リヴァイ「まだ蝉は鳴いている」 (36)
現パロです。
もう完成してるので一気に投下します。
応援、批判、感想、質問、意見、その他諸々、コメント待ってます(
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リヴァイ「チッ…汚ねぇな…」
夏が終わったとはいえ、未だ暑さの残る9月のとある休日。
何の気無しに押入れの整理をしていた。
リヴァイ「…ん?」
すると、古ぼけたものを見つけた。
リヴァイ「観察日記、か…」
それは市販の日記帳で、そこには『観察日記』とだけ殴り書きされていた。
今よりずっと幼かったあの頃なので仕方ねぇが…
いつ見ても酷い字だな、と思う。
諦めたような、捨て鉢な気持ちがいっぱいに詰まったような字。
とはいえ、懐古の念が無いわけではない。
むしろ観察日記をつけていた頃にこそ、そこ気持ちが宿るというものだ。
"彼女"と過ごした、不思議なあの2週間こそ。
そう思って、観察日記を開いてみることにした。
まずは表紙を捲る。
『9月10日
まだ蝉は鳴いている
退屈なので、いつまで蝉が鳴くか日記をつけることにした』
そうそう、ちょうどこの時期だったか。
病室で神をも殺すような退屈を味わっていた俺は、夏も終わったというのにまだ鳴き喚く蝉にふと興味をもったのだ。
『9月11日
まだ蝉は鳴いている
またクラスの奴が見舞いに来た。うんざりだ』
子供の頃、俺は病弱で、入退院を繰り返していた。
満足に体育の授業にも参加できず、笑顔で走り回るクラスメートたちをただ眺めているだけだった…
しかし、幸か不幸か俺は環境に恵まれていた。
特に中学生の《この日記をつけていた時期の》クラスメートたちは、毎週休日になれば病室の俺を見舞いに来てくれた。
それに、復学すれば勉強を見てくれたし、発作を起こして倒れこんだりしないように俺に付き添ってくれたりする親切な人間だった。
教師だって、滅多に学校に来れない俺のために授業を1時間潰して復学パーティを開いてくれるほど優しい人だった。
それこそが、子供の俺にとっては不幸だったのだ。
彼らは親切"過ぎた"、俺にとって…
親切心から来る彼らの行動は、子供の俺を"丁重に扱う"ものだった。
傷つけないように…
苦しまないように…
孤立しないように…
まだ人の悪意を知らなかった俺はその行為の裏を疑うことはしなかった。
しかし、その親切は確かに苦痛だった。
何一つとして自分で成し得た実感がない。
全てが誰かの助力にによってのみ成り立っている。
そんな生活に…
そしてそれを提供する"親切な"人間達に…
嫌気が差してしまった。
今思えばそのせいだったのかもしれない。
俺の病状は悪化し、それまでよりも長期の入院をすることになった。
それでもまだ、心配してくれる級友たちに対し、陰でこんな悪態を吐いていた。
恥ずかしい…
『9月12日
まだ蝉は鳴いている。
蝉を見に行くと妙なガキにあった』
そして、彼女に出会った。
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毎日のように泣き続けている蝉達が本当に存在するのか…
それとも実は誰かしらが録音したものでも流しているのではないのか…
そんな益体もない疑問を持って病室を抜け出したときのことだった。
木を見上げていたオレの背中に、1人の少女が声をかけてきた。
少女「おにーちゃん、遊ぼ?」
それが第1声だった。
快活で人懐っこそうなソプラノボイスで、肩越しに一瞥すればそれは小学校低学年くらいの、容姿のあどけない少女がだった。
明るい笑顔を浮かべたその姿はまさにクラスの中心人物、人気者といった雰囲気。
クラスの"お荷物"であるオレにとってこれ以上嫌味な存在もないというものだ。
リヴァイ「うるせぇ、どっか行け」
少し動かした顔を再び木の幹に向け、背中越しにそう言った。
しかしガキはオレの言葉を意に介さず、背中に飛びついてきたのだ。
少女「ねぇ!遊ぼうよっ!何してるのー?」
夏が過ぎたとはいえ、さすがにまだ気温はそう下がっていない。
そもそも人嫌いなオレに、さらに暑苦しく引っ付いてくるこのガキは邪魔以外何者でもなかった。
リヴァイ「蝉を観察してるんだ。邪魔だからどっか行け」
暑さで思考力が鈍っていたのだろうか…
正直に答えてやれば満足すると思ったのだろうか…
本当のことを口にしてしまっていた。
チッ…クソ…そう思った時にはもう遅い。
少女「そうなの?じゃあ私も見る!」
予想通りというか、意に反してというか…
ガキもここに居座ることになってしまった。
さらに、どういうつもりか胡座をかいた状態のオレの膝の上に乗っかってきたのだ。
重い…
ウザい…
暑苦しい…
そう思い何度もガキを振り払ったが、諦めることなく何度も膝の上に戻って来た。
しまいには目に涙を浮かべ始めた…
この世にガキの泣き声ほど苛立つものがあるだろうか…?
そう思ったオレは仕方なく、ガキが膝に乗っかるのを許してやった。
どうせ二度と会うこともない。
今我慢すれば済む話だ…
その日は結局、ガキのせいで蝉は見つけられなかった。
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それが彼女との出会いだった。
その後、無断外出がバレることなく病室に戻った俺はこの奇妙な邂逅を日記にこそ記したが、二度と会うこともないのだからと別段彼女のことを気に留めもしなかった。
しかし、そんな予想は見事翌日に裏切られることとなる。
それが彼女との出会いだった。
その後、無断外出がバレることなく病室に戻った俺はこの奇妙な邂逅を日記にこそ記したが、二度と会うこともないのだからと別段彼女のことを気に留めもしなかった。
しかし、そんな予想は見事翌日に裏切られることとなる。
>>10はミスです
『9月13日
まだ蝉は鳴いている。
また、あのガキに会った』
俺は何故だか前日の疑問の解明に執着していた。
そして、再び病室を抜け出して、あの木の下に向かった。
その木は周りを他の木に囲まれていた。
外を歩いている看護師から見つかりづらいだろうと思って観察対象に選んだのだ。
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木に近づくとその木の下に立つ背の低い人影が見えた。
他の木が邪魔で、ある程度近づくまで見えなかったのだ。
まさか、そう思うと同時にその影は振り向いてこう言った。
少女「おにーちゃん、遊ぼっ!」
リヴァイ「チッ…」
また来るとは思っていなかった。
昨日のようにうざったく引っ付かれてもこまる。
リヴァイ「…」ダッ
少女「えっ!?」
オレは踵を返して全力疾走した。
しかし、50メートルも持たずに失速してしまった。
日頃の運動不足がたたって、息もすぐに限界を迎えてしまったのだ。
少女「おにーちゃん、大丈夫…?」
すぐに追いついてきたあのガキは、心配げにオレの顔を覗き込んでいる。
チッ…忌々しい…
リヴァイ「ぜぇっ、ぜぇ…うるせぇ…どっか行け」
息も絶え絶えに言い放つが、当然何の効果もなく、直射日光を浴びないよう例の木の陰まで移動することになった。
少女「ほら!肩貸してあげるよ!」
…ガキの肩を借りるという屈辱的な手段で。
それから数分。
だいぶ呼吸も楽になったので、起き上がってその場を立ち去ろうとした。
するとガキがまた乗りかかってきた。
わざわざ立ち上がる瞬間を狙って、膝の上に座ろうとしたのだ。
リヴァイ「もう大丈夫だ…オレは帰る。てめぇも帰れ」
そう言ってガキをどかそうとする。
…が、頑として動かない。
少女「やぁだっ!もっとお話するぅー!」
リヴァイ「話だと…?特に話題もねぇだろ」
少女「んー…あっ!じこしょーかいしてないよっ!私はペトラ!おにーちゃんは?」
リヴァイ「答えてやる義理なんざねぇだろ」
少女「ギリ…?なぁに、それ?」
リヴァイ「…答えたくねぇ」
少女「えー?教えてよ〜!」
リヴァイ「うるせぇ、黙れ」
膝の上ではしゃぐガキに嫌気が差し、無理やりどかして帰ろうとする。
2、3歩踏み出したあたりで服が後ろに引っ張られた。
振り向くと、もちろんのことながらガキが服を引っ張っていた。
少女「おにーちゃん…行かないで…?」ウルウル
リヴァイ「…はぁ」
涙目で見上げられ、オレは嘆息した。
ガキの泣き声など死んでも聞きたくねぇ。
考えてみれば、無断で病室を抜け出して来ている身…
やかましいガキの声で看護師にバレても厄介だ。
もしかしてこのガキ…
計算尽くでやってるんじゃねぇだろうな?
それは考えすぎか…
ともかく、諦めて仕方なく再び木の下に腰を下ろした。
盛大な舌打ちとともに…
それを気にも止めない様子でパッと顔を明るくしたガキが当然のように膝に乗ってくる。
…暑苦しい。
少女「それで、おにーちゃんの名前は?」
満面の笑みでこちらを見上げてまた尋ねてきた。
もう切り捨てる余力もねぇ…
リヴァイ「…リヴァイ」
心底うんざりした声で、それだけ答えてやった。
少女「えっ…?パパと…」
訳の分からないことを言っているが無視しといた
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ーーーーー
懐かしいな。
結局、冷たく接しても彼女は構わず話しかけてきた。
これなら泣くのを無視して看護師の説教だけ受けていればよかった…
当時は病室の前で仁王立ちをしている看護師を見て思ったものだ。
フッ…と笑いながらページを捲る。
『9月14日
まだ蝉は鳴いている。
これで3度目だ…なんなんだあのガキは』
『9月15日
まだ蝉は鳴いている。
蝉よりも、よっぽどガキの方がうるせぇ』
『9月16日
まだ蝉は鳴いている。
しつこい』
しかし、一切の外出が禁止されたわけではない。
そもそも、全く運動しないよりは多少なりとも運動した方が体には良い。
だから、外出する時はちゃんと伝えてくれと言う旨のお叱りを受けたのだった。
惰性なのか…
すでに気を許していたのか…
それからは毎日木の下に行き、彼女と会った。
もちろんの"蝉を観察する"という題目で来ている私からしてみれば、迷惑だった。
しかし外出が看護師公認隣ってからも彼女を無視しなかったのも事実だ。
そして、はっきりとした好意を彼女に抱き始めたのはこの後のことだ…
『9月17日
まだ蝉は鳴いている。
救われた…気がした…』
それは暑さにやられたのだろうか?
疲れが噴き出したのだろうか?
体調を崩して久々に病室で寝なければならなかった日のこと。
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結局はそうだ。
何に手を出して見たって…
どんなに足掻いて見たって…
結局は何もできねぇんだ、オレには。
一瞬たりとも希望を持っていた自分が恨めしい、恥ずかしい、あぁ…みっともねぇ。
いっそ今すぐにでも死んでしまえばいいのに…
そしたらこんな醜態を延々と演じ続けなくてもいいのだから。
熱の上がった体で、いつになく暗い気持ちで、オレは病室の天井を眺めていた。
胸のあたりが重いのは、要らぬ光が見えたせいだ。
朝起きてすぐ、最近はご無沙汰だった、お馴染みの感覚があった。
だるさ、熱っぽさ、疲労感。
体温計を使わずともわかる。
いつものように体調が悪くなったのだ。
起きていても何もできやしない…
そう思ってそのままもう一度寝てしまおうと、頭から布団を被った。
その時だった。
病室のドアが、控えめな音を立てて開いた。
少女「おにーちゃん…?」
何故あいつかここを知ってる…?
少し驚いたが、そんなことよりもだるさが酷い。
このまま寝たふりで乗り切ってしまおう。
少女「おにーちゃん、大丈夫?」
無視だ。
少女「おーにーいーちゃーんっ!」
うるせぇ…
少女「…それなら」
何かが布団の中に潜り込んで、モゾモゾとしている。
…チッ、クソガキめ…
リヴァイ「…邪魔だ。どっか行け」
勢いよく起き上がって、ガキをベッドから引きずりおろす。
正面から見たガキの顔は、いつになく神妙だった…
具合の悪そうなオレを前にしてだろうか?
…布団に潜り込もうとした奴の顔には見えねぇな。
少女「おにーちゃん、あのね?」
リヴァイ「…なんだ?」
少女「えっと…んーと…」
リヴァイ「…用がないなら出て行け、オレは具合が悪いんだ」
そう言って再び寝ようとする。
その時だった。
少女「そんなに、急がなくていーんだよ?」
耳を疑った。
というより、何が言いたいのかわからなかった。
少女「みんな、そんなに遠くには居ないから。きっとまだ、追いつけるから…また一緒に、居られるから…」
動けねぇ。
悪態を吐きたいのに声も出ねぇ。
少女「…私も一緒にいてあげるから。一人にしないから!だから…自分を傷つけないで…焦らなくて、いーんだよ?」
そう言って、ペトラは静かに部屋を去った。
ふと、目の当たりが濡れていることに気がついた。
涙…?
オレは今泣いているのか…?
何故だかはわからない。
ただ、体のだるさも、心の重さも…
涙とともに流れ出て行ったらしい…
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それは、気づかないうちに抱え込んでいた思いだった。
"丁重に扱われること"
そこからかつての自分が感じたのは、疎外感。
周りの奴らと同じ立ち位置に居たかった。
しかし病気のせいでそれは叶わなかった。
いつしか病気でいることは当たり前でしょうがないことになっていた。
そうして諦めた瞬間から希望を失ってしまった。
でも諦めきれなくて…
やっぱり病気は治らなくて…
俺は疲れきっていたのだ。
体以上に、心が。
それを彼女は救ってくれた。
何故あんなことを言い出したのかはわからない。
それでもとにかく彼女の言葉に俺は救われたのだ。
『9月18日
まだ蝉は鳴いている。
ペトラ、と呼んでみた。驚いていたが喜んでくれたらしい』
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リヴァイ「な、なぁ…ペトラ?」
少女「ん?なぁに?」
リヴァイ「いや、何でもねぇ…」
少女「えー…?あれ?今、初めて名前で呼んでくれたね!」
リヴァイ「!別にそういうわけじゃ…」
少女「ありがとね!おにーちゃん!」
リヴァイ「…あぁ」
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『9月19日
まだ蝉は鳴いている。
ペトラが転んでしまった。危なっかしい奴だ…』
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少女「おにいちゃーん!あっ!」ズシャーッ
リヴァイ「転ぶぞ…って、遅かったか…」
少女「痛いよぉ…」
リヴァイ「チッ…泣くなよ」
少女「うぅ…」グスッ
リヴァイ「はぁ…来い、手当てしてやる」
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『9月20日
まだ蝉は鳴いている。
よくやく蝉を見つけた』
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少女「おにーちゃん!おにーちゃん!」
リヴァイ「なんだ、大きな声を出しやがって…どうかしたのか?」
少女「あのね、木に蝉がいたの!おにーちゃん、探してたんでしょ?」
リヴァイ「あぁ…そういえばそうだったな…」
少女「えへへ〜すごいでしょ〜?」
リヴァイ「そうだな、ありがとう」ナデナデ
少女「うん!どういたしまして、だよ!」
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それからというもの、俺と彼女はいつも一緒にいた。
朝起きてご飯を食べたら外に出て…
木の下でお喋りをしたり遊んだり…
まるで小学生のような生活だったが、とても楽しかったし、何より安らぐことができた。
いつまでもこんな生活が続けばいい。
そう思っていたときのことだった…
『9月21日
まだ蝉は鳴いている。
退院…できる、らしい』
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リヴァイ「退院…?」
目の前の医師は頷いて、口を開いた。
医師「ああ。大分体力も戻り、病状も落ち着いている」
医師「一応まだ様子を見なければならないが、明後日には退院できるだろう」
リヴァイ「そうか…」
医師「どうした、リヴァイ?あまり嬉しそうじゃないな…」
正直、複雑な気持ちだった。
ペトラと仲良くなりすぎたせいか…
ここを離れるのが辛い。
リヴァイ「いや…なんでもない。長い間、世話になったな…エルヴィン」
医師「まだ気が早いぞ。退院するまで…いや、退院してからも体を大事にしろよ?」
リヴァイ「あぁ…」
少女「おにーちゃん!こっちこっちー!」
ペトラが、例の木の辺りで飛び跳ねてこちらに手を振っている。
周りの木のせいで見づらいが。
リヴァイ「…今行く」
少女「お兄ちゃん!遅いよ!」
リヴァイ「悪かったな…先生と話してた」
少女「先生と…なんのお話?」
リヴァイ「いや…」
言えない。
退院するとは口に出せない。
言ったら本当になってしまいそうだから…
そうしたらもう…ペトラにも会えなくなってしまいそうだから…
リヴァイ「…何でもねぇ」
少女「ふーん…じゃあ、今日は何して遊ぶ?」
リヴァイ「てめぇの好きにしろ」
わかってる。
離れなきゃならないことは…
わかってる。
けじめをつけなきゃならないことは…
でも、もう少しだけ…
もう少しだけ長く、この時間を…!
ー
ーー
ーーー
ーーーー
ーーーーー
『9月22日
まだ蝉は鳴いている。
ペトラが…居なくなった』
ーーーーー
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ーー
ー
翌日、いつものように木の下に出かけていくと、そこに彼女の姿はなかった。
その代わりに手紙が置いてあった。
手紙、と言っても長方形のそれではない。
自由帳か何かの紙を四つ折りにしたもので、そこにはこう書いてあった。
『おにーちゃんへ
ごめんね。私、遠くへ行っちゃうからもう来れなくなっちゃったの…
でも、今のおにーちゃんならきっと私がいなくても大丈夫だよね?
これからも頑張ってね!
さよなら、じゃ寂しいから…またね!
ペトラ』
読み終えたオレは、再びそれを折ってポケットにしまおうとした。
しかし、やっぱりゴミ箱に捨てることにした。
これはペトラの最後のエールなんだ。
踏ん切りのつかねぇオレの背中をペトラが押してくれたんだ。
そう、思ったのだ
ー
ーー
ーーー
ーーーー
ーーーーー
『9月23日
無事退院することができた。もう日記を書かなくてもいいだろう。
ーーもう蝉は鳴いていない』
そこまで読んで、俺は観察日記を閉じた。
あれから20年。
中学生だった俺も三十路を越え、一丁前に家庭を持つことができた。
俺と、妻と…そして一人娘。
こうしてささやかながらも幸せな暮らしを送れているのは、ひとえに彼女のおかげである。
娘「おとーさーんっ!」
廊下を駆けてくる足音がする。
どうやら娘が帰ってきたらしい。
娘「ただいまっ!」ギュッ
リヴァイ「おかえり…ペトラ」
リヴァイ「しかし汚ねぇ手でうろちょろすんじゃねぇ。さっさと洗ってこい」
娘「はーい」
元気いっぱい、天真爛漫な彼女のようになってほしい…
そう願い、勝手ながら彼女の名前をもらって、娘には"ペトラ"と名付けた。
だからだろうか?
時々、ペトラに彼女の面影が見えるような気がするのだ。
…まさか、ペトラかま過去の俺を救うために未来からやってきた…?
リヴァイ「ふっ…」
また、益体もないことを考えてしまった。
自分自身の思考に鼻で笑い、ふと思い立って観察日記の最後のページを開いた。
そして、20年前の9月23日の記述の横にボールペンで書き記す。
9月にこそなったが、残暑が厳しく蝉の鳴き声もするある日の日記。
『20年後 9月24日
"また"蝉は鳴いている』
ー完ー
これにて終了となります!
最初にも言いましたが、皆さんの意見が聞きたいです!コメント待ってます!
読んでくださった方、ありがとうございました!
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