女「私古風な女ですゆえ」(55)

事実は小説より奇なり。


元々文学に秀でていた私は幼き頃から
えっちらほっちらと朝も昼も夜も日夜勉強漬けでございました
父の教えに母の献身的な支えのおかげで
難なく大学に合格した私は家族サービスとして
アルバイトをはじめ勿論勉学も怠ることなく生きていく事にしたのです

このままお金をこの可愛い子豚さんの貯金箱に沢山詰め込んで
いつかはわいあんな旅行をプレゼントしたい
そう思ったのも束の間、大学やアルバイトと言うのは
恋に渦巻く獰猛な生き物かのように私のお金を奪っていくのです


そう、あれは一昨年の春でした

春うららなキャンパスはむさ苦しい若者で覆い尽くされていました
やれ一緒にテニスで一緒に青春と言う名の汗を流そうだの
やれ君可愛いからこの飲みサーに入らないかだのと言った
恋に恋する男という名の野獣が餌である可愛い私を狙い尽くすのです

ああ!恐ろしい!私はそんな台詞でくどかれるような軽い女ではないのです!!

まだ桜も四分咲きと言った所でしょうか
この母から貰った赤いカーディガンだけでは肌寒いはずなのに
雄の本能に抗えない血眼なハイエナ達は季節外れのおしくらまんじゅうを始め
私はその人の波に揉まれ、胸を揉まれ、こぶりで可愛いお尻まで揉まれ、
汗と熱気でむんむんとシャツはびしょ濡れになってしまいました

こ、このままではやられる...!!

幸い母に似て小柄な私はその身をよじり小さなハムスターのように
人ごみを抜けなんとか窮地を免れることに成功したのです


「あぁ、暑いですわ」
「いや、熱いの間違いでしょうか」

生温い少し鉄の味がする蛇口を捻り先程の猛獣どもから奪われた水分を
必死に取り返していると、隣に一人の男性がやってきました

「あぁ、暑い」
「何だって春だというのにこんなに暑いんだ」

背の高いお世辞にもはんさむとは言えない彼はこれまた
はんさむとは言えない伸ばしきった長い髪にたっぷりと水分を補給しだしたのです
それはもう小学校の時、わんぱくな子供達がいっぱい汚した教室の床を
師走の終わり前に綺麗にワックスを掛けるモップのように重たくなっているようでした

彼をおばけモップと呼ぶことにしましょう
きっとこの穢れきった猛獣の檻をえっちらほっちらと清掃してくれる
大学専属の清掃員の方なのでは?

淡い期待を持って彼を見つめると、その重い毛先の隙間から鋭い眼光が
私を見つめるのです...ぞくぞくしますね

「何だいさっきから君は」
「そんなにこの髪がうっとおしいと言うのか」

「いえ...寧ろ素敵だと思います」

「ほう?何故そう思う」

「きっとあなたはこの猛獣達の食べ散らかした汚い檻の中を見違えるように綺麗にするからです」

「くっくっく...面白い」

おばけモップさんは表情を見せずに笑います

「君、新入生だな。しかもまだ大学に全然馴染めていない一人ぼっちのな」

「何故そう思うのですか」

「簡単だ」

既に答えが見えていると言うのですか
もしかしてこの母から貰った赤いカーディガンを着ているからでしょうか
あぁ...これでも目一杯お洒落をして誰にも笑われない格好で来たつもりだったのに
私の心はいつだって可愛い子豚の貯金箱がぶひぶひと私を癒してくれているというのに

「君は、男を連れていない」

「何故男を連れていないと寂しい新入生だと言うのですか」

「いいかい、男と女というものは凸と凹だ」

「凸と凹ですか」

「あぁ、凹凸というものはいつか必ず互いを求めきっちりとひとつの形となる」
「例えばだ、君は高校を卒業する時、やけにクラスの皆が恋人が出来ただのセックスをしただのとざわめき共鳴していなかったか」

は!!
確かにクラスのマドンナの佐々木さんも、お調子者の原田くんも、
家が貧乏で学校に住んでいた山本くんも、高校生が読んではいけないびーえるとやらを
熟読していた華原さんも、皆一斉に黄色い声を高らかにそれはもうアマゾンで野生に帰った
ゴリラかのようにうほうほと叫び続けていました

「していました」

「だろう!!そうだろう!!あぁ、悲しきかな!!」
「彼らは高校卒業という切欠を元にそれはもうアマゾンで野生に帰ったゴリラかのように交尾を毎日毎日飽きもせずにし続けていた!!」
「しかし!!結局幸せは長く続かないもの...高校卒業というイベントが終われば次のイベントはすぐにやってくる!!」

「ごくり」

「そう!それは正に今この瞬間!!大学の入学式だ!!」

何という事でしょう!!
確かにあれ以来彼氏と仲の良かった佐々木さんも今ではあちらの物陰で
彼氏とは似ても似つかない金髪の男性と季節外れの熱いキッスを交わしているではありませんか

「うがああああ!!あれは不純交際の一種だ!!」
「見てはいけない...大学生というのは今日この瞬間に二種類に分けられる」

「そ、それは一体どんな二種類に分けられるというのですか」

たっぷりと鉄分を含んだ水が毛先からしたたり落ちているおばけさんは
ぽつりとつぶやいたのです


ぽちゃん


「リア充と非リア充だ」

「それはつまり私が非リア充だと言いたいのですか」

「あぁそうだ!今この瞬間にも沢山の凹が沢山の凸に狙われているというのに君は何故かこの人気のない場所を選んだ」
「つまりは、そういう事ではないのかね」

そんな...私の輝かしい大学生活は既にみすぼらしいどぶねずみが巣食う肥溜めと化していたというのでしょうか
それではせっかく立派な父と献身的な母の愛の結晶である私のそのまたどこかの立派な素敵な王子様との
愛の結晶が生まれないというのですか

「そ、それは困ります」

「では今すぐあの猛獣の群れに飛び込むがいい!そして潔く不埒ではしたない女性である事を痛感するがいい!」

「それは出来ません」

「何故だ」



「私古風な女ですゆえ」

凸凹の擦れはより一層激しさを増し今や何が何だか分からない形をしています
それはもう熱気を帯びおばけモップさんのたっぷりと鉄分入りの水を含んだ髪も
いつの間にか乾かしてしまうほどに
そしてもっさりと一段にその存在感を増しています

彼はしばらく頭の上のモップを細長い指でわさわさと
それはもうわさわさと
髪の中から飴やら梅干しのお菓子やらテレビのリモコンやら可愛い子豚の貯金箱やらが
今にも窒息死してしまいそうだったと言わんばかりに飛び出してくるのです

あぁ!私の可愛い子豚さん!
そんなところにいたのですか!


「君、古風な女だというのか」

もう口さえもどこにあるのか分かりません
彼の頭は本当にモップで出来ているのではないかと疑うのをやめる事も出来ないのです

「いかにも」
「私、ちゃらちゃらしたアクセサリーもすまーとふぉんとやらも緑の無料出会い系アプリなども取り揃えておりません」

「奇遇だな」
「私もだ」

おばけモップさんはいかにも文学少年だと豪語するかのように甚平を華麗に着こなし
右手は腹あたりを模索し赤と白色をした大人の嗜好品を取り出しました

「君も吸うかい」

柔らかな箱から勢いよく飛び出した煙草はするりと私の足元にのしかかります

「私はまだ大人ではありませんゆえご遠慮させていただきます」

「そうか」

「あなたは大人だというのですか」

「私のような大人がいてたまるか」
「勉学にばかり励み自分の息子を慰める夜に励み女性と不埒な行為を重ねたことなどない男が大人と呼べるか」

「でもあなたはマルボロを吸っています」
「私の父もマルボロを吸っています。そして立派な大人です」

父は立派な大人です
小さいハムスターのような私と少し大きいハムスターのような母を
大きな一軒家に飼いしっかりと手懐けているのです
これはもう立派な大人と呼ぶ以外に何と呼べばいいのやら


「それはそうとあなたには子供さんがいるというのですか」

「男は誰も皆生まれた時から抱えている」

なんという事でしょう
私、生まれた時から女だったゆえにそんな事は今日この猛獣共の巣食う檻に
のこのことやってくるまで存じ上げませんでした

皆が子持ちだと言うのならば男と女の間にどうやって子供が生まれてくるのでしょう
女しか生まれなかったのならもう諦めるしかないのでしょうか
そうなるとなんだか急に悔しい気持ちで一杯になり父と母に今すぐ誠心誠意謝罪をしたくなってきました
今日まで育ててくれてありがとう
でも私は女だから子供に恵まれることはないのです。多分。

「君は何か勘違いをしていないか」

「はて、何のことでしょう」

「私はただセクハラしているだけだというのにその反応」
「これはもう天然記念物と呼ぶ以外に何と呼べばいいのだ」

どうやら私は国宝級のハムスターらしいのです
おばけモップさんがそう言うのならそうなのです
だから温室育ちな私は作物を襲う嵐も日照りが続き喉がカラカラになる自然の厳しさも
知る術がなく今日までこうして立派な大人になることが出来なかったのでしょう
逆境を乗り越えなければ立派な大人にはなれない
しかし、逆境の逆境が続く私の平凡でつまらない日常は精神を鍛える術がないのです

飽きた
後は頼んだ

面白い
続き期待してるよ>>13

くっさ

はよ

「それはさておき、君は何と言う名だ」

「申し遅れました、私高坂と申します」

「そうではない」

「はて、私生まれてこの方高坂以外の姓を持っておりませぬ」
「あるとすれば立派な父と健気でいじらしい母の名から一文字ずつ授かりました絵梨子と言う
 私めには些か立派すぎる名ぐらいしか持ち合わせていません」

「そうか、絵梨子くん」

「何でしょうか」

「私には名がない」

これには驚きを隠すことが出来ません
おばけモップさんには本来の名がないとおっしゃるのです
それでは今まで一体どういう経緯でこの意地汚い猛獣共が巣食う
大学に入り、あたかもここの主かのような風貌になられるまで
おられたのでしょうか?もしや本当は私とは違う生物なのかもしれません

「それでは私は一体どうやってあなたの名を呼べばいいのでしょう」

「好きに呼んでくれたまえ」
「それより君にはどうやら資質があるらしい」
「私が属するそれはもうどうしようもないぐらいこの有意義なはずの大学生活を無味無臭の如く
 死んだアロワナの如く謳歌しているサークルがあるのだが、見に来るといい」

そう言い吸殻をきちんと携帯灰皿にねじ込んだおばけモップさんは
頭の上にあるモップをガシガシと掻き揚げどこかに消えようとしました
あぁ、私めを一人にしないでくださいまし
盛りに盛った猛獣どもの巣に迷える子羊であるこの私を一人にしないでくださいまし

「分かりました」
「それでは見学させて貰います」

「そうか」

そう言い二本目のマルボロに火をつけたおばけモップさんは
滴り落ちる汗に脇目も逸らさずまっすぐと未知の領域にずかずかと入り込んでいきます
その素振りはまるで我が家に帰ってきたぞと言わんばかりの男らしさでした
そう!そのお姿こそが本来日本男児があるべき姿であるのです!
男は男らしく、女は慎ましくしかし逞しく支えてあげるべきなのです

男らしさのフェロモンを振りまきながら、名もなきおばけモップさんは
右に曲がり校舎に入り込み左に曲がり上に上がり...この複雑難解な道を
一つも間違えることなく突き進んでいきました

この校舎には一体どれだけのロマンが詰まっているのでしょうか
廊下には人が一人入れるぐらいのテントが張ってあります
中から顔を出すのはかつて私の高校に住んでいた山本くんではありませんか
あぁ良かった...新たな住処を見つけることに成功したのですね
どうやら彼も同学年である私の存在に気付いたようです

「高坂さん」

「お久しぶりです」

「君も古寺先輩に誘われたのかい」

「はて、古寺先輩とは誰のことでしょうか」

「とぼけるなよ」
「君の前を歩く甚平姿のド畜生野郎のことだよ」

何と!おばけモップさんは先輩でありましたか
しかもちゃんと神様から頂いた立派な名前をお持ちであったようで
しかしここで疑問が出るのです。何故名などないとおっしゃったのでしょうか

「奴はとんだ詐欺野郎さ」
「僕にテントを張る権利をやる代わりにサークルでその名と籍だけ入れといてくれと言うからさ
 仕方なく契約したんだよ。賃貸契約とでも言えばいいのかな」
「でも契約の内容に偽りがあったんだ」

「そのような方には見えませんが」

「それは君、君が高坂さんだからさ」

高坂であると真実が見えないとでも申すのでしょうか
いくら級友であったとしても、私を狙う凸の群れよりは
立派な日本男児であるおばけモップさん改め古寺先輩を
信用することができないと言うのは侮辱罪に値するというものです

しかし、騙されたという山本くんの言い分も聞かぬことには公平に判断する事も
これまた彼を侮辱することになります

「して、古寺先輩は一体どのような嘘偽りをしたというのですか」

「クワガタムシを捕まえろっていうんだよ」

「おい山本」

「はいはい余計な事なんて何一つ言ってませんよ」

「お前にはしばらくこの白い液体をお預けする事をここに宣言しておく」

甚平から翡翠色の小瓶を取り出した古寺先輩は冷たい目つきで山本くんを見下して言いました

「そ、そんな!そんなの人間がする事じゃないぞ!鬼!悪魔!鬼畜の極みだ!」
「もう俺は駄目だ...生きていけない」

「ふん,,,行くぞ絵梨子くん」

そう言い先輩はスタンド灰皿にタバコを捨てました

「はい。また会いましょう山本くん」

「......」

返事がありません。屍のように彼はうつ伏せになっています
あの白い液体が入った翡翠色した小瓶は一体何だと言うのでしょうか
それに山本くんには高校卒業前という大きなイベントの時に彼女がいたはずです
しかし今はいない。それもこれも全てこの大学に入学したのが運の尽きだったという事でしょうか

謎が深まる中私は一心不乱に早足の古寺先輩を追いかけます
山本くんのテントが見えなくなる頃には人気もなくなり
廊下には先輩のカタカタと鳴らす下駄の音と私のぺったんこな靴が床と擦れる音だけが響きわたります



「ここだ」

いつの間にか舞台は地下通路に辿り着き先輩は扉を開けました
薄暗い廊下には黒光りする生物が蠢いている以外に私しかいません
意を決して私は冷たいプレハブ小屋についているような安っぽい扉を開け放ちました


「古寺先輩、ここは一体何のサークルですか」

「私は古寺などというありきたりな名前ではない」
「ここは地上にいた本能の赴くがままに息を切らした輩を排除するために存在する
 秘密結社だ。その名も”永久幸福凍結機関”だ」

埃が舞うこの狭い部屋はどうやら先輩が住む家のように見えます
ヤニで黄色くなったポットに先程の翡翠色の小瓶
私の可愛い子豚の貯金箱まで揃っています

「げへ...げっへっへへへ」

これまた驚きです
あのびーえるとやらが聖書であると私に熱く説いてくれた華原さんが
バイブルであったはずのびーえるではなく先輩の家の中で哲学書を読んでいるではありませんか
彼女は熱心なびーえる教であったはずです
しかし私のくりんとした瞳に間違いがなければあの華原さんは今自らの宗教を破り捨て
自らの道を歩もうと必死に勉学に励んでいるのです

彼女の大きな口からはいつも歴史の人物の名前が飛び出していました
私にびーえる教の素晴らしさを説いてくれた立派な聖職者である彼女の口は
今や何のためにあるのか分からないまでに汁という汁が床一面に広がるまで開いています

「華原さん、お久しぶりです」

「げっへへへ」
「げへ?げへへへへへ」

「すみませんが私にも理解できる言葉でお願いいたします」

「無駄だ、華原くんも既にこのサークルに入ってしまった」

「それでは先輩、永久幸福凍結機関とやらはとんでもないサークルではないのでしょうか」

「そうとも呼べるかもしれん」
「だがこうとも呼べるのではないか?」
「自己啓発の助長に繋がるとんでもなく素晴らしいサークルであると」

むむむ...阿呆な私には哲学とやらは到底理解するに苦しみます
古寺先輩はもしかしてノーベル賞をその手に収めることができる新星の学者であるのかもしれません

飽きた
後は頼んだ

森見みたいなこの感じ好き

予防線張っちゃう豆腐

「それはそうと古寺先輩」

「私は古寺ではないと言っているだろう」

「それではなんと呼べばいいのでしょうか」

「そうだな、名もなき私を呼ぶには君がこのサークルに入るしかない」
「私は君の資質を見抜いてしまった」
「つまりこれから君は私の元で人々の幸せを奪い己が幸せになる術を教わるしかあるまい」

そんな...
私のような阿呆に幸せを奪われてしまうとなると
春という悪魔的な季節に身を任せ盛りに盛った猛獣であろうと
ほんの少し不憫に感じてしまいます

しかし先輩の本当の名を知るためには私はこの永久幸福凍結機関...
略してE.Tに入るしか道はありませぬ

「分かりました」
「私もE.Tに入ります」
「ですので先輩の本当の名を教えていただけるとありがたいのですが」

「我々は宇宙人ではないぞ」

「ちょっと待った!」

「はて?君は一体誰かな」

勢い良く先輩の部屋を開け放した先にはあのお調子者だった原田くんが立っているではありませんか

「高坂さん!君はこんなモテないダサい埃の匂いがするサークルなんて似合わないぞ」
「そいつは最低な人間だ!俺と彼女が大学に来た時からずっと後ろをつけてきたが
 あぁ今思い出してもおぞましい!!あぁ憎らしい!!」

「一体何があったというのですか」

原田くんは親の仇と言わんばかりに右手に携えるアルトリコーダーを握り締めています
彼はきっとこの大学生活を成功させるために大事な初日を彼女とともに乗り越えようと
していたと思われますがしかしそれは古寺先輩の目論見によって粉砕したようです

あぁ悲しい!私も原田くんの悲しみを半分受け取り彼の痛みを和らげてあげたい...

「何...私とて鬼ではない」
「ただ君の隣にいた霊長類の髪にずっと追い求めていたクワガタムシがいた」
「それだけではないか」

名もなきおばけモップ先輩は再三翡翠色の小瓶を取り出し彼にちらちらと見せ付けます

「やめろ!そ、それを俺に近づけるな!!」

「おや?どうやらこれの魔力の前には君も己が欲を抑えきれないようだ」

先輩は三本目のマルボロに火をつけます
あの白い液体は一体何なのでしょうか
廊下に住み着く山本くんはそれを愛して止まない廃人と化し
何故かこの迷宮の果てにある先輩の部室にやってきたお調子者の原田くんは
それを恐れ畏怖の念をいなくなってしまった彼女と錯覚し強く抱きしめているのです

「とにかくだ!高坂さん!君は俺とともにテニスサークルに入るべきなんだ!」
「そんなダサい甚平を着て煙草を吹かしろくに髪も切れないおばけモップと一緒にいたって
 人生の99%を損するってもんだぜ」

「99%ではない。100%だ」

おばけモップ先輩は揺るぎない信念の手本を私に見せてくれました
先輩は薄い唇をドーナツの穴のようにすぼめ、原田くんのおぞましい顔に
煙のドーナツをプレゼントしだします...なんて慈悲深い方なのでしょうか!

「やっやめろ!俺は煙草なんて吸わないんだ!この害獣め!」

「人間という生き物は地球上の生き物全てにとって等しく害獣なのだ」
「何も私だけが害獣ではあるまい」

「屁理屈ばっかこねくり回しやがって」
「行こう高坂さん」
「君はこんな所にいていい人間ではない!」

「あっ」

彼は私の可愛らしくて細長い腕を掴み目一杯に引っ張ります
一日中はわいあんなびーちでサンオイルを全身に浴び
こんがりと焼いてきた肌に黒のタンクトップ...
針鼠のように尖ったその金髪はふいに私と先輩の記憶を呼び覚まします

「原田くん」

「何だ」

「あなたは先程私と同じクラスだったマドンナこと佐々木さんと蒸し暑いキッスをしていたと思われますが」

「奇遇だな」
「今しがた私もそれを思い出したところだ」

古寺先輩はいつの間にやら四本目のマルボロを吸っているではありませんか
いくら何でも一時間もしない内にそれだけの煙を摂取しなければならないとは
いくら何でもお体に障るというものです

「あ、あれは佐々木が一人でつまらなそうにしていたから話しかけたらそうなったんだ」

「どういう訳だ」

「うるせえ!お前があの時その液体を彼女にぶちまけなければこんな事にはならなかった」
「どうせ佐々木の彼氏にも同じことをしたんだろ」

「ついうっかり手が滑ったとだけ言っておこう」

ますます白い液体の正体が気になる所ですが今はお調子者の原田くんの
手を離していただくことが先決。
このままではノーベル賞受賞間違いなしの先輩から教えを請うことすらままなりませぬ
阿呆な私に猛獣どもから逃れ輝かしい大学生活を指南していただきたいのです
切実に。

「ぐへ?ぐへへへへへへへ!!」

「何だ!?この珍獣は!!」

困っていた私を助けてくれたのは正気を失った華原さんではありませんか
いえ、正気を取り戻した華原さんですね
彼女は四つん這いの状態から餌のバナナを見つけたゴリラかのように
針鼠の原田くんに飛び掛り彼の整った顔面をねっとりと
しかし繊細に緩みきった口元から出た真っ白な舌で舐め回しだすのです

「くっせ!!なんだこの女!」
「唾液が臭過ぎる!お婆ちゃんの匂いがするぞ!」

「ぐへへ...うみゃい!」

ぺろぺろぺろ...
執拗に耳を責めています
彼女の見つけ出した人生の答えとは原田くんの耳をたっぷりと味わうことだったんですね


「華原くんに感謝するんだな」
「行こう絵梨子くん」

「どこに行くと言うのですか」

「君にこのサークル活動の手本を見せようと思う」

あぁ...彼は律儀に吸い終わったマルボロを丁寧に
灰皿にねじ込みジュラルミンケースを肩に掛け
原田くんの代わりに私の手を掴みます

これでやっと阿呆な私も輝かしい大学生活への第一歩を踏み出せるのですね
おばけモップ先輩といて人生の99...いや100%を損するだなんて考えられません
だってこんなに胸が躍ること、人生でそうそうあるものではないですもの

飽きた
後は頼んだ

つまんねぇ……

そーだそーだ!!

ここの住民は改行しまくって台本書きじゃないと読めないってこと忘れんな!

糞コテきっしょ

そーだそーだ!!


俺たちは小説なんて読めないんだよ

>>1「そーだそーだ!俺たちは小説なんて読めないし書けない!」

>>1キモい

はやく死ねよ
二度とSS書くな
俺みたいに500リツイート以上されてないカスは死ねよwwww

クソコテかよ
つまんね

街道早くこいつのスレ全部消してくれよ

マジきもすぎて臭い

生きてて恥ずかしくないの?

あぼーんって大体ツイカスだよな

くっせ

まぁなんでもいいけどID:7e.S/LTIは流石に草生えるわ

うんこ

このクソコテのスレ全部荒らそうぜwwwwww

御免こうむらぁ

  / ̄ ̄ヽ
  | 从 从))
  W ゚ω゚ノ
  ハ∨/^ヽ
  ノ [三ノ |、
 i)_|*く ノ

   |  T
   ハ、_亅

 さて諸君。私だ。
古寺先輩やモップおばけ先輩と呼ばれている私だ。
絵梨子くんの思い出話の途中横槍を入れて申し訳ないが
彼女の話す内容には些か説明が足りない所もあるので補足のため
少々私の話にお付き合い頂きたい。ついでに私の物語も一緒にだ。かしこ。


 私は幼き頃から頑固一徹厳格な父とハムスターのように
可愛らしい母のそれはもう立派なご両親に育てられた。

 本来ならば父の跡を継ぐために必死に勉学に励み医者になるため大学院に
通っていたはずの私は一体どこで道を踏み外したのだろうか。
 今では京都に憧れ梶井基次郎の檸檬を愛し森見登美彦が
燃やし尽くした京都を愛しそして今世間一般で俗に言う
厨二病……すなわち一生治る事のない病に侵されてしまったのだ。

 病に侵された私は四季豊かなこの日本に生まれた日本男児として恥無きよう
春でも夏でも秋でも冬でも甚平をこよなく愛し大人の嗜好品を嗜み
そして立派に大学を二浪した。勿論父には殴られた。愛の拳でだ。
 ジャンケンに滅法弱い私のハンサムな顔は厳格な父によって
さしずめボコボコにされたイルカの様な顔をしていた。愛の拳でだ。

いくらハンサム過ぎて擦れ違う女子が皆甲高い悲鳴で一目惚れをアピール
してくる私の顔でもボコボコにされたイルカの様な顔では
誰にも相手をされない。故に私は髪を伸ばし始めた。

 するとどうだ。今までつまらなかった私の狭い箱庭のような世界は
後にクルクルとパーマを当てた事により素晴らしき虹のアーチが掛かっているではないか。


それ以来私はより一層京都に恋をし恋焦がれるようになったのだ。

 母が愛用していた翡翠色の香水瓶に私特製のシチリア産檸檬と蜂蜜と
そこら辺で拾った山本と言う名のホームレスの汁といつの間にか
私専用の部室に住み着いた華原くんの汁といつも春になると
凹を求めて盛る凸の群れの汗を秘密の割合で調合したジュースを入れて持ち歩くようになった。


これを檸檬爆弾と名付けた。なかなかどうして素晴らしきかな!この私のセンス!
 檸檬爆弾は不思議な魅力を持っている。私は飲んだ事がないが、
これを一度飲めばトリップしてまるでそこは四条川原町交差点の真ん中でええじゃないかしてしまう程の
効用があると山本は言っていた。私は飲んだ事がないが。

この魔爆弾を携え私は京都という京都を練り歩いた。



例えば梶井基次郎が豊かな色彩爆弾を置き去りにした丸善が閉店すると聞き
私は急いで駆け付けた。するとどうだ、どこもかしこも梶井ファンだと言わんばかりの
古風を装った少年少女がどうせ爆発もしない檸檬を腑抜けた看守の目を盗み
至る所に置き去りにしてゆくではないか。ならんならん!お前達は何も分かっていない!

 君達は梶井の何を知っている?梶井の伝えたかったことは檸檬を置き去りにすることか?
いや違う!岡本太郎の言葉を借りるならば「芸術は爆発だ」という事をこの古都に
長い時間住み着き身も心も白黒に染まってしまった過去の自分に虹色のアーチを掛けるため
梶井はとても危険な賭けをしたのだ。それすら分からぬさぶかるちゃー難民は私の爆弾を喰らうが良い。
 嫌がる彼らに私の愛の爆弾を飲ませること数刻。

ある少年は「ええじゃないか」と高瀬川に飛び込みまたある少女は祇園四条でピンクの羽がついた
扇子を振り回しみたらし団子に頬を緩めているではないか。一体どうしてそんな行動を起こしたのだ。
 そんな恐ろしい町京都に憧れていた私はいつしかこの町にいてもいい存在だと気付き始めた。



京都という町が私という存在と融合をはじめ私はいつの間にか本当の名前を失ってしまった。

 私の名は三階建て阪急電車にも高校生のマラソンコースに何故か含まれていた醍醐寺にも
そして私が通う薬大にもなかったのだ。一体何故かは分からないし分かろうとも思わない。


 だが名を失ってまた春が訪れた時、私は出会ってしまったのだ。私の名を一緒に探してくれる女性が。
彼女は夏のクワガタムシのように雄を求めたりはしない。孤高一匹凛として咲いているのだ。
しかも私の大嫌いなすまーとふぉんも緑の出会い系アプリも取り揃えていないと言うではないか。



 これはもう運命の赤い糸や月が綺麗ですねと言った愛では語り切れない。出会いは突然にして必然である。
父に見放され己を高めるために学業に魂を燃やすことも忘れていた私はかつての梶井のように
色を失っていた。だがしかし!今ここに宣言する!これからが私の薔薇色人生街道なのだ!


彼女こそが我が愚かなる野望を遂行するために相応しい伴侶なのだ!


こうして獰猛な猛獣が巣くうこの穢れた大学を浄化すべく私は絵梨子くんと出会った。
 そして結論から言うと私は絵梨子くんと付き合うことになり無事猛獣達を手名付け無事名を思い出した。

しかしその話を語るためにはまだ語る事がある。絵梨子くんと運命的な出会いをする数刻前の事だ。


 キャンパスで金色の針鼠がつがいとなる伴侶(ではなくなる)を連れて歩いているのを見つけてしまった私は
我を失いクワガタムシに向け爆弾を仕掛けた。やがて導火線が合図を送ると彼女は潔く猛獣の群れに
飛び込むではないか。いいぞいいぞ。祇園祭に果敢に挑むトルコアイス屋台のようではないか。

 一匹の霊長類を幸福に導くとつがいの片割れが逆上してアルトリコーダーをどこからともなく
取り出し私に襲い掛かってくるではないか!ええいしゃらくさい!君にも愛の爆弾をお見舞いしてあげよう!


 程なくして彼も悦に浸りクラスのマドンナこと佐々木という女性に熱いキッスを交わし始めた。
人間など皆こうして害獣だ。浮気をする男など男の風上にも置けんわ。

 それからようやく私は彼女と出会った。この穢れきった狭い檻の中に一際存在感を放つ彼女に。
不覚にも心臓を掴まれた私だがすぐには惚れん。男は女に惚れた時点で負けなのだから。




「あるとすれば立派な父と健気でいじらしい母の名から一文字ずつ授かりました絵梨子と言う
 私めには些か立派すぎる名ぐらいしか持ち合わせていません」

 そう言い彼女は頬を赤らめ林檎飴の如く甘い空気を醸し出すではないか。
はい惚れた。私の負けだ。潔く自決しようではないか。

煽りたいだけのやつをスルー出来ないとこらへんやっぱ糞コテか
飽きたとか言ってるのも臭い
挙句そーだそーだとか言って自分から煽りに行ってるし、これは叩かれるのも納得

>>53
わざわざこっちまで来てww
ご苦労さまですwwwww

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