女「ねえねえ、超展開ってなあに?」男「う~ん……」(31)

女「ねえねえ」

男「んー?」

女「超展開ってなあに?」

男「う~ん……」

男「なんていえばいいのかなぁ……」

男「一言でいうなら──突拍子もない展開ってことかな」

女「突拍子もない?」

男「いきなり、今までの流れからは考えられないような展開が来る、みたいな……」

女「たとえば?」

男「たとえば……そうだなぁ……」

男「キミがいきなり、オレをひっぱたくとか」

女「こう?」

バチンッ!

男「ぶっ!?」

女「こう?」

バチンッ!

男「べっ!?」

男「ちょ、ちょっと──」

バチンッ!

男「いだっ! や、やめ──」

バチンッ!

男「あばっ! 待って待って待って──」

バチンッ!

男「あぐっ!」

バチンッ!

男「おぼっ!」

男「や、やめてくれよ!」ヒリヒリ…

女「どうだった?」

男「……なかなかよかったんじゃないかな」

女「ホント!?」

男「喜んでもらえて嬉しいよ……痛かったけどね」

ズガァァァァァンッ!!!





それはあまりに突然の出来事であった。

なんの前触れもなく、男の肉体が轟音とともに爆発したのだ。

しばらくして、我に返った女が周囲を見回すと、

あちこちに“かつて男を構成していたもの”が飛び散っていた。



女「いやっ……! いやぁぁぁぁぁっ!!!」

肉片「どうだい? 驚いたかい?」

女「アナタは……男さん!?」

肉片「そう」

肉片「もっとも、このとおり肉片になってしまったけどね」

女「ビックリしたわ……これが超展開っていうものなのね!」

肉片「分かってもらえて嬉しいよ」

肉片「だけど……これからどうしようかな」

肉片「もはやオレは肉片だから、人権も選挙権もなにもない」

肉片「肉片を雇ってくれる企業なんてないだろうから……お金も稼げない」

肉片「まいったなぁ……」

女「!」ハッ

女「わたしにいい考えがあるわ!」

さっそく、女は肉片に塩コショウを均一にふりかけた。

次に女は厚手のフライパンを用意し、十分に加熱すると、

油を垂らし、フライパンの隅々にまで行き渡らせる。

そして、肉片をフライパンの中に放り込む。

ジュワァッと大きな音を立て、熱せられる肉片。

肉片がキツネ色に変化する。それにつれて、辺りにジューシィな香りが漂ってきた。

女「う~ん、いい匂い」ジュワァァァ…

女「肉汁が浮いてきたら、ひっくり返して、と……」ヒョイッ

女「裏面もじっくり焼く!」ジュワァァァ…

女「あとは皿に盛りつけて──」ササッ

女「出来上がりよ!」ジャン!

ステーキ「おお、すごい! 我ながらうまそうだ!」

司会「大変お待たせいたしました!」

司会「“無敵の料理”VS“最強の料理”!」

司会「両シェフともに料理が完成したもようです!」

司会「それではさっそく、審査員の方々に試食していただきましょう!」

司会「まずは“無敵の料理”からどうぞ!」

司会「ずばり、シェフの作ったメニューはなんですか?」

シェフ「カレーライスです」

司会「香ばしいいい匂いが漂っていますねぇ~」

シェフ「最高級のお米と希少なスパイスの組み合わせ、どうぞご堪能ください」

司会「では、審査員の方々、ご試食下さい!」

審査員A「うん、実にうまい!」

審査員B「気持ちいい汗をかけるカレーライスだね!」

審査員C「おいしいです!」

審査員D「おぉ~、ルーとライスのハーモニーがたまらぁ~ん!」

審査員E「シンプルにして、極上のカレーライス! まさに無敵の料理です!」

司会「おおっ、これは高得点が期待できそうです!」

司会「続いて、女さんの作った料理は?」

女「ステーキよ」

司会「ちなみになんのお肉ですか?」

女「ナ、イ、ショ」

ステーキ「企業秘密さ」

司会「おおっ、しゃべるステーキとは珍しい! ではご試食下さい!」

審査員A「うん、実にうまい!」

審査員B「気持ちいい唾液を流せるステーキだね」

審査員C「とってもジューシィですね!」

審査員D「…………」

審査員E「濃厚な味わい! まさに最強の料理の名に恥じぬステーキです!」

司会「こちらも高評価! さぁ、判定はいったいどうなるのでしょうか!?」

司会「クッキング・ジャッジメントタイム!」

司会「本日の勝者は!?」



無敵の料理 97 ─ 98 最強の料理



司会「わずか一点差で、“最強の料理”ステーキの勝利です!」

シェフ「くそぉ~……!」

女「やったわ!」

女「やった、やった、やったぁ!」

女「これで……ようやく分かったわ!」

女「男さんを爆殺した犯人がね!」

司会「えええええ!? 分かってしまったんですか!?」

シェフ「い、いったい誰が……!?」

女「犯人はアナタよ!!!」ビシッ

女「審査員Dさん!!!」

審査員D「!」

審査員D「な、なぜ私が犯人だと……!?」

女「だって……アナタだけわたしの料理に口をつけなかったもの」

女「知ってたんでしょ? あれが男さんの肉、つまり人肉だってこと……」

女「だから、アナタは口をつけられなかったのよ!」

審査員D「う、ぐぐぐ……!」

審査員D「ま、まさか……この番組は……!?」

女「そうよ、全ては犯人をおびき出すためにセッティングしたの」

女「審査員にしたアナタたち五人の誰かが犯人ってところまで絞り込めていたからね」

女「さ、司会さん……じゃなくて警部さん、彼を逮捕してちょうだい」

司会「ありがとう。本当は恋人を殺したヤツのことが憎くて仕方ないだろうに……」

女「それは……いわないで……」

司会「……すまん」

こうして事件は解決した。



今回の事件で彼女が負った傷はあまりにも大きい。

しかし、こうしている間にも、今もどこかで悪は善良な人々を脅かし続けている。

女探偵である彼女に、立ち止まっている時間はない……。



女(男さん……。わたし、アナタのこと絶対に忘れないわ……)







           女「男さんを殺した犯人を必ず捕まえてみせる!」 ~ 完 ~

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