国王「と、いう訳でお主には勇者として魔王を討伐してもらう」
勇者「……え? いや、あの。そりゃ剣の腕なら負けない自信はありますが」
国王「これは神々のお告げなのだ」
勇者「ですからね、剣術大会ならいくらでも出ますが魔法が飛び交う」
国王「国王命令だから」
勇者「」
国王「出発は一週間後、何名か同行者の候補を見繕っておいたから決めておいてね」
勇者(バックレよう)
国王「あ、一人は確定だから。宮廷魔術士している子だから。逃げられると思うなよ」
勇者「」
勇者「ねえよ……ありえねえって……なんだよこれ」
勇者「う、お」ギュルル
勇者「くっそー……腹痛くなってきた、トイレトイレ」
魔法使い「貴方が勇者ね」
勇者「はいはいどうもー剣士改め勇者ですよねー」
魔法「す、凄い不貞腐れ方ね」
勇者「意味分んねぇよ、なんだよ神託だから勇者って」
勇者「俺魔法使えないよ? 剣だけなら勝てるよ?」
魔法「西国の剣豪だったかしら? その若さで剣における名誉を欲しいがままにする、と言う」
勇者「調子乗ってたつもりはないんだけどなぁ……毎日ちゃんと鍛錬もしてるし……」
勇者「何が罰当たったんだろう……」ブツブツ
魔法「とにかく、あたしが貴方のサポート兼監視役よ」
勇者「堂々と言いやがったな」
魔法「謁見の場にあたしもいたけども、貴方逃げ出す満々だったじゃない」
勇者「そんなに顔に出ていたのか」ペタペタ
勇者「ちょっと神様、正直者って事で酌量の余地を……」
魔法(そういうなめた態度が祟ったんじゃないのかしら……)
魔法「これが候補者よ」バッ
勇者「結構いるな……んーこいつらいらないな」バサッ
魔法「ちょ! それ大切な前衛のリストじゃないの?!」
勇者「前衛なら俺一人で十分だろ」
魔法「……説得力が違うわね」
勇者「う」ギュル
魔法「どうしたの? なんか凄い鳥肌立ってるけど大丈夫なの?」
勇者「あー……勇者だよって神託出たから城に来てって言われてから腹の調子……」ギュルルルル
勇者「あ、無理、これ、駄目」イソイソイソ
魔法「……大丈夫なのかしら、あれ」
勇者「ふー……」
魔法「凄いほっとした顔ね」
勇者「まあな。にしてもこれで三度目かー」
魔法「何がよ」
勇者「今日の回数」
魔法「あのね……女性の前でそういうデリカシー……え? 三回も下痢を起こしたの?」
勇者「緊張に慣れていると思ったんだけどなぁ……何回も大会で勝ってんだしなぁ」
魔法「……」
魔法「今日はここまでにしましょ」
勇者「おいおい、同行者決めなくていいのか?」
魔法「貴方、体調が優れないのでしょ? 今日明日はゆっくり休んで明後日、この部屋に来て」ピラ
勇者「お前の部屋? 研究所?」
魔法「自室。と言っても大して荷物もないし、たまに寝に帰るぐらいの場所だけどね」
勇者「おいおい城内での仕事じゃないの? 宮廷魔術士超ブラックだな」
魔法「好きでやってるのよ」
勇者「……」ゴロゴロゴロ
勇者「あんまよくなんねーな」
勇者「こんな状態で女の子の部屋行くのも気が引けるがしゃーねーよな」
魔法「どうぞ、今紅茶でも淹れるわね」
勇者「すまんね」
勇者(あれ、俺今凄い役得じゃね?)ゴロゴロゴロゴロ
勇者「……」ゴロ コポ
魔法「……昨日、今日どうなのよ?」
勇者「昨日が三回、今朝二回だな」
魔法「……下痢? ってちょっと待て、今朝二回?!」
勇者「やー下って出し切ったかなーってトイレ出たら二発目きちゃった」
魔法「……旅立つ前に診てもらった方がいいんじゃないかしら?」
勇者「かなぁ……ま、とりあえず今日は同行者決めだ」
魔法「貴方がばっさり切ったからもう大してないけどもね」パサ
勇者「んー……この僧侶と狩人」
魔法「早っ!」
勇者「これ以外に必要そうな奴がいないし」ゴロゴロ ゴポ
魔法「あー……そう」
魔法「まあ貴方がそう言うのならいいわ。紅茶、飲んだら行きましょう」
勇者「何処にだ? ああ、医者か」
魔法「もうその異音が凄い気になって仕方が無いの」
勇者「多分、下痢ん中を屁がかきわけてんじゃないか? そんな感じの音だし」コポ ゴロゴロ
医者「はい、どうされました?」
勇者「いやーここのところ下痢が続いていまして」
医者「ふむ……」
医者(この方は西国の剣豪で物凄い健康だって話だが……)
医者「じゃあちょっとこちらに仰向けになってみましょうか」
勇者「うい」ゴロン
医者「お腹の音を聞きますねー」
医者「うーん、確かにゴロゴロゴロいってますね」
勇者「ありゃ……今もですか。あんま感じないから分らなかったな」
医者「一先ず整腸剤を出しておきますね」
医者「出発まで日数があるかと思いますし、検便と採血検査もしますか」
医者「検便は今日と明日のを取って下さい。詳しくは窓口で。それでは採血しますね」
勇者「あ、これで重病見つかったら勇者免除されるのかな」
医者(それはそれで困るなー……)
魔法「どうだったの?」
勇者「検便と採血検査如何だってよ」
魔法「今の所原因不明なのね」
勇者「みたいだ。そういや同行者との顔合わせは?」
魔法「今日書類を出すから明後日になるわね」
勇者「ふんふん……じゃあ明後日何処に行きゃいいの?」
魔法「今日と同じ時刻にあたしの部屋に来て頂戴」
勇者「にしてもなんだって腹が下ったんかねぇ……変な物食った覚えないしな」
勇者「ま、薬もあるしそのうち治るだろ」
勇者「……」カチ コチ カチ コチ
勇者(とは言えこれからマジどうなんだろ……相手は魔法バンバン撃ってくるんだろ?)カチ コチ カチ コチ
勇者(魔法使いいるとは言えどうすんだよ……というか魔物に俺の剣って通用すんの?)カチ コチ カチ コチ
勇者(そもそも何で俺なんだよ……魔法使える奴のがいいんじゃねーの……)ギュル
勇者「うっは、来た来た」ノロノロ
明後日
狩人「ぼ、僕は北の森の一族の狩人と言います!」
僧侶「私はこの国の大聖堂に仕えている僧侶と申します」
勇者「俺は知っての通り勇者だ。よろしく頼む」
魔法「あたしはここで宮廷魔術士をしている魔法使いよ」
勇者「やー……こうして顔を合わせるといよいよ逃げられないし、旅立つんだってなるな……」
魔法「何言ってんのよ……」
狩人「あ、あの、勇者様にとっては足手纏いになってしまうかもですけど……僕精一杯頑張りますから!」
勇者「あーそういうの気にしなくていいよ。気楽にね、気楽に」
勇者「気楽に……行けたらいいなぁ」ゴロゴロゴロ
僧侶「……? 今の何の音ですか?」
狩人「お腹が鳴ったにしては変わった音だったね」
魔法「あー……勇者はちょっとお腹の調子悪いのよ」
勇者「ちょっと、そういうの結構デリケートな話題じゃないの」
魔法「こうしている間にもトイレ駆け込むとかありえるんだし、予め伝えておいて理解を得た方がいいんじゃないの?」
狩人「勇者様、お体が悪いんですか?」
勇者「いやまあ、検査中だけどそのうち治るだろ」
僧侶「だといいのですが……」
勇者「でもこれから旅に出るとなると気軽にトイレにも……」ギュルルル
勇者「うっはぁ!」イソイソ
狩人「!?」ビク
僧侶「ゆ、勇者様、どちらへ?!」
魔法「察してあげなさいな……」
医者「……君達、勇者君は?」
魔法「トイレでファーストインパクトと戦ってます」
国王「ふむ……」
狩人「お、王様?!」ザッ
僧侶「こ、国王陛下!」ザッ
魔法「……」サッ
国王「これこれ、楽にして居たまえ」
魔法「あの、何故このような場所に」
国王「城内にいちゃいかんのか……わしは」
魔法「あ、いえ……」
国王「……もう、冗談が通じない子じゃなぁ」
医者「勇者君の件で少々ありまして」
魔法「え……まさか重病を患っているとかですか?」
僧侶「そんな……」
医者「その逆。今の所何一つ異常が見当たらない」
狩人「? それって良い事じゃないんですか?」
医者「そうだよ、実に良い事だ。問題はそれなのに、彼は重度の下痢に悩まされている事だ」
医者「……あまり当たって欲しくないが、症状に心当たりがある」
医者「ただ私自身それを認めたくないので精密検査をしたくてね。勇者君の旅立ちを遅らせる相談をしたのだ」
勇者「で、こうして先生と俺と王様が診察室にいる訳か」
国王「そういう事だ」
勇者「ナンだよこれ……王様が保護者みたいな位置に立ってるし」
医者「とにかく説明をするよ」
勇者「うい」
医者「今の所君には異常が見られない」
勇者「んな馬鹿な」
医者「うん……だからもう少し検査、腸内を直接見る検査をしたいんだ」
勇者「結構大掛かりだよね、それ」
国王「故に旅立ちも一週間先送りにしたのだ」
勇者「はあ……」
医者「とにかく君には一度入院してもらって検査をするから」
魔法「その間、あたし達はどうすればいいのでしょうか?」
国王「宿はこちらで手配するからそこで待機とする」
狩人「勇者様……」
勇者「まあ、大丈夫だろ……多分」
数日後
医者「検査の結果なのですがね」
勇者「……」
国王「……」
魔法「……」
狩人「……」ゴクリ
僧侶「……」ゴクリ
勇者(せめぇ……)
医者「異常は見つかりませんでした」
国王「なんと……」
勇者「いや、今でも下痢しまくるんだけど」
医者「心当たりがないわけではないです」
魔法「と言いますと?」
医者「過敏性腸症候群という病気ですね」
勇者「なんだ、やっぱり病気なのか」
医者「これは腸そのものに異常が見受けられないにも関わらず、さまざまな腸症状を引き起こします」
医者「元々胃腸が悪い方やストレスを多く抱えた人などが発症する傾向がありまして」
医者「明確な治療法は見つかっておりません」
国王「症状は下痢だけで済むのか?」
医者「おおまかにいくつかの型があります。が、治療法がないように全てが解明されている訳ではありませんから」
医者「今現状から察するに下痢型だとは思います。しかし症状が悪化していくと、少しの我慢も難しくなってしまいます」
勇者「おいおい……垂れ流しかよ」
魔法「どうにかならないのですか?!」
医者「ここではどうにも……」
狩人「そんな……」
僧侶「勇者様……」
国王「……」
国王「命に関わる事は?」
医者「下痢型の場合、水分補給を怠る事がなければ」
国王「問題ないな。明日より出発せよ」
魔法「ええーー?!」
勇者「ですよねー」
狩人「ゆ、勇者様! いいんですか?」
勇者「しゃーないよ。正直な話、行きたくねーけども、ここで行かないなら行かないで」
勇者「逃げ出した事を悔やんで快方に向かったりしねーだろうし」
翌日
勇者「うっしゃ、行くぜ」
僧侶「本当によろしいのですか?」
勇者「まーなんだ。様々な国に寄るんだし、どっか治療法が見つかっている所もあるかもだろ」
魔法「前向きねぇ」
勇者「正直そう思わないとやってらんねぇ」
狩人「あの、辛くなったら何時でも言って下さいね! 無理をしたりしなくていいんですからね!」
勇者「おう、てかあんま長く我慢できるもんでもないからな。遠慮なく茂みに行かせて貰うさ」
魔法「意味違ってるわよ」
勇者「ふっ! はっ!」ヒュヒュン
勇者「……」ッチン
魔物A「」バタ
魔物B「」ドザ
魔法「すっご……」
狩人「ぼ、僕達必要なのかな」
僧侶「本当ですね……」
勇者「今はまだいいがそのうち俺じゃ対処できないのも来るだろうからな」
勇者「さー次いくz」ギュロロロロ
勇者「おっふぅ……きたぁ」イソイソガザガザ
魔法「早速始まったわね……」
僧侶「あ……でもここだと」
勇者「ふ、ん!」ブリョリョリョリョブピ ブピピパパパパパ
僧侶「ぶふぅっ!」
狩人「ゆ、勇者様……」
魔法「ひははははは! あーっはははははは! ひぃーーー!」ゲラゲラゲラゲラ
勇者「ふう……」
魔法「」ビクンビクン
僧侶「……」
狩人「……」
僧侶(ど、どうしましょう……)
狩人(凄い気まずいよ……)
魔法「っひ、ひぃ……ふぅ……な、何よアレ、パパパって、ひひ」プルプル
勇者「なーんかガスも溜まり易いんだよなぁ……申告しておいた方が良かったのかなぁ」
魔法「ちが、音……くひひひ」ビクンビクン
勇者「ツボ入りすぎだろ……結構恥ずかしいんだからな」
勇者「しかし、これからこんなんが続くのか……お前らほんとゴメン」
僧侶「い、いえ……勇者様に比べたら」
狩人「……そうですよ、僕達が辛い訳じゃないんですから」
勇者「いや、俺だったら嫌だね。可愛い子でもスカトロ趣味ねーもん」
勇者「だからお前らも嫌気がさしたら言えよな」
魔法「だ、大丈夫よ……見てる分には……おも、面白」プルプルプル
勇者「お前はいい加減殴っていいか?」
勇者「ふう……町についたか。三日ぶりのベッドだな」
魔法「良かったわね、プライバシーは守られるわよ」
狩人「今日はどうするんです?」
勇者「宿とって休んでてくれ」
僧侶「勇者様は?」
勇者「期待できないがこの町の医者に」
魔法「そう。こっちは適当に買出しもしておくわね」
宿屋
勇者「あー……なんか何時も以上に疲れた」ボフッ
狩人「勇者様……」
勇者「そうだ、お前さ。その様付けと敬語やめてくんねーか?」
狩人「え? で、でも」
勇者「僧侶はまあ……職業柄仕方が無いだろうけど、お前は違うだろ」
勇者「俺もお前の事、呼び捨てタメ口なんだし、お前ももっと気楽にしてくれよ」
狩人「……」
勇者「あと今だと腫れ物扱いされてる被害妄想が進んじゃうから」
狩人「っぷふ、うん、分ったよ勇者」
勇者「俺はそろそろ寝るけど狩人は?」
狩人「僕ももう寝ようかな。でも意外だな、勇者って結構夜更かししているイメージだよ」
勇者「元々はな。あーあれだ、そういう不摂生も一つの原因かなって思ってよ」
狩人「あーそっか……それじゃゆっくり休まないとだね」
勇者「おう。じゃあお休み」
狩人「うん、お休み」
魔法「朝食も済ましたし、そろそろ出かける?」
勇者「あー俺トイレ」
魔法「あら普通、珍しいわね」
勇者「んー……まあな」
勇者(なーんかケツ汗かいていて気持ちわりぃなぁ)ゴシゴシ
勇者(げ、ちっと茶色い。拭き残しがあったか?)
勇者「……」ザッザッ
僧侶(なんだか、勇者様ずっと喋らないですね……)
狩人(体調悪いのかな……)
魔法(さっきから様子が変ね)
勇者(またケツが……)ジュン
勇者(これって汗じゃないんじゃないか……)ヌッジャヌッジャ
魔法「勇者……症状が悪化したの?」
勇者「うーん、いやちょっと考えさせてくれ」
勇者(汗じゃ無けりゃなんだ? 血液な訳じゃないし)
勇者(そういえば下痢ってすっげぇ水っぽいよな……あ)
勇者「腸粘液が漏れてんのか!」
僧侶「超粘液……?」
狩人「凄そう……」
魔法「腸粘液が漏れるってどういう事?」
勇者「なんか汗じゃないもんがケツをじっとりと……」
魔法「そういう描写は要らないから」
魔法「それにしても腸粘液って……汗の勘違いじゃないの」
勇者「いや、凄いぐっちょぐちょなんだよ。汗じゃないんだよ」
僧侶「勇者様……」ホロリ
狩人「大丈夫……?」
勇者「とりあえず紙をケツにぶっこんでおいた方が精神的に楽かな」
魔法「……それは肛門に捻じ込むという意味?」
勇者「そりゃあな」
僧侶「ちょ……なんで聞き直すんですか」カァ
魔法「括約筋が傷つくと、紙を捻じ込む分の拡張が戻らなくなる可能性があるわよ」
勇者「……」サー
狩人「ゆ、勇者大丈夫? 顔が真っ青だよ?」
勇者「それってさぁ悪化というかもう根本的にだだ漏れじゃね……?」
僧侶「あ……」
魔法「傷つけば、ね。しばらく放置していれば戻るわよ」
勇者「やべぇ……なんだこの八方塞」
魔法(あ、言わない方が良かった気がする……勇者の精神的に)
数日後
勇者「……」ズゥン
狩人「だ、大丈夫? 僕達は気にしていないからね?」
魔法(うーん、一時間に一回は拭かないと耐えられないとは……)
魔法(そういうの平気そうだけども、それ以上に不快感があると見るべきなのかしら)
勇者「道具屋行って来る……」
僧侶「わ、私達がやっておきますよ!」
勇者「ボクサーパンツ買って来る……」
魔法「え? なんで?」
勇者「……トランクスじゃ紙が敷けない」
勇者「……」パァァァ
狩人「勇者、元気になってよかったぁ」
魔法「気分はどう?」
勇者「尻がぐちょぐちょにならないってこんなに素晴らしい事なんだな!」
僧侶「笑顔が……勇者様の笑顔を見るのが辛い……」
勇者「この気持ち、お偉方に伝えたいっ。戦争無くなる、いやほんとマジで」
狩人「え? なんで?」
魔法「他と争う事がどうでもよくなるくらい苛まされて、開放される喜びが凄いって事かしら」
勇者「ああ……世界はこんなにも美しかったのか!」ギュロロロロロ
ジャーーー
勇者「ふう……」スッキリ
魔法「でも紙を敷いただけじゃ結局はぐじょぐじょにならないのかしら」
勇者「正確には尻に挟むようにしてパンツで圧迫してずれない様にしている」キュッ
魔法「何だろう……涙が出そうだわ」
勇者「いやしかしこの幸福感はなんとも言えないな」
狩人「下痢よりいいの……?」
勇者「今の所、下痢はそこまで緊急を要していないからな」
勇者「粘液は……それこそ寝ようと思ったら漏れ出す時があるからな」
僧侶「ああ……昨晩、野営でもじもじしていたのは……」
宿屋
勇者「あー……食った食った」
魔法「さて、あたし達は部屋に戻っているわね」
僧侶「勇者様、狩人さん、お休みなさい」
狩人「うん、魔法使いさん僧侶さんお休みなさい」
勇者「さーて、俺達も休む……あ、しまった。いい加減剣の手入れをしないと」
狩人「一番、使っているもんね」
勇者「ちょっと用具買って来るわ。矢とか補填するか?」
狩人「ううん、僕は大丈夫だよー」
勇者「あいよ、ちょっくら行って来る」
狩人「いってらっしゃーい」
勇者「……やっぱ国内の医者は期待できない、よなぁ」ハァ
勇者「とっとと違う国までいきてー」ギュルル ギュリ ギュリ
勇者「ひっ、あ!」ギュリ ギュリ
勇者「あ、ぐぐ、が、いっ、て……」ヨロヨロヨロ
勇者「トイレ、もたねぇ……ええい」ガザザザ
勇者「うっは……あっ……ぐぅ!」ギュリ
勇者「はぁっ! くっそ……で、ろ……」ブルブルブル
勇者「……ただいま」
狩人「おかえ……勇者?! どうしたの凄い汗だよ!」
勇者「ちょっと酷い腹痛がな……疲れた。寝る」
狩人「う、うん……無理、しないでね」
勇者「ああ……心配かけて、ごめん」
勇者「いよっしゃぁぁ! 行くぞぉ!」
魔法「次はちょっと山があるわね」
僧侶「山越えですか……大変そうですね」
狩人「……」ソワソワ
勇者「その分食料は買ってきてあるし、早いとこ抜けちまった方がいいな」
魔法「……どうしたの?」ヒソ
狩人「昨日、腹痛が酷かったらしくて……勇者、大丈夫かな」
魔法「どうして言わないの?」ギリギリギリ
勇者「いでででで! あんだよ?!」
勇者「腹痛……? あー昨日は酷かったな」
魔法「大丈夫なんでしょうね」
勇者「さあ……てかこれってまさか順調に悪化中なのか?」
僧侶「どうなんでしょう……」
狩人「僕は少し休んでみた方がいいと思うんだけど」
勇者「んー……いや何時もなら朝痛み出すのにそれがない。今日はむしろ快調な気がする」
勇者「って訳でレッツラゴー」
山中
勇者「あ、ぐぐぅ!」ギュリ ギュリ
魔法「ゆ、勇者?!」
勇者「はあっ! ぐぞぉ! 今日は……良いと」ギュリギュリ
僧侶「勇者様?! 勇者様?! ち、治癒魔法! 治癒魔法!」
狩人「また痛みが……?! 勇者……」
勇者「ぐ、おっ……ぢぐじょぉ」ガザガザ
勇者「ぐぅぅ~~~~」ブルブルブル
勇者「っぶはぁ! っはぁ! っはぁ! なんで、出ないん、だ」ギュリギュリ
十分後
勇者「やっと出て落ち着いた……」ゲッソリ
魔法「ほんと大丈夫なの……すっごい息も絶え絶えに……」
勇者「なんて言えばいいのかな……腸を間で捻っていないソーセージだとしよう」
狩人「ある意味、腸そのものだね」
勇者「それを途中で捻れないように全体的にギリギリと捻り上げる」
僧侶「え……?」
勇者「そんな感じの痛みが下腹部全体にかかる」
魔狩僧「……」ゾォッ
勇者「もう何ていうか腹ぶっ刺されているってか」
勇者「やっぱあれだな、本当に腹ん中手突っ込まれているような感覚だ」
魔法「それは早く治って欲しいわね」
勇者「というよりも殺してくれって思う」
狩人「勇者……ごめんね、僕たちじゃ何の助けもできないよ」
僧侶「神よ……お見捨てになったのですか」
勇者「流石にこれはきっついな……」ハァ
下山中
勇者「と思ったらあれ以来無い。よくやった俺の体」
魔法「下痢は相変わらずよねぇ」
勇者「下痢も痛いがあれに比べたらな」
僧侶「とりあえず町に着いたら何日か休みませんか?」
狩人「僕、薬草集めながら来たから調合するよ」
勇者「ありがとな、狩人」
狩人「うん、早く元気な勇者になってほしいしね」
勇者「ふあぁ……」ヒュンスザン
勇者「ここらの魔物は弱いなぁ」
魔法「でもそろそろ魔法に長けた魔物が出る地域よ」
勇者「魔法系きたらほんと真面目に三人に任せるから」
狩人「うん! 任せて!」
魔法「ま、やっとあたし達の出番だし」
僧侶「勇者様はお休みになられて下さいね」
勇者「おう」
隣の国 城下町
僧侶「わああ……」
魔法「僧侶は他の国に来たの初めて?」
僧侶「はい、凄いですね! あの大きな建物はなんなのでしょうか」
勇者「ありゃあコロッセウムだ。俺も常連だな」
狩人「あ、剣術大会の?」
勇者「あそこの会場は慣れたもんだぜ。会場案内の受付だってやれるぜ」
勇者「とりあえず違う国だし医者に見てもらいにいってくる」
魔法「広場の露店でも見ているわ」
狩人「いってらっしゃーい」
勇者「おう」
僧侶「……勇者様、どうすれば助けになれるのでしょうか」
魔法「無理でしょ」
狩人「難しいよね……薬草が少しでも効くといいな」
医者「ではお腹の音を見ますね」
勇者「うっす」サッ
医者「……ふむ」ゴロゴロゴロ
医者「これで検査結果に異常が無いとなるとやはり過敏性腸症候群でしょうな」
勇者「俺としてはその先の」ギュロロロロ
勇者「うはぁ!」
医者「トイレは出て左、突き当たり右」
勇者「うっひょー」ヨタヨタ
勇者「……ただいま」
魔法「どうだった?」
勇者「やっぱりIBSね、だって」
狩人「IBS?」
勇者「過敏性腸症候群の事」
僧侶「お薬とかは……」
勇者「整腸剤だけだった。というか今の所、この国の医師会ではこれぐらいしか対処が考えられていないとか」
魔法「でも整腸剤なら前から飲んでいるわよね」
勇者「とっとと次の国に行きたい」
騎士「む、お前は! そうか、そういえば勇者になったのだな」
勇者「あ、騎士か。ご無沙汰だな」
魔法「流石不動のチャンピオンね。この国の騎士に顔が利くのね」
勇者「そらな。調子はどうだ」
騎士「ぼちぼちだよ、そっちも変わりがないようでなによりだ」
僧侶「……」
狩人「……」
勇者「ふ、男子三日合わざれば刮目して見よ」ゴロゴロゴロ
騎士「なんだ今の音」
騎士「そうか……大変だな」
勇者「なに、今さっき下った所だ。多分最低でも30分はもつ」
魔法「最短30分なの?!」
騎士「あの輝かしい剣豪であったお前が……っうう」
勇者「いや、剣技に磨きはかかった」
狩人「僕達のところにも勇者の名前は轟く位だしね」
勇者「いや腸のカウントダウンが始まると素早さが40%ぐらい上がる気がする」
僧侶「漏らさぬ為、ですか……」
騎士「話だと二つ先の国でもう少しまともな治療があるらしい」
騎士「道中に行くのだろうからそこまでの辛抱だ」
魔法「完治できるものなの?」
騎士「いや、ここらの国よりかは研究が進んでいるだけだ。だが回復した患者数はダントツらしいな」
狩人「でも治療法が少しは確立されているのに、他の国には伝えられてこないものなのかな?」
僧侶「医師会は派閥や対立がありますからね」
勇者「面倒くせぇな。魔王倒した恩賞にそこら辺取っ払うか」
魔法「凄い善行ね。でも貴方的には死活問題だものね」
勇者「さて、そろそろ宿に向かうか」
騎士「魔物との戦いが無くなったらまた決勝の場で相見えよう」
勇者「おうよ」
僧侶「ライバル、とかでしょうか?」
魔法「まあ、そこまで実力が近いわけじゃないでしょうけどね」
狩人「そうなの?」
魔法「あれと拮抗する実力者なんて聞いたことがないもの」
翌日
勇者「今日は一日休みだ。各自自由行動で良し」
狩人「皆はどうするの?」
魔法「私は魔道書でも読んでいようかしら」
僧侶「私はこちらの教会に行きます」
狩人「僕は弓の手入れと調合でもしていようかな。勇者はどうするの?」
勇者「剣の稽古でもしようかと思っている」
魔物群れ「」
勇者「暇だなぁ」
更に翌日
勇者「と言う訳で出発だ」
魔法「因みに貴方何をしていたの?」
勇者「魔物と戦っていたけど弱くて弱くて……あ、騎士と試合していればよかったのか」
狩人「勇者、どう? 薬は効いている?」
勇者「おう、お前のお陰で百人力だぜ!」ギュルル
勇者「IBSには勝てなかったよ……」ヨロヨロ
僧侶「勇者様……」
魔法「……ふう。まあいいわ。しばらく勇者は休憩だろうし」
狩人「え?」
魔法「ここから先は魔法を使う魔物が多らしいのよ」
僧侶「いよいよ私達の出番ですね」ゴクリ
魔法「ま、狩人もいるし、苦戦する事もないでしょ。あまり気を張らないように」
勇者「ふう……スッキリしたぜ」ジャー
狩人「僕、頑張って勇者を守るからね!」
勇者「え? ああ……え? 何の話だ、前衛は俺だろ」
魔法型魔物「」
魔法「いえーい」パンッ
狩人「イエーイ」パンッ
勇者「終わったかー……」ソッ
僧侶「はい、残党も狩人さんの追撃で撃破しました」
勇者「やれやれ……連中さえいなけりゃ俺の時代なんだがな」
魔法「その為のあたし達でしょ」
勇者「ああ、期待しているよ」
勇者「ここから先はしばらく町がない。各自周囲の警戒を怠るな」
魔法「消耗を最小限にしないとだものね」
僧侶「大丈夫でしょうか……」
狩人「僕達なきっといけるはずだよ!」
勇者「まー雑魚戦ならな」
魔法「……何が言いたいの?」
勇者「俺が敵ならここで精鋭ぶつけてくるね。長旅の終わり辺りでな」
僧侶「それにしても広い森ですね」
勇者「ここらじゃ一番広大な森だ。ここを抜けて平野を2,3日行くと町に着く」
魔法「狩人のオンステージね」
狩人「うん、頑張るね!」
勇者「とは言え、こういうちょっとした起伏が多いから体力をやたらと使うんだよな」
僧侶「何なんですか……この段差、1mくらいありますよ」
狩人「ここは昔隆起が起こったらしいんだ」
勇者「流石に森の事情に詳しいな」
狩人「えへへ」
勇者「俺が先に登って、手伝うよっと」ビリッ
魔法「……」
僧侶「今、何の音ですか」
狩人「勇者、服とか大丈夫?」
勇者「……」ゴソゴソ
勇者「……」ジュンッ
勇者「うあー……うあー……パンツがー紙が外れた」ヌジュッ
勇者「……」スタスタモジスタ
魔法「不憫ね……変えのパンツも逝ったなんて」
勇者「まさか三着全て逝くなんて……」
僧侶「普段から激しい動きをするからでしょうか……」
狩人「次の町までの辛抱だね」
勇者「やばい……紙が少ない。少し我慢せねば」モジモジ
数日後
勇者「よし、出発するぞ」
魔法「ようやく森の外ね」
僧侶「燦々と降り注ぐ陽射しも久しぶりですね」
狩人「……」ピタ
勇者「どうかしたか?」
狩人「遠くに人がいる……」
勇者「人? こんな所に……あ」
魔法「まさか……」
魔族「貴様が勇者か」
勇者「随分な鎧姿だな。魔王の騎士か? 待ち伏せとは感心しないな」
魔騎士「別に伏兵のつもりはない。貴様にこの場で決闘を申し渡す」
僧侶「でも消耗した所で決闘というのも……」
勇者「いいぜ、お前には良いハンデになるんじゃねーの」
魔騎士「……」ピク
魔騎士「その慢心、切り捨ててやろう」
魔騎士「たああああ!」ガギィィン
勇者「っと、そら!」ヒュン
魔騎士「ぐっ!」ガギィィィン
僧侶「す、凄い!」
魔法「今まで一太刀で切り捨てていたのに、何太刀も受け止められているだなんて」
狩人「勇者、頑張って!」
勇者「ふっ!」ギィン
魔騎士「でやああ!」ガギィィン
勇者「……ちっ」バッ
魔騎士「く……!」ザッ
魔騎士(強い……なんて奴だ!)
勇者(久々に骨がある……闘技場を思い出すぜ)
魔騎士(これほどの者が人間にいるだと……)
勇者(やはり精鋭クラスともなるとこれぐらい強いのか)
魔騎士(もっと早めに行動すべきであったか!)
勇者(もっと早くに戦いたいものだったが……)
魔騎士(危険だ……これほどの者が魔王様に肉薄する前に)
魔騎士(今ここで、玉砕してでも止めなくては!)キッ
勇者(危険だ……現状で戦闘が長期化するのは望ましくない)
勇者(ああいかん、腸粘液が漏れてきた!)ジュン
魔騎士「おのれぇ……勇者めぇ……」ガク
魔法「途中凄い打ち合いしていたのにあっさり終わった?!」
勇者「小手調べしていただけだ。ううーケツが気持ち悪い」
僧侶「ほ、本気になられたのはそれが理由ですか?」
狩人「何はともあれ、勇者が勝ってほっとしているよ」
勇者「ま、これに慢心せずに進むか」ゴロゴロ ゴポ
勇者「ああ、拭ける安堵感から括約筋が緩む」ブピブプゥゥゥ
魔法「相変わらずガスも溜まっているのね……」
勇者「理解のある仲間で助かるぜ」
勇者「ふ、ん~~~~~」ブリョリョリョリョボチャボチャボチャ
勇者「ふう……」ブピブブブブゥゥ
勇者(なんだろうなこの快感)ビリ
勇者(こう腸の中をところてん押し出すやつ、天突きだっけか?)フキフキ
勇者(あれで押し出されていくようなスッキリ感)カチャカチャ
勇者「ただいま」
魔法「ほんと、ある意味で緑化に貢献しているわね」
狩人「でも堆肥ってちゃんと発酵させないと毒なんだよね」
僧侶「らしいですね。教会にあった歴史に関する書物にも記載されていましたよ」
勇者「人の下痢でなんの話を……」
次の国の城下町
勇者「で、色々とすっ飛ばした訳だ」
魔法「だって下痢するか放屁するか腸粘液漏れる話しかないじゃない」
狩人「魔物との戦いもそうは苦戦しないしね」
僧侶「何と言いますか、戦力が安定していると私の出番がないですね」
勇者「最終決戦じゃあ回復なしで済む話じゃないだろうしな」
魔法「それでここは騎士が多い国なんだっけ?」
勇者「そうそう、だもんだからそういう階級社会も多くて、その手のラヴロマンスがそこらに転がっていたりする」
勇者「あと国王が怖い。めっちゃ怖い。会った事無いけど熊みたいな人らしい」
狩人「そ、そうなんだ……」
勇者「通称、暴君」
僧侶「ええ?!」
魔法「でもここの国王は支持率が高いんじゃなかったのかしら?」
勇者「正直なんで暴君とまで言われているのか分らないんだけどな」
狩人「うーん、何だろうね? 支持率高いのと暴君って真逆だよね」
勇者「ま、謁見あるしそれも分るだろ」
町娘(いけないわ、騎士君は今や部隊長を務める人、幼馴染とは言え私達は結ばれない身なのよ……)
町娘(だから私は……身を引かないと)
騎士「行くな! 階級なんて関係無い! 俺は君を守ると決めた!!」
町娘「騎士君……」キュン
側近「陛下は無礼には非常に五月蝿い方です。国内の者なら処刑さえ。勇者である貴方の場合、投獄すらも……」
国王「……」ゴゴゴゴゴゴ
魔法(え、謁見なのに凄い大剣携えてる……)ブル
勇者(暴君……)ジュン
勇者「いやぁ手ぇ汗握る謁見だったな」モジ
魔法「尻濡れるの間違いじゃないの?」
狩人「いやぁ緊張しましたね」
僧侶「でも、言われるほど怖い方じゃなかったですね」
勇者「とりあえず次の国境はこれでパスできるな」
魔法「出発は明日?」
勇者「明後日かな。ここは結構色んな武具や道具を扱っているからな」
勇者「掘り出し物でも何でも探して強化しておきたい」
狩人「うわぁ……凄い!」
勇者「この辺りは武器類が集まるからな」
魔法「ちゃんと杖まであるのね……」
勇者「前衛だろうが後衛だろうがしっかり揃っているからな」
僧侶「明日は防具ですか?」
勇者「そんな感じでいいだろ」
勇者「一時間後にここに集合、各自自由に探すって事で」
勇者「つっても俺はあんま探すものないんだよな」
勇者「あ、手入れ道具を買っておくか……ここのは良いのが揃っているんだよなぁ」
魔法「あらこの杖いいわね……」
僧侶「凄い数ですね!」
魔法「これならあたし達の火力も上がるわね」
狩人「凄い凄い! ○○年式のクロスボウ! 組み立て技術が逸脱でまともに製造されていないという……!」
狩人「うわぁぁ……こんな骨董品が見られだなんて……」
勇者「……」ボケー
魔法「あら。早めに来たのに先を越されるだなんて」
僧侶「勇者様は買い換えたのですか?」
勇者「いや、この剣はミスリル銀でできてっから、早々買い換えることは無いな」
勇者「手入れ用品とサブウェポン的でバスタードソードを買ったぐらいだ」
魔法「そういえば貴方、盾は使わないのね」
勇者「これでもな、一応由緒ある剣術なんだよ。剣一本をもって制するってな」
僧侶「ちゃんとした流派だったのですね……」
勇者「ま、師匠であった人が亡くなった所為で、正統な後継者って俺一人なんだけどな」
魔法「え? それって責任重大じゃない。貴方、誰にかに教える気はないの?」
勇者「もうちょい金貯めて、ある程度倹約生活で生きていけるようになったらと考えていた」
魔法「ああ……剣術指南で小銭稼ぎね」
狩人「ごめーん! 皆、待った?!」パタパタ
僧侶「いえ、私達も今来た所ですわ」
狩人「良かったぁ」
勇者「んじゃ宿に行くか」
狩人「ここの料理美味しい!」
僧侶「濃すぎず薄すぎず……いい具合ですね」
魔法「ここは栄えているものね」
勇者「ここから先、しばらくは大きな町は無いからな。ここで食えるだけ食っておかないとだ」
狩人「いざとなったら僕が獲ってくるよ!」
魔法「食うには困らなさそうね」
勇者「あ、これおかわり」
店員「はい、畏まりましたっ」
勇者「あー食った食った」
魔法「明日は防具見ると言っても、一日どうすんの?」
勇者「のんびり一休みでいいだろ」
狩人「お休み……久しぶりだなぁ、何しようかな」
僧侶「それでも早く寝ないとですね」
勇者「俺、トイレ行ってから戻るわ」スタスタ
魔法「あたし達は先に戻りましょ」
翌日
勇者「午前中に防具見て、午後は自由行動で」
狩人「これ、皮なのに凄い頑丈!」グイグイ
魔法「これ……鉄のスケイルメイルなのになんて軽さなの……」
僧侶「私達でも着れそうですね」
勇者「俺の鎧はもうボロボロだしなぁ……いい加減買い換えるか」
狩人「そういえば勇者の鎧って僕達の国ではあまり見かけないよね」
勇者「あー。師匠から貰った。流派の正装みたいなもんらしいが、特別凄い鎧じゃないな」
魔法「へ~……それ、最後の一つとかじゃないのよね」
勇者「他にあるわけ無いだろ」
僧侶「凄い大切なものじゃないですか!」
勇者「設計図は貰っているからな。流派再興を考えているなら使えばいい」
魔法「それいいのかしら……」
狩人「でもそうなると、勇者ってそのお師匠様のところから離れてずっと、その鎧だったて事なのかな?」
僧侶「結構長いはずですよね……」
勇者「彼是五年か……ま、初めは結構攻撃を食らっていたが今となってはな」
魔法「流石ね……」
勇者「お前らここで買うのか?」
魔法「そうねぇ……資金的にもここが無難かしら」
勇者「じゃあお前らが買う時にこれ買っといてくれ」ガチャン
僧侶「何処かに行かれるのですか?」
勇者「ちょっとトイレに。こっから離れた所にあるんだよなぁ」スタスタ
魔法「……勇者、体調がいいの?」
狩人「そういえば最近唸っていないかな」
僧侶「もしかして回復されたのでしょうか!」
魔法「だといいけどもねぇ」
翌日
勇者「いよっしゃぁ出発だ!」
魔法「調子良さそうね」
勇者「ドロドロ出ていたのが嘘のように出なくなったからな! ほんとでねぇ!」
僧侶「え……便秘ですか?」
狩人「昨日の夜、トイレで凄い唸っていたね……」
勇者「いやあ出ないのなんの。まあ、下るのに比べ」ギュロロロ
魔法「あ」
勇者「うっはぁキタキタ。これはきっと宿便もでるクラスと見た」スタスタ
勇者「ふはははは! 俺の腸の復活式だぜぇ! ふん、はっ!」
勇者「あ、あれ?」ギュルルル
魔法「え……明らかに下っている音がしているのに」
勇者「ふんっ~~~~~っはぁ! なんででな、あ、ぐぐぐぐ」ギュロロロロ
僧侶「ゆ、勇者様頑張って!」
狩人「勇者頑張れ!」
魔法「貴方なら出来るわ!」
勇者「お前らなにその一体感、うはっ」ギュリリリ
勇者「ぐおおおおお!!」ミチミチ ポト
勇者「ふう……ふう……ふおおおおおおおお!!」ミチミチミチ ポト
魔法「凄い咆哮ね」
僧侶「治癒魔法をかけた方がいいのでしょうか……」
勇者「ふう、ふう……うっ!」ブリョリョリョ
勇者「崩したっ! 遂に決壊だ!」リョリョリョビャビャビャビチャチャチャチャ
僧侶「え?! え?!」
狩人「なんか音が凄い事になっているよ!?」
勇者「ふう……便秘かと思ったら軟便と下痢便だったぜ」
魔法「貴方凄いわよ……お金とれるわよ」
勇者「いや、意図的に出来たらそら金も取れるだろうがよ、下っているのに出ないってのも地獄だぞ」
僧侶「痛みが続くわけですものね」
狩人「勇者、お腹大丈夫?」
勇者「おう。バッチリだが、バッチリ下痢が治っていない訳でちょっと悲しいぜ」
魔法「雷撃魔法!」
狩人「……」ギリギリ ビュッ
僧侶「物理障壁魔法!」
勇者「たああ!」ザン
魔法「ふう……」
狩人「そういえばあれ以来、強そうなの出てこないね」
僧侶「ええ……良い事ですわ」
勇者「ふおおお」ブリャリャリャリャ
勇者「うおおお、なんじゃこりゃあああ! 泥、泥だ! 泥便だ!」
魔法「……」
勇者「いやあ……泥みたいなウンコにはびっくりだぜ」
狩人「いまいちよくわからないんだけどどういう事?」
勇者「いや、本当に泥みたいだった。茶色い泥。ピッカピカの茶色い泥団子ができそうなぐらい泥」
魔法「もうその話は止めて」
僧侶「あ、あはは……」
勇者「ま、もうすぐ次の国だ」
狩人「……? あ、治療法!」
魔法「これで治ってくれるといいのだけどもね」
次の国
医者「はいじゃあこれ、ポリフル飲んでね」
勇者「え? そんな軽く? 本当にこれで治るのか?」
医者「君は症状軽いからそれで十分だろうね」
勇者「これで軽いのか……」
医者「酷い人はもう一歩も外に出られないんだよ。精神的にもね」
勇者「……」ゾォ
医者「君は今が凄い苦痛だろうけど、まだ幸運な方だよ。本当にね」
一週間後
勇者「……」
魔法「で、どうなのよ?」
勇者「下痢が減った……まだ粘液は漏れてくるが頻度が激減した」
狩人「じゃあ完治ももうすぐなんだね!」
僧侶「良かったですわ……」
勇者「あまりにも呆気なく回復しているから逆に怖いぐらいだ」
勇者「だがこれで、俺も本気を出せるってもんだ」
魔法「ええ。え? 本気?」
僧侶「い、今までのでは……?」
狩人「本気じゃなかったんだ……」
敵精鋭「」
勇者「おっしゃ、次だ次」
魔僧狩「うわぁ……」
魔法「爆撃魔法! 雷撃魔法!」
僧侶「耐魔障壁!」
狩人「勇者は隠れていて!」ビュンッ
ドドン ドォォン
勇者「物理特化だとほんとやる事ないなぁ」チリチリ
勇者「ぎゃああああ!」ドォォォン
魔法「あ、流れ弾いった」
狩人「勇者ー!」
王城内
勇者「……」シャー ッチン
魔王軍兵士「」
魔法「……」シュゥゥ
宮廷魔術士「」
狩人「やっぱり僕も戦うべきだったんじゃあ」
僧侶「私達は道具で魔力を回復できますから」
勇者「矢ばっかりはな……さて」
魔法「雑兵もこれぐらいのようね」
魔王「人間にしてはよくやった方だ、が」
魔王「ここで朽ち果てるといい!」ゴァ
魔法「先手必勝!! 雷撃魔法!!」バヂヂヂ
魔王「ふんっ」ブシュゥゥ
勇者「なに……」
僧侶「魔法が消えた……」
狩人「そんな、なんで!?」
魔法「火炎魔法!」ゴァァァ
魔王「ふっ、はははは!」ジュァァァ
勇者「魔法を無力化している……いやそういう装備なのか」
魔王「我は魔法に対する耐性が異様に低いが故、こうして実を守らねばならん」
魔王「しかし、我が剣は一度も敗北を知らん! 我が剣の錆となるがいい!!」
魔法「うん……あれ?」
僧侶「これって」
狩人「もしかして……」
魔王「」
勇者「ふんすっ」
勇者「まさか魔王が剣対剣に持ち込んでくれるとは願ったり敵ったりだな」
狩人「僕が弓矢で支援する間もなかったね」
僧侶「あれだけ激しく動いていたら難しいでしょうが」
魔法「……魔王との一騎打ち、三分で決着だなんて。勇者、最強の剣士の称号を手に入れたんじゃないの?」
勇者「そら俺だって剣なら負ける気はしないからな」
狩人「なんだか凄いあっさり終わっちゃったけど……」
勇者「とにかく帰るか……俺はとっととただの剣士に戻りてーよ」
魔法(どう考えてもただにはなれなさそうだけど大丈夫かしら、腸が)
国王「よくぞやった勇者よ! そなたならこの大役、必ず果たすと信じておった」
勇者「これも単に仲間達のお陰です。ついては早く勇者の称号を外せ」
国王「お主の様な若者がいて感激しておる! ついてはお前に次期国王を任命する!」
勇者「は?」
魔法「あ……」
僧侶「ええ?!」
狩人「うわぁ、勇者が王様になるの?! すごい!」
国王「国王命令だから」
勇者「……」ギュル ギュロロロロ
勇者「」ブリュリュリュ ブビビビチャビチャビチャ
魔法(うわ、再発超悪化)
勇者「神託で勇者に使命されたストレスで体調崩した」 終
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