鍛冶屋「この剣を君への気持ちとして作ったんだ」 (26)


鍛冶屋「俺の想いが全て、ここに詰まってる」

鍛冶屋「受け取ってくれ……俺の生涯で最高の出来なんだ」

鍛冶屋「……」

鍛冶屋「あ、え?」

鍛冶屋「なんで笑ってるんだ、君を愛してるんだ……受け取ってくれ!」

鍛冶屋「………そうか」

鍛冶屋「なら、君を俺の作品に………」シャキッ…

鍛冶屋「大丈夫……切れ味は保証する、苦しむことは無い……」

鍛冶屋「愛してるよ」



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番兵「へぇ、今日は随分と良い剣が押収されたんだな」

管理官「どうも城下町で鍛冶屋が恋人を殺したらしい」

番兵「それの押収品か……しかし鍛冶屋ね、道理で良い剣だ」

番兵「なぁ、鞘から抜いて見て良いか」スラァッ

管理官「欲しいのか? 女を斬った剣だぞ、お前独身で嘆いてる身なんだし演技悪いと思うが」

番兵「にしたって装飾は控え目で、柄や剣の腹に埋め込まれた紅い宝石も……全体的に見た目は良いじゃねえの」

番兵「んーん……細身とはいえ長剣にしちゃ軽いし、欲しいねぇ」

管理官「仕方ないな、どうせ一ヶ月で兵舎に他の押収品と共に配られる……持っていけ」

番兵「よし、いやぁ新品の剣がタダで手に入るとは管理官様々だな?」

管理官「ったく……今度いい女でも紹介しろよ」




番兵「ふわぁあ……眠いわぁ」

番兵B「あれ、お前もう交代してたのか」

番兵「ん? あー、ちょっとなぁ」

番兵B「そうかい」

番兵B「よっと」ギシッ


番兵「なんだお前、その折り畳み椅子は」

番兵B「町の家具屋で作って貰ってな……城の番兵なんかやってると退屈だし脚が疲れるだろ?」

番兵「だらしねぇな……」

番兵B「うっせ、元々は俺は書記官なんだよ!」

番兵「…はーん……」


番兵(……家具屋か)

番兵(そういや、彼処の通りに良い宿があったな)

番兵(たまには行ってみるか)

番兵B「なぁ」


番兵「あ?」

番兵B「その腰の剣いつもと違うな、どうしたんだそれ」

番兵「買ったんだよ、上質な剣で俺にピッタリだろ?」

番兵B「にしちゃぁ地味な……と思ったが、まぁまぁ良い剣なのか」

番兵「おう、やっぱり分かる?」

番兵B「なんかその宝石とか高級そうだと思って」

番兵「へへへェ」



< ガシャァアンッ!




番兵「ん……」チャキッ

番兵B「?……」チャキッ



番兵(今の、何の騒ぎだ)

番兵B「ちょっと見てくる」

番兵「あぁ」

番兵B「ったく……真っ昼間から酔っ払いが騒いでんのかねぇ」

< スタスタ……


番兵「……」

番兵(んお?)ピクッ

番兵(なんか、番兵Bの奴が入っていった路地から若い娘が……)

番兵(あ……アイツも出てきた、なんだ?)



番兵B「た、助けっ……」


番兵B「助けてくれぇええええええ!!!」



────────── ッドパァン!!



< グチャァッ……


番兵「な………………」


【グルルルル……】


番兵(なんだ、この『獣』は……ッ)スラァッ!

番兵(二本の足で立って、片手で石の塊を使って番兵Bを……殺したのか?)

番兵(まて……手があるだと? しかも、二本足で…………待て、何だコイツ……獣なのか……)

番兵「チィッ……」ピィィィィィッッ

番兵(これで見張り塔の連中は気づいただろう、クソが……よくも番兵Bを…ッ)


【………………】

【糞虫共め……ちょこまかとするせいで、居城まで来てしまったか】


番兵「っ……!?」


【若い雌を捕らえるのは後か、死ね人間】ダッ!!


番兵(速……ぃッ!?)

< ガキィンッッ

番兵「ッぉお!!?」ドサァッ!! ゴロゴロゴロッッ


番兵(や、やべぇやべぇやべぇ!!!)

番兵(この化け物の拳を刃で受けたってのに、こっちが吹き飛ばされただと……!?)

番兵(やべぇ……今ので、上手く呼吸が……)ゼェッ……ハッ…ゼェッ……ハッ…


【やはり人間……脆いな】

【だが何という事だ、その手の武器……我等『オーガ』の皮を切り裂くか】

【更に言えば………硬い】

【言え人間、それは何だ】


番兵「ゼェッ……ハッ…ゼェッ……ハッ…」

番兵(や、やばい……死ぬ……………『発作』が、こんな時に……)ゼェッ……ゼェッ……


【………フン】

【殺して奪い取れば良いか】ズンッ……


番兵「ゼェッ……ハッ…」ヘタンッ

番兵(し、死ぬ……誰か…………)



< コツンッ


【ヌゥ………?】



少女「……っ!」ポロポロ


番兵(さっきの……女か…?)ゼェッ……ハッ…

番兵(馬鹿が……!)ググッ…

番兵「逃げろ小娘!! 門の内側へ行けぇ!!」

番兵「っぅぐ…ヒュー…ゼェッ……ゼェッ……!」

< タッタッタッ!

少女「おじさん! ……さ、さっきの……もう一人のおじさんは!?」

番兵「……ゼェッ…ゼェッ……死んだよ」

番兵「!!」バッ


【フン───────ッ!! 】

番兵「ぅあッッ……!?」ガキィィンッ!!


< ドサァッ!!

< カランッ……カランッ……


少女「おじさん!!」

番兵(…………呼吸が……出来ない……………………)

番兵(せめてこの可愛い子ちゃんだけでも逃がしてぇが……)

番兵(な、なんで……見張り塔の連中が来ないんだ……城の連中は…?)

少女「おじさん! しっかりして! ほら、剣も持って!!」

番兵「に……逃げろ…………俺の血とか、アイツの血とか付いててきたねえけどさ……」

番兵「………………………」

少女「………っ……」ポロポロ…


番兵「……さっさと…行ってくれ、その剣やるから………………」ググッ…

番兵「………行けよ!!」

少女「!」ビクゥッ


< ダッ!!


番兵「………ヒュー…ヒュー…」


【人間も思いやる心があるのか】

【醜い外見とは違うものだな】


番兵(てめぇがそれ言うのかい………ああ、最悪だこれ…)


【死ね】


番兵(あー………)

< ヒュンッッ

番兵(最後にイイ女を助けて、ついでにキスとかセックルとか、色々したかったもんだ)


< グシァァアッ!!




< ガシャッ……ガシャッ……


騎士「……今回の戦も、随分と人が死んだものだ」

従騎士「死者はおよそ二千、辛い勝利となりました」

騎士「だがこれで先人達も浮かばれようさ、『オーガ』に我々人間は勝利したのだから」

従騎士「その通りです」


騎士(……最初に陥落させられた西の王国から、ここまで確か八十余年か)

騎士(人間の女に子種を植え付け、奴等の同胞を増やし……圧倒的な膂力と体毛と数の暴力に今まで人間は苦しめられてきた)

騎士(だが、それも二日前の大決戦で終わった)


騎士(……終わったんだ)


伝令「騎士様! 将軍閣下より報せでございます!」ザッ

騎士「将軍が? 何の用だ」

伝令「オーガの生き残り達が一斉に『南の大森林』へ進行、恐らく体制を立て直す為に身を隠すつもりである」

伝令「騎士様と他従騎士達で追走……一匹たりとも逃がすなとの事!」

騎士「………」

騎士「私と他……従騎士だけだと?」

伝令「はっ!」




騎士「何のつもりだ、将軍め……」

騎士「今のを聞いたな! 全員馬に乗れ、オーガより先に南の大森林へ向かい駆逐するぞ!!」


従騎士達「「応ッ!!」」


騎士(例え敗残の獣達といっても、奴等は従騎士三人がかりで漸く倒せる怪物だ)

騎士(それを、我等二十余りで追走し……殲滅?)

騎士(数は少ないのか、それとも余程の手負いか……)

騎士(………)

騎士(だが、一匹たりとも逃がす気は毛頭無い……!!)ギリィッ




────────── ッ!! ッ!! ッ!!


騎士「南の大森林が見えてきた……全員、抜剣!!」スラァッ!

騎士(オーガは……? 何処だ!?)


従騎士「騎士様! 左方より数体の獣らしき姿を確認……オーガです!」


騎士「くっ……僅かに遅かった、森に突入するか…?」

従騎士「奴等の膂力を活かした森林地帯での機動戦闘は一匹で百の騎士を倒すと聞きました! お止めを!」

騎士「……ならば奴等の背後を取り、奇襲を避ける為に一定の距離を維持しろ!!」

騎士「私が先頭を走る、後方の従騎士には馬上からボウガンで援護、お前は私の背後を守れ!」

従騎士「は、はっ!」


騎士(オーガの姿が近くなってきた……数は…!?)


< ドドッ! ドドッ! ドドッ!


オーガ雌【ヌゥ……ッ、人間め…!】ドドッドドッ


騎士(……オーガの、雌個体だと…?)

騎士(しかもそれが八体……! 更に言えば、どれも万全だ……)

騎士(この人数ではまともに戦えるのか分からん!)

従騎士「騎士様! あ、あの……人間の女体じみたオーガは一体……」

騎士「雌の個体と考えた方が自然だろうな……だが今までに討伐例もなく、あの少数……」


騎士「オーガ共……雌が少ないから人間を代わりに孕ませていたとでも言うのかッ」

騎士「続けッ!! まだ森に入って浅い、このまま騎馬戦に持ち込むぞ!」


騎士(絶対に生かす事なく、息の根を止めてやる……)ギシッ…



オーガ雌【グルルルル】ドドッドドッ

オーガ雌B【しつこい人間共め……このままでは『アレ』を見られかねない】ドドッドドッ

オーガ雌C【殿を俺が……ッ、雄達の仇を取って死んでやる!】グルルゥッ…

オーガ雌D【俺も同じく殿を、雄程の力は無くとも二匹でかかれば半分は殺れよう……!】ドドッドドッ


< バッ!

< バッ!



騎士(二匹……頭上の木々に跳び移ったか……!)


騎士「馬上の我々を木々を跳び移りながら奇襲するつもりか……」

従騎士「騎士様! 後方の従騎士達が速すぎて狙えないと……」

騎士「……」

騎士(例えオーガと言えど、あれのスタミナは限りある物の筈)

騎士(なのに、なんだこの決死の機動戦闘は……)


< ヒュンッッ

オーガ雌C【グルルォオオオオオッ!!】バッ


騎士「ッ……セァアッ!!」ビュルンッッ

< ズバァンッ!


オーガ雌C【なッ……ぎゃぁあっ!?】ブシュゥウッ

騎士「ボウガンでトドメを!! 私は先に進むッ」


騎士(雄のオーガより、体毛が薄いからか…? 一撃で致命傷を与えられたが……)

騎士(オーガに見られる最大の特徴、恐ろしく強靭な体毛がこうも簡単に斬れるとは……)


オーガ雌D【クソォッ、人間めぇええええ!!】バッ

従騎士B「ぐぁああ!?」ザシュッッ


従騎士「私が相手です! はぁッ……!!」ブンッ

オーガ雌D【フン……ッ】ヒュッッ

< ガキィィンッ!!


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