まゆ「手作りまゆをプレゼント」 (13)

佐久間まゆネタです。
一部グロ表現あり。苦手な方はご注意を。

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まゆ「プロデューサーさん。まゆのハジメテをあげます」

声は聞こえなかったが、彼女の口はそう動いていた。
女子寮の屋上から見下ろされる僕。
冬の到来を感じさせる風が不安を冷やしていく。

あゝ なぜ こんなことに...


そうだ。僕は手紙を貰った。
今朝、出勤するとデスクの上にピンク色の封筒が置かれていた。
かわいらしいリボンのシールで封をされ、中には便箋が一枚。

『夜9:00に女子寮の前にきてください。まゆのハジメテをあげます、待ってます。 佐久間まゆ  P.S. I love you. 」

彼女らしい夢見がちな文章。
丸みを帯びた文字が幼さを更に強調する。
しかも、なんだ「P.S.」って恋愛映画に毒されすぎだろう。
子供の遊びに付き合っている暇はない。
苛立ちを覚えつつも、どこか違和感を感じるその手紙を捨てることが出来ずに僕は待ち合わせ場所へとやってきた。

ん...まてよ。
もっと前だ。そう。この手紙のきっかけがあったはず。
そうだ。先週の仕事終わりもこれに関わっているんだ。

先週の仕事終わり、僕は『失敗』をした。
あろうことか件の佐久間まゆと事務所で二人きりになってしまったのだ。
アイドルを家に送り、事務所に帰り、電気をつける。
するとソファーに少女が座っているではないか。
勿論、眠ってしまっているわけでない。
その丸い瞳は、僕をはっきりと捕らえていた。

まゆ「プロデューサーさん、おかえりなさい。今日もお仕事お疲れ様でした」

P「ただいま。まゆ、今日はもう仕事は無いはずだ。用も無いのにこんな時間まで事務所に残っているんじゃない」

まゆ「ごめんなさい。でも、まゆプロデューサーさんをお迎えしたかったんです」

P「その気持ちは嬉しいけど、お前はまだ未成年だ。夜9:00を回っての労働は禁止されている」

言い終るか終らないか。彼女は僕に抱き着いてきた。
胸に顔をうずめながら、こもった声で言った。

まゆ「まゆ、プロデューサーさん会いたくてここまで来たんですよ?」

まゆ「......プロデューサーさん。まゆと付き合ってくれませんか?」

P「バカな事を言うな。さっさと準備しろ。家まで送っていく」

デスクに積まれた書類を視界に入れないように僕は促した。
何が楽しくて自分の事務所のアイドルに手を出す阿呆がいるのか。
僕は、まるで自分がそんなクズと同じだと言われているようで、腹立たしかった。

彼女は、軽く鼻歌を歌いながら車に乗ってくれた。
きっとドライブ気分なんだろうな。
運転中、一方的のされる彼女の話。
どこの公園が綺麗だ。
野良猫がかわいかった。
学校でこんなことがあった。
話ながら向けられる目線が、ものの見事に集中力を乱してくれる。

路肩に車を止め、僕は言った。言ってしまった。

P「いいかい。まゆ。いや、佐久間さん」

P「僕は、アイドルのプロデューサーだ。所属のアイドルには絶対に手を出さない」

P「君をスカウトしたのだって、雑誌で一番可愛らしかったからだ」

P「僕は『アイドル』としての君はとても好きだ。でも、異性や女性としては見られない。」

P「歌って、踊って、ファンを笑顔にさせる。そんな君は好きだ」

P「だから、アイドルに有るまじき言動はしないでくれ。以上」

言葉を挟ませる隙を与えず捲し立てた。
彼女は、目線を自身の膝に向けていた。
おそらく涙も流していたと思う。
彼女が一人暮らしで良かったと心から思った。

白昼夢のような回想を終える。
屋上に鎮座する彼女は、事務所から持ち出したのかライブの衣装を身にまとっていた。
初めてのライブ。
彼女がデザインした中から、僕が選んだ衣装。
懐かしさを覚えるピンク色とリボン。

そして、僕だけのステージが始まった。
音源もなく、マイクもない。
それでも、彼女は歌った。踊った。

僕はそれを見て『帰りたい』と思ってしまった。
どこまでいっても小娘の戯れでしかないステージ。
早く家に帰って、シャワーを浴び、ビールを飲みたいと思った。
しかし、そうしなかったのは心の中に残った一抹の親心だったのだろうか。

間奏に入る。
レッスン通り、間奏の間もダンスを止めることが無い。
その流れるような動作で、彼女は『自分に火を点けた』。

一瞬光った赤い炎は、ピンクを赤に染めていった。
前もって薬品を染み込ませてあったのだろうか。
彼女は一気に炎に包まれた。
しかし、歌が、ダンスが止むことは無かった。

熱と酸欠で文字通りボロボロになっていく姿。
肌色が黒に変わっていく様。
僕は、そこから動くことが出来なかった。
非日常を目の当たりにしたからなのか。
心のどこかで、こうなることを期待していたからなのか。


ステージは、崩れ落ちるように、落下した彼女の振動で終わりを迎えた。
肉の焼ける臭い。
ポリエステルの焦げる臭いが鼻をつく。

ゆっくりと
確実に一歩ずつ
衣装の破片と
灰を避けながら
僕は『佐久間まゆ』だったものに近づいて行った。

焦げた肉の隙間から見える赤身が僕を非難するように鮮やかだった。
衣装は溶け、肉に入りついているのが分かる。
サラサラだった髪はすべて燃えてしまっていた。


僕は、ソレを静かに見つめながら、胸から携帯電話を取り出した。
ピンクのリボンの破片が、空に舞いがって行くのが見えた。

以上となります。
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