キノの旅SS短編 「営業力」 (33)

(説明及び注意)
・稚拙なのは承知でお読みください。お持ちのキノやエルメスのイメージと違う場合もございます。
・先の展開が読めてしまい面白くない方もいらっしゃることと思います。実力不足です。すみません。
・誤字脱字ありましたら申し訳ありません。


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「営業力・b」

「旅人さん、本当にありがとう。」
夕日がオレンジ色に空を染める頃、城壁の前で男が満足そうな顔で言う。

「いえ、構いませんよ。でも本当に良かったのですか?」

「そうそう、キノの料理をあんなに美味しそうに食べて後でどうなることやら。」

「そうだね、たぶん我々の国は近いうちに内紛が起こるだろうね。」

茶化すエルメスを無視した形で男がキノの問いに答える。

「何だ、心配して損したねキノ。」

エルメスに代弁されたキノは少しだけ驚いた表情で男に視線を向ける。

「そりゃあ、私だって実際食べるまではそんなこと考えてなかったよ。けど、あんなに美味いんじゃなぁ、時間の問題だと思うよ。」

「そうですか、それでも国に戻られますか?このまま近くの国に行くことも出来るのでは?」

「他に不満でもあればそれも考えただろうけど、運良く他に不満はないからね、それに、内紛が起きても一瞬さ、国民のほとんどは王族に味方しないよ。」


「ですが、そうならなかったら?」

「あんなに美味いんだから、誰だって一度食べたらまた食べたくなるさ。日常に食べてる人には分からないだろうけどね。」

「ねぇ、おっちゃん、ちなみに学校って行った?」

「学校?どうしてだい?行ってないよ。私にとっては会社の経営やいかに商品を売るかって勉強の方が大事だったからね。」


「なるほどね、ありがとさん。」

「それでは僕たちはそろそろ行きます。」

「あぁ、ありがとう。それじゃあ。」




見送る男の姿が小さくなった頃、エルメスからキノへ投げかけます。
「ねぇ、キノ。『一度』があると思う?」

「さぁ、どうかな。彼の営業力次第さ。」


「営業力・a」

木々の生い茂る一本道を一台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)が走っていた。
空はほとんど見えない。高い木々が両脇に並び、時折野生動物の姿も見える。
モトラドは、後輪の脇に黒い箱を、上に鞄を載せていた。さらに燃料と飲料水の缶をいくつも取り付け、寝袋と共にロープで縛っている。
運転手は、白いシャツと黒いベストを着ていた。鍔と耳を覆うたれのついた帽子をかぶり、あちこちが剥げかかった銀色フレームのゴーグルをはめていた。
腰を太いベルトで締めて、右腿には、ホルスターでリヴォルバー・タイプのパースエイダー(注・銃器。この場合は拳銃)を吊っていた。腰の後ろにもう一丁、自動式を横向きにつけている。


運転手が
「うん、情報通りだ。」
視線の先に見えてきた城壁と城壁よりも高い、国内の建物を見つめ口を開いた。
「どんな国だろうねぇ。」
モトラドが誰に言うでもなく呟く。
「さぁね、行ってみれば分かるさ。」


城壁の前まで来ると、門の脇にある小さなログハウスから散弾タイプのパースエイダーを方からかけた番兵が出てきたので挨拶を交わし、他の国でしてきたように希望を伝える。
「観光と補給で三日間滞在したいのですが。」
番兵は一通りキノとエルメスを見渡した後、明るい表情で、
「やぁ、旅人さん。滞在は許可できますが、いくつか条件がありますので確認を。とりあえず建物の中へ。」

促されログハウスの中に入ると、冬に使うのであろうストーブと、机や椅子だけが目に入る。番兵は真っ直ぐ机に向かうと一枚の紙をキノに手渡す。
「そちらに注意事項などがまとめてあります。了承いただけるならばサインを。審査はそれだけです。」
「分かりました。」


キノが渡された紙に印刷された文章に目を通す。そこには、この国では王族による政治が行われており、菜食主義であり、外部の人間であっても獣肉も魚肉も食べられないこと、また持ち込めないこと。
国民でなくとも、旅人や商人いかなる者も国内ではこの国の法が適応されることが書いてあった。
「質問させてもらってもいいですか?」
「はい、構いませんよ。」
「この国の法律についてですが-」
注意書きを読み終えたキノが、モトラドの持ち込みは出来るか、今まで訪れた国でしてきた過ごし方で問題ないかを確認していく。
「ありがとうございます。問題ありません。入国を希望します。」
「そうですか、歓迎します。我が国での滞在をお楽しみください。」


門をくぐると土を慣らした道の脇に木造の家が並ぶ。離れた位置に一際高い建物が一つ顔を出す。
「あれも木造だとしたら大したものだよ。是非見学したいね。」
「まずは、宿がいいな。今日は、シャワーを浴びて、白いシーツのベッドでゆっくり眠りたいよ。」
「言うと思ったー。」

二日目。いつも通りパースエイダーの抜き撃ちの練習をして、朝ごはんをたらふく食べて、エルメスを叩き起す。
「いつも通りだってさ。失礼だよね、ちゃんと起きてる時だってあるんだよ。」
「さぁ、どうだか。大体誰に言ってるのさ。」
「まぁまぁ、きっとこれぐらいの遊び心は許されるよキノ。」
「なんのことか分からないよ。もう行こう。」



「まいったなぁ。」
宿に帰ってくるなりコートも脱がずにベッドに飛び込むと天井を眺めながらぼやきます。
「あのね、キノ。一応言っておくと、人間は肉がなくても野菜だけで動けるかもしれないけど、モトラドはそうはいかないからね。」
「分かってるよ。分かってるから困ってるんじゃないか。」

宿を出たキノとエルメスはまずお城を見学に行きました。中には入れませんでしたが、お城の前に行くまでの間もエルメスは一人で唸っていました。
まず、お城は住宅の集まりとは離れた場所にありました。建物が見えなくなると、上り坂の傾斜が強くなり、途中に川が一つ。幅は住宅二軒分ほど。橋の幅はモトラド二台分。
何度か一本道のカーブを曲がると、やっとお城の全体が見えました。住宅一軒分よりも高く石が隙間無くびっちり敷き詰められたその上に飾りを付けた二階建ての木造のお城でした。
キノがどうして石が崩れないのか不思議に思っている横で、エルメスはやれ天然の要塞だとかなんとか言いながら石と木だけのお城に感心して、とにもかくにも観光を楽しみました。

問題はその後、燃料や携帯食料の補給をするため買い物に行った時でした。
この国では、自動車やモトラドが大変珍しく、燃料自体がこの国では造れないため、燃料がとても高価だったのです。



「次の国まで押して歩いてくれる?」
「それは嫌だなぁ。でも、エルメスを高く買ってくれる人がいるかも。」
「ひどいなぁ、大体それじゃ本末伝統ってやつだよ。」
「本末転倒?それもそうだね。」
「そうそれ!」
本当に困っているのか分からないような会話をしていた時でした。
コンコン-


ドアをノックする音が響きました。
「はい、なんでしょう。」
ベッドから降り、念のため腰のパースエイダーに手をかけて答えます。
「おくつろぎのところすみません。どうしても旅人さんにお会いしたいという方がいましたので勝手ながらお連れしました。」
「要件はなんでしょう?」
まだパースエイダーに手をかけたままです。
「旅人さん!お願いがあります!お礼は十分に致します!」
先ほどとは違う男の声が勢いよく返ってきました。
「キノ、お金持ちだといいね。」
「その前に僕に叶えられるお願いか分からないよ。」
小さな声で一言ずつ言葉を交した後、
「まず、あなたのお願いを僕が叶えられるかは分かりません。でも、話を聞いてみようとは思います。もしかしたら時間の無駄になるかもしれない。構いませんか?」
丁寧にドアの向こうに言葉をかけました。
「構いません!どうかお願いします。」
明るい声がすぐに返ってきました。

すみません。あと少しで終わりなんですが明日更新します。レスくれた方、読んでくれた方ありがとうございます。

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