久「一太くん」揺杏「いっくん」 (39)

北海道某中学校卒業式


揺杏「卒業おめでとう、いっくん」

一太「ありがとう揺杏」

揺杏「いっくんは高校は長野のとこに行くんだっけ?」

一太「うん。親の転勤の都合でね。揺杏は来年、有珠山高校にいくんだっけ?」

揺杏「爽もそこに行くらしいからな。それにしてもあんたとの腐れ縁もこれで終わると思うと清々するよ」

一太「そうなんだ。僕は揺杏と離れ離れになると思うと寂しいけどね」

揺杏「ばっ……真顏でそういうこと言うなよ!」

一太「夏休みになったら北海道に遊びに来るよ。その時にまた会おうよ」

揺杏「……しょうがないな。待っといてやるよ」

一太「それじゃあね。揺杏」

揺杏「あ、そのいっくん……」

一太「ん?」

揺杏「……なんでもない。それじゃあな」

一太「うん。ばいばい」


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春 清澄高校 一年生教室


久「さーて、これから私の高校生活が始まるのね」

久「ここには麻雀部が無いみたいだし、新しく麻雀部を作りましょう。手当たり次第に声をかけて部員になりそうな人を集めてと」

久「とりあえず隣の席になった子に声をかけようかしら」

久「ねえあなた」

一太「はい?」

久「えーっと、内木くん?だったかしら」

一太「はい。あなたは竹井さんでしたっけ?」

久「そうよ。あと同級生なんだから敬語じゃなくていいわよ」

一太「すいません。これは癖みたいなものです」

久「そう。ところであなた、麻雀に興味はある?それか麻雀に興味がある人に心当たりはあるかしら?」

一太「麻雀……」

一太(確か揺杏が昔やってたって言ってたっけ)

一太「僕は麻雀の事は知りませんけど、友達に麻雀を打てる人なら……」

久「ほ、ほんと!?お願い、私に紹介して!」

一太「でも、その子は北海道にいるから……」

久「なんだ……」

久(そういえば始めの自己紹介で、北海道からやってきたって言ってたわね……)

久(まだ友達もいないみたいだし、聞く相手を間違えたわ……)

一太「期待に添えずすいません」

久「いいのよ……。ごめんね、変なこと聞いて」

一太「麻雀の相手を探してるんですか?」

久「相手というよりメンバーね。私、麻雀部を作りたいのよ」

一太「部活で麻雀がしたいなら、他に麻雀部のある高校にいけばよかったんじゃないですか?」

久「うーん、そうなんだけど……家庭の事情で、清澄に通うことになったのよ」

一太「あ……すいませんでした」

久「いいわよ別に。もしこの学校で麻雀ができる人を見つけたら教えてくれるかしら?」

一太「はい。わかりました」

ある日 清澄高校


久「結局この高校には麻雀部に入ってくれる人はいなかったわね。暇だわー」ぽけー

男子生徒「おーい一太。悪いけど俺、部活行かないといけないから、このプリントを職員室までくれないか?」

一太「いいですよ」

男子生徒「いつも悪いな」

一太「気にしないでください。どうせ僕は帰宅部で暇ですから」

男子生徒「今度なんか奢るわ。それじゃ」

久「……ねぇ内木くん」

一太「なんですか?」

久「あなた、いつもそうやって誰かに仕事押し付けられてるけど、大変じゃないの?」

一太「いえ。慣れてますから」

久「慣れてる?」

一太「僕の幼馴染がすごくガサツな性格で、よく僕が代わりにやったり手伝いや後始末をしていたんですよ」

久「ふーん。それいいように使われてたんじゃないの?」

一太「かもしれませんね。けれど両親が仕事でいないと、日頃のお詫びにとよく晩御飯を作ってくれていたんですよ。あいつは手先はかなり器用ですから」

久「へー。そうなの」

一太「竹井さんもなにか困ったことがあったら僕に言ってください。力になれることなら協力しますよ」

久「優しいのね。そのうち頼むわ」

夏休み前 清澄高校


学級長「というわけで文化祭の実行委員長を決めようと思います。誰かやりたい人はいませんか?」

アンタヤリナヨー

エーブカツデイソガシイシー

久「内木くんはやらないの?こういうの得意そうだけど」

一太「僕はリーダーシップを発揮してみんなをまとめたり仕切ったりっていう柄じゃ無いですから」

久「ふーん」

久(実行委員長か……どうせ部活やってないし、やってみようかしら)

久「はい。私が実行委員長をやります」

学級長「それじゃあ、実行委員長は竹井さんにお願いしたいと思います」

一太「竹井さん、実行委員長をやるんですか?」

久「まあ、暇だしお祭り事は好きだからね」

久(それに、どさくさに麻雀部の宣伝して来年入る子を確保できるかもしれないしね)

学級長「副会長やる人はいませんか?」

一太「はい。僕がやります」

久「内木くん?」

学級長「それじゃあ副会長は内木くんにお願いします。竹井さんと内木くん、この後の司会をお願いしもす」

久「内木くんさっき実行委員長はやらないって言ってなかった?」

一太「委員長は、ですよ。誰かにみんなをまとめてもらって、僕はその人のサポートをしたいんです」

久「ふーん。まあ確かにそれっぽいわね。それじゃあこれから文化祭まで、よろしくお願いね」

一太「任せてください」

放課後


久「うーん、文化祭の出し物のアンケートの集計、それらが実現可能かのアバウトな見積もり、不可能ならの妥協案……やる事がいっぱいね」

一太「とりあえず僕は過去の出し物の資料を持ってきます。それを参考にすればある程度楽になるはずですよ」

久「うん、お願い内木くん。私はとりあえず集計しておくわ」


二時間後


久「終わらない……ほんとこの作業大変ね……」

内木「明日あたり誰か手伝ってくれる人を募ってみます。今日はとりあえず僕達だけでやりましょう」

久「そうね……」

久(マズイわ……昨日は靖子と深夜まで麻雀してたから、眠気が……)

久「ZZZ……」


……

……




久「うーん……はっ!」ガバッ

久「マズイわ……すっかり寝てた……」

久「ん?これは学ラン……寝てる私に誰かがかけてくれたのかしら……?」

一太「あ、どうも竹井さん」

久「内木くん……私が寝てる間もずっと作業してくれてたの?」

一太「はい。手を休めるわけにはいけませんからね」

久「ご、ごめんなさい……寝ちゃってあなただけに働かせてしまって……」

一太「いえ、気にしてませんよ。竹井さんは疲れていたみたいですからね」

久(うぅ……麻雀やって寝不足なだけなのに……)

久「そういえば内木くん、カッターシャツ姿だけど、この学ランは……」

一太「あ、風邪を引かないようにかけておきました。僕の着てた学ランなんかでアレですけど……」

久「うんう!!とっても嬉しいわ。ありがとう」

久(どれだけ迷惑かけてるのよ私……。それに……)

一太「そうですか。それじゃあ、残りの作業をやって早く終わらせましょう」

久(この人はどれだけお人好しなのかしら……。これも、その幼馴染の面倒を見てきたかしら?)

久(そういえば、その人は料理が得意って言ってたわね。もしかして女の子かしら?)

久「ねえ内木くん……」

PLLL

一太「あ、僕の携帯です。すいません」

久「気にしないで電話にでてもいいわよ」

一太「では失礼……もしもし」

揺杏『よお。久しぶりいっくん』

一太「ああ。久しぶりだね揺杏。元気だった?」

久(誰にでも敬語な内木くんが、この人には敬語じゃないわね。さっき言ってた幼馴染かしら?)

久(ユアン……って珍しい名前だけど、男かしら?この前やったゲームにそんな名前の男キャラがいたし。まあ内木くんって女っ気無さそうだものね)

揺杏『まあね。あんたこそ、高校生活はどう?』

一太「わりと充実してるよ。文化祭の副実行委員長になったんだ」

揺杏『へー。副ってところが相変わらずだな』

一太「僕はリーダーって柄じゃないからね。ごめん、せっかくかけてくれたけど、今は忙しいからもう切るよ」

揺杏『えー、もっとなんか話そうよ。暇なんだよ』

一太「無理。今夜にでもかけなおすよ」

揺杏『ちぇー。まあいいか。それじゃあな』

一太「うん。ばいばい」プツン

久「結構仲いいのね。さっき言ってた幼馴染?」

一太「はい。岩館揺杏っていう、一つ下の子です。昔から家が近くてよく遊んだんですよ」

久「ふーん。まいっか。作業の続きをしましょう」

夏休み


揺杏「いっくん、夏休みにはこっちにくるって言ってたよな」

揺杏「こっちに来たらなにしようかなー。映画を見るのもいいし、一緒にウィンドウショッピングもいいかな」

揺杏「いっくん事だから本屋に入って自分の興味ある本の前で一時間動かないとかあるかもしれないし、そこは避けないと」

揺杏「爽に服を選んだし、これで大丈夫だよな……?」

揺杏「って、これじゃデートに行く前日の恋する女の子みたいじゃんか!そんなつもりじゃ……」

PLLLL

揺杏「電話……いっくんからだ!」

揺杏「はいもしもし」

一太『もしもし揺杏かい?』

揺杏「あ、ああ。久しぶり。どしたの?」

一太『夏休みにそっちに遊びに行くって話だけど……』

揺杏「ん?ああそんな事言ってたなそいや!すっかり忘れてたよ。まあこっち来るんなら新しくできたオシャレな喫茶店にでも案内してやっても……」

一太『ごめん、文化祭の準備が忙しくて今年の夏はそっちに行けないんだ』

揺杏「……え」

一太『初めての文化祭だからいろいろわからなくて大変で、実行委員長と一緒に悪戦苦闘してて……ほんとにごめん』

揺杏「……べ、別にいいし。つい今まであんたが来ること忘れてたくらいだし」

一太『そっか。あまり気にしてないなら幸いだ。それじゃあ忙しいからもう切るね』

揺杏「あ、待っていっく……」


プツン


揺杏「……」ツーツー

揺杏「……別にあいつの為にオシャレしたわけじゃないし。寂しくもないし」

揺杏「……」グスッ


久「ごめんなさい内木くん。夏休みにフルで手伝わせて」

一太「いえ。大丈夫です」

久「あなたがいてくれて本当に助かるわ。文化祭が成功したら、なにかお礼をするわね」

一太「はは。期待して待ってますよ」

久「そうね……一日デートなんてどうかしら?」

一太「それは楽しみですね」

久(あら、もう少しあたふたすると思ったのに……もしかして手馴れてるのかしら?)

一太(デートか。揺杏がよくそう冗談を言って買い物に付き合わせてたな)

文化祭当日 夜


マイムマイムマイムマイムマーイムベッサソン

一太「最初はどうなるかと思ったけど、なんとか成功してよかった」

久「内木くん」

一太「竹井さん。お疲れ様です」

久「内木くんもお疲れ様。私たちのクラスの出し物、成功したわね」

一太「竹井さんが頑張ってくれたおかげですよ」

久「内木くんこそ。内木くんはフォークダンス、参加しないの?」

一太「僕は誰かと踊るなんて柄じゃないですから。こうして後夜祭を眺めているほうが合ってます」

久「ふーん……。それじゃあ、私と一緒に踊りましょう?」

一太「え……竹井さんと?」

久「ええ。私たちのクラスの出し物が成功したのはあなたのお陰なのよ。もっと胸を張りなさい」

久「それとも、踊るのが私と一緒じゃ不服かしら?」

一太「そ、そんなことは……」

久「それじゃあ、踊りましょう。しっかりエスコートしてね?……一太くん」

一太「……はい。久さん」



続く

この画像見て電波が発信されて作った

http://i.imgur.com/qrY4s6R.jpg

秋 清澄高校


久(さて。実行委員長権限で文化祭の時にさりげなく麻雀部の宣伝をしたら、1人メガネをかけた女の子が興味ありそうだったわね)

久(来年うちにきたら誘ってみるとしましょうか)

久(でも男の部員も欲しいわね)

久「ねえ一太くん」

一太「なんですか?」

久「あなた部活やってないわよね?麻雀部に入らない?」

一太「でも僕は麻雀のルールを知りませんよ?」

久「いいわよ。どうせ私だけだから大会に向けて練習するわけでもないし。私が教えてあげるわよ」

一太「なるほど……考えておきますね」

久「お願いね」


深夜 内木宅

一太「っていう事があってさ。友達に麻雀部に誘われたんだ」

揺杏『……』

揺杏(竹井久……そいつがいっくんを誘惑して夏休みに長野に縛り付けたんだな)

揺杏(そして今度は部活に誘って……二人っきりの部室でナニするつもりだ!)

一太「揺杏?」

揺杏『……やめた方がいいんじゃないの?』

一太「???どうしてさ」

揺杏『だってあんたなんか競技やってガチで戦って勝ち目指すってタイプじゃないじゃん』

一太「それはそうだけど……」

揺杏『それに来年新入部員が入ったら、先輩はあんた一人だぜ?団体戦とかで後輩のみんなを引っ張ったりできるのかよ』

一太「うーん、僕には難しいかな」

揺杏『そそ。だからやめとけって』

一太「そうだね。ありがとう、相談に乗ってくれて」

揺杏『まったく、あんたは私がいないと駄目だな』

一太「揺杏こそ。僕がいなくても大丈夫かい?」

揺杏『へっ。へーきだよ』

揺杏『ま、まあ少しは寂しくはあるけど……』ゴニョゴニョ

一太「大丈夫そうでよかったよ。僕の方は久さんが結構楽しい人だから、案外楽しく高校生活送ってるよ」

揺杏『』

一太「あ、もうこんな時間だ。それじゃあ、おやすみ揺杏」プツン

揺杏『』ツーツー

清澄高校


一太「というわけで折角の誘いですけど……」

久「いえ、いいのよ。こっちこそ無理に誘ってごめんね」

久「それにしても、部員1人だと放課後やることなくて暇だわ」

一太「それなら生徒議会をやってみたらどうですか?来年の生徒議会メンバーの選挙は始まってますよ」

久「生徒議会……」

久(……まあ、悪くはないわね。もしかしたら麻雀部の広告塔になれるかもしれないし)

久「ならやってみましょうか……生徒議会長!」

一太「ぎ、議会長!?いきなり!?」

久「そうよ。書記や会計なんてつまんないじゃない」

一太「でも、生徒議会長になるには、副議会長も一緒に出馬しないといけないんですよ?そのアテは……」

久「あるに決まってるじゃない」じー

一太「……」

久「……」じー

一太「……副議会長、やりますよ」

久「やった!ありがとう一太くん!」

一太「はぁ……。まあ僕自身も生徒議会員には興味ありましたし、それに」

久「それに?」

一太「なんだか久さんって、僕の幼馴染に似てて放っておけないんです」

久「そうなの?」

一太「はい。そいつ……揺杏は久さんほど頑張り屋でも真面目でもないんですけど……変に強がって弱いところを隠そうとするんです」

一太「放っておいたらそのまま辛いことを溜め込んでしまいそうで、放っておけないんですよ」

久「そ、そうなんだ……///」

一太「それじゃあ選挙管理委員会に登録に行きましょうか」

久「そ、そうね」



1年後 夏 清澄高校


久「というわけで麻雀部に新しくまこが来ました。私たちは生徒議会として夏休み文化祭の会議をしています」

久「独白終わり」

一太「誰に喋ってるんですか?会長」

久「なんでもないわよ」

久「それで、各クラスの実行委員が頑張ってくれてるお陰で私たちは夏休みはそんな学校に来なくていいわよ」

一太「そうなんですか?」

書記「やった!」

会計「夏休みどこにいって遊ぼうかなー」

一太(そういえば去年の夏休みは揺杏に会いに行けなかったっけな)

一太(高校に入学来た時もお祝いの電話だけだったし、今年は北海道に遊びに行こうかな)



一太『というわけで今年はそっちに行けるよ』

揺杏「そ、そうなんだ。ま、私も部活なんてアレだし、暇してるから遊びに付き合ってやんよ」

揺杏「近所の喫茶店が潰れて新しくできたパスタ屋に案内してやるよ」

一太『そうなんだ。楽しみにしてるよ。一週間後くらいには行くよ。おやすみ揺杏』

揺杏「うん。おやすみいっくん」

プツン

揺杏「……」

揺杏「……」

揺杏「……」ニヘラ

揺杏「そっかそっか今年こそは遊びに来るんだ~」

揺杏「ま、私も新しい高校生活で大変だけど?腐れ縁の幼馴染をほっとくわけにはいかないし?」

揺杏「ま、付き合ってやっかね~へへ」

揺杏「さーて、この辺りで良いところは……ちょっとコンビニ行って本買ってこよ」

一週間後 北海道


一太「やっぱり北海道は涼しいね」

揺杏「まーな。長野は暑いの?」

一太「長野は風通しがいいから結構涼しいけど、やっぱり昔から住んでた北海道の気温の方が落ち着くよ」

揺杏「ふーん。なんなら今からでも北海道で一人暮らしすれば?」

一太「今更そんなことはできないよ」

揺杏「そっか……」

一太「僕に北海道にいて欲しいの?」

揺杏「ち、ちげーし!そんなんじゃ……」

揺杏(……駄目だ。こんなんじゃ竹井久にいっくんを取られちゃう)

揺杏(もっと素直にならないと)

揺杏「ま、まあやっぱ私もあんたがいないと……」

PLLLL

一太「あ、電話だ。ちょっとごめんね」

揺杏「……」

一太「もしもし」

久『やっほー、一太くん』

一太「あ、久さん」

揺杏「!?」

揺杏(久……竹井久!)

久『今暇してない?ちょっと出かける用事があるから一緒にどうかなって』

一太「すいません。今僕は北海道に遊びにきてて」

久『あらそうなの。ざんね……』

揺杏「ねえねえいっくん!ほら、あそこが私が言ってたパスタ屋だよ!」

一太「あ、ちょっと揺杏。今電話中だって……」

久『』

一太「あ、そんなわけで久さん。今揺杏と出かけているので、電話切りますね。お土産は買っていきますから」プツン

久『』ツーツー



久「……」

久「……はっ!」

久「意識を失ってたわ……」

久「揺杏って女の子だったのね……。それも一緒にご飯を食べに行って、いっくんなんて親しげな呼び方をして……」

久「……これはマズイわ」

夏休み終わり 清澄高校


一太「久さん、これ北海道のお土産の木彫りの熊のストラップです」

久「ありがとう一太くん」

久「……ねえ。揺杏って子、女の子だったのね」

一太「あれ、言ってませんでしたっけ?」

久「聞いてないわよ!」バンッ

一太「す、すいません……僕、なにか怒らせるような事してしまいましたか……?」

久「怒ってない!」プンプン

一太(絶対怒ってるよ……)

書記(副会長は鈍感だから……)

会計(ファミチキください)

書記(こいつ、直接脳内に!?)

久(思わぬダークホースがいたけど、大丈夫。その揺杏って子は北海道)

久(昔はどうか知らないけど、今は私の方がアドバンテージがある)

久「ふ……ふふふ……あはははは!」

みんな(会長……疲れてるのかな……)



秋 有珠山高校


爽「というわけでユキをプロデュース!妥当はやりん!」

揺杏(麻雀か……それなら竹井久と大会で会える)

揺杏(そいつを倒して証明してやる……私がいっくんに相応しいんだって)

揺杏「ふ……ふふふ……あはははは!」

成香「揺杏ちゃん怖いです……」

誓子「きっと徹夜でユキの服を作ってて疲れてんるだよ」




「各々の想いを乗せ、物語は一年後、インターハイに向かっていきます」

「この三人の物語の結末がどうなるかは、ただの道化の私には知る由はありません」

「この続きを見たければ、この扉の向こうにどうぞ」

「それでは、また会いましょう」

「……」

「……」

「漫ちゃん、もうライト消してもええで!」



上司と麻雀してくるから中断

勝ってきた。続き投下

夏 北海道


『県大会優勝は、有珠山高校に決定です!!』

成香「やった……やりました!」

誓子「成香が五万点失点時はもうダメかと思ったけど、揺杏が怒涛の勢いで取り返してくれたおかげね……揺杏?」

揺杏(これで全国にいける……竹井久に、会える!)



全国会場


咲「そんなわけで、私は麻雀部に入部して、なんなかんやすったもんだあって全国大会に来ました」

咲「独白終わり」

咲「それにしても……ここどこ……?」

京太郎「咲!」

咲「京ちゃん!」

京太郎「まったくまた迷子になって……みんな心配してたぞ」

咲「ごめんなさい……」



京太郎「咲を見つけてきました」

咲「ごめんなさい……」

まこ「すまんのう京太郎」

京太郎「いえ。迷子のこいつを探すのは慣れてますから」

和「仲がいいんですねお二人は」

咲「えへへ……。私が迷子になっても、京ちゃんは絶対見つけてくれるんだよ!」

京太郎「それより迷子にならないようにしろよ」

優希「流石は幼馴染だじぇ」

久(幼馴染、か……)

久(私が迷子になったら、一太くんは私を見つけてくれるのかしら?)

久(それとも、幼馴染の揺杏って子の方に行くのかしら……)

まこ「おいどうした?しけたツラしおってからに」

久「ごめん……なんでもないわ」

久(一太くんは生徒議会の仕事で長野にいる……応援、来て欲しかったな)

久(ま、嘆いても仕方ないか)

久「みんな、行くわよ!」

「「「はい!!」」」

清澄高校


一太「会長、大丈夫かな……」

書記「副会長、さっきからそればっかりですね」

会計「そんなに気になるなら仕事はやっておくから、東京に応援に行ってもいいよ?」

一太「うーん、それは気がひけるんですよね。でもやっぱり直接見に行って応援したいな……」

書記「とりあえずテレビの中継見ましょう」ポチ

いちご『そんなん考慮しとらんよ……』

会計「うちと同じブロックの姫松高校が進出か……」

書記「清澄が進出したら、次の試合はこの名門姫松が相手になるんですね」

一太「それだけじゃないですよ……二回戦からはシード校も入るから、永水女子も相手になります」

『Bブロック一回戦!清澄高校中堅竹井久が他校をとばして二回戦進出です!』

会計「すごい!」

書記「流石会長です!」

一太「久さん……!」

書記「次のうちの高校の対戦は明後日でしたっけ」

会計「じゃあテレビ消して、仕事に戻りましょ……」

一太「待ってください!」

会計「?」

『有珠山高校岩館揺杏選手、怒涛の勢いでアガっています』

『すごい!』プンスコ

一太「ゆ……揺杏?どうして麻雀を……?」

書記「揺杏って副会長の幼馴染でしたっけ」ヒソヒソ

会計「うん。会長のライバル。ここは……」ヒソヒソ

会計「副会長、東京に行ってあげて」

一太「え……?」

会計「今回はよかったかど、会長はテンパりやすい性格だから……それに、明後日には名門姫松の愛宕洋榎やシードの永水女子を相手にしなきゃいけない」

会計「きっと会長は心細くなるはずだから、行ってあげて」

副会長「……わかりました。後のことはよろしくお願いします!」ダッ

会計「……行ったね」

書記「なんで焚きつけたんですか?」

会計「だって修羅場になりそうで面白そうじゃない」

書記「この人……」

翌々日


一太「さて、会場に着いたけど……僕は誰を応援すればいいんだろう」

一太「久さんには勝って欲しい……けれど、もちろん揺杏にも勝って欲しい」

一太「……どうしよう」

一太「とりあえず二回戦はどっちも別のブロックだ。両方応援しよう」



一太「観客席はこのあたり……?」

咲「ここどこ……?」

一太「あれ……宮永さん?」

咲「え……学生議会副会長さん?どうしてここに?」

一太「会長を応援したくて東京に来たんです。それよりどうして控え室にいないんですか?」

咲「トイレに行こうとしたら道に迷っちゃって……」

一太「はあ……。とりああず見取り図は入り口でもらいました。選手控え室はこっちですよ」

咲「あ……でもそれより、会場に行ってあげてください!」

一太「え……?」

咲「部長の調子がおかしいんです!でも、副会長が来てくれれば、きっと元に戻りますから!」

一太「久さんが……?でも流石に対局中に部外者が入るのは……」

咲「今は休憩時間だし、清澄の制服を着てるから誤魔化せると思います。行ってください!」

一太「久さんが……でも宮永さんを放っておくわけにも」

咲「私なら大丈夫です。きっと見つけてくれる人がいますから」

咲「だから、副会長さんは、部長のことをお願いします」

一太「……わかりました」ダッ

会場


久(ふう……。参ったわね)

久(私、今すごく心細いわ……私って、こんなに弱かったのね)

久「……助けてよ……私を見つけてよ。一太くん」ボソ


一太「ーーーーーー呼びましたか?」ゼエゼエ


久「一太くん!?どうしてここに……」

一太「久さん達の応援に来たんです……。そしたら、宮永さんが久さんの様子がおかしいから、行ってあげてくれって……」ゼエゼエ

久「それで走ってきたの……運動得意じゃないのに、こんなに息を切らして……」

一太「ふぅ……久さん。久さんがプレッシャーを感じているのはわかります」

一太「けれど、僕達は久さんに、楽しんできて欲しいんです」

一太「だから、気負わずに、いつも通りに打って、麻雀を楽しんでください」

久「一太くん……そうね。麻雀を楽しまないと」

一太「いつも通りの久さんの顔に戻りましたね」

一太「それじゃあ、休憩時間が終わりそうなので僕は行きますね」

久「ええ……。一太くん」

一太「?」

久「ありがとう」ニコッ











洋榎「うちら空気やな」

胡桃(羨ま……気持ち悪い!)

春「……」ポリポリ

対局終了

久「ただいまー!」キョロキョロ

まこ「おう、お帰り。最初は危うかったけど、なんとか挽回したのぅ」

久「ちょっと色々あってね」キョロキョロ

久「それで、一太くんは?」キョロキョロ

京太郎「有珠山の幼馴染も出場してるからってそっちに行きましたよ」

久「………………は?」



揺杏「ふー。なんだよ風神って。中学生かっつーの」

一太「相変わらずの悪態だね、揺杏」

揺杏「い、いっくん!?どうしてここに!!」

一太「それは僕のセリフだよ。うちの会長をテレビ中継で見てたら、揺杏がでてきたんだから驚いたよ」

一太「いつから麻雀部に入ったの?」

揺杏「あー、それは私の後輩の雀アイドルプロデュース計画というか……」

一太「よくわかんないな……でも麻雀始めたなら、どうして僕に教えてくれなかったんだい?」

揺杏「それは、なんつーか……あんたに報告しといて負けるとこ見られたら恥ずかしいし……」

揺杏(特に、竹井久にもし負けたら、そんな姿見られたくないし……)

一太「そういうところ、相変わらずだね」

揺杏「う、うっさい!」

一太「とにかく揺杏が元気そうで安心したよ」

一太「それじゃあ、僕は清澄の控え室に戻るよ。同じ学校の応援だって言ったら通行許可証貰えたしね」

揺杏「え……だめだめ!それはだめ!」

一太「え?」

揺杏「せ、せっかく久しぶりに会ったんだからどっか遊びにいこうよ!」

一太「いいけど、有珠山のみんなを応援しなくていいの?」

揺杏「大丈夫!この点差でユキと爽なら負けるわけないから!」

一太「うーん、まあ揺杏がそう言うならいいけど」

揺杏「よしじゃあ行こう!」



清澄控え室

久「有珠山……テンパってて見落としてたわ……しかも岩館揺杏もいるなんて……」ブツブツ

優希「部長、帰ってきてからあんな感じだじぇ」

まこ「放っておいてやりんさい」

翌々日 Bブロック準決勝戦 中堅戦


ビュウ

ゴッ

明華(今の私の登場……凄くカッコいい!)牌キャッチ

久「……あなたが岩館揺杏さんね。一太くんがよく話してたわよ」

揺杏「どうもー。清澄のぶちよーさん。私も"いっくん"からたまーにあんたのこた聞いてたよ」

久「へ、へぇ……いっくんねぇ……」ワナワナ

揺杏「ま、幼馴染だし~。昔からの付き合いだから、そう呼ぶ仲なんだよね~」

久「そう……。一太くんはいつも私を助けてくれるからとても感謝してるわ」

久「一昨日だって休憩中にわざわざ私のところまできて励ましてくれたしね~」

揺杏「はあ!?そんなこと聞いてないんですけど!?」

久「いや~愛されてるわ~」

揺杏「へ、へぇ……」ワナワナ

明華「(´・ω・`)」

洋榎「……串カツ食うか?」

明華「(´;ω;`)」コクン



揺杏(さーて、とは言ったものの持ち点がめっちゃ少ないな。竹井久はまず差し込みしてくれないだろうし)

久(色々思う事はあるけど、私情抜きでも有珠山には差し込まないわ。清澄が二位でアガれるなら、有珠山はトンでくれても構わない)

明華(私には風を守りに使う方法がある!)パチ

久「それロン」

明華「(´・ω・`)」



揺杏(マズイな……焼き鳥状態)

明華(今度は風を離しませんよ)

久「ツモ!」つ風牌

明華「(´;ω;`)」

中堅戦 終了


アリガトーゴザイマシター

揺杏(最後の差し込みだったのか……焼き鳥回避できたと思って舞い上がっちゃって……バカみてぇ)

揺杏(……こんな姿、いっくんに見られたくなかったな)グスッ

久「……」

久「ねぇ、ちょっといいかしら?」

揺杏「……なんだよ」

廊下


久「はい、コーヒー」

揺杏「……いらないよ」

久「年上からの好意は素直に受け取っておきなさい」

揺杏「……ありがとう」ボソッ

久「あなた、私と戦うために全国まできたの?」

揺杏「ちが……くはないよ」

揺杏「みんなの目的は別だったけど、私はそれに乗っかって、あんたに麻雀で勝ちたくて、頑張ってきたんだ」

久「そう……。やっぱり、一太くんが私にはとられると思ったから?」

揺杏「……」コクン

久「……今回は相手が悪かったけど、この大会でのあなたの配牌は見させてもらったわ」

久「凄い想いを感じた。絶対に諦めないっていう気持ちで、不利な配牌でも、点差でも……強く立ち向かっていた」

揺杏「なんだよそれ……同情かよ」

久「違うわよ。単純に羨ましいの」

久「二回戦で、私はプレッシャーで心が折れかけていたから……。決して諦めないで強い情熱で戦えるあなたが、本当に羨ましかった」

揺杏「……私だって、何度も心が折れかけてたさ。それでも諦めなかったのも、あんたを立ち直らせてくれたのも……あいつのお陰だよ」

久「そういう事ね」

久「昔一太くんが言ってたわよ。私とあなたは似てるって」

揺杏「……ま、同じ男を好きになるくらいだからな」

久「そうね。私たち案外いい友達になれるんじゃないかしら?」

揺杏「それでもいっくんは渡さないよ」

久「奇遇ね。私も同じ気持ちよよ」

揺杏「……」

久「……」

揺杏「……プッ」

久「……ふふふ」

久揺杏「「あはははは!」」

揺杏「それじゃ、私はユキの応援に行ってくるかねと」

久「私も自分の控え室に戻るわ。和を見届けないといけないからね」

揺杏「決勝に上がるのはうちらだよ」

久「私たちも負けないわよ」

一太「おーい揺杏……あれ、久さん?」

揺杏「いっくん!」

久「あら、どうやらあなたを探してたみたいね……妬けちゃうわ」

一太「二人とも何をしてたんですか?」

揺杏「なんでもねーよ」

久「そ。なんでもないわ」

一太「……?いつの間に2人は仲良くなったんですか?」

揺杏「別に仲良くねーよ」

久「ええ。同じ獲物を狙う敵同士よ」

一太「???」

久「それじゃあ一太くん。清澄の控え室に戻りましょうか」

揺杏「はあ!?いっくんは私を探しにきてくれたんだろ!?」

久「あら、あなたもう大丈夫じゃない。ほら行きましょう一太くん」ギュッ

揺杏「~~~!!」

一太「え、えっと……」

久「一太くん!」

揺杏「いっくん!」



「「どっちを選ぶの!?」」





カンッ

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