魔女「何か悲しいことがあったのか?」俺「え?」 (71)

 この世界には世間一般に認知されていない神秘がある。
 それは魔術、錬金術、超能力、霊能力などと呼ばれる存在だ。俺はその中の内、魔術を探求する魔術師である。

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 魔術は素晴らしいものだ。近い方を誤れば世界や人間に多大なダメージを与えてしまうが、正しく学び、正しく扱えば世界の神秘に近づく事が出来る。そして何より.....。
格好いい。
 そう、魔術や超能力の存在を知らない者にとってその力はアニメやゲームの世界のものでしかない。中学一年までならその力を信じていてもいいのだが、中学二年生からは病気認定されしまう。
 誰もが一度は通る道、カメハメハを撃ちたいと思った事のない人間は少ないだろう。それほどの強い憧れを持たれる異能力。俺はその存在を確かに知っているのだ。

 五年前の冬に出会った一人の魔女。その魔女が魔術の存在を明確にしてくれた。
 俺はその魔女にもう一度合うため、その日から欠かさず魔術の鍛錬を行っている。具体的には高校入学時から所属部員が一人も存在しなかったミステリー研究部に入部し、自ら部長を行う事でミステリー研究部の部室を密かに魔術の研究室とした。
 所属部員は未だに俺一人。魔術師というのは孤独と相場は決まっているので大した問題ではない。学校で厨二病と罵られようが、可愛い女の子から軽蔑の眼差しを送られようが大した問題ではないのだ。
 全てはもう一度あの魔女に会うためなのだから。

 ?「何か悲しいことがあったのか?」
 ショタ俺「え?」
 突然の声に顔を上げると着物を着た一人の女性が立っていた。
 女性とは言っても顔立ちはまだ幼く、高校生くらいと見て取れる。白い着物に絹の様な長い黒髪。雪の中に立つ姿は雪女が出たと勘違いしても可笑しくないくらい綺麗だった。
 ?「泣いていたんだろう?」
 ショタ俺「ち、違う」
 もうすぐ中学に上がるのに泣いているなんて言えるはずもなく、慌ててそう嘘をついた。
 ?「ん?外傷は無いんだ、痛いのは心とやらじゃないのか?」
 ショタ俺「そういう意味じゃない、泣いてないって言ってるんだ」
 ?「そう」
 着物の女は興味もなさそうに呟くと隣に座ってきた。

 ショタ俺「‥‥いいのかよ、着物汚れるぜ?」
 雪の積った神社の石段に着物で座るなんて普通はあり得ないだろうと声を掛けたのだが、別に構わないと言ってタバコを吸い始めた。
 ショタ俺「あんた歳いくつだよ?」
 ?「さあ」
 ショタ俺「さあ。じゃねえ、お前どう見ても未成年だろう」
 ?「深夜徘徊してるお前に言われたくない」
 ショタ俺「‥‥ッ」
 言い返したいが尤もだ。それでも言い訳をしないこいつは少し不思議な感じがした。
大人はいつだって理屈を捏ねてはぐらかすのに。

 ?「お前、家が無いのか?」
 ショタ俺「いきないり何を言いやがる!あるに決まってるだろ!」
 ?「じゃあ家出ってやつか?」
 ショタ俺「‥‥だったら何だよ。親なら心配してないぜ、だから別に誰にも迷惑はかけてない」
 ?「そうか、でもこの季節に野宿はきつくないか?私は寒いのが嫌いだからな」
 ショタ俺「あんたやっぱりずれてるよ。普通は子供の心配をしない親なんているはずないって言うぜ」
 ?「知らないよ、お前がそう言ったんだからそうなんだろう?」
 何なのだろう、こいつは常識を知らない奴なのだろうか。着物がよく似合って、いかにも育ちの良いお嬢様みたいな奴なのに。

 ショタ俺「なあ。あんたは魔法とか超能力を信じるか?」
 少し気を許してしまったのか、唐突にそんな質問を投げかけてしまった。
 ?「信じるも何も、実際にあるだろう」
 着物の女は表情一つ変えずにそう即答した。
 ショタ俺「‥‥あるって、魔法が?」
 ?「お前の言っている魔法ってのは科学で証明できない現象を起こすことを言っているんだろう?それなら存在するよ」
 ショタ俺「どうしてそう言い切れるんだよ?どんな現象だって科学者は理屈を付けて証明してくるぜ」
 ?「お前は科学者が嫌いなのか?」
 ショタ俺「ああ、大嫌いだ。理論なんてくだらない」
 全ての出来事に理由や理論を付けるというのが許せない。何の理由も無く起こる現象だってあって欲しい。理屈じゃないんだって分かって欲しい。

相撲部屋かっていうくらいギッチギチだな

 ?「そうか、なら科学で証明できない現象をお前が起こしてやればいい。
 ショタ俺「え?それってどういうことだよ」
 ?「魔法使いになればいい。正しく言うなら魔術師だがな」
 ショタ俺「‥‥魔術師って、なれるものなのか?」
 ?「さあな。本来ならなろうと思ってなるものでもないし」
 ショタ俺「さあなって、どっちだよ」
 ?「それを決めるのはお前だろう?魔術の存在があるって言うのは教えたんだ、なれないならなれないで諦められるなら、ならない方がお前のためだ」
 ショタ俺「あんたは魔術師なのか?」
 ?「私は魔術師じゃないよ」
 ショタ俺「それじゃ説得力無いだろう」
 ?「別に説得しているつもりはないのだがな。私は魔女であって魔術師ではない」
 そう言って女は立ち上がり、着物についた雪を払っている。

>>8そうなんだよ。昔に書いたデータ見つけて、暇だから始めたら文章堅苦しいしギッチギチだしで早くもつらい。
本編入ったら意外と砕けるんだが、まじつらい

>>8
普段から活字読んでるなら大して気にならんよこの程度なら

 ショタ俺「魔女って、魔術師とは違うのか?」
 ?「ああ、そもそも人とも違う。‥‥さて、私はそろそろ帰るよ」
 ショタ俺「ちょっと待てよ!魔術、使えるなら見せてくれ」
 石段を下りようとする女を引き止めて俺はそう言った。
 ?「魔術を見せろ?贅沢な奴だな。私はお前が期待するような魔術は持ってないぞ」
 ショタ俺「何でもいい、頼むから見せてくれ」
 ?「‥‥はあ。他人の人生に干渉するのは好きじゃないのだが、場所も場所だしあいつの影響だな」
 ショタ俺「何を訳の分からないことを言って‥‥え?」


縦に長くてもいいからスペースを開けてくれぃ!

せっかくの良SSなのにみんな離れちゃう!

 さっきまで黒かった髪と瞳の色が変わっていた。髪は雪のような白銀色に、瞳は宝石のように透き通った桜色。
 吸い込まれそうだった。
 この世にこんな綺麗な生き物がいるのかと。
 ?「おい、何とか言ったらどうだ?」
 その現実離れした姿に見入っていると着物の女はそう声をかけてきた。
 ショタ俺「‥‥ああ。綺麗だ」
 俺はそれしか言うことが出来なかった。凄いとかより綺麗だと、そう思った。
 ?「それはどうも、お前に見せられるのはこれだけだ。まあ、正確には魔術ではないのだが、これで勘弁しろ」
 そう言うと色素の抜けた髪が再び黒く染まっていった。
 ?「それじゃあ、私は家に帰るよ。お前も帰る家があるのだったらそこへ帰れ。流石にここで寝たら凍死する。縁があったらまた会うだろうさ」

>>11凄いな、俺は既に頭が痛い

>>13了解。もうちょっと広く使うわ

ありがとう!

 既に瞳の色も元に戻っていた。
 女は俺に背を向けて去ろうとする。

 ショタ俺「なあ、あんた名前は?」

 聞くべきかどうか悩んだが、どうしてもこの女の名前を知っておきたかった。

 ?「‥‥魔女。お前は?」

 少し言い淀んだが予想に反してちゃんと答えてくれた。

 ショタ俺「俺は、俺。魔女の名字は?」

 魔女「それは秘密だ」

 そう言って魔女は着物の裾も気にせずにゆっくりと石段を下りて行った。

 肌を刺すような寒さで目が覚めた。十一月の下旬んでこの寒さなのだから、十二月になったらどれだけ冷えるのだろうかと考えてぞっとする。

 この部屋には暖房器具がひとつもない。もちろん冷房器具も無いのだから、冬は寒く夏はうだるような暑さになってしまう。

 高校に上がってからはこの六畳一間、トイレ風呂付きのボロアパートに一人で住んでいる。

 テレビの電源を入れてみたが特に見る訳でもなく、ただニュースキャスターの声を聞いているだけだ。つまりただの日課である。

 寝癖を直し、制服に着替える。

 ふとテレビに目を移すと、この近所での事件が報道されていた。事件と言っても殺人事件や放火という内容ではなく、民家で飼育されていうる犬が盗まれるというものだ。

 別にニュースで放送するほどの事件じゃないだろうと思ったが、十一月の初め頃から十件以上も被害が出ているらしい。

 犬なんか盗んでどうするのだろうか。ペットショップに売るのでは足が付いてしまうだろうし、自分で飼うには多すぎる。もしかして食べるのだろうか。などと寝起きのぼんやり感が取れない頭で考えてみた。

 今の時間は七時半、このアパートからがっこうまで二十分程掛かる。この距離でバスを使うのも金銭的にバカらしいため、毎日徒歩で通っている。

 中身の入っていない通学鞄を抱えて家を出ると冷たい風が頬を刺した。そろそろマフラーを使おうかとも考えたが中に取りに行くのも面倒だからやめた。

 俺の住む部屋は二階の突き当たり、205号室。角部屋だからといって特別家賃が高い訳でもない。


 アパートを出て真っ直ぐ大通りに出てしまえば後は坂を登って一本道で学校に着く。
そのために朝のこの時間は通学途中の生徒で賑わっていた。

 男女のペアで登校する生徒を横目にふあっと欠伸をした。


 女「でっかい欠伸ね、また夜遅くまで厨二病が発症してたんじゃないの?」

 本日最初に掛けられた言葉がこれとは気が滅入る。それもこんな朝早くに。

 俺「ふん、勝手に言ってろ。厨二病、厨二病ってもう聞き飽きたし慣れちまったよ」

 女「そんなこと言ってるから彼女できないのよ」

 俺「胸なし色気なしのお前に言われても説得力ねえよ」

 女「胸は関係ないでしょ!」

 俺「‥‥ッ!!」


 いきなり後頭部に衝撃、こいつバッグで殴りやがった。

 いや、それはいい。それよりそのバッグ。


 俺「‥‥おい。それ辞書入ってるだろ?」

 女「え?ああっー!

 俺「ああっー!じゃねえ!」


 くそ、朝からとんだ災難だ。

 こいつは俺と同じクラス、二年五組の女。高校一年からの付き合いで俺のことを厨二病と言うのが趣味。

 ちょっと癖毛の黒髪でショートカットと言うのだろうか、最近流行のボブヘアーとかいうやつなのかもしれない髪型をしている。

 小柄な体系で貧乳だ。


 女「‥‥ごめん、辞書入れてるの忘れてて思い切り叩いちゃった」

 こいつはがさつな癖にやり過ぎると急に元気がなくなる。

 まあ、ちゃんと悪いと思っている証拠なのだから長所と言えるだろう。


 俺「ああ、大丈夫だ。確かに俺も本当のことをストレートに言い過ぎた。悪かったよ」

 女「うん、ごめんね。ん?‥‥本当のことってなによ!」

 俺「お前突っ込み遅いぞ」

 女「うるさい!」

 こいつを元気に戻す方法はちょっと悪口を混ぜてやればいい。そうすればいつものやかましい女に戻るのだ。

 女「それで俺くん、魔術は習得できたのかしら?」

 こいつ、普段は使わないくせにこういう時だけ、かしら?とか使ってきやがる。嫌みタラタラじゃないか。


 俺「‥‥む、今はまだ習得にあたる基礎の段階だ。そんな簡単に魔術師にはなれねーんだよ」

 女「基礎の段階が二年近く続いていますけど?」


 こいつは俺が高校に入学した時から計算しているが、正確には小学六年の冬からだから五年近く続いている。


 俺「お前も良く飽きずに俺を馬鹿にし続けられるよな?もう二年近いぞ」

 女「これが学校に来る楽しみの一つだからね」


 ‥‥まったくいい迷惑だ。

 女「男くんも普通にしてれば結構女子からモテそうなのに。顔だってそんなに悪くないし、本当に信じられないけど一年の時からずっと成績学年トップだし」

 俺「‥‥信じられないは余計だ」

 女「だってオカルト研究部の部長で、変な呪文唱えたり模様書いたりしてる厨二病が学年トップなんて普通信じられないでしょう?」

 俺「お前それ偏見だぞ。そういう奴だって一生懸命勉強してるかもしれないだろう?」

 女「俺くんはしてないでしょ?」

 俺「ああ」


 そう、俺は頭がいいのだ。大して勉強しなくても何故か学年トップを取れてしまう。

 魔術の勉強は死ぬ程やっているのに全く芽が出ないのだが。

 女「はあー、もうすぐ期末テストか。気が滅入るなあ」

 俺「もうすぐって。まだまだ先じゃねーか」


 期末テストは十二月の15日あたりからだからまだ半月以上もある。

 女「馬鹿にとっては先じゃないの!」

 俺「お前馬鹿なのか?」

 女「うん」

 俺「どれくらい?」

 女「赤が出そうなくらい」

 俺「末期だな」

 女とは結構な確率で登校時に遭遇する。別に待ち合わせているとかではなく、単にタイミングがいいのだ。

 いや、正確には悪いのだが。

 
 しばらく女と馬鹿な会話をしている内に学校が見えてきた。学校に近づいてくると生徒の数は極端に増える。
 そのため、女と一緒に登校している姿も多くの生徒に目撃されてしまうことになる。


 俺「おい女、そろそろ離れて歩け」

 女「えー」

 俺「えー、じゃない。変な噂立てられたくねえだろ?」

 女「私は別に噂なんてきにしないのにな」

 不満があるようだったが素直に離れてくれた。この辺女は物分かりがいいのだ。

 登校の途中で女と遭遇しても、学校が近づいてくると離れて歩くようにと言っている。

その理由は付き合っているとかの噂を立てられたくない、という理由ではない。

俺は学校であまりよく思われていない生徒なのだ。


 イジメとまではいかないが、陰口や他生の嫌がらせはある。それが女にまで及んでしまうのは非常に困るのだ。

 俺自身は何を言われようがされようが気にしないのだが、女は違う。

 あんな女でも一年から変わらずに付き合ってくれる唯一の友人なのだから、傷つけるわけにはいかない。


 友人が欲しいと思ったことは無い。


 それでも、一度手に入れたものを失うのは怖いと思う。

 ぼんやりとした意識のまま、力無い足取りで少女は帰宅した。


 柱は腐り、神を祭ることをやめた社の縁の下。

 そこが少女の家である。


 泥だらけのジャンパーに無理矢理破って裾を合わせたジーンズ。
 両足で色もサイズも違うスニーカー。

 何日も洗っていないせいでぼさぼさになった髪。

 その姿はどう見ても浮浪者で、十代の女の子がする格好とは到底思えはしないだろう。


 少女は身体を丸めて社の床下に潜り込む。

 何かが腐ったような臭いが充満しているが、少女にはそれが自分の身体の臭いなのか周囲の臭いなのかも分からない。

 少女「‥‥お腹、減ったなあ」

 そう呟いて、最後にご飯を食べたのは一昨日の朝方だったことを思い出した。


 暖かい季節なら外で眠ることも苦にならない彼女だが、この季節の冷たい風は少女の身体には辛いものがある。


 少女は一年の中で冬が一番嫌いだ。食料も少なく、何より寒い。

 深夜に町へ出て拾ってきたジャンパーだけが少女の身体を温めてくれる唯一の防寒具である。


 少女「‥‥もう寝よ」


 今の時間は午前十一時。普通は眠る時間ではないが、空腹を紛らわす一番の方法は眠ってしまうことだと彼女は知っている。


 少女「おやすみなさい」


 もう何年も人と会話をしていない彼女だが、眠る前には必ずひとりそう呟く。


 ‥‥人の言葉を、忘れないようにと。


 放課後、いつものようにオカルト研究部の部室に入ると女がパイプ椅子に座ってパソコンに向かう姿が目に入った。

 俺「‥‥お前。入部するのか?」

 女「する訳ないでしょ。ちょっとパソコン借りようと思って」


 もちろんそんなことは最初から分かっていのだが、一応聞いてみた。

 女は時々インターネットをしにオカルト研究部の部室に来ることがある。

 普段は俺が来るまで無人のはずの部室に人がいるだけでも正直びっくりしてしまう。


 ‥‥何しろ、雰囲気作りのために窓を全て黒いカーテンで遮光してあるのだから本当にびっくりするのだ。

 パソコンの明かりでライトアップされた女性との顔は、それはそれは不気味である。

>>30 ありがとです!

 俺「電気くらい付ければいいじゃねえか」

 女「それよりカーテン剥がすのが先でしょ」

 俺「‥‥」

 女がカーテンを開けるではなく、剥がすと言ったのは間違いではない。
 この部屋のカーテンは窓の縁をガムテープで止めてあるのだ。

 だから剥がすで合っている。


 俺ははあ、とため息をついて部屋の電気を付けてやった。


 俺「それで、何を調べてるんだ?」

 女「呪いの解呪方法について」


 俺「‥‥は?」

 こいつから真顔で呪いなどという単語が出るとは思わず、そんな気の抜けた反応をしてしまった。


 女「‥‥だから呪いよ!」

 俺「‥‥」

 女「白い目で見るな!」

 俺「お前はいつもこんな目で俺を見ているぞ」

 どうだ、これで少しは俺の気持ちがわかったか!と勝ち誇った顔をしてやる。

 女「何よ、そのしてやったり!みたいな顔は!」

 俺「お前馬鹿なのによく分かったな」

 女「うっさい!こっちは真剣に悩んでるんだ!」


 真剣に呪いについて悩む高校二年生‥‥、なかなかに痛いな。

 俺はいつもこんな風に見えているのか。

 俺「なんだお前、誰かに呪いを掛けられたのか?普段から他人を馬鹿にして生きてるからこういう目に遇うんだ」

 女「私が馬鹿にしてるのは俺くんだけよ!それに私は呪いなんて掛けられてない!」


 ‥‥堂々と言うな。いつか俺に呪われるぞ。


 俺「じゃあお前が呪いを掛けたのか?馬鹿な奴だなあ。人を呪わば穴ふたつと言ってだな」

 女「それも違う!」

 俺「なんだよ、訳のわからねえやつだな」

 女「あんたが話をややこしくしてるんでしょ!」


 うん、もっともだ。

 俺「分かった分かった。ちゃんと聞いてやるから話してみろ。そういうのについて俺は専門家だからな」

 女「‥‥上から目線なのと、妄想入りまくってるのが気に食わないけどいいわ。呪いを掛けられたのは三組の辻さん。掛けられたのは美智子よ」

 俺「美智子だけクラスの説明が抜けてるぞ」

 女「同じクラスでしょ!」


 ‥‥そんなの知るか。俺が名前を覚えてるのはお前だけだぞ。


 俺「おう、美智子な」

 女「‥‥あんた絶対誰だか分かってないでしょ」

 俺「ああ、でもいいのかよ?呪いを掛けられた方の須田さんは被害者だから名前教えても問題無いだろうけどさ、加害者の美智子まで俺に言っちまって」

 女「呪いを掛けられたのは辻さんね。須田さんって誰よ。まあそれなら問題ないわ。あんた話す相手いないじゃない?もしいたっていつもの厨二病だって言われて相手にされないし」

 俺「お前、相談相手にすげー失礼なこと言うのな。事実だけど」

 女「肯定しないでよ!何か凄く悪いこと言っちゃった気分になりじゃない!」


 ‥‥どう考えても凄く悪いことを言ってるだろ。

どっちも掛けられてんぞ

 俺「まあ、お前が話してくれるだけで俺は十分だからな」

 女「えっ?あ、ありがとう」

 俺「照れてねえでさっさと続きを話せ!」

 女「べ、別に照れてない!あんたが話の腰を折ってるんでしょ!」


 まあ、そうだな。


 俺「で?解呪の方法を探してるってことは、呪いは成功しちまったんだな?」

 女「え?うん。美智子が呪いを掛けた次の日から辻さん高熱で休んじゃって。それで美智子が自分のせいだって思いつめちゃってるの」

 俺「それってただの偶然じゃねえのか?よくあることだろ。そういうタイミングんで本当に熱がでるとか」

 女「私もそう思って美智子に言ったんだけど、この呪い最近ネットで噂になってるみたいで、それで私も調べてみようと思ったの」

>>37マジだ、ありがと

 掛けたのは美智子、掛けられたのは辻さん

古傷が痛む……

 俺「噂?」

 女「うん、美智子も友達から聞いたって言ってたし」

 俺「とりあえずネットで調べてみるか」

 女「うん」


 そう言ってさっきまで女が調べていたページを二人で読むことにした。

 そのページには藁人形についての呪いの掛け方、解き方が書いてある。


 俺「美智子が使った呪いって藁人形なのか?」

 女「え?知らない」

 俺「‥‥おい、方法聞いてないのかよ」

 女「うん」

 俺「‥‥‥‥‥」

 ‥‥駄目だこいつ。真性の馬鹿だ。

 俺「まあいい。で、何で藁人形なんだ?」

 女「最初に出てきたのをクリックしたら藁人形だったから」


 ページの上を見てみると、検索ワードは『呪い』だけだった。


 俺「お前が呪われろ!」

 俺は思わずそう叫んでしまった。

 女「‥‥だって呪いとか信じてなかったから分からないんだもん」

 女は頬を膨らませて拗ねている。

 俺「‥‥はあ、とりあえず美智子にメールしろ。どんな方法で呪いを掛けたのかと、知ってるなら噂になってるサイトのURLを教えろって」

 女「うん、わかった」

 素直に頷いてメールを打ち始めた。

 女のメールを打つスピードは大したもので、一分も掛からずに打ち終えてしまった。

 俺「お前メール打つの速いな」

 女「え?別に普通でしょ。友達とかとメールしてれば速くなるし」

 俺「だから俺はメール打つのが遅いのか」

 女「メールとかしなそうだもんね。‥‥そう言えば、俺くんってアドレス帳に何人くらい登録してあるの?」

 俺「一人だ」

 女「‥‥は?」

 俺「だから一人」

 女「‥‥もしかして私だけ?」

 俺「ああ」

 女「なんか、ごめん」

 俺「気にするな」

 >>40俺はこれいつかこれを投稿したことが古傷になりそうで怖い

 そう、俺の携帯には女のアドレスしか入っていない。

 だが俺は思うのだ。アドレスの登録数が友達の数ではない。

 そして友達というのは量より質が大切なのだと。


 女「ちょっと携帯見せてもらっていい?」

 俺「ああ」

 女に携帯を差し出すと慣れた手つきで俺のアドレス帳を開いていく。

 女「うわ、本当に私しかいない」

 俺「だからそう言ったじゃねえか」

 女「‥‥あれ?」

 俺「どうした?」

 女「私アドレス変更のした後俺くんにメール送ってないんだっけ?

 俺「アドレス変更?」

 女「うん、これ前のアドレス。今は送れない」

 俺「‥‥」

 女「‥‥」

 アドレスがゼロになる瞬間がやってきた。

 俺「女様、宜しければ私めにメールアドレスを教えていただけませんでしょうか?」

 そう言って俺は女に全力で土下座をした。

 流石の俺も登録人数ゼロといのは耐えられない。携帯持つ意味ねえじゃん?となってしまう。

 女「そんなお願いされなくたって教えるわよ!単に私のミスなんだから!」

 俺「おお!ありがとう。お前はやっぱりいい奴だ!」

 女「アドレスくらいでそんな大げさな」

 俺「一とゼロの差は一と百より大きな差があるんだぜ」

 女「‥‥無茶苦茶だけど、あんたが言うともの凄く説得力あるわね」

 俺「よし、お礼にジュース買ってきてやるよ。俺の驕りで。何がいい?」

 女「わっ!ありがとう!暖かいレモンティーでよろしく」

 俺「了解」

 購買部の自販機で飲み物を買って部室に戻ってくると美智子からメールの返信が来ていた。

 メールの内容に呪いを掛けた方法は書かれておらず、URLだけが書いてある。

 俺「女、このURL打ち込んでくれ」

 女「うん」

 女はパソコンに向かい、URLを打ち始めた。が、そのスピードは携帯の時と打って変わってかなり遅い。

 女「‥‥あれ?えっと、ここか」

 キーボードを見ながらたどたどしく打ち込んでいく。

 俺「‥‥おい」

 女「なによ?」

 俺「さっき携帯でやった高速タイピングはどこにいった?」

 女「私パソコン持ってないもん」

 俺「‥‥はあ。代われ」

 そう言うと女はむっとした顔で俺に席を譲ってきた。

 女の携帯に送られてきたURLを打ち込み、サイトにアクセスすると黒の背景に白の文字で書かれたページが開かれる。

 女「これじゃない?あなたにも使える簡単魔術」

 俺「一つしか開けるページがないのに、これじゃない?とか言ってんじゃねえよ」

 トップページの背景には赤い魔法陣らしきものが描かれている。その真ん中に一つだけ開けるページがあるだけだ。

 俺「おい、どうした?」

 女「‥‥え?何でもない。ちょっとこのページ見てたら気持ち悪くなってきただけ」

 俺「確かに不気味な演出してるからな。俺もよく魔術関連のページは見るけど、大抵はこんな感じの作りだよ」

 女「‥‥そうなんだ。それより早く次のページ見ようよ」

 俺「ああ」

 真ん中にあるリンクをクリックすると呪いを掛ける手順が細かく説明されているページになった。

 術の発動に必要な道具の紹介から魔法陣の描きかた。よく俺が見る魔術関連のサイトと似たようなものだ。

 俺「紹介されてる呪いはこれしかないから美智子が使ったのはこの方法ってことだな」

 女「うん、それより解呪の方法は載ってないの?」

 俺「ちょっと待て、探してみる」

 ページを下までスクロールしても、載っているのは術の効果と使用方法だけだった。

 俺「駄目だ、載ってないっぽいな」

 女「‥‥そんな」

 俺「そんなに落ち込むなよ。それにまだ呪いが本物だなんて証拠はないだろう?」

 女「‥‥でも、このサイト何だか不気味だよ」

 俺「だから雰囲気出るようにそう言う色使いで作ってあるんだよ。むしろこういうサイトの方がインチキ臭いぜ」


 ‥‥まあ、今まで試してインチキでなかったサイトはないのだが。

 女「じゃあ手詰まり?」

 女は不安そうな顔で俺を見る。

 こいつは他人のことを自分のことのように考えてしまう癖がある。
 それは女が優しい女だという証拠なのだが、俺からすると少し自分を蔑ろにし過ぎではないかと心配になる。

 俺「いや、とりあえずこれが本物なのかどうか確かめてみる」

 女「確かめるって、誰かを呪うってこと?駄目だよそんなの!本当に本物だったら取り返しのつかないことになるかもしれないんだよ!」

 俺「お前呪いとか魔術って信じてなかったんじゃねえのか?」

 女「実際に美智子が使った呪いで辻さんが熱を出してるんだよ!もしもってこともあるじゃない!」

 本当にこいつは周りのことを気にしてばかりだ。これで胸が大きければ間違いなく男子からモテモテだっただろうに。

 俺「まあ落ち着け。呪術を掛ける対象は俺でいい。これなら誰にも迷惑は掛からないだろう?俺だって魔術師として一般人を傷つける訳にはいかないからな」

 女「え?俺くんが被験者になるってこと?」

 俺「‥‥頼むから被験者って言うな。流石にその響きは怖いぞ」

 女「でも、もし成功しちゃったら俺くんが熱出しちゃうかもしれないんだよ?そんなのだめだよ」

 何だかんだこいつは俺のことも心配してるんだな。

 俺「それなら別に問題ない。魔術に長けてる俺なら大したダメージは受けないよ」

 何より、もし成功したら魔術習得に一歩近づけるかもしれない。

 女「あんた魔術に長けてないでしょ!」

 俺「む!知識だけなら山ほどあるぞ。自分が呪われた状態ならいくらでも解決策を見つけられる自信がある」

 女「‥‥でも。それなら、私が被験者でもいいんじゃない?」


 ‥‥だから被験者って言うな。

やばい、くっそ疲れた。

ちょっと休憩します。


ちなみにこれ、五年くらい前に書いたやつで、完結してないです。

やたらと伏線バラまいた五年前の自分を殴ってやりたいです。

 俺「駄目」

 女「どうして?」

 俺「お前馬鹿だから」

 女「理由になってないわよ!」

 俺「理由も何もお前は一応女じゃねえか。‥‥あれ?お前女か?出るもの出てねえけど本当に女か?」

 女「女よ!一応じゃなくて正真正銘の女よ!」

 俺「なら決まりだな」

 女「‥‥なっ!」

 女はまだぶつくさと何かを言っているが、俺は無視をしてサイトに載っていた必要な道具を準備する。

 準備と言っても必要なのは黒の画用紙と白のクレヨン。それから対象の毛髪と蝋燭が四本だけだ。

 それならこの部室に全て揃っているから今すぐに始めることが出来る。

 俺「いつまでもぶつくさ言ってねえでお前も手伝え」

 女「‥‥分かったわよ。でも本当に危ないなって思ったらすぐに中止してね」

 俺「はいはい。その画用紙床に敷いといて」

 女「‥‥うん」

 俺は黒の画用紙に白いクレヨンで魔法陣を描いていく。よくアニメや漫画で見るような模様を描き終え、画用紙の四隅に火の灯った蝋燭を立てる。

 俺「後は俺の髪を真ん中において、お前が魔法陣に手を翳して終了。‥‥ベタすぎるだろ、これ」

 女「‥‥」

 どうやら女は本当に緊張しているようで、俺の独り言に相槌すら打ってくれない。

 俺「おい女。さっさとやるぞ」

 一本では景気が悪いと思い、三本髪を抜いて陣の真ん中においた。

 これは波平さんには出来ない芸当だろう。

 女「‥‥ねえ。やっぱり止めよう?私怖いよ」

 俺「怖いって、あのなあ。俺は毎日こんなことをここでやってるんだぜ?お前の知る限りじゃ二年だが、残念なことにその間俺の身体は異常なしだ。別に怖くなんかねえよ。それでもしこれで失敗に終わったら呪いはインチキで、辻さんもただの偶然で熱が出たってことで終わりだろう?」

 女「‥‥そうだけど」

 俺「それに命を奪うことは無いって書いてあっただろう?心配ねえよ」

 女「‥‥うん。じゃあ、いくよ?」

 俺「ああ」

 俺の返事を聞いて女は恐る恐る手を陣の中央へと持っていく。

 床に胡座をかいて女を眺めていたが、一向に手は陣の中央へ辿り着かない。

 俺「おい、早くしろ」

 女「‥‥う、うん」

 目を瞑って、えいっ!という掛け声と共に手が陣の中央へ添えられた。

 俺「‥‥‥‥ッ!」

 俺は床に倒れ込む。

 女「え、俺くん?ちょっと!」

 俺「‥‥‥‥‥」

 女「ちょっと!返事してよ!」

 俺「‥‥‥‥‥」

 女「男くん!」

 俺「あん?」

 そう何事も無かったように答えて俺は状態を起す。

 女「え?大丈夫なの?」

 俺「ああ、面白かったろ?」

 女「‥‥‥‥」

 俺「おーい、女?」

 女「‥‥‥‥」

 俺「女ちゃん?」


 ピシッ!という小気味いい音が部室に響いた。

 ‥‥俺は平手打ちを喰らったらしい。


 女「男くんの馬鹿!心配させるな!」

 どうやら本当に怒らせてしまったみたいだ。

 俺「‥‥悪かった。確かに軽率だったよな。ごめん」

 俺はそう素直に謝った。確かに女の性格なら冗談ではなく本気で心配するに決まっていた。完璧俺に非がある。

 女「‥‥うん、分かればいい。それで、身体の方は何ともないの?」

 俺「ああ、今のところ全く変化はねえな。でも辻さんは呪いを掛けられた翌日から学校を休んでるから明日になるまで結論は出せねえよ」

 女「‥‥そっか。その、叩いちゃってごめんね」

 俺「何でお前が謝るんだよ?どう考えたって悪いのは俺だ」

 女「‥‥でも男くん。私の為にに被験者になってくれたんだし」


 どうしても被験者って言うんだな。この女は。


 俺「別にお前の為だけじゃない。これで成功すれば魔術の手がかりになるかもしれねえからやっただけだ」

 女「‥‥うん。ありがと」

 俺「ああ、とりあえず片付けて帰ろうぜ?もう外も暗くなっちまったし」

 女「そうだね、帰ろうか」

 魔術師「まったく。どこに隠れてるんだろうねえ、あの化物は」

 散々歩き回って収穫なし。魔術師はイラだった口調でそう呟いた。


 町の外れにある森の中まで探しまわった彼女の靴は泥で汚れている。


 魔術師「いっそ町ごと吹き飛ばしてしまうのも手か」

 魔術師「だいたい、何で私がこんな面倒なことをしなくてはならない?」


 歳をとると独り言が増えていかんな。彼女はそう自分を嗜めると、コートのポケットからタバコを取り出し火を着ける。


 魔術師「つーか、さみー。よし!今日はもう止めて帰ろう」


 魔術師は踵を返し、人ごみの中に足を向ける。

 警察官「すみませーん。この区域は歩きタバコ禁止なんですよね。とりあえず、そのタバコの火を消しましょうか」

 魔術師「‥‥へ?ああ、申し訳ない。すぐに消します」

 警察官「はい。では、こちらの書類に住所と名前、電話番号を記入してください」

 魔術師「え?いやー、それは勘弁してもらえないでしょうかね?」

 警察官「ルールですから。あと、罰則金として五千円をとらせていただきます」

 魔術師「‥‥は?五千円?ちょっと待って下さい!私今月ピンチなんですよ!」

 警察官「ここで逃がしてしまいますと僕の首もピンチになるんですよね」

 魔術師「いや、待て!いえ、待って下さい!」


 魔術師は長時間に渡り交渉を行ったが、その甲斐もなくしっかりと罰金を取られた。


 魔術師「あの化物。見つけたら絶対[ピーーー]」

 そう呟いて、今度こそ魔術師は人ごみの中に姿を消した。

 呪術に使った道具を片付けて学校から帰っている途中、女が俺のアパートに寄っていくと言い出した。

 俺「寄っていく?なんだ、また飯作ってくれるのか?」

 女は時々学校の帰りに俺の部屋に寄っていくことがある。だから別に珍しいことでもなく普通にそう返した。

 女「別にご飯くらい作ってもいいけど、あんたの身体も気になるし寄っていくって言ったのよ」

 俺「え?お前俺の身体目当てで部屋に来るのか?」

 女「訳のわからないこと言わないで!呪いが本物で熱が出たら大変だからって意味よ!」

 俺「‥‥そうか、よかった」

 女「よかったって何よ!まるで私があんたに欲情してるみたいじゃない!」

 俺「やめてくれ、気持ち悪い」

 女「私の台詞だ!」

 俺「ああー、うるせーな。キュンキュン喚くなよ。血圧上がるぜ?」

 女「誰のせいだ!てかそれ私ときめいてるじゃない!きゃんきゃんでしょ!」

 俺「顔赤いぞ。どれ、熱を測ってやろう」

 女「触るなけだもの!」

 俺「じゃあ来るの止めるか?」

 女「止めない」

 俺「お前、男だなあ。尊敬するぜ」

 女「女だ!」


 そんな馬鹿なやり取りをしている内にアパートに着いてしまった。

 女「はあ、何だか疲れた」

 俺「運動不足なせいだな」

 女「あんたのせいでしょ!まあいいわ、お邪魔します」

 女は俺の後に続いて部屋に入ってくる。

 悪態をつきながらもちゃんとお邪魔しますと言うあたりが律儀だなと思う。


 女「相変わらず何もない部屋ね。あんた部屋で何して過ごしてるの?」

 俺「あん?別に何も無くないだろう。テレビもあるしパソコンもある」

 女「‥‥それで。毎回思うんだけどなんでテーブルが無いのよ!椅子も無いし!」

 俺「お前馬鹿だなあ。テーブル無いのに椅子だけあったら変なやつだろ」

 女「揚げ足をとるな!」

 俺「分かった分かった。冬休みに気が向いたら椅子買っておくよ」

 女「なんで椅子なのよ!テーブルを買いなさいよ!」

 俺「いや、この部屋でお前だけ椅子に座ってたら結構面白い絵が撮れると思うぞ」

 女「面白さなんて求めてない!私が求めてるのは実用性!」

 俺「贅沢な奴だな。椅子ならベッドに座ればいいだろう?」

 女「椅子から離れろ!」


 はあ、とため息をつきながら女はベッドに腰を下ろした。

 俺「結局座るのかよ」

 女「座るわよ」

 俺「男だなあ」

 女「女だ!」


 この部屋にはテーブルも椅子も無い。テレビもパソコンも床に直置きで、他にあるものと言ったら本棚と元々部屋についているクローゼットくらいだ。

 玄関に入ってすぐの短い廊下にキッチンと風呂、トイレがある。他にも電化製品はほとんど廊下に収まっている。

 俺「それで、今日は何を作ってくれるんだ?」

 女「‥‥はあ、ちょっとは休ませなさいよ。あんたの相手するの疲れるんだから」

 俺「誰が相手をしろと頼んだ!」

 女「何でそこで突っ込むのよ!」

 俺「すまん、タイミングを間違えた」

 女「間違えるか!」

 俺「おい」

 女「なによ」

 俺「腹が減った」

 女「分かったわよ!作ればいいんでしょ!」


 この流れでご飯を作ってくれる女はそうそういないだろう。

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