女「会長好きです!」会長「すまないが俺はホモだ」 (106)


~生徒会室~

女「生徒会長、私、会長のことが好きなんです!わ、私と、付き合って下さい!!」

会長「……」

会長「女くん、君と俺が出会って、今日で365日目になる」

女「はいっ」

会長「なぜそれが分かるかというと、君が毎日、俺に一日一回その告白をしてくるからだ」

女「はいっ」

会長「学校がない日は、必ずメールで告白してきたな。そしていつもその日で何回目の告白か教えてくれたな」

女「はいっ!私が入学式で、在校生代表として会長が祝辞を述べられた姿を拝見したあの始まりの日から、私はこうやって告白し続けてますので!」

会長「そうだな。君が風邪で寝込んで告白を忘れかけた日には、君の身に何かあったのではないかと真っ先に警察に通報してしまったくらい、俺の毎日の習慣と化しているが……」

会長「ひたすら断り続けて一年。君が一年を過ぎてなお告白してくれるなら……俺も君に告白しようと思っていたんだ」

女「えっ!?そ、そそそ、それって……!?」





会長「俺はホモだ」

女「」







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女「」

女「え?本当ですか?え?ええ!?」

会長「やはり気付いていなかったのか……」

会長「いつも俺の姿を見かけるなり、陸上部のエースが現役引退を決意しかけるほどのダッシュで俺の傍に来ていた君には、バレているのかもしれないと思っていたのだが……」

女「……」

女「……」

女「会長がホモってことは、女性は100%無理ですか!?本当に無理なんですか!?私を好きになれる僅かな可能性に目を瞑ってるんじゃないんですか!?」

会長「今まで365回も告白を断っている時点で、明らかに0%だと思うのだが……」

女「」




会長「しかし君は、俺に一年も告白してくれた。断っても断っても、諦めず俺を好きでいてくれた」

会長「その好意に甘えるようで申し訳ないが……そんな君なら、俺がホモであると言っても受け止めてくれるんじゃないかと思って、今日、告白したんだ」

女「そ、そんなコトを、そんな涼やかな目元に哀愁を浮かべて言われたら……」

女「会長がホモとかどうでもいいです!私気にしません!俄然好きです!会長のためならコーラ一気飲みしてゲップせず365回告白してみせます!」

会長「そうか、ありがとう。君ならそう言ってくれることを信じていたよ。それで、さらに告白があるのだが」





会長「実は俺は幼馴染みの友男に片思いしているんだ。しかも小学五年生から七年目になる」

女「」





女「友男さんって……た、確かに会長さんとはわりと一緒にいる人ですよね」

女「でもよく授業サボってるし、会長以外の方とはどこか距離を置かれているし、街でしょっちゅうケンカしてるって噂も聞くし……」

女「なんで会長があの人と仲良くしてらっしゃるのか知りませんでしたけど……」

会長「向こうは単なる腐れ縁だと思っているようだがな」

女「……ど、どうして友男さんを?」

会長「あぁ。これには話せば長くなる深いワケが……」

女「ごくり」





会長「無い。完璧な一目惚れなんだ」

女「」




女「た、確かに、友男さんって男の方にしてはけっこう綺麗な顔付きですよね」

会長「あぁ。昔は女と何度も間違われていた」

女「そ、そうなんですか……」

会長「……」





会長「女くん、君の気が済むなら、このことを言い触らしても構わないぞ」

女「え?」

会長「……一年も告白してくれた君に、いつまでも俺が自分のこの想いを隠し続けていたのは、失礼なことだ」

会長「だから、どんなことをされようと覚悟はしている」

女「そ、そそそ、そんな滅相もない!」

女「確かに、会長が掘られるのが好きなホモって知って、しかもずっと片思いしているって知って、ショックだったけど……」

会長「いやどちらかと言えば掘りたい方だが」

女「でも、私の想いを信じて打ち明けてくれたこと、とっても嬉しいです!」

女「それに私のことを気遣ってくれているのが伝わって、益々好きになりました!今ならコーラ二本一気飲みしてゲップせず730回告白してみせます!」

会長「……そう言ってくれて、本当に助かる」



会長「ふぅ。しかし、他人に言うだけでもこんなに緊張するものなんだな。毎日そうやって告白できる女くんは凄いな」

女「えへへ、褒められるなんてとっても恐縮です!」

会長「だがまぁ、そういうワケで君の想いには応えられないと思う。君は貴重な高校生活の一年をホモの男に使ってしまったんだ。女くんは可愛いのだから、せめて今からあと二年は、どうか普通の恋愛をしてくれ」

女「……」





女「それは、もう告白するなってことですか?」

会長「……」

女「会長、さっき言いましたよね?私にどんなことをされようと、覚悟はしているって」

会長「……。そう言ったな」

女「だったら、まだ会長のこと、好きでいさせて下さい」

女「また明日から、私に告白させて下さい!」

会長「……」

会長「俺よりイイ男はたくさんいるというのに……」

会長「だが俺も片思いの辛さは分かっている。それに毎日の習慣が無くなると、調子が狂うからな」

会長「いいだろう。君の好きにすればいい」

女「ありがとうございます!会長!」




~廊下~

女「今日で366回目になりますが……会長!好きです、私と、つ、付き合って下さい!」

会長「……」

会長「女くんのその告白を、ここまで待ち遠しく思ったことはなかったよ」

女「そ、そそそ、それじゃあ……!」

会長「だが気持ちは応えられない。すまないな」

女「はぅぁぁあああ……」ガックリ

会長「……君は毎回全力で落ち込むな」

女「えぇ、そりゃ毎回全力で告白してますので……」ションボリ

会長「昨日のカミングアウトで、さすがの君も距離を置くのではと思っていたのだが」

女「そ、そんなワケないじゃないですか!」ガバッ

会長「君のいいところは一分も経たず復活する回復力の高さだな」

女「ふふふ、伊達に一年告白して振られ続けてません。なめんなって話ですよ!」





会長「そうだ女くん、今日は明日の会議のための準備に遅くなるから、一緒に帰ろうと校門で待ち続けない方がいいぞ」

女「えぇ!?い、嫌だなぁ、いつも帰りに校門で一緒になるのは偶然じゃないですかー全くもう、な、なに言ってるんですかぁ!」

会長「……」

会長「まぁ、そういうワケだから、今日は早く帰った方がいい。まだ少し寒いから、外に立ち続けない方がいいよ」

女「は、はい……うぅ~」ションボリ




~教室~

女「はぁぁああ……」

女「会長は私の考えてること何もかもお見通しなんだ……」

友美「いやあんたが分かりやす過ぎるだけだよ。今だって机にぐったり突っ伏して、明らかに落ち込みモードじゃん」

女「でも会長のそんな聡明な所も……素敵なの!!」ガバッ

友美「聞いちゃいねぇなコイツ」

女「例えるならば『八雲立つ』の闇己くんのような、または『flat』の鈴木くんのような、あのサラサラ黒髪でクール系イケメン!そして性格もストイック!」

友美「ちょっと例えに使ってるマンガに年代の幅がありすぎない?」

友美「あ、でも今度、『放課後教室』貸してよ」

女「あんな……あんなマンガみたいなイケメン見てたら、そりゃ惚れちゃうでしょ!一年も告白しちゃうでしょ!校門にだって待ち伏せしますよそりゃあ!」

友美「いやーないない」





友美「まぁ、アンタのその根性だけは評価するよ」

友美「あとストーカー紛いのその情熱を寛容に受け入れてる会長サンも凄いとは思うわ」


女「でしょ!?会長はやっぱりお優しい方なの!」

友美「……でも、会長サン絆されてる感あるわよね。もしかしたらこのまま頑張りゃイケるかもね」

女「……それは厳しいけどね……」

女(会長はホモでずっと好きな人がいるし……)

女(はっ。でもあのカミングアウト、あれって私しかされてないんだよね?)

女(会長と私だけの秘密……)

女(なんて甘美な響きなのかしら。きゃ~~~!!)

友美「ちょ、机揺らすな!机の上のジュースの紙パック倒れるでしょ!アタシ、今『孤高の人』読んでるんだから濡らしたらどーすんのよ!コレ借りてるんだから!」




~放課後~

女(校門で待ち伏せするなよって言われたけど……)

女(校門の向かいの道路で待ち伏するなとは言われてないですよね!)

女(会長……今度こそ私、完璧な偶然を装ってみせます!)

女(……あ!)

会長「……」

女(会長出てきた!さぁ、早く目の前の道路を渡ってこちらへ!)

会長「……」

女(?なんでこっちに来ないのかしら。まるで誰かを待っているようですけど)

会長「……」

女(ちらちらと校舎の中を見てる……)

女(あ、校舎から人影が……)

女(……)

女(あれはもしや!?)





友男「あれ?会長、お前なんでこんな所に?」

会長「……いや」

会長「ちょっとした、後輩の真似だ」

友男「?」

女「」




~生徒会室~

女「……今日で369回目になりますが……会長好きです……付き合って下さい……」

会長「女くん。ここ三日ほどやけに告白に元気ないが、どうかしたのか?」

女「そりゃ元気も無くなりますよ……会長と友男さんが一緒に帰るの見ちゃったら……」

会長「……見てたのか」

女「はい……偶然向かいの道路で会長を待っていたので……」

会長「全く待ち伏せを誤魔化せてないぞ女くん」

女「ここ三日、会長とはなんやかんや一緒に帰れてないし……」

女「せめてお昼休みに、いつもこの生徒会室でご飯を食べている会長の元へ馳せ参じることで、この気持ちを慰めているんです……」シクシク




会長「いつもは凹んでも凄まじい回復力を見せてくれているじゃないか。道端で見る雑草なんて目じゃないくらいに」

女「そうなんですけど……」

女「今までは会長が誰も相手にしなかったから大丈夫だったんです……」

女「ていうかなんで会長、急に友男さんにアタックかけだしたんですか!?」

会長「……」

会長「いつまでもめげない君を見ていたら……」

会長「何もしないうちにアイツのことを諦めていた自分が嫌になったんだ」

会長「一歩踏み出す勇気を持てたのは……君のお蔭だ、女くん」

女「か、会長……!」ウルウル





女「って、なんで感動系の空気にさせてるんですか。それって要は私が自分の恋敵に塩を送ってしまったってことじゃないですかー!!」

会長「ふむ、どうやら誤魔化せなかったようだな」




女「はぁぁあああ……私の頑張りが裏目に出ていたなんて……」

会長「……まぁ、確かにそう言えるだろうな……」

女「ううぅぅぅ……」

女「……」



女「で、でも……私に触発され、私の真似をしたっていうなら……」

女「じゃあ私っていわば会長の恋の師匠ですよね!」

会長「……!」

会長「そうだな……諦めない気持ちも、努力することの大切さも教えてくれた、俺の恋の師匠だ」

女「凄いです!こんな私が、会長に何かを伝授できたなんて……」

女「そう思うとなんだかテンション上がってきました!」

女「私は師匠として、弟子の会長に負けるワケにはいきませんね!」

女「こうして落ち込んでちゃいられません!今日はお昼ごはんをたくさん食べてたくさん寝て、また明日から万全の体調で告白しますね!」

会長「……あぁ。また待ってるよ」



~朝、校門付近~

女「今日で376回目の告白になりますが……会長好きです!付き合って下さい!」

女「そしておはようございます!」





会長「挨拶より早く告白するとはさすがだね、女くん。おはようございます」

女「えへへ、ありがとうございます!」

会長「それと、気持ちには応えられない。すまないな」

女「はぅぁぁあああ……」ガックリ

女「……そんなことより、今日は集会の日ですね!朝から会長が全校生徒の前で話をされる日ですね!」ガバッ

会長「あぁ、でも今日は俺は話はしないよ。副会長がするから」

女「そ、そうなんですか……副会長さんが……」



会長「?副会長がどうかしたか?」

女「あ、あぁ、いえ……副会長さんって、凄い凛々しくてキリッとしていて、将来はキャリアウーマンとしてバリバリ働きそうな人ですよね!」

会長「そうだな。俺もそう思う。よく怒られるよ」

女「えぇ!?会長に怒るなんて……ううう、羨まし過ぎます!」

会長「そこは羨ましがらないでくれよ。ほら、早く教室に行かないと集会に遅れるぞ」

女「あ、はい!」





女(副会長さんってクールで本当に素敵なんだけど……妙に会長を見てる気がするんだよね)

女(だからついつい意識してしまって、もしかしてライバルかもなんて思ってたけれど……)

女(本当のライバルは男だったんだよねぇ……)ドンヨリ



~体育館への通路~

女(みんなの前に会長が立つ前に、もう少し会長をこの目に焼き付けてから集会に行こう)コソコソ

女(一度、生徒会室に寄ってから来る会長が集会へ通る道は、とっくの昔に把握済みです!)

女(……はっ!会長が来た!……と、ええぇぇぇ!!?)





友男「お前さー、なんで校門で俺を待ってたんだよ」

会長「高校三年の大事な時にも授業をサボり始めるから、お前の面倒を見てやってるんじゃないか」

友男「えー、そんなに学校サボってねぇけど……とは言え、集会がある日はずっとサボってたもんな」

友男「カイチョーが集会サボってでも俺を待つって言ったから、やむなく来たけど……」

会長「無駄口叩いてないで早くしろ。あと、シャツのボタンは閉めろ」

友男「へーへー」





女(会長……いくらなんでも積極的過ぎますよぉぉぉおお!!)

女(なんですかコレ……明らかに私、ただのモブキャラに成り下がっている……私が今まで投げて来た想いのストレートは、会長には届かなかったんですね……)オヨヨ


ガサッ


女(?)

女(なんだろう?ここは校舎から外の体育館へ繋がる廊下なので、普通に外からこの通路に来れますが)

女(ていうか上に屋根があるだけのほぼ外の所なんですが……あの茂みが動いたような)



ガサガサッ



副会長「ふぅ……あら?」





女「」

副会長「」




女「」

副会長「」

女「ふ、副会長さん……」

副会長「……何かしら」

女「その、頭に付けてる枝って、完璧に隠れるためのアレですよね……」

副会長「!」ポイッ

副会長「……だから何?茂みに隠れてたからなんだって言うの?」

女「そ、そうですよね……隠れてるからなんだって話なんですけど……」

副会長「だったら、変な言い掛かりはよしてもらえる?まるでこの私が、あの茂みに隠れて三次元の男子のたわいない営みに妄想を膨らませては萌えている、根っからの腐女子のような身に覚えのない言いがかりは迷惑なの」

女「いえそこまでは言ってないです」

副会長「……」

女「……腐女子、なんですか」

副会長「はん、馬鹿らしい。ホモなんて非合理的な恋愛形態は私には受け入れられないわ」

女「……友男×会長……」

副会長「!」ビクッ

女「いえ、あの、その手のメモの中身が見えてしまって……」

副会長「……」

副会長「……放課後、あなたお暇?」

女「は、はい」

副会長「では放課後、サイ○リアでお会いしましょう……」

女「……」





女「副会長、会長が受け派なんですね……」




~放課後~

友美「女~、暇なら漫画喫茶行かない?」

女「友美。ごめん、私、副会長さんと予定があって……」

友美「あらそう、残念。そりゃ仕方ない。一人で『からくりサーカス』読んどくわ」

友美「でもアンタ、副会長サンとそんな仲良かったっけ?」

女「き、今日はちょっとした話し合いがあって……」

友美「ふ~ん。なんか気になるけど、アタシ、ああいうキッチリカッチリしてそうな人は馬が合わないんだよね~」

友美「せいぜいガッツリお話してきなさいな」

女「う、うん。じゃあね……」





女(い、一体どんな話し合いになるのかな……)

女(話し合いが終わる頃には友男×会長にハマるよう洗脳されてるのかも……)ブルブル





会長「あれ?女くんじゃないか」

女「ブツブツブツブツ」スタスタ

会長「あ……行ってしまった」

会長「女くんにスルーされるとは、意外とショックだ」

会長「何か真剣な様子で気になるが……そっとしておこう」



~サイ○リア~

女(高校の近くのサ○ゼリアと言ったらここなんだけど、ここで合ってるのかな?えーと……)

女(あ、あそこの隅のテーブルにいる)

女「あの、おまっ、お待たせしました!」

副会長「畏まらなくて結構。それより早く座って。何か食べる?今日は何でも奢るわ」

女「え、そ、そんな、ありがとうございます!えっと……あ、じゃあ、プロシュートのダブルを一つ!」

副会長「……あなた案外図太いのね」

副会長「いいわ。飲み物は?」

女「それは水でいいです」

副会長「そう」ピンポーン

女の子「えと、じゃあ、自分の水持ってきます……」



女(ふぅ~やっぱり緊張してきた)

女(間近で見る副会長さんは、こんなファミレスに居るのに違和感を覚えるくらい凛々しい方だなぁ……)

女(会長と二人で並んで歩いている姿があまりにお似合いで、羨ましいと思っていたけど)

女(女心は複雑なんだなぁ)シミジミ

女「お待たせしました!」

副会長「あ、あら、早かったわね」スッ

女(今隠したの、朝に見たメモ帳だったような……ううん、気のせい気のせい)




店員「お待たせしました~」

女「ありがとうございます。副会長さん、いただきます!」

副会長「えぇ、どうぞ」



女「……あの、ところでどうして私とお話を?」

副会長「そうね。まぁ、一番は口封じよ」

女「く、口封じ」ざわ……

副会長「そう。私がその……いわゆる腐女子であることを知っているのは、あなた以外にはあと一人しかいないわ」

副会長「別に腐女子であることに引け目があるワケじゃないのよ。誰にも迷惑を掛けていないし、あくまで自分の楽しみとして節度は踏まえているわ」

女(茂みに隠れてる副会長さんを見た時はびっくりしましたけど)

副会長「でも……そういう存在が気に障る人もいるから、あまり言いふらさないで欲しいの」

女「そうですね。分かりました!絶対に言いません!私、口は固いです!」

副会長「そう、ありがとう」

副会長「それで、まだ呼び出した理由が別にあるのだけど……」



副会長「あなた会長は受け派?攻め派?」

女「」




~サ○ゼリア~

女(なんとか洗脳されずに店を出ることが出来た……)

女(とは言え、そういうのはあまり興味ないのでって言ったら、あっさり引き下がってくれたんだけど)

女(でも、もしもだけど、会長と友男さんが本当に結ばれたら、副会長さんどんな反応するんだろ……)

女(ちょーっと、見てみたいけど、そうなって欲しくはないなぁ……)





会長「あれ、女くん」

女「あ、会長!なんたる偶然でしょうか!こうしてお会いできるなんて!」パァァアア

会長「……」

女「?どうしたんですか?ニコニコしてますけど」

会長「いや、なんでも。こんな所で奇遇だね」

女「はい!この奇跡は15アーメンレベルです!お一人なら、い、一緒に途中まで帰りませんか!?」

会長「あぁ、構わない」

女「やったー!ありがとうございます!ささ、帰りましょう!」

会長「そんな慌てていると転ぶぞ、女くん」

会長「……」

会長(……15アーメンとは何の単位なんだ?)




~放課後、生徒会室~

女「今日で379回目になりますが……会長!す、すす、好きです!私と付き合って下さい!」





会長「……すまない、女くん」ペコリ

女「はぅぁぁぁあああ……」ガックリ

会長「今日は遅かったな。いつもなら学校で俺を見掛けたらすぐ告白するのに」

女「今日はなかなか姿をお見かけすることが出来なくて……休み時間にずっと校舎を練り歩いていたんですけど」

会長「……君、ちゃんと友達とコミュニケーションを取っているのだろうな?」

女「そこは大丈夫です!友情と愛情の双方を育むのが私のモットーです!」

会長「それは良い心掛けだ」

女「会長こそ、最近よく生徒会室に来ますね」

会長「あぁ、ここは静かで勉強にはうってつけだからな」

会長「会議も毎日やるワケじゃないし、仕事もやる時は大抵一時間はかからないから、俺にとっては最適の環境なんだ」

女「なるほど、受験生ですもんね!素晴らしいです」

女「会長はどこを志望されているんですか?」

会長「地元の旧帝大だ」

女「旧帝大ですか!?頭良いんですね……」




女「あ、で、でも、そうしたら私がお邪魔するのは迷惑でしょうか……?」

会長「気にしてたのか。別に大丈夫だぞ。ダメだったらそもそも君を入れないだろう?」

会長「静か過ぎるのも集中しにくいのでな」

女「本当ですか!じゃあ私、会長が一番勉強しやすいデシベルでお話するよう心掛けます!」

女(今はここには二人っきり……二人きりでずっといられるなんて……)

女(勉強される会長の姿を心ゆくまで堪能出来るなんて……)

女(それを許して下さることで、なんだか無いハズの脈があるような気がしてきた……)

女(なんて素晴らしい日なんでしょうか!!)





友男「カイチョー、悪ぃんだけど宿題教えてくんね?」ガラッ

女「」

会長「」






女(所詮は一瞬の夢でした……人の夢と書いて儚いでした……)

女(私の身も心も砂となり風に飛ばされこの世から消え去りたい……)



友男「あれ?女ちゃんと二人っきり?お邪魔しちゃったかなー俺」

会長「……」

友男「やっぱいいわ、俺帰r」

会長「……い」

友男「へ?」

女「?」

会長「邪魔してない」

女「」



女(なん……ですと……?)

会長「そんな風にすぐ帰られる方が気まずいだろう。いいから来い」

友男「え、いやいや、でもさ……」

会長「どうせ宿題を溜め込んで、今度出さなかったら呼び出しだとでも言われたんだろ?他人に気遣いしている場合か?」

友男「仰る通りでございます……」

友男「……女ちゃん、本当に堪忍な?今度は宿題を溜め込まないようにするからさ、この通り!」

女「い、いえいえ、私は別に構いません。私なんて勉強しに来てもいませんから」



女(友男さんが来たのはショックだけど……友男さんは私が会長のこと好きなの知ってるっぽいから、まだ救いがあるのかな……)



~40分後~

会長「……おい、この定理くらい覚えてるだろ」

友男「んー……」

友男「ん~~……」

友男「んんん~~~……」

会長「……2」

友男「おお、2?2、なに?」

会長「……」

会長「2sinxcosx……」

友男「あーそれそれ!そんな定理だった、思い出した思い出した」

会長「思い出せてないだろ」

友男「いやーありがとな!これであとプリント二枚だぜー長かった~」

会長「……その二枚はさっきまでのプリントに同じようなタイプの問題があるから、探して参考にしろ」

会長「俺はちょっと飲み物買ってくる」

友男「おー。あ、これで買えよ」

会長「いらない」

友男「え?いや受け取れよ」

会長「しつこい」ガララッ

ピシャンッ





女「……」

女(無心……私は己の役目を果たした……)

女(友男さんといるのに最適なデシベルの状態を続けた……つまり0デシベルだけど……)

女(会長、明らかに距離近かったなぁぁあああ……)




友男「はぁー、相変わらず頑固なヤツだな」

友男「あ、ちょっと、女ちゃん」

女「は、はい」

友男「そこのソファにあるアイツのバッグから財布取って、コレ入れといて」

女「えぇ!?」

友男「アイツに内緒で、な?」

女「は、はい……」

友男「……さっきも言ったけど、邪魔しちゃってごめんな」

女「いえいえ、むしろ私がお邪魔虫なんです……ていうかハウスダスト以下なんです……」

友男「何言ってんだよ、俺たちただの腐れ縁なんだから気にしなくていいって」

女「……」

女(なぜか会長が受けるハズのダメージを私が受けてます)

女「……あのっ」

友男「ん?」

女「友男さんって好きな人います?」

友男「俺?全然。彼女作る気もない」

友男「昔から気になった子がみんなカイチョーに流れちゃうからさー。なんだかんだカイチョーしか仲いいヤツいないから、橋渡し役ばっか」

友男「……今だから言える話だけど、これも内緒にしといてくれよ?……実は中二の頃に彼女が出来たんだけど、でもその子、カイチョーに近づくために俺と付き合っててさ……もうトラウマ」

女「それはトラウマになりますね……」

友男「そんなこともあって中学卒業する頃には悟っちまっんだよ。彼女はもういいやーって。このままだとホモになりそうかもなー」

女「そ、そそそ、それはダメです!ダメ絶対!!」

友男「うおぅ!?」



友男「大丈夫大丈夫、冗談だって。まさかホモにはならねーって」

女「あ、あははは、そうですよね……」

女(会長、すみません……私は罪深い人の子です、原罪を背負う人間です)

友男「女ちゃんはさ、毎日告白するくらいカイチョー好きなんだろ?」

女「え、えぇ、まぁ……マリアナ海溝より深い気持ちです!」

友男「?頭悪いから分かんねーけど、すっげぇ好きってことでいいのかな?」

女「はい!」

友男「だったら俺が橋渡ししてやるよ。伊達に小五からカイチョーの橋渡ししてねーから」

女「そんなっ、いいですよ、そこまでは……」

友男「大丈夫だって。俺が頼めば、アイツ文句言いつつどこでも付き合ってくれるぜ?俺の対カイチョー用交渉スキルは半端ないから」

女「……」

女(私が言うのもアレだけど、不憫です会長)



ガラッ

会長「おい、プリント出来たか」

友男「あ!わ、悪ぃ悪ぃ、まだ出来てない……」

会長「まったく……」

会長「……」

会長「?副会長?どうして入ってこないんだ?」





副会長「」

女「」



友男「副会長、お、お邪魔してまーす」

女「……?」

女(友男さん、副会長には緊張してる。もしかして苦手なのかな?)

副会長「……友男くん、あなたどうしてここにいるのかしら」

友男「カイチョーに勉強教えてもらってて……ふ、副会長こそ、なんで?」

会長「忘れ物をここにしたらしくて、取りに来たんだ」

副会長「勉強の邪魔はしないわ。生徒会長直々に教えてもらいなさい。あなたはもうちょっと真面目に勉学に励むべきよ」

友男「勿体無きお言葉……胸に刻みます」



副会長「……あら、女さん、いたの」

女「どうも……」

副会長「……ちょっとこっちに来てもらえる?」

女「はい喜んで……」





友男「なぁ、カイチョー。あの二人どうしたんだろうな?」

会長「話題を逸らすな。俺はここの定理を聞いているんだぞ」

友男「さ、さいでした……」

友男(まぁ、副会長がいなくなってよかった……あの人、俺とカイチョーがつるんでると心なしか怖い顔するんだよな~)

友男(たぶんカイチョーとこんなヤツがつるむのが嫌なんだろうけど……ああいうタイプは苦手だぜ)




~生徒会室前の廊下~

副会長「はぁ……」

女「……」

副会長「あなた、どのくらいあそこにいたの?」

女「えっと、40分くらいお二人が勉強されているところをお邪魔してました……」

副会長「……そう……」

副会長「私がそうならなくて良かった」

女「え?」

副会長「40分もいたら、私は人でないナニカになってたわ」

女「そ、そうですか」

女(言い様のない迫力です……空気がざわめいています)



副会長「……」チラッ

副会長「ふつくしい……」

女「」ビクッ

副会長「すべては私の妄想……分かってるわ。でもね……性事情が乱れてる今、普通の男女より障害のある同性愛の方が純愛を描けるの……」

副会長「まぁ、実際のホモの性事情なんて知らないけれど。腐女子なんてそんなものよ。要は妄想出来るネタがあればいいの」

女「は、はぁ……」

副会長「……」

副会長「あなた、会長が好きなんでしょ?」

女「はい!」

女「あ……もしかして私、副会長さんにもお邪魔でしょうか」

副会長「にも?」

女「あう、そ、そこは言葉の綾です」

副会長「……そう?」




副会長「何を考えてるのか知らないけど……私はあなたのことを嫌いではないわ」

女「え?」

副会長「あなたのそのド根性とポジティブさ、真っ直ぐでいいんじゃない?前から私はあなたの告白を見かけていたけど、少なくとも不快に思ったことはなかった」

副会長「いつも全力で、断わられても真っ向勝負でまた告白する」

副会長「妄想でなく、現実にこんな一途で面白い子がいるなんて、むしろ好感を持ったくらいよ」

副会長「会長がずっと受け続けてくれているのも、あなたの誠意の結果でしょう?あなたが告白するのが遅い日は心配し出すくらいだし」

女「……」

副会長「そもそも会長があなたと付き合おうと、私の妄想にはなんら支障を及ぼさないわ。リアルと妄想の区別が出来なければ腐女子たり得ないもの。だからお邪魔でもなんでもないわよ」





女「……副会長~~!!」ぶわっ

女「かっこいいです!腐女子の矜持を確かにあなたの中にみました!!」

女「私……私、お邪魔虫でも、やっぱり諦めないです!」

女「諦めたくないのに、諦めるのはイヤです!!」

女「精も魂も尽き果て燃え尽きるまで、私は会長に告白し続けてみせます!!」

女「ううぅぅぅ……会長!!」ガラッ

会長「女くん?」

女「会長ぉぉぉおお!!」ゴゴゴゴゴ

友男「え?なに?なにあれ?オーラ?あれが『ハンターハンター』で出てくるオーラなの?」

会長「よく分からんが、女くんが元気そうでなによりだ」

女「ありがとうございますぅぅうう!!」ゴゴゴゴゴ

友男「お前さぁ、女ちゃんにはいろいろ甘くね?」




~屋上~

女「今日で386回目になります……会長!好きです付き合ってください!」





会長「……」

女「会長?」

会長「……」

女「沈黙はこ、肯定ですか?」

会長「……すまない、気持ちには応えられない……」

女「はぅぁぁああ……心ここに在らずでもうっかり言わせられないとは……」ガックリ

会長「……」

女「会長どうかしましたか?さっきから元気ないですね?」ガバッ

会長「……君を改めて凄いなと思って……」

女「え?」

会長「俺は一回告白するだけのことが七年も出来ていないものだから」

会長「君は俺が好きな人間がいることを知ってなお、諦めず告白し続けているのに」

会長「たった一回を恐れる自分が本当に意気地なしだと思うんだ……」




女「……」

女「……会長は誰にも言ってないんですよね?友男さんのことが好きなことを、お友達にも誰にも言ってないんですよね?」

会長「あぁ、ずっと言えなかった。そもそも俺がホモであることは、親さえ知らないハズだ」

女「そうやってみんなに黙っていたことは、やっぱり凄いことですよ」

会長「……そうだろうか。ただの意気地なしだ」

女「そんなことないですよ。ずっと黙っていることも、凄く凄く大変なことですよ」

女「だって私はいつも友美やいろんな人に愚痴が言えるので、実はそんなに辛くはないんです」

女「でも会長は告白して、ハイお終いってワケにはいかないじゃないですか。何も悪くなくても、同性愛ってだけで無条件にいろんなハンデがあるワケですから、たかが一回の告白と言われても、私よりずっと重みがあるハズです」

会長「……」

女「そもそも誰かを好きな気持ちを一人でずっと抱えるのって難しいことです」

女「私、それが出来る会長は凄いと思います!」



会長「……」

女「あとはまたちょっと違う勇気を持つことが出来れば、会長なら友男さんにちゃんと気持ちを伝えられますよ」

会長「……君、そんな風に俺を応援していいのか?」

女「はい!」

女「私、ちゃんと告白して、ちゃんとあなたの彼女になりたいんです!そりゃラッキーがあればいいなとは思いますけど」

女「でも会長の中にある気持ちを傷付けてまで、彼女の座は得たくないです」

女「あなたの友男さんへの気持ちと正々堂々と戦って、彼女になりたいんです!」

女「会長のハンデが、相手も男で誰にも相談することが出来ないハンデだとしたら、私が会長の応援するくらいのハンデがないとダメですよ!」





会長「……」

会長「君なら励ましてくれると思って、弱音を言ったんだ。ごめん女くん。そしてありがとう」

女「とんでもないです、私は会長の恋の師匠ですから、弟子を導くのも勤めです」

会長「……」

会長「……生まれて始めて恋バナなんてしたよ」

会長「みんなこんなことをしているんだな……」




~下駄箱~

女「今日で389回目になりますが、会長好きです!私と、私と付き合ってください!」





会長「ごめん女くん!」

女「はぅぁぁぁあああ……」ガックリ

会長「女くん、実は折り入ってお願いがある」

女「は、はい!何でしょう!」ガバッ

会長「明日からゴールデンウイークだろ?」

会長「もっとも俺たちの学年は受験の補習があるのだが……」

女「そうですよね。大変ですね」

会長「でも月曜の祝日は補修が無くて休みなんだ」

会長「それでその、友男が……」

会長「女くんや君のお友達も呼んで、水族館でも行かないかと」

会長「どうだろう?後は君の親友の友美くんや、副会長を誘おうと思っているんだが……」

女「行きます行きます行きます行きます!!」

会長「良かった。友美くんには君から伝えてもらっていいか?副会長には俺から言っておくから」

会長「また時間と場所はメールするから、よろしく」

女「はいいぃぃぃ!!」




女(友男さん、いや!友男大明神様!ありがとうございます!!後で何か供養物を奉納いたします!!)




~サイゼ○ア~

女「ぜひ、ぜひこのメニューからご希望の供物をお選び下さい友男大明神様……現人神よ……!」

友男「……えっと」

友男「女ちゃんが奢ってくれるのはすっげぇ分かるんだけど」

友男「なんで副会長までいるの?」

副会長「……こうでもしないと私の気持ちがおさまらないのよ」ボソリ

友男「?え?なんて?」

副会長「それに今があなたと会長の繋がりを聞き出すチャンス……私の今後のライフワークのためにもこの機会を見逃すワケにはいかないの」ボソボソ

友男「え?え?……ごめんなさい、聞き取れなかったです」



副会長「たまたまよ」キリッ

副会長「私も会長が誘ってくれたの。だから水族館に行く前に、あなたと事前に交流しておきたいと思ったの」

女(さ、さすが副会長さん!妄想とリアルの完璧なる分別!選ばれし知性と情熱の賜物です!)




友男「そういやメンツ知らなかったな。後は副会長と女ちゃんだけ?」

女「あと友美も」

友男「あぁ、友美ちゃん。あのサバサバしてて意外にも漫画大好きな」

友男「俺の知ってるメンツかー良かった。俺けっこう人見知りだからさ。カイチョーと仲良い人なら問題ないけど、それ以外だとね……」

副会長「現にあなたクラスで一人浮いてるらしいものね」

友男「はうっ」グサリ

女「ち、直球ですね……でも私も、友男さんが会長以外といる所はあまり見たことが」

友男「おうふっ」ブスリ

友男「ま、まぁな……ホラ、ちょっと髪染めてるせいか、真面目なヤツは寄ってこないし、寄ってくるチャラ系は苦手だしで」

副会長「じゃあ何で染めてるのよ」

友男「ガキの頃よく顔が女っぽいってからかわれまくってたんだよ……それがイヤだから、あえてちょっと染めてビミョーに悪ぶってるんデス」

副会長「……」

女(私には分かる。副会長さんは今の発言をしっかり記録していることが……)




副会長「コホン……ねぇ、前々から気になっていたのだけど、あなた会長とはどういう付き合いなの?」

女(な、なんという自然な切り出し!)

友男「俺、小五でここに引っ越して来て小学校も当然転校したんだよ」

友男「それで学級委員だったカイチョーが、転校生の俺の面倒を任されて、そのまま仲良くなって腐れ縁って感じ?」

友男「あ、そうそう、女ちゃん。カイチョーの好み知りたかったら俺に聞きな。たぶんたいてい分かるぜ」

女「本当ですか!」

友男「ホントホント。俺、ずーっとカイチョーと女の子の橋渡し役してたから、どんなものが好みか聞いてくれってよく頼まれてて」

友男「お蔭で自分でも軽くヒクくらいにはアイツの好み分かるぜ」

女「ありがとうございます!」

副会長「ありがとうございます」ボソッ

友男「え?」




~帰り道~

女「友男さん、本当にありがとうございました」

友男「改まって礼を言われるほどのことでもないけど。こちらこそごちです!」

女「では私はここで失礼します!おやすみなさい」ペコリ

友男「じゃねー」

副会長「……」





副会長「ねぇ、最後に一ついい、友男くん」

友男「ん?」

副会長「あなた、ああいう橋渡し役ばっかやらされて、会長のこと嫌いにならないの?」

友男「え?なんで?」

副会長「なんでって……橋渡しで嫌な想いをしたこともあるんじゃないの」

友男「あー……」

友男「でもさぁ、それってカイチョーは悪くないことだろ?」

友男「カイチョーもさ……たぶん俺がいろいろ橋渡しやらされてたり、実際イヤなことあったのも、うすうす気付いてると思うんだよな~頭良いし」

友男「でもあいつが悪くないのに、そういう気遣いされるの嫌なんだよ」

友男「なんつーの?男の意地ってやつかな」

友男「だから嫌いになるなんてそもそも論外だし、今回はむしろ、すすんで橋渡しを買って出たワケだよ」

友男「納得してくれた?」





副会長「……」

友男「副会長?」

副会長「……」

友男「あれ?無視?今の良い感じのシーンまるっと無視?」

友男「ていうか副会長、大丈夫?顔怖いよ?ねぇ、ねぇってば!?返事して!ていうか、息して!!」




~四日後、駅前~

女「今日で393回目になりますが……会長好きです!私と付き合って下さい!」





会長「ごめん、女くん。気持ちには応えられない」

女「はぅぁぁあああ……」ガックリ

会長「それにしても、君が待ち合わせ場所にいの一番に来て俺に告白するのを見越して、集合時間の20分前に来ておいてよかった」

会長「待たせてしまったか?」

女「いえ、全然です!!」ガバッ

会長「そうか?なら良かった」

女「それにしても、会長の私服は始めてみました」マジマジ

女「この一眼レフで連写していいですか?」スチャッ

会長「これまた随分と本格的なカメラだな」

女「はい!お父さんからこっそり拝借しました!」カシャッカシャッカシャッ

会長「それは拝借ではないと思うが……ていうか撮っていいとはまだ言ってn」

女「でも会長とお出掛けなんて、本当に夢みたいです!!」カシャッカシャッカシャッ

女「あ、ちょっと20°くらい右向いてもらえます?」

会長「え?こ、こうか?」

女「はい、そこです!それと目線こっちで!……わーいい感じです会長!」カシャッカシャッカシャッカシャッカシャッ

女「んー。でもあとちょっとワイルドさ出したいんで、シャツのボタンの一番上外して下さい!」

会長「えぇ!?い、いや、それは……」

会長「……まぁ、一番上くらいなら……」スッ

女「ありがとうございます!これはベストショッt……ぁぁああ!!」

会長「ど、どうした!?」

女「か、会長の激レア鎖骨を……レンズ越しとは言えもろで見てしまった……!!」ガクガクブルブル

女「一生の……不覚也……」バタンッ

会長「女くぅぅぅうううん!!」




~20分後~

女「はっ!」ガバッ

会長「あぁ、良かった。女くんが目を覚ましたよ」

女「私は一体……」

女「そうだ、ほぼ直で会長の鎖骨を見てしまったから……」

女「まだ眩暈が……」





友美「うっかり本気で心配仕掛けたわよ。会長サンが世界の中心で愛を叫ぶ的な感じで、駅のまん前で気を失ったアンタを抱えて取り乱してたし」

女「と、友美!もう来てたの?」

友美「そーよ。あんたが気絶してすぐ来てたの。ただの興奮しすぎでよかったわ」

女「ごめんね。ただあまりに悪戯な鎖骨が目に入ってしまって……」





会長「なんだか俺の鎖骨がひどい言われようだな」

友男(これが女ちゃんのマリファナ海溝より深い愛なのか……あれ?マリファナ?マリアン?)

副会長「ホラ、切符は買ったから、女さんが目覚めたなら早いとこ行きましょ」




~水族館~

友男「水族館……キター!!」

友男「俺はこの水族館の魚たち全員と友達になる男だ!!」ドンッ





女「な、なんだか友男さんテンション高いですね」

会長「友男は動物が好きだからな」

友美「まだショーとかペンギンの散歩とかのイベントがあるまで、時間がありますねー副会長サン」

副会長「取り敢えず順路に従って見に行きましょ。ちょっと、友美さんパンフレット適当にたたまないで、シワになるでしょ」

友美「へーい」

友男「ナマコ!クラゲ!ヒトデ!あのワケ分かんねー生き物は、ワケ分からなすぎて見てるだけでワクワクしてくるな!」

会長「ナマコは美味しいぞ。酢の物にして食べれるし、内臓は塩辛にすると堪らん」

友男「いやゴメン食うのはないわ」





女(しまった!カメラを持ってきたせいで会長の写真を撮る手が止まらず話しかけられないー!!)カシャッ!カシャッ!カシャッ!



友美「それにしても大きな水槽だよね。このガラスとか暑さどれくらいなんだろ。牙突でも割れるかどうかってところか」

副会長「……私には魚の違いがサッパリね。友男くんは分かるの?」

友男「あ、あぁ、まぁな。ホラ、あれがブリ、んであの岩の辺りの群れがアジです、副会長!」

会長「どれも美味しそうだな。あのマグロなんか脂がのってそうだ」

友男「……お前な~人が懸命に泳ぐ魚たちの生命に感動してる時に、どぉーしてそういうな」

会長「腹が減ってきた。寝坊しかけて朝は食べなかったんだ」

友美「あ、だったらあそこに売店ありますよ」

友男「じゃあお前あそこでなんか買ってこいよ。あ、そうだ女ちゃん、一緒に行ったげて」

女「え?わ、私ですか?」カシャッカシャッカシャッ

友男「カイチョーにこのまま魚が美味しそうだってブツブツ言われるのイヤだから、必ず食べるように監視しといて欲しい」

会長「悪いか。自然の食物連鎖だ」

友男「な、頼むよ」

女「は、はい分かりました……」カシャッカシャッカシャッ



~売店~

会長「朝食抜きでクレープは少し重た過ぎるだろうか」

女「大丈夫ですよ!もし食べ残してしまった場合には私が喜んで残飯処理します!」

会長「それは安心だ」モソモソ

女「……それにしても会長、友男さんには随分厳しめというか、ツンツンしていらっしゃいますよね」

会長「」

会長「……そうか?」モソモソ

女「はい、間違いなく」

会長「……まぁ、俺もそう思う……」

会長「どうしても素っ気なくなって意地を張ってしまうんだ」

会長「小五の頃から成長していないよ」

女「……」

会長「女くん、落ち込んだか?」

女「いえいえ!大丈夫です!このくらいのハンデなど、バレーボールのスマッシュを顔面に喰らった程度です!」

会長「それはけっこう落ち込んだんだな……」





女「あ、でもせっかく遊びに来たんですから、何か目標を作ったらどうでしょう?」

会長「目標?」

女「そうです!何か一個、友男さんに関することで目標を立てるんですよ」

女「それで私は会長に対して目標を一つ決めます!」

会長「なるほど、確かに良い案だな」

会長「……取り敢えず今日の目標はさっそく、『キツいことは言わない』だな」

女「いいと思いますよ」

女「あ、ちなみに私は黙秘権行使で」

会長「え!?俺だけ知られてるってずるくないか!?」

女「いいじゃないですか!私は恋の師匠なので目標達成なんてワケないコトですし」

女「今日は会長が目標達成できるかどうか、ばっちり監視させていただきますね!」

女「会長の服の皺一つの変化さえ見逃さない私にお任せ下さい!」

会長「……ここまで自信が無いのは初めてだ」



友男「うぉぉおおお小さい亀、くっそかわいい!」

女「人工孵化させたアカウミガメの赤ちゃんですって。他の亀よりちょっと頭が大きめですね」

友男「うぉぉおおおなんだこのカニ、足が長過ぎるだろ!」

副会長「タカアシガニは足の長さが3m越すのだそうよ。でも長過ぎてちょっと気持ち悪いわね」

友男「うぉぉおおおなんだあの掃除機の先端みたいな頭のサメ!」

友美「アカシュモクザメ……あの頭を振ったら、月牙天衝みたいな斬撃出せそうだわ」





会長「……」

女「さっきからなんで会長黙ってるんですか!!」

会長「いや話に加わってしまったら目標が達成出来なさそうでな……」




~イルカショー~

友男「いやもち一番前っしょ!」

副会長「濡れるのはパス」

友美「同じく」

女「私もこの先輩のベストショットがたくさん詰まった一眼レフを濡らすワケにはいかないです……」

友男「えぇっ、みんな冷めてるな~。俺、絶対前に座ろうと思って濡れてもバッチシの服なんだけど」

会長「……」

友男「か、カイチョーは……?」バッ

会長「……」

友男「……」ジー

会長「……」

会長「…………いいぞ」スタスタ

友男「な……!?」

友男「あのカイチョーが嫌味も言わず優しいだと!?」

友男「な、何があったんだカイチョー!?でもマジでありがとう!」


>>59女くんが先輩呼びしてますけど会長のことです


ザバーン

友男「うわぁー!ちょっとかかった!見ろよカイチョー、濡れた濡れた!イルカジャンプかっけー!」

会長(小学生でもそこまではしゃがないぞ)

会長(……と、そういうようなことは言わないのが今日の目標なんだ)グググ

会長(しかし言わないというだけでいいのか?)

会長(……)

ザバーン

会長「ワーオレモヌレター」

友男「……」

会長「……」

友男「お、お前も、あれだな、けっこう楽しそうだな……」

友男「やたら抑揚の無い声だったけど……」

会長「……」

会長(身も心も砂となり風に飛ばされこの世から消え去りたい気分だ…… )





女「はぁ~一眼レフで撮ったクレープ食べてる会長も素敵です~」

友美「いやイルカショー見なさいよ」



~ペンギンの散歩~

ペタペタペタペタペタ
ペタペタペタペタペタ

女「和みますね~」

友美「なんか見たことあるなって思ったけど、女ってよくこんな動き方してるわ、なーる」

女「うぇ、本当に!?」

副会長「楽しいけど、小さい子どもに囲まれてて少し恥ずかしいわね」

幼女たち「キャッキャッ」ペタペタペタペタペタ

友男「うぉぉぉおおお……ペンギンとちっちゃい子のコラボ……!」

友男「俺ロリコンじゃないけどこの光景マジで昇天しそう」

会長「……」

会長(お前だって負けてない、なんて言えるワケもないというか馬鹿か全く男相手になに考えてるんだ俺はホモかそうだホモだ)

友男「ん?なんか寒気が……ペンギンのせいかな?」




副会長「大体見て回ったわね」

女「本格的にお腹減りました~」

友美「もう15時近いしね。なんか食べてお開きってトコロ?」

会長「そうだな」

友男「ここの水族館の中にあるレストランはちょっと高いから、外で食べようぜ」

友美「そういや近くにサイ○リアあったよね?」

女「なんかサイゼ○アばっか行ってる気がするような……」

友美「そうなの?まぁ近くにあるもんはあるんだから仕方ないじゃない」

友美「それが世界の選択なのよ」

副会長「私も異論はないわ」

友男「俺あそこのキッズメニューの間違い探し好きなんだよね~」

会長「あれはやたら難しくないか?軽い気持ちでやってみたら大苦戦して、結局全て見つからずじまいだったんだが」

友男「キッズらしからぬ難易度な」

副会長「そうなの?やったコトなかったわ」

友美「間違い探しは立体視できりゃラクショーですよ」

女「ふぇ~友美すごいね。私出来ない」

副会長「まぁ、ともかくサ○ゼリアに行きましょ」




~サ○ゼリア~

友美「案外楽しかったわ、水族館」

副会長「悪くは無かったわね」

女(そういえば副会長、全然普通だったなぁ。もっと取り乱すかと思ってたけど、失礼だったな)

副会長「……女さん、後で『友会』の写真頼むわよ」ボソ

女「」ざわ……

女(『友会』って『友男さん×会長』のこと……!?カップリングの略称を慣れた様子で使っているとは……甘く見ていました副会長……ッ!)ざわ……ざわ……

友男「あ、キッズメニューの間違い探し、新しいのになってるぜ!」

会長「やめておけ、全て見付けられずモヤモヤしたまま帰るハメになるだけだ」

友男「いいや、やるね!男には負けると分かっても挑まねばならない時がある!」バッ

友美「もし見付からなくてもアタシの立体視でお茶の子さいさいですよ」

友男「なんかチート能力みたいな名前だよな」

友美「ていうか、スマホだから答え検索出来るし」

会長「!……そう言えばその手があったか」

友男「カイチョーは真面目だからなー。その方法に気付かなくて、今まで答えが分からずモヤモヤしたまま店を出てたのか。とんだドジっ子だぜ」

友男「いや、ドジ郎?ドジ太?」ププー

会長「……」ムスッ






副会長「ねぇ一眼レフってビデオ機能ないの」ギロリ

女「すす、すみません、もう今日のでメモリを使い果たしちゃいました!」

副会長「くっ……!」




~帰り道~

友男「んじゃなーカイチョー女ちゃん」

副会長「それでは、また学校で」

副会長(写真は絶対忘れないでね)目ヂカラ

友美「んじゃねー。あ、今度さぁアンタに清水玲子さんの短編集『20XX』貸すわ~」



女「さよならー!今日はありがとうございました!」

会長「みんな気を付けてな」





女「ふぅ、今日は賑やかでしたね」

女「副会長さんや友男さんとも仲良くなれて嬉しかったです!」

女「会長の写真もメモリーの限り取れたのでホクホクです!早くバックアップ取ってフォルダ分けしなきゃ!」

会長「そうか。俺も楽しかったよ」

会長「……君のお蔭だな」

女「え?」



女「私ですか?だってそもそも、今日の集まりを考えてくれたのは友男さんですよ?」

会長「……それは君のことを慮って、アイツがやったことだろう?」

女「はうっ!?」

女「そ、そうです……仰る通りです……友男さんが橋渡ししてくれると言ってくれて」

女「バレバレですよね……」

会長「昔からそうだから気にするな。いい加減にお節介も懲りないものかと思うんだがな」

会長「でも、俺が言いたかったのはそっちじゃない」

女「違うんですか?」

会長「ホラ、クレープを買った時に、君が友男に関する目標を立てようって、言ってくれたじゃないか」

女「あぁ、あれですか」

会長「……あれが無性に嬉しかった」

会長「今までずっとアイツのこと一人で抱え込んでいたから、誰かに話せただけでも嬉しかったのに」

会長「ああやって励ましてもらえたことが……凄く嬉しくて楽しかったんだ」




会長「でも女くんには辛いことをさせていると思ってる」

会長「本当にごめん」

女「い、いいんですよ!それこそ私が勝手にやったことですから」

女「それに会長がそう言ってくれて、私も今とっても嬉しいんです」

会長「え……?」

女「会長はいつも友男さんのこと話す時、辛そうでしたから。それが私もなんだか辛くて」

女「だって好きな人のことを話すのが辛いって、おかしいですもん!もっとこう、ふわふわーって基本はなるもんです」

女「ですけど今日は、会長は会長なりにとても頑張っていましたし、こうして楽しかったって言ってくれたので」

女「私も目標達成です!無事師匠の勤めを果たせたようですね!」

会長「……」

女「会長、また友男さんとみんなで遊びましょうね!次のテスト明けにでもすぐ行きたいです!」

会長「……そうだな」

会長「絶対にそうする。その時は絶対に女くんを呼ぶから」

女「約束ですよ!」




~一週間後、昼休みの生徒会室~

女「今日で記念すべき400回目……会長好きです!つ、つ、付き合って下さい!」





会長「すまない女くん、気持ちには応えられない」ペコリ

女「はぅぁぁあああ……記念すべき400回目の失恋……」ガックリ

会長「でもちょうどよかったぞ。君が来るのを待っていた。お昼を一緒に食べようと思ってな」

女「本当ですか!?」ガバッ

会長「あぁ。君は月水の昼休みはここに来るからな」

女「私の行動パターンを把握して下さるなんて……感激ですぅぅうう」ぶわっ

会長「相変わらず喜び上手だな女くんは」

会長「でもこうやって息抜きでもしとかないと、明後日から考査期間だから息が詰まるんだ」

女「私が会長の、い、息抜きなになれてるんですかぁぁああ」ぶわわっ

会長「間違いなくなってるぞ」

会長「……考査期間と言えば……」ボソ

女「はい?」

会長「あ、あぁ、いや……考査期間って、いつも風紀委員が主導の身だしなみ検査があるだろ?」

会長「友男、髪を染めているから、どうするつもりかと思って、な……」

女「あ、友男さんですか……」

女「……は!」

女「そういえば、友男さんいつもコネで身だしなみ検査はなんとかしてるって言ってたような」

会長「……コネ?」

女「なんか風紀委員長さんと仲良いからスルーパスもらってるって」

会長「そうか……」




女「でも、友男さんって人見知りなんですよね?風紀委員長さんとはどういうお知り合いでしょう?」

会長「あぁ、それは副会長だ」

女「副会長さんが?」

会長「風紀委員長は副会長と幼馴染でな。そのつてで俺も知り合って、友男も知り合ったんだ」

女「へぇ~意外ですね。確か風紀委員長さんって男性じゃないですか。……も、もしかして副会長の彼氏さん!?」

会長「うーん、それはないな、あの二人には」

女「そうなんですか」

会長「まぁ、風紀委員長が便宜をはかってるなら問題ないだろう。彼は風紀委員長とは思えんくらい規則に緩いからな」

女「そうらしいですね。私でもよく噂を聞くくらい緩くて有名ですものね」

会長「下の学年でも有名なのか。飽きれたな……」




~明後日、テスト後~

女「テスト終わったー!」

友美「マジやばい。間違いなく昨日『うしおととら』と『金色のガッシュ』の師弟漫画を読んでしまったせいだ」

友美「藤田和日郎が憎い」

女「この後は身だしなみ検査だね!」

女「会長の身だしなみ検査は見ないワケにはいかない。ここからが考査期間の本番!」

友美「アンタも好きねぇ~」

友美「視察が終わったら帰ってきなよ。今度は『月刊少女野崎くん』貸すわ」

女「また連載中のレパートリー増やしたんだね」

友美「やめられないとまらない」

友美「かっぱえびせんですか?いいえ、マンガです」

女「じゃあ行ってきます!」

友美「行ってらー」




~廊下~

ガヤガヤガヤ

女(身だしなみ検査は、一組ずつ廊下の一番端にある空いてる教室に行って、その中で待ってる風紀委員の人たちに一人一人検査される)コソコソ

女(と言っても、その教室の直前に服装を正しておいて、検査が終わって教室出てすぐ元に戻せばいいだけのなぁなぁの検査だけど)コソコソ

女「会長の組はまだかな……」ボソ




会長「遅かったな女くん」ヒョイ

女「今日で402回目になりますが会長好きです付き合ってください!?」ビクッ

会長「驚くより先に告白とは、まさに新境地だ」

会長「残念ながらもう俺の組の検査は終わってしまったぞ」

女「あ、相変わらずバレバレ過ぎてもはや言葉が……」

女「でも、検査が終わったのならなんで空き教室の近くに?」

会長「あ、いや、その」

会長「……友男が大丈夫か気になって」ボソ

会長「でもアイツのクラスはさっき検査をやっていたが、そもそもその中にアイツはいなかった」

会長「本当にスルーパスのようだな」

女「確かにあんな堂々と髪染めたままの状態で検査を受けてからごまかすよりは、そもそも検査に来ない方がいいですもんね」

会長「しかしそれでアイツが助かるとら言え、風紀委員長がそれでいいのか……」





風紀委員長「なんだい、僕のやり方に不満そうだねぇ?」ヌッ

会長「」

女「」



風紀委員長「やぁ会長くん。風紀を乱しかねないなぁ、女の子とそんな親し気に話しては」

女「わ、私たち風紀を乱せてるんですか!?」

風紀委員長「……うーん、そんな返しは初めて受けたね」

会長「風紀委員長、彼女がかの女くんだよ」

風紀委員長「あぁ、あの有名な!君がそうなのかい?」

女「私って、ゆ、有名なんですか?」

風紀委員長「女くんが会長に告白するところを見た日に告白すると、必ずフられるっていうあの伝説の女くん!」

女「」





女「」

会長「女くん、知らなかったのか」

風紀委員長「もはやこの高校の名物と化しているのに、本人だけが知らないなんて」

会長「……ところで風紀委員長、友男の身だしなみ検査は?」

風紀委員長「彼なら僕が直々に行った検査でちゃんと合格してるよ」

風紀委員長「……という風に僕が誤魔化しているのだけど」

会長「いいのか、それで」

風紀委員長「顧問の先生も彼は放任さ。友男くんはちょっとした問題児だからね、身だしなみでちまちまケチ付けたってキリがないだろう?」

風紀委員長「それに僕、個人的に彼には恩があるからね。逆らえないんだ」

会長「恩?なんだそれは。初耳だな」

風紀委員長「まぁね。友男くんも僕に恩を売ってるとは知らないハズさ」

会長「?どういうことだ?」

風紀委員長「内緒だよ。もうそろそろ三年の身だしなみ検査は終わるから、僕はこれで失礼させてもらうよ」

風紀委員長「じゃあね、会長くん、女くん」ニッコリ

女「」

女「はっ!さ、さようなら風紀委員長さん!」

会長「随分と放心してたな、女くん」

女「いえ……そこまでフられてる印象があったとは思いませんでした」ショボン




~生徒会室~

ガラッ

友男「俺……参上!」ドンッ

友男「カイチョー!今暇かー?」

会長「……なんだ藪から棒に」

会長「というか、学校にいたのか。身だしなみ検査で姿が見えなかったから、もう帰ったのかと思っていたが」

友男「いや、なんかさっき風紀委員長がさぁ、俺の身だしなみのことカイチョーに聞かれたって言っててさ」

友男「おそらく見逃してもらってる件でカイチョーに説教くらいそうだから先に受けにきました……」ズーン

会長「……」

会長(別に怒る気なんてなかったのだが……俺がコイツに素っ気ない態度を取っていたからそんな風に思われたんだな……)

会長「……ま、まぁ、抜け道はよくない。検査前だけでも黒染めしろ」

会長「そもそも今更お前を女っぽいなんて言うヤツは、いないだろ……」

友男「……」

会長「……」

友男「……え?こんだけ?」

会長「……もっと説教されたいか?」

友男「いえ!いえいえ結構です!……なーんだ心配して損したぜまったく」

友男「な、せっかくだから一緒に帰ろうぜ」

会長「……」

会長「いいだろう、帰るか」




~生徒会室前の廊下~

副会長「……」

風紀委員長「……」メガネクイッ

副会長「……」サッ

風紀委員長「……」サッ



ガラッ



友男「なぁ、帰りにさーサイゼ行こうぜ」

会長「またか?お前は本当にあそこが好きだな」

友男「やっぱドリアは外せないんだよなー」



スタスタスタ



副会長「……」スッ

風紀委員長「……」スッ




女「……何やってるんですか……?」

副会長「」

風紀委員長「」




女「あの、明らかに会長と友男さんを見てらっしゃったと思うんですg」

風紀委員長「タイム!」ビッ

女「あ、はい!」ビシッ

副会長「ちょっと待っててね女さん」





風紀委員長「……僕は構わないが、副会長は人に見つかったらヤバいんじゃないか?」コソコソ

副会長「いいえ、彼女は私の趣向を知ってるわ」コソコソ

風紀委員長「え?それ本当かい!?」コソコソ

風紀委員長「だって君、中学では誰にも言わなかったじゃないか。一体どういう心変わり?」コソコソ

副会長「彼女の人柄は極めて善良よ。口も固いし。信頼できるわ」コソコソ

風紀委員長「ふぅん……まぁ、僕は元々オープンだからね」メガネクイッ

風紀委員長「君さえ問題なければ、僕も心置きなく話せる」コソコソ





風紀委員長「というワケで、女くん」

女「はいっ」

風紀委員長「とりあえず、生徒会室で話そうか」ニッコリ

副会長「あなたには聞いて欲しいの」

女「は、はい……」




風紀委員長「まぁ、古びたソファーだけど座ってくれ」

副会長「あなた生徒会執行部じゃないでしょ」

女「……あの、お二人でなぜ会長と友男さんを?」

女(副会長さんはまだ分かるんですけど)

副会長「……」

風紀委員長「別に何のことはないよ」

風紀委員長「僕はれっきとした腐男子なのさ」メガネクイッ

女「」

風紀委員長「ていうか、副会長を腐女子にしたのはそもそも僕だから」

女「」

女「」

女「え、え、どどどういうことですか!?」

風紀委員長「話せば長くなるね……」

風紀委員長「ーー僕は小さい頃からマンガが好きだった。少年マンガを読んでいた僕は、いつしか少女マンガにも興味を持つようになった」

風紀委員長「試しにネットで評判の良い少女マンガを探した僕は、『バナナフィッシュ』に目を留めたのさ」

風紀委員長「なんせ明らかに絵柄が僕の好きな『AKIRA』の影響を受けていたからね」

女「そう言えば友美がそれ読んでたような……三日間くらい思い出しては泣いてたって言ってました」

風紀委員長「僕はそのマンガを読んでね……目覚めたんだよ……」

風紀委員長「アッシュと英二の魂で繋がった関係……月龍の愛と憎しみ……!あの手紙のシーンではボロ泣きしたよ……!」

風紀委員長「その次に読んだのが『ここはグリーン・ウッド』だった」

風紀委員長「そしてまたしても僕は、その中の光流と忍の関係にえらく感銘をうけたんだ」

風紀委員長「複雑な家庭環境を抱えた忍にとって掛け替えのない太陽のような光流……!」

風紀委員長「それから僕はそういう表現も萌えの一種として受け入れるようになったのさ……」





女「えっと、つまりマンガがキッカケで好きになったってことですか?」

風紀委員長「そうとも言える」




副会長「それで、私と風紀委員長はずっと家が隣の幼馴染みなんだけど、私はこっそり彼の家でマンガを読んでたの」

副会長「うちの親が厳しいから、そうでもしないとマンガなんて読めなくて」

風紀委員長「それで副会長は必然的に腐女子の道を歩んだワケだね」

風紀委員長「でも百合好きにはなってくれなかったんだよ……あ、そうそう、この前僕の部屋で読んでた『オクターブ』はどうだった?」

副会長「まぁ、読めたけど百合には目覚めなさそうだわ」

風紀委員長「それは残念……」ガックリ

副会長「私たち、そもそもカップリンクからハマらないのよ」

風紀委員長「同じ二人組のコンビを選んでも、必ず攻めと受けは反対ばかり」

風紀委員長「しかも君、リバがダメだって言うじゃないか。前々から僕は主張してるけど、それってどうかと思うな」

風紀委員長「どちらもがどちらの立場を担えるのが同性愛の醍醐味じゃないか!」

副会長「それは一理あるけど無理なモノは無理なの」

風紀委員長「……まぁ、君の趣向は尊重するよ……けどね、これだけは僕は譲れない」

風紀委員長「会長×友男であるのだけは!!」ドンッ

副会長「……」ギロリ





女(なんか私を無視して議論が発展してるんですが……)





風紀委員長「腐れ縁である会長くんは友男くんの世話をするのが常だった」

風紀委員長「そうやって、いつまでも二人でいるのが当たり前だと思っていたんだ……」

風紀委員長「しかし!!高校三年になり進路を考えなければならない今、会長は気付く。二人は恐らく離れ離れになるであろうことに!」

風紀委員長「途端に胸に生まれる穏やかでない感情……いつしか会長くんは友男くんから目が離せなくなっていた!」

風紀委員長「そして理解する!俺は……俺は友男を友だちとして見ていなかった」バッ

風紀委員長「俺は友男が好きなんだ!!」ババンッ





女「……」シーン

副会長「まぁ、あなたの妄想シチュエーションは分かったわ。それも嫌いじゃない」

副会長「けれど私が思うあなたのもっとも悪いところは、その妄想を現実に押し付けてくる点よ」

女「え?ど、どういうことですか?」

風紀委員長「……副会長も信頼する女くんにだけは言うけどね」

風紀委員長「僕、本当に会長くんは友男くんを好きなんじゃないかなって思ってるんだ」

女「」




副会長「……あなたはいつもそうだったわ」

副会長「私と違ってオタクをオープンにしている分、クラスの男子同士や女子同士に頼んで、実際にハグしてもらったり、そういう写真をもらったり」

副会長「こっちが見てて恥ずかしくなったわよ」

風紀委員長「でも今回の『会友』は僕がわりと本気で追いかけてるカプなんだよ」

風紀委員長「だって三年になってから、明らかに二人がつるむのは多くなっているだろう?」

風紀委員長「しかも会長くんの方から友男くんに接してる場合が多いし」

女「な、なんでそんなこと把握してるんですか」

風紀委員長「そりゃ彼は人気者だからね。ちょっと彼の名前を出せば、みんな自分が見た会長くんの行動をベラベラ話し出すさ」

風紀委員長「で、話は戻して僕の推測なんだけど……まだ会長くんは自分の気持ちに気付いていないだけで、実際に本当に友男くんが気になってるのかもしれないだろ?」

副会長「推測じゃなくて妄想よ妄想」

風紀委員長「お固いな~副会長は」ヤレヤレ

女「……」

女(風紀委員長さん……なかなか鋭いです……)ゴクリ




風紀委員長「会長くんのことが好きな君の前で言うのは、大変申し訳ないのだけど……」

風紀委員長「僕はね、本気で二人ならあり得ると思ってる」

副会長「バカバカしいわ」

風紀委員長「でも副会長だって見ただろ?友男くんに誘われ満更でもなさそうに下校していった会長くんを!」

風紀委員長「あれは我ながらファインプレイだった。友男くんに、会長くんが身だしなみ検査のことを気にしていたことを伝え、さりげなく生徒会室へ行かせたのは正解だった」グッ

副会長「……まったく」

副会長「女さんからも言ってくれない?妄想するのは勝手だけれど、現実の可能性として見るのは愚かだって」

女「……」

副会長「女さん?」

女「……あ!」

女「わ、私、友美を待たせてるんだった!すみませんもう行かなきゃ」

副会長「え、ちょっと」

女「すみませんだいぶ待たせてるんです失礼します!」ダッ

ガラッ

バタンッ



副会長「……」キョトン

風紀委員長「……」キョトン

風紀委員長「ねぇ、副会長……女くん急にどうしたのだろう」

副会長「あなたが本気で彼女の好きな会長を友男くんとくっつけようとしてるから、ショックだったんでしょう」

副会長「これだからあなたはダメなのよ」

風紀委員長「……そうだったのだろうか……」

風紀委員長「……でも、悪いけど益々『会友』はくっつけたくなってきたよ」

風紀委員長「女くんが耐えられなくなったのは、僕の『会友』説に可能性があるからこそかもしれない……」

副会長「あなた本当に懲りないわね……」




~教室~

ガラッ

友美「あ、おかえり女」

女「……」

友美「ホレ、これ『月刊少女野崎くん』の三巻」

女「……」

友美「?どうしたのよアンタ。これ読みたくないの?」

友美「これよりアンタが前気にしてた樹なつみの『OZ』の方が良かった?」

女「友美」

友美「うん?」

女「……思わぬ困難が待ち受けてたよぉぉぉおおおお」びぇぇぇえええ

友美「え?」

友美「……やれやれだわ」




~二日後、廊下~

友男「あ、女ちゃん!」

女「友男さん!」

風紀委員長「やぁ、女くん」ニッコリ

女「……と、風紀委員長さん!?」

女「なんでお二人が?」

友男「いやー実はさ、風紀委員長とテスト終わったから息抜きしたいよなーって話しててさ」

友男「な、カラオケ行かないか?またカイチョーたち呼んでさ」

女「本当ですか!ぜひぜひ行きましょう!」パァァアアアッ

友男「よっし!」

友男「おい、風紀委員長。もちろん息抜きも大事だが、一番は女ちゃんとカイチョーだからな」

風紀委員長「分かってるよ」メガネクイッ

女「……」

友男「あ、あそこにちょーど友美ちゃんいるじゃん。俺声かけてくるな!」ダッ





風紀委員長「……女くん」

女「あ、は、はい!」

風紀委員長「その、一昨日はごめんね」

風紀委員長「僕が君の気持ちを傷つけてしまって……」




女「……あれは」

女「すみません!私もあの時とりみだしちゃって!」ペコリ

女「でも、もう私は大丈夫です!」

女「風紀委員長さんには負けないよう、私も私で会長に全力アタックさせていただきますから!」

風紀委員長「!……そうかい」

風紀委員長「ううん、君は凄くタフなんだね。でもそうじゃなきゃ、毎日告白なんてしないか」

女「ふふふ、あれくらいじゃあまったくめげませんよ!」




女(だって、恋を応援する人がいるのは普通のことだもんね)

女(友男さんや副会長が私を応援して、見守ってくれてるように)

女(会長にも思わぬ助っ人がいたって、それは普通のこと。当たり前のことだもん)

女(一昨日は取り乱してしまったけど……)

女(私もいつも通り会長を好きであり続けるだけだよね!)




~生徒会室~

女「今日で404回目になりますが……会長好きです!つ、つ、付き合って下さい!」






会長「ごめん、女くん」ペコリ

女「はぅぁぁぉあああ……」ガックリ

会長「そう言えば女くん、友男からカラオケ誘われたか?」

女「は、はいっ!」ガバッ

女「もちろん会長も来ますよね?」

会長「いや、行きたいのは山々なんだが……」

女「む、無理なんですか!?」ガーン

会長「いや、予定も何もないんだが……その……」

会長「……俺は音痴なんだ」ボソリ

女「……」

女「なんだ、そんなことですか~」ホッ

会長「そ、そんなことって……君は歌が下手な人間の苦悩を知らないのか!?」ガバッ

会長「気を遣って歌わないでいると一回くらい歌えよとせっつかされるわ、歌ったら歌ったで微妙な空気になるわ!」

女「す、すみません」

会長「あ。い、いやすまない。取り乱した……」

会長「音楽自体は好きなんだがな」

女「そうなんですか……じゃあカラオケ来て下さらないんですか……」ションボリ

会長「うぅ……」

会長「……め、メンツはどうなるんだろう?」

女「たぶんこの前の水族館のメンバー+風紀委員長かと」

会長「……」

会長「……そうか副会長も来るのか……」

会長「じゃあ行く」キリッ

女「あれ、あっさり変えましたね!?」

会長「いやーカラオケが楽しみだな女くん」

女「は、はい……」

女(なんで会長は急に乗り気になったんでしょう?)




~翌日、カラオケ~

女「今日で405回目になりますが……会長好きです!付き合って下さい!」




会長「すまない女くん」

女「はぅぁぁあああ……」ガックリ

女「……ではそんな中で歌わせていただきます……」ズーン

女「いきものがかりの『気まぐれロマンディック』です!』ガバッ

友男「フられたばかりでそんな歌が歌えるなんて……凄すぎるぜ女ちゃん!」

上手さ:普通
ジャンル:JPOP


~♪~


友美「えーじゃあ歌います」

友美「レディー・ガガの『Born this way』」

女「友美上手いんですよ~」

風紀委員長「洋楽か~選曲がまず凄いねぇ」メガネクイッ

上手さ:プロ級
ジャンル:最近の洋楽ヒット曲


~♪~

友男「ちょ、友美ちゃんの後とかマジか」

女「確かにあの後はちょっとドンマイでふね」

友男「調子乗ってエルレの『Space Sonic』いれてしまった……」

上手さ:ちょっぴし下手
ジャンル:ロキノン系


~♪~


風紀委員長「言わずもがなアニソンかジャムプロの二択だね」

風紀委員長「まずジャムプロの『SKILL』でいかせてもらうよ」

友美「いきなりぶっ飛ばしますね風紀委員長サン」

上手さ:少し上手い
ジャンル:アニソン、ジャムプロ


~♪~

会長「……と、とりあえず一曲は歌うが……」

会長「短いからクイーンの『We will rock you』で……」

女「会長も洋楽歌うんですか!素敵です!」

女「会長のrの発音だけで心が癒される予感です!」

会長「今のも聴くけど、80~90年代の古いのが好きなんだ」

上手さ:わりと下手
ジャンル:80~90年代の洋楽


~♪~


副会長「最初に言っておくけど」

副会長「私かなり下手よ」どんっ

風紀委員長「いっそ開き直ってみせるとはさすが副会長」

副会長「私は自分の音痴と戦い、希望(友会)を手にいれて見せるわ」

副会長「山下達郎の『高気圧ガール』」

女「ふ、古すぎです……!」

友美「親が聞いてたんでしょうね」


上手さ:ド下手
ジャンル:昔の邦楽





~一時間半経過~

友男「おーおーしき姿の孤独ーな戦士ーよーたまーしいを込めたー」

風紀委員長「怒りの刃たたぁきつけて~時代にぃ~輝けぇ~」

友男・風紀委員長「「牙狼ぉぉぉぉおおおおおお!!」」キィーン





友美「さっぱり分からないんだけど」

女「カラオケの映像的に特撮物っぽいですね」

会長「友男は特撮が好きだからな」

副会長「マイクがハウリングしてるじゃない……」

会長「そろそろみんな飲み物がなくなってきたな」

会長「副会長、飲み物は何がいいんだ?取ってくるぞ」

女「あ、私も行きます!」

友美「アタシはウーロン茶がいい」

副会長「私は」

友男・風紀委員長「牙狼ぉぉぉぉおおおおおお!!!」

副会長「……」

副会長「私はオレンジジュースで」ギュッ

風紀委員長「いだだだだだだ!?なんで僕は脇腹を全力でつねられねばならないんだい!?」




~カラオケのドリンクバー~

会長「……」グッタリ

女「お疲れですね」アセアセ

会長「歌が下手な人間にとって、カラオケの疲労度は半端ないものだな……」

会長「女くんはなかなか上手いもんだな。羨ましいよ」

女「そ、そうですか?友美が凄すぎて褒められるなんて思いもしなかったです。凄い照れます。えへへ」

会長「歌手の声と合っているからかな」

友男「な、俺は俺は?」ズイッ

女「友男さん!ドリンクですか?」

友男「うん、ほら、二人が出ていった時は俺と風紀委員長で歌ってただろ?んで俺らも飲み物が欲しくなって、それでジャンケンして俺が負けちゃったから」

女(さすが風紀委員長さんです……運すら味方にするとは)ゴクリ

友男「悪いなカイチョー、カラオケ来てもらって。ここ、人数多い方が安いからさ」

会長「……」ジロリ

女(『本当は橋渡しのためだろ』って顔してますね)

女(でもその眉間の皺すら黄金比に支配されているような気がします!)

友男「あ、そうそう思い出した。もうすぐ女ちゃんの歌の番になるぜってことも言いにきたんだった」

女「わっ、本当ですか!今行きます!あ、でもまだ私の飲み物が」

会長「俺が持っていく。オレンジジュースでいいか?」

女「!!あああありがとうございます!」パァァアア


会長「……」

会長(……友男と、二人きり……)

友男「カイチョーの歌ってる歌ってさ、かっこいいの多いよな~」

会長(……言ってみるか?俺も思い切って……)

友男「俺、アレ好きだぜ。前にカイチョーが歌ってたThe Scriptってバンドの曲。あれもイギリスのバンドなのか?」

会長(……出会ってから七年間ずっと好きだったと……)

会長(……それを誰にも言わないまま生きてきたと……)

会長(……でも……)

会長(……女くんが俺を励まして応援してくれて……)

会長(……それがとても嬉しくて、楽しくて……)

会長(…………女くん)

会長(……まだ)

会長(まだ言わないでもいいよな)

会長(俺は今のままでいたいと思ってるんだ)

会長(昔のように初めから諦めてるワケじゃなく、そう思ってるんだ)



友男「カイチョー?おーいどうしたんだよ」

会長「何でもない」

会長「早く戻るか」

友男「?おう、そーだな」








~四日後、昼休み生徒会室~

女「今日で409回目になりますが……会長好きです!私とつ、つつつ、付き合って下さい!」





会長「すまない、女くん……気持ちには応えられない……」ペコリ

女「はぅぁぁぁあああ……」ガックリ

会長「……」

女「どうしたんですか?会長。どこか元気がないですね」ガバッ

会長「え?……よく分かるな、女くん」

女「分かりますよ!伊達に毎日告白してません!」

女「それに……何で元気が無いのかも分かっちゃいますよ」ニコッ

女「友男さんですよね?」

会長「驚いたな」

会長「バレバレなのは俺も同じか……」

会長「実は今日は朝から友男の姿を見なくて、メールもしてみたが返事が無くて……」

女「そうなんですか?それはちょっと心配ですね」

会長「最近はサボりもそこまでひどくはなかったのだがな」





ガラッ

友男「……お邪魔しまーす……」



会長「おい友男、お前その怪我……!」

女「ぎゃぁぁあああ!友男さんの頭から血が!」

女「くわばらくわばらくわばらくわばら」ガクガク

友男「あ、大丈夫大丈夫。おでこ切っただけだから」血ダラー

女「そうだとしても早く保健室に行ってください!シャツが血に染まってますよ!?」

友男「いやーハンカチもティッシュもタオルも、物の見事に全部忘れてて止血が出来なかったんだよ。それに保健室行ったら絶対に先生に怒られるし……」

女「すっかり忘れてました……友男さんって街で喧嘩してる噂がある人でしたよね」ガクガク

友男「いやでも悪いことはしてないよ!?なんか歩いてたらさ、ヨッちゃんがヤンキーに絡まれてるのが見えて……」

友男「あ、ヨッちゃんってのは近くの河川敷に住んでる、ホームレスのおっさんなんだけど」

女「もしかして街でしょっちゅう喧嘩してる噂って……」

女「むしろ人助けしてたということですか?」

友男「まぁでも喧嘩には喧嘩で返してますのであながち間違いでも」

会長「……ほら、救急箱」ドサッ

友男「あざーっす!お借りします!」




会長「立ち向かえる勇気と腕っ節は素晴らしいが、もっと解決方法を選べお前は」

友男「頭が悪いので考えるより先に体が動いてしまうというか……」

会長「暴力沙汰とはいえ理由が人助けなものだから、教師連中もなまじ扱いにくいんだろうな」

女「でも、怪我してるならなんで学校に来たんですか?」

女「こそこそ学校に来て手当するより、家に帰られた方がよかったんじゃないですか?」

友男「……」

友男「家に帰ったところで……俺の居場所なんてねぇんだよ……」

女「え……?」

友男「……悪い、気にしないでくれ女ちゃん」

女「い、いえ……なんだかすみません……」

女(どうやら友男さんには複雑な家庭環境があるみたい……)ゴクリ





会長「何をシリアスな空気にしてるんだ。単純に親にも口やかましく怒られるから嫌なだけだろ」

友男「いやー俺の家は美容院だからさー家に親がいない時なんてないんだよねー」

女「」




友男「会長もうちの美容院よく来てくれるんだぜ」

会長「近いからな。それにかなり割引してくれるんだ」

友男「女ちゃんもよかったら来なよ。俺の知り合いはなんと今なら50%オフ!!」

友男「さすがにタダは無理なんだけど」

女「50%オフっですか!?凄く太っ腹ですね。そんなまけて大丈夫なんですか?」

友男「大丈夫だってーなんせ俺の友達が少ないからな。だからこそ半額なんて破格のサービスが出来るんだぜ」フフン

女「そ、そうなんですか」

友男「そうそう、俺の髪も親が染めてくれるんだ。だからタダ」

友男「俺が女っぽく見られたくないっていうのと、親の練習台が欲しいっていう利害関係が一致してるワケ」

女「とってもご自由なご両親ですね……」




女(友男さんって、以前に話を聞いてた印象ではちょっと不良なイメージだったど)

女(実際こうして話したり、喧嘩や髪染めの理由を聞くと、とてもいい人だなぁ……)

女(……でもどこか残念な印象が……)

女(……彼女がいないのも、会長に取られるせいもあると思うけど、いい人止まりタイプだからかも……)





女「友男さん、頑張って生きて下さい」しみじみ

友男「へ?何の話?」キョトン




~一週間後、廊下~


風紀委員長「もう五月も終わってしまうねぇ」

副会長「六月って何かめぼしいイベントあったかしら」

風紀委員長「確かテストくらいしかないよ」

風紀委員長「あ、あと眼科検診だね」

副会長「まったく本当につまらない月ね」

副会長「ここまでイベントがカスカスだと、梅雨という自然現象に屈する気満々としか思えないわ」

風紀委員長「でも七月にスポーツ大会があるじゃないか」

風紀委員長「六月はそれの練習をし始めてたよね?スポーツ大会は各学年の同じ組で軍団を作って対抗するんだ」

風紀委員長「各軍団で募った有志による応援団のパフォーマンスとか、軍団の応援旗旗作りとか、けっこう準備することがあったハズさ」

副会長「でも三年は受験があるから、二年が主体的にやるのよ?」

副会長「『友会』的に美味しいシーンが見れるのかしら」

風紀委員長「そうだねぇ、『会友』的に美味しいシーンがあると願いたいね」

副会長「……」ギロリ

風紀委員長「……」メガネクイッ



友美(なんであの二人は無言で火花散らしてるワケ?)





風紀委員長「おや、友美くん」

友美「どーも」ペコリ

副会長「……そう言えば、アナタってマンガ好きなのよね?」

友美「好きですけど」

風紀委員長「でも君は腐女子ではないんだよね」

友美「そーですよ。でもマンガ好きだとイコール腐女子みたいな偏見ってヤですね」

副会長「私は腐女子側だけど、一緒くたにされるのは、双方にとって確かによろしくないと思うわ」

風紀委員長「ふうむ、友美くんはノーマルのカップリングが好きってこと?」

友美「……ていうかそういうカップリング萌えとかキャラ萌えはしないですね」

友美「どんな表現であれ面白ければいいです」

友美「マンガという作品に宿る面白さは根本的に変わりませんから」キリッ

風紀委員長「と、友美くん……かっこよすぎるよ!」

副会長「やましい目で見てる私たちには眩しいわ……」



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