魔王「ここはどこだ?」 (286)
魔王「勇者からの最後の一撃から逃げるため」
魔王「空間転移魔法で逃げたはいいのだが…」
魔王「場所指定をしなかったために…」
魔王「こんな異世界に飛ばされるとはな…」
魔王「急いでいたからな仕方ない」
魔王「それにしても…」キョロキョロ
ブロロロォォォォ ザワザワ… ピッポーピッポー♪
魔王「ここは見たこともない世界だ…」
魔王「とりあえずこの世界を探索してみるか」
魔王「っと、ローブは脱いでおこう」ゴソゴソ
魔王「周りを見るからに人間しかいないようだしな」
魔王「自身が人間と見た目は変わらないのが救いか」テクテク
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………
魔王「ざっと見たところ…」
魔王「わたしがいた世界の人間界と基本変わっていないようだ」
魔王「食料、紙幣に硬貨、衣服、生活用品…」
魔王「形は違えど、ほぼ同じだな」
魔王「よく分からない変わった物体がいたるところにあるが…」
魔王「危険ではなさそうだがどれも用途が分からぬ…」
魔王「建物が石材?なのか…よく分からぬ」
魔王「乗り物類も鉱石を使って出来ているようだな」
魔王「あんな硬い乗り物をどう走らせているのだろうか…」
魔王「しかし便利そうではあるな、どういう造りか調べてみたいものだ」
魔王「見れば見るほど不思議な所だ…うーむ…」
魔王「ローブ脱いだせいか少し肌寒いな…」ブルル
魔王「もっと他へ行ってみるか」テクテク
ソコノヒトヨッテイカナイ? イマナラヤスクシトクヨォ カワイイコイッパイダヨォ
魔王「さっきまでの所と空気が違うなここは…」テクテク
魔王「ここはどういう場所なのだろうか…」
男「お?」
魔王「…」テクテク
男1「そこの金髪のおねぇちゃん!!」ポン
魔王「?」クルッ
男2「そんな変わった服着てこんな所で何してるんだい?」
魔王「はじめて来た場所なので少々迷ってしまってな…」
魔王(やはり周りから見るとわたしは普通ではないのか)
男3「なら俺達が案内しようかぁ?」ニヤニヤ
魔王「いいのか?」
男1「あぁかまわねぇよ」ニヤニヤ
魔王「それはありがたい」
男2「じゃあこっちだぜ」グイッ
魔王「あ」ブンッ
ズダーン!!
男2「ぐ…は…」
魔王「すまない、癖でつい反応してしまった」
男1「もしかして何か武道習ってたりした…?」
魔王「別にそういうわけではないが…」
男3「まぁそんなのいいじゃん、行こうぜ」
男2「いってぇ…」
男1「許してやれよ…これから…な?」
男2「そうだな…へへっ」
魔王「?」
男3「ここでいいか」
『HOTEL クラウン』
魔王(なんと読むのだろうか…)
魔王(なかなか大型の建物だな)
魔王(チカチカしていて目立つなここは)
魔王(わたしのいた世界のカジノというところに似ている気がする)
魔王(カジノと同じ遊技場か何かなのだろうか?)
男1「さぁ中に入ろうぜ」
魔王(まずは施設案内なのか?よく分からんな…)
??「…」
魔王「ここは…」
魔王(宿屋…か?)
魔王(何か違う気もするが…)
男1「いい部屋だろう?」
男2「あれぇ?もしかして何するところか分からないのかな?」
男3「まぁついてきちゃったからには…」
男1「逃がさねぇけどなっ」グイ
魔王「!?」ドサッ
魔王「おい…何をする!?」ボヨンボヨン
男2「男口調がまたそそるんですけど」ゴソゴソ
男3「しかも洋物だぜ、洋物」
男1「どんな声で鳴くのかなぁ?」ゴソゴソ
魔王「何が起こるんだ…」
男3「そりゃもちろん…」
??「はーいそこまでー」ガチャリ パンパンッ
男達「!?」
男1「誰だ?カギをかけていたはずなのに…」
??「こちらにとっちゃカギなんて飾りよ、ほっほ」
??「何も知らない無垢なお嬢さんをその薄汚い体で汚そうなどと…」
??「この変態姐さんが許さないよっ!!」スッ ポワァァァ
男3「なんだて…め…」ゴトリ
男2「え…なに…」ゴトリ
魔王(あれは…睡眠魔法か?)
男1「おい、なんだ??何が起こったんだ!?」
??「はい、動くなー」ピッ
男1「お…動けねぇ…」グググ
??「まずはお前さんからだぁ…ひっひっひ…」ズイッ
??「あんたは部屋から出ててくんない?」クルッ
魔王「え、あぁ…」トコトコ
パタン
男1『くそ…なんで動けねぇんだ…』
??『あんたらみたいな悪い子はちょっとばかしおしおきだっ』♂ブインブインブイン
男1『え…何その生々しく動いてる機械…』
??『説明はいらない、おとなしく挿入されとけばいいんだっ』
男1『ちょ…やめ…そんなの入らな…』
ズブッ
アッーーーーーーーーー!!
魔王「なにやら悲鳴が聞こえた…」
魔王(その後も立て続けに奇悲鳴が聞こえてきた)
魔王(男3人、何かをされたようだ)
魔王(結局最後まで奴等が部屋から出てくることはなかった)
??「おまたせぇ」ガチャ
??「いやぁ、久しぶりに薄汚い男共ヒィヒィイワせたわぁ」テカテカ
魔王「何か分からないが怖い…」
??「だめだよ、魔王」
??「あんな悪い奴らについて行っちゃ」
魔王「悪い奴らだったのか…」
??「こんなにプリチーだから仕方ないだろうけど」
魔王(プリチー?)
??「この近辺には来るべきじゃないよ」
魔王「分かった、気をつけよう」
??「しっかし、なんでこんな所にいたのやら…」
魔王「いや、探索を…ん?」
魔王「貴様…さっきわたしを魔王と言わなかったか?」
??「言ったよ、魔王」
魔王「えっ?」
??「えっ?」
魔王「ここにわたしを知る者はいないはずでは…」
??「知ってはないけど分かるさ」
??「その容姿だけで魔王だってね」
魔王「…何者だ貴様」ギロ
??「そんな怖い顔しないでよ、あんたの敵になるつもりないしさぁ」
魔王「なら貴様はどういう者だというのだ?」
??「時には悪事を許さない変態姐さん!!」バッ!!
??「時にはバリバリ働くフリーターお姉ちゃん!!」ババッ!!
??「その正体は…じゃじゃんっ!!」ジャジャン!!
魔王(早く名乗ってほしいのだが…)
??「優しくて強い賢者さんだっ!!」ドーン!!
魔王「賢者…」
賢者「多分、魔王と似たような世界から来たからかな」
賢者「あんたのその格好、私にとっては違和感ないんだわ」
賢者「今着てる服も違和感ないほどここに慣れちゃったけどね」クルリン
魔王「では、貴様はこの世界でずっと住んでいるのか」
賢者「ずっとではないけど結構長くいるよ」
賢者「少なくとも一年以上はいるかな」
賢者「慣れたら向こうより住み心地いいんだわぁ」
魔王「わたしはできれば元の世界に帰りたい…」
賢者「どうやって来たのさ?」
魔王「空間転移魔法で飛んできたのだ」
賢者「なんだい、逃げてきたとかそういうの?」
魔王「悔しいが…そうだ」
賢者「ふむ」
賢者「とりあえずうちに来るといい」
賢者「ずっと彷徨ってるよりはいいでしょ」
魔王「家があるのか?」
賢者「正確には借りてるんだけどね」
魔王「?」
賢者「帰ってから話詳しく聞くから」トコトコ
賢者「おいでおいで」フリフリ
魔王「すまない」トコトコ
-アパートの一室 賢者の部屋-
賢者「で、勇者から逃れるために適当に逃げ飛んで今に至る…と」ズズー
魔王「そういうことだ」
賢者「空間転移かぁ」コトン
賢者「私にも使えなくはないけど」
魔王「なにっ!?」ガタッ
賢者「でも異世界に飛ぶほどの方法を知らない」
魔王「そうか…」ガックリ
賢者「まぁどうにか方法見つかればいいけどねぇ」
魔王「貴様はどうやってここに?」
賢者「ん?合成魔法かな」
魔王「合成魔法?」
賢者「空間転送魔法をベースに色々混ぜてたらできたんだけど」バチバチ コォォォ
賢者「異空間を飛べたのは初めてだったわ」パキーン
賢者「要するに私も偶然来れたわけ」
魔王「魔法を組み合わせるとは…相当な高等技術のはずだろう」
魔王「なぁ、それでわたしを元の世界に帰してはくれないだろうか?」
賢者「結論から言うと無理」
魔王「なぜだっ!?」
賢者「これ、自分しか転送できないんだわ」
賢者「あとある程度の場所の情報が分かってないとダメ」
賢者「私の場合、ほとんどこの世界を想像だけで来れたわけだから」
賢者「さっき来れたのは偶然だって言ったんだ」
魔王「そ、そうか…」ショボーン
賢者「さっきからまおたんの反応かわいいっ!!」キュンキュン
魔王「まおたんってなんだ?」
賢者「魔王の愛称」
魔王「変な名で呼ぶな」
賢者「魔王といえばこの名前だよーん♪かーわいいっ」
魔王「この腑抜けた顔に怒りを覚えるのは何故だろうか…」
賢者「そういえばまおたん」
魔王「だからその名で呼ぶなと…何だ?」
賢者「魔法使える?」
魔王「当たり前だ、このように…」ポヒュッ
魔王「む?」ポンッ ポンッ
賢者「あちゃーやっぱりかぁ」
魔王「何かおかしい…」ニギニギ
賢者「おそらく、異世界に魔法そのものが適用されてないんだ」
魔王「どういうことだ?」
賢者「まずこの世界には魔法の概念がない」
賢者「イレギュラーなものは入ってくる時に弾かれるか、消滅する」
魔王「でもわたしの場合は完全になくなっていないぞ?」ポンッ ポンッ
賢者「それだけ強大な魔力だったって事かもね」
賢者「ほとんど消滅させられたけど」
賢者「ちょっとだけ残せて世界に入り込めた」
賢者「他に原因があるのは確かだろうけどね」
魔王「そうか…魔法使えないのは不便だな…」ポンッ
賢者「ここでは使えなくてもちゃんと生きていけるさ」
賢者「敵と言える存在はいない」
賢者「まぁ、さっきみたいに悪い事考えてる奴はいるけどね」
賢者「知恵を持つとそういう人間できるから仕方ないかな」
魔王「でも貴様、さっき睡眠魔法とか使ってただろう?」
魔王「あれはどういう事だ?」
賢者「おーさすがに分かっちゃったか」
賢者「あれは来る前にちゃんと適応させてから来たんだよ」
魔王「よく分からぬな…」
賢者「魔法の書き換えが関係してるから簡単に説明できないわぁ」
賢者「面倒だから私だってある程度の魔法しか持って来てないのさ」
魔王「面倒なら詳しくは聞くまい」
賢者「そりゃありがたい」
賢者「あと、ここでは科学が発達している」
魔王「科学?」
賢者「科学は色んな事を可能にできる」
賢者「電力などをエネルギーにして色々動かすことが出来るんだ」
魔王「ほぅ」
賢者「水は蛇口から簡単に出せるし、ガスだってエネルギーになる」
賢者「だから魔法がいらないとも言えるね」
魔王「よく分からないのだが…」
賢者「あっちの世界に水車なかったかい?」
魔王「水の流れで手を加えず動力を作るやつだろう?」
賢者「そうそう、ああいう自然のものをエネルギーに代えるのがここでは発達してると思えばいいよ」
魔王「なるほどな…」
賢者「で、まおたんさえよければしばらくここで住むかい?」
賢者「どうせ行く所もない」
魔王「こんな所に飛ばされて何も分からない」
魔王「それにこの違う世界でわたしの存在は普通の者と同じようだし」
魔王「今、頼れるのはお前だけだ」
魔王「よろしく頼む」ペコリ
賢者「さすが魔王だけあって賢いね」
賢者「おっけーおっけー」
賢者「これからこの世界の事を色々教えてあげるよ」
賢者「まずそこからかな」
魔王「分かった、頑張ろう」グッ
賢者「まおたんのガッツポーズ萌えすぎるだろ」キュンキュン
-夜-
魔王「覚える事が多すぎて頭が痛いな…」
魔王(どうやらこの世界は地球と呼ばれているらしい)
魔王(そして今いる大陸は日本といい…)
魔王(数億年前に地球ができ…)
魔王「うあぁぁぁ頭がぁ…」ブルンブルン
賢者「何でもかんでも覚えようとするからだよ」ジュージュー
魔王「うーむ異世界は大変だな…」
賢者「とりあえず文化とか歴史は生活してる内に覚えるから」ホッ ジュアァァァ
賢者「字を読めるようになったほうがいい」モリモリ
賢者「ついでにその口調も直すか」ドンッ
魔王「わたしの口調…まずいのか?」
賢者「個人的にはマニアックで素敵だけど」カチャカチャ
賢者「普通のしゃべり方できたほうがよさそうよ」パカッ モリモリ
魔王「よく分からぬな…」
賢者「まぁゆっくりやっていこう」ゴトッ
賢者「それじゃ晩御飯できたからいただきますか」
魔王「やっぱりさっきからやっておったのは料理だったのか」
賢者「そうだよ、1人暮らしだと自然と身についちゃうんだよ」
魔王「ほぅ」
賢者「昔は殺人料理しか出来なかった私がこうなるとは思わなかったけど」
魔王「殺人料理…」
賢者「ほらほら食べるよっ!!冷えちゃうっ」
魔王「あ、あぁ」カチャ
魔王「これはうまい…」
賢者「あらよかった、あまり上手ではないから口に合うか分からなかったんだよ」
魔王「私は好きだなこの味」
賢者「そうかい?へへぇ」
-深夜-
魔王「…賢者、寝たか?」
賢者「ん~?まだ起きてるけどー?」
魔王「わたしはこの世界でやっていけるのだろうか…」
賢者「不安なのかい?」
魔王「あぁ…」
魔王「今まで自分であまり動き回ったりした事がなかった」
魔王「すべて他の者にまかせっきりだったからな」
魔王「自分の力で生きるという事がまずできるか不安なんだ」
賢者「そこだけ聞いてると」
賢者「魔王ってのがなきゃどこかのお嬢さまだなぁ」
賢者「気持ちは分かるけどなんとかなるよ」
賢者「私だって最初は失敗ばかりだった」
賢者「力を抜いて頑張ればいんだ」
賢者「気を張ると失敗ばかりか無駄に疲れるだけ」
魔王「そうか…」
魔王「力を抜いてか…明日から頑張らねばな」
魔王「まず…は…生きる……」
魔王「すぅすぅ」
賢者「寝ちゃったか」
賢者「この世界はのんびりしている」
賢者「元の世界に帰る方法分かるまで頑張っていこうじゃない」パチッ
-朝-
魔王「んん…」
魔王「あとごふぅん…」ゴロリン
賢者「まだ起こそうともしてないのにそれ言っちゃうまおたんかわいいっ」
魔王「すぅすぅ」
賢者「寝かせたままにしてあげたいが…」
賢者「『あの子』の相手をしてほしいな」
賢者「と、いうわけで…いただきます」パンパンッ
モゾモゾ ススス…
魔王「っ!?」ビクンッ!!
賢者「ここか?ここがええのんかぁ?」ムニムニッ
魔王「あっ…んぁ…は…」
魔王「やめろっ!!」ガバッ!!
賢者「あふんっ」ゴロン
魔王「む…?ここは…」
賢者「異世界・賢者お姉さんの部屋・オッケー?」
魔王「あぁ…そうだったな」
魔王「しかし、いきなり何をするのだっ!?」
賢者「いやぁ起きてほしかったのさ」
魔王「だからといって身体をまさぐるのはどうかと思うが…」
賢者「微妙に育った身体はどんな感じなのかと思って?」
賢者「育ってるところは育ってました!!」グッ
魔王「俗に言う変態なのか?」
賢者「そう、ある意味職業のようなものさ」
魔王「どんな職業だ…」
魔王「それで何故起こしたのだ?」
賢者「えっとね」
賢者「今日はある子供の相手をしてほしいんだ」
魔王「子供?幼子か」
賢者「この部屋貸してくれている人の子供なんだけど」
賢者「色々お世話になってるし」
賢者「それに君だってこれからお世話になるわけだ」
魔王「そうか、それなら引き受けたほうが良さそうだな」
賢者「基本的にあの子の自由にさせていればいい」
賢者「わがままとか言うかもしれないけど、適当にあしらっていいよ」
魔王「適当でいいのか…?」
賢者「小さな子はそれぐらいじゃないと付き合うのは難しいよ」
賢者「それに相手してると自然と覚える事もある」
魔王「心得た」
賢者「それじゃ私はバイト行ってくるわぁ」
魔王「バイト?」
賢者「アルバイト…お仕事さ」
賢者「お金稼がないとさすがに生きていけないからね」
魔王「人間は金を使って食料を調達するのが基本だから仕方ないだろうな」
賢者「自給自足で手に入れることもできるけどここじゃ厳しいしね」
賢者「あーそうそう、お昼頃に私のバイト先に来ておくれ」
賢者「ここにその場所は書いておいたよ」パサリ
賢者「書いてある物を目印にこれば着くはずだからね」
魔王「分かった」
魔王「留守とその子供の相手はまかせろ」
賢者「それじゃお願いねぇ」ガチャ
賢者「いってきまーす」
魔王「いってこい」
バタン
魔王「む?」
魔王「そういえばその子供とやらはいつ来るのだ??」
魔王「まぁいい、勉学に励むか」ペラッ
魔王「山…川…空…海……」カリカリ
魔王「漢字とやらがえらい多量にあるが…」
魔王「これすべて覚えるのか…むぅ」
魔王「いや!弱音を吐いている場合じゃない!!」
魔王「ここで生きるには大切な事なのだ…」カリカリカリ…
-2時間後-
魔王「…」カリカリカリ
コンコン
魔王「…」カリカリカリカリ
ガチャ
幼女「…」
魔王「…」カリカリカリカリカリ
幼女「しらないひとがいるー」
魔王「ん?来たのか」クルッ
幼女「けんじゃおねーちゃんはー?」
魔王「仕事に出かけた」
幼女「うにゅう」
魔王「お前の相手はわたしがまかされている」
幼女「おねーちゃんがあそんでくれるの?」
魔王「そうなるな」
幼女「けんじゃおねーちゃんのおともだち?」
魔王「友達…同居人というべきか」
幼女「どきゅんにんじん?」
魔王「どう聞けばそんな言葉になる…」
魔王「まぁ友達でいい」
幼女「だったらあんしんだぁ」グイグイ
魔王「こらこら、引っ張るでない」
幼女「おそといこっ!!おそとっ!!」
魔王「この辺を知らぬから遠くには行けぬぞ」
幼女「すぐ・そこ・さんくすだよっ」
魔王「よく分からぬが近くならよい」
幼女「ちかくだからいこ」グイグイ
魔王「だから引っ張るなと言うに…」
-アパート外の庭-
魔王「ふむ、ここで何するのだ?」
幼女「おままごと!!」
魔王「おままごと?」
魔王「どういう遊戯だ?」
幼女「パパとかママになってかぞくになるのっ」
魔王「む?家族のふりする遊戯なのか?」
幼女「いいからはやくあそぶのっ!!」
魔王「う、うむ…わたしはよく分からぬから」
魔王「えー…お前、名前はなんだ?」
幼女「幼女!!」
魔王「ならば幼女、わたしはやり方を知らぬから好きに進めてくれ」
幼女「はーい」
幼女「じゃああたしはママで~」
幼女「おねーさんはこども~」
魔王「子供か…いいだろう」
魔王「あとわたしの事は魔王でいいぞ」
幼女「はーい、じゃあはじめるよ~」
幼女「…『このバカ娘っ!!』」
ばちーんっ!!
魔王「いっ!?何をするっ!!」ヒリヒリ
幼女「『どうしてお前は悪さしかしないのっ!!』」
魔王「どういう展開なんだこれは…」
幼女「『ちゃんと話を聞きなさいっ!!』」
ばちーんっ!!
魔王「だっ!?だからなぜ殴るっ!!」
幼女「『分かってくれないなんてママ悲しいわ』」シクシク
魔王「…」
幼女「『何か言わないと泣いちゃうんだからっ!!』」シクシク
幼女「『泣くと普段の十倍の力がでるのだよ…ボウヤ』」デデーン
魔王「何この超展開」
魔王「誰か助けて…」
魔王「で、部屋に戻ってきたわけだが…」
幼女「ふんふーん」カキカキ
魔王「今度は絵描きに夢中か」
魔王「今のうちに勉学を…」カリカリカリ
幼女「まお~」
魔王「なんだ?」カリカリカリ
幼女「おようふくぬいで」
魔王「は?」
幼女「ぬげ、はなしはそれからだっ」グイー
魔王「おい!!いきなり訳の分からぬ事を言うなっ!!」グググッ
魔王「何故脱がないといけないっ…」
幼女「ぬーどでっさんかくの」
魔王「…」ペラペラ…
魔王(ヌード:裸体。または裸体を扱った作品…)
魔王(デッサン:絵画、彫刻の下絵…)
魔王「全力で断る!!」
幼女「からだにじしんがないの?」
魔王「こやつ…本当に幼子か?」
幼女「つーまんなーい!!」ジタバタ
魔王「おい、暴れるな!?」ガシッ
魔王(まさか賢者の奴…)
魔王(こやつが面倒な奴と知って、わたしに押し付けたのでは…)
- 一方、バイト中の賢者さん -
賢者「ありがとうございましたぁ…へっ、くちゅーんっ!!」
バイト「賢者ちゃんの可愛いくしゃみっ」キュンキュン
店長「飲食店なんだから風邪とかは持ってこないでくれよ」
賢者「ぐずぐず…すいませんねぇ」
賢者「お客さん今いないから掃除しましょっと~」キュッキュ
賢者(まおたん来てくれて楽できそうだわぁ)
賢者(なーんて、ホントは子供って苦手だったからちょうどよかった…)
賢者(悪影響しか与えないし…ふひひ)
店長「相変わらずよく働くなぁ」
バイト「それに美人さんだからお客さんも歓喜喝采」
店長「美人は認めるがそこまでじゃないだろ…」
バイト「でも何度かデートに誘われてましたよ?」
賢者「きれ~いにきれ~にできましたぁ~♪」キュッキュ
バイト「今の顔いいっ!!いただきっ!!」パシャッパシャッ!!
店長「頼むからお前も仕事してくれ…」
-再び 賢者の部屋-
幼女「んん…にゅぅ…」スゥスゥ
魔王「寝たか…」
魔王「…」カリカリ コロン
魔王「んーっ!!今はこれぐらいにしておこう」ググーッ
魔王「しかし…」
幼女「んにゅ…」キュッ
魔王「人の膝の上で寝られるとはな…」
魔王「掴まれているので動こうにも動けぬ…」
コンコン
魔王「誰だ?」
魔王「手が離せない、入ってくれ」
ガチャ
??「あぁ、やっぱりここにいたのね」
魔王「すまないがどなたかな?」
??「ここの大家よ」
大家「そして、その子の母親でもあるわ」
魔王「あぁ貴さ…あなたがそうだったの…ですか」
大家「賢者さんに事情は聞いてるわ」
大家「とりあえず慣れないうちは話し方好きにしていいわよ」
魔王「事情を理解してくれているのか…すまないな」
大家「これからここに住むんですってね?」
魔王「世話になる」ペコリ
大家「別にかまわないわよ」
大家「別にお金取ったりはしないし」
大家「それにその子の相手をちゃんとしてくれてたみたいだし」
魔王「外での遊戯を見てたのか」
大家「えぇ、今まで賢者さんにお願いしてた事だけど」
大家「魔王さん来たんならまかせちゃおうかしら?」
魔王「わたし1人ではこの子の相手は無理だ…」
大家「あら、早速やっちゃったのね」
大家「随分と悪い言葉覚えちゃっててごめんなさいね」
大家「どこで覚えてくるのかしらねぇ…」
魔王(おそらく賢者のせいじゃないだろうか)
魔王(自称・変態姐さんだからな…)
大家「そういうわけだから時々でもいいのでこの子と遊んでほしいの」
魔王「世話になるわけだ、それぐらいなら引き受けよう」
大家「ありがとうね」
魔王「ところで、この子はどうすれば?」
大家「起きるまでそのままでいいかしら?」
大家「目が覚めたら一階の端の私の部屋に戻らせればいいから」
魔王「承知した」
大家「それじゃよろしくね」バタン
魔王「…」
幼女「くぅくぅ」
魔王「寝顔を見ていると穏やかな気持ちになるな…」ナデナデ
魔王(でも、こういうのも悪くない)
-昼 ファミレス-
バイト「いらっしゃいませぇ」
魔王「む…」
バイト「何この可愛い子」
魔王「…何か?」
バイト「いえ、何でもないです…」
バイト(心の声が漏れちゃったっ)テヘ
魔王「ここに来いと言われたのだが…」
バイト「相手はどういう方で?」
魔王「そうだな…」キョロキョロ
賢者「はい、カルボナーラとハンバーグランチお待ちどうさまですっ」カチャン
魔王「あれだ」クイッ
バイト「賢者ちゃん?」
魔王「うむ…わたしはどうすればいいのだろうか?」
バイト「待ってて、呼んできてあげる」テテテッ
バイト「あ、そこのテーブル席に座って待っててね」
魔王「ここか?分かった」テクテク ポフッ
魔王「…」
魔王(ここは食事をする所のようだ)
バイト「ご注文はお決まりになりましたかぁ?はい…~ですね…」
魔王(なるほど、あっちの酒場に近い感じか)
魔王「こう見てると知らないものばかりで面白いな」
魔王「むっ…め、めにゅー?多くの料理?の絵があるがこれは…」ジー
-3分後-
魔王「…」ジー
ドンッ!!
魔王「!?」ビクッ
賢者「へいおまちっ!!」
バイト「賢者ちゃん、お寿司屋さんじゃないんだからぁ」
魔王「賢者か…これは…?」
賢者「このお店の自慢の一品『カラフルパフェ』さ」
賢者「わたしのおごりだっ」
魔王「いいのか?」
賢者「可愛いまおたんに食べてほしくて作ったんだ」
賢者「食べてくれないといやんっ」クネクネ
魔王(食べ物だったのか…)
バイト「なん…だと…」
バイト(あの賢者ちゃんがデレている…)
バイト(この子は何者なんだ…見れば見るほどかわいい!!)ジロジロ
魔王「すごく見られているのだが…」
賢者「あちゃー、目つけられちゃったね」
店長「またサボってるのかお前は」グイー
バイト「うひっ」
賢者「ナイスタイミング、店長」
店長「知り合い来たら上がるんだったんだろ?」
店長「ちょうど客も引いたしいいぞ」
賢者「どうもですっ」
賢者「と、言うわけだから着替えてくるわぁ」
魔王「あぁ」
賢者「それ食べながら待っててくれぃ」トコトコ
バイト「…」コソコソ
バイト(賢者ちゃんの生着替えタイムっ)
バイト(今覗かないでいつ覗くっ!?)
店長「おい」グイッ
バイト「わひっ」
店長「クビと食器洗いどっちがいい?」
バイト「食器洗ってきますぅ…」トボトボ
魔王「随分と騒がしいな…」
魔王「これ、どういう味がするのだろうか…」ツンツン
魔王「えぇいままよっ」パクッ
魔王「!???!!!」
ポワーン
-数分後-
賢者「お・ま・た」
賢者「って、なんだいその顔は…」
魔王「───」ポワーン
賢者「意識がさようならしてるみたいだねぇ」
賢者「そうか、そんなにその育ちざかりな胸を…」
賢者「モニモニされたいのかっ」ワキワキ
魔王「はっ」
賢者「殺気で気づいちゃいやん」フルフル
魔王「あまりの味に何かが抜けていたようだ…」
賢者「お気に召さなかったかい?」
魔王「いや…甘くて…うまい…」モキュモキュ ポワーン
賢者「幸せそうな顔、超萌えるぅぅぅぅぅ!!」キュンキュン
店長「もうちょっと静かに頼む…」
賢者「あ、すんませんっす」
店長(バイトしてる時よりはじけてるな)
バイト(賢者ちゃんとその友達ちゃん…)ゴシゴシ
バイト(どっちでもいいからペロペロさせてぇぇぇぇ)ゴシゴシカチャカチャピシッ
賢者「…」ニコニコ
魔王「んぐ、なんだ?」
賢者「まおたん『が』おいしそうだと思って」
魔王「変態か貴様っ!?」
賢者「そうですがそれが何か?」キリッ
魔王「まったく恥じてない態度に反抗できん…」
魔王「あと、その呼び方をやめろと言っている」
賢者「可愛いのに…ダメ?」
魔王「全然ダメだ、やめてくれ」
賢者「あぁ…じゃあ魔王殿パフェは美味でござるか?」
魔王「貴様自体がまったくの別人になってるじゃないか…」
賢者「そのような事は決してないでござるよ、魔王殿」
魔王「…分かった、呼び方は変えなくていい」
賢者「だからまおたん大好きっ」チュー
魔王「気持ち悪い顔を近づけるなっ」グイッ
バイト(魔王ちゃんっていうんだ…)ゴシゴシゴシゴシ
バイト(わたしもチューしたーいっ)チュー
店長「…」
バイト「…はっ」
店長「無機物にキスはどうかと思うぞ…」
バイト「いや、コップが好きなわけじゃないですからぁっ!?」
バイト「可愛い子とちゅっちゅしたぁぁぁぁい!!」
-賢者の部屋-
魔王「…」ジー
賢者「おや?」
賢者「テレビに張り付いてるが…何見てるんだい?」
ヨォ オウオハヨウ キョウモアノコトキタノカ ウルサイナァ…
魔王「…」ジー
賢者「アニメとな…もうそういう趣味に走ったのか…」
魔王「賢者」
賢者「ん?」
魔王「学校って何だ?」
賢者「あぁ、そっちに興味持ってたのかぃ」
賢者「学校っていうのは学問習ったり、運動したり、友達を作るところだよ」
賢者「ごめんよ、実は私もこっちの学校は詳しく知らない」
賢者「色々学ぶところって事は合ってるはず」
魔王「てれび?で何度か見てたけど気になってな…」
魔王「…」ジー
賢者「興味あるのかい?」
魔王「ないといえばウソになる」
賢者「そっか」
賢者「興味を持つのは良い事だよ」
魔王「…」ジー
賢者「でもそれ、アニメ…作られたものだから参考にはあまりしないほうがいいよ」
魔王「…」ジー
賢者「いやん、放置プレイっ」ビクンッ
賢者「しょうがない子だねぇ」ガチャ バタン
-1時間後-
ガチャ
賢者「ただいまー」バタン
魔王「おかえり」カリカリ
賢者「またお勉強に性がでてますな」
魔王「字が違うぞ」
賢者「お、もう覚えたのか」
賢者「覚えるの早すぎだろJK…」
魔王「それよりどこ行ってたんだ?」
賢者「ん?」
賢者「明後日からまおたん学校通えることになったから」
魔王「そうか…」
賢者「うん」
魔王「…」
魔王「…」
魔王「え…?」ズイッ
賢者「近い近い近い…」フルフル
賢者「離れないとチューするぞ」ンー
魔王「っ!?」バッ
魔王「が、学校とやらに行けるっていうのは本当なのか…?」
賢者「うん」
賢者「さっきまで学園長に交渉してきてたし」
魔王「誰だそれは?」
賢者「学校の最高権力者」
魔王「何故そんな人物と繋がってるんだお前は…」
賢者「人と仲良くなるのは得意なのさっ」
魔王「そうか」
賢者「あっちの世界じゃ人外とも仲良くしたもんだ」
魔王「いや、そこまでは聞いてない」
賢者「残念♪」
魔王「しかし、わたしが学校に…」
賢者「本来ならお金かかったり手続きとかで大変なんだけど」
賢者「色々あって一部免除してくれたんだわ」
賢者「書類とかは私が書いてきたし」
賢者「まおたんは学校行くだけでいい状態さ」
魔王「何から何まで迷惑かける…」ペコリ
賢者「こんな低姿勢な魔王見たことがない…」
魔王「わたしは別に魔王だからといって偉いわけじゃない」
魔王「ただ偶然他の者以上の力を持っていただけのこと」
魔王「誰であろうと対等に向かい合う」
賢者「元の世界のまおたん、実は良い人だったんじゃないのか…?」
賢者「私はね、まおたんがここで頑張るって言うから支援してるだけよ」
魔王「そうか…」
賢者「まぁ学校、楽しみにしてるんだよ」
賢者「でもその前に話し方もうちょっとなんとかしないとなぁ」
魔王「そうだな…」
魔王「てれびとか外での会話を聞いてるとわたしの話し方がおかしいのは分かった」
賢者「しかも見た目とのギャップがひどいからなぁ…」
賢者「下手したらおっさんだよおっさん」
魔王「おっさんってどんなだ?」
賢者「えっと…こんな人」ピッ ニュースノジカンデス
魔王「このいかつい顔したのが…おっさん…」ズーン
魔王「が、頑張るので教えてくれっ」
賢者「よっしゃ、スパルタでいくよっ」パチーンパチーン
魔王「その鞭はどこから出てきた…」
-風呂場-
バシャーン
魔王「ふぅ…」
魔王「少しは変わったのだろうか…」ジャポ
賢者『そう簡単にはいくまいっ』ペトー
魔王「ガラスに張り付いて何してるんだ?」
賢者「ちっがーうっ!!」ガラッ
魔王「!?」
賢者「そこは『きゃー覗きよー!!』だろう!!」
魔王「お前は何言ってるんだ」
賢者「その辺の冗談はまおたんにはまだ理解できないかぁ」
賢者「つまんなーい」プリプリ
魔王「まだお前の言っている言葉は理解できない時がある」
賢者「ほら、また口調戻ってる」
魔王「え…あっ…」
賢者「普段から使っていったほうがいい」
賢者「じゃないとすぐボロ出るからね」
魔王「わ、分かった…」
賢者「1人の時もそんな感じだったの?」
魔王「そうだな」
賢者「デデェ~ン!!魔王、アウトー!!」
魔王「!?」ビクッ
賢者「まぁいいや」
賢者「それならうーん…どういうのがいいんだろうなぁ」
魔王「どういうとは?」
賢者「人間見てきたなら分かるだろうけど」
賢者「話し方って人によって違うんだよね」
賢者「私は結構標準より砕けた感じで話してる」
魔王「じゃあわたしの場合はどういうのがいいんだ」
賢者「うーん、魔王だからなぁ…」
賢者「お嬢様口調」
魔王「…賢者さん、こんな感じかしらね?」
賢者「…んっ」バッテン
魔王「!?」
賢者「なんか萌えない」
魔王「貴方が変なこだわりを求めべきじゃないでしょう…」
賢者「じゃあ近所の年下の子口調」
魔王「…これならどうかなっお姉ちゃんっ!!」
賢者「結婚してくださいっ!!」ギュウ
魔王「や、やめてよぉお姉ちゃん…」グイグイ
賢者「おっと、ピッタリなのないな」
賢者「個人的には今のはドストライクなんだが…」ジュルリ
魔王「変態めぇ…戻っていい?」
賢者「いいよ」
賢者「しっかしあんた、記憶力がとんでもなくいいね」
賢者「一日勉強しただけでそこまで覚えてるとは…」
魔王「そうか?」
魔王「じゃああれでいいんじゃないか?」
魔王「一般の女性口調」
賢者「ノンだっ!!せめて一般の『少女』口調でっ!!」
魔王「だから変なこだわりを持つなと言うに…」
魔王「まぁお前にはあまり逆らえないしそうしよう」
賢者「きゃーっ!!まおたん大好きっ!!」ギュゥゥゥ
魔王「くっついてくるの好きだなぁ…」
魔王「ついでに服びしょ濡れになってる」
賢者「このまま入るからオッケー」ヌギヌギ ポヨンポヨン
魔王「…くっ」ジー
賢者「何でそんなに悔しそうなの?」
魔王「わたしはまだ育つ…焦るな…」ブツブツ
賢者「?」
-2日後-
賢者「じゃあ昨日案内した通り学校まで行くんだよ」
魔王「分かった」
魔王「わたしは今普通の人間になってる…かな?」
賢者「まだまだ怪しいところあるけど大丈夫」
賢者「ボロ出さない程度に頑張れ」ポンッ
魔王「う、うん」
魔王「じゃあ行ってくる」トコトコ
賢者「いってらっしゃ~い」ブンブン
賢者(普通に見れば大人しいお嬢様風だから問題なさそうね)
賢者「だが変な虫は排除するけど」キラーン
賢者「とりあえず学園長に連絡しとこっと」ピッピッピッ
賢者「もしもーし、おはようございまーす」
賢者「はい、賢者さんですよー」
賢者「もしあの子の事で何かあったらこちらに即刻連絡お願いできますか?」
賢者「一応保護者なので、はい」
賢者「どうもです、それじゃよろしくです~」ピッ
賢者(学校生活を楽しんでおいで、まおたん)
-学校への道-
魔王「…」
魔王(すごく視線を感じる…)
学生達(あの美少女は誰だろう…)チラチラ
魔王「いやいや、気のせいだ気のせい…」フルフル
魔王「夢に見たスクールライフとやらを楽しむのだっ」トコトコ
学生A「この辺で見かけない子だな」
学生B「転校生とか?」
学生C「どこかのアイドルやってる子かしら?」
学生D「二次元レベルwwwテラかわゆすwwwww」
魔王「寒気が…」ゾクゾク
魔王「早く行こう」トコトコトコ
-学校 廊下-
教師「君が魔王さんですね?」
魔王「は、はい」
教師「じゃあついてきて」テクテク
魔王「はい」
魔王(間違ってないよな…大丈夫だよな…)
教師「今までずっと病院で過ごしていたようですが」
魔王「えぇっ!?」
教師「どうしました?」
魔王「あ、なんでもないです…」
魔王(病院ってどういう事だ…?)
教師「もう体は大丈夫なのですか?」
魔王「え、はい…もう…治りました」
魔王(賢者め、わたしをどういう人物だと吹き込んだのだ…)
魔王(元病人にして一体何の意味があるのだ…)
教師「色々分からない事は、みんなに聞くといいですよ」
魔王「は、はい」
教師「着きました」
教師「少し待っていてください、あとで呼びますから」ガラガラ
魔王「わ、分か…りました」
魔王(胸が…)ドクンドクンドクンドクン
魔王(わたしともあろうものが緊張しているだと…)
魔王(静まれ!!このっ!!)ムニムニ
教師「魔王さん入っ…て?」ガラガラ
魔王「ぁ…」
生徒「おい…何やってるんだあの子…」
生徒「自分で自分の胸揉んでるね…」
生徒「変態?」
魔王「あ、あぁぁぁぁっ」カァァァァ
生徒「でもかわいくね?」
生徒「確かに可愛いねぇ」
生徒「お人形さんみたい」
魔王「屈辱だ…」ドヨーン
教師「え、えっと…本日新しく入った魔王さんです」
教師「挨拶…できる…?」
生徒「教師、なかなか鬼畜だな」
生徒「この空気で挨拶とかマジぱねぇ…」
魔王「…あぅ」グス…
生徒達「頑張れー」
生徒達「泣かないでー」
魔王「ま…魔王…です…」オドオド
生徒達「もうちょっとだよっ」
生徒達「一言、一言だけっ」
魔王「よ、よろしく…お願い…しますっ」ペコッ
生徒達「うぉぉぉぉぉ!!」
生徒達「よく頑張ったねっ!!」
生徒達「お前が好きだー!!つきあってくれー!!」
教師(何気に告白してる子がいる…)
教師「じゃあこれから仲良くしてあげてください」
教師「席は…後ろの一番端ね」
魔王「…はぃ」テクテク
-休み時間-
生徒「ねぇねぇ趣味何?」
魔王「えっ、えっと…」
生徒「ずっと病院生活だったって本当?」
魔王「それは…」
生徒「付き合ってる人っている?」
魔王「いや…」
賢者「性感帯ってどこ?」
魔王「そんなの知らない…」
魔王「…」
賢者「どしたの?」ニコニコ
魔王「何故ここにいる…?」
生徒「うお、知らない間に綺麗なお姉さんがいるぞっ」
賢者「あら、綺麗なお姉さんだなんて」ポッ
賢者「まおたんの保護者みたいなものね」
賢者「仲良くしてあげてよ」
生徒「まかせてくださいよ!!」
生徒「あたしもまおたんって呼んでいい?」
魔王「そ、それは…」
賢者「好きに呼んじゃって~」
魔王「おま…ごほん…」
生徒「魔王ちゃんもいいけどお姉さんもよくね?」
生徒「ハイスペック姉妹ってか?」
魔王「それで賢者は何の用でここに?」
賢者「色々必要な物渡しに来た」ドサッ
賢者「残念だったな諸君」
賢者「『教科書ないの、見せて~』とはならんっ」
魔王「何の話?」
生徒「くそがぁぁぁぁぁ!!」ガクッ
生徒「さすがお姉さん、抜け目がない…」
賢者「そういうわけでお姉さんは撤収~」トコトコ
賢者「じゃ~ね~」ガラガラ ピシャン
魔王「…」
生徒「なんかすごいお姉さんだったね?」
生徒「出来たら紹介してほしいぜ!!」
魔王「あ、あれは変態だから…あまり近づかないほうがいい…よ」
生徒「またまたぁ」
生徒「でも私はまおたん一筋っ」
生徒「ばっか、俺のもんだ!!」
生徒「おまいら、勝手に自分のもんにするなよ…俺の嫁に決まってるだろ」
魔王「はぁ…」
魔王(賢者のおかげか、あまり緊張しなくなったな…)
-授業中-
魔王(黒板?に書いてるのを移せばいいのだったか)カリカリ
コツコツ
魔王「…」
コツコツコツ
魔王「?」クルッ
?「やぁ」
魔王「い、今授業中なんだけど…」
魔王(授業中に必要以上の話をしてはいけないらしい)
?「気にしちゃダメよぉ」
?「あたし、女っていうのよろしくねっ」
魔王「よ、よろしく」
女「ちなみにさっきまおたんって呼んでいいか聞いたのあたしね」
魔王「そうなんだ…」
魔王(こやつも変な奴ではないだろうな…)
女「ねぇねぇ、お昼一緒にご飯食べない?」
魔王「え、えっ?」
女「多分、お昼ご飯食べる暇なく囲まれて質問攻めにされちゃうよ?」
魔王「そ、それは困る…」
女「でしょ?だからどこか別の所で食べようよ」
魔王「わ、分かった」
教師「おい、そこ話をするなっ」
女「あ、すいませーん」
魔王(1人よりはいいか…)
-昼休み直前の授業中-
魔王「…」カリカリ
女「まおたんまおたん」コツコツ
魔王「…なに?」
魔王(早速まおたんと呼ばれてるし…まぁ名前ぐらい好きに呼ばせるか)
女「抜け出す準備してて」
魔王「え?」
女「合図するからそのまま教室出て」
魔王「分かった…」
女「5、4、3、2、1…」
キーンコーン…
女「いくよっ」スクッ
魔王「んっ」ガタッ
ガタガタガタッ
魔王「!?」ビクッ
女「周り気にしないで走ってっ!!」ギュ ダダッ
魔王「うわっ」タタタッ
生徒「おい、逃げたぞっ」
生徒「追いかけろっ」
生徒「魔王ちゃんぺろぺろ~」
-未使用教室-
女「ここまで来たらそう簡単に見つからないっしょ」
魔王「はひっはひっ…」
女「体力ないねぇあの程度で疲れるなんてぇ」
魔王「いやっ…これは…」
魔王(わたしは魔法特化な魔王なんだよ)
魔王(元々体力はないんだ)
魔王(…とは言えないんだがな)
女「あ、そういえば今まで入院してたんだっけ」
女「ごめんごめん」
魔王「別に…かまわないよ」
魔王(いわゆる病み上がりとなっているのは好都合だな)
魔王(賢者はそこまで計算していたのだろうか…)
女「それじゃご飯食べよっか」ゴソゴソ
魔王「…ぁ」
女「あれ?お弁当持ってきてないの?」
魔王「完全に忘れていた…」ズーン
女「あっはっはードジっこだぁ」
女「じゃああたしの一緒に食べようよ」
魔王「でも…」
女「いいからいいから、ほらっ」スッ
魔王「美味しそう」
女「食べてから感想はどーぞ♪」
魔王「うん…」パクッ
魔王「!?」
女「どうかな?」
魔王「美味しい…」モグモグ
女「よかったー、これ自分で作ったんだぁ」
魔王「へぇ」
女「じゃんじゃん食べてよっ!!」
魔王「本人も…食べないと…」
女「あははっそうだね、食べるよ」モグモグ
女「美味し~」
魔王(友達?と楽しく食事…)
魔王(こういうのだよ、わたしが求めていたのは!!)
女「ちなみにお昼終わるまでここいたほうがいいよ」
魔王「まだ…探してるの…かな」
女「ここ、本来ならカギかかってる所だから」
女「探す人もいないから安心していいよ」
女「ただし、出たら保障は出来ないけど…」ニヤリ
魔王「ここにいる…」ビクビク
女「えっへへ~」パクッ
-放課後-
男子生徒「ねぇねぇどこか行かない?」
魔王「い、いや…」
男子生徒「ばっか、すでに俺と約束済みだっつーのっ」
男子生徒「妄想の中でしただけだろ?」
男子生徒「俺なんかバイクあるから遠出とかできるぜ」
魔王「あぅ…」
女子生徒「ちょっと、男の子だけで決めないでよ」
女子生徒「いきなり男だけとか怖くてダメよ、ねぇ?」
魔王「え、えっと…」
男子生徒「女は出てくるんじゃねぇよ!!」
女子生徒「下半身でしかもの言えない奴らは黙ってなさい!!」
ギャーギャー
魔王「…今のうちに逃げよう」コソコソ
女子生徒「ここは本人に聞こうじゃないっ」クルッ
男子生徒「上等だぁ!!」クルッ
魔王「ぅ…」ダッ
生徒達「どこいくの!?待ってーっ!!」ドドドド
魔王「うわぁぁぁぁぁ…」ダダダダダッ
魔王(この建物の配置が全然分からん…)
魔王(このままでは追い込まれてしまう)
魔王(どうにかいい方法は…)
魔王「窓?」
魔王(ここからならばっ)
バッ!!
女子生徒「うそっ!?」
男子生徒「ここ二階だぞっ!?」
シューン タッ
魔王「よし…ぁ…」
男子生徒「スーパー転校生か!!」
女子生徒「スタントマン…?」
魔王(しまった、ここは普通の人間しかいないんだった…)
魔王(人間ってめんどくさい!!)ダダダッ
-アパート前ー
魔王「やっと帰れた…」
???「…」
魔王「?」クルッ
サッ
魔王「何かに見られていた気が…」
???「…」
魔王「!!」バッ
サッ
魔王「…」
魔王(何者かわたしを追いかけてきている…?)
魔王「早く部屋に戻ろう…」テクテクテク
大家「あら、魔王さん」
魔王「あ、大家…さん」
大家「どうしたの?」
魔王(この人に一応話しておくか?)
魔王「あの…なんだか後ろから…」
魔王「誰かに見られてる気がして…」
大家「えっ?本当に?」キョロキョロ
魔王「はい」
大家「ふーむ…可愛いからストーカーできちゃったのかしら?」
大家「一応見張っておくから部屋に戻ってて」
魔王「はい…」トコトコ
魔王(真面目に対応してくれるようだ)
大家「あ、そういえば随分と口調が変わったわね」
魔王「変…ですか?」
大家「むしろ今までが変」
魔王「あぅ…」
大家「これからも頑張りなさいね」ニコ
魔王「は、はい」
大家「じゃあ部屋で大人しくしててね」
魔王「わ、分かりました」トコトコ
-夜-
賢者「賢者さんのお帰りだっ!!」バンッ!!
魔王「テンション高いな…おかえり」
賢者「ただいまっ!!いつものことだけどねっ」
魔王「言われてたとおりスイハンキ?のスイッチは押しておいた」
賢者「おぉ~ありがと~」
賢者「うん、もうすぐできるね」
賢者「んじゃパパッと料理しますかね」キュッキュッ ジャー
魔王「手伝おうか?」
賢者「すぐだからかまわないよ」カチッ ボッ
賢者「それより、まおたん」
魔王「ん?」
賢者「なんかストーカーに狙われてるって?」
魔王「すとーか?なんだそれは?」
賢者「ぶっぶー、減点いち」
魔王「あ」
魔王「何かなそれは…」
賢者「よしよし、かわいいぞ」
賢者「後ろから誰かに見られてたんでしょ?」
賢者「大家さんに話聞いたよ」
魔王「あ、うん…」
賢者「まぁここにいりゃ私がいるから大丈夫さ」
魔王「うん」
賢者「問題は学校がある日の行きと帰りか」
賢者「私が付き添うのも限界あるしなぁ…」
賢者「学校側で信頼できる人いればねぇ…」
魔王「しばらくは様子見るよ」
賢者「そうかい、悪いね」
賢者「明日あたりに携帯でも買ってくるか…」
魔王「ケイタイ?」
賢者「遠くに離れていても会話できる優れものさ」
賢者「よっし、できたっと」ドサッ
魔王「やけに早かったけどそれは?」
賢者「鍋だよ、色んな具を入れてある」
賢者「種類は色々あるけどこれは一番普通のヤツ」
魔王「へぇ…あ、ご飯入れる」モリモリ
賢者「おーありがとね」
賢者「随分と動いてくれるようになったね、あんた」
魔王「1人で生きてるわけじゃないし」
魔王「やる事はやっていくっ」グッ
賢者「やばい、抱きしめて押し倒したい」ジリジリ
魔王「それはお願いだから…やめてほしい…」モジモジ
賢者「モジモジしてるまおたんもイイ!!」キュン
賢者「まぁ食べようか」
魔王「う、うん」ビクビクッ
賢者「しらたきうまー」
魔王「はふはふ、熱いけどなかなか…」
賢者「学校どうだった?」モグモグ
魔王「思った以上に楽しかった」
賢者「ほー、そりゃよかった」
賢者「友達できた?」
魔王「友達かはまだ分からないけど」
魔王「わたしに良くしてくれる人ならいた」
賢者「まさか…どこかの部屋で二人っきりってっ事に…」
魔王「昼に二人きりだった」
賢者「なん…だと…」
賢者「どこのどいつだいそれは…」
賢者「場合によったらひき肉だっ」ゴゴゴゴ
魔王「昼ご飯を忘れたので一緒に食べたりした」
賢者「…」
賢者「え?」
賢者「もしかして相手って女の子?」
魔王「そうだけど?」
賢者「別にXXXされたとかじゃなかったのか…」
魔王「?」モグ
賢者「それならいいやぁ…白菜うまー」モグモグ
賢者「まぁ仲良く出来るならしていくといいよ」
魔王「うん」
魔王「あ、でもクラスの人に追い回されたりはした」
賢者「まぁ容姿が良いから人気者にはなるっしょ」
賢者「しばらくしたら落ち着くと思うよ」
魔王「そういうもん?」
賢者「そういうもん」
賢者「適度に相手してあげるといいよ」
賢者「そうすれば悪いようにはされないから」
魔王「分かった」
魔王「それにしても賢者は詳しいな」
賢者「そぉ?」
魔王「ここで生まれた人間と言ってもおかしくない気がする」
賢者「さすがにそれはないよ」
賢者「魔法使えるし、まおたんの正体だってすぐ見破った」
賢者「ここでは普通の存在ではないよ」
賢者「知り合い作ると自然と情報って入ってくるもんでね」
賢者「自然と覚えた事がほとんどさ」
魔王「そっか…」
賢者「まおたんも人の話には耳を傾けてみるといい」
賢者「知識は書いてるものだけじゃない」
賢者「人の話からでも得られるんだ」
魔王「あっちではそんな事考えた事もなかった…」
魔王「賢者はやっぱり頼りになる」
賢者「…そぉ?」
賢者「そこまで言われると照れるなぁ…ははっ」
魔王「…」
賢者「お肉いただき~」ヒョイパクッ
魔王(彼女は褒められるのに弱いのだろう)
魔王(やはり人間、弱いところは持っているのだ)
魔王「賢者は学校に行かなかったの?」
賢者「そりゃ行ってないよ~」
賢者「ここ来た時点で大人だったしねぇ」
賢者「自分の世界では行ったことあるけど」
賢者「学校は子供が行くところだよ」
魔王「わたしは子供なのか…」
賢者「多分人年齢にしたら16、7歳ぐらいっしょ?」
魔王「おそらくは…」
賢者「だったらこっちではまだ子供なのさ」
魔王「ふーん」
賢者「しっかしそろそろ寒くなってきてるねぇ」
魔王「そういえばかなり冷えてきた」
賢者「あっちじゃ四季なんてなかったしなぁ」
魔王「四季?」
賢者「春、夏、秋、冬と四つあってね…」
-次の日 朝-
魔王「じゃあ行ってくる」
賢者「うん、一応周りには気をつけておくんだよ」
魔王「分かってる」
賢者「どうしても危ない時は周囲にバレないように魔法を使いな」
賢者「多分そこまで強力じゃないのなら出せるはずだから」
賢者「ただし殺さない程度にね」
魔王「うん」
賢者「じゃあいってら~」
魔王「いってきます」
魔王(今は気配がない…大丈夫だろうか?)
………
魔王「…」トコトコ
???「…」
魔王(やっぱり何かがこちらを見ている)
魔王(でも、一定の距離で保っているな…)
魔王(襲い掛かる気はないのか…?)
魔王「…」
女「あーっ!!まおたーん!!」タッタッタ
魔王「あっ」
女「おっはよー」
魔王「おは…よう」
女「一緒に行こ?」
魔王「う、うん…」
魔王(彼女といて大丈夫だろうか?)
魔王(下手に巻き込むわけもいかないのだが…)
???「…ちぇ」
魔王(気配がなくなった)
魔王(誰かといるといなくなるのか?)
女「どしたの?」
魔王「なんでも…ないよ…」
女「じゃあいこっかー」
魔王「うん」
魔王(帰りにまたいれば対策を考えよう)
-授業中-
魔王「…」
ポコン
魔王「?」
魔王(何か頭に当った…何だ?)キョロキョロ
魔王「これは?」ヒョイ
魔王(紙を折りたたんだものようだ)
魔王「…」パラリ
魔王「人気…投票?」
生徒「うぇ…間違えた」
生徒「魔王ちゃん、ごめんそれ返して」
魔王「?どうぞ」スッ
魔王(見てはいけないものだったのだろうか?)
生徒「まさか…中身見てないよね…?」
魔王「…」フルフル
魔王(とりあえず見なかった事にしよう)
生徒「よかったぁ…」コソコソ
魔王(あとで彼女に聞いてみるか)
-休憩時間-
女「まおたん、おトイレいこっ?」
魔王「うん」ガタッ
女「いやぁ、最近寒くなってきましたなぁ」
魔王「そうだね」
女「あと風が強い日が多くてやんなっちゃうっ」
魔王「なんで?」
女「いや、ほらスカートすぐめくれちゃうし」
女「ジャージ履くのもなんだかやだしね」
魔王「なるほど」
魔王(と、言ったもののいまいち理解できない)
魔王「あ、そういえば…」
女「ん?」
魔王「さっき、授業中に紙が飛んできたんだけど」
女「うちのクラスではよくある事だよ~」
魔王「そう…なの?」
女「男子達が何かを書いてるっぽいんだけどね」
女「見せてくれないんだよっ」プンプン
魔王「わたし…中、見たんだけど」
女「うっそ!?なんて書いてあったの?」
魔王「クラスの人気投票がどうとか」
女「人気投票?」
魔王「うん…」
女「一位、誰だった?」
魔王「一番上にわたしの名前が書いてあったのしか…」
女「うは、多分まおたん一位だ…」
女「その下からは見てないの?」
魔王「読めなかった…」
女「そっかー残念無念」
女「やっぱり期待の新人は大人気だったのかぁ」
魔王「そういえば賢者もそう言ってたっけな…」
女「賢者って昨日来てたお姉さん?」
魔王「うん」
女「すっごく綺麗な人だったよぉ」
女「でも姉妹じゃないよね?」
魔王(まぁ見た目が全然違うからな)
魔王「うん…訳あって…世話になってるんだ」
女「いいなぁ、そういうお姉さんが近くにいて」
魔王「そうかな?」
女「あれ、何か忘れてるような…」
魔王「トイレ…」
女「あーっはっはぁ、すっかり忘れてたや」
魔王「生理現象を…忘れるって…」
ー放課後ー
女「それじゃーねー」ブンブン トコトコ
魔王「うん、また明日…」フリフリ
魔王「帰ろう」コツコツ
魔王(帰りは一緒ではなかった)
魔王(彼女は何やら用事があるらしい)
魔王「…」コツコツ
???「…」
魔王(やっぱり1人の時にはいるようだ…)
魔王「走るか…」ダッ
???「!?」
魔王(振り切れる程度ならいい…でも…)
魔王(わたしの運動能力で逃げ切れるのだろうか…)
魔王「はぁはぁ…」タッタッタ
賢者「はぁはぁしてるまおたんかぁわいいっ」タッタッタ
魔王「!?!?!??」キキーッ
賢者「先に言っておくけど私じゃないよ?」
魔王「…そっか」
賢者「また見られてたんでしょ?」
魔王「出現の仕方がが唐突だったから…つい」
賢者「ごめんごめん」
賢者「今は?」
魔王「気配が消えてない…」
???「…♪」
魔王(他の人がいるといなくなるわけじゃないのか…?)
賢者「私が近くにいるってのにいい度胸だねぇ」クルッ
魔王「賢者…」
賢者「絶対にあんたには手ぇ出させないから安心しな」
賢者「相手はなかなか警戒心が強いね」キョロキョロ
賢者「まったく姿が見えないわ」
魔王「どうする?」
賢者「帰ろう」
賢者「多分、今のままじゃ捕まえられない」
魔王「分かった」
-部屋-
賢者「まおたんにプレゼントだよ」スッ
魔王「これは…」
賢者「昨日言ってた携帯電話」
魔王「これが…」
賢者「いや、まだ箱に入ったままだから」
賢者「…これが本体?」ゴソゴソ スッ
魔王「小さいな…」
賢者「それでも色んな機能が入っているんだよ」
魔王「ほぉー」
魔王「ど、どうやって使うんだ!!」
賢者「口調戻ってるがな」
魔王「あ」
賢者「説明書…はまだ理解できないか」
賢者「せめて最小限の使い方は教えておいてあげよう」
魔王「早く早くっ」
賢者「なんでそんなにテンション高いの?」
魔王「初めて使うものだし…」
賢者「あぁそれではしゃいでたのか」
賢者「子供なまおたんもかわいい~」
魔王「まだ?」
賢者「はいはい、教えてあげまちゅよ~」
魔王「あ、ちょっと殴りたくなった」
賢者「殴るのはやめてっ!?」
賢者「じゃあこれはね、ボタンを押す事で使用できるんだ」
魔王「この…文字が書いている所をを押せばいいの?」
賢者「そうそう」
賢者「他にもその上の方のも押せる」
魔王「ふむふむ」
-深夜-
魔王「…」ポチポチポチ
魔王「!!」パァァァァ
魔王「…」ポチポチポチ
魔王「!?」ポワーン
賢者「ん…」
賢者「まだ起きてたのかい?」
魔王「うん…」ポチポチ
ピーピー
魔王「?あれ?」
賢者「どうしたのさ?」
魔王「音がしてから画面が真っ黒に…」
賢者「どう考えても充電切れです本当に(ry」
魔王「もう使えないの…?」
賢者「連続で使える時間が決まってるんだ」
魔王「そうだったのかぁ…」
賢者「分かりやすく言うと魔力切れと同じ」
賢者「しばらく付属の充電器で充電しないと使えないよ」
魔王「これか…じゃあジュウデンしておく」カチャ ピピッ
賢者「ついでにもうこんな時間だから寝なさいな」
魔王「あ、ホントだ」
賢者「夢中になりすぎ」
魔王「すいません」
賢者「罰として一緒に寝る事」
魔王「わ、分かった…」ゴソゴソ
賢者「うほっ、柔らかくていいにおいがするのぅ」ギュウ
魔王「苦しい…」ムギュ
-翌日 教室-
魔王「ふぅ」
魔王(今日もまたついてきていた…)
魔王(相手は何がしたいのだろうか?)
女「おっはよー」
魔王「あ、おはよ…」
女「んん~?何か悩み事?難しい顔してるぞぉ」
魔王「え、うん…いや」
女「どっち?」
魔王(賢者が学校で信頼できる者がいればいいと言ってたな…)
魔王(わたしの判断だが、彼女は信頼できる気がする)
魔王(話すだけ話してみるか)
魔王「ちょっと…困った事が…」
女「あたしでよければ聞くけど?」
魔王「実は…」
………
女「はぁ…ストーカーかなぁ」
魔王「やっぱり…そうなのかな…」
女「同性のあたしから見ても可愛いからなぁまおたん」
魔王「かわいいって…」
女「今日は一緒に帰ろっか?」
魔王「いいの…?」
女「あったりまえだよー」
魔王「ありがとう」
女「でも途中までだから別れたあとは気をつけないとね」
魔王「うん…」
魔王(なるべく巻き込みたくはなかったけど…)
魔王(昨日、一緒にいる時は気配が消えたから)
魔王(少しの間だけでもいてもらおう)
-グラウンド-
教師「今日は走り高跳びをする」
魔王「…まずい」
女「どうしたの?」
魔王「い、いや…何でも…」
魔王(何をするのかさっぱり分からない…)
魔王(普通知っている事を知らないとなるとまずいだろう)
魔王(聞くわけにもいかないし…)
魔王(どうすればいいんだ…)
『まおたんも人の話には耳を傾けてみるといい』
魔王(人の話か…)
生徒「私、これ苦手かも~」
生徒「ただ飛ぶだけじゃない」
生徒「だって、バーに当らずにってなんか怖くない?」
生徒「いやいや、怖くはないっしょ…」
魔王(バーとかやらに触れずに飛べばいいのか)
魔王(ふむ…あとは人の動きを見て参考にしてみるか)
タタタ…タンッ…トサッ
魔王(基本背中から飛び越すようだな)
教師「次っ」ピッ
魔王(と、考えている間にわたしの出番らしい)
魔王「…ふっ」タッタッタ タンッ!!
トサッ
教師「よし、次っ」ピッ
魔王(あんな感じでいいらしいな)
魔王(そういえば身体能力だけはそのままだった)
魔王(どうもこの世界の人間と体のつくりが若干違うらしい)
魔王(加減しないとな)
………
魔王「…ふっ」タッタッタ タンッ!!
トサッ
おぉぉぉぉぉ!!
魔王(少しずつ高くなっていったのだが…)
教師「驚いたな…」
生徒「あの高さまで飛べるなんてすごいっ」
魔王「は、はは…」
魔王(少々やりすぎてしまったかもしれない)
魔王(やはり人間って面倒だっ)
-昼休み-
生徒「魔王ちゃんってホントに元病人なのか?」
生徒「すごい運動神経だよねぇ」
生徒「前に2階から飛び降りてたし、何かやってたの?」
魔王「少々鍛えたから…かな…」
魔王(体育以来、なんだか別の印象を与えてしまったようだ)
生徒「容姿だけじゃなかったという事か…」
生徒「これで頭良かったら完璧すぎるわぁ」
魔王「頭は…あまり…」
魔王(何せこっちの事はまだ基本ぐらいしか分からないからな)
生徒「ですよねー」
生徒「そこまで完璧超人いるわけないか」
魔王(しかし、こうやって何人もの人と話すというのも悪くないな)
???「…」ジー
魔王「っ!?」キョロキョロ
生徒「どうしたの?」
魔王「なんでもない…よ…」
魔王(学校内にも気配が…まさかな…)
-放課後-
女「まおたん、どう?」
魔王「え?」
女「まだ誰かついてきてる?」
魔王「…今はいないみたい」
女「そっかー」
魔王「でも昼休みに…いたかも…」
女「えぇっ!?」
女「じゃあうちの学校の生徒かな?」
魔王「でもそれは今日だけだったし」
女「うーむ…不法侵入してきたのかな…」
女「っとー、ここでお別れだけど大丈夫?」
魔王「もうちょっとで着くから」
女「そっか、じゃあねっ」タタタ
魔王「うん、また明日…」
魔王「…」テクテク
………
魔王「やっぱり1人の時だけか…」
???「…」ジー
魔王「いっその事…」コォォォォ
ガシッ
魔王「!?」バッ
賢者「私だよ、やめておきな」
魔王「賢者か…でも…」
賢者「あんたはそのまま家へ向かうんだ」
賢者「私は途中で別れたフリして奴を捕らえる」
魔王「…分かった」
賢者「さすがに気になるんだよね」
魔王「え?」
賢者「私も関係あるのかなって」
魔王「あー」
魔王(賢者がいる時もヤツは離れないからか)
賢者「だからこそバイト中断してまで来たんだ」
魔王「バイトに問題は…?」
賢者「普段から真面目にやってるから少しぐらい何も言われないよ」
魔王「そっか…」
賢者「じゃあここで」
魔王「了解」
賢者「犯人にはきっついお仕置きが必要だな…」タタタッ
魔王「…」
魔王(言われたとおり家まで行こう)
-アパート前-
魔王「ついた…」
グイッ
魔王「!?」
?「そのまま動かないで」
魔王「むー」
魔王(この声は…)
?「これでストーカーがどう動くかな?」
???「!?」
???「わたしの魔王ちゃんが!!」ガタッ
賢者「なーにがわたしの魔王ちゃんが…だっ!!」
ゴチンッ!!
???「あいたぁ!!」
賢者「犯人があんたとはね」
賢者「私といても離れなかったのでピンときたわけだ」
賢者「ちなみにあの子捕まえてるのはあの子の友達さ」
賢者「あんたの気を引くため演技してもらった」
???「え?何のことやらさっぱり…」
賢者「あの子をジーっと見てた時から怪しいと思ったんだよ」
賢者「前に私にもついてこようとしてたの思い出してよかったわ」
賢者「最近あの子の帰宅時間ぐらいに休憩入れてたから変だとは思ったんだよ」
バイト「わたしは別に変な事考えてたんじゃ…」
賢者「ストーカーしてるだけで迷惑だっつーのっ!!」
ゴチンッ!!
バイト「いたぁい!!」
賢者「あんた、学校にまで入り込んでたんだって?」
バイト「うぅ…魔王ちゃん見てたかっただけなのに…」
賢者「で、あわよくば魔王ちゃんペロペロ、と」
バイト「そう!!あれだけ可愛いから」
バイト「隙あらばあんな事やこんな事を色々…ぁ」
賢者「よし判決、有罪っ!!」ガシッ
バイト「しまった!!誘導だった!?」
賢者「普通、誰もあそこでノるバカないけどね」
賢者「そして、あんた変な事する気満々じゃないか」
賢者「とりあえずあんたにお仕置きするわ」ニッコリ
バイト「け、賢者ちゃんにされるなら本望…」ニ、ニコ
バイト「ぎゃぴfkjlfksdrg」バリバリバリッ!!
賢者「あの子を愛でられるのは私だけで十分だ、ふひひ」
?「もういいかな」スッ
魔王「ぷはっ、女…さんがなんで?」
女「帰ってる途中でお姉さんがいたんだよ」
女「それでストーカーの事話したら捕まえるの協力してくれって」
魔王「そうだったんだ…」
女「ちょっとした気を引く役だったけど役に立てて良かった」
魔王「ありがとう」
女「いーのいーの、お友達じゃないっ」
魔王「お友達…」
女「あれ、違う?」
魔王「ううん…ううんっ」ブンブンッ
女「よかったよ、あと女ちゃんと呼んでくれると嬉しいかな」
魔王「分かったよ、女…ちゃん」ニコ
賢者「うむ、いい笑顔だ」
魔王「賢者か」
女「あ、お姉さん」
賢者「協力ありがとね」
女「いえいえ~」
魔王「犯人は?」
賢者「毒魔法をぶち込ん…じゃない、反省させて帰した」
魔王(ほぼ全部言ってるじゃないか…)
女「もう大丈夫なんですか??」
賢者「うん、多分もう手ぇ出さないでしょ」
魔王「ほっ」
賢者「次やったら殺すし」ニッコリ
女「この人、結構怖い人…?」
魔王「多分…悪い事が許せない人なんだよ…」
魔王(出会った時も言ってたしな)
-一方その頃-
バイト「うは…なにこれ…身体が痛い…」ギシギシ
バイト「まるであの日みたいに…あふっ」ビクンビクン
バイト「苦し…痛い…」フラフラ
バイト「でも…」
バイト「これはこれで気持ちいかもっ」ビクンッ
バイト「賢者ちゃんすげぇぇぇぇ…やっぱ痛いぃ!!ボスケテ!!」ズキンビクンッ
魔王(しばらくして解毒はしてあげたそうな…)
-2週間後-
魔王「最近になって街中のライトが多数光りだしたんだけど」
魔王「これにはどういう意味が?」
賢者「あー、クリスマス近いからだねぇ」
賢者「イルミネーションってやつだよ、綺麗でしょ?」
魔王「うん…ところでクリスマスというのは?」
賢者「イベントさ」
賢者「赤と白のモフモフした服を着てみたり、パーティ開いたり」
賢者「美味しい物食べたり、男女で乳繰り合ったり」
賢者「一種のお祭りだわね」
賢者「実際は正式な意味がある日らしいけど」
魔王「ほぇー」
賢者「まぁ正確にはもうちょっと後日になるんだけどね」
魔王「わたし達は何かしないの?」
賢者「やりたい?」
魔王「うん」
賢者「素直なまおたん、大好き」
賢者「そんな事もあろうかと準備は始めてるところだよ」
魔王「ホントに!?」
賢者「ホントホント」
賢者「あと1週間後を楽しみにしてるんだよ?」
魔王「分かった!!」
賢者「嬉しそうにしちゃって」ニコニコ
賢者(もっと人数集められたらもっと楽しくなるんだろうけどね)
ピンポーン
賢者「おっと頼んだピザが来たね」
賢者「たまには楽したくなるよね~、今行きまーす!!」
魔王「わたしに任せて」スクッ トコトコ
賢者「ホント動いてくれるようになったわぁ」ノビノビ
魔王「今開けます」ガチャ
ピザ屋「お待たせしました、こちらが…ぅえ?!」
魔王「え゛…」
ピザ屋「ごほん…こちらがご注文の品となります」スッ
魔王「いや、何やってんの?」
ピザ屋「料金は…」
魔王「聞 い て い る の か 勇 者 ! !」
賢者「どうしたんだい?」
魔王「知った顔がいたので…」
賢者「二つ隣の部屋に住んでるゆうちゃんじゃないかい」
賢者「ピザ屋のバイトはじめたんだっけか」
魔王「知ってるの!??!」
魔王「しかもすごく近くに住んでるみたいだし?!」
賢者「偶然大家さんの所来てたから、あんたと同じように色々教えてあげたんだよ」
勇者「なんでこんな所に魔王が…」プルプル
賢者「なんだい、知り合いだったのかい」
魔王「これ、自分の世界でわたしをギリギリまで追い込んだ勇者だよ」
賢者「あらま」
勇者「この世界にいるのは分かっていたが…」
勇者「まさか賢者さんと同居してるとは予想外過ぎだ…」
賢者「じゃあとりあえずお腹ペコちゃんのお姉さんにピザをおくれ」
勇者「あ、はい…どうぞ」スッ
賢者「はーいお金ね~」チャリッ
勇者「ありがとうございました…」
勇者「まさかここから出前くるとは思いませんでしたよ」
賢者「のんびりしたかったから手を抜きたくてね」
魔王「…」
賢者「ゆうちゃんも食べてく?」
勇者「いえ…仕事中ですので…」
賢者「でももう終わる時間じゃない?」
勇者「何で分かるんですか!?」
賢者「そこのバイトしてたことあったしぃ~」
賢者「まぁ電話しておいてあげるから入りな」
勇者「すみません…」
勇者「聞きたい事もありますし、お邪魔します…」
魔王「…」
賢者「まおたんもアツアツのうちに食べよ?」
魔王「うん…」
勇者「ぶふっ!!」
魔王「!?」キッ
勇者「あの魔王が『まおたん』だって…ぷふっ!!」
魔王「…」ユラリ
魔王「殺す…」メラメラ
勇者「何その可愛い炎!!さすが『まおたん』!!」
魔王「自己犠牲破壊魔法…」ゴゴゴゴゴ
勇者「いっ!?」
勇者「それ、ここでも使えるの!?さすがにやばいからやめてよ!?」
賢者「お腹ペコちゃん…」グルルルー
魔王「あ…ごめん」シュウッ トサッ
魔王「食べよう」
勇者「あ、あれ?おしまい?」
魔王「勇者も一緒に食べよう」
勇者「へ?」
賢者「この子は空気を読んだんだよ」
賢者「今は暴れる時でも暴れる場所でもないってね」
勇者「…」
勇者「もしかして『教育』したのですか?」
賢者「この子自らの判断だよ」
賢者「それを笑うとさすがに私は怒るよ」
勇者「…分かりました」トサッ
魔王「…」ゴソゴソ
賢者「じゃあ遠慮なく食べておくれっ」
魔王「あ、飲み物…何がいる?」スクッ
賢者「じゃあ私はビールー」
魔王「了解、勇者は?」
勇者「…何があるの?」
魔王「お酒…はさすがにダメだからオレンジジュースかお茶」
勇者「オレンジジュース…」
魔王「了解」トコトコ
勇者「賢者さん」
賢者「はふはふ…ん?」
勇者「どうして魔王はあんなに大人しいのですか?」
賢者「わたしにそれ聞かれてもねぇ」
勇者「もっと威厳のある佇まいだったのに」
勇者「今は…普通の女の子のような…」
賢者「そいつはここで暮らすために頑張った結果だよ」
賢者「あんたと同じようにね」
賢者「元より大人しい感じではあったし」
賢者「案外あれがデフォかもよ?」
勇者「そうですか…」
賢者「倒すために追ってきたんでしょ?」
勇者「そのつもりでした」
賢者「でもお互い戦うほどの力も余裕も失ったってところか」
賢者「だったら今は憎み合わなくてもいいじゃない」
賢者「帰る方法は考えておいてあげるからさ」
賢者「こののんびりした世界をお互い楽しんじゃえばいいんだ」
賢者「戦うのは戻ってから、ね?」
勇者「本当にあなたは賢者と呼ばれてるだけありますね…」
賢者「いやいや、ただの頭でっかちの変態女だよ」ニッ
勇者「なんですかそれ」ニコ
魔王「楽しそうだね」
勇者「…」
賢者「まおたんも変態トークに参加するかい?」
魔王「これでも飲んで大人しくしててっ」ドンッ!!
賢者「ひゃっはー!お酒だー!!」カシュッ グビグビ
魔王「はい」トンッ
勇者「…ありがと」
賢者「ふーむ…」
魔王「どうしたの?真剣な顔して」
賢者「いや…どんなもんだろうなと思って…」
魔王「?」
勇者「どんなもんとは?」
賢者「いやぁ…」ジー
魔王(賢者の視線の先に…)
勇者「うち?」
賢者「その二つのメロンのサイズが出会ってからずっと気になっててね…」
魔王「変態、自重しろ」ポコッ
賢者「だってーあんなにでかいと気になるじゃなーい」
勇者「…ぷっ」
勇者「あはははははは」
勇者「ツッコむ魔王なんてはじめて見た、あははははは…」
魔王「む」
勇者「いや、さっきみたいにバカにしてるわけじゃなくて」
勇者「イメージが違いすぎて面白かったから」
魔王「変?」
勇者「変ね…くくくっ…」
魔王「結局バカにしたな…」ゴゴゴゴゴ
勇者「それやめってって!?」
賢者「だったら罰ゲーム執行っ」モニッ
勇者「ひっ!?」
賢者「ウソつきの罰~」モニモニ
魔王「これでシラフだから危ない人なんだよね」
勇者「あっ…変な解説いいから…んんっ…たすけ…」
賢者「スタイルもいいしグラビアとかに出たらいいかもなぁ」モニモニ
勇者「ひぃぃぃぃぃぃ」
魔王「ざまーみろ」
あ、大体女ばかりです
ちょっと分かりづらいかもしれませんがそう思って読んでくれてかまいませんよ
男はしゃべり方とかではっきり分かるのでそれで判断してください
賢者「─――」ピクピク
魔王「やっと大人しくなった…」
勇者「いやいや、あんたが大人しくさせたんでしょ!?」
勇者「睡眠魔法と衝撃魔法の乱打はさすがに死ぬかと…」
魔王「意外と丈夫だからその内起きる」
勇者「…あんた、本当に変わったわね」
魔王「変わらざるをえなかったんだよ」
勇者「言っておいてなんだけどそれには同意」
勇者「うちの話し方は元から変わってないけど」
勇者「暮らし方は変わった」
魔王「向こうと全然違うしね」ニコ
勇者「…くっ」
魔王「何を悔しがってるの?」
勇者「あんた…うちより可愛らしいじゃない…」
魔王「そうかな?」
魔王「わたしはあまりそういうの分からないけど」
魔王「勇者だって可愛いと思う」
勇者「いやいや」
勇者「うちは戦いの事ばかりでそういうのは全然だったんだよ」
勇者「おしゃれとかしてる余裕もなかった」
魔王「ならここで変われば良いんじゃないのかな」
勇者「そうだけど…あぁ~やっぱり魔王のほうが可愛い…」
魔王「関係ない話だけどひとつ聞きたい」
勇者「なにさ?」
魔王「魔法使える?」
勇者「ぶっちゃけ全然使えない」
勇者「せいぜい回復魔法(小)ぐらいだね」
勇者「元々魔法は苦手分野だったけど」
魔王「やっぱり世界変わるとなくなるのか…」
勇者「やっぱあんたは膨大な魔法所持してたから結構使えるようね」
魔王「でもここじゃ必要ないのは分かったし」
魔王「それでも使えるのだいぶ減ったよ」
勇者「そうだね」
勇者「しょうがないな…」
勇者「しばらくはあんたと共生しようじゃない」
魔王「いいの?」
勇者「お互いが全快の状態じゃないと意味がないじゃない」
魔王「優しいね、君は」
勇者「マジ悔しい…話し方ですらなんか可愛い…」
魔王「?」
魔王「ここには一人で来たの?」
勇者「メンバー二人はついてきたよ」
勇者「僧侶は向こうに大切な人がいるらしいから置いてきた」
勇者「帰れなくなって泣かれても困るからね」
魔王「やっぱり優しいね勇者」
勇者「べ、別に泣かれたら対処が面倒だっただけよっ」プイッ
魔王「で、他の二人は?」
勇者「転送した時、離れ離れになったけど」
勇者「騎士はホテル街をぶらぶらしてるの見た」
勇者「ここの生活を楽しんでるようだったわ」
魔王「ホテル街…最初に来た時行った悪い奴がいた所か」
勇者「アレにはできたら関わりたくないからもう放置してる」
勇者「放っておいても勝手に生きるし」
魔王「はじめて会った時告白?されたっけ」
勇者「魔王相手に愛を語るとかアホ以外ないでしょ」
魔王「今ならあれがどういう意味か分かる」
勇者「知らなかったのっ?!」
魔王「愛とか恋とかそういう感情が分からなかったから」
勇者「ふぅん」
勇者「あとは魔術師か」
勇者「あの子は正直どこにいるか分からない…」
魔王「元々無口だったみたいだしね」
勇者「考えてる事もよく分からなかったし」
魔王「でも心配してるんだね?」
勇者「魔法はすごいけど12歳の少女だよあの子は…」
賢者「変なのに捕まってないといいね」
勇者「うん…って、賢者さんいつのの間に…」
魔王「あ、起きたんだ」
賢者「あの永久2コンボはさすがに効いたわぁ」
賢者「まーちんはこっちで探しておいてあげよう」
勇者「ぶふっ!!」
魔王「何で人のあだ名で吹くの?」
勇者「な、なんでか笑っちゃうんだよ…」
勇者「うちはそろそろ帰りますね」
勇者「ごちそうになりました」ペコリ
賢者「持ってきたのゆうちゃんだけどねー」
勇者「ははっ…」
魔王「勇者」
勇者「なに?」
魔王「…」スッ
勇者「…なに?」
魔王「共生の握手」
勇者「ホント変わったね」ギュ
勇者「いつまでか分からないけどよろしく魔王」グッ
魔王「よろしく勇者」ニッコリ
勇者「くそぉぉぉぉぉ!!」ダンダンダン!!
賢者「なんか地団太踏んでるけど大丈夫かいこの子?」
魔王「気にしないであげて…」
-次の日-
魔王「じゃあそろそろ行ってくる」
賢者「はーい、いってら~」
ガチャ
勇者「…ぁ」
魔王「あれ、勇者も学校行ってたんだ?」
魔王「近くに住んでたのに気づかなかったって…」
勇者「ま、まぁ…賢者さんに強引に…」
魔王「そっか、だったら一緒に行こう」
勇者「しょ、しょうがないわね…」
魔王「でもこんな近くに住んでたのによく気づかなかったねお互い」
勇者「存在自体は知ってたわよ、あんただとは思ってなかったけど…」
魔王「あはは、あまり一人で外出たりもしてなかったしなぁ」
勇者「異世界でしかも一人であまり歩き回りたくないのは分かるわ」
魔王「あ、やっぱり勇者も?」
魔王「いつも以上に視線を感じる…」
勇者「あんたも結構有名なのね」
魔王「あんた『も』?」
勇者「あ」
生徒達「おい、例の美少女と番長が一緒にいるぞ」
生徒達「最強コンビじゃない?」
魔王「…番長?」
勇者「…」
魔王「勇者って番長って呼ばれてるの?」
勇者「忘れろっ!!」
魔王「さすがに無理だって…」
勇者「くっ…」
勇者「学校行った初日にさ」
勇者「ひどいいじめの現場を目撃して」
勇者「いじめてた奴撃退したらそう呼ばれだした…」
勇者「倒した相手がこの辺で有名なヤツで迷惑してたんだってさ」
勇者「そのせいかうちはいつの間にか『番長』に…」
魔王「そうだったんだ」
勇者「笑いたきゃ笑いなさいよ…」
魔王「笑う?何で?優しいじゃない」
魔王「悪い事してないなら気にする必要ないよ」
勇者「…」
魔王「勇者らしくていいと思う」ニコ
勇者(魔王ってこんな優しい生き物だったっけ?)
勇者「は、早く行くわよっ」プイッ
魔王「あ、待ってっ」
-昼休み-
魔王「女ちゃん」
女「うん?何?」
魔王「勇者、知ってる?」
女「あー…うん、有名な人だし知ってるよ」
女「まおたんよりあとぐらいだったっけ?に転校してきた人で」
女「たった一日で学校一危ないって人を叩きのめしたとか」
魔王「で、番長って呼ばれていると」
女「そうそうっ」
女「でも女の子だからちょっとかわいそうだよねぇ」
魔王「うん」
勇者「そこの君、魔王ここにいる?」
生徒「あ、番長さんじゃないですか」
勇者「番長じゃ…ないもん…」ズーン
生徒「魔王ちゃーん、番長さん…じゃなかった勇者さんが呼んでるよ」
魔王「何で勇者が…?」
女「何でかすごく落ち込んでるね」
魔王「勇者、わざわざここに来てどうしたの?」
魔王「確か一年上だったよね?」
勇者「ぐす…そうだよ」
魔王「何で泣いてるの?」
生徒「多分、俺が禁句言ったからかも…」
女「『番長』かな」
勇者「違うもん…ぐす…」ズーーーン
生徒「やめたげてよぉ!!」
女「最初に言ったの君じゃん…」
魔王「用事あるんじゃないの?」
勇者「そうだった…お昼、食べた?」
魔王「今食べてるところだったけど」
勇者「じゃあいいや…」トボトボ
魔王「待って」ガシッ
勇者「…なに?」
魔王「一緒に食べよう?まだ途中だし」
勇者「でも…」
魔王「そのために来たんじゃないの?」
勇者「ぐすぐす…」
魔王「あれ、なんかいけない事言ったかな?」
勇者「ホントにいいの…?」
魔王「いいよ」
女「あれ、なんか1人増えそう」
女「でも楽しそう」
魔王「場所変えようか?」
魔王「女ちゃん」
女「はいはい、かまわないよ~いつもの場所行こうか」
魔王「勇者、ついてきて」
女「まおたん、お弁当忘れてるよー」
魔王「あぅ…」
勇者「やっぱり可愛い…くやしい!!」ガシガシッ!!
生徒(番長がゴミ箱蹴ってる…でも不思議とあまり怖くない…?)
-未使用教室-
魔王「じゃあ食べよう」
女「勇者さんってなんというか…すごいエロい」ジロジロ
勇者「ぶはっ!?」
勇者「なななな何を…」
魔王「よく育ってるよね」ニコニコ
勇者「うるさいっ!!」
女「でも番長」
勇者「ぐすぐす…」ズーン
魔王「泣かせちゃダメだよ」ナデナデ
勇者「魔王優しくなったわね…」
魔王「そう?」
勇者「あっちの世界にいた頃とは大違いだわ」
女「あっちの世界?」
魔王「わーわーっ!?」
勇者「あ、なんでもないっ!!」
魔王(勇者…)ジロリ
勇者(ごめん…油断したわ…)
女「えっと、何か事情ありそうだし聞かなかったことにするよ」
魔王「ごめんね」
女「知り合いだったんだね?」
魔王「うん」
勇者「それにしても魔王はいいなぁ…」
勇者「遠くから見てただけでも人気者だし愛されてるのが分かる」
勇者「それに引き換え、うちなんて…」
勇者「番長って呼ばれて、みんな怖がって誰も近寄らない…」
魔王「何でわたしのところに来たのか気になってたけど」
魔王「そういう事だったんだね」
魔王(ずっとひとりぼっちだったのだ、彼女は)
魔王(頼りたくはなかったのだろうけど、知っている人物がわたしだけだったから…)
女「うわぁ…そんなの知らず番長番長って言ってたよぉ」
女「マジでごめんなさい」ペコリ
勇者「いや、かまわない」
勇者「もう慣れてるから…」モクモク
魔王「…」
女「まおたん?」
勇者「ぶふっ!?」
女「え、なに??」
勇者「ゴホゴホ…ちょっと詰まらせただけ…」
勇者(いつ聞いても笑ってしまうわ…この癖なんとかしないとな…)
魔王「勇者を何とかしてあげたいな」
勇者「え?」
魔王「ホントは可愛くなりたいんじゃないの?」
勇者「まぁ…うん…」
勇者「素直に白状するとそういうものになりたかった」
魔王「昨日ずっとわたしが可愛いって言ってたので気づいたよ」
勇者「でもうちじゃ無理でしょ…」
女「素材は良いもの持ってるからなんとかなるんじゃないかな?」
女「スタイル抜群、運動神経もいいときた」
女「まおたんに匹敵するほどレベル高いと思う」
魔王「わ、わたしは別に…///」
女「まおたん、人気投票覚えてる?」
魔王「うん、クラスの男子がやってるっていうやつだよね?」
女「そうそう、それを利用して勇者さんのイメージを変えてしまおう」
勇者「え?」
魔王「いいね、やろうか」ニッコリ
勇者「え?え?」
支援
更新早いのもいいよね
>>105 支援ありがとうございます
自分では遅いと思ってたんだけどwこれぐらいでいいみたいなのでこのペースでいきます
-次の日の昼休み-
ザワザワ…
司会「突発イベント・ミスコン開催です!!」
司会「このイベントは女子限定で参加が自由となっております」
司会「見事優勝した方には某レストランでスイーツ食べ放題券を進呈だ!!」
女生徒「うっそ…あの有名なところのじゃない?!」
女生徒「私出てみようかなぁ…」
司会「参加表明してくれた人から順に自己アピールしてもらいます」
司会「参加者がいなくなり次第投票に入ります」
司会「さぁ自分に自信のある女子!!」
司会「このチャンスを逃したら二度目は多分ないですよ!!」
司会「人気とスイーツを手にできるのは君次第だぁ!!!!」
女「これはひどい」
女「でも、これで舞台はそろったね」
魔王「女ちゃん、実はすごい人?」
魔王「この企画できるまで誘導するなんて…」
女「誰でも出来るってこんなの~」
魔王「あとはこれに参加するだけだよ…って勇者?」キョロキョロ
女「どこ行ったの、あの人…」
魔王「さ、探してくるっ」ダッ
賢者「面白い事やってるじゃない」ヒョコ
魔王「賢者?また来たの?」
賢者「この子必要なんでしょ?」グイッ
勇者「うぅ…」
賢者「バカ正直に逃げてきたって言ってたから捕獲してみた」
女「お姉さん、ナイス!!」
勇者「こんな人前になんて出れるわけない…」
魔王「勇者…」
勇者「どうせうちは脳筋女だよ…」
勇者「番長と呼ばれてるんだよ…」
勇者「そんなのが出たって何の意味が…」
魔王「大丈夫だよ、出よう?」
勇者「いやだよ」
勇者「うちなんかじゃ無理よ…」
魔王「出よう?」
勇者「…」
賢者「詳しくは知らないけど」
賢者「これは一肌脱ごうじゃないか」
賢者「司会者さーん!!ここに参加したい子いますよー!!」ブンブン
勇者「や、やめてくださいっ?!」
賢者「こういうのはやってみなければ結果なんて分からないんだ」
賢者「やらずにずっと嫌われ者か、やって人気者か」
賢者「あんたはどちらを選ぶんだい?」
勇者「…」
賢者「なんてね、選択肢なんてあってないようなもんだろう?」
賢者「ぶっちゃけ結果なんて気にする必要はないさ」
賢者「良くても悪くてもやれば何かが変わる」
賢者「私としては頑張ってほしいところだよ」
勇者「賢者さん…」
魔王「わたしもだよ」
魔王「頑張ってほしいな」
勇者「魔王…」
司会「お姉さーん!!参加者はどの子ですかー?」
賢者「さぁ、勇気をだしな」
賢者「『勇気ある者』だろう、あんたは」
勇者「!?」
勇者「そうだ…うちは『勇気ある者』…『勇者』なんだ」
スッ
勇者「うちです…」
司会「ななななんとぉーっ!!まさかの次の参加者は番長と呼ばれたあの人…」
司会「勇者さんだぁぁぁぁぁ!!」
ザワ…ザワ…
マジカ アノヒトガサンカヲ? ソウイウヒトダッケ?
勇者「…」
賢者「ゆうちゃん、手を貸しな」
勇者「?」スッ
ポォォォォ
勇者「魔法の指輪?」
賢者「私オリジナルの変装魔法が込められている」
賢者「そいつを使ってあっと言わせてきなっ」グッ
勇者「使い方は…よし、ありがたく使わせてもらいます」
テクテク
魔王「大丈夫かな…」
賢者「あの目はどんなものにも負けず、どんな障害も切り抜ける『勇者』の目だよ」
賢者「心配は要らないさ」
勇者「…」
ザワザワザワ…
司会「それでは自己アピールをどうぞー!!」
勇者「…」スゥー
勇者「うちは…」
勇者「みんなの知っての通り腕力しかない子です」
勇者「でも、本当はそういうものよりなりたいものがありました」
勇者「それは…普通の女の子のような可愛いものに」スッ
女「布被ってどうするの?」
賢者「まぁ見てなって」
魔王「頑張って…」
バッ!! シュンッ
勇者「!?」
勇者(こ、これは…)
勇者(ヒラヒラフワフワしてて…でもかわいい服だ)
生徒「メイドさんだ!!」
生徒「うお、やべぇ!!ご奉仕されてぇ?!」
バッ!! シュンッ
勇者「!!」
勇者(これはちょっと恥ずかしい…)
生徒「ちょ、あんなでかかったのかよぉ!?」
生徒「スク水かよ…なんかすごいもの見たわ…」
生徒「マニアックだなぁ…俺は好きだがな!!」
女「えっと…早着替えか何かかな、これ」
魔王「そうじゃないかな」ニコニコ
バッ!! シュンッ
勇者「!?!?!??!?!」
賢者「あ、変なもの組み込んじゃってた」テヘッ
生徒「シ ャ ツ 一 枚 だ と ! !」
魔王「変態…」ジー
賢者「あ、あっはっはっは…視線が痛いよ、ふひひ」
勇者「うぅ…」
勇者(あの人…なんてことしてくれたの…)
勇者(でも…うちは負けない!!)
賢者「次で最後だよ」
バッ!! シュンッ
勇者「あ…」
女「ただの私服?」
魔王「さっきの中で一番可愛いかも」
賢者「いわゆる普段の姿というヤツだね」
賢者「アレ最後にしたのは本当の姿ってヤツを見せるためさ」ニッ
勇者「…これがうちのいつもの姿です」
勇者「似合わないのは分かっています…でも…」
勇者「ただの可愛いもの好きな女の子なんです」
勇者「こんなうちだけどよろしくお願いします」ペコッ
勇者(このために魔法を渡してくれたんですね…賢者さん)
シーン
勇者(これで…いいんだよね…)
パチパチパチ…
パチパチパチパチパチッ
ワァァァァァァァァァァ!!
生徒「怖い人かと思ったけどそうじゃなかった!!」
勇者「!?」
生徒「俺はあんたを応援するぜ!!」
生徒「ちくしょう…可愛いじゃないか…」
生徒「惚れてまうやろーっ!!」
勇者「うちにこんなに声援が…」グス
賢者「さすがだね」
魔王「よかったぁ…」
女「これで勇者さんのイメージ大分変わっただろうね」
魔王「だからといってあれはなかったと思うんだけど?」ジトー
賢者「まぁお姉さんでも失敗はあるさ…」
賢者(ホントは狙って間違えたんだけどね)
賢者(サービスショットは誰もほしいでしょ)
魔王「今日のおかずひとつ抜き」
賢者「そんなっ!?」
-帰り道-
魔王「結局、優勝はできなかったね」
女「ファンクラブのようなものはできたみたいだけど」
女「『勇者ちゃんを愛し隊』だっけ?」
勇者「ぁぅ///」
女「意外と可愛い生き物だったんだねこの人」
勇者「『意外と』とか言うな…」
魔王「わたしは知ってたけど」ニコニコ
女「あ、あたしここまでだ」
魔王「うん、また明日ね」フリフリ
女「ばいば~い」ブンブン
勇者「あの女め…」スッ
魔王「せっかく協力してくれたんだから怒ったらダメだよ」
勇者「分かってるわよ…」
勇者「魔王はなんで参加しなかったのよ?」
魔王「勇者のためのイベントだったんだから」
魔王「わたしが出たら意味ないよ」
勇者「あんた…」
勇者「絶対優勝できてただろうね、あんただったら」
魔王「そうかな?」
勇者「可愛いし…」
魔王「でも今日の勇者には負けるよ」ニコ
勇者「くっ///…今日はありがと」ボソ
魔王「うん」ニッコリ
勇者「でもホントあんたは別人すぎるわ…」
魔王「こっちの方が気に入っちゃって」
魔王「戻りたくなくなってね」
勇者「まぁいいんじゃない?」
勇者「向こう帰ってもそれだと威厳も何もなくなるけどね」
魔王「む」
-夕方 某所-
賢者「探し人見つかったのはいいけど」
賢者「こいつはなかなかの曲者ね…」
魔術師「…」
賢者「容赦なしに魔法撃ってくるとはね…」
賢者「氷片が刺さって痛い…」ドクドク…
賢者「何も怖いものはないからおいで?」スッ
魔術師「…」ブツブツ
カッ!!
ドガッ!!
賢者「くぁっ!!」ドシャッ
賢者「っつー…こりゃまおたんに心配されるな…」
賢者「さすがにお姉さんも我慢の限界だわ…」ゴゴゴゴ
魔術師「!?」
賢者「むやみやたらと魔法を人に撃つなと教えられなかったのかね…」ゴゴゴ…
賢者「もう泣いて謝ってもも許してあげないよっ」カッ
-部屋-
魔王「晩ご飯できたけど賢者が帰ってこない…」
魔王「いつもなら帰ってきてるのになぁ」
魔王「何かあったのかな?」
コン…コン…
魔王「?はーい」パタパタ ガチャ
賢者「帰ったぞぅ…」ボタボタ…
魔王「け、賢者!?どうしたのそれ!?」
賢者「ちょっと野良猫捕まえるのに苦労してね」ドサッ
魔術師「…」グタ
魔王「魔術師…見つけれたんだ」
魔王「でも、その怪我は…」
賢者「その子に噛みつかれたのさ…」ニコ
魔王「わたしじゃ回復できない…そういう呪文最初からないから…」
賢者「わたしゃ魔力消費しすぎてこれ以上使えない…」
賢者「元より回復系はこっちじゃほぼ使用不可だったりして」
魔王「どうしよう…あっ!!」
魔王「待っててっ」ガチャ パタパタ
-数分後-
勇者「こっちだってほとんど使えないっていうのに」
勇者「いきなり呼び出した上に無茶させてくれるわね…」ポォォォォ
魔王「ごめん」
賢者「悪いね…いたいいたい…」
勇者「いや、この子探してくれたから文句は言いませんけど」チラッ
魔術師「…」スースー
賢者「養護施設にいたんだよ」
賢者「誰かに保護されたらしくてね」
賢者「でも、誰にも懐きやしなかったらしいよ」
勇者「その子はかなりの人見知りなんです」
勇者「仲間になるまでうちらも賢者さんのように襲われましたよ」
賢者「そんなのでよく仲間になったもんだわ」
勇者「僧侶のおかげです」
勇者「唯一、噛みつこうとしなかった相手なんだ」
魔王「本能でどういう人間か分かったんだろうね」
勇者「多分ね」
勇者「あの子は虫一匹殺すことのないような優しい子だったから」
賢者「じゃあこの子はゆうちゃんにまかせるかね」
賢者「ありがと、もういいよ」
勇者「ついでに言うともうほとんど魔力残ってなかったんですけどね…」ポヒュッ
賢者「ただでさえない魔力使わせて悪かったね」
勇者「いえ、こちらこそ魔術師を探してきてくれてありがとうございました」
賢者「でもこれから大変そうだわ」
魔王「その子?」
賢者「うん、普通の人間噛みつかないかと思ってね」
魔王「今までは大丈夫だったのかな…」
賢者「施設の人に聞いたけど一応大人しくはしてたみたい」
賢者「私にはすぐ襲い掛かってきたけど」
勇者「魔力感知されたのかも…」
賢者「きっとそれだろうね」
賢者「異世界に膨大な魔力持った人がいるんだ」
賢者「普通は恐れるだろう」
勇者「あとはうちにまかせておいてください」
勇者「とりあえず帰りますね」ググッ
魔王「手伝わなくて大丈夫?」
勇者「すぐそこだからいいわよ、じゃ」
バタン
賢者「さてさてどうなるやら」
魔王「うわ、他人事だ…」
-翌日 勇者の部屋-
勇者「ふんふ~ん♪」グツグツ
魔術師「ん…」
勇者「ん?起きた?」
魔術師「!?」ガバッ
勇者「よく眠ってたね」
勇者「服、ボロボロだったからうちの着せてるけど我慢してよ」
魔術師「…」コクリ
勇者「人様に『また』迷惑かけてたんだって?」
魔術師「…」ショボン
勇者「人が怖いのは分かるけどねぇ…」
勇者「優しくしようとしてくれてる人傷つけたのは許せないわ」
勇者「あの人はうちにこの世界を教えてくれた、いわば恩人なの」
勇者「確かに魔力はあるけど、悪い人じゃないんだ」
勇者「その人を傷つけたあんたは嫌いだ」
魔術師「!!」ビクッ
魔術師「…」ジワ…
勇者「あとでその人の部屋行くからついてきて」
魔術師「…」ポロポロ
勇者「いや、泣けばいいってものじゃないんだけど」
魔術師「…」ブワッ
テコテコ ギュー
魔術師「…」ポロポロ
勇者「やっぱりあんたまだ子供ね…」ポン
勇者「最初会った時あんなにギラギラしてたのに」
勇者「今ではうちにまで甘えるようになってまぁ…」
魔術師「…」ブンブン
勇者「離して」
魔術師「…」ブンブン
勇者「離して」
魔術師「…」スッ グスグス
勇者「こんな時はどうするか分かる?」
魔術師「…」グスグス
魔術師「…ごめんなさいする」
勇者「誰に?」
魔術師「…ひどい事した人に」
勇者「よし、よく言えたね」ナデナデ
勇者「そんな魔術師は嫌いじゃないよ」ナデナデ
魔術師「…」ギュ
勇者「施設では誰にも手を出さなかったみたいね」
魔術師「…魔力なかった」
勇者「この世界は誰もないのよ」
魔術師「…」ジー
勇者「あぁ、あの人は別の世界から来たみたいだからあったの」
勇者「それじゃこの話はいったん終わり」
勇者「とりあえずご飯食べよう」
魔術師「…」コクリ
-賢者の部屋-
賢者「で、謝りに来たわけかい」
勇者「はい…ほら」ポン
魔術師「…」ジー
賢者「すっごく反抗的な目をされてて泣きそう」ショボーン
勇者「すみません…」
賢者「昨日は驚かせちゃって悪かったね」
賢者「このとーりだっ」ベタ
勇者「ちょ、なんであなたが…」
魔術師「…」ポカーン
賢者「ショック与えて気絶させちゃったわけだしさ」
賢者「こっちだって悪い事したと思ったわけよっ」
賢者「まぁこんな危ない人を拒絶するのは当然かもしれないね」
魔術師「…」オドオド ギュ
賢者「あら、ピト虫された」
魔術師「…全然痛くなかったの」
賢者「そりゃ人を傷つけるのはお姉さん好きじゃないしねぇ」
賢者「持ってる頭脳と知識は大切な人守るために使ってんだからさ」
賢者「あんたもせっかくの知識をそういうところで使いなさいな」ポン
魔術師「…痛くしてごめんなさい」
賢者「はっは、もういいさ」ナデナデ
勇者「こんなにすぐ懐くのは初めてかもなぁ…」
賢者「え、これもう懐いてるの?」
勇者「懐かないと抱きついてこないですから」
賢者「おっほ、ちびっこおさわり放題ktkr」スリスリスリ
魔術師「…♪」
勇者「あれ、そういえば魔王は?」
賢者「あぁ、あの子なら…」
-近所の公園-
魔王「ぼー」
幼女「わーい」ポテポテ
魔王「元気だなぁ…」
魔王「今頃お部屋に勇者たち来てるんだろうな…」
魔王(わたしは魔王だから彼女には嫌われるだろうから)
魔王(いない方がいいと思ってこの子と遊ぶついでに出てきたわけだが…)
幼女「まおまお!!」
魔王「いつの間にわたし、そんなあだ名つけられたの…?」
幼女「これまわしてー」
魔王「はいはい」クルクル
幼女「きゃっきゃっ」
魔王(そう…わたしは魔王だったのだ…)
魔王(ここにいるとつい忘れそうになる)
魔王(元の世界へ戻ると、わたしはまた人間と争わないといけない)
魔王(何も楽しみなどなかった)
魔王(魔族の繁栄のためにしか動いてなかったからだ)
魔王(わたし個人の事など考えた事もなかった)
魔王(この世界はわたしを明るく照らしてくれたのだ)
魔王(自分が自分でいられる世界に…)グッ
幼女「ま~お~と~め~て~」
魔王「あ」ガシッ
魔王「ごめ…んっ!?」グイッ
魔王「うあっ」ズシャァァァァ
ドガッ!!
魔王「うっ!?」
幼女「まおまお?」
魔王「ご、ごめん…ぼーっとしてた…よ」フラフラ
幼女「だいじょうぶ?」ポテポテ
魔王「うん、転んだだけ…だから…」
魔王「あ――」ドサッ
幼女「まおまお?まおまおー?」ユサユサ
幼女「ふぇ…」
魔王「──」ドクドク
-賢者の部屋-
賢者「おっと随分と時間経ってたね」
勇者「結構話してたんですね」
賢者「気にしてなかったよ」
魔術師「…」グリグリ
賢者「懐かれたのはいいけどくっつきっぱかい…」
勇者「誰かにべったりするのが好きみたいですよ」
魔術師「…♪」
賢者「それにしてもあの子遅いね」
賢者「無駄に気を使ってるのかもしれないな」
勇者「この子いるからですか?」
賢者「おそらくそうでしょ、今はあんな子でも…ね」
魔術師「…?」
コンコンコンコン
賢者「おや、誰か来たようだ」
勇者「死亡フラグですか?」
賢者「なんだって?」
勇者「な、なんでもないです…」
賢者「誰ー?いるから入っておいでよ」
ガチャ
幼女「けんじゃ~」ポテポテ
賢者「おや、幼女じゃないかい」
幼女「きてきてっ」ポテポテ グイグイ
魔術師「…む」ググッ
賢者「取られるわけじゃないっちゅーのっ」ナデナデ
賢者「どうしたんだい?まおたんと一緒にいたんじゃないのかい」
幼女「まおまお、うごかなくなったの」
賢者「え?」
幼女「くるくるからぽーんってなってごちんって」
賢者「ちょ…どういうこと…」
勇者「もうちょっと教えてくれないかな?」
勇者「魔王は今どこにいるの?」
幼女「こうえんでうごかなくなってるの」
賢者「嫌な予感するわ…」
賢者「まーちん、ごめん」グイッ スクッ
魔術師「…?」
賢者「直接見て確認してくる」ガチャ
賢者「幼女はここにいてそこのお姉ちゃん達と遊んでて」
幼女「うんっ」
バタン
勇者「気になるわね…」
魔術師「…」ショボン
幼女「げんきない?」ポンポン
魔術師「!?」ビクッ
勇者「魔術師、あなたより小さい子だよ」
勇者「面倒見てあげるんだよ」
魔術師「…」コクリ
魔術師「…」プニプニ
幼女「くすぐったいっ」キャッキャ
魔術師「…かわいい」ポワーン
勇者「慣れるの早いな、おい」
勇者(自分より下の子には無条件なのかな)
勇者「魔王、何があったんだろう…」
-公園-
賢者「くるくるって言ってたっけ…」
賢者(何か回す遊具か…)
賢者(ここにひとつあったな)タタッ
賢者「ま…」
魔王「──」ドクドクドク
賢者「まおたんっ!?」ダッ
グッ
賢者「『ごちん』って頭打った音だったのか…」
賢者「まずいね、出血がひどい」
賢者「回復魔法系列はほとんど持ってきてないんだよね…」
賢者「持続回復魔法」ポォッ
魔王「──」ドクドク…
賢者「あまり意味がないか…」
賢者「ここじゃ人目がつきすぎる…連れて帰るか…」グイッ
賢者「ぼんやりしてたのかね」トコトコ
賢者「こんな所で大怪我するなんてさ…」
-1時間後-
賢者「…」ポォォォォォ
勇者「賢者さん…少し休んでは…」
賢者「かまわない…」ポォォォォォ
勇者「でもさすがにそこまで酷使したら…」
賢者「こんな良い子死なせるわけにはいかない…」
賢者「魔力が尽きても体力使えばいい…」
勇者「そんな事したらあなたが!?」
賢者「命削ってでも生かせてあげたい子はどこにでもいるもんさ…」
賢者「この子もその1人…」
賢者「早く起きな…待ってる人がいるんだ…」ポォォォォォォ
勇者「賢者さん…」
賢者「っ!!ごほっ!!ごほっ!!」
勇者「…もうやめてください」スッ
賢者「止めないでよ…」グイッ
勇者「殴り飛ばしてでも止めます」
賢者「バイオレンスだねぇ…」
勇者「その魔法、特殊なヤツですよね?」
賢者「よく気づいたね…」
勇者「すごい勢いで魔力が消費されてましたから」
賢者「あーあ、止めちゃったよ…」
勇者「…」
賢者「まおたん…起きな…」ポォォォォォ
勇者「やめてくださいよ…」グッ
賢者「お姉さん待ってるからさぁ…」ポタ…ポタ…
勇者「賢者さん…」
魔術師「…魔力必要なの?」
賢者「あぁ必要さ…いくらでも…」ポタ…
魔術師「…じゃあ渡す」シュゥゥゥゥゥ
勇者「ま、魔術師!?」
賢者「あんただって無限にあるわけじゃないんだから無理しなさんな…」ポタポタ…
魔術師「…」シュゥゥゥゥゥ
魔術師「…泣いてるの見たくない」
賢者「良い子だねあんたも…」ポタポタ…
魔王「ん…」
勇者「あっ!!」
賢者「まお…たん…?」グシグシ
魔王「あれ…ここ…どこ?」
賢者「あんたと私の愛の巣」ニッ
魔王「またバカな事言って…」ニコ
賢者「よかった」ギュ
魔王「わ…」
勇者「自分の身に起こった状況分かってる?」
魔王「遊具に引っ張られて、何か固いものに頭ぶつけたと思うんだけど…」
勇者「そこまで理解できてるなら大丈夫そうね」
魔王「でもすごくぼーっとするよ…」
賢者「血が足りないんだよ、寝てな」グイッ
魔王「うん…」ボフ
勇者「うちらは戻りますね」スクッ
魔術師「…もういいの?」シュゥン
勇者「もう大丈夫よ、ゆっくりさせてあげなさい」ポン
魔術師「…」コクリ
バタン
賢者「ふぅ~」
賢者「あー恥ずかしい」
賢者「人前でちょっと泣いちゃったじゃないか…」ゴシゴシ
魔王「…わたしのために?」
賢者「まだ起きてたのかコラ」
魔王「ごめん」
賢者「なんてね」
賢者「私にとっていつの間にかあんたも大切な存在になってたようだね」ナデナデ
魔王「賢者…」
賢者「一緒に寝るかな」ボフッ
賢者「魔力全部使ったし眠い…」
魔王「ありがとう…」ギュ
賢者「…すぅすぅ」
魔王「変な事する前に寝るほど疲れてたんだね」
魔王「おやすみ」
-次の日 ???-
賢者「…んー」ペラペラ カリカリカリ…
「いつの間にこちらへ戻っていたのですか?」
賢者「こっちじゃないと調べられない事あるからねぇ」
「いつもフラフラしてるくせに」
「そういう時だけ働くんですね」
賢者「これがずっと続けてきた私のスタイルだよ」
賢者「しっかし…転送関係は複雑で面倒だねぇ…」
「あぁ、例の子の…」
賢者「そうそう、迷子の子」
賢者「どうやっても人連れて空間移動は行えないか…」カリカリ
「そっち関係じゃないですけど頼まれたやつまとめておきましたよ」パサ
賢者「あぁ、わざわざありがとう」ペラペラ
賢者「うげ…これマジ?」
「えぇ、計算するとそうにしかならないんです」
賢者「これが本当に起こっているならあの子はもう…」
「たまにはこっちの子達も相手にしてあげてくださいね」ニコ
賢者「うちの妹達は放っておいても大丈夫だよ」ニッ
賢者「私よりもうしっかりしているしね」
「ならあなたもしっかりするべきです、本の虫で変態なお姉さま?」
賢者「会うたびそればっかりだなっ!!」
-ホテル街-
勇者「この辺にいれば多分会えるかな」
魔王「わたしを連れてきた意味を教えてほしい」
勇者「そりゃ一応魔王なわけだし…」
勇者「アレにはあまり会いたくはないけど報告を…ね」
サワッ
??「うほ、相変わらずいい尻」
勇者「きゃっ!?」
??「『きゃっ』だって可愛いところあるじゃないか」
勇者「…」グググ
??「バイク持ち上げてどうする気だ!?」
勇者「投げて…潰す…!!」グググググ
??「すいません、調子に乗りました」ペコペコ
勇者「ったく…あんたは相変わらずだね、騎士」ドスーン
騎士「どこにいても俺は俺さ」キラッ
魔王「相変わらずのようだね」
騎士「おぉ!!久しぶりだね魔王」スルッ
魔王「!?」
騎士「うーんまだ発展途上だね、カ・ラ・ダ」スリスリ
魔王「ひっ!?」
勇者「騎士!!」
賢者「つっぶっそうぜっ♪ゴールデンボールっ!!」
ブチッ!!
騎士「きんたmklwfjslsjf」ゴロゴロゴロ
賢者「おうおう、うちのかわい子ちゃんに何許可なく触れてんだぁ?あぁん?」
勇者「うちより容赦がない…」
勇者(いつの間にいたんだろう…)
魔王「賢者…うぶっ!!」
賢者「あんたは私のものだ、ふひひ」ギュムー
勇者「台詞だけ聞いたらあなたも十分やばいですよ…」
騎士「これはこれは…とてもお美しいお姉さんではありませんか」ススス
勇者「復活早っ!?」
賢者「…」
騎士「どうです?これからボクとイイコトでも…」
賢者「追い討ちかっけろ♪ゴールデンボールっ♪」
グチュゥッ!!
騎士「もげrぃえkふぃえgfhhs」ゴロゴロゴロ
魔王「賢者には変態行為通用しないんだね」
勇者「変態なのにね」
賢者「ふひひ、変態だからこそ通用しないのさっ」
賢者「しっかし、足腐らないか心配だわ…」ゴシゴシ
騎士「俺、病気とか持ってませんからーっ!!」ガバッ
勇者「存在自体が病原菌だけどね」
魔王「…」コクリ
騎士「何この扱い!?ひどくねぇ!?」ビクンビクンッ
賢者「おい、変態」グイッ
騎士「おー、お姉さん」
騎士「俺の愛にこたえてくれるのかい?」
騎士「もちろんベッドの中でならこたえてあげるよ」
賢者「うちの子に手ぇ出したら全身粉砕させるぞ」
騎士「怒ってはダメだぜ…せっかくの美人さんに生まれたんだから」
賢者「これ、復活できないように消滅させて良い?」クルッ
勇者「気持ちは分かりますが、一応知り合いなので勘弁してもらえませんか…」
騎士「くんくん…はっ!!これは処女の香り!?」
賢者「こんな変態初めて見た…」
魔王「…自分はカウントされないんだ?」
騎士「良いところで会えてよかったねお姉さん」
騎士「俺の聖剣ではじめて──」ズブッ!!
グチョォ!!
騎士「──」ドサリ
賢者「ごめーん、我慢の限界だったぁ♪」ビクッビクッ
勇者「ひっ?!」
魔王「その手にあるのって心ぞ…」
賢者「一瞬で黙らせる方法これしかなくてね」ビクッビクッ
賢者「どこかで捨てて復活させてくるわぁ」ズルズル
勇者「あれ…疾風魔法使ったか何か…?」
勇者「早すぎて見えなかったんだけど…」
魔王「わわ分からないよぉ…」
魔王「一瞬で抜き取ってたのしか見えなかった…」
勇者「うち…賢者さん絶対怒らせないわ…」ガクガク
魔王「わたしもだよ…抜き取られたくない…」ブルブル
勇者「騎士連れてかれたしどうしよう…」
魔王「一応会えたし、帰る?」
勇者「そうしようか…あんたの事は今度話しておくわ」
魔王「うん…」
-アパート前-
魔王「あの前にいるのって…」
魔術師「…!!」
勇者「ただいま」
魔術師「…おかえり」ジー
魔王「えっと…わたしいたらまずいかも…」
勇者「魔術師、あのね…」
魔術師「…怪我大丈夫?」
魔王「え?」
勇者「あれ…」
魔術師「…頭」
魔王「う、うん…もう平気だよ」
魔術師「…」ジー
勇者「あんた、どうしたのさ?魔王だから襲い掛かるとばかり…」
魔術師「…幼女」
魔王「もしかしてわたしの事話してた?」
魔術師「…」コクリ
魔術師「…面白いお姉ちゃんだって」
魔王「そっか」
魔王「でも別に仲良くする必要はないよ」
魔王「わたしは魔王だし」
魔術師「…」
魔王「話し方変わったけどこんなのじゃダメだよ…ね?」
魔術師「…」ギュ
魔王「わ」
魔術師「…もう怖くない」
勇者「なんとまぁ単純な理由で…」
勇者「よかったじゃない、懐いてくれて」
魔王「う、うん」
魔王「でもそろそろ部屋に戻らないといけないから…」トコトコ
魔術師「…」ズルズル
魔王「離してくれないんだけど…」
勇者「うちにはどうしようもないわ」
勇者「しばらく相手してやって、それじゃ」ガチャ バタン
魔王「ちょ…丸投げとかひどい…」
魔術師「…一番好き」ギュ
魔王「え?」
魔術師「…抱き心地がいい」
魔王「それだけの理由でこれ!?」
魔術師「…」ギュウ
魔王「あ、ちょっと抱く力強くなった…」
魔王「もしかして引き離すって思った?」
魔術師「…」コクリ
魔王「じゃあしばらくそのままでいいよ」ニコ
魔術師「…」パァッ
魔王「部屋に入るよ」
魔術師「…」コクコク
-10分後-
ガチャ
賢者「ふぅ…やっと帰ってこれた」
魔王「あ、おかえりー」
魔術師「…おかえり」ギュ
賢者「おや、少女に寄生されてますよ魔王さん?」
魔王「あはは…ちょっとあってね」
賢者「よく懐いてくれたね、魔王なのにさ」
魔王「怪我した時、わたしの事色々知っちゃったみたいで」
賢者「まぁ心配事減っていいじゃない」ニッ
魔王「賢者は大丈夫だった?」
賢者「あの変態野郎かい?」
賢者「この私が遅れをとるわけないでしょ」
賢者「私を止められるのは知ってる限り、1人だけよ」
魔王「1人いるんだ…」
賢者「マジあの人鬼畜だし…」ガクガク
魔術師「?」
-深夜-
賢者「魔王、ちょっと寝る前に聞いて」
魔王「え、なに?」
魔王(魔王って呼ばれたの最初以来だよね…)
賢者「とっても大事な事さ」
賢者「あんた、今でも元の世界に帰りたいって思ってる?」
魔王「え…う、うん…」
賢者「ちょっと長くいすぎちゃったかー」
賢者「まぁ迷ってる段階なら尚更聞いて?」
魔王「うん…」
賢者「帰れる方法分かったわ」
魔王「えっ!?」
賢者「ただし、その代償に決まった未来が待っている」
賢者「あんた限定でね」
魔王「どういうこと…?」
賢者「自分の今の魔力知ってるよね?」
魔王「うん…かなり少ないよ」
賢者「少ない事に疑問を持たなかったのかい?」
魔王「ここで適応されない分なくなったんじゃ?」
賢者「そりゃ魔法の種類だけだ」
賢者「空間転送魔法で失ってるものがあったんだ」
賢者「あんたの魔力本体だよ」
魔王「えっと、よく分からない…」
賢者「つまり自分の持ってる魔力の器自体を削って使っているわけよ」
賢者「普通、魔力消費だけで済むけど、あんたは異次元飛んだわけだ」
賢者「普段減らないものが減ってもおかしくはない」
賢者「つまりあんたは器ごと消費してここに来てたんだ」
魔王「え、待って…」
魔王「それ元の世界戻ったら戻るんだよね?」
賢者「いいや、戻らない」
賢者「体内の魔力の寿命みたいなものを使ってるわけだ」
賢者「詳しい事言うと…」
賢者「魔力の器を使ってここへ来る道(ゲート)を開いた」
賢者「場所指定しなければここに来れるというのは最初から決まってたようだね」
賢者「で、あんたは飛んでここに導かれた」
賢者「その後もあんたの魔力の器はここに通じる道として残っていた」
賢者「おそらくだけど勇者達はそれを使って来たんだ」
賢者「しばらくはその道は残ってたんだろうね」
賢者「でもおそらくその道は勇者達を転送した時点で消えた」
賢者「だからもう一回生成する必要がある」
賢者「だが、それやっちまうとあんたの魔力はゼロだ」
賢者「つまりあんたの中の魔力は完全に死ぬ」
賢者「二度と蘇らない」
魔王「じゃあわたしは…」
賢者「魔力の器が消失した状態で向こうに帰ることになる」
賢者「あんたは魔力ゼロの魔王となる」
賢者「あとは分かるね?」
魔王「…」
賢者「ほぼ事実だよこれは」
賢者「あんたの体内の魔力をこっそり調べさせてもらったよ」
賢者「で、調べてるとそういう結果になったわけだ」
賢者「ついでにもうひとつ報告しておくわ」
賢者「私はクリスマスが終わったら自分の世界へ帰る」
魔王「!?」
賢者「あっちでやる事あるし、元々ここの人間じゃないしね」
賢者「元よりここには魔法の研究のために来ていたのが本音なんだよ」
魔王「そっか…」
賢者「だからね、魔王」
賢者「その日までに考えておきなさい」
賢者「ここで生きるか、向こうで……死ぬか」
賢者「実は少々帰るための魔力が不足してるみたいだけど」
賢者「その時になったらどっち選ぶにしても不足分は渡しておいてあげるから」
魔王「…」
賢者「それじゃおやすみ」
魔王(魔力の器がなくなってる…か…)ギュ
魔王(いや、本当は分かっていたのかもしれない)
魔王(あれ…)
魔王「ごめん、最後にひとつ聞きたいんだけど」
賢者「うん、いいよ」
魔王「勇者達は大丈夫なの?」
賢者「あくまで道作ったのはあんたの魔力だからね」
賢者「あの子達は帰ったら魔法は元に戻るよ」
賢者「本来、ここでは魔法が使えないだけだしね」
魔王「そっか、じゃあ安心」
賢者「ずっと思っていたが魔王向いてないよ、あんた」
賢者「優しすぎる」
魔王「でもあっちでは本気で勇者たちを倒そうとしてたよ」
魔王「世界だってどれだけ傷付けたか数え切れないほど…」
賢者「実は心の内では倒されてもいいと思ってたんじゃないのかい?」
魔王「分からない…」
賢者「まぁ逃げたわけだからそうとも限らないけどね」
賢者「でも私は優しい方があんたらしくて好きだけどね」ニッ
賢者「じゃあ今度こそおやすみ」
魔王「あ、おやすみ」
魔王(これで気になることはなくなった)
魔王(あとはわたしの問題か…)
魔王(このまま帰ったらきっとわたしは死ぬだろう)
魔王(勇者達に手をかけられなくてもどちらにせよ死ぬ)
魔王(わたしの事を聞きつけた他の人間共に殺される)
魔王(魔力のない魔王なんて人間にとって何の恐怖もないのだから…)
魔王(特にわたしの場合は魔法ないと本当に弱いからな)
魔王(死か…)
魔王(怖くないといえばウソになる)
魔王(でもそうにしかならないのだから仕方ない)
魔王(どうすればいいんだ…)
-翌日 教室-
女「まおたん、おっはよぉ」
魔王「うん、おはよう」
女「あれ、元気ない?」
魔王「え、いつも通り元気だけど?」
女「うーん、元気じゃないと今日は困るんだけどなぁ」
魔王「え、何かあるの?」
女「今日はクリスマスイブだし」
女「クラスでパーティするんだって」
女「だからまおたんいなくなるとみんなやる気半減すると思われ」
魔王「そっか…」
魔王「じゃあ元気にしなきゃね」
女「悩みとかあったの?」
魔王「大した事じゃないよ」ニッコリ
女「そっかー」
魔王(今日ぐらいは…いや…せめて明日までは元気にいこう!!)
-放課後 教室内にてパーティ中-
生徒「ひゃっほー!!」
生徒「はっはっは、お前バカだろう!!」
魔王「あははっ」
女「…まおたん」ツンツン
魔王「どうしたの?」
女「あれ…勇者さんじゃない?」
魔王「ぶっ」
勇者(…)ガタガタ
カラカラ
魔王「なんで窓の外にいるの?」
勇者「ににに逃げてきたんだよ…」ガタガタガタ
女「そんなところにいたら寒くて死んじゃうからどうぞ」
勇者「すすすすまないね…」ガタガタガタ
生徒男「おぉ、噂の勇者先輩だ」
生徒女「こっち暖かいので来てくださーい」
勇者「どうも…あ~生きかえるぅ」ヌクヌク
魔王「何であんな所にいたの?」
勇者「例のファンクラブ?ってのから逃げてきた」
勇者「気持ち悪い生き物ばかりだから怖くて怖くて」
女「番長のくせに何を言ってるのやら」
勇者「あんた…一回殴るわ」ゴゴゴ
魔王「ダメだよ、また番長にされちゃうよ」
勇者「…」ストッ ヌクヌク
女「ちぇー」
生徒男「勇者さん真近で見たの初めてだぜ…」ゴクリ
生徒男「すごくエロい…でも手を出すのは怖い…」
勇者「あんたら大丈夫か…?」
女「男は変態多いから適当でいいですよっと」
勇者「まぁ変態は慣れてるからいいけど」
魔王(さすが騎士相手にしてたら慣れるか…)
生徒女「やっぱりかっこいい!!」
生徒女「女の子ってやっぱ憧れるよねぇ」
勇者「何の話?」
生徒女「勇者さん…いえ、勇者様///」
勇者「は?」
生徒女「長身で出るところ出てるし、強くて凛々しい」
生徒女「まるで王子様みたいっ」
勇者「…」ジー
女「困ったからってこっち見ないでくださいよー」ニヤニヤ
魔王「すっかり人気者だね、色んな意味で…」
勇者「王子様ってうちは女なんだけど…」
生徒女「私はそれでもオッケーです///」
生徒女「理想の女性像っていうのかな」
生徒女「つまり…最高です!!」
勇者「どういうことなのっ!?」
魔王「まぁまぁ」
生徒女「私は魔王ちゃんラブだけどー」ギュ
生徒女「私もー」ギュ
魔王「あぅ」
勇者「あんたにいたっては愛玩生物のようだけど」
勇者「マジでうちらの周りはこんなのばっかりか…」
女「さぁ盛り上がってまいりましたっ」
-帰り道-
魔王「つ、疲れた…」グデー
勇者「うちも…」グダー
女「あっはっは、二人とも愛されてたねぇ」
勇者「あんたはずっと助けもせず傍観者だったわね…」
女「だって面白かったからですから!!」ヘラヘラ
勇者「殺す…剣よ、わが右手に…」ズズズ
魔王「!?」バッ
勇者「いっ!?」ズキッ!!
勇者「いだだだだっ!!」ゴロゴロゴロ‐
女「え、何があったの??」
魔王「何でもないよ」ニコッ
女「でも勇者さん転げまわって苦しんでるんだけど?」
魔王「そ、そのうち治るよ」ダラダラ
女「まぁいっか」
女「それじゃね、ばいば~い」ブンブン
魔王「また明日」フリフリ
勇者「いつまでこれっ続けるの!?いたいいたいっ!?」ゴロゴロゴロ
魔王「剣出そうとしたからおしおき」
勇者「賢者さんじゃあるまいし!!いだいっでぇぇぇ!!」ゴロゴロゴロ
魔王「はいおしまい」ピッ
勇者「っ!!はぁはぁ…」
勇者「毒魔法とかありえない…」
魔王「君が悪いんだよ」
勇者「くっ…合ってるから言い返せない…」
勇者「で、あんた何考えている?」
魔王「え?」
勇者「ずっと笑顔の裏に何を隠してた?」
魔王「…」
勇者「とんでもない事隠してるんじゃないでしょうね?」
魔王「へへ…言ったら解決してくれるかな?」
勇者「できたらね、言ってみなさいよ」
魔王「え」
勇者「何よ?」
魔王「そんな事言われるとは思わなかったから…」
勇者「うちを何だと思ってるのよ」
勇者「この世界ではあんたと共生するって言ったじゃない」
勇者「悩みぐらいなら聞くわ」
魔王「…ありがとう」
勇者「それでどういう話?」
魔王「驚かないでね」
勇者「…」
魔王「帰る方法見つかったんだって」
勇者「っ!?ホント?」
魔王「うん」
勇者「やっと帰れるかぁ…」
魔王「…」
勇者「で?あんたが嬉しそうじゃない理由は?」
魔王「えっとね…」
………
勇者「は?今なんて?」
魔王「わたしの魔力なくなっちゃうんだって」
魔王「帰ったら人間より弱くなっちゃうんだ」
勇者「…」
魔王「きっと戻ったらわたしは死ぬだろうね」
勇者「あんた…」
魔王「勇者に倒されるのかな?」
勇者「…いや、多分無理」
魔王「え?」
勇者「もうあんたはうちにとって…」
勇者「…」
魔王「倒せなくなっちゃったんだね?」
勇者「…文句ある?」
魔王「ううん、ないよ」ニッコリ
魔王「でも勇者じゃなくても他の人間に殺されちゃう」
魔王「魔力なくても魔王だし仕方ないかな」
勇者「そんなの止めたらいいじゃない…なんならうちが…」
魔王「そしたら勇者だって狙われるかもよ?」
魔王「そんなのダメ」
勇者「だから優しすぎるんだってあんたは…」
勇者「ならずっとここに住めばいいんじゃない?」
魔王「でも勇者は帰りたくないの?」
勇者「うちは…」
魔王「問題はわたしだけじゃなかったみたいだね」
魔王「時間はあるみたいだからちゃんと決めてからにしようね」
勇者「分かった…」
魔王「あと、賢者さんの事聞いてる?」
勇者「聞いてるよ、明後日自分の所に帰るんでしょ」
魔王「なんか寂しくなるね…」
勇者「あんたは一緒に住んでたから余計にか」
魔王「うん…」
勇者「だったら笑顔で送り返したらいいじゃない」
勇者「もう会えないわけじゃない」
勇者「きっとまた会いに来てくれる」
魔王「ここに残ってたらだけどね…」
勇者「そうだったわね…」
魔王「…」
勇者「…」
魔王「今まで悪い事してきた罰なのかな…」
勇者「あんたにとっては正義だったんでしょ」
勇者「逆に言えばうちらだって同じだよ」
勇者「あんたら魔族を倒し続けてきた」
魔王「そうだった…」
勇者「もう考えても深みにはまるだけよ…」
魔王「もう考えないよ…」
勇者「近いうち結論は出す」
勇者「あんたも覚悟はしておきなさいよ」
魔王「うん…」
-夜 部屋-
賢者「ふんふんふーん♪」
魔王「嬉しそうだね」
賢者「そりゃ明日はパーティだよパーティっ」
賢者「人集めてのパーティなんて今までやった事なかったし」
賢者「気合も入るってもんさっ」ゴソゴソ
魔王「そっか」
魔王(別れが近くても動じないのだな)
魔王(むしろ最後まで楽しもうとしている)
賢者「あと飾りつけはどうするかなぁ…」
魔王(帰れば会う事はほとんどないだろう)
魔王(会う事は…)
魔王「…」ポロ…
賢者「まおたん?」
魔王「あれ…おっかしいなぁ」グシグシ
魔王「何で勝手に出てくるんだろう…」グシグシ
賢者「…」
魔王「なんで…」ポロポロ
賢者「どうせまた変な事でも考えてたんでしょ?」グイッ
賢者「もう考えるな」ギュッ
魔王「けんじゃぁ…」ポロポロポロ
賢者「私の事でも考えてたんだろう?」
賢者「あんたは冷静で物事きちんと考える子だけど」
賢者「深くまで考える悪い癖がある」
賢者「もっと柔軟で良いんだよ」
魔王「うぇぇぇぇ…」ギュウ
賢者「泣いた事ないんじゃないか、あんた」
賢者「泣くのすら慣れてないね」ナデナデ
賢者「まぁ大体泣いた理由は分かるけどね」
魔王「ひぐっうぇっ…」
賢者「出会いがあれば別れだってあるんだ」
賢者「悲しくたって受け入れないといけない」
賢者「そうしてこそまた別の出会いが生まれるんだ」
賢者「頭の良いあんたなら分かるだろう?」
賢者「もう最初のひとりぼっちのあんたじゃないんだ」
魔王「!?」
魔王(ひとりぼっち…)
魔王(そう…わたしはあちらではひとりぼっちだったのだ…)
魔王(友達なんているはずもなく)
魔王(ただ1人で魔王を演じ続ける事しか出来なかった)
魔王(誰かに手を差し伸べてほしかったのかもしれない)
魔王(『もうそんな事しなくても良いんだよ』と)
魔王(賢者はすべて知っていたのかもしれない)
魔王「うぇっ…ふぁっ…」
賢者「あんたは魔王をまだやりたいのかい?」
魔王「うぐっ…わ…わたしはっ…」
賢者「私はあんたが出す答え、なんとなく分かるよ」ニコ
魔王「賢者ぁ…」
賢者「どういう答え出しても私に言う事はないよ」
賢者「あんたの信じた道を進みな」
魔王「うん…うんっ…!!」
賢者「さーて、飾り付けの続きやろっと」
魔王「手伝うよ」グシグシ
賢者「じゃあこれあの上につけて」ヒョイ
魔王「届かないんだけど…」ピョーンピョーン
賢者「後ろから抱えてあげるから付けてよ」グイッ
魔王「服だけ持ち上げないでよ!!」
賢者「おっと間違えた」
賢者「可愛い下着が見えちった、げへへ」
魔王「変態…」
賢者「冗談抜きでつけておくれ」グイッ
魔王「自分でやったんでしょ、もぅ…」ペトペト
-翌日 部屋-
みんな「メリークリスマース!!」
バババンッ!!
賢者「さぁ、飲めや騒げや!!」
大家「あまり騒がしくしすぎると近所迷惑ですよ」
賢者「じゃあ…適度に騒げーっ!!」
魔王「適当すぎる…」
勇者「あの人はいつもそんなノリでしょ」グビグビ
魔王「それお酒なんだけど…」
勇者「ぶふー!!誰だこれを渡したのは!!」
騎士「俺だ」ドーン
勇者「あーん?」
騎士「酒飲ませて寝た相手をそのまま…っていうのはよくある話」
勇者「これを入室許可したの誰よ…」
賢者「手を出さないの条件に許可したけど?」
勇者「すでに危ないんですけど…」
賢者「肌に触れた時点で首がすっ飛ぶ魔法かけてるから大丈夫」
騎士「え、聞いてないっスよ、姐さん…」
賢者(そんな魔法最初からないけどね)
賢者「じゃあ約束破ろうとしてたでFA?」
騎士「くっ…この美少女天国から離れるのはイヤだ…」
騎士「ならばせめて一度だけでもペロペロを~」ガバッ
魔王「どうしてわたし!?」オロオロ
魔術師「…」スッ
騎士「む、魔術師か」
騎士「俺はロリっ子には興味ないんだ、どけ」
魔術師「…」クイッ
騎士「ん?後ろ?」クルッ
幼女「どーん」ピト
ドーン!!
騎士「ぐひょ!?」ガクリ
魔術師「…最年少魔法使い誕生」パンッ
幼女「まほうつかえたーいえーい!!」パンッ
勇者「ちょ…何してるの…うちらの正体が…」
大家「とっくにバレてるから気にしないで」ニッコリ
賢者「魔法渡せる技術まであるのか、あの子」
魔王「ここじゃ意味ないけどね」
女「えっと…あたし何も知らなかったんだけど…」
女「さっきの…何?」
魔王「ごめんね、ずっと隠してて」
魔王「わたしは魔王なんだ」
女「魔王ってファンタジーとかのあの?」
魔王「うん、それだよ」
勇者「ちなみにうちは勇者」
女「それはなんとなく納得」
勇者「何でだよ!?」
魔王「その子は魔術師」
魔術師「…?」
勇者「で、あの変態が騎士」
女「全然そう見えなかった…」
女「お姉さんも?」
賢者「私も似たようなもんだけど」
賢者「この子達と違う世界から来たから厳密には違うよ」
大家「私とこの子だけこの世界の人間ね」ポン
幼女「うにゅ?」
女「そんな事って本当に起こるんだね…」
賢者「不思議なんてどこにでも転がってるものさ」グビグビ
賢者「そんじゃそろそろゲームでもしますかっ」ドンッ
魔王「ゲーム?」
賢者「いっひっひ…そのゲームとは…」
女「王様ゲームとか言わないですよね…?」
賢者「それ以外に何があるの??」
女「当たり前かのように言われても困ります…」
勇者「それどういうゲーム?」
賢者「この中で王様を決めて王様が選んだ番号の人指名するのさ」
賢者「そして命令する」
賢者「ただし命令は絶対実行しないといけない」
賢者「命令内容は基本何でもあり」
賢者「本格的にやばいのはなしだけどね」チラッ
騎士「…」ビクッ
賢者「おい、起きろ変態」ゲシゲシ
騎士「いつつ…なんだよ姐さん」ムクリ
賢者「材料渡すから今から言うの作って」
騎士「くじびきの箱っすか?」
賢者「なんだい、知ってんのかい」
騎士「店でしょっちゅうやってたし」
賢者「んじゃちゃっちゃと作るんだ」グイッ
賢者(若干エロいの出してあげるから)ニヤリ
騎士(ならいいっスよ…俺も協力しますわ)ニヤリ
魔王「何か企んでるよ、気をつけて」
勇者「細工されるとやばいから誰か監視を…」
大家「私が見ているから大丈夫よー」
魔王「さすが大家さん」
勇者「怒られるかもしれないけどさすが年長者」
賢者「誰が年増だゴルァ!!」
勇者「なんであなたが怒ってるの…?」
魔王「でも賢者も結構上じゃないかな」
賢者「永遠の24歳になんて事っ!?」
勇者(その言い方だともうちょっと上だな…)
賢者「あんたら覚えとけよ…」
魔術師「…ゲームは?」
賢者「材料製作中~」
勇者「これは共闘組むしかないか…魔王」コソコソ
魔王「うん?」
勇者「手を組もう、エロイベント回避のためだ」
女「あたしも混ぜてー」
勇者「いいだろう、二人とも手を貸してくれ」
魔王「わ、分かった…」
騎士「できたぞ!!はじめるか!!」カラカラ
賢者「じゃあ始めようか…王様だーれだ!!」スッ
勇者「…」
魔王「…」
魔術師「…」
女「よっと…あれ?」
賢者「あれれー?一部動いてくれないよぉ?」
騎士「姐さん、ルールしっかり説明しなきゃ」
騎士「分かってないぞこいつら」
賢者「あ、忘れてた☆」
全員「王様だーれだっ!!」
勇者「あ、王様だ」
賢者「ちぃ、さっきからなかなか来ないね」
騎士「大丈夫っスよ…まだその時じゃない…」ニヤリ
勇者「じゃあ3が4に…」
魔王「!?」
賢者「ktkr」
勇者「膝枕」
賢者「いやっはぁぁぁぁぁぁ!!4だよ!!4!!」
勇者「げ、変態に餌をあげちゃった…」
騎士「じゃあ3は誰だよ?」
魔術師「…」フルフル
大家「あらあら」
幼女「だれだれ?」
女「あたし違うよ」
魔王「ぅ…」スッ
賢者「しかも大当たりだぁぁぁぁぁうひゃあぁぁぁぁぁ!!」ゴロン
魔王「はやっ!?」
賢者「まおたんの膝枕ええのぅ」スリスリ
魔王「ひぃぃぃぃ…」
女「お客さん、お触りは別料金ですよ?」
賢者「ちょっとぐらいいいじゃないのよーう」スリスリ
魔王「次までこのままだよね…?」
騎士「まぁね、我慢しておくれよ」ニヤニヤ
魔王「…いいよこのままで」
賢者「まおたんやっぱりすきー」ギュッ
勇者「しょっぱなから変なのしちゃったな…次行きますよ」
全員「王様だーれだっ!!」
魔術師「…きた」
騎士「まだだ…まだ終わらんよ!!」
勇者「まだまともな子が引いてるようね」
魔王「あれ…また…」
女「まおたん、しーっ」
賢者「へっへ、聞いちゃったもんね」
幼女「まただー」
大家「偶然って結構あるのね」
魔術師「…4番が2番に」
魔術師「甘える」
勇者「え゛」
賢者「ほほぅ、ゆうちゃんは2番か」
勇者「何で分かるんですか!?」
賢者「甘えるほうだったら抵抗そこまでなさそうだからね」
勇者「ぐっ…」
大家「4番、私ですね」
騎士「これは普通の逆パターン…新ジャンルかっ!?」ゴクリ
賢者「いわゆる年上が甘えてくるっていうヤツね」
大家「ゆ~ちゃ~ん」ギュ
勇者「うわ!!その呼び方やめてくださいって言ったでしょ!?」
大家「こういう時ぐらいいいじゃない」グリグリ
魔王「さっきとあまり変わってないね」
賢者「うむ」スリスリ
魔王「変態、もうあなたは終わったよっ」ポコン
賢者「うひ、残念」
騎士「次にかける!!いや、掴み取る!!柔らかい部分を!!」
賢者「ぺろぺろタイムは私のものっ!!」
勇者「この変態どもなんとかして…」
全員「王様だーれだっ!!」
騎士「…くっくっく」
騎士「我が王だ!!見よこの赤い印を!!」バーン
魔王「ついにやっちゃったね…」
幼女「やっちゃったー!!」
大家「…」ニコニコ
女「やばいねぇ」
勇者「どうか当りませんように…」
賢者「うふふふふ~」
魔術師「…」
賢者(分かってるんだろうね?)
騎士(まかせといてくださいよ!!)
騎士「6番がー」
騎士「2番にー」
騎士「キスをする!!」
勇者「やっちゃった!!やっちゃったよ!?」
魔王「自分に何かしたりしないんだ…」
女「あえて自分回避して相方に喜ばせる作戦じゃない?」
賢者「6番だよ!!ちゅー相手は誰だい!?」ジュルリ
幼女「はーい」
騎士「ワロタ」
賢者「なん…だと…」
幼女「ちゅーしてちゅー」
賢者「くそっかわいいのぅ…幼女大好きっ」チュー
勇者「あの人の守備範囲はどれだけ広いんだ…」
魔王「年上の人はあまりなびかないかも?」
-30分後-
賢者「王様とったどーっ!!」
勇者「げげっ」
魔王「あぁ…」
女「お姉さんか、やばいやばい」
騎士「二人ほど減ったから回りやすくなったな、ひひ」
魔術師「…」
大家「頑張りなさーい」←離脱
幼女「がんばれー」←離脱
賢者「3番が…王様に…」
魔王「っ」
勇者(魔王)クイッ
魔王(え?)
勇者(チェンジだ)
魔王(でも勇者が…)
勇者(あんたさっきもやられただろう)
勇者(まかせといて)スッ
魔王(ありがとう)スッ
魔術師(…この間、0,5秒)
賢者「おっぱいもみもみだー」
勇者「は?」
魔王「え?」
騎士「いや、姐さん逆だろ」
賢者「え?3が王様にもみもみ…あれ?」
勇者「執行っ」モミモミ
賢者「やっちまったぁ!!ひぃぃぃぃ!!」
魔王「変態する事に頭まわしすぎて間違えちゃったんだね…」
勇者「なんだかんだで結構いい体してるじゃないですか」モミモミ
賢者「いやっ!!やめっ!!あひ…」
勇者「女の子としての手入れはしてるわけですね」モミサワ
賢者「誰かー命令外の事してるんですけどー?いやぁ…」
騎士「姐さんはめてしまうのもありか…」ブツブツ
女「一番の危険人物が分かっちゃった」
騎士「で、何故か姐さん抱くことになったわけだが」ギュ
賢者「長い長い長い…」ギリギリギリ…
勇者「殺意がここまで伝わってくる…」
魔王「なんかこのゲーム、後半からおかしくなってる気が…」
女「大体運だからそれはないでしょ」
魔王「うーん…」
勇者「危険人物潰してくれるなら問題ないわ」
魔王「そうだけどね…」
………
賢者「…どうしてこうなった」ズーン
勇者「可愛いですよその格好」
女「どうですか?あたしのコーディネイトは?」ニヤニヤ
賢者「学生服なんてコスプレじゃないか…」ズーン
騎士「いやいや、十分現役で通用するっス!!」パシャパシャ!!
賢者「おい、写真取るな!?」
魔王「やっぱり誰かがコントロールしてるような…」
女「気のせいだって…ね?」ニヤリ
魔術師「…」ニヤリ
騎士「姐さん、これあとで街に売っておくっスわ」
賢者「やめろ変態騎士!!」
勇者「どうせ明日には帰るならべつにいいんじゃないですか」
魔王「あ」
勇者「…ごめんなさい」
賢者「…それもそうよねぇ、気づかなかったわぁ!!」
賢者「ここで全員犯しても捕まらないわけだ、ひひひ」ワキワキ
騎士「どんとこーいっ」ヌギヌギ
賢者「どーん」カッ
グシャッ!!
騎士「ぶげらっちょ!?」ドサッ
幼女「どーんときたけっかがこれだよっ」
賢者「そうそう、ふひひ」ナデナデ
勇者「…」
魔王「気にしてないからいいと思うよ」
勇者「そうね…」
勇者「意外と賢者さんは感じやすいようなので」ワキワキ
賢者「あんた、ずいぶんとキャラ変わったね…こっちくんな」
魔王「…」ワキワキ
賢者「まおたん、あんたも無言でこっちくんな!!」
女「ここはあたしもやろっと」ワキワキ
賢者「お嬢ちゃんまで…やめておくれっ」
魔王「えへへ」
女「へへっ」
大家「いつ見ても面白い子達ね」
大家「ここに連れてきて正解だったわ」
幼女「わたしももみもみするー」ポテポテ
大家「あの子にいい思い出できそうだしね」
大家「それに…」
大家「問題抱えてるようだけど」
大家「あの笑顔見てたら大丈夫そうね」ニコニコ
騎士「魔王ちゃん、今夜俺と遠くに出かけないか?」
騎士「遥か彼方イス○ンダルへ!!」
魔王「え、えっと…」
魔術師「…まおに手を出すな」ボワッ
騎士「ほーわっちゃぁっ!?」ゴロゴロゴロ
魔術師「…まおは私のもの」ギュッ
賢者「ふっ、私のものだよ嬢ちゃん」ギュッ
勇者「…」
勇者「前からでいっか」ギュッ
魔王「なんで勇者までむぎゅっ」グイーッ
勇者「抱き心地が良いらしいのでつい、ね」
魔王「むーむー」
賢者「可愛い子抱くのはやっぱいいのぅ」
魔術師「…いいのぅ」
勇者「これは確かに悪くないわね」
幼女「きゃっきゃ」
騎士「女は…怖い生き物だな…ぐはっ!!」
女「今頃気づいたんですか、お兄さん」ゲシゲシ
女「あなたはあたしが止めておきますねぇ」ゲシゲシ
騎士「この子何気にひどいっ!?」ビクンビクンッ
大家「…」ニコニコ
-深夜-
勇者「すぅすぅ」
魔術師「…」ギュ
騎士「ぐがーぐがー」
魔王「終わっちゃったね」バタン
賢者「みんなあれだけはしゃいでたから疲れたんでしょ」ゴクゴク
賢者「ふぅ」コトッ
賢者「随分と長くいっちゃったな」
魔王「いつからいたの?」
賢者「行ったり来たりはしてたけど1年ぐらいはいたと思うよ」
賢者「のんびりした世界に来れて良かった」
魔王「そうだね」
賢者「ちょっと外に出ようか」
魔王「うん」
魔王「プレゼント交換したけど賢者の何だった?」
賢者「まだ見てなかったね」ゴソゴソ
賢者「うわ、可愛らしいのでてきたな…」
賢者「カチューシャか」
魔王「あ、それわたしが買ったやつだ」
賢者「そりゃアタリ引いて飛び出しそうなぐらい嬉しいわぁ」ピクピク…
魔王「顔が引きつってるけど?」
賢者「嫌なわけじゃないんだけどね…」
賢者「可愛いものは苦手なんだよ」
魔王「でも可愛い女の子好きだよね?」
賢者「そういうのとはまた違うんだけどねー」
賢者「でもこれは大丈夫そうだわ」スッ
賢者「どう?」
魔王「似合ってる、可愛い」
賢者「ありがと、大事にするね」
賢者「本来ならこっちの物持ち帰るのはまずいんだけど」
賢者「これぐらいなら問題ないでしょ」チョイチョイ
魔王「もしかして…今から帰るの?」
賢者「うん」
賢者「みんなには起きたらすでに帰ってるって言ってある」
魔王「…わたしには?」
賢者「…ごめん」
賢者「あんただけは何も言わず去ろうとしてた」
魔王「なんでっ!?」
賢者「あんたの顔見たら帰れないかもしれなくてね」
賢者「好きになりすぎちゃって…困ったヤツでしょ?」
魔王「賢者…」
賢者「手、貸して」
魔王「…」スッ
賢者「魔力増加魔法」ポォウ
魔王「これ…」コォォォ
賢者「確かに魔力は渡したよ」
賢者「片道分ぐらいの空間転転移魔法はできるはずだよ」
賢者「あとはあんたが決めなさい」
賢者「好きな未来を選ぶんだよ」
賢者「お姉さん、これぐらいしかできないんだぁ」ポロ
賢者「もっと私がすごいヤツならよかったのに…」ポロポロ
賢者「ごめんね…」ポロポロポロ
魔王「ううん、今までありがとう」
魔王「何も知らないところに飛ばされたわたしを悪い者達から助けてくれて」
魔王「住む所を与えてくれて、知らない事を教えてくれて」
魔王「ここでの…生き方を教えてくれて…」ポロポロ
魔王「本当にありがとうっ」ギュッ
賢者「ホント、魔王かあんた…優しすぎるだろう…」
賢者「まおたん…いや、魔王」ブゥン
賢者「私だってあんたに教わったものはあるよ」
賢者「それを自分の世界に持っていく」
賢者「あんたもさ、どっちの世界選ぶとしても」
賢者「いろんな人から教えられた事は持っていくんだよ」
魔王「うん…」
賢者「おいで」バッ
トコトコ
ギュッ
賢者「あんたはうちの妹達と同じにおいがする」
魔王「妹いたんだ…」
賢者「どちらも血は繋がってないけど私にとって大切な家族なんだ」
賢者「あの子達に教えてもいいかい?」
賢者「優しすぎる魔王に会ったって話を…」
魔王「うん、いいよ」
魔王「わたしも誰かに話せるなら話すよ」
魔王「わたしにはとってもすごいお姉さんがいたって」
賢者「はは、ありがとね」
賢者「じゃあ帰るかな」グイ
魔王「わたし、お別れの言葉言わない」
賢者「…」
魔王「またね、賢者」ニッコリ
賢者「あぁ…またね、まおたん」ニッ
シュンッ!!
魔王「変な別れ方だなぁ…」
魔王「変態だから仕方ないかな」
魔王「ね?」ツー
ー翌日ー
勇者「ん…」
魔王「おはよう」ニコ
勇者「おはよ…帰っちゃったんだね」
魔王「うん、おみやげとぬくもり持って帰っていったよ」
勇者「何それ」
勇者「会うつもりないって言っておきながら」
勇者「結局できなかったんだ、あの人…」
魔王「勇者にとって賢者はどういう人だった?」
勇者「良い人で変態な姉貴って感じだったかな」
勇者「実の姉なら縁切ってるところだけど」ニッ
魔王「そうだね」ニコ
勇者「ところで…あんた寝てないでしょ?」
魔王「寝たよ」
勇者「ふーん」ポチポチポチ
勇者「もしもし、今日は1-Bの魔王さんお休みしますので…」
魔王「え?ちょ…」
勇者「はい、よろしくお願いします」ピッ
勇者「学校、臨時休校でお休みになったから」
魔王「思いっきりお休みするって言ってるじゃない…」
魔王「ごめんね」
勇者「いいから寝てなさい」
勇者「どうせ今日は終業式ってやつしかないんだから休んでも問題ないでしょ」
勇者「コラ、起きろ」ゲシゲシ
騎士「おふっ、あぁおはようハニー…」
勇者「誰がハニーだ、部屋出るよ」
騎士「もうちょっと魔王ちゃんたちのにおいを堪能したいぃ」ゴロゴロ
勇者「いい加減にしろっ!!」
グチャ!!
騎士「おぴyrじゃいfふfかsf」ゴロゴロゴロー
勇者「魔術師も起きなさい」ユサユサ
魔術師「…んー」ムクリ ピト
魔王(足に引っ付いてるのはちょっと可愛い)
勇者「部屋占拠して悪かったね、邪魔者は連れてくよ」ズルズル
魔王「ううん、昨日は楽しかったから」
勇者「あとでまた来るわ」
勇者「結論を話しに…ね」
魔王「分かった…」
バタン
魔王「一気に静かになっちゃった…」
魔王「あれ、テーブルにメモがある」
____________________________________
お金とか物とか全部好きに使っていいよ。
私には当分使えそうにないものだから。
ただし、ちゃんと考えてから使うこと。
生きるために必要なものは把握しておくんだよ。
まおたんぺろぺろ 賢者
____________________________________
魔王「最後の何…」ニコ
魔王「こんなところまで気を配ってくれてるなんてさすが賢者だね」
魔王「あれ、これなんだろう…」ペラ
魔王「賢者と女の子二人が楽しそうにしてる」
魔王「写真ってやつだよねこれ」
魔王「わざわざ撮りに行ったのかな」
魔王「もしかして賢者の言ってた妹さんたちかな」ペラッ
『親愛なる妹達 どんなに離れていても大切な家族だよ』
魔王「こんなの書いてるぐらいだから本当に大切な人達なんだろうな」
魔王「会えなかったから寂しかったのかな…」
魔王「寂しがり屋だったのかなぁ…」ドサッ
魔王「だいじょう…ぶ…だよ…」
魔王「心配しないで…わたしは…」
魔王「すぅすぅ」
-数時間後-
ガチャ
勇者「魔王、いる?」
魔王「いるよー」ゴソゴソ
勇者「何やってるの?」
魔王「ちょっとね…」ゴソゴソ
魔王「何かあった」ズルズル
パカッ
勇者「何かの研究書?」
魔王「賢者の書いてたものだと思う」
魔王「何か残してないかなって思って」ペラペラ
勇者「あの人の事だから大切な物は残してないでしょ」ペラペラ
魔王「でも写真残してたよ」
勇者「写真ってその瞬間を実際の見た形で残せるやつでしょ?」
勇者「それがどうしたの?」
魔王「これだよ」スッ
勇者「可愛い子達だね」
魔王「多分妹さんたちだろうね」
勇者「うん、明らかにこっちの世界の背景じゃないし…うちらのところとそっくりだなぁ」
勇者「でもこれはわざと忘れていったんでしょ」
魔王「そうだと思うよ」
魔王(本人達が近くにいるんだから必要なかったんだろう)
魔王(それに、わたしに見せようとしてくれたのかもしれない)
魔王(だからわざわざカメラっていうのをあっちにまで持っていったのかも)
魔王「なるべくこっちの物持って行きたくなかったみたいだし」
勇者「ふぅん」ペラペラ
勇者「…ちょっとこれ見て」
魔王「パラレルワールド?平行世界?」
勇者「結構最近書いたものだと思うけど」
勇者「あの人いろいろな可能性の事まで調べてたのね」
魔王「これはどう言う事が書かれてるの?」
勇者「例えばうちらの世界から見たら」
勇者「ここの世界がもうひとつの自分達の世界なんだって事」
魔王「ここがもうひとつの…」
勇者「あくまで可能性でしかないって書いてるけど」
勇者「この説だとあの人の世界は元はうちらのところと同じだったって言える」
勇者「もちろん今いるここもね」
魔王「そんな事まで調べてたんだ…」
勇者「この説自体はこっちの知識みたい」
魔王「賢者ってホントにすごい知識量得ていたんだね…」
勇者「書いたのが最近みたいだから…」
勇者「うちらが来た事によって別の世界の存在が気になったんだろうね」
魔王「すごいけどやっぱり何も残してなかったなぁ」バサバサ
勇者「まぁそうでしょ」
勇者「向こうの魔法みたいなものじゃない?」
勇者「異世界に関することは残らなかったんじゃないかな」
勇者「例外はあると思うけどね」
魔王「そっか」
勇者「それで、結論の話をしていい?」
魔王「うん、聞きたい」
勇者「うち…うちらがどうするかだけど…」
勇者「あんたにまかせることにした」
魔王「え?」
勇者「あんたは帰ったら死ぬんでしょ?」
勇者「でも、うちらは何事もなく残る」
勇者「それでいいのかって話し合ったんだけど」
魔王「いつの間に…」
勇者「話す時間なんていくらでもあったわよ」
勇者「んで結果、誰もあんたに手を出そうと思うのはいなかった」
魔王「…」
勇者「向こう帰ってもあんたの敵になることはない」
勇者「場合によったら守ることだって出来る」
魔王「それはダメ…」
勇者「そう言うと思った」
勇者「だからうちらには結論は出せなかったんだ」
勇者「あんたを見殺しに出来そうになかったからね」
勇者「それにみんなここが気に入ってしまったのもあるかなってところ」
魔王「そっか…」
魔王「…わたしの結論言っていい?」
勇者「いいよ」
勇者「あんたが決めた事なら誰も文句は言わないよ」
魔王「ずっと考えてたんだ」
魔王「ここに来た意味」
魔王「ここで会えた人達」
魔王「ここであった色々な事」
魔王「それとわたしの存在意義…」
魔王「わたしは悲しい魔王だった」
魔王「楽しい事何一つ知らずに」
魔王「魔族繁栄のためだけにずっと働いていた」
魔王「周りにいるのは自分の事を気遣う事もない魔物ばかり」
魔王「ずっとひとりぼっちだった」
魔王「でもそれにすら気づいてなかった」
魔王「ここに来て知った」
魔王「世界がこんなに楽しいものだったって」
魔王「こんなに感情というものが必要だったって」
魔王「それに気づかせてくれたのが…」
勇者「あの人ね」
魔王「うん、でも賢者だけじゃない」
魔王「ここで会ったすべての人達」
魔王「もちろん勇者達もだよ」
魔王「会って、話して、知って…」
魔王「そうして、あぁ…世界ってこんなに楽しかったんだって」
魔王「気づく事ができたんだ」
魔王「…ごめん長くなった」
勇者「かまわないよ」
魔王「それでね、私が選んだ道はね…」
-エピローグ 異世界から異世界へ…-
僧侶「ふぅ…」
僧侶「やっと表の掃除終わりましたね…」
僧侶「無駄に大きい教会もなかなか苦労します」
ザッ
僧侶「え?」
ザザッ
僧侶「今、何か音が…」
『ザッ──あーあー…異世界より通信だよ」
『こちらの声が聞こえてるかな?お嬢さん』
僧侶「え、誰ですか…頭の中から声が…」キョロキョロ
『実際にはそちらにはいないよ』
『声だけを飛ばして君に届けているんだ』
僧侶「何故私のような者に声を届けたのですか?」
『君がおそらく彼女らの仲間だからかな』
僧侶「ま、まさか勇者様達の!?」
『オッケー、あんたで合ってるようだね』
僧侶「あ、あの人達を知っているのでしたら教えてください!!」
僧侶「彼女達は無事にいられるのですか!?」
『落ち着いて、大丈夫だよ』
『みんな元気でやっているさ』
『ただ、今そちらに帰ってきてないのなら』
『もう帰ってこないかもしれない』
僧侶「そうですか…」
僧侶「覚悟はしていたのです」
僧侶「でも、元気でやっているのでしたらそれでかまいません」
『悪いね、報告だけで』
『私も少し前にあの子たちと離れちゃったものだから』
『もうこれ以上はなかなか知る事も出来ない』
『絶対と言えないのは申し訳ない』
僧侶「それだけ聞けたら十分です」
僧侶「ありがとうございます、親切なお人…」
『あともうひとつ』
『あんたは信じられないだろうが』
『彼女らは魔王とも一緒に過ごしているよ』
僧侶「魔王…ですか」
『でもあの子もね、実は優しすぎる魔王だったのさ』
『あっちに行ってから人として生きているんだよ』
『普通の可愛い女の子になってさ』
僧侶「…いいえ、分かりますよ」
僧侶「あの悲しそうな瞳をしていたのを見て」
僧侶「この人はずっと寂しかったんじゃないかって」
僧侶「そう思ってましたから」
『話に聞いてたとおりあんたは誰に対しても悪意がない子だね』
ザザッ
『おっと、そろそろ時間か』
僧侶「これ切れたらもう貴方とは話せないのですか?」
『無理ではないけど制限あるから難しいね』
『私個人としてはもうちょっと話してたかったけどねぇ』
僧侶「分かりました、報告だけでも嬉しかったです…ありがとうございます」
『かまわないよ』
『もう少し時間あるから私が見てきたあの子達の現状だけ伝えるよ』
『騎士は相変わらず変態だった』
『でもすごく生き生きとしていた』
僧侶「あの人はあれでいいのですよ」
僧侶「過去に、決められた事だけこなす歯車のような生き方をしていたそうです」
僧侶「自由がほしかったと聞きました」
僧侶「人生を楽しんでいるのならそれでいいと思います」
『魔術師はとにかく無口だった』
『ただ、最終的には色んな子に懐いてたよ』
『あと、将来すごく賢い子になるね』
僧侶「あの子は一番気にしてました」
僧侶「私だけに特に懐いてた子でしたし」
僧侶「でもそれ聞いて安心しました」
僧侶「もう私がいなくても大丈夫でしょう」
『あとは勇者か』
『勇気ある者として頑張ったよあの子は』
『みんなの心配したりさ』
『あんたがいない代わりに特にね』
僧侶「私にこっちに残るよう言ったのも勇者様でした」
僧侶「大切な人のために生きろって強く言ってくれました」
僧侶「こんな私をずっと旅に連れていってくれた勇者様には」
僧侶「今でもすごく感謝しています…」
『で、あんたの事だけどその大切な人とはどうなった?』
僧侶「え、えっと…今度結婚します」
『ほー、おめでとう』
僧侶「ありがとうございます」
『ザッちゃー時間ザザッ来たようだね』
『最後ザザッ伝言ザッ聞いてるよザザッ』
僧侶「はい、聞こえています…どうぞ」
『ザザーッ『幸せになって』ってザザーーーッ』
僧侶「確かに受け取りました、ありがとう見知らぬお姉さま」ギュッ
『ザーーーーーーーッ』
プツンッ
僧侶「みなさん…大切な仲間がいたのを決して忘れません…」
僧侶「私は幸せになりますね」ニコ
――――
彼女は後に勇者とその仲間達の一人で
彼女達の存在していた証として生きていくことになる。
人々が忘れないよう、その話を世界中に伝えていく事になる。
教会で働きながら大切な人と子供達に囲まれて
その命が尽きる最後の日まで幸せに過ごしたという。
-エピローグ 勇気ある者と愉快な仲間達-
勇者「はぁ…またですか?」
教師「すまない、お前しかケンカを止められないんだ」
勇者「うちは便利屋じゃないんですが…」
教師「頼むっ」
勇者「しょうがないですね…どこですか?」
教師「中庭だ」
勇者「行ってきます」トコトコ
生徒「また勇者ちゃんケンカの仲裁かぁ?」
生徒「女の子にそんなの頼むなんてどうかしてるわ」
生徒「元番長だから仕方ないんじゃねぇ?」
生徒「かわいそうじゃないか、もうそれ言わないでやれよ」
勇者「いい加減にしないかあんたらっ!!」
バキッ!!グキョ!!ドギャ!!
………
勇友「勇ちゃん帰ろ~」
勇者「うん」
勇友「今日はどこ寄って帰る?」
勇者「どこでもかまわないよ」
勇友「だったら勇ちゃんをもっと可愛くするもの買いに行こう」
勇者「え、マジですかまたですか」
勇友「誰もが振り返るような人気者にしてあげるよっ」
勇者「目立つの嫌いなのにぃ…」
ガチャ
勇者「ただいま」
魔術師「…おかえり」カリカリ
勇者「相変わらず勉強熱心だね」
魔術師「…知識で大切な人助けるの」
勇者「へぇ」
勇者(この子はあれから結構変わってきたかもしれない)
勇者(あまり甘えなくなった)
勇者(そして、暇あれば勉強するようになった)
勇者(あまり甘えてこないとちょっと寂しいけどね…)
魔術師「…すぐバイト行くの?」
勇者「うん、そうじゃないと生活きつくなるしね」
魔術師「…」ジー
勇者「気にしなくていいよ」
勇者「あんただってイヤでもその内働く事になるしね」ナデナデ
魔術師「…」コクリ
勇者「じゃあ行ってくる」
勇者「ご飯は何か作って食べてね」
魔術師「…うん、いってらっしゃい」フリフリ
勇者「いつ通ってもここは好きになれないわぁ」
勇者「さっさと通り抜けよう…」テクテク
騎士「お、寄って行かないかお姉ちゃん?」
勇者「…」テクテク
騎士「今ならいい男がスタンバッてるぜぇ」ウロウロ
勇者「相手見てあえて話しかけてるんじゃないわよ?!」
騎士「いひっ、バレたか」
勇者「うちはバイト行かないといけないんだ」
勇者「遊んでる暇はない」
騎士「こっちの世界で働いたらトップまでいけそうなのになぁ」ジロジロ
勇者「人の体見ながら言うんじゃないわよっ!!」ゲシッ
騎士「おふっ…やっぱ刺激がたりねぇな…」
勇者(騎士は相変わらず怪しいお店で働いているようだ)
勇者(ただ時々何か不満そうにため息をついている)
騎士「俺さ、近い内ここ離れるわ」
勇者「そうなの?」
騎士「芸人でも目指そうかなと」
勇者「…ある意味ピッタリかもね」
騎士「相方ならいつでも歓迎だぜ?」
勇者「1日もたないだろうから遠慮するわ」
騎士「1日以下とかひどすぎるっ!?」
勇者「まぁ…時々は遊びに来なさいよね?」
騎士「おう、あの子達にもよろしくな」
勇者「すぐ出て行くの?」
騎士「寂しい?」
勇者「やかましい!!バイトに遅れるからもう行く!!」
騎士「はいはい…お前も頑張れよ」ニヤッ
勇者「あんたもね」ニコ
勇者「結局うちらも帰らなかったんだよね…」
勇者(魔王は帰るのならうちらだけでも帰せると言っていた)
勇者(だが、うちは断った)
勇者(もうあちらにうち…勇者は必要ないからだ)
勇者(それにうちらが帰ったら魔王は…)
勇者(またひとりぼっちになるかもしれない)
勇者(だから…)
勇者「いつの間にかあの子もうちの大切な人になってたんだな」
勇者「まぁここも悪くないしね」
勇者「さーて、バイト頑張るぞーっ!!」
――――
勇者としての仕事も必要なくなり、
彼女は自分のために生きている。
不満は一切ないらしく、いつも元気に動き回っているようだ。
のちにある人と明るい未来を歩み始めるのだが、
それはまた別の物語。
-エピローグ 去っていったあの人-
賢者「あー…通信終わっちゃったか」プツンッ
賢者「物を媒体に使ったのは失敗だったかな」
賢者「あっちの無線ってヤツを参考に作ってみたんだけど」
賢者「ふーむ、改良の余地はありそうだ…」
賢者「まぁいっか、伝える事伝えたし」
賢者「それにしても久しぶりの我が家はいいねぇ」ググー
妹1「こらっ」ポコッ
賢者「あだっ、何するんだよ~?」
妹1「今までどこ行ってたのっ!!」
賢者「あーごめんねぇ…心配してくれた?」
妹1「当たり前でしょ!!ばかっ!!」
賢者「数ヶ月に一回しか戻らなかったのは悪かったよ」ポン
妹1「もぉ…」
賢者「…」ナデナデ
妹1「賢者?」
賢者「なに?」ツー
妹1「泣いてる」
賢者「あ、あー」グシグシ
賢者「つい思い出しちゃったよ」
妹1「何を?」
賢者「あんたらと同じような悲しい子の事さ」
妹1「そっか」
妹2「あーけんじゃかえってきてるー」ポテポテ
賢者「相変わらずもふってるかーい」ギュッ
妹1「あたしがずっともふってたから保障できる」
賢者「ぐっじょぶ!!」グッ
妹1「へへっ」グッ
妹2「?」
賢者「2人とも今暇かい?」
妹1「こんな所でお話してるぐらいだしね」
妹2「ひまだぞ!!」
賢者「じゃあ良い子な妹たちに少しお話してあげよう」
賢者「数日前までずっと見てきた夢のような話さ」
妹1「もしかしてさっき言ってた悲しい子の?」
賢者「うん」
賢者「あんたらとまではいかないけど大好きな子だった」
賢者「その子はね…」
――――
不思議な事に彼女の文献はこちらにほぼ残されていなかった。
ただ分かるのは頭脳と知識を大切な人のために使い、
優しくて、綺麗で、かわいい女の子が好きで、
妹が2人いるらしくて、誰でも仲良くなれる。
そんな可愛らしさを残した女性だった。
-ラストエピローグ 異世界の迷子-
魔王「おはよう」
生徒「おはよー魔王ちゃん」
生徒「魔王たんおっすおっす」
女「おっはよー」
魔王「今日の最初の授業て何だっけ?」
女「現国~」
魔王「あぁよかった、間違ってない」
女「そう言いつつもしっかりしてるよねぇ」
魔王「そうかな?」
女「魔王だったのにもう分からないぐらい溶け込んでるし」
魔王「こんな所でそれ言わないで…」
魔王(わたしは結局、自分の世界に帰らなかった)
魔王(異世界で生きる方を選んだ)
魔王(でも後悔はしていない)
魔王(これが私の選んだ事だから)
女「あれ、そのリングって…」
魔王「賢者にもらったやつだよ」
魔王(正確にはプレゼント交換で当たったやつだったけど)
魔王(偶然わたしたちはお互いのも引き当てていたのだ)
女「元の世界に帰っちゃったんだってね」
魔王「うん」
女「寂しいなぁ…面白い人だったし」
魔王「仕方ないよ、出会いがあれば別れもあるんだ」
女「おぉ、なんだかかっこいい台詞」
魔王(わたしの言った言葉じゃないけどね)
魔王「いつになるかは分からないけど」
魔王「またひょっこり姿見せに来てくれるよ」
女「信じているんだね?」
魔王「うん」
魔王「いらっしゃいませ」パタパタ
店長「いつもの事だがよく働くな」
店長「でも代わりに彼女はいなくなってしまったけれど」
魔王(わたしはあのあとメモにいくつか残ってたものの中で)
魔王(ここのバイトの事も書かれてあったのを見つけ)
魔王(そのままあとを継ぐことにした)
バイト「うぅ…賢者ちゃん…どこ行ったの…」
魔王「…まだいたんだこの人」
店長「一応、そいつ最近正社員になったんだよ」
魔王「そうなんですか」
店長「でも代わりとしてやってくれるのはかまわないんだが…」
魔王「何か…問題でも?」
店長「いや、それだよ」
魔王「あー」
正社員(バイト)「魔王ちゃんはどこにもいかないでほしいな」ギュッ
魔王「とりあえず引き剥がしてもらえるのなら…」
店長「おい」
正社員「うひ」
店長「もうバイトじゃないんだぞ、冗談抜きでクビにするぞ」
正社員「か、勘弁してください…」ペコペコ
魔王「この人も相変わらずだなぁ…」
魔王(またストーカーされないかだけ心配だ…)
魔王「月が綺麗だなぁ」
魔王「わたしにここで何か残せないかな…」
魔王「賢者みたいに誰もが忘れないような何かを…」
魔王「…」
魔王「生きた証、残したいなぁ…」
魔王「魔王としてじゃなくてここで生きた1人の人間として…」
勇者「独り言増えたんじゃない、あんた」
魔王「あ、勇者」
勇者「こんな所にいたのね」スッ
魔王「寒くない?」
勇者「寒いよ」
魔王「じゃあ何でわざわざここに座ったの?」
勇者「ならあんたにもそれは言いたい」
魔王「あぅ…」
勇者「さっき生きた証がどうとか言ってたけど」
勇者「また悩み抱えてるの?」
魔王「今度は個人的な事だからそこまで深刻な話じゃないよ」
勇者「まぁ大体分かるけどね」
魔王「あ、これ一緒に使お」ファサ
勇者「わざわざ毛布まで準備してたのか」
魔王「えへへ」グッ
勇者「暖かいからいいけどね」ゴソ
魔王「何かここで残せるものないかなって思って」
勇者「ふぅん」
勇者「だったらひとつあるわよ」
魔王「え?」
勇者「向こうでもあったじゃない」
勇者「物語よ」
魔王「あ…」
勇者「こっちでは小説とか呼ばれてるけど」
勇者「でも実際あった事は小説じゃ無理かな」
魔王「でも、本当の話って言っても信じてくれないからいいんじゃないかな」
勇者「んーそうだね」
魔王「わたしに書けるかな?」
勇者「あんたはそういうの結構できると思うよ」
勇者「やってみれば?」
魔王「そうだね…やってみようかな」
魔王「ありがとう、勇者」
勇者「知らない間にあんたとは親友ってやつになってたね」
魔王「お互い争っていたのに不思議なものだね」
勇者「多分向こうじゃ平和が戻ったとか騒いでるんだろうねぇ」
勇者「勇者とその仲間が犠牲になったが世界は救われたって」
魔王「きっとそうだろうね」
勇者「まぁうちは目立つよりは適当な伝説で残されるほうがいいわ」
魔王「やっぱり勇者は勇者だね」ニコ
勇者「なにそれ」ニッ
魔王「わたしは最後まで悪者だったんだろうな」
勇者「そりゃ仕方ないでしょ」
勇者「誰もこんな可愛くて大人しい子だって分からないし」
魔王「褒めてくれるんだね?」
勇者「本当の事言っただけよ…」プイッ
魔王「これからもよろしくね」ニコッ
勇者「やっぱりあんたには敵わないね」ニッ
――――
わたしは後に一本の小説を世に出すことになる。
異世界からやってきた少女が見知らぬ世界で生きていく話。
人と出会い、成長していく、どこにでもありそうな物語。
その小説は数百万という売り上げをこの先残してくれたらしい。
だが、誰一人として知ることはない。
その物語が実際あったことを元に本人が書き記したものだと言う事に…。
でも、それでもいいと思う。
これはわたしを知らない人にこういう話もあるのだと知ってほしかった。
例え作り話だと思ってても…ね。
あの人とその他の人達に捧ぐ物語でもあった。
さすがに見られると恥ずかしいけど。
これぐらいしか残せなかったけどいいよね?
そうそう…忘れてた。
その本のタイトルは、
『異世界の迷子と素敵な君達』
魔王SIDE END
次から勇者SIDEになります。
時系列は勇者が移動してきたところからになります。
こちらは魔王SIDEの方と交わって構成しているので、
内容を見て『大体この辺りかな~』って感じで見ていくといいでしょう。
次回の更新から始まります。
勇者SIDE 勇者「ここはどこ?」
勇者「ちょ…何よここ…」
勇者「こんな所に本当に魔王は逃げてきたっていうの?」
勇者「うちの知ってる世界じゃない…」
勇者「建物も人も空気すらも違う」
勇者「どうしよう…」
勇者「下手に動き回るのは危険よね」
勇者「ちょっと考えよう」
………
勇者「そういえば、あの2人がいない…」
勇者「転送先って微妙に違うのかしら…」
勇者「あの変態はどこでも生きていけそうだけど」
勇者「魔術師は…」
勇者「くっ…心配になるじゃない!!」グッ
勇者「やっぱり動こう」
勇者「じゃないと何も分からないままよ!!」テクテク
勇者「…」
勇者「あの子いないわね…」
うわぁぁぁん!!
勇者「ん?」
勇者「子供の泣き声?」
勇者「知らない子の声か…でも放っておけないね」
勇者「どこからかな…」テクテク
-公園-
勇者「この辺からだと思うんだけど…」
幼女「うわぁぁぁん!!いたいよぉぉぉぉ!!」
勇者「いた」タタタッ
勇者「お嬢ちゃんどうしたの?」
幼女「ひっぐひっぐ…ころんだのぉ…」
勇者「膝擦りむいたのか、動かないで」
勇者「回復魔法(小)」ポォォォ
幼女「ひっく…いたいのなくなった」
勇者「もう大丈夫だよ」
幼女「すごぉい」
幼女「ねぇねぇ、さっきのなに?」
勇者「えっと、魔法だよ」
幼女「まほ…?おまじない?」
勇者「うーん、おまじない…かな」
勇者(さっきから気づいていたが…)
勇者(どうもこの世界には魔法が存在しないらしい)
勇者(魔力が感じられないのだ)
幼女「おねぇちゃん、ありがとぉ」ニー
勇者「どういたしまして」ニコ
幼女「ぶーん」パタパタ
勇者「子供は元気だなぁ」
??「ホントそうですね」
勇者「えっと、どちらさまで?」
??「あの子の母親です」
??「あやしてくれたみたいで、ありがとうございます」ペコ
勇者「いえ、これも勇者の仕事のようなものですし」
??「勇者?」
勇者「やば…」
勇者(ここじゃ勇者と言っても通じないか…)
??「あらあら、勇者さんでしたか」ニッコリ
勇者「あれ?」
??「ここに来たのは初めて?」
勇者「え、えぇ…」
??「じゃあ何も分からないでしょうね」
勇者「あの…」
??「はい?」
勇者「うちの事…分かるんですか?」
??「正直言うと分からないわ」
??「でも身近にそういう所から来たっていう人いるから」
??「そうかなと思って」
勇者「!?」
勇者「そ、その人ってどういう人ですか!?」
??「女性よ、すごく綺麗な人でね」
??「もうかれこれ一年ぐらいになるかな、来たの」
勇者「違うか…」ガクリ
??「あら、知らない人だった?」
??「と、いう事は他にも同じ境遇の人いるのかしら?」
勇者「はい…探してました」
??「うーん」
??「とりあえずうちにいらっしゃいな」
??「行く所ないのでしょう?」
勇者「はい…すみません」
??「幼女ー帰るわよー」
幼女「はぁい」ポテポテ
??「このお姉ちゃんの手をぎゅってしててね」
幼女「わかったー」ギュ
勇者「へ?」
??「この辺交通量多いから危ないのよ」
??「お願いできるかしら?」
勇者「えっと、この子と離れないようにすればいいんですか?」
??「そういうことよ」
勇者「分かりました」ギュ
幼女「えへへぇ」ニコニコ
-アパート前ー
??「ここよ」
勇者「これが家…ですか」
勇者(向こうにはこんな変わった形の建物はなかった…)
??「正確には複数の人が住む家、アパートって呼ばれるものだけどね」
勇者「へぇ…」
??「私はここの大家…管理者なの」
勇者「そうなんですか」
大家「とりあえず中に入って頂戴」カチャ
大家「中でお話は伺うわ」
勇者「お邪魔します…」
-大家の部屋-
大家「そう…それは大変だったわねぇ」
勇者「信じてくれるんですか?」
大家「えぇ」
勇者「普通おかしいと思いますけど…」
大家「目の前で一度不可思議なもの見てるしねぇ…」
勇者「もしかしてさっき言ってた…」
大家「えぇ、賢者さんがいきなり現れてね」
コンコン
大家「あら、お客さんかしら」
大家「どうぞー」
ガチャ
賢者「どうもー」
勇者「…」
賢者「知り合いからいただいたものですがよかったらどうぞー」
大家「あら、悪いわね」
賢者「いえいえ、いつもお世話になってますしっ」
幼女「けんじゃおねぇちゃーん」
賢者「幼女ー元気だったかーい?」
幼女「うんー」
勇者「…」
勇者(この人が賢者って人か…)
賢者「ありゃ、お客さんですかい?」
大家「あぁ、ちょうどよかったわ」
大家「ちょっとお話を聞いてあげてくれないかしら?」
大家「また異世界から来たって子らしくて」
賢者「うは、マジですかぁ…」
勇者「ど、どうも…」
賢者「うほ、いいおっぱい!!」
勇者「いきなりそこか!?」
勇者「あ…」
勇者(騎士と一緒のノリでついツッコんじゃった…)
賢者「いいね、迷いなくツッコミくると嬉しくなっちゃう」
勇者「は、はぁ…」
大家「ノリのいい子好きなのね?」
賢者「そりゃ楽しい子は大好きですよ」
賢者「っと、じゃあちょっとお邪魔しますね」ゴソゴソ
大家「はい、どうぞ~」
賢者「やぁ、賢者さんだよ」
勇者「勇者です、よろしくお願いします」
賢者「ふーむ…」
賢者「お姉ちゃんは…『勇者』か」
勇者「え!?」
賢者「何で分かったんだって顔してる」
賢者「魔力とその手さ」
勇者「手…ですか」スッ
賢者「普段から剣を握ってる手だよそれは」
賢者「マメとかそういう部分から判断できる」
賢者「それを見るからして努力の桁が普通の人と違う」
勇者「すごいですね…それだけで分かるなんて」
賢者「人間観察が趣味だからねー」
賢者「そのぐらいは見て判断できるさ」
賢者「で、何でここに来ちゃったんだい?」
勇者「…魔王を追ってきました」
賢者「魔王?」
勇者「はい」
賢者「まさか…ね…」
勇者「どうしました?」
賢者「いや、何でもないよ」
賢者「じゃあ魔王見つけたらどうするつもりだい?」
勇者「そりゃもちろん…」
賢者「の、前にひとつ教えてあげるわ」
賢者「気づいてないだろうから言うけど、ここで魔法はほぼ使えない」
勇者「えぇっ!?」
賢者「やっぱり知らなかったのかい」
賢者「この世界じゃ魔法は適用されないのさ」
賢者「全部じゃないみたいだけどほとんど使用できなくなる」
勇者「そんな…それじゃ…」
賢者「魔王と戦えないって?」
賢者「こんな平和な国で戦うんじゃないよ」
勇者「でも!?」
賢者「おそらく魔王も魔法をまともに使えないはずだよ」
賢者「そんなお互い弱い状態で戦うつもりかい?」
勇者「…」
賢者「それに見つけたとして終わった後どうやって帰る?」
勇者「あっ!!」
勇者(そうだ…ここに通じていた『道』は閉じてしまったんだった)
賢者「無計画で突っ込んできたのか」
勇者「うぅっ…」ガクリ
賢者「落ち込んでるゆうちゃんかーわいいっ」
勇者「ぶふっ!!」
賢者「どうしたんだい?」
勇者「な、何でも…」
勇者(人のあだ名聞いただけで笑う癖はどうにかならないものか…)
勇者「くっ…魔王どころじゃないじゃない…」
賢者「じゃあとりあえず帰る方法見つかるまでここに住んだら?」
勇者「え?」
大家「私はかまわないわよ」
大家「ちょうど部屋だって空いてるし」
大家「もう一人同じような子住んでるしね」
勇者「そ、その人は…」
賢者「あんたと同じぐらいのかわいい女の子だよ」
勇者「じゃあ違うか…」
勇者(魔術師はもっと年下だから…)
賢者「とりあえずゆうちゃんに必要なのは…」
賢者「ここの事を知ることかな」
賢者「勉強は苦手かい?」
勇者「いえ…」
賢者「ならこの世界の勉強しておいたほうがいいよ」
勇者「分かりました…」
勇者「しばらくここに住ませてもらいます」ペコリ
大家「了解、空き部屋掃除しておくわね」
大家「今日はここで寝泊りしなさいね」
勇者「ありがとうございます」
賢者「真上の空き部屋が部屋です?」
大家「そうよ」
賢者「なら二つ隣に住んでるから何かあったら声かけてね」
勇者「はい」
賢者「じー」
勇者「なんですか?」
賢者「そのでっかく育ったモノを触りたくて仕方ないんだ…」ワキワキ
勇者「またかっ?!」
賢者「うへへ、じゃあ今度触らせてねぇ~」ガチャ
勇者「絶対イヤです!!」
バタン
大家「ちょっとぐらい触らせてあげたらよかったのに」クスクス
大家「女の子同士だし」
勇者「いや、そういう問題では…」
大家「とりあえずここについて簡単な事だけ教えるわ」
勇者「すいません、お願いします」
-翌日-
大家「今日からここがあなたのお部屋よ」ガチャ
勇者「ここが…」
大家「ある程度家具とかもそろってるから好きに使ってね」
勇者「ありがとうございます」
大家「あ、そうだ」
勇者「はい?」
大家「これからゆ~ちゃんって呼んでいい?」
勇者「ぶふぁ!?」
大家「あら?どうしたのゆ~ちゃん?」
勇者「ぶふ…や…やめ…」
大家「大丈夫?ゆ~ちゃん」
勇者「ぶ…はぁはぁ…」
大家「…変な癖ね」ニコニコ
勇者「し…知っててやったんですか…?」
大家「賢者さんと話してる時に見て気になってね」
勇者「いつからかは忘れましたがとんでもない癖なんです…」
大家「あら、面白くて可愛いと思うけどね」
勇者「うちは嫌ですよ…」
大家「まぁこれから何かあったら相談に乗るから」
勇者「はい」
大家「頑張ってね、ゆ~ちゃん?」
勇者「ぷ…それもうやめて…」
-翌日 勇者の部屋-
賢者「おはよーマイおっぱい!!」
勇者「…おはようございます」
賢者「あるぇー?ツッコミなしー?」
勇者「下手にツッコんだら負けかなと思いまして…」
賢者「うぬぬ…あの子より手ごわいなゆうちゃんは」
勇者「?」
賢者「ごほん、とりあえずだ」
勇者「早速勉強ですか?」
賢者「いや、まず先にやってもらわないといけない事がある」
勇者「何です?」
賢者「脱げ、話はそれからだっ」グイー
勇者「きゃあぁぁぁ!!何するんですか!?」ガシッ
賢者「生おっぱい見たかったのぉ」
賢者「でも今の悲鳴いいね、ゾクゾクしたわ」
勇者「何この人…」
賢者「変態姐さん」
勇者「ストレートに答えないでください!!」
賢者「冗談はさておき、まず部屋を拝見」キョロキョロ
賢者「…何もないな」
勇者「そりゃさっき入ったばかりですし…」
賢者「一部家具はあるにしても生活用品とかないんじゃ困るっしょ」
賢者「まずそれらをそろえてこよう」グイッ
勇者「え、ちょ…どこ行くんですか」
賢者「色々買い物だよ」
-ホームセンター-
勇者「うわぁ…」キョロキョロ
賢者「ちゃんとついておいでよ」テクテク
勇者「あ、はい」テクテク
賢者「これと~これと~これ~…」ドサドサドサ
勇者「うちの知ってる店と違う…」
賢者「ははっ、はじめはやっぱそういう感想言うよねぇ」
勇者「やっぱり賢者さんも?」
賢者「そりゃあんたと同じような世界から来たんだから」
賢者「驚きの連続だったさ」
賢者「今では慣れちゃったけどね」
勇者「へぇ」
賢者「今から言うやつちょっと持ってきてー」
勇者「あ、はい」
-ショッピング街-
勇者「人が多いなぁ…」
賢者「多くのお店が集中してるところだしね」
勇者「ここでは何を買うので?」
賢者「服だよ」
賢者「もちろんあんたのね」
勇者「服…ですか」
賢者「何か希望ある?」
勇者「可愛…いえ、特には」
賢者「…おっけー」
賢者「んじゃここに入ろうか」
勇者「はい」
………
賢者「何かいいと思ったのある?」
勇者「えっと…」キョロキョロ
勇者「…」チラッ
勇者「こ、これとか?」スッ
賢者「ふーん」トコトコ スッ
賢者「店員さーん、これくださいな」パサッ
勇者「え、ちょ…」
賢者「それも買うから持っておいで」
勇者「…」トコトコ
勇者(何でうちが気になってたモノが分かったんだろう…)
賢者「ついでに着替えていくかい?」
賢者「そのままだとさすがに違和感あるからね」
勇者「…いえ、このままで」
賢者「着替えるよ、おいで」
勇者「あぅ…」
-アパート前-
大家「あら、おかえりなさい」
賢者「ただいまです!!」
勇者「…」
大家「あらら、可愛くなってるじゃない」
勇者(結局、着替えたわけなんだけど…)
勇者(よりにもよって自分が気に入ったほうを着せられるとは…)
賢者「こういうのが好きみたいで」ニッ
勇者「何で分かったんですか…」
賢者「言っただろう?」
賢者「私の趣味は人間観察だって」
勇者「動きを全部見てたって事ですか」
賢者「そゆこと」
勇者(この人にはウソは通用しなさそうだなぁ…)
賢者「別に隠さなくてもそういうのも似合ってて可愛いよ」
勇者「こういうの好きなんですけどどうも拒否反応でちゃって…」
賢者「今までどんだけそういうモンと離れた生活してきたのさ?」
勇者「は、恥ずかしいのと旅に出てたのもありまして…」
賢者「じゃあここでいっぱい着ていくといいよ」
勇者「…そうですね」
-勇者の部屋-
賢者「ゆうちゃん」
勇者「はい?」
賢者「学校行く気ない?」
勇者「突然ですね」
勇者「うーん、学校ですか…」
賢者「向こうにあった?」
勇者「一応ありましたけど…」
賢者「でも、行った事はない、と」
勇者「通う前に旅に出ましたから」
賢者「じゃあ行くか!!」
勇者「えっと」
賢者「遠慮は要らないし、あんたは待ってるだけで行けるようになる」
勇者「それは賢者さんが用意してくれるって事ですか?」
賢者「うむ」
勇者「でもまだうち、ここの事ほとんど分からないし…」
賢者「あんたはあの子ほど言動おかしくないからいけるいける」
勇者「あの子って何度か言ってますけど…」
賢者「うちの部屋に一緒に住んでる子だよ」
賢者「その内顔合わせると思うよ」
勇者「はぁ」
賢者「で、行ってみるかい?」
勇者「行って…みたいです…」
賢者「素直でよろしい」ポン
賢者「じゃあ早速明日から行けるようにしたげる」
勇者「ありがとうございます」
賢者「少しでも勉強して慣れておこうか」
勇者「はい!!」
-次の日-
勇者「え、1人で…ですか…」
賢者「一緒に行ってあげたいところだけど忙しくてね」
勇者「まぁ、場所は覚えましたけど」
勇者「ちょっと不安です…」
勇者「異世界の学校なんて初めてで…」
賢者「そんな変わったもんじゃないよ」
賢者「力を抜いていけば大丈夫だって」
賢者「あんたはかなりできる子だ」
勇者「そ…そうですか?」
賢者「まぁ行ってみたら分かるっしょ!!」バシバシ
勇者「いたっ、適当ですね…」
賢者「にしし、んじゃいってら~」
勇者「もぉ…いってきます」テクテク
勇者(でも、的確なアドバイスはくれてるんだよね)
-学校 校庭-
勇者「あっちと違ってすごい広い…」
勇者「こんな所で過ごすんだ…うち」
勇者「まずは職員室っていう部屋に行けって言われたけど…」
勇者「どこの建物にそこがあるかも分からないや」
勇者「誰かに聞いてみようかな」
「ほれぇ!!全裸になって走ってこいやぁ!!」
ドガッ!!ゲシッ!!
勇者「?」
「テメェは俺のおもちゃだろうが!!」
ドスッ!!ボゴッ!!
勇者「…」テクテク
不良「やれっつってんだろ!!」グイッ
生徒「うぐっ」ズルズル
勇者「やめなさい!!」
不良「あー?誰だあんた?」
勇者「彼から手を離しなさい!!嫌がってるでしょ!!」
不良「じゃれてるだけだよ、なぁ?」グイ
生徒「は、はぃ…」ガクガク
勇者「…」
不良「ほれ、分かったらどっかいけよ」
グイッ
生徒「あっ」
勇者「全然分からないね」
勇者「じゃれてるのに彼が何故怯えているかが」
勇者「それに殴っていたでしょ?痣ついてるし」
不良「っぜぇな…」
不良「ソイツは今から罰ゲームで全裸で学校中走るんだよ」
勇者「そうなの?」
生徒「ぅ…」
不良「だよなぁ?」ギロリ
生徒「は…」
勇者「君を信じてる」
生徒「!?」
勇者「真実を話して」
生徒「ボクは…」
生徒「無理矢理…やらされようと…してました…」
不良「テメェ!?」ダッ
ガシッ
勇者「やっぱり一方的にやらされていたんだね」
勇者「君の勇気はちゃんと見たよ」ニコ
生徒「ぁ…」
勇者「あとはまかせて」キッ
不良「女の癖に俺様に勝てると思ってるのかぁ?」
勇者「余裕」
不良「んだとぉ!?」
不良「俺様はなぁ!!この界隈じゃ誰もが裸足で逃げ出すほどの男なんだぜ」
不良「いわゆる最強の男ってヤツよぉ!!」
勇者「そんなの知らないわよ」
勇者「強き者が弱き者を貶める行為してる癖にえらそうにしすぎよ」
勇者「ばーか」
不良「…どうやら死ぬほど辛い目に合いたいようだな」プルプル
勇者「悪いけど一瞬で終わるわよ?」
不良「終わるのはテメェだよ!!」ガッ
不良「エロい体してやがるし、かわいがってやるよ」ムニ
勇者「ちょっ!!男ってどの世界も同じよね…」ハァ
生徒「やめ…」
ドスッ!!
ドサッ
勇者「だから言ったじゃない、一瞬で終わるって」
不良「──」ピクッピクッ
生徒「何したか見えなかった…」ガタガタ
勇者「結局、知らない人に揉まれた…」ズーン
勇者「さて…ねぇ職員室ってどこにあるの?」
勇者「できたら案内してほしいんだけど」
生徒「は、はい…」
生徒「こ、こっちです…」トコトコ
不良「う…」
不良「あのアマ…何しやがった…」
不良「絶対犯しつくしてやるぞ…」
不良「しょうがねぇ…親父ん所のヤツ借りるか…」ピッピッピ
プルルルルル
ガチャ
不良「俺だ、ちょっと組のヤツ数人貸してくれねぇか?」
『あー、全員出られないってさ』
不良「誰だ…?」
『1人なら今からすぐ行けるけど?』
不良「はぁ?」
『なんて、もう後ろにいるんだけどね』
不良「!?」クルッ
賢者「来てあげたよ」
不良(俺、確か組の一人の携帯に電話したよな?)
不良「誰だ、ねぇちゃんは…」
賢者「賢者さん」
不良「名前じゃねぇよ!?何でうちの組の携帯持ってるんだよ!!」
賢者「理由話したら『どうぞお使いくだせぇ』って」
賢者「それにあんたはあくまであの組の親分さんの息子だろう」
賢者「うちの組とか生意気言っちゃってぇ」ヘラヘラ
不良「マジで何者なんだあんたは!?」
賢者「親分さんに頼まれちゃってさ」
賢者「息子がやりたい放題で困ってるってさ」
賢者「『教育』してくれってお願いされたんだわ」
不良「何で見知らぬ女にそんな事されないといけねぇんだよ」
不良「悪いがあんたに俺様は止められねぇぜ?」
不良「俺の女になるなら手は出さねぇがな」ニヤリ
賢者「あーこりゃダメだわ」
不良「あん?」
賢者「私をなめるな小僧」ゴゴゴゴゴ
不良「!?」
賢者「私はここでは『生きた魔女』と言われている」
賢者「あの組にだって制裁した事がある」
不良「で、でたらめ言うんじゃねぇ…ぞぉっ!?」
ドォォォォォン!!
賢者「ちっ…当らなかったか」ブンッ
不良「ま…ほう…?」
賢者「だから『魔女』だって言ってるだろう」
賢者「あんた程度なら一発で蒸発させられるぞ」シュッ
ボヒュッ
不良「大木が…消し炭に…」
賢者「次はあんたがそうなる」ゴォォォッ!!
賢者「ついでにうちのおっぱいちゃんに触れた罰も与えるぞ」
不良「ひっ!?」
賢者「消えな」ボッ!!
不良「や、やめてください!?すいません!!すいません!!」ペコペコペコ
賢者「謝るなら最初から考えて行動すりゃいいじゃない」シュウ
賢者「これから反省してきちんと生きるんだね」
賢者「じゃないとまた私が現れるよ」
賢者「どこにいても来るから、そのつもりで…」テクテク
不良「分かりました…なーんて…なっ!!」ダッ
賢者「そぉいっ!!」
バシーンッ!!
不良「ぐほっ」ドサッ
賢者「不意打ち狙うとか本気で腐ってるね」
賢者「やっぱり殺す」カッ
不良「いやぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ゴォォォォォォォォォォ!!
不良「ぁ」ジョロロ…
賢者「残念、それは私が作り出した幻だ」
賢者「次こそ本当に手ぇ出したら殺すから」ニッコリ
不良「…」
賢者「殺すから」ニッコリ
不良「はぃ…もう…手を出しません…」
賢者「マジで生き方変えろ、あんた」
賢者「でないと私に殺されるよ」
賢者「じゃ…」テクテク
不良「…」キュン
-教室 授業中-
勇者「…」
勇者(緊張したけど何とかうまく自己紹介もできたし)
勇者(その後の質問攻めはきつかったけど…)
勇者(これでうちも学校で生活できるんだ…)
勇者(楽しみっ)
生徒「勇者ちゃん、呼ばれてるよ」ボソッ
勇者「へっ?」
教師「勇者さん、いないのですか?」
勇者「あぁ、いますいますっ」ガタッ
勇者(まず慣れないとね…)
勇者(輪の中に入って色々覚えていけば大丈夫だよね?)
-勇者の部屋-
賢者「おっぱいちゃん帰ってる?」
勇者「それやめてください…」
賢者「ふひ、ゆうちゃんの特徴挙げたらそこだからなぁ」ジロジロ
勇者「…」スッ
賢者「指2本突き出して目元に持ってくるのやめてっ!?」
賢者「それで学校どうだった?」
勇者「まだ初日だから何とも言えないけど…」
勇者「これからが楽しみではあります」
賢者「そっか」ニッ
賢者「あと、あまり危ない事はしないでおくれよ」
勇者「え?」
賢者「いや、何でもないよん♪」
賢者「ところで…今からお風呂入ったりしないのかい?」
勇者「いえ、まだもうちょっとあとで入りますが」
賢者「…ちっ」
勇者「何を企んでいるのですか…」
賢者「ベツニ ウマレタママノスガタ ノゾコウナンテ オモッテナイヨ?」
勇者「会ってすぐに思ってた事だけど」
勇者「普段はこの人ダメな人だ…」
-次の日 教室-
勇者「お、おはよう」
生徒「え、あ、おはよう…」コソコソ
生徒「おはよ…」コソコソ
勇者「?」
勇者(何だかみんながよそよそしい)
勇者「ねぇ、どうしたの?」
生徒「っ!?な、何が…?」
勇者「なんか…うちを怖がってない…?」
生徒「そ、そんな事ないよ…」テテテッ
勇者「…?」
-昼休み 中庭-
勇者「結局、あれから1人も話しかけてくる人はいなかった…」
勇者「うち、何かしたかな?」
勇者「空気悪くするのもあれだから外出てきたけど」
勇者「寂しいなぁ…」モグモグ
生徒「あそこにいるの例の子じゃね?」
生徒「あの不良、一撃でぶっ潰したんだろ?」
生徒「何人か倒してるの見てたって言うし」
生徒「たった一日で番長だぜ、番長」
生徒「不良よりはマシだろうけどアイツよりやばいんだろ?」
生徒「襲われたりするのかな?マジこえぇよなぁ…」
勇者(番長…?)
勇者(昨日の朝のアレのせいで怖がられたのか…)
勇者(人助けしただけなのにどうして…)
勇者「…」
生徒「げ、こっち見てる」
生徒「い、行こうぜ…」タッタッタ
勇者「襲うとか…そんなつもりじゃ…」
男「だったらどういうつもりだったんだ?」ザッ
勇者「誰…?」
男「誰かなんかどうでもいい」
男「あんた、不良殴ったよな?」
勇者「…えぇ」
男「みんな恐れてるんだよ」
男「誰にも止められなかったヤツが一瞬で沈められたんだぜ」
男「そりゃ番長と呼ばれてもおかしくないわ」
勇者「なに?うちは悪い事したの?」
男「別にそうではないと思うが」
男「周りはそう見てくれねぇんだよ」
勇者「ただ人をいじめてたからそれを止めただけよ」
男「…ふぅん」
勇者「信じてないでしょ?」
男「見てねぇもん」
勇者「見てもないくせにそこまで言うの?」
男「周りの評価で十分だろ?」
勇者「…アイツよりある意味最低ね」
男「はぁ?あんなのと同じ?頭おかしいんじゃねぇの?」
男「俺は一般論言ってだけなの」
男「分かるか?」
勇者「本人の発言は信用できないの?」
男「たった一人だけ違うこと言ってたら普通疑うだろ」
男「しかも転校してきたばっかのヤツだし」
勇者「あんたっ?!」グッ
男「おっと、殴るのか?」
男「あの不良のようにな」
勇者「…」スッ
男「まったく可愛くないな」
男「所詮、暴力で済ますヤツか」
勇者「あんた何様のつもりよ!!」
勇者「人を馬鹿にするのもいい加減にしてよ?!」
男「馬鹿にしてるっつーか事実言ってるだけなんだが」
勇者「確かに殴ったわよ!!」
勇者「でもいじめられてる人助けたって理由がある!!」
勇者「なのに何よその人をダメ人間のような言い方はっ!?」
男「うるさい女だな」
男「俺は自分で見たものは信じる」
男「それに学校中お前が言う助けたって話してるヤツがいない」
男「ここで実際、お前は恐れられてるだけだしな」
男「信用なんてできたもんじゃねぇ」
勇者「やっぱり最低よ…」
男「最低最低って」
男「お前とことん可愛くないな」
男「大人しく認めて誰かに泣きついたら?」
男「見た目だけは悪くないから助けてくれる奴いるかもよ?」
バシッ!!
男「ってぇ…」
勇者「…」ポロポロ
タッタッタ…
勇者(何であそこまで貶されなきゃいけないの?)
勇者(うちは悪い事何もしてないのに…)
勇者(悔しい…悔しいよぉ…)
男「結局、暴力じゃねぇか」
男「クソ女」
-勇者の部屋-
勇者「…」
コンコン
勇者「…」
キィ…
賢者「開けっぱか…邪魔するよ」
賢者「…って、いるじゃないかい」
勇者「…」
賢者「電気もつけないで何やってんだい」パチ ピカピカッ
勇者「…」
賢者「学校で何かあったの?」
勇者「もう…行きたくないです…」
賢者「どうしてかは分からないけど深刻そうね」
賢者「話せるかい?」
勇者「うち…悪い事なんてしてないんです…」
勇者「ただ自分が良かれと思ってやっただけ」
賢者「うん」
勇者「なのにそれが原因でどうも嫌われたようです」
勇者「そりゃ怖い事したかもしれないけど」
勇者「結果的には人助けしただけで…」
勇者「うぐっ…」ポロ…
賢者「そうかい」グイッ
賢者「すまないが私には何もしてあげられないよ」
勇者「うぐぅ…」ポロポロ
賢者「ただその話を信じる事ならできる」
賢者「あんたは良い子だ」
賢者「幼女の怪我治したり、可愛いものが好きだったり」
賢者「後半は関係ない気もするけど…」
賢者「私はあんたの味方だから」ナデナデ
勇者「ありがとう…ございます…」ポロポロ
賢者「アドバイスぐらいならあげちゃえる」
勇者「アド…バイス…?」
賢者「嫌われてるのがなんだってんだ」
賢者「悪い事してないなら堂々としてればいいんだよ」
賢者「余裕を見せてやりな」
勇者「余裕…ぐす…」
賢者「いつかあんたがそういう人間じゃないって」
賢者「分かってくれる時がくるさ」
賢者「私のエロ発言にツッコむような元気でいきなさい」
勇者「何でそこでそれもってくるんですか」ニコ
賢者「じゃあ一回アドバイスしたから一揉みさせてケロ」
勇者「しょうがないですね…いいですよ」グッ
賢者「うぇ?!」
勇者「何です?」
賢者「いや、本当に許可してくるとは思わなかったので…」ポリポリ
勇者「いえ、本当に助かりましたので仕方なしですよ」
賢者「んじゃいただきます」ガシッ
勇者「変わり身はや…ひぅっ」
賢者「何食べたらこんな育つんだ…」モミモミ
勇者「んんぅ…別に…ぁ…普通のものを…」
賢者「実にけしからんっ」モミモミ
勇者「けしからんのは…んぁ…あなたです…」
賢者「うらやましいとは思わないけど、いいねムチムチも」パッ
勇者「…あなただって悪くないと思います」
賢者「人間普通が一番」
勇者「じゃあうちは異常ってことじゃないですか…」ズーン
賢者「ははっ、私は好きだよ」モミモミ
勇者「終わったかと思ったらっ…ぁひっ」
賢者「終わりなんていってないもーん」
勇者「子供かっ!?ぁん…」
賢者「たっぷり堪能させてもらうからなぁ」モミモミモミ
勇者「ひぃぃぃぃぃ」
勇者(よく考えたら一揉みって言ったのに何回も揉まれてる…)
-中庭-
勇者「はぁ…」
勇者「教室居辛い…」モグモグ
勇者「悪い事してないなら堂々と、かぁ」
勇者「勇者みたいなものかなぁ…」
勇者「あの人ホント何者なんだろう?」
勇者「会ってすぐのうちにここまで優しくしてくれるし」
勇者「かなりの変態だけど…」
男「独り言多いな」
勇者「!?あんたか…」
勇者「何の用?話しかけないでほしいんだけど」
男「今日はえらい高圧的だな」
男「昨日なんか泣いて帰っていったくせに」
勇者「そうだね」
男「そこは認めるのか」
勇者「ウソついても仕方ないし」
勇者「また泣かせに来たの?正直うっとおしいんだけど」
男「昨日と違いすぎないかお前…」
勇者「これが本来のうちよ」
勇者「もう話しかけないで」
男「…」
勇者「それともあんたも番長?の仲間になりたいの?」
男「頼まれてもなるかよ」
勇者「あっそ…」モグモグ
男「いつまでもそうして過ごしていくつもりか?」
勇者「そうね」
勇者「いつか分かってくれるまでなるべく1人でいる事にしたの」
男「理解されるわけがねぇよ」
男「お前はアイツ殴り飛ばした怖いヤツって認識されてる」
男「それ以外お前のイメージ変わる要素がどこにもない」
勇者「それでもかまわないわ」
勇者「うちが嫌われる事で人一人助かったなら安いもんでしょ」
勇者「昨日考えてそういう結論に至ったわ」
男「…」
勇者「ホント第一印象って大事よね…」
勇者「もっと別のものになりたかったんだけどなぁ」
男「何になるつもりだったんだよ?」
勇者「あんたになんか教えない」
男「どうせ言う奴もいないんだろ」
勇者「…分かってると思うけど今日のうちは優しくないよ」バキバキバキィ
男「いっ!?」
男(大木が握りつぶされてるだと…)
勇者「今のところ、この世界で一番あんた嫌いだから」
男「何だよ…」
勇者「とりあえず殴るわ」スッ
男「何でだよっ!?」
勇者「昨日散々いじめられたし?」
勇者「一撃で意識とばないでね」ブンブンッ
男「お前、執念深いな…」
勇者「それだけ傷つけられたしね」
男「…」
男「もうお前には近づかねぇよ」テクテク
勇者「今日はあんたが逃げるのね」
男「くそ…」テクテク
勇者「ふぅ~」
勇者「やっぱりこの方がいいね、うちは」
勇者「逃げずに立ち向かわなくちゃ」
-次の日 教室-
勇者「おはよう」
生徒「え…お、おはよう…」コソコソ
生徒「おお、おはようございます!!」
勇者「はは、そんな年上か偉い人に対して挨拶するみたいにしなくてもいいじゃん」
生徒「そ、そうだね…はは…は…」
………
生徒「んしょ…」ズシ
勇者「あ、重そうだから持ってあげるよ」ヒョイ
生徒「あっ…えっと…」
勇者「遠慮はいらないよ、無駄に力はあるんだから」
生徒「あ、ありがとう…」
………
生徒「何だと!?」ガシッ
生徒「やるのかぁ!!」
勇者「ちょっとやめなさいよ…」
生徒「!?」
生徒「ご、ごめん…ちょっとカッとなってた…」
勇者「ケンカになるかと思ったよ…もぉ」
生徒「…」
勇者(そうだ、普段のうちでいいんだ)
勇者(怖がられていようがうちはうちだ)
-次の日 中庭-
勇者「…何してるの?」
男「いちゃ悪いか?」モグモグ
勇者「悪い、ご飯がまずくなる、どっか行って」
男「俺は元々ここで食ってたんだよ」
勇者「ふぅん…」スッ
勇者「あぁ、白いご飯が食べたいな…」モグモグ
男「今のところいつもパンだな」
男「女なら料理ぐらいしろよ」
勇者「まだそこまでする余裕がないのよ」
男「と、いうことはできるのか?」
勇者「何?バカにしてるの?」
男「バカにはしてねぇよ」
勇者「ずっと1人だったし、料理ぐらいは普通にできるわ」
男「ほー」
男「殴り倒すだけの手じゃなかったのか」
勇者「…あんた、わざと怒らせようとしてるでしょ?」
勇者「昨日もそうだったし」
男「決め付け乙」
勇者「一回握手してみない?」
男「アイドルじゃあるまいししねぇよ」
勇者「握り潰してやろうと思ったのに…」
男「そうきたか、ゴリラ女…」
勇者「あら、哺乳類ならいいじゃない」
勇者「あんたなんか爬虫類だから気持ち悪いだけ」
男「おま…」
男(マジ、コイツ強くなった…)
男(たった一日、二日で何があったんだ?)
勇者「ひとつだけ聞きたいんだけど」
男「却下だ」
男「どうせろくな事じゃないんだろ?」
勇者「真面目な話」ジッ
男「…んだよ?」
男「勝手に言えばいいじゃねぇか…」
勇者「じゃあ勝手に言うわ」ニコ
勇者「うちって普通の女の子に見える?」
男「はぁ?」
男「何言ってやがりますか、番長さん?」
勇者「…」グッ
ズブズブ…メキメキメキ!!
男「っ!?!??」
男(大木が地面から根っこごと抜けている…)
男「別に特別変ではない…と思う」
男(その腕力以外は…な)
勇者「そう」ズブ…
勇者「でも、やっぱりダメかなぁ…」
男「何が?」
勇者「教えない」
男「とことんムカツク奴だな…」
勇者「あんた嫌いだし」
男「俺だって嫌いだよ」
勇者「あーそうそう」
勇者「昨日言ってたけどもう近づかないんじゃなかったの?」
男「だから、俺はいつもここで飯食ってるんだっての」
男「話しかけたのもここに居座ったのもお前だろ」
勇者「そうだっけ?」
男「くっ…」
勇者「一人で食事って、寂しい人だったのね」
男「こいつ…」
男「じゃあな」テクテク
勇者「はいはい、これで本当に最後でありたいわ」
男「くそ…」テクテク
勇者「いじめすぎたかな?」クスクス
-勇者の部屋-
勇者「バイト?」
賢者「そう、仕事の事ね」
賢者「さすがにここで暮らすなら自分で稼がないとと思ってね」
勇者「確かに…ずっと人に頼りきりっていうのもダメですよね」
賢者「さすが常識人なあんたならすぐ分かってくれると信じていたよ」
賢者「でも支援はしてあげよう」
賢者「バイト先探すかい?」
勇者「どうやってです?」
賢者「ここじゃ情報誌ってのがあるんだ」
賢者「それ見て自分でいいものを選んで面接を受けるというのが基本だよ」
勇者「面接?」
賢者「おぅ、そこから説明しないといけないかぁ…」
勇者「はい…はい…え、即オッケー?」
勇者「あ、ありがとうございます…はい」
勇者「明日ですね…分かりました…そちらへ行きます」
勇者「それではよろしくお願いします…」ピッ
勇者「これ、ありがとうございました」スッ
賢者「はいよっと」
勇者「この世界はホント便利な者があるんだなぁ…」
賢者「携帯はどこにいても相手と話せるから便利よねー」
賢者「バイトの方、どうやらオッケーもらえたようだね」
勇者「面接なしでよかったみたいで」
賢者「ほー珍しいね、よかったじゃん」
勇者「はい」
賢者「ここでの初仕事だ、頑張んな」
勇者「はいっ」
-ピザ屋-
勇者「配達…ですか」
店長「うん、指定された場所へ届けてくれたらいいから」
勇者「分かりました」
店長「あ、バイクって乗れる?」
勇者「…いえ」
勇者(確か馬みたいに跨って乗る乗り物の事よね?)
勇者(免許とやらがないと乗るのは無理らしい)
店長「じゃあこの近辺の配達をお願いしようか」
バイト「てんちょー、早速配達の注文来ましたよー」
店長「この近く?」
バイト「ここから2、3分ぐらいのところですー」
店長「オッケー…早速初の仕事だよ、まかせていいかな?」
勇者「はい!!」
バイト「…」
バイト(あの新人さん歩いて持っていくんだよね…)
バイト(と、いうことはあのおっきいものがユラユラ…うわ、見てみたい!!)
店長「おーい、早く注文の品を厨房のヤツに言ってきてくれないと困るんだが?」
バイト「あひ!?すみません!!すぐ言ってきまーす!!」ドタドタ
勇者「…?」
店長「あ、これ配達先だけどそこの地図見て場所覚えておいてな」
勇者「分かりました…ん?」
店長「どうしたんだい?」
勇者「あぁ、いえ…」
勇者(注文先…うちが今住んでる所なんだけど…)
勇者(203号室って…賢者さんがいる所じゃないか)
勇者(いきなり知り合いの場所に配達とは思わなかった…)
店長「場所分かったかい?」
勇者「はい、知ってる場所でしたので」
店長「そうか、もうすぐ品物ができると思うからそれ受け取って行ってきてな」
勇者「はい」
-次の日 勇者の部屋-
勇者「昨日はえらい事だったわ…」
勇者「バイトもそうだけど、まさか魔王に会うとは…」
勇者「しかも賢者さんの部屋に居るなんて盲点すぎるでしょ!?」
勇者「しかもなんか可愛かった…」
勇者「あの魔王にすら負けてるのかうちは…」ズーン
勇者「やっぱり魔王は敵だ」ゴゴゴゴ
勇者「…そうか」
勇者「学校、魔王と行けばいいんじゃない?」
勇者「あの部屋で明らかに同じ制服あったし」
勇者「お昼もあの男に会わずにすむ…よし」
-さらに次の日 教室-
勇者「…」
勇者(魔王たちとご飯食べたの楽しかった…)
勇者(本当はとっくにあんな感じで友達できてたんだろうな…)
勇者(ダメだ…弱気になっちゃ…)
勇者(何かうちのためにやろうとしてたけど放っておいて大丈夫なのかな)
勇者「ちらっと見てこようかしら…」
勇者(だってこのうちのイメージ変えるとか言うんだもんな)
勇者(気になるじゃない…)
-放課後 校門前-
勇者「げ」
男「いきなり『げ』とは失礼だな」
勇者「会いたくない奴がいたら言いたくもなるわよ」
男「…」
勇者「あれ?泣く?」
男「泣くかっ!!」
男「そういえば昼来なかったじゃないか」
勇者「知り合いと一緒にいたから」
男「ぼっちじゃなかったのかよ」
男「そいつだって好きで一緒にいたわけじゃないんだろうな」
勇者「だろうね」
勇者(うちが勝手に押しかけただけだし…しかもあの魔王だ)
男「それかそいつも同じレベルって事か?」
男「力で解決するようなヤツだったりしてな」
勇者「…いい加減にしときな」グッ
男「また暴力か?」
勇者「うちの事はもう何言ってもいい」
勇者「他の人の事を憶測だけで決めるな」
勇者「彼女はうちと敵同士でも優しさだけは持ってるんだ」
勇者「これ以上の貶す発言すると黙っちゃいないよ」
男「…」
勇者「こんな事してるから番長って呼ばれっぱなしなのか…」ガックリ
男「そんなに嫌なのか、呼ばれるの」
勇者「吊りたくなるぐらい嫌だよ…」
勇者「うちは普通の…なんでもない」
勇者「帰る」テクテク
男「その程度であんな泣きそうな顔するとか…」
-翌日 昼休み 廊下-
勇者「今日はどこでお昼食べよう」
勇者「もう中庭行きたくないしなぁ…」
女「あ、見つけたよまおたん」
魔王「勇者」
勇者「どうしたのよ?こんなところまで来て」
魔王「ちょっと来てほしいんだ」
勇者「え?」
女「うまくいけば勇者さん一躍有名になれるんだって」
勇者「いや…どういう事?」
魔王「とにかく来てよ」グイ
勇者「まぁいいけど…」
勇者(別に有名になりたいわけじゃ…)
勇者(ただ普通の学校生活をしたかっただけ…)
-ミスコン会場?-
男「何じゃこりゃ」
男「ミスコンって、またアホな事やってるな…」
男「まぁ俺には関係ないか…」トコトコ
司会「おっとーっ!!なんと次の参加者は番長と呼ばれたあの人…」
司会「勇者さんだぁぁぁぁぁ!!」
ザワザワ…
男「はっ?」クルッ
男「何やってんのあの女?」
男「こんなわけ分からないイベントに参加するようなヤツだったか?」
勇者『…』
勇者『うちは…』
勇者『みんなの知っての通り腕力しかない子です』
勇者『でも、本当はそういうものよりなりたいものがありました』
勇者『それは…普通の女の子のような可愛いものに』
男「…普通の女の子?」
男「まさか、前言ってた別のものになりたいって…」
男「…」
男「それにしても…なんてものに着替えてんだ…」
男「ついに体でアピールしだしたか?」
勇者『…これがうちのいつもの姿です』
勇者『似合わないのは分かっています…でも…』
勇者『ただの可愛いもの好きな女の子なんです』
勇者『こんなうちだけどよろしくお願いします』
男「…」
男「やばい…」
男「あの女がすごく可愛く見えてしまった…」
男「俺、なにやってんだろう…」トコトコ
生徒「あの…」
男「ん?何だ?」
生徒「勇者さんの事でお話が…」
男「あいつの…?」
男「えっとお前は誰なんだ?」
生徒「僕はあの勇者さんに…」
-夜 勇者の部屋-
勇者「…」モグモグ
勇者「今日はすごい事やったなぁ」
勇者「変な着替え見せただけな気もするけど…」
コンコン
勇者「?」
勇者(誰だろう?)
コンコココンコン、コンコン♪
勇者「リズミカルだな、おい」
ガチャ
賢者「お姉さんだよっ!!」バッ
勇者「えっと、どうしました?」
賢者「お腹ペコちゃんなの…」ジー
勇者「はい?」
勇者「いや、晩御飯食べてないんですか?」
賢者「おかず抜きにされた上おかわり制限されて…」
勇者「はぁ」
賢者「シャツ一枚はやりすぎだったと怒られまして」
勇者「それならうちも怒ってますわ」
賢者「うぅ…邪魔したね…」トボトボ
勇者「入ってください」
勇者「その件は怒ってますけど、今日の事は感謝してますので」
勇者「少ないけど今食べてるやつでいいならどうぞ」
賢者「ゆうじゃぁぁぁぁぁぁん」ガバッ
勇者「泣くまでの事じゃないでしょ…」
モニモニ
勇者「って、胸!?またか変態!!」
賢者「すいません、つい本能のヤツが黙ってくれなくて…」
勇者「本能だけで生きてるくせに何を言ってますか…」
-数日後 教室-
勇者「お、おはよう…」
生徒「あ、おはよー」
生徒「あれ見てたよ、可愛かったねっ」
勇者「え、いや…そう?」
生徒「今までごめん…」
勇者「かまわないよ」
勇者(本当にうちのイメージ変わっちゃったんだ…)
勇者(嬉しいな…)
………
魔王「様子見に来たけど…」
女「大丈夫そうだね」
魔王「ホントにあれで変われたんだね?」
女「何のためにイベントこさえたと思ってるんだよー?」
女「じゃあもどろっか」
魔王「うん」
魔王(よかったね、勇者)
-休み時間-
生徒「なぁ、あの子供まだいた?」
生徒「おー、朝からずっと校門からこっち見てるわ」
勇者「…」
勇者(子供?何の話だろう?)
生徒「誰か待ってるのかねぇ?」
生徒「でも、あの年でこの時間に待ってるっておかしくないか?」
生徒「普通学校行ってるだろ」
生徒「それもそうだな…」
勇者(嫌な予感がする…)
ガタ
生徒「勇者ちゃん、どうしたの?授業もうすぐ始まるよ」
勇者「ちょっと外行ってくるって言っておいて」タタタッ
生徒「え?え?」
-校門前-
勇者(やっぱりね)
勇者「…何してるの?」
魔術師「!!」
勇者「まだ学校終わらないわよ」
魔術師「…」テコテコ ギュ
勇者「外に出るなとは言わなかったけど」
勇者「ここにいられるとなんか色々都合が悪いみたいだから家で待ってて」
魔術師「…」フルフル
勇者「何か困った事でもあったの?」
魔術師「…たの」
勇者「ん?」
魔術師「…寂しかったの」
勇者「うーん、気持ちは分かるけど…」
勇者「ここにはあんたは入れないのよ」
魔術師「…」フルフル
勇者「困ったわね…」
男「何やってんだ、お前」
勇者「帰れ」
男「いきなりそれかよ…」
男「もうすぐ授業始まるだろ?」
キーンコーンカーンコーン
男「ほれ」
勇者「もうサボるからいいわ」
男「おいおい…」
勇者「今は一緒に入れないんだよ、分かる?」
魔術師「…」ギュウ
男「何だそのガキ、お前の子供か?」
ガキィンッ!!
勇者「ちょっと黙ってて」ニッコリ
男「鉄の門が…」
男「じゃあ事情話して教師にお世話になってもらってたら?」
勇者「まともな事も言うのね、あんた」
男「真面目に話せばこれだよ…」
勇者「でもこの子、特定の人にしか懐かないのよ」
男「ふぅん、ほれいい子いい子」サワッ
魔術師「!?」バチッ
男「でっ!?何だ今の?!」
勇者「こら、こんなところで使わない」
魔術師「…」ギロ
男「おぉ、怖いな」
勇者「あんたはいらん事するな!!」
男「頭撫でただけなんだがな…」
勇者「あぁ!!めんどくさくなった!!」
勇者「今日、全部サボるわ」
男「無茶苦茶な結論だすな、おい」
勇者「一応報告だけしてくるか…」
勇者「魔術師、ちょっと待ってて」
魔術師「…」コクリ
タタタッ
男「女はいいよな、あの日だとでも言っときゃ休めるから」
魔術師「…」
男「俺はどうするかな…」グッ
魔術師「…?」
男「授業受ける気しねぇ…」ズルズル ドサッ
男「お嬢ちゃん、あいつと今日サボっていいと思うか?」
魔術師「……?」
男「いやな、ちょっとアイツに言いたい事あるんだわ」
男「このままサボられると話す機会なくなるなぁってな」
男「でもちょっと風邪気味で動けないんだわ…」
魔術師「…」ポンポン ポォォォ
男「なんだ…お?」
男「頭痛が消えた…」
魔術師「…おまじないかけた」
男「さっきめっちゃ睨んでた気がしたが…」
男「何か分からねぇがサンキュ」ググッ
魔術師「…一緒にいる?」
男「あ、あぁ…サボるか、俺も」
男「元々、遅刻したわけだしこのまま休んでしまえ」
-公園-
勇者「何でこうなったのよ?」
男「ん?」
勇者「あんたまでいる理由よ」
魔術師「…」グイグイ
勇者「なに?」
魔術師「…言いたい事あるって」
男「うわ、言うなよ」
勇者「何吹き込んだの?」ジロ
男「お嬢ちゃんが俺の話聞いてくれただけだ」
勇者「ふぅん」
勇者「で、言いたい事って?」
男「今までの事だ」
男「ずいぶん勝手な事言ってきたと思う」
勇者「今頃そんな事言って謝ってもあんた嫌いだから」
男「嫌いでもいい」
男「ただ言いたかっただけだ」
男「前にいじめられていた奴に話しかけられてな」
男「『あの人は何も悪い事はやっていない』」
男「『自分に勇気をくれただけなんだ』って言ってたわ」
男「中庭で俺と話してるのを見かけたらしくて」
男「お前のために誤解を解こうと俺に話しかけてきたんだとよ」
男「何と言うか…お前を信じてやれなくて悪かった」
勇者「…ふん」
男「ミスコン見てやっと気づいたんだわ」
勇者「あ、あんたあれ見てっ!?」
男「普通の女の子だって事にな」
勇者「…」
男「不覚にも可愛いと思った」
勇者「ぇ…」
男「俺は自分で見たものは信じるんだ」
男「嫌われてなかったら告ってたかもしれんな」
男「と、いうわけで言いたい事終わり」
勇者「ちょ…待って…」
男「何だ?もう去るからその子の相手でもしてやれよ」
魔術師「…?」
勇者「いや、あの…」
勇者「本気で思った…?」
男「何を?」
勇者「か、かかか可愛いって…」モジモジ
男「もちろん、あの私服が一番可愛かった」
勇者「~~~~~///」
男「んじゃ」テクテク
勇者「ま、待って!?」
男「何だよ?嫌いじゃなかったのか?」
勇者「嫌いよっ…でも…」
勇者「何だか分からなくなってきた…」
男「ふぅん」
男「じゃあ今度中庭でその件についてゆっくり話すかー」テクテク
勇者「お、お断りよ!!」
勇者「何なのよ、あいつは…」
魔術師「…」クイッ
勇者「あぁ、ごめん帰ろっか?」
魔術師「…何だか嬉しそう」
勇者「気のせいよっ」プイッ
-次の日 教室-
勇者「今日の授業終わった…」
女生徒「勇者ちゃん一緒に帰らない?」
勇者「え、うん…いいよ」
女生徒「わーい、やっと念願の勇者ちゃんを手に入れたぞ」
勇者「念願…?」
女生徒「私ね、気に入った子を自分でプロデュースするのが夢だったの」
勇者「はい?」
女生徒「初めて見たときからずっと思ってたの」
女生徒「この子をどこのアイドルにも負けない子にしようと!!」
勇者「言ってる意味が分からないよぉ…」
女生徒「そうねぇ…まず見た目から…」
女生徒「よし、早速今日行きましょ」
勇者「どこに!?何を言ってるの!?」
???「勇者ちゃんはおられるか!!」ガラッ
勇者「えっと…ここに」
???「ついにリアル勇者たんと遭遇したハァハァ」
???「落ち着け同士よ、警戒されるぞ」
勇者「あの…どちらさまで?」
???「勇者ちゃんのファンクラブ『勇者ちゃんを愛し隊』だっ!!」
勇者「そういえばそんなのあったっけ…」
ファンs「勇者たんが忘れちゃっても僕らは忘れた事ないよぉ」
勇者(なんか分からないけどすごく気持ち悪いな)
ファン「我々がここに来たのはだね…」
ファン「クリスマスパーティのお誘いに来たのだよ」
勇者「クリスマスパーティ?」
ファン「初のファンメンバーの集まりだし」
ファン「やはりここは勇者ちゃんにも来ていただきたく…」
勇者「は、はぁ…」
ファン「初めて会う者たちだけど怖がる必要はないよ」
ファン「ほら、こんなに君を愛でようとしている連中に悪い奴はいないさ!!」
ファンs「勇者たん勇者たん!!大好きだぁ~」
ファンs「こっち向いて!!笑顔を僕に見せて!!」
ファンs「わ、私を罵ってくださいませ…ぽっ」
ワラワラワラ
勇者「ひぃぃぃぃぃぃ!?」
ファン「さぁ、我々と一緒にレッツパーティ!!」
女生徒「待ちなさい!!」
勇者「あ、さっきまで無言だったのに…」
女生徒「ちょっと妄想…思考しててね」
勇者「はぁ…」
ファンs「妄想乙!!」
女生徒「うるさいよ?!」
女生徒「あんたらのようなキモオタの中にこの子放り込めるわけないじゃない」
女生徒「それに今日は着せ替えタイムの日なのよ!!」
ファンs「確かにあの時早着替えしてたのには萌えた」
ファンs「自分だけで独り占めする気だぞこの女!!」
女生徒「だまらっしゃい!!うしゃしゃい!!」
勇者「よく分からないけど逃げたほうがよさそう…」コソコソ
ファン「ふっ、貴女だけの彼女じゃないんだよ…分かるね?」
女生徒「分かるわけないわ!!帰れキモオタども!!」
ファンs「お前だって十分キモ女じゃねぇか!!」
女生徒「あんですってー!?」
勇者「…」コソコソ
女生徒「…」チラッ
勇者「!?」ビクッ
女生徒「逃げていいよ」クイクイ
女生徒「止めておいてあげるから」
勇者「…ありがとう」
女生徒「でも今度一緒にショッピングしようね?」
女生徒「もっと可愛くしてあげるからねっ」
勇者「…」ニ、ニコ…
勇者(ちょっと変だけど彼女はいい人だった…)
-夜 ホテル街-
勇者「あいつどこにいるのかしら…」テクテク
呼び込み「おねーちゃん、いい男いるんだけど寄っていかない?」
勇者「すいません、人探ししているので」
呼び込み「ありゃそうかー、こんな所だと変なの多いから気をつけるんだよ」
勇者「どうもです」
呼び込み「一応聞くけど探してるのどういうヤツ?」
勇者「騎士というとんでもない変態です」
呼び込み「…それ、うちで今凄まじい人気誇ってるヤツなんだが」
勇者「うそ!?」
呼び込み「呼んでこようか?」
勇者「お願いします…ここに来てまで変な仕事ばかりしてあのアホは…」
騎士「よぉ、勇者ちゃん」
勇者「マジで本人だった…」
騎士「ん?にしても、わざわざ会いに来てくれるとはなぁ」
騎士「やっと俺の愛に答えてくれる気になったか?!」
勇者「全然まったくさっぱり思わない」
騎士「あぁん、厳しい子だこと」ビクン
勇者「話があるのよ」
騎士「え、どの体位が一番気持ちいいって?」
勇者「剣よ…」ゴゴゴ
騎士「ここで剣出すのやめれ!?」
騎士「真面目な話?」
勇者「仕事中で悪いけど、なるべく早く話したかったから」
騎士「半分自由みたいなもんだからいいよ」
騎士「どこか入るか?」
勇者「いや、ここでもいいけど…」
騎士「じゃああそこなー」
勇者「…あそこ宿泊するところじゃないの?」
騎士「まぁそれもあるけど本来はセック…」
騎士「…俺の行きつけ行くか」
勇者「セックって何?」
騎士「聞かなかった事にしてくれよんっ」
騎士(いつものノリって怖いよな、ついいらん事言っちまう)
-近くのバー-
勇者「ここ…酒場みたいなもの?」
騎士「似たようなもんかな」
騎士「酒飲みに来るところだし」
勇者「ふぅん」
騎士「んで、話ってのは?」
勇者「うん…」
勇者「帰る方法分かったんだって」
騎士「マジか」
勇者「元はといえば魔王の魔力が原因だったらしいわ」
騎士「やっぱり僧侶の予想は当っていたのか」
勇者「『魔力があの空間には残っています』」
勇者「『おそらく魔王の魔力そのものでしょうね』」
勇者「だったかな」
騎士「よく覚えてるな」
勇者「仲間の言葉は忘れた事ないよ」
騎士「じゃあ俺のエロトークも覚えているんだな?」ニタニタ
騎士「さぁ、言え?!言えぃ!!」
勇者「このテーブルに埋まりたくなかったら落ち着きな」ゴンゴン
騎士「サーセンwww」
騎士「で?」
勇者「あんたはどうする?」
騎士「帰るか、残るかってか?」
勇者「そうよ」
騎士「俺はどっちでもいいわ」
騎士「帰ったって居場所ないしな」
勇者「そっか、あんた…」
勇者「ごめん」
騎士「気にすんなよ」バンバン
騎士「何だ、わざわざそれ聞きに来たのか?」
勇者「それもあるけど…」
騎士「じゃあ何?」
勇者「魔王の事」
騎士「魔王ちゃん?」
勇者「あの子戻ったら魔力なくなるんだって」
騎士「なくなるってどういう事?」
勇者「あんたと同じで魔力0になるのよ」
騎士「補充は?」
勇者「体内の魔力の源がなくなるから無理らしい」
騎士「ははっ、だったら魔王恐るるに足らずじゃん」
勇者「そうなんだよ」
勇者「うちらだけじゃなくて一般の人間にもやられてしまうんだ」
勇者「腕力はないみたいだから」
騎士「まぁそうだろうな」
勇者「確かにうちらの目的は魔王を追いかけて討伐する事だった」
勇者「でも…」
騎士「死んでほしくないのか」
勇者「あの子には優しくされたんだ…」
勇者「あんなに憎んでた相手なのにね」
勇者「今ではあんたら仲間と同じぐらい…」
勇者「おかしいよね?」
騎士「いや、おかしくはないだろう」
騎士「この前会った時なんか2人で楽しそうだったじゃないか」
勇者「…」
騎士「ふぅ…じゃあお前はどうしたい?」
勇者「えっ?」
騎士「俺はここ結構気に入っちまった」
騎士「お前は?」
勇者「うちもこの世界は結構好き」
勇者「使命もないし、今までできなかった事もできる」
騎士「いい事だらけか」
勇者「そうだね」
騎士「だったらそれでいいじゃん」
勇者「ここにずっと住むって事?」
騎士「いや、向こうだって気になるんだろ?」
勇者「それは…」
騎士「それに魔王ちゃんの件」
騎士「彼女はなんて?」
勇者「まだ決めてないみたい」
勇者「自分の命に関わるしね」
騎士「ならまかせちゃえよ」
勇者「?」
騎士「正直、俺達はどっちにいてもかまわないわけだ」
騎士「なら重大な選択迫られてる本人に任せるといいさ」
勇者「…そうだね」
勇者「そんな簡単な事だったんだね」
騎士「魔術師には言ったか?」
勇者「まだ…帰ったら言うつもり」
騎士「多分アイツだって同じだぜ」
騎士「俺達の仲間だしな」
勇者「あんたにしてはいい事言うわね」
騎士「エロい事ばっかですみませんねー」
勇者「そう思うなら自重しなさいよ」
騎士「これは俺の生きがいだからなくさないでぇ」
勇者「うざ…」
ー勇者の部屋ー
勇者「ただいま」
魔術師「…おかえり」ゴロゴロ
賢者「おかえりー」ナデナデ
勇者「なんで賢者さんがうちに?」
賢者「大事な話があってね」
勇者「胸なら貸しませんよ」
賢者「なんと先手を取られたか…くそぉ…」
賢者「って、それは置いておいて」
勇者「置かずにむしろ投げ捨ててください…」
賢者「とりあえずあんたには言っておく」
賢者「明日、私はここを去るわ」
勇者「!?」
勇者「元の世界に帰る…という事ですか?」
賢者「うん」
賢者「ここには長く居すぎてね」
賢者「別れは辛くないといえばウソになるけど」
賢者「向こうでしなければいけない事あるしね」
勇者「そうですか…魔王には?」
賢者「言うつもりないよ」
賢者「あの子とは最後に会わずに去るつもりさ」
勇者「そんな…」
勇者「一緒に住んでいたのにそれはあんまりじゃ…」
賢者「察しておくれよ」ニコ
勇者「ぁ…」
勇者(ずっと傍にいたからこそ…別れるのが辛いんだ)
勇者(だからこそ顔を合わせたくなかったんだ…)
勇者「うちは何も言いませんよ」
賢者「そうかい、悪いね」
賢者「で、あんたはどういう結論出したんだい?」
勇者「え?」
賢者「元の世界に帰るか、ここに残るか」
勇者「うち…何も言ってなかったと思うんですが…」
賢者「実はあそこにいたんだよ」
勇者「うそっ!?」
賢者「う・そ」
勇者「くっ…」
賢者「多分、まおたんがしゃべったと思ってたんだよ」
賢者「あんたを結構気に入ってるしね、あの子」
勇者「そういう事ですか…」
勇者「すべての結論は魔王に任せました」
賢者「じゃあ帰る道を選んだらどうするんだい?」
勇者「どんな事があっても魔王を守ります」
賢者「ゆうちゃん」
賢者「運命ってのはね、意外とあっさり変わるものなんだ」
賢者「下手したら死ぬはずのないあんたが死ぬかもしれない」
賢者「他の子達も同じ」
勇者「皆、承知の上です」
賢者「それだけまおたんが大切になったのかい」
勇者「そうです、おかしいですか?」
賢者「いいや、むしろ褒めたいぐらい」
勇者「撫でるのは頭にしてくださいよ」
賢者「…ちっ」ワキワキ
賢者「じゃああともうひとつ」
勇者「何です?」
賢者「残るのを選んだ場合の後始末とでも言うのかな」
賢者「向こうで待っているの僧侶に何か言いたい事あるかい?」
勇者「そうですね…」
勇者「一言、『幸せになって』と言いたいですね」
賢者「それだけでいいのかい?」
勇者「えぇ、そのためにこちらへ来させなかったんですから」
勇者「それより何です?届けてくれるのですか?」
賢者「ははっ、あっちにはさすがにいけないわお姉さん」
賢者「でも、できる限りその言葉はその子に届けてあげる」
勇者「やっぱりあなたはすごい人です」
賢者「無駄にできる事が多いだけよ」
勇者「あの…」
賢者「うん?」
勇者「今までお世話になりました」ギュ
賢者「…小さい手だね」グッ
賢者「もしかしたらもう会えないかもしれない」
賢者「元気にやってくんだよ」
勇者「はい」
賢者「えっと、抱きしめていい?」
勇者「…」
賢者「あぁ、変な意味ではなくてね」
勇者「別にかまいませんけど…」
ギュッ
賢者「やっぱ勇者と呼ばれる子は何故かぬくもりが同じだね」
勇者「そっちにもいたんですか?」
賢者「いたよ」
賢者「私の一番好きな子さ」
賢者「…性的な意味で」
勇者「最後で台無しですよっ?!」
賢者「冗談だよ」
賢者「もうあんたの勇者の仕事は終わっているんだ」
賢者「自分の好きなように生きなさい」グッ
勇者「はい、本当にありがとうございました…」グッ
賢者「あんたもね、頑張んなさい」ナデナデ
魔術師「…うん」ギュッ
賢者「それじゃ、うちのお姫様が怒る前に戻るわ」
勇者「魔王なのにお姫様…」
賢者「あと明日、うちでパーティするから二人ともおいでよ」
勇者「分かりました」
魔術師「…」コクリ
賢者「じゃね~」ガチャ
バタン
勇者「それが最後のお別れの挨拶なんて軽すぎでしょ…」
勇者「本当に今までありがとうございました」ペコリ
勇者「魔術師、あんたはもう聞いてたの?」
勇者「全然話に入ってこなかったし」
魔術師「…うん」
魔術師「…妹達と同じで可愛くて好きだったって」
勇者「そう言われたんだね」
魔術師「…」コクリ
勇者「あんたもあっさり懐いた人だったもんね」ナデナデ
魔術師「…面白かった」ギュッ ポロポロ
勇者「そうだね、本物のお姉さんみたいだった…」ギュ
-エピローグ 勇気ある者⇔可愛い女の子-
勇者「年末って忙しいって聞いたけど暇なもんねー」ボー
魔術師「…」ムキムキ スッ
勇者「あむっ、みかんおいしいわぁ…」
魔術師「…」スッ
勇者「あむっ、あとは自分で食べな」
魔術師「…」コクリ ムキムキ
勇者「何かする事ないかしらね…」
魔術師「…行きたい」
勇者「え?」
魔術師「…ゲーセン」
勇者「どこで覚えたのよ…と、いうかそれどんな所?」
魔術師「…パーティの時、騎士が言ってた」
魔術師「…遊ぶ所だって」
勇者「意外とまともな事教えてるのね、あいつ…」
勇者「暇だし、行ってみようか」ムクッ
魔術師「…!!」コクコク
-ゲーセン-
勇者「ふむ、色々あるわね」
勇者「でも遊び方なんてさっぱりだわ…」
魔術師「…♪」ウロウロ
勇者「あまりウロウロしてどこか行かないでよ」
ドンッ
魔術師「!?」ドサッ
勇者「あー、すいません…」
男「いや、別に平気だ…って」
勇者「あんただったか」
勇者「じゃあどうでもいいわ」プイッ
男「おいっ!?」
勇者「あんた、ここでうちらができるものない?」
男「はぁ?」
勇者「おすすめのゲーム」
男「クレーンゲームでもしてろ」コンコン
勇者「あぁ、それ?」
魔術師「…?」ジー
男「何だ知らんのか」
勇者「そりゃうちら、この世界の人間じゃないし」
魔術師「…勇者」
勇者「いいの、大丈夫だから」ナデナデ
男「この世界の人間じゃないって何だよ?」
勇者「言葉通りの意味よ」
勇者「後でいくらでも証拠は見せてあげるからやり方教えてよ」
男「あ、あぁ…」
-公園-
魔術師「…」ギュッ
勇者「ぬいぐるみ取れてよかったわね」ポン
男「これ喜んでるのか?まったくの無表情なんだが…」
勇者「3段階でいうと中」
勇者「慣れたら動きだけで分かるようになるわ」
男「中って事は結構喜んでるんだな…」
魔術師「…♪」
男「で、さっきの話だが」
勇者「あぁ」
勇者「うち、あっちでは勇者と呼ばれてたのよ」
男「はぁ?」
勇者「魔法だって使える」ポォォォ
男「げっ!?」
魔術師「…」ジー
勇者「あんたも見せてやんな」
魔術師「…」コクリ メラメラ
男「マジかよ…」
勇者「あとは剣も出せる…『剣よ我が右手に』」ズズズ
勇者「ね?」シャキッ
男「…ちょっと持たせてくれ」
勇者「はい」スッ
男「ん…ぐ…おぉぉぉぉぉ」ズシ
勇者「やっぱり他の人には無理だね」ヒョイ ヒュンヒュンッ
男「そりゃこんなの振り回せるんだから不良程度なら楽にふっ飛ばせるわな…」
勇者「うん、そうなんだよ…」ズーン
男「しっかり落ちこんどる」
魔術師「…」ナデナデ
勇者「力なんて要らない…魔王みたいな可愛さがほしい…」
男「もう持ってるじゃねぇか」
勇者「へ?」
男「可愛さ」
勇者「慰めなんていらないわ…」
男「いや、マジで」
勇者「な?ななななな…」
男「いや、前にも言っただろ、私服が可愛いって」
勇者「うぅ~///」
男「なぁ、こいつっていつもこんな可愛いキャラなの?」
魔術師「…いつもムスッてしてる」
魔術師「…でも、笑うと可愛い」
男「ふーん」
勇者「こ、こら魔術師!!」
男「じゃあここで宣言しようか」
男「お前が俺を好きになるまで可愛いって言い続ける!!」
勇者「はぁ!?」
勇者「あんた頭おかしいんじゃないの?!」
男「おかしいかも知れんな」ニッ
勇者「~~~~~」
-魔王の部屋-
勇者「と、いうわけでいきなり告白まがいの事言われたわけよっ」ドンッ
魔王「へ、へぇ…」
魔王「それで何でわたしの所に来たの?」
勇者「どうしようかと思って…」
魔王「いや、わたしそういう経験まったくないから…」
勇者「聞いてくれるだけでもいいわ」
勇者「初めての事ですごく混乱してる…」
魔王「その人の事嫌いなんだよね?」
勇者「正確には嫌いだった…かな」
勇者「もう今じゃ全然分からない」
魔王「うーん…」
魔王「しばらく一緒にいてみたらどうかな?」
魔王「そうしてたら変わるかもしれないし」
勇者「変わるってどのように!?」
魔王「勇者も好きになるかも?」
勇者「『も』って!?『も』って何!?」
魔王「あはは」
魔王「ゆっくりやっていけばいいんじゃないかな」
勇者「そうだね…時間はあるんだ」
勇者「…」
魔王「…勇者?」
勇者「ありがと~まおた~ん」ガバッ
魔王「うわっ!!」ギュムッ
勇者「ふむ…なかなか育ってるじゃない」ムニムニ
魔王「ちょ…勇者、どうしたの…んっ」
勇者「誰かさんの真似してみた」
魔王「やっと変態さんいなくなったのにぃ」
勇者「とか言っちゃって本当はまだ寂しいくせに」
魔王「そ、そんな事ないよ…」
勇者「大丈夫、うちはいなくならないよ」ギュッ
勇者「あの人にはなれないけどね」
魔王「ずっと見守っててくれる?」
勇者「もちろん」
魔王「嬉しい」ギュ
勇者「やっぱり寂しかったのね?」ニヤニヤ
魔王「うっ…」
うちは勇者。
生まれた世界では勇気ある者…『勇者』だった。
今住んでいる世界では普通の女の子だ。
未だに分からない事ばかり。
でも、それでいいと思う。
それだけ楽しい事があるのだから。
さぁ楽しもう、新しい世界をっ!!
END
ちょっとだけなのに最後だけ更新時間がずれて申し訳ないけどこれで終わりです
最後まで読んでくれた人ありがとう、今年中に終わらせて良かったわーw
自分のSSは話が違ってもある特徴がひとつだけあるのでまたどこかで見かけたら読んでみて下さい
ではでは
これで完全に終わりにしようと思って依頼出す前に覗いてみたらまさかの別視点希望だと…
今までの速度の更新はできないけど書いてみるかもしれない
希望者が本当にいたらにしますわw
返答ありがとう
他のサイドストーリーはなしでこれで終わらせてもらいます
ちなみに賢者だけは次回考えているSSに絡む可能性があります
ただし内容は全然別物になりますが…
今度こそ本当に終わりです、では~
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