千早「振り返ることもないだろうから」 (18)
事務所の窓から外を眺めると、忙しなく歩く人の群れが目に入った。
今日は大雨だというのに肩が濡れることも気にせず傘をさして街中を行く人々の背中に、ついあの人の面影を重ねてしまう。
パシャリ、とシャッターの音。仕事柄聞き慣れた音だが、不意に鳴ったそれに少し驚いて振り返る。
「……千早ちゃんかぁ。びっくりした~」
そこには、カメラを構えて少しいたずらっぽく笑う友人がいた。
普段はあまり見せない笑顔に、少しドキッとする。
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