「やあ、良く来たね。このスレは魔法少女まどか☆マギカの安価スレだ」
「君は様々な魔法少女になり、物語を進めていかなければならない」
「その過程にどんな事が起こるのかは、このボクですら予測しきれない」
「君たちが、どんな祈りでその魂を輝かせるのか。それは、とても興味深い事柄だ」
「さあ、舞台へ上がるんだーーーー」
【不思議の国の】コンマでまどか☆マギカLite!【佐倉杏子】4
【不思議の国の】コンマでまどか☆マギカLite!【佐倉杏子】4 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404831220/)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1417703271
20時くらいからやるよ
貴女はその様子に不気味さを覚えながらも、恐る恐るその因果をひとつまみ。
――焼かれた聖女の因果。
杏子「――?」
頭痛を噛み殺し、また一つ手に取る。
――夜に輝く昴の因果。
杏子「な、何で――?!」
掴む、掴む。掴む。
何処を取っても、全て同じく別人で。
杏子「お前は、誰――っ!?」
――近付いていた。
1、続ける
2、逃げる
↓3
1
>>8
貴女は後退りながらも、魔法の講師を続けた。
杏子「(どういう事だオイ……どいつもこいつも、『コイツ』じゃねぇ)」
貴女は淀んだ油を掻き分ける様にして、闇雲にソレを掬っている。
これも、これも、これも違う。
この得体の知れなさを、貴女は何処かで感じたのを思い出した。
アリス『――――』
杏子「――こいつ、まさか」
濃い因果で前がいっぱいになる。
魔法を解除して視界を一旦戻した。
少女「…………」
――もう触れられてもおかしくない距離で。
貴女の『透き通った』魔法も反応し始めた。
1、しかし続ける(危険)
2、逃げる(生存する)
↓3
1
>>12
咄嗟に距離を取りながら、もう一度試みる。
真っ黒な『夜』を手探りに。
杏子「どうなってんだよ……!」
視界がソレで埋まっているから、少女からの退避は勘と経験だけだった。
この速度で走れば追い付かれない、とか、気配は魔法で察知する、とか。
――そんなものは、ここに呑まれた時点で意味を為さないのに。
トン、と貴女の足音が地面を叩いた時――貴女は誰かに触れた。
杏子「!!」
頬に当たって、いる手のひら――の柔らかさを、感じた。
恐怖から魔法を解いた。
しかし視界はそのままだ。
暗い、夜のままだ――!
杏子「あ――」
暗闇の中から伸びる手だけが見えて――
――瞳が見えて、目が合った。
吸い込まれそうな紅い目玉と、甘い吐息――呼吸はしていたのか、なんてどうでもいい感想と共に。
少女「…………」
僅かに、微笑んでいた。
1、
2、逃げる
↓3
1
>>16
杏子「――離れろ!!」
貴女は夜を焔で塗り潰す。
――たちまち呑まれて闇へと沈む。
杏子「う、お――?」
全身、まるで水中にいるかの如く貴女は後ろに滑って仰け反り――緩やかに、柔らかい黒に――背中を預けた。
少女は仰向けの貴女に、しなだれ掛かる様にして身を寄せた。
視界が彼女で覆われる。
少女は貴女の上で馬乗りになっていた。様だった。
杏子「――えっ」
少女の腰は、貴女の腹部に埋まっていた。
少女が貴女の胸に置いた手も、また。
痛みとかは、無い。
融け、てる?
杏子「う、う、わ――――!!?」
貴女の脳髄で、貴女の魔法が弾け続ける。
1、
2、
3、
4、
5、
6、逃げる
↓3
1
>>20
貴女と少女がどんどんと近付いて――『近付いていく』。
ソウルジェムの中で燻る炎も今は身を潜め、静かな暗色を湛えていた。
杏子「――――?」
「アタシ、……?」
意識がゆっくりと落ちていく。
心が動きを止めていくのを感じる。
杏子「――違う、ダメだ……このままじゃ……!」
はっきり認めよう――コイツはとんでもない化け物だ。
だからこそ、『お前とアタシは違う』と強く念じる。
表情ぐらいは――輪郭を取り戻す。
得体は知れない、正体も分からない。
でも理解した事はある。
杏子「――お前、『全員』だろ」
ここは、形は違えど――あのビルで見た世界と似通っている。
ここはきっと、今は既に異界だ。
自分が、そこに組み込まれようとしていると、気付けた。
幾多の魔法少女を束ねた存在。
コイツは――ワルプルギスの夜に似ている!
強く睨み付ける。
顔の輪郭は完全に具現した。
後は溶け合った身体を取り戻せば――
少女「――――?」
少女が、不思議そうな顔を近付けてきた。
1、逃げる
2、
↓3
2 逃げたところで先の展望はない。
>>24
ぬる、と少女が貴女の胸から手を引き抜いた。
その手を貴女の頬に添える。
杏子「……? っ、おい何を――!」
声は、少女の口内に籠って消えた。
腕を動かそうとする――この腕は貴女のじゃあなくなっている。
唇に感じる熱が、自分が個である事を教えてくれた。
音が無かった夜の中に、咀嚼音が響く。
食べられているのは、貴女。
杏子「(くそ……!)」
屈辱を受ける貴女とは対に、彼女は愛しそうに『自分』を啄んでいた。
離れた唇、次はゆっくりと同じように食んでいく。
少女「――――ふ、ぁ」
貴女――『彼女の』腹部に熱を感じた。
より一層、激しくなって。
火照って少し赤みがかった彼女の表情と、繰り返される『魔女の口づけ』。
杏子「くっ、あ……!」
バチン、と回路が入る。
1、強く抵抗する(生存する)
2、快楽に身を任せる(死亡する)
↓3
1
>>29
杏子「う、おぉ!」
両の腕に全ての意識を集中する。
少しだけ、取り戻したそれで――少女の首を掴んだ。
少女「――、――――」
杏子「…………」
少女を引き剥がしながら、貴女はゆっくりと身を起こす。
首を絞める力を強める程、自分がはっきりしていった。
少女「…………」
彼女は、そのまま夜に融けて消えて。
後には、いつの間にか元の教会に取り残された貴女だけだった。
――――廃教会、夕方
もう、日差しは低い。
杏子「……生き、てるな。アタシ」
杏子「できれば、もう出会いたくない…………」
1、移動する
2、自由安価
3、簡易行動
4、特殊行動
↓3
>>35
中断して寝ます。おやすみなさい
すずね読了。
こういう話だったか……もう少し話を詰める時間があればまた違ったと思う。
二巻から既に最終戦は流石に予測出来んかった。
やるか
>>35
――――ほむら宅、夕方
ほむら「――で、出現予定位置はこの辺り」
杏子「水辺で戦えるのは一長一短だな」
ほむら「えぇ。そこから動かさなければ被害は小さくて済む」
杏子「だけど、身を隠す障害物も、近接する為の足場も無いぜ?」
ほむら「アイツは地表を巻き上げ停滞させる。それは周辺の建物も例外じゃないわ」
杏子「……瓦礫を上手く使う?」
ほむら「そう。でないと、接近するのにも手間取るでしょうね」
ほむら「……いよいよ明日。気を引き締めて」
杏子「あぁ……」
ほむら「……二人でもやれるとは思うけれど、他に誰か……共に戦ってくれるような人が居ればね」
杏子「…………」
1、そうだな……
2、心当たりはある
↓3
1
>>46
杏子「そうだな……そんなバカが居れば、ちっとは楽になるかもな」
ほむら「そうね」クスッ
――――市街地、夜
杏子「…………」
ほむらも今日は英気を養うとか言って身体を休めるみたいだ。
アタシに出来る事はもう無いだろうか……?
1、移動する
2、自由安価
3、簡易行動
4、特殊行動
↓3
ワルプル戦に備えてイメージトレーニングする。
>>50
杏子「どこまで通用するか分からないけれど、咄嗟に出せるように魔法のイメージをしておこうか……」
杏子「……帰ってから」
※どこに帰る?
↓3
マミの家
>>54
――――マンション、夜
杏子「……結局、ここに帰ってきちまった」
杏子「……アンタなら、戦うんだよな。きっと」
杏子「いや……よそう。それは、アタシの勝手な想像だ」
杏子「……アタシは、勝てるのかな」
1、魔法を使って、戦った場合の結果を見る
2、自由安価
↓3
2 討伐、あるいは撃退に至るパターンを何度もシミュレートする
>>58
杏子「デカブツを捌くにはどうするか……」
杏子「街への被害を考えないならじっくり時間をかけて弱らせりゃいい」
杏子「……街を守るんなら短期決戦に越した事は無い。かつその場に釘付けにしなきゃならないからな」
杏子「となれば、『広い場所に押し返す』か『拘束し動きを止めるか』」
杏子「ダメージを集中させるなら後者だが、前者は街から遠ざけられる」
杏子「火力がいるのはどちらも。だから考える必要は無いけれど……」
杏子「押し返すなら場所を決めて、そこに待ち伏せ、或いは罠でも張っとけばいい」
杏子「なら大槍でソコにぶちこんで……結界に閉じ込めるか、鎖で縛り付けて、ほむらと火力を合わせる」
杏子「……火力が足りれば、何とかかねぇ」
思考実験なら打つ手は思い当たる。
だが、もし通用しなければ――――
杏子「……大丈夫だ。きっと」
今日は寝付きが悪そうだ……
Days 10/10 『陽炎モラトリアム』終了
最終章『ワルプルギスの夜』
days 1/1
22時くらいからやります
開始
――――マンションの空き部屋、朝
杏子「…………ん」
杏子「朝か……少し寝足りないが」
杏子「もう寝ても、いられねぇな」
杏子「……? 何だか、静かだな」
※今日は通常の魔女が出現しません
杏子「…………さて」
1、移動する
2、自由安価
3、簡易行動
4、特殊行動
↓3
ほむら会いに行く
>>72
――――ほむら宅、朝
呼び鈴を鳴らす。
やけに耳に響いて、少し身がすくむ。
杏子「びびってんのか……ハハ」
「その気持ちは」
すんなりと開いたドアは、
ほむら「少し分かるわ」
貴女を当たり前のように迎え入れた。
ほむら「飲む?」
杏子「ココア」
ほむら「わかったわ」
ほむらが湯を沸かしているのか、小さめのキッチンからは水の茹だる音がしていた。
程無くして、貴女の目の前には温かなココアと、暁美ほむらの気遣いの目線。
ほむら「……大丈夫?」
杏子「ああ。大丈夫だ……問題無い」
ほむら「嫌な予感がするセリフね」
杏子「……あら? そういや今日は平日だろ? 学校は?」
ほむら「どうせそろそろスーパーセルだ何だで早退、自宅待機か避難。なら、行く必要無いでしょう?」
ほむら「……こう言っては怒るのでしょうけれど、まどか絡みの問題が無くなって本当に良かった」
杏子「怒るって何さ――――ああ」
杏子「…………まあ、過ぎた事だろう」
彼女の居た痕跡は、もうあの屋敷しかない事に思い至り――少し、心の中で紡ぐ。
※沈黙が流れている……
自由安価
↓3
一眠りする
>>78
近くに誰かがいる、と言うことがとても落ち着く。
気の緩みからか、貴女を眠気が襲った。
杏子「……少し寝るわ。用があったら起こしてくれ」
ほむら「そう。なら……」
ほむらは絨毯の上に足を崩して座って、その腿を軽く手のひらで叩いて指した。
ほむら「枕でもどうかしら?」
杏子「お、おう?」
少しだけ見える笑みに他意は無さそうだ。
戸惑いながらも、貴女は寝転びながらそこに後頭部を乗せる。
自然と、見上げる形になった。
彼女は貴女の髪を弄りながら、特に何をするでも無い。
杏子「…………」
ほむら「こうしていると、私も落ち着くわ」
ほむら「一人で無いだけでも、とても楽になる」
杏子「……そうかい」
ほむら「今まで見てきたどんな貴女よりも、貴女は驚くほど優れているわ」
ほむら「……貴女は」
ほむら「――私の、希望よ」
ほむら「だから今は、しっかり眠って」
杏子「……ああ」
杏子「そうするよ」
貴女も、何だか心から緊張が抜けていくのを感じていた。
目を瞑ると、すぅ、と意識は落ちる。
※SG状態【希望】に
貴女は彼女に。
彼女は貴女に。
――――ほむら宅、昼
杏子「…………どのくらい寝てた?」
ほむら「今は昼過ぎ。何か食べる?」
杏子「おう。何でもいいよ」
1、移動する
2、自由安価
3、簡易行動
4、特殊行動
↓3
ほむらと一緒にご飯を食べる
>>83
ほむら「簡単なものしかないけれど」
と言って出てきたのはベーコンエッグとサラダ、あとパンだ。
杏子「……どっちかって言うと朝飯なんじゃないか、これ?」
ほむら「私は食に頓着しないわ」モッシャモッシャ
杏子「さいで……いや文句は無いんだがね?」
そういえば、初対面の時からそうだったと思い出した。
やれやれ、とばかりに黄身を口に運ぶ。
最後の飯にならなきゃいいな、とは口に出さなかった。
――――ほむら宅、昼
1、移動する
2、自由安価
3、簡易行動
4、特殊行動
↓3
明けましておめでとう。今年もよろしく。
>>88
杏子「(やはり戦力はなるべく欲しい)」
杏子「声をかけるなら……?」
↓3までの魔法少女に連絡
ゆま
今見滝原にいてテレパシーによる連絡が期待できるのはのは
レッドアイ伊吹 とモバマギ組ぐらい。
前者は厄、後者は力不足。
かずみ組にテレパシーが届くか試す。
あすなろ組と伊吹
>>90
出会ってません
>>91
杏子「…………届くわきゃないか。帰っちまったしな」
杏子「あん時引き留めときゃ良かったかもしれないな……まぁ、今更か」
>>92
伊吹『ボクに何か用事かい?』
杏子「(繋がったか……)」
杏子『いや、実はな……』
杏子『↓3』
助けてくれや
>>98
杏子『助けてくれないか?』
伊吹『!』
伊吹『うん、ボクに出来る事なら何だってするよー』
※事情を話した……
伊吹『ワルプルギスの夜……』
杏子『ああ。お前の手も貸してほしい』
伊吹『うーん』
伊吹『わかった。できるだけやってみるよ』
伊吹『ワルプルギスの夜の気配は分かるから、感じたらお手伝いに行くねー』
杏子『お、おう。頼むわ』
えらく軽いノリで引き受けてくれた……
杏子「さて……」
他に当てはあるだろうか……?
↓3まで
シモン
>>103
杏子「……ダメか」
少女『何か知らない人の声が……怖いなぁ』
ほむら「杏子?」
杏子「ん。いや、何でもない」
さて、頭数が一つ増えたな……
こまち達は……あの腕じゃ足手まといになるだけだろう。
杏子「――あれ、そういえば」
――伊吹って、どのくらいやれるんだ?
――――ほむら宅、夕方
そろそろ向かおうか……
1、移動する
2、自由安価
3、簡易行動
4、特殊行動
5、港へ
↓3
5
>>111
――――市街地、夕方
暗い空の下、貴女は暁美ほむらと二人――足音を奏でていた。
杏子「随分と静かだな」
ほむら「スーパーセルの予報で皆避難しているのよ。外に出る人なんて居ないわ」
杏子「そうか。なら――」
出歩くとすれば、魔法少女か。
貴女はもう一つの足音を感じて振りかえる。
杏子「……何しに来た」
こまち「えっ……」
彼女は貴女を見つけて駆け寄って来ていた。
そこに、いきなりの物言いに面を食らったのだろうか。彼女は言葉に詰まる。
こまち「な、何しにって……決まってるじゃないですか!」
こまち「ワルプルギスの夜と戦うんでしょう!? 私も戦います!」
こまち「必要ならあの二人だって来てくれる筈ですよ!」
杏子「……お前に声をかけたつもりは無いんだが」
クレア「キュゥべえから聞きました。どうやら触れ回っているようですよ」
杏子「……タチの悪い奴」
物陰から現れたのはもう一人。
いや二人。
ひより「…………」
ひより「杏子さんだけで大丈夫なんじゃないかな……」
杏子「分かってんじゃねぇか」
ひより「あっ、いや、そんなつもりじゃ無いんですよ!?」
ほむら「貴女たちは」
ほむら「杏子が何故貴女たちを呼ばなかったか、分からないの?」
こまち「――――!」
こまち「そんなのって……アタシだって魔法少女ですよ!」
杏子「…………」
杏子「……はぁ」
杏子「気持ちは有り難いが、正直守ってやれる自信は無ぇ」
こまち「自分の身くらい、守って見せますよ」
こまち「それは、杏子さんだっておんなじだ。違いますか?」
杏子「……はぁ」
1、「わかった。一緒に戦ってくれ」
2、「駄目だ。お前は街を守っててくれ」
3、魔法で1、2の選択の結果を読み取る
↓3
1
>>118
杏子「…………」
こまち「…………」
『佐倉さん、これからは二人で頑張っていきましょう』
杏子「……あー、何で今思い出すかなー」
こまち「?」
懐かしい故人の声を聞き、彼女に重ねてしまう。
そう、あの人も大概のバカだった――――
杏子「わかった。一緒に戦ってくれ」
ほむら「杏子……!?」
こまち「――はいっ!!」
杏子「着いてこい。死ぬんじゃねぇぞ」
こまち「了解です!」
クレア「共に参りましょう……」
ひより「うう……じゃあ私も行きます……」
ほむら「ちょっと……!」
貴女に近寄り、耳を打つほむら。
ほむら「良いの? 正直、足しになるとは……」
杏子「補助くらいにはなるだろうしな。数が居て困る事も無い。死んだら自己責任だ」
ほむら「……貴女は、きっと彼女たちがそうなったら助けようとする筈よ」
杏子「そんな、余裕は無いさ」
杏子「そうなる前に仕留めるだけだ」
――――まどか宅、夕方
まどか「…………」
――――避難所、夕方
さやか「大丈夫、恭介? 狭くない?」
恭介「あぁ、平気だよさやか」
さやか「(杏子たちも、大丈夫だよね)」
さやか「(信じてるよ……!)」
ここで中断します。お疲れさまでした。
シモンは想定外デース
仮面ライダーは見てないからなー。
オーズは面白そうだとは思うんだけど。
上に上がって恥ずかしいからなるべくageるの止めてなー
今日はやろうか。開始は11時目処に前後する
……人に等しく訪れる物は何だろうか?
……『幸せ』?
……『絶望』?
いや――ただ単に、生と死だけが。
そして、死の後に来たる【無】こそが――
――平等に人に与えられた、全てなのだろう。
だからこそ、それを祝おう。
貴女が生きた事を誇り。
貴女が死ぬ事を喜ぼう。
今宵見滝原、奉るは夜。?
さあ踊れ、魔法少女――!
――――港、夜
杏子「……静かだな」
ほむら「えぇ……でももうじき、ここも異界になるわ」
波の音が心も揺らすような夜の闇。
街灯だけが彼女達を頼りなく照らしていた。
こまち「杏子さん、私たちはどうしましょうか……陣形などの案はありますか?」
ひより「……出来れば、私は後衛で」
クレア「策があるのでしたら、私たちは駒となりましょう」
三人も三様に、形は違えど戦う意気を募らせていた。
杏子「そうだな……」
※どのような流れで魔女を討伐しますか?
1、まとまって一点集中で戦おう。
2、散開して広範囲をカバーしよう。
3、自由安価
↓3
↑
中断。明日やる際はまた事前に言います
_(:3」∠)_ 今日はやるよー
>>152
杏子「そうだな……散開するのは危険だろうし、とりあえずは纏まって動く」
杏子「ひよりは後衛、クレアはアタシのバックアップ。こまちはアタシらの傷の回復を優先な」
三人が三様に頷く。
さぁ、いよいよだ。
だがしかし妙だ……ほむらの話ではそろそろの筈だが。
天候は荒れ気味だが、静かなものだ。
ペタリ、と足音一つ。
杏子「――――!?」
怖気を感じて振り返る。
そこに、先日の少女が存在して、歩いていた。
海に向かって――ペタペタと無邪気な足音で。
こまち「女の子……あの、ここは危ないから離れ――」
こまちの言葉を、貴女が咄嗟に産み出した赤の檻が阻む。
驚きと、振り向くこまち。
そこに居る全員が『アレに触れないよう』に、貴女に守られているのを見た。
ほむら「杏子……?」
杏子「下がってろ……」
少女は覚束無い足取りで海へ。海岸へ。
そして、当たり前みたいに落ちて、とぷん。と水の音。
その瞬間に、烈風が巻き起こり――貴女達の視界を少しだけ奪い去って。
ほむら「…………!!」
杏子「お出ましだよ……!」
――そして、永い『夜』が始まりを告げた。
※戦闘開始
佐倉杏子
【SG耐久】7/(7)
【SG状態】普通
【戦闘】119(119)【S】
【魔力】60(110)【S】
【精神】60(110)【S】
【魅力】46(46)【C】
【幸運】51(101)【S】
【モラル】91
【スキル】
【紅き幻影】
系統:魔法
戦闘時、判定+2(3)
【紅蓮の聖女】
系統:強化専用
【魔力】【精神】【幸運】+50
【正義】
系統:アルカナ【A】
ランクアップ条件:モラル100
戦闘時、判定+1
友好判定+1
SG状態【激昂】時、判定+1
絶望判定+1、即死無効
【信仰】
系統:通常【EX】
SG耐久+3
全判定+1
味方共闘時、判定+1
魔法スキル強化+1
【啓示】
系統:特殊【EX】
過程を無視して事象を理解できる
ワルプルギスの夜
【SG耐久】15/15
【SG状態】魔女
【戦闘】30(80)【A】
【魔力】40(90)【A】
【精神】70(120)【EX】
【魅力】90(140)【EX】
【幸運】15(65)【B】
【モラル】90
【スキル】
【気付かされる無力】
系統:魔法
戦闘時、判定+3
【ワルプルギスの夜】
系統:強化
全ステータス+50
【吊るされた者】
系統:アルカナ【B】
ランクアップ条件:全ステータス合計500以上
全ての判定+1
【絶望への足音】
系統:通常
勝利判定+1
ちょっと中断
すんません寝ます
今日やるねー
――――ワルプルギスの夜
貴女達の目の前に現れたのは、巨大な魔女。
数多の絶望を集めて混ぜた、人の心の闇――その結晶体。
ひより「う、うわ、ぁぁ――!?」
こまち「な、何――あの女の子は!?」
クレア「…………!」
一人は怯え。
一人は人の心配で。
一人はそれどころでは無いのを把握していた。
杏子「浮わついてんじゃねぇ!!」
貴女が鋭く投擲した槍が、空間を抉る勢いで魔女に接触し――――『貫けず吹き飛ばした』。
魔女は囂然たる笑い声を撒き散らしながら、海を滑る様に押し出されていく。
勢いが死ぬのと同時に、逆さまの魔女は空に浮き上がった。
魔女が悪意を乗せて風を巻き起こす。
ほむら「伏せて!」
その風は貴女達の頭上を抜け、海浜の建築物を薙ぎ払った。
破片は落ちずに、浮島となって澱んだ空間を揺蕩う。
一呼吸。
杏子「――やるぞ」
貴女の声に従って、仲間たちは散開する。
圧倒的な相手を前に、魂を奮い立たせながら――
【紅き幻影】+3
【正義】+1
【信仰】+1
ほむら+0(1)
こまち+0(1)
ひより+0(1)
クレア+0(1)
【気付かされる無力】-3
【吊るされた者】-1
合計+5
※ファンブル以外セーフ
直後15回戦闘判定
あ
>>184
杏子 7/7
魔女 0/15
――――
貴女が地を強く蹴って空へと躍り出た、拍子に魔女が爆炎に包まれる。
ほむらの銃火器が時を止めながら、次々と。
杏子「当てんなよ?」
ほむら「わかっているわ」
ひより「わ、わわっ!」
魔女から黒い影が飛来する。
それは少女を象ってほむらを取り囲んだ。
ほむら「む」
ひより「ど、退いて!」
ハープの音が波となって、それらを押し流す。
威力はともかく、範囲は申し分無い。
杏子「そっちは頼んだ――クレア、こまち!」
こまち「はい!」
クレア「参りましょう……!」
瓦礫の波を掻き分けて、天空の魔女を落としに駆けた。
少女型の使い魔を切り裂きながら、貴女は徐々にワルプルギスの夜との距離を詰めていく。
こまち「どっ、りゃあぁぁ!!」
苛烈な薙刀の一撃がヒトガタを両断した。
勢い余って落ちる先に待ち構える使い魔達。
こまち「おっ、と!!」
脳天に踵を貫き、蹴り飛ばす。
反動で少し滞空。
クレア「お退きなさい!」
ソコを稲妻が走り抜けて、黒く焼け焦げて崩れていく、のは群れた使い魔。
クレアが伸ばした錫杖の先端に、こまちは得意気に着地した。
こまち「ナイスアシスト!」
クレア「ふふ――っ、上です!?」
魔女そのものがこちらに業炎を吹き付けてくる。が――――
杏子「ソイツはお断りだ」
貴女の結界が熱と光を阻んだ。
存外役に立つな、と思考。
杏子「防御役も悪くないが――」
炎を払って、再び大槍が――魔女本体に向かって直線を描いた。
今度は、貫く。
それと同時にほむらのミサイル弾がワルプルギスの夜に直撃して、更にその巨体を押し込む。
海沿いのドーム、反閉鎖の空間に魔女は落ち込んだ。
ほむら「今!」
予め仕掛けられていたのであろう、大量の時限爆弾が一斉に目を覚ます。
酸素を奪い合う程の火炎が魔女と、その歯車を焼いた。
杏子「仕留めるぞ!」
クレアこまち「「はいっ!」」
こまちが飛び込み、魔女の右腕に向かって――
こまち「ぶっ、たぎれ――ろっ!」
岩を削るが如くの衝撃の元に、それを叩き落とした。
薙刀が砕け散る。
硝煙の臭いが立ち込めるドームの、焼き色の付いた地面に柔らかく着地。
し、虚空を構え直す。
再び錬成された、大薙刀――を駆って、大地を蹴り抜いた。
さながら弾丸。次は。
こまち「――左も、もらう!!」
斬撃が轟音を鳴らして通り抜け、左の腕も滑って墜ちた。
こまちはその勢いのまま、ふわり、と滞空する。
クレア「天の火よ……!」
クレアがありったけの力を注ぎ込み、閃光が魔女の体を切り裂き『続ける』。
電の小さく鋭い破裂音が繰り返し繰り返し絶え間なく。
魔女の嘲笑も聞こえない。
クレア「――くっ、あ……! 杏子さん!」
杏子「分かってる」
魔法を途切らせてしまった彼女が、貴女を呼ぶ。
時間にしてはとても短い攻防だったが、それでも。
――貴女がここを槍が聳える森にするのには十分だった。
「――――!!」
杏子「悪いな。恨みとかは無いんだ」
杏子「じゃあな」
最後に、反り立つ槍が魔女を串刺しにして『磔』る。
貴女は因果を絡めて巻き付ける――それは火口。
魔女は、焼かれた。
――――明るい夜はただ焚き火の光
ほむら「――どう?」
ひより「やりましたか!?」
後衛の二人も追い付いてきたようだ。
ひよりは若干息を切らせている。
ひより「ほ、ほむらさんを守るのに必死でした……」
ほむら「おかげで魔力を温存できたわ」
こまち「やりましたね。案外、手こずりもしませんでした」
魔女は貴女の一撃に、動くことすら出来ずただ身を裂く熱に躍りながら死を待つばかりだった。
それを眺めながら一つ、『クレアは安堵した』。
魔女の怒号と。
文明すら消し飛ばし兼ねない颶風と。
祭りを邪魔されて機嫌を損ねた黒い影が――
――貴女達を木っ端の様に吹き飛ばした。
杏子「なっ――なんだと……!?」
魔女は自らに突き刺さる槍もお構い無しに『立ち上がった』。
笑みは、無い。
槍は溶けて消えてしまった。
杏子「みんな!」
体制を立て直して、砂地を、滑りながら着地する
回りには、受け身も取れず地に伏せる三人と――膝を付くほむら。
杏子「大丈夫か!?」
ほむら「平気。少し驚いてしまっただけ」
三人も体が痛みはするものの、立てない程では無かった。
こまち「あいたた……まだ行けますよ!」
ひより「ま、まだ倒れないの……?」
クレア「大丈夫……やれます」
全員無事と言う事実に一息吐く。
なら問題は、もう一つ。
杏子「――しつこいな」
目の前の魔女を、もう一度捻り潰すのが面倒そうだ。という事だけ。
※再度戦闘開始
ワルプルギスの夜(本気)
【SG耐久】20/20
【SG状態】魔女
【戦闘】30(80)【A】
【魔力】40(90)【A】
【精神】70(120)【EX】
【魅力】90(140)【EX】
【幸運】15(65)【B】
【モラル】90
【スキル】
【無力の証明】
系統:魔法
戦闘時、判定+5
【ワルプルギスの夜】
系統:強化
全ステータス+50
【吊るされた者】
系統:アルカナ【B】
ランクアップ条件:全ステータス合計500以上
全ての判定+1
【絶望への足音】
系統:通常
勝利判定+2
【終わらない夜】
系統:通常
貴女逃走不可
寝ますー。おつかれ様です。
本気にならないワルプルは主人公が全く魔法少女の真実を知らずほむらがメガほむ(無知)なら見れますよ(設定)
ワルプルギスの夜倒してハッピーエンド! みたいなエンディングになりますけど。
杏子のSG状態は希望だよ>>79
>>198
GMがガバガバなのは今に始まった事じゃないので補完お願いします(震え声)
指摘はクッソ助かります
たるとマギカはジルドレを楽しむ漫画(確信)
おりこはいつも通りだった(麻痺)
小巻を掘り下げて退場させた事は凄い評価できる。
やっぱり尺が大事なんや(確信)
やるわ
10時目処
おーあ、やっぱちょっと無理かも。
超申し訳ない
そんなに経ってる事に戦慄を覚える。
キュベレイですらこないだ書いたような気がするのに……(震え声)
やるよー
――――更に深い奥底の夜へと
舌に痺れを感じた。
空気の無味無臭が、とても辛い。
魔女の回りだけ――つまりはここが、焼けるような寒さだった。
それだけの、底の冷えが皮膚を通して体に染み込む。
魔女にも貴女にも、笑みは無い。
ただ、佇んでいる。
杏子「やるぞ、みんな」
魔法少女達は散らばり、夜を泳いで。
貴女の魔法も、まだ静か。
【紅き幻影】+3
【正義】+1
【信仰】+1
ほむら+0(1)
こまち+0(1)
ひより+0(1)
クレア+0(1)
【無力の証明】-5
【吊るされた者】-1
合計+3
直後20回戦闘判定
なかなか
>>233まで
杏子 7/7
ワルプルギスの夜 0/20
――――
こまち「こ、のぉ――っ!」
使い魔が草原の柔らかな草花の如く、地表を埋め尽くす。
こまちの薙刀が一振り二振り、それらを刈り取り繰り返した。
狙わずとも減る使い魔の数、は、全体にして一握り。
夜空から雪の粉――堕ちてくるのはまた使い魔、それから使い魔。
魔法少女を模した、影色の冷気。
こまち「行って……!!」
こまちの声は悲鳴にも似ていた。
この物量に、長くは持たないと声も無く叫ぶ。
貴女は地を蹴って、降りそそぐ瓦礫――と言うには余りにも巨大な、かつては文明の象徴だった建築物を――
杏子「どぉぉ――っ、せいっ!!」
――身体全体を撓らせた槍の一撃で砕いた。
杏子「っ!?」
網膜が業火に染まる。
瞬間に、貴女の身体はソレを大きく躱す様に『運ばれた』。
ほむら「っ……余り無茶はしないで」
杏子「あぁ、悪い――ほむら、それ」
みれば彼女のソウルジェムを、じわりと暗さが侵食している。
ほむら「あんまり長くは持たないわね。連戦は予定外だから」
使い魔の雨が、川になる。
貴女たちを押し流そうと、殺到した。
ほむら「手を離さないで!」
バツン。バツン。
鋏で指を切り落とす様な音を奏でながら、ほむらは時を刻んで動く。
貴女はその「時」を糸で巻き付けて、動き出す度に回りは火を纏った。
雪が燃えて、灰が降り注ぐ。
ひより「ひっ、ひぃっ……!」
音が彼女の外敵を払う。
指向性を持った、持たない拒絶が使い魔の魂を殺す。
クレア「くっ、こんな事で……!」
雷を幾ら撃ち込んでも、減らない数に焦りを覚えて――それでも、それ以外にやれる事は無く。
杏子「くっそ……がぁ!!」
ほむらのお陰で、敵を削るのは容易かった。
斬って叩き落とし薙ぎ払って突き穿ち縛り捻り潰してかち割り引き千切って焼き焦がしても、
あの魔女本体に近寄る事すら儘ならないのを除けば。
ほむら「はぁ、はぁ…………くっ!!」
ほむらの時間停止のスパンも徐々に短くなっていく。
距離があるくせに魔女は絶え間無い飽和攻撃を今も行い続けていた。
杏子「(このままじゃあ、ジリ貧だ。まずい……!)」
ひより「わ、わぁっ!?」
こまち「ひよりっ! 今行く!」
死角からの突然の攻撃にひよりが倒れ、そこに群がろうとした使い魔らをこまちが薙いだ。
破片が飛び散って消える。
クレア「下がりなさい!」
距離をを詰められたクレアが、使い魔の腹部を雷撃と共に蹴り抜いた。
吹き飛んだ使い魔は雷球となって周りを巻き込んで爆ぜる。
合流し、背中合わせに三人。
ひより「も、もうだめ……こんな、こんなのって……」
こまち「流石に、ヤバそう……」
クレア「(……大丈夫、だって、だって私は祈ってきたのだから)」
ほむらの時間停止に、遂に明確なラグが発生した。
ほむら「しまっ――」
杏子「チクショウ!」
悪態と共に張った赤色の結界が使い魔の波を受け止め、貴女たちを押し込む。
杏子「燃えろ!」
爆焔と共に、結界と使い魔が塵になった。
――すぐに補填される。
杏子「こ、このままじゃ――」
キュゥべえ「ほら、やっぱり無理だったろう?」
キュゥべえ「まどか」
杏子「っ」
ほむら「まどか……!? 来てはダメ!」
瓦礫の積もった山の上に、彼女と――それを孵す者。
まどか「ほむらちゃん、杏子ちゃん……それに皆……」
キュゥべえ「見ての通りだよ、まどか。彼女達ではワルプルギスの夜に勝つ事は不可能なんだ」
キュゥべえ「でも、君ならこの現状を変えられるよ」
キュゥべえ「君の持つ力ならば、容易い事だろう」
まどか「私は……」
ふざけたことを、ぬかすな。
キュゥべえ「む、これ、は」
獣の身体が一瞬で燃え上がった。
と、同時に現れるもう一体の彼。
まどか「――杏子ちゃん」
貴女の、蝋燭に火が灯る。
使い魔が次々と自己発火していく。
彼女らの中身の『火が灯る』。
杏子「そうやって、自分は安全な所から、全てを分かったつもりか?」
杏子「――何でもかんでも、お前の思い通りにいくと、思ってんじゃねぇよ……!」
杏子「大人しくしてろよ、まどか!」
まどか「う――うん」
怒りが敵を焼く。
その姿は、味方を鼓舞して。
杏子「なにやる気失せてんだよ! さっさと――」
魔女の吐き出した炎弾を、ほむらを庇うように抱き寄せて『右手で払う』。
杏子「――あのデカブツを叩き落とすぞ!」
こまち「――――はいっ!!」
ひより「うぅ……頼みますよ杏子さん……!」
二人は使い魔だった屑の間を縫うように、空の瓦礫を伝って魔女へと接近していく。
クレア「……神様は」
貴女もほむらを守りながら空を駆けていく。
不思議と、力は溢れてきた。
クレア「――ここに」
それを見上げて、少し微笑んで。
クレアも、後を追った。
圧倒的な存在にも、貴女が居れば彼女達は怯まない。
それは正しく信仰そのもので。
それは貴女の、嘗ての後悔で。
>>100
伊吹は
>>240
忘れてないよ
杏子「うぉ、お!」
猛々しく、貴女は舞って。
障害を刺し焦がして道を通す。
槍が炎に溶けて、融けた炎を固めて再び大槍へ。
弓弦の如く身体を引き絞り――周囲の因果線を練り集める。
一撃で存在を穿つ紅の槍を。
ひより「決めてくださいよ!」
こまち「杏子さん、危ない!」
クレア「信じます……貴女を」
襲い掛かる使い魔が三人に露払いされ、僅かながら時間も止まって――貴女の蝋燭が燃え上がる。
ほむら「杏子!」
杏子「――ぶっ飛べ」
放った『怒り』が、魔女に風穴を開けた。
※戦闘終了
――――でも、だから
魔女の躯が高度を失って、ゆっくりと水面に近付いていく。
まどか「やった……!」
見守るだけだった彼女の、張り詰めた心が解れた。
どうやら、夜も明けそうだ。『空が明るみを取り戻す』。
キュゥべえ「まどか、まだ見ていた方がいい」
まどか「――え?」
キュゥべえ「僕の予想通りなら、まだ君にとっても不利益な事が起こると思うよ」
キュゥべえ「そう、例えば」
魔女のつんざく悲鳴。
キュゥべえ「まだ、倒れないとかさ」
空は薄明かるい。
だがしかし、夜だった。
――――白夜
こまち「まだやるか!」
ひより「しぶとい人は嫌いです……!」
クレア「ならばもう一度、平伏しなさい!」
各々が得物を構え直す、が。
魔女の叫びとは裏腹に夜は明るんでいく。
ほむら「こ、これは……一体――?」
杏子「構わねぇさ、トドメ、を――?」
そしてその空から射し当たる、白い夜の星空――弾丸の様な使い魔の数。
さっきと全く同じ状況で懲りないな、と、貴女は考えた。
魔法は違った。
貴女に、透き通る様な感覚を与えて。
1、右に避ける(死亡する)
2、左に避ける(死亡する)
3、前に避ける(生存する)
4、後ろに避ける(死亡する)
5、反撃する(死亡する)
↓3
3
中断します
やるよー
>>248
杏子「っっ!!?」
心臓が破裂する様な錯覚と共に、貴女は前に飛び込む。
――貴女が抜けた空白を使い魔の群体が通り抜けた。
空間が削れて変わっていくのを感じる。
魔女は一転して、静かに笑みを湛えていた。
貴女は空中をもがきながら、周囲を確認する。
こまち、ひより、クレア――いる。
杏子「っ、ほむらっ!」
見れば、魔力切れ寸前であったほむらが、使い魔の波に貫かれ――遠くどこかの瓦礫に叩きつけられていて。
ほむら「かっ……う、ぁ」
だから衝撃に、意識が混濁を示す。
そんなほむらも、一つ瞬きでしか見れない。
使い魔が飽和した攻撃を、貴女に再び向けた。
1、右に避ける(生存する)
2、左に避ける(死亡する)
3、前に避ける(死亡する)
4、後ろに避ける(死亡する)
5、反撃する(死亡する)
↓3
1
今日はやります
始めます
>>255
貴女は魔法に従って大きく右に飛んだ。
――魔女の放つ黒い風が、貴女の頬を掠める。
杏子「あっ、ぶな――!」
脳内では警鐘が鳴り続けていた。
貴女が、貴女を『生かそう』としている。
使い魔が貴女を囲んで。
そして啓示される、未来。
杏子「――はは」
乾いた笑いが溢れた。
やれるものなら、
杏子「――やってみろ!」
1、右に避ける(死亡する)
2、左に避ける(死亡する)
3、前に避ける(死亡する)
4、後ろに避ける(死亡する)
5、上に飛ぶ(生存する)
6、反撃する(死亡する)
7、立ち止まる(死亡する)
8、助けを呼ぶ(死亡する)
↓3
5
>>264
使い魔たちが一斉に突進してきた。
貴女は高く跳躍すると、それらはお互いにぶつかり合い――混ざって溶ける。
――魔女が貴女を捻り潰そうと手を伸ばしてきて。
杏子「……なるほどな」
1、右に避ける(死亡する)
2、左に避ける(死亡する)
3、前に避ける(死亡する)
4、後ろに避ける(死亡する)
5、反撃する(生存する)
↓3
5
>>268
その腕を半身になって躱し、一閃、槍を振り抜く。
魔女のソレに、一つ傷を付けた。
魔女「――――!」
杏子「(勝てる――これなら!)」
回路がパチリ、と組み上がる。
圧倒的な質量の破壊を避け、使い魔の波をすり抜け、魔女を弄ぶ。
この魔法なら、そんな事すら容易いと、思った。
使い魔「!」
杏子「どうした、当たらないぞ?」
顎を引く。
影の剣が喉を掠めて、槍を突き抜く。
頭を屈める。
爪が空を切り、その腕を蹴り裂く。
身体を捻る。
受け流した弾丸と、周囲を薙ぎ払う鎖。
まさに、無敵だった。
故に、魔女は力を貴女に集めた。
全ての破壊の意思が、貴女を囲んで締め付けようとする。
杏子「ふん」
それでも、貴女の魔法は解答を示して。
1、右に避ける(死亡する)
2、左に避ける(死亡する)
3、前に避ける(死亡する)
4、後ろに避ける(死亡する)
5、上に飛ぶ(死亡する)
6、反撃する(死亡する)
7、立ち止まる(生存する)
8、助けを呼ぶ(死亡する)
↓3
7
>>272
だから、貴女は立ち止まった。
貴女の脇をすり抜ける、数多の殺意。
一際大きな闇の閃きが、貴女の頭部を吹き飛ばそうと飛来した。
貴女はそれを『視認』する。
これは避けなければ直撃だが、もし躱せば必ず隙を着かれてしまうだろう――そんな一撃だった。
スローモーションになって、ソレが近寄るのが分かる。
ゆっくり、ゆっくり。
貴女の眼前にまで迫って、漸く貴女は、
杏子「(直、撃――する?)」
と、思って。
こまち「杏子さん、危ないっ!」
こまちが咄嗟に貴女に体当たりし、貴女は射線から外れた。
杏子「――え?」
代わりに、彼女が。
こまち「うっ、おぉ……っ!?」
彼女が、押し流された。
力の奔流に呑まれ、地面に強かに身体を打ち付けられる。
夜の塊が爆ぜ、それらがヒトガタを取って。
こまち「ぐぅ……なっ!?」
そして、使い魔はこまちに群がって。
黒い一つの生き物みたいになって、こまちを覆い隠した。
こまち「この――――」
意味の分かる発音は、そこまで。
後は悲鳴と、衣服を引き千切る音。
肉を咀嚼する声。
骨を圧し折る言葉。
心臓を抉り取る笑い。
杏子「――――」
貴女は生存する。
ひより「うわ、うわぁぁっ!」
圧倒的な数に押され、逃げ出したひよりが瓦礫に退路を阻まれる。
使い魔は雪の様に限り無く降り立って。
ひより「やっぱり、来るんじゃなかった――信用したのが間違いだったんだ……!!」
一歩、一歩。
使い魔は一歩、ひよりに向かって死を運ぶ。
ひより「こ、こないで。ゆるして……! しにたくな」
最初に飛び込んだ使い魔が、槍を突き刺して。
次に飛び込んだ使い魔が、鎖で彼女の首を捻りあげて。
後は、全員で――擦り潰された。
杏子「な、んだよ……なんだよ、コレ」
突然の出来事に、思考が上手く回らなかった。
そんな貴女を貫こうと、湧き出す使い魔――を、稲妻が走って蒸発させられる。
クレア「大丈夫ですか!?」
杏子「あ……あぁ。だけど……!」
クレア「今はそれより――くっ!」
貴女と背中合わせになるようにして、クレアは錫杖を振るう。
自在の電撃が周囲を焦がした。
クレア「今は乗り切る事が第一でしょう!」
杏子「――あぁ、そうだ」
背に彼女の温度を感じ、貴女も得物を構え直した。
黒い流星が――一つ一つが使い魔の塊の様だ――貴女達に零れ落ちてきている。
杏子「……!」
貴女は虚空に手を差し入れて、因果を螺じ曲げる。
蝋燭に、明るい炎が灯った。
流れ星は、音もなく歪んで消える。
更にもう一波、魔女の咆哮と共に――魔法少女を模したヒトガタの群れが降って。
クレアが迎撃の為に天高く錫杖を掲げるのを感じた。
その彼女の足元から、影が蠢く。
1、右に避ける(死亡する)
2、左に避ける(死亡する)
3、前に避ける(死亡する)
4、後ろに避ける(死亡する)
5、上に飛ぶ(死亡する)
6、背後を蹴り抜く(生存する)
7、立ち止まる(死亡する)
8、助けを呼ぶ(死亡する)
↓3
6
>>281
体が、勝手に動いた。
背後の敵を蹴り飛ばすつもりで、貴女は鋭く爪先を走らせた。
クレア「なっ――――?」
杏子「――!?」
貴女に蹴られ、体制を崩したクレアが――貴女の目の前で使い魔に連れていかれた。
物陰に押し込まれ、彼女がどうなったかは、分からない。
杏子「あ、あぁ……ちがう、そんなつもりじゃ……」
クレアに殺到した分、威力が分散された光の波動が貴女を襲う。
本能的に結界を胸に集中させ、防御した。
そして少し、貴女の意識は途切れる。
中断します。お疲れさまでした
今日もやる予定です
始めます
――――深く明るい夜
貴女は寒さを感じて、弱々しく目を開けた。
ワルプルギスの夜が、周囲を破壊する――瓦礫の崩れる音ばかりが耳に入ってきた。
杏子「……やべぇな」
貴女は身体を起こそうとするが、どうにも上手く立ち上がれない。
キュゥべえ「どうしたんだい、杏子」
目線をずらすと、キュゥべえ。
少し離れた場所で、貴女を眺めていた。
杏子「見りゃ分かるだろ……立とうとしてるんだ」
キュゥべえ「そうなのかい?」
キュゥべえ「その身体だったからね。そうと気付けなかったよ」
言われて、初めて理解した。
杏子「…………あーあ」
下半身は無く、左腕も焼け千切れていて――右腕も黒焦げ。
腹部の断面から、血とも何とも区別の付かない液体が漏れだしていた。
どうりで、立ち上がれない筈だ。
キュゥべえ「……どうやら君も暁美ほむらも命拾いをしたようだね」
杏子「……ほむらも無事か」
キュゥべえ「無事かどうかははっきりとは分からない。君達の力が弱まり過ぎて、使い魔が君達を敵だと感知していない様ではあるけれど」
杏子「そう、か」
キュゥべえ「まぁ、こうなる事は想定していたから……もう君は眠っていても構わないよ」
キュゥべえ「この惨状を目の当たりにすれば、強情な彼女だって契約してくれる筈だからね」
貴女の体は動かない。
杏子「(……『想定していた』?)」
1、問い詰める(生存する)
2、もう、目を閉じる(生存する)
↓3
1
>>295
杏子「どういう……ことだよ」
キュゥべえ「どういう事か?」
キュゥべえ「君は本当に分かっていないのかい?」
彼は溜め息を一つ、呆れたように絞り出した。
キュゥべえ「君が何かを成すのは、最早不可能なんだよ」
キュゥべえ「君が持っていた因果、未来を紡いでいく為の道標は、あのビルで、君の死と共に失われてしまっている」
キュゥべえ「君がアリスと出逢わなければ、そうと確信を持てなかったけれどね」
遠回しな言葉で、貴女ははぐらかされているように感じた。
杏子「渋らずにはっきりと言えよ……アタシが何も出来ないなんて、誰が決めたんだ……!」
キュゥべえ「決めるも何も無い。魔法少女に取って『因果を失う』と言うことは『魔法を失う』事と同義なのだからね」
キュゥべえ「魔法少女は、自らの因果――未来を糧に奇跡を起こす」
キュゥべえ「だから、それを亡くしてしまえば、魔法なんて使える筈が無いのだからね」
杏子「何をバカな……そうだとして、アタシは自在に魔法を使えてる。そんな――」
杏子「――――」
キュゥべえ「あえて問おう」
キュゥべえ「君は、佐倉杏子かい?」
1、そうだ
2、違う
↓3
↑
>>299
杏子「なんだよ、それ……アタシは、アタシだ! 佐倉杏子なんだよ!」
キュゥべえ「……もう一つ、君に教えてあげよう」
獣は貴女に近寄り、達磨を見上げた。
キュゥべえ「僕が知る限りの、有史で活動したワルプルギスの夜は――ここまでの戦闘能力を持っていない」
キュゥべえ「ワルプルギスの夜の強度は、その周囲の魔女の強さや数に比例する」
キュゥべえ「今もあの魔女が立ち上がり活動するのは、この近くにいる――圧倒的な魔女から力を吸い上げ続けているからに他ならない」
ほむら「……だったら……その、大本を……叩けば良いのね……?」
貴女は声に歓喜し振り替える。
満身創痍ではあるが、まだ生きている仲間に出会えた事に。
杏子「無事か……?」
ほむら「一応、五体は満足よ……貴女の方が、よっぽど酷い……」
キュゥべえ「ほむらの言う事は確かに合理的だね」
キュゥべえ「なら、止めを刺すなら今が好機だよね」
と、キュゥべえは貴女を指しながら、言った。
ほむら「…………え?」
杏子「違う――アタシは、そんなんじゃない!!」
キュゥべえ「そこにいるのは、佐倉杏子とは似て否なる者だ」
杏子「違う!」
キュゥべえ「――性質としては、魔女と表現しても、良いだろう」
杏子「違う! アタシは魔法少女だ……! 姿だって、ほら……!」
キュゥべえ「君は、アリスと言う例外をその目で見たんじゃあ、ないかい?」
杏子「それっ……は…………」
ほむら「杏子……貴女」
ほむらの表情が、絶望に塗り潰されていく。
唯一の希望だった貴女への信頼も、溶けていく。
キュゥべえ「まぁ、どちらにせよ、だ」
キュゥべえ「彼女らはこの有り様だよ。君はどうしたい?」
キュゥべえ「鹿目まどか」
杏子「っ」
ほむら「まど……か……?」
まどか「…………」
キュゥべえ「言った通りだったろう? 君が契約しない限り、あの魔女はこの街を蹂躙し続けるだろう」
キュゥべえ「傷付いた彼女達を見て、君は何を願う?」
まどか「……わかったよ、キュゥべえ。私、契約する」
ほむら「だ、ダメっ」
まどかに手を伸ばしたほむらが、膝に力が入らずその場に崩れ落ちる。
もう、戦えないのだ。
杏子「(……これで、良いのかもな)」
杏子「(まどかが世界を変えなきゃ、どうにもならないんだって、アタシの声も言ってたろ)」
杏子「これで……もう、いいんだ」
まどかが契約を初め、辺りを光が包む。
あと数秒だ。
杏子「これでいい……もう、疲れた……」
ほむらが、惨めに啜り泣いている様な、気がした。
1、まどかの因果を奪って自分の物とする(生存する)
2、静観する(生存する)
↓3
※重要な安価です
1
今日もやります
>>306
何も出来ない。
そう、勝ち誇る様に、アイツは言った。
キュゥべえ「さぁ、鹿目まどか。君はその魂を対価に何を望む?」
まどか「私の願いは――」
まどか「『全ての魔女を消し去りたい。過去も未来も、全ての魔女を、この手で』」
――貴女の魔法がとてつもない警鐘を鳴り響かせる。
杏子「がっ――――なっ、んだ――!!?」
キュゥべえ「な――そんな、そんな願いが叶うとしたら……それは因果律への反逆だ! まどか、君は神にでもなるつもりかい!?」
まどか「希望で始まり、絶望で終わる……それが世界のルールだっていうなら……!」
まどか「そんなルールなんて変えてやる! 壊して見せる! ……さぁ、叶えてよ!」
まどか「インキュベー……」
魔法に体が従って、勝手に動いた。
契約の輝きが消える。
キュゥべえもまどかも、突然の事に面食らっている。
まどか「……都合が悪くなれば契約を取り止めるの? 私のエネルギーは欲しくないのかな?」
キュゥべえ「ち、違う……ボクじゃない」
まどか「……え?」
貴女がしたことは単純だ。
まどかに集まっていく因果を引き千切っただけ。
杏子「ダメだ……契約は、するな」
杏子「お前の力は、アタシが預かるよ」
まどか「ぐぅ……!?」
まどかの回りに巻き付く糸を掴んで裂き、取り込んでいく。
凄まじい力の奔流を感じた。
キュゥべえ「ま、まさか君は……まどかの因果を奪い取っているのか?」
キュゥべえ「止めるんだ! まどかの力はまどかが契約をしなければ、エネルギーには変化しない……それは君達人類にとっても大きな損失で――――」
杏子「うるせぇよ」
蝋燭に怒りが灯る。
ほむら「契約を中断した……? そんな……」
ほむら「……さすが……杏子、ね……」
背後で、ほむらが気を失って倒れていた。
緊張の連続と疲労から、もう彼女は確かに限界だったのだから。
キュゥべえ「君は何をやっているか分かっているのかい? 因果を奪うなんて……それは鹿目まどかの過去も未来も否定する事になる……!」
キュゥべえ「君は鹿目まどかがどうなっても構わないとでも言うつもりかい?」
また一つ、束で奪い取る。
まどか「杏子ちゃん、止めてぇ!」
まどか「私が、裂けちゃう……!?」
まどかの『世界』が壊れ始める。
杏子「我慢してくれ……大丈夫だ、アイツは、アタシがやる」
まどか「杏子ちゃ、ん……」
まどかの意識が途切れて、地面にへたりこむ。
まるで眠っている様だった。
キュゥべえ「…………」
キュゥべえ「君は何も成せない」
杏子「それはどうかな?」
貴女の手足が、装束諸とも再生する。
凄まじい沸き立つ力を感じた。
何処からともなく現れた馬――使い魔に跨がって、貴女は。
杏子「……悪いな、まどか……でも、安心してくれ」
杏子「今なら、負ける気がしない」
魔女の空へと、躍り出た。
※戦闘開始
ワルプルギスの夜(正位置)
【SG耐久】25/25
【SG状態】魔女
【戦闘】30(230)【EX】
【魔力】40(240)【EX】
【精神】70(270)【EX】
【魅力】90(290)【EX】
【幸運】15(215)【EX】
【モラル】90
【スキル】
【無力の核】
系統:魔法
戦闘時、判定+9
【ワルプルギスの白夜】
系統:強化
全ステータス+200
【吊るされた者】
系統:アルカナ【EX】
全ての判定+3
【絶望への足音】
系統:通常
勝利判定+3
【終わらない夜】
系統:通常
貴女逃走不可
佐倉杏子
【SG耐久】7/(7)
【SG状態】普通
【戦闘】119(119)【S】
【魔力】60(110)【S】
【精神】60(110)【S】
【魅力】46(46)【C】
【幸運】51(101)【S】
【モラル】91
【スキル】
【自暴自棄の紅き幻影】
系統:魔法
戦闘時、判定+5(6)
【紅蓮の聖女】
系統:強化専用
【魔力】【精神】【幸運】+50
【正義】
系統:アルカナ【A】
ランクアップ条件:モラル100
戦闘時、判定+1
友好判定+1
SG状態【激昂】時、判定+1
絶望判定+1、即死無効
【信仰】
系統:通常【EX】
SG耐久+3
全判定+1
味方共闘時、判定+1
魔法スキル強化+1
【啓示】
系統:特殊【EX】
過程を無視して事象を理解できる
【此岸】
系統:特殊【EX】
敵の全スキル無効、このスキルは無効化されない。
とりあえずここで一旦中断して、とても酷いお知らせがあります。
実は伊吹の登場シーンを>>291に挟まなければならなかったのですが、
寝 惚 け て 忘 れ て ま し た
(ストーリーに然程影響なかったのも一つの理由なんや……許してください何でもしますから!)
書き直しはすぐ出来ますしストーリーの流れも変わりませんが、投下し直しになりますんで、頭空っぽにして再度読んで下さい何でもしますから!(迫真)
今日は寝ます(恥知らず)
今日もやりますが修正から入ります
――――深く明るい夜
貴女は寒さを感じて、弱々しく目を開けた。
ワルプルギスの夜が、周囲を破壊する――瓦礫の崩れる音ばかりが耳に入ってきた。
杏子「……やべぇな」
貴女は身体を起こそうとするが、どうにも上手く立ち上がれない。
「どうしたのかな、杏子」
目線をずらすと、そこには白いワンピース。
少し離れた場所で、貴女を眺めている――伊吹がいた。
杏子「見りゃ分かるだろ……立とうとしてるんだ」
伊吹「そうだったんだ……」
伊吹「足が必要そうだね……ボクが創るにはちょっと時間がかかりそうだ」
言われて、初めて理解した。
杏子「…………あーあ」
下半身は無く、左腕も焼け千切れていて――右腕も黒焦げ。
腹部の断面から、血とも何とも区別の付かない液体が漏れだしていた。
どうりで、立ち上がれない筈だ。
杏子「お前は……どうしてここに?」
伊吹「?」
彼女は不思議そうに首を傾げた。
貴女の目線に屈み込んで、ニッコリと笑う。
伊吹「だってキミが言ったから。『お手伝い』しに来たんだ」
その表情には恐怖も絶望も何も無かった。
ちょっと近所まで出掛けてくる、そんな気軽さだけで。
杏子「お前一人で、やれるのか……?」
貴女は彼女の魔法も何も知らない。
ただ顔を知った程度の存在だった。
だからこそ、来ないだろうとも。
伊吹「わからないけど、やってみるねー」
杏子「そ、そんな軽く……その辺の魔女とは――」
伊吹「えーい」
声を掛けるよりも早く、彼女は虚空から全長5m程度の突撃槍を取り出し――魔女に向かって射出した。
意識の外から、魔女が胴体を刈り取られ――即座に再生する。
杏子「な……!?」
伊吹「数が足りないかー。じゃあこれだー!」
彼女の周囲が『開く』。
其処は忽ち武器庫と化し――それらが各々に魔女に向かって嵐となり襲い掛かる。
際限は無く。
絶え間も無い。
圧倒的な暴力が殺意も無く夜に降り注いだ。
杏子「あ……ははっ、すげぇ」
自分の全力を、永遠と続けている様な飽和攻撃だ。
魔女は近寄る事すら儘ならない様子で。
でも、それは突然終わった。
本当に唐突に、破壊の雨が上がる。
杏子「……おい、どうしたんだ? 魔女はまだ……っ!?」
剣やら槍、斧から矢じり、鎌から何から全ての得物の洗礼を受け――興奮した魔女の手が彼女に迫った。
彼女は立ち尽くして動かない。
杏子「おいバカ、何やってんだ!」
彼女は貴女に背を向けたまま、錆び付いた機械の様に首をギシギシと傾け――顔だけを貴女に向けた。
一言二言のテレパシー。
伊吹『ごめんね。ダメだったよー』
魔女の手のひらはあっと言う間に彼女の上半身を包み込んで。
果実を潰す様な音と共に、残された下半身が――不細工に少しばかり踊って、地面に転げて跳ねた。
杏子「――――え?」
魔女は満足したのか、貴女には目もくれず空の散歩を再開する。
貴女は、何が起こったのかすら理解出来ずにいた。
キュゥべえ「なるほど。興味深い結果だ」
声に飛び付く様に振り返る。
いつもの獣が、そこにいた。
キュゥべえ「生命維持に使用する魔力すら攻撃に回すと、あんな状態に陥るんだね。人間は本能的にある程度のセーブをかけるから、あんな100パーセントの状態はなかなかお目にかかれないよ」
キュゥべえ「やはり彼女は、ヒトとしては壊れていたようだね」
淡々と答える彼に、貴女は思い返す。
あんな、簡単な口約束だけで――
杏子「――こんなに。こんなことに……?」
余りに現実味が無くて、貴女は脱力――する四肢も欠けているが――した。
ここから>>292に繋がります。
誠に申し訳無いです。
(最後がグダるのはいつもの事だよね!)
しばらく後から戦闘開始します。
伊吹がダメージを与えてるので魔女の体力が減った状態でスタートします
寝落ちすいませんでした……(土下座)
来ましたんで許してください!
やります(迫真)
※伊吹の攻撃にて魔女にダメージ
杏子 7/7
魔女 20/25
【自暴自棄の紅き幻影】+6
【正義】+1
【信仰】+1
※ファンブル以外成功
直後、20連携
↓20まで
あ
>>351まで
杏子 5/7
魔女 2/25
更に2連携
↓2まで
※ファンブル以外成功
寝落ちを繰り返す様は懐かしくもありますね(土下座)
皆が寝てる間に終わらせよう(迫真)
始めます
――――焼き払われる夜の闇
魔女が口を開き、そこから溢れる程の闇の泥を吐き出した。
貴女はそれを一瞥し、右手の甲で――撫でるように払い除ける。
魔女「――――!」
杏子「何か、したか?」
貴女は騎乗したまま、魔女にその手を伸ばした。
あぁ、なんて、こんなにかんたんなんだ。
有りとあらゆる因果の絡まりを感じ取る。
世界を覆って輝く、命の流れ。
この星を修飾する、色とりどりの涙。
とても綺麗で、恐ろしい光。
貴女の目に映る全てが、全てそう。
伸ばした手を、握る。
魔女は全身から血液――バラけた魔女の一部――を激しく撒き散らした。
叫び声を上げながらも、魔女は貴女を押し潰そうと遮二無二落ちてくる。
杏子「…………それじゃ駄目だよ」
巨大な槍が一つ、魔女を貫いて――その動きを止めた。
二つ。三つ、四つ。
五つ。
千。
剣山に突き刺さって動けなくなった魔女――僅かにもがいている。
貴女はゆっくりとソレに歩み寄った。
杏子「もう、誰も呪うんじゃねぇぞ」
魔女は溶けるように、焼かれて。
――そうして、夜は暁けた。
――――砕けてしまった空、暁の空
貴女を乗せた馬は消えて、貴女は空から降り立つ。
ふわりと柔らかく地面が迎えて、薄い色の羽が舞った。
杏子「…………」
ほむらもまどかも、気を失って倒れている。
貴女だけが、そこに立っていた。
因果に縛られた貴女が、必死に抵抗を続けた結果が――訪れたのだ。
キュゥべえ「…………」
杏子「何か言いたそうだな?」
キュゥべえ「……やれやれ。特には無いよ」
キュゥべえ「ただ、エネルギー回収のノルマが遠くなっただけさ」
そう言い残して、彼もいなくなった。
キュゥべえ「……わけがわからないよ」
――――白む空
ほむら「う……うぅ……?」
杏子「ようやく目が覚めたな。気分はどうだ?」
キュゥべえがいなくなって程無くして、ほむらは目覚めた。
ほむら「……魔女は!? どうなったの?」
杏子「安心してくれ。アタシがきっちりぶっ飛ばしたよ」
ほむら「……そう。よかった」
彼女は安心したのか、背中を瓦礫に預けて空を見上げた。
まどか「う、うぅん……?」
抜け殻も目覚めた。
大した外傷も無い。貴女はほっと一息吐き、駆け寄った。
杏子「大丈夫か? ……無茶をさせちまった。立てるか?」
まどか「な、なんとか……」
彼女に肩を貸し、ほむらの顔を見せてやる。
まどか「ほむらちゃんも無事だったんだね……」
杏子「あぁ。おいほむら、空ばっか見上げて感慨に耽ってないでさ。まどかもこの通り何ともないぜ?」
ほむらは『貴女』の方に向き直った。
ほむら「杏子……?」
ほむら「『まどか』って……?」
まどかがほむらの傷を気にしたのか、側に寄って手を当てる。
まどか「ほむらちゃん、大丈夫……?」
ほむら「っ」
一瞬、ほむらは我に返った様な表情になる。
ほむら「そ、そうよね……私、どうかしていたのかしら」
ほむら「……えぇ、大丈夫よ。まどかこそ、無事で良かった……本当に」
ほむらが片腕でまどかを抱き寄せた。
漸く、彼女の戦いは終わったのだ。
杏子「……一件落着か。やっと落ち着けるんだろうかね」
貴女の魔法も今は大人しい。
『貴女を生存させる為だけの魔法』も今は。
周囲を見回す。
――遺体は、見当たらない。
杏子「…………」
自分の無茶に付き合わせてしまった。
まだ、あの瞬間の感覚が残っている。
杏子「……あぁ」
杏子「――神様なんて、どこにもいなかったんだなぁ」
最終章『ワルプルギスの夜』 終幕
「終わってしまったね」
「キミの物語はここで一つの幕を迎えた」
「だが、それがキミの死をもってして下ろされたモノでない限り、キミの生は続く」
「だからキミは、これから先を覗く権利がある」
「さぁ、どうする?」
「ただ、時には知らなくても良い事だってある」
【EX story】
1、行く
2、行かない
↓5
適当なタイミングで後日談はその内やります。
いやーようやく終わりましたね。お疲れさまです。
自分が遅筆になったのもありますし、安価スレが成り立つ程の人がいなくなったのもあると思います。
寂しいものです。
ただ単に面白くないから切られただけって言うのは魔女化するんでヤメロォ!!
それともう一つ報告が。
長くお付き合い頂いた方も居られるでしょうが、今回で安価スレは止める事にします。
シナリオのネタは何個か暖めてるのがあるので、それを自分のペースでつらつらと書いていくスタイルに戻ります。
暫くは今までに書いてきたコンマギの各話をまとめ直してリメイクするつもりです。
自分が読み返す時クッソ大変なんで(白目)
お前が全然来なかったから人が逃げただけじゃねぇの?
>>378
それな
今までに解禁したキャラはストーリーの大まかな流れが頭にあるので、ゆっくり書いていきます
お疲れ様です。
かずみ編から追ってました。wikiを作ったのも今となっては良い思い出。
また、作品を書いたら読ませてください。
>>385
wikiは本当にありがとうございます。
あんな風にまとめられるとは思ってもおらず、とても恵まれていると感じます。
――――夜の闇に一人
杏子「…………」
さっき火を点けたばかりの煙草が、一息に座れてじわりと焼ける。
深く吸い込んで、咥えたままに煙を吐いた。
ぼんやりと、空に浮かぶ月を見上げる。
やけに大きく感じて、少し驚いた。
――月明かりから、人が落ちてきて。
杏子「……あぁ、そろそろだったか」
それは、魔法少女だった。
『運悪く』魔女に一撃でソウルジェムを砕かれ、『たまたま』持っていたグリーフシードを使う事も無く。
『気紛れに』魔女から結界の外へと放り出され、『偶然にも』貴女の目の前に落下し。
そして『奇遇にも』ソウルジェムがそろそろ濁りそうな貴女の手の届く場所まで、グリーフシードは転がってきた。
杏子「…………」
溜め息。立ち上がってみる、億劫だ。
貴女の身長は随分と伸びた。
所々破れ肌が見え隠れするジーンズに黒のタンクトップと、そこらで買った小気味良いカッターシャツ。
赤く長い髪を一纏めにして、しかし疲れきったその表情――もまた美しい。
グリーフシードは、貴女を『生存』させた。
――――あれから、もう何年経っただろうか。
――――
すっかり回復してしまった貴女は、何をするでも無く夜を満喫する事にした。
仕方なく。
路地裏の狭い空も、今は閉塞感が心地よい。
ふと、先程の魔法少女の死体が目に入る。
杏子「……巻き込んで、すまないな」
指を鳴らす、音一つ。
その身体は炎に包まれて、あっという間に無くなってしまった。
壁に背を預け、腰を下ろした。
何もやる気が起きなかった。
何かをやっても、結果が分かりきっているから。
この魔法は、死なせてすらくれない。
そうして、いよいよ死に損なった貴女は――眠る様にただ目を閉じて思いを馳せる。
後悔の海の中へと、体を沈めていく――
――――あれからの、これから。
結論から言うと、鹿目まどかが魔法少女になるのは防がれた。
貴女がまどかから因果を奪い、自らの力とした為に――まどかはキュゥべえを認識する事すら出来なくなって。
見滝原に訪れた強大な魔女も、その力を得た貴女に完膚無きまでに討ち滅ぼされた。
だけど、それだけだったし。
それ以上のモノが、失われてしまっていた。
一段落付いて、一日経って。
貴女は何と無しに街をぶらついていた。
圧倒的な力を手に入れはしたが、日々に然程影響は無い。
そんな時に、恐怖に混乱し、貴女を見つけるや否や飛び付いてきた――まどかに出会った。
そう、確かあの時は――――
――――市街地、昼
まどか「――きょ、杏子ちゃんっ!!」
喧しい程の声だった。
こんなに大声を出せる子じゃあないと思って、振り返る。
杏子「どうした、まどか?」
ただそう返事しただけだと言うのに、まどかは安心からか堰を切ったように涙を流し始めた。
誰も、そんなまどかの様子を、気にも止めなかった。
中断します。
おやすみなさい
――――『鹿目家』の邸宅、昼
貴女はまどかに連れられて、彼女の自宅の玄関前に居た。
繋いでいる手が、心なしか震えている様な気がする。
喋る暇も無く走ってきたからか、まどかの息は酷く上がっていた。
杏子「一体どうしたんだよ……そもそも今日は平日で、学校があるんじゃないか?」
杏子「……あ。ワルプルギスの夜は、一般人からしたら災害扱いになってたんだったね。午前様だったのか?」
彼女は息を整えながら、首を横に振った。
ますます分からない。
まどか「杏子ちゃん……!」
やっと発した言葉も、
まどか「みんな、何だか変なの……! おかしいの!」
――的を射ず、故に貴女は目の当たりにしてみる事にした。
まどかが玄関の扉を開く。
内装は何の変わりもない。
奥からは、父親と弟の声が聞こえてきた。
あやしている様なソレだ。
まどか「…………」
杏子「……? どうしたってんだ?」
彼女は一息、大きく呼吸して――祈るように叫ぶ。
まどか「パパ! ただいまっ!!」
奥からは、変わらず父親と弟の声が聞こえてきた。
――あやしている様なソレだった。
背筋を薄ら寒い物が抜けていく。
まどかは貴女の手を引いて奥へと進んでいった。
無意味に怖くて仕方無かった。
居間に入ると、やはり鹿目家の男二人がそこで団欒している。
父親の方が、貴女に気付いた。
知久「おや……杏子ちゃんじゃないか。いつの間に……って、この感じも何だか懐かしい様な気がするね」
杏子「う、うす」
知久「そうだ、ちょうど良いしおやつにしようか」
彼はゆっくりと立ち上がり、台所へ向かった。
まどかが、声を掛ける。
まどか「……パパ、戸棚にクッキーが入ってるよ」
彼は答えた。
答えていない。
知久「そういえば、この間良いクッキーを買っていてね。どこに閉まったかな……?」
杏子「な……」
まどか「……実際に、見てもらった方が早いかも」
半ば諦めた様な表情で、彼女は――彼女自身の父親の、服の袖を掴んで言った。
まどか「こっちだよ、パパ」
知久「――おや、まどか。帰っていたのかい?」
彼はいつもの笑顔で娘を迎えて、貴女は一気に安堵する。
のも、束の、間。
知久「――学学校はおわおわ、終わりかかクッキークッキー――杏子ちゃんちゃ、ままままま」
知久「がっ、がっ、■■■■■!■■■■■■■■!!!」
――貴女は、本能的な嫌悪感から。
彼の意識を魔法で無理矢理に眠らせた。
だって見ていられない。
めちゃくちゃに振り回されたマリオネットみたいに体を震わせ、声にならない叫びを上げて。
――その上、ピカソの描いた絵画の如く輪郭が崩れそうになっていたのだから。
杏子「はぁっ……! はぁぁっ……!?」
まどか「…………」
貴女の手は震えていた。
それほどまでに、目の前の光景が異常だったから。
そして思い至る。
杏子「――おい、まさか皆って――!?」
まどか「うん」
まどか「みんな、こうなってた」
彼女は、しかし不思議と冷静だった。
いや、動揺する段階を通り過ぎただけなのかもしれないが。
キュゥべえ「こうなるのか。実に興味深いね」
背後の獣の声、を聞けるのはは一人だけ。
杏子「――キュゥべえ……まさかお前、何かやっちゃいないだろうな?」
まどか「……キュゥべえがいるの?」
杏子「――まどか?」
キュゥべえ「やはり、か。彼女の因果は佐倉杏子――君によって奪われてしまった」
キュゥべえ「鹿目まどかが僕を認識する事はもう無いだろうね」
やれやれ、といった様子でキュゥべえは頭を振った。
耳の飾りが、リンと鳴る。
杏子「へっ、そりゃあザマァ無いな。なら、何しに来たって言うんだよ?」
キュゥべえ「観測さ。前例が無いからね」
キュゥべえ「『未来』を奪われた人間がどうなるのか。後に生かせる情報かもしれないだろう?」
杏子「――――」
キュゥべえ「君は、この現象を起こしたのが僕であってほしいと思っている様だけれど」
キュゥべえ「――これは、君が起こした事だ。君が望んで、こうしたんだ」
キュゥべえ「僕は止めた筈だよ。感謝されこそして、責められる謂れはないはずさ」
杏子「アタ、シが……?」
まどか「杏子ちゃん?」
ハッとする。
見れば、まどかは狼狽える貴女を心配そうに見つめていた。
まどか「あの……ね」
そして、彼女が冷静でいられた理由も漸く分かる。
まどか「……何とか、なりそうかな?」
彼女は、貴女に任せれば大丈夫だと、信じていただけに過ぎないのだった。
――――見滝原市街地、夜
杏子「クソッ……!」
キュゥべえ「僕には因果を目視するようなデタラメな力は無いけれど、どうだい?」
杏子「うっせぇ、黙ってろ!」
キュゥべえ「やれやれ、着いてこいと言ったのは君だろうに」
キュゥべえを問い詰めた結果、原因はあの時――まどかの因果を奪い取った事だった。
因果を引き千切る様に奪った。それは覚えている。
キュゥべえに言わせれば、因果とは『関わり』だと。
これからの出会い。
紡いでいく歴史。
後に残る物。
今までの出会い。
紡がれた歴史。
今に受け継がれた物。
それらがつまりは『因果』なのだ。
キュゥべえ「君は、まどかの『ソレ』を破壊したんだ」
と、端的に。
だから、まどかがこれから関わる全ての歯車が狂った。
だが、そこは上手く対応するらしい――狂った歯車があるなら、使わなければいい。
他の人間の因果は、まどかを認識しない事で正常に保たれていて。
キュゥべえ「しかし、それは『人間としてのまどか』の因果だ」
どういう意味だ、と問えば。
キュゥべえ「『物質としてのまどか』の因果は存在し続けている」
キュゥべえ「たんぱく質の塊に芯を入れた人形とでも言えば良いのかな。とにかく、そういう『物体』としての因果は有るんだ」
だからちぐはぐになる、と言った。
まどかは居るのに、まどかは居ないから。
どうすればいい、と貴女は問うた。
キュゥべえ「彼女の因果を元に戻せばいい」
キュゥべえ「世界中に散らばっているかもしれないが、様々な繋がりを紡ぎ直せば、或いは元の生活を取り戻せるだろう」
キュゥべえ「そうしてくれれば、僕も再びまどかに接触できるはずだからね。及ばずながら、君に手を貸すよ」
そして、一日街を探して今に至る。
貴女はか細い因果の糸を必死に辿りながら、遂に一人を見つける。
ある一人のOLだ。
杏子「……マジか」
キュゥべえ「もしかしたら、未来に縁がある人間なのかもしれないね」
貴女はその女性と、まどかの因果を一つ――千切れた跡があった――結び直した。
杏子「――よし!」
キュゥべえ「成功したようだね。これを繰り返し、全てが元通りになれば、まどかの回りも今までの様になるだろう」
既に家族との因果修復は終わっている。
しかし、それでもまだ、父親達はまどかを見つけられなかった。
曰く、完全で無ければバランスが取れないと。
キュゥべえの言葉を信じるしか無いのは癪だが、現状はこの方法しかないのだ。
貴女は疲労から、手近にあったベンチに乱暴に腰を下ろす。
キュゥべえ「お疲れさま、杏子。このペースなら何とかなりそうだね」
杏子「はぁ……後どれくらいかかるかは、分かるのか?」
キュゥべえ「そうだね……一般的な魔法少女が持つ因果を参考に逆算すると……」
キュゥべえ「うん。間違いないね。概算だけれど、後80年程度で修復は完了する筈だ」
徒労感と、絶望と。
取り返しのつかない事をした、後悔と。
それでも貴女は『生存』していた。
中断します。お疲れさまでした
そうして一年が過ぎた。
――――貴女のアパート、夜
杏子「ただいま……」
日々を因果の修復に費やして、季節は遂に一周した。
魔女を狩る事も忘れてはならないのが、一つ、辛い所だが。
貴女は必要になって、幻術魔法を使い、部屋を借りた。
何故必要になったかと言うと――
まどか「おかえり、杏子ちゃん」
――彼女の為だ。
物事はいつも最悪の想定の、その先を行く。
彼女の目は、少し薄暗く感じた。
杏子「……あぁ、ただいま」
さやかは、あの少年と幸せに過ごしている。
いつの間にか、キュゥべえを認識する事も出来なくなっていた。
キュゥべえ曰く、まどかの因果絡みでの事では無いだろうかと。
勿論、さやかはまどかを認識しなくなっていて。
記憶もちぐはぐで、魔法少女の話題を出すだけでも『壊れそうになる』。
考え方によれば、彼女は漸く『普通の女の子』に戻れたのかもしれない。
それだけは……それだけは喜ぼう。
ほむらは、少し前に――死んだ。
余りに呆気なかった。
時間停止の魔法を失い、火器のみで戦うスタイルで魔女との戦いを繰り返していた。
彼女にはグリーフシードが必要だったから。
ほむらは、まどかを強引になら認識出来た。
その状態を継続的に維持する事も出来たのは、魔法少女だったからか、それとも『ほむら』だったからなのかは分からない。
だが、それは魔力の消耗を圧倒的に早める行為だった。
ソウルジェムの濁り方は尋常ではない。
故にほむらは要所要所でまどかを『忘れざるを得なかった』。
そして意味も分からず、ソウルジェムが濁っていると言う理由だけで魔女を狩り――貴女が再びまどかと引き合わせてまどかを『再認識』させる。
そういう事を続けていた。
――――ある日、彼女は魔女狩りから帰ってこなかった。
杏子「今日はどうだった?」
まどか「武器が揃ったよー」
杏子「そっか」
まどかと言えば、日々このアパートに引き込もってゲームとかをしている。
……外が彼女を受け付けないのだから、仕方も無い。
杏子「…………」
学校に行けば席が無い。
そんなのは序の口だった。
住民票も無い。
余りピンと来なかった。
とにかく始めは、まどかっていう人間がいなかった事になってた。
それで済めば、幾分かマシだったか。
暫くして、キュゥべえが言っていたまどかの『物質としての因果』が安定を見せ始めた。
それからすぐに、この部屋を借りる羽目になる。
まどかは家に引き込もる様になった。
外に出て人にぶつかるだけでも、その人間が崩壊を始めかねないから。
彼女の部屋も、その時には物置になっていた。
父親は不要な物をそこにしまう。都合の良い空き部屋の利用法としては的確だろう。
ある日、彼女の弟が唐突に、座っているまどかの服の中に――首回りから――自分のオモチャを入れて、おやつを食べにその場を離れた。
まどかは凄く驚いたらしい。
もしかすると、貴女の努力が実ったのだろうかと。
結果、それは的外れだったが。
彼女の弟は、彼女を『人の形をしたおもちゃ箱』くらいにしか認識していなかったから。
だが、貴女はその報告を聞いて心を踊らせた。
僅かながらでも、進歩があったと思えば当然だ。
貴女は更に作業に没頭する。
その最中に、事件は起きた。
――――鹿目邸、平日の昼
まどか「ふわぁ……」
彼女は眠い目を擦りながら、もはやゴミ置き場と化した自室からリビングへと降りていった。
最近はシリアルばかり口にしている。
こっそり、と言っても目の前でだか、手早く食事をするには一番だから。
今日も、そうやって食事を摂るために、いつも通りをしていたに過ぎなかった。
父親は弟を寝かしつけた所のようで、リラックスしてソファに座っていた。
まどかには目もくれず、コーヒーを飲んでいる。
まどか「(……だいぶ慣れちゃったや)」
出来るだけ声は発しない。
自分を『人間』と認識されてしまうと壊れてしまうかもしれないから、ソレは得意になってしまった。
何気無しにソファの脇を通って、台所に向かおうとするまどか――を一瞥した彼女の父親は。
何を思ったか、彼女の腕を掴んだ。
まどか「――――え?」
その声で、父親の崩壊が始まりそうになって、まどかは咄嗟に空いた手で自らの口を塞いだ。
父親はパジャマ姿のまどかの手を引いて、風呂場に連れていく。
まどかは、そこに至って漸く、自分が酷く汚れているのに気がついた。
まどか「(もしかして……パパは私を少しだけ、分かってるのかも)」
風呂に入れ、という意思表示なんだろうと推測したまどかは――いきなり服を脱ぎ出した父親を見て驚く。
まどか「(!?)」
その空白を気にせず、父親は我が子にしてやる様に手際よく、まどかのパジャマを脱がしていった。
まどか「(えっ、えっ?)」
拒絶しようとすれば、父親の輪郭がぼやけ始める。
ろくな抵抗も出来ず、まどかは――――
――――風呂場で父親に髪を洗われていた。
――優しい手付きに、子供の頃を思い出すまどか。
そういえば、昔はこうやって一緒にお風呂に入っていた。
少し涙目になりながら、穏やかな時間を思い出に浸りながら堪能していて。
頭が粗方キレイになった所で、父親はまどかの体をスポンジで洗い始めた。
くすぐったさを感じる。
一通り洗った所で、父親はまどかの性器まで擦り始めた。
まどか「(だ、ダメ!?)」
まどかが背後の父親の顔を見上げる。
表情は無い。
ただ『掃除をしている』ような顔付き。
まどかは必死で声を堪えた。
父親がローションを彼女の腟道に塗り込んだ時も。
屹立した彼の逸物を捻じ込まれた時も。
内部を大きな存在感に擦り上げられた時も。
父親は、彼女を『昔に恋した女の面影のある良く出来た何か』と認識していて。
どうしても我慢できなかったようだったし、咎められる事でも無かったから。
つい、それを使って自慰をしてしまっただけなのだ。
まどかは貴女に何も話さなかった。
貴女がこれを知ったのは、まどかの様子が変だと思って因果を読み取ったから。
そして貴女は逃げる様に、まどかを連れ去ったのだ。
新たな居場所になっても、まどかは塞ぎこんでいた。
そんな時、何とか出来ないかと考えていた貴女に天恵が下る。
「物としての因果があるなら、インターネットならまどかを受け入れられるのでは」
と。
お互いが情報を交換するとしても、それは機械を仲介とした物だ。
ならば、そこにまどかを認識する事は無いのではないか。
結論から言えば、失敗だった。
ありとあらゆるSNSで、まどかが接触を試みた相手はおかしくなった。
いきなり言葉にならないつぶやきで埋め尽くされる掲示板などは恐怖すら煽る。
つまり、ゲームくらいしかやれず、それに自己投影する事で一日を現実逃避に費やしている。
今のまどかは、そんな存在だった。
まどか「ご飯は……」
杏子「買ってきたよ」
杏子「食うかい?」
およそ、後79年。
終わらないんですけど(震え声)
中断します、お疲れ様でした。
――――そうして貴女たちは、体ばかり大人になった。
――――壊れかけ、貴女のアパート、夜
杏子「ただいま……」ガチャ
トトトッ
まどか「杏子ちゃん、おかえりー」ヒョコッ
杏子「おーう」ガサガサ
杏子「ほれ、頼まれてたプリン」スッ
まどか「わーい、杏子ちゃん愛してる!」ヤッフー!
杏子「やっすい愛だなオイ」ハァ
まどか「ごはん用意しておいたよー。荷物、片付けて食べよう?」
杏子「まぁ待てよ」ハハ
あれからまた何年かが過ぎた。
貴女はスレンダーな美女に育ち、彼女もまた大人になって成長した。
ふわりとした長い髪に、箱入りで過ごした日々から生まれた――非常に女性的なスタイル。
小さめの体に豊かな乳房、確りと括れた腰に肉付きの良い腰回り。
結婚相手に困る事も無かっただろう、鹿目まどかは未だに貴女の檻の中だった。
鹿目まどかには、少しの笑みが戻っている。
でも、それは決して貴女の努力のお蔭などではなく。
ただ、彼女が慣れただけで。
まどか「んっ……ふう、っ……」
杏子「くっ……まどか、もう少し優しく頼む……っ」
まどか「無理……もっと……!」
夜の帳の中で、何度も求めてくる様になった彼女を見て。
あぁ、こわれている、と。
粘膜を擦り合わせ、淫蕩に耽りながら。
これも罰だと、貴女は受け入れた。
――――昼、ビルの屋上で
杏子「む」
杏子「そいっ、と」
都市の空から地上を見下ろし、行く人々を観察する。
そこにまどかの繋がりを見つけ、遠くから――一瞬の早業で紡ぎ直した。
キュゥべえ「随分と手慣れてきたね」
杏子「嫌でも慣れるさ」
キュゥべえ「それでもまだこの街すら終わらない」
杏子「…………」
彼の一言も、また真実だった。
途方も無い作業は、まだ折り返し地点すら見えていない。
キュゥべえ「……少し、休憩をいれるべきだと思うよ。効率も落ちている」
杏子「何年も経って、今さら言うか。ハハ」
キュゥべえ「まどかに壊れてもらっては困るからね。休憩を必要としているのは君たち二人だよ」
杏子「……そう、かもしれねぇな」
――――まどかの視点、昼
チャイムの音が鳴る。
まどか「きたきたっ!」
彼女は逸る気持ちを隠さず、小走りに玄関に向かった。
そろそろ、通販で注文した新作のゲームが届く筈だったから。
扉を開くと、やはり宅配便の配達員だった。
「すいません、サインを頂けますか?」
まどか「はいはーい。頑張って下さいねー」
「えっ、それは一体……■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
配達員の体が歪んで崩れていく。
その様子も見慣れたとばかりに、まどかは意にも介さなかった。
手早く『佐倉杏子』と書き、荷物を受け取る。
配達員の様な物は小刻みに震えだした。
気色が悪い。
まどか「はい、おつかれさま」
彼女は配達員を突き飛ばし、扉を閉めた。
まどか「そのくらいなら大丈夫ですよ。よく頑張りましたね」
――長年の経験が、どのくらいまでなら歪ませてもいいか分かるようになっていて。
歪みを産み出す者を『魔女』と定義するならば、まどかは確実にソレだった。
――――こわれかけ、アパート、朝
まどか「今日はでかけないの?」
杏子「あぁ、少し休もうと思ってな」
まどか「いつもがんばってるもんね。朝ごはんにする?」
杏子「頼むわ……」
同じ布団で寝ていたまどかが、下着姿で起き上がる。
伸びを一つ。
まどか「んー……」
その蠱惑的な身体に昨夜も随分と翻弄された。
杏子「…………」
何と無しに溜め息が出るのも仕方ないだろう。
まどか「んー」
杏子「……テレビが気になるのか?」
まどか「うん。分かりきった事言ってるなぁ、って」
トーストを口にしつつ、朝のニュースを眺めていた。
インターネット技術の発達による、若者の対人意識の欠落とか何とか。
つまりはコミュニケーション障害が表立つ様になったと。
まどか「こういうのって、増えた事は増えたけど、元々一定数居たと思うんだよね」
杏子「そうかも知れないな……良くは分からないけど」
まどか「いわゆる、他人を物としてしか見てない。それが問題なら昔の『奴隷』ってのもソレだと思うし」
杏子「難しい話だ」
他愛無い話だが、どうせなら楽しい話の方がいい。
杏子「(その方が、まどかにだって良い)」
杏子「そう言えばだな、まどか――――」
まどか「それで、昨日はあんなに紙袋を持って帰ってたんだね」
杏子「あぁ」
話題に上がった紙袋からは、幾つもの洋服が取り出された。
杏子「まどかもたまにはこうやって着飾ったりしてみろよ」
まどか「えーと、鏡はどこだったかな?」
杏子「アタシはいいんだよ」
何だかんだと言いながら、まどかは貴女が買ってきた様々な洋服を来て楽しんでいた。
きっと、心からの笑顔だったし、その様子が眩しく見えて。
まどか「……そうだよね」
杏子「ん?」
まどか「ありがとう、杏子ちゃん。今度、天気の良い日にこれを着て、散歩でもするよ」
杏子「お、おう! 気を付けろよ、何せまどかは――」
まどか「『人とぶつかるだけで大事になるから』、だね。分かってるよ」
まどか「まぁ、全裸で出ても何ともないんだけれど」シレッ
杏子「肝が冷えるからホント止めろ」
――――まどか視点、公園、昼
日射しを感じながら、まどかは公園を歩いていた。
杏子は、出掛けている。いつもの事だ。
服装も年相応といった雰囲気で、若妻と言われても違和感は無いだろうソレ。
整った顔立ちも含めて、とても絵になっていた――が、誰も見やしなかった。
まどか「こういうのも、たまにはいいかな」
体力は落ちているので、早々に疲れを感じてしまい――まどかは。
『まどか』はベンチに腰掛けた。
「おねーさん、どうしたの?」
それは、皮肉にも彼女に取って運命的な出会いとなった。
まどかが面食らって見上げれば、そこには背が高めの今風の男が居て。
確かに『まどか』に声を掛けたのだ。
まどか「――――!!?」
崩れも歪みもしない。
こんなの初めてだった。
「もしもーし……あ、ノド渇いてる系? ジュース買う?」
その男は手近に設置してあった自販機を指差して、まどかの手を取る。
「あ、そうか。怪しいね俺、ごめんねー」
「何か、声かけなくちゃって思って」
「良く分かんないけどさ」
まどかは、ぐしゃぐしゃになった思考で必死に考えて。
知らない人と話したのが久し振りなのも思い出して。
「ファッ!? 泣くほど怖い俺?!」
自分を見つけてくれたのが嬉しくて。
自然に涙が溢れてきて。
まどか「あ……あ……」
「お、おう! なに?」
まどか「こー….こーひー、かふぇ、かふぇおれ……」
「お、オッケー!」
ようやく絞り出した言葉が、幸福に満ちていた。
その日の夜、帰宅した貴女は飛び上がって驚いた。
まどかの携帯にアドレスが増えていたのだ。
一部始終を聞き、更に驚く。
杏子「え、で、その男と飯食って、世間話して」
まどか「うんうん」
杏子「男は無事だったんだな?」
まどか「うん! 何ともなかったんだよ!」
杏子「そりゃ上々だ!」
自分がチマチマとやってきた事が今になって報われたのかと思うと、肩の荷が降りる思いだった。
まどか「これはきっと運命なんだね……」
杏子「普段なら鼻で笑うが、その運命とやらを弄くってる身としては否定しきれねぇなぁ」
まどかはその男の事を随分と楽しそうに話していた。
まるで、思春期の恋する乙女の様に。
貴女はソレを見て、本当に安堵した。
漸く、彼女に人生を、一部でも返してあげられたと。
――――アパート、朝
杏子「でかけるのか?」
まどか「うん。杏子ちゃんは?」
杏子「何かドッと疲れちまってな……今日はもう一眠りするよ」
まどか「わかったー。行ってくるね!」
杏子「例の男によろしくな」
まどかははしゃいで、小走りでアパートを飛び出していった。
杏子「……良かった、本当に」
杏子「……大分、長いこと無理したから、疲れたな」
杏子「――少し――寝るか……な」
そう呟いて、貴女は倒れ込む様に寝床に横になって意識と別れを告げたのだった。
中断します。
やっと終わりそうです
――――夢を見ている、と貴女は気付いた。
杏子「だって、そうだろうな」
マミ「どうしたの、佐倉さん?」
まどか「のどでも渇いた? 水筒あるよー」
杏子「いや、いい」
貴女はまどかが差し出す手を制した。
心地よい風が、グラウンドの芝生を撫でる。
大きな公園に、貴女達は訪れていた。
遠くで、フリスビーで戯れる仲間の声が聞こえる。
キリカ「行ったぞー! 受け取るんだ!」
さやか「うわっとと……届かない!」
クレア「任せてくださ――へぷっ」
ひより「(慣れない事するから転けちゃうんだ……)」
織莉子「ふっ」パッシィアァァ
アリス「わぁ、スゴいわ! まるで来るのが分かってたみたい!」
ほむら「やるじゃない……!」
沙々「あれ未来予知ですよ」
こまち「無駄だー!?」ガーン!?
こんな未来は、無かったんだ。
有り得なかったんだよ。
杏子「さて、と」
マミ「……どこかへ行くの?」
杏子「さっきから煩くてな」
杏子「ずっとキュゥべえが呼んでるんだ。何かあったのかもしれない」
いつの間にか、貴女の回りには彼女だけで。
マミ「……もう十分貴女は頑張ったわ。良いじゃない」
マミ「ここは、嫌?」
杏子「いやじゃないさ」
マミ「なら、何で?」
杏子「ここの空気は、甘くて強い。ずっと居れば、外に出られなくなってしまう」
杏子「そうなる前に、外の汚れた空気を吸いたいのさ」
杏子「それに」
杏子「自分の吐息だけでは生きていけないよ」
そう、独り言。
――――貴女は目覚めた。
――――アパート、夕方
キュゥべえ「ふんぬぬぬぬ……!!」ググググググ
杏子「ギャアァァァァァァッ!!?」ガッバァ
キュゥべえ「わかった、話し合おう。このままでは僕の頭の中身が散歩を始めてしまいそうだ」ミシミシミシ
杏子「人の眼球の上で逆立ちしてた四足の獣の言う事を聞く価値があるのかねぇ……?」
キュゥべえ「アレはなかなか目覚めない君をどうにかこうにか起こす為に僕達の知恵と叡知を結集させ導きだした最適な手段さ」
杏子「お前の文明がどうやって進化さしてきたのか少し興味が湧いたよ」
杏子「で、用件は何だよ?」
キュゥべえ「まどかが壊れそうだ」
杏子「うん、そうか」
――――待て、今。
杏子「――何だと……!? どういう事だ?!」
余りの唐突な物言いに、一瞬頭が真っ白になって。
それから、不安と焦りが貴女を一斉に襲った。
キュゥべえ「僕も今しがた彼女を見つけたばかりでね。何せ彼女が一人歩きしてしまえば、僕達ですら補足は不可能だ」
キュゥべえ「気付いていないようだから進言しよう。君が眠りに付いてから既に一週間が経っている」
キュゥべえ「その間、鹿目まどかはここに一度も帰ってきていなかったんだ」
杏子「な……?」
キュゥべえ「これは間違いない。僕達の一人がここをずっと見張っていた」
キュゥべえ「彼女を補足するのは大変な労力を要したよ。何せしらみ潰しに探す羽目になったからね」
キュゥべえ「そこで見つけた彼女は、既に憔悴しきっていた。だから、君を起こしにきたんだ」
杏子「――早く言え、バカ!」
貴女の体を清めの炎が包み、次の瞬きには外着に身を包んでいた。
キュゥべえが貴女の肩に飛び乗る。
杏子「場所は?」
キュゥべえ「案内しよう」
夕焼けの空に、貴女が軌跡を描く。
――――見慣れないビルの一室、夜
繁華街の中の一つのビル。
その一室にまどかは居るらしい。
現地へ向かえば、ギラギラとした光が不快な雰囲気を醸し出していた。
幻惑魔法を駆使して忍び込み、貴女はその部屋の――扉を開ける。
広い部屋に、大きなベッドが一つ。
赤いシーツがとても映えて気持ちが悪い。
そこに、彼女は裸でぼんやりと座っていた。
他に人の気配は無い。
亡い。
杏子「まどか……!」
貴女は彼女に駆け寄って。
体が強ばった。
まどか「うーん? あ、きょーこちゃーん……きょーこちゃんだぁ」
まどか「うっふふ、ふふふふっ、きょーこちゃーん、ふふ」
ヘラヘラと笑う彼女の、濁った瞳が――気味が悪くて。
杏子「な、何だよこれ……」
キュゥべえ「恐らく、原因はこれかな?」
キュゥべえがベッドの下から這い出てきて、前足で何やらゴミをソコから蹴り出した。
粉っぽい袋や、空の注射器。
杏子「――!!」
見れば、腕には刺し跡が幾つもあった。
素人のソレだと分かる程の跡。
キュゥべえ「僕が見つけた時は、既にこの状態だった。ここで何があったかまでは……」
杏子「まどか……!」
まどか「んー、だっこー?」
貴女は虚空に手を伸ばすまどかを抱き締める。
余りの事に、それだけしか出来なかった。
杏子「……!」
そこから、伸びる因果の糸を。
――躊躇って、震える手で掴んだ。
――――『鹿目まどか』というモノ
まどか「へ、変じゃないかな?」
待ち合わせ場所で、何度も自分の前髪を弄りながら、彼女は先日の彼を待っていた。
雑踏は彼女を見つけない。
だが彼は――
「ゴメン、ちょっと待った?」
まどか「う、ううん。全、然」
引きこもりにいきなり会話は難しい、と彼女は情けなさに心の中で落ち込む。
「さて、どっか行こうか?」
まどか「う、うん」
彼は、彼女の手を引いて、適当な雑踏に紛れ込んだ。
何でも無いような日常風景だった。
飲食店では極力店員と関わらない様にしていたら、
「人見知りなんだ」
なんて言われる様な、それに少しはにかんで返す様な。
そう、普通。
適当に街を二人で散歩しているだけでも、彼女は今までに無い人生を経験していた。
ソレは、色を失った世界に、突然絵の具をぶちまけた様な、喜びの暴力とまでなっている。
嬉しくて楽しくて仕方なくて、彼と、彼と居る自分が酷く特別だと感じていた。
だから、抱き締められた時は、心臓が張り裂けそうな程に多幸で。
そんな彼女が彼の家――自称、家――に招かれて断れなかったのも、仕方ないのかもしれない。
まどか「ふぁ、あぁっ……! すご、い――っ!」
キシキシと、軋むベッドの上。
一人と一つが交わっていた。
まどかの中に広がる存在感が、彼女に人の暖かさを思い出させていく。
まどか「こんなの……しらない……!」
全身が性感体になったみたいに、彼女は小刻みな絶頂を繰り返して。
男の逸物は、貴女では届かない場所へと注挿し続ける。
いやらしい体の女を、都合良く手に入れる事が出来て――男はなかなかに満足していた。
この『商品』は、当たりだ。
遠慮も無く、男は彼女に精を吐き出した。
恍惚とするまどかを見て、溜め息を吐く。
まどか「あたたかい……好き。好きです」
お花畑の御目出度い頭をしていやがる、と。
「おや、先に始めてましたか?」
まどか「……えっ」
その部屋に、数人の男がなだれ込んできた。
小太りな男、年のいった男、色々だ。
「ああ、すいません。モノは用意してますか?」
「勿論だよ。これで良かったかな?」
彼があまりにもあっさりとまどかから離れ、彼女は不安がる。
男は封筒を受け取り、その分厚さを確かめて笑った。
「確かに。ではどうぞ」
まどか「ひっ……?」
男たちはまどかに『触れた』。
何ともならない。
まどか「はっ、はぅ、はっ……」
一時間もすれば、彼女は腰を振って人との繋がりを貪る様になった。
少しばかりの、『楽しくなる』薬を摂取しただけ。
いや、少し、ではなく、多量に、だったが。
まどか「なん、なんっ、で」
何で壊れないの?
と、思って。
でもそんなのとは関係無く、脳は不適切な信号を身体に送り続けた。
人肌の温もりも、また彼女には麻薬で。
歪みなりにも愛されていると錯覚できるこの状態を。
嘆きながらも、悦んだ。
そんな日々が、6日も続いて。
彼女の頭もスポンジになってきた頃。
その日も、彼と合わせて幾人かの男がまどかに自らをねじ込んでいた。
彼らに取っては、まどかはただの性玩具(モノ)に過ぎなかったのだが。
――不幸な事に、本当に不幸な事に。
まどかは魅力的過ぎた。
一戦終えてのインターバルの最中に、まどかは彼らを見て、ただこう言ってしまう。
まどか「あり、がとう」
もうまともに思考しているのかも怪しい彼女の、でも心からの微笑みの言葉が。
――彼らを魔女の様に魅了して。
『あぁ、この子はスゴく可愛い』と思わせてしまった。
まどかの目の前で、まどかが愛されていると思っていた彼らが。
酷く歪んで捻れて、爆ぜ消えた。
後に残った、やっぱりモノが。
――――アパート、明け方
キュゥべえ「なるほど。その男達は恐らくまどかを完全に物質としてしか認識していなかったから無事だったんだろう」
貴女は、彼女を連れて帰った。
今は静かに寝息を発てている。
キュゥべえ「……君たち人類にはいつも驚かされる。同族をここまで蔑ろにできる、残酷な種族はそういない」
キュゥべえ「僕達に感情が無くて良かったと、こういう事の度に常々思うよ」
杏子「……アタシのやってきた事が、報われたんだと思ってさ」
キュゥべえ「それは有り得ない。完全に修復してようやくなんだ。例外は起こらないだろう」
杏子「そう、だよな」
これから、どうするか。
この昂る『怒り』を向ける相手も居らず、ただただ貴女に蓄積されていく。
チリチリと、少しずつ。
中断します。お疲れさまでした。
次くらいで終われたらいいな(願望)
久し振りにバカエロを書いた気がします。
切れ味が落ちてる感は許して(震え声)
――世界が燃えているように感じた。体まで焼けてしまいそうだ。
――――路地裏、夕方
杏子「はぁっ……はぁっ――!」
貴女は息も荒く、冷たいコンクリートの壁に手をついて――消耗しふらつく身体を支えた。
原因は単純に、魔力の不足。
杏子「あぁ、くそっ!!」
こんな時に限って、魔女も嗅ぎ付ける。
結界に呑み込まれる前に、咆哮。ソレごと乱暴に捻り潰した。
『ここに現れた』なんて因果を引き裂いて。
杏子「だっ、はぁぁ……」
貴女は一息、背中を壁に預けて腰を下ろした。
疲労を回復する事は、出来ない理由があって。
キュゥべえ「やあ、相変わらずだね」
今こうして、こうやって、何処からともなく御出座しになった獣と話している間も。
貴女の魔力は目減りを続けていた。
キュゥべえ「やはり君の負担が大きい。まどかへの魔法は解除すべきだ」
杏子「……うるせぇよ」
キュゥべえ「君だって身を持って知ったろう」
キュゥべえ「ヒトの精神を魔法で補助し続けるなんて、膨大な演算が必要だと」
杏子「…………」
まどかは薬で、もうどうしようも無いくらいになっていた。
支離滅裂な行動と禁断症状、おおよそ生命活動に必要な欲求の減退。
そういう『心の異常』を、貴女は魔法で無理矢理に正常に戻した。
その手の魔法は得意だった。
問題は、その魔法を『かけ続けて』いる事で。
まどかの自由意思を残しながら、まどかの脳内を補填する。
それは思った以上に負担になってしまった。
貴女の力は常に稼働し、朝も夜も休む間は無い。
魔女を狩るのも乱暴にするのが限界で、まどかの因果を繋ぎながらのその日々が――無敵であろう貴女を蝕んでいた。
キュゥべえ「……まぁ、君がまどかを正常に保ち続けてくれるなら、僕としてはそれ以上ない事だけれど。君に倒れられたら本末転倒だからね」
杏子「はっ、アタシをあんまり」
ふらつく。
杏子「――――、なめんじゃ、ねぇぞ」
帰らなきゃ。
まどかが待ってる。
――――アパート、夜
杏子「ただいま……」
返事は無い。
明かりも点いていない。
溜め息も、すっかり馴染んできた。
杏子「帰ったよ」
居間には、確かにまどかがいた。
携帯ゲームの光だけが、光源。
ボタンのカチカチと鳴る音が、やけに不気味だった。
まどか「…………」
まどか「……あ、色違い…………」
貴女は魔法の出力を大きく上げる。
これで。
まどか「えっ、もうこんなに暗く――わぁっ!?」
彼女の表情は途端に豊かになる。
そうだ、これが今までのまどかだ。
まどか「杏子ちゃん、おかえり。いつの間に帰ってたの……全然気付かなかったよ」
杏子「いいよ。飯は食べたか?」
まどか「うん、先にいただいちゃった」
杏子「ん」
アタシは、こんな事になるなんて思ってなくて。
でも、本当に。
本当に、疲れ――――
――――路地裏、夕暮れ
杏子「ふぅ……はぁぁ……」
修復活動の為にはまどかの元を離れなければならない。
が、まどかから離れれば離れる程に魔力の消耗は激しくなる。
でも、魔法は解けない。
まどかに、人間らしい生を取り戻す為に、身を粉にしているのだから。
あぁ、でも、ダメだ。
『何でアタシがこんな目に』
これは、この考えは、ダメだ。
遠い昔も、これで後悔したんだ。だから。
そうして、塞き止める――理不尽に対する『怒り』を。
それは器を満たす液体のように張って。
――――アパート、夜
そんなある日、貴女が家に帰ると彼女の姿は無い。
杏子「まどか?」
まどか「いるよぉ……」
声のする方に向かえば、そこはトイレ。
まどかは気分が悪いのか、軽い嘔吐を繰り返していた。
まどか「う――おぇ」
胃液と溶けた炭水化物が戻ってきている。
貴女は背中を擦ってやりつつ、まさか魔法に不備が出たのかと術式を確認し始めた。
――辺りで、キュゥべえが側にいるのに気付く。
キュゥべえ「やあ杏子。大変そうだね」
杏子「ああ、どうにも調子が悪そうでな……」
キュゥべえ「そうだね。妊娠しているようだから、酸味のあるものを食べさせてあげるといい」
――――一段落
まどかの嘔吐も収まり、彼女は白湯をチビチビと飲んで落ち着いていた。
貴女はそれと対象に、頭を抱えている。
杏子「(どうすんだよ……まどかに言うか?)」
杏子「(今? こんな時に?)」
杏子「(ガキが増える? 無茶苦茶だ!)」
そんな貴女の様子を見て、彼女は自らのお腹に手を当てた。
まどか「赤ちゃん、できてるんでしょ?」
杏子「!? ……何で?」
まどか「わかるよ……自分の体だし、それに」
いとおしそうに。
まどか「おかあさん、だもの」
まどか「この子は、私を見つけてくれるかなぁ」
杏子「――――!」
聞いて、ハッとした。
まどかから産まれた存在なら。
まどかの因果から派生した存在ならば。
まどかと共に生きていけるのでは無いのだろうか?
それが、まどかの人としての生に必要であるなら。
杏子「元気に、産まれるといいな」
まどか「そうだね」
まどか「ふふ、まってるよー。おかあさんだよー」
心底嬉しそうな彼女を見て、貴女はもう少しだけ踏ん張る事を、決めた。
中断します、お疲れさまでした。
次! 次こそ終わりますんで!(フラグ)
>>携帯ゲームの光だけが、光源。
>>ボタンのカチカチと鳴る音が、やけに不気味だった。
>>まどか「…………」
>>まどか「……あ、色違い…………」
前回も今回も次回も絶望しかない状況でpkmnやってんじゃねぇwwシリアスなのにちょっと吹いたじゃねえかwww
死が貴女を避ける。
――――郊外の裏路地、夕方
杏子「…………っ、はぁ……っ」
貴女は小さく浅い呼吸を繰り返しながら、いつもの作業を行っていた。
朦朧としながら、因果を結ぶのはなかなかに堪える。
杏子「は、あ……キッツ……」
弱音も吐こう。
まどかへの魔力供給もこう続けば貴女を弱らせるのも仕方は無い。
まどかのお腹も大きくなった。
出産も近いだろう。
ここで自分が倒れる訳にはいかない。
そうだ。まだがんばれ。
頑張れだと?
ああ、疲れた。疲れてるんだよ。
アタシが、アタシじゃない誰かのお陰で疲れてるんだ。
終わらないし、先も見えない。
毎日毎日、同じことの繰り返しだ。
「でもそれはお前のせいだ」
あの時は、確かに正しく選んだじゃないか。
『声』だってそう言った……!
アタシのせいじゃない……せいじゃないだろうに……!!
杏子「っ、だ、ダメだダメだ……!」
最近の自分はやたらと言い訳を探す様になって、いよいよかと感じてしまう。
怒りが、血液の様に貴女に蔓延していた。
精神を何とか奮い立たせても、身体は着いてこない。
ふらふらとした足取りで街を歩いて、人通りの多い街路に出た。
周囲の、奇異の視線も気にする余裕は無い。
視野も狭窄してしまって、回りも良く見えない――から、貴女は何かに躓いて転んでしまった。
「いったぁ……!! 何すんだよコラァ!!」
アスファルトの温度を感じながら 、貴女は何とか声に目線を合わせる。
地べたに座り込んだ、今風の女子学生だろうか――何人かが群れて行儀の悪そうにいて、その一人に気付かず蹴躓いたのだろう。
杏子「あぁ……悪い」
「あぁぁー!!!? ネイル折れてんじゃん!!!」
何とか立ち上がった貴女に、大声をぶつける女。
ケバケバしい様相通りで、少し可笑しく思った。
どうでもいい。
と、その場を離れようとした貴女は女に捕まれて――またあっさり倒れこむ。
「おいオバサン!!逃げてんじゃねぇよ! このネイルどうしてくれんの!!」
回りからゲラゲラと笑い声が聞こえた。
仲間内では別に普通の事らしい。
「金払え金、5万ね」
「ギャハハ! アンタ前もそのネイルでキモいのから金とってたやん!」
「ちげーし、これは今割れたんだし」
めんどうだ。
立ち上がろうとした貴女が、
「どーん!」
取り巻きの他の女に押されてまた倒れた。
擦り傷が増える。
「ナイスナイスー。ほら、早く早く金払えって! いい年したオバサンならそんくらいあるでしょ!」
貴女は、世間も知らないような若者に良いようにされて、ふと、思った。
アタシは、こんなに弱ってるのか?
そんな自分が不甲斐なくて、全身を駆け巡る怒りが爆ぜて。
耳を劈くような叫びを上げて。
辺りは『魔女の結界』に呑み込まれた。
――――
杏子「――はっ」
貴女が無意識に天に咆哮し続けて数分後、貴女はそれを取り戻した。
周囲を見回す。
普段通りの街だ。人々が犇めいている。
――だと言うのに、酷く静かだ。
あの子供たちは、いつの間にか居なくなっていて。
――不思議な事に、貴女の疲れは回復していた。
杏子「……どうなってんだ?」
キュゥべえ「やぁ、今は杏子のようだね」
と、変わった物言いで――いつも変わっているが――観察者は現れる。
杏子「……何だよ、面白いもんでも見たか?」
キュゥべえ「興味深くはあったよ」
杏子「そっか」
どうせ、ろくな話じゃない。
キュゥべえ「まぁ、結果的に君が回復したのは行幸だ」
キュゥべえ「さっきまで君は魔女の結界を展開して周囲の人間を取り込んでいてね」
キュゥべえ「それらの、因果線、と言うのかな? それを摂取している様に見られたよ」
キュゥべえ「何だか選別を行っていた節もあるね。だから、存在そのものが消滅してしまう酷いパターンもあれば」
キュゥべえ「綺麗に『未来だけ食べられた』様な個体もいるようだね」
キュゥべえ「あれはまどかより酷いね。放っておけば、自然に消滅するだろう」
キュゥべえ「世界に違和感も無くね。後始末が楽なのは、今までの君の経験から導き出された効率的な方法なのかな」
キュゥべえ「結論付けるとね、杏子」
キュゥべえ「もう君は、否定できない段階で、魔女化しているよ」
杏子「…………」
キュゥべえ「だが、こうして君が自我を持っているのは幸いだ。これで、まどかの因果修復も捗るだろう」
杏子「……何だと?」
キュゥべえ「例え君が疲労しても、これですぐに回復を図れる。有象無象でこの効果が得られるならば、これ以上の話は無いさ」
杏子「そんなの……!」
キュゥべえ「現に今この周囲の人間の惨状が、君の行いだ」
杏子「――うるせぇ!! アタシは、魔女なんかにならねぇぞ!!」
貴女は、もうたくさんだとばかりに大きく跳躍してその場を離れた。
――憎らしい程に、好調だ。
キュゥべえ「……何故人は、魂のあり方に拘るんだろうね」
キュゥべえ「それとも、君の不安はそうじゃないのかい?」
キュゥべえ「自分が、自分の意思でなく動き続ける」
キュゥべえ「そういう恐れと戦っているのかい?」
キュゥべえ「……何にせよ、初めてのケースで、僕には判断がつかないが」
キュゥべえ「君を見届けよう、佐倉杏子」
――――夜の街、逃げ込んだ路地裏
貴女は人目に付かない所で、漸く落ち着いて座り込んだ。
杏子「チクショウ……もうガタが来やがった」
先日の件も束の間、あっと言う間に貴女の身体は再び疲れて果てた。
杏子「まどかの負担も、ホントバカにならねぇな……」
広がりそうになる貴女の結界を、貴女は抑え込む。
ダメだ。この力はダメだ。
『声』も響く。嫌に煩い。止めてくれ。
そう願って、貴女は天を仰いだ。
「いつまでがんばっちゃってるんですかぁ?」
やけに、知っている声が聞こえた。
杏子「――お前……!?」
魔法少女。の形はしている。
驚いたのは、それが優木沙々だった事で。
沙々「もう良いじゃないですか。食べちゃいましょうよ、人」
杏子「な、何を」
それは貴女に近寄って、傍まで来て、屈んで、貴女の、近くに来て。
声が耳元で響く。
沙々「もう、良いんですよ。我慢は、止めましょ?」
体が触れ合って、寄り添っている。
甘言が脳を犯していく。
杏子「お前、なんで、どうして――?」
沙々「――この前も、『クズ』と『そこそこクズ』に分けておきましたし」
杏子「――――!」
杏子「そうか……アタシ……こんな」
沙々「ダメなんですかぁ?」
杏子「……ダメだ、やらない」
沙々「そうですか……」
彼女は、そう言って俯き、また。
沙々「なら、鹿目まどかへの魔法を打ち切って、体を休めましょうよぉ」
杏子「――! それは、もっとダメだ。出来ない」
沙々「出来ないやれないの話じゃないんですよぉ。もうどうにもならなくなっているから」
妖艶に、彼女は笑う。
沙々「――どうにもならなくなっているから、私がここに居るんですよぉ」
沙々「さぁ、眠りましょう?」
杏子「――む、ん……!?」
優しく、激しい口付けに、貴女の意識は混濁していく。
甘い甘え。
でも、それは確かに、誰かの優しさだったのかもしれなくて。
杏子「(嫌だ、ダメだ……まだ、まだ……ダメだ……)」
杏子「(誰か、誰かたすけて……助けてくれ……ま――)」
杏子「(マミ――さん…………)」
すう、と。
貴女は意識を手放して、しまった。
沙々「おやすみなさい、良い夢を」
「そうね。貴女も、それから私も」
沙々「くっくっ」
重い、銃口が沙々を狙う音。
巴マミが、彼女の頭部を狙って――マスケット銃を構えていた。
二人は見つめ合う。
見下ろし、見上げ。
沙々「それで、何かが解決するんですかぁ?」
マミ「解決、するのよ。他でもない、私自身が」
沙々「できませんよ。実際、できてない」
マミ「まだよ。まだやれるわ」
沙々「理想なんて、もう追いかけてられませんよ」
マミ「まだ現実に絶望もしていないわ」
沙々「嘘ばっかり。本当は分かってるクセに」
マミ「それでも、やらなければならないのよ」
沙々「そうやって、理想に溺れるんですね」
マミ「理想は、成りたいから、こう在りたい乞い願うからこそ理想足り得るのよ」
沙々「現実見ましょうよぉ、『佐倉杏子』」
マミ「甘えないで、『佐倉杏子』」
『使い魔』の片割れは、もう片割れを撃ち抜き。
そして、自らも――小さな拳銃で頭を撃ち抜いて。
――ただ、消えた。
後には、安らかな寝顔の貴女だけ。
二人は見つめ合う。
見下ろし、見上げ。
沙々「それで、何かが解決するんですかぁ?」
マミ「解決、するのよ。他でもない、私自身が」
沙々「できませんよ。実際、できてない」
マミ「まだよ。まだやれるわ」
沙々「理想なんて、もう追いかけてられませんよ」
マミ「まだ現実に絶望もしていないわ」
沙々「嘘ばっかり。本当は分かってるクセに」
マミ「それでも、やらなければならないのよ」
沙々「そうやって、理想に溺れるんですね」
マミ「理想は、成りたいから、こう在りたいと乞い願うからこそ理想足り得るのよ」
沙々「現実見ましょうよぉ、『佐倉杏子』」
マミ「甘えないで、『佐倉杏子』」
『使い魔』の片割れは、もう片割れを撃ち抜き。
そして、自らも――小さな拳銃で頭を撃ち抜いて。
――ただ、消えた。
後には、安らかな寝顔の貴女だけ。
あ、ミス。二番目が正しいです
キリがいいし一旦中断します。お疲れさまでした
近日続きをやります(保守しに来たとは口が裂けても言えない音)
(もう一月経つとか嘘やろ……)
(社会人になってから時の流れ速すぎません?)
(新手のスタンド攻撃か何かですかね?)
世界は、どうやら白かった。
「…………ここは」
踞る貴女は、伏せていた顔を上げて周りを見渡した。
――何もない。
白い空間が、上も下も無く広がっている。
「…………」
ここは、落ち着く。
自分だけしか居なくて、他は亡い。
だから貴女は、その心地好さに身を預け、その場で再び目を閉じた。
――――背後から恐気を感じて飛び起きる。
振り向いて、背筋が震えた。
「――あ、あぁ」
黒い壁が、すぐそこまで迫ってきている。
濃密に絡まった、糸――の壁が、貴女の世界を磨り潰していた。
貴女を取り込もうとする壁から声が聞こえて。
あれは、貴女ではなかった。
貴女はそれから必死に逃げた。
逃げても逃げても追いかけてくる。
どんどん貴女は侵食されていく。
「――っ、ああっ!?」
前からも、世界が削られてもいた。
右も、左も、上も!
「あ、あぁ――」
助けてくれ。
「――と、思ったな?」
貴女の目の前で、黒は足を止めた。
見れば、そこには貴女の様な、貴女がいた。
「何を我慢してんだよ」
「腹が立ってんだろ?」
「ムカついてんだろ?」
「キレちまえよ――佐倉杏子」
杏子「っ」
自分が、輪郭を取り戻す。
目の前の、乱暴な貴女が壁を――手にした槍で切り裂いた。
侵食は少しばかりだが、後退する。
――悲鳴が聞こえた。
杏子「――や、やめろ!」
「ああん?」
彼女は振り向いて、呆れた顔をこちらに向ける。
その瞳に映る貴女の表情は、酷く迷いを抱えていた。
「今更、なんだよ」
「今までお前が奪ったのは、こんなの物の数にも入りゃしねえぞ」
杏子「――やりたくて、やったんじゃない!!」
――――。
やりたくて、やったんじゃあ、ない?
杏子「――お前」
「…………」
杏子「……誰だ?」
「…………」
「はは」
杏子「お前は――アタシじゃない」
「違うさ、お前はアタシだし」
「アイツもお前さ」
もう二人、気付けばそこにいた。
「もう面倒だ。アタシはアタシの好きに生きれば良いだろ?」
杏子「黙れ……!」
「やっぱりまどかが全部の元凶なんだよ、アイツはやっぱり見捨てるべきだった」
杏子「うるさい……うるさいうるさい!!」
杏子「人の中で、ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇ――!!」
貴女は、手に槍を。
壁が、広がっていく。
貴女の世界が混沌の中で確立されていこうとしていた。
貴女は、彼女らと激しく打ち合う。
「まどかに巻き込まれなければ、こんな事にはならなかった」
「あの時、何もしないだけで、アタシは幸せになれた」
「やかま、しい!!」
まどかを見捨てる貴女の、得物を弾き飛ばす。
無防備になった身体に槍を薙ぎ払った。
「理不尽ばっかりだよなぁ、世の中」
「好き勝手やりやがって」
「だったら、アタシだって好き勝手に、やるさ!」
杏子「黙ってろ!!」
『怒り』が貴女を強く打撃し、貴女は後ずさる。
刃先が風を斬る音が絶え間無く、しかし短く――貴女はそれを退けた。
「もう十分頑張ったさ。もう、諦めよう」
「どうにもならない事だってあるさ。無駄になるのは癪だけど、仕方ないよ」
杏子「その減らず口を――」
貴女は、諦めた貴女の腹部を、
杏子「――、閉じろ!!」
――鋭く穿つ。
杏子「っ」
回りの空間が鎖で覆われていた。
貴女を捕縛しようと、金属が音を奏でる。
杏子「――ああぁ、もう!!」
強く『地面を蹴りつける』。
確固たる大地を踏みしめて。
杏子「貫け!!」
そこは、紅き槍の森となる。
貴女以外の貴女を黙らせて、貴女は。
キュゥべえ「ようやく目が覚めたようだね、杏子」
――――消えつつある結界の中で
杏子「キュゥ……べえ」
キュゥべえ「うん、意識もはっきりしているようだね。全く、手間取ったよ」
杏子「……」
貴女は周囲の様子を見て、少し笑ってしまった。
杏子「ははっ……増えてんじゃねぇか」
一人佇むのは、巴マミのようなモノ。
槍で壁に縫い付けられている、優木沙々のようなモノ。
地面に横たわる、美国織莉子のようなモノ。
槍を杖代わりに、力無く座っている――佐倉杏子のような、モノ。
立っていたのは、巴マミ。
杏子「……は、ははっ」
そんな複雑な気持ちを他所に、知らない声が割り込んできた。
「この方が佐倉杏子さんですか、キュゥべえ?」
キュゥべえ「そうだよ。この杏子が本物さ」
魔法少女だった。
黒く長い髪と、背負った大太刀が印象的で。
「はじめまして、わたしは――」
杏子「ああ、そういうのいらねぇ」
「なっ……?」
杏子「別にお前が誰だって、アタシはどうでもいいんだ」
あと、千切れた因果がとても目立った。
コイツは、アタシらに巻き込まれて、もうすぐ死ぬから。
だから、知りたくないと思った。
結界は消え、使い魔たちもまた共に居なくなった。
杏子「で、何があったんだ……?」
キュゥべえ「すまないが、事態は急を要していてね。テレパシーでかいつまんで説明させてもらうよ」
杏子「――待て、アタシはもしかして」
キュゥべえ「今回は二週間だよ」
頭に流れ込んできた映像が、貴女の居ない間の世界を映した――――
中断
再開
――――貴女の眠っていた時間、アパート、夜の闇で
キュゥべえ「……!」
彼は、空間を劈くような絶叫を耳にした。
おおよそ、人の発する其れでは無い。
まどか「あぁ――――あぁぁっ……!!」
見れば、彼女――鹿目まどか――が気でも違ったのかとばかりに暴れていて。
――実際、狂っていた。
キュゥべえ「……なるほど。杏子、これは君が悪い」
キュゥべえ「まどかの脳細胞は大なり小なりダメージを受けていた。僕はてっきりそれを補填しているのだと思っていたのだけれど」
キュゥべえ「君は『君が思う鹿目まどか』を彼女に演算させていたんだね」
キュゥべえ「だからまどかの脳に過負荷が掛かっていた」
キュゥべえ「壊れた頭脳には酷だろうね。これは、もう汚染と呼んだっていい段階だ」
キュゥべえ「……魔女に精神を操られた人間がどうなるかは、君自信が良く知っているだろうに」
ひとしきりの叫びは虚空に吸い込まれて、彼女の意識は――ぷつり、と途切れた。
宛ら彼女の未来の如く。
彼女が目覚めたのは、ほんの数十分後だった。
血走った目でパソコンに向かい、なにやら呟いている。
キュゥべえ「――これは。いけないよ、まどか」
まどか「はぁ――はあぁ……!」
まどか「どいつも、こいつも、使えない! 使えない使えない!!」
彼女はSNSサイトを使って、他人にメッセージを送っているようだった。
基準は、なんとなく。
内容は。
まどか「おくすり、ください」
当然、まともな人間は『壊れる』。
逆に言えば――
まどか「やったあ……! みぃつけたぁ……」
『壊れない人間』は当たりだ。
彼女は、思考も儘ならないだろうに、見事な交渉術でその人間との約束を取り付けた。
身重の身体を背負い、フラフラと玄関に向かう。
キュゥべえ「いけないよ、まどか。そんな事をしては君の為にならない……胎児にも当然悪影響が出てしまう」
彼は、自負では無いが交渉は得意な方だと思っていた。
それも、全く聞こえないならば、何の意味も成さないのだが。
彼も何度かそういう場面には出会していたが、人類の持つ『感情の力』という物の凄まじさを再確認していた。
それが例え『禁断症状』なる物であっても、それには違いなかった。
キュゥべえ「さて、弱ったな……とりあえずは」
兎にも角にも、彼は妊婦を追う事に決める。
キュゥべえ「まどかを見張らないとね……最悪、一人や二人の魔法少女の犠牲は仕方無いとしても」
キュゥべえ「杏子が早く見つかってくれると、僕としても有り難いんだけれどなぁ」
キュゥべえ「あの類いの魔法少女が結界を張っているとなると、困難かもしれない」
キュゥべえ「アリスは結界を張る時には、必ず決まった場所だったからまだしも……」
キュゥべえ「……参ったなぁ。良かれと思った事だろうに」
キュゥべえ「――そういうのに限って、何時の時代も、碌な事にならないんだ」
――――路地裏、奥の奥で。夜中。
まどか「あなた、ですか?」
「ああ、まどかちゃん――って、うわ」
背の高い、黒髪の男が彼女を待っていた。
一見真面目そうな青年だが、彼女に渡しにきたのは、世間一般には善からぬ物。
その青年でも、まどかの腹を見れば若干の驚きもある。
まどか「そうです、はやく……はやく!」
血走った目で詰め寄る彼女を、男は容易く押し退けた。
「先にお金。わかる? おーかーね、オーケー?」
まどか「あ、ある、よ……うん、ある」
彼女は財布を差し出した。
男は怪訝に思いながらも中身を覗き――溜め息を吐いた。
「なあ、なめてんの? 全然足りないしさぁ……何? その腹ってそういうやつ?」
まどか「あ、あ……」
キュゥべえ「……まどか?」
一部始終を見守り、彼女が傷付くようなら最寄りの魔法少女をけしかけようとすらしていた彼だった。
このまま行けば、まどかは無事だろうと思っていた矢先、彼は彼女の言葉に面食らってしまう。
まどか「と、とってきます……少し、まってて」
「はぁ……? 10分な。ありったけ持ってきとけ」
まどか「うん……うん」
彼女はそう言って路地裏を出て。
――近くのコンビニへ向かった。
いらっしゃいませ、と事務的な言葉が聞こえた。
運が良いのか、他に客は居ない。
まどか「おかね……」
まどかは真っ直ぐにレジカウンターに向かい、
カウンターの中に入って、
困惑する男の店員に抱き付き、
その店員を崩壊させた後、
レジを適当に叩いて開き、
『ありったけ』を持っていった。
誰も彼女に気付かない。
キュゥべえ「――――」
歪みを産み出すのが魔女だというのなら、もう彼女だって既に。
まどか「もって……も、もってきまさした」
「えっ……おお、何か大分マシになったじゃん」
結構な額に男は満足したのか、まどかに手軽な薬を一つ握らせた。
「それならここでも軽くやれるぜ、どうだ?」
まどか「や、やる……!」
男は筒上の物を、つぷ、とまどかの鼻に差し込んだ。
じんわりと、皮肉にも――彼女が人間らしい表情に戻っていく。
まどか「ふわぁ……落ち着く……ふふ」
人間らしい、ちゃんとした。
可愛らしい、妊娠した。
いやらしい、薬中のメス。
男にはそう見えた。
そういう、『モノ』に見えた。
だからそんなに難しく考えずに決める。
『何発かヤって、後は好き者に売ろう』
「まどかちゃん、もうちょいクスリいる?」
「うんうん、わかるわかる」
「ちょっち俺も手持ち無くてさ、ウチ来る?」
「そうだね、結構色々あるよー。楽しみだねー」
キュゥべえ「……仕方無い場合、かな」
後に一匹残された、誰にも見えない獣は――適当な捨て駒を探しに街に消えた。
――――知らない部屋
まどか「あっ、はっ……ああっ」
「ははっ、すげえや……!」
適当に混ぜ物を、三つ四つ。
腹の中にガキも居るのに、女は無駄な精を搾り取ろうとしていた。
男は男で、既に誰かの子供が、確かにそこにいる事に酷く興奮していて。
もし人妻なんかだったりしたら最高だ、なんて考えながら。
ただただ征服感に浸っていた。
「ガキに申し訳無いとか思わないの?」
まどか「ふぁっ、あっ、すごいっ、ぱちぱちするっ」
「聞いてねえか、よっ!」
遠慮なんて無い注挿を繰り返す。
こんは母親はゴメンだな、と思いはしたが。
モノに掛ける情は無かった。
数日はそんなペースの生活が続いた。
半ば監禁の様な形になりはしたが、ニュースには何も無い。
そういう人種なんだろうと、男は当たりを付けた。
そろそろ頃合いだろうと、男は彼女を売るために飢えてそうで、且つ金払いの良さそうな奴らに声を掛け始める。
前回と違うのは、彼女の様子。
既に他人の子を身籠った彼女を、誰も積極的に独占しようとは思わなかったし、
故に彼女は、やはり備品だった。
そうやって薬物と人肌の幸福を味わっていた日々も、唐突に終わる。
キュゥべえ「――君ならやってくれると信じていたよ」
「……こんなクズは見たくも無かったわ」
まどか「んう……?」
まどかのぼんやりとした意識で分かったのは、赤色。
借り物のホテルの部屋の壁一面だ。
先程までまどかに逸物を捩じ込んでいた男達が、身体中をナイフで切り刻まれて絶命している。
返り血を浴びている、魔法少女が傍らに。
魔法少女は、人並みの正義感を持っていた。
振るうべき時は、自らの力を使うべきだとも思っていた。
ならば、妊婦を薬物で前後不覚にし、姦淫する男は?
「こんな奴らは、死んでも構わないわ」
そう、魔法少女は言った。
キュゥべえに言わせる所の、『捨て駒』の。
「あなた、大丈夫?」
まどか「……えへへ」
魔法少女は彼女を『認識』していた。
キュゥべえに小細は聞いていて、当たり前みたいにまどかを見ていた。
歩み寄り、手を差し伸べた。
まどかがそれを何気無く握り返すと――
「――な、に?」
「私の、ソウルジェムが――?」
魔法少女は、弾ける様に、魔女と化した――――
中断
「レイプされた女の人を助けたらソウルジェムが汚染された」って言わせるかどうか凄い悩みました(台無し)
再開
キュゥべえ「お疲れさま、■■■■」
「本当です。手こずりましたよ」
魔女は程無くして、大太刀の魔法少女に討伐された。
キュゥべえが二の矢として用意していた者。
長い黒髪を揺らしながら、彼女は一呼吸。
「で、その……魔女に捉えられたという女の人は?」
キュゥべえ「その部屋の中にいるんだけれどね、少し問題があるんだ」
「問題……?」
キュゥべえ「彼女は魔女に呪いをかけられてしまったんだ。歪みを産み出す者として作り替えられている」
キュゥべえ「魔法少女が彼女を認識すれば、忽ちに魔女に変化してしまうんだ」
「なっ――じゃあさっきの魔女は、まさか」
キュゥべえ「……気の毒だけれど、そうなんだ。しかも、ああなってしまえばもう戻ることも無い」
「……なんて、なんて事でしょうか」
手にした太刀の柄を握り締めながら、彼女はそうとだけ、呟いた。
キュゥべえ「でも、彼女は今まで一人の魔法少女によって庇護されていたんだ」
「なら、その人は今……?」
キュゥべえ「彼女は、恐らくは結界に飲み込まれている。僕は、彼女を探索しているんだ」
キュゥべえ「だから、君にお願いがあるんだ。彼女――鹿目まどかを認識しないように、面倒を見ていてほしいんだ」
「えっ」
「……いやいや、そんなの無理でしょう」
キュゥべえ「面倒と言っても大した事じゃあないんだ。ただ、毎日扉を開けてパンや水分やらを玄関に置いておくだけでいい」
キュゥべえ「それから……これを」
「この袋……何かの薬ですか?」
キュゥべえ「……精神安定剤みたいなモノさ。それを飲まないと、彼女は暴れるからね」
「……魔女に呪われているのらば、確かに日々心穏やかに、とはいきませんよね」
「分かりました。任せてください」
キュゥべえ「頼んだよ」
――――魔法少女の退屈な数日
「はあ……しかし、やってみるまでは思いもしませんでしたが」
「……部屋の前でただぼんやりしていると言うのは、暇な上に落ち着きませんね」
「かと言って、玄関にでも入ったりすれば、女の人を見てしまうかもしれないし」
「……やる形無し、というやつですね」
扉に背を預けてタブレットを操作し暇を一つ一つ潰していると、背後――室内から音が聞こえた。
「む、食べていますか」
「……ペットを飼っているみたいで、ぞっとしますね」
「……よし、また向こうに行ったみたいです。食料を調達してきましょう」
魔法少女は立ち上がり、太刀の鞘で床をコツン、と鳴らす。
簡易のモノだが、入り口を魔法で保護したのだ。
「さて、今日はどこのコンビニにしましょうか……」
そう家庭的でもない魔法少女は、街の雑踏に溶けていった。
――――雑踏の中で
キュゥべえ「■■■■、ちょうど良かった……」
「キュゥべえ? どうしたのですか、そう息を切らして」
キュゥべえ「彼女を発見したんだ。したんだけれどもね……」
キュゥべえ「少し君の力が必要だ。手を貸してほしい」
「分かりました、案内を――」
キュゥべえは、彼女が言い終わる前に、その肩に飛び乗った。
「――頼みますよ!」
彼女は一瞬、周囲に認識阻害の魔法を散らかして――強く地面を蹴った。
魔法少女は、街の上で駆ける。
――――魔女の結界の中で
魔法少女は、その予想外の景色に呆然とする他無かった。
「なん、ですか……これは?」
魔女の結界の様な空間の中で、四人の魔法少女が争っている。
少なくとも彼女にはそう見えた。
ロールを巻いた、特徴的な髪型の魔法少女が一際優勢のようだった。
キュゥべえ「この争いを何とか静めないと、あそこにいる彼女に近付けそうに無いんだ」
そう答え、指し示す。
先には、眠っている女性がいて。
「で、でもあれは魔法少女では?」
キュゥべえ「彼女らは、あそこにいる『佐倉杏子』の使い魔なんだ。精密に再現されてはいるが、魔法で産み出されたモノだよ」
「そ、そうなんですか……なら」
彼女はそうして、巴マミを模した使い魔に加勢して――
壁が、広がっていく。
彼女の世界が混沌の中で確立されていこうとしていた。
彼女は、彼女らと激しく打ち合う。
織莉子「鹿目まどかに巻き込まれなければ、こんな事にはならなかった」
織莉子「あの時、何もしないだけで、私は幸せになれた」
マミ「うるさい、わよ!!」
まどかを見捨てる彼女の、得物――赤い槍――を弾き飛ばす。
無防備になった身体に槍を薙ぎ払った。
杏子「理不尽ばっかりだよなぁ、世の中」
杏子「好き勝手やりやがって」
杏子「だったら、アタシだって好き勝手に、やるさ!」
マミ「黙りなさい!!」
『怒り』がマミを強く打撃し、後ずさる。
刃先が風を斬る音が絶え間無く、しかし短く――彼女はそれを退けた。
沙々「もう十分頑張りましたよ。諦めましょうよぉ」
沙々「どうにもならない事だってありますよ。無駄になるのは癪ですけど、仕方ないですって」
マミ「その減らず口を――」
貴女は、諦めた彼女の腹部を、
杏子「――、閉じなさい!!」
――鋭く穿つ。
マミ「っ」
回りの空間が鎖で覆われていた。
彼女を捕縛しようと、金属が音を奏でる。
マミ「――ああぁ、もう!!」
強く『地面を蹴りつける』。
確固たる大地を踏みしめて。
マミ「『ティロ・フィナーレ(貫け)』!!」
そこは、紅き槍の森となる。
彼女以外の彼女らを黙らせて、貴女は。
キュゥべえ「ようやく目が覚めたようだね、杏子」
中断
再開
――――
一頻り見て、貴女は現実に帰ってきた。
情報の共有は一瞬だったが、貴女にとってはとても、とても長い時間。
杏子「…………嘘だろ。こんなの、ふざけてる」
キュゥべえ「だけれど、事実だよ。彼女はもう、すっかり壊れているみたいだ」
キュゥべえ「それを後押ししたのは君だと言うこともまた、ね」
「?」
獣の後ろで疑問符を浮かべる魔法少女も、貴女の視界には入らない。
震える両の手を見つめ、貴女は酷い焦燥感に襲われていた。
「――っ! 魔女ですか!」
そんな最中ですら、魔女の結界が呑み込んだ。
杏子が大きく奪っていた居場所に乗り込んできたのだろう、それなりの魔女。
杏子「アタシ……アタシが、また、悪いのか……? また……?」
「あなた、早く――チッ!」
魔女の一撃を避けながら、魔法少女は判断する。
「あの人は目覚めたばかり。上手く戦えないだろう」と。
「(見たところこの魔女は大きいし速い。これは手強そうです)」
魔法少女が見定めた魔女は、大きな凧のような形をしていた。
その魔女の長い尾が、貴女を捉える。
「っ、いけない!」
尾は深紅の結界に阻まれて悲鳴を上げる。
杏子「――――あぁぁぁあ!! うるせぇぞ! 雑魚は――」
思考を妨げられた怒りそのまま、
杏子「――消えちまえ!!」
大槍を握り、斬り潰した。
血液ごと蒸発しながら、魔女は一撃の元に平伏す。
「――――」
魔法少女は、感嘆を飲み込めなかった。
杏子「――ああ、頭も少し冷えた。キュゥべえ、案内を」
キュゥべえ「任されたよ」
当然のように彼は貴女の肩に飛び乗り、貴女はそのままビルの壁を蹴って飛び上がった。
魔法少女なんて、初めから居なかったみたいに自然に。
「……はっ」
数秒して、彼女は置いていかれた事に気付く。
そして、
「ま、待ってくださいよ!」
――彼女は、『追いかけてしまった』。
――――
まどかの居る部屋の前で、魔法少女はようやく貴女に追い付いてきた。
「はっ――はや、いです、ね?」
杏子「……もう別にいいぞ。世話になった」
「――ムカチーンときました。その言い方はそこそこ腹が立ちますよ」
杏子「……後で礼はする。少し待っててくれ」
「あっ……」
貴女は少女を一瞥し、それだけして部屋の中へと足を踏み入れた。
臭いが酷い。
部屋も荒れている。
赤子を放置したような惨状だったし、実際彼女の思考レベルはそこまで落ち込んでいただろうし、その上体は成熟しているから尚質が悪い。
まどか「あー……?」
杏子「……キュゥべえ」
キュゥべえ「最低限、命を繋ぐぐらいしか出来なかったんだ。それは分かってくれないか?」
杏子「……ああ」
貴女が指を鳴らすと、柔らかな炎が部屋中を揺らめいて――浄めていく。
杏子「生きてるなら、それでいい。どうにだってなる。悪い」
キュゥべえ「構わないよ。僕にとっても、まどかは重要な存在さ」
すっかり綺麗になった。
まどかも、以前の姿を取り戻す。
まどか「うー……? ふふっ」
体の汚れが無くなって不快感を失ったのか、彼女は心地好げに笑っていた。
杏子「……っ」
見ていられない。
と、貴女は魔法をかけ直そうとした。
まどかが、まどかでいられる魔法を。
キュゥべえ「それでいいのかい?」
杏子「…………」
手が、止まる。
キュゥべえ「これが、まどかなんだ」
キュゥべえ「君の魔法は、君が望むまどか――かつて君と友であったまどかを、今のまどかに再現させているだけだ」
キュゥべえ「彼女の、彼女自身ではないんだよ」
キュゥべえ「だから負荷になる。彼女はもう、彼女に耐えられない」
杏子「……………………」
貴女は、少し。
杏子「……でもな、アタシ」
杏子「きっとまどかだって、今の自分を見れば、嫌だって」
杏子「そう、言うと……そう言うと『思う』」
杏子「だから、だから。せめて、許してくれ――まどか」
まどか「――あれ、杏子ちゃん? ……ここは――?」
懐かしい声と、彼女を抱き締めて。
中断。
終わらねえ……
近々更新したい←
自分を何処かに忘れてきたのは、いつだろうか。
――――マンション、新居にて
杏子「……よし、こんなもんかな」
貴女は荷物を部屋に運び込み、一息吐いた。
家具も置きたての真新しい住まいが、貴女を迎え入れる。
杏子「いや、やっぱ引っ越して正解だな」
ベランダには、外の景色を眺めているまどか。
そよ風が彼女の柔らかい髪を撫でていた。
「ね、悪くなかったでしょう?」
杏子「お」
貴女の背後から声を掛けてきたのは――例の件からこっち、貴女に付き従うように共にいる――長い黒髪の魔法少女。
「この段ボールはどうしましょう? 『服、まどか』って書いてますから……」
杏子「ああ、悪い。それはアタシが運んどくわ」
「了解です」
貴女の言うことを良く聞き、精力的に働いていた。
杏子「…………」
実際、かなり助かっている。
長くはまどかから離れて動けない貴女に変わって、街の魔女狩りを代行したり、今日も引っ越しの手伝いなんて――頼んでもいないのにやってきた。
そも、この移住だって――
――――貴女の嘗ての住み処
「あー……杏子さん、これは少し……マズいかもしれませんね」
と、黒髪の彼女はパソコンの画面を眺めながら言う。
画面を覗き込めば、そこかしこに個人情報を流してしまったような跡が見て取れた。
恐らくは、まどかが錯乱しながらも近くの売人――薬の運び屋と接触しようとした名残だろう。
杏子「なーるほどなぁ、通りで」
イタズラで出前が届くなんてのは可愛い物で、
金目当ての奴。
体目当ての奴。
それから、
「今日は誰をシメたんですか?」
杏子「人聞きが悪いなオイ」
杏子「んー……まぁ、あれ。サツ」
「いよいよ大変ですね」
警察官が来たときは流石に笑ってしまった。
当然と言えば当然なので、お仕事ご苦労様という気持ちを込めて幻惑魔法をお見舞いするしかない。
杏子「仕方ねぇな……」
貴女は部屋の周囲に結界を張り、それに幻惑魔法を絡めていく。
ここに立ち寄る際の目的を、当たり障りの無い物に変換するようにだ。
杏子「……よし、これで良いだろ」
「? 何か対策でもしたのですか?」
不思議そうな顔で尋ねてきたので、自分の使った魔法の詳細を教えてやる。
「いや、魔法も使いましょうけれども、先に家を変えましょうよ」
確かに。
――――
そうして、この新居。
という訳なのだ。
杏子「眺めはどうだ、まどか?」
まどか「素敵だね、街が見渡せちゃう
」
景色が良い方が母体に良いのではないのか、という案が黒髪のアイツ。
景色が良い方がいいな、という意見がまどか。
自分では、そんな所に気は回らなかったろうと感じる。
落ち着いて、そんなものを眺める余裕などは、ここの所は忘れてしまっていた。
ベランダから下を覗けば、結構な高さ。
分かっていても、少しは冷える。
「杏子さーん、この荷物は――?」
杏子「おう、待て。説明する」
まどかの出産予定も、そろそろだった。
――――新居、夕方
杏子「お疲れさん」
「ありがとうございます」
適当に用意した缶ジュースをくれてやると、少女は少し微笑んでプルタブを開けた。
「まどかさんは部屋に居てくれてるんですね」
杏子「まぁな。お前と接触するわけにもいかないしね」
「御気遣い、感謝します」
夕暮れ時の日差しで、ふと、巴マミとの茶会を思い出して。
だから、ああ、こんなのも悪くない――と感じたんだ。
眠い、寝ます
ちょっと日常します
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません