宿屋の女将「勇者様!」勇者「人違いです」 (24)
女将「え?でも宿帳に勇者って」
勇者「そう書いて『イサム』と読むんです、ちゃんと本名ですよ」
女将「えっ?イサムさん?あらこれは失礼しました」
イサム「いえよく間違われるんで、そもそも本物の勇者様ならこんな一人旅なんてしてないですよきっと」
女将「あらそれもそうかしらね、ごめんなさいね、お部屋は二階の一番奥でいいかしら?」
イサム「はい」
女将「じゃあすぐに部屋にいくかしら?」
イサム「いえ、ちょっと酒場に行って、仕事がないか見てきます」
女将「そう、それじゃあいってらっしゃい」
イサム「……はぁ」スタスタ
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イサム(俺の名前は勇者(イサム)ただの冒険者だ、この名前のせいでよく勇者様に間違われるのが最近の悩みだ)スタスタ
イサム(俺自身は勇者様とは全く縁もゆかりもない、ごく普通の冒険者だ……一応)スタスタ
イサム「と、あれが酒場かな?」スタスタギィ
店主「いらっしゃい!おや見ない顔だね」
イサム「さっき町に着いた所さ、とりあえず仕事を探しているんだけど」
店主「仕事かい?ならこの名簿に名前を書いてくれ」スッ
イサム「書かなきゃダメか?」
店主「決まりなんでな」
イサム「分かったよ」カキカキ
店主「ふーん、ん!勇者!?お前勇者様なのか!?」
ザワッ
イサム「違うから、そう書いてイサムと読むんだ、そういう本名なの」
ザワザワナンダヨオドカスナヨ
店主「そっそりゃすまねえ、しかし勇者と書いてイサムか」
イサム「家の親父が、勇者の様な勇敢な男になってほしいって付けてくれた名前さ」
店主「へぇそりゃいいじゃねえか」
イサム「ただ俺が冒険者になってすぐに魔王が復活してさ、どこかで勇者も目覚めて旅に出たとか言って、それから頻繁に間違われる様になったんだよ」
店主「そりゃ大変だな、ほい登録完了と、コレがウチの店の目印などっかに着けといてくれ」
イサム「はいよ」
店主「コレが今ある仕事だ、見たところまだ駆け出しで一人旅みたいだし、オススメはこの辺かな?」
イサム「薬草と毒消し草の採取、旅人の護衛、遺跡探索……護衛と探索は一人じゃキツいかな」
店主「俺もあまりオススメはしないな、大人しく薬草と毒消し草採ってきた方がいいぞ」
イサム「それだと路銀がなぁ……仲間がいれば違うんだけど」
店主「そういや何で一人旅なんだ?」
イサム「特に意味はないよ、強いて言えば仲間に誘い辛いかな」
店主「仲間に?なんでだ?」
イサム「名前を教えると、皆勇者様なのか?って聞いてくるんだよ」
店主「あーそりゃいい迷惑だな」
イサム「迷惑とは思わないけどね、むしろ本物の勇者様の方が迷惑してると思うよ、こんな一介の冒険者が勇者様に間違えられて」
店主「そりゃ言い過ぎだろ」
イサム「でも実際問題として、俺は単なる駆け出し冒険者だからね……一応、それに人に言われたら腹も立つけど、自分で言う分には構わないさ」
店主「そうか?まぁお前さんがそう言うならいいけどよ」
イサム「ん?なぁこのマヒ消し草とクスリタケの採取って?何でこっちは別くくりで報酬も高いんだ?」
店主「ん?あぁそれな、実は最近ちょっと困っててな」
イサム「困る?」
店主「そいつらが生えてる場所にな、最近毒沼が出来てよ、そのせいで採りに行きにくいんだ」
イサム「毒沼が?」
店主「しかも何やら得体の知れねぇ魔物が住み着いたとかでな、なかなか皆行きたがらねえのよ」
イサム「ふーん……なぁこの依頼って、先に受けなくても物を持ってくれば報酬はもらえるのか?」
店主「ん?そりゃあ構わないぞ、つか行く気か?」
イサム「とりあえず実際に見てみないとなんとも……無理そうならやめるよ」
店主「それが賢明だな、まぁ止めはしないが無理はすんなよ」
イサム「わかってる、そんじゃ行ってくるよ」
店主「気をつけてなー」
イサム(とりあえず薬草と毒消し草を確保して……と)ヌキヌキ
イサム(この先だよな?どの位の毒沼なのか……多少ならまぁなんとか……)スタスタ
イサム「ん?あれか?」スタスタ
イサム「ふむ……思ったよりは小さいな、これなら行けるか」ザブザブ
イサム「こういう時便利だよな、毒に強いと」ザブザブコツッ
イサム「ん?何か当たった?何だ?」ジャブジャブ
イサム「ん……ん?これか?よっと」ジャボッ
イサム「なんだこれ?水晶玉?中に何か紋章が書いてある……まぁいいか、とりあえず帰ったら店主に見せてみよう」ザブザブ
イサム「さてと、マヒ消し草とクスリタケは……あれか、魔物はいないみたいだな」キョロキョロ
イサム「今のうちに採って帰るか良かった良かった」ヌキヌキ
イサム「さて帰りもショートカットと」ザブザブ
イサム「魔物どこにいたんだろ?もっと奥か夜にしかいないとか?もしかしたら毒沼のない場所に待ちかまえてたりしてな」ザブザブ
魔物「人が来たら必ずここを通るはずだ、そうしたら一気に……フフフ」
イサム「帰ったよおじさん」
店主「おぅお帰り、どうだった?」
イサム「はいこれ」ドサッ
店主「おう薬草と毒消し草、ん?マヒ消し草とクスリタケじゃないか!お前魔物を倒したのか?」
イサム「違う違う、毒沼突っ切ったら魔物に見つからなかっただけだよ」
店主「お前毒沼突っ切ったのか!?体は大丈夫か?」
イサム「あー昔から毒に強い体質でさ、少しくらいなら平気なんだ」
店主「はぁ……まぁ大丈夫ならいいんだけどよ、まぁ助かったぜほら報酬だ」チャリン
イサム「毎度、とりあえず宿に帰るあっそうだ」
店主「どうした?」
イサム「ちょっとこれ見てもらっていい?毒沼で拾ったんだけど」スッ
店主「ん?水晶玉か?中に何か紋章が……ん?これはもしかして王家の紋章じゃないか?あぁいやちょっと違うか?でも似てるな」
イサム「王家の紋章?じゃあ王様に何か関係のあるものかな?」
店主「かもしれんな、もしかしたら掘り出し物かもしれんぞ」
イサム「そっか、まぁとりあえず持っとくか」
店主「なんとなくだが、大事にした方が良さそうに思うぞ」
イサム「そう?まぁいいや、それじゃあ俺は宿に帰るよ」
店主「おう!また来いよ!」
イサム「あーこの宿飯が美味いな……ベッドも久々だし……ちょっと早いけどもう寝るか」モゾモゾ
イサム「お休み……すぅ」
モゾモゾスタスタガチャパタン
ガチャパタンスタスタモゾモゾ
イサム「ん?……今なんか……まぁいいかまだ夜中じゃん……すぅ」
イサム「ん?もう朝か……ふぁぁ……とりあえず朝飯食べるか」スタスタ
イサム「……ん?あれ?なんか……気のせいかな?昨日寝る前と感じ違う?こんな所に汚れついてたっけ?」
イサム「……まぁいいかとりあえず朝飯っと」スタスタ
一旦この辺で。
のんびり書いて行きます、ではまた。
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