勇者「用件を聞こうか……」大賢者「魔法学校に潜入して欲しい!」 (59)

─ 魔法学校 ─



教師「本日は、炎魔法の実習を行う!」

教師「使いこなせば非常に強力な魔法であるから」

教師「我々教師のいないところでは、決して使わないこと!」

教師「もし掟を破った場合は、懲罰房行きだ!」

「はいっ!」 「はい!」 「はいっ!」

教師「うむっ、いい返事だ!」

教師「では、この木材に向かって、炎魔法を放っていくのだ!」

「はいっ!」 「はい!」 「はいっ!」

教師「さあみんな、明日の魔法エリートを目指すのだッ!」

< 校長室 >

校長「うむうむ……やっておるな」

校長「この特大水晶玉で見る授業風景は、また格別だわい」

校長「我が校が誇る、優秀なる生徒諸君よ」

校長「どんどん学び、どんどん魔法を覚えて、どんどん強くなりたまえ!」

校長「なぜなら……」

校長「君たちは我が校に巨万の富をもたらす、金の卵を生むニワトリなのだからな!」

校長「フフフ……」

校長「ハッハッハッハッハッハ……!」

『 魔 法 学 校 の 陰 謀 』



【 PART1 魔法協会本部 】



─ 北の王国 ─



北の王国は、世界で最も魔法研究の進んでいる国である……。

そのため、世界各国の魔法研究を統括する『魔法協会』の本部も、
この国の首都に置かれている……。



勇者「…………」

魔術師「待っていたよ、ミスター勇者」

護衛(この男が……世界最高のプロフェッショナル、勇者……)

勇者「魔法協会の重鎮である、アンタが依頼人ということは」

勇者「ずいぶん大きな仕事、ということか……」

魔術師「いや、私は依頼人ではない」

魔術師「私はあくまで使い走りに過ぎないのだ……」

魔術師「このような方法が、君のルールにそぐわないことは重々承知しているが」

魔術師「どうかこの馬車に乗り、私とともに魔法協会本部まで来てくれないだろうか」

勇者「…………」

勇者「…………」ザッ…

魔術師「あ、ありがとう、勇者!」

護衛「…………」ヌッ

勇者「!」ピクッ

シェッ! ガシィッ!

護衛「ぐはっ!」ドサッ

護衛「──な、なにをする!」

魔術師「よしたまえ!」

魔術師「勇者は、音もなく背後に立たれることを極度に嫌うのだ」

魔術師「もし、彼が剣を手にしていたら、今頃君の首は飛んでいたことだろう」

護衛「…………!」ゾッ…

勇者「…………」

魔術師「すまなかった、勇者。これは我々の不注意だった」

魔術師「では私と護衛から馬車に乗らせてもらおう」スッ…

勇者「…………」スッ…

魔術師(魔法協会きっての格闘技の使い手である護衛に)

魔術師(こうもあっさり一撃を浴びせるとは……さすがは勇者といったところか)

魔術師「よし、馬車を進めてくれたまえ」

ガラガラガラガラ……!

─ 魔法協会本部ビル ─



< 会長室 >

大賢者「なんじゃと……?」ジロ…

大賢者「敷地内に入ったとたん、勇者が馬車を飛び出し、行方知れずに……?」

魔術師「は、はいっ! 申し訳ございませんっ……!」

大賢者「しかし、いったいなぜ──」

大賢者「よもや我が協会を敵に回すつもりとも思えぬ、が……」

大賢者「とにかく、協会の者を総動員させて、勇者を捜索──」

勇者「俺ならば、すでに来ている……」

大賢者&魔術師「!!!」

大賢者「おおっ、おぬしが勇者か!」

勇者「…………」

大賢者「待っておったぞ、勇者」

大賢者「しかしなぜ、途中で案内の者をまくようなマネをしたのじゃ……?」

勇者「魔法協会には、世界でも有数の魔法使いたちが集まっている……」

勇者「そんな場所に誘われるがままに乗り込むほど、俺は自信家じゃないんでな……」

魔術師「…………!」

大賢者「さすがじゃ……。君こそ、ウワサにたがわぬプロフェッショナルじゃ!」

大賢者「ワシは確信したよ……君にならば全てを託せる、と!」

勇者「…………」シュボッ…

勇者「用件を聞こうか……」

大賢者「うむ、単刀直入にいおう」

大賢者「君に魔法学校に潜入して欲しい!」

勇者「…………」

大賢者「魔法学校は元々、魔法協会の一部門が独立して生まれた全寮制の教育機関じゃ」

大賢者「紆余曲折を経て、現在はこの北の王国の隣国に居を構えておる」

大賢者「12歳から18歳までの六年間、明日の魔法エリートを目指す少年少女に」

大賢者「魔法学を始めとした高等教育を施す」

大賢者「むろん、カリキュラムは厳しくリタイアする者も多いが」

大賢者「卒業すれば、輝かしい未来が待っておる」

大賢者「我が協会にも魔法学校の卒業生が多く勤めておるし」

大賢者「南の王国で最高宮廷司祭を務める魔導師君も、魔法学校の卒業生──」

勇者「悪いが、俺は魔法学校の講釈を聞きに来たのではない……」

勇者「用件に入ってもらおう……」

大賢者「──こ、これは失礼した!」

大賢者「とにかく、それだけ教育機関としては優秀だということじゃ」

大賢者「じゃが……協会から魔法学校に潜入させていた者によって判明したのじゃが」

大賢者「この魔法学校で恐るべき計画が進行しつつあるのじゃ」

勇者「…………」

魔術師「これらの教科書を見てくれたまえ」

魔術師「魔法学に言語学、数学、社会学、科学……」

魔術師「全て、魔法学校で現在採用されている教科書だ」

勇者「…………」ペラ…ペラ…

勇者「…………」

勇者「なるほど……思想誘導(プロパガンダ)か」

大賢者「!」

勇者「これらの教科書は全て、読んだ者を好戦的な性格に向かわせるよう」

勇者「仕向けられているな……」

勇者「むろん、誘導は非常に緩やかなものだ……」

勇者「第三者がこの教科書を読んでも、その意図に気づくことはまずないだろう……」

勇者「これらを教材として使用すれば……」

勇者「数年もすれば、生徒たちの性質もだいぶ変わるだろう、な……」

魔術師(おおっ……我々でも気がついたのはごく最近だというのに……)

魔術師(教科書を一瞥しただけで、そこまで見抜くとは……さすがは勇者!)

大賢者「みごとじゃ、勇者」

大賢者「魔法学校の校長はこれらの教材を使った授業を行い」

大賢者「生徒たちに、魔法は戦いにこそ使うものだと刷り込み──」

大賢者「強力で攻撃的な魔法使いとなった生徒たちを」

大賢者「軍事市場に、売り込もうとしておるのじゃ!」

大賢者「すでに、いくつかの国と密約ができているという情報も入っておる」

勇者「…………」

勇者「魔法協会から手を回し、学校を糾弾することはできないのか……?」

大賢者「それは、できぬ……」

勇者「なぜだ……?」

大賢者「魔法学校の教科書は、魔法学校側が作成したものを」

大賢者「我が協会で検定するという方式をとっているためじゃ……」

勇者「なるほど……これらの教科書に太鼓判を押したのは」

勇者「他ならぬ魔法協会、というわけか……」

大賢者「さらに、魔法学校も我が魔法協会と同様──」

大賢者「あらゆる国家・権力から自由と独立が保証された、いわば“聖域”なのじゃ」

大賢者「確たる証拠もない現状で、魔法学校を糾弾することは自殺行為に等しい……」

大賢者「つまり、我々が魔法学校の悪しき野望を摘み取るためにできることは」

大賢者「おぬしという“魔法”を使って」

大賢者「魔法学校でこれらの計画に主導する者を、葬ることしかないのだ!」

魔術師「報酬は現金(キャッシュ)で300万ゴールド用意した。どうか──」

勇者「依頼内容は理解した……」

勇者「だが……」

勇者「俺は依頼人が依頼内容で隠し事をすることを許さない……」

大賢者「!」

魔術師「!」

大賢者「フフ……なにもかもお見通し、ということじゃな……。分かった、話そう……」

大賢者「もし、この計画が成功し」

大賢者「魔法学校と各国軍隊との間に強力なパイプができてしまえば」

大賢者「魔法学校は魔法界において、我が協会を凌ぐ権威を振るうことになろう」

大賢者「──そんなことは断じて許せんッ!」

大賢者「魔法という至高の学問を統括するのは、あくまで魔法協会でなければならぬ!」

大賢者「頼む、ミスター勇者!」

大賢者「この老い先短い老人の頼み、どうか引き受けてはもらえまいか!」

勇者「分かった……やってみよう……」

大賢者「おおっ!」

魔術師「先ほど話した協会の潜入者は君が潜入次第、接触を試みる手はずになっている」

魔術師「優秀なエージェントだ。きっと役に立ってくれるだろう」

魔術師「あと……知っているだろうが、魔法学校に刀剣の類は一切持ち込めない」

魔術師「幸運を祈る……」

勇者「…………」

【 PART2 潜入 】



─ 魔法学校 ─



< 校長室 >

校長「ふむ、君が新たな警備員か」

勇者「はい……」

校長「一時期は軍隊に所属し、ハイスクールで剣技指導をしていたのか」

校長「なかなか輝かしい経歴だね」

勇者「…………」

校長「なにしろ我が校は、魔法のエリート養成施設だからね」

校長「並の人間では、警備など務まらないのだよ。ハッハッハ」

校長「時には大魔法を使って大暴れする生徒を」

校長「我が校から支給される、警棒一本で制圧してもらわにゃならんのだからね」

勇者「…………」

勇者「…………」チラッ

勇者「……ずいぶん大きな水晶玉ですね」

勇者「人間の身長よりも遥かに大きい……」

校長「うむ、これは学校内を監視するための特大の水晶玉だ」

校長「職員宿舎や生徒たちの寮などのプライベート空間を除き、この水晶で監視できる」

校長「もっともこの水晶を映し出せる魔力を持つのは」

校長「この校内にもワシ含め、ごくわずかしかおらんがね」

校長「さて、学校案内は教師である賢者君と女賢者君に任せるが」

校長「なにか質問はあるかね?」

勇者「質問はありませんが……」

勇者「この魔法学校は近い将来……さらに躍進することでしょうね」

校長「君もそう思うかね? ハッハッハ……」

勇者「…………」

< 廊下 >

賢者「こんにちは、警備員さん。ボクは賢者です」

女賢者「私は女賢者よ」

勇者「……よろしく」

賢者「本当はもっとベテランの方々が案内した方がいいのですが」

賢者「あいにく手が空いてなくて……」

勇者「いや……かまわない」

女賢者「それじゃ、職員室から案内していくわね」

勇者「…………」

< 職員室 >

ワイワイ…… ガヤガヤ……

賢者「ここが職員室です」

賢者「皆さん、もちろん魔法のエキスパートばかりです」

賢者「例えば、あそこにいる教師さんと女教師さんは」

賢者「それぞれ攻撃魔法と補助魔法が得意な名コンビなんです」

勇者「…………」

教師「ほう、キサマが新しく入った警備員か」

女教師「よろしくお願いしますわ」

勇者「よろしく……」

賢者「こちらは呪術師さん。顔は少し怖いけど、魔法の腕はたしかなものです」

呪術師「ヒヒヒ……」

勇者「…………」

< 教室 >

女賢者「今は誰もいないけど、ここが一クラスの教室よ」

女賢者「各学年、成績順にAからEまでのクラスに分けられるの」

女賢者「成績によって、生徒たちの待遇はまるっきり変わるわ」

女賢者「普通の学校に比べて、とてもシビアなのよ」

女賢者「もっとも、魔法は恐ろしい武器にもなるから、これぐらい厳しくないとね」

勇者「…………」

賢者「特に高学年のAクラスの生徒といったら……」

賢者「教える立場であるボクですら、かなわないほどの魔力を持っていますよ」

女賢者「あら、そんな情けないこといってちゃダメよ」

賢者「ハハハ、ごめん、ごめん」

勇者「…………」

< 校舎出入口 >

賢者「──とまぁ、案内はこんなところですかね」

賢者「今日のところは、このまま職員用の宿舎でゆっくり休んで下さい」

賢者「もう部屋が用意されていますので」

勇者「ありがとう……」

賢者「それじゃ、ボクは雑務があるので、これで」スッ…

勇者「…………」

女賢者「ところで、二人きりになったところで質問なんだけど──」

女賢者「この世で最も恐ろしい魔法はなにかしら?」

勇者「魔法を悪用しようとする“心”だ……」

女賢者「……アナタが協会がいっていた切り札……“勇者”ね」

勇者「…………」

女賢者「ここで立ち話もなんだし、宿舎に向かいましょうか」

【 PART3 魔法学校の夜は更ける 】



─ 職員宿舎 ─



< 勇者の部屋 >

勇者「お前が……魔法協会が送り込んでいたエージェントか」

女賢者「そうよ」

女賢者「ところでさっそくだけど、せっかく魔法学校にやってきたんだから」

女賢者「アナタの“魔法”を見せてくれない?」

女賢者「もしも、お粗末な魔法だったら、承知しないわよ……?」

勇者「…………」

女賢者「オオオ~ッ!」

女賢者「すごい、すごいわっ! こんなすごいの初めてっ!」

女賢者「ああもう、なんて魔法なのっ! ここまで私を乱れさせるなんてっ!」

女賢者「アアア~ッ!」

勇者「…………」

女賢者「熱い、熱くて溶けてしまいそう!」

女賢者「私を熱く煮えたぎらせてぇ~っ! アアア~ッ!」

女賢者「どんな灼熱の魔法だって、私をこんなに燃やせはしないわっ!」

女賢者「オオオオオ~ッ!」

勇者「…………」

女賢者「ハァ、ハァ、ハァ……」

女賢者「す、すごい……。あまりの熱さに下半身がとろけちゃってるわ……」ハァハァ…

勇者「…………」シュボッ…

勇者「魔法学校の計画に勘付いたのは、お前だと聞いているが……」

勇者「俺のような人間が送られてきた、というのがどういうことか」

勇者「分かっているな……?」

女賢者「ええ、協会は魔法学校を正攻法で糾弾することを諦め」

女賢者「非常手段を取ることを選んだ、というわけね?」

女賢者「魔法学校の生徒を軍事市場に売り込むという、一連の計画の黒幕である」

女賢者「校長を抹殺する、と……」

勇者「ああ……」

勇者「だが、黒幕は校長ではない……!」

女賢者「えっ!?」

勇者「俺は校長と話した時──」

勇者「近い将来この学校はさらに躍進する、と問いかけた……」

勇者「これに対し、校長は警戒する素振りもなく、笑い返すだけだった」

勇者「あれは魔法協会にも気取られぬよう」

勇者「これほど大がかりな計画を推し進めてきた人間の反応ではない……」

女賢者(魔法学校に潜入してすぐに、そんな罠を仕掛けていたなんて……!)

女賢者「つまり、計画の首謀者は校長ではない、と……?」

勇者「黒幕が別にいるか、あるいはブレーンとなる人物がいるのはたしかだろう」

女賢者「ということは、たとえ校長を始末しても、その人物が健在ならば……」

女賢者「計画を食い止めることはできない、というわけね?」

勇者「…………」

女賢者「分かったわ! なんとかして、その人物を探し出しましょう!」

女賢者「お互いに日常業務をこなしながら、ね……」

勇者「…………」

【 PART4 尻尾をつかめ! 】



< 校門 >

ワイワイ……

「おはようございます」 「おはようございます!」 「おはようございます」

勇者「おはよう……」

ガヤガヤ……

生徒A「今度新しく入った警備員、すごい迫力だなぁ」

生徒B「ああ、カミソリみたいな目つきしてやがる……」

ワイワイ……

勇者「…………」

< 職員室 >

ザワザワ……

女賢者「賢者君、あなたの次の授業科目はなに?」

賢者「回復魔法だよ。授業のためとはいえ、わざと動物を傷つけるのは可哀想だね」

教師「ふん、そんな甘いことをいっていては、魔法など教えられんぞ」

女教師「そのとおりですわ。我が校は、魔法のエリートを養成する機関なのですから」

呪術師「ヒヒヒ……」

バタバタ……



勇者(この中に“黒幕”もしくは“ブレーン”がいるのか……)

勇者(あるいは、いないのか……)

─ 職員宿舎 ─



< 勇者の部屋 >

女賢者「ふう、この三日間改めて調査してみたけど、成果ナシだったわね」

女賢者「せめて、校長室に侵入できれば何か掴めると思うんだけど」

女賢者「あそこはめったなことじゃ入れないし……」

勇者「これほどの計画を主導する人間だ……」

勇者「この期に及んで、尻尾を出すようなマネはすまい」

女賢者「じゃあ、どうするというの……?」

勇者「…………」

勇者「とにかく今はチャンスを待つしかない」

勇者「“チャンス”を、な……」

女賢者「…………」

─ 魔法学校 ─



< 校長室 >

「……あの警備員、只者ではない、な」ギシッ…

校長「はぁ……そうでしょうか」

「俺には分かる……あれは“プロ”の目だ」

「現に近頃、女賢者となにかをかぎ回っているようだしな……」

校長「なんと! 女賢者と!?」

「あのメス犬め、前々から怪しんではいたが、ついに本性を表したということだ」

「で、あれば……罠にも容易く乗ってくるだろう」

「明日の放課後から、お前はこの部屋をわざと空けておけ」

校長「えっ、なぜです?」

「いいからいうとおりにするんだ……分かったな」

校長「か、かしこまりましたっ!」

【 PART5 チャンスとピンチ 】



翌日──

< 職員室 >

教師「校長のご家族が……?」

女教師「ええ、気の毒ですわね」

ザワザワ……

女賢者「なんだかあわただしいけど、なにかあったの?」

賢者「うん、なんでも校長のご家族にご不幸があって」

賢者「さっき校長がしばらく学校をお休みするって帰宅されたんだ」

女賢者「ふぅ~ん……」

女賢者(これは……勇者のいっていたチャンスかもしれないわ!)

呪術師「ヒヒヒ……」

< 地下室 >

校長「全ておっしゃる通りにいたしました。私はしばらくいないということに……」

「よし……これで奴らは今頃、校長室に忍び込み」

「例の計画を糾弾するに足る証拠探しに躍起になっているはずだ」

「もっとも、そんなものは校長室にありはしないがな……」

「では、“餌”に食いついた“魚”をあの二人に捕えさせろ」

校長「はっ!」

校長「しかし、ここが校長室でないのが残念ですな」

校長「あの大水晶で、マヌケな魚どもの姿を眺めることができますのに」

「フフフ、まったくだな……」

< 校長室 >

勇者「…………」ガサゴソ…

女賢者(ないわ……証拠なんてどこにも!)ガサゴソ…

ギィィ……

勇者「…………!」バッ

女賢者「!」サッ

教師「そこまでだ。この部屋をいくらあさっても、なにも出てこんぞ」

教師「さて……大人しく女教師の魔法で捕まってもらおう」

教師「さもなくば、俺の雷魔法がキサマらを撃ち抜くことになる」バリバリ…

女教師「罠にかかったスパイさんたちを、歓迎してあげなくてはなりませんわね……」

女賢者「くっ……!」

女賢者(この二人が、計画の加担者だったなんて……!)

勇者「…………」

< 地下室 >

校長「先ほど連絡が入りました」

校長「教師と女教師が、警備員と女賢者を捕えた、とのことです」

「やはりな……。まんまとかかったか」

「では、女賢者は俺のところに連れてこい」

「あの女の魔法の腕は、まだ使い道がある……」

校長「警備員の方は、どうしますか?」

「拷問にかけ、全てを吐き出させろ、と伝えろ」

「知っていることを全て吐かせたら、始末してかまわん、ともな」

校長「はっ!」

【 PART6 拷問 】



< 小部屋 >

教師「キサマはいったい何者だ!?」

バチバチバチバチ……!

勇者「…………」

教師「我々の計画を暴くためにやってきた、魔法協会のイヌだろう!? 吐けっ!」

バチバチバチバチ……! バリバリバリバリ……!

勇者「…………!」

教師「ハァ、ハァ、ハァ……」

ギィィ……

女教師「どう、なにか吐いてくれて?」

教師「いや……鎖で吊るし上げ、電撃魔法をもう三時間は浴びせてるというのに」

教師「うめき声一つもらしやせん! 神経があるのかこの男は……」

教師「ところで、女賢者はどうした?」

女教師「気絶させて、校長に預けましたわ」

勇者「!」ピクッ

勇者「……お前たちのボスは、校長なのか?」

教師&女教師「!」

教師「……やっと口を開いたか。やはり、気になるようだな!」

勇者「…………」

教師「そのとおり……といいたいが、実は校長でさえ“ある人物”の配下なのだ」

教師「この魔法学校の生徒たちを好戦的な性質に教育し」

教師「強力な魔法兵士にするという計画を立てた人物の、な」

勇者「ふむ……」

勇者「……お前たちのような下っ端では、その人物の正体すら知らんのか」

教師「な……!」

女教師「私たちが下っ端ですって!?」

教師「いっておくがな、この学校で計画に深く関わっているのは」

教師「俺と女教師と校長だけだ!」

勇者「…………」

女教師「そのとおり! 私たちは選ばれたエリートなのですわ!」

女教師「たった三人で、この学校の生徒と職員全てを操っているのですから!」

教師「この計画が成功すれば、校長は俺たちにもその人物を紹介してくれると」

教師「約束してくれたのだ! 断じて下っ端などではない!」

勇者「…………」

勇者「なるほど、大したものだ、が……」

勇者「肝心の魔法の実力はイマイチのようだな……」

教師「なにい!?」

勇者「なにしろ、三時間かけても俺に声一つ上げさせられなかったのだからな……」

教師「キサマ……自分の立場をわきまえていないようだな?」

教師「情報など、キサマに吐かせずとも、女賢者に吐かさればよいのだ!」

教師「俺の雷魔法で、消し炭にしてくれるっ!」バリバリ…

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