─ 魔法学校 ─
教師「本日は、炎魔法の実習を行う!」
教師「使いこなせば非常に強力な魔法であるから」
教師「我々教師のいないところでは、決して使わないこと!」
教師「もし掟を破った場合は、懲罰房行きだ!」
「はいっ!」 「はい!」 「はいっ!」
教師「うむっ、いい返事だ!」
教師「では、この木材に向かって、炎魔法を放っていくのだ!」
「はいっ!」 「はい!」 「はいっ!」
教師「さあみんな、明日の魔法エリートを目指すのだッ!」
< 校長室 >
校長「うむうむ……やっておるな」
校長「この特大水晶玉で見る授業風景は、また格別だわい」
校長「我が校が誇る、優秀なる生徒諸君よ」
校長「どんどん学び、どんどん魔法を覚えて、どんどん強くなりたまえ!」
校長「なぜなら……」
校長「君たちは我が校に巨万の富をもたらす、金の卵を生むニワトリなのだからな!」
校長「フフフ……」
校長「ハッハッハッハッハッハ……!」
『 魔 法 学 校 の 陰 謀 』
【 PART1 魔法協会本部 】
─ 北の王国 ─
北の王国は、世界で最も魔法研究の進んでいる国である……。
そのため、世界各国の魔法研究を統括する『魔法協会』の本部も、
この国の首都に置かれている……。
勇者「…………」
魔術師「待っていたよ、ミスター勇者」
護衛(この男が……世界最高のプロフェッショナル、勇者……)
勇者「魔法協会の重鎮である、アンタが依頼人ということは」
勇者「ずいぶん大きな仕事、ということか……」
魔術師「いや、私は依頼人ではない」
魔術師「私はあくまで使い走りに過ぎないのだ……」
魔術師「このような方法が、君のルールにそぐわないことは重々承知しているが」
魔術師「どうかこの馬車に乗り、私とともに魔法協会本部まで来てくれないだろうか」
勇者「…………」
勇者「…………」ザッ…
魔術師「あ、ありがとう、勇者!」
護衛「…………」ヌッ
勇者「!」ピクッ
シェッ! ガシィッ!
護衛「ぐはっ!」ドサッ
護衛「──な、なにをする!」
魔術師「よしたまえ!」
魔術師「勇者は、音もなく背後に立たれることを極度に嫌うのだ」
魔術師「もし、彼が剣を手にしていたら、今頃君の首は飛んでいたことだろう」
護衛「…………!」ゾッ…
勇者「…………」
魔術師「すまなかった、勇者。これは我々の不注意だった」
魔術師「では私と護衛から馬車に乗らせてもらおう」スッ…
勇者「…………」スッ…
魔術師(魔法協会きっての格闘技の使い手である護衛に)
魔術師(こうもあっさり一撃を浴びせるとは……さすがは勇者といったところか)
魔術師「よし、馬車を進めてくれたまえ」
ガラガラガラガラ……!
─ 魔法協会本部ビル ─
< 会長室 >
大賢者「なんじゃと……?」ジロ…
大賢者「敷地内に入ったとたん、勇者が馬車を飛び出し、行方知れずに……?」
魔術師「は、はいっ! 申し訳ございませんっ……!」
大賢者「しかし、いったいなぜ──」
大賢者「よもや我が協会を敵に回すつもりとも思えぬ、が……」
大賢者「とにかく、協会の者を総動員させて、勇者を捜索──」
勇者「俺ならば、すでに来ている……」
大賢者&魔術師「!!!」
大賢者「おおっ、おぬしが勇者か!」
勇者「…………」
大賢者「待っておったぞ、勇者」
大賢者「しかしなぜ、途中で案内の者をまくようなマネをしたのじゃ……?」
勇者「魔法協会には、世界でも有数の魔法使いたちが集まっている……」
勇者「そんな場所に誘われるがままに乗り込むほど、俺は自信家じゃないんでな……」
魔術師「…………!」
大賢者「さすがじゃ……。君こそ、ウワサにたがわぬプロフェッショナルじゃ!」
大賢者「ワシは確信したよ……君にならば全てを託せる、と!」
勇者「…………」シュボッ…
勇者「用件を聞こうか……」
大賢者「うむ、単刀直入にいおう」
大賢者「君に魔法学校に潜入して欲しい!」
勇者「…………」
大賢者「魔法学校は元々、魔法協会の一部門が独立して生まれた全寮制の教育機関じゃ」
大賢者「紆余曲折を経て、現在はこの北の王国の隣国に居を構えておる」
大賢者「12歳から18歳までの六年間、明日の魔法エリートを目指す少年少女に」
大賢者「魔法学を始めとした高等教育を施す」
大賢者「むろん、カリキュラムは厳しくリタイアする者も多いが」
大賢者「卒業すれば、輝かしい未来が待っておる」
大賢者「我が協会にも魔法学校の卒業生が多く勤めておるし」
大賢者「南の王国で最高宮廷司祭を務める魔導師君も、魔法学校の卒業生──」
勇者「悪いが、俺は魔法学校の講釈を聞きに来たのではない……」
勇者「用件に入ってもらおう……」
大賢者「──こ、これは失礼した!」
大賢者「とにかく、それだけ教育機関としては優秀だということじゃ」
大賢者「じゃが……協会から魔法学校に潜入させていた者によって判明したのじゃが」
大賢者「この魔法学校で恐るべき計画が進行しつつあるのじゃ」
勇者「…………」
魔術師「これらの教科書を見てくれたまえ」
魔術師「魔法学に言語学、数学、社会学、科学……」
魔術師「全て、魔法学校で現在採用されている教科書だ」
勇者「…………」ペラ…ペラ…
勇者「…………」
勇者「なるほど……思想誘導(プロパガンダ)か」
大賢者「!」
勇者「これらの教科書は全て、読んだ者を好戦的な性格に向かわせるよう」
勇者「仕向けられているな……」
勇者「むろん、誘導は非常に緩やかなものだ……」
勇者「第三者がこの教科書を読んでも、その意図に気づくことはまずないだろう……」
勇者「これらを教材として使用すれば……」
勇者「数年もすれば、生徒たちの性質もだいぶ変わるだろう、な……」
魔術師(おおっ……我々でも気がついたのはごく最近だというのに……)
魔術師(教科書を一瞥しただけで、そこまで見抜くとは……さすがは勇者!)
大賢者「みごとじゃ、勇者」
大賢者「魔法学校の校長はこれらの教材を使った授業を行い」
大賢者「生徒たちに、魔法は戦いにこそ使うものだと刷り込み──」
大賢者「強力で攻撃的な魔法使いとなった生徒たちを」
大賢者「軍事市場に、売り込もうとしておるのじゃ!」
大賢者「すでに、いくつかの国と密約ができているという情報も入っておる」
勇者「…………」
勇者「魔法協会から手を回し、学校を糾弾することはできないのか……?」
大賢者「それは、できぬ……」
勇者「なぜだ……?」
大賢者「魔法学校の教科書は、魔法学校側が作成したものを」
大賢者「我が協会で検定するという方式をとっているためじゃ……」
勇者「なるほど……これらの教科書に太鼓判を押したのは」
勇者「他ならぬ魔法協会、というわけか……」
大賢者「さらに、魔法学校も我が魔法協会と同様──」
大賢者「あらゆる国家・権力から自由と独立が保証された、いわば“聖域”なのじゃ」
大賢者「確たる証拠もない現状で、魔法学校を糾弾することは自殺行為に等しい……」
大賢者「つまり、我々が魔法学校の悪しき野望を摘み取るためにできることは」
大賢者「おぬしという“魔法”を使って」
大賢者「魔法学校でこれらの計画に主導する者を、葬ることしかないのだ!」
魔術師「報酬は現金(キャッシュ)で300万ゴールド用意した。どうか──」
勇者「依頼内容は理解した……」
勇者「だが……」
勇者「俺は依頼人が依頼内容で隠し事をすることを許さない……」
大賢者「!」
魔術師「!」
大賢者「フフ……なにもかもお見通し、ということじゃな……。分かった、話そう……」
大賢者「もし、この計画が成功し」
大賢者「魔法学校と各国軍隊との間に強力なパイプができてしまえば」
大賢者「魔法学校は魔法界において、我が協会を凌ぐ権威を振るうことになろう」
大賢者「──そんなことは断じて許せんッ!」
大賢者「魔法という至高の学問を統括するのは、あくまで魔法協会でなければならぬ!」
大賢者「頼む、ミスター勇者!」
大賢者「この老い先短い老人の頼み、どうか引き受けてはもらえまいか!」
勇者「分かった……やってみよう……」
大賢者「おおっ!」
魔術師「先ほど話した協会の潜入者は君が潜入次第、接触を試みる手はずになっている」
魔術師「優秀なエージェントだ。きっと役に立ってくれるだろう」
魔術師「あと……知っているだろうが、魔法学校に刀剣の類は一切持ち込めない」
魔術師「幸運を祈る……」
勇者「…………」
【 PART2 潜入 】
─ 魔法学校 ─
< 校長室 >
校長「ふむ、君が新たな警備員か」
勇者「はい……」
校長「一時期は軍隊に所属し、ハイスクールで剣技指導をしていたのか」
校長「なかなか輝かしい経歴だね」
勇者「…………」
校長「なにしろ我が校は、魔法のエリート養成施設だからね」
校長「並の人間では、警備など務まらないのだよ。ハッハッハ」
校長「時には大魔法を使って大暴れする生徒を」
校長「我が校から支給される、警棒一本で制圧してもらわにゃならんのだからね」
勇者「…………」
勇者「…………」チラッ
勇者「……ずいぶん大きな水晶玉ですね」
勇者「人間の身長よりも遥かに大きい……」
校長「うむ、これは学校内を監視するための特大の水晶玉だ」
校長「職員宿舎や生徒たちの寮などのプライベート空間を除き、この水晶で監視できる」
校長「もっともこの水晶を映し出せる魔力を持つのは」
校長「この校内にもワシ含め、ごくわずかしかおらんがね」
校長「さて、学校案内は教師である賢者君と女賢者君に任せるが」
校長「なにか質問はあるかね?」
勇者「質問はありませんが……」
勇者「この魔法学校は近い将来……さらに躍進することでしょうね」
校長「君もそう思うかね? ハッハッハ……」
勇者「…………」
< 廊下 >
賢者「こんにちは、警備員さん。ボクは賢者です」
女賢者「私は女賢者よ」
勇者「……よろしく」
賢者「本当はもっとベテランの方々が案内した方がいいのですが」
賢者「あいにく手が空いてなくて……」
勇者「いや……かまわない」
女賢者「それじゃ、職員室から案内していくわね」
勇者「…………」
< 職員室 >
ワイワイ…… ガヤガヤ……
賢者「ここが職員室です」
賢者「皆さん、もちろん魔法のエキスパートばかりです」
賢者「例えば、あそこにいる教師さんと女教師さんは」
賢者「それぞれ攻撃魔法と補助魔法が得意な名コンビなんです」
勇者「…………」
教師「ほう、キサマが新しく入った警備員か」
女教師「よろしくお願いしますわ」
勇者「よろしく……」
賢者「こちらは呪術師さん。顔は少し怖いけど、魔法の腕はたしかなものです」
呪術師「ヒヒヒ……」
勇者「…………」
< 教室 >
女賢者「今は誰もいないけど、ここが一クラスの教室よ」
女賢者「各学年、成績順にAからEまでのクラスに分けられるの」
女賢者「成績によって、生徒たちの待遇はまるっきり変わるわ」
女賢者「普通の学校に比べて、とてもシビアなのよ」
女賢者「もっとも、魔法は恐ろしい武器にもなるから、これぐらい厳しくないとね」
勇者「…………」
賢者「特に高学年のAクラスの生徒といったら……」
賢者「教える立場であるボクですら、かなわないほどの魔力を持っていますよ」
女賢者「あら、そんな情けないこといってちゃダメよ」
賢者「ハハハ、ごめん、ごめん」
勇者「…………」
< 校舎出入口 >
賢者「──とまぁ、案内はこんなところですかね」
賢者「今日のところは、このまま職員用の宿舎でゆっくり休んで下さい」
賢者「もう部屋が用意されていますので」
勇者「ありがとう……」
賢者「それじゃ、ボクは雑務があるので、これで」スッ…
勇者「…………」
女賢者「ところで、二人きりになったところで質問なんだけど──」
女賢者「この世で最も恐ろしい魔法はなにかしら?」
勇者「魔法を悪用しようとする“心”だ……」
女賢者「……アナタが協会がいっていた切り札……“勇者”ね」
勇者「…………」
女賢者「ここで立ち話もなんだし、宿舎に向かいましょうか」
【 PART3 魔法学校の夜は更ける 】
─ 職員宿舎 ─
< 勇者の部屋 >
勇者「お前が……魔法協会が送り込んでいたエージェントか」
女賢者「そうよ」
女賢者「ところでさっそくだけど、せっかく魔法学校にやってきたんだから」
女賢者「アナタの“魔法”を見せてくれない?」
女賢者「もしも、お粗末な魔法だったら、承知しないわよ……?」
勇者「…………」
女賢者「オオオ~ッ!」
女賢者「すごい、すごいわっ! こんなすごいの初めてっ!」
女賢者「ああもう、なんて魔法なのっ! ここまで私を乱れさせるなんてっ!」
女賢者「アアア~ッ!」
勇者「…………」
女賢者「熱い、熱くて溶けてしまいそう!」
女賢者「私を熱く煮えたぎらせてぇ~っ! アアア~ッ!」
女賢者「どんな灼熱の魔法だって、私をこんなに燃やせはしないわっ!」
女賢者「オオオオオ~ッ!」
勇者「…………」
女賢者「ハァ、ハァ、ハァ……」
女賢者「す、すごい……。あまりの熱さに下半身がとろけちゃってるわ……」ハァハァ…
勇者「…………」シュボッ…
勇者「魔法学校の計画に勘付いたのは、お前だと聞いているが……」
勇者「俺のような人間が送られてきた、というのがどういうことか」
勇者「分かっているな……?」
女賢者「ええ、協会は魔法学校を正攻法で糾弾することを諦め」
女賢者「非常手段を取ることを選んだ、というわけね?」
女賢者「魔法学校の生徒を軍事市場に売り込むという、一連の計画の黒幕である」
女賢者「校長を抹殺する、と……」
勇者「ああ……」
勇者「だが、黒幕は校長ではない……!」
女賢者「えっ!?」
勇者「俺は校長と話した時──」
勇者「近い将来この学校はさらに躍進する、と問いかけた……」
勇者「これに対し、校長は警戒する素振りもなく、笑い返すだけだった」
勇者「あれは魔法協会にも気取られぬよう」
勇者「これほど大がかりな計画を推し進めてきた人間の反応ではない……」
女賢者(魔法学校に潜入してすぐに、そんな罠を仕掛けていたなんて……!)
女賢者「つまり、計画の首謀者は校長ではない、と……?」
勇者「黒幕が別にいるか、あるいはブレーンとなる人物がいるのはたしかだろう」
女賢者「ということは、たとえ校長を始末しても、その人物が健在ならば……」
女賢者「計画を食い止めることはできない、というわけね?」
勇者「…………」
女賢者「分かったわ! なんとかして、その人物を探し出しましょう!」
女賢者「お互いに日常業務をこなしながら、ね……」
勇者「…………」
【 PART4 尻尾をつかめ! 】
< 校門 >
ワイワイ……
「おはようございます」 「おはようございます!」 「おはようございます」
勇者「おはよう……」
ガヤガヤ……
生徒A「今度新しく入った警備員、すごい迫力だなぁ」
生徒B「ああ、カミソリみたいな目つきしてやがる……」
ワイワイ……
勇者「…………」
< 職員室 >
ザワザワ……
女賢者「賢者君、あなたの次の授業科目はなに?」
賢者「回復魔法だよ。授業のためとはいえ、わざと動物を傷つけるのは可哀想だね」
教師「ふん、そんな甘いことをいっていては、魔法など教えられんぞ」
女教師「そのとおりですわ。我が校は、魔法のエリートを養成する機関なのですから」
呪術師「ヒヒヒ……」
バタバタ……
勇者(この中に“黒幕”もしくは“ブレーン”がいるのか……)
勇者(あるいは、いないのか……)
─ 職員宿舎 ─
< 勇者の部屋 >
女賢者「ふう、この三日間改めて調査してみたけど、成果ナシだったわね」
女賢者「せめて、校長室に侵入できれば何か掴めると思うんだけど」
女賢者「あそこはめったなことじゃ入れないし……」
勇者「これほどの計画を主導する人間だ……」
勇者「この期に及んで、尻尾を出すようなマネはすまい」
女賢者「じゃあ、どうするというの……?」
勇者「…………」
勇者「とにかく今はチャンスを待つしかない」
勇者「“チャンス”を、な……」
女賢者「…………」
─ 魔法学校 ─
< 校長室 >
「……あの警備員、只者ではない、な」ギシッ…
校長「はぁ……そうでしょうか」
「俺には分かる……あれは“プロ”の目だ」
「現に近頃、女賢者となにかをかぎ回っているようだしな……」
校長「なんと! 女賢者と!?」
「あのメス犬め、前々から怪しんではいたが、ついに本性を表したということだ」
「で、あれば……罠にも容易く乗ってくるだろう」
「明日の放課後から、お前はこの部屋をわざと空けておけ」
校長「えっ、なぜです?」
「いいからいうとおりにするんだ……分かったな」
校長「か、かしこまりましたっ!」
【 PART5 チャンスとピンチ 】
翌日──
< 職員室 >
教師「校長のご家族が……?」
女教師「ええ、気の毒ですわね」
ザワザワ……
女賢者「なんだかあわただしいけど、なにかあったの?」
賢者「うん、なんでも校長のご家族にご不幸があって」
賢者「さっき校長がしばらく学校をお休みするって帰宅されたんだ」
女賢者「ふぅ~ん……」
女賢者(これは……勇者のいっていたチャンスかもしれないわ!)
呪術師「ヒヒヒ……」
< 地下室 >
校長「全ておっしゃる通りにいたしました。私はしばらくいないということに……」
「よし……これで奴らは今頃、校長室に忍び込み」
「例の計画を糾弾するに足る証拠探しに躍起になっているはずだ」
「もっとも、そんなものは校長室にありはしないがな……」
「では、“餌”に食いついた“魚”をあの二人に捕えさせろ」
校長「はっ!」
校長「しかし、ここが校長室でないのが残念ですな」
校長「あの大水晶で、マヌケな魚どもの姿を眺めることができますのに」
「フフフ、まったくだな……」
< 校長室 >
勇者「…………」ガサゴソ…
女賢者(ないわ……証拠なんてどこにも!)ガサゴソ…
ギィィ……
勇者「…………!」バッ
女賢者「!」サッ
教師「そこまでだ。この部屋をいくらあさっても、なにも出てこんぞ」
教師「さて……大人しく女教師の魔法で捕まってもらおう」
教師「さもなくば、俺の雷魔法がキサマらを撃ち抜くことになる」バリバリ…
女教師「罠にかかったスパイさんたちを、歓迎してあげなくてはなりませんわね……」
女賢者「くっ……!」
女賢者(この二人が、計画の加担者だったなんて……!)
勇者「…………」
< 地下室 >
校長「先ほど連絡が入りました」
校長「教師と女教師が、警備員と女賢者を捕えた、とのことです」
「やはりな……。まんまとかかったか」
「では、女賢者は俺のところに連れてこい」
「あの女の魔法の腕は、まだ使い道がある……」
校長「警備員の方は、どうしますか?」
「拷問にかけ、全てを吐き出させろ、と伝えろ」
「知っていることを全て吐かせたら、始末してかまわん、ともな」
校長「はっ!」
【 PART6 拷問 】
< 小部屋 >
教師「キサマはいったい何者だ!?」
バチバチバチバチ……!
勇者「…………」
教師「我々の計画を暴くためにやってきた、魔法協会のイヌだろう!? 吐けっ!」
バチバチバチバチ……! バリバリバリバリ……!
勇者「…………!」
教師「ハァ、ハァ、ハァ……」
ギィィ……
女教師「どう、なにか吐いてくれて?」
教師「いや……鎖で吊るし上げ、電撃魔法をもう三時間は浴びせてるというのに」
教師「うめき声一つもらしやせん! 神経があるのかこの男は……」
教師「ところで、女賢者はどうした?」
女教師「気絶させて、校長に預けましたわ」
勇者「!」ピクッ
勇者「……お前たちのボスは、校長なのか?」
教師&女教師「!」
教師「……やっと口を開いたか。やはり、気になるようだな!」
勇者「…………」
教師「そのとおり……といいたいが、実は校長でさえ“ある人物”の配下なのだ」
教師「この魔法学校の生徒たちを好戦的な性質に教育し」
教師「強力な魔法兵士にするという計画を立てた人物の、な」
勇者「ふむ……」
勇者「……お前たちのような下っ端では、その人物の正体すら知らんのか」
教師「な……!」
女教師「私たちが下っ端ですって!?」
教師「いっておくがな、この学校で計画に深く関わっているのは」
教師「俺と女教師と校長だけだ!」
勇者「…………」
女教師「そのとおり! 私たちは選ばれたエリートなのですわ!」
女教師「たった三人で、この学校の生徒と職員全てを操っているのですから!」
教師「この計画が成功すれば、校長は俺たちにもその人物を紹介してくれると」
教師「約束してくれたのだ! 断じて下っ端などではない!」
勇者「…………」
勇者「なるほど、大したものだ、が……」
勇者「肝心の魔法の実力はイマイチのようだな……」
教師「なにい!?」
勇者「なにしろ、三時間かけても俺に声一つ上げさせられなかったのだからな……」
教師「キサマ……自分の立場をわきまえていないようだな?」
教師「情報など、キサマに吐かせずとも、女賢者に吐かさればよいのだ!」
教師「俺の雷魔法で、消し炭にしてくれるっ!」バリバリ…
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