勇者「命令を ちゃんと きいて!」 エルフ「はぁ」(244)

=酒場=

勇者「…な、仲間になりませんかー」

ガヤガヤ

勇者「えと、どんな職業でも大丈夫ですー」

ガヤガヤ

勇者「あの、女ですけど一応勇者なんですー。一緒に魔王討伐行きませんかー」

ガヤガヤ

勇者「…だれかー」

勇者「…はぁ、やっぱここも駄目かなぁ」

戦士「おい、嬢ちあゃん」ガタ

勇者「あ、はい!仲間になりたいんですか?」

戦士「こんな時間に、女が一人で、なーにしてんだ」

勇者「あ、だから仲間探しをしてますっ。ほら、このカード見てください」

戦士「ほーん…」ジロジロ

勇者「一緒に魔王討伐に行きませんか?」ニコニコ

戦士「…ぷっ」

勇者「?」

戦士「冗談だろお、おい!こんなひょろっちい女の子が、勇者!?」

勇者「え、え」

戦士「おもしれぇー!な?」

盗賊「だなー!俺ぁまた、新手の女郎の誘い文句かと思ったぜ」

ギャハハハ

勇者「な、…じ、女郎??」

戦士「おー、嬢ちゃん。女郎も知らんのか、ウブだなーwますます怪しいぞ」

勇者「……???」ハテ

盗賊「しかしよぉ、小さくて可愛い子だな」ジー

勇者「え、あのどうも」

戦士「たしかになぁ。細くて白くて、おまけになかなかの見てくれだな」ニヤニヤ

勇者「え、えへへ。ありがとうございます」テレテレ

盗賊「…いくら?」

勇者「へ?」

盗賊「だから、一発いくら?」

勇者「え?それは、どういう」

戦士「おい、抜け駆けすんなよ!俺、コイツの2倍は出すぜー」

勇者「えーと、お金はいらないんで、仲間になってください」

戦士「はぁ?まじで言ってるの?」

勇者「最初から本気ですよ」

戦士「…ほーん」

盗賊「…こりゃすげぇ」

勇者「??」

戦士「じゃあよぉ、仲間になってやるから良いことしようや」ニヤニヤ

勇者「仲間になってもらう上に、良いこともしてくれるんですか!?」

盗賊「おーよ。どうだぁ?」ニヤニヤ

勇者「じゃ、お願いしm」

マスター「ちょちょちょ、ちょい待ちー」

戦士「チッ。んだよ、マスター」

マスター「悪いねぇ、ここはそんな店じゃないんで。それにこの子、見たとこ純情そうだろ。悪い事しないでくれよ」

勇者(な、なんで邪魔するの…?いいところだったのに)

戦士「ちぇ、しらけたぜ。帰るわ」ガタ

盗賊「風俗でも行って帰るかー」ガタ

マスター「へーい。またいらっしゃいー」

バタン

勇者「…」

マスター「えっ何で睨まれてるん、俺」

勇者「折角、仲間ができそうだったのに…。どうして邪魔するんですか」

マスター「えええええ!?」

マスター「えーと、違うんだよ。お嬢ちゃんー。あいつらはね、良からぬことを企んでたんだって」

勇者「良からぬこと?」

マスター「そ。つまりー、君を…。まぁ、乱暴するというか」

勇者「え、え、え!!カツアゲですか?」

マスター「もうそれでいいや」

勇者「こ、怖い。都会怖いよ」フルフル

マスター「そうそう、怖いの。だからもうお家なり宿なり、戻りなさい」

勇者「そっ、そうします。ありがとうございましたっ」

バタン

マスター「…何、あの子」

常連「面白い子だねwwwwでも、かなり可愛かったぞ」

マスター「いやでも、自分のこと勇者って」

常連「あー…。…虚言癖?」

マスター「なるほど…」

マスター(…ちゃんと帰れてるかな)

勇者(あー、全然だめだよ)

勇者(町に来れば、誰か仲間になってくれると思ったのになぁ)

勇者(色んな所回ったのに…。何でかなぁ)

勇者(あ、もしかして)

勇者(私って、人望ないってことなの?)

勇者「…」

トボトボ…

勇者(明日は、必ず見つけよう)

=翌日=

勇者「おはようございます」

宿屋「おーう、おはようお嬢ちゃん。また今日も外出かい?」

勇者「はい!今日こそ、仲間をみつけるんです」キリ

宿屋「仲間ねぇ…。あ、そうだそうだ」

宿屋「ほら、この通りを抜けた所に、広場があるだろ」

勇者「はい」

宿屋「そこで、競り市が行われるんだよ。そこになら、丁度良い人がいるかもよ」

勇者「本当ですか!それは良い情報を掴みました」

宿屋「おーうw元気になったねぇ。ま、がんばりなよ」

勇者「はい!!ありがとうございましたー!」タッ

=競り市=

ガヤガヤ

勇者(うわ、人多いなぁ…。確かに、良い人がいるかも)

勇者(男の人はカツアゲするみたいだから、女の子でも捜そうかな)

勇者(よっしゃー!)

「新鮮な野菜の詰め合わせだよー!」

「はい、こっちのおにいさんに決まりだよ!」

勇者「すごい熱気だなぁ」

ドン

勇者「あっ、すみません!」

商人「気をつけろい!ガキがうろちょろすんな!」

勇者「は、はい…」

商人「ちっ…。道空けろ!」

勇者「…」ヒョイ

ガラガラ

勇者「…檻?」

商人「ああ、そうだよ。今日の目玉商品だぜ」ニヤ

勇者(なんだろー。虎とかかなぁ)

勇者(まぁ、私には関係ないや!それより仲間、仲間)

「はい、今日の目玉商品だよーーーー!!」

勇者「…」ピク

勇者「…」チラッ

「なんと、今日はかぁなり珍しい品物が入ってるよー!ここだけだよ!」

勇者「…」チラッチラッ

「さぁ、あともう少しで競だ!」

勇者(我慢できませんぞ!!)ダッ

勇者「ご、ごめんなさい!通してくださーい」ギュウギュウ

野次馬「おい、そんなに押すなよ!」

勇者「ご、ごめんなさーい」

野次馬「全く…。ほら、こっちに立てよ、見えないだろうが」

勇者「は、はぁい」テクテク

司会者「では、時間です!始めたいと思います!今日の目玉は、この布の中!」

勇者「…」ワクワク

勇者「何でしょうかー。虎ですかね、熊ですかね」

野次馬「な、何だお前…。んなわけねーだろ」

司会者「えー、この商品ははるか遠くの、魔力の森で生け捕りにした生き物」

勇者「ほら、ほら!生き物ですって」

野次馬「はぁ…うるさい子だな」

司会者「肌は白く、耳は高く、毛色は鮮やかな小金色!」

勇者「??虎…じゃない?」

司会者「ではでは、布を外します!!」

バサッ

勇者「……え」

エルフ「…」

司会者「なんとぉおお!今日の目玉は、エルフだよ!!」

ザワザワ…

勇者「なっ、なにあれ…」

野次馬「ほーう、エルフか。また、悪趣味な…」

勇者「人身売買、じゃないですか…!」

野次馬「まぁな。まー…。たまぁに、あるんだよここではよ」

勇者「な…」

司会者「では、1000ゴールドから!!!」

「2000!」

「3500!」

勇者「な、な…。皆何してるんですか…!」

野次馬「まぁ、珍しいからな。需要は中々だぞ」

勇者「エルフなんか買って、何するんです!?」

野次馬「そりゃまぁ、働かせたり…。奴隷にするか、まぁ。慰み者かな…変態がいるもんだ」

勇者「…!!」

「7000!」

司会者「おおっと、7000だよー!他にいないかい!?」

エルフ「…」フイ

勇者(か、可愛そうに…)

勇者(…)

野次馬「おい?気分が悪いなら、もう帰…」

勇者「…10000!!」

野次馬「えええええ!?」

司会者「おっ、そこの嬢ちゃん気前がいいねぇ。10000!他は?」

「…い、15000!」

勇者「ぐっ。…20000!」

野次馬「おいおい、下手な情けをかけるなよ!」

勇者「あっ、あなたには関係ないですー。私、あのエルフを買いたいんですー」

「30000!!」

勇者「く、ぅ…」ギリ

野次馬「お、おい…。お前無理すんなよ」

勇者(かくなる上は…)

ジャラッ!

勇者(ひーふー、みーよー…よしっ)

「31000!」

勇者「…じゅ、十万!!!!!」

野次馬「ええええ!!!?」

司会者「う、嘘っ!十万!!?」

勇者「……ふ」ダラダラ

司会者「じゅ、十万…。他にいないか?」

シーン…

「なんだあの娘…」

「頭おかしいぞ、奴隷ごときに十万なんて」

勇者「…」フン

司会者「い、いいか!?落札するよー」カンッ

エルフ「…」ビク

勇者(や、やりました。…本当は、装備を揃えるための、貯金だったけど)

司会者「じゃあ、嬢ちゃんこっちへ」

勇者「う、はい。…すみませーん。通してください」

勇者「はぁはぁ。こ、こんにちは」ペコ

司会者「あ、はぁ。どーも」

司会者「えーと。お嬢ちゃん、十万だよ?持ってるのかい?」

勇者「持ってますとも!どうぞっ」ズイ

司会者「うお…。ひーふーみ…た、確かにある」

勇者「さ、この子くださいな」

司会者「はいはい。では奥にどうぞ」

勇者「どーも」

ガチャ

エルフ「…」

司会者「おい、出て来い!買い手がついたぞ」

エルフ「…」フイ

司会者「出て来いっつってんだろ!」

勇者「ど、怒鳴らないでください!可愛そうでしょう」

ガシャーン

エルフ「…」

勇者「こ、こんにちは」

エルフ「…」

勇者(あ、ありゃ)

司会者「こいつ、多分喋れない口ですよ。まぁでも、色々役に立つでしょう」

勇者「あ、そうですか」

勇者(それにしても、綺麗だなぁ…。長い髪…。身長…意外と私より高いや)

勇者「あ…」

エルフ「…」ジャラ

勇者「この首輪、取ってください」

司会者「え!?」

勇者「もう、この子の買い手は私です…。だ、黙って言う事聞いてよ」

司会者「はぁ…。逃がさないよう注意してくださいよ?」カチャ

エルフ「…!」

勇者「どう、軽くなったかな?」

司会者「はぁ。賢明な判断じゃないですよ」

勇者「…私の自由ですっ」

エルフ「…」

勇者「じゃ、行きましょうか?」クイ

エルフ「…」

勇者「大丈夫、安心していいから。変なことはしないよ」ボソ

エルフ「…」

勇者「じゃ。お世話様でしたっ」

=路地=

勇者「はぁ。通行人の視線が痛いね」

エルフ「…」

勇者「後ろじゃなくて、並んで歩きなよ?」

エルフ「…」

勇者「…えと、無理にとは言わないよ。自分の好きにしていいからね」アセアセ

エルフ「…」

勇者(はぁ、そりゃそうだよね…。信用なんか出来ないか。買ったんだもん)

勇者「あ、私は勇者。こんなんだけど、魔王を倒す予定です」

エルフ「…」

勇者「だから…。あなたに、本当に危害を加えたりはしないよ」

勇者「…今、逃げてもいいんだからね?」ボソ

エルフ「…」

勇者「…」

エルフ「…」テクテク

勇者(あら)

勇者(律儀な。着いてくるんだね)

勇者「とりあえず、私の泊まってる宿屋に行こうか」

エルフ「…」

勇者「えーと、お部屋は新しく用意できないんだ。貧乏でごめんね…いい?」

エルフ「…」コク

勇者「あっ、やっと反応してくれた。良かったぁ」

エルフ「…」

勇者「さ、行こう」クイ

=宿屋=

勇者「ただいま帰還いたしました」

宿屋「おーう。今日も成果はなしかい?」

勇者「あ。えっと…」

エルフ「…」ヒョコ

宿屋「!!!エ、エルフゥ!?」

勇者「はいー。…えっと、そういうわけで、お夕食は二つおねがいします」

宿屋「は、はぁ」

バタン

勇者「ふー…」

エルフ「…」キョロキョロ

勇者「えっと、とりあえずお風呂入ってきなよ」

エルフ「…」

勇者「…遠慮しないで?さっぱりするよ。あがったら私の服を着たらいいし」

エルフ「…」

勇者「…嫌なの?」

勇者(あ)

勇者「…えっと」

勇者「め、命令だよ。お風呂に入って」

エルフ「…」ピク

勇者「!反応した!さ、入ってきて」

エルフ「…」コクン

勇者(よ、良かった。けど、なんか悲しい…)

勇者「お風呂の使い方分かるかな?案内するからね」

勇者「ここだよ。せっけんとか、好きなだけ使ってね」

エルフ「…」

勇者「えっと、綺麗にしてね。命令だよ」

エルフ「…」コク

バタン

勇者(はぁー…。つ、疲れるなぁ、命令って…。そんな、偉そうにしたくないのに)

ジャージャー

勇者「着替え…。私のシャツでいいかなぁ。背が高いから、入らないか…?」

=数分後=

エルフ「…」ホカホカ

勇者「あ、綺麗になったね…。シャツ、ちょっと小さいかな?」

エルフ「…」

勇者「で、でもこれしかないんだぁ。我慢してね?」

エルフ「…」

勇者(む、虚しい)

勇者「えーと、それにしても綺麗になったね。美人さんだよー、うっとりしちゃう」アハハ

勇者「…あの、さ」

エルフ「…」

勇者「座ってくつろいでいいよ?」

エルフ「…」

勇者「…はぁ、命令だよ、座って」

エルフ「…」ポフ

勇者「…自分のしたいことをしていいんだよ」

エルフ「…」フイ

「おーい、勇者ちゃん、夕飯だよー」

勇者「あっ、はいどうぞ」

ガチャ

勇者「うわぁ、良い匂い…。お肉じゃないですか」

宿屋「仲間が見つかった記念だよ。まぁ、エルフってのは意外だったけど…」

勇者「え?な、なかま?」

宿屋「え?」

エルフ「…」

勇者(仲間!!?全然考えてなかった…!そっかぁ、この子を仲間にしちゃえばいいんだぁ)

エルフ「…」

勇者(心を開いてくれるといいけど、ね)

宿屋「じゃあ、ごゆっくり」

バタン

勇者「お肉っ、おっにくっ。久しぶりだなー」

勇者「いただきま…あ」

エルフ「…」

勇者「食べて?…命令」

エルフ「…」フルフル

勇者「どうして…?命令だよ、これ」

エルフ「…」

勇者「…命令!」

エルフ「…」フルフル

エルフ「…食事は」

エルフ「三日前に、とりましたんで」

勇者「!」

勇者「しゃ、喋れるの」

エルフ「…」

勇者「三日前って…。食事って、毎日三回だよ!食べないと」

エルフ「…」フルフル

勇者「…っ」

勇者「わっ、私が新しいご主人なんだよ!言う事聞いてよ!」

エルフ「…!」ビク

勇者「あ、ごめん、なさい…」

エルフ「…」

勇者「お、お願い。食べて…」

勇者「め、命令だから。従うべき、でしょ?」

エルフ「…」

カチャ

エルフ「…」パク

勇者「…!あ、あはは。ありがとう」

勇者「酷い事言ってごめんなさい」

エルフ「…」パクパク

勇者「…いっぱい、食べてね」
……


勇者「はー、ごちそうさまっ」フゥ

エルフ「…」ペコ

エルフ「ありがとうございました、ご主人様」

勇者「ご、ご主人様!?」

勇者「ご主人様って…!わ、私は勇者だよ」

エルフ「…」フルフル

エルフ「そう呼ぶよう、教わりましたから…」

勇者「…そう」

勇者「ま、いいか…。あなたが呼びたいように呼べば良いよ」

エルフ「…」

勇者「あ、そういえばっ。あなたの名前をまだ聞いてなかったね。なんていうの?」

エルフ「…名前ですか」

勇者「うん!教えて欲しいな」

エルフ「…ただ、お前と呼んでいただければ。ご主人様」

勇者「い、いやいや。そんなことできないよ!教えてよ」

エルフ「…」

エルフ「…エルフ、です」

勇者「そっかぁ。エルフ!じゃあ、今度からそう呼ぶね。いいかな?」

エルフ「…ご主人様の仰せの通り」

勇者(良い感じ!仲良くなれそう)

勇者「えーっと、エルフ。私ね、旅をしてるんだ」

エルフ「…」

勇者「その仲間を探しに、競り市まで来てたんだぁ。でも結局、見つからなかった」

エルフ「…」

勇者「でも、あなたを買ったからお金ももうないの。だから宿はここまでにして、明日から旅を続けようと思うの」

勇者「だから、エルフ…。私の臨時の仲間っていうことで、一緒に旅をしてくれない?」

エルフ「…はい」

勇者「お、珍しく即答だね」

エルフ「私に拒否権は、ありませんから」

勇者「あ、あるよ!エルフ…」

エルフ「ご主人様、私は奴隷です。あなた様が優しい人だというのは分かりますが、どうか奴隷として接してください」

勇者「…!」

勇者「な、長く喋ったと思えば…そんなこと!?」

エルフ「…」

勇者「…っ。わ、私は好きなようにするから!指図、しないでよ」

エルフ「申し訳ございません」

勇者「お、怒ってないよ!謝らないでよ」

エルフ「…」

勇者「…はぁ。えっとね、私はただ単に、エルフを助けたかったから買ったの」

勇者「奴隷にするとか、考えてなかったよ。だから、普通に接して欲しい」

エルフ「…」

勇者「あ、あはは。でもいいや!自分の好きなタイミングで!でも、信じて!辛い事はさせないから」

エルフ「…はい、ご主人様」

勇者「じゃ、明日も早いから寝ようか!」

勇者「…って、ベッドひとつだった」

エルフ「…お構いなく。床で十分です」

勇者「!!だ、駄目だってば」

勇者(えーっと。えーっと)

勇者「わ、私が椅子の上で寝るから…。エルフは、ベッドで寝てよ」

エルフ「それはできません」

勇者「…っ。あ、じゃあさ!一緒に寝よう!そうしよ!」

勇者「ほら、おいでおいで」ボフボフ

エルフ「…」パチクリ

勇者「だっ、大丈夫だよー!女の子同士だから!何も恥ずかしくないって」

勇者「あ、それに、私そんな趣味ないから!安心して!」

エルフ「いえ、私はお」

勇者「だ、か、ら!命令!」グイ

ボフン

エルフ「…!」

勇者「はい、おやすみなさい!」

エルフ「…ですから、私は」

勇者「おやすみー!良いこだから、寝て!」

エルフ「…はぁ」

勇者「…」

エルフ(…)

エルフ(女の子…?)

勇者「…」スースー

……


勇者「…ん」ゴロ

ドン

勇者「ぅひゃっ!?」

エルフ「…」スゥスゥ

勇者「び、びっくりしたー…。そっか、エルフと一緒に寝たんだった」

エルフ「…」スゥ

勇者(それにしても、綺麗な顔だなぁ。まつげ長いなぁ)ジー

勇者(は、肌もこんなに白いし…うらやましい)ジィィ

勇者(…)

勇者「違います神様。私にはそんな趣味ございません」

勇者(…でも)チラ

エルフ「…」ゴロ

勇者(む、胸は私が勝ってる!!やっほう!)

勇者(…なんか、虚しい…。というか、この子…)

勇者(胸全然ないなぁ。板じゃない)

勇者(あっ、何考えてるんだ?ご、ごめんなさい…)

エルフ「…ん」

勇者(!)

エルフ「…!」ガバ

勇者「うわ!?」

エルフ「…も、申し訳ございません、ご主人様」

勇者「え?何が?」

エルフ「ご主人様より、長く眠ってしまい…」

勇者「ああ、全然!いいんだよー。よく眠れた?」

エルフ「…」カタカタ

勇者「あ、安心して!ぜんっぜん怒ってないから!ね!」ポン

エルフ「…は、はい」

勇者(…この子、どんな環境で生活してきたのかな)

エルフ「いま、寝床を整えます」

勇者「あ、いいっていいって。とりあえず朝ごはんにしようよ」

勇者「ここね、朝ごはんは出ないんだー。だからパンだけで我慢してね。はい!」

エルフ「…ありがとうございます。ご主人様」

勇者「えっとー、じゃ、私着替えてくるから!食べててね」タッ

エルフ「…」

エルフ「…」モグ

エルフ(美味しい)

エルフ(…勇者、様)

エルフ(……)

勇者「ねぇ、エルフー」

エルフ「はい」

勇者「旅に出る前に、あなたの服を買わないとね」

エルフ「そんな、私は」

勇者「いやいや、流石にこの格好で外は出れないよー。魔物もいるしね」

エルフ「…」

勇者「とりあえず、その古いズボンを変えて…。私のシャツも、やっぱり小さいもんね!上着も買おう」

勇者「あっ、ワンピースとかはどう?色々付属効果がついてる、旅向きのものもあるし」

エルフ「いえ」

勇者「も、もう…。謙遜しないでってば。怪我したら大変だよ」

エルフ「ですから、私は」

勇者「も、もう私が決めたから!決定だから!着いて来て!」グイグイ

エルフ「…」

ガチャ

宿屋「おーおはよう」

勇者「おはようございますー」

宿屋「今日はどうするの?」

勇者「お世話になりました。旅を続けたいと思います」ペコ

宿屋「そっか…。なんか、寂しくなるね」

勇者「色々良くしてくれて、ありがとうございましたっ」ニコ

勇者「じゃあ、行ってきます!」

宿屋「気をつけてなぁー」

勇者「はいっ!行こう、エルフ」

バタン

=装備屋=

勇者「さ、着いたよー。どれが合うかな…」

エルフ「いえ、どれでも…」

勇者「いやぁ、装備には向き不向きがあるんだよー。私は、重装備は苦手だし」アハハ

勇者「えっと、エルフって…なにかできる?魔法とか剣とか」

エルフ「…一応、両方たしなみはあります」

勇者「そっかー。じゃあ、動きやすくて魔法付加がついてるのがいいかな」

勇者(がんばれお財布…!)

勇者「すみませーん」

店主「へいへい。何かお探しで?」

勇者「はい。魔法付加がついてる装備を探してるんですけど」

店主「お、それなら良いのが入ってますよー。5属性対応のものです」

勇者「え!本当ですかー!」

店主「はい。いまならお安くしときますよぉ」

勇者「じゃあ、それを!サイズ測ってもらえます?」

店主「へいへい」

勇者「エルフ、型を選ぶからサイズ測って」

エルフ「はい」

店主「じゃ、失礼しますよぉ」クルクル

店主「おお、中々ご立派な体ですねえ」

勇者「ちょ…。お、女の子になんてこと言うんですか」

店主「へ?」

エルフ「…」

勇者「いや、へ?って…」

店主「えーっと、中々鍛えられてる体ですよね?」

勇者「え、そうなんですか?」

店主「ええ!筋肉もありますし」クルクル

勇者「そ、そうなんだ…気づかなかった」

店主「それにお顔も綺麗ですし…。彼氏かなにかですか?」

勇者「んっ!!?」

店主「ん?」

エルフ「…」

勇者「えーっと、彼氏って…。あはは。違いますし、第一この子は」

店主「え?」

勇者「だから、女の子でしょう?私そんな趣味は」

店主「違いますよ」

勇者「ちっ、違わなくないです!私はノーマルなんです!」

店主「いえ、そうじゃなくて」

店主「だからこの人、男性じゃないですか」

勇者「…は?」

エルフ「…」

勇者「え、え、は?」

店主「えっ?」

勇者「な、何言ってるんですか。この子は女の子ですよ…失礼な。ね?」

エルフ「男です」

勇者「」

店主「へ?女だと思ってたんですか…!?ま、まあ確かに中性的なお顔ですが」

勇者「」

勇者「…ちょっと待って」

エルフ「はぁ」

勇者「だ、だって。髪だって長いし、その」

エルフ「いえ、髪が長いのは元からで」

勇者「…お、おとこなの?」

エルフ「はい」

勇者「な、なんで!!?何で言ってくれなかったの!!?」

エルフ「…聞かれなかったので。ご存知だと」

勇者「……」アゼン

店主「…えっと、じゃあ試着してもらっても?」

エルフ「はい」

店主「では、そこのカーテンの中でどうぞ」

シャッ

勇者「…」ボウゼン

店主「い、いやいや。普通気づきますよ?」

勇者「……」ボー

シャッ

エルフ「着替えました」

店主「おー、ピッタリですね!どうです?」

勇者「…じゃ、それください…」

店主「まいど!」

勇者「…」

店主「大丈夫ですかね?」

エルフ「…さぁ」

勇者「…」トコトコ

エルフ「…」トコトコ

勇者「…」チラ

エルフ「…」

勇者(言われてみれば、やっぱり男だ…。胸板も、厚いし)

勇者(…お、ちょっと待てよ…。き、昨日の夜)

勇者「わあああああああああああああ!!!」

エルフ「!」ビク

勇者「お、おとこだって知ってたら、一緒に寝たりしなかったから!」

勇者「ご、ごめんなさいごめんなさい!セ、セクハラしてごめんなさい!!」

エルフ「え」

エルフ「…こちらの説明不足ですので。ご主人様は悪くありません」

勇者「ううう、ご、ごめんなさいぃ」

エルフ「こちらこそ、不快な思いをさせてしまって」

勇者「……」ドヨーン

エルフ(…純情な)

=町の外=

勇者(…気を取り直そう)

勇者(男だから、何?エルフはエルフだ!気にしないぞぉおお)

勇者「エ、エルフ!」

エルフ「はい」

勇者「まぁ色々、紆余曲折?はあったけど、頑張ろうね!ね!」

エルフ「はい」

勇者「あ、あのね!いまから東に向かうの!そこには、妖精の伝説がある国があって」

勇者「そこに行けば、魔王の手がかりがあると思うの。それに…」

勇者「エルフの故郷のこととか、多分分かるし。ね?」

エルフ「…!」

エルフ「私の、故郷ですか」

勇者「うん!旅の途中に寄って、エルフを戻して、で私はこのまま討伐に向かう。まぁまだずっと先かもしれないけど」

勇者「それまで、ちゃあんと私がエルフを守るからね!」

エルフ「…は、い」

勇者「よっし、それじゃ行こう!」

勇者「まずはこの森を突破しないといけないから」

エルフ「はい」

勇者「迷わないようにしないとなー…。あー、こういうの苦手だ」

ガサッ

勇者「…」ピク

まものの むれが あらわれた!

勇者「おお、早速か…。えっと、エルフ!下がってt」

エルフの こうげき!  まものAを やっつけた!

勇者「えええええ」

エルフ「…何か仰いましたか、ご主人様」

勇者「い、いや…。私がやるからエルフは下がっ」

魔物B「グアアア!!」

勇者「!」

エルフ「っ!」

エルフの こうげき! まものBをやっつけた!

勇者「あ、ありがと。いや、でも待って」

まもののむれを やっつけた!

勇者「…」

エルフ「お怪我は」

勇者「あるわけないよ…」

勇者「ちょっと、私びっくりしたよ。お古の短剣の一撃で魔物をやっつけちゃうなんて」

エルフ「…」

勇者「で、でも私が戦うってば!大丈夫だから!エルフが怪我でもしたら、大変じゃない?」

エルフ「何が、大変なんです?」

勇者「え?」

エルフ「ご主人様は、勇者。私は奴隷です」

勇者「…だからって、あなたが傷ついていいわけないよ。身分とか関係ない」

勇者「それに、今エルフは奴隷じゃない!私の仲間なんだから」

エルフ「…」

勇者「…うぅ、頑ななんだから」

勇者「とにかく、私がやるから!エルフは下がっててよ?…守るって言ったし。格好つかないよ」

エルフ「…分かりました、ご主人様」

勇者「…それにしても、エルフ」

エルフ「はい?」

勇者「強いんだねぇ。流石だよ。…一体、昔に何をしてたの?」

エルフ「…」

勇者「!あ、話したくなかったらいいよ。ごめんね」

エルフ「…用心棒のようなことを。前のご主人様の」

勇者「…そ、そっか」

勇者「…でも、さ」

勇者「…そんなに強いなら、さ。反抗とか…できたんじゃない?」

エルフ「…」

勇者「あ、ごめんなさい…」

エルフ「…ご恩が、ありますので」

勇者「え?」

エルフ「食事をいただき、寝床もある。生活は保障されてるので」

勇者「保障って…!食事も3日に一度だったって…。それに、床は寝床じゃないよ」

エルフ「私には、それで十分です」

勇者「じゅ、十分なわけないよ…」

エルフ「…いえ」

勇者「…許せないよ。どうかしてる」

エルフ「…」

勇者「…」

ガサッ

まものが あらわれた!

勇者「く、空気読んでほしいなぁ」

エルフ「…」サッ

勇者「こらこら、構えるんじゃない!私がやるってば」

エルフ「…はい」

まものの こうげき!

勇者「遅い!」ヒョイ

ゆうしゃの こうげき!

まものを やっつけた!

勇者「よしっ」

勇者「ほらー。見たでしょ?女だけど、ちゃんと戦えるんだよ」

エルフ「はい。ご立派です」

勇者「!え、そ、そう?あはは。そんなー」テレテレ

勇者「まぁ、エルフほどではないよ…」

エルフ「いえ」

勇者「謙遜しなくていいってばー…。私多分、短剣じゃ勝てないや」

ポツ

勇者「…ん?」

ザァッ

勇者「げ、雨…」

勇者「ああもう、幸先悪いなぁ。エルフ、雨宿りしよう!」

エルフ「はい」

=洞窟内=

勇者「うぅ、寒い…」ガタガタ

勇者「困った事に、周りが暗くなってきたし…。これは上がるまでは移動できないかな」

エルフ「そのようで」

勇者「火炎魔法!」ボッ

勇者「よし、上手く火がついた…。エルフ、座って暖まりなよ」

エルフ「はい。ありがとうございます」

勇者(よしよし。だいぶ言う事聞くようになってきた)

パチパチ…

勇者「…暇だね」

エルフ「そうですか?」

勇者「何か、お話でもしようよ」

エルフ「すみません。気の利いた話はなくて」

勇者「あっ、じゃあー私が話すよ!聞いてくれる?」

エルフ「…」コク

勇者「やった。えっと、私、魔王討伐の旅に出てもう3年になるんだけど」

勇者「仲間がね、全然できないんだー」アハハ

エルフ「はい」

勇者「まぁ、過去に一人だけいたんだけど、理由があって辞めちゃった。だからもうかなり長く一人だったんだ」

勇者「…多分、私が頼りないからだろうなぁ」

エルフ「いえ、そんなことは」

勇者「だってー。勇者が女なんて、前代未聞だし…。皆なかなか信じてくれないんだ」

勇者「だから、エルフが仲間になってくれてホッとしてる。やっぱり、人がいるっていいね」ニコニコ

エルフ「…そうですか」

勇者「まぁ、これは前置きでー。私が南にいたときの話ね!そこでも、やっぱり私は一人で…」

エルフ「はい」

勇者「洞窟の魔物を退治しなきゃいけなかったんだけど、村の人がねぇ…」

……


勇者「って、いうお話でした。お粗末様ー」

エルフ「面白かったです」

勇者「あはは、村長のくだりは自分でも傑作だと思うよ」ニコニコ

エルフ「はい。彼がその後どうなったか気になります」クス

勇者(!わ、笑った)

勇者「えへへ…エルフ、やっと心を開き始めたね」

エルフ「…!笑っていましたか」

勇者「うん。ナイス微笑」ニコ

エルフ「…!すみません…」

勇者「何で!?謝らなくていいんだよー。ああ、嬉しいなぁ」

エルフ「…」

勇者「もっと笑わしてやります。覚悟!」

エルフ「は、はぁ」
……

勇者「…」スースー

エルフ「…ご主人様?」

勇者「…」スースー

エルフ(喋り疲れたのか…)

エルフ(それにしても、明るい人だ)

勇者「…」ゴロ

エルフ(…楽しかった、久しぶりに)

エルフ(…)

エルフ「…」プチプチ

パサッ

勇者「ん…」

エルフ(おやすみなさい、勇者様)
……


勇者「ん…」

勇者(ん、もう朝…?雨、やんでる)

勇者「…?上着?」ヒョイ

エルフ「おはようございます」

勇者「お、おはよう。えっと、この上着」

エルフ「私のです」

勇者「か、掛けてくれたの?寒くなかった?」

エルフ「いえ、全然」

勇者「ありがとう…」

エルフ「いえ」

勇者「えーっと。じゃあ、今日はがんばって目的地まで行こうか?」

エルフ「はい」

勇者「よっしゃ、レッツゴー!」ブンブン

ズルッ

勇者「おぅ!?」

エルフ「…!」

ガシッ

勇者「うわ。あはは、格好悪いなぁ…あ、ありがとう」

エルフ「…道がぬかるんでるので、お気をつけて」

勇者「は、はい…。ごめんなさい」

エルフ「いえ」

勇者(く、くぅー…。何か調子でないよ…。格好よくしてたいのに)

=関所=

番「おーっと、止まって止まって。通行手形はお持ちかな?」

勇者「はいっ。ありますとも」

番「はいはい。…時にお嬢さん。その後ろのは…?」

勇者「あ、私の仲間です!」ニコニコ

番「は?仲間…?いやしかし、エルフですよ」

エルフ「…」

勇者「仲間って言ったら仲間です。変なこと言ったら承知しませんよ」ニコ

番「ヒッ!? い、いやぁ。そうじゃなくって…。この近くの城下町は、えーっと」

勇者「何かあるんですか?」

番「は、はい…。いえあの、…人外収拾が趣味の金持ちがいまして」

勇者「は、はぁ?何ですかそれ」

エルフ「…」

番「ヒッ!で、ですから…次のターゲットがエルフだという噂がありまして」

勇者「な、何をぉおお!?」ダン

番「ひぃいい!!すっ、すみませんすみません!」

勇者「ゆっ、許せないそんなこと…!ね、エルフ!」

エルフ「さぁ」

勇者「さぁじゃないでしょ!?大丈夫、エルフをそんな変態にやったりしないから!」

エルフ「はぁ」

=町の前=

勇者「いい、町についたら離れたら駄目だよ!」

エルフ「…はい」

勇者「あなた、何となく言う事を聞かないところがあるけど、これは絶対聞いてね!」

エルフ「はい」

勇者「じゃあ、私の言った事もう一回言って!エビバディセイ!」

エルフ「…わ、私は町の中ではご主人様から、離れません」ボソ

勇者「よーしいい子だね。信じるよその言葉」

=町=

「いらっしゃい!ここは妖精の伝説が伝わるまt…エ、エルフだぁぁああ!?」

勇者「早速かぁ…」

エルフ「はい」

「ちょ、ちょっとそのエルフ売ってくれないか!?いくらだ!?」

勇者「…」ピキ

勇者「黙れぇえええ!」

「ヒィ!!?」

勇者「この子は私の仲間なの!!売り物じゃないの!馬鹿ぁ!」

「な、なんだって…。お前、馬鹿じゃないのかエルフを仲間になんて」

勇者「あんまりしつこいと、お見舞いするよ?」チャキ

「ヒッ!!?き、きちがいだぁあああ」スタコラ

勇者「ふんっ。弱虫」

エルフ「刃物を見せ付けられたら、皆そういう反応をとるでしょう」

勇者「お、饒舌だねぇ。ツッコミ役も板についてきたね」

エルフ「…はぁ…」

勇者「ごめんね。馬鹿でしょ、人間って」

エルフ「気にしません」

勇者「ごめん…」

エルフ「ご主人様が謝る事では」

勇者「…でもさぁ、エルフが欲しいのは金持ちさんだよね?何で違う人がほしがるのかな」

「それはな、嬢ちゃん」

勇者「!!?」

盗賊「この町の奴らは、金持ちさんの機嫌をとりたいからさぁ」ニヤニヤ

戦士「そそ。暮らしやすくするには、媚びるのが一番なのさぁ」ニヤニヤ

勇者「そうなんですかー。ご親切にどうも」

勇者「さ、エルフ行こう!とりあえず宿とらなきゃ」

エルフ「はい」

盗賊「いや待て待て待て待て待てぃ」

戦士「嬢ちゃんスルースキル高いわ」

勇者「へ?」

盗賊「へ?じゃないだろうが!!」

勇者「…いや、絡まれてる…。やっぱ都会ってこうなの?」

エルフ「さぁ」

戦士「違ぇええええ!!会った事あるだろ!かなり最近よぉ!」

勇者「…?」

ポクポクポク

勇者「…!」チーン

勇者「カッ、カツアゲ男!!!」

戦士「カ、カツアゲ?」

勇者「何でここにいるんですか!?」

盗賊「ふふん。上手い商売話が舞い込んできたからなぁ」

勇者「い、行こうエルフ!お金取られちゃうよ」グイ

戦士「おうおうおう。もう変なことはしねぇって。話でもしよーや」

盗賊「ここで会ったって、やっぱり俺ら、何かの縁で繋がってるのさ」

勇者「!は、離してくださいっ」

エルフ「…!」

勇者「お!?エ、エルフ待って待って」

ガシッ

戦士・盗賊「ぬぉ!?」

エルフ「手を、離してください」グググ

戦士「い、いてぇえええええええ!!?」

盗賊「お、おい!?折れる折れる!」

勇者「や、やめなさい!」

エルフ「…」グググ

勇者「言う事きいてってば!」

エルフ「…」パッ

戦士「ぬがぁ…!と、とんだ怪力だな」

盗賊「ふぃぃ…。骨の形が変わるかと思った」

勇者「こっ、この人たちは悪い人だけど、いきなり暴力は駄目だよ!」

エルフ「しかし、ご主人様が」

勇者「あー!このくらい自分で対処できますー!」

戦士「…なんなんだこいつら」

勇者「もう…。すみません、もう行きます」

盗賊「お、待てってよ!嬢ちゃん!」

勇者「まだ何か?」

戦士「そう警戒すんなよ。あの時は酒が入ってたから、羽目外したけどよぉ。実際お前のこと心配してんだぜぇ」

勇者「へっ…?そ、そうなんですか」

盗賊「そうそう。ちょっとこの町はヤバイんだ。情報があるから、そこの店で話そうぜ」

勇者「…えと、どうする?」

エルフ「いえ、私はどちらでも」

勇者「まぁ、いいですけど…」

戦士「ひゃっほう!じゃあ行こうぜ」ギュ

盗賊「おいいきなり馴れ馴れしくすんなよ!ずりいぞ!」ギュ

勇者「ちょ、ちょ。かっ、肩…」

エルフ「…」ギリ

勇者「やめようねー。穏やかな顔に戻ろうねー。大丈夫だからねー」

エルフ「…」

勇者(あー、何なんだ…?)

=喫茶店=

戦士「この間の侘びだ。おごってやるよ」

勇者「え、本当ですか!?」パァア

盗賊「おー。好きな物頼めや、そっちのエルフも」

エルフ「…」チラ

勇者「お言葉に甘えようよ。あと、座っていいから…」

エルフ「…」ストン

盗賊「あんたら、どんな関係なんだよ」

勇者「エルフ、何がいい?」

エルフ「水で」

勇者「怒るよ?」

エルフ「…紅茶で…」

盗賊「へぇ、文字読めるのか?」

エルフ「はい」

戦士「ふーん…。ただのエルフじゃなさそうだな」

勇者「そ、そうだよっ。あんまりまだ知らないけど、エルフはすごいんだよ!」

給仕「いらっしゃいませ、ご注文は?」

勇者「このケーキと、紅茶を」

盗賊「俺らはいいや」

勇者「?そうですかー」

戦士「まぁ、さっさと本題に入ろうか」

勇者「あ、はい…。この町、そんなに危険なんですか」

盗賊「ああ…。まぁ、普通だったら別に何も無いさ。問題は、こいつ」

エルフ「…」

勇者「エルフ収拾です、か。趣味の悪い」

盗賊「そ。ここは、妖精がどーたらとか言う伝説はあるがね」

戦士「ここの金持ちは相当執念深くてなぁ。まぁ色々事件もあるんだ」

勇者「じ、事件…!?」

盗賊「ああ。ある獣人の飼い主に、商談を断られて…」

戦士「…チョンパ。首の無い遺体がみつかって、獣人はどこかへ」

勇者「ひ…」

盗賊「まぁ、もみ消されたんだがな。そういう面もあるから、注意するんだな」

エルフ「…」

勇者「こ、怖いなぁ…」

給仕「お持ちしましたー」コト

勇者「うひゃ!?」ビク

盗賊「おいおいおい…」

勇者「あ、あははー。でも私大丈夫ですよ、強いしー。ね?」モグ

エルフ「はい」ズズ

戦士「まぁ、そこを見込んで、だ」

勇者「…え?」

盗賊「夜とか、色々と不安だろ?俺らと一緒の宿に入ってほしいなーって」

戦士「お互いこう、用心棒てきな」

勇者「はあ?」

戦士「いやー実はね、まぁ俺ら、今やばい物運んでるのさ」

盗賊「取引成立まで、勇者ちゃんにブツを監視してほしーなって」

勇者「い、いや無理です。ここで聞き込みとかしたいし」

盗賊「お願いー!3日!3日でいいんだよぉ!給料出すぜ?」

勇者「きゅう、りょう…?」ピク

エルフ「…」

盗賊「ああ!一日で…耳貸しな。ゴニョゴニョ」

勇者「!!!な、なぁあ!?」

エルフ「ご主人様」

勇者「エルフ、エルフゥ…。私のお財布事情を分かってくれるよね?」

エルフ「はい。私のせいで、散財させてしまい…」

勇者「そ、そこはいいの!全然!…でも、これからの旅費を稼ぎたくて…いい、かな」モジモジ

エルフ「私が口出しする事ではありません。お好きなように」

戦士「どうかな?」

勇者「う、やり、ます…。やらせてください」

盗賊「やっほぉおおお!!!おい、じゃあ早速部屋を取りに行こうぜ!」バンバン

勇者「はぁ…。まぁ3日だから、いいか」

戦士「さぁさぁ、ボサっとしてないで、立って!」

勇者「は、はぁい。行こう、エルフ」

エルフ「はい」スク
……

=宿屋=

戦士「おーい、女将!部屋一つ追加だ、追加!」

女将「へいへい。…あら、可愛いお嬢さん」

勇者「お世話になります」ペコ

エルフ「…」ペコ

勇者「ってちょっと待ってくださいお二方」

盗賊「あん?」

勇者「いや、部屋一つじゃないですか」

戦士「俺らの財布も余裕がねーんだよ!我慢してくれよ」

勇者「そ、そんな…。ねぇエルフ何か言ってよ」

エルフ「私は構いませんが?」

勇者「!?」

エルフ「ご主人様が不快でなければ」

勇者「ふ、不快なんてそんな…!全然!!」

盗賊「じゃー決まりな。俺らの横の部屋だぞ、ほい、鍵」ヒョイ

勇者「うううう…」パシ

ガチャ

勇者「あ、なんだ意外と広いじゃーん」

エルフ「はい」

勇者「うわーベッドふかふかだよぉ。あはは」ボヨンボヨン

勇者「いやぁ、素敵なベッドだね!」


勇者「一個しかないことを除けばね!!!」ビキビキ

エルフ「…」ハァ

勇者「あの二人ぃいいいい…!!」

勇者「エ、エルフ。困ったねー」

エルフ「私は床で」

勇者「はい始まったー始まったー!もう、そういうの止めよう!」

エルフ「はぁ」

勇者「うーむ、困ったなぁ。健全な青少年を育てる気はないのかな、あのオッサンたち」

エルフ「…」

勇者「あー…。じゃ、じゃあ私さぁ。椅子二つ並べてそこで寝る」

エルフ「駄目です」

勇者「…」

エルフ「駄目です」

勇者「に、二回言わなくても」

エルフ「私はご主人様を差し置いて寝ることなど、とても」

勇者「あー!!じゃーもう、じゃんけん!じゃんけんにしよう!」

エルフ「…!」

勇者「文句なしだよ!さーいしょはグー!じゃーんけーん」

ポン

エルフ「…」

勇者「わざと?」

エルフ「いいえ」

勇者「いや、ちょっと遅かったでs」

エルフ「文句なしと言ったのはご主人様です」

勇者「お、お主…!」

エルフ「どうぞ」

勇者「あぁ、もう。じゃあ今日は私で。でも、床は駄目だよ!毛布なり借りてくるから」

エルフ「はい。お気遣いありがとうございます」

勇者「むー…。府に落ちない」

エルフ「文句は」

勇者「なしですよねー。はい、分かってますよぉ」

エルフ「…」クス

勇者「!」ドキ

勇者(いやいやいやいや、何だドキって。アホかアホか)

勇者「…えーと、とりあえず今後どうしたら良いか聞きに行く?」ゴホン

=隣部屋=

盗賊「おい、どうするコイツ…」

戦士「いやぁ、見せるのはまずいだろ…。あの子がしたこと分かってるか?」

盗賊「ああ、大枚はたいてあの男エルフ買ったって…」

戦士「しかも、奴隷目的じゃねーとよ。聖母かよ」

盗賊「見せたら、ややこしいことになるかな」

戦士「ああ、確実に…。ここは、隠すのが賢明d」

コンコン

戦士「うっひ!?」

「あのー勇者です。今後どうしたらいいか、相談に来ました」

盗賊「ままま待て!しばし待て!」

戦士「ク、クローゼットに入れろそれ!」

ガタガタ

勇者(…何やってんだろ?)

エルフ「…」クンクン

エルフ「…!」ピク

勇者「?どうかした?」

エルフ「…いえ、なんでもありませんで」

ガチャ

戦士「お、おーう入れや」

勇者「お邪魔しますー…うわ、汚い!」

盗賊「う、うへへ。まぁ男なんてこんなもんだ」

勇者「ティッシュ使いすぎじゃないですか?捨てたら?」

エルフ「…」ハァ

勇者「全くもー」

エルフ「あ、触らないで」

勇者「え。何で?片付けないと、座れないよ?」

エルフ「私が、やりますんで」ヒョイヒョイ

戦士「す、すまんね」

盗賊(チェッ…。拾うところ見てオカズにしようと思ったのに)

勇者「あ、そういえば!べ、ベッドが一つだったんですけど」

盗賊「へへへ、まぁいいじゃない?」

戦士「えーっと、まぁあんたらにしてほしいことは、ここの監視かな」

勇者「は、はぁ」

盗賊「俺らが留守のときに、怪しい奴が来るかもしれないからな。気をつけてくれ」

勇者「一体何をしてるんですか…」

盗賊「まー…そこは知らなくてもいいかなぁ」ヘラ

エルフ「…」チラ

エルフ(クローゼットの、中…)

勇者「ま、まぁあんまり危ない事しないでくださいね…」

盗賊「そんだけで、あんなに貰えるしぃ。いいだろうが?」

勇者「ん、まぁ…」

盗賊「あんたら、欲しい物とか外でやってほしいことは言えよ?調べてきてやる」

勇者「あっ、じゃあエルフの国のことを…。この町の伝説と何か関係あるかもしれないので」

戦士「了解ー。…じゃ、そろそろ行くな」

盗賊「お、おお。しっかり頼むぜー」

勇者「ラジャーです。お気をつけて」

エルフ「…」ペコ

盗賊「あ、あとな」

勇者「はい?」

盗賊「…部屋には、入るなよ。何か怪しい事があったとき以外は絶対に」

勇者「え…まぁ、はい」

エルフ「…」

戦士「じゃあ、頼んだぜぃ」
……


勇者「あの人たち、何してるのかなぁ一体」

エルフ「さぁ」

勇者「わかんないなー…。まぁいいけど。絶対悪い事だよね」

エルフ「でしょうね」

勇者「でも…あ、あのお金はおいしいっ…悔しい」グギギ

エルフ「はい」

勇者「…あのさぁ、エルフ…」

エルフ「はい?」

勇者「私さ、よくよく冷静に考えてみたんだけどさ…」

勇者「…」チラ

男「…!」フイ

勇者「…」チラ

女「……」フイ

勇者(危ないな、こりゃ)

勇者「ねぇエルフ、部屋に戻らない?廊下で監視しなくてもいいかも」

エルフ「そうですか?」

勇者「うん…。少なくともエルフはあんまり外に出ない方がいいかも」

勇者「行こう!一緒にトランプしよう」グイ

エルフ「ええ」

タタタ…

男・女「…」サッ

勇者「…べーだ」

勇者(あげるもんか。私の数少ない仲間なんだから)

エルフ「…」

勇者「閉めるよー」ガチャ

バタン

勇者「…」シャッ

勇者「エルフ、そっちのカーテン閉めて」

エルフ「はい」シャッ

勇者「…」カチャカチャ

勇者「施錠よし。おっけーおっけー」

エルフ「警戒…してるんですか?」

勇者「!あ、あはは気づいた?」

エルフ「はい」

勇者「うん…。此処の人、やっぱりあなたを見る目がおかしいもん」

エルフ「ですね」

勇者「だから、気をつけてね…。お願い」

エルフ「…は、はい」

勇者「おっしゃ良い子良い子!さ、遊ぼうー。楽な仕事だねぇ」アハハ

エルフ「…」

エルフ(そうでも、ないですよ)

勇者「…」

エルフ「…」

勇者「えい」ピッ

勇者「…」ピラ

エルフ「…ふ」

勇者「ああああ!!く、くはぁあああ!!」ジタバタ

勇者「私ババ抜き強いのになぁ!おっかしいなぁ?」シャッシャッ

エルフ「いえ、十分お強いです」

勇者「はい、どーれだ」サッ

エルフ「…」ジィ

勇者「…」

エルフ「…」サッ

勇者「あ」

エルフ「…あがり、です」バラバラ

勇者「あ、あああーー!!」

勇者「く、ぐぅうう…。中々やるじゃないか…」ギリリ

エルフ「そうですか?」

勇者「あーもう、今度は神経衰弱しよ!!」シャッシャッ

ガタンッ

勇者「ぅひゃ!?」

エルフ「…!」サッ

勇者「な、何今の音」

エルフ「…なんでしょうか」

勇者「…隣の部屋から聞こえなかった?」

エルフ「…ええ」

勇者「うあ、やばい!!」ダッ

エルフ「あ、ちょっと…!」

ガチャ

勇者「だ、誰かいるのっ!?」バッ

シーン

エルフ「いきなり飛び出すのは、いささか無用心かと…」

勇者「あ、焦っちゃった…。ごめん」

エルフ「いえ、無事でなによりです」

勇者「…でも、誰もいなかったね。ただの軋みかなぁ。それにしては音が大きかったような」

エルフ「…」チラ

勇者「…エルフ」

エルフ「はい?」

勇者「さっきからクローゼットをやけに気にしてるね」

エルフ「…!」

エルフ「…お気づきでしたか」

勇者「まぁね…。あはは、意外と鋭いでしょ」

勇者「…何か入ってるの?クローゼットに」

エルフ「…はい」

勇者「生き物?」

エルフ「…恐らく」

勇者「…出たがってる、よね」

エルフ「…」

勇者「…」タタ

エルフ「お待ちください」

勇者「どいてよ…」

エルフ「いいえ。お二方の言った事をお忘れですか。部屋の物には、触れるなと」

勇者「だからって…。生き物をこんなところに閉じ込めるなんて異常だよ。助けなきゃ」

エルフ「…」フルフル

エルフ「厄介事の匂いがします」

勇者「…関係ないよ、どいて」

エルフ「ご主人様に危険なことをしてほしくないです」

勇者「し、心配してくれてるの?」

エルフ「…」コク

勇者「それは嬉しいけど…やっぱり放っとけない」

エルフ「いけません。無視をしてください」

勇者「…っ」

エルフ「お願いですから…」

勇者「エ、エルフ…」

ガタン!

「…んーっ…」

勇者「!こ、声が」

エルフ「…!」

勇者「死んじゃうかもしれない、開けようよ!」

エルフ「……」

勇者「お願い!」

エルフ「ご主人様…」

エルフ「…」スッ

勇者「あ、ありがと!おーい!誰かいるの?今あけるから」

ガチャ

盗賊「おーっす」

勇者「…!」

戦士「お、おお!?何してんのあんたら!?」

勇者「あ、これは、その」

盗賊「部屋の物には触るなって言っただろうが!」ズイ

エルフ「…」サッ

盗賊「おい!約束は守れよ!開けたのか!?」

勇者「ま、まだだけど…」

戦士「おいおい嬢ちゃんよぉ…」

勇者「お、お言葉ですがっ。クローゼットの中に、生き物入ってますよね!?」

戦士「は、はぁ?なななんのことやら」

勇者「こ、こんな空気の薄い中に閉じ込めるなんてどうかしてます!」

盗賊「だから違うっての!えーと、あれは…お、おもちゃだよ!動くおもちゃ」

勇者「嘘つかないでください!」ガッ

戦士「うおおおおおい!!あけるなぁああ!」

勇者「嫌!!」

盗賊「やめろぉおおお!」

ガシッ

エルフ「…」

勇者「…エ、エルフ。手、離して」

エルフ「いいえ。もう放っておきましょう」

勇者「何でそんなこと言うの…」

エルフ「お二方…。もうよろしいでしょう?私たちは、仕事を下ろさせていただきます」

戦士「…感づかれちゃ、な」

盗賊「チェッ…」

勇者「待って、勝手に…!」

エルフ「あなた方のやっていることには、口出ししません。ですから、私たちの事も放っておいてください」

勇者「ちょ…!」

盗賊「おー。勝手にしろ」

エルフ「新しい宿を探しましょう」グイ

勇者「や…!」

エルフ「失礼します」

バタン

勇者「エ、エルフ!!」

エルフ「…」グイグイ

勇者「…離してよ!」バッ

エルフ「…」

勇者「エルフ、何で…」

エルフ「あなたは、優しい人です」

勇者「な、」

エルフ「ですから、厄介な事と分かっていても首を突っ込んでしまう」

勇者「当たり前じゃない、だって私、勇者だもん」

エルフ「世の中には、関わらないほうがいいこともあります」

勇者「た、助けを必要としてる人を見捨てろっていうの?」

エルフ「ええ。今回は」

勇者「…ふ、ふざけないでよ」

エルフ「ふざけてるのは、ご主人様のほうです。もっとご自分を大切にしてください」

勇者「…!」

エルフ「…本当は」

エルフ「私の事にも、首をつっこむべきでなかった」

勇者「…エルフ!!」

エルフ「そうでしょう。私を連れてることで、白い目で見られ、不当な扱いを受け。おまけに危険にさらされて」

エルフ「…私は、ご主人様に肩身の狭い思いをさせたくありません」

勇者「…」

勇者「…そう」

エルフ「…はい」

勇者「…エルフの、そういうとこ、大嫌い」

エルフ「…!」

勇者「わ、私がいくら言っても、心を開いてくれないじゃない」

勇者「まるで自分がお荷物みたいに言う。平気で…」

エルフ「ご主人様…」

勇者「私は、エルフは仲間だと、友達だと思ってるのに」

勇者「エルフはいつまで経っても、自分を奴隷だって思ってる。顔で笑っても、ずうっと遠慮する」

勇者「……私のことだって。どうせ…」

勇者「……」

エルフ「ご、ご主人様」

勇者「もういい…。疲れちゃった。ごめんね、気を使わせて」

エルフ「…!」

勇者「…ごめんね」

エルフ「…」

勇者「…エルフ…」

勇者「今まで面倒くさいこと頼んで、ごめん。もう、自由にして、いいよ…」

エルフ「…ご、ご主人…様」

勇者「もう聞きたくない。ご主人様とか、もう…」

勇者「…」タッ

エルフ「…あっ…!」

バタン

エルフ「…」

エルフ(…なに、を)

エルフ(何をやってるんだ、私は)

…そういうとこ、大嫌い

エルフ(…!)ズキッ

エルフ(私、は…馬鹿だ)

エルフ「……馬鹿だ」

=街道=

勇者(…)

勇者(馬鹿。エルフの馬鹿)グスッ

勇者(でも私のほうがもっと馬鹿)

勇者「…はぁ。また、一人ぼっちか」

勇者「…自分が悪いんだもん。しょうがないよね」

勇者(…)

勇者(これから、どうしよう)

勇者(あーあ…。宿、まだ開いてるかな)

勇者(…はぁ)

トボトボ

勇者(いっつも、こうだ)

勇者(自分のしてほしいことを、相手に押し付けてばっか)

「…」

勇者(誰もついてくるはずないよね、うん…)

ザッ

勇者(ああ、もう…)

ザッザッ

勇者(…)

ザッザッザッ

「…っ!」

ガバッ

勇者「!!!?」

???「動くな」

勇者「む、うぐ…!!?」

???「勇者の割には注意力散漫なんだな」

勇者「むー!むー!」

???「黙ってろ」

ドゴッ!

勇者「!」クラッ

ドサ…

???「…あっけないもんだな」

「おい、捕獲できたか?」

???「ああ。早速ご主人様の元へ」

「分かった。馬車の準備はできてる、急いで連れて行け」

???「あいよー」ズルズル

勇者(体に、力が)

勇者(…入らない、よ)

勇者(…エルフ…)

バタン

……


女将「まぁ、一泊キャンセルかい?」

エルフ「はい。お騒がせしてすみません」

女将「まぁいいけど…あんた、連れのお嬢さんは?」

エルフ「…いえ、彼女は」

女将「なぁに?喧嘩でもしたの?」

エルフ「…」

女将「まぁ、いいけど…。でも心配ね」

エルフ「はい?」

女将「いえね、こんな暗いときに女の子一人なんて、ね?」

エルフ「…!」

エルフ「す、すみません!私はこれで」タッ

女将「あ、ああ。あんたも気をつけてねー」
……


エルフ(しまった…!何で一人にしたんだ…!!)

エルフ(くそっ、何処に行ったんだ…!)

ドンッ

戦士「おうふ!!」

エルフ「!すみません」

戦士「ああ、エルフのあんちゃん。そんなに急いでどうした?」

エルフ「ご、ご主人様が…」

盗賊「おーい、何してんだよ戦士ぃ。早く取引行くぞ…おろ?エルフじゃねえか」

エルフ「あの、勇者様を見ませんでしたか」

盗賊「いんやー。どうしたんだよ」

エルフ「…くそっ、何処に…」

戦士「おいおい怖いよ!何、嬢ちゃんいないの?」

エルフ「はい…。一人で出て行ってしまって、心配で…!」

戦士「…え、まじで」

盗賊「エルフ、そりゃちょっとヤバイんじゃ」

エルフ「…っ」ギリ

盗賊「まさか…」

戦士「…あそこか?」

盗賊「いや、いるとしたらあそこしか」

エルフ「あてがあるんですか!?」

戦士「いや、あのよぉ…!ほら、あの事件の話したろ」

盗賊「あの金持ちが起こした事件…。まさか、それの」

エルフ「…!」ダッ

戦士「おい、待て!」

盗賊「屋敷の場所分かるのかよ!?俺ら、今からそこに用あっからよ、一緒に行こうぜ!」

エルフ「…例の取引、ですか」

戦士「お、おお。でも嬢ちゃんのほうが先だろ、行こうぜ!」

盗賊「おら、乗れ!」

エルフ「…すみません!」
……


「本当に来ると思うか?」

「来るだろう…。思いのほか忠誠心はあるようだしな」

「全く…しかし、本人を狙うんじゃなくて連れとはな…。考える事がセコイんじゃないか?」

「まぁこっちのほうが安全だろーがよ。エルフのほうはかなり腕がたつようだし」

「いやしかし、こっちの娘も達人のはずだがなぁ」

「喧嘩してたんだろ、考え事だよ考え事」

「全く…女ってやつは」

「ま、あとは獲物が勝手に来るのを待つだけだから楽勝だな」

「まーそうだな」

「俺らを恨むなよ、おじょーちゃん。あはは」
……

=館=

盗賊「ついたぜ。ここがかなり怪しい」

エルフ「ありがとうございます」

戦士「俺らが取引のついでに調べてくるからよ…お前はここで待ってな」

エルフ「…お願いします」

盗賊「おぉ。あんまり目立つなよ!行くぞ」

戦士「ああ」

エルフ「…」ソワソワ

エルフ(大丈夫かな、あの二人じゃかなり心配です)

ゴソッ

エルフ「…」ピク

「む…うん、む」

エルフ(あの二人…。一体誰を運ぼうとしているのやら)

エルフ(…今は、勇者様のことが優先ですが)

エルフ(…)

=館内=

盗賊「すいやっせーんー。取引をお願いしてたもんですがぁ」

召使「おお、やっと来たかよ。ご主人様が待ってるぞ」

戦士「へへへ、その前に一回商談の確認をー」

召使「ああ、分かった。応接まで待っておけ」タタ

盗賊「…」チラ

戦士「…」コク
……

=応接間=

富豪「おー昼間ぶりだな。どうだ、例のはもってきたか?」

戦士「ええ、まぁ。その前にもう一回内容を確認させていただきたくて」

富豪「ああ、いいぞ。しかし…連れはどうした?」

戦士「あいつ、ちょっとトイレで…へへ」

富豪「ふーん。まぁいいがな」

戦士(盗賊…うまくやれよ)

=廊下=

「でっさぁ、その檻のやつがよぉ…」

「あーあいつね。恐ろしく飯食う奴」

盗賊「…」コソッ

盗賊(どうしたもんか…何か手がかりがないとキツイかな)

「ところでよぉ、あの娘どこやった?」

「あー、あいつね。どっかの檻に放り込んできたぞ」

盗賊(え、そんなアッサリ?)

盗賊(檻か…。たしか最初に富豪のじじいに会ったとき見たっけな)

盗賊(やっぱりコイツだったかぁ…まぁ狙いはどう考ええもエルフだろうな)

盗賊(さー、さっさと奪還してお助け料せびろ)タタタ

=地下=

盗賊(…どれかな)

「グオオオオオ!!」

盗賊「」ビク

盗賊(なななななんだ、獣人の鳴き声かよ。びびらせんなー)

盗賊(しっかし、良い趣味してんなぁ)

盗賊(腐ってる腐ってる…お?)

盗賊(あの丸みを帯びた白い体…もしや!)タタタ

勇者「…」

盗賊「嬢ちゃんー!良かった、いたー!」

盗賊「おーい俺だ、盗賊だ!さっさと出ようぜこんな所ー!」ガチャガチャ

ガチャ

盗賊「持ってて良かったピッキング道具」キリ

盗賊「おーい」ペシペシ

勇者「…」

盗賊「ありゃりゃ、ぐっすりだぁ」

盗賊「おーい、おい困るよ!起きろってb」

ガシャン

盗賊「ファッ!!?」

召使「…困るのはこっちですよー盗賊さん」ガチャガチャ

盗賊「」

盗賊「待ってくれ俺は頼まれただけなんだぜ」

召使「関係ないです」

盗賊「待ってくれよー!!あ、そうだ例の商品の値段弾むからよぉー!」ガシャガシャ

召使「いえ、あんなはした金、まけてもらわなくても大丈夫ですんで。じゃ」

カツカツカツ…

盗賊「…Oh…」

盗賊「オーマイガッ…」

=応接間=

富豪「今回の品の産地はどこだったっけかな?」

戦士「えーっと、確か南の方ですねー(盗賊おせぇ…なにやってんだあのグズ)」

召使「ご主人様ー」

富豪「なんだよ、今商談の最中だろうが」

召使「いえ、…ゴニョゴニョ」

富豪「…!本当か」

戦士(あ、あれれれー?)

富豪「…ふむ。ああ、戦士。君のお仲間がだね」

戦士「ちょっとトイレ」ガタン

召使「アホか行かせねーよ」ガシ

戦士「!!!ま、待ってくれ俺は頼まれただけでぇええ」

富豪「…はぁ、ぶちこんでおけ」

召使「いえっさー」

戦士「んほぉおおおお待って欲しいのぉおお」

……


エルフ(遅い)

エルフ(これはやらかした感じですかね…まぁ予想してましたが)チラ

ザッザッ

エルフ「!」タッ

「あーあ、良い節約になったなぁ。獣人がタダで手に入るなんてよ」

「まぁ、それよりあいつら、どうなんだろうなぁ?」

エルフ(しくじりましたか、やはり)ハァ

「お、あったあった。運ぼうぜ」

「おっしゃ。んお、重い…!!」

ザッザッ

エルフ(…)ハァ

エルフ(さて)

エルフ(行きますかね)スク

「おい、あの娘とアホどもの檻は分けておけ。手でも組まれたら厄介だ」

「へいへーい。あ、こいつはどうする?」

「…ああ、檻が足りないな。娘のところにでも入れておけ」

「あいあいさっ」

ガシャン
……


勇者「ん…」

勇者「…!!」ガバッ

勇者「し、しまった…!!」

勇者(ど、どこだここ!?わっ、な、縄がかけてある!?)

勇者(やられた…ああ、情けない…!)

勇者(…エルフが目的かな、やっぱり。そうとしか考えられない)

勇者(…ああ、一生の不覚)ギリ

勇者「…来ないでよ…エルフ。お願い…」

勇者「やっぱりあのお金持ちかな…。もう、舐められたものだなぁ…。よっ!」グイ

勇者「おりゃっ!」ピョン

勇者「おおお、ととと」ヨロヨロ

勇者(良かった、なんとか立てた)

フニッ

勇者「んんん!?」グラッ

ドサ

勇者「い、痛ぁああ!」

勇者「もおおぉおお嫌だぁああ」シクシク

勇者「もう情けないぃいい自分が嫌だぁあああ」メソメソ

「…む」

勇者「ん?」

「…むー!むぅう!」

勇者「うわ!!?何コレ!!袋!?」

勇者「気持ち悪っ、何でモゾモゾしてんの?」

「んー!むぅう!」

勇者「…!まさか」

勇者「…えっと、今出してあげるからね!えっと…」

勇者「うぐぐ、今、袋破く…からっ」ギリギリ

ビリッ

勇者「はぁ、はぁ。大丈夫!?」




勇者「…え」

勇者「…あ、…え?」

獣人「…」モゾッ

獣人「…」キョロキョロ

勇者「あ、だ、大丈夫?」

獣人「…!!」ビクッ

勇者「ああ、ごめんごめん…。変なことしないよ、安心して」

獣人「…」ビクビク

勇者(獣の耳にしっぽ…これ、獣人の男の子だ…!)

獣人「…」ガタガタ

勇者「大丈夫?痛いところとか、ない?」

獣人「…」ガタガタ

勇者(あらら、耳伏せて…。そりゃ怖いよね)

勇者「えっと、君、お名前は?…あ、私は勇者だよっ。こんなところで転がってるけど」アハハ

獣人「…じ、獣人…」ガタガタ

勇者「そっか。獣人かぁ。良い名前」ニコ

勇者(さて、この子も連れて脱出しないとな)

勇者「ね、獣人ー」

獣人「…は、はい…」ビク

勇者「あのさ、私の縄を解いてくれないかな…?血が通わなくなって痛いんだ」

獣人「…」スッ

シュルシュル

勇者「ありがとう!助かったよ」

勇者「あー、全く…あざになってる」

勇者「よいしょ。…さて、ここから出なきゃ」スクッ

獣人「…」

勇者「あはは、私ドジだから捕まってさぁ…。あ、ここどこか分かる?」

獣人「…ふ、富豪の家」

勇者「やっぱりか…。じゃあ君は売られちゃったの?」

獣人「…」コク

勇者「…ああもう、本当に人間って馬鹿だ」

勇者「大丈夫、一緒に出よう。きっと道があるよ」

獣人「…」コクン

勇者「おっしゃ、じゃあ……」

勇者「…」

勇者「どうしよ」

獣人「…え」

勇者「いやここ、だいぶ狭いから脱出の手がかりとかもないし…。ゲームじゃあるまいしね」

勇者「あ、そうだ」

勇者「君、ちょっと横になって丸まってくれないかな?」

獣人「え?」

勇者「良いこと思いついちゃった。はやくはやく」

獣人「…こ、こう?」ゴロン

勇者「そうそう。で、何かすっごく苦しそうな演技してくれない?」

獣人「は、はい…」

勇者「お願いね!」

カツカツ…

召使「あーあ、飯の時間めんどくせー。自動えさ箱ほしいー」

ガシャンガシャン!! ガシャンガシャン!!!

召使「!!?なっ、何だ!?」ダッ

勇者「大変!!!大変だよおおお!!」ガシャガシャ

召使「あっ、捕虜の娘…!うるせーよ、出してやるわけないから静かにしろ!」

勇者「ちっ、違うんです!この子が、この子が…!」

召使「あん?」

獣人「…はぁ、はぁっ…」ブルブル

勇者「さっきから体が苦しいって…!」

召使「お、おいまじかよ!死ぬなよ、怒られる!」

勇者「治療してやってください!お願いします!」

召使「わ、分かった」ガチャ

勇者「馬鹿め!」

ドゴオッ

召使「ごふっ!!?」

召使「て、てめ…」

勇者「…」

ドゴッ ドゴッ ドゴッ ドゴッ ドゴッ ドg

獣人「…」ガタガタ

召使「」

勇者「ふぅ、意外としぶとかったな」

勇者「…えっと、何でそんな隅っこにいるの?」

獣人「こ、怖い…」フルフル

勇者「こ、怖くないよ!…殴っただけじゃない」

獣人「…」

勇者「ああ、ごめんね…。で、でもさ!出られたじゃない!良かったねこの人馬鹿で!」ゲシッ

獣人(い、今の蹴りは余計じゃ…)

勇者「さ、降りておいで。受け止めるよ」

獣人「は、はい…」ピョン

勇者「よしよし。良い子!」ギュ

獣人「…」カァ

勇者「走れる?」

獣人「大丈夫、です」

勇者「よし。じゃあ行こう」タッ

「おおおおおおいい!!!!」

勇者「!?」

「ここ、ここだよ嬢ちゃんー!!」

勇者「この声は…」

戦士「出して欲しいのおおおお」

勇者「…何やってるんですか」

盗賊「そんな粗大ゴミを見るみたいな目で見ないでぇ!俺ら、あんたを助けに来たんだよ!?」

勇者「そうなんですか!ありがとうございます」

勇者「じゃ」

戦士「いやいやいやいや!!」

勇者「冗談ですよ…。鍵開けますよ」カチャ

盗賊「いやあ、流石俺らの女神さまだぜ!…おや?」

獣人「…!」ガタガタ

盗賊「…お、お前」

獣人「ひっ!」ダッ

勇者「お、え?どうして私の影にかくれるの…」

獣人「…」ガタガタ

獣人「こ、この人たち。僕を捕まえた…」

勇者「…はぁ?」

戦士「ひっ、ま、まずいぞ!ばれた!」

盗賊「待ってくれ嬢ちゃんこれには深いわけがありましてですからその」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom