男「なあお母さん」 幼馴染「!?」(55)

幼馴染「……」

男「はっ!いや、いまのは、その」

幼馴染「なに?今のは私を呼ぶつもりだったの?」

男「あ、ああ……」

幼馴染「……」

男「ほら、よくあるだろ、学校の先生を間違えてお母さんって呼んじゃうやつ」

幼馴染「よくあるよくある」

男「!あ、あるよな!そうだよな、お前もあるだろ一回ぐらい」

幼馴染「私はないよ」

男「そ、そうか……」

幼馴染「……」

男「その、さ」

幼馴染「なに」

男「恥ずかしいから他のヤツには今の言わないで!お願い!」

幼馴染「……」

男「……」チラッ

幼馴染「それだけ?」

男「は?」

幼馴染「他に何か言うことないわけ?」

男「……もしかして、怒ってる?」

幼馴染「別に怒ってないけど。今言うべことってそれなのかな?」

男「ひぃぃ……!ごめんなさいぃぃ……!」

幼馴染「……」

男「完全に無意識だったんだ……ごめん」

幼馴染「無意識だったんだ」

男「ああ」

幼馴染「……もう知らない」

男「へ?」

幼馴染「帰る」ガララ

男「えぇ!?ちょっ、ごめんって!あと窓から帰るなっていつも言ってるだろ、おい!」

幼馴染「……」ビタン!

男「マジで帰っちゃったよ……そんなにまずかったかな、今の」


 次の日


男「やべぇ遅刻する!」ドタドタ

母「あら遅かったわね。もう朝ごはん冷めちゃったわよ」

幼馴染「……」モシャモシャ

男「おま、いるなら起こしてくれよ!なんで今日は起こしてくれなかったんだよ」

幼馴染「なんで私が起こさないといけないの?」

男「え?いやだって、小学校の頃からずっと起こしてくれてるじゃん」

幼馴染「私たちさ、もう高校生だよ?高校生にもなって毎朝幼馴染みに起こしてもらってるとか恥ずかしくないの?」

男「別に、今までずっとそうだったし」

幼馴染「はぁ。呆れた。今日からはもう起こさないから」

男「急になんで!」

幼馴染「だって私は男のお母さんじゃないもの」

男「はぁ!?お母さんって、お前まさか昨日のことまだ気にしてるのか!?」

幼馴染「ごちそうさまおばさん。この味噌汁おいしいね、今度作り方教えてよ」

母「いいわよ。この味は私もお義母さんから教わったものだから」

幼馴染「もう、おばさんったら///」

男「なに意味の分からない会話してんだおい!」

幼馴染「じゃあ行ってきますね、おばさん、おじさん」

母「はい、行ってらっしゃい」

父「気をつけて行くんだよ」

男「え、お前もう行っちゃうのかよ!一緒に行こうぜ」

幼馴染「なんで私が男なんかと一緒に学校行かなきゃいけないの」

男「えぇ!?いや、同じクラスなんだし、一人で行くより一緒に行ったほうが楽しいだろ」

幼馴染「いやよ。今日から一緒に登下校しないから」

男「下校も!?なんで!」

幼馴染「私は男のお母さんじゃないもの。送り迎えなんてやってられないわ」

男「送り迎え!?お前そんな風に思ってたのか!?」

幼馴染「じゃあ行ってきまーす」

男「ちょっ、待てっておい!つうかだったらお前なんで今日ウチに来たんだよ!」

男「あいつマジで置いていきやがった……!」

母「ほら、早く顔洗ってきなさい。ホントに遅刻するわよ」

男「っ……くそ!」ダッ



父「あの二人でも喧嘩するんだな」

母「喧嘩というより男が幼馴染ちゃんを怒らせちゃったようね」

父「あいつ変なところで鈍感だからなぁ」

母「誰かさんみたいにね」

父「?」

母「まああの二人なら大丈夫でしょ」

父「まあな。……はぁ、俺もあんな可愛い幼馴染みが欲しかったなぁ」ボソッ

母「お父さーん?」

父「さあてそろそろ仕事に行こうかな。愛する家族のために!」

男「はぁ……はぁ……!」

男「ギリギリセーフ!!」

幼友「おはようマザコン」

男「マザコン!?」

男友「ようマザコン。珍しくギリギリだな、どうかしたのか」

男「お前まで!もしかして幼馴染のやつから聞いたのか?」

幼友 男友「「うん」」

男「くそっ、恥ずかしいから言うなっつったのに」

幼友「にしてもあんなかわいい幼馴染みのことをお母さんなんて呼び間違えますかね普通」

男友「本当だよな。まさかそんなアブノーマルプレイに励むほど二人の仲が進展していたとは」

幼友「そうじゃねえだろ!」

男友「ひでぶっ!?」

男「つうか幼馴染は」

幼馴染「つーん」プイッ

幼友「あんな感じです」

男「……お前ら幼馴染がなんで怒ってるのかとか聞いてないか?」

幼友「え……あんたもしかして」

男友「幼馴染さんがなんで怒ってるのか分かってないのか?」

男「いや分かってるよ。俺にお母さんって呼び間違えられたからだろ。でもそれだけじゃ説明がつかないんだ」

幼友「というと?」

男「あいつ、今日の朝起こしてくれなかったんだ」

幼友「は?」

男友「起こすって何、モーニングコール的な?」

男「いや、いつもは窓から入ってきて直接起こされるんだけど」

男友「え、なにお前殴られたいの?」ブン!

男「言いながら殴ってこようとするなよ!お前手出すの早すぎなんだよ!」

幼友「それで?まさかそれだけってわけじゃないでしょうね」

男「あとなぜか一緒に登下校しないって言い出して」

幼友「……まああんたらがいつも一緒に登下校してるのは知ってるけどさ」

男友「ホントお前はモテない男イラつかせるの上手な?」

男「笑顔が怖いんだけど……」

幼友「それで、その理由が分からないと」

男「ああ。確かに呼び方を間違えるなんて失礼なことだったとは思うけど、でもここまでやるほどのことじゃないと思うんだよな」

幼友「これは……」

男友「同情するわ」

男「だ、だよな!ちょっと幼馴染のヤツ怒りすぎだよな」

幼友 男友「「幼馴染(さん)に」」

男「えぇ!?そっちかよ!」

幼友「あんたさぁ……じゃあ例えば、もしあんたが幼馴染に『お父さん』って呼ばれたらどう思うよ」

男友(うーん、その手の質問は多分こいつには意味ないと思うがな)

男「それは……確かに嫌だけど、でもやっぱそれぐらいじゃ幼馴染と一緒にいたいって気持ちが変わることはないと思う」

幼友「おぅふ」

男友「はいはい」

男「んー……結局よく分からないんだが。お前たちは察しがついてるのか?」

幼友「それは」

男友「まあね」

男「じゃあもったいぶらずに教えてくれよ。原因が分からないと謝ることもできない」

幼友「うーん……」

男友「もう普通に教えればいいんじゃね?こいつ多分自分からは一生気付かないぞ」ヒソヒソ

幼友「いや私たちが勝手に教えちゃダメでしょ!幼馴染の気持ち考えなさいよ」ヒソヒソ

男友「つってもなぁ……」

男「……そうか。言えないほどの理由なのか」

幼友「いや、別にそこまで大袈裟なものじゃないと思うんだけど」

男友「まあでも、そういうのはやっぱ自分で考えねえと意味ねえよ」

男「友……」

男友「お前が本気で幼馴染さんのこと大事に思ってるなら、本気で悩んで自分で気付いてみせろ」

男「……ああ、そうだな。俺間違えてたよ。本気で考えてみる」

男友「おうよ。なに、お前たちならすぐに仲直りできるさ」

男「……ありがとう。じゃあ」

幼友「……」

男友「…………今の俺、かっこよくなかった?」

幼友「どこがよ!」

男友「あべしっ!」

幼友「なんか男くんすごい神妙な面持ちで席ついちゃったけどあれ絶対答えから遠のいてるでしょ!」

男友「でも幼馴染さんが本気で傷ついてるのは確かだろ」

幼友「うっ、そりゃそうかもしれないけど、なんかもっと軽い感じというか」

男友「まああの二人なら心配いらねえって。どうせすぐ仲直りするさ」

幼友「だといいけど……でもあの二人が一緒に登校してこなかったのって初めてじゃない?」

男友「確かに……前にパスタ派かスパゲッティ派かで喧嘩してたときは普通に一緒に来てたしな」

幼友「幼馴染にとって今回のはそれほどのことだったってことだよね」

男友「……」

幼友「……頑張ってよ、男くん」







男(ううむ……幼馴染はなんで怒ってるんだ?)

男(十中八九俺が『お母さん』って呼んじゃったことが原因なんだろうが……)

男(問題はどうしてそれでここまで怒ってるのかってことだ)

男(お母さん……お母さんお母さんお母さん)

女教師「男ー、ちょっとここの問題といてみろ」

男「はいお母さん!」

クラスメイトたち「!?」

男「はっ!」

女教師「……先生はまだ高校生の子供を持つような年齢じゃないぞー?」

男「はいぃ!すみませんでした!」



幼馴染「……」ムスー

幼友(うわ、怒ってる怒ってる……!)

幼友(……怒ってる幼馴染も可愛いなぁ)ニヤニヤ

男友(うわニヤけてる!キモッ!)

男(いや待てよ……そうか!)

男「分かった!」

女教師「おう分かったのか男。じゃあ早速解いてみてくれ」

男「えっ」

女教師「えっ」

男「……すみません。分からないです」

女教師「そっかー。男くんは先生の事をバカにしてるんだね?」パキパキ!

男「ごめんなさああああい!」




男「幼馴染!」

幼馴染「……なに」

男「悪かった!」

幼馴染「なにが」

男「お母さんって呼んじゃったこと。本当に悪かった。まさかお前がここまで傷ついてるなんて思わなかったんだ」

幼馴染「傷ついてるって……別にそこまで」

男「本当にごめん!」

幼馴染「……」

男「そうだよな。そりゃあんなこと言われたらお前だって怒るよな。お前も女だもんな」

幼馴染「な、なななな……!」

幼馴染(え、うそ、もしかして気付いたの!こいつ鈍感だから絶対分からないだろうって思ってたのに)

幼馴染(私の気持ちバレちゃってる!?)

幼馴染「いや、その、別にそういうんじゃ」

男「いや、俺が馬鹿だった。あまりにも身近な存在過ぎて、そんな当たり前のことも忘れちゃってたんだ」

幼馴染(うそ、この流れって、もしかして、もしかしちゃうの!)

幼馴染「あぅ、その、まだ心の準備が……」

男「幼馴染!」

幼馴染「ひゃい!」

男「俺はお前のこと、十分若いと思ってるぞ!」

幼馴染「私も昔から――――え?」

男「俺は別にお前のことをおばさんだとかそんな風に考えてるわけじゃないぞ!お前はぴっちぴちの高校生だ!」

幼馴染「いやごめん意味わかんない」

男「お前はめちゃくちゃ可愛いぞ!!」

幼馴染「うんそれは転げ回りたくなるほど嬉しいけど今はおいとこう」

幼馴染「お前何言ってんの?」

男「いや、お前『お母さん』って呼ばれたこと怒ってるんだろ?」

幼馴染「うん」

男「だから別にお前のことおばさんだとか思ってるわけじゃないぞって言ってるの」

幼馴染「はあ」

男「???」

幼馴染「???」

男「あれ、もしかして……違う?」

幼馴染「全っ然違う」

男「ああ……そう」

幼馴染「……」

男「出直してくるわ」

幼馴染「もう二度とくるな!」

男「ひぃぃ……!」ピューン!




男「うぅ……違ったのか。冷静になって考えてみると高校生のうちから年齢とかあんま気にしないよなぁ」

男「じゃあなんであいつはあんなに怒ってるんだろ」

男「……」ブツブツ

男友(ついに思考が口からでるようになったか)

男友(何か助け舟だしてやるべきかな)

男友「……」チラッ



幼馴染「……はぁ」

幼友「ため息ついてると幸せ逃げちゃうよ」

幼馴染「うん……」

幼友「そうだ、b組の○○さんがね……」

男友(俺も、ちょっと励ますぐらいならいいかな)

男友「よっ。大分悩んでるみたいだな」

男「まあな。とりあえず今日いろいろ悩んで一つ気付いたことがある」

男友「おお、なんだ」

男「もしかしたら俺って案外鈍感なのかもしれない」

男友「ああ……うん、かもね」

男「うぅぅ、このまま幼馴染との関係がギクシャクするのは嫌だぁ」

男友「ま、そう深く考えなさんな」

男「本気で悩めって言ったのお前だろ」

男友「い、いやまあそうだけどさ、そういうのってあんまりうんうん唸ってると逆に思いつきにくいもんだろ」

男「……確かに」

男友「……もっと柔軟な発想がいるんじゃねえかな」

男「柔軟な発想?」

男友「そ。お前みたいな鈍感野郎は基本なんらかの固定観念に縛られてるんだよ」

男「固定観念?」

男友「その固定観念のせいで、本来なら簡単に気付くはずのことを見落としたりすんのさ」

男「……なるほど」

男友「お前、なんか『幼馴染に限ってそんなことはない』みたいに思ってることないか?案外それがカギになるんじゃねえかな」

男「……」

男友(どうだ?ちょっとヒント出しすぎたか?)

男「……」

男「……そういうことか」

男友「おお、気付いたか!」

男「ああ。そうだったんだ。俺は根本から間違えてたんだ」

男友「うんうん」

男「あいつは俺に怒ってるんだと思ってたけど、そうじゃなかったんだな」

男友「うんうん……ん?」

男「何だ、そういうことか。あいつ自身も言ってたじゃないか、『呆れた』って」

男友「……」

男「あいつは俺に怒ってたんじゃなくて、俺に嫌気が差してたんだな……」

男友「いや幼馴染さんに限ってそれは」

男「俺もそう思ってたよ。だけど、お前に言われて、それはひどい思い上がりだって気付いた」

男友「いや俺はそこは思い込みじゃないと思うな」

男「おお、全てに合点がいったぜ。そういやお前たちも、俺にヒントを出してくれてたんだな」

男友「確かにヒントは出してるけども」

男「つまり、あいつは俺のことをマザコンだと思ってるんだろ?」

男友「……は?」

男「そりゃ高校生にもなって無意識に『お母さん』呼びだもんな。マザコンだと思われても仕方ねえよ」

男友「ああ……うん、だね」

男「でも、俺はマザコンじゃない!確かに母さんのことは人並みに好きだし感謝はしてるけど、マザコンと呼べるほどのものじゃない!」

男友「うんだね」

男「分かってもらえるかは分からないけど、俺幼馴染に正直な気持ち伝えてくる!」

男友「はいはい」

男「うおおおお、幼馴染ぃぃぃ!」

男「幼馴染!」

幼馴染「なによ」

男「俺はマザコンじゃない!」

幼馴染「……」

幼友「……」

男「信じてくれ!」

幼馴染「……」スッ

幼友「お、幼馴染……?」

幼馴染「そんなことはね」

男「……?」



幼馴染「ずぅぅっと男を見てきた私が一番知っとるわあああああ!!」



男「!?!?」

クラスメイトたち「!?」

幼友「ちょ、ちょっと!」

幼馴染「ぜぇ……ぜぇ……男の……」

男「……?」





幼馴染「男の……男の……ば、ば、バカヤロオオオオオオオオ!!」ダッ!





クラスメイトたち「!?」

男「……!」ガーン!

幼友「ちょっ、幼馴染!」

男「……バカ野郎って、あいつが、俺に、そんなセリフを……」ガクッ

男友(ショック受けてるみたいだけどなんかムカつくからほっとこ)




男「……幼馴染ぃ……」

男友(めっちゃ落ち込んでる)

幼馴染「はぁ……私は何であんなやつのことを……」

幼友「ほら元気出して、ね!」

男友(あっちはあっちで落ち込んでるし……)

男「ん、待てよ……」

男友(また変なこと思いついてるんじゃねえだろな)

男「……!」ガバッ!

男友(ああダメだよあの感じ絶対正解にたどり着いてないよ大丈夫か変なこと言わねえだろうなおい)

男「……」

男友(まっすぐ幼馴染さんのところに向かってる!あいつあの状態の幼馴染さんにまた絶望を味わわせるつもりか!)

男友「……」バッ

男「……止めないでくれ友。俺には確かめなければならないことがあるんだ」

男友「まあその前に一度冷静になれって。自分の中でもう一度よーく考えてみろ。それからでも遅くはないだろ」

男「いや、冷静になんてなれない。この可能性に思い至ってしまった時点で、俺はもう冷静じゃいられないんだ」

男友「なに……?」

男「友。これは今の俺にとって何よりも大事な問題なんだ。分かってくれ」

男友(さっきまで陸に打ち上げられたクラゲみたいだったのに、なんて力強いまなざしなんだ……)

男友「……念のため、俺にも聞かせてくれないか、それ」

男「お前に言ったって意味はない。俺が今話をしたいのはただ一人、幼馴染だけだ」

男友「!……へっ、俺が悪かったよ。ほら行け」

男「……ありがとう」

男友「骨は俺が拾ってやる」

男「友……」

男 男友「……!」ガシッ

男「幼馴染!」

幼馴染「なによ」

男「お前俺の弁当作ってきてないだろ!」

幼馴染「当たり前じゃない。私はお母さんじゃないんだから」

男「くそっ、食べ盛りの高校生男子が昼食を抜いて午後を戦い抜けるはずがない!」

男「というわけで友!購買で菓子パン買いたいからお金貸してくれ!」

男友「お金は返さなくていいからお前ももう二度と帰ってくるな!」チャリーン!

男「うわらばっ!」



 キーンコーンカーンコーン……


男(ふぅ、やっと終わったか)ギュルゥゥゥ…

男(早く帰ろう。もう限界だ)

男「幼馴染」

幼馴染「幼友ちゃん、一緒に帰ろ」

幼友「う、うん」

男(ああ、そうか。一緒に帰ってくれないんだっけ)

男「友……」

男友「土にでも還ってろ」ビシャン!

男「……」

男「……」

男「……」ギュルルルル…

男「……帰るか」

幼馴染「……」

男「うわっ!お前いたのか」

幼馴染「……これ」

男「え……これ、弁当」

幼馴染「勘違いしないでね。自分で食べようと思ってたんだけど思いのほか多くて食べれなかっただけなんだから」

男「……ありがとうな」

幼馴染「……ふん」

男「……ごめんな。お前を傷つけてるのに、その理由すら分からないなんて」

幼馴染「別に……さっきも言ったけど、そこまで傷ついてるってワケじゃないから」

男「幼馴染みなのにな……」

幼馴染「……ねえ」

男「ん?」

幼馴染「男にとっての私って、何?」

男「何って……お母さんではないぞ」

幼馴染「そんなこと分かってるよ」

男「……幼馴染は幼馴染みだよ」

幼馴染「……幼馴染みって、なんなんだろうね」

男「え……」

幼馴染「毎朝起こして、たまに朝ごはんも作って、一緒に登下校して、お昼の弁当も作って」

幼馴染「私、男にお母さんって呼ばれたとき思ったんだ。私のしてることって、母親のしてることと何が違うんだろうって」

男「……」

幼馴染「男が私の事をお母さんみたいって思ってるわけじゃないのは分かる。だけど、きっと男は、私の事を女だとは見てないよね」

男「……」

幼馴染「男に幼馴染みとして大事に思われてるのは嬉しい。けど、私はいつまでも男の幼馴染みなんかでいたくない」









幼馴染「私は、男の恋人になりたいの」








男「……」

幼馴染「あーあ、言っちゃった。男が鈍感すぎるのがいけないんだからね」

男「……ああ、そういうことか。なるほど」

幼馴染「……あんたもなに普通に納得してるのよ。こっちはこれでも結構いっぱいいっぱいなのに」

男「固定観念か。確かにそうだな、まさかお前が俺のことを異性として好きなんだとは思わなかった」

幼馴染「ちょ、そんなはっきりと言わないでよ!」

男「幼稚園ぐらいのことからずっと一緒にいるのにお前の俺に対する態度があまりに変わらないから、そういう対象として見られてないんだとばっかり思ってた」

幼馴染「それは……ずっと昔から好きだったから変わらなかっただけよ」

男「そうか……じゃあ無理やり抑えこむ必要なかったんだな」

幼馴染「え……?」

男「あまりにも長い間そんなわけないって自分に言い聞かせてきたから、すっかりそれが当たり前になってたんだな」

幼馴染「え、なに、意味わかんない」

男「お前は俺みたいに鈍感じゃないから分かるだろ」

幼馴染「えっ、だって男そんなそぶり全然見せなかったじゃん!」

男「そりゃあ……ずっと昔からそうやってきたからな、気付かないもの当然だ」

幼馴染「なに、それ……」

男「……嫌だったんだよ。俺の勘違いで、幼馴染と一緒にいられなくなるのが」

幼馴染「わ、私だって!男と一緒にいられなくなるのが嫌だから、ずっと……!」

男「……」

幼馴染「……」



男 幼馴染「「ぷ、ぷはは!」」



男「なんか、バカみたいだな俺たち」

幼馴染「ホントだね。あーあ、今まで悩んできたのってなんだったんだろ」

男「でもそれも今日で終わりだな」

幼馴染「だね」

男「……」

幼馴染「……」

男「……ええと、それで、これどうなるの?」

幼馴染「どうなるとは?」

男「俺たち。付き合うのか」

幼馴染「付き合うって……私と男が!?」

男「他にいないだろ」

幼馴染「……想像できない」

男「そうか?俺はずっと妄想してたけどな」

幼馴染「そうなの!?」

男「近場ならどこにデートしに行ったらいいかなぁとか考えてた」

幼馴染「そうならそうって言ってよ!」

男「言えるわけないだろ!」

幼馴染「うーん、じゃあ、どうしよっか。付き合っちゃう?」

男「……こんなんじゃ……俺の妄想じゃこんなんじゃなかったはずなのに」

幼馴染「じゃあどんなんなのさ」

男「……幼馴染」

幼馴染「……はい」





男「好きだ。俺と付き合ってくれ」





幼馴染「……はい!」

男「……」

幼馴染「……」

男「で……どうしようか」

幼馴染「告白の後はどうするのか妄想してなかったの?」

男「一応してたけどさ」

幼馴染「じゃあそれでいいじゃん」

男「……無理だ!あんなことやそんなことなんて俺にはできない!」

幼馴染「えぇ!?そんなすごいこと妄想してたの!」

男「……とりあえず、一緒に帰るか」

幼馴染「うん!」スッ

男「……」ヒョイ

幼馴染「……」スッスッ

男「……」ヒョイヒョイ

幼馴染「……なんで手を繋ごうとしないの」

男「いやむしろなんで手を繋ぐ必要があるんだ」

幼馴染「そりゃ普通に帰るだけならいつもと何も変わらないからでしょ!」

男「そ、それもそうだな」

幼馴染「いいから手繋ぐよ!恋人つなぎね!」ビュン!

男「……」ヒョイ

幼馴染「お前私をおちょくってんのか」

男「そ、そういうわけじゃなくて……」

男「どうやら長年欲望を抑え続けていたせいでそういう行為に拒絶反応がでるみたいだ」

幼馴染「えぇ!?……マジで?」

男「マジで」

幼馴染「……どんだけ強く抑えこんできたらそうなるのよ」

男(お前が無防備に布団に入ってきたりお風呂に入ってきたりしてたからだろ……)

幼馴染「まあ、そうなっちゃったのは私にも原因があるか。これからすこしずつ克服していこ」

男「……だな」

幼馴染「えいっ!」ヒュッ!

男「うわっ!」ヒョイ

幼馴染「ちっ、不意打ちでもダメか」

男「か、勘弁してくれ……」ドキドキ

幼馴染「それでねーb組の○○さんがね……」

男「へぇ…………ははっ、そりゃないだろ」

幼馴染「本当なんだって!幼友ちゃんが言ってたもん」

 キャッキャ ウフフ








幼友「……」

男友「ん、コーヒー」

幼友「……ありがと」

男友「……一緒に帰るか」

幼友「断る」

男友「えぇ!?」



おわり

ベッタベタな王道テンプレモノが書きたかった

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom