少女「お肉おいしい」 (42)
少女「お肉は生で食べた方がやっぱりおいしいよね?」モグモグ
パチパチと爆ぜる焚き火を囲みながら、少女は満足気な笑みを浮かべ言う。味付けすらしていない、血が滴る生の肉なのに、この少女にとったら極上の一品となるようだ。
剣士「いや俺、生じゃあ肉食えねえから。んな同意求められても答えようがねえよ……うん、まだ焼けてねえな」
俺はそんな少女を尻目に、遠火で焼いている肉の状態を注視する。今日は昼食べられなかったから、腹が空っぽなのだ。できる限りの最高にうまい状態で食いたい。
少女「えー、生で食べたことないのはぜったいにもったいないよ!剣士も食べようよー」グリグリ
……このガキはなにしやがる。
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剣士「生の肉を俺の頬に押し付けるな!生臭え!!」
生肉にまだこびり付いていた血が俺の顔に塗りたくられる。物凄く気持ちが悪い。こいつ、ボコンと殴ってやりたいが、そんなことをしたら十中八九泣きやがる。泣いたこいつをあやすのは、この顔を洗うことなんかより面倒くさい。
少女「さきっちょかじるだけでも、ほら」グリグリ
そうやって俺が怒らないでいりゃあ、調子に乗るし。でも怒ったとしても、このくそガキは懲りずにまた悪さする。……いつか本当に矯正させなきゃな。
剣士「食ったら腹こわすんだよ!も一つ言わせてもらやぁ、魔物の肉を生でなんて絶対に食いたくねえし!」
少女「魔物差別だー、良くないぞ?」グリグリ
そうやって楽しそうに言われても、説得力なんて無い。
剣士「そういう問題じゃねえだろ……」
少女「まあいいけどさー、剣士のお肉真っ黒になってるよー」
剣士「あ、ってあああああああ!?焦げ焦げじゃねえか!くっそお、今日の夕飯結局パンだけかよ……」
少女の言葉に、少女に向けていた顔を肉に向き直す。その肉は、もはや肉とは言えず、焦げの塊となっていた。あのやりとりのせいで、注意が完全にそれていたことが敗因か。
少女「……まだお肉ちょっとあるよ?」
あんまりにもトーンを下げて言う俺に、さすがのくそガキも罪悪感を感じたのか、少女はおずおずと言った体で、自分の食べさしの肉を差し出す。
剣士「っけ、別にんなもんいらねえよ。それより、お前が腹一杯じゃなきゃ俺が食われそうだし」
言わずもがな強がりだ。だが、半分は本心でもある。さすがのこいつも俺は食わないだろうとは思いはするが、万が一とか魔が指してとか、そういった事態もあり得る、かもしれない。
少女「剣士はちょっと筋肉もりもりすぎて、あんましおいしくなさそうだから大丈夫!」
剣士「……鍛えておいて良かったよ」
ぐっとサムズアップして、堂々とのたまう少女に、もはや腹すら立たなかった。
こんな感じの話を少しずつ書いていきます。基本ほのぼのです。地の文は読み飛ばしてもらって構いません。
文章力が低い初心者ですが、色々とよろしくお願いします。
剣士「おい少女、早く起きろ、火の番の交代だ」
木によりかかり眠りこける少女の肩を揺らし、目覚めを促す。
少女「うーん、むにゃむにゃ、朝まで待って~」
だが、だめ。今日は一段とこいつの眠りも深い様だ。
剣士「こいつは……はあ、また今日も少ししか眠れねえのか。っけ、まあ次の町までもうすぐだし、別にいいけどよ」デコピン
少女「あだ……うーん」モゾモゾ
結構強めにデコピンなんてしてみても、少し顔が歪むのみで、こいつの眠りを妨げることなんてできない。
剣士「はあ、こんなくそガキ連れての旅とか、自殺もんだっての。あー、働きもんのネエちゃん、いやこのさい働きもんなら男でもいいから、パーティーに来てくんねえかな……来ねえよなあ」
夜空に向かって愚痴をこぼすが、結局はこぼすだけだ。こいつを抱えていたら、誰かを仲間にすることができない、なんてことはわかっているし、もし仲間が増えても、そいつに俺がしてやれることなんざ何も無い。すぐに出て行くだけだ。
剣士「本当に、なんでこんな奴を連れて行くことになっちまったんだか」
少女をちらりと見て、ため息。まあ連れて行くと決めてしまったのだ、今更その誓いを破るのは、男が廃る。
剣士「あー、眠てえ……」
目覚めに少し、素振りでもするか。
本日の投下は終わりです。
おつきあいありがとうございます。
少女『え!?本当にこんなにいっぱいのお肉食べていいの!?』
わたしの目の前には、皮が剥がされた猪牛の死体の山が出来上がっていた。うわあ、見ているだけで涎が止まらない。
剣士『ああ!いっぱい食べていいんだぞ!まだまだいっぱい絞めてくるからな!!』
そしてわたしの横にはすっごく爽やかな剣士が居た。いつものちょっと怖い顔は解されていて、優しい顔をしている。
少女『どうしたの、剣士、今日はすっごい優しいね!!』
剣士『いつもいい子にしている少女のためさ!いっぱい食べて早く大きくなるんだぞ。HAHAHAHAHA』
おお、こんなに笑っている剣士珍しい。あれ?そもそもわたし剣士が笑っている姿って、見たことあったけ?まあいいか。せっかくあの剣士がごちそうをいっぱい用意してくれたんだ。食べなきゃ罰があたっちゃう。
少女『わーい、剣士大好き!いただきまーす』ガブガブガブガブ……
……どれくら食べただろうか、丸々と太った猪牛は、見た目通り脂っタプリで、ものすごくおいしかった。思わずお腹いっぱいになるまで食べてしまった。
わたしはぽんぽんとお腹を叩くジェスチャーをする。この前立ち寄った町に居たおじさんのまねだ。いつもの剣士なら、こんなことしたら呆れた顔で何か言ってくが、今の剣士はただニコニコするだけだった。
少女『わたしもうおなかいっぱい!猪豚とってもおいしかったよ!ありがとうね、剣士』
わたしは笑顔で剣士にお礼を言うけど、剣士は逆に顔を曇らせる。
剣士『あんなに頑張って集めて来たのに、こんだけしか食わねえのか?はあ、ありえねえ……』
剣士の機嫌が目に見えて悪くなる。わたしなにか悪いことしてしまったのだろうか。
少女『どうしたの、剣士?』
剣士『これ全部食わねえのなら、お前とはここまでだわ、じゃあな少女、せいぜい元気でな』スタスタ……
別れの言葉を告げて、わたしに背を向け剣士が歩き出す。
少女『え?ちょっとまってよ剣士、置いてかないでよ。わたしも行くよ、あ、の、残しちゃったぶんはさ、また夜に一緒に食べようよ!!うん、それがいいよ!すっごくおいしい猪牛だったからさ、焼いても絶対おいしいよ!』
そんなわたしの止める声が聞こえていないのか、剣士は黙々と歩いて行く。わたしも遅れる訳にはいかないと走るが、何故か剣士に追いつけない。
待って、待って!!わたしは叫ぶが、剣士は止まらず、どんどんと離れて行く。そうしてとうとう、剣士も見えなくなって――――
少女「剣士待ってよぉぉ……」ドンッ
泣きながらがばり、と掛けられていた毛布を振り払い、わたしは起き上がる。剣士は、居た。隣で眠っている。確認したまま剣士に飛びつく。
剣士はわたしの、もはやタックルと言って良い飛びつきの衝撃で目を覚ました。
剣士「んあ、ふぁあ、眠っちまってたか……ちょっと休むだけだったつもりなんだが……で、どうした少女」
わたしがくっついていながら、伸びをして眠気を追い出す剣士に、泣きながら置いてかないでと繰り返す。
少女「わたしもっとお肉いっぱい食べるから置いてかないで、もっともっと食 べてみせるからぁ!」
剣士「これ以上食うつもりかよ!?勘弁しろよ、おい!ってか置いてくだのなんだのは、どっから来た話だよ」
わたしを落ち着かせるためか、剣士はわたしの頭を撫でながら、普段より幾分も優しい声音で話す。それがさっきの剣士の様子を思い出させ、余計涙が止まらなくなる。
剣士「あー!面倒くせえ、理由を話して見やがれってんだ!」
少女「だって、剣士が、いっぱい猪牛を狩って来てくれたのに、わたしがいっぱい残しちゃったから、わたしのこと嫌いになって、どっかいっちゃって」
つまりながら説明するわたしに、剣士はどんどん呆れ顔になって行った。
剣士「そりゃ、ただの夢じゃねえか。てかお前は、俺を普段どう思っていやがるんだ?」ポン
頭を優しくはたかれる。
剣士「俺はお前を置いてどっかにいったりしねえから、安心しな、くそガキ」
少女「本当に?パパとママ見たいに、どっかにいっちゃたりしない?」
がたがたとみっともなく震える。こういう時は、だめだ。思い出したくないことに限って、思い出してしまう。
そんなわたしの様子に、剣士は、ため息を吐いた。
剣士「しっつけえな。どこにも行かねえつってんだろうが。さっさと安心でもなんでもして、離れろ」
そう言った剣士はいつものぶっきらぼうなもので、優しさとかまるで見えて来ない物言いだったけど、なんでかわたしは、その剣士の様子に、とても安心してしまった。
少女「グス……やっぱり剣士は、ちょっと怖いくらいがいいね」
剣士「たまーに優しくしてやりゃこれかよ……」
ほんの少し、傷ついた様な顔をしてみせる剣士に、わたしはけらけらと笑う。涙はもう、流れてはいなかった。
どうでもいい設定・・・猪牛とは、古の魔導士が、おいしそうだからと悪ふざけで作ったキメラが、その後野生化、繁殖したモノ。味は結局、ただの牛肉である。
剣士「はあ、やっとこ森を抜けたか」
木々の隙間から漏れ出る弱々しいモノではない、力強い日の光を浴びながら、俺は大きく伸びをする。思っていたより早く森を抜けることができた。この分なら夕日を拝む前に次の町へと辿りつけるだろう。
少女「ふわあ、お日様眩しい……」パチクリ
俺より少し遅れて森の中から出て来た少女は、日の光の眩しさに、目を頻りにしばたたかせている。
こいつが朝に起こした騒動のせいで、朝から俺は疲れているのだ。早く町の宿へと腰を落ち着かせたい。ったく、悪い夢を見たからってあんなに取り乱すとは、俺が思っていたよりガキだった。
剣士「ほれ、あの丘を幾つか超えりゃあ、町が見えてくる筈だ。そうすりゃ今日の寝床は固い木なんかじゃなくて、ふかふかのベッドだぞ」
俺の言葉に少女は眼を輝かせる。俺だって、ベッドに眠れると思うと、勝手に脚が軽くなる。まだちっさいガキのこいつにとったら、まさしく極楽への誘いだろう。
少女「やったあ!今夜はぐっすり眠るぞぉ!!」ピョンピョン!!
ぴょんぴょん態とらしく見えるくらいに飛び跳ねて喜ぶ。こういうのをなんだったっけか、あざといというんだったか。
剣士「その位にしとけ、町につくまえにお前がばてたとか、笑い話にならねえ」
さすがにこの程度で、このガキがつぶれるとは、全く思っちゃいないが。
少女「えー、その時は負ぶってってよー」
このガキ、また調子に乗りやがる。
剣士「バカ言うな、んな疲れること、やりたかねえよ」
普段、いくらガキだガキだと言っていても、こいつも俺の旅に着いて来ることができる位には体力が着いているのだ。ここから町までなんて、そう苦でも無い筈だ。
幼女「剣士のいけず~。いいもんだ。わたしがさきに町について、のろまな剣士を笑ってあげるよーだ」タタタ……
ほれ見ろ。疲れなんてみじんも感じさせない早さで、駆け出す少女を眺める。あのガキにバカにされるのは、勘弁して欲しいな。
剣士「っけ、待ちやがれこのガキ!」
俺は負けじと駆け出した。
今はここまでです。また書き溜め次第投下します。おつきあい、ありがとうございます
少女「いえーい、ベッドいえーい!!」ボスン
わたしは勢いよくベッドへフライングボディープレスをかました。ああ、清潔なシーツに包まれて、これだけで幸せな気分になる。
剣士「あんまりはしゃぎすぎて、モノ壊したりとか、すんじゃねえぞ。弁償する金とかねえからな」
少女「わかってるよーそんなことー」
苦言を呈してくる剣士に、ふやけた返事をしながら、ベッドの上をごろごろ転がり回る。剣士は本当にわかってんのか?なんてぼやきながら、荷物を部屋の片隅に固めると、隣のベッドに腰を下ろした。
剣士「うお、へへ。安宿にしちゃあ、なかなかいい具合じゃねぇか。気に入ったぜ」
にやけながら剣士はいう。強面がにやけないでよ。怖いよ。言うとほんの少しだけ、傷ついた顔をするから、めったに言わないけど。
少女「ああ、このベッドの上でお肉をお腹一杯食べられたら、最高なんだけどなあ」
ぽそりとしたわたしの呟きに、剣士はまた呆れ顔。そんなに呆れ顔ばかりしていたら、その顔で固まっちゃうよ?いやもう固まってるかも……。
剣士「お前ってやつぁ、本当に食うこと大好きだよな」
少女「うん、大好き!お腹いっぱいになると、幸せって感じになるし」
剣士「旅止めたら、絶対太るな、お前」
剣士の無遠慮なものいいに、流石のわたしもかちんと来ました。
少女「太らないもん!動きまわるから太らないもん!!」
枕を思いっきりよく投げつける。わたしの全力だったけど、剣士にしたらゆっくりのへろへろだったみたいで、空飛ぶ枕は簡単に、剣士のでこぼこな手の中に収まる。
少女「それに太らない様に剣士がわたしを止めてくれればいいんだよ!うん、それがいい」
名案を思い浮かぶ、うんうんと頷くわたし。そうすれば太っても剣士に責任を押し付けられるしね!そんなわたしに、剣士は面倒くさげな眼を向ける。
剣士「俺は、旅を止めてもお前と一緒なのか?」
少女「え?違うの?」
きょとんと問い返す。わたしとしては当たり前のことだと思っていたけど、剣士はまるでそんな気は無い、と言いたげではないか。
少女「そんなー、意地悪言わないでわたしを養ってよ剣士~、お肉いっぱい食べさせて~」
剣士「ああ、俺すげえお前をほっぽり出したくなったわ」
そんなこと言いつつ、実際にはそんなこと絶対しない剣士が、わたしは大好きです。
少女「そういえばさ、なんで普通の人は生のお肉食べるとお腹壊しちゃうの?」
夕飯の席で、あんまりお肉が入っていない、野菜ばかりの、わたしにとってはなにがおいしいのかわからないスープを飲む剣士に、丸焼きの鶏に齧り付きながら、前から疑問に思っていたことを投げかける。
うん、良い歯ごたえ。焼いたお肉も、たまに食べる分にはおいしいな、とか考えながら、答えを待つ。
剣士「それは、あーっと、確かな」
剣士は大慌てで頭に手をあててグリグリなんてしてみせて、何かを必死に思い出そうとする。
あ、やっとなにか思い出したようだ。剣士は一言一言、あー、だとかうー、だとか、唸りながらも、ゆっくりと語り出した。
剣士「まず、肉を食うには動物を殺すだろ?」
少女「うん。当たり前だよね」
こくり、とわたしは頷く。
剣士「動物を殺すってことは、死の不浄が、その動物の死体に降り掛かるってわけだ」
剣士「死体に死の不浄がこびり付いたって証拠に、死体には死神の使いっつわれている、蠅がたかる様になるよな」
……おおう、蠅がたかって、蛆がわいている死体を思い出してしまった。わわ、頭をぶんぶん振って振りはらう。うう、まだご飯中なのに。軽率にこの話題を振ったちょっと前の自分を呪う。
わたしのそんな様子に不審そうな眼をするけど、剣士はすぐに流して語りを続けた。
剣士「でだ、死の不浄ってのは、人の体に悪影響を及ぼす。まあ具合いを悪くさせるってこった。だから腹を壊したりする」
だんだんとハッキリ思い出して来たのか、剣士の語りは饒舌なものとなっていた。
剣士「で、その死の不浄を打ち払うために、あらゆる不浄を浄化するって言われてる、火で焼くことが必要になるってわけよ。だから俺達は肉を焼いて食う。わかったな?」
そこまでしてお肉を食べる必要があるのかな?と思ったけど、まあおいしいから、しょうがないよね。
そこまできて、もう一つ、わたしは疑問が浮かんだ。
少女「じゃあ腐ってても、火を通せば大丈夫なの?」
剣士「いや、腐ったもんは死神が完全についちまったもんだから、どうあがいても食えねぇ」
少女「ふーん、剣士って、以外に物知りだったんだね。脳まで筋肉だと思っていたから、ものすっごく意外だよ!」
わたしとしては全力で褒めたつもりなんだけど、何故か剣士は微妙な顔を浮かべる。なんでだろうね?
剣士「っけ、こんなもん誰でも、それこそガキでも知ってらぁな」
まあそんな微妙な顔もすぐに変わって、またスープを飲み始める剣士。あーうめえとか言ってるから、ちょっとすくって飲んでみたけど、うーん、やっぱり何がおいしいかわからない。
少女「まあ、生じゃだめな理由はわかったけど、それでもやっぱりお肉は生が一番だよね?」
剣士「やっぱお前はそれかよ」
とは言っても、わたしにはその不浄とかいうものに悪影響を受けない、そういう『種』なので、おいしく生のお肉を食べさせて頂きます!
わたしは丸焼き鶏の最後の一口を飲み込んだ。
今日はここまでです。なんで生肉を食べたら腹を壊すのかに、ファンタジー的理由を付けてみました。
とは言っても、実際の理由は現実と同じです。ただこのssの世界の住人たちはそう解釈している、ということです。
また書き溜め次第投下します。おつきあいありがとうございます。
そういえば、キャラスペックの需要はありますか?
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