提督「艦むすの感情」 (147)

<読む前に>
*独自設定の塊です。
*Ep:1~4までの4部構成となっていますが、短編です。

おつきあいいただければ幸いです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1425806585

<Ep1:Epilogue>

21世紀、人々は戦争とは無関係な日々を過ごしていた。
戦争経験世代は生きている者も少なくなり、戦争の恐ろしさを伝える者も、減る一方だった。

しかし人類は、人類以外の、新たな敵と遭遇した。

『深海凄艦(シンカイセイカン)』

突如、日本領海の東方に出現し、人間を攻撃し出した謎の生き物。
岩のような体を持ち、火薬で人類を攻撃してくる。

どこで生まれるかも分かっていない。
なぜ、人類を標的とするのかも、分かっていない。
知能、運動能力の高さも、やつらの文明の高さも不明。

全てが謎の生き物だった。
宇宙人という説が、現在最も有力ではある。

日本の自衛隊は、奴らと戦った。
勝つこともあれば、負けることもあった。
意志を持った生き物が、謎の火気を用いて、個人で軍隊に挑む。

そもそも、人類が、人類以外と戦争すること自体が、前代見門だった。

目には目を。歯には歯を。

政府は、対深海凄艦の軍隊を編成することを決めた。
現代の、遺伝子・クローン技術を使い、新たな生物を作りだした。

それは『艦むす』と呼ばれた。

過去の戦争において、活躍した艦をモデルとして、ヒト形生物を作りだした。

それは、『人』を死なせたくないという、人類の思いに沿ったものだった。

艦むすは数週間で、目標の姿にまで成長をする。
日本語を操り、感情を持ち、知性を持ち、相当の運動能力を持つ。

そして艦むすに小型の艤装を取り付ければ、対深海凄艦の『武器』となる。

/////

<Ep2:着任>

私は、艦むすを指導する提督として、今日からこの鎮守府に着任する。

深海凄艦との戦争を、艦むすで行う初めての世代であり、情けなくも、緊張してしまう。

***

話では、この提督室に、艦むすが全員集まっているらしい。
中から何も聞こえない。

ガラッ

ドアを開けると、そこにいたのは、セーラ服を着た少女一人だけだった。
顔を緊張させながら、こちらを見つけてくる。
クローンとは、武器とは思えない、その澄んだ目。

提督「……君が、艦むすかい?」

電「は、はい! 暁型駆逐艦第四番艦電(イナヅマ)です! 司令官さん、今日からお世話になります。」

彼女は脇をしめて手を額に当て、その後、最敬礼する。

艦むす『たち』と聞いていたのだが……

提督「……他に、艦むすはいないのか?」

電「はい! 現在の艦むすは電だけです! 事務仕事をする『任務娘』さんはいらっしゃいます。艦むすの発注は『建造』と言って、使用する資材の量のデータを本部に送ると、派遣される艦むすと艤装が速達で本部からこの鎮守府に届きます」

提督「……建造と任務娘さんに関しては聞いていた」

電「! 申し訳ありません!」

電は深々と頭を下げる。私は彼女の頭に手を置き、話しかける。

提督「そんなに堅くなる必要はない。……そうか、早速建造をしないとならないな……まあ、任務さんに色々聞いてみるか……ん? どうした、電」

電は耳を赤くして、うつむいている。

電「いや! ……司令官さんが頭を撫でてくれたの、嬉しいです。ありがとうございます」

電は満面の笑みで、私を見上げてきた。
私はどきりとした。

見た目こんなに幼い子にありがとうと言われてよろこぶのは、今年25の男として危険だ。
私は無表情を貫き、提督室まで歩いた。

少し歩いて、ふいに後ろを向くと、そこに電がいた。
ずっと、後ろを付いていたらしい。

提督「……君は、どこに行くんだ?」

電「え、えと、提督室ですが……」

提督「……なぜ?」

電「え? ……その、私しか艦むすがいないから、自動的に私がヒショカンになるのでは……」

ヒショカン、ああ、『カン』の字は艦か、ややこしい。

提督「そうか、すまない」

電「いえ、大丈夫です」

私は提督室に入る。あるのはパソコン二台のみ。人の気配もない

とりあえず机に座ると、パソコンの画面に、女性が映っている。急のことに、驚く。

任務娘「初めまして、提督。提督の任務をサポートさせていただきます。よろしくお願いします」

提督「ああ、いえ、こちらこそ、お世話になります」

私は任務さんと、映像で会釈を交わし、定期的に本部から送信される任務について一通りの説明を受けた。
本部からの任務の全て管理をする人らしい。
ちなみに人間だった。

***

提督「じゃあ、まずは建造をしようか。」

電「なのです!」

電から、数十分前の堅さは抜け、まるで、親子のような間柄になっている。
私はPCの建造アプリを起動する。

提督「最初は一番少ないので回してみよう」

電「電一人では、さすがに戦えないのです」

私はとりあえず、最小のオール30での建造依頼を出す。
建造まで、20分。
この時間は、本部にて艤装を作るのにかかる時間らしく、艦むすが来るのは、その数時間後らしい。
ふと横を見ると、電が嬉しそうな顔をしている。

電「もしかしたら、電のお姉ちゃんたちが、ここに来るかも知れないのです」

提督「ほう……姉妹艦のことか」

電「はい! 暁型は建造が20分と決まっているのです!」

私は電の嬉しそうな顔を横に見ながら、別の作業に取り掛かる。
まだやることは山積みだ。

***

任務さんを頼りに、報告書を書いたり、鎮守府を見学したりしていると、新しい艦むすが、『2人』やってきた。

吹雪「特型I型駆逐艦一番艦の吹雪と申します。今後っ……」

私はそこで、自己紹介を止めさせた。
出撃ではないのだから、もう少し、ゆるくいてほしかった。

提督「肩の力を抜いて、もう一度、自己紹介をしなさい」

吹雪「あっ…はい、はじめまして吹雪です。よろしくお願いいたします!」

私は吹雪に微笑みかけてから、次の子に目線を移した。

綾波「あっ、えーと、特型II型駆逐艦1番艦の綾波ともうします。よろしくお願いします」

二人とも外見は、電よりも背が高く、もう少し年を取った感じで、真面目そうな娘だ。

提督「私が提督だ。電、この二人に鎮守府を案内しなさい」

電「了解です!」

艦むすが部屋から出て行ったのを見計らい、私はため息を付いた。

ああいう娘たちも、深海凄艦と戦うことになるのか……そう思うと、なんだかやるせない気持ちになる。
しかし、やって来た艦むすが皆、真面目そうで良かった。まあ、問題児みたいなのはいないとは思うのだが。
ただ、一つ気になる事がある。

あの娘たちは、ここに来る前は何をしていたのだろうか……

見たところ、電も吹雪も綾波も顔見知りのようだったのだが……

<IN 艦むす養成施設> 

講師「今日の授業はここまでだ。前にも言ったが、テストは全て抜き打ちだ。勉強を欠かさないでほしい。鎮守府に入ったら、座学はない。この時期にしっかりと勉強しなさい。では、また来週」

艦むす達「ありがとうございました!」

天龍「あ~終わった。体がなまってるぜ」

龍田「天龍ちゃ~ん。なんなら私と手合わせしない?」

天龍「お、いいな? どこでやるんだ?」

……私はこの施設で、艦むす達の講師をやっている。さっきの授業は化学。浸透圧とか希薄溶液とかの高度な理論の話はほとんどせず、無機の話ばかりをしている。もちろん、高校化学のレベルだ。

最初に、この施設への赴任が決まったときは、不安で寝不足になっていた。
最新のクローン技術で作られた、戦うためのヒト形生物への教育。
不安にならないわけがない。

しかし、実際に艦むす達と接してみて、今でも感じること。

普通の人間と代わりがない。

意志を持ち、感情を持ち。食事をし、排便をし。友情を築き、信頼し、時に喧嘩し。
普通の人間と何一つ変わらないのだ。

私はかつて、誰も会話をしようとしないために静まりかえり、毎日どこかしらで喧嘩が起こり、警備の銃声が飛び交う。そんな環境を想定していたものだ。

しかし、実際は違った。そもそも私は、彼女達に、無意識の偏見を持っていた。

クローンヒト形生物は、人造人間でも、アンドロイドでもない。
立派な生物なのである。

大学で生命理工学を学び、クローン技術の研究をした身として、恥ずかしい。

***

?「そうか、温かそうな鎮守府で安心したよ。ありがとう、電」

電「はい、司令官さんはとても優しいのです。電がいつもどおりの自己紹介をしたら、『そんなに堅くしなくて言い』なんていってくれたのです」

?「あーあ、私も早く鎮守府に行きたいわ~。戦うのは少し怖いけど、勉強詰めなのも結構辛いわよ……」

電「電はまだ出撃していないから、戦いのことはよく分からないのです」

?「あら、そうなの? もう2回くらい出撃したのかと思ったわ」

電「司令官さんも着任したばかりですから……今日は建造と鎮守府の見学だけだったのです。あっ、そろそろ切ります。電が秘書艦なので、まだ仕事があって……」

?「うん、じゃーね、妹が元気そうで何よりだわ」

電は電話を切り、提督室へ小走りに向かった。

 二二〇〇、提督と電の仕事は、もう少しで終わる。

<Ep3: clone>

 提督となり、数ヶ月が経過した。
 
 艦むすの数も増え、戦果もマイペースに増やしている。そして、私の趣味で、戦場に似合わないユルさを維持している。……あのあと来た、どの艦むすも、初対面からなれなれしかったのだが。

 資材のバランスなども考えて、なるべく全員を、出撃、遠征に出せるよう、心がけている。

 いざというときに、鈍っているのは鎮守府として痛いし、何といっても、戦友として、出来るだけ贔屓したくない。

 ただ、あるときふと、思うのだ。

 この娘たちは皆、クローンである。

 どういう心情で戦っているのか、それとも、感情がないのか。

 艦むすに感情があるというのは、私は断言できる。それは、数ヶ月という短い時間であっても、艦むすと一緒に生きていたからだ。

 しかし、たまに考えてしまう。あの感情も、プログラムされたものなのかと……

***

吹雪「初雪ちゃん、少しは身の回りの整理整頓をしてよ。部屋が狭いじゃん!」

初雪「ふ、吹雪は真面目過ぎるんだよ……鎮守府でも勉強するって田中先生からもらった本、結局中途半端じゃん……」

吹雪「う、うるさいなぁ! 戦場にも少しくらい自由時間があると思って……」

磯波「……結構あるよね……」

吹雪「! もう、みんな私を馬鹿にする……もう思い切ってこの本、捨てちゃおうかな」

提督「本をすてるのか?」

吹雪型「!」

ドアの向こうから、いきなり聞こえる声。提督のそれ

吹雪はドアを開けに行く。

吹雪「べ、別にまだ捨てると決めたわけじゃ……」

 そこまで言ったところで、吹雪は口を閉じる。提督の、人差し指を口元に置いた、シィのサインに気がついたのだ。

 提督の背中には、眠った霞ちゃん。

 提督「遠征続きだったから、さすがに疲れたみたいだ。ソファーで寝ていた……もし本を捨てるんだったら、提督室までもってこい。古紙として、別にするから……ん?」

 吹雪の持っている本の題名。
 『軍事利用の科学 ~毒ガスからコンピュータまで』著・田中茂 

吹雪「……司令官、どうかしたんですか?」

提督「いや……この田中茂ってやつ、お前知っているのか?」

吹雪「え、ああ、私たちが艦むす養成施設にいた頃の、勉強を教えてくれた先生です」

提督「先生?」

吹雪「あ、はい、役職としては講師みたいですが、勉強の全般を教えてくれました。テストはいつも抜き打ち。成績は全て順位と一緒に全員張り出す。厳しい先生でした」

提督「ああ、そうか…………あいつらしいなぁ」

吹雪「あの、司令官は、田中先生を知っているんですか?」

提督「ん? ああ、まぁ、なんというか…軍の関係者として、何度か顔をあわせたくらいだ。あいつ、先生なんてやっていたのか……すまない、時間をとらせたな」

吹雪「いえ、こちらこそ。失礼します」

提督は吹雪型の部屋を後にし、朝潮型の部屋に霞を置き(全員寝ていた)、提督室に戻った。

提督「田中……あいつ、なんで」

***

 電は未だに秘書艦をやっている。私が、変えるのが面倒だからだ。
 
 一部の艦むすは、あまり仕事のない状態ではあるが、私はフルで働いている。なかなかそこまで、頭が回らない。

提督「電、もう部屋に戻っていいぞ」

電「? でも、まだお仕事が残っていますが……」

提督「……ちょっと大事な電話があってな、電だけでなく、他の娘にも、聞かれたくない」

電「……はい、そういうことなら、お先に失礼します。おやすみなさい、司令官さん」

提督「ああ、おやすみ」

 電が部屋の扉を閉め、足音が聞こえなくなったのを確認して、私は携帯を取り出す。

 二二四〇。あいつは今頃家でサイダーでも飲んでいる時間帯だろう。

 田中茂。名前を選択して、発信する。

 プルプルプルプルプル……プルプル、ガチャッ、『もしもし……久しぶりだな』

 田中が出た。

<Ep4: scientist>

提督「……単刀直入に言う。お前、艦むすに勉強を教えていたんだってな」

田中「誰から聞いた? どこで知った?」

提督「吹雪の持っている本の著者がお前だった。吹雪はお前からもらったといっていた」

田中「ああ、はいはい、いや~なんとなくバレる気がしていたんだよ。でもね、やっぱり純粋に真面目で頑張り屋な生徒ってかわいいものでね、できるだけ手を尽くしてあげたいって思うものよ」

 私はそこで、田中の話をさえぎる

提督「そんなことを聞きたいんじゃない! ……お前、自分の身分を分かっているのか?」

田中「身分て……ああ、

艦むすを作った張本人ってことか?」

提督「くっ……そういうことだ」

田中「…………」

提督「なぜ黙る」

田中「元々俺が艦むす養成施設に派遣された目的は、クローンヒト形生物である艦むすの発育状態を観察するためだった」

提督「……まあ、そうだろうな」

田中「秘書艦として一番初めに行った電も、俺のもとで3ヶ月は教育を受けた。3ヶ月生活して、以上がなければ、その固体は健全であると判断された

……専門家の俺としては、成長期が終わるまでが観察対象とは思うがな。だが、今まで艦むすの固体異常報告は出ていない。

俺も初めの頃は、いつ、彼女らが異常行動を起こすのか、そればかりに気を配っていた。しかし、途中で気付いた。

たかがクローン、されどクローン。クローンといえども、生命を持つには変わりない。

それに気付いてからは、艦むす達を、一人の人間として、見るようになった。

勉強に対しても、それなりに厳しく接して、スキルアップを図った。よく出来たときにはしっかりとほめてやった。」

提督「……」

田中「そして、選ばれた艦むすは、お前の鎮守府に行った。中々、戦場とは思えない、ユルい空気みたいだな」

提督「! どうしてそれをお前が」

田中「電からの話を聞いて、第六駆逐隊が言いふらしていたぞ」

 私は分かった。初対面の艦むすすらも、なれなれしく接してくる理由が。

田中「ところで、何が聞きたかったんだ?」

提督「……忘れた、でも、ありがとう。色々分かった気がする」

田中「それなら良かったよ。じゃあな」

 電話を切る。

 私は椅子に寄りかかり、虚空を見つめる。

クローンといえども、生命を持つには変わりない。

そんな田中の言葉が、心に残る。

提督「……よし、仕事するか」

 時刻、二三三〇。

***

 あれからあまり仕事に身が入らず、メガシャキを飲み、貫徹をして仕事をしている。

 〇四〇〇。外はまだ暗い。

 コンコン。ドアがなる。誰が、こんな時間に。

電「失礼します。部屋の電気が付いていたので、その……お手伝いしようと……」

提督「……ありがとう、電。眠くないか?」

電「大丈夫です! ……あの、司令官さんは……」

提督「俺は大丈夫だ。じゃあ、この仕事をやってくれ。もう少しで終わる。助かるよ」

 電が横に座り、紙の擦れる音だけが響く、提督室。私は、電に言うことがある。

提督「……電」

電「はい?」

 電はペンを止め、私の方を見る。

提督「……秘書艦、変えようと思うんだ。もっと他の娘とも、交流を深めたい」

電「……少し寂しいけど、はい、大丈夫です!」

提督「そうか、悪いな」

 電いわく、そのときの提督の微笑みは、昨日よりも、もう少し、優しかったという。

-FIN

<あとがき>
最初は長編にして、pixivとかで上げようと思ったのですが、短編でシリーズ化したほうがうまくまとまりそうだったので、こうしました。
閲覧してくれた方、ありがとうございます。
またいつか、これの続きっぽいSSを上げようと思います。

ちょいと宣伝
電「二重人格……」
→優しすぎる電を軍人として鍛えるために、提督は電洗脳計画を立てる。提督は計画の途中で破廉恥事件を起こし、鎮守府から消える。
 新しい提督は優しかったが、前提督の計画が徐々に芽を出して……

あと、お気づきかもしれませんが、艦これをゲームでやったことがありません。PCのスペックが……

またどこかでお会いしたら、よろしくお願いします。

乙 
次書くときは「艦むす」じゃなくて「艦娘」表記にした方が違和感ないかも

>>38
コメントありがとうございます。
今後、そうします

そっか、じゃあ依頼はちゃんと出しとけよ

>>42
了解です!
ただ、この流れで、別の娘が秘書艦になったssを、安価で書こうとも思いまして……
依頼はまだ先延ばしにします。

ということで、安価をやろうと思います。安価初めてなのでお手柔らかに。
安価の艦娘を秘書艦にして、物語が始まります。
ただ、なじみのない艦娘に対しては、鎮守府にいない、という形で断らせていただく場合もあります。

書ける艦娘
朝潮型(山雲、朝雲はとても微妙)、暁型、吹雪型(叢雲除く)、曙、(潮、漣)、瑞鳳、青葉、
くらいです。
なお、なるべく期待に応えられるよう、上記以外の艦娘でも、勉強してから書いてみようと思います。

ちなみに朝潮で書いてみたのですが、結構長くなりました。
青葉はssとしてネタがあるので、もっと長く書くかもしれないです。

それでは下で。

朝潮ちゃん

>>46
了解です。というか、書き溜めを落とすだけになりますが
北上と大井のキャラ崩壊に注意してください。

<朝潮編>

「朝潮です。本日から、司令のお世話をさせていただきます! ふつつか者ですが、よろしくお願いします!」

「ああ、こちらこそよろしく(秘書艦はお世話係なのか?)」

 朝潮型駆逐艦のネームシップ、朝潮。
 私の心のあだ名は、『忠犬朝潮』。
 司令官である私に対して、すべてを賭けてくれる。

「事前に渡しておいた紙は読んだか?」

「もちろんです。この場で暗唱もできます!」

「……それは頼もしい。じゃあさっそく、仕事に向かってくれ」

シ~ン……沈黙の提督室……

///提督 side///
 〇七〇〇。
 耳栓をはめる。書類作業は、昔から、こうしたほうが集中できた。

 カリカリカリカリ
 カリカリカリ
 ……

***

 チラリと時計を見る。
 〇八三〇。
 朝食を取るにふさわしい時間だ。

 いつもは電に適当なものを持ってきてもらっていたが、たまには食堂で食べるのも悪くない。
 私は椅子から立ち上がろうとする。そこで不意に思い立つ。

 朝潮はどうしよう。

 朝潮のほうに目をやると、もう少しで片付きそうな書類をせっせと処理している。
 本当に、年不相応に、しっかりとした娘だ。将来は良いお嫁さんになるだろうな。

「……朝潮」

「はいっ!?」

 驚かせてしまった。目を見開き、こちらを見てくる。
 なんだか、新鮮な表情だ。

「ああ、驚かせてすまない。良ければ朝食、取らないか? あと一時間半で、演習が始まる。その後は出撃だ」

「あ、はい! 司令がおっしゃるなら、ご一緒します。」

 私は朝潮と、初めての食堂に行った。

///朝潮 side///
 司令と食事です。
 いまさらですが、食堂で司令の姿を見たことがありません。いつも、秘書艦の電さんが持って行っていたはずなのですが。
 
提督「朝潮、行くぞ」
朝潮「は、はい!」

 司令の大きな背中を見ながら、私たちは食堂へ向かいます。
 食堂は艦娘であふれています。

赤城「あら、提督。珍しいですね」
提督「まあ、気分の問題だ」
赤城「そうですか。席、提督の分、あるかしら?」
提督「ああ…そうか、食堂だとそういうことが起きるのか」

 艦娘であふれた食堂。そして、席の確保に困る司令。

 こんな時こそ、秘書艦、朝潮の出番です。

朝潮「司令! この朝潮、司令の席を確保して参ります!」

提督「ええ、ちょっ、朝潮~!」

 さすがは〇八三〇。混み具合が違います。
 鎮守府の艦娘の数は、少ないのですが、出されるテーブルの数も少ない。
 さらに、グループごとにまとまって座り、グループの間は椅子を開ける。その間に司令を入れることは無礼。

 こうなってしまっては、食事後に談笑をしている方に、席を譲ってもらう他は……

大井「それでね、そのあと北上さんがね~」

北上「すごい夢みたね大井っち。私に改IIIが実装されるなんて」

大井「あら~、北上さんの実力なら、明日、実装されてもおかしくないわよ~」

 大井さんと北上さんのお椀は空っぽ。
 お楽しみのところ申し訳ないですが、譲っていただきましょう。

大井「それだけじゃないのよ~、そのあとの出撃でね……」

朝潮「すみません! 失礼します」

大井「ああっ? 私は今、北上さんと話しているのよ! わからないの?」

北上「うわっ、駆逐艦……×ねばいいのに」

朝潮「お楽しみのところ、大変申し訳ないのですが、席を譲ってもらえないでしょうか?」

大井「はあ? なんで私たちがあんたみたいなチンチクリンの役立たずみたいなのに席を譲らなきゃいけないの? 頭大丈夫?」

北上「駆逐だからしょうがないよ~」

朝潮「私の見る限りでは、お二方はお食事を終了しているように思えます。これから食事をする我々に、席を譲っていただけませんか?」

大井「んな奴はそこらじゅうにいるじゃねえか! 私らの話に首突っ込むんじゃねえ!」

北上「我々?」

 ずいぶんとご立腹なようです。別の人を頼ったほうがよさそうです。

提督「お~い朝潮、先に行かないでくれ」

朝潮「あ、司令。申し訳ありません。席の確保に手間取っていました」

北上「提督!……そういえば今週の秘書艦はあいつだった……大井っち、行こう」

大井「え、北上さん、ちょっと待って。…チッ、あいつがいなければ……」

提督「……朝潮、大丈夫か?」

朝潮「はい、私は大丈夫です。……司令、少しお尋ねしたいことが……」

提督「ん? どうした、行ってみろ」

朝潮「では、失礼します。

 大井さんが不機嫌なのは、女性特有の更年期障害というものでしょうか?」

 そのとき、大井の顔に十数個の青筋が浮き上がる。

 大井は朝潮目がけて走り出し、持っていたお椀を思い切り、朝潮の頭にぶつけた。

 ガシャッ

 鈍い音を立て、割れるお椀。うどんのお椀だった。

 朝潮はその場でパタリと倒れた。大井は瞬間われに返り、食堂から走って出ていった。

提督「朝潮! 大丈夫か? 返事をしろ!」

 朝潮の目は閉じ、返事はない。

提督「……ドッグへ運ぶ!」

ドッグは普通、戦いでの負傷者を治療する場所だ。こんなけがの治療は、想定されていない。

***
**

朝潮がまだ、艦むす養成施設に入ったばかりのころの話。


松田「私が、実技を教える松田だ。

軍隊でなによりも大切なのは、上官への信頼、忠誠心。

何事にも真摯に取り組め。できないものは死ぬだけだ。」

 私、朝潮は、松田先生に言われた通り、『忠誠心』を大切にした。
 
 出会った先生を信じ、先輩を信じた。

 そして、すべてのことに、真面目に取り組んだ。一所懸命に頑張った。

 そして、鎮守府に行った。

 最初に司令に言われた言葉は今でも忘れない。

 『そんなに堅くならなくていい』

 私は未だに理解できていない。

 堅いというのは、真面目な証拠じゃないのか。周りを見ても、真面目な人はみんな、堅い……

 それから、いろいろなことを考えるようになった。

 なんで堅くなったのだろうか。松田先生に、忠誠心の大事を教わったから。

 松田先生に会ったのはなんでか。……艦むす養成施設に行ったから。

 じゃあ、なんで艦娘になろうと? ……わからない。
 
 艦娘って、なに……


**
***

 パチリ
 目を開くと、蛍光灯がまぶしい。

北上「あっ……おはよう。提督、呼んでくるね……」

 北上さんは、逃げるように部屋を出ていく。ベッドと洗面所しかない部屋。

”北上「……×ねばいいのに」”

 あの時の北上さんの言葉は、何だったんだろう。

”北上「×ねば」”

 頭の中で、ぐるぐると回る、あの時の北上さんの言葉。

”北上「×ね」”

 ドタドタドタドタ

 だんだんと近づく足音。だんだんと高まる、私の緊張。

 冷汗が流れる。

”北上「[ピーーー]」”

>>58
規制が入ってしまいましたね。察してください……

提督「朝潮! 大丈夫なのか?」
朝潮「いやあぁー!」

 ×ねってなに? ×ぬってなに? 意味は知っている。待って、じゃあ、
 
 私はいつ、生まれたの?

提督「朝潮、しっかりしろ!」
北上「うわあ、わぁ、あ、朝潮ちゃんしっかりー」

 ぎゅうう……
 司令の腕をきつく掴む。朝潮の無礼、お許しください。

提督「あ、さ……しお?」

朝潮「……司令、一つ、聞いていいですか?」

提督「あ、ああ、いくらでも聞いてやるよ……」

朝潮「私はいつ、生まれたんですか?」

///提督 side///
 一番答えにくい質問を、こんなに幼い娘から受けるとは。

 周りを見渡す。北上はどこかへ行ったらしい。

 正直に、知っていることを全て言うべきなのだろうか?

 ……私は朝潮を抱きしめた。小さく、儚い体。

朝潮「……司令?」

提督「もう、辛いことは考えなくていいんだ」

朝潮「……よくわかりません、司令。辛いって、何がでしょうか」

提督「今日のことは、忘れなさい……」

朝潮「……」

提督「……」

朝潮「……スー、スー」

提督(寝たか……)

***

 翌朝。
 私はあれから朝潮を提督室まで運び、私のベッドに寝かせた。
 ドッグのベッドでは、不安だった。
 
朝潮「……司令……」

提督「ん、起きたか?」

 私はベッドに近づき、朝潮の顔色を見る。

提督「……大丈夫そうだな」

朝潮「しれー……」
 
 朝潮が、私の袖を引っ張る。

朝潮「あの……ありがとうございます」

 私は優しく微笑みかけた。『忠犬朝潮』なんて思っていたが、年相応なかわいらしい面もあるんだな。

朝潮「……あの、お仕事、手伝いますね」

提督「……体はもう平気か?」

朝潮「はい! 大丈夫です」

 私は朝潮の手を引き、ベッドから起こす。朝潮は少しふらついているが、椅子に座る。

提督「じゃあ、仕事を頼む」

 すると朝潮は椅子を私のほうに寄せてきた。そして私の腕によりかかる。

朝潮「……二人でいるときくらい、こうでもいいですよね……」

 ああ、懐いたということか。変に堅い性格が治ったのは嬉しいのだが、ここまでされては……

 結局、朝潮が秘書艦の一週間、皆の前では忠犬、私の前では甘えん坊という朝潮の二面性を見ることとなった。

<朝潮編> -FIN

いつも真面目な忠犬朝潮がデレデレ朝潮になる、感じの話でした。
おつきあいいただいた方、また、安価をくださった方、ありがとうございます。

安価下。

秋月
無理だったら瑞鳳で

>>65
瑞鳳で書かせていただきます。ごめんなさい

少々お時間を。

<瑞鳳編>

瑞鳳「祥鳳型軽空母、瑞鳳です。よろしくお願いします」

提督「こちらこそ、よろしく頼む」

 軽空母娘の中でも平凡。特別強いわけでもないから、私の中ではトップレベルで影の薄い存在だった。

 運が良いとは、たまに感じるのだが。

提督「先に配った紙は読んだか?」

瑞鳳「はい、大丈夫です」

提督「なら、さっそく頼む」

 カリカリカリカリ。私のペンの音だけが響く。
 チラリと横を見れば、瑞鳳は紙を見ながら、仕事をやっているではないか。

瑞鳳「えっと、……この場合は……こうして……これで大丈夫……? んでこっちは……」

 カリカリカリカリ
 
 カリカリ……カリ……カリカリ

提督(こいつ、何しに来たんだ?)

瑞鳳「よし、いっちょ上がり♪ ……で、つぎはと……」

 だんだんとイライラしてくる。耳栓をしていても伝わる、不安な雰囲気。

 ミスはやり直させればすむ話だが。この様子では、そのやり直しまでミスをするのではないか。

瑞鳳「で、これはこうね……カリカリカリ……それでこっちは」

提督「おい」

 我慢の限界だ。

瑞鳳「はいっ!?」

提督「……黙ってやってくれるか? 神経質な性格でな……」

瑞鳳「あ……ごめんなさい、悪気はなかったのですが……」

提督「……仕事に戻れ」

瑞鳳「……はい……」

 ああ、艦娘たちと交流を深めるために秘書艦を変えたのに、こうなってしまうとは情けない。

 いや、私と瑞鳳は、馬が合わないということだろうか?

***

///瑞鳳 side///
 一〇〇〇。
 出撃の時間。提督は無線を使って私たちの様子を確認し、必要に応じて指示を出します。

 私は、前線から送られてくる、艤装や天候、敵のデータを見て、提督に状況を伝えます。

 非常に大切な役割です。書類の仕事のマニュアルはざっと目を通しただけですが、これに関しては、しっかりと予習してきました。

***

不知火「……以上で報告終わります」

提督「ご苦労。ゆっくり休んで、次に備えなさい」

 不知火さんが、提督室を出ていきます。相変わらず、駆逐艦とは思えないオーラです……

瑞鳳「……提督、出撃の報告、まとめました」

提督「ああ、ご苦労。引き続き、書類の仕事に移ってくれ」

瑞鳳「……はい」

提督「……はぁ……」

瑞鳳(秘書艦一日目にして嫌われちゃったかな……)

今日はここまでです。

無事、今後の展開がまとまってきたので、このまま続けようと思います。

艦娘たちの、ほのぼのかわいらしいエピソードを目指します。

メール欄に「saga」入れると規制外れるぞ

あとsaga無しだと「高雄」とか「高揚」とかが変な事になる

少し、加筆しようと思います。
>>73 ありがとうございます。そんな機能あったんですね!

ちょっと試しに
 高翌雄 高翌揚

>>74
確かに変ですね

鳳翔さんと飲んでいます


瑞鳳「グビッ、グビッ、ぷはぁ~……もう、切られちゃうのでしょうか?」

鳳翔「瑞鳳ちゃん飲みすぎよ。それに、まだ二三三〇じゃない、秘書艦の仕事はどうしたの?」

瑞鳳「……『お前は仕事を遅らせる』って言われました」

鳳翔「……ま、まあ、まだ始まったばかりじゃない。そのうち、提督も認めてくれるわよ」

瑞鳳「そうだといいんですが……」

瑞鳳「ああーっ! 提督のこと、結構好きだったのにぃ……優しいし、エッチな雰囲気とか出さないし……」

鳳翔「……きっと、大丈夫よ。それに秘書艦なら、提督にアピールとかできるじゃない!」

瑞鳳「うぅ~…自信ないよぉ~」

鳳翔「とにかく、がんばりましょ。それに明日なら、書類の仕事とか、ばっちりとこなせるじゃない」

瑞鳳「……鳳翔さん、ちょっと、お願いが……」

///提督 side///
 よしっ、やっと終わった。二四〇〇。使えないとはいえ、秘書艦を追い出したのはちょっとやりすぎた。

 というより、本来なら私が最初に教えるべき内容だ。丁寧にプリントを作ったとはいえ、少し慢心していた。

 追い出した時の瑞鳳の顔、悲しそうだったなぁ……

 …………寝よう。

***

///瑞鳳 side///

 私が使えないのが悪いんだ。提督に甘えて、予習せずに仕事をして。
 
 ぶつぶつ言いながら紙を見て仕事をして……提督に媚を売るようなことして。

 私、最低だ。女としても、艦娘としても。

 はぁ~、なんで艦娘として生まれてしまったんだろう……クローンって……

 うっ……うぐっ、ひぐっ……クローンって、私が消えても、新しい私が生まれるっていうことだよね……

 私は提督にとっても、みんなにとっても、いつ、消えてもいい存在なの?

 本当に……なんで私は生まれたの?

祥鳳「……瑞鳳、どうしたの? こんな夜中に、一人で……」

瑞鳳「……グスン……なんでもないよ、ごめんね、起こしちゃって……」

祥鳳「もう、静かにしてね……」

 ああ、本当になんで私って、生まれたんだろう?

***

 翌朝。目を覚ますと、〇五〇〇と少し。

 艦娘の起床は〇七〇〇。秘書艦は〇六〇〇なので、まだ余裕があります。

 ですが、私は起きます。身支度をして、提督室へ向かいます。

瑞鳳「コンコン 失礼します。秘書艦の瑞鳳です」

 提督はまだ寝ています。なんて無防備な姿でしょう。この瞬間だけは、手をつないだり、スリスリしたり、……き、キスとかしても大

丈夫なんです……やりませんけど!

瑞鳳「えーと、今日の仕事は……これね」

 畏れ多くも、提督のパソコンを起動します。

[please login]

 ……パスワードなんて、わかりません……これは誤算です。

 提督の起きる前に、少しでも仕事を片付けようとか思っていたのですが、その計画は、もう終わってしまいました……

瑞鳳「……どうしよう……変なことをするわけにもいかないし、どうやってパソコンを落とせるのかもわからないし……」

 ああ、この瑞鳳、また失敗をしてしまいました。

 もう、提督に見せる顔がありません。

 提督は、まだ、お休みのはずです。

提督「……よお……」

 ! な、なんで起きているの…… しかもなんでこっち見ていたの?

瑞鳳「……お、おはようございます」

提督「……早いな」

瑞鳳「あ、ありがとうございます……」

提督「……何をしていた」

 もう、提督に見せる顔がないです……
 私は正座をして、額を床に付けました。

瑞鳳「ごめんなさい! 提督のお手伝いをしようと思ったばかり、こんな過ちを犯してしまいました! 申し訳ありません」

 ああ、もう提督に、完全に嫌われちゃったかな?

 すると提督は起き上がり、パソコンを覗き込みます。

提督「……なんかしたのか」

瑞鳳「デイリー任務を見ようとして、パソコンを開いてしまいました……」

提督「……で?」

瑞鳳「えっ? そ、それだけですが……」

 提督はうつむき、ため息をつきます。

提督「はぁー……瑞鳳がパソコンを壊したのかと思ってびっくりしたよ……」

瑞鳳「え、いや、そんなことは、していません……」

提督「……」

瑞鳳「……あの、何か……」

提督「……もういい、仕事をしよう」

提督「それと……昨日はすまなかった。部屋を追い出してしまって。自分が秘書艦に選んだにも関わらず……」

瑞鳳「い、いえ、大丈夫です……私の責任ですし……」

提督「そう言ってもらえるとうれしいよ。本来仕事は私が直接教えるものだ。わからないことがあれば、なんでも聞いてくれ」

瑞鳳「は、はい……ありがとうございます」

 やっぱり提督は、優しいです!

***

///提督 side///

 午前中に二度も出撃をした。最近、深海棲艦の出現が多発しているらしい。
 深海棲艦の調査が急がれているが、奴らの現れるところの周辺には渦潮がある場合が多く、調査は難航しているという。

 艦娘でも、渦潮には逆らえないものだ。

瑞鳳「現在時刻、一二〇〇です。提督、そろそろお昼の時間ですが」

提督「ああ、そうか。じゃあ……一緒に食堂に行かないか」

瑞鳳「えっ! はい、提督が良ければ、ご一緒させていただきますが……」

提督「朝潮とは、一緒に食べたんだ。……昨日はちょっと、な……」

瑞鳳「い、いえいえ。私は気にしていません!」

 はあ、つくづく情けない。
 しかし、瑞鳳とは無事に仲を取り戻せた。初めのころは不真面目と思っていたが、肝心なところに気を配る、良い娘だ。

瑞鳳「じゃあ提督、行きましょう」

***

///瑞鳳 side///

 無事、司令と仲良くなれました! 昨日の自分が嘘みたいです。
 クローンとかそうでないとか、もうどうでもいいです。今の私には、提督しかいないのですから。

 鎮守府での昼食としては、少々早いので、食堂は空いています。……ハッ! 私は肝心なことを忘れていました。

提督「適当にうどんとかでいいな……」

 だめ! うどんだと合わないから!

瑞鳳「提督! この、日替わり定食とかどうですか?」

提督「ん? ああ、いいかもな。間宮さん、今日のおかずはなんでしょう?」

間宮「だし巻き卵です。初物なんですよぉ~」

 ! も、もっとだめぇ!

提督「じゃあ、それで……」

瑞鳳「和食セット二つで!!」

提督「は?」

間宮「…はい?」

瑞鳳「私と提督、和食セットでお願いします。いいですよね! 提督!」

提督「あ、ああ、私は構わないが」

間宮「…和食セット二つですね。」

///提督 side///

 和食セットが二つ並ぶ。私と瑞鳳のものだ。

 私は日替わり定食を頼んだのだが。瑞鳳に無理やり却下されてしまった。まあ、なんでもよかったのだが……

 横で瑞鳳は顔を赤くして、すごくニコニコしながら和食セットを食べている。そんなに、このメニューが好きなのだろうか?
 それだけなら、私までこのメニューにする必要はないが……

 ……いや、瑞鳳は色々と気の利く娘だ。私に美味しさを伝えようというやつであろうか?

瑞鳳「……提督、少々席を外しますね」

提督「ああ……」

 そういって瑞鳳は間宮さんのもとへと向かう。耳打ちをして何かを伝え、ニヤニヤした間宮さんに、肘で小突かれている。

 まあ、気にせず飯を食べよう。せっかくの和食だ。冷めてしまってはもったいない。

 ……ジリジリ……ジュゥ~

 厨房から香る、バターの香り。こんなメニューがあったのか……

 私はもう少しで完食だが、瑞鳳が未だに戻ってこない……10分くらい経つだろうか? 飯もまだ残っている。

瑞鳳「……てーとく」

 振り返ればそこには瑞鳳。手に持っているのは……卵焼き?

瑞鳳「わ……わたしの卵焼き……食べりゅ?」

 卵焼きを作っていたのか?

///瑞鳳 side///

 ああー噛んじゃったよぉー……恥ずかしいよぉ……

提督「……ああ、ありがとう。お前も早く食べろ」

 そういって提督が手を付けたのは、私の卵焼き。
 昨日鳳翔さんに頼んで、作り方を伝授してもらったのです!

提督「……うん、程よく甘くて美味しいよ。ありがとな、瑞鳳」

 提督が微笑んでくれた……思わず顔がゆるみます。

提督「おい、お前も早く食べろ」

瑞鳳「はい!」

 私は、今にも提督に抱き付きそうな勢いを抑えるため、一心不乱に、ご飯を食べます。
 頭の中は、提督の言葉でいっぱいです。

瑞鳳「ごちそうさまでした!」

提督「…行くか」

瑞鳳「はい!」

 ああ、今日はとても良い日です。

間宮「……づほちゃん、がんばってね」

***

離脱しますね

二二〇〇。夜です。お仕事終わりました!

提督「よし、部屋に戻って良いぞ。ご苦労だった」

瑞鳳「はい、明日もよろしくお願いします……あの、ちょっといいですか?」

提督「ん? どうした……」

 私は提督の腕をつかみ、寄りかかります。ああ、落ち着きます。このまま寝てしまいたい。

///提督 side///

 瑞鳳が、私の腕に寄りかかってくる。この状況、朝潮の時と同じだ。夜になると懐いてくる。

 やられる側としては悪い気はしないが、長いと、なんとなく損をした気になる。

提督「……瑞鳳」

瑞鳳「はい?」

 眠そうな表情で、こちらを見る。私はすかさず、頭に手を伸ばした。

瑞鳳「! て、てーとくぅ……」

 頭を撫でるのは、する側も結構楽しい。艦娘でありながらも、可憐な存在に感じてしまうのが不思議だ。

瑞鳳「ていとく、私……提督のことが好きです……」

提督「……ありがとう」

 おそらく彼女は今まで、数人の男としか接してこなかっただろう。年頃の少女だ。そのうちの一人に恋するのも、不思議ではない。た

だ、もっと広い世界で、好きな人を探してほしい。

瑞鳳「知ってますか? 私は二十歳、提督は二十五歳。たった五つしか変わらないんですよ」

 前言撤回。少女ではないな……成人していたのか。

瑞鳳「結婚も、普通にできる年齢差なんですよ」

提督「……艦娘との結婚は、認められていない」

瑞鳳「んーっ、つまんないのっ!」

 瑞鳳は私から離れ、ドアの前まで行った。

瑞鳳「提督……たまにこういうことしてくれると、うれしいです……失礼します!」


 その日私は、信頼と好意がイコールなのかを考えながら、眠った。

<瑞鳳編> -FIN

電「電とは、こんなこと、してくれなかったのです」
提督「私は自分からやっているわけではない」

瑞鳳編、終わりです。お読みくださった方、安価をくださった方、ありがとうございます。

瑞鳳が、艦むす養成施設にて、艦娘の存在について教わった時の回想も書いて、シリアスを作ろうとも思いました。が、ダラダラ長くなりそうだったのでやめました。

この話を書いていて、ssっぽい書き方がなんとなくわかったので、今後そちらに移行しようと思います。
地の文は少なく、心の台詞は()、○○ side とかは一度切って区別。

次で最後にします。安価>>100

飛龍

>>100
飛龍で書いてみます。
途中まで書いたのですが、いろんなキャラのリミックスになりそうです。
私自身は書いていて楽しいのですが……

飛龍「飛龍型航空母艦、飛龍です。よろしくお願いします」

提督「ああ、よろしく頼む」

提督(エクセルで乱数発生させて、艦むす図鑑にある番号がでるまで振ったら偶然当たったとは言えないな……)

提督「事前に配ったプリントの通り、仕事をこなしてくれ。わからないことがあれば、なんでも聞くように」

飛龍「了解です!」

提督(素直な娘だ)

***

カリカリカリ

飛龍「……提督、ここはどのように記入するのですか?」

提督「ん……ああ、すまん、私がやるべきものだ。すまない」

飛龍「いえいえ、それより、もう少しで演習が始まりますよ」

提督「ああ、すまん。一二〇〇からだったな。ありがとう」

コンコン

朝潮「失礼します。遠征から戻りました!」

提督「あー朝潮すまん。ちょっと持っていてくれ。私はこれから遠征に行くんだ」

朝潮「申し訳ありません。朝潮は一二三〇からまた遠征に出かけます」

提督「あー…… すまない! 他の子に頼んでくれ!」

朝潮「了解しました!」

提督「よし、飛龍、行くぞっ!」

飛龍「はい! 提督!」

朝潮「どうか御無事で!」

***

朝潮「……というわけで、お願いします」ペコリ

霞「よりによってあんなクズのところでお留守番なんて……」

朝潮「そこをどうか……」

霞「……まぁ、お姉ちゃんの言うことだし、いいわよ」

朝潮「ありがとう、霞。じゃあ、私は遠征に行ってくるわね」

朝潮(……)

朝潮(あっ! 電さんが今日はお暇だった……)

朝潮「まあ、もうしょうがないか、帰ったら霞に謝らないと……」

朝潮(霞も提督のこと、悪く言い過ぎだと思うけど……)

***

提督室にて


霞(……暇ね、なんか持ってくればよかったわ)

霞(……)

霞(ちょっと、ちょっとだけ、部屋を探索してみましょう)

霞(イケナイものとか出てきたら、どうしてくれましょうか)

ガラッ 机の引き出しの中

『艦娘艤装能力全集』『艦娘装備全集』

霞(……ずいぶん、真面目じゃない)

霞(他の引き出しはカギがかかっている……なら、ベッドのしたは!)

霞(クズの読むような本を、隠しているに決まってるわ!)

『軍人として生きる』『軍事利用の科学(以下略』

霞(……このクソ真面目クズ司令官!)

霞(つーかなんで田中先生の本なんて読んでるのよ!)

バタン

提督「あーなんか不完全燃焼だな~」

飛龍「あっという間に終わっちゃったね。提督の実力ですよっ! ……あれ?」

霞「あっ」

引き出しは開けっ放し。ベッドの下から本を出す。

飛龍「……霞ちゃん、何してるの?」

霞「こ、これは別に漁っていたとかじゃ……あっ! 朝潮に頼まれて、遠征の報告の紙を預かってきたのよ!」

提督「あ、ああ、ありがとう」

霞「もう! そんぐらい察しなさいよ!」

霞は逃げるように、提督室から出ていく。

提督「ああ……片付けぐらいしてくれよ」

提督はベッドの下に置いていた本を、元に戻す。

飛龍「あっ、その本」

提督「ん? ……ああ、これか」

飛龍「田中先生、元気にしてるかなぁ……」

提督「……そんなに、思い入れのある先生なのか? 吹雪も言っていたが」

飛龍「まあ、色んな意味で……」

飛龍「それに、なんとなく、そばにいて心地が良いんですよ。安心するっていうか……」

飛龍「……私たちに親はいませんが、そんな感じかもしれません」

提督「! ……お前、知っていたのか」

飛龍「え、はい。あー、一部の駆逐ちゃんとかは知らないかもしれませんが、たいていは知っていますよ」

提督「……そうか」

飛龍「最初、自分がクローン人間だと聞かされた時は、全く実感がわきませんでした」

飛龍「でも、話を聞くたびに、ああ、本当にそうなんだなぁって、受け入れられてくるんです」

飛龍「私も最初は、『えっ、親って何?』とか、そんなレベルでしたから」

飛龍「数日くらいは、やっぱり悲しかったです……でも」

飛龍は提督に抱き付く。

飛龍「今は、提督がお父さんみたいですから!」

提督「……」ギュウッ

提督は、少し強めに、飛龍を抱きしめる。

飛龍「うふふ……お父さん♪」

提督「……よし、仕事に戻るか」

飛龍「ええ~、もうちょっと甘えてもいいじゃん」

提督「最近忙しいんだよ……出撃とかやりまくってるし、戦績とか戦果とか個人別につけなきゃならんし」

飛龍「ねー、前から思っていたけど私たちの『レベル』ってなんのためにあるの?」

提督「それは活躍ぶりを見るためだよ。それに、数字が増えるとうれしいだろ?」

飛龍「でもさ、上限はいくつなの?」

提督「……99だ」

飛龍「上限あったら意味ないじゃん」

提督「でも99になったらけっこ……」

提督は慌てて口を閉じる。しかし、もう遅い。

飛龍「結婚!? レベルが99になったら結婚できるの!?」

提督「……ああ。あくまで仮だがな」

飛龍「結婚かぁ…親子から夫婦へ。うん、良い響き……」

提督「誰がお前と結婚すると言った」

飛龍「え? 違うの?」

提督「……特にまだ決めていない。まだ先の話だしな」

飛龍「でも、婚約はできるじゃん」

提督「……まだ先の話だ」

その日のうちに、鎮守府の全艦娘にこのことが知れ渡り、戦果が倍近くに、提督の忙しさも倍近くになったのだ。

飛龍編 -FIN 

雑になってしまいました。ごめんなさい。
ここまでお読みくださった方、ありがとうございます。
これにて安価は終了です。

レスをくださった方、安価に参加してくださった方、ありがとうございます。

スレの最後に、霞の話を書こうと思います。良ければ、そちらも読んでみてください。

番外 霞編

霞「霞よ。ガンガン行くわ」

提督「ああ、よろしく」

提督(苦手なんだよなこの子)

霞「さぁ、さっさと仕事しましょう」

提督「……プリントに書いたとおりだ。わからないことがあったら聞いてくれ」カリカリ

霞「はあ? プリントに全部書いときなさいよ! このクズ!」

提督(いきなりクズか……)カリカリ

***

羽黒「ダメ…見ないで…見ないでぇー!」

提督「羽黒、大丈夫か!? ……戦況は」

霞「大破が4、中波が2。進撃は無理ね」

提督「くっ……全員、帰投せよ……」

提督「……すまない、皆」

霞「あんたの指揮がもっとマシなら、戦いももう少しスムーズにいったでしょうね」

提督「……」

***

羽黒「……以上で報告終了です」

提督「ご苦労。ゆっくり休んでほしい」

羽黒「はい。失礼します」

キィー バタン

霞「座ってるだけの人間が、命かけた人にご苦労って、ずいぶん軽いわね」

提督「……そうだな……」

***

提督「一三〇〇か……霞、悪いが、私の昼食を食堂から運んでくれないか? なんでも良い」

霞「はぁ? なんで私があんたの昼食なんて運ばなきゃいけないのよ」

提督「……嫌ならいいよ」

霞「はぁ……死ねばいいのに」

提督(ついに死ねか……)

***

夕立「うわぁ!

提督「! 大丈夫か!」

夕立「も、も~ばかぁ~……これじゃあ戦えないっぽい~?」

提督「……戦況は」

霞「大破3艦、中波2艦、小破1艦よ。もう終わりね……」

提督「……全員、帰投せよ」

夕立「ゆ、夕立はまだ、戦えるっぽいよ!」

提督「……もういい、帰投しなさい」

霞「はぁ、同じ結果になるなんて、情けないわね」

提督「ああ、全くだよ」

***

夕立「……以上で報告を終わります」

提督「出撃、ありがとうございます。どうか、ゆっくりお休みください」

夕立「……提督さん、なんかいつもと違うっぽい……」

提督「私は大丈夫です。どうか、ご自身の管理を」

夕立「……失礼しました」

バタン……

霞「『私は大丈夫です』とか、実際何もしてないじゃない」

提督「はい、俺は本当にクズですよ……」

***

二〇〇〇

提督「」カリカリカリカリカタカタカタカタ

霞「……」

提督「」カタカタカタカタ、ペラペラ

霞「……ちょっと」

提督「はい、何でしょう」

霞「……晩御飯、食べに行ってもいいかしら」

提督「ああ、もうそんな時間ですか。ごめんなさい。もう上がって結構です」

霞「……だからクズなのよ」ボソッ

バタン

提督「……」

提督は無言で、ニコニコ笑っている。

***

〇二〇〇

提督(……腹減ったなぁ)カリカリ

提督(……よし、と。これで今日の仕事は終わりか)

提督(……寝なくてもいいや)

提督(それより、明日の作戦について、もっと考えよう)


霞「う~ん……う~ん……」

大潮「霞、うるさいよ。どうしたの?」

霞「……」

大潮「……無視しないでよ」スピー

霞(なんであいつに、冷たなっちゃうんだろ?……)

***

コンコン

霞「失礼するわ」

提督「おはようございます。今日もよろしくお願いします」

提督は不気味なほどニコニコしながら、霞に話しかける。

霞「……おはよう」

***

提督「……カタカタ……あ、霞さん、朝食食べてきてください」

霞「……さんづけしないで……気持ち悪い」

提督「ごめんなさい」

霞「……」チラッ

提督「」カタカタ

バタン

提督(……ふぅ~……)

提督(俺の朝食はこれだな)

栄養ドリンク1本。

提督(ゴクッ、ゴクッ……ふぅー……)

提督(なんかだるいなぁ……しかし休むわけにもいかない。そう、艦娘たちは、もっと辛い思いをしているんだ)

カタカタカタカタ

霞「……」ズルズル

大潮「あっ、霞じゃん!」

霞「……」ズルズル

大潮「無視っ!? もう酷いよぉ~」

霞「……」ズルズル

大潮「……霞は司令とご飯食べたりしないの?」

霞「……」ズルズル

大潮「……司令最近会ってないんだよね~、ずっと遠征ばっかだし。あ、でもね、遠征組が出撃組と合流して戦うときもあるんだって!」

霞「……」ズルズル

大潮「……なんかごめん。秘書艦、がんばってね」

霞「……」ズルズル

霞「……はぁ」

***

霞「戻ったわ」

提督「」カタカタカリカリ

霞「返事くらいっ!……しなさいょ……」

提督「お帰りなさい。引き続き、よろしくお願いします」

***

提督「駆逐艦よりもボスを集中して撃て! 一発で致命傷になる!」

北上「うわあっ!」

提督「どうした! 北上」

北上「うう……魚雷がクリティカルで当たっちゃったよ……」

提督「くそっ……雷撃か……戦況は!」

霞「大破が3艦。撤退ね」

提督「……全艦、帰投せよ」

北上「そんなっ、あたしはまだ戦えるよ!」

提督「命令だ。帰投せよ……」

北上「……了解」

霞「また同じね。なんど繰り返せば気が済むの?」

霞「あんたが出撃命令出すたびに、負傷して帰ってきて、資材を浪費して」

霞「提督なんて……や、やめたほうがいいんじゃないの?……」

霞(さすがに言い過ぎたわ……)

提督「……そうかもな」

提督は光のない目で、虚空を見つめた。

***

北上「……以上が戦況の報告だよ」

提督「ありがとうございます。私の力不足で、こんな目に……」

北上「いやいやっ、提督のせいじゃないよ……むしろ私たちの練度が低いせいだって」

提督「……演習の日程を組むのも、私ですから」

北上「いやいやいや、だから違うって、なんでそんなこと……」

提督「お気遣いありがとうございます。ドッグでゆっくり、休んでください……」

北上「ああ、うん……なんかごめん」

提督「……あなたは何も、悪くありません」

***

ドッグにて

北上「……ふう」

球磨「なにため息ついてるクマ? 戦いのことクマ?」

北上「ああ、クマっち……いや、提督がね」

球磨「提督さん! 最近ずっと見かけていないクマね~」

北上「うん、最近おかしいんだよね……艦娘に対して敬語使ってるし」

球磨「提督さんが敬語! それはおかしいクマ」

球磨「……人は自殺する最後の日、優しくなると聞いたことがあるクマ……」

北上「ちょ、ちょっとやめてよ~。シャレになんないよ」

球磨「アハハハ、冗談クマ。提督さんが球磨たちを残して死ぬわけないクマ。きっと、誰かになんか言われただけなのクマ」

北上「……それならいいんだけど」

***

提督(……)カタカタ

提督「霞、上がって良いですよ」

霞「……」キィーバタン

提督(……提督、やめようかな)

提督(実際、俺に向いていないというのはなんとなく感じていたし)

提督(良い機会だ。実際、提督の仕事は、艦娘なら楽にこなせる)

提督(俺が消えたところで、支障はない……な)

カタカタカタカタ

提督(……よし、俺の仕事の手順のマニュアルも完成した)

提督(あと、パスワードは……帽子の中にメモを入れておこう)

提督(制服も脱いで……パジャマに着替えて)

提督(よし、準備完了!)

提督は鎮守府を出て、裏の森へと足を運ぶ。

孤独の中で、『自決』を図るのだ。

ガラッ、ザー

朝潮(ふ~、すっきりした)

朝潮(寝る前にお茶を飲みすぎました)

スッ

朝潮(ん、あれは司令。しかもパジャマ姿で……)

朝潮(こんな時間にどこに行くのでしょう)

霞(……髪留め、どこに落としたのかしら)

霞(まさかあいつの部屋? 今さら入れないわ。なんか最近怖いし……)

霞(はあ、朝に探しましょう)

スッ

霞(ん、あれは朝潮お姉ちゃん)

霞(なんでこんな時間に?……)

***

提督「あ~、夜はいいなぁ。気分がいい。幽霊さんよ。もしいるのなら出てきてくれ」

提督「……まあ、いるわけないよな、ハハッ」

提督「ん、この木は高さもちょうどよく。太さもなかなかだ」

提督「ロープをくくってわっかを作って♪」

朝潮(司令は何をしているのでしょうか? なんかの作戦でしょうか)

朝潮(でも、こんな山奥になんの仕掛けを?)

霞(ちょっと、もしかしてあれって……)

朝潮・霞(あっ!)

朝潮「……どうして霞がここに?」

霞「お、お姉ちゃんが夜に外に出ていくから、ついてきたのよ」

朝潮「なるほど……それより、司令は一体何を……」

霞(……まさか、そんなわけないよね)

提督「はあ、装置の完成」

提督「……この世も最後か……短かった、いや、長かったな。十分満足感を得られたよ」

提督「自称進学校から軍隊に入って、艦娘の提督になって」

提督「……うん、楽しかった。皆、今までありがとう」

提督「……はあ」

提督「いくか、もう俺は、必要ないんだ」

朝潮「しれええええーーーーーーーーー」ダッ

霞「あ、ちょっと」

提督「! ど、どうした朝潮」

朝潮「グスッ……グス……はやく……はやく、ちんじゅふに、かえりましょう…」

朝潮「わたしは、今のしれいを見ていてすごく悲しいです」

朝潮「しれい、……私たちを置いて、どこかに行かないでください。もう、しれいしかいないんですよ」

提督「……朝潮」

霞「……いいなぁ」ボソッ

提督「お、霞まで」

霞「!」ビクッ

霞「あっ……あ……」

霞の目から、涙が蛇口の水のようにあふれる。

霞「……わ、わたしだって、本当はかんしゃしてるもん!……」

霞「すごい量の仕事こなすし……何十人もの艦娘をまとめるし」

霞「……途中撤退だって、死者を出さないためって、本当はわかってるし……」

霞「私も、司令のこと……その……尊敬しているし! てゆーか……好きだし!/////」

霞「だから……だから、……うぅ……」ポロポロ

霞「死んじゃいやぁ!」

提督(ああ、俺は何をやっていたんだろう。俺を必要としてくれる奴が、こんな身近にいたのに……)

提督(たった数回の失敗で弱気になって、自分を追いつめて。精神はお子ちゃまか)

提督「……俺は死なないよ。俺のことを思ってくれる子がいるのに、死ねるわけないだろ!」

提督「ああ……俺は幸せだよ。俺を尊敬してくれる娘がいる」

朝潮「うううぅ……」

霞「ヒグッ、ヒグッ……(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……)」

提督「……二人とも、ありがとな。もうすこしで大変なことになっていたよ」

朝潮・霞「……んふふ」

朝潮・霞「提督の艦娘ですから(だから)」

朝潮・霞「あっ……///」

提督「ハハハ、ハモったな(なんだかんだで姉妹だなぁ)」

霞編 -FIN

ここまでお読みくださった方、心の底より、お礼申し上げます。

私には、安価よりも、好きなシチュエイションを好きな時に書くのが向いているようです。

またいつかあったら、よろしくお願いします。

>>144
おつありです!


朝潮ちゃんが可愛くて良かった

>>146
朝潮、かわいいですよね

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