撫子「櫻子の授業参観か……」 (30)

撫子「櫻子、お風呂あいたよ」ガチャ


向日葵「あっ、撫子さん」

撫子「ああひま子。来てたんだ」

櫻子「お風呂はいっちゃおーっと! じゃあ向日葵、適当に帰ってていいからねー」だっ

向日葵「ちょ、ちょっと!……もう」はぁ


撫子「……ごめん、タイミング悪かった?」

向日葵「い、いえ。そんなことは……」

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撫子「宿題やってたの?」

向日葵「いえ、これは宿題じゃなくて私が個人的に櫻子に出した課題なんですけど……あの子全然やってくれなくって」


撫子「ごめん、ごめん、ごめん……!」ゲザァ

向日葵「ちょちょちょ、撫子さんが謝ることは……! 顔を上げてくださいな」

撫子「ひま子、櫻子のためにそんなことまでしてくれてたなんて……私知らなかった……!」

向日葵「い、いえ……こんなの好きでやってるだけですわ」

撫子「まったくあの子は……ひま子の気持ち考えたことあるのかな……」はぁ

向日葵「…………」

撫子「成績もふるってないよね……提出物とか、ちゃんとやってるのかなあ」

向日葵「ある程度は私からも出すように言ってますから、たぶん大丈夫かと」

撫子「でもあの子が学校で貰ったものをお母さんに見せてるとこ、あんまり見たことないな……」

向日葵「見せたくないものを隠してる可能性は、大いにあると思います……」


撫子「…………」

向日葵「…………」


撫子「あの子のカバン漁っていいかな」

向日葵「わ、私も気になりますわ」

撫子「……これか、プリント類」ごそごそ


撫子「えっと……ん? これは……」

向日葵「授業参観のお知らせ……あっ、そういえば少し前に配られたやつですわ」


撫子「……これたぶん見せてないな」

向日葵「でしょうねぇ」

撫子「ひま子は? 親来るの?」

向日葵「私は見せましたけど、ちょっと忙しいと……」


撫子「この日は……たぶんうちのお母さんも仕事だ。見せても行ってあげられないと思うな」

向日葵「そうですか……」

撫子「あの子って……授業中、どうなの?」

向日葵「ん~……進んで取り組んでいるとは言えないですわね……」

撫子「ふ、普通の子と同じくらいにはできてる?」

向日葵「普通の子よりも、ちょっと居眠りが多くて、ちょっと手悪さも多くて、落書きも多くて……」

撫子「ごめんごめんごめん」ゲザァ

向日葵「な、撫子さんが謝ることでは……!」

撫子「もう恥ずかしい……! 姉として情けないよ……ひま子にここまでやってもらってるのに……」

向日葵「撫子さん……」



撫子(どうすればいいんだろう……)



あかり「今日授業参観だねぇ」

櫻子「あっ、今日だっけ? すっかり忘れてた~」

ちなつ「あかりちゃん家は来るの?」

あかり「たぶん来るよぉ」

櫻子「うちは来ないだろうな~。どうせ仕事だし」

向日葵(プリント見せてもないくせに……)じとー


ちなつ「ちらほらお母さんたち来てるみたいだね」

櫻子「なんだっけ、この後の授業」

あかり「国語だよぉ」

ざわ……ざわ……


向日葵「ん……なんかやけに廊下のむこうが騒がしいですわね」

ちなつ「誰かの親が来て盛り上がってるんじゃない?」

櫻子「いるよねー、子供からも人気のあるお母さんとかって」


「ごっ、ご案内いたしましょうか!!」

「ありがとう。大丈夫、私もここの卒業生だから」


櫻子「ん……!?」びくっ

向日葵「あっ、ええっ!?///」


撫子「あ、いたいた」

櫻子「うわーーーーーーーーー!!///」

櫻子「ね、ねっ、ねねねねねねねねーちゃん!! 何やってんのこんなところでぇ!!」

向日葵「撫子さん、まさか……!」

撫子「もちろん、授業参観に来たんだよ」


櫻子「はぁーー!?///」


「え、なに、櫻子のお姉さんなの!?」

「ちょー綺麗……///」

「かっ、かっこよすぎ……!」

「つーかお姉さんが授業参観来たの?」


櫻子(恥っずっかっしぃ……!)ぷるぷる

櫻子「恥ずかしいー! 来んなよ恥ずかしーー!」

撫子「バカ! 授業中寝てたり遊んでたりするやつの方が恥ずかしいんだよ!」

櫻子「ていうか学校は!? ねーちゃんだって学生でしょ!」

撫子「私はもう受験対策でほとんど自習しかないもん。その日の出席とればあとは自由なの」


向日葵「じゃあ学校からそのまま来てくれたんですのね」

撫子「そういうこと。ありがとねひま子、あの時教えてもらわなかったら知らないままだったから」

ちなつ「さっ、櫻子ちゃんのお姉様ぁ!いつも仲良くさせてもらってますぅ!」ぎゅっ

撫子「あ、ちなつちゃん久しぶり。またいつでも遊びに来てね」

ちなつ「や~~ん行きます行きますぅ♪」


「よ、吉川さんずるい!」

「私もおしゃべりしたーい!」

「制服かわいい~~!」


あかり「に、人気者だねえ櫻子ちゃんのお姉さん」

向日葵「特に年下の女の子に好かれますからね……」

櫻子「もうやだ…………」

撫子「みんな、いつも櫻子と遊んでくれてありがとうね。バカな子だけど、これからもよろしくお願いします」


「きゃーー! もちろんですよぉー!」

「櫻子のことは任せてくださーい!」

「サインくれませんかぁ~~!」


櫻子「サインなんか無いよ! 有名人じゃないんだぞ!」ぎゃーぎゃー

向日葵「でもその辺の有名人が来るより賑わってると思いますわ」

あかり「ちなつちゃんも一緒になって賑やかしてるんだけど……」


先生「はーいみなさん、そろそろチャイムがなりますよー」


向日葵「あっ、そろそろ始まりますわ」



先生「小説を読み進めていくポイントは、登場人物をしっかりと整理することです。例えばこのページでは……」カッカッ


櫻子「…………」ちらっ

撫子「前向きな」

櫻子(しゃ、喋んなよぉ……///)


向日葵(櫻子一番後ろの席だから、撫子さんに見られまくってますわね……)


先生「ーーーとなるわけです。ではここまでを踏まえて、次のページを見てみましょう」


櫻子「…………」ぺらっ

櫻子(あ!!!)ぎくっ

撫子さんモテモテ過ぎる

櫻子(や、やばいー! 落書き消してなかったーー!)


櫻子「…………」ちらっ

撫子「消せ」

櫻子「ひぃぃ!」


撫子「何落書きしてんの……明治の文豪にこれ以上ヒゲ付け足してどうするつもり……」ゴゴゴ

櫻子「消すから! 消すから静かにして……!///」ごしごし


クスクス……


向日葵(災難ですわね、櫻子……でもあなたがいけないんですのよ)

櫻子(もう、後ろにねーちゃんがいるって思ったら集中できないよ……)はぁ


てっ

櫻子(あ! 消しゴム落としちゃった……)


「はい櫻子」ひょい

櫻子「ご、ごめんねありがと~!」ひそひそ


ちょいちょい

櫻子「わ! な、何!?///」

撫子「これ、アメちゃん今の子にあげて」ごそごそ

櫻子「なんで飴!? そんな大したことしてないでしょ!」

撫子「何言ってんの、あんた間違いだらけなんだし消しゴム無かったらどうすんの。あの子は櫻子を助けてくれたんだよ」


櫻子「わかったよぉ……あ、あの、うちのねーちゃんが飴くれるってさ」ことん

「あ、ありがと……///」

先生「それでは今の形式段落からここまでを……大室さん、読んでみましょう」

櫻子(うぇっ!?)


櫻子「は、はい!」

櫻子「えっ、えーっと……」

櫻子「わたしは二、三匹の魚を入れたザルを持って…………持って……」


櫻子(読めないーー!)


すっ

櫻子「!!」

向日葵(櫻子が読めなそうな漢字をリストアップしておいて正解でしたわ)ふぅ

櫻子「えー……砧(きぬた)家へ出かけていった。角屋の表門から入り、勝手口の横を通って……」すらすら


撫子(ナイスすぎるよ、ひま子……)

櫻子「ーーーが、きちんとそろえて切られてあった」

先生「はい、よくできました。みなさん大室さんに拍手をお願いします」


ぱちぱち……


撫子(ありがとうひま子、ありがとう……)

櫻子(はぁ……あぶねー)



ちょいちょい

櫻子「ちょっ! だから触んなっ……」

撫子「これ、ひま子に渡して」

櫻子「はぁ、手紙? こんなもん後で渡せばいいじゃんかよ……」ぺら

撫子「こ、こら見るなっ」


〈ひま子ありがとう! 今日うちに来てね、ケーキあるから〉


櫻子「後で言えよ!!!///」こそこそ

撫子「今言いたかったの……」

先生「ーーーそれでは、今日の授業はここまでにします。ありがとうございました」


櫻子「あーやっと終わったー……」ぐでん

撫子「ちょっと櫻子、あんたいつも授業中こんな調子なんじゃないでしょうね」

櫻子「ぐっ……ひ、否定はできないけど……」


撫子「ひま子本当にありがとね。たぶん今までもずっと櫻子を助けてきてくれてたんだよね……感謝しきれないよ」

向日葵「いえ、そんな……///」

櫻子「っていうかねーちゃんも楽しんでるだろ! なんで授業中に飴渡すんだよ! なんで学生気分で回し手紙やってんだよ!」

撫子「いや、なんか……楽しくなっちゃって」

櫻子「遊びに来てんのか!!」しゃーっ

撫子「この後は? もう終わり?」

向日葵「ええ、保護者は先生たちと懇談会があるみたいですけど」

撫子「さすがにそこまではいけないや……しゃーない、帰るか」


向日葵「あ、撫子さん。私と櫻子はこのあと生徒会ですわ」

撫子「ん……? あ、そっか。櫻子生徒会入ってんだっけ」

櫻子「そーそー。わかったら先に帰っててよね」しっしっ

撫子「私も挨拶して行こうかな。いつも櫻子がお世話になってる人にお礼しなきゃ」

櫻子「いー! いーよ!! お礼は私がしとくからーー!///」

向日葵「でも撫子さん遊びにきても大丈夫だと思いますわ。生徒会と言ってもそこまで堅苦しいところじゃありませんもの」

撫子「本当に? じゃあちょっと行ってもいいかな」



向日葵「こんにちは~」

綾乃「あっ、古谷さん来たわね」


撫子「ここか……どうもー」

綾乃「えっ!? ど、どちらさま……?///」

撫子「あ、キミが会長さん? いつも櫻子がお世話になってます、櫻子の姉です」ぺこり

綾乃「おっ、お姉さんでしたか! あの、わたしは副会長で、会長は私じゃなくて……」


向日葵「撫子さん、あちらが会長の松本先輩ですわ」

撫子「あ、そうなの? ……うわ、可愛いね」

櫻子「口説くなよ……」

千歳「お姉さん今日はどないしたん?」

向日葵「櫻子のお母さんの代わりに、授業参観に来てくれたんですわ」

櫻子「もー困りましたよ。プレッシャーかかるし、ちょっかい出してくるし……」


りせ「…………」

撫子「……そう? ありがとね」



向日葵「……えっ!? 撫子さん会長の言うことがわかるんですの!?」

撫子「え、なにが?」

櫻子「な、なんて言ったの!?」

撫子「いやだから、妹のために来てくれるお姉さんなんて滅多にいないから偉い、ってさ」


向日葵「撫子さんすごいですわ……」

千歳「さすが大室さんのお姉さんやなあ」

奈々「おーい皆、やってるかー」

向日葵「あっ、西垣先生」


奈々「ん?」

撫子「…………」

奈々「ど、どうしたんだ大室! いつの間にこんなに大きくなったんだ! あのくりんくりんの髪の毛はどうした!?」


綾乃「先生、それはお姉さんですよ」

櫻子「私はこっち!」

奈々「……ふむ、お姉さんだったか。いや失敬、あまりにも似ていたもので」

向日葵「そんなに似てるかしら……」

撫子「楽しい先生ですね……」



撫子「いやー楽しそうだね中学校。私も少し戻りたくなったな」

櫻子「はぁ、きっちりエンジョイしちゃって……」

向日葵「私は早く高校生になってみたいですわ。色々と自由でしょうし」

撫子「ん、まあ確かに……」





撫子「櫻子」

櫻子「んー?」

撫子「学校楽しい?」

櫻子「な、なに急に……」

撫子「いや、楽しいに決まってるね。あんなにたくさんの友達がいて、いい先輩も、いい先生もいて、みんな櫻子に優しくて、ひま子もいて……」



撫子「でもね」がしっ

櫻子「うわあ!///」びくっ


撫子「高校は、今の100倍は楽しい所だからね」

櫻子「ひゃ、100倍も!?」


撫子「そうだよ? でもそれは私がいい高校に行けたからだと思う! いい高校に入れたから、いい友達ともたくさん会えたんだって」


撫子「勉強頑張ったから……楽しくいられるんだよ?」

撫子「ちゃんと勉強すれば、櫻子の思う通りの方向に進めるんだ。いい友達ももっと増えるし、ひま子とももっと一緒にいれる」

撫子「嫌になるときもあるかもしれないけど……必ずアンタのためになることだから」

撫子「勉強は、頑張んなよ?」


櫻子「わ、わかったよ……///」


撫子「よし、じゃあ帰ろう。今日夕飯の当番変わってあげるよ」

櫻子「えっ、ほんとに!?」

撫子「今日は特別。ひま子もおいでよ、約束通りケーキあるから」

向日葵「あ、あら……///」


撫子「あ、あと櫻子! 学校から貰った提出物はちゃんとお母さんたちに見せるんだよ?」

櫻子「わ、わかったよーもー……」



〈後日〉

かぱっ


櫻子「うわーーー!!」ばさばさ

向日葵「ど、どうしたんですの!?」

櫻子「な、なんだこれ! 下駄箱に手紙がわんさか入ってる!」

向日葵「えーっ!? これ全部ラブレターじゃないですの!?///」

櫻子「ま、まじで!? ついに私の時代が……!!」



向日葵「…………全部撫子さん宛てですわね」

櫻子「…………なんでだよ」がっくし


~fin~

ありがとうございました。

撫子さんかっけーてか?

乙っぱい

櫻子もいつかモテモテになりそうだよね

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