迷犬マロン(こんな家出てってやる) (58)

マロン(お金持ちの家に拾われてからずっと不自由の無い生活をしてきた)

マロン(でも、僕が求める生活はもっと外で自由に動きたいんだ!)

マロン(それをしようにもご主人様は許してくれないだろう。だからこそ、僕はこの家を出て行く)

マロン(後悔なんかしないぞ。むしろ今まで散歩以外で外にまともに出れなかったんだ、ワクワクが止まらないや)

マロン(さらば、ご主人様!)

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遊戯王?





マロン(すごい……散歩じゃ見たことない建物ばかりだ。自分がどれだけちっぽけな所にいたのか思い知るよ)

マロン(あっちには公園かな?ちょっと寄ってみよっと)





マロン(のんびりできていい場所だな~。ご主人様との散歩じゃ絶対に味わえない時間だよ)

老人「おお、かわいい犬じゃ。ほーれ、餌じゃぞ」

マロン(こうやって餌をくれる人にも会えるし)

子供「わあー、子犬さんがいるよ!ママ、触ってもいい?」

子供の母「もう、少しの間だからね」

マロン(子供達とも触れ合えるし。外は危険だってご主人様が言ってたけど全然そんなことないじゃないか)

マロン(やっぱり家出して正解だったよ)

>>2
遊戯王です。スレタイに【遊戯王OCG】っていれんの忘れてた




マロン(さてと、公園で時間も潰したし次はどこへ行こうかな)

マロン(そうだ、街にも僕と同じ犬がいるはずだ。彼らに会って友好を深めるのも悪くないかも)

マロン(よし、そうと決まれば早速他の犬を探しにいくぞ!)

ご主人の家



男「マロン?マロン!どこに行ったんだー?」

男「もうすぐ散歩の時間だってのに。まったく、目を離すとすぐにどっかに行っちまうんだから」

男「ま、すぐに戻ってくるだろ。帰ってきた時のために餌を用意してやらないとな」

父「息子よ、ここにいたか」

男「親父……。また跡継ぎの話か?」

父「この家に生まれた以上は何が何でも継いでもらわねばな。これが名誉なことだということが何故分からない」

男「俺は家に縛られるような生き方はしないって言っただろ!この家に生まれたせいでろくに同年代の友達もできずに育ってきたんだぞ!」

父「下々の人間を踏み台にして我々が生きているのだ。おい、母さんからも何か言ってやれ」

母「わたくしは出来ればあなたが後を継いでくれれば嬉しいのですけれど……」

男「知ったことか!くそっ、俺に味方はいないのかよ……」スタスタ



母「あっ、ちょっと……行ってしまいましたわ」

執事「旦那様……。少し言い方がきつすぎるのでは……?」

父「奴のことを考えてやるのならばあれが一番手っ取り早いだけだ。……執事よ、お前ももう年だ、お前の余生はこの私が保証しよう。だからこれ以上私達の家庭に首を突っ込むのは勘弁してもらえないだろうか」

執事「旦那様……」

夜・公園



マロン(結局一日中探したけど誰も見つからなかったな……。この街には動物があまりいないんだろうか)

マロン(仕方ない、今日はここで寝るか……ん?)


トリブルドッグA(チッ、今日の飯はこれだけか。ここもそろそろ居づらくなってきたな)

トリブルドッグB(最近D.D.クロウが増えてきて餌を取られることが多くなってきたからね。あいつらさえなんとか出来ればいいんだけど)

トリブルドッグC(でもー、ぼく達あいつらに手も足も出ないんだな)


マロン(やっと同族を見つけた!何か話してるみたいだけど僕も混ぜてもらえないかな)

マロン(あのー、すみません)

トリブルドッグB(ん?何だよキミ)

トリブルドッグA(ここらじゃ見かけねえ顔だな。テメェどこ中だ?俺の何個下だ?)

マロン(え?どこ中って……)

トリブルドッグC(こいつ首に何かつけてるんだな。恐らく飼い犬だと思われるんだな)

トリブルドッグA(飼い犬だあ?俺らがちまちま飯を探してるのに対して宿と飯が約束されてる生活を送ってるあいつらのことか?)

トリブルドッグB(ふん、生意気な奴が来たもんだ。自慢話なら呆れるほど聞いたよ)

マロン(ちょ、ちょっと待って……。僕はただ皆さんとお話を……)

トリブルドッグA(うるせえ!裕福な奴は敵だ!やっちまうぞ!)

B・C((おう!))

マロン(ひいい!に、逃げろー!)






マロン(はあはあ……。街の犬ってのはあんなに凶暴なのか……)

マロン(少しくらい話を聞いてくれてもいいのにな……)

マロン(急いで走ったらお腹空いちゃったよ……。なにか、なにか食べ物は……)

マロン(ゴミ捨て場でも漁るか……。家にいた頃はこんな行動考えられなかったのに)

マロン(酷い臭い……。かろうじて食べれそうな物があればいいんだけど)

D.D.クロウ「クエ-」パシッ

マロン(あっ!僕の食べ物が!)

マロン(ちょっと、いきなり出て来ないでよ!)

D.D.クロウ「ダッテオレフリ-チェ-ンダシ-」バサバサ

マロン(……このままご飯抜きなんて嫌だぞ。こうなったらまた他の犬を探してご飯を分けてもらおう。あわよくば寝床も貸してもらえるかもしれないしね)




マロン(あの……すみません)

(出て行け!)



マロン(何か食べ物を……)

(こっちはこれで精一杯なんだよ!)



マロン(せめて寝床だけでも……)

(半端な気持ちで入ってくんなよ……野良犬の世界によ!)





マロン(全戦全敗……。昼間にまったく姿を見なかったのは昼のうちに食べ物を探してたからなのか……)

マロン(家出なんてしなきゃよかったかな……。いや、まだ一日目だ。僕の望む生活を手に入れるにはこのくらいの困難は必要なんだ)

マロン(それにいまさらどんな顔してご主人様に会いにいけばいいのか分からないしね……)

数日後・街のとあるカフェ




男「マロンがいなくなってだいぶ経つんだが……。どうしよう、まさか死んでるとか無いよな?」

友人「だからといって僕に相談されてもね。なに、君の犬は人懐っこいし今頃誰かに拾われてよろしくやってるんじゃないか?」

男「マロンの首の名札には俺の住所が書かれてるんだぞ。誰かに拾われてたら連絡が入るはずじゃないか」

友人「うーむ、それもそうか。ならば貼り紙でも作って街の人に捜索を手伝ってもらったらどうだい?」

男「なるほど、その手があったか!」

友人「僕も手伝うよ。人は多いほうがいいだろう」

男「すまないな。お前だけだよ、家柄に関係なく俺に親しくしてくれるのは」

友人「僕が人を見るのは美味しい紅茶を知ってるかどうかさ。ああ、支払いは君に任せるよ。相談の代金……ということでね」

男「これくらい安いもんだ」





(初めはそうだった。圧倒的な敵に対して俺は、とにかく自分を守るのだけで精一杯だった)

(だが、抵抗組織もない俺は、為す術もなく一つ、また一つと餌場を失っていった。そんな絶望的な戦いの中で、俺は学んだ。生き延びるには、勝つしかないのだと)



暗黒の狂犬(絶対に勝つという鉄の意志を持つ者だけが、この地獄を生き抜いていけるのだと!)



暗黒の狂犬(さて……今日はどこを荒らしてやろうか。ここ数日で強くなった俺には誰も頭が上がらないみたいだしな)

暗黒の狂犬(……この公園は)

暗黒の狂犬(決めた。今日はここを徹底的に荒らしてやる。忌々しい記憶もあるしな)




トリブルドッグA(この公園も住みやすくなってきたな)

トリブルドッグB(業者が増えてきたD.D.クロウを退治してから餌も楽に手に入るようになったし)

トリブルドッグC(しばらくは安泰なんだな)


暗黒の狂犬(おい、決闘しろよ)


トリブルドッグA(な、なんだテメェ!どこ中だ!)

トリブルドッグB(誰だか知らないけどボク達の縄張りに入るとはいい度胸だな!)

トリブルドッグC(んー?待つんだな。こいつの首の名札、どこかで見たことあるんだな)

暗黒の狂犬(よく覚えているじゃないか。俺はほんの数日前にお前達にやられた裕福な飼い犬さんさ)

トリブルドッグA(お、お前があの時の……!?)

トリブルドッグB(く……なんて凄まじいフィールだ……)

暗黒の狂犬(悪いことは言わねえ。怪我したくなかったら早々にここから立ち去ることだな)

トリブルドッグC(ぼ、ぼく達三匹がかりでも勝てそうにないんだな~!)

トリブルドッグA(怯むな!見かけ倒しかもしれねえだろ!)

暗黒の狂犬(うらあっ!)ドゴッ

トリブルドッグA(ぐおあっ!)バタッ

トリブルドッグB(ひ、ひいい……)

トリブルドッグC(し、しっかりするんだな〜)

暗黒の狂犬(お前達もこいつのようになりたいのか)

トリブルドッグB(滅相もない!)

暗黒の狂犬(ならばこいつを連れてさっさとどっかに行け)

トリブルドッグC(に、逃げるんだな〜!)



暗黒の狂犬(この様子だとこの地区を制覇することは容易いな)

さらに数日後



チェーンドッグ(やったぞ!B地区制覇だ!)

忍犬ワンダードッグ(さすがは暗黒の狂犬殿だ!)

暗黒の狂犬(やめろ)

番犬-ウォッチドッグ(しかし、現れて間もないのにあっという間にこの辺を制覇してしまうのだからその実力は本当に素晴らしいのでしょうな)

ガード・ドッグ(狂犬、次はどこを制覇するんだ?)

暗黒の狂犬(この街を制覇するには奴らとの戦いは避けられない……。だったら、こっちから仕掛けてやろうじゃねえか!)

チェーンドッグ(奴らってまさか……セキュリティのことですか!?)

ガード・ドッグ(無茶だ!いくら狂犬でも奴らには勝てねえよ!)

暗黒の狂犬(なに、力はこっちの方が上だ。襲撃は今夜行う、来たい奴だけ来い)





暗黒の狂犬(セキュリティの犬共め、いますぐ吠え面かかせてやる)

忍犬ワンダードッグ(狂犬殿!奴ら数が尋常じゃありません!)

番犬-ウォッチドッグ(やっぱりやめましょうよ……)

暗黒の狂犬(自分から来といてその態度か。俺の戦い方を見ていろ、正面からぶっ飛ばしてやる!)

チェーンドッグ(あっ、狂犬さん!)


アサルト・ガンドッグA(不審犬発見、これより職務質問を開始する)


暗黒の狂犬(ウガアア!)ドゴッ

アサルト・ガンドッグB(エマージェンシー、エマージェンシー!こちらセキュリティ北門部隊。直ちに増援をお願いしたい!)

暗黒の狂犬(ウオオオ!)

アサルト・ガンドッグC(こちら西門部隊、応援に参った!)

アサルト・ガンドッグD(同じく西門部隊、到着した!)

暗黒の狂犬(ちくしょう、次から次へと増えてきやがる!)

アサルト・ガンドッグE(不審犬はどこだ!)

アサルト・ガンドッグF(奴を普通に拘束せよ!)

ガード・ドッグ(やべえよ……。あんなに増えちゃあ俺らでも対抗できねえ)

番犬-ウォッチドッグ(そもそも私は戦いにむいたステータスじゃありませんし……ついでに獣族ですらないし)

チェーンドッグ(だからといってこのまま放っておくわけにも……)

忍犬ワンダードッグ(こちらが増援を呼んでる間に狂犬殿がもつか分かりませんしね)


ダッ


ガード・ドッグ(ん?今なんか通りすぎていったぞ)

チェーンドッグ(人間だ!人間の匂いがするぞ!)




暗黒の狂犬(くそっ、もう体力が……俺もここまでか)

暗黒の狂犬(せめて最後に……ご主人様に会いた……かった……)



「マロン!」



暗黒の狂犬(こ、この声は!)

男「間違いない……その首の名札は……。お前、マロンだろう?」

アサルト・ガンドッグG(人間だ!手を出すな!)

アサルト・ガンドッグH(人間が拘束対象に接近!いったい何をする気だ……)

男「こんな姿になって……すまなかったな……」

暗黒の狂犬(ご主人様……)

男「お前が出ていってから死に物狂いで探したんだ……。お前は俺の家族なんだ……だから……勝手にどこかに行ったりしないでくれ……」ボロボロ

暗黒の狂犬(ご主人様は俺をずっと探してたのか……。俺のワガママで勝手に家を出て行った俺のために……)

暗黒の狂犬(許してくれ……いや)

マロン(許して下さい……ご主人様……)

男「マロン……お前のことを考えることのできなかった俺だが……もう一度俺の元に来てくれないか?」

マロン(はい……。このマロン、残りの生涯を貴方のために尽くしましょう)

男「俺はお前の言葉は分からないが……今ならお前が何を言ってるか分かる気がするよ」

男「さあ、帰ろう」



アサルト・ガンドッグI(こ、拘束対象から暗黒の力が抜けていく……)

アサルト・ガンドッグJ(普通の犬に戻ったのか……)

そして数年後



男「マロン!今日も散歩に行くぞ!」

マロン(はい、ご主人様!)

男「よし、今日はどこを回ろうか……ゴホッゴホッ!」

男「いかんな、風邪でもこじらせたか?」

男「まあいいや、行くぞー」





父「…………」

母「最近、あの子も咳をする頻度が増してきましたわね。このままでは……」

父「皆まで言うな。全てを知った時に一番悲しむのは奴なのだからな」

母「本当に……どうにかなりませんの?」

父「金持ちでも出来ぬことはある……私だって悔しいさ。恐らく奴は私より先に……」

母「……そうですか」

父「さて、私はあの執事のところに行ってくるとしよう」

母「今朝の電話のことですか」

父「……惜しい話だ」

夜・とある場所



ワイト「とほほ……。私もついにこの姿になってしまいましたか」

ワイト「しかし死んだとはいえまだこの街に残ることになるとは……」

ワイト「死後はいったい何をすればいいのでしょうか……」


魂を削る死霊「あー暇だなー」


ワイト「おや、死霊さんではありませんか。今朝はどうもありがとうございました」

魂を削る死霊「ん?あんたは確か……そういや今朝魂を一つ狩ってたっけ」

ワイト「これからお仕事ですか?」

魂を削る死霊「そうでも無いのよ。この街意外と人死ななくて」

ワイト「それは良いことです。人が死ぬのは見ていて気持ちのいいものではありませんし。私も妻に先立たれた時は……」

魂を削る死霊「そうは言うけどね、こっちは昇格が危ういのよ。ったくなんで今の部長はポイント制なんかに変えたんだか」

ワイト「ポイント制?」

魂を削る死霊「前までは技術力で評価されてたんだけど、今は100年でどれくらい魂狩ってこれるかで昇格が決まんのよ」

魂を削る死霊「この業界に勤務して573年経つけどここ最近は年々狩れる量が減ってきて困ってんだよ」

ワイト「ははあ、どこの世界も仕事は大変なのですね」

魂を削る死霊「もうすぐ死にそうな人は一応チェックしてるけどね。近いのだと後二週間持つかどうかってとこかな」

魂を削る死霊「さて、俺はそろそろ行くかね。愚痴に付き合わせてすまなかったな」

魂を削る死霊「ったく部長の奴、たかだか765年勤務してるだけで先輩面しやがって……」ブツブツ





ワイト「……私もこの街を一回りしてきましょうかね」

数日後・とあるカフェ



友人「うーん、今日も紅茶がうまい。そう思わないかい?」

男「ああ、そうだな」

友人「どうも浮かない顔をしてるね。せっかく愛犬も戻ってきて毎日が楽しいはずなのに」

男「なんか最近体の調子が悪い気がしてな……」

友人「珍しいね、キミは健康だけが自慢だって自分でも言ってたのに」

男「『だけ』とはなんだ。他にも自慢できるとこはあるぞ」

友人「はっはっは、失礼した。だがその様子だと健康そうに見えるけどね」

男「念のため、帰る途中に医者に見てもらうとするよ」

友人「ああ、それがいい」

ご主人の家



母「あら、お帰りなさい」

男「…………」

母「……どうかされて?」

男「……あんた達は知ってたのか?俺の体が不治の病に蝕まれていることを」

母「そう……知ってしまいましたか……」

男「やっぱりか……。つーことは親父も」

母「ええ……。隠そうとしていたのですがバレてしまっては仕方ありませんわね」

男「何で……何で黙ってたんだよ!」

母「あなたは生まれた時から先は長くないと医者に言われていました……。目先の死に怯えるのならば少ない人生を何も知らずに謳歌してくれというのがあの人の考えだったのです」

母「もっとも、知られた以上は意味のない行動となってしまいましたが」

男「くそっ!」




男「なあマロン。俺はどうすればいいんだろうな……」

男「こんな受け入れがたい結果があるなんてよ……」

男「俺は……闘わなくちゃいけないのかな……」

マロン(ご主人様……何かと戦うの?)

マロン(それなら僕もご主人様の役に立てるように頑張らなきゃ!)

夜・どこかとある場所



コザッキー「我が世紀の発明のためにも貴様の体はなかなかに利用価値が高いとみた。さあ大人しく我が実験台となるがいい!」

ワイト「嫌だと言っているでしょう。あなたの腕は信用できませんから」

コザッキー「何故だ。私は最先端技術の持ち主だぞ」

ワイト「この間自爆装置を誤作動させてたじゃないですか」

コザッキー「あれは少しネジの配置を間違えただけだ。私の発明が完璧であることに変わりはないのだ!」

ワイト「そこまで言うのならもっとマシな発明を作ってもらわないと」

コザッキー「ならば見ていろ!素晴らしい発明で貴様をあっと言わせてくれるわ!」




マロン(街の中を探すのはいいものの……ご主人様はいったい何と戦うつもりなんだろう)

マロン(手っ取り早く強くなれればいいんだけど。前みたいに凶暴になってもな……)

コザッキー「ほう……こんなところに実験台にピッタリな犬がいるじゃないか」

マロン(え?誰?)

コザッキー「お前は私についてきてもらうぞ!なあに、少しばかり体に機械を入れるだけだ」

マロン(うわああああああ!)





コザッキー「というわけで完成したぞ」

ワイト「何ですかこれは」

マロン「」ウィ-ン

コザッキー「どうだ、なかなかの発明だろう。私にかかればこれくらい余裕だぞ」

ワイト「どこら辺がなかなかの発明なのか説明してもらえませんかね」

コザッキー「まず特筆すべきは緊急爆発システムだ。戦闘において自身に危機が迫ったとき自動で爆発してくれるのだ」

コザッキー「さらに遠隔爆発システムも搭載してるぞ。戦闘が危険だと判断した相手に対し非常に有効なシステムとなっていてだな……」

ワイト「爆発しかしてないじゃないですか。これじゃただの使い捨て爆弾ですよ」

コザッキー「ふん、とにかく発明はしたんだ。貴様の骨をいただくぞ」

ワイト「あっと言わせるのではなかったのですか。もっともこんなものを見せられては呆れて物も言えませんがね」



マロン(よく分からないがこの身体なら戦闘力が大幅に上がった気がするぞ)

マロン(煮えたぎってきたぞ。今なら誰にも負ける気がしない!)ダッ



コザッキー「だからこそだな……ん?発明がどこにもいないぞ!」

ワイト「目を離した隙にどこかへ逃げてしまったんでしょうか」

ご主人の家



男「ゴホッゴホッ!」

男「ハア……ハア……頭が痛い……足もふらつく……」

男「もう……ダメだ……」





男「はっ!ここは……」

父「気がついたか」

母「よかった……。もうあなたは何日も寝てたのですよ」

男「ここは……病院?それに……何日もって……」

父「お前の容体が悪化したと聞いてな」

男「親父……あんたこんなとこにいていいのかよ」

父「息子が倒れて様子を見にこない父親などいない。それに仕事はお前が後を継げそうにないからな。私の代で全て終わらせる」

母「この人なりにあなたを心配してるということですよ」

男「…………」

父「とにかく今は安静にしていろ、いいな」

男「マロンは……マロンはどこだ?」

母「あなたに病気のことを話した日から姿が見えなくて……。また家出でもしたのでしょうか」

男「それは無い。あいつはきっと俺の所に来てくれるはずだ」




マロン(ご主人様……いったいどこに行ったんだろう)

マロン(この体じゃ鼻もきかないし。あてもなく彷徨い続けるばかりだ)

チェーンドッグ(あれ、もしかしてあなた……狂犬さんですか?)

番犬-ウォッチドッグ(あ、本当だ。しばらく見ない間に随分変わりましたね)

ガード・ドッグ(というか種族まで変わってるじゃねえか)

マロン(みんな……久しぶりだね)

忍犬ワンダードッグ(今日はなにゆえこのような所に?狂犬殿はご主人と再会したのでは)

マロン(実は……)




ガード・ドッグ(なるほど、そういうことなら俺達の出番だな)

番犬-ウォッチドッグ(人探しは犬の得意分野ですからね)

チェーンドッグ(犬同士のつながりを見せてあげましょう!)

忍犬ワンダードッグ(狂犬……今はマロン殿でしたか。あなたは吉報をお待ちください)

マロン(みんな……ありがとう)

翌日



チェーンドッグ(マロンさん。どうやらあなたのご主人は病院にいるそうですよ)

マロン(病院?いったいなんで……とにかく行ってみるよ)


病院


マロン(ご主人様!)

男「マロン……?はは……まさか最後に……お前の声が聞こえるとはな……」

男「俺は……大丈夫だ……。また……すぐにお前と……遊んでやるからな……」

男「すぐに……戻る……から……」

男「待っ……て……て……」

男「…………」

マロン(ご主人様?)



魂を削る死霊「ようやく逝ったか」


魂を削る死霊「さて、久々の現場だ、腕が鳴るぜ」

マロン(な、何者だ!?)

魂を削る死霊「ん?なんだこの犬みたいなロボは?まさか俺のことが見えてんのか?」

魂を削る死霊「まあいいや仕事仕事」

マロン(ご主人様は戦うって言ってた。きっとそれはこいつとに違いない!)

マロン(くらえっ!)ブンッ

魂を削る死霊「おわっと!あぶねっ!こいつ……マジで俺のことが見えてんのか?」

魂を削る死霊「くそっ、俺に攻撃は当たんねえけど魂狩りが失敗したらどうすんだよ」

マロン(ご主人様には指一本触れさせないぞ!)

魂を削る死霊「ああもう邪魔くせえ!あっち行け!」ブンッ


ズバッ


魂を削る死霊「あっ……。し、しまった〜!肉体を傷つけちまった〜!」

魂を削る死霊「ヤバイ……部長から大王目玉を食らっちまう。大狼雷鳴が落ちてくるぞ……」

魂を削る死霊「なんとかしてごまかさなきゃ……。こうしちゃおれん!」

マロン(あっ、行っちゃった……)

マロン(でも良かった。これで悪い奴はいなくなったしご主人様も安心できるね)

男「…………」

マロン(ご主人様……安心して寝ちゃったのかな?)

マロン(あの後病院の人が来て僕は追い出された。ペットの持ち込みは禁止だったらしい)

マロン(仕方なく家の前で帰りを待つことにした。ところで僕はいつまでこの体なんだろうか)

マロン(日が暮れかけた頃にご主人様の父と母が帰ってきた。二人共悲しそうな顔をして僕には一切気づかなかったみたいだ)

1週間後

マロン(ご主人様の父と母は家から出ることはなくなった。僕はまだご主人様の帰りを待っている)

1ヶ月後

マロン(機械の体は餌が必要なくて便利かもしれない。でも、ご主人様が持ってくるご飯も食べたいなとは思っている)

1年後

マロン(そろそろご主人様の顔が見たくなってきた。でも僕は言いつけどおり待ち続ける)

10年後

マロン(ご主人様の父と母が亡くなった。まさかご主人様も……?いや、それは無いだろう。ご主人様はまだ若いのだから)

50年後

マロン(機械の体も錆び付いてきた。ご主人様はいつ来るのだろうか)

100年後

マロン(この辺りも寂れてきた。かつては人の多い街だったのに)

500年後

マロン(もはや体は骨だけとなり、はたから見れば死体にしか見えないだろう)

1000年後

マロン(僕はいつまでここにいればいいのだろう。ご主人様はとうの昔に死んでいることくらい分かっていたのに。それでも言いつけを守らなければ自分の中の大事な何かが壊れそうで嫌だった)



ワイト「1000年ぶりですなあ……」


マロン(あなたは……?)

ワイト「なんと、私と同じように骨になっても動き続ける犬がいたとは」

ワイト「私は今から1000年ほど前、ここで働いていた者です」

マロン(1000年……僕もちょうどその頃からこの辺に住んでいたんだ)

ワイト「それは奇遇ですな。昔は大富豪が住む地と呼ばれたここも今は未開の地……。何が起こるか分からんものです」

ワイト「あなたはどうしてここに?」

マロン(僕はご主人様の帰りを待ち続けているんだ。ご主人様はもうこの世にはいないけどね)

ワイト「はて?それではここにいる意味など無いのでは?」

マロン(ご主人様が待っててって……そう言ってくれたから。僕は何があっても待ち続けなきゃいけないんだ)

ワイト「なるほど、素晴らしき忠誠心でございます。……ですがここにいる意味ももはや必要無いのでしょうか」

マロン(どうして?)

ワイト「あなたのご主人はもしかしたらすでに私のようになっているかもしれません。ただ待つよりは探しにいった方が良いのではないかと」

マロン(探す……)

ワイト「ええ。あなたのご主人もどこかであなたを探しているかもしれませんよ」

マロン(僕……会いたいよ……ご主人様に)

マロン(探そう!1000年待ったんだ、今更何時間かかって探しても気にならないよ)

ワイト「このワイトもお供しましょう」

マロン(でも、どうしてあなたは僕に優しくしてくれるの?)

ワイト「私の昔の仕事場には犬がいたのですよ。ですから、何かと世話を焼きたくなってしまうのです」

マロン(へえー。しかしどこに行こうか。ワイトがたくさん集まる場所なんて墓地くらいしか思いつかないし……)

ワイト「そういうことでしたら知り合いに詳しい方がいますよ」




ナイトメアを駆る死霊「それで俺の所に来たってわけかい」

ワイト「我々人間の魂を狩るのはあなた方の仕事ですし、何かしら知ってることがあれば教えてもらえると」

ナイトメアを駆る死霊「そうさね……やはり《アンデットワールド》に行くのが一番じゃないかい?」

ワイト「《アンデットワールド》ですか……」

ナイトメアを駆る死霊「ああ。あそこなら俺達が狩った魂がたくさんあるはずだ。そこにその犬のご主人とやらもいるんじゃねえかな」

ワイト「なるほど、ありがとうございます。……あと、一つ聞きたいのですが」



ワイト「どうしてあの犬から離れた所で話をしてるんです?」

ナイトメアを駆る死霊「俺、犬が嫌いなんだよ……。昔、犬のせいで仕事失敗しちゃって」

ワイト「どうやら、あなたのご主人はアンデットワールドという所にいるそうですよ」

マロン(本当に!?それじゃ早速行こうよ!)

ワイト「ただ……会えるという保証は無いんですよ?」

マロン(それでも……可能性があるなら行って損は無いよ)

ワイト「……分かりました。ここから100キロほど離れたお墓に入り口があるそうですよ」

マロン(100キロか……。また大分歩くな)

ワイト「時間はあります。ゆっくり行きましょう」

アンデットワールド



マロン(ここがアンデットワールドか……)

ワイト「なんとも退廃的な雰囲気がアンデット族である私には心地よいですなあ」

マロン(本当だ。僕は獣族だけどここの雰囲気は好きだな)


「それはオメエがここの雰囲気に飲まれてるからさ」


マロン(誰だ!?)

押し売りゾンビ「おい、何か買えよ。商品は拾った」

ワイト「あなたはここの住人ですか?」

押し売りゾンビ「そうさ。オメエ達もここに居を構えにきたのかい?」

マロン(僕達は人……というかアンデット探しに来たんだ)

ワイト「私は彼のつれです。あわよくば住む場所を見つけることがよいと思っているのですが」

押し売りゾンビ「やめときな。ここは今『王』のもとに統治されてるのさ。居を構えるなら『王』の許可が必要だぜ」

ワイト「『王』ですか……?」

押し売りゾンビ「俺も新参だから詳しいことは分かんねえ。そこにあるバーで聞いてみたらどうだ」

マロン(バーね……。分かった、ありがとう!)

押し売りゾンビ「感謝してんなら何か買ってけよ」

ワイト「それはお断りします」

BARian アンデットワールド支店



マーダーサーカス・ゾンビ「いらっしゃい」

ワイト「すみません。ここには初めて来たのですが『王』について聞きたいのです」

マーダーサーカス・ゾンビ「『王』か……。それなら私よりそこのお客さんの方が詳しいですよ」


ゾンビキャリア「…………」


ワイト「もし、そこの方。『王』について聞きたいのですが……」

ゾンビキャリア「ちくしょおおおおぉぉ!」

ワイト「ひいっ!」

ゾンビキャリア「かつては制限カードになるくらいブイブイ言わせてたのに今じゃすっかり採用率低下を辿っちまってよお……。墓地肥やしも出来る後輩も出てきたし俺の価値はもう無いのかよ……」

ワイト「あの……よろしいでしょうか?」

ゾンビキャリア「あん?なんだあんたら」

ワイト「ここに住む『王』について聞きたくて……」

ゾンビキャリア「『王』……?ああ、あいつか。あいつは何百……何千だったか……まあかなり前にここに来て『突然ここを統治し始める』とか言いだしてよ」

ゾンビキャリア「最初はみんな反発してたんだが……ありゃ生前本当に王様でもしてたのかね、みるみるうちにみんなが従っていくようになったのさ」

マロン(聞く限りだと悪い人とは思えないけど……)

ゾンビキャリア「王の風格とでも言えばいいのかね、威圧感が半端なくて初めて見た奴はみんなびびっちまうのさ。でも、一度話をつけちまえばこっちのもんだ。楽な生活が約束されるだろうよ」

ワイト「なるほど、それを聞いて安心しました」

マロン(じゃあ早速『王』に会いに行こうよ!)

ワイト「あっ、お待ち下さい!」




ゾンビキャリア「でもよ、『王』だけあって従者の数も相当だ。もし侵入者と勘違いされたら……ってあれ、いねえや」

ゾンビキャリア「まあいいや。マスター!廃液をもう一杯くれ!」

マロン(早く早く!こっちだよ!)

ワイト「しかし、『王』に会ってどうするのです?私はここに住めれば良いと思っていますがあなたはご主人を探さねばならないでしょう」

マロン(その『王』に会えばご主人様がどこにいるのか知ってるかもしれないだろ?『王』なら国に住むアンデットくらい分かるはずだよ)

ワイト「確かにそうですが……そもそも『王』に会えるかどうか怪しいのですよ?」

マロン(どうして?)


ワイト「……私たち、道に迷ってしまったみたいです」

マロン(あれ、いつの間に)

ワイト「先ほどの方に道を聞くのを忘れてしまいましたからねえ……。誰か他にいれば良いのですが……」


ガサガサ


マロン(あ、よかった。誰かいるみたい)

闇竜の黒騎士「むっ、怪しいヤツめ!何者だ!」

闇竜の黒騎士「ここは『王』の城の庭だぞ!勝手に入ってくるとは不届き千万!このオレが成敗してくれる!」

ワイト「どうやら話を聞いてもらえそうな雰囲気ではないようですね……」

マロン(に、逃げなきゃ!)ダッ

闇竜の黒騎士「逃がすかー!待てーい!」

マロン(は、早い!)

ワイト「竜相手に逃げ切るのは難しいかと!二手に分かれましょう!」

闇竜の黒騎士「おのれ……ちょこまかと動きよって!」





ワイト「なんでこんな目に……」

「待てーい!」

ワイト「おっと、こちらにやって来ましたか。どこか隠れる場所は……」

ワイト「あ、あの墓石の下ならうってつけですな」



ワイト「なんとかやり過ごしましたか……?早いところあの犬と合流しなくては」


ゴゴゴゴゴ……


ワイト「は、墓石が!まさか……気づかれた!?」



魂を呼ぶ者「…………」


ワイト「あの……あなたは?」

魂を呼ぶ者「空いていますか……?」

ワイト「え?」

魂を呼ぶ者「ここは……空いているんですか……?」

ワイト「あー……」


ワイト「すいません、ココ、私だけでいっぱいなんですよ」


魂を呼ぶ者「…………」

ワイト「…………」

魂を呼ぶ者「そうですか……」スタスタ

ワイト「い、いったい何だったんでしょうか……」

マロン(おーい!)

ワイト「おや、無事でしたか」

マロン(あいつはいなくなったみたいだね。これでもう一度『王』のところに行けるよ)


闇竜の黒騎士「それはどうかな?」

闇竜の黒騎士「ククク……見つけたぞ」

マロン(げっ、もう見つかっちゃったよ!)

闇竜の黒騎士「怪しいヤツらめ!今度こそ叩きつぶしてやる!覚悟しろ!」

ワイト「あなたは逃げなさい。ここは私が足止めしましょう!」

マロン(でも……そんなステータスじゃ勝てないよ!)

ワイト「時間稼ぎくらいはできます。さあ、あなたは早く『王』のもとへ!」

闇竜の黒騎士「くらえーっ!」ドガッ

ワイト「ぐふうっ!」

マロン(大丈夫!?)

闇竜の黒騎士「雑魚が……。手間をかけさせおって」

ワイト「き、効きませんな……」

ワイト「雑魚には雑魚なりのプライドがあるんですよ……。見くびってもらっては困ります……」


ワイト「弱者の意地……見せてやりましょう!うおおおおお!」


闇竜の黒騎士「《ヘル・ブラスト》!」

ワイト「あーれー!」バキャ

マロン(駄目じゃん)

マロン(とにかく撤退だ!こんな体じゃ歩くこともできないよ!)

闇竜の黒騎士「撤退などさせん!お前達は今ここでオレに……」

D.D.クロウ「コンドハデンショバトノヤクデ-ス」バサバサ

闇竜の黒騎士「なに、『王』がお呼びだと?……分かった」

闇竜の黒騎士「お前達、命拾いしたな。今回は見逃してやる。だが、お前達のことは『王』に知らせておく。次会うときはオレ一人だと思わないほうがいいぞ!」

マロン(な、なんだかよくわからないけど助かったぞ……)

ワイト「とりあえず、まずはこの体をどうにかしないといけませんな」

マロン(そうだね……)

ワイト「アンデットといえば豊富な蘇生能力です。蘇生に詳しい方に会えばこの体もどうにかなるかと」

マロン(蘇生か……。探してみよう!)



ピラミッド・タートル「蘇生技術?それなら《ゾンビ・マスター》さんが詳しいはずだよ」

ユニゾンビ「俺たちも」「お世話になってま~す」

ゴブリンゾンビ「彼の蘇生技術は素晴らしいよ!君も一度体験すべきだね!」

馬頭鬼「……あいつはできるヤツだ。自ら前線に立つこともあるしな」



マロン(どうやらゾンビ・マスターってモンスターに会えば体が直るみたいだよ。僕がキミを運ぶからさ)

ワイト「ならば早くむかいましょう。……それにしても、当初の目的と大分変わってますなあ」




マロン(聞いた話だとこの辺にいるみたいだけど……)

ゾンビ・マスター「ヒャッハー!オマエ達この辺でなにやってんダイ?」

マロン(あ、あなたがゾンビ・マスターさんですか?)

ゾンビ・マスター「いかにもさ!オマエ達このオレにようがあって来たのカイ?」

ワイト「実は……私の蘇生を行ってほしいのですが」

ゾンビ・マスター「ギャハハ!こりゃまた派手にやられたナ!蘇生のしがいがありそうダ!」

ワイト「おお!それでは頼めるのですかな?」

ゾンビ・マスター「ただーし!ただとは言わねえゾ。こっちも商売だからネ。ギャハハハ!」

マロン(そんな!僕たち持ち合わせなんか無いよ……)

ゾンビ・マスター「完全蘇生はコストがかかるからネー。払えないなら帰んナー。しっしっ」

ワイト「『完全蘇生は』?ということは他に方法があるのですか?」

ゾンビ・マスター「おっと気付いちゃっタ!?今なら半分蘇生コースも受付中ってわけヨ!ちなみにこっちはタダ」

マロン(タダ!?それなら是非とも)

ワイト「ですが……半分とは?」

ゾンビ・マスター「その名の通り半分だけ蘇生すんのヨ。残りのリハビリは自分でやってネーってワケ」

ワイト「何か体に悪そうなイメージがありますな……」

ゾンビ・マスター「ギャハハ!もう死んでんのに健康もクソも無いっショ!」

ワイト「そ、それもそうですな。よし、その半分蘇生とやらを頼みますよ」

ゾンビ・マスター「オッケーイ!じゃあそこに死体置いちゃっテ」

ゾンビ・マスター「ポチッとナ」


ドカ-ン


ワイト「あああああーっ……」ヒュ-

マロン(飛んでっちゃったけど)

ゾンビ・マスター「これぞダーク・バースト療法!ちとやりすぎちまったけどナ!」




マロン(大丈夫?)

ワイト「まだ少しふらふらしますが歩けるくらいにはなんとか……」

マロン(でも、これでようやく『王』に会うことができるね)

ワイト「しかし、またあの竜騎士に会う可能性もあるわけですが……」

マロン(今度は地図ももらったし正面からいけば怪しまれないって)

ワイト「だといいのですがねえ……」

マロン(あれが城かな……うわあ!すごい数のアンデットが城門に!)

ワイト「あの中心にいるのがもしや『王』?」



ワイトキング「侵入者が目撃されたのはこの辺りか」

闇竜の黒騎士「はっ!ヤツらはまだこの辺りをうろついて思われまして!」

ワイトキング「見つけ次第駆逐せよ。このアンデットワールドの平和のためにも!」

闇竜の黒騎士「はっ!」



マロン(なんということだ……今見つかったら大変なことになるぞ)

ワイト「こ、ここは大人しく逃げましょう、それがいい」

闇竜の黒騎士「むっ!そこにいるのは誰だ!」

マロン(み、見つかった!?)

闇竜の黒騎士「お前達は……王よ、こいつらが例の侵入者です」

ワイトキング「犬とワイトか……。まさか私と似たような奴に侵入されるとはな……」

ワイト「わ、私達は侵入者ではありません!ただ居を求めてここに来ただけで……」

マロン(僕もご主人様を探すために……)

ワイトキング「話は牢屋で聞こうじゃないか。おい、そいつらを捕らえろ」

闇竜の黒騎士「おおせのままに」


「ちょっと待った!」

ワイトキング「息子か……今は忙しいんだ。お前の言葉など聞いてる暇などない」

ワイトプリンス「だから待てって。そいつらの話ぐらい聞いてやったらどうなんだ」

ワイトキング「これから処刑される輩の話など聞く必要もない」

ワイト「お、お助け下さい!私達はただ道を間違えて来てしまっただけなんですって!」

マロン(王の首をとる気なんて無いよ!)

ワイトプリンス「ん?そこの犬……ちょっといいか?」

ワイトプリンス「こ、この名札……どうしてお前が!?」

マロン(これは僕のご主人様がつけてくれた者だけど……)

ワイトプリンス「お、俺がその飼い主だって言ったらお前は信じるか?」

ワイトプリンス「なあ、マロン!」

マロン(ど、どうしてその名前を……まさか、本当に?)

ワイト「マ、マロン?私が昔勤めてた家にもそのような名前の犬がいた気が……もしもあなたが飼い主ならばそこにいる王は……」

ワイト「旦那様ですか!?私です!1000年前にあなたの元に仕えてた執事でございます!」

ワイトキング「なに……執事だと?」


ワイトプリンス「よかった……もう一度お前に会えるなんて思わなかったよ!」

マロン(僕もです、ご主人様!)

ワイトプリンス「今ならお前の声がはっきり分かるよ。やっぱりお前はマロンなんだって!」


闇竜の黒騎士「どういうことだ……?侵入者が王と親しげに……」

ワイトキング「皆の者、混乱させてすまなかったな。この者達は私の知り合いだ」

闇竜の黒騎士「な、なんだと!?これは失礼した!まさか王の知り合いだったとは……」

ワイト「気にしないでください。私達もさっきまで気づきませんでしたから」




ワイトキング「……危うくお前を処刑するところだった。すまなかったな」

ワイト「旦那様まで……分かってもらえればいいのですよ」

ワイトキング「しかし、迷惑をかけてしまった以上は何か償いをせねば気がすまん」

ワイト夫人「でしたらこの方に住まいを与えたらどうです?」

ワイト「奥様……」

ワイト夫人「1000年ぶりですわね。執事は居を求めてここに来たのでしょう?でしたらその願いを叶えるのがあなたのできることではなくて?」

ワイトキング「……そうだな。私にはこんなことしかできないがこれで許してもらえないだろうか」

ワイト「私としては願ったり叶ったりですよ」

ワイト夫人「まったく……あなたは生前から人の話を聞かないからこのようなことになるんですよ」

ワイトキング「……精進しよう」




ワイトメア「まさか死んでもなお、キミの犬と会えるとは思わなかったよ」

ワイトプリンス「ああ、本当にびっくりしたよ」

マロン(ところでご主人様はどうしてそんな姿に?生前とだいぶ違うけど)

ワイトプリンス「確か死んだ時、『お前の体は使えないから別の人物ので我慢してくれ』って誰かから言われて。いったいなんだったんだろうな、ありゃ」

マロン(変なこともあるんだね)

ワイトプリンス「さてと久々にお前と出会ったんだ、どこかに散歩にでも行くか?」

マロン(はい!ご主人様!)

ワイトプリンス「待ってろよ、今散歩のコースを探してやるからな!」





ワイトメア「これにて一件落着だね」ゴクッ


ジョボボボ……


ワイトメア「虚しい……」



おまけ・どこかのカジノ



サンド・ギャンブラー「……という話があったのさ」

「実に興味深い話だったよ」

サンド・ギャンブラー「すまないね、わざわざ聞いてもらっちゃって。あんたのその役を見たら話さずにはいられなくなっちゃって」

「それではゲームの続きに戻ろうか。私も早くこの金を倍にしたいのでね」

サンド・ギャンブラー「おっと、早くも勝利宣言かい?」

「お前のそのカードを見て勝ちを確信しない奴などいないだろう」

サンド・ギャンブラー「確かに今俺の場にあるのは両手両足の意味不明のカード。でも、ここで逆転の1枚を引いたらどうする?」

「今日の俺は運がいいんだ。俺以上に運があるやつなどいるわけないさ」

サンド・ギャンブラー「……ああ、確かにあんたは運がいいね」


サンド・ギャンブラー「大金星という超レアな瞬間を見れるんだからな」




おまけ・終

以上です
前にかいたSSでお題のリクエストみたいなものをしたのですがネタ出しに時間がかかってしまい2ヶ月以上経った後で投稿となってしまいました
遊戯王は他にネタがあるのでまた近いうちにスレをたてるかもしれません



ここまで読んでいただき、ありがとうございました

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