7部の主人公が1部のジョナサンに入れ替わるSSです。他にも1部と7部のキャラクターが登場予定です。
原作のキャラクターの性格や喋り方が変わってしまうかもしれませんが、どうぞおつきあいください。
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[1880年イギリス某所]
ギュイッ
ギュイッ
ディオはボロボロの家の床は壊さないように歩いている。
ディオ「母さん。お薬だよ。これを飲んで………」サッ
ディオ母「……………………」
ディオ母「ディオ…ありがとう………だけどもう私の心配はいらないわ………あなたはもうすぐジョースター家に養子として引き取ってもらう事になってるんだから………」
ディオ母「私との縁はそれでおしまい………ジョースターさんなら立派な大人になる事が出来るわよ………」
ディオ「たとえ縁が切れようとオレを産んでくれたのは母さんじゃあないかッ。オレは母さんを忘れるつもりはないよッ!」
ディオ母「………フフフ…素直な子ね…ディオ……それだけでもあなたを育てて来て良かったと心から思うわ………」
ディオ「母さん………」
パッ
ディオは柱にかけてあった古い掛け時計の方を見た。
時刻は午前8時半だ。
ディオ「………そろそろ時間だ…今から馬に乗って羊追いの仕事をしてくるよ。それまで待っててね母さん。」
ディオ母「ええ………いつまでも待ってるわ……………」
ギュイッ
ギュイッ
ディオが部屋を出た数分後、ディオの母親は息子の顔を再び見ることなく、静かに亡くなった。
農場の人々はディオの母親が亡くなったにも関わらず、墓や葬式もなにもしなかった。
これは今までディオたち親子が受けた仕打ちの中で一番酷いはずだった。
しかし、ディオは何も文句を言わず、自分の母親を誰にも見つからない場所に連れて行き、一人で簡素な墓を建てた。
ディオ「…………………」
ディオ「まだ奴らに復讐するには金も地位もないんだ…………母さん……待っててくれ………」
ギュギュ…
ディオは自分の左手を爪が食い込むまで強く握った。
その手からは血が出ていた
。
ディオ(………将来オレはこの農場を買収し、母さんを苦しめたあいつらに同じ思いを味あわせてやる………そのためにはまず、ジョースター家を利用させてもらおう………)
ディオ(この痛みは………“あの時の母さんの痛み”とあわせて覚えておく………一生忘れはしないッ……)
[同年ジョースター家]
馬「ヒヒィ〜ンッ!!」ズッ
ジョナサン「うわぁああ〜ッ」ズザッ
バザン!
ジョナサンは馬から落馬した。
ジョナサン「こ…こいつ……全然言う事を聞かない………何でだろう……………」
パカッ
パカッ
ニコラス「ジョナサン、それはお前が馬の気持ちを考えていないからさ。」
ジョナサン「馬の気持ち…?」
ニコラス「馬って生き物はまず乗る人間を見る。そして、その人間が乗るに相応しい人間かを見定めるんだ。」
ニコラス「どうやら、この馬はお前が乗るに相応しくない人間と見定め、見下してるようだな………」
ジョナサン「…………………」
ジョナサン「へッ。別に構わないさ。馬に乗れなくったって僕は生きていけるんだ!!」
ジョナサン「あ、兄さん。僕そろそろ友達と遊ぶ約束があるんだ。先に行くね。」ダダダダダダ
ジョナサンは走り去って行った。
ニコラス「……………………」
ザッ
ジョナサン父「………ハァ〜〜〜。まったく…ジョジョのやつには向上心と言うものが少しも見られんな………」
ジョナサン父「それに比べてニコラスは礼儀正しく、周りの人間にも気配りができ、騎手の才能に恵まれている………どこで差がついたのか………」
ニコラス「父さん。それでもジョジョには僕や父さんには無いものを持っていますよ。」
ジョナサン父「? なんだそれは?」
ニコラス「いつか父さんにも分かるはずです。」
ジョナサン父「……そうか…………それはそうと今日はお前たちに報告があるんだ。」
ニコラス「なんですか?」
ジョナサン父「実は今日、我が家は養子として、ある子を迎え入れようと思っている。ジョジョと同い年の子だ。」
ニコラス「養子………」
ジョナサン父「突然ですまないが、仲良くしてやってくれ。」
ニコラス「僕は全然構いませんよ。ジョジョとならその子も仲良くやってくれるはずです。」
ニコラス「名前は何て言うんです?」
ジョナサン父「確か…ディオ……ディオ・ブランドー君だ。」
ニコラス「ディオ・ブランドー………良い名前ですね。」
ジョナサン父「ちなみにその子も騎手を目指しているらしい。ニコラス、お前が色々と教えてあげなさい。」
ニコラス「分かりました父さん。」
[ニコラスたちとは随分と離れた木の下]
ジョナサン「………騎手なんて兄さんに任せればいいんだよ。兄さんは僕なんかより優秀なんだし、僕は僕のやりたい事を見つけるさッ。」
ジョナサン「時間はまだまだあるんだ。今はとことん遊んで、友達の輪を広げよう! そうだろダニー?」
ダニー「チューチュー。」
ジョナサンの手のひらには、ジョナサンの拳ほどの大きさのネズミがいた。
ジョナサン「みんなはお前の事を嫌ってるけど、お前にはお前の可愛らしさがあるもんな。それを見ずに嫌うのは間違ってるよ。」
ダニー「?」
パカッパカッ
ジョナサン「! 誰か馬で僕たちに近づいてるみたいだ。狭いけど僕のポケットの中に隠れてて。」サッ
パカッ…
ゴゴゴゴゴゴ
ジョナサン(うわー…カッコ良い子だな。年齢は僕と同じくらいに見えるのにいとも簡単に馬を操ってる。きっと才能があるんだろうな。)
ディオ「………………………」
ディオ「すまないが一つ聞きたい事がある。」
ジョナサン「はい?」
ディオ「この辺にジョースター家って家はないかい?」
ジョナサン「知ってるも何もその家は僕の家です。」
ディオ「!!」
ディオ(………ふーん……こいつがジョースター家の子供か……………いかにもお坊ちゃん育ちをしてきたって風貌だな………………)
ディオ(こいつにはオレの土台として利用させてもらおう。)
ディオ「そうか。ならば話が早い。ジョースター家の方向を教えてもらおう。」
ジョナサン「ううん。僕が家まで連れて行ってあげるよ。そろそろ帰らないと父さんに叱られそうだし…」ザッザッ
ジョナサンはディオの方へ近づいていく。
シルバーバレット「ブウルン!」
シルバーバレットは首を横に大きく振った。
ディオ「! それ以上オレに近づくな!」
ジョナサン「え?」
ディオ「おまえ…もしかしてネズミを飼っているんじゃあないだろうな?」
ジョナサン「!!」
ディオ「オレのシルバーバレットはネズミが近くにいると嫌がって首を横に大きく振る癖があるんだ。それ以上近づくと暴れ馬になってしまう。」
ジョナサン「ネ…ネズミ? そんなの持ってるはずないじゃあないかッ! きっとたまたまだよ。」
ディオ「…………………………」
ゴゴゴゴゴゴ
ジョナサン「…………………………」
ディオ「フン………まーそれもそうか…ネズミを飼うやつなんかなかなかいないからな。」
ジョナサン「ホッ…」
ディオ「とにかく…方向だけを教えろ。変な気遣いはムカつくだけだ。」
ジョナサン(こいつ何か嫌な奴だな……)
ジョナサン「それなら北にまっすぐ進んで行ったら馬がたくさん飼ってある牧場があるんだ。そこを西に進んだら僕の家さ。」
バチーン
シルバーバレット「ヒィーン!」
ディオはシルバーバレットを鞭で叩いた。
ディオ「行くぞシルバーバレットッ。」
パコラパカッ
ディオはジョナサンに礼を言うことなく、そそくさと去って行った。
ジョナサン「礼ぐらい言ってくれてもいいのに………」
ジョナサン「あ!! もう昼食の時間だッ。急いで帰らないと!!」ダダダダダダ
パカッ
パカッ
ニコラス「ジョジョッ! 早く乗れッ! 昼食におくれるぞッ!!」
ジョナサン「さすが兄さんッ!! 迎えに来てくれると思ってたよッ。」ガバッ
ニコラス「フ………それはそうとな……………今日はお前にとって嬉しいニュースがあるんだ。」
ジョナサン「ん?」
ニコラス「実はな…今日から俺たちに新たな兄弟が出来るんだ………………」
〜to be continued〜
今回はプロローグだけですが、ここまでにします。
ペース的には週1のペースで書いていきます。
よろしくお願いします。
[ジョースター家]
ジョナサン父「……というわけだ。今日からディオ君と仲良くしてくれ。」
ジョナサン(まさかこの子が養子だったなんて………)
ニコラス「よろしくディオ君。僕はニコラス・ジョースターだ。」
ディオ「どうも…」
ジョナサン父「ニコラスはディオ君と同じで騎手を目指しているんだ。同じ騎手を目指す者同士、互いに教えてあって成長してくれ。」
ディオ「よろしくお願いします。」
ニコラス「あぁ。よろしく。」サッ
ガシッ
ディオとニコラスは握手をした。
ディオ(こいつはさっきのやつとは違うな………隙がない………………こいつには素直に従っておくのが良さそうだ。)
ジョナサン「僕はジョナサン・ジョースター。気軽にジョジョって呼んでね。」
ジョナサン父「ジョジョは君と同い年で気が優しく、とても良い子だ。ただ…ニコラスとは違ってとてもやんちゃな子だ。」
ジョナサン「と、父さん……それは言わなくても……………」
ジョナサン「ハハハ。」
ディオ「………………………」
ジョナサン「よろしくディオ君。」サッ
ディオ「ああ……よろしく。」
ガシッ
ギュー
ジョナサン「イッ!」
ニコラス・ジョナサン父「?」
ディオ「ジョースターさん。僕の部屋はどこになるんですか?」
ジョナサン父「おお。そうだったな。私が案内しよう。ついてきたまえ。」
ディオ「はい。」
ディオ「それでは失礼します。ニコラスさん、ジョナサン。」
タッタッタッ
ディオとジョナサン父は二階へとあがった。
ジョナサン(お…思いっきり爪を立てて食い込ませにきたッ…! ぐ…ぐうぜんだと信じたいが…そうだ……ディオ君はこれから僕たちの兄弟になるんだ……仲良くしなきゃ………仲良く………)
ニコラス「どうかしたのかジョジョ?」
ジョナサン「い…いや……何もないよ兄さん。」タッタッ
ニコラス「……………………」
その後、ジョナサンは苦悩した。
ニコラスとディオという二人の優秀な子供と比較される日々が続いたのである。
ディオ「………………」モグモグ…
ニコラス「………………」フキフキ…
ジョナサン「あっぶおぶうおばっ。」カチャカチャカチャカチャカチャカチャ
ジョナサン父「こらジョジョッ! なんだその食い方はッ。礼儀作法がなっとらんぞッ!!」
ジョナサン父「ディオとニコラスを見習いたまえッ! おい! ジョジョの食器を片付けたまえッ!!」
ジョナサン「え!?」
食事をちゃんと食べきる前に皿を片付けられたり…
ニコラス「ディオッ! 君は馬に乗るのがとても上手だね! 僕なんかより遥かにすごい騎手になりそうだよ。」
ディオ「お褒めの言葉ありがとうございます。」
馬「ヒィ〜ヒィイイ〜ンッ!!」
ジョナサン「うわっ! おっと!」
ジョナサンはロデオに乗ってるようだ。
ジョナサン父「ジョジョ! おまえはいつになったら馬に乗れるようになるんだッ! 同い年のディオ君はもうニコラスに認められるほどなんだぞ!」
ジョナサン「そ…そんな事言われても……」
馬「ヒヒィ〜〜〜ンッ!!」ズアッ
ジョナサン「う、うわぁッ!」
バサー
ジョナサン父「はぁ………どうやら私はジョジョを甘やかしていたようだな。ディオ君を見てそう気付かされたよ。」
ジョナサン「う……」
騎手としても、ディオの才能と比べられていた。
ジョナサンの友達はやがで、ディオの方に移っていき、ジョナサンの友達はダニーだけとなった。
[例の木の下]
ジョナサン「はぁ〜〜〜…ディオが来てから何も良い事がないや………お父さんは厳しくなるし、友達はみんなディオや兄さんの方ばっかに近寄るし……誰も僕を気にかけてくれないッ………」
ジョナサン「母さんが生きてたら……こんな僕を慰めてくれるのかな…………それとも叱ってくれるのかな………………気になるな………」
サッ
ジョナサンはポケットに手を突っ込み、その中にいたダニーを取り出した。
ジョナサン「ねえダニー! 君はどう思う?」
ダニー「チューチュー。」
ジョナサン「うんうん………そうかッ! そう言う考え方もあるなぁ………参考になるよ!」
ジョナサン「………………………」
ジョナサン「僕はなんて悲しいやつなんだろ………」
ジョナサン「………僕の相談に乗ってくれるのは兄さんとダニーだけだ………………最近は兄さんもディオの指導に忙しくて相談に乗ってくれないけど………」
ガバリ
ジョナサンは立ち上がり、突然大声を発した。
ジョナサン「くっそーーーッ!! いつかディオを見返してやるぞーーーッ!!!」
バッ
木の陰から誰かが出てきた。
?「ネズミと話しているやつが、このオレを見返す事なんて永久に来ないがな。」
ジョナサン「ハッ!!」
ディオ「ジョナサン。きさまはそのネズミ以下だという事を自覚しろ。」
ジョナサン「ディ…ディオッ!? い…いつからそこにッ!!」
ディオ「きさまが何やらブツブツと独り言を喋っているから気になって隠れてたんだ………まさかネズミと喋っていたとはな…………驚かされたよ。」
ディオ「同時に! きさまに対してオレは軽蔑な態度を取ることにしたッ。そういえば…きさまと初めて会った時、ネズミを持っていないと言っていたが、ウソをついていたと言うことだよな。」
ジョナサン「そ…それについては謝るよ………悪かったよ……でも! ダニーはそんじゃそこらのネズミとは違うんだ。こいつは人懐っこくて人にイタズラはしないんだ。」
ディオ「…それじゃあ有名なジョースター家の子供がネズミを持っていると、近所の人が知ったらどう思うか考えてみろ。」
ディオ「一気にジョースター家の信頼は無くなるだろうな………それもきさまのせいで。」
ディオ「………オレはまだこのジョースター家の世話になるつもりだ。だからこそだジョナサン・ジョースター………一つ命令する。」
ディオ「その汚いネズミを今すぐ殺せッ。そうすればきさまがネズミを飼っていた事を黙っておいてやろう。」
ジョナサン「ディオッ!! それはできない! ダニーは僕の一番の親友なんだッ!!」
ディオ「動物に親友も何もないだろうがッ!! 動物はオレたち人間が利用する道具だッ。ネズミだって実験用の道具として使われるんだ。」
ディオ「だがッ! そのネズミは実験用のネズミにしても使えやしないドブネズミだ! 利用価値なんてこれっぽっちもないんだよこのアホがァーッ!!」
ジョナサン「よくもダニーをバカにしたなァッ!! 許さんッ!!!」グワアアアァー
ジョナサンはディオに殴りかかった。
ディオ「格闘技術においてもきさまはオレに勝つ事は出来ないことを分からしてやる良い機会だな。」
ヌルゥ
ディオはジョナサンの右ストレートを最小限の動きでかわし、構えをとった。
ジョナサン(こ…この構えはテレビで見た事がある…! プロのボクサーがアッパーカウンターを仕掛ける時だ!!)
ディオ(悪く思うなよジョナサン。きさまが弱いからこうなるんだッ。)
ヌワアアアア
ディオはしゃがみ、左の拳をジョナサンの顎めがけて振り抜いた。
ガキッ
グワアアア
その拳はジョナサンの顎に見事にクリーンヒットした。
ジョナサン「うッ………!」
バタリ
ジョナサンが倒れる。
ディオ(完璧に顎をとらえた………これでしばらく脳震盪でジョナサンは立ち上がることができないだろう………………)
ダニー「チュー………チュー…」
ダニーがジョナサンの近くで鳴いていた。
ディオ(………こいつはオレが殺しておいてやるか………)
ザッザッ
ディオ(ネズミごときに手を汚すまでもない。踏み潰してくれるッ!)
バアアアア
ディオは足をダニーめがけて振り下ろした。
ガバァァァァ
ダン!
ディオ「!?」
ディオの振り下ろした足はジョナサンの手を直撃した。
ジョナサンはダニーを手で守ったのだ。
ジョナサン「ディ…ディオ………ダニーは殺させないぞ…」
ディオ(バ…バカなッ。確かに顎はとらえたはずッ…! ジョナサンには立ち上がることすらできないのに!!)
ディオ「オレに触るなッ! そのネズミを触った手でッ!!」ザッ
ディオはジョナサンの手をさらに踏もうとした。
その時、ジョナサンがとった行動は………
ガシッ
ズバァアアア
逆にディオの足を上へと持ち上げたのだったッ!!
ディオ「な…なにィッ!?」
ズサァ
油断していたディオはバランスをくずし、尻餅をついてしまった。
ディオ「よ…よくも……よくもこのオレに尻餅をつかせたなこの汚らしいアホがァーーーーーーッ!!」グバアアアアア
ディオはジョナサンめがけて殴りかかった。
ダァン!
ニコラス「そこまでにしておけ二人とも!!」
ディオ「ニ…ニコラスさんッ!」
ニコラス「………………………」
ニコラスは周りを見渡し、状況を把握した。
ニコラス「二人とも帰りが遅いから探しに来て正解だったな……」
ニコラスは二人から今までの経緯を聞いた。
ニコラス「ディオ…どうやらジョジョが先に手を出したみたいだね。本当に済まなかったな。だが、やり返すのは良い事とは言えないぞ。今回は多めに見てあげるから二人とも仲良くするんだ。」
ディオ(くっ………)
ディオ「………ではお先に失礼します。」ダッダッダッ
ジョナサン「……………………」
ニコラス「ジョジョ………二人きりで話そうか。」
ジョナサン「……はい。」
ザッ
ニコラスはジョナサンの隣に座った。
ニコラス「………どうやらディオ君と仲良くなっていないみたいだな。」
ジョナサン「……………………」
ニコラス「それと、おまえがネズミを飼っていたことにはさすがに驚いたよ。」
ジョナサン「ご…ごめんなさい兄さん………」
ニコラス「………ディオ君とはゆっくりでいいから仲良くしていきなさい。これは兄として心から望んでいることだ。」
ニコラス「だけど………えーと……そのネズミには名前とかついてるのかい?」
ジョナサン「ダ…ダニーって言うんだ。」
ニコラス「そうか。ならそのダニーをおまえが飼っていた事に関しては僕は何も言わないさ。」
ニコラス「動物を飼う自由は全員にあるんだ。見た所おまえはこのネズミを大切に扱っている。ならばいい。」
ニコラス「ただ…このまま飼い続けるのはおまえにとって良い事ではない………今回はディオ君だから良かったが、もし父さんに見つかっていたら問答無用で殺されていたかもしれないぞ。」
ニコラス「それならみんなに殺されてしまう前に自然に返してやらないか?」
ジョナサン「…………そ…それは………」
ニコラス「………いいかジョジョ。おまえには僕やディオ君には持っていない物がある。」
ジョナサン「え?」
ニコラス「たとえ馬に乗れなくたっておまえには誇れるものがある。それは思いやりと強い心だ。」
ニコラス「おまえは親友のダニーをバカにされて、つい手を出してしまった。行為は決して褒められる行為じゃあないが、それはダニーを大切に扱っているからこそ、してしまった行動だ。」
ニコラス「その気持ちを今後も大切にしろ。無くすなよ。」
ジョナサン「う…うん………」
ニコラス「そして、おまえはどんなに出来なくても、一度も馬に乗ることを欠かした日はなかった。途中で投げ出す事はあったが、休んだ事はなかった。僕だって休んだ事があったのにさ。」
ニコラス「その諦めず続ける心はおまえの長所だ。これを磨いていけば僕を超えることだってできる。」
ジョナサン「…………………」
ニコラス「ダニーとのお別れは確かに辛いかもしれない。だが、別れたからってダニーがおまえを忘れると思うか?」
ニコラス「おまえが1日も欠かさず、愛情をこめて飼ってきたんだ。きっと忘れないと思うぞ。」
ジョナサン「…………………」
ジョナサン「………わかったよ兄さん。」
グバリ
ジョナサンは手に乗っていたダニーを地面に置いた。
ジョナサン「…………ダニー……突然だけど、ここでお別れだ………こんな飼い主でごめんな………」
ジョナサン「おまえと過ごした日は絶対に忘れない………元気に生きろよ………」
ダニー「………」
ダニー「チュー。」ダッダッダッ
ダニーは草むらへと走り去っていった。
ニコラス「さて…帰るか。」
ジョナサン「……………………」
ニコラス「………今日から僕が一から乗馬を教えてあげよう。ついてこいよ。」
ジョナサン「………ありがとう兄さん……」
[???]
ディオ「よくもこのオレに恥をかかしてくれたな…ジョナサンッ………こうなったらおまえから大切なものを奪ってやろうじゃあないかッ…!」
〜to be continued〜
今週はここまで。
続きは来週の金曜か土曜に投稿予定です。
今日の深夜投稿予定
馬「バブゥン!」
ジョナサン「こいつ乗る前にいつもこんな感じなんだ………本当に乗れるかな………」
ニコラス「この馬は初心者には乗りやすい馬のはずなんだけどなぁ。ジョジョ、話しかけながら乗ってごらん。」
ジョナサン「わかった!」
ジョナサン「今から君の上に乗るけど暴れないでくれよ!」
馬「ヒヒィーン!!」
ガシン
ジョナサン「うわ!」
バタン
ジョナサンは馬から落馬した。
ジョナサン「ほらね。」
ニコラス「うーん………この馬はもしかしたらジョジョには向かない馬だったのかもしれないな。」
ニコラス「馬小屋に行ってみよう。そこでジョジョに合う馬を探すんだ。」
ジョナサン「うん。」
[馬小屋]
ザッザッ
ジョナサン「馬小屋に来たのは初めてだな………ん?」
サー
サー
奥の方で馬のタテガミをとかしている女性がいた。
ジョナサン(可愛い子だなぁ………あんな子がこの馬小屋にいたんだ……………名前は何て言うんだろう。)
ニコラス「エリナちゃん! 今日も馬の世話をしてくれてありがとう。」
エリナ「あ! ニコラスさん! とんでもございません!! これが私の仕事ですから。」
ニコラス「悪いね。今日はジョジョに合う馬を探しにきたんだ。………その馬…借りてもいいかな?」
エリナ「は、はい! どうぞお借りください!」
ニコラス「そういえばエリナちゃんはジョジョと会うのは初めてじゃあないかな? 二人とも同い年だったよね。」
ジョナサン「え! 同い年!?」
エリナ「私は知っていますよジョナサンさん。私はエリナ・ペンドルトンといいます。ここの馬たちの世話をしています。以後お見知りおきください。」
ジョナサン「そんな気を使わなくていいよ。僕の事はジョジョって呼んで!」
エリナ「は、はい……えぇとぉ…ジョジョ…………さん……」
ジョナサン「さんはいらないよ!」
ニコラス「ハハハハハハッ! 二人とも面白いな! お似合いだよ。」
ジョナサン「に、兄さん……からかうのはやめてよ。」
エリナ「で、ではこの馬は外に連れて行きますね。」
パカッ
パカッ
ジョナサン「………ぼ、僕たちも行こうよ。」ザッザッ
ニコラス「………将来が楽しみだな。」
[牧場]
エリナ「この馬はシェリーって言って、とても落ち着いた馬なんです。ジョナ…………………ジョ……ジョジョでもきっと乗れる馬だと思います……………」
ニコラス「いいか。乗馬に関しては僕も厳しく指導する。泣くなよ…?」
ジョナサン「う…うん。わかった。」
ジョナサンは馬に跨ろうとする。
馬「ブル。」
ジョナサン「!」
ジョナサン(や…やっぱりこの馬も………)
ニコラス「ビビるなジョジョッ! それではいつまでも馬どころか馬車にも乗れないぞ!!」
ジョナサン「……………………よし!」
ジョナサン(ビ…ビビるもんか! 僕にだって出来ることはあるんだ!!)
ガバァァ
ストン
………
ジョナサンは馬の上でキョトンとしていた。
ジョナサン「………の、乗れたよ兄さんッ!!」
ニコラス「このくらいで喜ぶな! この馬は暴れない馬だから当然だ………次のステップに進もうジョジョ。」
エリナ「おめでとうジョジョ!! あ! す、すみませ…」
ジョナサン「ありがとうエリナ!」
エリナ「!! は、はい!」
それからジョナサンは着々と成長していった。
最初はシェリーにしか乗れなかったが、今ではどんな馬にでも乗れるようになり、決して早くはないが馬を走らせるまでに成長した。
ニコラスいわく、ジョナサンは心のどこかで馬に対する恐怖心を持っていたという。ジョナサンが最初に乗っていた馬は、そのジョナサンの恐怖心を見透かし、乗せなかったのだとニコラスは考える。
しかし、今のジョナサンは馬に対する恐怖心を取っ払い、乗れるようになったのだ。
ニコラスはより一層ジョナサンに対して厳しくなっていったが、その成長を喜んでいた。
[練習場]
ニコラス「OK………今日はこのぐらいにしておこうメイデン。明日は大事なレースだからね。」
メイデン「ブルルルン………」
ディオ「どうやら走り足らないように見えますが………」タッタッ
ニコラス「ム? ディオ君…今日はもう練習を終えたんじゃあなかったのか?」
ディオ「ちょっと馬で走りたくなったんですよ。ニコラス兄さんの走りがあまりにも見事だったもので……」
ディオ「しかし…最近は少しタイムが落ちてるように見えますね………ジョナサンの教育に熱を入れすぎじゃあないですか…?」
ニコラス「確かにそうかもしれないが、これは僕が決めたことなんだ。タイムが落ちても気にしないさ。」
ディオ「そうですか………明日のレースは余裕ってワケですね。」
ニコラス「そういうわけじゃあ………」
ディオ「そうだ! 僕と今から馬でレースをしませんか? 気分転換には良いと思いますよ。」
ニコラス「ディオ君………今日はもう走らせないって決めたんだ………」
ディオ「僕はニコラス兄さんがジョナサンにばかり優しくしてるのが悲しいんですよ。確かに僕は養子です。ですが、ニコラス兄さんは僕にとって初めてのお兄さんなんです………甘えてはダメですか…?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ニコラス「……………………」
ニコラス「………分かった。1レースだけ………レースをしよう。それだけだ。」
ディオ「ありがとうニコラス兄さん! ニコラス兄さんとレースが出来るなんて光栄だよ!」
ニコラス「ルールはどうする?」
ディオ「この練習場を二周するってのでどうですか? それなら早めに決着がつきます。それと………」
ニコラス「それと…?」
ディオ「互いの馬を交換するってのはどうです?」
ニコラス「僕のメイデンとディオ君のシルバーバレットを…か?」
ディオ「それなら僕にも勝てるかもしれませんよ! 本当の実力が試されるし…」
ニコラス「………………そうだな。それでいこう。」
ニコラス「エリナちゃん! 悪いがメイデンを連れてきてくれ。今からもう一度走らせる。」
エリナ「わかりました。」
ディオ「では、僕のシルバーバレットをお使いください。きっと、乗り心地は良いはずですよ。」
ニコラス「あぁ…ありが………」
ニコラス「!!」
ニコラス「………………………」
ディオ「………どうしましたニコラス兄さん? 僕の馬に乗るのは嫌ですか…?」
ニコラス「い…いや……ありがたく乗せてもらうよ。」
ニコラス「……………………」
二人は準備を終えた。
ディオ「では…エリナだったかな? スタートの合図を頼む。」
エリナ「はい。それでは…」
エリナ「レディー………」
ニコラス「……………………」
ディオ「……………………」
エリナ「ゴ………」
ニコラス「ハッ!」バッ
シルバーバレット「ヒィン!」
ディオ「行くぞ!!」バチン
メイデン「ヒン!」
ダッダッダッダッ
エリナ「すごい………まだ言い切ってないのにスタートしちゃった……」
ジョナサン「やあエリナ! こんなとこで何やってんの?」ダッダッ
エリナ「あ! ジョジョ! 今ね、ニコラスさんとディオさんが互いの馬を交換してレースをしてるのよ。」
ジョナサン「え! 僕に隠れてそんな面白そうな事してたの!? 兄さんたち酷いや!」
エリナ「今は………ニコラスさんが優勢みたいね。」
ダダダダダダ
ニコラス(さすがディオ君だ………僕のメイデンをうまく扱っている……………コーナーを曲がるのに迷いがない………)
ニコラス(このレース………もしかしたら明日のレースよりも厳しいかもしれないな………)
ディオ(チッ………前に行けない……………オレが行こうとしているコースをことごとく塞いでくる…! 大外を回って前に行きたいが、それではすぐに抜かされるッ………腕前は本物というワケだな。)
ディオ(ラストのコーナー………そこで仕掛けるか………………)
ダダダダダダ
ジョナサン「すごいや兄さん! あのディオが一回も前に出れないッ。やっぱり兄さんは天才だよ!」
エリナ「あと一周です!」
ダダダダダダ
ニコラス(どこで仕掛けてくるディオ君…………君がこんな簡単に負けるはずはない………勝機を伺っているんだろ。)
ニコラス(だが! 僕は負けるつもりで走ってはいない! どんな勝負でも勝つつもりなんだ!!!)
ニコラス(かかってこいディオ君!)
ディオ(………確かにニコラスは騎手としての腕前は本物だ………だが………)
ジョナサン「最終コーナーだッ!」
ディオ(騎手として一番重要な物がきさまには欠けている………それを今から見せてやろう!)
ダバッ
ニコラス「来たかッ!」
ジョナサン「ディオが兄さんと並んだッ!!」
ディオ「ニコラス兄さん。この勝負…もうやめましょう。」
ニコラス「何を言ってる!! ゴールまで勝敗はわからないだろ!」
ディオ「もう決まってますよ…」
ディオ「オレの勝ちがな!」
サッ
ディオはポケットから何かを取り出した。
バシュウ
それをシルバーバレットに投げつけた。
ジョナサン「!」
シルバーバレット「!!」
シルバーバレット「ブルルスゥウウウンッ!!」
ニコラス「!」
シルバーバレットは突然前足を上げた。
ジョナサン「に、兄さん!!」
エリナ「ニコラスさん!!」
ニコラスは踏ん張ろうとした。
ブチッ
しかし、ニコラスが足をかけていた左足の踏ん張る箇所が切れた。
ニコラス「あっ。」
ニコラスはそのまま後ろに落ちていく。
ニコラスはその時、ディオが投げた物をはっきりと見た。
ニコラス(………………………)
ニコラス(あ…あの白い毛は…………………ダ………)
ドザアアアアアアア
ガン!
ニコラス「う!」
シルバーバレット「ヒヒヒヒィーン!!」
シルバーバレットは後ろ足をニコラスに振り下ろした。
ニコラス「……………」
ダァン!!
…
……
………
ジョナサン「に…兄さーーーーーんッッ!!!!!」ダダダダダダ
エリナ「そ…そんな………わ…私助けを呼びに行くわ!!」ダダダダダダ
ディオ「……………………」
ディオはゴールをした後、ニコラスの元へ走っていった。
ジョナサン「兄さん…! 兄さん起きて!!」
ニコラス「…………………………」シュボォォォォ
ジョナサン「兄さんッ!!」
ディオ「頭を強く打ったようだ………それにシルバーバレットに踏まれている………無理に動かすな。」
ジョナサン「ディオーーーーーッ! 兄さんに何をしたァーーーッ!!」
ディオ「何もしていないさ………ニコラス兄さんは馬鞍が切れて落馬した…………もし、馬の交換をしていなかったら落馬していたのはオレの方だったんだ。」
ディオ「今回は………事故だったのさ………」
ジョナサン「ぼ…僕は見たぞ…! 君がニコラス兄さんに何か投げるのをッ!」
ディオ「!」
ジョナサン「あれは………白い毛並みはしていた! そしてあの小ささは僕のダニーにそっくりだったッ。君はわざとこうなるように仕向けたんだ!」
ディオ「…だからどうした?」
ディオ「証拠は? オレがきさまの兄を落馬させた証拠はあるのか? 白い毛並みで小さかったからダニーを投げたァ? そんな言いがかりでオレを犯人と決めつけるのか? ジョジョ?」
ジョナサン「ぐ…!!!」
エリナ「ジョジョ! みんなを呼んできたわ!! ニコラスさんをはこびましょ。」
その後、ニコラスは病院へ搬送されたが、後頭部を強く打ち、シルバーバレットに頭を強く踏まれたため………意識は戻ることなく………………静かに息をひきとった………………
[病室]
ディオ「ニコラス兄さん………ごめん……僕がレースを挑むからこんな事になったんだ………ごめん…兄さん………」
ジョナサン父「みんな………私とディオの二人っきりにさせてくれ……」
ジョナサン父とディオ以外の人が病室から出て行く。
ジョナサン父「大丈夫だ…………怒ったりはしない…………思う存分泣きなさい………」
ディオ「ジョースターさん………本当にごめんなさい……………」
ジョナサン父「………今回は運が悪かった……………事故が重なった結果、ニコラスは………ディオ……これから強くなりなさい………ニコラスの分まで………」
ディオ「…………と…父さん…………」
ディオ(まさかここまで上手くいくとは思わなかったな………これでオレの邪魔者であったニコラスはいなくなった………ジョナサンはオレの足元にも及ばない………あとはゆっくりと階段を上がっていくだけだ………)
ディオ(ジョースター家よ………たっぷりとお前らを利用させてもらうぞ…!)
その後、ニコラスを亡くしたジョナサン父はディオを英才教育で育て上げた。
成長したディオはイギリス競馬のいくつもの賞レースで勝ち、イギリスでは敵なしのジョッキーへと上り詰めた。
そんなディオにジョナサン父はアメリカ遠征を提案した。アメリカでは競馬の最先端の施設が揃っており、ディオにとっては断るデメリットがなかった。
ジョナサン父「ディオ………達者でな…………立派なジョッキーになってくれ………」
ディオ「ありがとう父さん………それとジョジョ……」
ジョナサン「……………………」
ディオ「今までケンカしてすまなかったな………アメリカから帰ったら二人っきりで遊びに行こう……今までの言動を詫びたいんだ………」
ジョナサン「ディオ…………」
ディオ「………それじゃあエリナ。行こうか………」
エリナ「は…はい………」
ジョナサン「エリナ………元気でね………」
エリナ「ジョジョ…………………」
ディオ「早く行くぞ。」
エリナ「はい。」
ディオたちは馬車に乗り、ジョナサンたちの元から離れていった。
ジョナサン「……………………」
エリナはジョナサン父の命により、ディオが乗る馬の専属調教師としてアメリカへ向かう事になった。ジョナサンはそれに対し、反対することはできなかった。
なぜならそれはエリナの経験にもなるからだ。たとえ相手がディオだったとしも、エリナの調教師としての成長に繋がるのであれば、ジョナサンは口出しする事はできなかった。
ジョナサンとエリナは…遠く離れてしまったのだ………
そして…7年の年月が過ぎた。
〜to be continued〜
今回はここまで。
予定は来週の土曜日です。決まればご報告します。
今日の夜投稿予定
[1887年イギリス某大学]
ジョナサン「以上が私の論文になります………どうでしょうか?」
教授「…………………………」
教授「これは素晴らしい論文だよジョナサン君! 見事だ。」
ジョナサン「ありがとうございます。」
教授「さすがあの有名ジョッキーのディオ・ブランドー君を兄弟に持つだけあって、馬の事について完璧に書かれている。文句なしだ!」
トントン
扉をノックする音が聞こえた。
教授「入りたまえ。」
助教授「失礼します。ジョナサン君、ディオ君から君に電話だ。」ガチャリ
ジョナサン「! わかりました。」
ジョナサン「では教授…今日はこの辺で失礼させていただきます。」
教授「あぁ…」
ガチャリ
バタン
ジョナサンは扉を閉めた
教授「………優秀な兄弟を持ちましたなジョースターさん………………」
ガチャ
ジョナサン「ディオ? 聞こえてるかい?」
ディオ「やあジョジョ! 一ヶ月ぶりだな! 僕がいない間父さんに何かなかったか?」
ジョナサン「相変わらず若きジョッキーたちへの指導に熱をいれてるよ。ひょっとしたら前よりきびしいかも………」
ディオ「ハハハ! 父さんらしいな!」
ジョナサン「そっちの調子はどうだいディオ?」
ディオ「相変わらず勝ちまくってるよ。だけど、イギリスよりかは骨のあるやつがいるから少しは楽しめてる。君は?」
ジョナサン「今やっと論文を書き終えたところさ。これでようやく君のサポートができそうだ。」
ディオ「………本当にいいのか? 僕のために…?」
ジョナサン「僕にはジョッキーの素質がないからね。それだったらディオを超一流のジョッキーへサポートする方が良いと思ったんだ。気にしないでくれ。」
ディオ「悪いな。君には感謝しかないよ。」
ジョナサン「…エリナは元気にしてる?」
ディオ「………あぁ。元気にしてるさ。今は馬の管理で忙しくてこっちにはいないが、大丈夫だ。」
ジョナサン「そうか………ありがとう。」
ディオ「それじゃあ僕は練習に戻るとするよ。父さんによろしく伝えてくれ。それじゃあな。」
ジョナサン「ああ…」
ガチャ
ツー…ツー…
ジョナサン「……………………」
タッタッ
[ジョースター家]
ジョナサン父「そうか………ディオから電話がかかってきたか……ちゃんと元気にしてると言ってくれたか…?」
ジョナサン「はい。言いました。」
ジョナサン父「すまないな………ゴホッ。ゴホッ。」
ジョナサン「父さん!!」
ジョナサン父「大丈夫だ………ディオには競馬に専念してもらいたいからな………私の病状を伝えてはディオが心配する………ゴホッ。ゴホッ。」
ジョナサン「………………………」
ジョナサン父「そうだ………ジョジョ。お前には伝えておきたい事があったんだ。」
ジョナサン「なんですか?」
ジョナサン父「私の知り合いに馬の生態について特殊な知識を持った人がいるんだ。その人に会ってみないか?」
ジョナサン「はい。是非ともお会いしたいです。………ところで特殊な知識とは?」
ジョナサン父「会ってみれば分かるさ。その知人はお前が通っている大学の教授だ。ツェペリ教授という名前だ。」
ジョナサン(そんな名前の教授いたっけな………僕が教えてもらっている科目にはいないぞ………)
ジョナサン「わかりました…ありがとうございます父さん。」
ジョナサン父「では、私の方から彼に連絡をしておこう。今から向かいなさい………」
ジョナサン父(立派になったな………ジョジョ………私は誇らしげに思うぞ。)
ジョナサン「はい…では…失礼します。」
ガチャ
バタン
[イギリス某大学]
教授「ツェペリ教授…? あぁ………あの人は人体学を教えているから君は会った事がないのか。それで…彼に何の用なんだね?」
ジョナサン「実は…その人が馬について教えてくれるらしく、是非お会いしたいんですが……」
教授「ツェペリ教授が? 彼が馬について詳しいだなんて聞いたことがないぞ。信じられんな………それに彼はかなりの変人と聞く。君には彼を勧められないな…」
ジョナサン「ですが、たとえどんな小さなことでも今の僕には有意義な知識になります。ツェペリ教授の部屋を教えてもらえませんか…?」
教授「…………本当に会いたいのか?」
ジョナサン「はい。」
教授「…………………………」
教授「君ほどの生徒を彼には取られたくなかったよ………」
ジョナサン「?」
教授「ついてきなさい。私が案内してあげよう。」
ジョナサン「! ありがとうございます教授!」
教授「君の熱意には負けるよ。お金以外の相談なら乗ってしまいそうだ。」
教授「彼の研究室は三階だ。行こう。」サッ…
ジョナサン「はい!」バッ
教授とジョナサンは三階へ向かった。
教授「ここが、彼の部屋だ……それじゃあ失礼するよ。」タッタッ
ジョナサン「ありがとうございました。」バッ
ジョナサンは歩いていく教授に対して深々とお辞儀をした。
教授「………」スッ…
ジョナサンに背を向けている教授は左手をサッと上げた。
バッ
ジョナサン「……………」
トン…トン…
?「入りなさい。」
ジョナサン「は、はい。」
ガチャ…
ジョナサンが部屋に入ると、そこには口ヒゲを生やした男性が立っていた。
?「話は君の父親から聞いておるよ。ジョナサン君。」
?「私の名前はウィル・A・ツェペリだ。よろしく。」
ジョナサン「よろしくお願いします。」
ガシ
ジョナサンとツェペリは握手をかわした。
ツェペリ「………君はラクビーをしていたのかね?」
ジョナサン「え? ……た…確かに引退しましたけどラクビー部に所属していましたが…なぜそれを知っているんですか?」
ツェペリ「今握手をした時に感じたのだよ。」
ジョナサン「どういうことですか?」
ツェペリ「これは私が研究している人体学の技術の一つでね…“波紋”という技術だ。私が君に波紋を流し、感じたというわけだよ。」
ジョナサン「す…すみません……僕には一つも理解できないです………」
ツェペリ「………まあ、そりゃあそうか…波紋については後で話そう…とりあえず座って君の話をしよう。好きな所に座りたまえ。」
ジョナサン「では…お言葉に甘えて。」ザッ
ツェペリ「君は馬の研究をしているそうだな。なぜ馬の研究を?」
ジョナサン「兄弟のディオの夢のためです。少しでも馬の事に詳しくなり、彼をNo.1ジョッキーへとサポートしてあげたいんです。それが僕の夢でもあります。」
ツェペリ「ほう…なるほど。実に素晴らしい理由だな………」ガサゴソ
ツェペリはカバンの中から小さな弁当箱を取り出した。
そしてその箱を開け、中に入っているサンドウィッチにコショウをかけ始めた。
ツェペリ「それで…君の本当の夢は何かね…?」バッバッ
ジョナサン「?………え…えーと……今喋りましたが………」
ツェペリ「それが君の本当の夢ではないのは君が喋っている時の目で分かった。その目の奥ではそれを否定しておった…」バッバッ
ツェペリ「ヘブショッ!」
ジョナサン「……………………」
ツェペリ「どうかね? ジョナサン・ジョースター君………」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
ジョナサン「……………………」
ジョナサン「初対面の教授にまさかそんな事言われるとは思ってもみませんでした。ですが、僕は嘘をついていません。思った事をいったまでですよ。」
ツェペリ「………今はそれでもいいだろう。後に考え直す事になると思うがな。」
ジョナサン「では、馬の事について教えていただけませんか?」
ツェペリ「うむ…よかろう。」
ツェペリ「正直に言えば私は馬についてはそんなに詳しくはない。」
ジョナサン「え!?」
ジョナサン「ど…どういう意味ですか?」
ツェペリ「そのままだ。私の馬の知識は競馬ファン並みだと言うことだ。」
ジョナサン「…………………」
ツェペリ「だが…断言できる。学んでおいて損はないだろう。」
ジョナサン「何を学ぶんですか?」
ツェペリ「さっき私が実演した“波紋”だよ。波紋には人体のみならず、動物にも影響を与えるのだ。」
ジョナサン「…詳しく教えてください。」
ツェペリ「詳しく教えたいのはやまやまだが、あいにく私は今から出張でイギリスを出なければならんのだ。話は私が出張から帰ってからにしよう。」
ジョナサン「そ、そうなんですか………」
ジョナサン「………………………」
ツェペリ「………君がよければついてきても大丈夫だぞ? 旅費は私の方から出そう。きっとこの出張は君の良い経験になるはずだ。」
ジョナサン「え! よろしいんですか!」
ツェペリ「だが…私は君を優しく指導するつもりはない。きっと過酷な旅になる。こちらに帰ってくるのもいつになるかわからない。それでも構わないか?」
ジョナサン「………どんな事があろうとついていきます。」
ツェペリ「嘘偽りない目だな……本当についてくるのか?」
ジョナサン「はい!」
ツェペリ「……行き先はアメリカだ。長旅になるから支度をして明朝私の部屋に来なさい。そしたら出発しよう。」
ジョナサン「ア…アメリカ……」
ツェペリ「嫌ならついてこなくてもいいんだぞ。帰ってから話せば済むことだからな。」
ジョナサン「い…いいえ! ついて行きます!」
ツェペリ(私の思った通り…アメリカへついてくる人生を選んだか………)
ツェペリ(ジョナサン・ジョースター………この子の未来はどう転ぶのか……気になるのは私が老人になった証拠かな……………)
〜to be continued〜
今回はここまでです。
次回は来週土曜を予定しています。
今週の日曜投稿します。
[アメリカ・某港]
ジョナサンは父にアメリカへ行く事を伝え、船でツェペリ教授と共にディオがいるアメリカへやってきた。
ツェペリ「どうだったね? 長かった船旅は?」
ジョナサン「思ったより揺れなくて安心しました。もっと足元がふらつくのかと…」
ツェペリ「ハッハッハッ。こんな大きな客船だ。そんな簡単には沈まんよう設計されとるよ。」
ジョナサン「そうですか………」
ジョナサン(………本当にこの人についてきてよかったんだろうか………それもこんな大きな国で………………馬について教えてくれるのかな…? 僕はまだこの人を信用できていないのに…………)
ツェペリ「ジョジョ。そろそろ君に伝えておかなくてはならない事がある………」
ジョナサン「………な…なんですか?」
ツェペリ「この旅は長旅になると言っていたよな?」
ジョナサン「はい。そうおっしゃってました。」
ツェペリ「………実は…このアメリカで、君は私とともに三年間研究をする事になっとる。」
ジョナサン「…………………」
ジョナサン「え…?」
ジョナサン(さ…三年間……?)
ツェペリ「君の父親にはこの事は伝えておる。快く承諾してくれた。」
ジョナサン「そ…そんなッ!! どうして先にそれを言ってくれなかったんですか!!」
ツェペリ「ごめん。言うのが遅れちゃった。」
ジョナサン「遅れすぎです! ………三年間………………心の準備を整えてからアメリカに来たかったです……………」
ツェペリ「その代わり、その三年間で君にしっかりと教える事はできる。卒業の事は私がなんとかする。」
ツェペリ「君にとって素晴らしい環境じゃあないかね?」
ジョナサン「………………………」
ジョナサン(この人はとんだ変わり者だ………)
ツェペリ「そういえば、もう一つ言うことがあったのを忘れていた。」
ジョナサン「な…なんですか?」
ツェペリ「…7年前に事故で亡くなった君の兄、ニコラスはよく私に会いに来ていたと言うことを………」
ジョナサン「!」
ツェペリ「いや…事件とでも言うべきかな…?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ジョナサン「………に…兄さんが………教授に……?」
ツェペリ「そうだ。彼は“波紋”についてとても興味を示し、私の部屋を訪れた。そこで私は彼に波紋について色々と教えていたのだ。」
ツェペリ「だが、彼はあの事件で亡くなってしまった………私は思った。彼ほどの人間が事故で亡くなるはずがないとな…」
ツェペリ「目の前で見ていた君なら分かったはずだ。あれが事故ではないはずだということに。」
ジョナサン「………………………」
ツェペリ「この三年間で私は君にニコラスに教えきれなかった事も教えるつもりだ。これはニコラスの頼みでもある。」
ジョナサン「兄さんの?」
ツェペリ「彼はもしジョナサンが大学生になった時、色々と助けてやってくださいと言っていた。」
ツェペリ「その時の彼の目はとても優しかった。君の事を本気で心配していた。彼の思いを君がどう受け取るかは自由だ。」
ジョナサン「…………………………」
ツェペリ「どうするジョジョ?」
ジョナサン「………あの事件の真相は僕にも分かりません。証拠もありませんし………ですが…………」
ジョナサン「たとえ真相がどうであろうと、僕は兄さんが教えてくれた事を忘れず、兄さんが作ってくれた道を歩きたい………たとえその先が暗闇だとしても…僕は突き進みたい…………」
ジョナサン「今…しっかりと理解できました。僕はツェペリ教授にウソをついていました。僕の本当の夢は………」
ジョナサン「自分の人生を悔いなく生きる事だとッ!!」
ツェペリ「見事な答えだジョジョッ!」ズオオオオッ
ズバァオオッ
ジョナサン「うっ。」
ツェペリはジョナサンの腹めがけて小指を振り抜いた。
ジョナサン「な…何を………ゲホッ。」
ツェペリ「今、君には私の波紋を流し込んだ。感じないかね?」
ジョナサン「あ! こ…これはッ。」
ジョナサンは体が熱くなってくるのを感じた。そして、船旅で疲れていた疲労感が取れたようにも感じた。
ジョナサン「これが波紋………」
ツェペリ「波紋は色々な活用法があり、その一つに傷や疲労を回復させる効果があるのだ。」
ツェペリ「波紋の起源は一説には過去の人が吸血鬼と戦うために編み出した技術と聞くが、真偽は分からない。」
ジョナサン「マンガみたいな話ですね。」
ツェペリ「………そろそろ時間だな。ジョジョ、私について来なさい。」
ジョナサン「どこへ向かうんですか?」
ツェペリ「君がよく知っている男のところだ。」
[調教場]
パカッ
パカッ
男「どうだディオ。」
ディオ「この馬にしては遅いですね。レースの時はシャドーロールを付けて前方に集中させましょう。」
男「分かった。」
ザッザッ
ジョナサン「ディオ!」
ディオ「!! ジョジョじゃあないか!」
ジョジョとディオはハグをした。
ディオ「どうしてここに君がいるんだ!?」
ジョナサン「教授の出張についてきたんだ。三年間はこっちにいる事になった。」
ディオ「教授?」
ツェペリ「君がディオ君だね。名前はよく知っているよ。私の名前はツェペリだ。よろしく。」サッ
ディオ「え…ええ。よろしく。」ガシッ
ツェペリとディオは握手をした。
ツェペリ「……………………」
ツェペリ(この男………心の内に邪悪なものを秘めておるな………………黒すぎてこれ以上感じる事ができん。)
ジョナサン「ところで教授。ここに何しにきたんですか? まさかディオに会いにきたわけじゃあないですよね。」
ツェペリ「馬を借りに来たのさ。馬がいなければ教える事ができんからな。」
ツェペリ「厩舎はどちらかね?」
ディオ「馬を借りるのでしたら牧場の方がよろしいのでは?」
ツェペリ「いいや。厩舎で大丈夫だ。」
ディオ「そうですか………それでしたらこの先の大きな小屋がそうです。」
ディオ「そこにエリナもいるぞジョジョ。」
ジョナサン「そうか。ありがとうディオ。」
ツェペリ「では向かおう。」ザッザッ
ジョナサン「はい。また後でねディオ。」ザッザッ
ディオ「………………………」
[厩舎]
ザッザッ
ジョナサン「!」
ジョナサン「エリナ!!」
エリナ「え?」バッ
エリナ「!!」
ジョナサン「久しぶりだねエリナ! 元気にしてたかい!」
エリナ「ええ………元気よ……………どうしてここに…?」
ジョナサン「説明すると長くなるから後で話すよ! 君に会えて嬉しくて話せそうにもないんだ!」
エリナ「そう………」
ジョナサン「エリナ……? 冷たくないかい?」
エリナ「いつも通りよ。」
ジョナサン「そ…そうか。」
ツェペリ「君がここを管理しているのか?」
エリナ「そうですが………なんのご用ですか?」
ツェペリ「馬を2頭お借りしたい。構わないかね?」
エリナ「理由はなんですか?」
ツェペリ「私はイギリスの教授をしとるウィル・A・ツェペリだ。研究の一環でジョジョに馬について教えるためだ。オーナーには許可をもらっとるから安心したまえ。」
エリナ「そうですか。」
エリナ「……………………」
エリナ「では教授は…こちらの馬をお使いください。まだ2歳ですが、乗馬用の馬ですので落ち着いています。」
エリナ「ジョジョは………」
ツェペリ「彼にはあの馬がいいのでは?」
ツェペリが指差した方向には並みの馬よりもひと回りでかい馬がいた。
エリナ「あの馬は確かにジョジョの体格を乗せるにはピッタシの大きさですが、4歳の暴れ馬で競馬には向かない馬ですよ?」
ツェペリ「構わんさ。彼なら乗りこなす。」
エリナ「………それでは今から手続きと準備をさせていただくのでまた明日きてください。」
ツェペリ「分かった。」ザッザッ
ジョナサン「もう行くんですか?」
ツェペリ「とりあえず荷物を持ってホテルに向かおう。今日はもう出来ることがないからな。」
ツェペリ「それでは失礼。」ザッザッ
ジョナサン「じゃ…じゃあね……エリナ。」ザッザッ
エリナ「ええ。」
エリナ「……………………」
エリナ(ごめんなさいジョジョ……出来ることならあなたと会いたくなかったわ……………)
それからジョナサンはツェペリの指導のもと、波紋について学んだ。
どうやってジョナサンは暴れ馬に乗ったのか。三年間でどんな事を学んだのか。エリナの態度はなんなのか…その他にも分からない事があるだろうが、それは後の物語で語られる事となる。
そして、時代は1890年8月とうつりかわった。
ついに、アメリカ全土を舞台としたあのレースが近づいてきた。
〜to be continued〜
今回はここまで。
次回は来週土曜日を予定。
インフルエンザにかかってしまい、更新が遅れそうです。
申し訳ないです。
鉄球の黄金回転は出ますか?
>>82
それはまだ言えませんが、鉄球の存在自体は出そうと思っています。
[受付場]
受付の男「フゥー。」
受付の男はガラス張りの受付場の中で小指で耳をほじり、その手についたクソを息で吹き飛ばした。
ザッザッ
受付の男「!」
そこに二人の男がやってきた。
1人は奇妙なシルクハットを被った中年男性だった。どこか妙なオーラを放っていた。
その隣にいる男は身長190cm越えのデカイ男だった。体はゴツく、素手で人を殺せそうと受付の男は思った。
受付の男「受付ですか?」
中年男性「あぁそうだ。」
受付の男「そちらの方も?」
大男「ええ。そうです。」
受付の男「………えー…では説明の方をさせていただきます。」
中年男性「いいや、結構。私たちはすでに知っておる。」
受付の男「いいえ、規則ですので説明させていただきます。」
中年男性「………結構じゃ。」
受付の男「………では、まず」
中年男性「だから私たちは知っておるといっとるじゃろッ!」バンッ
受付の男「知ってても説明は受けていただきます!」ダンッ
中年男性「この分からず屋め!」
受付の男「分からず屋はどっちですか!」
大男「落ち着いてください二人とも。」
中年男性「冗談だ。安心したまえ。」
受付の男「…………………」
受付の男「参加料ひとり1200ドルは一度支払ったら個人的理由による返金はいっさいできません。2日後のレーススタートは天候や災害に関係なく開催されます。承諾なさるのでしたらここにサインしてください。」
受付の男「スタート当日に乗り手の指紋と出場する馬の鼻紋を採取します、一度記録されたら乗り手と馬の交換はルールによって認められないので気をつけてください。」
中年男性「サインをすればいいんじゃな。」カキカキ
大男「ええ。」カキカキ
“ウィル・A・ツェペリ”
“ジョナサン・ジョースター”
バタン
ジョナサンの肩に誰かがぶつかった。
?「おっと! すまねえ。大丈夫かいお兄さん。」
ジョナサン「大丈夫ですよ。」
?「そいつぁ良かった。」ザッザッ
ツェペリ「ちょいと待ちなそこの若いの。」
?「?」
ツェペリ「あんたの右ポケットの手をそのまま出してくれんか。そのままだ。」
?「……」
ジョナサン「どうしたんですかツェペリさん?」
ツェペリ「やつは今、ジョジョのお金を盗みおった。参加出来ないことになるぞ。」
?「何を根拠に言ってるんだァおっさん? その目って言うんならくさってるんじゃあねーかァ?」
ツェペリ「腐ってるのはどっちかな?」
?「なかなか言うじゃあねえかおっさん。根性あるぜ。」
?「だがな…舐めるのもいい加減にしろよ…?」
ツェペリ「こんな年寄り相手に脅しとは情けない男だ。」
?「うっせえ!! 黙ってろ!」バァァ
?はツェペリに殴りかけようとした。
ツェペリ「パゥ!」ビシィ
ツェペリは?の腹を殴った。
?「グオ!」
?(バ…バカな………おっさんとの距離はまだあるのに殴れるはずが………)
?(このおっさんタダ者じゃあねえ……このまま戦えばオレが負けるのは明白だ……今は退くしかねえ…)
?「さ…サイフは返してやる…! だがその顔覚えたぜッ……」
ダダダダダダ
ツェペリ「気をつけることだなジョジョ。何をされるかわからんぞ。」
受付の男「あの……参加料を支払ってもらっていいですか?」
ツェペリ「………空気の読めんやつじゃ。」
ツェペリとジョナサンは参加費を支払うと馬に乗った。
ジョナサン「…」チラッ
ジョナサンが横を見ると、建物の影にディオがいるのを見つけた。
ジョナサン「ツェペリさん。先に帰っといてもらっていいですか?」
ツェペリ「分かった。」パカッパカッ
ジョナサン「…………………」
ザッザッ
ジョナサン「ごめん。待たせたね。」
ディオ「突然すまないな。二人きりで話したかったんだ。」
ジョナサンは昨晩、ディオと電話でこの場所で会うことを約束していた。
ディオ「君もこの大会に参加すると聞いたときは驚いたよ。野望なんてないと思ってたから。」
ジョナサン「野望なんてないさ。単なる興味本位だよ。」
ジョナサン「この大会は各国から色んな人々がやってくる。僕はその人達から色んな知識を吸収したいんだ。」
ディオ「君らしいな。」
ジョナサン「今日は何の用だいディオ。馬の管理ならレース前までなら協力するよ。」
ディオ「それはダメだ。オレは君の力抜きでこの大会に優勝したいんだ。」
ジョナサン「じゃあなんだい?」
ディオ「………オレと賭けをしないか?」
ジョナサン「賭け…?」
ディオ「実は…君には言っていなかったんだが、オレとエリナは婚約を結んでいるんだ。」
ジョナサン「!!」
ディオ「驚くのも無理はないだろう。今回の婚約は父さんが勝手に決めたことだからな…」
ジョナサン「そ…そうか………」
ディオ「だが、ジョジョ。君はエリナの事が好きなはずだ。」
ジョナサン「!! い、いや…そんな事は………」
ディオ「隠しても無駄さッ。君がエリナを好きなのはイギリスの時からわかっていた。だからオレは悩んだ。このままエリナと結婚するのはジョジョに悪いと…」
ジョナサン「ディオ! それは違う! 君がエリナと結婚をしたいんなら僕は止める気はないッ。2人は結婚を望んでいるんじゃあないのかッ?」
ディオ「オレはその気だが…エリナはジョジョ、君のことが好きなようだ。」
ジョナサン「!」
ディオ「このままではオレもエリナも納得のいかないまま結婚してしまう…そこでだ。」
ザッ
ディオは右足は前に出し、ポケットから紙切れを取り出した。
ディオ「この大会で先にゴールへ着いた方がエリナにプロポーズするってのはどうだい?」
ジョナサン「プ…プロポーズ!?」
ディオ「この話はエリナにも話した。返事はOKだった。あとは君が乗るか乗らないかだ。」
ディオ「このままモヤモヤしたままエリナとは結婚したくないッ。ジョジョッ! わかってくれ!」ダン
ジョナサン「ディオ………」
ジョナサン「……………………」
ジョナサン「わかったよ。それなら僕は手を抜くつもりはない。」
ディオ「ありがとうジョジョ。これなら父さんも分かってくれるよ。」
ジョナサン「それじゃあ………」ザッザッ
ディオ「…………………ああ。」
ディオ「………………………」
ディオ(とことん馬鹿正直な男だ。負ける勝負をわざわざ受けるとは………ジョジョ…この大会でお前は二度と地面に立てなくなるのにな……………)
ディオ(オレがこのアメリカで何を思って生きてきてたと思ってる。ジョースター家の後継者であるジョジョ。きさまを兄のようにすることだけを思って生きてきたんだ。)
ディオ(この大会で、君との友情は終わりを告げるだろう………とても残念だよ………………)
[1890年9月25日10時前]
スティール・ボール・ラン開催当日、第1ステージのスタート場所には約3千人超のジョッキーが集まっていた。
そのジョッキーたちのスタートを我が先に見ようと様々な観客が現地を訪れ、会場は熱気がこもっていた。
ジョナサン「凄い人の数ですね…緊張してきました………」
ツェペリ「実は私もそう思っていたんだよ。」
ジョナサン「ツェペリさんがですか?」
ツェペリ「冗談さ。私が緊張するのは自分が死ぬ寸前ぐらいだ。」
ジョナサン「ハハハ!」
ジョナサン「!」パッ
ジョナサン「…」チラッ
ジョナサンが観客の方を見ると、そこにはディオをサポートするために来たエリナの姿があった。
エリナはジョナサンに気づくとジョナサンの方をじっと見ていた。
ジョナサン「エリナ……………」
エリナ「………………………」
エリナはなにが言いたげな表情でジョナサンを見続けている。
ツェペリ「ジョジョ、そろそろスタートだ。分かっているな…この大会の目的を。」
ジョナサン「は、はい。わかっています。」
ツェペリ「それを忘れるな。大会は二の次だ。」
ジョナサン「……………ええ。」
実況『まもなくアメリカ全土を舞台とした大規模なレース、スティール・ボール・ランの火蓋が切って落とされようとしています!』
実況『優勝候補にはイギリス人ジョッキーのディオ・ブランドーやアメリカ人保安官のマウンテン・ティム、エジプトから参戦のウルムド・アヴドゥルなどがいます。』
実況『他にも数多くの優勝候補がひしめきあっています。最後に表彰台に立っているのは誰なのかまったく見当もつきません。』
ゴソゴソ…
実況『え……あ、はい。どうやらスタートの準備が整ったようです!』
バァン!
ダッ
実況『今! スタートの合図とともに馬が駆け出した!!』
ダダダダダダダダダダダダ
ジョナサン「何とか先頭グループについて行こう。」ダダダ
ツェペリ「無理するなジョジョ。焦る必要はない。」ダダダ
実況『さあ! 各国のジョッキーが一斉にスタートしたッ!! まず先頭に立ったのは………』
ダダダダダダ
ダダダダダダ
ダダダダダダ
バッ!
実況『イギリス競馬界期待の星、ディオ・ブランドーだァーーーーー!!!!』
〜to be continued〜
今回はここまでです。
長い間待たせてしまいまして申し訳ございません。
次回はオリジナル展開です。
実況『先頭に立ったディオ選手は二番手グループと3馬身以上のリードをとりました。まだ序盤ですがここまで飛ばして大丈夫なのでしょうか。』
ツェペリ「このステージは総距離15km。他のステージと比べて圧倒的に短い。ここで1位のポイントとタイムボーナスを獲得すれば後のレース展開は楽になるだろう。」
ジョナサン「………ディオは目の前に誰か他の競争相手がいるのが嫌なんでしょう。人一倍負けず嫌いですから。」
ツェペリ「それもあるな。」
ディオ(来いよジョジョ…オレに追いついてみろ………)
ダダダダダダ
実況『依然先頭を走るのはディオ・ブランドー選手。まだ誰も仕掛けてきません。』
バッ!
実況『おっと! ここで1人二番手グループから抜けだしたぞッ!』
ダッダッ
実況『ウルムド・アヴドゥルだ!!』
アヴドゥル「予言しよう…キミはまもなくこのウルムド・アヴドゥルによって一番手ではなくなるだろう。」
アヴドゥルはディオの右後方におり、ディオに右手の人差し指を突き立てた。
ジョナサン「あ…あの男……何に乗っているんだ!?」
ツェペリ「これは珍しいな。」
実況『なんと乗っているのは馬ではなくラクダッ!! なぜこんなに早いんだ!?』
ツェペリ「ラクダはゆっくり歩くイメージがあるが、走ればそのイメージとは異なりとても速い。足が長いからその一歩の大きさは馬の二歩三歩に匹敵する。そして暑い砂漠を歩き続けるスタミナもある。まさにこのレースにはピッタシの動物だ。」
ディオ「……………………」
ディオ「このオレに挑戦してきた事は褒めてやろう。だが!」ダダダダダダ
ビシッ
ディオはアヴドゥルに左手の人差し指を突き立てた。
アヴドゥル「!」
ディオ「お前がこのオレの前に立つことはない。予言しておこう。」
アヴドゥル「…………………フッ。」
アヴドゥル「占い師のわたしに予言で闘おうなどとは、10年は早いんじゃあないかな。」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
アヴドゥル「キミの事はよく知っているぞ。ジョッキーである事や数々の賞レースを総ナメにしているのも……普通の人なら誰でも知ることができる情報だ。」
ディオ「………………」
アヴドゥル「だが、ワタシはキミの内面についても知る事も出来る。ワタシの職業柄だがね。」
ダダダダダダ
アヴドゥル「ワタシの占いによると………」
アヴドゥル「キミは相当のゲス野郎と出ているな。」
ディオ「…………」
ディオ「オレが? とんでもない。自分自信を占ってしまったんじゃあないか…?」
アヴドゥル「どうやら占いは的中してしまったようだ。」ニヤッ
ダバッ
実況『おおっとッ!! ここでアヴドゥル選手がペースを早めたッ! 先頭を走るディオ選手との差が縮まってきたぞーーーーーッッ!!』
アヴドゥル「きみは油断をしやすい……というより詰めが甘い………」
アヴドゥル「最後の最後にとんでもないミスをすると私の占いには出ているな。」
実況『ついにアヴドゥル選手がディオ選手を抜くのかーーーーーッ!?』
ディオ「あと少し………」
ディオ「あと少し……夢を見させてやろうとおもったが、予定変更だ。」
アヴドゥル「なにィ?」
ディオ「オレは例えレース相手が良いやつでも悪いやつでも態度を変えた事はない。それはオレが全ての人を見下しているからだ。」
ディオ「おまえもその内の一人………つまりオレはおまえごときに油断はしないと言うことだ。」
バァン
ディオはシルバーバレットの尻を大きく叩いた。
シルバーバレット「ヒヒィ〜〜!!」
ガッ
シルバーバレットは前足を大きく踏み込んだ。
ドヒュッ
グリィ…
シルバーバレットが踏み込んだ時、近くにあった小石が大きく弾かれ、アヴドゥルが乗っていたラクダに直撃した。
ラクダ「グヘェヘェェェ。」
アヴドゥル「バ…バカなッ…!!」
アヴドゥル(そ…そんな事があってたまるか……こんな偶然が…………)
ディオ「これで…きみはオレに倒された敵の一人になったな……光栄に思うがいい。」
実況『おっと? どうしたのでしょうかアヴドゥル選手。ここで大きく後退していきます。なにかラクダにトラブルが発生したのでしょうか?』
実況『そして! アヴドゥル選手が大きく後退した事によって! ディオ選手が再び後続との差を大きく広げたゾーーーッ!』
実況『しかしそう簡単に逃げ切ることはできません。このステージの最初の難関が彼らの前に立ち塞がります。』
ディオ「!」
ディオの目の前には先が見えないほどの枯れた木々が生い茂っていた。
ディオ「この中を進んでいくのか………面白い。」
ダッ
実況『ディオ選手は迷う事なく森に突っ込んでいったぞ!!』
アヴドゥル「くっ!」
ツェペリ「おやおや…こんなところまで後退してきてしまったのかね。」
アヴドゥル「……………」
ツェペリ「それでは。先を失礼するよ。」
ポカッポカッ
ツェペリはアヴドゥルを追い抜き、アヴドゥルの前を走る。
ツェペリ「お! そうだ。一つ言い忘れておった。」
アヴドゥル「?」
ツェペリ「きみはなかなか疲れてるとわたしは見た。ここでゆっくり休んでいてくれ。」
バリッバリッ
スクスクスク
アヴドゥル「な、なんだとォーーーーッ!!」
ツェペリが通った箇所から突然若々しい茂みが現れた。
アヴドゥル「よ、避けれないッ!!」
バリバリバリ
ドッサァー!
アヴドゥル「あ…あの人はいったい何者だ…?」
ツェペリ「若さとは常になくなっていくものだ。あまり無理してはならんぞ。」
実況『な、なんとーッ!! ここでアヴドゥル選手が突然の落馬………落馬…?………な、なんと言えばいいのでしょうか?』
実況『と、ともかくアヴドゥル選手がここで脱落ーーーーッ!! 優勝候補が早くもリタイアだーーーーーーーッ!!』
アヴドゥル「………………」
パカッパカッ
アヴドゥルの横を通るジョナサン
ジョナサン(ん? あそこだけやけに若い茂みがあるな………ツェペリさんがやったんだな……………馬を通して波紋を流し、枯れた茂みを若返らせたんだ。)
ジョナサン(僕もそろそろペースを早めないと………)
パカッパカッ
パカッパカッ
パカッパカッ
ジョナサン「…………………」
?「…………………」
??「…………………」
???「……………………」
????「……………………」
ジョナサンの後ろの方で四人の男たちが馬に乗りながら集まっていた。
まもなくジョナサンはディオたちが突入していった森の中に入ろうとしていた。
ポカッポカッ
?はジョナサンの横に並走するように走っていた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
ジョナサン「…………………」
?「……………あんた……ジョナサン・ジョースターかい?」
ジョナサン「! どうして名前を……」
?「前に見さしていただいたじゃあないですか………財布の中に書いてあった刺繍で………」
ジョナサン「!! き…きみはこの前の!!」
?「言ったでしょ……顔は覚えたってなーーーッ!!」
男たち「ヒャッハァーーーー!!」
?「おまえらッ。やるのは森の中に入ってからだ!! 森の外じゃあ誰かにばれちまうからなー!」
ジョナサン「ま、まさかこんなところで再び出会うなんて!」
?「最後に名前だけ語らせてもらうがよォ………」
SPW「オレの名前はスピードワゴンッ。冥土の土産に覚えていきなッ! 貴族の甘ちゃん!!」
〜to be continued〜
散々待たせたあげく、今回は短くなってしまいました。
次はもう少し長く、早めに更新します。
アヴドゥルとアブドゥルってよくごっちゃになるよな
日本語的にはどっちも同じ意味らしいけど
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