほぇ?」
─スチャ。
岡部「もしもし、俺だ。助手が何者かに精神攻撃を受けている。
あぁ、しかもかなり……重症だ。対応策を求──」
──パシッ!
紅莉栖「厨二禁止!」
紅莉栖「あぁ、もう面倒だわ。橋田、ちょっと来て」
ダル「お? お? なんぞ?」
紅莉栖「この機械に腕を通して」
岡部「なんだそれは? 血圧計か?」
紅莉栖「いいから、早く」
ダル「何だか知らんが……ほい。通したお」
紅莉栖「これは私が開発した、簡易IS適性装置。細かく調べることは出来ないけれどね」
岡部「なっ、何故に助手がそのようなものを!」
まゆり「わぁー! 紅莉栖ちゃん凄ぉい」
紅莉栖「忘れたのか? 私は天才少女なのだぜ?
私の頭脳を“国際IS委員会”が放っておくはず無いでしょう」
岡部「なん……だと」
紅莉栖「と言ってもこれは極秘も極秘。所属が日本かアメリカか決まってない私は、まだ秘匿し続けなきゃいけないことなんだけど……」
ダル「ほいで、ボクは一体どうすれば良いん?」
紅莉栖「ん。後は簡単。スイッチを押せば……」
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適性:無し :ランク-
紅莉栖「と、まぁこんな感じに出る訳」
ダル「遠まわしに“お前才能無いカスだな”って言われた気分だお……」
紅莉栖「橋田。ISは基本的に女性しか適性が無いんだからそうしょげないの」
まゆり「わー、まゆしぃもやってみたいなぁ」
紅莉栖「OK. 腕を通してみて」
まゆり「やったぁ、トゥットゥルー♪」
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適性:有り :ランクD
紅莉栖「うん、予想通りね」
まゆり「ランクでーってどうなのでしょう」
紅莉栖「一般的に何も訓練を受けてない女性はDなの。それ以下は無いから安心して。まゆりは標準ってことよ」
まゆり「えへへ、何か嬉しいのです」
岡部「で。だからどうしたと言うのだ」
紅莉栖「なに拗ねてるのよ」
岡部「拗ねてなどいない」
ダル「牧瀬氏がIS関係者であることを知らなかったので拗ねてるんですね解ります」
岡部「拗ねてなどいないと言ってるではないか!
それにだ、狂気のマッドサイエンティストがそのような玩具に興味があるはずが──」
紅莉栖「はいはい、で。次は岡部。これに腕を通して」
岡部「なぜ俺がそのようなことを。フンッ、第一にダルがダメだったのだ。やる必要が無いだろう」
紅莉栖「いーいーから。早く。」
岡部「(何故そこで、目がマジになるのだ……)」
岡部「ふん……」
まゆり「うふふ、オカリンが拗ねるなんて珍しいなぁ」
岡部「拗ねてなど──」
-Now Loading-
適性:有り :ランクB
ダル「え」
まゆり「ほ?」
岡部「なっ」
紅莉栖「……」
ダル「ど、どういうことだお?」
まゆり「オカリン、女の子だったんだぁ☆」
岡部「違う! 俺は男だ! 紅莉栖、これは一体」
紅莉栖「(今、紅莉栖って呼んだ……)」
紅莉栖「コホン、つまり、そういうことよ。
岡部にはIS適性がある。なぜかね……」
岡部「俺に……IS適性?」
ダル「っつか、何で牧瀬氏はオカリンに適性があること知ってるような口ぶりだったん?」
紅莉栖「べっ、別に寝てる岡部に実験体になって貰いたかった訳じゃないからな!」
岡部「ダルよ。つまりどういうことだ」
ダル「今、全部説明した件について」
まゆり「オカリン凄いよぉー!」
紅莉栖「岡部、申し訳無いけど私は科学者としてこのデータを“国際IS委員会”に報告する義務があった。
報告した結果、あなたをIS学園に編入させると言う結論になったの」
岡部「ちょ、ちょっと待て助手よ。俺は今年の12月で19になる。
あそこは確か高校だろ? 無理に決まってる」
紅莉栖「大丈夫、問題ない」
岡部「それにだ、俺には通ってる大学もある」
紅莉栖「大丈夫だ、問題ない。
すでに“国際IS委員会”は東京電機大学”にその事実を通達してある」
岡部「……」
ダル「オカリン……」
まゆり「オカリン、どうなっちゃうの?」
紅莉栖「正直、申し訳ない気持ちでいっぱいなんだけど……。
世界で二人目のレアケースだから、放って置くことも出来ないの、ごめんね」
岡部「つまり、俺はどうなるんだ」
紅莉栖「これからちょっと大変になると思う。
この事実を全世界に発表、記者会見も開かれる」
ダル「すっげ、急に現実味が無くなったお」
まゆり「オカリンが遠くにいっちゃう……?」
紅莉栖「現在“国際IS委員会”の議題は、織斑一夏をどの国の所属にするか。これもまだ定まって無い内に二人目の……。
しかも同じ、日本からの男性IS適性者ってことでさらにゴタゴタすると思う」
ダル「もう付いて行けねっす」
まゆり「……」
岡部「……」
紅莉栖「これから岡部を取り巻く環境はどんどん規模が大きくなっていくと思う。
それも世界単位で。岡部に拒否権は……無い」
岡部「……嘘だろ」
紅莉栖「ごめん……」
岡部「一体俺が何をしたって言うんだ……」
紅莉栖「……」
ダル「オカリン……」
まゆり「ねぇ、紅莉栖ちゃん……」
紅莉栖「ごめんね、まゆり。でも、もう私レベルじゃどうにもならない話しにまで発展しているの」
岡部「俺はまた、高校からやりなおすのか……?」
紅莉栖「ニュアンスは違うけど……そんな感じね」
岡部「ハハッ、ちょっとしたタイムリープだな……」
紅莉栖「……私が興味本位で実験体にしたせいで、ごめん」
岡部「これも……これが運命石の扉の選択か……」
ダル「……」
まゆり「オカリン……」
岡部「……フ、」
岡部「フゥーハハハハ! 良かろう、クリスティーーーナよ!
この鳳凰院凶真にIS-インフィニット・ストラトス-の適性があると言うのであれば!
甘んじてその運命受け入れようではないか!!」
ダル「おぉ、何か何時ものオカリンに戻った」
紅莉栖「岡部……」
岡部「これより、未来ガジェット研究所は IS-インフィニット・ストラトス-の開発に力を入れることとする!
ダル! まゆり!」
ダル「お、お?」
まゆり「ふぇ?」
岡部「お前達はこれからも、今までと同様にこのラボのメンバーだ。
これからは研究の矛先が異なるが付いて来い!」
ダル「お……オーキードーキー!」
まゆり「うっ、うん! まゆしぃはオカリンについて行くよ!!」
岡部「フゥーハハハハ! この不況の世の中だ。IS操縦者になれば職に困ることもあるまい!!
たっぷりとこのラボの運転資金を稼いでやろうではないっっか!」
紅莉栖「(岡部……)」
岡部「クリスティーナよ!!」
紅莉栖「なっ、ティーナは余計だと言っておろうが!!」
岡部「貴様はどうするのだ。と言うか……その、どうなるんだ」
紅莉栖「へ? 私?」
岡部「う、うむ。俺はそのIS学園とやらに転入するのだろう? お前はどうなるんだ……」
紅莉栖「あーえと……実は私も技術者として転入することになっててだな……」
岡部「なにっ!?」
ダル「えっ」
まゆり「えぇー!」
紅莉栖「だから、その……岡部と一緒に学園生活を……」
岡部「貴様はじゅーーーーはちであろう!」
紅莉栖「え」
岡部「飛び級で大学まで卒業した18歳がまた高校に逆戻りとは……」
ダル「どうみてもババァです本当にありがとうございました」
まゆり「もうっ、オカリン、ダル君っ」
岡部「せいぜい、周りの若さに負けてしまわぬように気をつけるのだな!!
フゥーは……は、は……ぁ、牧瀬さん……?」
紅莉栖「……」
ダル「ボ、ボクこれからメイクイン行くところだったんだお。それじゃ──」
──ガシッ。
紅莉栖「正座」
岡部「……」
ダル「……」
紅莉栖「このIS教本、分厚くっていい感じだと思わない?
ほら、この角とか丁度尖ってて──」
岡部「申し訳ありませんでした」
ダル「正直、調子に乗りました」
まゆり「あぅ……」
紅莉栖「二度目は無いわよ」
岡部「(年齢、気にしてるんだな)」
ダル「(そりゃ、気にするっしょ……クラスメイトがピチピチの……)」
紅莉栖「まだなにか?」
岡部「」
ダル「」
紅莉栖「フンッ……(はぁ、これから岡部の周りには16歳だの何だののピチピチした子が……)」
岡部「あの、牧瀬さん」
紅莉栖「あぁ?」
岡部「実際問題、何時頃から動きはじめるのでしょうか」
紅莉栖「ふん、明日よ」
まゆり「ず、随分と急だねぇ……」
紅莉栖「ん……そうね、本当にごめん」
まゆり「……紅莉栖ちゃん。オカリンをよろしくなのです」
紅莉栖「任された。責任は取るわ」
ダル「これって遠まわしなプロポー……」
紅莉栖「……」
ダル「~♪」
岡部「実家になんと報告すれば良いんだかな……」
紅莉栖「あぁ、それならもう根回しされてるはずよ」
岡部「なっ、何時の間に……」
紅莉栖「言ったでしょ? アンタを取り巻く環境はこれから世界単位で動いていくって」
岡部「ふぅ……疲れそうだな」
紅莉栖「私が付いてるわ」
岡部「頼もしい限りだ……」
こうして、俺の世界はガラリと変わった。
これが、世界線シュタインズゲートの未来だったのだろうか。
どの世界線からも、紅莉栖の口からISに関する話題など出たことは無かった。
自身の口からIS研究者であることは極秘であり口外出来ないとも言っていた。
つまり、他の世界線でも紅莉栖はISに関係していた……そういうことか。
……俺か? やはり、俺が原因なのだろうか。
他の世界線でも紅莉栖は俺を実験体にしてあの装置を作っていた可能性がある。
しかし結果は通常通り。男の俺に適性があるはずもなく、何事も起きなかった。
シュタインズゲートに到達したことにより、何かが変わり……。
そう言えば、未来から来た鈴羽。
第三次世界大戦の詳しい様を聞かなかったな……。
57億人も死んだんだ……当然ISも使われたのだろうな。
こんな事になるのなら、もう少し詳しく聞いておくのだった。
岡部「考えても、まとまる筈が無い……か」
岡部「明日から高校生か……勤まるのか? 俺に。
明らかにぼっちになってしまうではないか……。
あぁいや、紅莉栖が居たな……」
岡部「む。べつに助手との学園生活が楽しみだとかそういったのは無いからな!
勘違いするな、俺よ!」
岡部「フン……考えすぎて疲れてしまったな。
もう、寝よう……明日も明日で転入手続きやらなにやらで疲れそうだ……」
─1年1組教室─
山田「えーっと、今日から皆さんのクラスメイトになるお二人を紹介します」
岡部「俺の真名は鳳凰いったぁ!」
──ギュゥゥゥッッ。
紅莉栖「……」
岡部「岡部 倫太郎です」
紅莉栖「牧瀬 紅莉栖です」
山田「えっとぉ、皆さんニュースを見てご存知だとは思いますが……。
岡部さんは世界で二人目のIS適性を持った男の子だと言うことで……」
──わいわい、がやがや。
千冬「静かに。教師が喋っているだろうが」
──ピタッ。
山田「えー、皆さんより年上になりますがどうぞ仲良くしてくださいね?
(はうー、またこのクラスに……問題が起きなければ良いのですが)」
山田「そして、こちらの牧瀬紅莉栖さんですが実は大学も飛び級で合格なされてる天才さんです。
では、お二人とも自己紹介をお願いして良いですか?」
紅莉栖「失礼して私から。
コホン、先ほども名乗りましたが牧瀬紅莉栖です。
本来ならばISの技術開発研究等に携わる予定だったのですが、急遽IS学園にて三年間の学生生活を送ることになりました。
皆さんより若干年齢を重ねていますが同じ学び舎の同士として接してくれると嬉しいです」
──わいわい、がやがや。
千冬「……」
──ピタッ。
岡部「(お、俺か?)」
紅莉栖「(当たり前でしょ)」
岡部「おお、俺は……お、岡部凶真だ」
──きょうま? えっ? どういうことだろ? がやがや。
紅莉栖「(ちょっと何言ってんの!!)」
岡部「し、失礼。岡部倫太郎だです。あの……その……」
──シーン。
岡部「……」
──スチャ。
岡部「お、俺だ。潜入は成功、だがしかし機関から精神攻撃を受けている!
なんとかならないのか!? このままでは──」
──ゴンッ!
岡部「ぁ痛っっ!」
千冬「何を自己紹介中に携帯電話を弄っているんだ大馬鹿者め。
ん? 電源が入ってないじゃないか……」
紅莉栖「(もう……ばか……)」
岡部「ふ……フゥーハハハハ!!
と、特別に教えてやろう。それは俺以外が触ると自動的に電源がオフになる。
特殊任務仕様の携帯なのだ……フゥーハハハハハ!」
千冬「そう、独り言か……」
紅莉栖「……」
岡部「……」
──ゴンッ!
岡部「~~~っっ!」
千冬「没収しておく。後で職員室に取りにくるように」
岡部「はい」
山田「えっと……自己紹介でしたー」
──シーン。
千冬「以上だ。岡部と牧瀬は後ろの席に座れ」
岡部「はい」
紅莉栖「はい(Yes! 岡部の隣……えへっ)」
千冬「HRは終了だ。山田先生、職員室に」
山田「あっ、はい! では皆さん、お二人と仲良くして下さいね」
──ガラガラ ピシャ。
岡部「はぁ……疲れた」
紅莉栖「疲れた、じゃないわよ! このスカポンタン!」
岡部「仕方が無いだろうが! あの様な場は不慣れなんだ……この年齢になって自己紹介など出来るか!」
紅莉栖「これだからコミュ障は困るのよ」
岡部「だれがコミュ障だ! 助手よ、貴様こそなんだその格好は……」
紅莉栖「な、なによ……制服なんだから仕方ないじゃない。それと、ここでは助手って言うな!」
岡部「スカートなぞ穿きおって」
紅莉栖「お、お前こそ白衣はどうした!」
岡部「……Ms.サウザンウィンターに没収された」
紅莉栖「着てきたのね……」
岡部「科学者として当然だろう。あの女史め……白衣のみならず携帯まで……」
紅莉栖「最悪のスタートです本当にありがとうございました」
岡部「ふんっ。ボッチなど等の昔になれている」
紅莉栖「こっ、今回は私が居るだろうが……」
岡部「あっ……そ、そうだな……」
???「おかりんおかりん~」
岡部「!?」
???「へらへら」
岡部「(誰……だ?)」
???「おかべりんたろうだから~おかりん」
岡部「あっ……あぁ確かにそのように呼ぶ者も居る……が」
???「じゃぁけっていだね~」
紅莉栖「ええと?」
本音「布仏 本音(のほとけ ほんね)。くらすめいと、よろしくね~?」
岡部「あぁ、よろしく。だがオカリンと言うのは──」
紅莉栖「よろしく!」
女子達「(なっ! 先を越されたっ!?)」
女子達「(まだまだ一日目、焦る時間じゃないわ)」
本音「えへへ~、おともだちおともだち」
岡部「(紅莉栖め、被せてきおって……。しかし、なんだか変わった娘だな……)」
女生徒「ねぇねぇ! 岡部君ってIS動かせるんでしょ!?」
女性徒「ってことは、その内に織斑君みたく専用機持ちになるってこと!?」
紅莉栖「(しまった! 徐々に岡部を若い子達が取り囲んできている……」
岡部「専用機? ん? 一体何を?」
一夏「──ちょっと、ごめん。良いかな」
女生徒「織斑君!」
一夏「男同士で少し話したいかなーって、ダメかな?」
女生徒「(悪戯に女子にちょっかい出されるより……)」
女生徒「(織斑君に差し出したほうが利口ね……!)」
女生徒「どうぞどうぞ」
一夏「悪い」
岡部「(む、男……?)」
紅莉栖「(織斑 一夏。男で唯一ISを操縦出来る……出来た。もう過去形だけど、その当人よ)」
岡部「(なるほど……新参者であるこの俺に焼きを入れに来たと言う訳か。面白い)」
紅莉栖「(ちょ、ちょっと! 何もそう決まった訳じゃ)」
岡部「(ふんっ、高々15やそこいらの小僧にこの鳳凰院凶真が遅れを取る訳あるまい)」
一夏「えっと、岡部──さんで良いのかな。ちょっと時間貰って良い?」
岡部「望むところだ」
一夏「やった、サンキュ。えっとー屋上で良いかな」
岡部「良かろう。お誂え向きだな」
シャル「一夏……? 転校生の人とどこか行くの?」
岡部「なっ!?」
シャル「っわ」
岡部「(一瞬、まゆりの声が聞こえたが……気のせいか?)」
セシリア「どこかへ行くのでしたら、私もお供しますわ」
ラウラ「うむ。私も同行しよう」
箒「……ふん」
一夏「悪いみんな。ちょっと男同士で話したいんだ」
シャル「そっか……うん。解ったよ一夏」
セシリア「そう……ですの」
ラウラ「……同行してはダメなのか?」
一夏「ごめんなラウラ。その代わり、夜は一緒に食べよう」
ラウラ「う、うむ……」
シャル「あ! ずるいよ一夏! 僕も僕も!」
セシリア「勿論、私もご同伴致しますわよ?」
一夏「あ、ははは……そうだな、皆で食おう」
紅莉栖「(なにこれ……なんというハーレム……)」
箒「用事があるのなら、さっさと行って来たらどうだ。転校生が待ってるぞ」
一夏「そうだった、ありがとな箒」
箒「ふん」
一夏「じゃぁ行こうか?」
岡部「あぁ」
紅莉栖「(行ってしまった……怪我しないでよ、岡部)」
女生徒「ねぇねぇ、牧瀬さんって岡部さんの恋人?」
女生徒「私も気になってたー! ねぇねぇどうなの?」
紅莉栖「こ、恋人!?」
シャル「わー、実は僕も少し気になってたんだ!」
セシリア「お付き合いしてるんですの?」
紅莉栖「べべべ別にアイツとはその……なんでも無いって言うか……」
─職員室─
千冬「一夏に続き、二人目の男性IS適性者……これからますます忙しくなりそうだ」
山田「はい……しかも同じ日本人で1年1組にですから、各国の反応も……はぁ」
千冬「恐らく、近いうちに岡部の専用機が作られる……いや、もしかしたらもう完成しているかもしれない」
山田「1クラスに専用機持ちが6人……どこと戦争にな……失礼しました」
千冬「……束。お前はどう考えているんだ……」
一旦休憩。
投稿がサクサクで違和感感じまくりです。
まだ投稿は続きます。
ご飯も食べたし投下再開。
書き溜めてある分全て放出してしまいます。
─屋上─
一夏「良かった、誰も居ない」
岡部「(ふん、一体どのような手を使ってくる? 精神攻撃か? それとも──)」
一夏「回りくどいのは苦手だ。先に、謝っておく……」
岡部「(まさかいきなり殴り合い!? まて、俺は体力には……)」
一夏「ごめん!!」
岡部「──っっ!」
──ぺたぺた。
岡部「……ん?」
──さわさわ。
岡部「なにを……しているのだ? 何故、胸部をさすっている」
一夏「……」
──なでなで。
岡部「えええい! くすぐったいではないか!」
一夏「良かった……よっしゃああああ!!」
岡部「」
──ガシッ!
一夏「良かった良かった!!」
岡部「(なんだこいつ、もしや危ないヤツか!?」
一夏「も、もしかしたら女なんじゃないかって!」
岡部「女……は? え?」
一夏「以前にもこういう事があったんだ、転入してきた男子が実は女の子だったって言う。
だから、少し疑心暗鬼になっちゃってさ……」
岡部「そのために俺をここに?」
一夏「あぁ! でも良かったよ」
岡部「女な訳があるかああ!! どぅぉこの世界線にヒゲをはやした女子が居る!!」
一夏「あっ、確かに」
岡部「俺が女になるなんて世界線は存在しない!!」
一夏「世界線?」
岡部「あっ、いや。なんでもない……」
一夏「へへっ、でも安心した。俺は織斑 一夏。よろしく」
岡部「鳳凰院凶真。それが俺の真名だ」
一夏「えっ? でも、確か岡部って……」
岡部「それは仮の名だ。鳳凰院、または凶真と呼んでくれ」
一夏「ん? 何か良く解らないけど、解った。ヨロシク、凶真!」
岡部「我真名を呼ぶとは……ふふ、友と呼ぶに相応しい人材だな。ワンサマーよ」
一夏「わんさまー?」
岡部「貴様の真名だ」
一夏「一夏だからワンサマー? 面白いこと言うなー」
岡部「フゥーハハハハハ!!」
一夏「ハハハハハ!」
一夏「あっ、そうだ。凶真は俺より年上なんだよな? 敬語とかあんま使ってなかったけど」
岡部「む? 気にする必要は無い。今日から同じ学び舎の同士だ、敬語など不用。
それに助手も年下だが敬語など使ってこないしな……」
一夏「そっか、なら良かった。仲良くなれそうだ! ってか、助手って?」
岡部「助手は助手だ。クリスティーナのことだ」
一夏「クリスティーナ? 牧瀬紅莉栖のこと?」
岡部「うむ。アイツはマッドサイエンティストであるこの俺の助手なのだ」
一夏「へー、凶真ってここへ来る前までは科学者だったんだ! すげぇ!」
岡部「フゥーハハハハハ!!」
一夏「ハハハハハ!」
岡部「(中々良いヤツではないか、この分なら何時かラボメンに加えてやっても良いだろう)」
一夏「(凶真って面白いヤツだな。でも良かった……これで男友達が出来たぜ!)」
──キーンコーンカーンコーン。
一夏「やべっ、チャイムだ! 早く教室に戻らないと」
岡部「講義の時間か」
一夏「授業だよ授業! 次は千冬姉ぇの授業だから遅れるとヤバい!」
岡部「そう言えば、ワンサマーとサウザンウィンターは姉弟だったな」
一夏「怒るとすっげー怖いから注意な! 行こう凶真!」
岡部「(確かに、Mr.ブラウンに通じる何かを感じる)う、うむ!」
─教室─
紅莉栖「」
岡部「どうした助手、元気が無いではないか」
紅莉栖「助手って言うな……疲れただけよ」
岡部「?」
紅莉栖「女子高生パワー侮っていたわ……」
岡部「なるほど、現役の女子高生と比べたらババァだからな」
紅莉栖「それ以上言ったら、あんたの大脳新皮質をポン酢漬けにしてやる……」
岡部「どういう脅し文句だ……」
紅莉栖「うるさい黙れ……」
千冬「お前ら黙れ、授業を始める」
紅莉栖「っと……」
千冬「まず、牧瀬!」
紅莉栖「はい」
千冬「“ハイパーセンサー ”について、簡単に説明しろ」
紅莉栖「はい。ISに搭載されている高性能センサー。操縦者の知覚を補佐する役目を行い、目視できない遠距離や視覚野の外(後方)をも知覚できるようになる」
千冬「うむ。教科書通りだな、流石だ。問題無し。確認をしたかっただけだ、悪く思うな。
(“国際IS委員会”から岡部と一緒に転入をしてきた天才か……この娘も調べる必要があるか?)」
紅莉栖「いえ」
岡部「(ハイパーセンサー? 何を言ってるんだ? 女史も合わせて厨二なのか?)」
千冬「次に岡部!」
岡部「!」
千冬「“PIC”について、簡単に説明しろ」
岡部「(ぴーあいしー? 何を言っているんだ?)」
千冬「何を固まっている、早く説明しろ。こんなものは常識だろう」
岡部「(PIC PIC……あぁ!)」
岡部「なぁに、簡単すぎる質問に少しばかり困惑していただけだ」
千冬「ならばさっさと質問に答えろ」
岡部「“PIC”Peripheral Interface Controller の略だ。
1チップ内にRISC型マイクロプロセッサ, ROM, RAM, クロック発振回路, 外部接続ポートなどマイコンに必要な殆どの機能が組み込まれている。
そして乾電池2本で動作、低消費電力、意外と高速(20MHz)、安い(100円程度~)のが特徴だな」
一夏「???」
シャル「???」
セシリア「???」
ラウラ「???」
箒「???」
教室一同「???」
紅莉栖「(っの、馬鹿!)」
千冬「何を言っているんだお前?」
岡部「何って、女史がPICを説明しろと言うから簡潔に説明したまでではないか」
千冬「はぁ……」
─パァンッ!
岡部「あだっ!」
千冬「違う。PIC-パッシブ・イナーシャル・キャンセラー-の説明をしろ。と言ったんだ」
岡部「ぱっしぶ? なんだそれは」
─パァンッ!
岡部「あだっ!」
千冬「教師には敬語を使え」
岡部「すみません……」
千冬「昨日、入学前の参考書が配布されたはずだが?」
岡部「む? あの電話帳のようなもの……ですか」
千冬「そうだ」
岡部「それならば自室に置いてあ──あります」
千冬「読んだか?」
岡部「いや──いえ」
─パァンッ!
岡部「あだっ!」
千冬「必読と書いてあっただろうが馬鹿者。
後で再発行してやるから一週間以内に覚えろ。いいな」
岡部「……わ、解った、りました」
千冬「ほう……物分りが良いじゃないか。
“一週間であの分厚さはちょっと……”なんて言い出すかと思ったが」
岡部「マッドサイエンティストを舐めるな。あの程度二日もあれば……読めます」
千冬「……よろしい。では授業を再開する!」
……。
…………。
………………。
──キーンコーンカーンコーン。
千冬「以上で今日の授業は終了だ。織斑、岡部と牧瀬を連れて一緒に職員室に来い」
──ガラガラ、ピシャッ。
──わいわい、がやがや。
一夏「凶真、お疲れ」
岡部「ワンサマーか……お前の姉はいささか凶暴すぎやしないか……」
一夏「はははっ、千冬姉ぇは何時もあんなもんだよ」
紅莉栖「それより、織斑君? で良いのかしら」
一夏「俺のことは“いちか”って呼んでくれて構わないぜ」
紅莉栖「そ。なら私も“くりす”で良いわ」
一夏「あぁ、紅莉栖もよろしく」
紅莉栖「サンクス。それより、何で私まで呼ばれたのかしら」
一夏「えっと、多分部屋割りのことじゃないかな。何か聞いてる?」
岡部「そう言えば今日からこの学園で寝泊りするんだったな……」
一夏「全寮制だからね」
紅莉栖「部屋割りは今日中に決めるとも言ってたわね」
一夏「うん。じゃぁ多分それだ、行こうぜ。案内する」
岡部「よろしく頼む」
シャル「あぅ……行っちゃった」
セシリア「話しに入り込む隙がありませんわね……」
ラウラ「フン。夕食までの辛抱だ」
箒「……一夏と話す時間がどんどん無くなっていくな」
─職員室─
一夏「失礼します。二人を連れて来ました」
千冬「案内ご苦労。二人とも、部屋割りが決まった」
紅莉栖「(ももも、もしかして岡部と相部屋になんて事は……)」
千冬「岡部は織斑と同室だ。本来、部屋は相部屋だったんだが男子は一人だけだったからな。丁度良かった」
紅莉栖「(ですよねー)」
一夏「へへっ、やった。凶真、よろしくな」
岡部「うむ」
千冬「(きょうま?)」
紅莉栖「先生、私は」
千冬「牧瀬は先ほど、ちょっとした要望があってな」
紅莉栖「要望?」
千冬「是非にとも、部屋を交換したいと……な。
本来ならばそんな勝手な要望は突っぱねるところなんだが……。
牧瀬自身も色々と複雑な身体だからな、専用機持ちとの相部屋はメリットかもしれん」
紅莉栖「?」
千冬「セシリア・オルコットと相部屋になってもらう。ルームメイトたっての希望だ」
紅莉栖「セシリア・オルコットって……イギリスの代表候補生のですか?」
千冬「そうだ、彼女はIS操縦者としても優秀だ。色々聞いてくれ。
織斑は岡部の面倒を見ろ。以上だ」
一夏「へぇ、紅莉栖はセシリアと同室か」
千冬「(もう名前で呼んでるのか、一夏め)」
紅莉栖「一夏の知り合い?」
一夏「あぁ、仲の良い友達だ」
紅莉栖「そ、なら良かった。仲良く出来そうね」
岡部「Ms.サウザンウィンター」
千冬「?」
岡部「あ……ごほんうぉっほん! 先生、お……私の白衣と携帯電話をその……」
千冬「あぁ、そうだったな。ほれ。白衣は学校では着るなよ、寮内なら問題ない。
授業中に携帯は許さん。それと、これは参考書だ」
岡部「あ、りがとうございます」ペコリ
千冬「あぁ、以後気をつけろ。行って良し」
一夏「失礼しました」
──ガラガラ ピシャ。
一夏「いやーそれにしても、凶真が相部屋で嬉しいよ」
岡部「今後ともよろしく頼むぞ、ワンサマーよ」
一夏「任せてくれって。そう言えば、なんで白衣なんて持ってきてたんだ?」
岡部「白衣は俺の普段着だ。通常であればこのような制服は着ないところなのだが……。
この歳になってまさか学生服を着るハメになるとはな」
紅莉栖「どうみても、オッサンのコスプレです。本当にありがとうございました」
岡部「貴様こそ、人のことを言えた義理では無いだろうクリスティーーーーーーッナ」
紅莉栖「あら残念。一応私も年齢的にはギリギリ高校三年生に基準する訳で……不自然ってことは無い訳だが?」
岡部「ぐぬぬ……」
一夏「ははは、二人とも仲良いんだな」
岡部 「どこが!」
紅莉栖「どこが!」
一夏「息もぴったりじゃないか、はははっ」
紅莉栖「全く、もう……」
一夏「そうだ! 夕飯を一緒に食べないか? 俺の仲間を紹介するよ」
岡部「む、どうする助手よ」
紅莉栖「どうするって、なんで私に聞くのよ。あと助手って言うな」
一夏「ほらほら、皆で食べたほうが美味いからさ!」
紅莉栖「あっ、ちょ」
岡部「おおう……」
─食堂─
ラウラ「で、その二人は何だと言うんだ」
一夏「一緒に飯食おうってなってさ」
ラウラ「貴様と言うやつは……」
シャル「まぁまぁ、ラウラ。一夏に悪気は無いんだし、ね?」
ラウラ「むう……」
セシリア「一夏さんは女心と言うものが本当に解ってないですわね……」
一夏「な、なんで皆気難しい顔してるんだ……? 飯は皆で食ったほうが美味いだろ?」
シャル「これじゃぁねぇ……?」
ラウラ「ふんっ」
セシリア「もう……」
箒「どうでも良いが、結構な大所帯だ。席が無くなる。先に探しに行くぞ」
一夏「あ、箒ちょっと待ってくれよ! 俺も席探すからさ!」
岡部「……」
紅莉栖「えと、私達お邪魔かしら……」
シャル「いやいや、そんな訳じゃないんだ!」
セシリア「はぁ。そうですわ、一夏さんが唐変木だと言うだけの話しですから」
一夏「なぁおい、箒? なんか怒ってないか?」
箒「怒る? 私がなぜ怒るんだ」
一夏「いやだって、顔が怒ってるじゃないか」
箒「そんなことはない」
一夏「うーん……」
鈴音「おーい一夏ぁ! こっちこっち!」
一夏「鈴! なんだ、席取っておいてくれたのか?」
鈴音「まっ、まぁね」
一夏「サンキュ! じゃぁ皆呼んでくるから箒とここで待っててくれ!」
鈴音「え、皆……?」
箒「そう言うことだ」
鈴音「どういうことよ!」
箒「転校生が入って来たことは知っているだろう」
鈴音「えぇ、二人目の男性適性者でしょ? ニュースになってたもの」
箒「一夏は仲良くなりたいらしい」
鈴音「あー……そゆこと。でもまぁ……男なら別に……」
箒「転入してきたのは男女一名ずつだ」
鈴音「え」
箒「つまり、そういうことだ」
鈴音「一夏ぁ……」
一夏「お待たせ、さっ、飯を取りに行こうぜ」
岡部「何か、お勧めはあるのか?」
一夏「ここの食堂は何でも美味しいんだ。取り合えず今日は、和と洋があるから好きな方をって感じかな」
箒「和食は……鰆の焼き魚定食だな」
セシリア「洋食は半熟卵のカルボナーラとありますわね」
一夏「俺は和食っと……凶真はどうする?」
岡部「では俺も和食にするとしよう」
一夏「紅莉栖は?」
箒「(っ……すでに呼び捨てだと!?)」
セシリア「(なんですって……?)」
シャル「(はぁ……もう、一夏の馬鹿)」
鈴音「(ねぇちょっとどういう事よ……)」
紅莉栖「えっと、じゃぁ洋で」
ラウラ「私はフルーツサラダだけで良い)
紅莉栖「ラウラ・ボーデヴィッヒ……さんでしたっけ? それで足りるの?」
ラウラ「ラウラで良い。夜は摂取量を控えている、一夏のススメでな」
紅莉栖「そうなの?」
一夏「いや、まぁ……ただ単に俺が夜少なめに食べるタイプだって説明したらそうなっちゃって……」
紅莉栖「なるほど」
箒「(一瞬目を離した隙に親しげになってる……)」
セシリア「(まさか紅莉栖さんまで……)」
シャル「(うー……楽しそうだなぁ)」
鈴音「(もう、殺そう。うんそうしようよ、ねぇ)」
ラウラ「後ろが詰まっている。配給を受けたら席へ移動すべきだ」
一夏「おっと、悪い悪い。さぁ行こう」
─着席─
一夏「では、頂き──」
シャル「ねぇ、一夏! ちゃーんと、自己紹介をするべきだと思うんだけどどうかな?」
セシリア「そうですわ! 私と一夏さんの関係をこのお二人に説明するべきではなくって?」
鈴音「そうよ、ちゃんと説明しなさいよね!」
箒「……」
ラウラ「ぱくぱく」
一夏「おっと、そうだった! 二人に皆を紹介するはずだったんだ。良いか? 凶真、紅莉栖」
岡部「うむ」
紅莉栖「えぇ、お願い」
一夏「えっと……こいつが篠ノ之 箒(しののの ほうき)。俺の幼馴染で、専用機持ちの一人」
箒「一夏の幼馴染(強調)篠ノ之 箒だ……」
一夏「IS開発者の束さんの妹でもあるんだ」
箒「一夏! 余計な事は言わなくて良い!!」
岡部「……」
箒「(ノーリアクション……?)」
一夏「あっ、そうか……あんまり言わない方がいいんだっけ?」
箒「あぁ……あまり言うべきでは、無いな……その、色々騒がれても面倒……だ」
岡部「(IS開発者か。俺には関係の無いことだな)」
紅莉栖「(転入前に聞かされていた情報だし、ノープロブレム)」
一夏「っとまぁそんな感じ。それでその隣が──」
セシリア「私がイギリスの代表候補生にして入試主席の──セシリア・オルコットですわ!」
一夏「って感じ」
紅莉栖「あなたが、セシリアさんね?」
セシリア「どういう事ですの?」
紅莉栖「今日からアナタのルームメイトになる牧瀬紅莉栖です。よろしく」
セシリア「へ?」
一夏「そうだった。さっき千冬姉ぇに言われたんだよ。
凶真は俺と同室。紅莉栖は部屋変えでセシリアと同室になったって」
セシリア「あぁ、そう言うことでしたの……。コホン、よろしくお願い致しますわ。
それと貴女の方が年上なのですから、さん付けはよろしくってよ」
紅莉栖「了解。ありがと、セシリア」
セシリア「(何だか調子が狂いますわね……年上の余裕と言うやつなのかしら)」
シャル「ねぇねぇ、一夏」
一夏「ん? 次はシャルの番だけど……」
シャル「うん、それは良いんだけど“きょーま”って誰のこと? 岡部さんを指してるようだけど……。
確かファーストネームは“倫太郎”だった気がするんだ」
一夏「んー、何て説明したら良いかな。凶真、先に凶真の自己紹介頼んでも良いかな?
鈴音は違うクラスだったしさ」
岡部「(また自己紹介か……乗り切るしかあるまい……)」
岡部「我名は“鳳凰院凶真”フェニックスの鳳凰に院、凶悪なる真実と書く。
常に『機関』から追われており、逃亡中の身であったが此度ISの適性が認められ現在に至る……」
セシリア「機関……?」
紅莉栖「あー、それはね──」
岡部「そーぅだ、Ms.シャーロック」
セシリア「え? シャーロック?」
紅莉栖「多分、イギリスだから……」
岡部「貴様の母国はイギリスであったな? イギリス情報局秘密情報部MI6とは衝突することもあれば、互いの利益が合致し協力したこともある……」
セシリア「MI6……! そんな、まさか……」
岡部「ふふ、DGヒュームは息災かな? 彼には色々してやられたものだ……フゥーハハハハ!」
セシリア「(この人は一体……!)」
一夏「(凶真って凄いやつなんだなぁ)」
シャル「(この人、もしかしたら危険な人なんじゃ……)」
ラウラ「(軍人……には見えないが、諜報活動を主としていたと言うことか……?)」
鈴音「(なによこいつ、ちょっと危ない世界の人間だったってこと?)」
箒「(そんな世界の住人には見えないが……)」
紅莉栖「(そう言えば、岡部ったら最近ゴルゴ13を読んでたわね……はぁ)」
セシリア「つまり、コードネームのようなものですの?」
岡部「真名、真なる名前だ……」
一夏「だから俺は凶真って呼んでるんだ」
シャル「そっかー、でもたしか教室で“オカリン”って呼ばれてたよね?」
岡部「ぬっ、あれは違っ──」
紅莉栖「そうそう! こいつのアダ名は“オカリン”って言うの!
学園生活をしている以上はそちらで呼んであげて!」
岡部「じょ、助手貴様何を勝手に──」
シャル「オカリン、オカリンかぁ……うん、なんかしっくり来る呼び方だね!
僕はシャルロット・デュノア。フランスの代表候補生なんだ、よろしくね」
紅莉栖「こちらこそ、よろしく」
岡部「オカリンではなぁい! 第一その声でオカリンと呼ぶなっ!」
シャル「え? こっ、声……?」
岡部「あっ、いや……なっ、なんでもない……」
セシリア「私は敬意を込めて、倫太郎さんと呼ばせて頂きますわ。なにやら、イギリスとは深い関係のご様子ですし……」
紅莉栖「(ファーストネームで呼ぶ……だと……私ですら苗字なのに……)」
鈴音「私は、凰 鈴音。中国の代表候補生。よろしくね、っつってもクラスも違うしあんま興味無いからどうでも良いけど。
機関云々で一夏に迷惑かけたら承知しないからね」
ラウラ「ラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツの代表候補生だ」
一夏「ええと、俺はこれからも凶真って呼んで良いのかな? それともやっぱり危ないのか?」
岡部「全く問題ない」
一夏「良かった。呼び方換えるのって何か難しいもんな!
それにしても凶真は凄い世界を生きてたんだなぁ……俺とそう歳も変わらないのに、すげぇや」
紅莉栖「(嘘……マジで? 信じちゃってるの?)」
セシリア「えぇ、一体どのような活動をなさってたんですの?」
岡部「そうだな、最近ではフランスのS……いや、何でもない。忘れてくれ……」
シャル「(S……? なんだろう……)」
シャル「ねぇねぇ、オカリン。今フランスって言葉が出てきたけど何かあるのかな?」
岡部「まゆりには関係の無いことだ」
シャル「まゆ……?」
岡部「あっ……。違っ……スマン。今のは忘れてくれ」
シャル「?」
紅莉栖「(なに? もうホームシックでまゆりの名前が出てきちゃう訳?)」
鈴音「ふぅん、何だか危なそうな橋渡ってたんだ」
岡部「そうだな……(ここで“SERN”の名は出さないほうが無難だな、何がきっかけで繋がるか解らない)」
紅莉栖「(なにココの子達。ちょっと純粋すぎやしない? 全部信じてるの? 本当に?)」
ラウラ「ふんっ。軍人であれば、危険地区への潜入など日常だ」
岡部「ほう、その口ぶり。貴様は軍関係者か眼帯娘よ」
ラウラ「私は貴様のような諜報員ではない。本物の軍人だ。それと……その呼び方は不愉快だ、辞めろ」
岡部「くくくっ……(本物の軍人って……ココは一体どんな学校なんだよ!)」
ラウラ「何がおかしい」
岡部「ゲーレン機関、それも第1課であるヒューミントとは良くやりあったものだ……と思い出しだけだよ」
ラウラ「貴様……ドイツとも……」
岡部「まぁ待て慌てるな眼帯娘よ。今は同じ学び舎で筆を握る同士だ。
昔の出来事を蒸し返すほど俺もまだ老いてはいない……ここは一つ、学友として手を組むのが双方の為だと思うが?」
ラウラ「(コイツの言ってる情報は本物か?)……ふんっ」
紅莉栖「(え、また信じちゃった? 岡部のデタラメ妄想トーク信じちゃった?)」
一夏「まぁまぁ、凶真も言った通り今は同じ学校の友達なんだ。仲良くやろうぜ」
箒「あぁ、よろしく頼む。
(この男は本当にそれほどの修羅場をくぐりぬけて来たのか……?)」
シャル「そうだね、友達が増えて僕も嬉しいよ!
(何を言いかけたんだろう……調べた方が、良いかもしれない)」
セシリア「そうですわね、これでまた1年1組の質が上昇しますわ。
(いくら前職のキャリアが凄くてもISでは負けませんわ……!)」
鈴音「はいはい、よろしくねー。
(一夏……へんな事にこれ以上巻き込まれないでよ……)」
ラウラ「……ふん。
(クラリッサに連絡を取る必要があるな……)」
紅莉栖「こちらこそ、よろしく。楽しい学園生活にしましょう。
(不安すぐる……いつ岡部の化けの皮が剥がれるか……)」
一夏「で、最後に紅莉栖。鈴も居るし、もう一度自己紹介頼んで良いかな?」
紅莉栖「ん? それもそうね」
─コホン。
紅莉栖「牧瀬紅莉栖です。本来ならアナタ達より年上だけど訳あって同学年としてここで生活を送ることになりました。
紅莉栖と呼んでね、敬語もいらないから仲良くしましょう?」
一夏「そうそう、凶真は解るんだけどなんで紅莉栖も転入してきたんだ?」
シャル「うん。僕もちょっと気になってたんだ」
紅莉栖「えっと……私って元々アメリカの大学を飛び級で卒業しててね?
“国際IS委員会”からISの技術開発研究に力を貸してくれってオファーが来て……。
日本、アメリカとどちらの国で従事するにしてもIS学園を卒業したって言う事実が欲しいんですって。
(って言うのは建前なんだけど……)」
セシリア「そんな話し初めて聞きましたわ」
鈴音「うん。IS学園から技術者にって人は沢山居るけど、元々そんな知識や技術があるならわざわざ転入する必要って……」
紅莉栖「“アラスカ条約 ”の国際規約のお陰で、各国は学園の関係者に対して一切の干渉を受けない。
つまり私の帰属する国や部署が決まるのに時間がかかるから取り合えずココに居てねってのが本音だと思う」
一夏「紅莉栖もかなり凄い人ってことか……?」
紅莉栖「貴方ほどではないけれどね?
“国際IS委員会”目下の議題は一夏をどの国の所属にするか……それの決着が付く前に岡部倫太郎の登場。
正直、牧瀬紅莉栖程度に構ってる暇はないってのが私の予想される解。
(さすがに、これで信じるでしょ)」
シャル「なるほど……」
セシリア「それでも、貴女をこの学園に入れるという事はやはりそれだけの人物……と言うことなのでしょう?」
紅莉栖「ふふ、これでも一応……天才少女と呼ばれた私なのだぜ?」
岡部「だが、俺の助手だ」
シャル「へ?」
セシリア「?」
ラウラ「?」
箒「?」
岡部「世界を股に掛けるマッドサイエンティスト。
アインシュタインにも匹敵するIQ170の灰色の脳細胞を持つ鳳凰院凶真の助──」
紅莉栖「はい、よろしく! いただきます!」
─廊下─
岡部「助手! さっきのは一体なんだ!」
紅莉栖「なんだとはなんだ! アンタが暴走するから切り上げただけだろうが!」
岡部「暴走などしていない、この俺のへぁんぱない経歴の数々と助手の助手たる由縁を紹介しようと──」
紅莉栖「へぇあんぱない妄想垂れ流していただけだろうが! それとココで助手って言うなと言ってるだろ!」
岡部「なんだと!」
紅莉栖「なによ!」
─パァンッ! ペチン。
岡部 「あだっ!」
紅莉栖「いてっ!」
千冬「廊下で騒ぐな、馬鹿者供が」
岡部「ぬ、Ms.サウザンウィンター」
紅莉栖「織、斑先生……失礼しました」
─パァンッ!
岡部「あだっ!」
千冬「なんだその呼び名は。織斑先生と呼べ」
岡部「おおお」
岡部「おおお、脳細胞が……一日に一体何個死んだと言うのだ……おおお……」
千冬「返事」
岡部「はい」
千冬「さっさと部屋に行け」
岡部「はい」
紅莉栖「(くすっ)」
千冬「牧瀬、お前もだ」
紅莉栖「はっ、はい」
千冬「まったく……」
岡部「恐ろしい……」
紅莉栖「アンタって店長とか、織斑先生とかあの手のタイプにはとんと弱いわよね」
岡部「彼らは脳筋だ。マッドサイエンティストである俺とは属性が異なりすぎている……」
紅莉栖「もやし乙」
岡部「ふん……俺は部屋へ戻る」
紅莉栖「私も」
岡部「ではな」
紅莉栖「──岡部っ!」
岡部「ん?」
紅莉栖「こっ、この学校って制服のカスタムが自由なのよ……」
岡部「ん? そうなのか?」
紅莉栖「アンタがして欲しいって言うなら……その……」
岡部「???」
紅莉栖「白衣っぽくカスタムしてやらんこともないぞ……? 裁縫は得意なほうだし……」
岡部「な……に……? 本当か!」
紅莉栖「う、うん……元の制服が白だし、出来る……と思う」
岡部「それは助かる。是非に頼むぞ! さすが助手だ!」
紅莉栖「(思ったより喜んだな……えへへ)」
岡部「では、後で白衣と制服を渡すから頼むぞ」
紅莉栖「ん。2.3日はかかるからな。私の制服をカスタムした後だ」
岡部「解った、よろしく頼む」
─自室─
一夏「おかえり、凶真。あの後、牧瀬さんと何か話してたのか?」
岡部「色々と、な」
一夏「そっか。それで風呂なんだけど、この部屋にはシャワーしかないんだ」
岡部「大丈夫だ、問題ない。我ラボにもシャワーしか付いていないからな、慣れている」
一夏「らぼ?」
岡部「む、説明していなかったな。この鳳凰院凶魔が創設した秘密組織“未来ガジェット研究所”通称ラボだ」
一夏「……すっげぇ! 秘密組織!? 凶真って本当に何者なんだ……?」
岡部「ふっ。話す時が来れば、いずれその時に話そう……。そう言うわけだ、シャワーには慣れている」
一夏「おう! 楽しみにしてるぜ!」
─セシリア・紅莉栖部屋─
紅莉栖「これは……」
セシリア「どうしましたの? 今日からここは貴女のお部屋でもありますのよ?
荷物も来ているようですし、お好きになさって?」
紅莉栖「(これは酷い……あぁ、なんとなく読めたわ。ルームメイトが部屋交換を希望した理由ってやつが)」
セシリア「私はこれからお風呂に行きますが……紅莉栖さんはいかがいたします?」
紅莉栖「えっと、私は荷物の片付けが済んだらにする。ありがと」
セシリア「では私は一人で参りますわね。この部屋にもシャワーはありますが、入浴は出来ないので大浴場をお勧めしますわ。では」
紅莉栖「……ふぅ。しかし、凄い部屋だな。
それともコレが年頃の娘の部屋なのかしら……トランク一つの私が異常なのか?」
紅莉栖「考えても仕方なし。さっさと片付けてお風呂に行きますか」
─大浴場─
─キャッキャ、ウフフッ。
セシリア「~♪ やはり、一日の疲れはお風呂で流すに限りますわね」
シャル「んー、やっぱり湯船は気持ち良いね」
鈴音「(ッチ。まさかこの二人と入浴時間が被るなんて……)」
─ガラッ。
紅莉栖「~♪」
シャル「あっ、牧瀬さんだ」
紅莉栖「ん、ハァイ。えっと、セシリアにデュノアさんに、凰さん……よね?」
シャル「あはは、シャルロットで良いですよ」
鈴音「私も鈴って呼んで。何かむずむずするし」
紅莉栖「ありがと、私も紅莉栖構わないわ。敬語も使わなくって良いから」
シャル「そう言えば、自己紹介の時にそう言ってたね。うん、宜しくね紅莉栖!」
紅莉栖「こちらこそ宜しくね」
鈴音「……(これは……)」
─ジィー。
紅莉栖「(何か、視線を感じる……)」
鈴音「(仲間っ……!)」
紅莉栖「(胸を見られてる……?)」
シャル「でさー、一夏ったら──」
セシリア「まぁそうなんですの──}
鈴音「(紅莉栖、ゆっくりと二人の胸を見て)」
紅莉栖「(胸……? っな……)」
鈴音「(篠ノ之 箒は、もっとでかい……)」
紅莉栖「(なん……だと……。15,6歳だろ? どうなっているんだ……)」
鈴音「(大浴場はタイミングをミスると惨めな思いをするだけよ……)」
紅莉栖「(ありがと……気をつけるわ。にしても……全員年下なのに……)」
鈴音「(アジアと西洋の差……と言いたいけれど、篠ノ之 箒に千冬さん、山田先生も大きいのよね……)」
紅莉栖「(なぜ、そんな情報を私に……?)」
鈴音「(っべ、別に……大した理由は無いわよ……)」
シャル「僕達もう上がるけど、二人ともまだ入ってるー?」
セシリア「お先に失礼致しますわ」
紅莉栖「(立ち上がるとさらに……なんて不公平な世の中なの……)」
鈴音「うっ、うん。まだもう少し入ってるからお先にどうぞ」
シャル「のぼせないようにね? それじゃぁ──」
紅莉栖「(はぁ……まさかこんなところで劣等感を感じる日が来るとは)」
鈴音「(胸なんて、女の価値には関係無いわ……)」
紅莉栖「はぁ……」
鈴音 「はぁ……」
紅莉栖「(岡部って、大きいほうが好きなのかな……)」
─シャル・ラウラ部屋─
ラウラ「では、難しいと言うことか……」
クラリッサ「はい。軍のデータベースに“鳳凰院凶真”なる人物は見当たりません。
可能性を挙げるのであれば、重要機密人物として情報が隔離されてるやもしれません。
各国の諜報部データにクラッキングを仕掛ければあるいは……」
ラウラ「いや、これ以上の深追いは危険だ」
クラリッサ「お役に立てず……」
ラウラ「いい。それ程の人物だという事が解っただけで収穫だ。
害意は無いようだ、これからも私が目を光らせれば十分だろう」
クラリッサ「お気をつけて……」
ラウラ「ふう……」
シャル「らーうら、何してたの?」
ラウラ「わっ! シャ、シャルロットか……脅かすな。危うくナイフで攻撃を仕掛けるところだった」
シャル「えへへ、ごめんね。
それで今のって、オカリン……岡部倫太郎のこと?」
ラウラ「……あぁ。
正体が解らない。情報は多い方が良いだろう。最悪、一夏を抹殺しに来た暗殺者。
もしくは、白式のデータを盗みに来たエージェントの可能性もある」
シャル「(盗みに……か)それで、何か解ったの?」
ラウラ「いや、何も掴めなかった」
シャル「そっか……フランスについても何か言おうとしてたけど……。気になるなぁ」
ラウラ「気になるのは確かだが、打つ手が無い。尋問するのは容易だろうが事を荒立てる段階でもない」
シャル「尋問って……」
ラウラ「それよりシャルロット。私はココアが飲みたい」
シャル「くすっ……。暖かいココアを飲んで、今日はもう寝ようか」
─セシリア・紅莉栖部屋─
……。
…………。
………………。
牧瀬紅莉栖。言いたいことは解るね?
紅莉栖「はい……」
よろしい。
それでは岡部倫太郎と供にIS学園に転入し情報収集を。
十中八九、織斑一夏と同様に専用機が渡されるはずだ。そのデータを全て記録。
可能ならば織斑一夏の“白式”のデータも欲しいところだ。
紅莉栖「努力します」
女性しか扱えなかったISが、男性にも使用出来るようなれば世界が変わる。
ISの知識が豊富であり、尚且つ岡部倫太郎と近しくその適性を発見した君にだから出来る仕事だ。
将来“国際IS委員会”に末席を連ねる予定の君だ、期待しているよ。
紅莉栖「……はい」
そうそう、君の父親……。
ロシアへの亡命が失敗したようだが、こちらで上手く手引きしておいた。
紅莉栖「あ、りがとうございます……」
では、三年間と少々長い仕事になるが終わる頃には君も委員会の一員だ。
期待してるよ。
紅莉栖「……」
紅莉栖「(岡部……)」
……。
…………。
………………。
──チクチク。
セシリア「ん……紅莉栖さんはまだ眠ってらっしゃらないの?」
紅莉栖「あ、ごめんなさい。起こしちゃった?」
セシリア「いえ……なにをなさってるの?」
紅莉栖「眠れなくって、制服のカスタムをちょっとね」
セシリア「起用な物ですわね……でも、それっと男子用……」
紅莉栖「ちょっと、頼まれちゃって……」
セシリア「まっ、ままままさかその男子って……いっいい一夏さんではありませんこと!?」
紅莉栖「えっ……お、岡部だけど……」
セシリア「ふぅ、そうでしたの。なら良いんですの、私は寝なおしますわね……ふぁ……」
紅莉栖「ん。起こしちゃってごめんなさいね、おやすみなさい」
──チクチク。
紅莉栖「このペースなら、明日には二着出来るな……」
紅莉栖「(岡部、喜ぶかな……)」
紅莉栖「(昨日の今日で完成したら、そりゃ喜ぶわよね! ふふ……)」
──チクチク。
紅莉栖「(データ収集か……嫌だな……)」
──チクチク。
──チクチク。
─我輩は猫である(名前はまだ無い)─
──カタカタカタカタ。
束「うーんうーん、わかんないなーなんだろーなー!
岡部倫太郎って子は何者なのかなー。
わっかんないなぁ」
──ごろごろごろごろ。
束「ふにゃぁ、データ取りたいなー。
でもでもぉ脳開いちゃったら元に戻すの無理だしぃ……。
やぁっぱ、IS渡して直接データ見るのが一番手っ取り早いかな。
ようし……くーちゃんや! くーちゃんや!」
くー「はい」
束「お使いを頼まれて欲しいのだよ」
くー「何なりと」
束「もー相変わらず堅いんだから。何時になったら束さんのことママって呼んでくれるのかな?」
くー「……それで、使いと言うのは」
束「うん、コレなんだけどねー」
くー「これは……ISのコア……?」
束「そー! ある意味超絶レアもんだよん!」
くー「はい。これをどちらに?」
束「IS学園職員のちーちゃんに。この手紙と一緒によろしくーん!」
くー「了解しました」
束「んー……ん、ん~♪
さぁって、自立進化は全てコアに任せちゃうとして……それに応える機体を用意しようかなー!
中々面白そうなことになりそうだね……」
本日の投下は終了です。
書き溜めがあっと言う間に消えてビビった。
プロットは出来上がってるので、未完で終了は無いかと思います。
読んでくれてる方々、感謝です!
>>1
紅莉栖300人委員会なの?最悪だなぁ…
レスありがとうございます。
説明ウザイかもしれませんが……。
>>92
シュタインズゲートに出てくる300人委員会と、ISに出てくる“IS国際委員会”は全くの別物です。
ISってみたことないな
なんかモップ?だかモッピ?ってキャラはでないのか?
>>93
SERNみたいな感じはないの?
ハヽ/::::ヽ.ヘ===ァ
{::{/≧===≦V:/
>:´:::::::::::::::::::::::::`ヽ、
γ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
_//::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ モッピーだよ
. | ll ! :::::::l::::::/|ハ::::::::∧::::i :::::::i
、ヾ|:::::::::|:::/`ト-:::::/ _,X:j:::/:::l
ヾ:::::::::|≧z !V z≦ /::::/
∧::::ト “ “ ノ:::/!
/::::(\ ー' / ̄) |
| ``ー――‐''| ヽ、.|
ゝ ノ ヽ ノ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
モッピーのことでしょうか?
モッピーは篠ノ之箒をデフォルメしたAAのことです。
「モッピー知ってるよ。○○って事」といった喋り口調が特徴です。
箒は登場してますが、箒とモッピーはもはや別キャラです。
>>95
国際IS委員会
国家のIS保有数や動きなどを監視する委員会。IS条約に基づいて設置された国際機関。現在の議題は一夏をどの国の所属にするかである。
wikiからの完全転用ですが……。
原作・アニメその両方ともあまり、委員会のことは書いてありませんので都合よく使わせて貰っています。
画像がいつまで持つか解りませんが……。
・岡部倫太郎
http://kie.nu/.zF
Steins;Gateの主人公であり、今SSの主人公です。
・牧瀬紅莉栖
http://kie.nu/.zG
Steins;Gateのメインヒロインの内の一人。天才少女です。
・織斑一夏
http://kie.nu/.zH
IS-インフィニット・ストラトス-の主人公。
・織斑千冬
http://kie.nu/.zI
主人公、一夏の姉でありIS学園の教員。ISの実力は世界大会で優勝した経歴あり。
・ISのメインヒロイン
http://kie.nu/.zJ
左から順に、
ラウラ・ボーデヴィッヒ(独
セシリア・オルコット(英
篠ノ之 箒(日
凰 鈴音(中
シャルロット・デュノア(仏
乙。
しかしこれは無いんじゃね?
>紅莉栖「(データ収集か……嫌だな……)」
あの助手だぜ。嬉々としてデータ取りそうなもんだ
>>1 です。
体調を崩し、中耳炎一歩手前までいってしまい停止してました。
書き溜めた分をもう少ししたら投下します。
説明はウザイかもしれませんが……。
>>103
紅莉栖の心情として、岡部に黙って(内密)のデータ収集、そしてそれをIS国際委員会へ提出。
これがネックになって「嫌だな」と言う感情を吐露しています。
紅莉栖としては岡部と二人で一緒に考えながらきゃっきゃうふふしつつデータ収集したいのです。
↑を説明しなければならないあたり、描写が足りないと反省。
ちなみに、何故大っぴらにデータを採取して云々がダメなの?
って事に関しては“アラスカ条約”云々だと思って下さい。
では失礼して投下始めます。
>>86 続き
─自室─
一夏「凶真、朝だぞ。起きて食堂行こうぜ」
岡部「う……うぅむ」
一夏「凶真は朝苦手な方?」
岡部「得意……ではないな、マッドサイエンティストとは基本的に夜行性なーのーだ……」
一夏「そっか。でも早起きには慣れておいた方が良いぜ。
万が一、遅刻なんてしたら千冬姉ぇになにされるか解らないからな……」
岡部「……想像だに恐ろしいな」
一夏「だろ? ちなみに、朝もちまちま食べてると喝入れられるから注意な」
岡部「留意しておこう」
一夏「千冬姉ぇは1年の寮長でもあるから、そこも注意」
岡部「朝から頭痛を催す会話だな……」
一夏「仕方ないさ。でも結構、優しいところあるんだぜ」
岡部「(ワンサマーはシスコンか……)」
一夏「さ、顔洗って着替えたら食堂に行こう」
──コンコン。
一夏「ん? こんな時間に誰だろ……」
紅莉栖「モーニン。起きてたかしら?」
一夏「紅莉栖! おはよう、どうしたんだ?」
紅莉栖「岡部にちょっと渡す物があってね」
一夏「ん。凶真も今起きたところなんだ、上がってくれよ」
紅莉栖「サンキュ」
一夏「紅莉栖の制服、昨日と違くないか?」
紅莉栖「うん、昨夜私なりにカスタムしてみたの。おかしくないかな?」
一夏「すげぇ似合ってるよ。へぇー、自分で裁縫したの?」
紅莉栖「えぇ、裁縫は得意なの」
一夏「俺も家事全般やるから、裁縫もちょっとはやるけど……こいつは中々凄いな!
紅莉栖って家庭的だな!」
紅莉栖「えっ、いや……うん、ありがと……。
(流石ハーレムキングね……天然の女たらしか……)」
一夏「凶真ー! 紅莉栖が制服を持ってきてくれたぞ」
岡部「助手ではないか……」
紅莉栖「もう、まだ寝ぼけてるの? ほら、顔洗ってシャッキリしなさい」
岡部「お、押すな……」
一夏「ハハハッ」
──ジャー、パシャパシャ。
岡部「ふう……」
紅莉栖「はい、タオル」
岡部「む、ありが……そう言えばなぜ助手が居る?」
紅莉栖「はぁ、マジで寝ぼけてたんですね? 解ります」
一夏「紅莉栖が凶真の制服を持ってきてくれたんだよ」
岡部「……昨夜話していたやつか! しかし、昨日は時間がかかると言っていたではないか」
紅莉栖「ん……ちょっと、針が進んでね」
岡部「そうか、うむ。ご苦労!」
紅莉栖「(ッチ、私の制服の変化に気付けよ鈍感!)」
岡部「ではさっそく袖を通すとしよう!
ん……そこに居ては、着替えにくいではないか、クリスティーナよ。
それとも何か? この俺の着替えシーンを見たくて見たくてたまらないと、そう言いたい──」
紅莉栖「あーはいはい、出て行きます出て行きます!
外で待ってるわよ。
一夏、外で待ってましょ」
一夏「そうだな、凶真の着替えが終わったらそのまま食堂へ行こう」
岡部「全く、相変わらずのHENTAI天才少女だな……んんっ! んんんっ!
これは……!」
紅莉栖「でね、セシリアったら──」
一夏「ハハッ、らしいな──」
岡部「フゥーハハハハハ!!!!」
一夏「んぁ、凶真着替え終わっ──」
岡部「狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真! 完全復活!」
ゞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i:::::iy,,
斗;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i:::i!::::!::i}
ソ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ソ::ノ::ノ::リ ノ
イ;;;;;ミヾ、;;从从ノリ彡イ::ハ´
_ ヘ;;;;f::::::、( l ハ ノ ソ l:ヘ`ヽ
辷>=-、__ 〃ゞ::乏弌ヾ ,ィキテ‐ j( '′ ___
`ーヘ¨ヽ \ 'i!ミ:::::. ...:::| i::゙7´ /__.. -‐ ´ ` ー 、
ヾヽ>.::、 \_,ヘ`ー――― ´ ̄ ,,,,,,,,,,,,,. ヽ.
\::{:::::....::::::::::::::', ,,,,,,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;}
>‐--‐‐、― ', >;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:イ
/ 、 ヾ、 \;;;} ,,,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;_/
/ \ \i ヾ=―<´二ノ| ̄ / ̄ヾ;;;;;;;;;/;;/
ヽ \;}、. /V: : : :ト、/_ l;;;;;;;;;;/ ,- ァ‐,´ク
ヾ:. \==' ∨: : :| ゙´ | ';;;/! /ノ//_,..,
ヾ:. \ ∨: : !. l ';′! ,' ´ レ',´‐ '
ト 、 、 \ | : :∧ { 、 / i ,'
∨ \、 `ー==‐`'¨\∧_{__У.. -―――く. ,'
\ /`ヾ:. ´ ̄ ̄ ,,,,;;;;',....ノ
У 〃゙\:::.、 ´¨¨¨¨>{
/ / ノ;\:::.、 ,,,,;;;;;;;;;;|
一夏「うお! すげぇな、全然違うじゃないか!」
紅莉栖「思ったより白衣っぽくなったわね」
岡部「良くやった助手よ! ズボンまで白と言うのはさすがに仕方が無いが……。
実に良く馴染むぞ!」
一夏「へぇー、本当に上手いもんだな。赤いラインを消して、白と黒しか色が無いんだな」
紅莉栖「えぇ。さすがに白一色にするのもと、思って。黒はアクセント程度に残してみたの」
一夏「紅莉栖自身の制服と言い、二人ともすげぇ似合ってるよ!」
岡部「ん? ……おぉ、良く見れば助手の制服も昨日と違っているな」
紅莉栖「(いの一番に気付けっての……)」
岡部「助手の服など気付きもしなかったが……ふむ。
良く見たら、白のホットパンツに白のストッキングとは中々マニアックなチョイスを──」
──ジロジロ。
紅莉栖「ジロジロ見るなHENTAI!」
一夏「ハハハッ! さぁさぁ、食堂に行こうぜ」
岡部「(まったく助手め……朝からドキドキさせおって……)」
紅莉栖「(岡部はもう少し、一夏みたく出来ないのかしら……もう……)」
─食堂─
シャル「一夏っ、おは──紅莉栖も一緒なの?」
箒「──ほう、紅莉栖と仲良く食堂へ……か。大層な身分だな」
鈴音「いーちーかー……?」
セシリア「朝、隣に居ないと思ったらそう言うことでしたの……」
ラウラ「貴様、私の嫁としての自覚が足りないんじゃないか?」
一夏「っちょ、お前ら何怒ってるんだ? 凶真と紅莉栖と三人で来ただけじゃないか」
シャル「(あっ、オカリン……気付かなかった)」
箒「(む、一夏に視線が行き過ぎて気付かなんだ……)」
鈴「(居たんだ)」
セシリア「(一夏さんと紅莉栖さんしか目に付きませんでしたわ……)」
ラウラ「なんだ、岡部倫太郎も一緒だったのか。制服が違うので気付かなかったぞ」
岡部「っふ。良く気が付いたな、眼帯娘よ。
我助手、クリスティーナによってカスタムされた白衣仕様の制服だ……」
シャル「わぁ、二人ともなんだかとっても似合ってるよ!」
セシリア「言われてみれば……なんだか、しっくりきますわね?」
箒「正直、昨日までの姿には少しばかり違和感を感じていたが……」
鈴音「それにしたって、ちょっとカスタムしすぎじゃない?」
ラウラ「この学校は制服のカスタムが自由だ。私のようにスカートではなく、ズボンを穿くことも許されている」
紅莉栖「(助手とか、ティーナについて誰も突っ込んでくれない……)」
一夏「全部、紅莉栖が裁縫したんだってさ。すげーよな。
紅莉栖はきっと良いお嫁さんになるぜ」
紅莉栖「えっ、そっ……そんな……。
(岡部と結婚したら、きっと毎日楽し……えへへ)」
シャル「ぼっ、僕も裁縫してみよっかなー……?」
箒「私も裁縫は苦手な方ではないぞ……?」
セシリア「わっ! わたく……しはその……」
鈴音「りょっ、料理が出来れば十分でしょ!」
ラウラ「おい。何時までも立ち話していないで食事を取りに行かないのか?
教官に見つかったら事だぞ」
一夏「おっと、そうだな。飯にしようぜ」
鈴音「さっさと食べて教室行かないと、授業始まっちゃうわね」
箒「それもこれも、一夏が余計な誤解を招くからだぞ」
セシリア「そうですわよ、まったく……」
シャル「まぁまぁ、早く食べちゃおう?」
ラウラ「朝食の時間は貴重だと言うのに……」
岡部「この連中はなぜ、こうも毎回騒がしいのだ……?」
紅莉栖「端から見たらラボも実際こんなもんよ……私達に無かったのは若さだけね。
あと一つ言っておくけど、アンタも十分騒がしいから」
岡部「……」
─てがみ─
よっす、ちーちゃん! 元気?
ちょっと聞きたいんだけどさー、岡部倫太郎ってどうなの?
なんか解ったりしてる?
解らないよねー、束さんが解らない事が解るはずないもんねー。
そいでさ、色々調べたいんだけど身体開けるのってやっぱり不味いよね? ね?
だから仕方なく、仕方なくだよー? その子にIS渡そうと思ってさ。
根回しはしといたから、だいじょーぶいぶいっ!
箒ちゃんにあげた時ほど問題にはならないっぽいよ! これも彼が男の子だからかな?
ってことでよろしくぅ!
先にコアを送っておくからそれを渡しておいてねん。
いちおー、第4世代って事なんだけどもう限りなく第五世代に近いと言うかー。
わき道それ過ぎてちょっともうそれ違う感じじゃん!? ってな具合なんだけど気にしない気にしなーい!
厳密に名前を付けるなら、そーだなーうーんうーん……。
特殊成長型IS……ってところかな? っま! 良いか!
後で機体が出来上がったら別途で送るから、先にコアを渡しておいてね!
取りあえず触らせれば解るから!!
ってコレさっき書いたっけ? まぁいーかー! うん! ばいばい。
菓子子
──カサカサ。
千冬「……はぁ」
山田「えっ、つまりこの箱の中にはISのコアのみが入ってるということですか?」
千冬「だろうな……」
山田「コアだけを彼に……岡部君に渡してどうするつもりなんでしょう。
それに、実質の第5世代? 特殊進化型って……」
千冬「束が何を考えているのかなんて、想像するだに無駄なことだ。
しかし……思った以上に行動が早かったな」
山田「篠ノ之束が作った第5世代相当の専用機……また、周りが荒れそうですね。
と言うか、荒れます。完全に……はぁ……。
来週に行われる“クラス内対抗戦”はどうしますか?」
千冬「間に合うようなら岡部もその機体で参加させる。
束のことだ、間に合わせてくるだろう。
データを取るにはうってつけのイベントだからな……」
──キーンコーンカーンコーン。
千冬「HRを始める……と言っても特に報告は無い。
来週に行われる“クラス内対抗戦”は解っているな?
何時も以上に各人、気を引き締めて授業を受けるように。
午前中はIS実戦だ。すぐに着替えて、第二グラウンドへ集合。
それから岡部」
岡部「ん……?」
千冬「コレを」
岡部「この箱は……?」
千冬「ISのコアだ。お前の専用機が近いうちに届く。
意図は解らんが届くまでお前がそれを持っていろとのことだ」
──え! 専用機!? コアってどういうことだろ!? ざわざわ。
千冬「静かに! さぁ、さっさと着替えてグラウンドへ集合しろ。以上!」
──ガラガラ、ピシャ。
一夏「凶真! 取り合えず、それは後にして急ぐぞ!」
岡部「お? お? どういうことだ?」
一夏「女子が着替え始めるから急いで更衣室に行かないと!
アリーナに更衣室がある、実習の度に移動しなきゃいけないから急がないと遅刻する!」
岡部「う、うむ」
紅莉栖「行っちゃった……(ISのコアのみ? どういうこと?)」
シャル「っさ、紅莉栖も着替えないと」
セシリア「もたもたしていると、遅刻しますわよ?」
箒「早着替えには慣れておいた方が良い」
紅莉栖「(目の毒です……本当にありがとうございました……ん?)」
ラウラ「どうした? 私の身体に何か付いているのか……?」
紅莉栖「いっ、いえ! なんでもないの!
(仲間が居た……)」
紅莉栖「それにしても、私は技師な訳だが……操縦しなくちゃいけないのかしら」
シャル「うーん、一応授業だからね。必修としてやらなくちゃいけないんじゃないかな?」
紅莉栖「そっか。それもそうよね……にしても、この格好は恥しいわね……」
箒「直に慣れる。行こう」
─アリーナ更衣室─
岡部「これを……着るのか?」
一夏「ん? どうかしたのか?」
岡部「少し、ぴっちりしすぎじゃないか……」
一夏「これさ、着る時に裸って言うのが着辛いんだよ。引っかかったり」
岡部「だな……」
一夏「っま! その内慣れるさ」
岡部「慣れたくないものだが……。これは最初の制服以上にキツいものがあるな……」
─第二グラウンド─
千冬「本日は実演戦闘を行う。
岡部と牧瀬は初回になる、織斑! デュノア! 軽く実演を行え」
一夏「了解」
シャル「はい」
箒「(っく、なぜ私じゃないんだ…)」
シャル「(選ばれなかった……ショックですわ……)」
ラウラ「(教官、私ではダメなのでしょうか……)」
岡部「(えぇい、この服装は……目のやり場に困るではないか)」
紅莉栖「(もう……何なのよこの服装! ボディーラインが見えすぎじゃないの!?)」
千冬「ざわつくな! 良いか二人とも、慣らす程度で良いからな。
各人、両名の動きをちゃんと見るように」
──シュユゥゥゥゥン……!
一夏の右腕に装備された白いガントレットが光を放ち、身体を包み込んだ。
次の瞬間、織斑一夏専用機 IS“白式”が現れた。
同様に、シャルロット・デュノアも専用機 IS“ラファール・リヴァイヴ・カスタムII ”を身に纏っていた。
岡部「これが、ISか」
紅莉栖「一夏のが“白式”第4世代のIS。ちなみに第4世代のISは“白式”と箒さんの“紅椿”の二機のみ」
岡部「む……随分と詳しいじゃないか」
紅莉栖「これも常識だから、あんたも覚えておきなさい。
シャルロット機の説明もいる?」
岡部「頼む」
紅莉栖「“ラファール・リヴァイヴ・カスタムII ”ラファール・リヴァイヴをカスタムした第2世代型IS。
特徴は豊富な装備量で、どの様な場面でも即時対応が出来る。
彼女の得意技、高速切替(ラピッド・スイッチ)をもっとも発揮出来る機体ね」
岡部「一夏の“白式”の説明も頼む」
紅莉栖「OK. “白式”世界でたった二機しかない第4世代型IS。
装備は“雪片弐型”(ゆきひらにがた)近接戦闘用の武装で白式の主力武装。
“ワンオフ・アビリティー”(単一仕様能力)は“零落白夜”(れいらくびゃくや)
対象のエネルギー全てを消滅させる。いわゆるチート武器ってやつね。
ちなみに、第1回IS世界大会総合優勝および格闘部門優勝者である織斑先生の搭乗していたIS“暮桜”も同じ“ワンオフ・アビリティー”だった。
未だ謎だらけの機体よ」
岡部「ふむ、詳しいなクリスティーナよ」
紅莉栖「表面的なスペックは公表されてるから、当然っちゃ当然よ。
……始まるわよ」
千冬「(ふん、レクチャーしてやろうかと思ったが……その必要はなさそうだな」
シャル「行くよ、一夏!」
一夏「おう! 来い……!」
──シャゥゥン!!
右手に連装ショットガン“レイン・オブ・サタデイ”を呼び出し、一夏へとその銃口を向けた。
一夏「っく……!」
シャル「だめだめ! 近づけさせないよ……!」
弾丸の雨を潜り、シャルロットに近接しようとする一夏だが動きを読まれ一向に近づけない。
被弾を減らしつつ、攻撃を凌ぐしかなかった。
シャル「まだまだぁ……行くよ!!」
──シャゥゥン!!
シャルロットは重機関銃“デザート・フォックス”に切り替え、その鉄量を持ってして一夏を攻め続ける。
──ダダダッ!! ガンガンガンッッ!!
一夏「くっそ……!」
避けきれずに被弾する。
“雪羅”による“零落白夜”のバリアシールドを展開しようとしたが、シールドエネルギーのことを考え一夏は躊躇った。
おそらく、シャルロットの目論見は遠距離攻撃を繰り返し、シールドを展開させエネルギー切れを狙っている。
一夏「その手には……乗らないぜっ!!」
次の瞬間、一夏は“ダブル・イグニッション・ブースト”(二段階瞬時加速)を仕掛けた。
一夏「決める……!!」
─“零落白夜”発動─
一夏「うおおおおおおおおおお!!!!」
銃弾の雨を潜り抜け、その一太刀をシャルロットへと振り抜いた。
シャル「──掛かったね、一夏!
“イグニッション・ブースト”からの、“零落白夜”……想定していれば、避けられるよっっ!!」
一夏「な……にっ」
全力で空振りをした一夏の隙をシャルロットは逃がさなかった。
“雪羅”によるクロー攻撃での返しを試みたが──。
──カツン。
シャル「チェックメイト……」
背中を取られた一夏……白式の背中に“灰色の鱗殻”(グレー・スケール)がカツンと当った。
零距離、それも背後からパイルバンカーを食らってはひとたまりも無い。
一夏の選択は一つだった。
一夏「……参った」
シャル「んふふっ、僕の勝ちだね♪ 二段階瞬時加速が思ったより速くて焦っちゃったけど、なんとか対応できたよ」
千冬「それまでッッ!!」
岡部「何が何だか解らない訳だが……」
紅莉栖「最初はそんなもんでしょ。あんた、教科書どこまで読んだの?」
岡部「半分だ。二日で読むと言ったからな」
紅莉栖「ふむん。ちゃんと読んでるじゃない、感心したわ」
セシリア「まったく、一夏さんったら最近たるんでるんじゃなくって?」
箒「まったくだ。鍛錬が足りていない証拠だな」
ラウラ「いや、そうとばかりも言えん。シャルロットの技術が上がっている。私もうかうかしてられんな……」
一夏「ふぅー、凶真にカッコ悪いとこ見せちゃったな」
シャル「一夏は最近考えて戦いすぎなんじゃないかな、そのせいで裏をかかれやすくなってると思うんだ」
一夏「スラスター増設とか、“雪羅”のエネルギーの食い方が半端じゃないからさ。どうしても短期戦で決めなきゃって思っちゃうんだよな」
シャル「うん。じゃぁまず──」
千冬「反省会は後にして、一旦集まれ」
一夏「あっ、はい!」
シャル「はいっ」
千冬「二人ともご苦労だった。デュノアは全体的に技術が上がってきているな。
織斑は考えて戦いすぎだ。お前はそう言う性格の人間じゃないだろう、もっと自分を見つめな直すんだな」
一夏「はい……」
千冬「それでは、これより二人一組で軽い実戦を行う。
専用機持ちはこれを補助、カバーしてもらう。解ったな!」
専用機持ち「「「「「了解っ!」」」」」
千冬「岡部、それと牧瀬はこっちだ……」
岡部「む?」
牧瀬「へ?」
千冬「牧瀬は技術屋だ。無理にIS操縦をする必要もあるまい。
お前は生徒達の乗る“打鉄”に不備故障などが無いか見学していろ。
目で見て不具合を察知出来るようになれ。良いな」
牧瀬「はっ、はい」
千冬「岡部。先ほど渡したコアの入った箱を持っているな?」
岡部「あっ……あぁ……はい」
千冬「よろしい。開けろ」
箱の中には球体のISコアが入っていた。
その色は黒く暗く、全てを吸い込むような深い色をしていた。
岡部「これが……ISのコアか。
(ダルが見たら喜びそうだな)」
紅莉栖「(一体コアだけで何をしようってのかしら)」
岡部「ふむ、良い色だ……ダークマターと名付けようではないか」
紅莉栖「(ナチュラルに、厨二乙……。顔、ニヤついてんぞ)」
千冬「名前などどうでも良い。持ってみろ……」
──フィィィィィィィィン……。
岡部がコアに触れた瞬間、コアが一瞬光を放ち──消えた。
岡部「なにっ!? 消えたぞ!」
千冬「……右手の指を見てみろ」
紅莉栖「えっ、指輪……? 岡部がそんなお洒落アイテム持ってるはず……」
岡部「なんだ、これは……」
岡部の右手中指には黒い無機質な指輪が輝いていた。
千冬「おそらく……待機状態だろうな」
紅莉栖「待機……ちょっ、ちょっと待って下さい!
コアの待機状態なんて、そんなの聞いたことも無い……」
千冬「これを岡部にと用意したのは束だ。何かしら意味があるのだろう……」
紅莉栖「(篠ノ之 束の……)」
岡部「女史よ。それで俺は一体どうすれば……」
─パァンッ!
岡部「あだっ!」
千冬「織斑先生だ。同じ事を何度も言わせるな馬鹿者。
以上だ。後は牧瀬と見学していろ」
岡部「俺は皆のようにISを操縦しなくて良い……のですか?」
千冬「時期に専用機が届く。
それまで変に癖をつける必要も無いだろう。解ったら黙って見学しておけ」
岡部「ふむ……それにしても、趣味の悪い指輪だ」
紅莉栖「さっきまで、「ダークマターと名付けよう……」とか何とか言っちゃってニヤついてた癖に」
岡部「あっ、あれはあの黒い球体だから良かったのだ!」
紅莉栖「はいはい厨二厨二」
岡部「ぐぬ……!」
紅莉栖「……ん? 何よ急に黙っちゃっ……て……」
岡部「っべ、別に見ようと思って見たわけではないぞ!
貴様がそんなピッチリとした服を着ているから目線が行ってしまっただけで……」
紅莉栖「アンタがHENTAIだってことすっかり忘れてた!
それに、そっちだって同じの着てるじゃないか!」
岡部「お前の貧相な身体など見るに値しな──」
紅莉栖「それ以上言ったら、ポン酢漬けにするわよ……」
岡部「はぁ……しかし、とんでもない学校へ来てしまったものだな……。
見ろ。俺達よりも若い衆がISを乗り回して戦っている」
紅莉栖「そうね。……──ねぇ、岡部」
岡部「ん?」
紅莉栖「やっぱり、その……怒ってる?」
岡部「何だ、藪から棒に」
紅莉栖「いや……だって、私が原因でここに居る訳だし、さ」
岡部「そうだな……」
紅莉栖「(やっぱり……)」
岡部「だが案ずるなクリスティーナよ。
ここ最近は退屈していたところだ、この程度どうと言うことはない」
紅莉栖「岡部……」
岡部「ただ。ラボに行かない生活……と、言うのは少し味気なさを感じるな」
紅莉栖「そうね……」
岡部「次の連休当りに、ラボへ行かないか?」
紅莉栖「へっ……」
岡部「ホームシックになるのが早いと、ダルやまゆりに笑われてしまうな……」
紅莉栖「ううん。だって、あそこは岡部。あんたの日常だったんだもの。
誰も笑いやしないわ」
岡部「……ふん。助手の癖に、言ってくれる」
紅莉栖「助手でもティーナでも無いと、言っとろーが」
岡部「ふっ……ここでも楽しくやれると良いな」
紅莉栖「そうね。でもきっと大丈夫よ、良い人達ばかりだもの」
ラウラ「待て一夏! 今度は私と勝負しろ!」
セシリア「いーえ! 今度こそは私のブルーティアーズとですわ!」
箒「次は私と戦う約束だったろう! おい一夏逃げるなっ!!」
シャル「あ、あはは……大変だね、一夏」
一夏「笑ってないでシャルも何とか言ってくれよ!」
シャル「いやぁ、僕はさっき戦っちゃったから何も言えないよ。ごめんね一夏」
ラウラ「いー」
セシリア「ちー」
箒「かぁぁぁ!!」
一夏「うわああああ!!!」
千冬「お前らっ! 真面目にやれ!!」
紅莉栖「ね?」
岡部「あぁ──そうだな」
今回の投下は以上です。
読んでくれてる方々、感謝です!
ISを知らない人の為に簡単な用語説明。
白式(びゃくしき)の能力
装備
・雪片弐型(ゆきひらにがた)
剣の形をした、近接戦闘用の武装で白式の主力武装。
・零落白夜(れいらくびゃくや)
白式の単一仕様能力。
対象のエネルギー全てを消滅させる。
使用の際は雪片弐型が変形し、エネルギーの刃を形成する。
相手のエネルギー兵器による攻撃を無効化したり、シールドバリアーを斬り裂いて相手のシールドエネルギーに直接ダメージを与えられる白式最大の攻撃能力。
自身のシールドエネルギーを消費して稼動するため、使用するほど自身も危機に陥ってしまう諸刃の剣。
・雪羅 (せつら)
状況に応じて荷電粒子砲、エネルギー刃のクロー、零落白夜のシールドへ切り替え、4機のウィングスラスターによる《 二段階瞬時加速 (ダブル・イグニッション)》が可能になる。
・ワンオフ・アビリティー(唯一仕様の特殊能力)
各ISが操縦者と最高状態の相性になったときに自然発生する能力のこと。
・イグニッション・ブースト(瞬時加速)
ISの後部スラスター翼からエネルギーを放出、その内部に一度取り込み、圧縮して放出する。
その際に得られる慣性エネルギーをして爆発的に加速する。
月曜日からは仕事があるもので、投下速度が落ちてしまうかもしれませんが、頑張ります。
ありがとうございました。
>>104
なら、加盟国に情報開示すれば良いだけじゃね?
日本だけが技術持つのイクナイっていう条約だし。
○○のキャラは出るの?
と言う質問に対しては、言ってしまうと色々とイベントやら何やら予想付きそうな感じがするのでごめんなさい。
がんばります。
>>143
シャルロットがIS学園に潜入して、白式のデータを盗もうとした。
この事から、(当然だが)ISのデータは公表されているスペック以外にも色々と秘密がある。
そしてそれが公表されない事にも理由がある。
*公表されているスペック=ラウラが鈴とセシリアに言った台詞
ラウラ「データで見たときの方がまだ強そうではあったな」
から憶測し、表面的な数値は公表されていると考える。
そして、女性しか扱えないはずのISを起動させた二人目の男。
織斑一夏だけの特異ケースでなく、何らかの事象が原因で起動させることが出来るのであれば世界が変わる。
もちろん軍事的な意味でも一気に色が変わる程の事件になる。
国際委員会としては各国で仲良く情報を共有、ではなく慎重に慎重を重ねたいと言う思惑。
と言う事でどうか一つご了承下さい……。
短めですが、もうしばらくしたら投下します。
>>136 続き
─我輩は猫である(名前はまだ無い)─
束「でーきたーっ!! さすが束さん、天才だなぁー。
昨日の今日で出来ちゃうなんて天才だなーでもちょー疲れたー」
束の眼前に鎮座する石のような鉄の塊。
暗闇に飲まれた室内で、ディスプレイの微かな明かりが岡部倫太郎の専用機を照らした。
束「さてさて、これがどうなるか楽しみだね。
早くデータ欲しいなー、どうなるのかなー」
くー「IS学園にお運びしますか?」
束「にゃ! 気が利くね、くーちゃん!
それじゃ、お願いしよっかな。場所は……うん、お部屋の前で良いよもう」
くー「……はい」
束「どうせ、いっくんと同室だろうし何とかなるってなるって。
それより束さんは眠いので寝ちゃいまーす! おやすみー!! やー久々疲れたー!!!」
くー「……行って参ります」
ディスプレイに突っ伏し寝てしまった束にタオルケットをかけ、深夜のIS学園へと銀髪の人影が潜入した。
この日、幾重にも張り巡らされた警告機が作動することは無かった。
─自室─
──シャコシャコシャコ……。
一夏「シャルに負けたのが悔しくて、良く眠れなかったな……」
早朝。
未だに眠っている岡部倫太郎を他所に、織斑一夏は歯を磨きながら思い悩んでいた。
織斑一夏のIS戦成績はこのところ芳しくない。
“白式”が第二形態へ移行し、攻撃力や攻撃の幅も増えたがエネルギーの問題も大幅に増えた。
更識 簪(さらしき かんざし)のお陰で多少のエネルギー問題は解決されたものの、未だに多数の問題を抱えている。
ラウラ・ボーデヴィッヒ。シャルロット・デュノア。この二人に一対一での戦闘では全く持って歯が立たなくなっていた。
以前より差が開いてしまったとすら一夏は感じていた。
一夏「来週のクラス内対抗戦……頑張らないと……」
──シュィィィイイイイン!!!
一夏「……なっ!」
水状の刃が突如ドアの向こう側から、貫き。一夏と岡部の部屋のドアを切り裂いた。
???「ふう。お邪魔しまぁす」
一夏「何やってるんですか、楯無さん」
楯無「あら……? 一夏くんったら随分と早起きさんなのね?」
ドアを斬り破って登場したのは、IS学園2年生で生徒会長。
更識 楯無(さらしき たてなし) であった。
ドアを斬り裂いたであろう、蛇腹剣“ラスティー・ネイル”はその手になく、何時も通り“惨状”と書かれた扇子が開かれていた。
参上と惨状をかけているのだろう。
一夏「ドアの修理、申請しておいて下さいよ……」
楯無「やん。怒っちゃやーよ? おねーさんは一夏くんの寝顔を見に来ただけなの。
それなのに、もう起きてるなんて……きみ、 な ま い き だ ぞ♪」
楯無はツンツン、と扇子で一夏の鼻先を突付いた。
一夏「……怒りますよ」
楯無「もー、一夏くんってば何時にもましてイケズなんだから。
どうしたの? 悩みがあるならおねーさんが聞いてあげようか?」
一夏「別に……無いですよ」
楯無「(可愛いんだから……)
ふふっ、それより一夏くん。ドアの目の前にあーんな大きな荷物置いておくの、おねーさんは関心しないかな?」
一夏「荷物……? 何のことですか?」
楯無「あら? 自覚無し?」
一夏「???」
楯無「うーん、じゃぁ直接見てみた方が早いわね。こっちこっち」
一夏「これ……は……」
一夏と岡部の部屋の前。
廊下には黒い石のような塊が鎮座していた。
触るとひんやりとしていて、鉱石のようで鉄のような不思議な雰囲気を醸し出している。
楯無「何かしら、これ?」
一夏「さぁ……俺は知りませんけど」
楯無「うーん、じゃぁやっぱり……彼、関係かしらね?」
一夏「彼?」
楯無「岡部──倫太郎」
岡部倫太郎。
そう呟いた楯無の瞳は何時ものような柔和な輝きは無く、鋭く冷たい更識家頭首のソレであった。
一夏「凶真の物ってことですか……?」
楯無「さぁ? 直接聞いてみないと……」
岡部「なっ、なんだコレは!! 何故ドアが無くなってるんだ……」
楯無「あはっ。都合よく起きたみたい♪」
一夏「これだけ騒げば誰だって起きますよ……」
岡部「ワンサマー! これは一体……な、んだコレは」
一夏「おはよう、凶真。起こしちゃったみたいでごめんな」
楯無「はぁい」
岡部「む? 誰だ貴様は」
一夏「えっと、この人は……」
楯無「更識 楯無。IS学園2年生で生徒会長をやってるわ。よろしくね?
岡部──倫太郎ちゃん?」
岡部「なっ……倫太郎ちゃん?」
楯無「うーん、ちょっと長いかしら? 倫ちゃん? うん、倫ちゃんなんて良いんじゃない?」
一夏「それって鈴と発音が被りませんか?」
楯無「あら……それはちょっと困っちゃうわね。うーん……」
岡部「うーんではない! おい、ワンサマーなんだこの異様に馴れ馴れしい女は」
楯無「もう、今さっき説明したばかりじゃない」
岡部「そう言う意味では、あぁもう。話しが通じん。
フェイリスより質が悪いな……」
一夏「ふぇいりす?」
岡部「あぁ、すまん。こちらの話しだ」
楯無「で、倫ちゃんはコレが何か解る?」
一夏「結局、それに落ち着くんですか?」
楯無「だって、可愛いもの。字面で違いは解るわよ、きっと♪」
岡部「(この手の人種は苦手だ……)」
一夏「まぁ良いか。で──凶真、解るか?」
岡部「いや、さっぱりだが……」
楯無「うーん、おねーさんのレーダーにはコレが倫ちゃん関係だってずびずばキてるんだけど……。
ねぇ倫ちゃん。本当に心当たりない?」
岡部「だから、無いと言っているだろう。それに、貴様さっきから馴れ馴れしいぞ。
第一お姉さんお姉さんと言っているが俺の方が年上だろう、どう考えても」
楯無「いやん。年齢なんて関係無いわ。おねーさんはおねーさんだもの。ね? 仲良くして欲しいな?」
岡部「(っく……顔が近い……)」
楯無「うふっ……照れちゃって、倫ちゃんも一夏くんと同じ位可愛いかもしれないわね」
一夏「(凶真……楯無さんに目を付けられたら、すまん。守れそうに無い)」
紅莉栖「──岡部?」
岡部「紅莉……スティーナか。どうしたこんな時間に」
紅莉栖「いや、朝食を一緒に食べにって……なに、これ?」
岡部「解らん……」
楯無「あら、貴女が噂のクリちゃん?」
紅莉栖「くっ、くり!?」
楯無「更織 楯無。ここの生徒会長やってるの、よろしくね」
紅莉栖「生徒会長……?(って、確かロシアの正式な代表じゃ……)」
楯無「まぁまぁ、そう肩肘張らずに仲良くしましょうね♪」
紅莉栖「はぁ……」
楯無「で、クリちゃんもこの塊の正体を知らないっと……」
紅莉栖「(ちょっと、岡部! どういうことだ、説明を希望する!)」
岡部「(知らん。俺も今さっき起きたところで状況が掴めんのだ)」
──コツコツコツ。
千冬「どこの馬鹿者だ! 朝っぱらから騒いでいるのは」
一夏「ちっ、千冬姉ぇ……」
千冬「一夏……やはりお前か……」
一夏「いやっ、その……違うくて……でもまぁ結果……はい、そうです」
──コホン。
千冬「んんっ。織斑、状況を説明しろ。ドアが無くなっている理由もな」
一夏「えっと……ドアは盾無さんで、この塊は……」
楯無「~♪」
一夏「この塊は朝起きたらここにありました」
千冬「起きたらあった?」
一夏「はい」
千冬「(こんな巨大な物を人知れず廊下に放置出来る人間など……。そういう事か……)
岡部、ちょっと来い」
岡部「む?」
千冬「良いから来い。
こいつに一度でも触れたか?」
岡部「いや、一切触れてないが……」
千冬「触ってみろ。指輪をしているのは右手か? なら右手でな」
紅莉栖「えっ! まさか……)」
楯無「(……そういうこと)」
一夏「?」
岡部「こんな得体の知れない物に触れと言うのか……」
千冬「良いから触れ。命令だ」
岡部「っく……」
恐る恐る岡部はその塊に右手を差し出した。
──ブゥン。
《“コア”確認 起動》
岡部「なっ!?」
塊に右手が触れた瞬間、岡部の身体はソレに飲み込まれた。
一夏「えっ! 凶真!?」
紅莉栖「岡部っ!!」
千冬「……」
楯無「……」
岡部の身体を完全に飲み込んだ塊は暫くするとその形を変形し始めた。
ぐにょりぐにょりと形を変えていく。
その様はまるで、映画に出てくる知性を持った液体金属の変形のようだった。
千冬「これは……」
楯無「この形は……」
《形状記憶 固定完了 フォーマット・フィッティング開始》
岡部「(なんだ、何が……起こった? 暗くて何も見えない……)」
一夏「IS……なのか?」
紅莉栖「岡部……」
《フォーマット・フィッティング 終了》
黒一色だった機体の色は淡いクリーム色がベースのものへと変化していた。
千冬「今のが……」
楯無「ファースト・シフト……?」
一夏「初期設定が終わったってことか……?」
紅莉栖「でも、この形って……」
岡部「むっ……視界が一気に開け……ぬぁっ!? なんだコレは!?」
操縦者の知覚を補佐する役目を担うハイパーセンサーに岡部は戸惑いの声を上げる。
先ほどと打って変わって、岡部の視界は全方位が知覚出来る世界へと変貌を遂げていた。
そのフォルムは独特で、一切の肌の露出が無く端から見れば搭乗者が岡部倫太郎だと解る要素は何一つ無かった。
岡部「これが……俺のIS-インフィニット・ストラトス-か」
短めで申し訳ありませんが、これで本日の投下は終了です。
ありがとうございました。
画像がいつまで持つか解りませんが……。
簡易キャラ紹介。
・篠ノ之 束(しののの たばね)
http://kie.nu/.BV
箒の姉であり、ISの発明者。
1人でISの基礎理論を考案、実証し、全てのISのコアを造った自他共に認める「天才」科学者。
ISを開発したことから政府の監視下に置かれていたが、物語開始の3年前に突如行方をくらませる。
失踪後も唯一コアの製造方法を知っているため、現在も各国から追われている。
現在も失踪中で、所在地は不明。
・更識 楯無(さらしき たてなし)
http://kie.nu/.BW
IS学園2年生で生徒会長。裏工作を実行する暗部に対する対暗部用暗部「更識家」の当主。
明瞭快活で文武両道、料理の腕も絶品で更に抜群のプロポーションとカリスマ性を持つ完璧超人。
IS学園の生徒でありながら自由国籍権を持ち、ロシアの代表操縦者。
在学生で唯一の現役の代表者である。
肉弾戦・IS戦の双方ともに作中屈指の実力を持ち、自他共に認める「IS学園最強」。
・更識 簪(さらしき かんざし)
http://kie.nu/.BX
上記、楯無の実妹。
日本代表候補生。
今後の当SSに登場するかは不明。
*岡部倫太郎の専用ISのグラフィック。
ゲーム
ZONE OF THE ENDERS
の“ジェフティ”を想像しながら書いてます。
http://kie.nu/.C0
IS 銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)
http://kie.nu/.C1
のような感じに素肌が見えないと思って下さい。
アニメ版では搭乗者無しの福音ですが、原作では搭乗者ありなので、後者の方を参考にしています。
雑談ですが、投下途中でも前でも後でも全く気にしません。
レスが頂ける=読んで貰っている。
それだけで嬉しくモチベーションに繋がっています。
それではありがとうございました。
>>1です。
トリップをつけた方が解りやすそうなので、今回より付けさせて頂きます。
もう少ししたら今日の分を投下させて頂きます。
まっちょしぃの流れが面白くて悔しいけど、投下始めます。
>>170 続き
─職員室─
千冬「はぁ……」
柄にも無く、織斑千冬は深い溜息を付いた。
原因は今朝方に起きた岡部倫太郎の専用ISに他ならなかった。
千冬「束め……もう少し、時と場所を考えられなかったのか」
言葉を吐いた直後に、そんなことを期待出来る友人ではない。
と、思い出し自分に悪態を付くしかなかった。
その後は少々……と付けるには控えめなほど騒ぎになった。
寮の廊下でISを完全展開したのであれば、他の部屋の生徒が気付かないはずもなく、その場は完全に岡部専用機のお披露目会場と相成ってしまった。
ご丁寧なことにも、完全展開後に束のホログラフィックによる機体説明まで始まってしまったので尚の事だった。
束「はろはろーん! この説明が流れてるってことは、ファースト・シフトが終わったってことだね。
うんうん、良いことだ!
どんな形になったのかな? ホログラフの束さんじゃ見れないから、リアルタイムで観測出来ないのはちょっと残念かなー。
まっ、良いや。簡単に説明しちゃうよ? 準備は良い? 良くなくても始まっちゃうからね!
この映像は一度きりだから聞き逃しても束さん知らないからねー」
篠ノ之 束のホログラフが廊下で演説したものは衝撃的なものだった。
一学校の、それも廊下でするような内容では無い……と言う意味も含めて。
──今、君が纏っているのは第5世代相当の新型IS。
この、たった一言が世界へどれだけの影響を与えるかを束は理解しているのか?
織斑千冬がどれだけ思いを馳せ様とも、ホログラフの演説が止まる事は無論、ありはしなかった。
演説の最中に人が人を呼び、何時の間にか廊下は大混雑。
見渡せば自らが受け持つクラスの生徒……専用機持ちも集合していた。
束「第5世代相当……って言うのは、厳密には違うってことね。
第4世代のコンセプトが全領域・全局面展開運用能力。
これが完成・完結してない訳だから、次にシフトする先がまだ無い訳。
つまり、この機体が目指した場所は全く違う訳だよ」
──コアと搭乗者による、完全自立進化型。
束「バススロット無し! 初期装備無し! もーなんも無し!
フィッティングが終わって、ファースト・シフト移行しないとどんな装備なのか。
ましてや、フォルム自体もコアと搭乗者任せだから想像付かないわけ。
後の装備は箒ちゃんの乗ってる“紅椿”と同じように“無段階移行”(シームレス・シフト)にお任せ!
っちゅーか、“無段階移行”に完全依存だね、うん。後は頑張れ! いじょう!」
──ブツン。
速射砲の様に用件だけを言い終わると、ホログラフは消えてしまった。
ざわつく廊下。
“完全自立進化型”そんな世界的発表をこんなところでしてしまったのだ。
騒ぎが簡単に収まるはずが無かった。
取りあえず、生徒を部屋に戻さねばと千冬が口を開こうとした時。
──ブツン。
束「いやー忘れてた! まだ見てる? 見てなくても喋るけどねー。
その子の名前は──“石鍵”(いしかぎ)。
君がその子を、石くれで出来た鍵のままにするのか。それとも世界を開く鍵にするのか。楽しみにしてるよん。
完全自立進化だからね、第1世代に劣るスペックにもなれば、それこそ本当にそのまま第5世代になるのかもしれない。
全ては君次第だー! なんちゃって」
──ブツン。
こうして岡部倫太郎専用IS “石鍵” はIS学園1年寮の廊下で誕生した。
千冬「噂は既に校内全ての生徒に行き渡っているだろう……場所は地味だが、最高に派手で迷惑なお披露目だ」
山田「私はその時間、まだ眠っていたので直接見れなかったのは残念ですが……」
千冬「山田先生はもう少し早めに起きる習慣を付けた方が良い」
山田「あう……すみません。
でも、即時万能対応機すら机上の空論だったのに“完全自立進化型”ISなんて……」
千冬「また、荒れるだろうな」
山田「えぇ……岡部君も、一夏君 箒さん同様にどこにも所属していない専用機持ちになってしまいました。
これから先、日本人生徒3人の所属について各国が荒れるでしょうね」
千冬「生徒を守るのも教師……担任の務めだ。副担任にも頑張って貰うだけさ」
山田「あう……が、頑張ります」
─教室─
──がやがや。岡部君に専用機が届いたんだって! しかも第5世代だとか……。
──えっ! 嘘! どういうこと!?
岡部「なんだか……視線が痛いのだが」
紅莉栖「当たり前でしょ……世界初の試み、その中心人物になっちゃったんだから」
シャル「それにしても、完全自立進化型って一体どういうことなんだろ。
僕、途中からだったから色々聞き逃しちゃった」
セシリア「私もですわ」
ラウラ「倫太郎。説明しろ」
箒「姉が迷惑をかけたようで……申し訳ないな」
岡部「いや、俺もまだいまいち把握出来ていないのだ。それに、シノノノノよ。お前が気にすることではない」
箒「そう言って貰えると助かる……(ん? 何か今、違和感を感じたが……)」
一夏「今日は実習無いからな、放課後にアリーナで動かしてみるってのはどうだ?」
シャル「賛成!」
ラウラ「クラス内対抗戦も近い、トレーニングの時間は多ければ多いほど良い」
セシリア「私もお手伝い致しますわ。新型ISのスペックをこの目で確かめて差し上げます」
楯無「決まりね♪」
一夏「うわっ! 楯無さんっ、何時の間に……」
楯無「あら? 最初から居たわよ?」
《扇子-隠密-》
一夏「クラス内で気配消さないで下さい……」
楯無はそのまま、後ろから抱きつくように一夏へ纏わり付いた。
発達した乳房が一夏の背中を圧迫し、年頃の男子高生は頬を赤らめるしかなかった。
箒「ぐぬ……っ」
シャル「あぅぅ……」
セシリア「むっ……」
ラウラ「ッチ……」
四者四様の反応を見せる乙女を尻目に楯無は話しを続けた。
ラウラに至っては、ナイフを取り出しそうになったが相手がIS学園最強の更識 楯無とあれば迂闊に手を出す訳にも行かなかった。
楯無「それじゃ倫ちゃん、放課後ね?」
岡部「なぁ助手よ。この学校へ来てからと言うもの自由意志が剥奪されているように思えるのだが……」
紅莉栖「助手言うな。ラボでは傍若無人だったあんたが振り回されてる光景はまぁまぁ面白いわよ。
是非ともまゆりや、橋田に見せたいわね」
岡部「ラボの創始者たる俺の無様な姿を見たいラボメンなど、居ようはずもないだろう」
紅莉栖「ここに居る訳だが、なにか」
楯無「もー、二人の世界に入っちゃダメよぅ。
私も一夏くんと二人の世界に浸っちゃうぞ?」
──ギュウゥ。
一夏「ちょ、ちょっと楯無さん当ってる、当ってます……」
楯無「(当ててるの♪)」
一夏「……」
箒「いい、いい加減にしろこの破廉恥が!!」
シャル「一夏のえっち……」
セシリア「い、一夏さんが望むのなら私だって……!!」
ラウラ「嫁、と言う言葉の意味が解って無いらしいな……」
武器を手にする者。
傍目に見て落ち込む者。
勘違いする者。
殺意を向ける者。
──ガラガラ。
鈴音「一夏ぁ、聞いたわよ。朝大変だった……んだ……て、……」
──シャゥゥン。
鈴音「よし、殺そう」
殺しに来る者。
鈴音「“双天牙月”(そうてんがげつ)……」
一夏「なっ! 鈴、っちょ、お前っ!!」
箒「いー……」
シャル「ちー……」
セシリア「かー……」
ラウラ「報いだ……」
鈴音「死ねぇぇぇえ!!!」
一夏「簡便してくれえぇぇぇ!!」
楯無「うふふっ。愉快なクラスね?」
岡部「恐ろしい女だ……」
楯無「それじゃぁ、放課後にまた会いましょうね。ばいばい、倫ちゃん」
紅莉栖「(なんて馴れ馴れしい女なの……って言うか、倫ちゃんって! 倫ちゃんて!!)」
─放課後・第二アリーナ─
岡部「何か、かなりの人数がアリーナ席に居る気がするんだが……」
紅莉栖「そりゃそうよ、新型ISの初お披露目なんだからね」
“石鍵”に機器をつけ、データを見る紅莉栖が呟いた。
カタカタとキーボードを叩く音が控え室に響く。
岡部「それにしても……いきなりこんな対戦形式にする必要があったのか?」
紅莉栖「まぁ、よちよち歩きしながらレクチャー受けるよりは経験値になるんじゃない?
“無段階移行”システムだから、実戦稼動が一番経験値に繋がるんだろうし……。
このシステム自体、組み込まれてる機体が“紅椿”と“石鍵”だけだから解らないことだらけなんだけどね。
あっ、“白式”にも付いてるんだったかな……?」
岡部「いきなりワンサマーと戦うことになるとは……」
……。
…………。
………………。
一夏「で、どうする?」
岡部「どうする。とは?」
シャル「うんと、どう言った練習にする?」
箒「岡部はもう参考書を全部読んでいるのか?」
岡部「参考書は全て読んだ。しかし、基礎的なことしか書いて無かったからな、練習法などはさっぱりだ」
ラウラ「ならば、実戦が一番手っ取り早いだろう」
鈴音「そうね。その方が“石鍵”がどんなISなのかも解るし」
セシリア「決まりですわね」
岡部「む?」
箒「問題は誰と戦うかだな」
岡部「戦う?」
一夏「なぁに、大丈夫だって。俺も初めての時はいきなりセシリアと戦った訳だしな」
セシリア「もうあの頃のようにはいかなくってよ! 相手が初心者であれ全力でいかせて頂きますわ」
シャル「全力で行っちゃダメだよ、セシリア……」
ラウラ「一先ず、志願したい者は挙手しろ」
専用機持ち6人全員の手があがった。
楯無「うふっ。倫ちゃんモテモテねー」
紅莉栖「楯無さんは良いんですか?」
楯無「呼び捨てで良いわよ、クリちゃん。貴女の方が年上なんだしね」
紅莉栖「(どうも、接しにくいんだよな……この人)」
楯無「私はパス。今回はきっちり見ててあげる」
ラウラ「……6人か。ならば──」
鈴音「まずは私達で戦って……」
ラウラ「ジャンケンで決める他無いな」
鈴音「決める──え、ジャンケン?」
シャル「そうだね。アリーナ使える時間もそこまで無いし……」
セシリア「異存はありませんわ」
箒「うむ。ジャンケンなら公平だな」
一夏「よし! ジャンケンで勝ったやつが凶真と戦う。これでいこう」
鈴音「そうね……」
全員「じゃーんけーん」
全員「ぽん!!」
……。
…………。
………………。
紅莉栖「思った通り、データが何も無いわ。
元来のISと違って産まれたてだから……ってことなんでしょうね」
岡部「つまり、良く解らないということか?」
紅莉栖「有体に言えば……そうね」
岡部「使えない助手め……」
紅莉栖「なっ! サポート役を買ってやっただけありがたいと思え馬鹿!
他の子はみんな一夏側の控え室に行っちゃったんだからな!」
岡部「む……それを言われると、そうだな……」
紅莉栖「感謝しろよ、まったく。
えっと……初期の武器が3つある。今、データ出すから」
《ビット粒子砲》
《モアッド・スネーク》
《サイリウム・セイバー》
岡部「コレは……」
紅莉栖「そう。私も驚いた……」
岡部「“未来ガジェット”ではないか」
紅莉栖「名称はね。実物は出してみないと解らないけど……ファースト・シフト段階で生成された武器はこの3つよ。
文字通り“コアと搭乗者による、完全自立進化”、ね」
岡部「ふ……フゥーハハハハハ! 良いぞ、良い! 良いではないか!
なぁ助手よ!!」
紅莉栖「どう見ても浮かれてます。本当にありがとうございました」
岡部「これにより、我らが未来ガジェット研究所の名が世界に知れ渡ると言うことではないっか!」
紅莉栖「本当にそうだから困る……」
──ルルル。
不意に、ISに内臓された通信機が音を鳴らした。
一夏『凶真、準備は良いか? こっちは何時でも良いぜ。って言うか早くしないとヤバイかも。
客席……の方が、早くやれって騒いでる。大事になっちまったな』
岡部『む、そうか……まだもう少し試してみたかったが……実戦で慣らすとするか』
一夏『そうしてくれると助かるよ』
岡部『了解した。では、戦場でまた会おう』
紅莉栖「ぶっつけ本番ね」
岡部「あぁ……だが心配は要らない。
どちらの未来ガジェットも俺が作り出したんだからな」
紅莉栖「期待してるわよ」
──カゥゥン……。
射出用のカタパルトに脚部を装着する。
紅莉栖「良い? 3.2.1──」
岡部「-インフィニット・ストラトス-“石鍵”、鳳凰院凶真……出る!!」
─バシュゥゥゥゥゥ!!
紅莉栖「○ンダムかっつーの……。それにしても、この岡部……」
岡部「“石鍵”、目標を……駆逐する!!」
紅莉栖「ノリノリである」
相変わらず短めですが、終了です。
ありがとうございました。
思っていたよりも多くの方の目に止まってるようで素直に嬉しいです。
以後も完結に向けて頑張ります。
冷静に考えると“楯無”の存在はISのアニメしか見てない方にとってはネタバレであり、知らないキャラクターでした。
申し訳ありません。
今後も、アニメISに登場していないキャラクターを書くことになります……。
それではありがとうございました。
/ /
< -◎= 〔^ニ=-
. __ >スz)/◇ 今日も病気だ仕事が辛い。
<〈/∠n〔フ⌒<
. /i/ 〉-y'ノ ヽ v〔〕
. <=ク ノ lz( 〉 >
「,,,< /^>(ソ〔=> ^li/
/ |/ノ `ヽ >) _
/ 〈 =ヲ ヾ_フヽ〉
/ 〉 >) \ i〈
. / 「^ \ヽ
// \l
>>1です。
そういえば>>1、聞きたい
岡部のISの股間の部分は"コック"ピットなのだろうか?
>>236
だめだこいつ……はやくなんとかしないと……
21時には投下出来ると思います。
何時まで一日一投が出来るのかちょー不安。
訂正
>>210
《サイリム・セイバー》→×
《サイリウム・セーバー》○
投稿開始します。
>>212 続き
短めの滑走路からアリーナ上空へと飛び出す。
“石鍵”を通して見る世界は驚くほどクリアだった。
岡部「これが、ISか」
一夏『よう凶真。調子はどうだ?』
岡部『上々だ。違和感も無い』
一夏『ははっ俺の時もそうだった。機体制御も問題無さそうだな』
──ルルル。
紅莉栖『ハロゥ、岡部。聞こえる?』
岡部『助手か』
紅莉栖『感度良。これで私がサポートするわね』
岡部『うむ。まさに助手だな』
紅莉栖『言ってろ』
楯無「さて、まずはお手並み拝見ね」
《扇子-観戦-》
箒「と言うか……なんで皆こちらの控え室に居るんだ!」
シャル「え、だって……ねぇ」
鈴音「うん……ねぇ?」
ラウラ「一夏は私の嫁だ。当たり前だろう」
セシリア「そういう箒さんこそ、どうしてこちらに居るんですの?」
箒「わっ、私は一夏の幼馴染として……だな」
楯無「ほらほら、集中しないと始まっちゃうわよ」
一瞬、瞳を瞑り瞑想する。
目を開いた時、その目はクラスメイトの一夏ではなく、IS“白式”操縦者“織斑一夏”のソレに変わっていた。
一夏『じゃぁ凶真──行くぜ!』
岡部『むっ!』
《-警告-敵IS 攻撃態勢に移行》
紅莉栖『来るわよ!!』
岡部『ちょ、待て! まず何をすれば──』
一夏『うおぉぉぉぉぉぉ!』
──ヒュン!!
織斑一夏の駆るIS “白式”の一閃を体勢を崩す形で避けることが出来た。
意図せず出来た回避行動であるが、初撃を回避したことは大きい。
一夏『避けた!?』
楯無「と、言うより……堕ちた。ね」
岡部『うあぁぁああぁぁああぁぁぁ!!』
セシリア「不味いですわね……」
鈴音「何が不味いのよ。岡部の操縦?」
セシリア「いえ……一夏さんが、競馬で言うところの“入れ込みすぎ”な気がしまして……」
シャル「いれこみすぎ?」
箒「競馬? どういう事だ?」
鈴音「セシリアって競馬なんかするんだ?」
セシリア「あら、英国紳士淑女の嗜みですわよ? 常識ですわ。
ではなくて! ようするに、気合が入りすぎて空回りしてるような感じ。と言うことですの」
ラウラ「ふむ……気合が乗るのは良いことだが」
楯無「一夏くんも男の子ってことね♪」
シャル「?」
箒「同性同士。負けたくない、と言うことだろう。頑張れよ、一夏」
体勢を崩した“石鍵”はそのまま地面へと向かって自由落下を始めていた。
紅莉栖『ちょ! 落ち着け馬鹿! ノーカン……! ノーカン……! 当ってない、当ってないから!!』
岡部『くっ……!』
紅莉栖『そう! 体勢を立て直して! このまま地面に激突したら無駄に“シールドエネルギー”を削るだけよ!』
岡部『はぁ、はぁ……思った、以上に……怖いな』
ぼそり。と紅莉栖に聞こえないように呟く岡部。
今までに幾つかの修羅場を潜って来た岡部ではあったが、初めてのIS戦闘である。
“シールドバリアー”で守られているとは言え、恐怖が付きまとっていた。
岡部『はぁ、はぁ。助手っ、どうすれば良い。さっそくだが、次攻撃されたら避けられんぞ!?』
紅莉栖『情けない事を偉そうに言わないでよね。一夏は近接タイプよ、距離を取りながら攻撃して、まずは落ち着いて!』
岡部『武器武器武器武器武器武器……』
一夏『今度は外さない……っっ!!』
《ビット粒子砲》
岡部『これだ!! 来ぉぉいいいいい!!!』
──フィィィィン!!
なんの変哲も無かった“石鍵”の左腕に“ビット粒子砲”が装備された。
それを見て、一夏の突進が止まる。
一夏『射撃武器……!!』
岡部『はぁはぁ……直前に確認していた、ガジェットの存在を忘れていた……。
が! ここまでだ、ワンサマーよ!! フゥーハハハハハ!!!』
一夏『(見たことが無い武器だ……ここは様子を……)』
紅莉栖『嘘、ラボで見た“ビット粒子砲”と形が全然違う』
岡部『(装着型の武器とは……少々イメージ、と言うか実物と違うな……)』
──スチャ。
可視光式のレーザーポインターが“白式”を照準する。
“石鍵”による、初めての攻撃が行われた。
岡部『──有象無象の区別無く、我が弾頭は貴様を射抜く!』
紅莉栖『カッコ付けてる場合か!! 早く撃て!!』
岡部『えぇい、良いところでってもういい! 当れ!!』
──カチン。
──ピビポボポボポボポボポボポボポ!!!!
聞きなれない発射音を響かせ“ビット粒子砲”が唸る。
一夏『──速いっっ!!』
ラウラ「これは……」
楯無「避けれないわね」
──パチュン! バチュパチュバチュパチュバチュ!
不可思議な弾着弾が“白式”のボディからアリーナに響いた。
紅莉栖『敵IS 被弾!!』
岡部『当った……のか』
紅莉栖『ぁ……あー、結論から言えば、全弾HIT。でも……』
一夏『くそっ、なんて速度と弾数だ……全部当っちまった。
ダメージは……え』
箒「む?」
シャル「え?」
セシリア「へ?」
ラウラ「ん?」
鈴音「う?」
楯無「……これは」
一夏『えっ……全部当ったよな? なんだ、このダメージの無さは……』
岡部『──はぁっ、はぁ……。む、無傷だと!?』
紅莉栖『いいえ。ちゃんとダメージは通ってる。その……極端に与えるダメージが低かっただけで……』
岡部『どういうこっ、ことだ!! 全弾当ったと言うのに、全く“シールドエネルギー”が削れてないではないか!!』
紅莉栖『1弾につき、ダメージが1しか与えられなかった。と言えば伝わるかしら……』
岡部「いっ、いち……? はぁ、はぁ」
鈴音「ちょっと、どういう事? 当ったわよね?」
シャル「うん。当ったように見えたって言うか……」
ラウラ「完全に被弾していた」
セシリア「どういうことですの?」
箒「ダメージが通ってるようには見えないが……」
楯無「いいえ。確かにダメージは受けてる。極端に攻撃力が低いみたいだけど……」
ラウラ「どう言うことだ」
楯無「通常、ISでの攻撃は攻撃力が小であれなんであれ、当りさえすればそれなりの“シールドエネルギー”を削るわよね?
倫ちゃんの……“石鍵”が放った射撃武器でのダメージは“シールドエネルギー”の最小設定値。
つまり、数字で言うと“1”しか与えてないみたい」
シャル「えっ、でもそんな武器……」
ラウラ「無意味も良い所だ。ありえん」
楯無「えぇ。“通常のIS兵器”ではありえない。意味が無い……でも彼の武器は全てあのIS自身が作り出した武器だから……」
鈴音「なにそれ。じゃぁ、つまり……無茶苦茶弱い武器ってこと? 見掛け倒しじゃん」
岡部『どぉぉぉいう事だ!! 助手!! 説明しろ!!』
紅莉栖『だから言っとるだろ!! その武器の攻撃力が極端に低いんだっつーの!!』
岡部『なん……だと……』
紅莉栖『一応、武器データ取れたから送る……』
一夏『(一体何だったんだ? 何か特殊な力でもあるのか? くそっ、解らない……動いて平気なのか?)』
《ビット粒子砲》
実弾・エネルギー弾を交互に発射。
連射性・速射性が極めて優秀。
岡部『どんなに、弾数多く早くても弱くちゃ意味ないだろうっっっが!』
紅莉栖『知るかっ! 作ったのはお前とコアだろうっっっが!!』
岡部『(はぁはぁ……畜生、どうする……これではダメだ。戦いにならん……)』
一夏『(ちくしょう……でも、何時までも悩んでる訳にはいかない!
前に出る! 俺にはそれしかない!!)』
“雪片弐型”を握る腕に力を込める。
近頃見失いがちだった自分らしさを取り戻すため、一夏は自分が何をされたかも忘れて集中した。
箒「一夏……」
セシリア「一夏さん、きっと大丈夫ですわ」
鈴音「あんな弱っちいのに負けたら承知しないんだからね……」
シャル「一夏、頑張って……」
ラウラ「大丈夫だ。お前なら問題ない。そのまま、行けっ!」
楯無「(うーん、ちょっと倫ちゃんが可哀想かなぁ……。
と言うか、倫ちゃん肩で生きしてない? まだ始まったばかりだけど……)」
紅莉栖『岡部! “サイリウム・セーバー”よ! こうなったら、近接戦で勝負するしかない!!』
岡部『えぇい、熱血接近戦はマッドサイエンティストに似合わんと言うのにっ!』
紅莉栖『(近接戦が怖いだけだろ、とは言わないでやるか)』
岡部『“サイリウム・セーバー”!!!』
──フィィィィン!!
右手に“サイリウム・セーバー”を呼び出す。
なんの変哲も無かった“石鍵”の右腕に“サイリウム・セーバー”が装備された。
その姿は“ピット粒子砲”と同じく、未来ガジェットの面影は無く、完全なる物理刀剣だった。
一夏『凶真も剣か……都合良いぜ』
シャル「……呼び出しが早い」
ラウラ「気付いたか」
セシリア「倫太郎さんは始めての実戦……いいえ、それどころか武器を呼び出すのも初めてですわよね?」
鈴音「それで、瞬時に初見武器を出したっての?」
箒「本人はそのことに気付いて無いみたいだが……」
楯無「(これは十分脅威と言えるレベルね……攻撃力はともかくとして)」
──ブォン!
“サイリウム・セーバー”を一振りすると定番の良い音が空を切った。
刀身が次第に赤く発光し始める。
岡部『紅莉栖。データは取れたか? この剣の特性が解ったら教えてくれ』
紅莉栖『物理刀剣よ』
岡部『それは解っている。俺が聞いているのは特性、能力だ』
紅莉栖『無いわ』
岡部『そうか、無いか──ちょっっっと待てい!! 無いとは何だ無いとは!!』
紅莉栖『無いんだから仕方ないじゃない!!』
岡部『ふざけている場合か! 良い音もするし、赤く光っているではないか!!』
紅莉栖『だから! 良い音がして、光る、物理刀剣なのよ!』
岡部『なん……だと……』
紅莉栖『ちょ! 岡部、前ーっ! お喋りしている暇ない!』
岡部『──ぬ? おおおぅぅ!!』
──ガキィィィン!!!
間一髪で、“雪片弐型”の斬撃を刀身で防ぐ。
ギリギリと鍔迫り合いの中、一夏は微かに微笑んだ。
一夏『へへっ、やっぱ男同士って良いな……! 負けられねぇ、負けられねぇよ!!』
岡部『くっ、余計なお喋りをしていると舌を噛むぞ、ワンサマーよ……』
──ギィィィン!!
“雪片弐型”により“サイリウム・セーバー”の刃が弾かれる。
単純な力量の差。
積み重ねてきたモノの差が現れた。
剣術のケの字も知らない岡部が、一夏の剣戟に対処する術など最初から無かったのだった。
一夏『ココだ! 悪いな、凶真!! 本気で行かせて貰うぜ!!!』
──“零落白夜”発動。
岡部『この体勢では、避けられ──』
紅莉栖『岡部ぇぇぇ!!!!』
──キィィィィィィイイ!!
“雪片弐型”の展開装甲が可変しエネルギー状の刃が発露する。
一夏『うおおおおおおおおおおお!!!!』
楯無「不味い! 勢いが付き過ぎてる!」
楯無が珍しく大声をあげた。
シャル「えっ?」
鈴音「どういうこと?」
ラウラ「“零落白夜”で“シールドバリアー”を切り裂いた。そして表示されている“石鍵”の“シールドエネルギー”は表示されていない」
セシリア「……っ!」
箒「ダメージが全て、操縦者本人に……!」
──ガキッィィィィィイイ!!
“零落白夜”により“石鍵の“シールドバリアー”が切り裂かれ“石鍵”が纏っていた“シールドバリアー”が消える。
“石鍵”から発せられる“シールドエネルギー”表示が途絶えた。
しかし、一夏の攻撃は止まることが無かった。
渾身の力を込めた本気の一閃。攻撃の勢いが止まらずその刃は“石鍵”の本装甲にまで達してしまった。
──ガガッガ、ガガガリッ!!
一夏『勢いが止まらないっっ……! 振り抜いちまう……!』
岡部『ぬぅぅおおおおおお!!!』
──ィィィィィィィイイイン!!
一夏は“零落白夜”を完全に振り抜いた。
無人機であるゴーレムと、暴走を止める為に完全に動きを止める他無かった“銀の福音”(シルバリオ・ゴスペル)以外に決まることが無かった攻撃。
これも一重に、今まで戦ってきたIS操縦者の巧みなる腕によって、“シールドエネルギー”が尽きた後の回避行動に寄るところが大きかった。
一夏も成長したとは言え、IS操縦者としては未熟な部類である。
そしてその相手である、岡部はさらに未熟なビギナー。
その後の回避行動、防御など取れるはずもなかった。
斬撃を受けた“石鍵”は力なく地上へと落下していった。
紅莉栖『岡部! 岡部!!』
──ズゥゥン……!!
“石鍵”は土煙を巻き上げ、地上へと突き刺さった。
一夏『凶真っ!!!』
岡部『……さっ、さすがに、驚いたぞ』
一夏『えっ……、ぶっ、無事なのか?』
岡部『少々驚いたが……大丈夫だ、問題無い』
箒「岡部!」
セシリア「大丈夫ですの!?」
鈴音「ちょっと大丈夫!?」
シャル「無事っ!?」
ラウラ「……生きてはいるようだな」
楯無「(これは……)」
紅莉栖「岡部ぇー!!!」
岡部「ん? 何故、アリーナに入ってくる! まだ戦いは終わって……え、終わったのか?」
一夏「えっと……終わったはずなんだけど……なんで大丈夫なんだ?」
岡部「ん? ん? どういうことだ?」
楯無「……倫ちゃん。ちょっと触らせてね?」
岡部「む? む?」
楯無「嘘、これ──……は」
一夏「楯無さん……?」
岡部「何が起きてるのか説明して欲しいのだが……」
楯無「ちょーっと待ってね……おねーさんも頭を整理する時間が欲しいの。
そうね……一旦お終いにして、生徒会室に行きましょう」
楯無の一声で、状況も解らぬまま対戦終了。
こうして対戦者二人と周囲の疑問は晴れず、“白式”vs“石鍵”の初対戦は“白式”の勝利と言う形で幕を閉じた。
岡部「疲れ、た……」
岡部の一言が、周囲の耳に深く響いた。
終りです。
ありがとうございました。
画像がいつまで持つか解りませんが……。
・ビット粒子砲
実弾・エネルギー弾を交互に発射。
連射性・速射性が優秀。
http://kie.nu/.Fx
漫画 レッドアイズ より
・サイリウム・セーバー
物理刀剣。
良い音が鳴り、赤く発光する。
http://kie.nu/.FA
ゲーム
ZONE OF THE ENDERS より
ISはまだヘタリン状態……ってことかな。
なんにせよ乙。病気なら無理しないで。
くだらない箇所ですが…訂正
>>251
楯無『肩で生きしてない?』→×
楯無『肩で息してない?』→○
>>263
ありがとうございまし。
月に1回血液検査がある程度の持病だから問題ない!
問題は風邪をこじらして出てきた中耳炎さんでう……治りかけで耳が聞こえない。
本日もありがとうございました。
明日、投下出来るよう頑張ります。
絶対防御とかで大した怪我しないんじゃねぇの?
訂正。
>>255
ラウラ「“零落白夜”で“シールドバリアー”を切り裂いた。そして表示されている“石鍵”の“シールドエネルギー”は表示されていない」→×
ラウラ「“零落白夜”で“シールドバリアー”を切り裂いた。そして現在、“石鍵”の“シールドエネルギー”は表示されていない」→○
ミスが多くて申し訳ない。
次回からはもっと添削に気を配ります。
有象無象の区別なく我が~って誰のセリフだっけ
リップバーン?
ところでこれちょっと前にVIPにあったのとはほとんど関係ない?
>>1です。
申し訳ありません、熱が出ちゃってダメだ。
今日は投下出来ません……。
>>270
シールドバリアー
操縦者を守るためにISの周囲に張り巡らされている不可視のシールド。
攻撃を受けるたびにシールドエネルギーを消耗し、模擬戦などではエネルギー残量が無くなった場合負けとなる。
また、シールドバリアーを突破するほどの攻撃力があれば操縦者本人にダメージを与えることができる。
絶対防御
全てのISに備わっている操縦者の死亡を防ぐ能力。
シールドバリアーが破壊され、操縦者本人に攻撃が通ることになってもこの能力があらゆる攻撃を受け止めてくれるが、攻撃が通っても操縦者の生命に別状ない時にはこの能力は使用されない。
この能力が使用されるとシールドエネルギーが極端に消耗される。
絶対防御とありますが、絶対と言う訳じゃない不思議言語。
作中でも操縦者が大怪我を負うシーンは結構あります。
>>281
ヘルシングの、リップバーンの台詞から抜粋してます。
好きな作品から台詞を貰ったりもじったりして使わせて頂いてます。
>>282
VIPでは4.5作品、シュタゲのSSを投稿させて貰ってます。
関係? が何を指すのかは解りませんが……。
主人公はオカリンでも、ISのキャラが殆どなので、IS知らないとあまり楽しめないと思ってました。
ISを知らずに読んでくれている方が居てびっくりしてます。
ありがたい。
以後も頑張ります。
从⌒゙ヽ,
,; |i _ ⌒ヾ, |!
_/ λ 、人 l!
从????イ ,〉 k あのね・・今日の地震も
γ゙ ( ´・ω・)`/ 〈,k_ノ まゆしぃが地球を三発殴って止めたんだよ
( ハ.,_,ノ~r
)'‐-‐'l γ´⌒゙ヽ、 だからね、まゆしぃはオカリンの命の恩人なんだ えへへ♪
,、-ー''( |!?、,il ゝ、
γ |! 〈 ヽ ミ、 丿 土砂崩れ?・・トゥットルー
ゝ ( | ノ _,,,..、,,ゝ、 _,.イ /
\'´ γ゙ヽ.,_ ) ゙|! ̄  ̄~゙il γ⌒ヽ`(/
Σ ゝ.,__゙゙'k{ ヾ / !、,___丿 て
> ゝ-ー'゙ <
書き溜めておいた分を投下してしまいす。
添削が出来て無いので誤字脱字等があると思います。
ここから、
シールドエネルギー
シールドバリアー
絶対防御
等の説明が出てきます。
wikiや原作に目を通しても、完全に把握出来るほど描写がなされていない(と思う)ので憶測が大分混じります。
二次創作という事でその当りの解釈は寛容に見ていただけると助かります。
では投下します。
更織楯無は考える。
第二アリーナから、IS学園生徒会室までの道のり。
この短い時間で答えを“用意”しなければならなかった。
どのように、この子達一年生を納得させようかと。
憶測に憶測を重ねて、出した結論。
必要なのは憶測により導いた結論ではなく、完全なる事実。
仮に限りなく正解に近い結論を導き出したとしても、事実と異なる情報は害でしかならない。
“ロシア代表操縦者”として曖昧な発言は出来ない。
二人目の男性IS適性者として、岡部倫太郎の名前は各国に轟いている。
ロシア政府は更織楯無に情報収集の任務を課していた。
それと同時に“篠ノ之 束”の情報も、である。
男性IS適性は織斑一夏オンリーワンでは無い。
二人目が出てきたことにより、各国は研究に躍起になっていた。
ロシア程の大国であれば当たり前の事でもある。
それと同様に、篠ノ之束の捜索は依然どの国も全力で行っている。
IS学園に造詣が深い両名の情報収集に、学園生徒会長である楯無は適任者であった。
楯無「(さて……どうしたものかしらね)」
周囲が思うほど、楯無は自分に素直に生きている人間ではなかった。
この若さにして更識家当主、及びロシア代表操縦者である彼女は個の思考よりも、全を考える。
その思考が、一生徒である可愛い後輩達に自身が考え至った“石鍵”の特性を教える事を拒んだ。
“生徒会長”として。そして“更織楯無”個人としてこの子達を諜報戦の世界へ足を踏み込ませたくないとも考えていた。
楯無「(私もまだまだ甘ちゃんってことね……)」
岡部倫太郎はこの先、この学園の爆弾になりうる。
この男には背景が無い。
織斑一夏のように、ISに関わった人生など送っては来なかった。
全てのISの鍵となる“篠ノ之 束”にも一切関わりの無い人生を送ってきた。
そんな人物がISを起動させたのだ。
これから各国は男性によるISの起動に力を入れるのは容易に想像できた。
女尊男卑の世の中になったとは言え、まだまだ上層部は男性が掌握している部分が多い。
そして男尊の復権を望む者も多い。
汚らしい諜報戦が始まる。と楯無は予想していた。
対暗部用暗部“更識家”の当主として、この学園をその舞台にはさせない。
それが更織楯無の出した答えだった。
─アリーナ更衣室─
岡部「……」
紅莉栖「岡部……?」
岡部「……」
紅莉栖「あーっと、ほら! 元気出しなさいよ!」
岡部「出る訳ないだろ……。なんだ、あの武器」
岡部はの気分は消沈していた。
出撃前に見せていたテンションは最早どこにも無く、今はただ落ち込んでいた。
主に、自身が開発した未来ガジェットの名前を模した武器についてを。
岡部「なにが粒子砲なんだ……豆鉄砲の間違いだろう……」
紅莉栖「岡部……」
岡部「助手よ、笑うが良い……」
紅莉栖「そんな、笑うなんて……」
岡部「恥をかいただけだったな……」
紅莉栖「ねぇ、それよりも怪我は本当に大丈夫なの?」
こんな自分を心配……。
それも攻撃を受けた事による身体への心配を見せた紅莉栖の心遣いが岡部は嬉しかった。
岡部「んっんん。だから何度も言ってるではないか。疲れたはしたが、怪我などは一切無い。
そもそも装甲に守られているのだ。痛い訳が……む?」
紅莉栖「うん。岡部も参考書は全部読んだのよね? 何か、変じゃない?」
何かが引っかかった。
岡部は確かに“零落白夜”の直撃を食らったのだ。
それなのに、身体にダメージが一切無かった。
岡部「紅莉栖。“零落白夜”の特性を教えてくれ」
紅莉栖「(名前!) えっ、えっと……ちょっと待ってね!」
カタカタと高速でノートパソコンを操り、データベースを開く。
紅莉栖「……出た!」
“零落白夜”(れいらくびゃくや)
白式の単一仕様能力。
対象のエネルギー全てを消滅させる。
使用の際は雪片弐型が変形し、エネルギーの刃を形成する。
相手のエネルギー兵器による攻撃を無効化したり“シールドバリアー”を斬り裂いて相手の“シールドエネルギー”に直接ダメージを与えられる白式最大の攻撃能力。
自身のシールドエネルギーを消費して稼動するため、使用するほど自身も危機に陥ってしまう諸刃の剣でもある。
織斑千冬の乗機であった“暮桜”と同じ能力。
紅莉栖「織斑先生はこの能力を駆使して、第1回モンド・グロッソを勝ち抜いた……」
岡部「……おかしくないか?」
紅莉栖「うん……」
岡部「俺が受けた攻撃は確かに“零落白夜”なんだな?」
紅莉栖「えぇ間違いない」
岡部「対象のエネルギー全てを消滅させる……? おかしいではないか。
“石鍵”の“シールドエネルギー”はほぼ満タンだ。
何せ、まともに動いてないからな」
紅莉栖「そこがおかしいの。確かにあの時“石鍵”の“シールドエネルギー”は表示されていなかった」
岡部「そこがおかしいではないか。表示されていない? エネルギーが0になると、表示されなくなるのか?
俺が参考書で読んだ記憶では“0”と表示される。と書いてあった気がするのだが……」
紅莉栖「……あっ!」
岡部「ふむ。余計解らなくなったな……」
紅莉栖「岡部、ちょっと調べさせて貰うわね?」
紅莉栖はそう言うと、デバイスを取り出しPCとISを繋げた。
この時、紅莉栖は“IS国際委員会”に命令されての情報収集ではなく、純粋に科学者としての探究心から動いていた。
紅莉栖「……やっぱり。でも、何で……」
岡部「おい、何か解ったのなら教えてくれ。何がやっぱりなのだ助手よ」
紅莉栖「でも……理由が……」
岡部「クゥゥリィイス!」
紅莉栖「あっ、ごめん。ちょっと考えちゃった。えっと、説明するね?」
岡部「頼む」
紅莉栖「OK. まず結論を言うわね。岡部は“白式”の最大攻撃と言える“零落白夜”の直撃を食らった。
しかし“シールドエネルギー”を消滅させられることは無かった」
岡部「……続けてくれ」
紅莉栖「“零落白夜”が不具合を起こした訳でも、“石鍵”の特殊能力によりコレが無効化された訳でもない。
“石鍵”は直撃の瞬間、コア自らの意志で“シールドエネルギー”の供給を遮断した」
岡部「遮断……した?」
紅莉栖「そう。その影響で、表示されるはずの“シールドエネルギー”残量は表示されず、私を含め殆どの人間が直撃を食らい、
“石鍵”の“シールドエネルギー”が消滅したのだと勘違いした」
岡部「ちょっと待て。“シールドエネルギー”の供給が遮断されてしまえば“シールドバリアー”が無くなってしまう」
紅莉栖「その通り。つまり“石鍵”は独自の判断でそれを決行した」
──“白式”の攻撃は“シールドバリアー”を展開する必要の無い攻撃力だと。
紅莉栖「付け加えておくけれど、決して“零落白夜”の攻撃力は低くない。
いいえ、現行では一発の破壊力としては最強の一角と言って良いほどよ。
“銀の福音”(シルバリオ・ゴスペル)を落したのは伊達じゃない」
岡部「待て待て待て……理解が追いつかん」
紅莉栖「アンタにも解るように説明するとだな……。
“石鍵”の装甲はべらぼうに強い。呆れるほど硬い。
バリアー張らなくて傷一つつかない位強固。
だから“石鍵”はノーガード作戦を決行して“零落白夜”の直撃を食らった。
むしろ無駄にガードして“シールドエネルギー”消滅させれる方がマジ無理。
ってか“シールドバリアー”も貼る必要なくね? だったら、エネルギーカットしちゃう!
ってことよ」
岡部「防御力が凄いってことか?」
紅莉栖「そう言うこと。でもほんっっと無駄なのよね、この機能」
岡部「……えっ?」
紅莉栖「IS戦での勝敗は、言い換えれば“シールドエネルギー”の削り合いよ?
“石鍵”のように、エネルギーカットをしてしまえば今回のように“シールドエネルギー”が表示されなくなる」
岡部「表示されない=0。と判断されて、負ける……という事か?」
紅莉栖「オフコース。装甲の硬さも正直、あまり意味が無いわね……“シールドエネルギー”がある限り、
“シールドバリア”が破られても“絶対防御”で操縦者の命は守られる。
“零落白夜”のように“シールドエネルギー”を消滅させられた場合はこの限りじゃないけど……」
岡部「なんと言うことだ……」
紅莉栖「このこと、皆には言わない方が良いかも」
岡部「……なぜだ?」
紅莉栖「ISとしてかなりの欠陥機能ですもの。
装甲が硬いからって、エネルギー供給をカットしちゃうなんて……。
幸い、皆は“石鍵”の“エネルギーシールド”残量を確認していない。
生徒会長に背中を押されて直ぐに出て行っちゃったからね」
岡部「確かに……言う必要はないな。心配させるだけかもしれない。
しかし、防御力だけの機体とは……俺は俺が思うほど自己保身の強い人間だったという事だな」
紅莉栖「(……そこが腑に落ちない。
私の記憶の残滓にある岡部倫太郎は、むしろ自己犠牲の強い気のある男だった。
未だに私と岡部が過ごした3週間の記憶、その全てを思い出した訳ではないけれど……。
だとしたら、この装甲の硬さは“コア”の意志……ってこと?)」
ロシアってISの世界では大国なの?
岡部「よくよく考えればまさに欠陥機だな。攻撃を受ける度にエネルギーをカットしていては試合にならない。
一撃食らっただけでエネルギー0と判断されて試合が終る」
紅莉栖「ん。それは私がなんとかしよう」
岡部「なんとか……って出来るのか?」
紅莉栖「おいおい。忘れたのか? 岡部が言ったんでしょ、私はタイムマシーンを開発出来るほどの天才なのだぜ?
エネルギーカット機能をさらにカットする、そんなパッチを作るくらい訳無い。
2.3日掛かるけどね」
岡部「紅莉栖……すまん。迷惑をかける……」
紅莉栖「やっ、野暮ったいこと言うな! そ……その、ラボメンだろ。
ラボメンは仲間だから協力するのは仕方ないと言うか……当たり前と言うか……。
とっ! とにかく、その機能を岡部の意志で切り替え出来るようにしてやるから、まずはそのあんまりにも無い体力をどうにかしろ!」
岡部「……まさか、ISでの戦闘があそこまで疲れるものとは──」
紅莉栖「疲れない! 疲れません! 普通疲れないから!」
岡部「なっ、何を言う! 3分も動けば息が弾み呼吸が乱れていたぞ!」
紅莉栖「体力無さ杉だろjk……アンタって私より体力無いもんな。忘れてたわ」
岡部「ぐぬぬ……」
紅莉栖「取りあえず、原因も解決方法も解った訳だが私達は生徒会室に御呼ばれしている。
さっさと展開解除して、着替えて行きましょ」
岡部「う、うむ……」
紅莉栖「? どうしたのよ、さっさと解除しなさいよ」
岡部「助手よ……その、後ろを向いていてはくれまいか。
正直、このピチピチとしたスーツはまだ慣れんのだ……」
紅莉栖「ばっ……見るかこのHENTAI!」
岡部「女子にこの辛さが解るか! 見る、見られないの問題ではない!!」
紅莉栖「辛さなら解るわボケ! 胸の大きさかんが……」
岡部「……」
紅莉栖「OK. 外で待ってるわね」
岡部「す、すまない」
紅莉栖「気にしないで。そしてお前も気にするな、解ったな?」
岡部「はい」
紅莉栖の解析により“石鍵”の特性が判明した。
それはISとして致命的な特性であり、使い道の無いものであった。
紅莉栖は考える。
なぜ、“石鍵”はそのような特性を組み込んだのか。
“シールドエネルギー”をカットしてまで、エネルギーを温存しなければならない状況を想定しているのだろうか。
あの装甲の硬さは……。
“白式”の全力攻撃を受けて傷一つ付かないなんて異常の極みと言える。
一体何と戦うことを想定しているのだろうか。
戦争? どこの国と? 核攻撃にでも耐えるつもり? その為の全身装甲?
疑問は増えるばかり。
そして岡部に伝えなかったもう一つの特性。
“石鍵”の“総シールドエネルギー量”は従来のIS機の数倍近い数値を示していた。
しかし、今回の戦闘ではそのエネルギーにロックが掛かっておりその大半が開放されずにいた。
全エネルギーが解放された場合の数値は、今の機材で計測出来るものでもなかった。
解析をしたい、研究をしたい。
何のために“石鍵”はあの形になったのか。
全て、岡部の深層心理のようなものが反映されているのだろうか。
数々の問題が山積した今回の出来事。
紅莉栖は微かに微笑んだ。
紅莉栖「面白いじゃない……私が解を導き出してあげるわ」
以上です。
ありがとうございました。
>>305
原作にそのようなことは一切書いて無かったと記憶しています。
ISとしての先進国なのかは解りませんが、ロシアは大国と言う言葉を当てて遜色ない国だと思いそう表現しました。
( ^) 地面か…
( ) ̄
( | | )
_(^o^) フンッ!
( )|
( | | )
( ^o) うわっ!
 ̄( )
( // )
(o^ ) なんだこれ!熱っ!
( )ヽ
| |
..三 \ \ V / (o^ ) 三 マグマだー♪
三 \ \ V / ( )ヽ 三
三 \ \ | / / / 三
三 ( ^o) \ V // / / 三 マグマだー♪
三/( ) \ V / (o^/ 三
三 ヽヽ \ | /( / 三
..三/( ) \ V / (o^ ) 三
三 ヽヽ^o) \ V / ( )ヽ 三
三 \ )\ | (o^/ / / 三
祝日? 土曜日? なにそれ美味しいの?
休みが日曜日しかありまてん……。
その日曜日も、風邪で休んだから埋まりそうな勢いです。
文章量少なめかとは思いますが、今日の文をもう少ししたら投下出来ると思います。
↓より投下します。説明パート?なのでちょっと微妙ではありますが。
>>308 続き。
─生徒会室─
どんっと豪勢な机が窓を背に鎮座しているのが印象に残る。
一夏はこれを“権力者の象徴”だなと思っていた。
──コンコン。
控えめなノックの後に扉が開いた。
岡部倫太郎と、その後ろから牧瀬紅莉栖が入室した。
楯無「いらっしゃーい」
紅莉栖「どうも……」
岡部「で、一体どうしたと言うんだ?」
楯無「あら、皆が倫ちゃんの“石鍵”について知りたそうな顔してたから、おねーさんが一肌脱ごうとしてるのに」
ぴらっ、とスカートの裾をあげる仕草を見せる。
それを見て、一夏がそっぽを向く。
岡部「スカートを脱いでどうする」
楯無「あん。倫ちゃってば反応つまんなーい。
一夏くんみたいに照れた方が可愛いわよ?」
内心、岡部もドキドキしていたが年長者としての少しばかりの面子。
そして何より後ろに紅莉栖が居る状況では落ち着いた対応をせざるを得なかった。
箒「んんっ! 楯無先輩。お話を伺いたいのですが」
セシリア「そっ、そうですわ! 私達はそのためにここまで来たのですから」
ラウラ「何時まで裾を持ち上げているつもりだ。一夏が困っている」
楯無「あら? 一夏くんは嬉しいわよね?」
一夏「えっ!? いっ、いや……」
ラウラ「ふん。困っているではないか」
楯無「あっ、そーかぁ。もう一夏くんはおねーさんのパンツ見慣れちゃったんだもんね」
一夏「ぶっ!」
箒「貴様……」
セシリア「いいえ、まさかそんな……」
鈴音「……え?」
シャル「うん……どう言うことだろうね?」
ラウラ「どっ、どういう……」
一夏「ちっ、違う! 誤解だ!! あれはお尻をマッサージしてくれって言われたか、ら……で……」
恋する五人の乙女が発する気によって、生徒会室の空気が凍る。
なるほど。
紅莉栖はこうして、自ら墓穴を毎度掘っているのねと納得した。
紅莉栖「ちょっと、失礼。今はその話題ではなくて“石鍵”についてが先決じゃない?」
見かねた紅莉栖が助け舟を出す。
一夏以外、誰にも気付かれないようにウインクをして“貸し一つよ”と伝えた。
一夏「(助かった……紅莉栖、ありがとな。本当に良いやつだ……。年上だし、しっかりしてるよなぁ)」
楯無「そーだった、そーだった。倫ちゃんもクリちゃんも座って座って」
二人を椅子に促し、楯無は伊達眼鏡を装着し自分で“出来るおねーさん”を演出した。
楯無「こほん。まず、あの武器の弱さについておねーさんなりに出した結論を教えちゃうわね?」
岡部「攻撃力の低さに何か理由があったのか……?」
一夏「やっぱり、あの攻撃ってただ攻撃力が低かっただけってことになるのか。
あまりにも威力が低かったから、何か特殊な能力があるのかと思っちまった」
楯無「一言で表すと……“石鍵”はズバリ、“赤ちゃん”なのよ」
シャル「赤ちゃん……?」
箒「赤子、と言う意味ですか?」
楯無「いえーす、正解。ベイビーってこと」
鈴音「ちょっと意味が解らないわね」
セシリア「ISが赤ちゃんって、どういう事ですの?」
楯無「束博士は言いました。
“石鍵”は“完全自立進化型”だと。
“紅椿”同様に“無段階移行”(シームレス・シフト)が搭載されてると言ってたけれど、この機能もまだまだ謎が多い。
ISの稼動時間だったり、戦闘による経験値だったり様々な要因から発動する。
そうでしょ?」
箒「え、えぇ」
楯無「だから、おねーさんは思いました。
この子はゲームのキャラクターの様に、経験値を手に入れて強くなるってことをね!」
ビシィ!
と音が聞こえてきそうな程、楯無は鋭角に人差し指を岡部倫太郎に向けた。
その顔は自信満々のいわゆる、ドヤ顔と呼ばれている表情を作っている。
セシリア「つ、つまり……あの不可思議な武器は今だ成長段階で、これから強くなるってことなのでしょうか……」
ラウラ「成長する武器など聞いた事が無い」
シャル「でもそれを言うなら、IS本体が成長するってのも聞いた事が無いよ。
“非限定情報共有”(シェアリング)で、コアが自己進化するのは知ってるけど……」
鈴音「つまりは、それが“完全自立進化型”ってことなのかしら?」
一夏「進化していくISとその武器、って訳か」
紅莉栖「……」
岡部「なるほど。それならば、あのへぁんぱない弱さも頷けると言うものだな」
楯無「でしょでしょ?
おねーさんあったまいー!」
鈴音「うん? でもそうすると……」
ラウラ「問題が一つ解決されていないな」
箒「うむ」
セシリア「倫太郎さんは“零落白夜”の直撃を受けましたわよね?」
一夏「あっ、そう言えばそうだった」
シャル「武器の弱さは何となく納得したけど、それとこれとは別だね」
楯無は内心、このまま押し切れるかと期待していたがそこまで甘くは無かった。
岡部・紅莉栖が至った結論と楯無が憶測により導き出した答えが同一であるかどうかは定かでは無いが、
三者ともその仕様を皆に伝える気が無い。
岡部と紅莉栖は黙り込み、楯無が説明するより他が無い状況。
無論、楯無が皆を生徒会室に呼び、この状況を作った張本人であるので明言を避ける事も出来なかった。
楯無「あーっと、それはね……?」
一夏「それは……?」
楯無「ごめーん! おねーさんにも解らないの☆」
てへっ、と可愛く舌を出しウインクをする。
箒「は?」
セシリア「どういうことですかしら?」
鈴音「ちょっとちょっと」
シャル「えっと……」
ラウラ「何か解ったから、ココへ呼んだんじゃないのか?」
楯無「あら、だから説明したじゃない。“石鍵”は赤ちゃんだって」
一夏「でも楯無さん、凶真が墜落したあとぺたぺたと機体を触ってましたよね?」
シャル「うんうん。それで何か解ったような顔してたもんね?」
鈴音「あー、確かに触ってたわね」
セシリア「この目でしっかりと見ていましたわ」
ラウラ「その説明はどうする」
楯無「うん。触ったけど、何も解らなかったの♪」
再び、てへっと楯無は舌を出した。
無駄に可愛く見えるその仕草に誰とも無し舌打ちが微かに聞こえた。
楯無「あーん、怒っちゃやー。おねーさんだって全部が解る訳、ないじゃないっ。ぷんぷん」
一夏「いや……怒ってはいないですけど……」
シャル「と、すると何でオカリンは無事だったんだろうね?」
鈴音「そこが納得いかないのよね」
紅莉栖「さっき、少しだけデータを見たけれど納得のいくような情報は得られなかったわ」
一夏「そっか。結局謎は解けず仕舞いかぁ……“白式”の方で何か問題があったのかもなぁ。
結局それが良い方向に働いた訳なんだけどさ。
明日にでも整備室に行って見てくるかな」
セシリア「それが良いですわね。万が一、と言うこともあります。
“石鍵”によるなんらかの能力と見るより“白式”側に何かある可能性の方が現実的ですし」
鈴音「産まれたての赤ちゃん、ってんだから何かしらの力があるようには思えないしね」
ラウラ「機動力、攻撃力、どれを取っても第一世代に劣るスペックに思えるほどにな」
楯無「はぁーい。問題解決ね♪」
岡部「うむ」
紅莉栖「そうね」
楯無「で! おねーさん一つ気付いちゃったの」
一夏「まだ何かあるんですか?」
箒「もう何もあるように思えないが……」
楯無「ちっちっちー。皆は二人の戦いを見て、何か一つ不思議に思わなかったかしら」
シャル「不思議?」
楯無「倫ちゃん倫ちゃん」
岡部「む?」
楯無「あなた、戦闘が始まって5分もしない内に肩で息してなかった?」
楯無の問いに、岡部は一瞬黙り込んでしまった。
岡部「なっなにを言い出すのかと思えば──」
紅莉栖「はい。岡部は開始3分程で呼吸が乱れるほど疲労していた」
岡部「じょっしゅぅぅ! 貴様まで一体何を言いだすのだ!!」
セシリア「そう言えば、後半妙に動きがノロノロとしてましたわね」
シャル「ISの操作に戸惑ってるのかと思ってたけど……」
鈴音「えっ、でもあの程度で疲れる訳無いじゃない」
箒「そうだ。第一動いているのは我々ではなくISなのだからな」
ラウラ「IS戦闘3分でバテるなど論外も良いところだ、ありえん」
岡部「う、うむ。ありえん」
紅莉栖「私の体力は恐らく、一般的な10代後半の女性よりやや低い位。
そして岡部の体力は私以下である。
これによって導き出される解は……」
楯無「倫ちゃん。あなた、体力無いでしょう?
それも、びっくりする位に」
岡部「……」
箒「まっ、まさか……」
セシリア「考えられませんわ……」
鈴音「ありえない……」
シャル「えっと、冗談だよね? あはは……」
ラウラ「貴様、それでも軍人か?」
岡部「軍人ではない!!
ええい、そもそも貴様らのような脳筋と一緒にするではない!!
俺の本分はマーッドサイエンティースッ! 科学者なのだからな!」
一夏「でも、凶真……その体力の無さはヤバイかも……」
楯無「ヤバイわね」
箒「危険だ」
セシリア「少々お気の毒な感じがしてきましたわ……」
鈴音「ヤバイってレベル通り越してるわよ」
シャル「ちょっと、それは……うん」
ラウラ「問題外だ」
紅莉栖「満場一致で岡部はヤバイ」
岡部「ぐぬぬ……」
楯無「と、言うこーとーでー。決まりね?」
箒「うむ」
セシリア「致し方ありませんわね」
シャル「頑張ろうね」
鈴音「しゃーない、付き合ってやるか」
ラウラ「一週間でセーフティを外せるルーキーにしてやろう」
岡部「うん? 何を言っているんだ? こいつらは」
紅莉栖「さぁ……? 私にも」
一夏「えーっと、多分……」
楯無「クラス内対抗戦までみっっっちりしごいてあげる。
正直、今の倫ちゃんにはISを起動する資格が無いもの♪」
岡部「は……? いやいや、待て待て俺はそんな事頼んでは──」
箒「私の指導は厳しいが、なに。直に慣れる」
セシリア「英国式のトレーニングを直接指導して差し上げますわ!」
鈴音「面倒だけど、同じ専用機持ちの仲間ってことで協力してやるわよ」
岡部「えっ、だから頼んで──」
シャル「僕も心を鬼にして頑張るよ!」
ラウラ「倫太郎。貴様専用に育成プログラムを組んでやる。逃げれば銃殺刑だ」
楯無「あはっ。皆頼もしいわね」
一夏「凶真……俺もサポートするからさ、死ぬなよ……」
岡部「待て、なんだこの流れは」
紅莉栖「良かったじゃない。これで、もやしっ子体型からおさらば出来ると思えば」
楯無「明日からさっそくスタートしましょうね? 倫ちゃん♪」
岡部「俺に自由意志は無いのか?」
一夏「凶真。俺達に自由意志は、無いんだよ……」
一夏の一言で岡部は全てを汲み取り諦めた。
いくら自分が足掻いたところで、この学園では逃れる術も守られるべき法も無いのだと。
クラス内対抗戦まで残り約一週間。
岡部倫太郎はこれまで生きてきた中で、肉体的に一番辛い時期を迎えることとなる。
楯無「あっ、それと倫ちゃん生徒会に入って貰うからね♪」
決定事項だから。
と、楯無が最後に重く付け加えた。
おわーりです。
物語の起伏が無く申し訳ない。
それでは皆様良い週末連休を! くそっ!!!
本編とは関係無い、シュタゲクロスのネタ帳に書いた物を投下して寝ます。
ISとのクロスが終わったら書くかもしれません。
今回の投下量が少なかったので、箸休め程度に思っていただけたら幸いです。
ある意味、このスレが終わっても居ないのに次回作?の予告を投下する訳ですから不快な思いをした方は申し訳ない。
万が一、このネタでSS書いちゃうぞって方が居ましたらどうぞどうぞ。
シュタゲ×キャサリン(ゲーム)
岡部「最近……夢を見るんだ」
ダル「夢……?」
岡部「何かに追われているような、落ちないように上に登るような……そんな夢な気がする」
ダル「気がするって、覚えてないん?」
岡部「あぁ……何も、覚えてないんだ」
ダル「んじゃぁ、気にせんでも……っつっても最近、オカリンくまがすげーもんなぁ」
岡部「(あの女だ……あの女に出会ってから身体の調子が悪いんだ……)」
トーマス「いーつまでも、一人に決めずにふらふらしてるからいけないんですよ。
童貞のまま死にたくなかったら、頑張ってちょーぅだい」
迫り来る悪夢から逃げ切り、岡部倫太郎は元の生活を取り戻すことが出来るか。
********************
シュタゲ×ペルソナ4
──ブツン。
深夜。未来ガジェット研究所階下にあるブラウン管工房の42型テレビが付けっぱなしであることに岡部倫太郎は気付いた。
岡部「全く、Mr.ブラウンときたら……ふん。わざわざ消してやるのだ、明日にでもたっぷりと礼を貰わんとな」
以前、リフター代わりにするため空けた穴からリモコンをかざしテレビを消そうとした時。
不意に見知った声を岡部の鼓膜が捉えた。
???「ふぉー!! ここがパラダイスだお! 僕は遂に辿り着いたんだァァー!!」
おかしい。
階下に人の気配は無い。
しかし確かに聞こえる友人の声。
この日を境に、岡部倫太郎の“マイフェイバリットライトアーム” 橋田 至 は姿を消した。
次々に消えていくラボメン。
手に入れた能力-ペルソナ-
岡部倫太郎はマヨナカテレビの謎を解き、全てのラボメンを救えるのか。
──カッ!
岡部「ペルソナァァアア!!」
おまけ
──カッ!
まゆり「お願いっ……!」
《ゴッド ハンド》
从⌒゙ヽ,
,; |i _ ⌒ヾ, |!
_/ λ 、人 l!
从~~~~イ ,〉 k
γ゙ (´・ω・`)`/ 〈,k_ノ
( ハ.,_,ノ~r
)'‐-‐'l γ´⌒゙ヽ、
,、-ー''( |!~、,il ゝ、
γ |! 〈 ヽ ミ、 丿
ゝ ( | ノ _,,,..、,,ゝ、 _,.イ /
\'´ γ゙ヽ.,_ ) ゙|! ̄  ̄~゙il γ⌒ヽ`(/
Σ ゝ.,__゙゙'k{ ヾ / !、,___丿 て
> ゝ-ー'゙ < ぷちっ☆
以上です。
明日も投稿できそうです、ご静読ありがとうございました。
>>1です
,...、
_,.-‐---‐''"¨τ三ミ
_ ._,.-‐-'´^ー<.... ,.._ 、,/'"π丿
σ 乙 _,,.._ /`‐、_'´´.._,,./`ヽ', --'ゞ
,.... ~~~~" ,.-、 リ´ ,/´  ̄
_,,.._-'" _,. (´・ω・`) ..,,_ノ-''"
_/´ `ーヽ、ヽ.`ニニ´.λ'´ .{
,. '´ '{′ ; ,, ' _゙.`ーv''´ , ' ,|
_/〉-._,人,._,.,.'__≠''´ .',│ ,.. ' /
,'´ ヽ_,ィ /'"λ `゙ } 、_, .ノ
/.'"`ー、ノー-‐へ ,ノ 《 ゙ヽ、.__.. ノ , ', リ
ヽ. 、. 、!_,-'.ー. \ヽ._ - 、._, '",)ノ
ヽ、ヽ,-'"ニ  ̄} .ヾミ゙ヽ_,'"´ /,、_〃
`ヽ._ ヽ '"〉 {ヘ, ,(`ー_,./,.-'/
``ー--''
雑談でもなんでもしちゃってくれて構いませんです。
20時には投下開始します。
>>349 続き
岡部倫太郎は憂鬱だった。
明日から始まるであろう光景を思い浮かべ、良い気分になる訳が無かった。
ギシッ、とベッドが軋む。
ISでの初戦闘による興奮ではなく、明日からの日々が岡部の睡眠を妨げていた。
それ程に、運動を好ましく思ってないのだった。
岡部「きっと、ただの運動ではないのだろう……。
あぁ……解っている解っているさ。
問題? あるに決まっているだろう……今回ばかりは、ダメかもしれん……」
携帯を取り出す力も出ず、独り言を呟く。
岡部はポケットにしまっておいた、ピンバッヂを強く握り締めた。
岡部「ラ・ヨダソウ・スタセッラ……」
思い出す。
ラボメンNo.007。秋葉留未穂にピンバッヂを渡した時の事を。
岡部『助けが欲しい時はそれを握り締め、ラ・ヨダソウ・スタセッラ。と唱えると良い』
ラボメンに会いたい。
実際、紅莉栖とは今まで以上に会っていたがそうではなかった。
岡部にとっては、未来ガジェット研究所でこそラボメンと最もコミュニケーションが取れる空間なのである。
岡部「誰も、助けにこないではないか……」
それはそうだ。
助けに行くのは自分なのだから、と心の中で自虐をした。
一夏「凶……真……?」
ぶつぶつと呟き続けるルームメイトを心配して織斑一夏が声をかけた。
一夏「その、大丈夫か?」
岡部「おそらく、大丈夫で居られるのは今日までであろう……。
明日になれば我が肉体は淵底に沈み、意識は深遠へと溶け込み二度と日の光射す日常には戻ってこれまい……」
一夏「重症だな、こりゃ。
えっと……そんなに運動嫌いなのか?」
岡部「好みではないな……何度も言うようだが、俺は科学者だ。
得て不得手と言うものがある。運動は専門外なのだ」
一夏「そっか、そうだよな。
でもISを操縦するならこれから体力をつけないと不味いしなぁ……」
岡部「少しずつ、運動するのならそれも良いかもしれない。
郷に入っては郷に従う他ないからな。
だが……やつ等は、違うだろう? きっと違うだろう?」
一夏「……やつら?」
岡部「あの野獣のような娘達の事に決まっているだろう」
一夏「野獣って……まぁ確かに、そう言えない時も無いけど……」
岡部「普通の運動のはずがない、絶対に無い。断言出来る、違う絶対違う」
布団を頭から被り、ガタガタと震え出す。
岡部「特に、あのシノノノノノと眼帯娘。目に見えてやる気を出していた……。
恐ろしい、俺は恐ろしい……」
一夏「箒とラウラか……確かに、あの二人が一番厳しいかもな。
箒は剣道の腕が一流だ。きっと訓練は剣術とかになると思う。
ラウラは一流の軍人だ……考えるだけで、俺もちょっと怖い」
岡部「それ見ろおおおお!! ワンサマーですら恐怖を抱くレベルを俺が処理出来る訳無いだろうっが!」
一夏「俺に言われても……ごめんな、俺にはどうすることも出来ない。
でもその代わり、全部一緒に付き合うからさ! なっ!」
岡部「……はぁ、もうダメだ。やはり逃げられない」
一夏「一緒に乗り越えようぜ! 俺も何だか燃えてきた!」
岡部「“も”ってなんだ“も”って……」
一夏は闘志を奮い立たせ。
岡部は意気消沈したまま、夜は更けていった。
俺はなんのためにこの学園に来たのだろう、とまで岡部は考え初め意識がまどろむまでその答えは出てこなかった。
─翌日─
──コンコン。
朝5時。
織斑一夏と岡部倫太郎が住む部屋のドアがノックされた。
当然、早朝と言うこともあり男二人の眠りは深く起きる事は無い。
──コンコン。
──コン……ゴン! ゴンゴン!!
一夏「うわぁ!! なんだなんだ!?」
──ゴンゴン!!
一夏「ノック!? はい! はい開けますはい!」
箒「おはよう」
一夏「ほう──き?」
箒「うむ。い、良い朝だな、うむ」
一夏「朝だなって、朝5時だぜ? どうしたんだよ」
箒「岡部と、そ……そのついでに一夏、お前を起こしにき、た……」
一夏「起こしに……? なんで?」
箒「一日の始まりは鍛錬から始まる。全ては朝から決まるのだ。
今日から初日は私に任された、さぁ岡部を起こしてくれ」
かの有名な映画俳優も“充実した一日を過ごしたければ、朝5時30分よりも早く起きる事だ”。
なんて言ってたもんなと、一夏は納得した。
一夏「そう言うことか……なら、仕方ないな。
それとな、箒」
箒「む? なんだ」
一夏「俺も一緒に鍛錬頼むよ。一緒にやろうって約束したんだ」
箒「そうか! そうか……うむ、約束なら仕方ないな。鍛錬に前向きなのは良いことだぞ。うむ。うむ」
岡部「……5時。そうか、始まるのか……フハハ……ハ、ハ」
朝5時に叩き起こされたと言うのに、岡部に怒りの気持ちは無かった。
そうか、地獄の朝は早いのかと納得するばかりだった。
─剣道場─
気温は低く、四季は冬をゆっくりと目指していた。
岡部と一夏は体操服へ、箒は胴着へと着替えを済ませていた。
箒「さっそく稽古……と行きたいところだが、まずはストレッチを行う。
岡部がどれだけ柔軟か調べなければならない」
岡部「柔軟体操か……」
一夏「凶真って、身体柔らかいのか?」
岡部「思考は柔らかいんだがな……」
一夏「おっ! 上手いこと言うなぁ、ハッハッハ!」
箒「ふざけていないで、シャンとやれ。
柔軟な身体はそれだけで怪我のしにくい体なんだ。もし硬ければ、今日一日は柔軟に費えてしまうかもしれない。
一週間で身体を壊さないようにしなくてはならないからな」
岡部「解った。やってみよう」
そう言うと、岡部はぐっぐと腰を曲げ、地面に手を伸ばした。
腰は途中でとまり、腕はだらしなく空中に垂れ下がる。
箒「どうした? 私に気にせず初めて良いぞ?」
一夏「ほっほっ……と」
岡部「いや……」
一夏「ん? どうした、凶真。俺はちゃっちゃと終わらせちゃうぜ?」
岡部「これが、限界……なのだが」
箒「え」
一夏「え」
岡部「これ以上、前に行かない」
箒「ふざけて、いるんだよな……?
はっはっは、さすがの私も怒ってしまうぞ?」
一夏「そうだよ凶真、ここはふざける場面じゃ……本当に?」
こくん、と岡部は頷いた。
その額にはうっすらと冷や汗すら浮かべて。
箒「想像以上に、重症だったな……」
一夏「みたいだ……」
岡部「……曲がらん」
数分後。
岡部の悲鳴は早朝の剣道場に響き、その声は道場を付きぬけ学園中を駆け巡ったと言う。
箒「相撲取りのように、無理やり股割りをさせる訳にもいかないからな……」
一夏「無理やりやると一週間じゃ治らないからな」
箒「こうやって地味に伸ばしていくしかあるまい」
岡部「地味に……だと……」
産まれたての小鹿のように、身体を震わせている岡部が箒を睨んだ。
岡部「ゴム人間じゃあるまいし、人の関節はそんなに都合よく曲がらんのだ……」
箒「これも岡部のことを思ってだ。最初が私でよかったと思う日がきっと来る。
さぁ、柔軟を続けて」
岡部「ぐぬぬ……」
一夏「補助はもう要らないのか?」
箒「あぁ、取りあえず残りの時間はゆっくりと伸ばして貰おう。
で……だ。一夏」
一夏「ん?」
箒「その間、ひ、暇だな」
一夏「そうだなー、柔軟するのも良いけど」
箒「な、ならば私と一緒にジョギングへ行こう。
基礎体力の向上は重要だ、うん。それに暇だしだな……」
一夏「ジョギングか、それも良いな。よし、行くか」
箒「そうか! 行くか、私とジョギングに行くか……そうかそうか」
岡部「何処へなりとも行って来るが良い……」
箒「では、行ってくる! ちゃんと柔軟を続けるのだぞ」
一夏「じゃぁちょっと流してくるよ。またな」
二人は剣道場を後にして走って行ってしまった。
剣道場に一人取り残される岡部。
いっそこのまま帰ってしまおうかとさえ思ったが、その要望は却下して柔軟に勤しんだ。
岡部「これも、俺を考えてのことなのだろう。
我慢せねばなるまいな……」
岡部は二人が帰ってくるまで、2時間近く柔軟をするはめになった。
─食堂─
紅莉栖「あんた、何むくれてるのよ」
紅莉栖が朝食のチーズトーストを齧りながら、機嫌の悪そうな岡部に訪ねた。
ちなみに岡部は、たぬき蕎麦を注文して食べていた。
岡部「むくれてなど居ない。どこぞの男女二組が俺を放って2時間近くジョギングをしてきたみたいでな。
一人でずっと柔軟をしていたため少々疲れているだけだ」
ずるずると蕎麦をすする音が悲しげに響く。
鈴音「男女二人組み? ちょっとどう言うことよ」
気になるワードをキャッチしたのは、鈴音だけではなかった。
シャル「うん。何か今気になる台詞がオカリンから出たね?」
セシリア「私も、何かが引っかかりましたわ」
ラウラ「この学園で男は2人しかいない。倫太郎と、一夏だ。つまり……」
鈴音「どういうことよ……」
そしらぬ顔で、きつねうどんをすすっていた一夏がむせた。
甘い汁をたっぷりと吸った揚げが、一夏好みの味を演出している密かなお気に入りメニューだった。
一夏「ごふっ! ごふぉっ……」
箒「だっ、大丈夫か? 七味を入れすぎたんじゃないか?」
シャル「んー、白々しいなぁ」
セシリア「全くですわ」
ラウラ「正直に白状しろ」
鈴音「言いなさいよ、二時間も何してたのよ」
紅莉栖「(またこのパターンですね解ります。
一夏って学習能力無いのかしら……)」
一夏「ちょ、何で皆怒ってるんだよ」
鈴音「良いから言いなさいよ、早く言いなさいよ」
シャル「オカリンを放置して、2時間もなにしてたのかな?」
セシリア「軽蔑しますわ……」
ラウラ「さぁ言え!」
一夏「箒も黙ってないで何か言ってくれよ!」
箒「んんっ。岡部が柔軟している間に、ジョギングに行っただけだ……」
パクパクと焼鮭定食を食べながら箒が答えた。
塩梅が良く、ご飯が進む定番の一品である。
鈴音「へー朝から2時間もねー……」
一夏「箒がトラックを周回する毎に“もう1周だ”なんて言い続けてたからな……ほんと、地獄だったよ」
シャル「へー、箒も朝から頑張ったんだねぇ」
セシリア「精が出てますこと……」
ラウラ「それで、のこのこと付いて行き2時間を一緒に走り続けていたのか」
一夏「お、おう。凶真には悪い事したって思ってるよ……」
箒「そう……だな。確かに、自分達の鍛錬を優先するあまり放置してしまった。
岡部、すまない」
岡部「2時間走り続けさせられるよりはマシだろう、もう気にしていない」
紅莉栖「2時間一緒に走れば良かったのに」
岡部「普通の人間は2時間も走れるように出来ていない」
紅莉栖の野次にピシャリと突っ込みを入れる。
しかし、この突っ込みが良くなかったと思い至るのは数秒後であった。
箒「む。岡部は2時間走り続けることが出来ないのか?」
岡部「何を寝ぼけた事を……普通の人間が2時間も走りつ……」
気付いた時にはすでに遅かった。
箒「そうか。ならば午後の鍛錬はマラソンにしよう。良い機会だ。
一夏、我々もこれを機にさらに鍛え直す。長距離マラソンだ!」
一夏「えっ……あっ、いや。箒さん?
剣術とか教えた方が良いんじゃないのかな?」
これにはさすがの一夏も動揺を隠せなかった。
周囲の女子連中の瞳がイヤらしく輝いた。
鈴音「へー良かったわね、一夏。あんたマラソン好きだったわよね?」
シャル「そうそう、2時間も箒と走り続けちゃう位にね?」
セシリア「確か、フルマラソンに挑戦するのが夢だとも仰ってたような?」
ラウラ「夢が叶って良かったな、一夏」
紅莉栖「(凄まじい流れね……岡部、ドンマイ)」
一夏「ちょ、俺はそんなことは一言も──」
箒「そうか! 一夏はランニングが好きか! そうか、そうか。
うむ、私も……嫌いじゃないぞ? ランニングは良いな、うん」
一人で盛り上がる箒と嫉妬の炎に焼かれた4人娘に天罰を与えられた一夏。
そのとばっちりを食らうはめになった岡部は自由意志の無さを改めて痛感した。
紅莉栖は我関せずとばかりに、チーズトーストを齧っていた。
紅莉栖「(巻き込まれちゃ、たまったもんじゃないからね)」
気付いた時、岡部は自室の天井を見上げる形でベッドに寝転んでいた。
身体中の筋肉と言う筋肉が悲鳴をあげている。
動くたびに激痛が走り、関節が軋んだ。
岡部「ぐぉぉぉっ……! なん、だ、この痛み……は」
紅莉栖「あ、岡部起きた」
一夏「お、気分はどうだ?」
岡部「……最高に最悪だ」
紅莉栖「それは何より」
ベッドの横で紅莉栖が分厚い参考書を読んでいた。
岡部「何故、助手がここに」
紅莉栖「マラソンの最中にぶっ倒れるから付き添ってやったんだろうが」
一夏「俺も付き添ってやりたかったんだけど、完走するまで許してくれなくってさ。
紅莉栖に頼んだんだよ」
岡部「そうか……」
紅莉栖「感謝しろよ、まったく」
岡部「いぎっ……全身が痛い」
楯無「そんな時はマッサージよ♪」
岡部「……何故貴様が居る。どこから出てきた」
楯無「あん。あんまり邪険にすると拗ねちゃうわよ?」
一夏「お願いですから、存在消して近寄らないで下さい。心臓に悪いです」
楯無「心臓に悪いおねーさん。何かえっちな響きだと思わない?」
一夏「思いません」
はぁ、と溜息を付いて一夏が続けた。
一夏「あの、凶真も疲れてるみたいなんでこれから遊ぶのはちょっと……」
楯無「遊ぶって失礼ね、一夏くんは。おねーさんは岡部君の身体をリフレッシュさせに来たのに」
紅莉栖「カカカッ、身体をりふれっす!?」
この言葉に一番の動揺を見せたのは紅莉栖であった。
天才少女は脳の回転の速さ故、稀にあらぬ方向へ物事を考えてしまう癖がある。
楯無「うふ。クリちゃんのえっち」
紅莉栖「~~っ!! ちがっ、ちが!」
楯無「一夏くん、倫ちゃんにマッサージしてあげて頂戴」
一夏「マッサージですか? 良いですけど……」
楯無「筋肉のこりを徹底的にほぐしてね? それとこの薬を」
楯無が一夏に薬を手渡す。
どうやら軟膏のようで、肌に直接塗って浸透させる類の物らしい。
一夏「これは……?」
楯無「特別に調合した、筋肉痛を取るお薬よ。
それをマッサージしながら倫ちゃんの肉体に余すことなく塗りたくれば、明日にはスッと痛みなんて消えちゃうんだから♪」
一夏「へぇ、楯無さんが言うならかなり効果ありそうだな。
よっし凶真。塗るぜ?」
岡部「本当に大丈夫なのか? 怪しい薬では……」
楯無「ほらほら、おねーさんの言うことは信じる。会長の命令は聞く。これ常識だからね?」
紅莉栖「随分狭い常識であられる……」
楯無「さぁぁ、一夏くん! 倫ちゃんの衣服をひっぺがしてちょーだいっ!」
一夏「うっす。凶真、脱がせるからな」
岡部「う、うむ……」
紅莉栖「(え、なんだろう……この気持ち)」
楯無「(クリちゃんは、きっと言葉では言い表せない“ときめき”みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい。そう思って私はお薬を持ってきました)」
紅莉栖にしか聞こえない音量で耳打ちをする。
両手で顔を隠した紅莉栖であったが、指の隙間からしっかりとその光景を見つめていた。
楯無「(うーん。これなら生徒会で催し物として出せるレベルね)」
一夏「どうだ、凶真。気持ち良いか?」
岡部「あ、あぁ……なんだかスーッとしてきた。これは、良い薬なのかもしれん。
感謝せねばな……。それにしても、ワンサマーはマッサージが上手いな……」
一夏「楯無さんはあれでかなり良い人だからさ、きっとコレも良い薬だよ。
マッサージは……うん、色々あって慣れててさ」
ぐっぐっ、と岡部の身体のはりを確かめながら入念にほぐしていく。
岡部の表情は蕩けていて、何時の間にか眠ってしまった。
岡部「……ぐぅ」
一夏「ありゃりゃ、寝ちゃった」
楯無「よーーーっぽど、気持ちよかったのね♪」
紅莉栖「……」
楯無「クリちゃん」
紅莉栖「えぇ」
楯無「鼻血でてる」
紅莉栖「……えぇ」
この後、一夏による岡部へのオイルマッサージ動画は学園内で高額、または重大な取引への切り札として用いられることになる。
提供者は更織楯無だが、高度な画像処置(高画質化)を紅莉栖が施した事を知る者は居なかった。
おわーりでございます。
それで一つ質問があります。
今回、地の文の前に一文字分だけスペースを空けてみました。
以前より読みやすいか、逆に読みにくいか、です。
読みやすければこのまま行きます。
前の方が読みやすかったのならば戻します。
意見が別れた場合は多い方を参考にさせて頂きます。
少しでも皆さんが読みやすくなればと思っています。
>>1 です。
ありがとうございます、これからはスペースを一発ぶち込んでから地の文を書きます。
も少ししたら今日の文を投下しにきまうす。
>>388 続き
──ハァッ、ハァ。
苦しい、喉が焼けるようにヒリつく。
前が見れない。
視界に入るのは、地面と自身の両足。
足は鉛のように重く、前に進もうにも一向に速度が出ない。
ザッザッと地を蹴る音だけが鼓膜を響かせる。
次第にその音も聞こえなくなり、視界も暗転し、何も見えなくなった。
岡部「──ッッ!!」
深夜3時。
ベッドから跳ね起きるように、岡部倫太郎は目を覚ました。
ゴクッ、と喉が鳴る。
岡部「……あぁ、そうか。マラソンをして……ワンサマーにマッサージをして貰っている最中に寝てしまったのか」
視線を隣のベッドへ見遣ると、ルームメイトである織斑一夏がスースーと寝息を立てている。
岡部は再び身体をベッドに寝かせた。
岡部「……身体が痛くない。マッサージと薬の効果だろうか」
マッサージをしてくれた一夏と薬をくれた楯無に感謝の気持ちが募った。
岡部「……明日、いや……後数時間後か。今日は一体何をさせられるのか……」
不安と恐怖の中、岡部は再び眠りについた。
この日、朝の5時になっても部屋のノックが鳴る事は無かった。
一夏「凶真、凶真」
岡部「うぅむ……ッッ! 何だ! どうした! 走るのか!?」
一夏に起こされてた岡部は、過剰に反応して飛び起きた。
一夏「ははは、違うよ。朝飯食いに行こうぜ」
岡部「……鍛錬ではないのか?」
一夏「うーん、今日は誰も起こしに来なかったな。それより、身体の調子はどうだ?」
岡部「う、うむ。お陰で筋肉痛は殆ど無い。マッサージのお陰だろうな、感謝する」
一夏「そっか、なら良かった。着替えて食堂に行こう」
─食堂─
食堂へ着くと、自然に何時もの面子が集まる。
専用機持ちばかりずるい、と言う他の女子達の視線を無視して。
一夏「そう言えば今日は誰が凶真の訓練をするんだ?」
一夏の朝食は、たぬき蕎麦だった。
昨日、岡部が食べているのを見てそれを食べたくなり、お稲荷さんとのセットで注文していた。
箒が作ったお稲荷さん程ではないが、食堂のお稲荷さんも一夏のお気に入りである。
鈴音「私よ」
鈴音が中華風のお粥を食べながらそう答えた。
鈴音「本当は朝からやりたかったんだけど、生徒会長から今朝は簡便してあげてって言われてね」
一夏「だから来なかったのか、楯無さんも良いところあるよなー」
岡部「正直、助かったな……」
食欲が沸かないのか、岡部は野菜サンドを少しだけ齧って手を止めていた。
箒「朝はしっかり食べないと、もたないぞ」
そう言った箒は朝定食、大盛りご飯にアジの開き。お味噌汁にお新香と海苔のついたオーソドックスなものだった。
ラウラ「食事は全ての基本だ。お前はただでさえ線が細い、もっと食え」
シャル「まぁまぁ、慣れない運動で疲れちゃってるんだよ。
はい、オカリン。暖かいミルクだよ、せめて飲み物だけでもね?」
シャルロットはミートスパゲティを巻くフォークの動きを止め、ぬるめのホットミルクを岡部に差し出した。
岡部「あ、あぁ……済まない」
ラウラ「シャルロットは誰にでも甘すぎる」
ザグッ! とフォークをシュニッツェルに突き刺しラウラが言った。
岡部は朝から揚げ物とは……胃が痛む光景だなと目を伏せる。
セシリア「聞きましたわよ。昨日、ランニング中に倒れたんですって?」
紅理栖「もやしっ子ですから……」
セシリアはクリームシチューを。紅理栖は朝からラーメンを食べていた。
一夏「凶真。無理にでも食っておいた方が良いぜ。今日は千冬姉のIS実技授業があるからさ」
岡部「……そう、だな」
野菜サンドを無理やり口に詰め込み、ミルクで流し込む。
美味くも何ともなく、栄養補給をするためだけの、何とも救われない味気ない食事だった。
ラウラ「倫太郎」
ドン。と、大きめの缶をテーブルの上に置いた。
表記には“プロテイン”と書いてある。
ラウラ「これからは、コレを毎日飲め」
一夏「これって、プロテインか?」
ラウラ「あぁそうだ。一夏は得に必要無いがな、このもやし男には必要だろう」
岡部「なぜそこまでしてくれる……」
ラウラ「決まっている。少しでも強化された体で私の番に回ってこなくては……」
──死んでしまうだろう。
ドイツの冷氷、ラウラ・ボーデヴィッヒの目は本気だった。
ラウラ「私も教官のように、新兵を育てられる人間になりたいと常々思っていたところだ。
一夏は最初から身体が出来ていたからな。
倫太郎、貴様は手を焼かせてくれそうで何よりだ」
一夏「は、ははは……良かったな、凶真」
紅理栖「身体鍛える鍛錬に耐える、死なない体を作る為に、鍛えるのか。
鶏が先か卵が先かってヤツね」
岡部「一瞬でも感謝しそうになった、自分のなんと愚かしい事か……」
そう言いながらも残ったミルクにプロテインパウダーを混ぜいれソレを飲み干した。
無理やりヨーグルト味を付けられたそれは美味いはずがなかった。
岡部「鬼軍曹殿に目を着けられては堪らんからな……」
ラウラ「ふん。素直な新兵(ルーキー)は嫌いではない」
一夏「凶真とラウラもすっかり仲良くなったみたいだな」
紅理栖「(やっぱり一夏ってどっか抜けてるんじゃないかしら……)」
─第3アリーナ─
千冬「本日は機体制御の訓練をする。
今年中には回避運動と射撃運動を同時に出来るようになれ。
ボーディヴィッヒ、見本を見せろ。
空中で逆さになり一旦完全停止。その後、その体勢のまま急上昇及び急降下」
ラウラ「了解」
──シュゥゥン。
右腿の黒いレッグバンドが光り、瞬時にIS“シュヴァルツェア・レーゲン”を展開する。
紅理栖「あれが、ドイツの第3世代型か」
千冬「こと機体制御に置いてはお粗末な者が多い。
コレが上手くならずにIS操縦が上達するとは思うな。
ボーデヴィッヒ、やれ」
こくん、と頷きラウラの駆る“シュヴァルツェア・レーゲン”が飛翔した。
地上3m付近で一時停止、そのまま180℃機体を回転させ逆さま状態に。
千冬「そのままその状態を維持。
ISでの戦闘は360℃全方位で行われる。地上のみが自分の下にあると思うな」
千冬のレクチャーが続く。
千冬「空中での静止すらままならぬ者も居る。
逆さ状態での静止は勿論それ以上に高度な機体制御を強いられるから良く見て参考にしろ」
全生徒の視線がラウラに集まる。
その視線を感じ取ってか、少しだけラウラの両頬が赤く染まった。
千冬「5秒後にその体勢のまま急上昇。
──5・4・3・2・1……飛べ」
千冬のカウントダウンと同時に一気に上空へと飛翔する。
機体は少々のぶれを生じさせながらも、その体勢のまま上昇した。
千冬「よし、そのまま今度は急降下。
地上30センチまで」
ラウラ『了解』
──ギュンッ!
猛スピードで黒い点のようだった“シュヴァルツェア・レーゲン”が地面へと迫り寄った。
地上すれすれの30センチ付近で停止する。
風圧で砂埃が大量に舞った。
千冬「よし、流石だボーデヴィッヒ。問題ない」
ラウラ「ありがとうございます」
千冬「これより実地に入る。まずは逆さ状態での姿勢維持を5分出来るようにしろ」
千冬の掛け声と共に生徒が各々に実地を開始した。
多数の生徒が専用機持ちである者へアドバイスを求めに走る。
特に人気だったのは……。
女生徒「織斑君! お願いします!」
女生徒「第一印象から決めてました!」
女生徒「優しく、時には厳しく教えて下さい!」
一夏「参ったな……凶真を見てやりたかったんだけど……」
セシリア「その心配なら必要なさそうですわ」
シャル「……ちょっと、びっくりしちゃった」
女生徒「篠ノ之さん、これってどういう感覚でやれば良いんだろ?」
箒「あぁ、それは──」
女生徒「ラウラちゃん、さっき凄かったねー」
ラウラ「あっ、あの程度軍人であればどうと言うことは──」
セシリアとシャルロットの視線の先。
箒とラウラが多数の女生徒にアドバイスをしてるさらに奥。
アリーナの端の方で紅理栖の見守る中、機体制御を行っている“石鍵”の姿があった。
一夏「えっ、マジかよ……」
シャル「完璧だよ。逆さ状態で完全に静止してる」
セシリア「一体どう言うことですの?」
紅理栖『ちょっと、なんでそんな簡単に出来るのよ?
結構難しいはずなんだけど』
岡部『その事なんだがクリスティーナよ。俺が読んだ参考書と操作が全く違うのだ』
紅理栖『どう言うこと? あっ、ちょっと待って、オープンチャネルは良く無いかも。
よし、OK. 何が違うって?』
プライベートチャネルに切り替え、紅理栖がコンソールから話しかけた。
岡部『機体制御……マニュアル制御だとかオート制御だとかそう言ったものが無い。
動きたいように、動く』
紅理栖『はぁ……?』
岡部『はぁ……? ではない! まるで自分の身体のように動かす事が出来る』
紅理栖『ちょっとちょっと、ちょっと待ってね。えーっと……』
紅理栖は頭を抱えた。
つまり“石鍵”は岡部と完全に同期していて、操縦と言うよりも一体化してる。
考えられる要因はそれしかなかった。
紅理栖『つまり“石鍵”には難しい制御動作操縦と言う概念が無いってこと?』
岡部『そうなるな……イメージ通りに機体が動く。
ただこの間、ワンサマーと戦った時もそうなのだが俺自身の反応がハイパーセンサーで感知する世界に付いていけない』
紅理栖『それは仕方が無い。岡部自身のスペックなんてそんなもんよ』
岡部『くっ、はっきり言ってくれる……』
紅理栖『事実だからな。うんと、一応、そのまま急上昇急下降やってみてよ』
岡部『了解した、やってみよう』
──ギュンッ!
一切ぶれることなく、上空に到着。そのまま地上へ急降下。
“石鍵”は地面スレスレの3センチで完全停止した。
風圧や衝撃も一切発生せず、完璧な機体制御を紅理栖の眼前で容易に行った。
紅理栖『(凄い……)』
岡部『そ……ろそろ、姿勢を戻して良いだろうか。視界が上下逆で気持ち……悪い……』
紅理栖『なんという……』
なんというスペックの無駄遣いだと、紅理栖は思った。
岡部の三半規管は視界の切り替えに弱く、直ぐに気分が悪化した。
岡部『お……うぷ……』
紅理栖『操縦者の視界は常にクリアになってるはずなんだけど……。
クリアになってても、岡部自身の三半規管の弱さとはなんら関係無いってことね。
なんと言う宝の持ち腐れ……』
そんな光景を遠目で千冬が眺めていた。
千冬「(異常なまでの機体制御だな……ISの性能なのか、岡部自身によるものなのか……)」
完全に“石鍵”の性能によるものだが、端から見れば岡部の操縦術が長けているように見える。
こうして勘違いする人間は連鎖的に増えていった。
女生徒「ねぇ見てた!? 今の岡部君見てた!?」
女生徒「何あれ凄いよ!! ビタッ! って、空中でビタッ! って!」
女生徒「私、織斑派から岡部派に行くわ」
一夏「凄いな……」
シャル「うん。僕やラウラより、機体制御の腕は上かもしれない」
セシリア「やはり、侮れませんわね……」
箒「一夏、どういう事だ」
ラウラ「何があった?」
騒ぎを聞きつけ、箒とラウラが三人の元へ駆け寄ってきた。
一夏「凶真の機体制御が半端じゃないんだ」
シャル「ラウラ、きっと僕達よりも上手いよ」
ラウラ「なに……?」
箒「機体制御なぞ、簡単に出来るものじゃ……」
セシリア「それが、出来ているんですの」
おろおろと嘔吐感を催す岡部に対し、その評価は望まぬ方向へぐんぐんと伸びていく。
この日、織斑一夏ファン倶楽部から岡部倫太郎ファン倶楽部へと鞍替えする者が多数出た。
非公式ながらもこの2つのファン倶楽部には、かなりの女生徒が参加している。
ある女性徒達曰く、
女生徒「一夏君の周りには専用機持ちが居て競争率ヤバイ。けど、岡部君は牧瀬さんだけでしょう? 行ける! 若さで勝負!」
女生徒「紅理栖さんは美人だけど、若さなら負けないわ! あと胸の大きさも!」
女生徒「身長何気に高いし……カッコイイと思う!」
こうして一夏同様に、岡部もこの学園のアイドルとして着実に名前が馳せて行くことになる。
その日の昼食は少しばかり大変だった。
岡部は元より少しばかりの食欲不振になっていたが、授業中の機体制御で完全に酔っていた。
食事など喉が通る訳がない。
お茶だけで済まそうとしていると……。
女生徒「ちょっと! 一夏君だけじゃなくて、岡部君まで独占するの!?」
見慣れない顔の女生徒の声が食堂前で響いた。
一夏「えっと、ごめん。誰かな……」
女生徒「3組! どうせ名前なんて知らないよね……そうだよね……」
女生徒「ちょっと何弱気になってるのよ!」
女生徒「頑張らないと、ここで頑張らないと……」
ラウラ「何を詰まっているんだ。さっさと配給を受け取りに行こう」
女生徒「専用機持ちはしゃーらっぷ!」
女生徒「今日こそは、今日こそは一緒にお食事ぃぃぃ」
女生徒「1組ばっかり……ずるいです……」
シャル「あはは、そういう事か……」
セシリア「同じクラスの者同士で食事するのは当たり前のことですわ」
箒「あまり騒ぎすぎると織斑先生が来てしまうぞ」
女生徒「うぐ……!」
箒の一言で女生徒がたじろぐ。
この学園の生徒で織斑千冬を恐れない人間は居なかった。
ラウラ「教官が来る前に騒ぎを辞めろ。
一夏は我々と食事をするのだ」
女生徒「くぅ……なら、岡部君! 岡部君、一緒にご飯食べよ!?」
女生徒「良くやった! 良く言った!!」
女生徒「食べ……よ……?」
紅理栖「(来た……遂に、来た。岡部に若い女の手がついに……)」
岡部「悪いが、食欲が無い。俺がここに来たのはただの付き合いだ。他を当ってくれ」
女生徒「うきぃー!」
女生徒「やはりダメなのかー!!」
女生徒「ぐす……ん……」
完全敗北した女生徒達は食堂の奥へと去って行った。
紅理栖「(Yes! 一夏もだけど、岡部の空気の読めなさも相当なのよ!!)」
一夏「なんだったんだ……?」
岡部「さぁな……俺は席を取っておく。お前達は食事を貰いに行くと良い」
ラウラ「おい。本当に食べないのか?」
シャル「今朝もあまり食べなかったよ……?」
岡部「飲み物だけで十分だ。今無理やり食べても戻してしまう可能性があるしな」
一夏「そっか、じゃぁ仕方ないな」
セシリア「席の確保、お願いいたしますわね?」
岡部「あぁ」
そう言うと岡部は自販機で“ドクトルペッパー”を2本買って席を確保した。
この学園では食堂の端にある自販機でしか“ドクトルペッパー”が売っていなかった。
その為、飲みたくなったら食堂へ来て買うしかない。
学園中を探してみたがここにある一機しか販売していないので、不便であった。
一夏「お待たせ、あー腹減った」
そう言った一夏のトレーにはチキン南蛮。箒も一夏と同じもの。
セシリアはビーフシチューとバケット。シャルロットはカルボナーラとデザートのプリン。
ラウラはソーセージとフライドポテトの盛り合わせ、それにサラダ。
途中で合流したのか、鈴音は回鍋肉定食をトレーに乗せている。
どれもコレも美味しそうではあるが、今の岡部にはどれも重たく見えて食べる気は起きなかった。
未だに、酔いが残っている。
一夏「紅理栖は……牛丼か!」
紅理栖「えぇ、前は良く食べてたんだけどココへ来てから食べてないなーって」
シャル「ぎうどん?」
セシリア「なんですの?」
ラウラ「牛が丸々乗っているのか?」
鈴音「うそ、あんたら知らないの?」
一夏「外国に牛丼って無かったっけかな?
ええと、薄く切った牛肉を玉ねぎと一緒に甘辛く味付けしたタレで煮込んだり、焼いたりしてそれをご飯の上にどん」
箒「好みで、生卵を入れることもあるな」
シャル「へぇ、美味しそうだね」
セシリア「少し野蛮な感じがいたしますが……」
ラウラ「なるほど、それがDON物と言うやつだな」
紅理栖のトレーに視線が集まる。
甘めの香りが食欲をそそる、学園特性の牛丼だった。
岡部「助手。ドクペを買っておいた、飲むだろ」
紅理栖「ありがと、これも最近飲んでなかったわね」
──プシッ。
心地良いプルタブの音が響き、二人はドクペを飲んだ。
岡部「やはり、知的飲料は一味違う。身体にスッと入っていく……」
紅理栖「久々だけど美味しいわね」
一夏「えっ、2人が飲んでるそれって……」
箒「……ドクトルペッパーか?」
セシリア「それを好んで飲む方が居るだなんて……」
鈴音「マジで?」
シャル「あ、アハハ……」
ラウラ「なんだその飲料水は?」
一夏「あー、ラウラ。止して置いた方が良い。多分……全部飲めない……」
紅理栖「ここでもドクペは異端か。ラウラ、一口飲んでみる?」
岡部「うむ。味の解る者であれば、この至高の飲料水の魅力が解るだろう」
一夏に止められて、一瞬迷ったラウラだったが興味には勝てず、ちびりと一口だけ口をつけた。
ラウラ「うぐっ……! な、んだこの風味と味は……」
鈴音「言わんこっちゃない……」
紅理栖「……どう?」
ラウラ「不味い……なんだか、気分が落ちてしまうそんな感じの味だ」
岡部「貴様も所詮、その程度だったと言う事か……」
シャル「えっと、オカリンも紅理栖も……ドクペが美味しいって思うの?」
岡部「とーぜんだ」
紅理栖「え、えぇ。……まぁ」
セシリア「お2人とも、少し……その、味覚がどうかしてるんじゃなくて?」
ラウラ「無駄に甘ったるくて、変な匂いだ……なんだ、この味は」
岡部「ふん。なんとでも言うが良い。知的飲料の味は知的な者にしか解らんのだ」
そう言って岡部はドクトルペッパーを飲み干した。
それを見ていた皆は“わぁ……”と少し引いた目で岡部を見つめるしか出来なかった。
紅理栖「(うぅ、何かいたたまれない……)」
一夏「でも、紅理栖も好きなんだよな……俺も小さい頃に飲んでダメだったから、今度チャレンジしてみようかな」
箒「な」
セシリア「え」
鈴音「ん?」
シャル「……」
ラウラ「どう言う意味だ?」
一夏「ん? いやー、2人とも美味いって言って飲んでるからさ。もしかしたら俺も美味いって感じるかもしれないし」
一夏は気付いていなかった。
自身が強調した人物が“紅理栖”であったことを。
もちろんこの男が意識してその台詞を吐いていないことを、理解していない5人娘ではない。
むしろ、無意識の内にそう言った言葉回しをした一夏に腹が立ったのだ。
箒「ご馳走様。私は先に行く」
一夏「えっ、おい箒どうし」
セシリア「私もお先に失礼させて頂きますわ」
鈴音「はいご馳走様ー」
シャル「先、行くね?」
一夏「え? ちょっ、どうしたんだよ急に」
ラウラ「シャルロット、私も一緒に出る」
一夏「ラウラまで」
ラウラ「お前は紅理栖と一緒にドクトルなんちゃらでも飲んでいるが良い」
一夏「え?」
ラウラ「ふんっ」
こうして5人娘は、一夏と紅理栖、岡部を残し食堂を後にした。
岡部「(全く、ハーレムと言うのも考え物だな。
今度ダルにハーレムの実態を教えてやろう)」
紅理栖「(大変ね、一夏も、あの子達も)」
一夏「一体なんだってんだ……?」
この後、一夏もドクトルペッパーを買って飲んでみたがやはり美味しくは感じられず、岡部に処理してもらう形になった。
午後の授業中、一夏は背中に突き刺さるような視線をずっと感じていたがその正体が何なのかは解らず仕舞いに終わった。
おわーりでございます。
注意。
セシリア・オルコット の一人称について。
セシリアは自分の事を “わたくし” と名乗っています。
漢字変換すると わたくし も わたし も 私 になってしまい解りにくいですが“わたくし”です。
オルコッ党の方が居ましたら申し訳ありません。
これからも 私 と変換しますがご了承下さい。
一夏の千冬に対する呼び方。
当初“千冬姉ぇ”と打ってましたが、正しくは“千冬姉”です。
すでに表記は“千冬姉”にしていますが、イントネーションとして ぇ をつける感じで読んで下さい。
今日もありがとうございました。
PCの予測変換がアホの子になってました……。
紅理栖→×
紅莉栖→○
です、申し訳ありません。
あ、すげー細かいことだけど
ラ・ヨダソウ・スタセッラ
だとごちゃまぜだよねwwwwwwわざとか?
シュタゲ元ネタだと
ラ・ヨダソウ・スティアーナ
で、岡部がフェイリスに言ったのは
ラ・ヨーダ・スタセッラ
だと思われ
>>1です。
>>462
ふぇぇ……アニメ版のシュタゲを見ながら書いたから、単に耳コピ失敗だよふぇぇ……。
という事で>>370 岡部の台詞。
岡部「ラ・ヨダソウ・スタセッラ……」→×
岡部「ラ・ヨーダ・スタセッラ……」→○
です。
ご指摘ありがとうございました。
ふぇぇ……明日になったから投稿するよう、もうちょっと待ってね。
>>424 続き
二日目の担当者は中国代表候補生、凰 鈴音だった。
全ての授業が終えた後、一夏と岡部の部屋に3人が集合する。
岡部「で、一体何をすると言うのだ大陸娘よ」
鈴音「誰が体力娘よ!」
岡部「盛大な聞き間違いだ。大陸娘」
鈴音「あーもう、体力でも大陸でも無いっつーの!」
一夏「まぁ落ち着けよ鈴。そう言えば紅莉栖は来ないのか?」
鈴音「(また紅莉栖!?)」
岡部「うむ。助手は私用でな」
一夏「そっか。昨日のマラソンも付き添ってたから来るのかと思ってたよ」
何気ない一夏の一言が鈴音の胸に突き刺さる。
鈴音「なによ……紅莉栖紅莉栖って……一夏の馬鹿」
一夏「ん? 何か言ったか?」
鈴音「別に! 何でも無いわよ!」
岡部「……で、そのボールは一体何だ?」
岡部は鈴音のもって来た三つのボールを指差した。
数年前に流行った“バランスボール”と言う代物である。
鈴音「ん。今日はバランスを鍛えてやろうと思ってね。
アンタってば基礎が全く無いっぽいからまずそこから」
一夏「バランス感覚かぁ」
岡部「ふむ……走ったり殴られたり蹴られたりするよりはかなり常識的だな」
鈴音「体幹を鍛えるの。あらゆる肉体動作の基礎に繋がるからかなり大事よ」
そう言うと鈴はバランスボールに深く腰を落した。
鈴音「まずは、座って5分。そして……よっと!」
一夏「おぉ……!!」
鈴音は涼しい顔をして、バランスボールの上に立ち上がった。
ぶにぶにと軽く浮き沈みをするボールの上で、器用にバランスを取っている。
岡部「まさに、中国雑技だな」
一夏「すげぇ! 鈴ってそんなことも出来るんだな!」
鈴音「と、とーぜんでしょ! 中国代表候補生だったらコレくらい出来て当たり前よっ!」
そう言い放つと、トランポリンの要領で一旦深く沈みその反動で軽くジャンプ。
そのまま床に着地した。
鈴音「っと、まぁこんなもん。一日でここまでやるのは難しいだろうけどね、これなら部屋で出来るし良いんじゃない?」
岡部「うむ。激しい運動より、こう言ったものの方が俺の性に合ってそうだな」
一夏「へへっ、ちょっと面白そうだし頑張ろうぜ凶真」
鈴音「ん。じゃぁ私がタイム計るから、2人ともボールの上に乗って」
一夏「おう!」
岡部「よ……む、中々難しいな……」
鈴音「いい? じゃぁ手を離して。そのまま5分」
手を離した瞬間、岡部は身体は重力に引っ張られるように後方へと倒れた。
──ベシャ。
情け無い音が部屋に響く。
鈴音「……アンタ、遊んでるの?」
岡部「……す、少しつまづいたただけだ」
一夏「でっでもこれ案外難しいぞ……!」
一夏が両手を広げて賢明にバランスを取り続ける。
その姿はヤジロベエのようだった。
鈴音「一夏も思ったより、バランス感覚無いわね……」
一夏「あんまり話しかけないで、くれ……くっ!」
ゆらゆらと揺れるボール。
それを見て鈴音の犬歯がキラリと鈍く光った。
鈴音「第二段階。このテニスボールを投げるから、腰による微妙な体位の調整で避けなさい」
一夏「はァ!? ちょっ、ちょっと待て! 無理だ!」
鈴音「無理じゃないわよ。こうーくいって腰を動かす感じで最小限の動きをとれば良いだけだから」
行くわよー。と問答無用でテニスボールを投げる鈴音。
ソレは確かに、完璧なバランスを取り最小の動きをすれば避けれる程度のものだったが、今の一夏にソレをどうこうする術はなかった。
一夏「わっ! わっ!」
──ぽこん。
一夏「──なァ!?」
──どすん。
あえなく、岡部と同様に一夏も5分と持たずバランスボールから落ちてしまった。
鈴音「アンタ等、本当にダメダメね……」
岡部「日本人は幼少時から、雑技団に入るような訓練はしていないのだ」
鈴音「あたしだってしてないわよ!」
一夏「くっそー……思ったより難しいなコレ。ってか、鈴! 最後のはちょっと無茶だろう」
鈴音「そんなこと無いわよ、最終的にあれ位できないと不安定なボールの上に立つこと何て出来やしないし。
さ、無駄話はお仕舞い。続けるわよ」
鈴音が仕切り直し、バランスボールでの特訓が始まった。
岡部は何度もバランスを崩し、ボールの上から転落。
一夏も岡部程ではないが、ボールの上で5分間その体勢を維持するのは中々出来なかった。
鈴音「うーん……結構軽いトレーニングのつもりで来たんだけどなぁ」
ボールに腰を落し、まるで椅子のように座る鈴音は悪戦苦闘を繰り広げる2人を見つめていた。
鈴音「(岡部は論外ね。力みすぎ。本当に機体制御が上手いのかしら? バランス感覚も必要なんだけど……)」
ずでん、ずでん。と、ボールから振り落とされる岡部の様子を見て鈴音は半信半疑になっていた。
その横で、一夏もずでんと床に寝転んでいる。
鈴音「(あーもう、一夏の馬鹿。そこで力むからいけないんだってば!)」
岡部「結構……かなり、疲れるものだな。それに痛い、とてつもなく」
一夏「だな……鈴はなんで涼しい顔して座ってられるんだ?」
鈴音「バランスが良いからに決まってるでしょ。ってか、他の代表候補生の皆もコレくらいきっと出来るわよ」
一夏「出来ないのは俺と凶真だけか……」
岡部「ワンサマーは俺よりマシだ。そう落ち込むこともあるまい」
鈴音「岡部は少しくらい落ち込みなさいよ!」
そんなやり取りをしながら、2時間後には一夏……それに少し遅れて岡部もボールの上で5分間体位を維持出来るようになった。
鈴音「時間掛かり過ぎ」
岡部「達成できただけマシだと思え……」
岡部は何度も何度も床に体を叩き付けられたせいで、打ち身だらけになっていた。
その結果、余計な力が取れ5分間のバランス維持を達成出来たのだから皮肉である。
一夏「いやー、なんとか出来るもんだな」
鈴音「何で教えてもらってる岡部が一番偉そうなのか謎だけど……次のトレーニング行くわよ」
一夏「まだやるのか? そろそろ食堂行かないと間に合わないけど」
鈴音「ん。そうね……じゃぁ、見本だけ見せるわ。そしたら晩御飯食べに行きましょう」
そう言って鈴音はバランスボールを持ち2人の前に立つ。
鈴音「膝立てバランス。座るだけよりかなり難易度は高いから目標は30……や、1分」
2人の前で実技を見せながら説明を始める。
ボールの上に膝をつき、そのまま両足を浮かして手でバランスを取りながらキープする。
説明はとても簡単で、見ている分にも簡単だったが今しがたバランスボールの難しさを体験した2人である。
鈴が事も何気にこなしている動作がどれだけ難しいものか容易に想像が付いた。
鈴音「こんなもんね。食事の後もやるわよ」
鈴音にとっては当たり前の台詞だが、岡部にとっては意識が遠のくに値する発言だった。
岡部「昨日は筋肉痛。今日は打ち身か……」
一夏「凶真、頑張ろうな」
一夏の励ましに何と無しの悲しさを覚えた。
─食堂─
利用時間もあまり無いせいか、人影はなく食堂には誰も残っていなかった。
一夏と鈴がトレイ。岡部がジュースの缶を持って席に着こうとすると珍しい人物と出会う。
山田「あら、織斑君に岡部君。それに2組の凰さん」
一夏「あ、先生」
山田「こんばんわ。随分と遅めの夕食ですね?」
一夏「ちょっとトレーニングをしていて……」
1年1組の副担任である山田真耶。
その後ろで、トレイを持つ実姉に向けての言葉だった。
千冬「何を怯えている。まだ食堂の利用時間は終わっていない、文句など無い」
一夏「千冬ね……織斑先生達も今から食事ですか?」
千冬「あぁ。教師と言うのも何かと忙しい、食事が取れるのは大抵この時間だ。
それにしても岡部……随分とボロボロだが、組み手でもしていたのか?」
岡部「ティーチャー……その事には触れないでくれ」
鈴音「ちょっとバランスボールで体幹を鍛えてまして……」
山田「? バランスボールでそこまでボロボロになったんですか?」
体操服姿の岡部は見るからにボロボロだった。
一夏「あーっと、バランスボール苦手だった見たいで……」
千冬「全てバランスボールで負った怪我か?」
岡部「答える義務は無い……」
──ぷっ。
息の噴出す声が漏れた。
千冬「ぷっ……ははは! バランスボールで怪我をする者が居ようとはな……くっ、ははっ」
千冬のツボを刺激したのか、ひとしきり笑い目尻の涙を拭う。
それと逆に回りは軽く引いていた。そんなに笑うことか、と。
千冬「まったく、あまり笑わせるな」
一夏「は、はは……」
山田「あはは……あっ、そうだ。良かったら皆さんでご飯ご一緒しませんか? ね、織斑先生?」
千冬「む。教師が生徒と一緒に食事と言うのも……と言っても他に利用者は0か。たまには……良いだろう」
山田「ね? 織斑君♪」
一夏「はぁ、俺は全く構いませんけど。なぁ?」
鈴音「えっ、あたし? 構わないけど……」
岡部「問題ない。元より俺は食欲が無いから水分だけだがな」
そう言った岡部の手には“ドクトルペッパー”が握られていた。
鈴音「げっ……あんたまたそれ?」
岡部「至高の知的飲料だ。これを飲めば食事など最低限で事足りる」
一夏「まっ、何はともあれ時間も無いしさっさと食べちゃおうぜ。いただきます!」
鈴音「いただきます」
千冬「いただきます」
山田「いただきまーす」
──プシュッ。
一夏は、夜と言うこともあり、軽く鮭の切り身が乗ったお茶漬け。
鈴と山田は野菜炒め定食。
千冬は焼肉定食と言った具合のメニューを各々に食べ始める。
千冬「岡部は、食事を取らないのか」
豪快に盛られた肉の山を処理しつつ千冬が訪ねた。
岡部は一人、固形物を取らずにドクトルペッパーをかたむけている。
岡部「食欲が無いものでね……特に今は体が痛む……」
山田「岡部君が最近、専用機持ちの子らにしごかれてるってクラスで評判ですよー」
鈴音「最近と言っても今日で2日目なんですけどね」
千冬「なんだ、たった2日で胃をやられたのか。根性の無いヤツめ」
一夏「凶真は元々科学者だったんだから仕方ないって……ですよ」
千冬「科学……あぁ、元々は東京電機大学に在籍していたんだったな」
喋っている間にもみるみる肉の山が消えていく。
にも関わらず、口に含みながら会話している訳ではなくマナーとしても無作法なところが無かった。
岡部「あぁ……今年の頭に卒業したはずの高校に一年生からやり直しと言う訳だ……」
IS学園に転入してまだ数日だと言うのに岡部は疲弊していた。
目まぐるしく変わった環境、触れたことすらなかったISの知識、その授業に実技と気の休まるところが無かった。
それに加えて昨日からのトレーニングである。
千冬の目から見ても、岡部は疲れていた。
千冬「それもこれも、お前がISの適性を持っていたからだな。
“望んでここにいるわけではない”そう思っているのだろう。
だが違う。望む望まざるに関わらず、人は集団の中で生きていかねばならない」
千冬の言葉に一夏は懐かしいものを感じた。
これはIS学園入学当初に一夏が受けた初めての説教と言えるべき台詞だった。
千冬「目まぐるしく世界が一転したのなら、それに慣れるしかない。
慣れろ。それが集団で生きるためのコツだ」
それだけ言うと千冬は再び食事に戻った。
岡部「言われずとも……解っている……」
集団に混ざり生きることの難しさを知っている岡部はそう答えるしかなかった。
岡部「自慢じゃないが、俺は友達が少なかったからな。
集団生活とやらのコツを掴むのに時間がいる。今はそれの準備期間と言ったところだ」
千冬「ふん。抜かせ」
2人の会話に3人がきょとんとする。
山田「一体何の話でしょう?」
一夏「さぁ……途中までは何となく解ってたんですけど」
鈴音「さっぱりだわ」
岡部には解っていた。
疲弊している自分に対する、教師・織斑千冬なりの激励であることを。
食事が終わると、2人の教師はゆるりとする間も無く食堂を後にした。
山田「まだお仕事が残っているので、また明日。おやすみなさい♪」
千冬「もう利用時間も終わる。あまり長居するなよ」
残った3人も長居する事は無く、食べ終わると直ぐ様2人の部屋に直行した。
─自室─
──メリィ!
岡部「………………」
膝立てバランスは想像以上に難しく、岡部は顔面を床にめり込ませた。
一夏「きょ……凶真?」
鈴音「あちゃぁ……かなり良い音したわね?」
……。
…………。
………………。
岡部「……──床が! 床が迫ってくるァ!!」
身を起こすと、そこはベッドだった。
足元の方に紅莉栖がベッドに腰を落し分厚い専門書を読んでいる。
昨夜も同じような光景を目に入れた気がすると岡部は思い返した。
違いと言えば、参考書から専門書に読んでいる本が変わったことだろうか。
岡部が意識を取り戻したことに気付き、パタンと専門書を閉じ岡部に視線を送る。
紅莉栖「鳳凰院凶真さんはまた気絶されてたのでありますか」
一夏「おっ、凶真起きたか。鈴なら帰ったぜ」
一夏がバランスボールに座りながら答えた。
紅莉栖「全く、バランスボールで気絶とか恥しすぎるだろjk」
岡部「……そうか、顔面からいって」
一夏「凄い音がしたから、驚いたよ。それと、鈴がバランスボール置いていってくれたから暇な時にやる癖付けろってさ」
岡部「解った。大陸娘に感謝せねばな……」
少しばかり、不甲斐なさを感じ目を伏せる。
それを見た紅莉栖が話題を変えるようにひっそりと耳打ちをした。
紅莉栖「パッチ完成。明日朝6時、第1アリーナ整備室に」
岡部「……!」
紅莉栖「さーって、私も帰って寝ますかね。セシリアにまたどやされちゃう」
一夏「ははっ、それもそうだ。おやすみ紅莉栖」
紅莉栖「おやすみ一夏」
一夏は紅莉栖を見送り、ドアを閉める。
岡部はベッドの上から視線を送るだけだった。
一夏「いやー、紅莉栖って本当に良いやつだよな。
岡部が目覚めるまで待ってたんだぜ?」
岡部「あ、あぁ……何せ俺の助手だからな」
一夏「はははっ。またそれか、面白いヤツらだな本当に」
岡部「俺には他にも人質が居るのだぞ、ワンサマー」
一夏「人質……!? って、え? どういう意味だ?」
岡部「言葉の通りの意味だ、マッドサイエンティストなるもの助手や人質の1人や2人居て当然なのだ」
一夏「な、何か解らないけどすげぇな……やっぱり」
まゆりや他のラボメンとはまた違った一夏の素直な反応。
岡部はこのやり取りが気に入りつつあった。
千冬『慣れろ。集団生活で生きるためのコツだ』
岡部「(ティーチャー。貴様の弟のお陰で、なんとかやっていけそうだよ……)」
ずきんずきんと体中に響く痛みが無ければ、ワンサマーに言葉として告げてやっても良かったのだがな。
と心の中で悪態を付きながら、織斑姉弟に密かな感謝を告げた。
おわーりでございます。
ねむー。
書いても書いても物語が直接進展する場面まで行かない申し訳ない。
大分こういった日常パートが続くかもわかりません。
本日もありがとうございました。
訂正
>>484
一夏は岡部倫太郎のことを“岡部”と呼びません。
“凶真”の間違いです、申し訳ありませんでした。
これだから添削は何度も何度もやれと言ってるんだ!
今日は9月27日!!!
IS 織斑 一夏の誕生日!!
SG 阿万音 鈴羽・の誕生日!!
2人とも、てんびん座です。
一夏はこれで、15歳。
鈴羽はこれで、18歳。
めでてぇめでてぇ! 年取らないけど誕生日はめでてぇめでてぇ!
>>1です。
添削終わったら今日の分を落しにくまー
待ってる
>>484 続き。
─第1アリーナ整備室─
IS整備室。各アリーナに隣接される形でその部屋は存在する。
本来2年生から始まる“整備科”のための施設であるが、生徒であれば誰でも使えるとあって利用する者も多い。
早朝6時。人気は無く第1アリーナ整備室には2人の人間しか居なかった。
紅莉栖「今日は土曜日で学校も無いし、その内に人も集まるわ。
パッパとやっちゃいましょ。そこに立ってて」
岡部「うむ」
空中投影ディスプレイを見つめながらメカニカル・キーボードを高速で叩く。
紅莉栖「同時にフィジカル・データとか諸々もやっちゃうからね」
岡部「全て任せる」
紅莉栖「ん。任された」
ピッピ、と左手でキーボードを弾くと“石鍵”の足元からリング状のスキャナーが垂直に浮き上がり、
ゆっくりと岡部の全身に緑色のレーザーを当てていく。
紅莉栖「本来なら検査室の機材でやる内容なんだけど、少し弄ったらこっちの機材でも出来ちゃった」
左手でスキャンの打ち込みをこなしつつ、右手は違うデータを入力している。
同時に違う打ち込み作業を行いながらお喋りに興じる余裕を見せる紅莉栖に、岡部は改めてゾっとした何かを感じた。
岡部「と言うか、勝手に備品である機材を弄って良いのか?」
紅莉栖「無問題、無問題。後でちゃんと直しとくから。
ってか出来るなら一緒にやっちゃった方が時間のロスも少なくて良いと思うんだけどね」
岡部「学校側にも何かしらの理由があるのだろう」
紅莉栖「はいはいっと、無駄話してる間にフィジカル・スキャンは終り。
次はパッチのインストール始めるわよ。
“石鍵”を展開して」
岡部「解った」
紅莉栖「(展開速度が速い……)」
岡部の展開速度は凄まじく速かった。
3日前に初めて、ISを展開した人間とは思えない程に。
──カチャカチャ、ターンッ。
エンターキーを叩く音と共にインストールが始まる。
“石鍵”による、エネルギー供給カットプログラムを操縦者である岡部の判断でカットするためのパッチ。
万が一、エネルギーカットが必要な場面が来る可能性を考えて簡単にオン・オフが出来るようにもされていた。
紅莉栖「5分位でインストール終わるからじっとしてなさいよ」
岡部「う、うむ」
空中投影ディスプレイに目を移す。
先ほど採取した岡部のパーソナル・データ。
身体能力の低さは相変わらずだが、問題なのは“IS適性値”。
紅莉栖がラボで実験した時に出たデータでは適性値“B”。
そして入学時に出た適性値は“C”の値。
ラボで使った機材は簡易式という事もあり、数値に誤差が出るのも頷けた。
しかし、現在ディスプレイに映る最新のパーソナル・データ。
そこに表示されているのは“IS適性値 S”の文字だった。
紅莉栖「(どういう事よ……適性値Sって、世界に数人しか居ないわよ。
って言うか、短期間で適性値がコロコロ変わることなんてありえないし……)」
この情報をどうするべきか。
本来ならば“石鍵”にデータを送るべきであるが、その場合データは簡単に閲覧出来るようになってしまう。
紅莉栖「(……“適性値 S”なんてバグに決まってるわね。フィジカル・データだけ更新しておきましょう)」
最新の“IS適性値”は更新せず、フィジカル・データだけを“石鍵”に転送した。
岡部「む、インストールが終わったようだぞ」
紅莉栖「OK. そのままアリーナに行くわよ。ちゃんと作動するかの実験をする」
岡部「ふっ。実験大好きっ娘め」
─第1アリーナ─
朝7時前と言うこともあり、整備室同様アリーナにも2人以外の人間は居なかった。
アリーナ中央に“石鍵”。
そして控え室に紅莉栖が居た。
紅莉栖『準備は良い?』
岡部『大丈夫だ』
プライベートチャネルで短めに用件を済ますと、カウントダウンに入った。
紅莉栖「実弾発射5秒前、4・3・2・1……ファイア!」
カウントダウン共に事前に固定して置いた、アサルトカノン-ガルムが銃身を熱くした。
遠隔操作によりトリガーが引かれた弾丸は“石鍵”に向け容赦なく降り注いだ。
──ガギンッ! ガァンガンッ!!
通常であれば、シールドバリア及び絶対防御により遮断された攻撃でもその衝撃まで完全に分散させることは出来ず、
操縦者である人間に少なからずダメージが渡る。
しかし“石鍵”の装甲は分厚く、一切の衝撃を搭乗者である岡部に与えることは無かった。
紅莉栖『ぷぅ……実験成功ね』
“石鍵”のシールドエネルギー残量がディスプレイに映し出される。
エネルギー残量の数値が極端に減っていた。
岡部『うむ。どうやら、直撃を食らってもエネルギー供給はそのままのようだな。さすがは助手だ』
紅莉栖『私が作ったパッチなのだから、当然と言えば当然な訳だが』
憎まれ口を叩く紅莉栖ではあったが、その表情は安堵したような嬉しそうな表情を作っていた。
無論、その表情を岡部に見せるつもりは毛頭無く、声がうわずらないようにも隠している。
紅莉栖『折角だから、武器の調整もしましょう。
未だに展開していないのもあるでしょう?』
岡部『あぁ。“モアッド・スネーク”の展開をまだした事が無かったな。
何となくの想像は付くが……』
紅莉栖『同意。ってか多分、同じような想像してるはずよね』
岡部『うむ……』
未来ガジェット4号機“モアッド・スネーク”を2人は思い浮かべる。
大量の水を多数の電熱コイルで沸騰させ、多量の蒸気を噴出させる超瞬間加湿器であるそれは形状こそ“クレイモア地雷”の形をしている。
おそらく“石鍵”に搭載されている武装も“クレイモア地雷”の形をした加湿装置的な何かであろう。
2人はそう思っていた。
岡部『……では“モアッド・スネーク”展開する』
──フィィィィ……ヒュンヒュンヒュンッ。
光の粒子が形となり、武装が展開されていく。
岡部『これは……』
紅莉栖『想像してたのと、ちょっと違……いやねーよ』
……。
…………。
………………。
─食堂─
実験を終える頃には丁度朝食時になっていた。
2人が並んでアリーナから食堂へ向かうと入り口で一夏とシャルロットの2人組みに出くわす。
シャル「あっ、オカリンに紅莉栖。おはよー」
紅莉栖「モーニン。2人で朝食?」
一夏「あぁ。シャルに誘われてさ。朝起きたら凶真が居なかったから驚いたよ」
岡部「助手と少しばかり、早朝会議があってな」
一夏「そっか。これから2人で朝飯にするんだけど2人もだろ? 一緒に食おうぜ」
紅莉栖「えっ、えーっと……」
チラリと目線をシャルットに配る。
シャルロットは紅莉栖に解るよう、ジェスチャーで良いよと答えた。
シャル「一夏のばか……」
そう小さく呟いた声を聞いた者は居なかった。
一夏「そう言えば、凶真と紅莉栖が学校へ来て初めての土曜日だな。どうするんだ?」
一夏の朝食は牛丼だった。
昨日、紅莉栖が食べているのを見て久々に食べたくなったのだ。
ちなみにシャルロットも同じで牛丼を箸でちまちまと、それでいて上品に口に運んでいる。
岡部「む……考えていなかったな」
岡部の朝食は何時も通りのドクトルペッパー。
それに加えて、コッペパンと貧相な物だった。
未だに昨日のバランスボールで作った痣が痛く、食事を取る気分になれなかった。
紅莉栖「久々にラボでも行く? まゆりにも会って無いし」
ラーメンをマイフォークでつるつると食べながら紅莉栖が提案する。
一夏はそれを見て、なんでフォークなのだろうと首を傾げていた。
そして朝からラーメンかと思い、苦笑もしている。
岡部「そうだな。ラボの管理をするのも創設者であり、No.001であるこの俺の役目だ。
久々にラボの方に足を伸ばすか」
シャル「らぼ……?」
一夏「って何だ?」
紅莉栖「あーっと、そうね。コイツが作ったサークルみたいなものよ」
岡部「サークルではない! 未来ガジェット研究所っだ!」
シャル「何か、研究してるの?」
一夏「ん! 前に何か聞いたことある気がするな」
楯無「んー、でも残念。倫ちゃんは今日もとっても忙しいのでした」
何時の間にか、一つ空いていた席に更織 楯無が着席していた。
一夏「楯無さん……何時の間に」
楯無「今の間に♪」
そう言う楯無の手には、サンドウィッチとミルクが持たれている。
岡部「おい、ノーガード女。今の台詞はどう言う意味だ」
シャル「のーがーど?」
一夏「ノーガード?」
楯無「……?」
──コホン。
紅莉栖が咳払いをする。
紅莉栖「多分、たてなし。だからノーガードなのかと……」
シャル「あー……あぁ……」
一夏「……なるほど! ははっ、上手いな凶真」
楯無「うーん。そんなあだ名を付けられたのは初めてだなぁ。
でも楯無って呼んで? もしくはたっちゃん」
岡部「名前などどうでも良い。それより、さっきの台詞──」
楯無「やん。名前で呼んでくれなきゃ、おねーさんは答えません」
紅莉栖「(無理無理。コイツが名前をちゃんと呼ぶなんてレアケースはそうそう起こりません。本当に──)」
岡部「楯無、どう意味だ」
楯無「あん。学内で呼び捨てって新鮮でちょっとドキッとしちゃった♪」
紅莉栖「(──ありがとうございました……)」
岡部「良いから、答えろ」
少しばかりの苛立ちを含んで岡部が問いただす。
その横で紅莉栖がテンションを落しながら、ラーメンを啜る。
もう紅莉栖の耳に、会話は届いていなかった。
楯無「だから、倫ちゃんは今日おねーさんと特訓。遊んでる暇なんて無いわよ?」
一夏「今日って、楯無さんの番だったんですか? と言うか、学校休みの日まで?」
楯無「もっちろん。と言うか、土日はおねーさんが貰いました」
シャル「ん。つまり、今日明日は楯無会長がオカリンを指導するんですか?」
楯無「そう言うことね。シャルロットちゃんにも手伝ってもらうかもしれないから、その時はよろしくね」
シャル「あ、はい。僕でよかったら……」
岡部「お、おい何を勝手に……く、クリスティーナ? 俺達は今日ラボへ……なぁ?」
一縷の希望を託し、隣の紅莉栖に話しを振る。
しかし、期待していた返答は来なかった。
紅莉栖「知らない。私は今日ラボへ行くけど、あんたは勝手に頑張りなさいよ」
そう冷たく言い放って食事に戻ってしまった。
岡部「クリスティーナ……さん? 何か、怒ってらっしゃいます?」
紅莉栖「ティーナでは無いと言っておろうが。解らないなら良い。黙って食べなさいよ」
岡部「ぁ……ぉ……」
シャル「(紅莉栖も大変だなー)」
一夏「(ん? 紅莉栖は何かに怒っているのか?)」
楯無「んふふ、許可も降りたことだし……朝食が済んだらさっそく特訓を始めるわよ。
この土日で使い物にならない倫ちゃんのナマクラをおねーさんが鍛えなおしてあげる」
岡部にとっては死刑宣告に相応しい宣言がなされた。
弁護人はラーメンを啜っている。
久々にラボへ帰れると思い、内心高まっていたテンションは一気に下がり、岡部の食欲はさらに減退した。
おわーりです。
日付変わっちゃったけど、今日もありがとうございました。
オカリンって基本的に女性を下の名前で呼ぶイケメンだよね。
それでは、また。
めも
日 初日→ラボ
月 2日目→学園自己紹介等 紅莉栖制服制作
火 3日目→制服完成 コア到着
水 4日目→石鍵登場 初戦闘敗北 石鍵考察 パッチ作る
木 5日目→箒トレーニング
金 6日目→機体制御 鈴トレーニング
土 7日目→ New!
自分のメモが間違ってたら笑えるけども。
それでは、おやすみなさい。
なんとか今日も投下できそうです。
短いですが……。
添削終わったらおとしにきまうです。
添削しても>>1のことだから、誤字脱字あるんだろうなぁ。
と思いつつ、↓から投下します。
>>513 続き。
─秋葉原・未来ガジェット研究所─
時刻は昼前11時過ぎ。
トントンと、階段を登る音が静かに響く。
──ガチャ。
紅莉栖「ハロー」
鍵は開いていた。
何時ものように、ドアノブを捻り牧瀬紅莉栖が未来ガジェット研究所の扉を開く。
ダル「ちょっ、牧瀬氏じゃん!」
椅子に座り、PCを弄っていた“橋田 至”が振り返る。
そのディスプレイには、ダルが好んで遊ぶR指定のPCゲームではなく、IS関係のものが表示されていた。
まゆり「紅莉栖ちゃんだぁ! トゥットゥルー♪ お久しぶりなのです」
ソファーに腰掛け、イベント用のコスプレ衣装を縫っていた“椎名 まゆり”も紅莉栖に視線を向けた。
満面の笑みを浮かべている。
紅莉栖「ハァイ。時間できたから来ちゃった。お邪魔して良い?」
まゆり「当り前だよー! ほら、こっちこっちー」
ぽんぽんとソファーの隣を叩いてまゆりが、おいでおいでする。
紅莉栖「ありがと、まゆり」
ダル「っつか、一週間ぶり? たった一週間でも久々な気がするから不思議だお」
まゆり「そうだねぇ、えっへっへぇ」
ダル「ほんで、オカリンは?」
紅莉栖「あー……岡部は忙しいみたいで来れないの」
まゆり「そっかぁ……久々にオカリンの顔見たかったんだけどなぁ」
ダル「んまー、仕方ないっちゃ仕方ないっしょ。IS関係が大変だろうしさ。
この一週間でオカリン関係のニュースやりすぎワロタ状態だったし」
紅莉栖「そうね……色々と苦労しているわ。主にフィジカル面でだけど」
まゆり「ふぃ、ふぃじかー?」
紅莉栖「フィジカル。簡単に言うともやしっ子体型のアイツは今、強制的に肉体改造を受けてるわけ」
ダル「つまり、筋トレ三昧? うわー……デブには想像しただけで食欲が無くなる話題」
まゆり「えっと、オカリンがまっちょりんになるってことかな?」
紅莉栖「想像したくないけど、そうね」
まゆり「そっかー。やっぱり大変なんだねぇ……でも、まゆしぃはちょっと寂しいかな。
それに、オカリンの体が心配なのです……」
紅莉栖「まゆり……」
ダル「まゆ氏……」
まゆりの一言でラボの空気が少しだけ寂しいものに変わった。
まゆり「っん! 紅莉栖ちゃんは今日お休みなんだよね?」
少しだけ俯いていたまゆりは、一瞬にして顔を輝かせる。
その表情には先ほどまでの寂しさは纏っていなかった。
紅莉栖「え、えぇ」
まゆり「ならなら、今日は一緒に遊ぼうよぉー。ね! ダル君もそれが良いと思うよね!」
ダル「おぉぉ……まぁ、ボクは牧瀬氏にISについて色々聞きたいこともあったし、賛成だお」
まゆり「ね! 紅莉栖ちゃんっ」
紅莉栖「……そうね、と言うか今日は一日中ラボに居るつもりだった、し……」
はにかみながら紅莉栖が答える。
同年代の友達が殆どと言って良いほど居なかった紅莉栖にとって、まゆりの素直な誘いは嬉しいものがあった。
ダル「そうと決まればまずはご飯にしようず。ピザを注文しようと思う訳だが」
カサカサとピザ屋のチラシを広げはじめる。
どうせ注文する種類は決まっているのにと、紅莉栖は内心笑っていた。
まゆり「まゆしぃは、ジューシーからあげなんばーわーん!」
紅莉栖「ピザか、良いわね。最近ジャンクジャンクしたのを食べてなかったから、そう言うのちょっと食べたかったりして。
学食って美味しいんだけど、全部クオリティが高くてなんか違うのよ」
まゆり「せっかくだから、ルカ君も呼ぼうよー!」
ダル「ならばフェイリスたんにも是非お声をかけて頂きたいお!」
紅莉栖「(楽しいな、この空気……岡部の馬鹿も無視して来ればよかったのに……)」
表面ではそう思いつつも紅莉栖は無理やり岡部をここへ連れて来ることは出来なかった。
その後、更織楯無に説明された事情。
今頃、岡部もさらに詳しく楯無から説明を受けているだろう。
名称だけは紅莉栖も耳にしたことがあった。
──“亡国企業-ファントム・タスク-”について。
─IS学園・自室─
岡部「亡国企業-ファントム・タスク-……」
聞きなれない単語を耳にした岡部が繰り返す。
楯無「そう。覚えておいてね」
一夏「……」
“亡国企業-ファントム・タスク-”
古くは50年以上前から活動している、第2次大戦中に生まれた組織。
国家によらず、思想を持たず、信仰は無く、民族にも還らない。ゆえに目的は不明。
存在理由も不確かで、その規模もわからない。
わかっているのは、組織は大きく分けて運営方針を決める幹部会と、スペシャリスト揃いの実働部隊の2つが存在すること。
そして近年、その主な標的はISであること。
楯無の説明はそういったものだった。
楯無「この情報も何処までが本当なのか、眉唾なんだけどね」
岡部「それが俺と何の関係がある?」
楯無「直接の関係は勿論無いわ。でもね、ここに居る一夏くんの“白式”同様に貴方の“石鍵”も貴重なISなの。
口惜しいことに、今まで何回か学園内外で襲撃を受けてる訳」
岡部「襲撃……?」
一夏「あぁ。俺の“白式”を奪いにな」
楯無「亡国企業の目的は不明。ただ、ISを集めてる事は確かだし手段を厭わないのも確かなの」
一夏「俺も何度も襲われた」
岡部「……」
楯無「自分で撃退しなさい。だなんて言わないわ、ただ死なない程度には動けるようになって貰わないとってことよ。
倫ちゃんに死なれちゃったら、おねーさんも生徒会長としてちょっと困っちゃうし」
一夏「凶真も何時、俺のように襲われるか解らないから。って事ですか?」
楯無「そーゆーこと」
一夏が入れた紅茶を飲みながら答える。
誕生日にセシリアがくれた一級茶葉を使用しているので、優雅な香りが部屋に立ち込めていた。
岡部「……事情は解った。だがしかし、俺は今日ラボへ行かねばならん」
楯無「紅莉栖ちゃんが行っちゃったから?」
岡部「だっ断じて違う! お、俺はラボの長としてだな、定期的に様子を見に行かねばだな……」
楯無「んー、どうしても行きたい?」
岡部「これは義務だ。義務を放棄する訳にはいかない」
楯無しは、うーん。と考えるポーズをとる。
岡部を行かせる気は毛頭無いが、どのようにして諦めさせるか考えていた。
楯無「じゃぁ、勝負しましょう。私が負ければ今日も明日もお休み。どう?」
岡部「……良かろう」
一夏「……あっ」
一夏は気付いた。
一昔前にこれとまるで同じやりとりを楯無としたことを。
にこりと笑った楯無は勿論、“罠に掛かった”という表情をしていた。
やっちまったな、凶真。
自分と同じ運命を辿るであろうルームメイトに対して、そう思うことしかできなかった。
─畳道場─
岡部「……これは?」
楯無「うん。袴ね」
岡部と楯無は休日稽古をしていた柔道部員を退け、中央で向かい合っていた。
両者とも白胴着に紺袴という日本古来からの武芸者スタイルだ。
隅に追いやられていた柔道部員は、会長である楯無と岡部の袴姿に黄色い声を上げている。
同じように袴姿の一夏には既に何人かが取り囲み、写真撮影へと発展していた。
岡部「俺が聞いているのは格好の問題ではない」
楯無「あら、思ったより似合ってるわよ?」
岡部「ちっがぁう! 俺が言ってるのはそう言うことではない!
さっさと済まして、ラボに行きたいというのに何故こんな面倒な着替えや場所をあつらえているんだ!」
楯無「の割りには、ひょいひょい付いて来て着がえてるじゃない♪」
岡部「そもそもだ……なぜ戦う事になっている……」
ぎりりっ、と歯軋りが聞こえてきそうな形相で楯無を睨む。
楯無「あん。睨んじゃヤ」
一夏「凶真……話が通じる相手じゃないから……」
写真撮影が終り、隅の方で正座をして観戦している一夏が声をかける。
そんな一夏に、あんまりな言い方ね。と楯無が小さく反応した。
取り巻きの女子も、行儀良く一夏を中心に横一列に正座をして観戦している。
ジャンケンで勝った順に一夏の隣に座れるシステムらしい。
楯無「さ、倫ちゃん。喚いてる時間があるなら早くかかって来なさいな。
ルールはさっき説明した通り。倫ちゃんは参ったすれば、負け。
私を床に倒せば倫ちゃんの勝ち」
あまりにも岡部に有利な条件。
いくら体力の無い岡部とは言え、負ける気がしなかった。
何度倒されても自分が参ったを言わなければ負けることはない。
ラウンダー相手に立ち回った経験を活かせば、女1人床に伏せることは容易い。
そう考えていた。
岡部「自分勝手な女だ。後悔しろ、マッドサイエンティストを怒らせたことをな!」
楯無「まー、怖い。おねーさん身の危険感じちゃう。
一夏くん、いざとなったら助けてね?」
一夏「はいはい。助けますよ(凶真をですがね)」
岡部「さっさと終わらせるぞ。悪いが俺は格闘技の型など知らんからな、我流で──」
._,iill''''"'''';;i、 ミミ巛巛ミミミ巛ミミミ巛巛彡彡ミ巛彡 _,,,,,./ _
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大きく両手を広げる岡部。
その独特の構えは──。
一夏「なんて……隙だらけなんだ」
岡部の作戦は単純だった。
体格差にものを言わせて、転ばせる。
岡部「(楯無がどれだけ強いかは解らん。が、チャンスはいくらでもある……。
今が11時。遅くとも12時には終わらせて、14時にはラボに到着していたい)」
楯無「じゃぁ──行くわよ?」
余裕のある澄んだ声が道場に響いた。
おわーりでございます。
段々1回の文章量が落ちていってる……。
ギャグ漫画日和とISのクロスがセンスありすぎて悔しいっ……!
面白くて読んじゃう……ビクンビクン!
では今日もありがとうございました。
添削終了。
↓より投下開始します。
>>545 続き。
─未来ガジェット研究所─
るか「でも──岡部さん凄いです、男性なのにISを起動してしまうなんて」
ピザを両手で持ちながら“漆原 るか”が話題を変えた。
その容姿は美少女にしか見えないが、男である。
服装も華奢なボディラインが見て取れるようなものであり、蠱惑的なものだった。
フェイリス「さすが凶真だニャ……内なるマナを開放し、ISを呼び覚ましただニャんて……。
深淵の者との戦いが近いと言うことなのかニャ……!」
フェイリス・ニャンニャン。“秋葉 留未穂”が何時も通りの口調で答えた。
ラボは2人を加え、5人のラボメンで昼食を取っている。
ダル「……キタ」
ボソリと、ダルが呟く。
その拳はぎゅぅっ、と強く握られている。
紅莉栖「橋田……どした?」
ダル「ボクの時代がキィタァァア!! まさに、ハーレム!!」
座っていた巨漢の男が立ち上がり、叫ぶ。
ジューシーからあげNo.1を摘まんでいたまゆりが、柔らかい口調でそれに返した。
まゆり「でも、るか君も男の子だからちょっと違うよ?」
紅莉栖「男女比2:3でハーレムと言うにはちょっとね。つか、なんて話題だ」
フェイリス「チッチッチ。ダルニャンを甘くて見てはいけないのニャ!
るかニャンもきっちりカウント、むしろ“男の娘”属性として脳内で猛威を振るってるはずだニャッ」
るか「えっえっ……あの、僕……」
ダル「今まさにボクの時代だお!」
──ゴスッ。
ISの専門書がダルの後頭部にめり込む。
厚みと重量をかね揃えたソレは、凶器と呼ぶに相応しかった。
ダル「おおお……」
紅莉栖「けっこー重くて硬いのよね、この本。橋田、もう一発いく?」
ダル「ニ、ニライカナイが一瞬見えた訳だが……」
紅莉栖「正座する?」
ダル「正直興奮してた。反省も後悔もしてないが、今は落ち着いてるお……」
紅莉栖「まったく。相も変わらずHENTAIなんだからな」
フェイリス「ダルニャンにHENTAIは褒め言葉になっちゃうニャ」
ダル「まさしく、ご褒美」
フェイリスの合いの手にキリッとした反応を見せる。
が、横目で紅莉栖が睨むと直ぐに萎縮してしまった。
ダル「あ、牧瀬氏牧瀬氏……」
紅莉栖「なぁに? 変態さん」
ダル「言葉に棘があるぜェ……じゃなくって、凄いことが発覚したんだお」
紅莉栖「凄いこと?」
まゆり「あっ! そうそう、ちょっと驚いちゃったよねぇ」
るか「はい。僕も驚きました……」
紅莉栖以外のラボ面が訳知り顔で話し始める。
紅莉栖「ちょっとちょっと、話し進めないでよ。何が凄いの?」
ダル「フェイリスたんの“IS適性値”」
紅莉栖「? それがどうしたの?」
まゆり「それがねぇー、えへへぇ」
るか「“適性値:A”なんです」
紅莉栖「へぇ、そうなの……A!?」
IS適性値。
C~Sまでランク付けされていて、大部分の女性がCに位置づけられる。
適性値は訓練により、向上していくものだが、生まれ持った素質によるものが大きい。
適性値Sランクは世界で数人しか確認されておらず、世界最強の一角として認知されている。
適性値Aランクは各国の代表選手、及び代表候補生クラスになる素質、または技能を持っているとされる。
紅莉栖「ちょ、AランクだったらIS学園に余裕で入学出来るわよ?
と言うか……日本政府がAランクの娘を学園に入れさせないとかありえない」
フェイリス「ニャハハ……実は政府から何度も入れーってオファーが来てたのニャ」
ダル「フェイリスたんマジぱねぇっす」
フェイリス「ISは確かに凄いニャ。だけども、フェイリスは皆のメイドでありたかったのニャ。
ISに乗って世界に羽ばたくよりも、もっともーっと大事なことがフェイリスにはあったから……華麗に断った訳だニャ!」
まゆり「えへへぇ、さすがフェリスちゃん。カッコイイなぁ」
るか「普通なら断りきれないですし、待遇面から言っても確実にIS学園に入学した方が良いですもんね」
ダル「一生付いて行くと決めたお!」
フェイリスISに関連する全てのオファーを断った。
IS操縦者になる道よりも、この秋葉原でメイドとして、秋葉留未穂として都市開発に携わっていく。
そう決めていたのだから日本政府が幾ら説得しようとも、猫の耳に念仏であった。
フェイリス「でも、こんなことになるなら入ってても良かったかニャ?」
紅莉栖「こんなこと?」
フェイリス「決まってるニャ! 凶真がIS操縦者として学園に入ったのなら、きっと今より面白い学園生活が送れたはずだニャ!」
まゆり「オカリンと学生生活かぁ~」
るか「確かに。楽しそうですね……」
ダル「牧瀬氏は実際送っている訳ですが……」
紅莉栖「ぐ……」
3人の視線が紅莉栖に集まる。
フェイリス「さー、くーニャン! 洗いざらい話してもらうニャ~!」
紅莉栖「は、話すって何を……」
まゆり「んーとぉ、どんな学園生活を送ってるのかなぁ? まゆしぃもちょっと気になるのです」
紅莉栖「ま、まゆりまで……」
るか「やっぱり気になりますよね……そ、その女の子も沢山居ますし」
紅莉栖「漆原さんまで!?」
ダル「特に、世界各国の美少女について詳しく説明キボンヌ!」
紅莉栖「なにこの展開……」
フェイリス「くーニャン以外で、凶真が一番仲の良い子は誰だニャ?」
紅莉栖「えっと……一夏かな」
ダル「どこの国の女子?」
紅莉栖「男だ」
まゆり「おー、あの有名なおりなんとか君!」
ダル「さすがオカリン……ヘタレっぷりをあちらでも発揮していると見た」
一門一答が続いていく。
周りから出される質問の殆どの答えが“一夏”だったのは言うまでも無かった。
この一門一答は3人が飽きるまで行われた。
─畳道場─
楯無「倫ちゃん、一つ聞いて良い?」
岡部「何だ? 命乞いか? ククク……本来ならば許しはしないが、今は時間が無い。特別に──」
楯無「その格好はなぁに?」
岡部の口上などは全て無視して楯無が尋ねた。
両腕を万歳のように広げ、掌も広げまるで威嚇でもするかのような構え。
あらゆる格闘技を納めている楯無であっても、見た事が無い型。
どう見ても隙だらけの型ではあったが、岡部の自信に満ちた表情に興味が沸いた。
岡部「……っふ。知らんのか。この構えは地上最強の生物。その者の“流法”(モード)だ」
楯無「地上最強……? モード?」
岡部「その他にも“光”の流法。“風”の流法。“熱”の流法、と俺は全てを納めている。
どうだ、降参するなら今のう──」
楯無「なんだか解らないけど……面白そうね♪」
岡部「お、おもしろ?」
楯無「じゃぁ──行くわよ?」
仕切りなおし、楯無が動く。
岡部が無意識に行った生理的な“まばたき”を終えた次の瞬間、
対面に立っていた楯無は大きく両手を広げている岡部の懐に入っていた。
岡部「な──に?」
楯無「あら? 迎撃しないのね?」
両手を広げたままの岡部は動くことが出来なかった。
本能が危険信号を脳に告げる。
“この位置は不味い”
楯無「ボディーが、がら空きよ!」
双掌打が岡部の腹部に叩き込まれた。
ガードなど出来様はずもなく、完全に攻撃が決まる。
楯無の細く、華奢な腕から放れた打撃は関節を固定することにより大幅に攻撃力が上がっていた。
岡部「くけっ……!」
衝撃が全身に渡る。
肺に攻撃を受けた訳でもないのに、全ての酸素が肺外へ放たれ呼吸が一時的に麻痺する。
バランスは崩れ、足はよぼつき、気付けば視界は天井を見上げていた。
楯無「あらぁ……思った以上に……」
一夏「(何にも言えねぇ……)」
女子生徒「え、もしかして岡部君って弱い?」
女子生徒「ちょっと幻滅って言うか……」
女子生徒「でも相手は更織会長だし……」
遠慮無用の女生徒の会話に一夏の耳が痛くなる。
ここ2日間で岡部の体力のなさは把握していた。
そんな岡部が楯無と戦えるはずが無いのを、一夏は解っていたからだ。
楯無「えっと、大丈夫……?」
双掌打のクリーンヒットを受けた岡部はひくひくと手足を痙攣させながらひっくり返っていた。
一向に立ち上がろうとしない岡部を心配して、覗き込むように楯無が近づいた時──。
岡部「ぶぁーかめっ!!」
見かけによらず、長く伸びた足を楯無の両足に絡め、蟹バサミを決める。
ガッチリと楯無の両足を挟む。
後は簡単だった。思い切り体を捻りその勢いで床に叩き伏せる。
岡部「これで終りだ!!」
楯無「うーん、頑張りは認めるけど30点」
冷静な声が響く。
その顔は見えなくとも、うっすらと笑みを浮かべていると解る口調だった。
岡部の勢いは止まらない。
そのままゴロゴロと畳道場を1人で転げまわった。
楯無「ホールドが甘い。あんなにユルユルじゃぁ簡単に抜けれちゃうわよ?」
ガッチリと挟んだはずの足だったが、所々にあったわずかな隙間。
僅かでも隙間があるのなら、体位をずらせば空間は広がる。
広がれば後は簡単。
岡部が転がり始める前にジャンプをすれば良い。
子供だましな縄抜けだった。
岡部「くっ……」
ずきん。と腹部が疼く。
痛みを無視して行った決死の攻撃。それが外れたことで忘れかけていたものがぶり返した。
楯無「それにしても、死んだふり? 結構ベタな手を使うのね」
くすくすと愉快そうに笑う楯無。
それに引き換え、岡部は一撃貰っただけで全身から嫌な汗が吹き出ていた。
岡部「(この女……もしかして、凄く強いのか……?)」
一夏「(凶真が怪我しないように祈るしかないな……)」
楯無「さてさて、倫ちゃん。降参する?」
ニパッ、と笑顔を見せる。
岡部は睨みつけることによって降参を拒否する意思表示をした。
岡部「(思ったよりダメージが大きい……。芯に響くような痛みだ……)」
楯無「んー♪ 良い顔するじゃない。そう言う顔する男の子、おねーさんは好きよ?」
だからお前は俺より年下ではないか!
そう突っ込みを入れたくはある岡部だが、その余裕が無かった。
岡部「(大丈夫だ。降参さえしなければ終わらない……勝機は必ずある。俺は絶対にラボへ行く……)」
楯無「さー、ガシガシ行くわよー」
そこからは一方的だった。
ぽん、ぽん、ぽんと肝臓、みぞおち、心臓に軽く掌打を入れる。
寸分違わぬ精密打撃により、攻撃力は低くとも威力は絶大だった。
楯無「最後のは最近読んだ漫画にあった技なの。ハートブレイクショット♪」
岡部「くっ……かはっ……」
全てが急所への打撃。
岡部の膝が崩れ落ちる。
岡部「(息が……)」
呼吸が詰まる。
視界が落ちそうな、世界が暗くなる感覚。
──ギリッ。
思い切り歯を食いしばり、意識が弛まぬように気を入れた。
一度でも折れれば立ち上がれなくなる。
岡部は本能でそれを覚えていた。
楯無「あら……」
一夏「倒れ……ない」
完全に倒れると思っていた一夏は駆けつけるために、肩膝立ちの姿勢になっていた。
持ちこたえた岡部に驚嘆する。
楯無「ふむ。痛みには強いのかしらね?」
岡部「ぁぁ……、痛み……には、多少…………慣れてい、てな」
振り絞るように声を出す。
声を出して、意識が飛ばないようにとの抵抗だった。
楯無「あはっ♪ 良いわね、倫ちゃん。男の子はそうでなくっちゃ」
愉快な声をあげる。
事実、楯無は楽しんでいた。
一夏は捨て身の攻撃でもって、意志を示した。
岡部は耐えることにより、諦めることを拒否している。
そんな男達の姿が懸命でいじらしく、とても良い物に思えたからだった。
岡部「まだ、勝負は終わらない。終わらせない……」
ゆらり、と岡部が動く。
策など無かった。
岡部「(殴りたくば、殴れ)」
相手が攻撃をした時、必ず体は腕の届く距離に居る。
痛みなど無視をして力ずく……体当たりでもなんでも良い。
一度転ばせてしまえばそれで終り。
はったりが利く相手でも、急拵えの攻撃も届かない。
岡部には最初から自爆特攻しか選択肢が無かった。
楯無「(うーん、結構有効打入れたと思ったんだけどなぁ……これ以上やると怪我させちゃうかも)」
一夏「(凶真のやつ大丈夫か? いざとなったら、本当に止めに入らないとな……)」
2人の心配を他所に岡部は動く。
ゆっくりと、小用を片付けに行くように敵わない相手へ歩を進める。
一夏は腰を上げ、何時でも飛び出せる準備をしていた。
試合を止める訳ではない。
岡部が何時倒れても、その時支えられるようするために。
楯無「(すぐへばると思ったんだけど……意識を奪った方が良さそうね)」
楯無にしても、岡部を痛めつけることが目的ではなかった。
現状で岡部の身体能力をこの目と身で確かめる。
この試合は単なる余興として考えていただけだった。
楯無「(そんなにラボに行きたかったのかしら。ちょっと妬けちゃうかな、なんてね)」
岡部「どうした、ノーガード……来ないなら、こちらから──」
楯無「やん。ノーガードは嫌って言ったでしょ? それにノーガードなのは倫ちゃんじゃない」
そう言い放ち、楯無が躍動する。
身長差のある岡部に対し、確実に意識を刈り取るため、顎を狙った攻撃。
クリーンヒットさせては岡部の顎が砕けてしまう。
当てる打撃ではなく、掠める打撃。
前屈みになり、体を回す。
一夏「(カポエラキック!)」
下段から上段へ飛んでくる背面回し蹴り。
目測を誤れば確実に顎を砕くそれを、正確に掠めるよう楯無は放った。
──ッッッチ!!
目論見通りの攻撃が当り、岡部は脳震盪を起こす。
岡部「うごっ……?」
肉体的なダメージではなく、脳を揺さぶる攻撃。
耐える耐えないの問題ではなく、立っていられない。
人間の脳は衝撃に強く出来ていない。
前方へ崩れこむように、倒れる岡部。
一夏は駆け出していた。
一夏「凶真!」
岡部の体を支えようとした、その瞬間。
けれど岡部の膝は完全に崩れ落ちなかった。
楯無「……」
岡部「っぐ……脳震盪、か……」
一夏「えっ、凶真? 意識、あるのか?」
岡部「言った、はず……だ。慣れてい、ると」
脳へのダメージ。
揺れる世界。
それは、リーディング・シュタイナーを発動したそれと少しだけ感覚が似ていた。
その少しだけ。ほんのちょっとの似た感覚が、岡部の意識を現在に繋ぐ要因になる。
楯無「一夏くん。戻って」
一夏「あ……はい」
降参をしていない以上、一夏が試合を中断して良い理由などどこにも無かった。
楯無「ちょっと痛いかもしれないけれど、3時のおやつには起こしてあげるから」
冷たく。けれど柔和な口調を岡部は最後、耳にした。
おわーりです。
戦闘描写が得意じゃないから、戦闘回はキツイです。
えっちなSSが書きたくてしかたないけど我慢してこの子を完結させるために頑張るの。
それではご機嫌よう。
今日もありがとうございました。
紅莉栖「まゆり、IS学園に転入して」
まゆり「わぁー☆IS学園に入れば…ISさんと戦えるんだよね?ISさんと人間のどっちが頂点に立つか、前から試してみたかったのです!」フンス
紅莉栖「なら決まりね?まゆり、あなたのIS適性を今から測るわよ」
まゆり「なんでー?まゆしぃにはISさんは必要ないのです!」
紅莉栖「あー…ISに乗れない人間は、そもそもIS学園に入れないのよ」
まゆり「なら仕方ないね。さっさと測っちゃうのです!」
紅莉栖「ふむふむ、IS適正E。これじゃ難し…え!??上昇してる!?」
まゆり「筋肉にぃ…不可能はぁ…無いのです……ぬぅん!!」ニタァ
紅莉栖「Sまで上昇した…流石まゆりね。これで合格者間違いなしよ」
つまり何が言いたかったかと言うと、保守
乙ん
学園最強の生徒会長さんは素人をボコボコにして得意顔なの?
オカリソかわいそす
>>1です。
多分、今日中には投下出来るかもしれません。
>>618
そう感じてしまったのなら申し訳無いです。
>>1の力不足故の描写不良としか言えません。
素人をボコボコにしてドヤ顔をするようなキャラクターではありません。
物語の進行上、アニメ未登場の楯無会長をかなり使ってしまってますね……。
何でも出来るって便利なキャラだー。
>>628
小説でもけっこうこんな感じだから全然いいでしょ!
>>630
そう言って貰えると助かりますにゃー。
それにしてもNIPにはシュタゲSSが本当に少ないですね。
寂しいもんだ。
IS関係もあるようで、あまり無い、不思議。
盛り上がってくれないかしら。
添削澄み次第投下しますです。
以下より投下開始します。
>>599 続き。
待ってくれ……。
置いて──行かないでくれ。
まゆり「まゆしぃがオカリンを置いていくわけ無いのです」
まゆり、良かった。
ここは何だか良く解らなくて……まゆり?
ダル「ボク達がオカリンを置いていくわけないっつーの」
ダル、無事か?
一体何が起きて……。
紅莉栖「──岡部。アンタが私達を置いていったんでしょ?」
紅莉栖……?
どういう意──。
後頭部に当る柔らかな感触と共に、意識を取り戻していく。
陽光が目に入り、視界が悪い。
岡部「む……」
シャル「あ、オカリン起きたみたいだよ」
一夏「大丈夫か?」
岡部「まゆ……り?」
光を遮るように、顔を覗いたのは一夏だった。
顔を傾ける。
柔らかく、熱を持った枕。
気付くと岡部はシャルロットに膝枕をされていた。
シャル「ん? まゆり?」
岡部「なぜ、こんなことに……」
当然、膝枕についての問いかけだった。
楯無「気絶した男子を介抱するのは、乙女の役目なのよ?」
ひょいと、楯無が顔を出した。
シャル「もー。だったら楯無会長がしてあげれば良かったんじゃ……」
楯無「あら、だっておねーさんの膝は一夏くん専用だもの♪」
軽く流した楯無だったが、シャルにとっては聞き捨てなら無い台詞だった。
シャル「一夏。どういうこと?」
一夏「いっ! いやっ、違うんだ。シャル……? 何で怒ってるんだ?」
シャル「知らない!」
僕だって一夏のことを膝枕したかったよ。と呟く。
勿論、一夏の耳には届かない微かな訴え。
その訴えは岡部の耳には届いていた。
岡部「何だか解らないが、迷惑をかけたようだな。すまない」
好いた男の前で、このようなことをさせて申し訳ない。
岡部はこの手の感覚にはかなり鈍い男であったが、一夏を取り巻く環境については嫌でも気が着いていた。
シャル「あっ、えーっと。どういたしまして……」
シャルが赤面して俯く。
小さく漏らした声を聞かれたことに恥しさを覚えた。
岡部「俺は、失神したのか」
楯無「うん」
岡部「ルール上、降参さえしなければ負けではない。そうだったな?」
楯無「えぇ、そうね」
一夏「凶真……」
一夏は心配だった。
また、岡部が楯無に勝負を挑むのかと。
力量の差は歴然。
楯無が手加減をしているとは言え、続ければいずれ怪我をするだろう。
楯無「……どうする?」
岡部「悔しいが、床に倒すことも至難らしい」
シャル「IS学園生徒会長は学園最強たれ。楯無会長に勝つのはちょっと難しいよ……」
一夏「俺も最初の頃にボコボコにされたっけなぁ」
楯無「あら失礼ね。ちゃーんと手心加えてあげたでしょう? それに私のおっぱ──」
一夏「──んなぁ! 凶真!! さすがに、ちょっとコレを続けるのは良くないと思うんだ」
一夏が大声で無理やり話題を元に戻した。
楯無はチェッと小さく、けれど笑顔で後輩の可愛い狼狽振りを楽しんでいた。
岡部「ワンサマーには心配をかけっぱなしだな……解った」
──俺の、負けだ。
楯無「ん。素直でよろしい。ダメージの方はどう? なるべく残らないように打ったつもりなんだけど……」
岡部「未だに頭が少しぼやけるが……体は驚くほど痛みが無い」
一夏「あぁ、あれ凄かったなー……ええっと、デンプシー?」
楯無「デンプシーロール♪」
楯無はくるくると指で“∞”を描きながら答えた。
左右への高速体重移動。そこから∞の字を描くように頭を振りフックを叩き込む。
楯無はその全てを岡部の顎先を掠めるように当てている。
一夏「ははっ、本当になんでもありだなこの人」
シャル「僕が来たときには、オカリン完全に伸びてたからね」
楯無「はい、倫ちゃん」
ぬるめのスポーツドリンクを差し出す。
健康を考えると、キンキンに冷えた飲み物よりもこの位のものが適温であった。
岡部の体調を配慮しての、ささやかな気配り。
岡部「これは?」
楯無「水分補給。それを飲んだら練習再開!
今日はみっちりやるわよ。特に一夏くん!」
一夏「えっ、俺ですか?」
楯無「そ。今日は久々におねーさんが手取り足取り指導してあげる☆」
一夏「えぇっ、ええっと……そうすると凶真は……?」
楯無「それは勿論、シャルロットちゃんが居るじゃない」
シャル「ふぇ?」
楯無「CQCの心得あるでしょ?」
シャル「まぁ……少しは」
CQC(Close Quarters Combat)-近接格闘-
楯無「こほん。男の子2人とも良い? 良く聞いて」
へらへらとしたムードが一転。
ぴりりとしたものに変わった。
楯無「きっと“亡国企業”は今まで以上に、活動を活発にしてくるでしょう。
一夏くんは元より、倫ちゃん。貴方も確実にターゲットに入ってくる」
身の危険を警告する話題に2人の息が詰まった。
楯無「勿論、生徒会長として。この学園の長として相手の好き勝手はさせやしない。
けれどね? 私の体も1つしかないの」
残念だけどね、と軽く付け足す。
その顔は少女のようにあどけなく、淑女のように上品なものだった。
楯無「一夏くんは経験済みだよね? “ISが呼び出せない”状況を。」
一夏「……っ」
思い出す、学園祭の出来事を。
あるはずの無い兵器“剥離剤”(リムーバー)を使われ、一時的にとは言え“白式”を奪われた苦い記憶。
あの時、一夏はなす術なく暴行を受ける事しか出来なかった。
楯無「勘違いしないでね? 生身でISに挑んで欲しい訳じゃないの。
ううん。そんなことは絶対にしてはだめ。
私の言う体を鍛えるって言うのは、生存率を高めて欲しいということ」
それを頭に入れておいてね。
この言葉で楯無は話題を切った。
──パンパン!
両手を叩き、場の空気を入れ替える。
楯無「倫ちゃんの方はシャルロットちゃんに任せるわね?
一夏くんはそうね……晩御飯の時間までにおねーさんから一本取れなかったらくすぐり10分の刑!」
一夏「無茶な……」
楯無「さー、始めるわよー♪」
わきわきと指を動かしながら、一夏に詰め寄る楯無。
一夏「ちょっと! どう考えてもいきなりくすぐる気満々じゃないですか!!」
楯無「おねーさん知らなーい。えーい!」
愉しそうな楯無の声と、悲惨な一夏の叫び声が午後の学園に響いた。
シャル「えっと……ど、どうしよう?」
岡部「と聞かれてもな……俺には何をすれば良いのかすらさっぱりだ」
シャル「だよね……えーっと“生存率”を高めるために。かぁ……」
ぶつぶつと楯無の言葉を反芻し意味を確かめるシャルロット。
そんなシャルロットを見ていた岡部が不意に言葉を漏らした。
岡部「なんだ。その……悪かったな」
シャル「で、だから──……えっ? ごめん、聞いてなかった」
岡部「あーいや。ヂュノアからしたら、ワンサマーと組み手をしたかったろう。と思ってだな……」
シャル「ええぇっ!? えっ、えっー!?」
一瞬にして透き通るように白い肌が赤く染まる。
確かにそんな事を思ってもいたが、まさかそれを指摘されるとは露とも思っていなかった。
シャル「(えっ!? えっ!? なんで、どうして? 何で知ってるの!?)」
脳内で小さいシャルロット達が円卓を囲み会議を始める。
あーでもない、こーでもないと言い合いをするも結果はまるで出てこない。
シャル「なっ、なんでそー思うの、かな……?」
岡部「何でも何も、ワンサマーを好いているの──ぉぉ!?」
全てを言い終える前に、岡部の重心はシャルロットの前足により崩され後方に倒れた。
すかさず、後頭部を打ち付けぬよう白く滑らかな掌が畳との間に割ってはいる。
もう片方の手は岡部の口を完全に塞いでいた。
シャル「なななな、何を言ってるノカナー? あはは」
引きつった笑い声が岡部に届く。
恋する乙女の秘密は、口にしてはいけない。
例え、それがどんなに周知の事実であろうとも。
岡部「……」
こくこくと、岡部が頷きアイコンタクトを送る。
解った。俺の勘違いだったようだ、と。
シャル「んんっ! もうっ、オカリンったら急に変なこと言い出さないでよね」
岡部「悪かった……」
内心、今の動きの早さに動揺を隠し切れなかった。
なんだこの学園の女生徒は。皆が皆、あのような動きを涼しい顔でこなすのかと。
シャル「でも。今ので何となくの課題が見えたね?」
岡部「?」
シャル「防御、回避に重点を置こう」
岡部「それと今のやりとりの何が関係するんだ?」
シャル「あの程度の足払いを避けれないようじゃダメってこと」
岡部「……なるほどな」
あの全てを刈り取るような足払いを、あの程度扱い。
自らがその攻撃を華麗に回避する様を岡部は想像出来なかった。
シャル「じゃぁ僕が軽く攻撃していくから、オカリンはそれを避けてね。
思い切りは打たないけど、当ると痛いと思うからちゃんと避けないとダメだよ?」
全てにおいて気遣いを感じられるシャルロットの言葉。
何と無しに、優しさの方向がまゆりと似てる気がして岡部は嬉しくなった。
無論、まゆりがここまで気の利く娘だと言うわけではなく雰囲気的なものだった。
岡部「よろしく頼む」
シャル「うん。じゃぁ行くよー」
──ヒュッ!
岡部「え?」
──パカン!
シャル「え?」
軽く放った、左のジャブが岡部の鼻っ面を叩いた。
ツーっ、と鼻血が滴る。
シャル「わっわっ!」
岡部「鼻血……か」
シャル「ご、ごめんね!? 当るとは思わなくって……」
それもそのはずで、シャルロットは岡部と楯無のやり取りを観戦していない。
彼女の中で、岡部は最低でも一夏程度のフィジカルを持っていると勘違いしていた。
恋する乙女の補正により、両者が戦えば一夏が勝利することは揺るがないが。
岡部「いや、痛みはさほど無い……」
シャル「ティッシュ、ティッシュ。あった! はい、これ使って!」
ティッシュを差し出された岡部はそれで鼻血を拭った。
ぼーっとどうでも良い事が脳裏に浮かぶ。
大人しそうなシャルロットですらこのレベルの攻撃をさらりと繰り出す。
2度だか3度だか忘れてしまったが、秋葉原に居たチンピラがいやに可愛く思えてくる。
シャル「大丈夫……?」
心配そうに顔を覗いてくる。
その顔は均整がしっかりととれていて、肌も白く金髪がイヤらしく無い。
ダルがラボでよくプレイしていたゲームなどに出てくる、西洋の美少女そのままだった。
岡部「だ、大丈夫だ。問題ない」
シャル「ほんと?」
19回目の誕生日を既に迎えている岡部にとって、高校1年生など年下も良い所で異性として意識すること自体、
何か後ろめたいものを感じ顔を逸らしてしまう。
岡部「中断して済まなかった、さぁ続きをやろう」
シャル「本当にもう大丈夫? オカリンが良いって言うなら良いけど……」
岡部「うむ。あちらで、ワンサマーも頑張っている」
一夏「ぎゃあああああああああああああああああ」
シャル「そう……だね、あはは……」
岡部「俺の反射神経、運動力の低さは異常だ。根を上げずに付いて来れるか?」
シャル「ぷぷっ、何それ。面白いねオカリンって」
顔面へ迫る左右の突き。
忘れた頃にやってくる足払い。
シャルロットの教官としての腕前は楯無の期待した以上のもので、岡部の実力を与して抑えられている。
段々と避けられるようになる攻撃。
避けれないと判断すれば、腕や足で防ぐ。
夕暮れになるころには、それなりの動きが見に付いていた。
1日でどうこうなるものではなく、あくまでそれなりにではあるが大した成果と言える訓練だった。
岡部「はぁ、ふぅ。ふぅ、はぁ」
途切れ途切れになる呼吸。
17時を回る頃には岡部の体力は底を付きかけていた。
シャル「うーん、結構頑張ったかな?」
防御行動だけの岡部とは違い、力加減や動き方を指導していたシャルロットは倍以上の運動量だがケロりとしている。
特に息の乱れも無く、汗も少量しかかいていなかった。
楯無「はーい、お疲れさまー」
一夏「痛ててて……」
陽気な楯無と、ぼろぼろの一夏が2人のもとへと戻ってきた。
シャル「お疲れさまです。会長ご機嫌ですね? 何か良いことでも?」
楯無「一夏くんがおねーさんにマッサージしてくれるんですって♪」
シャル「へ、ぇ」
一夏「……えっと、シャルロットさん?」
シャル「なに、織斑くん?」
一夏「(怒ってる。なんでかサッパリ解らないけど、シャルのやつ怒ってるよな?)」
楯無「おねーさんから一本も取れなかった罰に、くすぎりの刑を予定してたんだけど。
マッサージで簡便してくれって言うの」
シャル「へぇ。そうなんですか」
一夏「(うぐっ、シャルの目が笑ってない……まずい)」
一夏「あの──さ、シャル」
シャル「……」
一夏「シャルも今日は疲れたろ? 良かったらマッサージしてやろうか……なんて、イヤいらないよな、そんなもん」
シャル「──え?」
一夏「ごめんな、変なこと言っ」
シャル「いっ、今なんていったの!?」
聞き返すシャルロット。
その声はとても大きく、岡部が肩をすくましている。
楯無は、くすくすと笑っていた。
一夏「えっと、ごめんな?」
シャル「じゃなくって! その、マッサー……ジ、してくれるの……?」
頬が朱に染まり、上目遣いで一夏を見つめる。
一夏「ん? あぁ、まぁシャルが疲れてたらなんだけど」
シャル「う、うん! 僕今日すっごく疲れちゃって、や、やー助かっちゃうなー?」
一夏「そうか、なら後で俺達の部屋に来てくれよ。マッサージするからさ」
シャル「うん! や、約束だよ?」
そう言って、シャルロットは小指を一夏に差し出す。
げんまんの約束をする際のおねだりだった。
一夏「ん? 指切りするほどのことじゃ──」
シャル「や、約束だからね!」
一夏「お、おう」
シャル「指切りげんまん、ウソついたらクラスター爆弾のーますっ♪」
毎度おなじみの決まり文句をつける。
先ほどまで膨れっ面だった、シャルの顔はもうご機嫌そのものだった。
シャル「指切った♪」
一夏「おう」
シャル「えへへ」
その様子を見ていた、岡部がポツリと呟く。
岡部「これが10代女子というものか……」
楯無「あら、倫ちゃん。私もシャルロットちゃんと1歳しか違わないんだけど?」
岡部「そうか……」
楯無「倫ちゃん。食事の前に10キロマラソンね?」
岡部「……なっ!?」
楯無「これは意地悪じゃないの。本当に。
自分の体力の無さ覚えてる? これからは毎日朝晩10キロマラソン。生徒会長命令だからね♪」
岡部「……」
岡部にとっての本当の地獄はここからだった。
おわーりでございます。
来週一週間は朝4時に起きて仕事に行き、夜8時に帰ってくる生活になります。
もしかしたら投稿が遅くなる可能性があります。
そして全く物語が進まない。
なんなの……。
最後までプロットあるのにそこまでの道のりが長すぎて失神しそうです。
それでは、
本日もありがとうございました。
>>1です。
皆さんありがとうございます。転職頑張ります!
さっそく、今日の投稿を添削が終了次第投下しますです。
間が空いて申し訳ありませんでした。
>>650 続き。
牧瀬紅莉栖は上機嫌だった。
IS学園に付く頃には夕飯時を過ぎていたが、牛丼さんぽにて早めの夕食を済ませていたのでさほど問題でも無かった。
門を潜り、学園内へ。
紅莉栖「(今日は楽しかったな。後で岡部に嫌がらせ半分で話しをしてやろう)」
なんてことを考えながら歩いていると、体育アリーナでランニングをしている人影が目に入った。
遠目で見た限りでも酷くよたついており、いつ倒れても不思議ではなく見えた。
紅莉栖「休日だって言うのに熱心な子も居るのね。岡部も見習って──」
ふらふらと走り続けている影の身長は高く、紅莉栖の見知った人間だった。
紅莉栖「岡部……」
岡部「ぜひっ、ぜひっ……はっはっー……」
首と両手はだらしなく垂れ下がり、もはや前を見て走っていない。
肌寒い季節になってきたと言うのに、大量の汗をかいていた。
紅莉栖「ちょっと、大丈夫なのアイツ……」
岡部「あっ、あっ……ひっは、ひっは……」
──ぼてっ。
紅莉栖「あっ」
足がほつれて、前のめりに倒れこむ。
良く目を凝らすと、岡部の服装は土埃で大分汚れていた。
何度も倒れたのだろうと容易に想像がつく。
岡部「あー……はぁ、もう、無……理だ」
紅莉栖「ギブアップですか? 鳳凰院凶真さん?」
後方から声がかかる。
この学園で岡部にとって最も馴染みの深い声だった。
岡部「助手か……」
紅莉栖「うむ。ただいま帰った」
岡部「ラボの様子はどうだった」
紅莉栖「第一声がそれか。いいから、立ちなさいよ。ん」
そう言って、手を差し出す。
岡部は一瞬躊躇ったが大人しく手を借り、立ち上がった。
シェイクハンドすら拒んでいた時とは比べ物にならないなと、自嘲気味に口元が歪んだ。
岡部「すまんな」
紅莉栖「どんだけ走ってるの?」
岡部「トラック1週が1キロだそうだ。今8週目……あと2週だ」
紅莉栖「10キロマラソンか。平均的な成人男性だと1時間位かかると言われてるわね」
岡部「いちっ!?」
紅莉栖「ん? ……アンタ、今何時間走ってる?」
ちらりと岡部が時計を流し見た。
走り始めてから2時間が経過しようとしている。
岡部「……ランニングの前にもそれは酷い拷問を受けていてだな」
紅莉栖「はいはい、言い訳乙! 見ててやるから、残りの2週してきちゃいなさいよ」
岡部「み、見られていると本来の力がだな!」
紅莉栖「いーから、さっさと行く!」
岡部「くっ……覚えていろよ助手……」
岡部は再び重い足を前に出し、走り始める。
紅莉栖と会うまでより足の重さが軽くなっていたが、その理由は解らなかった。
紅莉栖「よいしょっと……」
階段に腰をかけて、走り続ける岡部を見つめる。
ひたすらに走り続ける岡部を見るのは悪い気がしなかった。
紅莉栖「そうだ、飲み物買っておいてやるか」
残り二週。
今の岡部の体力を考えるならそう簡単に走破はしないだろう。
紅莉栖はさっさと食堂へ向かい、ドクトルペッパーを2本購入した。
岡部「ぜひっ、ぜひっ……おわっ、終わった……」
紅莉栖「はいお疲れ様」
岡部「かっ、軽く言う、なっ……並みのお疲れじゃないぞ……まったく……」
ぜひぜひと呼吸を乱しながら反論をするが紅莉栖は聞き入れない。
紅莉栖「ドクペ買っておいたわよ」
岡部「はぁはぁ、気が利くではない──」
ドクトルペッパーを受け取ろうと手を差し出したが、岡部にとってとんでもない情景が目に映った。
──シャカシャカシャカ。
紅莉栖が缶を縦にシェイクし始めたのだ。
岡部「なっ、なっ、何──を」
紅莉栖「ん? 炭酸抜いてるのよ」
──プシュッ! ジュプジュプ……。
プルタブを空けると、炭酸が気化しその勢いで中身が少しばかり零れた。
紅莉栖「ちょっと濡れちゃった。ま、良いか。はい、岡部」
岡部「い、嫌がらせか……?」
紅莉栖「? 何を言ってる。運動直後に炭酸バッチリのドクペなんて体に良いわけ無いでしょ。
スポーツドリンクを素直に飲めば良い話しだが、こっちの方が良いでしょ? ほら、飲みなさいよ」
岡部「ぐぬぬ……炭酸抜きコーラではなくドクペとは……」
紅莉栖「後はこの後に、おじやを食べれば完璧ね」
岡部「それは結構だ」
軽口を叩きあっていたが、紅莉栖の心遣いは岡部の心に温かいものを落す。
日が翳っていたお陰で、頬の肉が僅かに緩んだことがばれずに済んだと内心ホッとした岡部であった。
ぐい、と気の抜けたドクトルペッパーを飲み干す。
紅莉栖は自分の分をチビチビとあおっていた。
紅莉栖「どうすんの? シャワー浴びて食堂?」
岡部「む……相変わらず食欲が無いんだが」
紅莉栖「これはますます、おじや。それにバナナを……」
岡部「何時まで同じネタを繰り返すのだ天丼娘よ」
紅莉栖「む。まゆりがお土産にバナナをくれたのよ」
ガサリ、スーパーの袋に包まれたバナナを岡部に見せる。
バナナが2房入っていた。
岡部「そうか……まゆりが。
ならば夕食はバナナにするとしよう」
紅莉栖「牛乳とバナナ、後はラウラに貰ったプロテインをシェイクすれば栄養的には完璧ね」
岡部「そうだな、プロテインだな……」
ラウラから飲んでおけと、半ば強制的に手渡されたプロテイン。
毎日それを牛乳や豆乳に溶かして飲んでいた。
味は悪くないし、腹持ちも良い。
今の岡部にとっては理想的な栄養素を全て取れる大変優れたものである。
岡部「俺は今から恐ろしい。眼帯娘は俺に一体何をする気なのだ……」
紅莉栖「考えすぎよ。岡部の身体を思ってのことでしょ」
岡部「そう、だな。飲まないとな……」
─自室─
楯無「んー気持ち良かった♪」
一夏「それはどうも」
一夏のベッドの上で寝転んでいた楯無が大きく背筋を伸ばした。
一夏「さ、次はシャルだな。ここに寝てくれ」
シャル「う……うん」
シャルロットは下に深く俯いている。
楯無がマッサージを受けている姿を見て、次は自分の番だと想像している内にみるみると頬が紅く染まってしまっていた。
シャル「(よ、よよよよし! 次は僕の番だ……)」
ギクシャクと、同じ側の手足が同時に出てしまう。
楯無「(ナンバ歩き……)」
一夏「よっと、じゃぁ足から行くからな?」
シャル「おおお、お願いしまう!」
一夏「力抜けよー」
ぐっぐっ、と足の裏からの指圧が始まった。
慣れた手つきで体をほぐしていく。
シャル「(はうー気持ち良い……一夏の手って暖かくて大きくて……」
一夏「(さすがシャルだ。全体的に引き締まって……いかんいかん! 集中。集中)」
楯無「うふふ。後はお若い2人に任せておねーさんは帰るわね。
それと一夏くん。良かったらまた倫ちゃんのマッサージもお願い。
きっと足がパンパンになってるはずだから……」
一夏「あ、はい。薬もまだ残ってるから大丈夫です」
楯無「ん。今日はお疲れ様。一夏くんも早く寝るのよ? おやすみ」
そう言って楯無は部屋を出て行った。
一夏「凶真頑張ってたもんな、帰ったらきっちり筋肉ほぐしてやらないと」
シャル「(わわわっ! 一夏と2人っきりになっちゃった!!)」
一夏「そう言えば、シャル」
シャル「は、はひ!?」
緊張と嬉しさの中でつい声が上ずってしまった。
一夏に自分の動揺がバレたかと思い、さらに頬が紅く染まる。
一夏「凶真はどうだった?」
半分期待していたシャルロットだったが、一夏の口調は何時も通りの唐変木っぷりだった。
シャル「あー、うん。えっと……」
全く関係無い想像をしていたので回答に詰まる。
“高速切替”(ラピッド・スイッチ)よろしく、瞬時に脳内を切り替えた。
シャル「一夏ほどではないけど、筋は良いと思うよ。運動音痴って訳じゃなくて、今まで運動をしてこなかったんだろうね」
一夏「そっか、シャルが言うなら間違いないな」
シャル「えへへ……あっ、一夏……そこ、気持ち良い……」
一夏「ん? ここか?」
肩甲骨を指圧する指に力が入る。
どうやらその部分がこっていたらしく、シャルは何ともだらしのない声をあげる。
シャル「はぅー……きもひーぃ……」
──ガチャ。
唐突に開かれる扉。
岡部が入室したと同時に、聞こえてくるシャルロットの嬌声らしきもの。
誤解するには充分な要素が揃っていた。
岡部「……」
シャル「……」
岡部とシャルロットの目線が交差する。
シャル「あの、あのっ、えっと……」
岡部「部屋を間違えたようだ」
紅莉栖「ちょっと、どうしたのよ?」
岡部の後ろから紅莉栖の声も聞こえてくる。
シャルロットの顔は最早ゆでタコのように真っ赤だった。
一夏「お、凶真おかえり! おつかれ!」
シャル「はうー……」
岡部「あ、あぁ……ランニングが今終わってな……」
紅莉栖「お邪魔しまー……」
一夏は気にせず、背中を指圧している。
ゆでタコになったシャルロットは枕に顔をうずめて、うーうーと呻いていた。
紅莉栖「……つまり、どういうことよ」
岡部「俺に聞くな……」
一夏「ん? あぁ、シャルにマッサージしてやってるんだよ」
岡部「そうか、マッサージだったか……」
紅莉栖「中々衝撃的な絵ね……」
一夏「あとちょっとで終わるからさ。そしたら次は凶真もマッサージしてやるから」
紅莉栖「(何て良い子なの……女子の身体を揉んでいると言うのに、すでに岡部の身体を考えているなんて)」
岡部「……お言葉に甘えるとしよう。情けない事に足が棒のようだ」
年下のルームメイトに何度もマッサージをさせると言うのは、岡部なりの何かが抵抗していたがそれ以上に身体は疲弊している。
岡部は素直に一夏の提案を受け入れた。
一夏「それじゃ、先にシャワー浴びてこいよ」
岡部「うむ。そうするとしよう。」
岡部はよたよたと足を引きずりながらシャワールームへと入っていく。
それを見届けた紅莉栖は、袋からバナナを取り出した。
紅莉栖「私は夕飯の用意をしておきますか」
一夏「夕飯?」
紅莉栖「食欲無いって言うから、プロテインバナナシェイクを作ってやろうと思ってね」
一夏「へぇ、そいつは美味そうだな」
紅莉栖「一夏も飲む?」
一夏「作ってくれるのか? ありがたい」
紅莉栖「任された。っと、食材がちょっと足りないわね……時間ギリギリか。
ちょっと購買へ行って買って、そのまま調理室で作ってくるわね」
一夏「おう、いってらっしゃい」
紅莉栖「いってきます」
バナナとプロテインを持ち、紅莉栖が部屋を飛び出していく。
その一夏の下で顔を真っ赤にしていた、シャルロットが起き上がった。
一夏「お、どうした? もう良いのか?」
シャル「う、うん……ありがと」
情けない声を一夏以外の人間に聞かれてシャルロットは心底恥しさを感じていた。
顔は未だにゆでタコ状態である。
シャル「(あぅ……オカリンと、それに紅莉栖にも聞かれたよね? 恥しいなぁ……)」
シャル「今日は帰るね。一夏、マッサージありがとう」
一夏「ん。どういたしまして、またな」
シャルは俯き、顔を隠しながら部屋を出て行った。
廊下ですれ違った女生徒が、顔を真っ赤に染め、早歩きで一夏の部屋から出て行く様を勘違いしたのは言うまでもなかった。
一夏「プロテインバナナシェイクか……美味そうだな」
暫く待っていると、紅莉栖が帰ってくる前に岡部がシャワールームからガシガシと頭を拭きながらベッドに腰を下ろした。
岡部「ふう……む、ヂュノアと助手はもう帰ったのか?」
一夏「シャルはもう帰ったよ。紅莉栖はバナナプロテインシェイクを作りに行ったぜ」
岡部「そうか、作りに……つく!?」
一夏「ん? どうかしたか?」
岡部「わ、ワンサマー。助手は何と言って出て行った?」
一夏「え? ええっと……食材が足りないから、購買で買って調理室で作ってくるって」
岡部「……」
岡部は頭を抱える。
顔面はみるみると蒼白になり、心なしか震えが見えた。
一夏「凶真……?」
岡部「いや、なんでもない。恐らく牛乳を買いに行ったんだろうな、うむ」
一夏「牛乳でバナナシェイク作ったら美味いもんなぁ」
岡部「あぁ、牛乳とバナナで作って不味いドリンクなど出来る訳が無いからな」
岡部は笑顔を取り繕った。
おそらく、この学園に来て初めて作ったであろう笑顔は引きつっていた。
一夏「楽しみだなぁ」
一夏のこの一言が、どんな言葉よりも岡部の胸に深く突き刺さった。
おわーり。
本日もありがとうございました。
書きあがり次第また来ますです。
>>1です。
せふせふ、今日も投下出来そうです。
ペース守るの難しー。
ちょっぴり短めですが添削終り次第きまう。
>>714 続き。
紅莉栖「~~♪」
鼻歌交じりに廊下を闊歩する紅莉栖。
傍目から見ても気分は上々のようだ。
紅莉栖「(調理と言うには、物足りないけれど……久しぶりね。岡部のやつ喜ぶと良いな……)」
ふふふっ。と笑みを浮かべながら購買へと足を向ける。
廊下の角を曲がると見知った顔と目が合った。
セシリア「あら、紅莉栖さん?」
紅莉栖「セシリア」
クラスメイトであり、ルームメイトであるセシリアと出くわした。
岡部を除けばルームメイトであるため、実は一番話をしている人物でもあった。
セシリア「こんな時間にいかがいたしましたの?」
紅莉栖がぶら下げている、スーパーの袋に目を落としながら訪ねる。
紅莉栖「ちょっとね。岡部と……ついでに一夏にバナナシェイクをご馳走してあげようかと思って」
セシリア「まぁ……一夏さんにも?」
紅莉栖「岡部が食欲無いからなんだけど、そう話したら飲みたいって言ってきてね」
セシリア「それでしたら! 私もお手伝いいたしますわ!」
紅莉栖「そう言えば、セシリア“も”料理が得意って言ってたわね」
セシリア「えぇ! これでも少しは腕に自信がありましてよ?」
紅莉栖「……そうね、じゃぁ一緒に購買へ行って買い物をしてから調理室に行きましょう」
セシリア「久々に腕がなりますわ。一夏さんの喜ぶ顔が目に浮かびますわね♪」
こうして2人は仲良く、料理の話しをしながら購買部へと向かった。
紅莉栖の得意料理は“アップルパイ”であり、セシリアの得意料理は“卵サンド”など他愛も無い料理話しに華を咲かせた。
紅莉栖「──でも、卵サンドが得意ってなんだか珍しいわね」
セシリア「いいえ、紅莉栖さん。素材の味を殺さずに引き立てなければいけない卵料理は得てして難しいものなのですわ」
紅莉栖「なるほど……勉強になるわね」
2人の購買への足取りは実に軽いものであった。
─購買部─
セシリア「それで……一体何を揃えるおつもりですの?」
紅莉栖「んー、基本はプロテインとバナナと牛乳。後は、肉体疲労を回復させるためにその条件を満たす食材を隠し味に」
セシリア「なる……ほど、では私も見繕ってみますわね」
紅莉栖「うん。別々の効能があっても面白いし、そうしましょう……っと、あった。梅干」
セシリア「疲労回復……といえば、やはりトマトですわ」
それぞれの思惑を孕みながら買い物は10分程で終了した。
野菜、果物、肉類等々……およそドリンクとは無縁と思える食材が袋に詰められていく。
紅莉栖「さっ、後は調理するだけね。今頃、岡部が一夏にマッサージを受けてる頃合だし作って完成して丁度良い時間ね」
セシリア「参りましょう」
2人の後姿は勇壮に見えるほどに気合が入っていた。
─調理室─
紅莉栖「フライパンはどこにあるのかしら」
セシリア「紅莉栖さんはスチームコンベクションをお使いになられますかしら?」
紅莉栖「大丈夫よ。今回はそれほど手間のかかるものじゃないから、フライパンとミキサーがあれば」
セシリア「でしたら、私1人で使わせて頂きますわ」
紅莉栖「OK」
紅莉栖は熱したフライパンにオリーブオイルを垂らすと、種を取った梅干を炒め始める。
負けじとセシリアも何故かスチームコンベクションにトマトを放り込んだ。
紅莉栖「豚肉には高い疲労回復効果がある。そして梅干の酸味は食欲を引き出す……と」
セシリア「やはり、赤い色をしていた方が良いんですわよね……」
お互いに自分の世界へ入り込み、ぶつぶつと声を出しながら調理していく。
熱された梅干の香り。
セシリアの使う赤い調味料達が放つ酸味や辛味の混じった香り。
その他の匂いが調理室に充満していく。
紅莉栖「後は、これを混ぜて……」
セシリア「裏ごししたこれらを混ぜて……」
ほぼ同時に2人が最後の仕上げ。
ミキサーでのシェイク作業に入った。
紅莉栖「セシリアのは……随分と赤いわね?」
セシリア「紅莉栖さんのは、少し茶味がかってますわね?」
紅莉栖「結果的に茶色が強くなってしまったけど、効果はばっちりのはずよ。
健康面を考えて大豆等の植物性たんぱく質も入れたしね」
セシリア「うふふっ。御ふた方の喜ぶ顔が今から楽しみですわね♪」
翌日、この調理室から異臭騒ぎが広がりしばらくのあいだ使用禁止となる。
調理場から検出された食材からも、この異臭の原因となる物質は発見されず、理由は解らず仕舞いとなった。
─自室─
一夏「よっと……こんなもんか」
ふう、と一息ついて腕の動きを止める。
足裏から始まったマッサージは、すでに首筋まで終わっていた。
岡部「助かった。だいぶ身体が楽になった……」
一夏「楯無さんがくれた薬の効果だろうな。すげー効きそうだもん」
軟膏でべたべたになった手を洗いながら一夏が答える。
薬の効果は勿論だが、それを手で浸透させる作業。
マッサージが一番効果を上げていることを岡部は解っていた。
岡部「(この男に礼を言っても、暖簾に腕押しのようだな……)」
ありがとう“一夏”。
と心の中で岡部は礼を言った。
一夏「それにしても、遅いな」
岡部「……」
この一言で、マッサージの心地良さに浸っていた岡部の表情が固まる。
一夏「プロテインバナナシェイク……だよな? ミキサーに入れるだけなのに、もう30分近くたつぜ?」
岡部「お、女には色々とあるのだろう……うむ」
一夏「?」
岡部の戸惑いを理解出来ない一夏は首を傾げることしか出来なかった。
──コンコン。
控えめなノック音に2人が振り返る。
一夏は笑顔で、岡部はドアから顔を背けていた。
紅莉栖「ハァイ。少し、時間がかかっちゃった」
一夏「おかえり、紅莉栖。って、セシリアも一緒じゃないか。どうしたんだ?」
セシリア「偶然にも紅莉栖さんと居合わせまして、お手伝い致しましたの」
一夏「……セシリアも作ったのか?」
セシリア「えぇ! このセシリア・オルコットが一夏さんの為に特製のプロテインジュースをこさえて差し上げましたのよ!」
一夏「……」
紅莉栖「セシリアって料理上手なのよね、参考になるお話を沢山聞いちゃった」
セシリア「うふふ。紅莉栖さんこそ、博識でいらっしゃってタメになりましたわ」
岡部「……」
紅莉栖とセシリアはニコニコと顔を向けながら笑みを浮かべた。
一夏「えっと……俺の分は紅莉栖が?」
紅莉栖「もう。女子の話しはちゃんと聞いてなきゃダメよ一夏。貴方の分はセシリアが作ってくれたわ」
岡部「では、俺の分は……」
セシリア「もちろん、紅莉栖さんですわ」
そう言うと二人はドン。とテーブルに2つの透明なタンブラーを置いた。
片方は茶色の濁った液体。
もう片一方は真紅に染まった血の色のような液体だった。
セシリア「さ、一夏さん。赤い方が私のですわ」
紅莉栖「岡部、茶色の方が私の。そ、その……栄養とかちゃんと考えたから……身体に良いと、思う……」
ゴクリ。
生唾を飲み込む音が、2人の喉元から響いた。
ヒュッ────ッパ!!
もの凄い勢いで、部屋の主達が行動を同時に開始した。
紅莉栖「あ!」
セシリア「え!」
岡部の手元には赤い液体の入ったタンブラーが。
一夏の手元には茶色い液体のタンブラーがそれぞれ握られている。
岡部「フゥーハハハ! Ms.シャァーロックよ。真紅の液体はこの鳳凰院凶真にこそ相応しい!!」
一夏「いやぁー! さっきトマトジュース的なの飲んじゃったからさ、ちょっとこっち飲んでみたいかなーって!!」
岡部「(すまん、ワンサマー。貴様には礼を言っても言い切れない程の恩と、友情を感じている。
感じてはいるが……これは──)」
一夏「(わりぃ、凶真。疲れてるってことは知ってる。大事な仲間だとも思っているぜ。
だけど、だけど……これは──)」
「「((これは、絶対に譲れない!! それだけは飲めない!!)」」
紅莉栖「ちょっと、おか──」
セシリア「お待ち下さい、いち──」
2人の調理者が何かを訴えかける前に漢達はタンブラーを傾けた。
──ゴッゴッゴッ。
まるで、壮年の男が一気にビールを喉に流し込むような。
そんな爽快な飲みっぷりを披露する漢2人。
岡部「ぶはぁっっ!!!!」
一夏「おえっぇえ!!!!」
──ブバッ!!
──オロロ……。
赤い噴水と、汚濁した滝が流れた。
紅莉栖「ふぁっ!?」
セシリア「きゃっ!?」
その光景に驚き、慌てふためく2人の女子。
一体何が起きたか解らず、ただただその情景を見ることしかできなかった。
岡部「な゛ん゛っだごれ゛ば! 辛い゛……痛い゛、ずっぱい……舌ががが、喉が、食道がっが、胃がっ……」
喉を押さえのたうち回る岡部。
目は充血し、顔もみるみると真っ赤に染まっていく。
一夏「おぇぇぇえぇ……おろろ……ぶぶぶぷっ……おぅ、む、無理だ……ごぁっ……」
びしゃびしゃと、飲み干したはずの液体が逆流いていく。
胃が飲み込んだ異物を“毒”だと判断し、強制的に吐き出させる生理現象。
部屋が汚れるとは解っていても、止めることは出来ない。
紅莉栖「えっえっ?」
セシリア「いったい、なにが……」
のたうち回る男と、嘔吐をし続ける男。
異様な光景が女子の目に映る。
岡部「く、ぐり゛ず……い、いっだい何を……何を作った……」
一夏「せしり……うぷっ、な、何を凶真の方に、にに、いれ……うぷ」
紅莉栖「え、えっと……プロテインとバナナと牛乳だけじゃ味気ないと思って……」
梅干、豚ばら肉、納豆。
何故か梅干と豚肉を炒め、納豆は刻んでヒキ割りにしてからミキサーにかけたのだと言う。
岡部「なぜ……ぞんんがごどお」
紅莉栖「梅干は最近、岡部が食欲無いって言うから……。それに豚肉には、疲労回復効果があるのよ!
納豆にもちゃんと理由があってだな……大豆イソフラボンは──」
岡部「も、もーいひ……わんはまー、ふまん……」
一夏「せしり……はわっ。なにをしたんだ……」
絶えず襲ってくる嘔吐感と戦いながら一夏は問い掛ける。
セシリア「え。わ、わたくしも同じですわ」
初期材料に加えたのは、何故かスチコンで焼いたトマトと赤ワイン。それに調味料。
セシリア「すこしばかり赤みが足りなかったのでタバスコや、ハバネロビネガーなどを足しましたが……」
一夏「はばね゛……うぷっ、凶真、ごべ……おろろ」
困惑する女子。
痙攣し始める男子。
紅莉栖「ど、どうしたの?」
セシリア「一体何が起こりましたの?」
理由が解らないとばかりに問い詰める。
が、もはや問いに対する回答を行うだけの力は2人には無かった。
岡部「すはないは……」
一夏「きょうっ! ……うっ、は帰ってくれないか……」
セシリア「はぁ……。お2人とも体調が悪いようですし」
紅莉栖「放って置けるわけ無いじゃない」
岡部「たほむ、帰ってくれ……」
一夏「おねがっ……がいだ……」
何度か同じようなやり取りを繰り返したが、2人の必死さが伝わり紅莉栖とセシリアは部屋を退散した。
せめて、部屋の掃除だけでもと言い出したがそれすらも拒まれた。
女子が帰り、嘔吐物により酸味やら臭みやらが充満した部屋に男2人が残った。
岡部「わんはまー……」
一夏「凶……っ魔……」
すまなかった。
ごめんな。
2人が謝罪の言葉を出したのは同時だった。
ヨーグルト風味のプロテインとバナナと牛乳。
どうしたら、これらを合わせた飲料があぁなってしまうのだろう。
岡部と一夏はぐるぐると混濁した意識の中でそれを考え、何時の間にか意識を失っていた。
20時前だと言うのにこうして休日であるはずの、土曜の夜は更けて行った。
オ・ワーリ。
本日もありがとうございました。
また投下分書けましたら投稿しにきまう。
おやすみなさい。
こんにちわ>>1です。
今日はちょこちょこと頻度をあげて更新していく形になると思いますです。
準備が出来次第ちょこちょこと。
>>747 続き。
朝日が顔を射し、その眩しさによってまどろみつつも意識が覚めていく。
冬も間近とあって肌寒く、布団を頭まで被りなおした。
──ふにゅ。
何か、暖かく柔らかいものが手に収まる。
ふにゅふにゅと感触を確かめると、とても気持ちの良い弾力が手から伝わってきた。
「んんっ……」
聞きなれた声が布団から漏れる。
この声は……。
一夏「……っっ!!!」
一夏の脳は一気に覚醒した。
ベッドから飛び起きて、布団からはい出る。
ラウラ「どうした……?」
一夏「ラウラ……お前、また」
ラウラ「夫婦が同じ布団で寝るのは当然のことだろう?
それに一夏も……今日は、その……触ってきたではないか……」
ラウラが頬を染めて俯く。
恥じらいを含む顔は、どこか嬉しさも帯びていた。
一夏「(触った? どこを? やべぇ、半分寝てて良く解らない……)」
以前からラウラは一夏のベッドに潜り込む習性があった。
昔は全裸だったが、今は一夏の懇願のもとパジャマ姿……動物をあしらった可愛いものを着込んでいるのが唯一の救いだった。
一夏「凶真が来てから潜入してくることも無かったし、驚かせるなよ……」
ラウラ「倫太郎が邪魔だと言うのなら、今すぐ始末するが」
一夏「そういう意味じゃない!」
岡部「……」
この騒ぎの中、寝ていられるほど岡部は豪胆な男ではない。
暫く前から2人のやりとりを、やれやれと眺めていた。
この当り、一夏を取り巻く女性関係に付いては岡部も学習してきている。
ラウラ「しかし驚いたぞ。部屋に入ってきたら汚物だらけだったからな」
一夏「あっ……」
岡部「(そう言えば、そのまま眠ってしまったな……)」
ラウラ「全く、だらしのない嫁だ。私が全て片付けておいたが、文句はあるまいな」
一夏「えっ、マジで? ラウラが掃除してくれたのか?」
ラウラ「掃除など容易いことだ。嫁の寝室が汚れていては、夫として恥だからな」
岡部「ほう……」
キョロキョロと室内を見回すが、岡部や一夏が噴出した液体はどこにも見当たらない。
2人が眠って(意識を失って)いる間に綺麗にしたようだ。
一夏「えっと、サンキューな……」
ラウラ「べ、別に私がしたいからそうしたまでだ」
ほんのりと頬を染めたラウラはそのままベッドを抜け出し、とてとてと可愛い足取りで冷蔵庫へと向かった。
何かを取り出し、一夏と岡部に手渡す。
透明なタンブラーに入った乳白色の液体だった。
一夏「これは……?」
岡部「一体……?」
ラウラ「冷蔵庫に、牛乳とバナナがあったから勝手に使わせてもらった。プロテインを混ぜてシェイクしたものだ。
朝食とは別に栄養補給をしておけ」
プロテインジュース。
昨日の悪夢が2人の脳へとフラッシュバックする。
痛み。辛さ、酸味。
異臭放つ毒物。
身体が、脳が拒否をする飲料と呼べぬ汚濁した水分。
岡部は痛みを。
一夏は嗅覚がその異臭を言語と共に思い出させる。
ラウラ「どうした? 早く飲め。起き抜けは水分が不足しがちだ」
毒も入れてはいないぞ、と付けたすラウラを横目に岡部と一夏がアイコンタクトを送りあう。
どうする? どうしよう?
答えはでない。
岡部「(しかし……)」
一夏「(匂いは……)」
タンブラーから漂ってくる香りは、バナナの成熟した甘みだった。
顔を近づけてみても、目に染みないし嘔吐感も襲ってこない。
2人は意を決して一口分を含み、飲み込んだ。
──ごくん。
岡部「……これは」
一夏「……美味い」
ラウラ「当然だ。そんな物を不味く作れるはずが無いだろう」
ごくごくと、プロテインジュースを飲み込む2人。
バナナと牛乳、そしてプロテインが混ざったその液体は優しく、痛んだ2人の胃袋に心地よさをもたらした。
岡部「ふう……こんなにも美味い物だったとはな」
一夏「あぁ、何か……美味くって涙が出てきそうだよ……」
ラウラ「お、大袈裟だぞお前達……」
岡部「眼帯娘は料理の腕が達ようだな」
一夏「俺も知らなかった。ラウラってかなり料理上手だったんだな!」
ラウラ「なっ……なっ……」
予期せぬリアクションを取られ困惑する。
ただ材料をミキサーにかけただけの物を大絶賛されたのだから当然だった。
ラウラ「そそ、そんなに褒めても今日の訓練に手加減はしないからな!」
パジャマの帽子を深く被り、顔を隠したラウラは威勢よくそう言い放つ。
一夏「あれ、今日ってラウラの番だったのか? 確か、楯無さんだったような……」
ラウラ「変わってもらった。クラス内対抗戦は明後日。まる1日訓練出来る日は今日だけだからな」
岡部「……プロテインジュースの美味さで忘れていた。そうか、今日がその日になるのか」
岡部が最も恐れていた、軍人であるラウラの訓練。
丸一日使って行われると聞いた岡部のテンションはジュースで上がったソレを一気にローギアまで叩き込む。
ラウラ「とっ、兎に角だ! わ、私は着がえてくるから2人とも着替えとストレッチを済ませておけ。以上!」
用件を言うと、すたすたとドアを開けてラウラは出て行った。
ラウラ「(りょ、料理上手だと……?)」
帽子を被り俯きながら廊下を歩くラウラの顔は真っ赤に染まっている。
料理上手である一夏に、料理(とは言えない代物だが)を褒められたのだ。嬉しくない訳が無い。
ラウラ「(もう2時間早く起こすつもりだったのに、一夏のヤツが身体を触ってくるから寝坊させてしまうし……)」
ぶつぶつと文句を言いつつもラウラの口元は嬉しそうに歪んでいる。
両手は両肩を抱くようにくねくねしていた。
ラウラ「(もしや、あれがプロポーズ!? 後でクラリッサに報告しなくては)」
廊下を歩くラウラの足は実に軽やかで、動物パジャマを纏ったその姿は見るものを幸せな気分にさせた。
おわーり。
たまにはぶつ切り投下もお許し下さいな。
あと1回や2回位は進むと良いのだけれど……。
また投下出来そうになったらきまう。
ありがとうございました。
>>1です。
信じられるかい?
この数時間で家族が交通事故にあったんだぜ……。
って事で、添削が終わったら投稿しにきまう。
>>775 続き。
ラウラ「ストレッチは済ませてあるな!?」
ランニングトラックの前で威勢の良い声が響いた。
岡部「あぁ……」
一夏「おう」
ラウラはIS学園指定の制服を軍服のようにキッチリと着こなしていた。
右手には鞭を握っている。
ラウラ「今日一日は私のことを“教官”と呼ぶように!」
パシン! と、鞭を手の中で踊らせた。
岡部「……」
一夏「ははっ、気合入ってるなー」
ラウラ「現在、時刻はマル・ロク・サン・マル。
これより、マル・ナナ・サン・マルまでマラソンを執り行う!」
岡部「またマラソンか……」
一夏「基本だからなぁ」
ラウラ「私語は慎め!」
──パシン!
鞭が空中を叩く良い音がした。
ラウラ「マラソンが終り次第、食堂で朝食を取る。以上、走れ!」
合図と共に、岡部と一夏は駆け出した。
一時間マラソンの開始である。
フフン、と得意げな息が聞こえてきそうな表情でラウラは頷いた。
どこか満足気な笑みを浮かべながら、走る二人の新兵(ルーキー)を見遣る。
ラウラ「(ふふ……教官と言うのも難しいものだな)」
岡部「ふぅふぅ……」
同時にスタートしたはずだが、既に一夏とは大分差が離れていた。
岡部「(ワンサマーは流石に速いな……しかし……)」
思ったよりも身体が軽い。
訓練初日、篠ノ之 箒に走らされた時を思い出すと変化に気付く。
岡部「(身体が、呼吸が軽い……たった一週間程度で変わるものなのか……)」
良質なたんぱく質と、無茶なトレーニング。
一夏のマッサージと、楯無の薬。
岡部の身体は強制的に急ピッチで仕上がってきていた。
とは言っても、今まで身体を使ってこなかったのだからそのツケが少し支払われた程度である。
それでも、岡部倫太郎にとっては劇的な変化だった。
岡部「ふぅふぅ……」
一歩一歩、無心で足を前に繰り出す作業に没頭する。
1時間マラソンは、岡部の体感であっという間に過ぎていた。
一夏「お疲れ!」
岡部「ふぅふぅ……速いな、ワンサマーは」
一夏「一応、トレーニングはしてたからな」
ラウラ「ご苦労。距離的には物足りないが、準備運動には丁度良いだろう」
2人が走っている間に、どこからかこさえて来た深緑のベレー帽を深く被っているラウラが取り仕切る。
ラウラの満足気な表情に男2人も苦笑いを浮かべた。
ラウラ「食堂へ行く。付いて来い!」
岡部「Sir, yes, sir.」
一夏「サー・イエッサー!」
ラウラの乗りに合わせる2人はどことなく愉しい気分になった。
─食堂─
ラウラ「特に制限するつもりはない。だが、倫太郎。貴様は肉類を食べるのであれば鶏肉にしろ」
岡部「上官殿。食欲が無いんだが……」
ラウラ「む……無理やりにでも胃に詰め込め。と言いたいが、それだと後の訓練に差し支えが生じるな。
先ほど振舞ってやったプロテインジュースを作ってやる。少し待っていろ」
岡部「感謝する」
一夏「あっ、ラウラ!」
ラウラ「ん?」
一夏「俺のもお願いして良いかな? あれ、美味かったんだよなぁ」
ラウラ「うっ……まっ、まぁ一夏が求めるのであれば、勿論作ってやる。待っていろ!」
そう言うとラウラは購買部の方へと兎の如く駆け出して行った。
その顔は、やはり笑顔だった。
一夏「さて、俺はジュースだけじゃ物足りないから定食を買ってくるよ」
岡部「解った。席で待っていよう」
日曜の食堂は平日時よりも空いていた。
利用客の殆どが、部活動の朝練習を終えた生徒である。
岡部がぼーっと1人で席に座っていると、ふりふりと横に動くポニーテールが目に入った。
篠ノ之 箒である。
箒は岡部には目もくれず、一夏の後ろをひょこひょこと気付いて貰いたそうに歩いていた。
岡部「(全く、この年頃の女は皆そんなものなのか……)」
ようやく一夏に気付いて貰えた箒は、咳払いをしながら一緒に朝食を取らないか。
と誘っているようだった。
もちろん、一夏という男は笑顔で了承している。
遠目から見てもやり取りが一目瞭然だ。
岡部「(気の良い男だ……)」
トレイを受け取った2人は仲良く足並みをそろえて、岡部の居るテーブルへと着席した。
箒「おはよう」
岡部「あぁ、おはよう」
箒は礼儀にうるさい。
以前、岡部がおはようの挨拶に対して“うむ”と答えたら竹刀で叩かれ説教をされた過去があった。
箒「私も相席させて貰うが、構わないか?」
岡部「構わんよ」
一夏「よっし、では頂きます! 寒ブリなだけあって美味そうだな」
箒「佐渡産の寒ブリらしいな。実に油が乗っている」
寒ブリの照り焼き定食は、香ばしいく実に美味しそうであった。
岡部も本来ならそれを食べたかったが、どうにもまだ胃の調子が芳しくない。
肉体的な疲労感は慣れてきたのか薄れてきたが、おそらく昨夜の刺激物が胃に過分なダメージを与えているのだろう。
未だにずきずきと少しながら痛みを感じている。
箒「今日は、誰の指導を受けているんだ?」
一夏「ラウラだよ。かなり張り切っててさ、今日一日大変そうだ」
岡部「……」
食事をして間もなくすると、ラウラが2つのタンブラーを持って食堂へ戻ってきた。
ラウラ「倫太郎。プロテインジュースだ」
ドン、とテーブルへ豪快にタンブラーを置く。
今朝と同様にバナナの香りがするプロテインジュースだった。
ラウラ「それから一夏の分は、こっちだ……」
僅かに目を逸らしながら一夏にタンブラーを直接手渡した。
中身は岡部のソレと少し違い、ほんのりと赤みを帯びている。
一夏「ん? ちょっとコレ、色違わないか?」
岡部「赤い……な……」
ラウラ「い、苺が売っていてな。朝と同じ味だと飽きてしまうと思って……その、かえてみたんだ」
一夏「苺かぁ! 美味そうだ、ありがとう。ラウラ」
ラウラ「うむ……喜んでくれたなら、それでいい」
──コホン。
やり取りに置いていかれた箒が咳払いをした。
箒「朝? どういうことだ?」
一夏「えーっと……」
思い出す朝の光景。
以前にもラウラとの同衾が箒に知れた時は酷い目にあった。
同衾と言っても、本当にただ同じ寝具で寝ていただけなのだが。
岡部「眼帯娘が朝食前。ランニングをする前にプロテインジュースを振舞ってくれてな」
一夏「そう! そーなんだよ、あはは」
箒「ほう……」
ラウラ「一夏に気に入って貰えて何よりだ。これからも朝一番に作ってやろう」
一夏「……へ?」
ラウラ「む……嫌、だったか?」
一夏「いや、そんなことは……」
そんなことは無い。
だが、布団に潜り込まれては毎朝心臓に悪い。
一夏は返答を渋ってしまった。
箒「んん! プロテインジュース程度であれば、私に作れないことも無いが……」
一夏「え?」
箒「組み合わせの良い果物も知っている。うむ、作ってやろう」
ラウラ「結構だ。一夏は私のプロテインジュースを気に入っているからな」
箒とラウラの眼光が鋭くなる。
そして、その火花の散るような視線は最終的に何時も一夏へと向けられるのだ。
箒「どうなんだ一夏!」
ラウラ「私のプロテインジュースが良いんだろう!?」
一夏「えっ、えっと、その……」
両手を小さく挙げて、2人を納めようとするが全く効果を示さない。
チラリと岡部に手助けを求めるが、こと一夏を取り囲む女性関係には岡部も巻き込まれたく無いのかそ知らぬ顔でジュースを飲んでいた。
一夏「(うぅ、凶真ぁ……)」
岡部「(助け舟も、ここまでだ。これ以上は俺の船も沈みかねんからな……)」
ラウラ「どうなんだ!」
箒「一夏!」
この後、お決まりのように他の専用機持ちも自然と集合し、誰が一夏に毎朝プロテインジュースを作るかで討論になった。
そしてそれを静めた、織斑一夏の実姉である織斑千冬その人である。
千冬「静かにしろ馬鹿者! 飯くらい静かに食えないのか、まったく……」
一夏「(助かった……)」
騒々しい何時も通りの朝食が終り、長い長い日曜日が幕を開けた。
オワーリです。
事故は、幸い骨を2本折る程度で済んだようでほっとした訳です。
報告を受けたときは流石に気持ち悪くなって、書けたものじゃなかったけれど何とかなった。
このSSが終わったら>>1はワナビに戻るんだ……。
だから、頑張らないと。
転職は成功した時だけ報告しますえへえへ。
私事ばかり連絡して申し訳無い。
今日もありがとうございました。
確か女性に対しては
サー・イエッサーじゃなくて
イエス・マムだったような
>>802
そこは、調べながら書きました。
《米略式》《相手の性に関係なく,肯定または否定を強調する表現》
と、あったのでサーイエッサーの方を使いました。
「イエス・マダム」や「イエス・マム」も調べたら出てきたのですが、サーイエッサーのが発音が良いので使用しました。
ラウラはドイツ人なのに英語なの? というのは、ごっこ遊びの範疇で、英語であるさーいえryが世に広まってるからそっちを使った。と解釈していただけたら。
今日中にあと1回位更新出来ると良いのですが……。
>>1です。
なんだか申し訳無い……私事でざわつかせてしまいました。
さすがに連絡を受けてからは、執筆など手がつきませんでしたが骨折と言うことで今に至る訳ですはい。
無問題です。
では、3回目の投下を↓より開始しますです。
>>797 続き。
─体育館─
一夏「……で、結局皆付いて来た訳か」
箒「お、岡部がどの程度動けるようになったか見ておかないとな!」
セシリア「私の番はまだだと言うのに、会長は明日も見ると仰っているんですのよ?
まったく……それでは私の見る時間が無いということになりますわ!」
鈴音「そう言えば、1組のクラス対抗戦は明後日だっけ?」
シャル「うん。そろそろISの調整もしっかりしないとね」
岡部「……」
一気に姦しくなる空気に岡部は肩を落していた。
この面子が嫌いな訳でも苦手な訳でもないが、10代半ばの女子力とでも言うのか、
それらについて行くには大変体力が削られることを学んでいた。
騒がず、慌てず、静かに嵐が過ぎ去るのを待つ。
岡部は既に対処法を確立している。
ラウラ「静かに!」
ベレー帽を被りなおし、鞭を握るラウラが場を納めた。
ラウラ「ふん。一気に増えたか……まぁ良い。貴様等ひよこ供を調教する良い機会だ!
その口から垂れる、うんうんの前と後にサーを付けろ!」
ラウラはラウラで、訓練となると少々トリップしているのか興奮気味である。
常にドヤ顔で、ほんのりと頬を染めていた。
ラウラ「さて、早朝はマラソンをしてもらったがお次はどうするか……。
本来は山へ行きたいところだが、それは出来ん」
ぺたぺたと、体育館を右往左往しながら考える素振りを見せる。
ラウラ「筋肉トレーニング……」
岡部「Nein, お言葉だが、上官どの。初日であればそれも頷けるが、2日後に本番が迫っている。
マッサージと薬で筋肉の張りは無いと言えるが、今日それを重点的にするのは危険だ」
岡部がラウラに意見する。
本来なら兵隊が上官に指図することなどありえないが、ラウラもそこまでは本格的な思考へはスイッチしていなかった。
ラウラ「では、引き続きランニングを……」
岡部「Nein, 悪くは無いが、この人数でランニングするのも効率が良いとは思えない」
ラウラ「……むう」
一夏「じゃぁ、また軽く組み手とかで良いんじゃないか?
ISでの実戦も近いんだし、対人はやっておいて損は無いと思うぜ」
ラウラ「Ja! 採用だ!」
岡部「うむ」
ラウラも張り切っていたのは良いが、実際は空回り気味でメニューを特に考えていなかった。
軍の飛行機を利用して、山へ行こうとしたが事前申請で千冬に却下されてからと言うもの煮詰まっていたのだ。
箒「素手での組み手か……これは良い稽古になるな」
セシリア「接近戦は得意ではありませんが……良いでしょう、イギリス代表候補生の力を見せて差し上げます」
鈴音「上等よ、ふふん。負ける気がしないわね」
シャル「あはは、まただね」
一夏「と……なるとラウラ、畳道場へ移動した方が良いよな?」
ラウラ「そうだな。よし、全員移動するぞ。付いて来い!」
サー・イエス・サー。
実際、気の良い連中である。
全員が全員、ラウラのご所望通りの返答を返した。
─畳道場─
ラウラ「よし、それでは2人組みを作れ!!」
この一言で女子連中の瞳の色が変わった。
箒「よ、よし一夏! 幼馴染のよしみだ。私と組め」
鈴音「はぁ!? 幼馴染だったら私もでしょ! 一夏、私と組みなさいよ!!」
セシリア「お待ちになって下さいな。一夏さんは私と組むのですよ。ねぇ一夏さん?」
シャル「えっと……良かったら、僕と組み合いしない……?」
一夏「えぇ……」
教官であるラウラを除いて、男2名。女4名。必然であった。
あぶれる岡部。
岡部「(ふふ……こんなところで、2人組み作ってーの罠にかかるとは……な……)」
ラウラ「まっ、待て! 一夏は私と組む!!」
一夏「えっ」
この一言でまたしても空気が変わる。
矛先が一点に集中した。
箒「教官の手を煩わせる必要は無い。大丈夫だ、私が責任持って受け持とう」
セシリア「そうですわよ。教官様は上座に座って大人しくしていらっしゃれば良いのですわ」
鈴音「あんたは今日、先生役なんでしょ? 引っ込んでなさいよ」
シャル「それに、7人になっちゃうと1人あぶれちゃうしね……?」
4人の総口撃を浴びるラウラ。
あうぅ……と唸ることしか出来なかった。
一夏「あのさ、悪いんだけど俺は凶真と組むよ。
やっぱり取っ組み合うなら男同士の方が何かと、その……密着とかするしさ!」
岡部「(必死だな、ワンサマー……)」
箒「わっ、私は別に構わんのだがな。武士たるもの、接近戦での肌の密着を恐れる訳にはいかないしな」
セシリア「私もですわ! そんな理由で引いてなどいられませんっ」
鈴音「なにカマトトぶってんのよ! そんなもんを気にしてちゃ代表候補生なんてやってられないっつの!」
シャル「僕は、一夏となら……その、大丈夫だよ?」
何を言っても収まる気配の無いガールズ。
最近は一夏が岡部にべったりと言うこともあり、それぞれがそれなりにフラストレーションを抱えていた。
──パシィィッ!!
ラウラ「静かに!」
右手に握っていた、鞭を思い切りしならせて叩く。
音速を超える音が畳道場を響かせる。
ラウラ「一夏は倫太郎とペアを。箒はシャルロットと。セシリアは鈴音とだ。以上、解れ!!」
不満の声が大多数だったが、教官命令という事で押し通す。
ラウラも全ての組み手を見て回るということで、一同が納得した。
箒「ま、まぁ……仕方なかろう」
シャル「だね、宜しく」
セシリア「まったく、何で私が鈴さんと……」
鈴音「ぶつくさ言わないの、私だって一夏と組みたかったんだから……」
最初は文句も多かった4名だが、組み手が開始されると同時に顔つきが変わった。
それぞれが代表候補生と言う自覚。強さに対しての探究心。
それらは、10代半ばにして大人顔向けのものを持っている本物の人間達だった。
一夏「ふう、何とか落ち着いたな……」
岡部「姦しいとは、あぁ言った状況をさすのだろうな」
組み手を開始した4人組を見て、男2人が溜息を漏らす。
ラウラ「さぁ貴様等も見てばかりいないで、組み手を開始しろ」
一夏「オッケー。えっと、凶真……ルールはどうする?」
岡部「む……ルールと言われてもな……」
一夏「っと、そうだよな。ええっと……この間、シャルとやった時はどんな感じに?」
岡部「あれは、ヂュノアが俺に攻撃を仕掛けてくるからそれを回避と防御をする。そのような内容だった」
一夏「よし、じゃぁ今日もそれでいこう。でだ、凶真。今日はそれプラス、反撃が出来るようだったら俺に反撃してくれ」
岡部「む……隙を見て殴りかかれと?」
一夏「そういうこと。よし、行くぜ!」
ラウラ教官指導のもと、専用機持ちによる組み手が始まった。
時刻は午前9時。
朝食を取ってからまもなくの、午前の部が開始された。
オワーリ。
小出しで申し訳ありませんでした。
日常パート終わらNeeeeeeeeee!!!
それでは、本日もありがとうございました。
日付変更とともにこんばんわ!
血液検査の結果が悪かった>>1です。
日付変更前に投下したかったけれど、間に合わなかったず……。
添削終わったら来まう!
↓より投稿開始します
>>819 続き。
ぴよぴよ。
まさにこの擬音が字の如く、岡部の脳天には幾つかのヒヨコたちが戯れている。
ラウラと組み手をしていた岡部が天井を見つめる形で、大の字にのびていた。
一夏「今、凄い音がしたけど……」
箒「むう……」
セシリア「これは……」
鈴音「ちょっと……」
シャル「ラウラ……」
ラウラ「ちっ、違う! 私はただ手刀を放っただけだ!」
皆から向けられる非難の目に、ラウラが珍しく感情を露に慌て出した。
ラウラ「大体だ! り、倫太郎は隙が多すぎる。避けられることを前提で放った手刀が直撃するなどありえん」
シャル「えっと、ラウラ。どう言う状況でそうなったの?」
ラウラ「ん? 状況か。あれはヤツが私に向かって生意気にも右の拳を振り抜いて来た瞬間の出来事だ」
鈴音「ただの右ストレートじゃない……」
セシリア「背丈の差を考えますと、チョッピング(振り下ろし)ですわね」
ラウラ「普通に避けられるレベルだったが、教官としての実力を軽く示すべきだと瞬時に判断した。
放たれた右腕に飛び乗り、手刀を振り下ろしただけだ」
シャル「ラウラ。そんな芸当の出来る人間は中々いないよ……」
箒「ましてや、岡部が避けられる道理が無かろう」
一夏「はぁ……」
ラウラ「なっ、なんだ貴様等! 上官に対してその目は!」
珍しく。
と言うよりも、何時ものメンバー全員からこのような眼差しを受けた経験が無かったラウラは狼狽する。
ラウラの放った手刀は角度タイミング共に申し分無く、岡部の意識を断ち切った。
当然ラウラにその気は無く、想定していた相手──“一夏”であれば充分に対処出来ると踏んでいた。
一夏は岡部ほど長身ではなかったが、仮想一夏の相手として背丈は申し分の無いモルモットといえる。
次は一夏とラウラが組み手をする番だったので、若干舞い上がってしまったためのミステイクとも言えた。
………………。
…………。
……。
鈴音「なーんか、納得いかないのよね」
セシリアと寸止め組み手を行いながら、横目で一夏と岡部の組み手を見やる鈴音が呟いた。
セシリア「鈴さん? どうしましたの?」
鈴音「せーっかく、こんなに集まってるんだからさぁ……」
細く伸びた足をセシリアの即頭部へゆっくりと、伸ばす。
セシリアも避ける動作をせず、足にクロスさせるよう鈴音の頭部へ向けて足を伸ばした。
──ピタリ。
被弾スレスレで2人の動作が止まる。
鈴音「あたし達も一夏と組み手するべきじゃない?」
ぐらり。
完璧なバランスで片足立ちしていたセシリアのバランスが少しだけ揺らいだ。
セシリア「……」
鈴音「ラウラに直訴してみようかしら……」
セシリアにとっても魅力的な提案だった。
一夏が男である岡部と組み手しているのは面白くは無いが、他の女子と組まれるよりはマシ。
そう思っていた。
が、自分も組めるとなれば話しは別である。
例え一時でも他の女子と組もうが、自分と組めば一夏は魅力に気付いてくれる。
どこから沸いてくるのか、そう言った自信。気持ちがセシリアには──。
── 一夏を取り囲む女子達は少なからず内包していた。
セシリア「た、確かに。折角の休日だと言いますのにこれではあまりにも……」
鈴音「そういうこと」
足を引っ込めたのは2人同時だった。
直立不動になった中・英の代表候補生が息を合わせて深く頷く。
鈴音「と、なれば……」
セシリア「えぇ。まずは味方を……」
視線の先にはフランス代表候補生。
シャルロット・デュノアその人物だった。
箒「せいっっ!!」
箒が強く握り締めた右拳をシャルロットの腹部に目掛けて振り抜いた。
間合いを一気に詰め、深く踏み込んだその攻撃は通常であれば確実に命中している。
シャル「うん。箒は思い切りが良いね」
──パシィ。
綺麗な音が箒の右腕を左側、体の外側から響いた。
箒の踏み込んだ分だけ、シャルロットは下がり呼吸を合わせて攻撃を弾く。
竹刀を持たないとは言え箒は強い。
しかし、ラウラ程では無いにしろCQCを修めているシャルロットは純粋に強かった。
シャル「(性格が攻撃に表れてる。純粋にまっすぐで、だけど読まれやすい)」
箒「(くっ! なぜ当らん……!!)」
箒の要望で、寸止めではなく顔面と急所以外への攻撃を禁止した本格的な組み手になっている。
攻撃箇所が限定されている時点で、勝敗は決まっていた。
体を半身にして、当る箇所をさらに限定。
自らは攻撃をせず、ただただ相手の攻撃を捌き、避ける。
箒「(シャルロットの体が、近くて遠い……)」
剣の道一本と信じ、今まで鍛錬を重ねてきた。
刀が折れたときを想定しての、素手の古武術もそれなりに鍛錬を積んで来た。
箒「(少々、刀の方に気を入れすぎていたか……)」
実戦組み手で思い知らされる力量の差。
これが、代表候補生。
刀を持てば箒も負ける気はしないが、素手では当てることすら困難である。
箒「(これが、代表候補生か)」
“紅椿”を手に入れ“単一仕様能力”も自由に発動出来るようになった箒は、少なからず驕っていた。
この組み手は良い意味で箒にとっての、精神的な成長に役立つものになっていた。
シャル「──ふぅ。ちょっと休もうか?」
箒「いや! 時間が勿体無い、まだ頼む」
シャル「んー、でもね? 何か、あっちから視線が……あはは」
シャルロットが指差す方に視線を移すと、ねっとりとした熱い眼差しを自分らに送る2人組みがいた。
セシリアと、鈴音だ。
箒「ん……? どうしたんだ、あの2人は。なにやら此方を見ているようだが」
シャル「うん。何か用事でもあるのかな……」
視線に気付いた、シャルロットと箒の元へセシリアと鈴音ペアが近づいてきた。
セシリア「御機嫌よう。調子はどうかしら?」
シャル「はい? えーっと、うん。普通に良いと思うけど……」
鈴音「そーなのー、それは良いことねー」
箒「? 2人ともどうした。不自然だが……」
──コホン。
セシリア「えー、シャルロットさん? 少しご相談がありまして」
鈴音「そうなのよ。ちょっと話したいことがね?」
シャル「ん? 僕に?」
箒「今は練習中だ。出来れば後に……」
鈴音「箒。アンタにとっても悪い話じゃないのよ」
箒「む?」
──あれあれ、これこれで。
シャル「えっ……」
箒「むう……」
鈴音「ね? そっちの方が、実際効率良いでしょ?」
セシリア「色々な方と実戦を踏むほうが、経験値も上がると思いますの」
シャル「う、うん……」
箒「し、しかしだな」
鈴音「箒だって、一夏と組み手したいでしょ? あいつがどの程度出来るかやりたいでしょ?」
箒「うっ……」
セシリア・鈴音ペアのチームワークは完璧だった。
各人獲物が同じなのだから、釣られる餌も同じである。
シャルロットと箒を陥落させるのはとても簡単だった。
シャル「そ、そうだね。その方が、ためになるよね」
箒「うむ……そうだな、うむ」
これで4人。
シャルロットを仲間に出来た。
ラウラはシャルロットに弱い。
これは1年1組の共通認識で、暴れん坊のラウラの手綱をシャルロットが操る構図が完成していた。
鈴音「さー、ラウラ教官に直訴するわよ!」
セシリア「シャルロットさん、お願い致しますわよ?」
シャル「やっぱり、僕なんだね……」
箒「適任だな」
………………。
…………。
……。
ラウラ「……」
次はやっとラウラと一夏の組む番。
最近はスキンシップが少なくなってきたと感じていたラウラは、とても楽しみにしていた。
やはり寝技を重点的に教えてやるべきか。
一夏は寝技となると、急に動きが鈍くなるからなと心の中で思いつつ岡部との組み手を流していた。
ラウラ「(それが、こんなことになるなんて……)」
一夏「組み手は、一旦中止かな」
シャル「そうだね。オカリンを休ませないと……」
鈴音「ちょうどお昼時だし良いんじゃない?」
セシリア「賛成ですわ」
箒「うむ。実のある訓練だった」
ラウラ以外は全て一夏と組み手を終えた後で、満場一致で可決する。
たらたらと冷たい汗が、顔から、背中かから流れていく。
ラウラ「まっ、待て! まだ組んでない組が1組ずつあるはずだ!」
一夏「そうだけど、凶真が伸びてちゃ無理だろう」
セシリア「結局どなたか1人あぶれてしまいますわね」
ラウラ「し、しかしだな……」
箒「さっさと岡部を部屋に連れて行った方が良いんじゃないのか?」
シャル「どうせだったら、セシリアの部屋が良いんじゃない?」
鈴音「そうね、岡部は紅莉栖に任せて私達はご飯に行きましょうよ」
ラウラ「あうあう……」
何も言えない。
何を言っても通らない。
ラウラはぎゅっと目を瞑り、これで午前の部は終了とする。とだけ小さく呟いた。
─セシリア・紅莉栖部屋─
紅莉栖「うーん……」
液晶投影ディスプレイと睨めっこをしながら、紅莉栖が呻く。
勿論見ているデータは“石鍵”の物だ。
紅莉栖「明らかにスラスター出力が低い……機能していない……」
殆どがセシリアの私物で埋まる部屋で、1人データと睨めっこを続けていた。
紅莉栖「両肩に翼型のスラスターがあるのに、機能しないってどういうことよ」
データ上には《 LOCK 》の文字が浮かび上がる。
紅莉栖「スラスターにロック? ってか、供給するエネルギーが無いんじゃどうしようも……あぁもう!」
机に突っ伏して時計の針を目で追った。
時刻はもうすぐ12時になろうとしている。
紅莉栖「お腹すいたな……食堂行く──」
──コンコン。
紅莉栖「っと、お客さん? はいはいっと」
一夏「よっ、紅莉栖」
紅莉栖「一夏……と、ソレは?」
一夏と、箒に抱えられた大きな荷物。
失神した岡部がソコには居た。
ラウラ「訓練中の事故だ。大したことは無い」
紅莉栖「って、え!? 事故……?」
シャル「あー、大丈夫だよ。ラウラがちょっと、はしゃいじゃっただけだから」
シャルロットの言葉に、ラウラは少しだけ頬を膨らました。
フン。と可愛く悪態を付くだけついて視線を外す。
鈴音「そういうこと」
一夏「無理やり起こすのも可哀想だし、保健室に行くほどでも無いしで」
箒「この部屋にと決まったんだが」
セシリア「よろしいかしら?」
紅莉栖「うん、まぁ……異論は無いが……」
一夏「良かった。えっと、じゃぁ紅莉栖のベッド……は、勿論コッチだよな」
ドーンと佇む、豪華なセシリア用のベッドを見てから確信する。
紅莉栖「うん。適当に寝転ばせておけば起きるでしょ」
鈴音「これで大丈夫ね? さっ、食堂に行きましょ!」
セシリア「ささ、一夏さん。勿論エスコートして下さるんでしょ?」
鈴音が一夏の左腕。
セシリアが右腕に絡みつくようにしがみ付いた。
箒「な、何をしている!!」
シャル「そんなぁ、ずるいよ一夏ぁ」
ラウラ「貴様……私とは組み手もしなかったくせに……」
一夏「わっわっ、ちょっと待てって! 凶真も寝てるんだし、あぁもう……ごめんな、紅莉栖」
紅莉栖「気にしないで一夏。私は岡部が起きたら一緒に食堂へ行くから」
何時も通り、一夏が嵐を纏いながら食堂へと向かっていった。
この光景を見ても、特に何も思わなくなった当り私も慣れて来たんだろうかと紅莉栖も笑った。
紅莉栖「ふぅ」
ギシッ、とベッドに腰を下ろして意識を失っている岡部の顔を見つめる。
紅莉栖「鳳凰院凶真さんはまた気絶されてたのでありますか……」
言葉に棘は無く、語尾には優しさが感じられるほどだった。
ふと手が伸び、岡部の髪をかき上げる。
紅莉栖「頑張っちゃってまぁ……ヒゲも伸びてきてるぞー、おかべー……おーい」
小声で呼びかけるも岡部は反応を返しはしない。
段々と紅莉栖の頬が紅潮していく。
紅莉栖「だ、誰も居ない」
キョロキョロと、辺りを見回すもここは自室。
同室のセシリアはたった今、一夏達と食堂へ行ったので当分帰っては来ないだろう。
紅莉栖「お、おきろー……」
すうすう、と気持ち良さそうに寝息を立てる岡部の耳元で囁く。
──ドキドキ。
心臓の音が、大きくなっていく。
顔面は完全に赤くなり、目元が潤む。
──ドキドキ。
個室で、しかも自室での2人きりと言う環境に紅莉栖の心臓は跳ね回っていた。
こんなにも岡部の顔を凝視したのは何時ぶりだったのかと、思いを馳せる。
段々と顔が近づく。
紅莉栖「……」
唇と唇が重なりそうになった。
その時……。
岡部「ん……っ」
──ガタタタッ!!
岡部「ん……?」
紅莉栖「岡部? オハヨウ。アンタまた気絶したらしいわよ!」
一瞬でベッドから椅子へと飛び退いた紅莉栖。
もちろん、寝起きの岡部には何が起きたか解らない。
岡部「助手……? んん……」
ズキン、と頭が痛む。
徐々に思考がクリアになっていき、自分が今どこに居るのかを把握した。
岡部「この部屋は、助手の部屋か。調度品がなにやら凄まじいことになっているが」
紅莉栖「それらは全部セシリアのだ。私のは殆ど無いわよ」
岡部「そうか……」
紅莉栖「っち、タイミング悪すぎだろうが……これだから童貞は……」
岡部「何を1人でぶつぶつと言っているんだ?」
紅莉栖「なんでもない! あー、そう言えばお腹すいてるんだった。
岡部、食堂行くわよ」
岡部「ん……今、何時だ?」
紅莉栖「昼の12時30。ここに運ばれて10分もしないで目覚めたわよ」
岡部「そうか、また気絶してしまったようだ」
くくっ、と自嘲気味に笑う。
ここへ来て何度目の失神だと。
紅莉栖「代表候補生相手にしてるんだから、当然と言えば当然の結果よ」
岡部「……」
そうして失神する度に、紅莉栖に慰められる。
これもパターンだなと内心で笑っていた。
紅莉栖「そんなことより、私はお腹がすいてる訳だが?」
岡部「もう昼か……そう言えば俺も、腹が減ったな……」
何時ぶりだろうか。
岡部が食欲をあらわにしたのは。
紅莉栖「へぇ、てっきりまた食欲が無いだとか、胃が痛いだとか言うのかと思ったら」
岡部「全くだ。依然として胃は痛いし、食いたくも無いはずなんだが……腹が減った」
紅莉栖のベッドで大の字に寝転がりながら、岡部は答えた。
紅莉栖「ふむん。宜しい、では今日は私が学食の牛丼をおごってやろう」
岡部「卵に、それとドクペも付けてくれ」
紅莉栖「む……。いきなり現金なやつね」
けれど、紅莉栖の顔は笑っていた。
紅莉栖「きっと一夏達のことだから、まだ食べ終わって無いでしょう。さっ、行きましょう」
すっ、と手を差し出す。
岡部は一瞬、ほんの一瞬だけ躊躇った後にしっかりとその手を掴んで起き上がった。
おわーりでございます。
>>1の次回作にご期待下さいませ!
は、冗談です。
また書けたらすぐ来ます。
更新遅れてごめんなさい。
今回もご静読ありがとうございました。
頂けるレスの半数以上が、>>1の体や身辺を慮ってのものとか何やら嬉しいやら恥しいやらです。
こんばんわ。
何時もありがとうございます。
本日は本当に短いですが、箸休め程度ですが、更新しますです。
少量でも良いから更新していかないと!
>>864 続き。
─食堂─
セシリア「──と、言うことで。午後の部はこの私、セシリア・オルコットがお時間を頂戴致しますわ!」
バン! と机を叩き、セシリアが高らかに宣言する。
遅れて食堂へやって来た岡部と紅莉栖はキョトンとするばかりだった。
岡部「なにが、と言う訳なのだ。Ms.シャーロック」
牛丼を食べながら岡部が答える。
“牛丼さんぽ”の物とは少し違い、肉その物が良いらしくとても柔らかく上品な味だった。
倍率、数万倍と言われるIS学園の食堂は素材の質が良い。
セシリア「倫太郎さん? 前々から思っていたのですけれど……私の名前は、セシリア・オルコットですのよ?」
鈴音「そーよ、私も思ってた。アンタ人の名前間違えすぎじゃない?」
紅莉栖「(今更です。本当にありがとうございました)」
我関せずとばかりに、紅莉栖も牛丼を食べ進める。
箒「私も、時々だが間違えられてる気がするな」
シャル「僕もなんだよね……オカリン、1人ずつちょっと名前を呼んでみてくれるかな?」
岡部「急にどうしたと言うのだ、そんな面倒なことは──」
鈴音「良いから言いなさいよ」
ピシャリと鈴音が言葉を遮る。
どうも、ガールズ達は名前を間違って呼ばれていることに違和感を感じていたようだった。
岡部「……“しのののの”に“シャーロック”。“大陸娘”に“ヂュノア”それに“眼帯娘”」
1人ずつ目を見て、堂々と名前を間違える岡部。
箒「のが一つ多いような気がするんだが……」
岡部「そんなことは、ない」
箒「そっ、そうか……なら良い」
セシリア「ですから、シャーロックとは一体なんですの!?」
岡部「シャーロックはシャーロックだ。そんな事も知らんのか?」
セシリア「知っているとか知らないとか、そう言う意味ではありませんの!」
鈴音「大陸娘ってなによ! 良いから名前で呼びなさいってば!!」
岡部「解れば良いだろう。貴様の祖国は中国だ、何も間違った事は言っていないではないか」
鈴音「確かに中国だけど、それとコレとは関係無いでしょうが!」
シャル「えっと、僕のは発音がちょっと違うかな? “ぢゅ”じゃなくて、日本語で“でゅ”で良いんだよ」
岡部「はっはっは、ついついフランス訛りが出てしまったようだな。気にするな、ヂュノア」
シャル「フランス語でもその発音じゃないんだけどなぁ……」
一夏「それでもって、ラウラは眼帯娘か……」
ラウラはと言うと、何故か放心状態のようで元気が無かった。
岡部の付けた眼帯娘のあだ名を呼ばれても静かにココアを舐めている。
ラウラ「……」
岡部「気にするな。眼帯はチャームポイント……その道の人間からすればお洒落アイテムとも呼べる代物だ」
まさに暖簾に腕押し。
ガールズ達の意見は全て、岡部の良く解らない理論によって突っぱねられるしかなかった。
岡部「──で、午後の云々と言うのは一体?」
セシリア「そうでしたわ。名前の件はいずれ決着をつけるとして……」
紅莉栖「(無理だと思います)」
セシリア「午後の訓練はラウラさんに引継ぎまして、この私が面倒を見させて頂きますわ」
岡部「そうなのか? 眼帯娘」
意外な展開と言えた。
一番張り切っていたラウラが、午前中だけの訓練で時間をセシリアに渡すなど思いも寄らない。
ラウラ「……あ、あぁ」
食後のホットココアをちろちろ飲みながら頷く。
その顔はどこか覇気が無く、元気が無い。
ラウラ「(私だけ一夏と組み手が出来なかった、私だけ一夏と組み手が──)」
岡部と紅莉栖が合流する前。
食事の席の話しは専ら、一夏との組み手だった。
その話しに自分だけ入れず、ラウラはどんどんと覇気が無くなっていった。
岡部「解った。午後はシャーロックに任せるとしよう」
鈴音「んで、何するのよ?」
セシリア「そのことなんですけれど……午後は私と、紅莉栖さんのお部屋で行います。
ですので、参加者は4名のみ。倫太郎さんと一夏さん。私と紅莉栖さんで行いますわ」
箒「どう言うことだ?」
鈴音「どう言うことよ?」
シャル「つまり、僕達は……?」
ラウラ「(一夏と組み手が──)」
一夏「はは……」
岡部「……」
紅莉栖「……」
また面倒そうなことに、と岡部・紅莉栖は同じような目線で年下の女子達を見つめる。
そして一夏も何時も通り、乾いた笑いをこぼすことしか出来なかった。
セシリア「一夏さん。そして、ついでに倫太郎さん改造コーディネイトを致します!」
岡部「コーディ……」
紅莉栖「ネイト……?」
その場に居たセシリアとラウラ以外の人間が首を傾げた。
特訓ではなく、コーディネイト? と。
短いけど、おわーり。
今日もありがとうございました!
乙
ちょっと気になったんだけど
> 箒の要望で、寸止めではなく顔面と急所以外への攻撃を禁止した本格的な組み手になっている。
これ逆じゃないとすごい危ないんじゃない?
ハヽ/::::ヽ.ヘ===ァ
{::{/≧===≦V:/
>:´:::::::::::::::::::::::::`ヽ、
γ::::ノ(:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
_//:::::::⌒::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
. | ll ! :::::::l::::::/|ハ::::::::∧::::i :::::::i うるさい!
、ヾ|:::::::::|:::/`ト-:::::/ _,X:j:::/:::l モッピーだって間違えることはあるよ!
ヾ:::::::::|V≧z !V z≦/::::/
∧::::ト “ “ ノ:::/!
/:::::\ト ,_ -- ィ::/::|
/ `ー' \ |i
/ ヽ !l ヽi
( 丶- 、 しE |そ ドンッ!!
`ー、_ノ ∑ l、E ノ <
レY^V^ヽl
>>1です。
>>891さんの言うとおり、逆です。
少なく無くないみたいなおかしな日本語を真顔で使っちゃったことがある>>1なので許して下さい。
今日は更新出来るかどうかは、危ういです。
申し訳無い。
ハヽ/::::ヽ.ヘ===ァ
{::{/≧===≦V:/
>:´:::::::::::::::::::::::::`ヽ
γ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
_//::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ モッピー知ってるよ。
. | ll ! :::::::l::::::/|ハ::::::::∧::::i :::::::i ここの読者さんはみんな優しい人だって。
、ヾ|:::::::::|: ⌒ト- ::::/⌒ヾj::/:::l
ヾ:::::::::| x=ミ V x=ミ /::::/
∧::::ト “ “ ノ:::/!
/::::(\ ヽノ / ̄) |
| ``ー――‐''| ヽ、.|
ゝ ノ ヽ ノ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
読んでくれる人が居る限り、頑張りたいですよね。
短めですが添削が終り次第また来ます。
>>879 続き。
─セシリア・紅莉栖部屋─
セシリア「前々から気になっていたんですの。倫太郎さんのその風貌」
半ば強制的に、セシリアの化粧台に備え付けられた椅子に着席させられている岡部。
美容院などで掛けられる前掛けのような物まで掛けられ、鏡に映る自分の顔は冷や汗をかいていた。
岡部「な、何をする気なのだ……助手よ、どう言うことだコレは!」
鏡越し。斜め後ろに、一夏と隣並びで立っていた紅莉栖へとSOSの意味を含めて訪ねた。
しかし、紅莉栖はさぁねと答えるだけで要領を得た回答は貰えない。
紅莉栖もセシリアの意図を測りかねていた。
セシリア「そもそも、ISと言うのは──」
割愛。
要するに、セシリアからするとIS操縦者たるもの最低限身嗜みはキチっとせねばならない。
そう言うことであった。
セシリア「──と、言う訳ですわ。御分かりになりまして?」
岡部「(な、長い……)」
一夏「(セシリアって以外と、こういうところキッチリしてるんだよなぁ)」
紅莉栖「(英国貴族だからなのかしら……)」
セシリア「倫太郎さん? 聞いていますの? それとももう一度ご説明を──」
岡部「いーっや! 解った。なるほど、そう言う訳か。うむ」
10分以上も長々と講釈を聞かされたとあって、もう一度それを聞くのは御免だった。
岡部にとっても、後ろで待機している紅莉栖や一夏にとっても。
紅莉栖「(って、何で私まで立って話し聞いてるんだろ。
別に鏡越しに岡部の顔なんて見ていたい訳じゃないんだから、ベッドに座って待ってれば──)」
意味の無い立ち見をしている現状に気付き、紅莉栖が化粧台に背を向けた。
セシリア「ですから、まずはその無精髭を処理させて頂きますわ。
それから、その中途半端に整えたおつもりの髪もきっちり仕上げてさしあげます」
──くるり反転。180度。
まるで、その場でターンをしたように紅莉栖は改めて化粧台へ。
鏡越しの岡部に視線を戻した。
一夏「く、紅莉栖……? なんで、ターンをしたんだ?」
紅莉栖「気分よ。気にしないで」
一夏「お、おう」
岡部「ちょっと待て、髭まで剃るのか?」
セシリア「当然です。そのような無精髭がこのIS学園で許される道理などありはしませんわ」
神妙にしろ、と言わんばかりの圧力を岡部にかけ続けるセシリア。
岡部はこのような時、このような態度を取る女性に対して何を言っても無駄であることをラボで、さらにはIS学園で学んでいた。
岡部「(鳳凰院モードでも……無駄だろうな……)」
セシリア「それでは、暫く目を瞑っていて下さいな。この高性能電動シェーバーで根こそぎ綺麗にしてさしあげます」
一夏「ん? それって男性用のだよな? なんでセシリアがそんな物持っているんだ?」
セシリア「そ! そそ、それは……その、何時の日かい、いち……どなたかにしてさしあげようかと……」
ごにょごにょと、言葉尻が小さくなっていくセシリア。
例の如くその真意は思い人である、一夏本人にだけは届かなかった。
一夏「紅莉栖、どういう意味だ?」
紅莉栖「今、全部説明していた訳だが」
一夏「?」
セシリア「(一夏さんときたら、無駄毛一本見当たらないんですから使う機会など今まで一度たりとも巡っては来ませんでしたが……。
丁度良い実験体が居たのですから、使わない手はありませんわ!)」
岡部「(とでも考えているのだろうな……)」
紅莉栖「(とでも考えているのでしょうね)」
一夏「?」
セシリア「それでは、剃りますわよ?」
岡部「高性能シェーバーだ。不安は無いが、それでも慎重に頼む」
セシリア「心得ました」
ヴィー、ガリガリ。
ガリガリ。
電動シェーバーが髭を毛根から断つ独特の音を響かせながら、岡部の肌を露出させていく。
高性能と言うだけあって、肌には傷が付かず尚且つ毛根から剃り落とす業物である。
大した量を蓄えていた訳でも無かったので髭剃りは2.3分程度で全てが終わった。
セシリア「ふう……出来ましたわ。結構神経を使うものですのね」
一夏「おお、ちょっとした違いだけど随分スッキリした感じがするな」
岡部「うむ……何となく、心許ない感じがするが……」
紅莉栖「……」
コトン、と電動シェーバーを置いたセシリアの手には既に別の容器が握られている。
先ほどまでは無かった霧吹きや、ドライヤーまで何時の間にかそこには用意されていた。
岡部「……それは?」
セシリア「ワックスですわ」
シュッシュ、と霧吹きを岡部の頭髪にかけ、水分を馴染ませた。
容器から、乳白色の粘質を掬い手に馴染ませる。
本人は全く気にしていなかったが、その姿はどこか妖艶さを含み一夏は自然と頬を赤らめていた。
岡部「出来るのか……?」
セシリア「代表候補生として、モデル業もやっておりますの。
もちろん専属のヘアメイクも付いておりますが、学園生活でのヘアメイクは全て自身でやっておりますのよ?」
殿方程度の髪を弄るなど造作もございませんわ。そう言うと、頬を歪めながらセシリアが笑った。
もちろん、この男性用ワックスも何時の日か一夏の髪を弄るために用意したものである。
岡部「その、いきなり変わりすぎてもアレなのでな。その……」
セシリア「心得ておりますわ。今のかたちのまま、綺麗にまとめるだけにいたします」
岡部「そうしてくれ……」
セシリア「(この流れのまま、次は一夏さんの番ですわよ? さぁ、お掛けになって?)」
一夏『セシリアの指使いって上手いな。どうせなら毎日やって貰いたい、なんてな』
セシリア『一夏さんが望むのであれば、別に私は毎日して差し上げてもよろしくってよ?』
一夏『本当か!? なら頼むよ。変わりと言っちゃなんだが、俺も毎日セシリアの──』
一夏「セシリア?」
セシリア「はい!?」
一夏「手が止まってるけど、どうかしたか?」
セシリア「え? ……え?」
白昼夢。
もとい、妄想。
岡部「何か問題でもあったか……?」
セシリア「い、いえ。(私としたことが、また妄想など……)」
紅莉栖「……」
それからは、妄想を無くし集中して髪型作りに専念する。
他人の髪型とは言え、お洒落にかけては一家言を持つセシリアにとって中途半端な仕事は許せなかった。
セシリア「さっ、出来ましたわ。前掛けをとって下さいな」
岡部「あぁ」
セシリア「背筋は伸ばす。猫背にはならない。顎は引く。倫太郎さんは折角上背があるのですから、シャンとしてほうが宜しくてよ?」
岡部「こ……こうか?」
セシリア「……え、えぇ。いいと……おも、います……わ」
それまでしたり顔だったセシリアの顔が固まる。
予想以上の姿がそこにはあった。
無造作に蓄えた無精髭が無い。
髪型は前髪だけを適度に上げ、両サイドを垂らすように流す。
明後日の方向に飛び出した髪の毛も全て、流れるように違和感無く“髪型”として見立てられている。
元々、顔の形が悪いほうではない岡部である。
無精髭と、適当に掻き揚げただけの髪型。
上背はあるのに猫背気味の姿勢。
マイナスポイントを重ねすぎて気付きにくいが、このようにシャンとまとめれば俗に言う──。
“イケメン”がソコに立っていた。
セシリア「(コレは……想像以上に……)」
いくら背伸びしても、未だ15の少女である。
セシリアからすれば岡部は充分すぎるほど大人であり、姿だけで言えば魅力的な男性に見えた。
勿論、この場に居るもう一人の少女にとっても……。
一夏「おお! カッコ良いな、凶真!! 大人の男って感じだぞ!!」
紅莉栖「…………」
セシリア「(私としたことが、一夏さんと言う者がありながら一瞬でも見とれてしまいましたわ……。
ですが、これならバッチリ当初の目的通り。
一夏さん派の女子を倫太郎さん派に輸出出来ますわね……!)」
キラーンとセシリアの瞳が光る。
恋する乙女のにとって、幾ら魅力的な男性と言えど自分が恋した男性以外は全て関係無いその他の男。
自らの恋に利用出来るのなら、利用して然るべきなのである。
岡部「た、大して変わりは無いだろう、なぁ助手──」
──ツカツカ。
部屋の中。距離にして数歩。
紅莉栖は一直線に岡部の前に立ち、そして──。
──ぐしゃぐしゃ!!
綺麗に整われた岡部の頭髪を両手で掻き毟り、何時もの無造作なんちゃってオールバックへと元に戻した。
岡部「なっ……!?」
一夏「えぇ!?」
セシリア「……はい?」
紅莉栖「調子のんな! 岡部がカッコ付けたって、孫にも衣装で良い気味よ! 茶が臍で沸くわね!」
ここにもまた1人、恋する乙女。
しかし、この学園の女子達と違い随分と素直になれない女の子。
その女の子の心を掻き毟るに充分な破壊力を、セシリアは造型してしまった。
普段の牧瀬紅莉栖なら考えられない行動である。
時間に囚われ幾日も紅莉栖と過ごした岡部ですら、初めて目にした奇なる行動。
この空間において、彼女がとった行動を理解出来る人間は岡部を含めて誰も居なかった。
勿論、彼女自身でも。
紅莉栖「(しまったぁぁぁあ!! 私ってば、なんて行動を……お、落ち着くのよ。そ、素数を……)」
一瞬の静寂。
それを打ち破ったのは他でもない、岡部だった。
岡部「ふ、ふ……」
一夏「えっと、あー……凶真?」
岡部「フゥーハハハハ! なるほどな、そう言うことか助手よ」
セシリア「???」
一夏「???」
もはや、置いてけぼりの一夏とセシリア。
頭の上にはクエスチョンマークを浮かべるばかりである。
岡部「やはり、このメァッドサイエンティスの鳳凰院凶真にはこの髪型こそが似合う。そうであろう……?」
紅莉栖「あっ、あの……えぁっと……つまり、その通りでだな……」
岡部「気にするな、じょしゅーぅ。統率の取れた髪型など、この俺には似合わない。解っていた事だフゥーハハハハ!!」
一切話しについていけない、一夏とセシリア。
奇怪な行動を取り、顔を赤らめ明らかに動揺する紅莉栖。
状況を打破する策が見つからず、鳳凰院凶真に逃げた岡部。
三者三様の有様を作り、無駄に時間だけが過ぎて行った。
おわーりです。
本日もありがとうございました。
“恋する乙女” このフレーズを書くたびにイヒッ! って感じに痒くなるんですが、原作でも多用されてるのでご容赦下さい。
NIPでは新参で、ずっとVIPで書いていた>>1なのですが>>1000レスを越えるような大作を書いた事がりません。
どうやって次スレに移行すんだとか、HTML化依頼のタイミングとかも良く解らないで焦ってまいりました。
>>1000迎えるのが少し怖いですが、最後までお付き合い頂けたら幸いです。
では、おやすみなさい。
明日も3時30分に起きるよ!(^q^)ノシ
おわーりです。
本日もありがとうございました。
“恋する乙女” このフレーズを書くたびにイヒッ! って感じに痒くなるんですが、原作でも多用されてるのでご容赦下さい。
NIPでは新参で、ずっとVIPで書いていた>>1なのですが>>1000レスを越えるような大作を書いた事がりません。
どうやって次スレに移行すんだとか、HTML化依頼のタイミングとかも良く解らないで焦ってまいりました。
>>1000迎えるのが少し怖いですが、最後までお付き合い頂けたら幸いです。
では、おやすみなさい。
明日も3時30分に起きるよ!(^q^)ノシ
乙です!
もうすぐで>>1000になるけど話的にはどの程度まで進んでるの?
細かいことだけど>>909の
>>紅莉栖「調子のんな! 岡部がカッコ付けたって、孫にも衣装で良い気味よ! 茶が臍で沸くわね!」
孫にも衣装→馬子にも衣装
>>1です。
>>915
なるほど、つまり>>1000行く前に次スレを用意しなければならないと。
完全に消化しきってから立てるつもりだったので助かりました。
>>916
焦った紅莉栖を表現しようと>>1も焦ってみたんですが、焦りすぎたようです。
孫→馬子ですはい。
進行率ですが、プロット見てみたらここまでのお話が12行でまとまってます。
膨れすぎて何処まで進んでるのか>>1でも良く解らない状況になってきました。
12行のプロットを消化するのに1スレ使いきる勢いなので、ちょっと考え物です。
>>500位で終わると思ったんですが、無駄に長くなってしまった。
個人的に半分は終わった、と思いたいですハイ。
恋愛面につきましては、やはり>>1が明記すると興が削がれるかなと思いましたのでココはスルーさせて頂きますです、はい。
>>1です。
ぷろっと
岡部、IS適性発見
入学
一日目
この三行を文章に起こすだけで㌧でもない文章量になります。
恐ろしい恐ろしい。
今日は投稿出来るかな どうかな 微妙かなって報告です。
****
ちょっと質問なのですが、携帯でのみこのSSを読んでる方って居るでしょうか。
たまーーーーーにAA使ったりしていたんで、気になってました。
良かったら教えて下さい。
携帯ユーザーも立派な読者さんですはい。
AA系SSでも無いのに使用して文章として見難くなるのなら得策では無いでしょう。
どうしても使いたい時だけ、使わせて頂きます。
永遠に……。
嬉しいですが、物語でプロットも一応あり、最後までの道筋もあるので時がくれば終わります。
お気持ちは大変嬉しいです。
2スレ目の中盤終盤。行って3スレ目の序盤には書き終わるんじゃないかなと目算しています。
みじかーいですが、今日も投下出来そうです。
いえいえ、ありがとう! 書き込み嬉しいよ!
>>1000を目前にして>>1のテンションがおかしく、何時にも増して自身のレスの多さに気付く。
本来>>1が物語以外のレスを投下するのを好まない身なのでちょっと自身が気持ち悪い。
しばらくストイックに行かせて頂きます。
添削が終り次第、来ますです。
日付変更前には終わるはずです。
>>911 続き。
─セシリア・紅莉栖部屋─
セシリア「~~♪ ~~♪」
一夏「……」
上機嫌なセシリアの奏でる鼻歌。
ヴァイオリンを嗜んでいるだけあって、鼻歌だと言うのに音程は正確でとても心地の良いものだった。
セシリア「(はぁ、幸せですわぁ)」
その後、強引に次は一夏の番です。と化粧台に座らせたあと始まった一夏のヘアチェンジ。
ヘアメイク担当は勿論、セシリア・オルコット。
セシリア「無造作ヘアーも似合いますが……先ほどの倫太郎さんのように前髪をかき上げるのも様になりますわね♪」
わしゃわしゃと髪をいじくり、数分毎に髪型を換えていく。
着せ替え人形よろしくなすがままの一夏の顔には疲弊が溜まっていた。
一夏「(コレは一体何時間続くんだ?)」
セシリア「オールバックも似合いますわね……紅莉栖さん! 紅莉栖さん!」
紅莉栖「はいはい……」
呼ばれて、億劫な声を出しながら答えたのは名前を呼ばれた当人。
その手にはセシリアに渡されたデジカメが握られていた。
セシリア「次はこの髪型でお願いいたしますわね」
紅莉栖「セイ、チーズ」
──パシャ。
やる気の無いカメラマンがシャッターを切る。
このように、セシリアが気に入った髪形が出来たらツーショットを撮影する。
ツーショットと言うのは説明するまでも無く、一夏とセシリアである。
毎度毎度、腕を絡めて実に親密そうに。
一夏「(うぅ、胸が当ってるんだよなぁ……)」
セシリア「(少々あざといかもしれませんが、何時ものメンバーが居ない今こそスキンシップを深めるチャンスですわ!)」
岡部「………………」
岡部はと言うと、午前中の疲れや今までの疲れがドっと出たのか撮影に飽きて、何時の間にか紅莉栖のベッドで横になっていた。
紅莉栖が文句を言おうとする前に、岡部はそのまま寝てしまった。
紅莉栖「(もう……。私のベッドだぞ……)」
ゴクリ、と喉が鳴ったのは紅莉栖。
紅莉栖「(べ、別に……!)」
何か、言い訳を心の中の自分に言おうとしたが直前でそれを辞めた。
内心とはいえ、それを考えてしまったら今夜は眠れなくなる、そう思ったからだった。
紅莉栖「ねぇ、セシリア。何時まで続けるの? 結構、写真もたまってきたわよ」
一夏「そうだぞ、セシリア。俺も疲れてきちまった」
セシリア「そ、そうですわね……思えばかなりの時間をヘアメイクにつぎ込んでしまいましたわ」
チラリと時計を見ると、17時を過ぎていた。
セシリア「では次の工程に──」
一夏「まだあるのかよ!?」
セシリア「当然ですわ。身嗜み……衣類やアクセサリーあとは香水で匂いなども……」
一夏「そこまでするのか……?」
セシリア「全てこのセシリア・オルコットに任せて頂ければ大丈夫ですわ♪」
紅莉栖「(……ココまでね)」
カチカチとデジカメから画像を自分の携帯に移植。
その画像を添付してメールを送信。
セシリア「香水は私のとお揃いで、レリアルのナンバーシックスを──」
──コンコン! ガチャ。
少しばかり強めのノックが響いた後、部屋の主達が扉を開く前に来客が部屋へと押し入った。
その数、4人。
箒「セシリア! どういうことだ!」
鈴音「ちょっと! 説明しなさいよ説明!」
シャル「ずるいよ、抜け駆けだよ!」
ラウラ「私が一夏の写真を手に入れるのにどれほど苦労したか……!」
セシリア「な、なぜ皆さんがこちらに……!?」
4人がセシリアに差し出したのは携帯の画面。
そこには嬉しそうに一夏と腕を組む、セシリアの笑顔があった。
ラウラなどご丁寧に、一夏の顔部分だけを抜き取り編集して既に受付画面にまで使用されている。
セシリア「これは……くっ、紅莉栖さん!!」
紅莉栖「ごめんね、セシリア。実はそこの4人に最初から釘をさされていてね……」
食堂での別れ際、紅莉栖だけ4人の専用機持ちに呼び出され何かあったら直ぐに呼べと念を押されていた。
何かあったらとは勿論、セシリアの一夏に対する抜け駆け行為である。
セシリア「スパイ……! 卑怯ですわ!」
箒「卑怯なのはどっちだ!」
鈴音「英国淑女が聞いて呆れるわよ!」
シャル「セシリア、ずるいよ! 僕も一夏とその……ツーショット……」
ラウラ「一夏。用件は解っているな?」
ずい、と最後にラウラの声が重く響いた。
キョロキョロと落ち着き無く視線を泳がせていた一夏がビクン、と反応する。
一夏「えっと……ラウラ?」
ラウラ「本来ならばこの時間は私による、特訓が行われる予定だった。
が、やんごとなき事情により時間をセシリアに譲り今に至る訳だが……」
鈴音「あんた達、今何してたのよ」
一夏「えっと……」
視線をセシリアと紅莉栖へ交互に向けて助けを求める一夏。
しかしセシリアはわなわなと震えるだけで、紅莉栖は知らん顔。
実際、一夏は巻き込まれただけなのだが決まって毎回割りを食うのは一夏である。
そうなる理由を本人が解らないのが一番の問題だが、解らないのだから仕方が無い。
箒「一夏」
鈴音「解ってるわよね?」
シャル「僕達とも」
ラウラ「ツーショット写真を撮ってもらおう。カメラマンは勿論……」
「「「「セシリアで」」」」
4人の声が重なった。
セシリアは渋々デジカメを紅莉栖から受け取るしかなく、天にも昇る最高の気分は何時しか最低なものになっていた。
一夏「俺に拒否権は……」
箒「ある訳がなかろう」
鈴音「それとも何? セシリアだけ特別なの?」
シャル「一夏。それは贔屓だよ」
ラウラ「嫁のくせに、夫をないがしろにするつもりか?」
一夏「うぅ……」
唐変木・オブ・唐変木ズである一夏にはこうなる理由が理解出来ない。
理解出来ないが、付き合うしかない。
ここからは、あーでも無いこーでも無いと姦しくポーズの指定。そして撮影。
鈴音がくっ付き過ぎだとか、箒が腕に胸を当てすぎだとかと騒ぎ立てながら撮影会が進行された。
全ての撮影が終わるころには、19時を回っていた。
一夏「つ、疲れた……」
岡部「………………」
紅莉栖のベッドでは、未だに岡部が寝息を立てている。
紅莉栖「この騒音の中で良く眠り続けられるわね」
ラウラ「疲労が溜まっていたのだろう。ふん、丁度良い休息になったわけだな」
そう言いながらラウラは、ツーショット写真が納まった自らの携帯電話を大事そうに抱えている。
他の4人も同様。
表情には出さないでいるが口角がほんの少し緩んでいるあたり、幸せそうな顔を作っていた。
─とある布団の中─
携帯電話から流れるヒーロー物のアニメ。
小さな空中投影ディスプレイからは快活なヒーローが飛び出し、悪を蹴散らしていた。
簪「最近、いっ……いちかに会って……ないな……」
ぽつりと、布団の中で誰に言うでもなく呟いたのは1年4組に在籍する“楯無 簪”であった。
“全学年合同マッチ”が終わってからというもの、1組と4組。
クラスの壁が厚く立ちはだかり、以前より一夏と会う機会が減っていた。
何度かは偶然を装い、食堂で待ち伏せなどをしてみたが何時も1組(それと2組の鈴音)の専用機持ちが彼を取り囲んでいる。
簪がその状況で一夏に話しかけられる訳も無く、結局はパンを買い教室で齧る毎日。
そして止めは岡部倫太郎の登場である。
これにより、さらに一夏に近寄る機会が激減してしまった。
簪「声……聞きたいなぁ……」
携帯から聞こえてくるヒーローの声はもう簪に届いていない。
その音声がすべて一夏のソレに脳内変換されて耳に流れる。
簪「明日、声……挨拶だけでも……してみよう……かな」
そう決意しただけで、顔が真っ赤な夕日のように染まる。
布団の中で控えめな胸に手を当てると、自分でも驚くほどに脈を打っていた。
更識 簪(さらしき かんざし)
IS学園の1年4組に所属。楯無の妹で日本の代表候補生。
姉と似たセミロングの髪形で癖毛は内側に向いている。
かけている眼鏡は視力矯正用ではなくIS用の簡易ディスプレイ。
スタイルは悪くないが、胸はやや小さい。
明朗な姉と違い内気で臆病な性格。偉大過ぎる姉に対して強いコンプレックスを抱いており、他者を遠ざけ何でも自分ひとりでやろうとする傾向がある。
趣味はアニメ鑑賞で、勧善懲悪のヒーローものが特に大好き。
専用機限定タッグマッチで織斑一夏のパートナーを勤めた。
http://kie.nu/.1jZ
おわーりです。
これにてこのスレでのSS投下は終了させて頂きます。
残りのレスは雑談やご歓談等に使っていただけたら幸いです。
答えられそうな質問もありましたら、答えます。
質問→スルー→物語に関係するので答えられない と受け取って下さい。
再三申し上げておりますが……。
シュタインズゲートもですが、ISも原作を読んだだけでは解らない設定が沢山です。
独自解釈がふんだんに盛り込まれていますがそこを踏まえてよろしくお願いいたします。
本日もありがとうございました。
>>1です。
ミスりました、30以上も残ってたらスレ埋まりませんね。
埋め。で埋めるのも情緒が無いので少しだけ投稿します。
添削が終り次第。
以下より、おまけ
─とあるラボの日常─
皆さんこんにちは、こんばんわかな? まゆしぃ☆です。
今日はちょっとだけお時間が貰えたので、ちょっと恥しいけどまゆしぃが案内します。
オカリンが、あいえす学園に入って一週間が経ちました。
まゆり「ありゃー、買い置きのバナナが切れちゃったよー」
ダル「いつもいつもバナナの買い置きがあるとか……凄く、卑猥です……」
まゆり「もう、ダル君えっちなのはダメだよー?」
学校帰りの放課後。
まゆしぃは変わらずラボに来ています。
るか「まゆりちゃん。良かったらこれ……」
まゆり「わぁ! 飴ちゃんだぁ。くれるの?」
るか「うん。ばななみるく味って言うのがあったから買ってみたんだけど」
まゆり「えへへぇ、ありがとぉ」
以前より、るか君もラボへ来てくれるようになりました。
もちろんダル君も相変わらずです。
そして、ちょっとした変化もありました。
──ガチャ。
フェイリス「ふにゃー、フェイリスが来たにゃー!」
ダル「フェイリスたんキィター!!!」
フェリスちゃんが来るたびに、ダル君のテンションがあがって何時も椅子を倒します。
そう。フェリスちゃんもラボに足を運んでくれるようになりました!
まゆり「フェリスちゃん、とぅっとぅるー♪」
フェイリス「ニャ! まゆしぃ☆は今日も良いオーラ醸し出してるニャ! うりうり~」
まゆり「ひゃぁ、くすぐったいよー」
こうやって毎日のようにきてくれて、抱きついてきたり、じゃれてきたりして遊んでくれます。
メイクインニャンニャンで会う時間よりも、もしかしたらラボでお話してる時間の方が長いかもしれません。
フェイリス「そう言えば、まゆしぃ。最近、シフトが減ってるけどどうかしたのかニャ?」
まゆり「んーっと……えへへ、秘密」
フェイリス「ニャー! まゆしぃも遂にお年頃になったと言う訳かにゃっっ!」
るか「えっ! まゆりちゃん、もしかして……」
ダル「……ま、まゆ氏がリア充になったとでも言うのかお」
まゆり「えへへぇ」
まゆしぃはオカリンに変わって、ラボのお留守番をすると決めたのです。
それ位しか出来ないから、それ位を頑張りたいの。
そうそう、もう1つ嬉しい出来事があるんだよ?
それはね……。
──コンコン。
まゆり「あっ! はぁい」
控えめなノックをする人は決まっています。
萌郁「こんにち、わ」
まゆり「はい、こんにちわ~。もう、勝手に入ってきて良いのに~」
一階のブラウン管工房で働いてる“桐生萌郁”さんも遊びに来てくれるようになりました!
照れ屋さんで、口数は少ないけれどもうお友達です。
萌郁「これ……みんなで……」
そう言って何時もケバブの差し入れをしてくれます。
なんで毎回ケバブなの? と聞いた事があるのだけど“なんとなく”なんだって。
まゆり「何時もありがとー。でも、悪いよう。お金やっぱり渡そうか?」
ダル「確かに。何時もご馳走になっちゃってる訳ですしおすし」
フェイリス「フェイリスも何かご馳走したいにゃー?」
るか「今度、僕も何か持ってきますね」
萌郁「大、丈夫……お金、使い道……特に無い……し。ココに来るの、た、楽しい……から」
毎回、こんな感じではぐらかされてしまいます。
理由は解らないけど、萌郁さんとはとっても仲良くなれるって思ってたの。
だから、ラボに来てくれるようになってすっごく、すっごく嬉しいのです。
ねぇ────オカリン?
オカリンの作ったラボなら大丈夫だよ。
まゆしぃがちゃんとお留守番しているから。
オカリンが寂しくなって帰ってきても、何時でも皆が居るから。
だから、何時でも帰ってきてね。
まゆしぃはずっとずっとずーっと、待ってるから。
ここは、オカリンの居場所だから。
これで、このスレでのSS投下は本当におわりです。
ありがとうございました。
日程めも。
これが間違っていたら目も当てられない。
日 1日目→ラボ
月 2日目→学園自己紹介等 紅莉栖制服制作
火 3日目→制服完成 コア到着
水 4日目→石鍵登場 初戦闘敗北 石鍵考察 パッチ作る
木 5日目→箒トレーニング
金 6日目→機体制御 鈴トレーニング
土 7日目→ 岡部紅莉栖別行動 紅莉栖ラボ 楯無・シャル特訓 プロテインジュース
日 8日目→ ラウラ トレーニング・午後からセシリアおされコーディネート 簪登場
月 9日目→??? ←なう!
火 10日目→1組のクラス対抗戦
新スレですが、書き溜めが出来ていない状態で立てるのも……。
と言う感じなので、1回分の投下量が書け次第スレを立てますです。
読んで頂いてる方には申し訳ありませんが、その内にagaってると思うのでよろしくお願いします。
新スレでも、よろしくお願いします。
1000
このSSまとめへのコメント
面白かったです