男「……スライム?」その2 (64)


男「…スライム?」
男「…スライム?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1412514745/)

前スレ

続きになります。

遅くなりました。
前スレでは中途半端なところでスレを閉じてしまって申し訳ない。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1421730933


川辺付近

ガサササッ!

武闘家「!!」

武闘家「……なんだ」

魔法使い「武闘家様〜!待ってくださいー!」タタタッ

武闘家「魔法使い!」

ガサササッ!

武闘家「!!」

武闘家「止まれ!なんかいるぞ!」

魔法使い「えっ!?」

武闘家(川の近くに住む魔物か!?)

ババッ

「キェエエ!!」

武闘家「!!」

魔法使い「わあ!」

ガッ!!

武闘家「ぐぐ……ッッ!」

武闘家「こ、こいつ!!」

突然飛び出してきた魔物の攻撃を、両腕で受ける武闘家。

武闘家「きりかぶおばけか……ッッ!」

きりかぶおばけ「キェッッ!」

魔法使い「武闘家様!」コォオ

魔法使い「風魔法・小!」カァ!!

きりかぶおばけ2「キエア!!」ズバァ

魔法使い「なっ!仲間を庇るなんて!」

きりかぶおばけ3「キエエエ!」

武闘家「おらぁ!!」ドゴォ!

きりかぶおばけ「キィ!」

武闘家の前蹴り。

きりかぶおばけはすっ飛んだ。

武闘家「3匹か……!」

魔法使い「そのようですね……」

きりかぶおばけたち「キィィ……!」


武闘家「上等だ!やってやるぞ魔法使い!」

魔法使い「はい!」

魔法使い「あっ!男様とはぐれてしまっています!」

武闘家「あいつなら大丈夫だろ!」

武闘家「こいつら倒してから合流だ!」

武闘家「おっしゃああ!」

…………

男「……ッッ!!」

ポタポタ……

かぼちゃの騎士「……!」

少年「……!」

男「ぐぅ……!」ガクンッ

かぼちゃの騎士「チィ……」ブシュッ

かぼちゃの騎士「イイハヤサ……ダ……」

かぼちゃの騎士「マサカ……ウデヲキリオトサレルトハナ……」

男「……ハァハァ」

男(危なかった……ッ……)

男(居合抜きが……ここまでスムーズに走ったことはない……!!)

男「うぐっ!」ブシュ

男(でも俺も肩を斬り付けられちまった……!)

かぼちゃの騎士「ハァハァ……」

ガシッ

かぼちゃの騎士はもう片方の腕で剣を取った。

男「!?」


かぼちゃの騎士「カマエロ……!!」

男「ま、まじでか……!?片腕ないんだぞ!?」

かぼちゃの騎士「ヌゥア!」ダンッ

かぼちゃの騎士の突進。

不意の攻撃に男は反応が遅れてしまった。

男「ッ!!」

男(くそ!向こうの片腕がないとはいえ……俺も満身創痍だ!)

ガキィィンン!!

かぼちゃの騎士「フッ……」ギギギッ……

男「グググッ……!!」ギギギッ……

かぼちゃの騎士「チカラ……クラベダ!」

ドガァッ!

男「うぐッぅ!!」

ズザァァ

かぼちゃの騎士のぶちかましで吹き飛ばされる男。

片腕とはいえ、魔物の筋力は人間とは比べものにならない。

男「ぐぅ……!ハァハァ……ッ!」

男(やっぱり力はすげえ……!受けちゃダメだ……ッ)

男(さっきの感覚を……思い出す!)

ザッ……!!

かぼちゃの騎士「……ム」

刀を鞘へ納め、低く腰を落とす。

居合い抜きの構えだ。

男「ハァハァ……!!」

男「こいよ……!剣士の……覚悟!見せてやる!」


かぼちゃの騎士「ホウ……イイカオダナ……」

かぼちゃの騎士「カタウデガナイカラトイッテ……」

かぼちゃの騎士「ユダンセヌコトダ!」

ダッッ!!

かぼちゃの騎士は男に向けて低く走り出す!

男(焦るな……!!)

男(逃げる、避ける)

男(頭から失くせ!)

かぼちゃの騎士「ヌゥアァ!!」

かぼちゃの騎士は左から横薙ぎに剣を走らせた!

男「ハァア!!」ギュッ

応戦し、鞘から刀を抜く!

……シュン!!

抜刀された刀はかぼちゃの騎士の剣の上をより素早く通過、

ズバッ……!

かぼちゃの騎士「……!!」

かぼちゃの騎士は肩から袈裟に斬られた。

かぼちゃの騎士「……グッ……!」ブシュァァア

男「ハァハァ……!」

かぼちゃの騎士「……マサカ……マケルトハナ……」

ドシャァッ

男「……」ゼェゼェ

男「……生き残った……のか」

男「……ハァ……ハァ……」

男「ぐっ!」ガクッ

男(斬られたところが……めっちゃ痛い……)


少年「……」タタタッ

少年「……傷、痛む?」

男「ん?……あぁ、少しだけ……ッ」

少年「……よく、かぼちゃの騎士に勝てたね」

少年「……2人が……いないと……厳しいと思ってた」

男「ハハ……」

男「俺も……本当に死ぬんじゃないかって思ったよ」

男「……ッ……」ズキッ

男「でも……かぼちゃの騎士が言ってた……剣士としての勇気を……」

男「この戦いで少しだけでも持てた気がする……!」ニカッ

男「逆に……感謝しないとかもしれないな……」

少年「……勇気……」

男「斬られたところが本当に痛い……」

男「少年……2人を探してもらってもいい?」

男「1人にさせるのは申し訳ないけど……俺も、まだ動けそうになくて……ッ」

少年「……わかった……」

少年「あなたこそ……1人になって大丈夫?」

男「……多分!」

男「木陰に隠れてるよ……」

少年「……わかった……行ってくる」


川辺


魔法使い「風魔法・中」カァッ

発令とともに、二本のかまいたちが森の中を奔る。

スパッ、スパスパッ!

きりかぶおばけ「キェエエ!」

ズバババッ

きりかぶおばけ「キェエエアアア!?」

魔法使い「よし!」

魔法使い(あと……一体のはずです!)

オオラアアア!!

ボゴッッ!

きりかぶおばけ「キェエエ!!」

武闘家「っしゃあ!」

武闘家「残り一体ィイ!」

武闘家「って魔法使いも倒したのか!」

魔法使い「同じタイミングだったみたいですね」

武闘家「うし、じゃあこれで全部倒したな」

魔法使い「男様を探しに行きましょう!」

武闘家「おう!」

魔法使い「無事でいてくれるといいんですが……」


キラリッ

武闘家(ん?水面が光った?)

武闘家「あっちのほうか……?」

武闘家「……ちょっと待て!」

魔法使い「はい!?」

武闘家「こっち見てくれ!」ヒソヒソ

武闘家「あれってよ……」

魔法使い「……?」

魔法使い「!!」

魔法使い「もしかして……」

武闘家「ああ……!そのもしかしてかもしんねぇぞ」


…………

少年「……」

少年「……いない」

ガサガサ カサカサ

少年「どこに……行ったんだろう」

少年「まさか、川辺から……離れた?」

少年「どうしよう……」

少年(あの人は……もう戦えないだろうし……一回撤退したほうが……)

少年(でも……僕じゃ……運べない……)

少年(格闘家の人……いなきゃ……)


それから、30分ほど、少年は辺りを探したが、2人を見つけられず、男の元へと戻った。


男「見つからない……か……」

男「どこに行ったんだ……?」

少年「……分からない」

少年「でも……川辺に……少しだけ戦闘した……跡があったよ……」

男「まじか!?」

少年「……うん」

男「……まさか……やられたとか……」

男「いやっ、あの2人がそんな簡単にやられるわけない……」

男「俺を探して遠くまで行っちまったのか……?」

少年「……僕たちも……川辺に移動したほうがいいと思う」

男「えっ?」

少年「その傷……洗って薬草を塗らないと……」

少年「結構……時間が経ってる……」

男「確かに……そうだな」

男「川辺まで移動するか!」

男「休んだら体力も少し戻ったしな」


…………

男「……ふーっ」

男「水分補給したら、だいぶ落ち着いてきた」

少年「……美味い」

男「休憩しようとしてるところをやられたからなあ……」

男「……」

男(辺りに魔法使いの魔法跡がある……ここで戦闘があったのか……?)

男(まさか……負けて連れて行かれたり食われたりしたってことはないよな)

男「……」

少年「……!」ピクン

少年「……なにか……くる」

男「まじか?」

男「こんなときに魔物かよっ……!」

少年「いや……」

少年(この気配……魔物じゃない……?)

「おっ!いたいた!」

男「!?」

「見つけたぞー!」

「本当ですか!?そっちにいきます!」

男「聴き覚えのある声……」

ガサガサ!

武闘家「おう!男ー!」

男「武闘家ぁ!?」

武闘家「やっと合流出来たな!」

武闘家「生きてて良かった!」

男「いやそれはこっちのセリフ……


魔法使い「男様!」

魔法使い「無事だったんですね!」

男「魔法使いもか!」

男「ってその手に握ってるのは……」

魔法使い「はい!」

魔法使い「依頼のオークの持っていた白銀の槍です!」

男「えぇ!?」


…………

平原 少し開けた場所


男「いやー……」

男「まさか……2人が白銀の槍を持って帰ってくるなんて」

武闘家「はっはっは!」

武闘家「たまたま、オークの群れが水を飲みに来てたんだよ」

武闘家「そしたら、そのうちの一頭がこの槍を持っててな」

武闘家「オークとはまともに戦闘してねえ。魔法使いのデカイ魔法で陽動して俺がサクッと奪って帰ってきたんだ」

魔法使い「本当は男様との合流を優先すべきだったんですが……」

魔法使い「ちょうど見つけてしまったので」アセ

男「ううん、良かったよ、俺は使い物にならない状態だったし」

武闘家「かぼちゃの騎士とやったんだろ?」

男「あぁ。なかなか危なかったよ」

男「本当に死ぬかと思った」

魔法使い「肩の傷が痛々しいです……」

武闘家「多分俺らにきりかぶおばけを差し向けたのもそいつだな……」

男「剣士と戦いたがってるようだったから、そうかもね」

武闘家「くそ!パーティで戦えばそんなんコテンパンにしてやんのによ!」

男「いや……」

武闘家「ん?」


男「俺は……かぼちゃの騎士とやれて良かったと思ってる」

男「剣士として……必要なものに気付けた気がするんだ」

武闘家「……ほおー」

武闘家「確かに、少し表情が変わったか?」

魔法使い「凛々しくなったような気がします!」

男「い、いや!そんな大層な感じじゃないよ!感覚の話!」

男「実際ギリギリだったしね!」

少年「……」

少年(この世界とは違う匂い……でも、)

少年(あいつとは……別物なのかな……)

武闘家「うし!じゃあ依頼人のところに行こうぜ!」

武闘家「1日と半日もまともな飯食ってねえしな!」

2人「はい!うん!」


依頼人宅


依頼人「おぉ……これは……」

依頼人「確かに、私が依頼したものだ。こんなに早く取り返してくれるとは」

武闘家「へっ!余裕だって言ったろ!」

依頼人「うむ」

依頼人「心配し過ぎてしまっていたようだ」

依頼人「少年は役に立てたか?」

男「少年がいなきゃもっと時間がかかっていたと思います」

依頼人「そうか、役に立てたようで良かった」

少年「……」

依頼人「上手くコミュニケーションが取れるか不安だったんだが……」

男「いえ、いろんな事を話してくれましたよ」

依頼人「いろんな事か……」


依頼人「ところで、君たちはこんな話を知っているか?」

魔法使い「はい?」

依頼人「魔王が、どうやって産まれるのか」

武闘家「!?」

男(!!)

男「し、知りません」

武闘家「詳しいことは知らねぇけど、魔界で誕生したのが起源なんじゃねえのか?俺は小さい頃からそう教わってきたぞ」

魔法使い「私もそうでした」

依頼人「まあ良くある話だな。どの地方でもそのように伝わっているだろう」

武闘家「ここは違うのか?」

依頼人「ここに言い伝えられていることは……少し違う」

依頼人「昔からここに住む人しか知らないがな」

依頼人「魔王は……人間界で生まれたのが起源なのだよ」

3人「??」

武闘家「人間界で……?そんなのありえねえだろ!」

武闘家「人間界で魔王みてえな馬鹿でかい魔力を持った生物がうまれるわけねえ!魔界のような瘴気の溢れる環境ならわかるが……」

依頼人「まあ、そうだろう」

依頼人「今の時代ならばな」

依頼人「ここの言い伝えでは……魔王が初めて生まれたのは1500年前」

依頼人「その時代には、魔物なんていなかったと言われている」

魔法使い「……どういうことでしょうか」

魔法使い「魔物たちは魔王に生み出されたものだと思っていました……やはり魔王が先に誕生し、魔物を生み出した。そして、魔物を操り人間界へと攻め入ってきた……」

魔法使い「そういうことでしょうか?」


依頼人「さあな。詳細は私も分からん。ただ、魔王は『人間界で生まれた』んだ」

依頼人「言い伝えだからな、眉唾ものではあるが…」

依頼人「面白い話だろう?」

依頼人「この地方のお年寄りたちはみんな知っている。この地方ならでは、の話だ」

依頼人「土産になるかと思ってな」

武闘家「なーんだよ、土産話かよ!」

武闘家「少し信じちまったぜ」

魔法使い「私も本当に考えてしまいました……」

依頼人「はっはっは、私も初めて聞いたときは驚いたよ」

依頼人「こんなに早く依頼を片付けてくれた礼だ」

依頼人「報奨金を渡そう。少し待っていてくれ」

武闘家「おう!」

男「……(なんだ?)」

男(魔王は……異界人じゃないのか……?)


イースト王国 離れ


「ほーんとうかよー」

「あいつの話だよな?」

魔女「えぇ、そうよ」

魔女「王様からの連絡だから間違いないと思うわあ」

「……んー」ポリポリ

「あいつが居なくなるなんて珍しくねぇと思うんだけど」

魔女「まあ今回は報告せずに行方不明になっちゃったから、王様も焦っているんじゃない?」

魔女「国の英雄ですもの」

「なんか興味あるもの見つけて突っ込んじゃっただけとかそんな感じな気がするぜー?」

「前にもこんなことあったしよー」

ガチャガチャ

魔女「ふふ、そう言いつつも準備はしてくれるのね」

「いやねー、いくら俺が賊で頼み相手が王様だっつったってさー」

義賊「勇者のことで頼まれちゃー断れねえんだよなー」

ボサボサの髪の毛に赤いバンダナ。
この痩せ型の男は、以前勇者とともに魔王を討伐したメンバーの1人だ。

隠居してからは、義賊としてイースト王国の離れに住んでいる。


魔女「ありがとう、義賊」

義賊「まあぼちぼち探してこーぜ」

「義賊さん!」

義賊「ん?あぁ、お前忘れてたわ」


盗賊「ひどいっすよ!一番弟子の僕を忘れるなんて!」

義賊「一番弟子もなにもお前しかいねーからなー」

盗賊「そんなことより……どこかに行くんすか!?」

義賊「そんなことよりってお前……。ちょっと依頼が舞い込んでよ、サクッと行ってくる」

盗賊「僕も連れて行って欲しいっす!」

義賊「だめ」

盗賊「即答すか!?」

義賊「女の子にゃ厳しい依頼だし、お前弱っちいんだもん」

盗賊「うっ!!」グサリ

盗賊「た、確かに僕は弱っちいすけど……少しくらいは役に……」

義賊「こないだ依頼に連れて行ったらモブのマミー相手に泣きついてきたくせに?」

盗賊「あぁ!それは内緒の約束っすよ!」

義賊「いやそんな約束してねえわ」

義賊「とにかく、今回はお留守番だ。ここを守るのもちゃんとした仕事だぞ?」

盗賊「……そうすけど……」

義賊「……はぁ」

義賊「仕方ねえなー」

義賊「魔女ー」

魔女「なあに?」

義賊「ウエスト王国まで同行させてもいいか?依頼には連れて行かないからよー」

魔女「私はいいわよお」

盗賊「ま、魔女さんん!」

魔女「可愛いしね」フフフ

義賊「ありがとう」

盗賊「義賊さん!僕、がんばるっすよ!」

義賊「なにを頑張るんだよお前は……」

義賊「まあコロシアムあたりに置いていけば治安の心配もねえだろうしな、大丈夫だろう」

魔女「じゃあ出発しても大丈夫かしら?」

義賊「おうっ!」

盗賊「はい!」

盗賊「あっ!本忘れたっす!」ダダッ

義賊「おいおい……」

魔女「フフッ」

今回の更新はここまでにします

また書きためができたら投稿します


宿屋


武闘家「いやー、やっぱり国の役員は羽振りがいいな!」

男「まさか報酬にプラスしてこんな高価なものまでくれるなんてね」

魔法使い「とっても綺麗ですね〜……」ウットリ

報酬をもらったあと3人は主人の宿屋に帰っていた。部屋の中で報酬について話している。

男「これが『ほしふるうでわ』かぁ……」ジー

男の前に置かれている腕輪は、レアアイテム、『ほしふるうでわ』だ。

身につけた者に風の精霊の力を貸し、素早さをUPさせる。

魔法使い「とてもレアな装備ですよね」

武闘家「あぁ。市場じゃ50000Gは下らねえだろうな」

男「なんでそんなアイテムをくれたのかな」

武闘家「早く依頼が終わったからじゃねーの?」

武闘家「実際、たまたま見つけなきゃもっと時間がかかってただろうしな!」

男「そういうことかー……」

魔法使い「私は指輪を装備しているので、武闘家様か男様のどちらかですね!」

男「んー、これは武闘家のほうがいいと思う」

武闘家「おっ、いいのかよ?」

男「武闘家は素早さ命じゃない?これから先、武闘家に先手を打ってもらうことも増えるだろうし、パーティのためにも武闘家が身につけたほうが」

武闘家「俺は嬉しいけどよ、男だって素早さ重視の剣士だろ?」

男「これからは素早さに頼らないようにしたいんだ。もっと力を身につけて、一撃で倒せるように……」

武闘家「……まあ、男がそういうなら断る理由もねえしな」


武闘家「じゃあ、身につけさせてもらうぜ」

ガシッ

ヒュアッ!

武闘家(な、なんだこりゃ……?!)

武闘家(めちゃくちゃ軽い!手に持っただけで、俺まで軽くなったみてえだ!)

男「……どした武闘家?」

武闘家「い、いや、すげえ軽いんだよ……」

魔法使い「そんなに効果のあるアイテムなんですね」

武闘家「じゃあ……腕につけるぜ」

ガチャッ!

武闘家「……!」

スゥッッ

武闘家(スゲェ……!体が重力を感じなくなったのか?身につけただけで、自分の素早さが上がったことが理解できる!)

男「どう?」

武闘家「こいつぁスゲェぜ……!」

武闘家「魔法無しでも空を飛べそうだ」

武闘家「少し体を動かしてみるわ!外に行ってくる!」ダダッ

魔法使い「あ、行ってしまいましたね……」

男「せっかちだなー武闘家は」ハハハ

男「でも俺もちょっと平原まで行ってこようかな」

魔法使い「え?男様もですか?」

魔法使い「まだ傷が完治していないと思いますが……」

男「少し肩が痛むけど、こないだの感覚を忘れないうちに反復しておきたいんだよね」

男「魔法使いはどうする?」

魔法使い「それでしたら私も行きたい本屋があったのでそっちに行ってみます!良い魔術書があれば勉強しておきたいですし」

男「わかった。また宿屋に集合しよう。武闘家も夜ご飯までには帰ってくるだろうし、それまで自由時間だね!」

魔法使い「はい!」

魔法使い「あっ、男様!修行のしすぎはダメですよ!」

男「ハハハ、わかってるよ」


平原


ブンッ!

男「……ふー」

男(なんか違うんだよなあ……まあまだ日本刀ってものが手に馴染んでないのかもしれないけど)

男(かぼちゃの騎士との一戦で、なんとなくコツをつかんだような気がしたけど、やっぱり独学で日本刀を扱うのは難しい)

男(どっかでイースト王国出身の人でもいたら教えてもらえるかもな)

男(……ってもう夕方か)

男「……」

日も沈み始め、周囲の雰囲気が薄暗くなってきていた。

この広い平原に生き物は男しかいない。

現代の日本では味わうことのできない風景に、男は少し言葉を失った。


男「……もうこっちにきて大分経つ」

男「母さん……さすがに心配してるだろうな」

男(早く……元の世界に帰る方法を見つけなきゃ)

「ほっほっほっ、修行ですかな?旅のお人」

男「え?」

男「……あなたは?」

男に話しかけてきたのは、復興の村の村長だった。

村長「わしはこの村の治めさせてもらっている村長じゃよ」

男「あっ、村長さんでしたか。どうもこんばんは」

村長「修行ははかどっているのかい?」

村長「少年からここで修行していると聞いておってな」

男「少年から……」

男(そういえば見てたって言ってたな)


男「あまり……はかどってないかもしれないですねー」ハハハ

村長「ほっほっほっ、すらんぷ、というやつですかな」

村長「まあ休憩がてらわしの話でも聞いてくだされ」

男「はい?」

村長「みたところ、あのパーティのリーダーはあなたでしょう?」

男「そうですけど……それがなにかしましたか?」

村長「わしの習慣、とでもいいますかな。この村へ来てくださった旅人にはある土産話をお話しているんじゃよ」

男「あっ、その土産話って……魔王についてのお話しですか?」

村長「そうじゃが……もう誰かから聞いたかのう?」

男「依頼人さんから報酬をもらうときに……」

村長「あの人か!なら大丈夫じゃ」

男「?」

村長「あの人は全てを知らんからのお。もしこの村の年寄りから聞いたんじゃったら、同じ話になってしまうが、あの人なら大丈夫なんじゃよ」

男「そうなんですね……」

男(確かに、大まかな内容しか話してもらえなかったからな。続きがありそうな気はしてた)

村長「おそらく、魔王は人間界で生まれたという話じゃろう?」

男「はい。約1500年前のことだと聞いています。それと同時に魔物達も現れ始めたとか……」

村長「この話の上澄みだけを抜き取ればそうなるんじゃよ。じゃが、続きの部分に重要なことが隠されているんじゃ……」


男「……その続きとは……?」

村長「……魔王の誕生にはなにが必要だと思いますかな?」

男「……は?」

男「……いや、仲間の話だと瘴気とか莫大な魔力とかだって……」

村長「それらは後から魔王が手にしたものと言われておる……。誕生するためになにが必要か……逆に言えば、何をどうしたら魔王が生まれてしまうのか……」

村長「この村は大陸でもなかなか古い村での。伝承されていくにつれ、事実はねじ曲がってしまっているじゃろう。だから土産話程度になるんじゃが、一貫して伝えられ続けているものが、あるんじゃ」

男「……」(勿体つけずにはよ言えや)

村長「それは、魔王が誕生するためには、ある玉が必要と言われておることじゃ」

男「ある……玉??」

村長「うむ。あくまで言い伝えであって、実在するのかはわからないんじゃが、その玉の噂はときたま流れてくる」

男「……へぇ〜」

男「もしかしたら、あるかもしれないんですね」

村長「噂、じゃがのお」

村長「言い伝えでもその玉の詳細は語られておらんから、どんなものなのかはわからんが、冒険者としては心踊る情報じゃろう?」ほっほっほっ

男「確かに興味のわく情報ですね……魔王に関する玉……」

男(勇者がもう調べてそうだけどどうなんだろう。そういえば魔王を倒したときのことは話してなかったなあ)

村長「あなたちちは聞いたところまだ駆け出しのようじゃの。この大陸を回るということは、次は奴隷と賭博の街……」

村長「冒険者といえども、安全な街ではないのは確かじゃ。気をつけて行きなされ」

男「はい。色んな話をありがとうございました」

男(そう……次は問題の奴隷と賭博の街なんだ。きっとこの村みたいな歓迎はされないだろうし、必ず問題が起こる……)

男(気を引きめ直さないとな)

男「って気づいたらもう日が完全に沈んでる!?」

村長「ほっほっほっ、少し話がながくなってしまったようで、すまんの」

男「いえいえ、村長さんの村にはお世話になりました!」

男「それじゃ、僕は宿に戻りますね」

村長「うむ、気をつけてな」

スラム街


ガヤガヤ ワイワイ

男「……」ザッザッザッ

武闘家「……」ザッザッザッ

乞食「へっへっへっ……」

乞食「お二方……随分良い身なりしてるじゃねえの……」

武闘家「……あ?」

武闘家「今イラついてんだ……はなしかけんじゃねえよ……」

乞食「おー怖い……」

乞食「そんなこと言わずに付き合えよ……」スッ

乞食は懐からナイフを取り出した。

乞食「身銭だけ置いてけや……ここはボンボンのくるところじゃ」

ガシッ

乞食「ふぐっ!?」

武闘家「はなしかけんじゃねえって言ったろ……!!」ギュウゥッ……!

武闘家「ぶっとばすぞ……!!」

乞食「ふ、ふぐうおッ!」コクコク

武闘家「ふん……」パッ

ドサッ

乞食「ぐっ!」

乞食「ち、ちきしょおがー!覚えてやがれ!」ダダッ

男「武闘家、あんまり目立つようなことは……」

武闘家「あぁ……わかってんだけどよ……」

武闘家「くそッ……!!」

武闘家「俺が……俺がしっかりしてりゃああんなことには……!」

男「お前だけのせいじゃないよ。俺も……この街を侮ってた……」

男「とにかく……この傷を癒そう……そんで作戦会議をしないと」


男「魔法使いを……取り戻さなきゃ」

ここまでにします

次回更新は間が空くと思うので期待せずお待ちを

コメントありがとうございます!

少し投稿

約20時間前


ザッザッザッ……

男「ハァハァ……ここが……」

武闘家「やっと着いたー!!」

魔法使い「とても遠かったですね……」

復興の村を後にした3人は、予定通り街道をつたって『奴隷と賭博の街』を目指すことにした。

街まではなかなか距離がある。

道が整備されているとはいえ、丸一日の歩き詰めは体にこたえたようで、街に着いた途端3人は大きく息を吐いた。

男「本当遠すぎるよ……」

武闘家「修行が足んねーんじゃねーのかー?」ハハッ

魔法使い「少し休みたいです」

男「……凄い街だな、こりゃあ」

男の眼前にはつぎはぎの要塞のような建物が、目を休ませることなく広がっている。

まさにスラム街、といった印象だ。

武闘家「とりあえず休めるところを探すか!」

男「ああ。でもこの見た目の通り物騒な街だろうから、警戒しつつ街に入ろう」

武闘家「おう!」


一方、スラム街のとある店


店員「へへへ……旦那のお眼鏡に叶うような子はここにゃあいませんぜ……」

豪族「んー、本当にいないねえ。わざわざスラムまで降りてきたってのに、これじゃあ歩き損だよお」

店員「なにせ大会前で品不足なんですよ……今度の大会でまた落ちてくると思いますが……」

店員「組み合わせを見る限りでは冒険者が3組ほど……期待して良いかと思いますよ」

豪族「貧民の情報なんて耳が腐るからいいよお。どうせうちのが優勝するんだ」

豪族「花の街が通れなければこっちに集まるかと思ったら……案外、そうでもないもんだねえ」

豪族「まあ大会で良いのがいればいただこう。必ず勝つんだよ?」

豪族「『拳奴』」

拳奴「……」コクリ


スラム街


男「……こりゃあヤバイな……」

武闘家「あぁ。どいつもこいつも……俺らを狙ってる」

男「聞いたとおりだね。まともに宿を取れるのかどうか……」

武闘家「食いもん買ったら外に出ても良いかもな」

魔法使い「お腹も空きました……。魔力も残り少ないです」

男「うん。とりあえず酒場にでも行ってみようか。なにか情報が得られるかもしれない」


ガチャ

豪族「はーあ、相変わらず空気が臭いなあ。まあ店内も臭かったけど」

豪族「早く貴族街に帰ろう」

豪族「……ん?」


豪族の視線の先には魔法使いがいる。


豪族「……身なりからして冒険者かなあ?」ニタリ

豪族「凄く良い子がいるじゃない……。おいそこの貧民」

貧民「あぁん?ってあんたは……!!」

貧民(この街で一番の権力を持っている豪族じゃねえか!!)

貧民「へ、へい!なんでしょう??」

豪族「おい、こっちに口を向けるな臭い。あそこを歩いてる女の子がいるだろう?あの子、捕まえてこい」

豪族「その辺の奴らと協力してもいい。100000G払ってやるぞ」

貧民「ま、まじすかあ!?」

貧民「おいてめえら!!話きけえ!」


ギャイギャイ ガヤガヤ

男「ん?なんか騒がしいな……」

武闘家「あの店の前がうるせーみてえだな。ありゃ貴族かなんかか?」

男「……」(なんだ……?こっちを見てるような……)

魔法使い「少し怖いですね……」

男「……早く離れよう」

貧民「あそこにいる魔法使いを捕まえりゃあ豪族様が100000Gくれるってよお!」


武闘家「……はっ!?」

貧民たち「おおおおおお!!」

豪族「あー、臭い臭い臭い」

男「なんだ!?どういうことだよ!?」

貧民「いくぜええ!」ドドド

男たちに向けて十数人の貧民が走り出す。

武闘家「くそ!意味わからねえ!男!やるぞ!!」

男「あ、ああ!」

豪族「あー、脇の男たちは連れなのかあ」

ドガァ!バギィ!

武闘家「オラァ!なめんじゃねえぞ!」

男「ふっ!」ズバッッ

男「それ以上近づくな!寄れば剣を抜くぞ!」

魔法使い(す、凄いことに……!私も魔力さえ残っていれば……!!)

男「ハァハァ……こいつら……魔法使いが狙いなのか!?」

武闘家「みてえだな……大方攫って奴隷にでもしようってんだろ……!ふざけやがって!」

貧民「こ、こいつら強え。この人数でかかっても奪えねえなんて……」

貧民たち「ハァハァ……でも、100000Gが……諦められねえ!」

男(くそ!やっぱり女の子の魔法使いは狙われるのか!早くこの状況から脱出しないと!)

男「武闘家!」

武闘家「ああ!?」

男「俺がこいつらを抑えつけるから、魔法使いを連れて逃げてくれ!」

武闘家「……わかった!」

武闘家(この状況ならそれがベストか!こいつら相手なら男も負けることはねえはず……)

男「いくぞ!」

武闘家「おう!魔法使い、こっちだ!」ダッ

魔法使い「は、はい!」

男を残し、武闘家は魔法使いとともに集団の反対側の路地へと駆け出した。

男「ここは行かせないからな!」

貧民「くそ!逃がすな!おえー!」

男(人数は多いけど……たいしたことない!ある程度足止めしたら撤退だ!)


豪族「おいおい……逃げられちゃうじゃんかよお……情けないなあ」

豪族「仕方ない……拳奴!」

拳奴「……」スッ


豪族「追え」


ズバァッ ガッ ブンッ

男「ハァハァ!」

貧民「こいつッッ!」ブンッ

男「遅い!!」ズバッ

貧民「ひっ!て、鉄パイプが、真っ二つに!」

男「斬られたくなきゃ……さがれぇえ!」

男(よし……!そろそろ俺も……)


ダダダッ

拳奴「……どけ」

男「!?」(こいつ!?豪族の横にいた……

シュンッッ

男が拳奴に気付くと同時に、拳奴は男の視界から消えた。

男「なっ!?」

拳奴「遅い」

男(うし

ドゴォッ!!

男「ッッガッ!?」ブフッ

男(け、蹴り……!?)

拳奴「ふん……」ダッ

男「が、がはっ!」ガクンッッ

男(ま、まずい!武闘家たちのほうへ……!)


ダダダダッ

武闘家「ハァハァ!」

魔法使い「ハァ……ッ……ハァ……!」

武闘家「大丈夫か魔法使い!?」

魔法使い「す、すみません……体力が……」

武闘家(休む間も無く襲われちまったからな……!魔法使いはしんどいだろう)

武闘家「よし、少しペースを落とすか!大分距離を稼いだはずだ」

魔法使い「ありがとうございます……」ハァハァ

武闘家「なんつー街だよ……いきなりこんな目に遭うとは」

武闘家「とりあえず街から出て、男を安全に待てるところを決めねえと……

ゾクッ!!

武闘家「!!!(なんだ!?)」

拳奴「やっと追いついた」

武闘家「お、追手かよ……!くそが!」

武闘家(なんだこいつは……布切れ一枚しか着てねえ。さっきの集団にこんな奴いたか……?)

拳奴「その子を渡せ。そうすれば痛い目に合わずに済むぞ」

武闘家「はっ!ふざてんじゃねえぞ、痛い目に遭うのはてめえだ!!」

武闘家「魔法使い、ここにいろ!あいつぶっ飛ばしてくる!」

魔法使い「は、はい!」

拳奴「黙って渡せばいいものを……」

武闘家「うおっしゃああ!!」ダッ

武闘家は拳奴に向けて勢いよく駆け出した。

武闘家(見た感じ武器は持ってねえ。手に包帯みてえなのを巻いてる感じからして素手ってことは俺と同じ拳を武器に戦うタイプ……。上等だあ!!)

拳奴「……」

武闘家「ハァッッ!」ブンッ

武闘家の右回し蹴り。

キュキュッ

と見せかけて、武闘家はそれをフェイントに拳奴の背後へと回った。

武闘家(本命はこっちだぜ!!)

ほしふるうでわを装備した武闘家の動きは常人をはるかに上回り、今のこの動きでさえ、普通の人には残像が残っているだろう。


しかし、


ドズンンッッ

武闘家「かっ……!?」

拳奴「ふん……」

ダメージを受けたのは武闘家だった。

武闘家「がはっ……!!(な、なにが起きた……!?俺の拳が空を切ったと思ったら……腹に痛みが……!!)」

拳奴「遅過ぎる」

拳奴「そこで眠ってろ」

武闘家「がぁ……は……(や、やべえ……意識が……)」

武闘家「なん……なんだ……てめえは」ゼェゼェ


拳奴「奴隷だ」

拳奴「女はもらっていく」ザッ

魔法使い「い、いやです!!」

武闘家「く……そ……!!」ガクンッ

武闘家「」

魔法使い「武闘家様!!」

拳奴「諦めろ。気絶してもらう」

魔法使い「わ、私だってたた ドッ

魔法使い「か、は……」

拳奴「よし」グイッ

拳奴「豪族様に届けねば」

ここで中断します

意外と間が空かずに投稿できて、よかった


現在 宿屋


武闘家「くそっ!」バァン!

男「ふー……」ドサッ

男「休める宿屋が見つかってよかった。いくつも断られたけど……」

武闘家「良くねえよ!一泊1000Gだぞ!?相場の20倍だ!なめやがって……!」

武闘家「この街は腐ってやがる……!どいつもこいつも人から騙し取ることしか考えてねえ!」

男(大分頭にきてるな……まあ無理もないか……俺だって似たようなもんだし……)

男(2人とも、『拳奴』とかいうやつに一瞬でやられたんだ……悔しくないわけがない)ギリッ……

武闘家「…………男!」

男「ん?」

武闘家「これから……どうするよ。少し休んだらすぐにかちこむか?」

男「……いや!それは多分ダメだと思う」

武闘家「なんでだ!?もたもたしてるとあの豪族とかいうやつになにされるかわかんねぇぞ!」

武闘家「売り飛ばされたりでもしたら……追跡できなくなる!豪族の居場所掴んでぶっ壊してやろうぜ!!」

男「俺だってすぐに行きたいけど……」

男「武闘家、お前、拳奴ってやつに勝てるのか?」

武闘家「……!!」


男「確か……この街では奴隷同士を戦わせる闘技場があるんだろ?てことは、豪族に仕えてる闘技場用の奴隷、兼護衛みたいなもんかもしれない。それならば、拳奴は豪族から離れないだろ……」

武闘家「ま、負けねえよ!さっきは準備が不足してたんだ!」

男「いや……俺も武闘家も……為すすべなく一瞬でやられたんだぞ……」

男「正直、パーティ揃って体力満タンでも真っ向から戦って勝てる気がしない」

武闘家「……な、なに言ってんだよ……」

武闘家「お前はリーダーだろ!?リーダーがそんな弱気でどうすんだよ!」

男「別に弱気になってるわけじゃない!冷静に考えて勝てる相手じゃないって言ってるんだよ!」

武闘家「そんなもん言い訳だ!男が行かねえなら俺が1人でも行ってやる!!」

男「は!?なに言ってんだよ!ついさっきやられたばっかで……

武闘家「うるせえー!」バタンッ

ダダダッ

男「武闘家ぁ!!」

男「……くそっ……なにしてんだよ俺は……!」

男「武闘家を止めないと……!」ダダッ


男は武闘家を追ったが、この全く土地勘のない場所で人1人を見つけるのは難しく、結局見つからないまま宿屋に戻った。


男「はぁ……はぁ……疲れた……」

男「武闘家……どこ行ったんだよ!!」

男「単独で勝てるわけないだろ……!」ダンッ

男「…………」ハァハァ

男「ダメだ……ここにいても仕方ない。色々情報を集めないと……」

男「酒場があるはず……汚れた格好をしていけばなんとか……」

男「絶対……パーティを元どおりにするんだ……!!」


12時間後 貴族街 外れ


「あぁ?なんだぁこいつ」

「ずいぶんとボロボロですわ」

「なんでこんなのが貴族街の外れに捨てられてんだ……警備に見つかったら奴隷にされちまうぞ」

「……斬撃傷が多いな……スラム街から貴族街に浸入でもしてどっかの護衛奴隷にボコられたか……?」

「でも……この方の身につけている腕輪、冒険者の方のもののような……」

「本当だ。冒険者かよ。こんな街によくきたなー」

「どうする?お嬢」

お嬢「そうですわね……私の屋敷に運びましょう。傷を手当てしてあげないとこれはマズイでしょうから」

お嬢「運んでくれる?騎士」

騎士「はいよ。てか頼まず命令してくれればいいっての」

投稿します


酒場


男「マスター、ミルクを1つ」

マスター「はいよ。20Gだ」

男「……」チャリン

男(……大丈夫そうだな。この身なりならぼったくりはなさそうだ)


男は武闘家を見失い宿屋に戻ってすぐ、酒場へと足を運んでいた。現地の住人と思われるように、装備は全て外し、布切れ一枚しか着ていない。

男(出来るだけ情報を聞き出そう)

マスター「あんた、ずいぶんとボロボロじゃねえか。どっかの貴族にでも痛めつけられたかい?」ゴト

男「あ、あぁ。護衛の拳奴ってやつにな……」

マスター「そりゃまた運が悪かったなあ。豪族んとこの拳奴とは」

男「……本当、災難だったよ」

男(運が悪かったって言われるってことは、あの貴族の護衛の奴隷は有名なのか……?もう少しなにかを聞き出したい……)

男「とんでもない強さだな、ありゃ。気づいたら失神してた」

マスター「ははっ、そらそうだ。闘技場王者なんだからな。今回の大会も奴が優勝だろうよ。命があっただけ幸運さ」

男「ははは……違いねえ」

男(闘技場の王者!?奴隷たちの闘技大会があるって聞いてたけど、そこの王者なのかよ!?)

男(通りであんなに強いわけだ……そんな奴を護衛に従えてるってことは、あの貴族はこの街ではかなりの権力を持ってそうだな)


男(……もうちょい……)

男「どっちにしても剣を取られちまったからな、文無し路頭の捨て犬野郎だよ」

マスター「そりゃもう色々と諦めたほうが賢明だな」ハハハ

男「なんとかして取り返せねぇかな……」

マスター「やめとけやめとけ。俺らみてえなのが貴族街に入った瞬間お陀仏だぞ?」

マスター「最近、冒険者が増えて奴隷に落ちる数も上がってる。貴族どもは舌舐めずりしながらスラム街に降りてきて、品定めをしてるんだ」

男「……」グビッ

男(それでか……魔法使いが狙われたのは。くそ……!確かに魔法使いは可愛いからな……!)

男「うし、もう行くかな。マスター、ありがとよ」チャリン

マスター「おうおう、気前がいいね。剣は新しいの買えよ」

男「ハハ……」


宿屋


男「ふぅ……慣れない話し方すると疲れるな」

男「でもそこそこ情報が集まってきたぞ」


男は酒場を出た後も、色々な店を回って聞き込みを続け、喫茶店や武具屋、道具屋など、入れそうな店は全てまわっていった。


男(整理しよう。この街の状況について)

男(まず初めに、この街は貴族街とスラム街で厳しく分けられている)

男(スラム街から貴族街へ浸入すると殺されるか良くて奴隷にされるか)

男(そして、その貴族たちが集結するイベントが『闘技大会』)

男(闘技大会では勝てばかなりの賞金が貰えるみたいだ……。でも、負ければ奴隷に落ちることになる)

男(今は賞金よりも魔法使いをなんとかしなきゃいけない。闘技大会になんて出てる場合じゃないし、この辺は要らない情報だったかな……)

男(問題は魔法使いをどう取り返すか、ってことと、武闘家とどう合流するかってことだ……。武闘家は荷物もこの宿屋に置いていった。3日とかは保たないはずだけど……)

男(……そういえば武闘家は闘技大会に出てみたいって言ってたな……。もしかしたらそっちの会場のほうに行ってるのかもしれない。今から行ってみるか……)


闘技場 外


わー!わー!わー!

コロセー! シネー!


男「す……すごい……」

男(まだ外にきただけなのに耳が痛い)


闘技場。この街の名物であり、最も人が集まる場所である。

スラム街と貴族街のほぼ間に位置し、建物自体はとても綺麗な作りをしているが、スラム街の住人がたくさん出入りし、そこかしこにゴミが散乱しているため非常に汚い。

貴族たちは専用の通路と観覧席があるため、全く気にしていないが、ただ立ち寄っただけの旅人は近づくことすらためらうだろう。

ならず者たちが危険をかえりみず腕試しのために集まってくる。


男(なんか危なそうなやつばっかりだ……武闘家が混じっててもあんまり違和感がないかも……)

男「……中に入れないかな……」

チケットー!チケットー!200Gだよー!

男「あそこでチケットを買って入るのか」

男「よし」


闘技場 内部


ガキィンン! ズザァアア!!

わー!わー!

観客「なんだなんだー!根性見せろよ冒険者ぁ!」

観客「そうだそうだ!死んじまえー!」

実況「おおーっとお!?冒険者どうしたどうしたあ!?」


冒険者「くっ……!」

奴隷「グェヘヘヘ。どうしたよ冒険者あ?」

冒険者「ど、奴隷がこんなに強いなんて……!!」


男「中も凄いことになってるな……。熱気が凄い」

男(今戦ってるのは……冒険者と奴隷か?)

冒険者「くっそお!」ダダッ

冒険者が奴隷へとダッシュ、剣を両手に握っている。

対する奴隷はなんの武器も持っていない。

奴隷「ぎゃは!!」シュンッ

冒険者「!?」(消えた!?)

奴隷「下だよバカ!」

奴隷「うぉらあ!!アッパーカットぉお!」ドゴォ!

冒険者「ぐほお!」

奴隷「ちんたらしてんじゃあ、ねぇぞおおん!?ぎゃはははは!!」


男「冒険者が……あんなにボコられるなんて。奴隷ってみんな強いのか……?」

冒険者「く、くそぉ……負けるわけには……!!」

奴隷「さっさと負けを認めたほうがいいんでねーのお?お仲間のことは諦めなあ!ぎゃははは!」

貴族「ふっふっふ。いいぞ、奴隷。これであの女は私のものだ」

仲間の魔法使い「い、いやあ!冒険者!がんばってよお!」

奴隷「諦めな、嬢ちゃん。面白半分でここに参加したのが運の尽きさあ」

冒険者「うおおお!!」ググっ

実況「おお!?冒険者まだやれるのかあ!?」

奴隷「ちっ!面倒くせえなあ!」

奴隷「バラすぞゴラァ!!」ダダッ

冒険者「み、水魔法……中!!」バシャァァ

冒険者は右手の先から大量の水を召喚。
水は奴隷へ向けて勢いよく流れだした。


奴隷「う、うおお!?」バシャァァ

奴隷「魔法だとお!?」

冒険者「はぁああ!!」ドドドドド

冒険者が魔力を込めると、水はさらに勢いを増した。

バシャァァンンン!!

奴隷は身動きが取れず、大量の水とともに壁に打ち付けられた。

奴隷「ガバボバッ!!!」

冒険者「はぁ……!はぁ……!どうだッ……!?」

奴隷「ぐっ……ほぉお……」ガクンッ

奴隷「」ドサッ

冒険者「くたばったか……!!」


実況「なななんとお!冒険者の大逆転勝利だぁああ!!」

わぁあああああ!!!

フザケンナー! ドレイシネー! カネカエセー!


男「熱気がさらに……!出ないとヤバイな」

男(あの冒険者……水魔法の中級までマスターしてるのか。レベル高いな……)


闘技場 外


男「なかなか良いものが観れたけど、武闘家はいなかったな……」

男「どこにいるのか……」

男(とりあえず宿屋に戻るか)


豪族の屋敷


ガチャ

拳奴「ふぅ……」

拳奴「おい!交代だ」

「あー?もう交代かよー」

拳奴「今まで休んでいただろ。早く警備にいけ」

「はいはい。ゆっくり酒も飲めねーなあ、奴隷は」

拳奴「当たり前だ。奴隷なのだからな」

「お前はもうチゲェだろ〜」ゲラゲラ

「物好きがよお」

拳奴「…………さっさといけ」

「あー、俺も早く稼いで買い戻してえぜー」

「パパッと試合組んでくれりゃいいのによお?」

拳奴「ならば態度を改めたらどうだ?豪族様の信用を得ることが一番の近道だぞ」

「あいつ好きじゃねーのよお。太ってるし」

拳奴「……剣奴!」

剣奴「へいへい」

剣奴「警備も暇つぶしにくらいはならぁな。行ってくる」

剣奴「あー、早く誰か斬りて〜」

ここで中断します

なかなか進まず申し訳ない


もっと簡単にまとめられるようにします

投下


武闘家「うぅ……」

……………………


「侵入者かよ、ラッキーだな」

武闘家「あぁん!?誰だテメェは!」

武闘家「俺は貴族街に探し物があるんだ!そこをどけ!」

「ずいぶんと威勢が良いじゃねえの」

「俺はそういうの嫌いじゃねえぜえ?」

武闘家「あん!?」

「まあでもな、この街はテメェみたいなのが気安く入っていい街じゃないらしいのよ」

「出て行ってもらおうか」ザワッ

武闘家「!!」

武闘家(こ、こいつ……!!なんて殺気を放ちやがる……!!)

「いくぞ」

武闘家「……!!」


……………………


武闘家「ああッ!?」ガバァッ

武闘家「ハァハァ……!」

武闘家(……くそっ!)

騎士「うおっ、びっくりさせんなよ」

武闘家「……?」ハァハァ

騎士「体調はどうだ?お嬢の回復魔法が効いてんだろ?」

武闘家「誰だ……あんた」

騎士「俺は騎士。お前は?」

武闘家「……武闘家」

騎士「武闘家、ね。今は安静にしとけよ。傷が開くぞ」

武闘家(包帯が……巻かれてる)

武闘家「ここはどこだ」

騎士「お嬢の屋敷だ。あ、お嬢ってのは俺の主人な。ちなみに、お前の傷を治してくれたのもお嬢だ」

騎士「俺からも質問だ」

騎士「お前、あんなところでなんでぶっ倒れてたんだ?貴族街のはじっこでよ……」


武闘家「……」

武闘家「仲間が……貴族に攫われてった」

騎士「仲間?」

武闘家「そうだ、休んでる場合じゃねえ……!」ググッ

武闘家「ッ!」ブシュッ

騎士「おいおい、動くのはやめとけって言ったろ」

武闘家「ぐっ……」

騎士「とりあえず話を聞かせてみろよ」

武闘家「……」


武闘家は、自分が冒険者であり男、魔法使い、自分の3人のパーティで旅を始めたことから話した。そして、先刻、いきなり貴族の奴隷に襲われ、なすすべなく仲間を奪われてしまったことまで……。


騎士「なるほどな……」

武闘家「だから俺は休んでる場合じゃねえんだ。助けてもらったことにはすげぇ感謝してる。でも、これ以上休んでたら魔法使いがどっかに売りさばかれちまう……!!」

騎士「それなら心配ねえよ」

武闘家「は?」

騎士「大丈夫だ。お前の話を聞く限り、魔法使いがどこかに売りさばかれるのは1ヶ月先になる」

武闘家「なんでそんなことがわかんだよ!」

騎士「……武闘家、魔法使いは豪族に攫われていったんだろ?」

武闘家「あぁ。そんな名前のやつらしいな」

騎士「よそ者の武闘家にはわからないだろうが、この街では半年に一度、でっかい闘技場イベントがある」

騎士「闘技場では普段個人戦しか行われていないが、そのイベントでは『団体戦』が行われるんだ」

騎士「ほとんどの貴族が参加し、自らの奴隷の優位を競い合う。そこで賭け金となるものが、大抵貴族が持っている奴隷の女なんだ」

武闘家「なんだよそれ……まさか……」

騎士「あぁ。必ず豪族は魔法使いを賭け金にするだろうな」

武闘家「ふっざけんな!!魔法使いはものじゃねえ!!」

騎士「まあ落ち着けよ……逆に言えばまだ時間があるってことだ」

騎士「豪族は自分の奴隷の強さに絶対の自信を持ってる」

騎士「今日武闘家がやられた剣士の奴隷は、おそらく『剣奴』ってやつだ」

武闘家「ハァハァ……剣奴?」

騎士「あぁ。豪族の闘技場奴隷のNo.2だ。拳奴よりは強くないものの、それでも実力者であることは変わらない」

騎士「豪族はいつもこのイベントに参加しては優勝していく。この2人はそれくらいずば抜けて強いんだよ」


武闘家「……関係ねぇよ」

騎士「だから、やめとけ。豪族の屋敷に忍び込むことはできないし、出来たとしても殺されるぞ。今回はたまたま運が良かっただけだ」

騎士「俺とお嬢が通らなかったら貴族街の憲兵に捕まって公開処刑か奴隷になってたんだぞ……」

武闘家「…………」

武闘家「じゃあ……どうしろっつんだよ!」

武闘家「このままなんもせずにいるなんて俺には無理だ!」

騎士「だから落ち着けって」

武闘家「落ち着けるかよ!一か月あるならどっかで屋敷を奇襲すりゃあ……」

騎士「返り討ちだっつの。とりあえず、お嬢が帰ってくるまではジッとしときな。お嬢は頭が良い。なにか良い案を出してくれるだろう」

武闘家「……くそっ……」

騎士(こりゃあとんだ拾い物だな……)ヤレヤレ


数時間後


ガチャッ

騎士「お」

お嬢「騎士ー帰りましたわよー」

騎士「はいよー。武闘家、挨拶しろ」

武闘家「……あぁ」

お嬢「今日は三丁目の貴族がうるさくて参りましたわ……。あら、目が覚めたんですね!冒険者のかた」

騎士「二時間ほど前に。傷も塞がってきているみたいだ」

武闘家「どうも……」

お嬢「良かったわ!私の回復魔法で効くのかどうか心配だったの」

武闘家(……いくつなんだ?この女性は……)


武闘家が疑問に思うのも無理はない。騎士は30歳前後のような外見であり、振る舞いや落ち着きも年相応に見えるが、お嬢の外見はどうみても10歳前後なのである。しかし、お嬢から漂っている雰囲気や言葉の端々に感じられる知性は、一般的な10歳とはまるで違うように感じられるのだ。


お嬢「改めて挨拶をさせていただきます。私はこの屋敷の主で、騎士の主人もやらせてもらっているお嬢と言います」

武闘家「屋敷の主!?ってことは貴族なのか!?」

お嬢「……あなたも自己紹介を」

武闘家「あ、あぁ悪りぃ……。俺は武闘家。港町からこの街まで3人のパーティを組んでやってきた。冒険者だ」

お嬢「やはり冒険者のかただったのですね。自己紹介をありがとうございます」

お嬢「先ほどの質問ですが、その通りです。私は貴族としてこの街に住んでいます」

武闘家「こんな幼い子が……」

騎士「まあその辺は複雑な事情があるんだ。周りのアホな貴族たちに比べたらお嬢の年齢なんて大した問題じゃないしな」

武闘家「確かに、その辺の貴族どもはもっとこう……下品な感じがしたが、それが全然ない」

お嬢「ふふ、ありがとうございます」

お嬢「本題なのですが、武闘家さんはなぜ貴族街でボロボロになって倒れていたのですか?」

武闘家「それは……」

騎士「まて、俺から話すよ。武闘家が話すとまた怒りそうだ」

武闘家「は!?怒らねえよ!」

騎士「ほらな。まあ説明させてくれよ」


騎士からお嬢へ、同じ情報が繰り返し伝えられる。


お嬢「なるほど……仲間の方を……」

武闘家「あぁ。そういうわけなんだ……」

武闘家「助けてくれて嬉しいがもう行かねえと行けない」

お嬢「待ってください」

武闘家「ん?」

お嬢「豪族は騎士の言う通り奴隷の強さで成り上がったようなもので、そんな輩の屋敷に忍び込めば確実に死にますわ」

武闘家「だから、さっきも言ったけどここでジッとしてるなんてのは……

お嬢「取返す方法は、他にもちゃんとありますよ」

武闘家「!?」


騎士「おー、流石はお嬢だ」

武闘家「どんな方法なんだそれは!?!?」ガタァッ

お嬢「お話しても良いのですが、その前に武闘家さんのお仲間の男さん?という方をここに呼びましょう。この方法には5名必要なのです」

武闘家「……分かった。おそらくまだ宿にいるだろうから……連れてくる」

武闘家「その……取返す方法ってのはマジなんだな?」

お嬢「はい。私は嘘をつきません」ニコ

武闘家「分かった。ちょっと待っててくれ」

お嬢「もし貴族街から出る際に憲兵に捕まったときはこの印を見せてください。入るときも同様に」

武闘家「……なんだこりゃ。印籠……?」

お嬢「私の家の家紋を刻んだものです。貴族街で外出するときは欠かせないものなのです」

武闘家「ほー。通行証みたいなものか」

お嬢「そうですね。出歩けるからといって豪族の屋敷へ行ってはダメですよ!」

武闘家「分かってるよ。どこぞのやつともわからねぇ俺を助けてくれたんだ……。あんたの言う方法ってやつを信じるよ」

騎士「気持ち悪いくらい素直だな……」

武闘家「さっきはなんの方法もなくて焦ってたんだよ!」

武闘家「それに、なんとなくこのお嬢ちゃんの言うことは信用できる気がするんだ」

武闘家「なんとなく、な」


武闘家はそう言うと屋敷を出て行き、スラム街へと向かった。


騎士「……行ったか」

騎士「お嬢……まさか方法ってのは……」

お嬢「騎士も察しがついているようね。おそらく、それで間違いないわ」

騎士「…………」

お嬢「もし、本当に仲間を助ける覚悟があるのなら、彼等は首を横には振らないはず」

お嬢「男さんの登場を待ちましょう……」


宿屋


男「ぐぅ……ぐぅ……」

男「武闘家……むにゃむにゃ……魔法……使い……どこ……だあ……」


バァン!!


男「うおっ!?!?」ビクッ

男「な、なんだ!?ドアが……」

武闘家「……おう」

男「って武闘家ぁ!?お前今までどこに……!!」

武闘家「悪りぃ男。話は後だ。俺についてきてくれ」

男「なんだよいきなり……」

男「ってお前!怪我してるじゃんか!!」

武闘家「そのことも後で話す!会わせたい人がいるんだよ!」

男「……今度は抜け出したりしないだろうな?」

武闘家「……あぁ」

男「待ってくれ、荷物をまとめるよ」


お嬢 屋敷


武闘家「ここだ。入ってくれ」

男「どこに連れてかれるかと思ったら……貴族街!?」

男「入って大丈夫なのか!?」

武闘家「大丈夫なんだよ!これ持ってるから!」

男「……印籠?」

武闘家「みたいなもんだ。これから会わせる人がくれた」

武闘家「中に入って説明をさせろ。向こうからも話があるみたいなんだ」

武闘家「魔法使いを取返す方法について……な」

男「!!?」

男(1日会わないうちにどうしたんだ武闘家……)


武闘家に案内されるままに男は屋敷へと入った。


お嬢「どうも初めまして、お嬢といいます」

男「どうも初めまして……」

騎士「俺は騎士だ」

男「男です」

男「えーと……2人は武闘家とはどういう……」

武闘家「その辺は俺が説明する」

男「あぁ」


今まで起きたことの説明を武闘家から受ける男。あまりの急展開に驚きが隠せないようだ。


男「やっぱりお前真っ向から向かっていったのか……」

武闘家「……あんときは……ジッとしてらんなかったんだよ……」

男「2人が助けてくれなかったら本当に死んでたんだぞ!?」

武闘家「悪りぃと思ってるよ!」

お嬢「まあまあ男さん。武闘家さんも十分に頭を冷やしているようですし、その辺にしておきましょう」

男「……そうですね」

武闘家「……」

騎士「まあこうして再開出来たんだ。それだけ幸運とも言えるよ」

男「でも、なんで武闘家を助けてくれたんですか?」

男「おれの貴族のやることのイメージとは大分かけ離れているんですけど……」

武闘家「確かに。そこを、聞いてなかったな」


お嬢「……そのあたりの話も含めて……まとめてお話しますね」

男「はい」

騎士「……」

お嬢「まずは、仲間の魔法使いさんを救出する方法について、です」

武闘家「おう!それを聞きたかったんだ!」

男「本当にあるんですね……!」

お嬢「男さんにも先ほどお話しした、半年に一度行われる『団体戦』のイベント」

お嬢「私たちの予想ではそこに仲間のかたは賭けられるとも思いますわ」

男「確か1ヶ月後ですよね?それまでに魔法使いを取り返さないとどこかの奴隷に……


お嬢「いえ、私たちもそのイベントに参加して、豪族たちに打ち勝ち、魔法使いさんを取り戻すのです」


男「……は!?」

武闘家「参戦するってことか!?」

お嬢「ええ、そうです」

お嬢「団体戦には5人での試合。こちらからはあなたたちと騎士の3人にプラスして、オマケの私がつけば4人となり、出場が可能になるでしょう」

男「いやいやいや!そもそも俺たちが出ていいんですか!?」

お嬢「表向きは私の奴隷ということになってしまいますが、出場はできます」

男「も、もし負けたら……?」

お嬢「賭けたものを奪われます」

武闘家「何を賭けて出るってんだ?俺らにはそんな高価なものは用意できねえしましてや奴隷なんて以ての外だ!」

お嬢「もちろん奴隷を賭けるなどという真似はしません」

男「じゃあ何を賭けて出場するんですか……」

騎士「……」

お嬢「……それは」

お嬢「私です」


男「……は?」

お嬢「私を賭けます。そうすれば出場できるでしょう」

武闘家「何言ってんだよ……自分賭けるなんてアホかあんたは!!」

お嬢「でも参加するためには必要なことなのです」

男「だからって……そんな俺らのためにそこまでしてくれる必要はないですよ!」

男「出場させてくれて、さらに力をかしてくれるっていう案を出して貰っただけでも十分過ぎるほどなのに!」

騎士「まあ落ち着けよふたりとも……」

騎士「さっきまとめて話すって言ったろ?続きがあるんだよ、この話には」

男「つ、続き?」

お嬢「はい……その理由を聞けば、幻滅してしまうかも知れません……」

武闘家「どんな話なんだ?」

武闘家「俺らにそこまで協力してくれる理由が、ちゃんとあるんだろ?」

お嬢「…………」

騎士「俺が話そうか……?」

お嬢「いえ、私から話しますわ」


お嬢「……私は、確かに貴族です」

お嬢「9年前にこの家に産まれました」

武闘家(9歳かよ……!)

お嬢「父は回復薬の開発で成功したそうで、セントラルの研究所でお仕事をしていたそうです。そして、この街に移り住んだのが4年前のことです」

お嬢「私は父が大好きでした。常に誰かのためを思い研究を続け、人を助ける姿を見て、私もいつかこうなろうと思いながら背中をみていたものです」

騎士(……父様……)


お嬢「しかし、この街に移り住んですぐ、魔王軍との戦争が激化し、父は前線へと向かいました」

お嬢「私は家に残り、父の帰りを待ち続けましたが、結局父は帰って来ず、ここには大きな屋敷と数人の使用人、そして騎士だけが残りました」

お嬢「しかし父は皆に尊敬される人でした。貴族の中でただ一人前線へと向かい、数を多くの人々を助けたときいています」

お嬢「この街の奴隷と呼ばれる人たちも、父には敵対心を見せずまるで友達のように接していました。そんな父を心から尊敬していますし、その最期は誰にでも誇れるものだと思っています」

男(偉大な父上だったんだな……)

お嬢「でも……この街の貴族たちはそんな父を疎ましく思っていました」

お嬢「当てつけのように人々に優しく接し、最期は前線で戦った野蛮者だ!……と」

お嬢「当時5歳だった私にはなにも分からず、ただただ騎士に守ってもらいながら生活をしていったのです」

お嬢「この家にあった財産の多くは魔王軍との戦争のときに、父が人々を助けるために売り払ってしまっていたので、お金に困ることもしばしばありました」

お嬢「……本当にお金がないときは……騎士が闘技場に出場することも」

騎士「…………」

お嬢「貴族が護衛の騎士を奴隷として闘技場に出場させるなど、貴族たちからすれば野蛮の極み」

お嬢「しかも私はあの野蛮者と呼ばれた父の一人娘ですから……」

お嬢「おそらく今も、この街で私は貴族たちから煙たがられている存在なのです」

男「そんな過去があったんですね……」

男「でも、それと俺たちを助けてくれる理由はつながっていないような」


お嬢「ええ、ここからが本題なのです」

お嬢「半年に一度行われるイベントで優勝すると、莫大な賞金がでます」

お嬢「それこそ、優勝するだけで資産の面では貴族たちに対抗できるほどに……」

武闘家「……なるほど」

お嬢「この家も、売り出してしまえばかなりのまとまったお金が入ります。そこでの賞金と合わせて、私と騎士はこの街から出て行きたいのです……」

お嬢「とても身勝手な理由であることはわかっています。武闘家様を助けたときにはそんなことは思っていませんでした。父の教え通りに人々の助けとなる貴族を目指して行動しました」

お嬢「2人を良いように利用するというつもりはありません。もちろん賞金は折半させていただきます!」

お嬢「仲間の魔法使いさんを救うための方法として、この私と貴族を救う方法として、この案にのってはもらえませんか?」


男「…………」

武闘家「…………」


お嬢「……!」

男「なあ武闘家」

武闘家「どした男」

男「この話、どうおもう」

武闘家「そりゃあお前……」


武闘家「こんな良い話、乗らねえやつはいねえだろ!!」


お嬢「……えっ」

男「…………だよな!こんな良い話ねえよな!」

男「魔法使いも助けられて、賞金も手に入って、助けてくれたお嬢さんに恩返しもできるんだ!最高の作戦じゃんか!」ニカッ

武闘家「おうよ!あの2人にもリベンジできるしな!」

お嬢「ふ、ふたりとも……」

騎士「はは……こりゃあ……」

男「お嬢さん、その作戦、是非やらせてください。俺らで優勝して、全部解決しましょう!」ガシッ

男はそう言ってお嬢の手を握った。

お嬢「は、はい。ありがとうございます……!」

武闘家「っしゃあ!よろしくな!」


騎士「とんでもねえ……拾い物だな!」


ここで中断

キャラ作りが難しい

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