夕暮れノイズ (7)

あの日の夕日は目に染みるほど赫かった。夕日が落ちて世界が黒に呑まれる数十分前だけの時間。時が経つに連れ、赤に染まっていく。5時に成ると鐘が鳴った。子供が家に帰る時間。私は家を出た。フル充電されたケータイに、お金の入った財布などをリュックに詰め込み家を出た。

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別に家出をしたわけじゃない。あの日の思い出を消すためだけに家を出た。

それは、今まで3年間の思い出が募られた中学校だった。ある日私はこの学校の屋上で友達を裏切り、傷つけ、挙げ句の果てに殺してしまった。こんな私は生きていて意味があるのだろうか。目を閉じ深く息を吸い込み吐いて、歩き出す。一歩、また一歩。

何も考えず、一心不乱に足を動かす。
たどり着いた先はもちろん中学校だ。

誰もいない校舎を1人で歩いた。

長年使い古してあり、重いドアを開けるとそこは夕暮れが広がる屋上だった。

卒業して以来何も変わっていなかった。

深く息を吸った。

私は中学校友達と共にお揃いにしていたストラップを屋上から果てがない赫に思い出を堕とそうとした、その瞬間。

過去が蘇った。

~過去~
先生「今日から皆さんの担任に成りました。中学校最後の1年を皆さんと過ごさせていただきます。良い思い出を作りましょう。よろしくお願いしますね。」

~自己紹介が回って来た~

「暁月燐華。よろしくお願いします。(冷めてるって思われてたって構わない。これから生きる上でのことを考えなくたって人生の転機なんてすぐそこにあるんだから。)」
笑顔ゼロのため息混じりの自己紹介を終えると後ろのショートカットの人の自己紹介だった。
「雨宮葵です!!これから1年間よろしくお願いします!!!」
とびっきりの笑顔で自己紹介をする彼女、雨宮葵と一瞬目があった。ニコッと笑う彼女が憎くてたまらなかった。今後関わることがないと思っていた。が、そうじゃなかった。いつもいつも
「燐華ちゃん!!一緒に移動教室行こう!」
「燐華ちゃん!ご飯食べよー」
など、私に構ってくるのだ。

ある日私は彼女に尋ねた。
「雨宮葵。貴様はどうしてそこまでして私に構う?ほかに良い奴がいるだろう?」
すると雨宮葵は
「え?そんなことないよっ!あたし、燐華ちゃんがすき!てか、葵でいいよ!」
凍ってた心がその一言で溶かされるのかと思った。唖然としていると
「星とおんなじだよ。星って数多くあって全然わかんないけど、何故か目に留まる星ってあるじゃん?それみたいな…だから、あたし、何があっても燐華ちゃんと仲良くするんだ。」
無邪気に笑う葵を見て警戒心が解けた燐華は
「プッ…ふふ…あはははっ…お前…面白い奴だな…気に入った。燐華で構わぬ。よろしく頼むぞ…葵」
すると葵は
「…笑った…しかも名前まで呼んでくれて…えへへぇ~・・燐華大好きッ!!!よろしくね!」
満面の笑みで抱きついてきた葵は始めて友達と思えたのかもしれなかった。

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