時間は
進んでほしくないようなときにはスイスイと流れていくき
早く流れ去ってしまえばいい、と思ったときにはなかなか流れない
何人もの人が自分の都合のいいように時間を操ろうと
いろいろな方法を試しましたが
どうにもうまくいきませんでした
しかしあるとき
「時間の流れを変える方法」がみつかりました
ほんの偶然だったのか
神様からのご褒美だったのか
今となってはわかりません
ただひとつ言えるのは
世界は変わってしまったということです
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「っつ」
机で作業していると時たま指を切ってしまう
最近の絆創膏は、貼った瞬間治ってしまうから驚きだ
一度貼って、剥がす
それだけで切れて、血が流れていた傷口が一瞬で跡形もなく消える
どこか薄気味悪いものがあるが、それでも便利なものは便利だった
「また切ったの?」
隣の部屋で服をたたんでいた彼女が、物音を聞いて顔を出した
「・・・あんまり無理して仕事続けなくてもいいんだよ」
絆創膏をぎこちない手つきで貼っていた俺に向かって、彼女は言った
「生活費だって、私が何とかするし、あなたが無理して続ける必要も・・・」
「ごめんな」
「・・・」
「謝られてもも困る」
と言い彼女は洗濯物をたたむ作業に戻った
俺は、人差し指と中指が動かない
半年前にあった事故が原因だった
人差し指と中指が動かないのは、作家としては致命的なことだった
彫刻等は安定せず、結果さっきのように指を切るのが常だ
当然作業も進まず、出版社との契約も切れかけていた
「潮時かな」
自嘲気味につぶやき、俺も部屋へ戻った
息苦しかった、互いに、遠慮しあっていた
もう同棲をはじめてから5年もたった、あっというまだ
けど、この5年間で詰めた距離は、たった3日で離れてしまった
どうしようもないほど離れたこの距離を、もう一度つめる出来事がほしかった
その願いは、思っていたよりもずっと、早く訪れた
思っていたよりも、ずっと歪んだ形で
3日たった
彼女が、交通事故で昏睡状態になってから、3日
静かな病室の中で、機械的な呼吸をする彼女の前で、俺は話を聞いていた
このままでは一生目覚めないこと、事故の相手のこと、彼女の家族のこと、そして
時間を戻すという方法があること
話だけは知っていたが、改めて聞くとどうしても信じられなかった
局地時空逆転装置
時間を巻き戻し、事故などで負った障害をなかったことにする
批判的な声もあるが、この技術で、医療のレベルは凄まじい進歩を遂げた
それを、実際に使うことになるとは、思いもしなかった
すぐにでも、装置の申請をしたかった
もう一度、しっかり彼女と話をしたかった
けれど、金がなかった
装置を使うことは治療ではないとされ、保険が降りず
また、彼女は全身を巻き戻すため、かかる費用も莫大だった
提示された金額は、どれだけ金融業者を回っても集められる金額ではなかった
俺は、ただ考えていた
続きは明日
>>6
ほら版画の絵本とかあるやん
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