戦士「雷使いの勇者?」(43)
魔法使い「え?知らないんですか?」
戦士「ああ」
戦士「修行に明け暮れてたせいで、な」
魔法使い「…はぁ」
戦士「なんだよその溜め息は」
魔法使い「いいですか戦士。その修行も
勇者に雇われて初めて意味を
成すのですよ?」
戦士「あ、ああ。そういえば
そんな感じだった気がするなぁ…」
魔法使い「はぁ…何の為の修行なんだか」
戦士「お、俺はただ強くなりたいだけで…」
魔法使い「本当に?」
戦士「うっ…」
戦士「そりゃあ俺だって…いや、ここの
酒場にいるやつなら誰だって勇者の
仲間になりたいに決まってる!」
…カランカラン。とその時、扉が開き
それを合図とする鈴の音が部屋に響く。
今日は【雷使い】として噂される
『勇者が来る予定』の日。そして同時に
今はその時刻になった所である。
―勇者の訪問に、酒場の空気は一瞬で
静かになる。これから勇者による
仲間の選出が行われるため、尚更だ。
勇者「……」
沈黙の重たさを誰もが感じる。
選ばれたものは勇者と供に【魔王】の
討伐を任されると同時に、自分以外の
家族の生活の保証を国が約束する。
それは10年の間ではあるが、家庭に
よってはそれで充分なところも多く、
また借金がある者はそれを国が背負い
なかったものにしてくれる。
中には、【魔王】と戦うためだけに
自身を鍛えあげてくる輩もいる。
いずれにせよ、選ばれる理由は強さでも
家庭の事情でも人柄でもなく、勇者が
選ぶたった3人だけなのだ。
勇者「…そこのお前と」
戦士「ん?」
勇者「…お前」
魔法使い「わたし?」
勇者「…以上の2人だ」
魔法使い「えっ」
戦士「あれ、確か3人までは仲間に
できるんだよな…?」
勇者「…無駄なものはいらない」
??「…そいつは聞き捨てならねぇな」
勇者「…何だお前は」
??「ふん、俺はな…」
「盗賊だよ」
そう言った瞬間、盗賊は姿を消し
魔法使いの後ろに回り込みナイフを
首筋の近くで光らせていた。
そして、その隣で戦士はいつの間にか
縄で身体をグルグル巻きにされていた。
勇者は、そこから数メートル離れて
いる場所に立っていた。
盗賊「く、ふははは!どうだ見てみろよ
勇者!お前が選んだ仲間もこの通りで
どうだ、ここは俺を仲間に―」
勇者「…遅い」
勇者がそう言ったかと思うと盗賊の
捕らえていた魔法使いは勇者の右手に、
左手には縄の解かれた戦士がそれぞれ
無造作に掴まれていた。
勇者「…あと、うるさい」
勇者「だから…これはお仕置き」
盗賊「えっ…」
勇者「…雷舞…」
そうつぶやき、勇者は姿を消す。
盗賊「ひっ…!」
「ぎゃあああああ!!」
ある日の酒場では、勇者が顔色ひとつ
変えずに盗賊を雷の魔力を籠めた拳で
殴り続けたことがあったとか…。
展開が急ぎすぎかな(´・ω・`)
明日、また続き書きま.・゚・(つд`)・゚・.
―始まりの街―
戦士「なぁ…さっきの"雷舞"って
どんな技なんだ?」
勇者「ん?ああ、あれは雷を纏って
雷の如き速さで殴るだけの
しょうもない技だよ」
魔法使い「しょうもないって…」
勇者「この程度じゃあ、魔王には
勝てないってことさ。そりゃあ
速ければその分は攻撃力は上がる。
けど防御力を兼ね備えていないと
攻撃を受け止められた時の反動で
身体なんて木っ端微塵さ」
『あ、いたぞ勇者だ!』
『俺を仲間に入れろおお!!』
『私の鍛えあげた筋肉を使え~ッ!』
『わ、私、これ以上は待てませんっ!』
勇者「…全く。4人目はいらないという
のに。さて、この街とはさよならだ」
勇者「…"雷子"召喚…」
勇者は召喚魔法を唱えた!
勇者の手の平から15cmほどの
小さな妖精が現れた。
雷子「あっ!勇者様、お久しぶりです!」
勇者「…昨日も会っただろう」
雷子「えへへ…それで今日のご用件は?」
勇者「街の外へ。今すぐにだ」
雷子「ふふん、任せてください!」
雷子が指を振ると勇者パーティーは
不思議な光に包まれ始める。
『『 勇者~ッ!』』
そして、次の瞬間にはそこから消えていた。
―始まりの洞窟―
戦士「いててて…」
魔法使い「ここは…?」
勇者「……」
戦士「…勇者?一体どうし―」
魔物「グオオオオ!」
戦士「……!」
魔法使い「ふぇ?!」
勇者「…構えろ。武器を持て」
戦士「…!ああ!」
魔法使い「あ、えっと…はい!」
勇者「気を付けろ。こいつはここの―」
魔物『グガアアア!!』
魔物が勇者に襲いかかる!
勇者はそれを避けずに―
戦士「勇者!」
魔法使い「勇者様!」
勇者の危機に思わず全力で駆けて
魔物に向かう戦士。魔法使いも同時に
魔力を多く使う突発型の魔法を使う―
―が。しかし。その攻撃を向けた先に
いる魔物は動きが止まり、魔物の正面に
いた勇者は何故か魔物の背後―
2人からすればほんの1mほど前に
いたはずの勇者がいなくなっていた。
魔物「ガ…!?」
魔物は白目を剥いて、そのまま倒れていく。
勇者「…よし。じゃあ次の街へ行こうか」
戦士「えっと…勇者?さっきお前が
言いかけてたことって…」
勇者「…?…ああ。こいつこの洞窟の
ボスだから油断するなと―」
魔物「グガアアア…!」
死にかけの魔物が突如、自身の魔力の
全てをかけた呪文を唱えた!
魔物の身体が光りに包まれていく…!
勇者「自爆魔法かっ!?しまっ―」
魔法使い「…炎を司どる我らの神よ。
今、盾となりたまえ…!」
勇者「!」
戦士「ん…助かった…みたいだな
さっすが魔法使いだな!」
魔法使い「ふふん、もっとほめてよね!」
勇者「…お前は」
戦士「ん?」
魔法使い「あれ?そういえばまだ自己紹介
してなかったね!あのね、勇者様。
私は魔法使い。…東の街から
来たただの魔法使いだよ」
勇者「…隠すのはよせ。」
魔法使い「なら、貴方にも隠し事を
やめてもらわないとね」
勇者「…わかるのか」
魔法使い「女の勘ですよ♪」
勇者「…一本とられたな。けど俺の
隠し事は…まだ、言えない」
夕方に再開予定
魔法使い「ふふ…それなら私も…と
言いたいところですが…」
勇者「?」
戦士「あの技を見せてしまった以上はな」
魔法使い「ええ、隠す必要は…ないよう
ですからね、勇者様には」
勇者「…どういうことだ」
戦士「勇者は…知っているんだろう?」
魔法使い「わたしの」
戦士「俺の」
『正体を』
戦士「先ほど俺は言葉をはき違えたかも
しれないが、少なくとも勇者は
あの技を見る前―酒場で見た時から」
魔法使い「―私たちの正体を知っていた」
勇者「…ふん、よく気付いたな」
魔法使い「あら?私はてっきり気付いて
いることも知っていると思って
いたんだけど…違う?」
勇者「…魔女が」
魔法使い「異名は知っているのね。ええ
なにを隠そう、私は―」
『炎使いの東の魔女だから、ね』
戦士「…ぶふっ」
魔法使い「そこ!笑わないの!」
戦士「…いやあ、それは無理だわ!ぶふっ」
魔法使い「むー!」
戦士「ま、俺は何かを使えるわけでも
ない、ただの戦士だよ」
魔法使い「…自分も異名があるくせに」
戦士「!そ、それだけはやめてくれ!」
魔法使い「え~!」
勇者「…闇の剣使い、ダークソード…」
魔法使い「ぷっ…」
戦士「あああああ!!」
魔法使い「あはっ…あはははは!だめ!
笑い死んぢゃう!あははは!」
…こうして勇者たちは始まりの洞窟を
抜け出し、魔物をなぎ倒しながら次の
街へと到着した。
―商人の街―
魔法使い「なんだか賑やかなところね」
勇者「ああ。この街は始まりの洞窟を
雑魚な魔物ばかりだからな」
魔法使い「その雑魚な魔物にやられそうに
なったのはどこの勇―」
『号外ー!号外ー!』
『なんだなんだ?…えっ』
『ド、ドラゴン!?』
『ドラゴンだって?!』
『しかもこれはあの…!』
『ああ、そうだ。間違い』
『嘘だろ…』
勇者たちのもとに一枚の紙が落ちる。
勇者「ああ。この街は始まりの洞窟を
雑魚な魔物ばかりだからな」
↓
勇者「ああ。この街は始まりの洞窟を
始めとした雑魚な魔物ばかりだからな」
魔法使い「これは…新聞?」
戦士「…なんて書いてあるんだ」
魔法使い「ええとね…」
《緊急速報!商人の街の南、海から約
50km向こうよりかの封印竜が
接近しているのを確認― …住人はただちに避難してください》
戦士「……」
魔法使い「……」
勇者「…まだ生きて…」
魔法使い「…?勇者様?何か言いました?」
勇者「!いや、なんでもないさ」
魔法使い「?」
勇者「…聞いてくれ」
戦士「…なんだ?」
魔法使い「なんですか?」
勇者「…俺は昔、おそらくだがその
ドラゴンと戦ったことがある」
戦士「なに!」
魔法使い「ふぇ?!」
勇者「そして、奴はきっとここに来る、
と言える場所がある。もし来たら
戦うことを余儀なくされるだろう。
その時は…―俺一人で戦わせてくれ」
戦士「勇者!一体なにを―!」
その時、大きな揺れが大陸中に広がった。
鳥たちは翼を羽ばたかせて逃げ出し
それとほぼ同時に呻き声が聞こえる。
大陸の揺れが気にならなくなるほどの
強い空気の振動。音。それはそこらの
魔物とは比べものにならないほどの
とても、とても強い響き。ドラゴンが
持つ複雑な感情が耳に、心に伝わる。
勇者「…俺は先に行く。…雷迅」
勇者は魔法を唱えた!雷の如き速さで
勇者は走り、消え去っていった…。
戦士「勇者!」
魔法使い「勇者様!」
戦士「…くそっ!」
魔法使い「…行きましょう、戦士」
戦士「…どこに」
魔法使い「勇者様のもとへ」
戦士「…どうやって」
魔法使い「…炎に導かれるままに、ですよ」
今日の分は、終わり(´・ω・`)
また来ます。タブンネ
書き溜め中です
ごめんなさい(´;ω;`)
―商人の街、海岸―
戦士「…!いたぞ勇者だ!」
―そこは、海。商人の街の一番重要な
他国との貿易のための場所である。船は
あらかじめ商人たちがある程度の避難を
してはいるが―海、砂浜、そしてその
後ろにある倉庫や、宿泊施設は破壊を
されると被害は世界に響く。なにより
この街は、優秀な職人が集まり、それを
世界に届ける中心であるからだ。
魔法使い「あれが…封印竜…」
戦士「勇者ぁああ!」
魔法使い「あ、待っ…―で!?」
―声が出ない。代わりに出たものは血。
魔法使い(まだ、まだ大丈夫…)
魔法使い「…大丈夫…行ける…」
魔法使い「ぐっ…おぇ…」
血を吐きそうになりながらもそれを手で
抑えることで我慢し、再び身体の中に
戻そうと飲み込んだ。
―勇者・戦士側―
戦士「勇者ァ!!」
勇者「…戦士か」
戦士「なかなかかっこいい傷を
つくってるみたいでなによりだ」
勇者「…ふん」
封印竜「グガアアアア!!」
戦士「喋ってる時間はないみたい、だな」
勇者「…行くぞ」
勇者「…気をつけろ。奴は魔法を反射
する魔法を纏っている」
戦士「はっ…しょせん魔法だろ?」
勇者「攻撃魔法も反射するぞ…避けろ!」
封印竜は火炎を吐き出した!炎は戦士に
向かって飛んでいく!勇者はその隙を
ついて封印竜の横へと回り込む!
戦士「全てを切り裂く力となれッ!」
その時、戦士の体が淡い赤い光を発して
そして、剣へと流れていく―
勇者「…!」
勇者(なんだ…あれは魔力じゃないぞ!)
戦士はその一言を言い、一秒止まってから
炎に向かって剣を前へと振りかざした。
―次の瞬間、炎は消えていた。
勇者(今の技…いや、今はそれよりも!)
勇者は封印竜に対して、針の先のように
一点に集めた雷の一撃を放った。
勇者「その魔法…壊してやるッ!」
しかし、雷は勇者に反射される。
勇者「ぐっ…!」
勇者(くそっ…やはり俺一人じゃあ
こいつを倒せないのかッ!)
戦士「勇者ァ!準備しとけよ!行くぜ!」
勇者「戦士!?なにを―」
戦士は高く跳び、そこから両手で
大きな剣を縦へと振り降ろす―!
勇者(くそっ…なにが出来るから知らねぇ
が次の攻撃の準備をしないとな…!)
勇者「雷電…!」
勇者の辺りに電気が纏う!
戦士「うおおおお!今だ!勇者ァ!」
戦士が剣を振りおろすと ―封印竜を
囲っている不思議な護りが消えた。
勇者(…!)
勇者「行くぞっ!雷電!」
勇者の纏う雷は次第に勇者の魔力へと
変わり、更にそこから魔力は勇者の体
そのものへと変わっていく―!
勇者(俺自身が雷へと変わる諸刃の剣!)
勇者「うおおおお!!」
突撃した勇者が触れた瞬間―
封印竜の頭上から特大の雷が落ちる!
封印竜「ガアアアッ!?」
勇者「ぐっ…やったか?」
戦士「いや、まだだ…!」
封印竜は雷の攻撃によって怯みながらも
立ち続けていた。そして―
戦士「消えた!?」
勇者「…!上だ!」
封印竜「ガアアアッ!」
―【封雷の吐息】―
勇者(…まずい…!範囲が広すぎる…!)
そのブレスは大きく広がり―
―勇者にのみ的中する
勇者「うぐッ!?」
戦士「…!…なんともない…?勇―」
勇者「あああああッ!!」
勇者「くそ!封印されちまった!」
封印竜はブレスを吐き終わり、次の
ブレスの魔力を溜め始める。
戦士「勇者!今のは―」
勇者「戦士!いいから逃げろ!」
戦士「はっ…逃げろだって…?」
勇者「魔力が封印されたら―」
戦士「はっ!魔力なんてねぇよ!」
そう言って戦士は『その力』を足に込め
封印竜に向かって空へ駆け上がって行く。
封印竜「グアアアッ!!」
―【封黒の吐息】―
戦士「…はは!黒魔術でもねぇよ!」
魔法使い「戦士!行くわよッ!」
勇者「!?いつの間に!?」
戦士「おう!任せろ!」
戦士はあらかじめ魔法使いが来て
そこに魔力を向けることを知っていたか
のように剣を下へと向けていた。
戦士「闇魔界の―」
「「爆炎剣!!!」」
魔法使いの炎の魔力と戦士の力が混じった
剣を振るうと封印竜のブレスはたちまち
空中で横に広がり…瞬間、消えてゆく。
そして、その剣を身体へ浴びた封印竜は
闇の炎に切り裂かれ真っ二つになり
地に落ちていった…。
勇者「…!魔力が解放される…」
戦士「ふぅ…終わったか」
魔法使い「…そうですね。勇者様も…
…勇者様?」
勇者「…契約により我が魔力をそなたの
力に換え、その力を持って再び奴の
封印へと全てを捧げたまえ―」
そう呪文を唱えたあと、それは真っ二つに
なったはずの封印竜の下へ魔法の陣が
展開される。
魔法使い「!?」
戦士「勇者、一体なにを…!?」
封印竜「グアアアア!!」
戦士「な、バカな…!」
魔法使い「あれでまだ生きてるの…!?」
>>41 魔法の陣が → 魔法の陣となり
遅くてごめんなさい(´;ω;`)
また来ます.・゚・(つд`)・゚・.
封印竜が立ち上がったと思われたその
刹那―魔法陣は光り出し封印竜を一瞬で
消してしまった。戦ったあとはあれど
そこには何もいなかったかのように。
勇者「ぐっ…はっ!」
勇者は不意に片膝を地面につき口から
血を吐き出した。
戦士「勇者!?」
勇者「…は…ぐっ…大丈夫…だ…」
戦士「でも―」
と言いかけた時、勇者の身体から
魔力と静電気が飛び散る―
戦士「…え?」
戦士(傷が…一瞬でふさがった!?)
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