【シュタゲ×ゴルゴ13】岡部「ゴルゴ13?? なんだそれは」 (66)

※初スレ立てです。おかしな所があれば指摘して貰えると有り難いです

※一応ネタバレ注意

※シュタゲとゴルゴのコラボです

※展開により台本形式だったり地の文がでてきたりします。ご容赦下さい

※途中まで書き溜めあり。随時更新していきます

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1416319682

世界線変動率…5.6513・・・

ーー大檜山ビル2F・未来ガジェット研究所ーー


岡部「よくぞ集まってくれたラボメン諸君よ!」

岡部「それではッ!これより第565回円卓会議を開催するッ!」バサッ

岡部「進行役は無論この俺、ラボメンNo.001!狂気のマッドサイエンティスト!鳳凰院k「ちょっと岡部!」

岡部「って、ぬぅあんだ助手よ!」

紅莉栖「助手じゃない!それより一体なんなのよ、いきなり全員集まれーだなんて」

岡部「どぅあから!これからその話をするのではないか!黙って人の話を聞く事も出来んのかこのセレセブは」

紅莉栖「セレセブ言うな!」

紅莉栖「だいたいコッチにだって予定ってものがあるのよ。それを急に大事な話があるっていうからワザワザ来てやってるっていうのに」

紅莉栖「いつもの厨ニ病に付き合わされるんなら私は帰るぞ!」

岡部「ほぉう、ぼっちねらーにそぉんなに大事な予定なぞあったのか?どうせvipでおっぱいうpでもするつもりだったのであろう?」

紅莉栖「こ///このHENTAI!そんなことせんわ!」

ダル「牧瀬氏のお、おっぱ」ハァハァ

紅莉栖「橋田は死ね!氏ねじゃなくて死ね!」

岡部「フン、ダルよ。そんなにクリスティーナの貧相な胸部が見たいのならそこの壁でも眺めておくのだな」

紅莉栖「ちょっとそれどういう意味⁉︎」

岡部「さぁてな、文字通り自分の胸にでも聞いてみるがよかろう」ニヤニヤ

紅莉栖「よーし分かった、貴様は余程開頭されたいらしいわね」ガタッ

まゆり「あわわ、クリスちゃーん、ちょっと落ち着いて、ね?」プルンプルン

紅莉栖「くっ…」

岡部「まゆりよ、助手の奴にはどうやら逆効果のようだぞ、ククク」

ダル「相手をなだめつつ煽るだなんて、まゆ氏、恐ろしい子!」

まゆり「え~⁉︎ まゆしぃはよく分からないけどごめんねぇクリスちゃん」

紅莉栖「…いいのよまゆり、悪いのはこのHENTAI共なんだから」

岡部「フフン、いいザマだなぁ貧乳メリケン処女よ」

紅莉栖「うっさい自分だって童貞の癖に!それに、私だって脱いだらそれなりには…」

フェイリス「凶真凶真~」

岡部「ん?なんだフェイリスよ。お前もクリスティーナに残酷な現実を突き付けようというのか?」

フェイリス「ニャフフ、それもいいけど、今日はお店抜けて来てるからあんまり時間がないのニャ」

フェイリス「だから大事な話っていうのを早く聞かせて欲しいんニャけど…、その夫婦漫才はいつまで続くのかニャン?」

岡部「な⁉︎ 夫婦などとバカな事を言うなこの猫娘がッ…って、クリスティーナ!お前何を赤くなっt」

紅莉栖「め、め、夫婦って、ちょ///」

ダル「もう慣れたお。壁を殴る気にもならないお」

ルカ子「喧嘩するほど仲が良いっていいますしね。ちょっと羨ましいな…」

まゆり「なんだーまゆしぃは本気で心配してしまったのです」

フェイリス「二人は前世で血の契約を交わして将来を誓い合った仲なのニャン!」

萌郁「……」カチカチ

岡部「えぇぃうるさぁぁい!この俗物めらがッ!」ピロリ-ン

岡部「…メールなら見んぞ指圧師よ」ピロリ-ン

萌郁「……見て、ほしい」カチカチ

岡部「助手もいつまで惚けているのだ!このスイーツ(笑)めがッ」ピロリ-ン

紅莉栖「…夫婦……私とお、岡部が…ふ、ふひひ」ブツブツ

岡部「…ダメだコイツ、早くなんとかしないと…」

ダル「それで、今日はいったい何の話なんだお?例の人工衛星の件?」

岡部「ククク…よくぞ聞いてくれたなダルよ。流石は『我が頼れる右腕』(マイ・フェイバリット・ライト・アーム)」

ルカ子(牧瀬さんの時と反応が全然違う…)

岡部「当然例のラジ館の件も重要事項ではあるのだが…、今日の議題は別件だ」

岡部「それでは次なるミッションが迫っているラボメンもいるようであるし早速本題に入るとしよう」

岡部「本日皆に集まって貰ったのは他でもない!なんとこの未来ガジェット研究所に新たなる戦士を招聘する事と相成ったのだ!」

ダル「え?まじで⁉︎」

フェイリス「ニャンと⁉︎」

ルカ子「本当ですか⁉︎」

萌郁「……」カチカチカチカチカチカチカチカチ

まゆり「んー?どうゆう事かなぁ?」

ルカ子「まゆりちゃん、新しいラボメンの人が来るんだよ!」

まゆり「えー⁉︎本当に? そうなのオカリーン?」

岡部「いくぁにもぉ」ピロリ--ピロリ-ンピロリ-ン

まゆり「うわぁやったぁ!ねぇねぇオカリンどんな人なのかな?コスプレ好きな人だとまゆしぃは嬉しいのです」

ダル「ロリ巨乳金髪ツインテキボンヌ」

萌郁「……」カチカチカチカチ

岡部「フフッ…それでは早速召喚するとしよう」ピロリ-ン

岡部「出でよ!地獄の底より蘇りし魔弾の射手!」


ガチャリ


ゴルゴ13「……」ヌン!



一同「「「「「 」」」」」

岡部「ククク…フゥーハッハッハッ!分かる!分かるぞ~諸君!」

岡部「見よ!この佇まいを!その圧倒的な威圧感に声すら出まい!この俺、鳳凰院凶真ですら畏怖の念を感じるのだ、余程の訓練を受けた者でもなければこの男の前では正気を保つ事すら難しい」

岡部「そう!この男こそ来るべきラグナロックにて、この狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真の尖兵として機関を屠るべく闇より遣わされしエインヘリャル!最後の魔心兵(ラスト・イーブル・ソルジャー)、その名もデューク・東郷であるッ!」ババ-ン!

ダル「な、ナンダッテー! 」

ダル「…て、いやいやねーよ、ちょ、オカリン」ヒソヒソ

岡部「なんだダルよ」

ダル「流石にマズくね?完全にその筋の人っぽいっつーか、なんだか孤高のテロリストみたいな雰囲気なんだが」ヒソヒソ

岡部「何がマズいのだ?むしろ最高ではないか」

ダル「いや、だって、アレ…」チラッ

まゆり「あれー?カイチュー止まっちゃってるよぉ」

ルカ子「ヒッ…」ガタガタ

萌郁「FBFBFBFBFBFBFB」カチカチカチカチカチカチカチ

フェイリス「ワンワン!」

岡部「まったく…曲がりなりにもラボメンともあろう者共が情けない。見よ!クリスティーナを!流石は俺の助手!この男を前にしても微動だにしておらん!」

紅莉栖「」

岡部「フゥーハハハ!今回ばかりは貴様の事を認めざるを得んなぁ助手よ」

紅莉栖「」

ダル「オカリンオカリン」

岡部「なんだ?」

ダル「アレ、あまりの衝撃に気絶してるものと思われ」

紅莉栖「」

岡部「さて気を取り直して、改めて紹介しよう!本日付けで我が未来ガジェット研究所に配属となったラボメンNo.008、デューク・東郷だ!皆仲良くするように」

まゆり「えーと、ジューク…ボックスさん?」

岡部「東郷!デューク・東郷だ!」

まゆり「うーんと、デューク?」

岡部「東郷」

まゆり「うん、分かったよ」

まゆり「トゥットゥルー♪まゆしぃ☆です、宜しくねーデュー君!」

紅莉栖「まゆり…あんた流石ね」

ダル「まゆ氏のコミュ力が天元突破してるお…」

紅莉栖「コホン、さっきはみっともない所を見せてしまってゴメンなさい。牧瀬紅莉栖です」

紅莉栖「私もラボメンになって間もないんだけど、所長以外みんな良い人達よ。東郷さんもすぐ馴染めると思うわ。これから宜しくね」右手スッ

ゴルゴ「…」

紅莉栖「…」

ゴルゴ「…」

紅莉栖「……?」

ゴルゴ「…」

紅莉栖「……」グスッ

岡部「おい!泣くな助手!」

岡部「デュークよ、仮にもこれから共にラグナロックを戦い抜く仲間なのだ、握手ぐらいしてやったらどうだ?」

ゴルゴ「…」

ゴルゴ「…利き手を相手に預ける形になる握手という習慣は俺にはない」

ダル「シャベッタアアアアアアアアアア!!」

岡部「ちゃかすなダル!…むむ、そうか。それならば仕方ないが…」

ゴルゴ「…」

紅莉栖「…」グスッ

ゴルゴ「…クリス」

紅莉栖「ふぇ⁉︎」

ゴルゴ「今後とも宜しく頼む」

紅莉栖「え⁉︎あ、あの!うん、宜しくお願いします!」ニコッ

ダル「イイハナシダナ-」

岡部(そのあとは皆、デュークが悪いやつではないと分かってくれたのか、ある者は積極的に、またある者は脅えながらではあるものの、彼とある程度打ち解けてくれたようだ)

岡部(極端に無口だし、握手は拒否するし、後ろに立たれるのを異常に嫌がるけれども、そこに目をつむればデュークは基本的に無害な人物であるし、恐らくは素晴らしく頼りになる奴だと思う)

岡部(そんなデュークを加えたこの未来ガジェット研究所はさらなる飛躍を遂げるに違いない!俺たちの戦いは今始まったばかりだ!)

岡部(それにしても…)

まゆり「ねぇねぇデュー君は普段何してるの?きっとまゆしぃよりずっと年上さんだから、お仕事してるのかな?何のお仕事?」

まゆり「デュー君の名前カッコイイねぇ!本名なの?それともオカリンみたいな感じなのかな?もしかして外人さんだったりして!ねぇねぇデュー君!」

まゆり「デュー君てコスプレとか興味あるかな?すごく体が大きいしマッチョさんだからケンシロウコスとか絶対絶対!似合うと思うのです!」

まゆり「ねぇねぇデュー君!」

岡部(まゆり……やっぱりお前は凄いな)

ゴルゴ「……」

岡部(若干デュークが困っているようにも見えるが…)

ルカ子「ちょっとまゆりちゃん、東郷さん困ってるよ」

紅莉栖「そうね、そんなに質問責めにしたら東郷さん可哀想だわ」

まゆり「そっかーゴメンねデュー君。よーし!じゃあまゆしぃがラボの中を案内してあげるのです!」

ダル「東郷氏、無口キャラが桐生氏と若干かぶってる件について」

萌郁「…そんな、こと…ない」

岡部(…まぁ、この調子なら心配せずとも大丈夫か……ん?)

フェイリス「…」ジ-

岡部(フェイリスの様子が…)

ドンドンドン

岡部(おっと、誰か来たみたいだ)

天王寺「おーい岡部!」ガチャリ

岡部「こ、これはMr.ブラウン。確か家賃ならこの前支払ったはずだが」アセアセ

天王寺「うちのバイト来てねーか?急用で出掛けなきゃならなくてよ…て、いたいた」

天王寺「萌郁、という訳でちょっと店番しててくんねーか?休憩中にワリーんだがよ」

萌郁「…」コク

天王寺「じゃ、頼んd……………誰だソイツ?見慣れねー奴だが…」

ゴルゴ「…」

天王寺「おい岡部!誰でも彼でも連れ込んでんじゃねーぞ!綯に何かあったらどうするんだよ!家賃倍にすっぞ!」

岡部「ま、待ってくれMr.ブラウン!デュークは今日からラボメンになった正式な我々の仲間なのだ!」

天王寺「デューク?なんだそりゃ、またお前けったいな名前付けやがって。ちゃんとした名前で呼べねーのか」

岡部「いや、それは違うぞMr.ブラウン、デュークは歴とした彼の本名なのだ。ちょうどいい、あなたにも紹介しよう。本日より我がラボの仲間になったラボメンNo.008、デューク ・東郷だ」

天王寺「ふーん、デューク東郷ねぇ……ん~?な~んかどっかで聞いた事あるような…………」ジロジロ

ゴルゴ「…」

天王寺「!」ピクッ

天王寺「え⁉︎ま、まさか…」ガタガタ

岡部「ちょ!どうしたのだMr.ブラウン⁉︎急に顔色が……」

ゴルゴ「…」

天王寺(あ、あのカミソリのような目…一部の隙もない身のこなし……ま、間違いねぇ)

天王寺「ご、ご、ゴル…」

ゴルゴ「…」ギロッ!

天王寺「ア、アヒャ、お、俺は、な、何も知らねぇ!」ガタガタガタガタ

天王寺「何も知らねぇんだぁぁぁぁーー」ガチャン! バタバタバタ…

岡部「ちょ⁉︎おーい!Mr.ブラウーン!!…て、行ってしまったか、いったい何だと言うのだ急に…」

ゴルゴ「…」

ダル「ブラウン氏のあんなに慌てたところ、初めて見たお」

紅莉栖「そうね……いったいどうしたのかしら?」

まゆり「多分急いでたんじゃないかなー?用事があるって言ってたし」

ルカ子「それでもちょっとおかしかったよね…」

フェイリス「…」

岡部「まぁいい。Mr.ブラウンがおかしいのは今に始まった事ではないしな」

紅莉栖「多分店長さんもアンタにだけは言われたくないと思うわ」

萌郁「……あの、岡部…くん」

岡部「どうした指圧師」

萌郁「店番…行かないと」

岡部「おぉ!そうだったな。取り敢えず今日の議題は以上だ。心置きなく行くがよい」

萌郁「…」コクン

萌郁「…それじゃ」ガチャ

フェイリス「そろそろフェイリスもお店に戻るニャ」

ダル「えぇ~フェイリスたんも居なくなってしまうん?」

フェイリス「残念ニャけど、ご主人様たちを放ったらかしには出来ないのニャン☆」

岡部(そう言うとフェイリスは本物の猫のようにノビをしながら立ち上がるとラボのドアへと向かう。そしてすれ違い様、俺にだけ聞こえる声で)

フェイリス「あの男に気を付けて」

岡部(短くそう言うと、いつもの調子で愛想を振りまきながらラボを後にした)

岡部(「あの男」?誰のことかは聞かなくても分かる。「気を付けて」?いったい何に?)

岡部(俺はチラリと壁を背にして立つ男を伺う)

岡部(超然とした佇まい。何事にも動じることのなさそうな鋭い目つき。確かに只者で無い事ぐらい俺にも分かる。しかしフェイリスは「気を付けて」と言った)

岡部(普段の賑やかさに惑わされがちだがフェイリスの人を見る目は確かだ。「チェシャ猫の微笑(チェシャー・ブレイク)」というアイツの特殊能力が本物である事を俺は知っている)

岡部(確かにデュークが何者であるのかを俺はまだ知らない。しかし俺たちに害をもたらす存在だとは思えない。それだけは分かる。いや、信じていると言った方が正しいのかもしれないな)

岡部(今朝のデュークとの出会いが俺の脳裏にチラ付く。そうだ、俺はデュークの事を信じるべきだ。もちろんフェイリスの言う事だって疎かにするつもりもないが、今回ばかりはアイツの勘違いに違いない)

岡部(何故なら俺がデュークに命を救われたのは厳然たる事実なのだから…。そう、あれは………)

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ーー


ーー約7時間前ーー
ーー未来ガジェット研究所ーー

『ーー昨日深夜、東京、秋葉原にある商業施設、ラジオ会館に国籍不明の人工衛星と見られる物体が墜落するという事故がありました。深夜という事もあり、ビルの中は無人であり人通りもまばらであったため、幸いにも負傷者は出ておらず、関係者は胸を撫で下ろしています』

『しかしながら、その人工衛星と見られる物体はラジオ会館の壁にめり込むような形で墜落しており、ビルの復旧にはかなりの時間がかかる見通しです。また、墜落ではなく強烈な光とともに突如としてビル壁面に現れたという目撃証言もありーーーー』

珍しくこんな時間に目が覚めたと思ったら、どうやらこの街でトンデモナイ事が起こっているようだな。偶然だろうか、いや……

岡部「これぞ「運命石の扉(シュタインズ・ゲート)」の選択であるッ!」バッサ-

………ふんむ、オーディエンスがおらんと多少盛り上がりにかけるな。

…………

岡部「………ハヤクダレカコナイカナ-」

とは言うものの、まだ目覚ましテレビジョンの時間帯、早くても紅莉栖が9時過ぎにやって来るぐらいで…

岡部「…見に行ってみるか」ボソッ

取り敢えずここまでです

続きはまた明日投下します

ーーラジオ会館前ーー

思った通りおびただしい数の野次馬だな。警官の数も多い。近付いて調べる事は難しそうだ。

しかしまぁ、なんというか、見事にめり込んでいるな。ニュースの映像でも見たが実際に目の当たりにすると更に異様な光景だと分かる。

あれだけの質量の物が墜落したのならここら一帯が吹き飛んでいてもおかしくないのに、ビルの残骸すら見当たらない。そもそも大気圏を突破して来たにしては綺麗過ぎる。本当に人工衛星ならば燃え尽きている筈だ。

よしんば大気圏を奇跡的に無傷で突破して来たとしてもラジ館の壁面に衝突したのならば、もっとこう、グシャっとなってなくてはおかしい。にも関わらず遠目に見た感じではそれもない。多少の凹みすら無いように見える

そう言えば「突如現れた」という目撃証言もあるんだった。酔っ払いの戯言かと思ったが案外これは……

スチャ

岡部「…俺だ。いま現場に到着した。…うむ、間違いないだろう。衛星だなどと誤魔化してはいるがアレこそ件の新兵器に違いない。フッ、機関の奴らめ、とうとう馬脚を現したようだな。今こそ例のミッションを発動する好機。……フン、俺の事なら心配いらない。……あぁ、それでは健闘を祈る。エル・プサイ・コングルゥ」

いつもの報告を終えて携帯を白衣のポケットにネジ込む。その時ふと、視界の端に違和感を感じた。

皆がラジ館に突き刺さった人工衛星を見上げる中でただ一人だけ、真っ直ぐにこちらを見ている人物がいる。黒いスーツに黒いサングラス。いかにもな出で立ち。

勘違いかとも思ったが、目線が合ってしまうのを避けながらコッソリ様子を伺うも、間違いない。明らかに俺を見ている。隠す気もないらしい。

え?マジ?本当に機関()の人だったり?いやいや、それはあくまで「設定」の話であってだな、あんなおっかなそうな男に睨みつけられる謂れはないはず、なのだが…。

と、その黒づくめの男は人混みを掻き分けながら真っ直ぐ俺に向かってきた。ウェイウェイ!ちょっと待った!何がなんだか分からないぞ⁉︎

とにかく今は逃げた方が良さそうだ。意味が分からないが何だか怖い。

岡部「ちょっと失礼!通してくれ!」

俺はラジ館に群がる野次馬達を押しのけながらその男とは逆方向へと必死に進んだ。途中なんだかんだと文句を言われたが気にしている余裕はない。何故だか分からないがアイツに捕まるとマズイ様な気がする。

ようやく密集地帯を抜けてラボへの道を急ぐ。チラリと後ろを振り返ると、やはりソイツは俺を追ってきていた。ヤバイヤバイヤバイ。世界より何より、取り敢えず俺の身がヤバイ。

何がどうなっている?俺はただ他の野次馬達と同じように人工衛星を見物に来ただけだぞ?それなのに何故いつの間にか追われる立場になってるんだ?何故?Why?

タタタ、と軽快な音が俺に迫ってくる。おおぉおいぃ!走ってきてらっしゃるぅぅぅぅ!

俺はなりふり構わず駆け出した。どこをどう走ったのかも把握し切れぬままにただガムシャラに駆けた。が、なにぶん知力全振りのマッドサイエンティストたる俺のスタミナゲージは短かった。数分と待たずに息が上がる。豹の如きスピードで疾走しているはずの俺を犬の散歩中であろうご老体が追い越していった。であるからして、当然…。

???「岡部、倫太郎だな?」

追いつかれた。絶体絶命のピンチ。こんな事なら体力値にもポイントを振っておくんだった。どうやら俺の冒険はここまでのようだぜ…、などと言ってられるか!

岡部「フ…」

そもそも俺は何も悪い事などしていない!それも朝っぱらから黒づくめの男に秋葉原の街中を追い掛け回されるような覚えなど断じてない!改めてそう思うと何だか少し腹が立ってきたぞ。

岡部「フフフ…」

俺は笑った。それも出来る限り相手にとって不敵に映るように。

岡部「フゥーハハハ!岡部倫太郎?いったい誰だそいつは?」

もうこうなったらヤケだ。行けるとこまで行ってやる!俺は怒っているのだ!!

岡部「俺はそのような名前ではない!フゥーハハハ!知りたければ教えてやろう。この世界に恐怖と混沌をもたらす狂気のマッドサイエンティスト!鳳凰院凶真ッ!それが俺の真名だ!覚えておけ下郎が!!」

ビシッ!と最高のポーズを決める。ここまでやれば流石に奴も畏敬の念を感じざるを得まい。願わくばそのままお帰り頂きたい。

???「岡部倫太郎を発見した。これより処理に移る」

黒づくめは携帯に向かってそう言い放った。ん?今なんと??ていうか、さっきもそうだが何で俺の名前を知っている?

そして「処理」という言葉。うーむ。これがダルの口から出てきた言葉なら、それは即ち「一人遊び」による性欲処理に他ならないのだが、この場合、岡部倫太郎を「処理」する、という意味のようだな、うん。…………………………は?

岡部「え?は?ちょ、ちょっと⁉︎」

激しく狼狽する俺を他所に、黒服は上着の内側に手を滑り込ませた。そしてサッと引き抜かれたその手にはなにやら黒光りするモノが。俺はミリオタではないが、あれがいわゆる拳銃である事は分かる。俺の額にその銃口がヒタと向けられる。

唐突に訪れた死の予感。

岡部「う、う、嘘、だろ?」

ぺたんとその場に尻餅をつく。なんとか射線を遮るべく前に突き出される俺の右腕。その行為に何の効果もない事は明白だ。俺はただその姿勢のまま、指の隙間から見える表情のない男の顔と、引き金にかかったその指を交互に見上げる事しか出来なかった。

いきなり、こんな、訳も分からずに、俺は…………死ぬのか?

そして、俺の命を絶つべくして、ゆっくりと引き金が絞られ……

パスッ!

???「グアッ⁉︎」

もう駄目だ、と反射的にギュッと目を瞑った俺の耳に頓狂な声が響いた。場違いなその声に恐る恐る目を開く。薄く開いた俺の眼前には見慣れない大きな男。その向こうでうずくまる黒づくめの男。その傍には先程まで俺を狙っていた拳銃が無造作に転がっている。

助かった、のか?

突然現れた謎の救世主、とおぼしき男は、つかつかと黒づくめに歩み寄ると、ピクリとも動かないソイツを無視して拳銃を拾い上げた。そしてそれを慣れた手つきで胸の辺りにしまうと俺に向き直る。

ゴルゴ「…」

グレイト!凄い!これぞ漢という面構え。太い眉、鋭い目付き、ガッシリとした顎、思わずアッーと叫びたくなるぐらいのナイスガイだ。命の恩人という事もあって余計にそう思う。

黒づくめの男の方は先程から身じろぎ一つする事なく、同じ姿勢のまま気を失っているように見える。まさか死んでるなんて事はないだろうな?まぁ流石に大丈夫だろう、多分、いやきっと。

さっき携帯で連絡を取っていた事からコイツに仲間がいる事は明白だし早くここから立ち去った方がいいのだが…。いつの間にか腰が抜けていたらしい。言うことをきかない足に鞭打って何とか立ち上がろうとする。

しかし、そんな俺の事など眼中にないかのように、メシアは背を向けるとその場を立ち去ろうとした。

岡部「ま、待ってくれ!」

俺は声を振り絞る。何の礼もせぬまま別れる訳にはいかない。それに、もしかしたら何故俺が殺されなければならなかったのか、この男ならその答えを聞かせてくれるような気がした。とにかく今は引き止めなくては。

岡部「あ、あの!こ、腰が抜けて動けないんだ、だから、その、助けて!」

なんとも情けない格好で情けない事を口走る俺。でも仕方ないじゃないか、たった今俺は殺されそうになったのだ。

男は俺の声に反応して振り返る。

ゴルゴ「…」

岡部「それに、命を救ってもらったのにまだ何のお礼も…」

ゴルゴ「礼なら必要ない。俺は俺の仕事をしたまでだ」

彼は映画俳優を思わせるようなダンディな声でハッキリとそう言った。仕事?何だか良く分からないが、どうやら俺を助けたのは彼にとっては仕事だったらしい。いつの間にか俺にはボディガードが付いていたようだ。雇った覚えなどないが。

岡部「いや、そういう訳には…。命の恩人なんだ、礼ぐらいさせてくれ」

少し余裕の出てきた俺は辺りを見回した。闇雲に走っていたはずなのだが、今いる場所はラボから目と鼻の先の所だった。

岡部「すぐ近くに俺の研究所がある。せめて、そこまでご足労頂けないだろうか。大したことは出来ないが」

ゴルゴ「…」

男は再び黙りこむと、そのまま何かを思案しているように見えた。そしておもむろに口を開くと短く「分かった」と答えた。

ーー未来ガジェット研究所ーー

ラボに辿り着くと未だに誰も来ていないようだった。まだ8時前なのだから当然と言えば当然か。

岡部「さ、入ってくれ。汚い所で申し訳ないが。直ぐに飲み物を入れるからそこのソファにでも座って待っててくれ」

ゴルゴ「…俺はここでいい」

そう言うと彼は窓から離れた壁にもたれかかった。

岡部「そ、そうか。アナタがそれでいいならまぁ…」

彼の意図を計りかねたが、きっと何がしかの事情があるのだろう。もしかしたら痔なのかもしれない。

俺は急いでお湯を沸かすとコーヒーの準備をした。ハードボイルドな彼はきっとブラックを嗜む事だろう。

そうやって慌ただしく準備をする俺の手許に、何故か彼の容赦のない視線が突き刺さる。まさかこの俺がコーヒーに毒物を混入するのではないかと疑っているのではあるまいな。いや、まぁそんな訳はないが。

岡部「さぁ出来たぞ。飲んでくれ」

立ったままの彼にマグカップを渡す。助手の私物だが後で洗っておけば問題ないだろう。俺は自分の分のコーヒーを彼と並んで立ったまま口にする。

ゴルゴ「…」ジ-

また、見られてるな。渡したコーヒーに口を付けずに俺の様子を伺っている。そして俺が飲んだのを確認すると、ようやく彼もマグカップを口に運んだ。……そういう設定?常に誰かに命を狙われてる的な?

岡部「あー、コホン…」

それよりも今は彼に言うべき事、聞くべき事がある。

岡部「改めて礼を言わせて貰おう。先程は本当に助かった。ありがとう。あなたは俺の命の恩人だ、ミスター…」

ゴルゴ「デューク・東郷だ」

岡部「ミスター・デューク・東郷、本当にありがとう」

ゴルゴ「礼はいい。仕事だ」

岡部「そうは言ってもだな…、というかその仕事と言うのは?さっきも同じ事を言っていたが、俺を助ける事が何故デューク、こう呼ばせてもらってもいいかな、デュークの仕事になるんだ?」

ゴルゴ「それよりここは何だ?」

華麗なるスルー、とはこの瞬間の為にこそ存在する言葉なのではないだろうか。

岡部「う、うむ。ここは未来ガジェット研究所といって、狂気のマッドサイエンティストであるこの俺、鳳凰院凶真が世界の支配構造を変革し、混沌をもたらす為の拠点である」

ゴルゴ「…」

岡部「…という設定で、わたくし岡部倫太郎他6名で楽しく発明などをさせて頂いておりますですハイ」

ゴルゴ「未来、ガジェット…」フッ…

あ、デュークが今笑ったような…。気のせいか?一瞬の事だったけれども、もし俺の見間違いでなかったとしたら、なんだか嬉しい。

岡部「なんだ、デューク。興味があるのか?」

ゴルゴ「…」

岡部「もしどうしてもというのなら我がラボの研究員として迎え入れる事もやぶさかではn」

ゴルゴ「アレは?」

クッ、何というスルースキル!

岡部「…フフ、アレに目を付けるとは流石だなデューク。アレこそは我がラボが誇る未来ガジェット8号機!電話レンジ(仮)である!」

ゴルゴ「電話レンジ……」

岡部「うむ、電話と電子レンジという今まで交わる事のなかった両者がこのラボで奇跡の邂逅を果たした結果生まれたのがコレだ。接続された携帯電話を介して電子レンジの遠隔操作を可能にした優れものなのである!」

ゴルゴ「…」

デュークの目付きがその鋭さを増した。まるで電話レンジ(仮)がさも重大な発明品であると言わんばかりの熱視線である。俺が言うのも何だが、見当違いも甚だしいぞデューク。

ゴルゴ「この研究所には凶真、お前を含めて七名が在籍しているのだったな?」

岡部「あぁ、確かにその通りだが…」

なんだ?何を言おうとしている?

ゴルゴ「八人目の研究員が必要ではないか?」

岡部「?」

ゴルゴ「八人目の研究員が必要ではないかと言っている」

ん~?…え?つまり、そういうこと?

岡部「えーと……」

ゴルゴ「先程のお前の提案に乗ろう」

ちゃんと聞いとるやないかーい!というツッコミは心の中にしまっておく。

それにしても、驚いた。まさかこんなタフガイがウチに入りたいだなんて。腑に落ちない点も多分にあるし、正体不明のままではあるが構うものか!命の恩人の折角の申し入れだ、素直に受け入れようではないか。戦闘特化型ラボメンの誕生である!

岡部「フ、フフ、フゥーハハハ!」

岡部「デュークよ、アナタにもこのラボの偉大さが理解して頂けたようだな」

岡部「よかろう!只今をもってデューク・東郷をラボメンNo.008に任命するッ!」

ゴルゴ「…」

岡部「これからはこのラボの為、引いてはこの鳳凰院凶真の為に手足となって働いて貰おう!期待しているぞ、デューク・東郷!フゥーハッハッハッ!!」


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ーーーーーー

ーーーー

ーー



岡部「という事があったのだ」

ダル「嘘乙」

紅莉栖「妄想乙」

まゆり「日本語でオッケー☆だよオカリーン」

ルカ子「ちゃんと日本語で話してたと思うけど…」

今日はここまでです
また明日か明後日に更新予定です

ーー現在ーー
ーー未来ガジェット研究所ーー


岡部「嘘でも妄想でもない、全て真実だ!」

ダル「いや~、だってよ~オカリン。いきなり黒服に命狙われるとか正直アリエンティ」

紅莉栖「妄想を語るならせめてそれなりの説得力を持たせられんのか貴様は」

岡部「もう一度言う。全て真実だ!」

紅莉栖「はぁ…あのさ、アンタの話って穴だらけなのよ。百歩譲って岡部の命を付け狙う謎の組織()が存在したとして、ワザワザ人目に付きやすい通勤時間に、しかも野次馬でごった返す秋葉原で、事を起こそうとするかしら?」

岡部「いや、それは俺も疑問に思っている部分でだな…」

紅莉栖「しかも、週の大半をラボで1人寝泊まりしてる標的をよ?どう考えてもおかしいのよ」

岡部「ムムム」

紅莉栖「何がムムムだ!…えー、更に不可解なのが東郷さんの事。こう言っちゃなんだけど、彼みたいな人が自分からラボメンになりたがるだなんて信じられない。というか不自然過ぎる。さっきの岡部の話が真実だと仮定しても、彼がラボに入りたがる理由が全然見当たらないのよ。よって岡部の話が真実であるという仮定がそもそもの間違いだったっていう事。はい論破」

ダル「それ僕も同じこと思ったんだお。牧瀬氏みたいな天才美少女がこのラボに入ったのはオカリン目当てという事で納得出来るけれども」

紅莉栖「ちょおおおい!」ガタッ

紅莉栖「橋田、おおお、おま、なな何いい加減な事言ってる!違うからな⁉︎違うからな⁉︎大事なことなので二回言いました!私がこのラボに入ったのはそんn」

ダル「ツンデレ乙。でも東郷氏の場合は理由が全く見えないんだよね。あんなヤバ目オーラ全開の紳士がこのラボに興味持つとかあり得んだろ常考。チョイ悪ってレベルじゃねーぞあの人」

岡部(確かに紅莉栖やダルの言う事は最もだ。なにより俺自身もその点は疑問であったのだが)

まゆり「ダル君、デュー君は悪い人ではないのです!きっととっても優しい人だとまゆしぃは思うなぁ」

ルカ子「見た目はちょっと怖いけどね…はは」

紅莉栖「え~ゲフンゲフン、私もまゆりの意見に賛成よ。確かに普通じゃないけど、少なくとも私たちに悪意があるようには見えなかったわ」

ダル「そこについては禿同」

岡部(その点については疑問の余地はない。なんせ命の恩人だからな)

紅莉栖「それにしても岡部、アンタいったいどんな手を使って東郷さんを引っ張ってきたのよ。ほら、怒らないから正直に話してみなさい」

ダル「なんか弱味でも握ってるん?」

岡部「だ・か・ら!さっきの話は全て真実だと言っている!正直俺にもデュークが何を考えてるのかは分からん!知りたかったら本人に聞けばいいだろう」

岡部(多分答えては貰えないだろうがな)

ダル「だが断る!」キリッ

紅莉栖「まぁいいわ。そのうち分かる事かも知れないし。ところで岡部、東郷さんはどこに行ったのかしら」

岡部「さぁな。出掛けるとだけ言ってフェイリスのすぐ後に出て行ったからな。そのうち帰ってくると思うが…」




まさかそれが俺たちが見たデュークの最後の姿になろうとは、この時の俺は想像すらしていなかったのだ…





岡部「ええぃダル!勝手にナレーションを入れるな」

ダル「フヒヒ、サ-セン」

紅莉栖「でも本当に帰ってこなかったりして。このラボに入ったのは一時の気の迷いだったーって思っててもおかしくないし」

岡部「いや、まさか…。俺はデュークを信じるぞ!あやつはもうラボメンなのだからな!」

まゆり「デュー君はそんな簡単に逃げたりしないのです!」フンス

ルカ子「うん、そうだね!僕もそう思うよ、まゆりちゃん」

紅莉栖「そうかしら?ま、これもそのうち分かる事だけれど」

岡部「なんだ助手よ、お前はデュークが帰って来ない方が良いのか?」

紅莉栖「は?そんな訳ないじゃない!私だって東郷さんにはずっとこのラボにいて欲しいわよ。でもね、どうもここがあの人の居場所だとは、私には思えなくて…」

岡部「…」

岡部(紅莉栖のその言葉に皆一様に言葉を詰まらせた。薄々皆もそう感じていたのかもしれない。まゆりだけは何とか紅莉栖のその言葉を否定しようと頑張っているようだったがはっきりと言葉にする事は出来ないようだった)

岡部「うむ…、まぁデュークが今後どういう判断をするかはデューク次第だ。だがな、結果的にこのラボを辞める事になったとしても、デュークが俺たちの仲間である事には変わりはない!」

紅莉栖「ふふ、そうね…あんたらしいわ」

ダル「オカリンかっけーッス!」

まゆり「オカリンいい事言うねぇ」

ルカ子「…///」ボ-

ーー同日同時刻ーー
ーー大檜山ビル2F階段ホールーー

\デュークが俺たちの仲間である事には変わりはない!/

ゴルゴ「……」

男はドアの前を離れると、静かに、その場を立ち去った。

書き溜めが尽きました

次回から遅くなります


ーー某所某日ーー

鈴羽「おっかしぃなー。確かにここで待ち合わせのハズなんだけど…」

鈴羽「まさか伝説のあの男が約束の時間に遅れるなんて事はないと思うんだけどなぁ」

鈴羽はメモを取り出すと再度確認した。時間、場所、うん、間違いない。だけど肝心の男がいない。何か手違いでもあったのだろうかと思案していると、時計のアラームがピピッ、と控え目に約束の時間を告げる。

ゴルゴ「用件を聞こうか」

鈴羽「⁉︎」バッ!

咄嗟に身を翻す。いつの間に⁉︎いや、いつからそこにいた?気付かない内に背後を取られるなんてちょっとショックだ。それだけ男の能力が信頼に値するということだろうが。

鈴羽「も、も~人が悪いなー。黙って隠れてるなんてさ」

軽い調子で自分の動揺を誤魔化そうとする。が、この男にはそんなささやかな私の自尊心がどうなろうと関係ないらしい。

ゴルゴ「依頼内容を聞かせてもらおう」


鈴羽「…分かったよ。依頼内容は東京・秋葉原にいる岡部倫太郎という人物の護衛」

ゴルゴ「…」ピクッ

鈴羽「分かってる。あなたの事はかなり調べたからね、ゴルゴ13。あなたが誰かの護衛なんて仕事を引き受けない事も。だから言い方を変える。岡部倫太郎を狙う奴らを排除して欲しい」

岡部「…どうやって俺の事をしらべた?」

男の視線に凄みが増す。うん、情報通り。自分の事を嗅ぎ回られるのが嫌なんだ。それで消されたジャーナリストや作家もいるらしい。

そして、情報通りならこの男に嘘は通じない。万が一依頼内容の嘘が発覚したなら、それは彼に対する裏切りとして判断され、報復される。だからこの男には一切を包み隠さず正直に、それが紅莉栖おばさんから教わった事。

鈴羽「今から話すことはもしかしたら、あなたには信じて貰えないかもしれない。でも誓って嘘は言わない。全部本当の事だよ」

鈴羽「私は未来から来た」


ゴルゴ「…」

鈴羽「正確には西暦2036年。その頃には既にあなたも死亡していて、ある程度の情報は伝説のスナイパーの記録としてまとめられ、管理されている。もちろん一般人が知る機会はないけどね」

鈴羽「あなたについての情報は私の父さん、橋田至がハッキングして手に入れた。この時代に存在する最高のプロとしてね。そして、ちょうどこの日あなたが東京にいる事も」

鈴羽「岡部倫太郎は今から6時間後、秋葉原で殺害される。至近距離から頭部に銃弾を浴びて脳みそをぶちまけて、死亡する。あなたにはこの未来を変えて欲しいんだ」

ゴルゴ「…」

流石にゴルゴ13と言えども戸惑っているだろうか。この時代の人間にとって俄かには信じ難い内容であることは理解出来る。

ゴルゴ「…」フ-

懐から取り出した葉巻をくゆらせる彼は、流石に全く感情の見えない顔をしている。深く思案しているようにも見えるが、私の話がどう受け取られたのかをその表情から読み取る事は出来ない。

1ヶ所岡部になっとる


ゴルゴ「未来から、どうやって来た?」

驚いた。とても信じて貰えないと思ったが、彼は未来から来た手段について確認してきた。少なくとも取っ掛かりが出来たと考えてよさそうだ。紅莉栖おばさんの話でも、依頼内容そのものより、まずは依頼人として信用して貰えるかどうかが一番の懸念事項であるハズだったのに。

鈴羽「もちろんタイムマシンで。現物は秋葉原のラジオ会館の壁面に引っ掛かってるよ。出現場所の座標がちょっとだけズレてたみたいでさ」

ゴルゴ「…」

鈴羽「まぁ信じて貰えないと思ってたからさ、実は未来人の証拠も持ってきてるんだよね」

そう言って腰にぶら下げたポーチから一枚の紙を取り出そうとする。

ゴルゴ「動くな」

その冷たい声にピタリと動きを止める。なぜか一瞬にして冷や汗が吹き出る。


ゴルゴ「ゆっくりだ。両手が俺に見えるようにして。ゆっくりやるんだ」

ゴルゴ13、情報通り臆病なんだね。分かったよ。私は殊更見せつけるようにゆっくりゆっくりと、一枚の紙片を取り出すと彼に掲げて見せた。

鈴羽「これはロト6ていう宝くじだよ。抽選結果は明日発表だけどね。これが一等、四億円の当たりくじになる事は確定している。これをあなたに上げる。もちろん依頼料は現金で二億、別で用意してるよ」

鈴羽「だから、もしそのクジが一等じゃなかったら依頼に嘘があったとして殺されても文句は言わない。岡部倫太郎があなたに殺されたって構わない。本当ならもっと前の時代に飛んで、よりハッキリとした証明が出来ると良かったんだけど…」

鈴羽「私の存在そのもので未来が変わってしまう恐れがある以上、なるべく影響の少ないこんなギリギリの時間にしか来れなかった」

鈴羽「だからこんな物しか用意出来なかったんだ。でも、私は嘘はついてない。それは信じて欲しい。そしてお願い、ゴルゴ13。この依頼を受けて!そして未来を変えて!!」

ゴルゴ「…」

彼は葉巻を投げ捨てると、黙ったまま私の手からクジを受け取った。


ゴルゴ「…詳しい話を聞かせて貰おう」


鈴羽「おぉ、ゴルゴ13!ありがとう!ありがとう!」

>>46

Oh…

指摘ありがとうございます!
脳内変換オナシャス


ーー現在ーー
ーー大檜山ビル向かいのビル・3階ーー

ゴルゴ(鈴羽という女の言う通り、このクジが一等である事は確認した)

男はそれをクシャッと握り潰すと無造作に放り投げた。

ゴルゴ(そしてもし俺が何もしなければ岡部倫太郎は今朝、鈴羽の言う通りの死に方をしただろう…)

ゴルゴ(それにしても…)

向かいのビル2階に目を向ける。多少古ぼけている他には何の変哲もない雑居ビル。まさかこんな場所で世紀の発明が行われているなどとは誰も思わないだろう。

ゴルゴ(電話レンジか…)

ーーーー鈴羽『そう。タイムマシン開発はその「電話レンジ」から始まったんだ。この時代ではまだ誰も電話レンジの本当の機能には気付いていないけどね』

ーーーー鈴羽『何故岡部倫太郎が殺害されなければならなかったのか、残念ながらそれは分かっていない。少なくともこの時代の岡部倫太郎はごく普通の大学生でしかないから、理由があるとすれば恐らくそれは未来にあると考えられる』

ーーーー鈴羽『想像するしかないけれど、岡部倫太郎が死ななかった世界線上では彼の影響力には無視出来ないものがあったに違いないんだ。だからこそ殺された。時間を遡って、岡部倫太郎が只の大学生のうちにね』

ーーーー鈴羽『そう。この刺客たちは恐らく未来から送られて来ている。この時代の人間じゃないから、人目につく朝方に秋葉原の路上で射殺、なんて派手な殺し方しちゃうんだ』

ーーーー鈴羽『ちなみに私が来た未来ではSERNによるディストピアが完成している。私たち以外にタイムマシンの開発に成功しているのはSERNだけだから、どこから刺客が送られたのかは、多分そう言う事なんだろうね』


ゴルゴ(それにアトラクタフィールド理論…、世界線の収束…か。鈴羽のタイムトラベルによる俺への依頼でどこまで世界線が移動するのかは不明だ。それを観測する事は誰にも出来ない)

ゴルゴ(俺の力が「運命」に対してどれだけ有効なのかも不明、だが……)

男は慣れた手付きでそれを組み立てていく。足元には種々雑多な空箱が転がっている。無関係な荷物に偽装されたそれは男の手の中で美しい一台のアサルトライフルへと生まれ変わる。

ーー鈴羽『世界線の大きな転換点はこの後午前7時から翌朝7時までの24時間の間にある事は明らかになっている。その時刻を過ぎて尚、岡部倫太郎が生存していた場合、世界線の収束により岡部倫太郎の死は確実に回避されると思われる』

ーー鈴羽『わざわざタイムマシンを使ってまでこの時代の岡部倫太郎に刺客が送られた理由は恐らくコレだろうと思われる。推測でしかないけどね。何故かは分からないけど、それほど岡部倫太郎の生死は、世界にとって重大な分岐点なんだ。だからあなたにはこの期間の間、何としても岡部倫太郎を守って欲しい。それが私と、私に託してくれた仲間たちのたった一つの願い』

慎重にチェックした後、愛用のM-16を傍らに据えると、男は再び眼下のラボへと視線を向ける。

ゴルゴ(俺に出来る事は請け負った仕事に対して忠実であること…)

ーーPM 4:50ーー
ーーメイクイーン+ニャン2ーー

カランカラン

フェイリス「おかえりニャさいませ~ご主人様♪」

フェイリス「ニャニャ!凶真~来てくれたのニャン!」

岡部「いや、今日は客ではない。少しお前に聞きたい事があってな…」

フェイリス「は!まさか⁉︎ ついに黒の軍勢が動き出したのニャ⁉︎」

フェイリス「クロニクルによればまだ先の話だったはずニャのに…。凶真!王都が危険だニャ!早く聖騎士団に伝達を!」

岡部「う、うむ…」

フェイリス「……凶真~?今日はなんだか元気がないニャン?」

岡部「いや、そういう訳ではない。ちょっと気になる事があってな」

フェイリス「ニャニャ?もしかして…私のせいなのかニャ?」

岡部「フェイリス、お前ラボを出て行くとき…」

フェイリス「まぁまぁ凶真。その話はあとで、ね?」

フェイリス「ご主人様ご案内だニャーン♪」

そう言ってフェイリスは俺の腕に絡みついてきた。なにやら柔らかい感触が…。周りのご主人様たちの恨みがましい視線が痛い。

フェイリス「コレは私のおごりだニャン!」

目の前にアイスコーヒーが置かれる。

フェイリス「もうちょっとで休憩時間になるから、これでも飲んで待ってて欲しいのニャ」

俺は黙って頷くとアイスコーヒーをちびちびと口に含んだ。


それからおよそ20分ほど待たされると、従業員用の扉の影からフェイリスに手招きされた。後についていくと、この店のバックヤードと思しき場所に連れていかれる。キチンと整理されているようだが、それでも表の華やかさの後ではどうしてもうら寂しい印象を受ける。

岡部「済まないな、貴重な休憩時間を潰してしまって」

フェイリス「ニャハハ、構わないニャ。凶真と一緒ならむしろ嬉しいのニャ!」

岡部「そうか、それならば良いのだが…」

俺は一旦間を置くと、改まって切り出した。

岡部「デュークの事だが……フェイリス、お前は何か知ってるのか?」

フェイリス「フェイリスは何も知らないニャ。デュークさんとは初めて会ったのニャ」

岡部「それならばあの言葉の意味は?」

確かにあの時フェイリスは『あの男に気を付けて』と俺に言った。もしかしたらフェイリスは何かを知っているのかとも思ったが、どうやらそうではないらしい。

フェイリス「凶真は私の能力の事を知ってるよね?」

もちろん知っている。チェシャ猫の微笑(チェシャーブレイク)という名を冠したフェイリスのオリジナル能力だ。目を見るだけで相手の考えている事がある程度分かるという。ちなみに相手が死ぬ事はない。


フェイリス「ラボでデュークさんの目を見たときに思ったのね…」

フェイリス「その………」

そこで一度言葉を切ると、フェイリスは今から口にする事が適切かどうか思案するように、下唇を噛んだ。しばしの逡巡。やがて、その眼差しに迷いを残したままではあるもののフェイリスは意を決したように口を開いた。

フェイリス「この人は人間じゃない!………って」

フェイリス「例えるなら……そう、まるで機械」

フェイリス「何も見えなかった。こんな事は初めてで……」

フェイリス「心が見えにくい人も確かにいるんだよ、ウチの黒木もそう。でもまったく何も見えないなんてあり得ない。そんな人間がいるなんて信じられない」

フェイリス「凶真、私、なんだか怖くて…」

フェイリスはそう言って俺にしがみ付いて来た。僅かな震えが伝わってくる。あのフェイリスがここまで怯えるなんてな。デューク、お前いったい…。



俺の胸の中で小刻みに震えるフェイリスの頭に右手を乗せると、ポンポンと軽く叩いてやる。

岡部「フェイリス、済まなかったな、俺がお前たちの意見も聞かず勝手に決めてしまって。デュークをラボメンにした事でお前には迷惑をかけた」

フェイリス「⁉︎」

岡部「でもな、フェイリス。俺にとってデュークも、もちろんお前も、どちらも大切な仲間なんだ。俺にはどちらか一人だけを選ぶなんて事は出来ない。だから、出来ればお前も、デュークと仲良くしてくれればと、俺は思っている」

岡部「俺のワガママかも知れない。もちろん今すぐという訳でもない。でも、少しずつでもいいから打ち解ける努力をお前にはお願いしたい。無論、デュークには俺からも言っておく。だから…」

そこまで言うとフェイリスはゆっくりと顔を上げて首を横に振った。

フェイリス「違うの岡部さん。デュークさんがラボメンになったことに反対なんじゃないよ。私もみんなと同じように仲良くしたいと思ってるの。迷惑だなんて、そんな事ない。ただ、ちょっと………怖かっただけ。今まで出会った事のないタイプの人だったからかな」

フェイリス「でも、もう大丈夫だよ。それに、こっちこそごめんなさい。岡部さんに余計な心配かけてしまって…」

岡部「フッ、構わん。大切なラボメンが助けを必要としているならば、所長としてそれを放っておく訳にはいかんからな」


フェイリス「岡部さん…。ありがとう」ニコッ


うっ…! その笑顔は反則だぞフェイリスめ…。


フェイリス「……それじゃあついでに一つだけお願いを聞いて欲しいのニャ」

岡部「なんだ? 俺に出来る事ならば遠慮する事はないぞ」

フェイリス「本当かニャ?」キラリ-ン

岡部「む、無論だ」

フェイリス「じゃあ…」ガバッ!

いきなり俺めがけて飛びかかってくるフェイリス。白くて柔らかい腕が俺の首にまとわりつく。イイ…、じゃなかった。

岡部「や、な、止めろ!何をするこの猫娘が!」ジタバタ

フェイリス「実はまだちょっとだけ怖いのニャン。またさっきみたいに慰めて欲しいのニャン」

岡部「わ、分かったから取り敢えず離れろ!」

俺の言葉に構わず更にスリスリしてくる。これは、マズい。

フェイリス「凶真凶真~もっとナデナデして欲しいニャー」

ニャンとも言えない良い匂いが俺の鼻腔をくすぐる。フニフニとしたフェイリスのほっぺたの感触、スベスベの二の腕。ダル……済まない、俺は………

フェイリス「なーんてニャ♪」

岡部「へ?」

突然パッと身体を離すとフェイリスはイタズラっぽく笑った。

フェイリス「ニャハハ、冗談ニャ」

岡部「…」ポカ-ン

フェイリス「アレ? 凶真どうしたニャ?もしかして期待しちゃったかニャ?」

岡部「い、いやそそそんな事はない!」

フェイリス「ニャフフ、クリスティーニャンに怒られそうだニャン♪ フェイリスは罪な女だニャーン♪」

呆気にとられる俺を残して踊るようにフロアに戻っていくフェイリス。何だったんだ今のは。やはりアイツは何を考えているのか分からんな。でも、元気になってくれたのなら良かった、かな…



再び店内に戻り、そのままラボに帰ろうとしたところで客席の一角から声をかけられた。

ダル「おーいオカリーン」

聞き慣れた声に振り向くと、俺はそこで固まった。

岡部「なん……だと……?」

いつもの席にいつものように陣取るダル。それはいい。問題はその向かいの席に座る男。デューク、お前そこで何をしている⁉︎

ゴルゴ「…」

ダル「いやぁ、僕がメイクイーンに入ろうとしたら、たまたま東郷氏をお見掛けしたのでお誘いしてみたんだお。多分こういう所に入った事ないだろうし」

あってたまるか。メイド喫茶に通うデュークなど想像する事すら難しい。

ゴルゴ「…」

こんな場所でもデュークはデュークだな、威圧感が凄い、などと思っていると、ダルが声のトーンを一段落として話しかけてきた。

ダル「…ところでオカリン、今どこから出て来たんだお?」

岡部「あぁ、ちょっとフェイリスに用事でな。少しの間だけ従業員用の」

ダル「フェイリスたんと何してたんだお?」

どうやら変な勘繰りをしているらしい。目がマジだ。

岡部「何もしとらんわ!少し話をしただけだ」

ダル「ふーん…それで、話をしただけなのに何でオカリンの肩にフェイリスたんの髪の毛が付いてるんだお?」

岡部「なに⁉︎ い、いや、これはだな」

慌てて自分の肩を手で払う。

ダル「嘘だお」

こ、こいつ何時から鎌かけ(サイズハング)の使い手に!


ガタン、と椅子を鳴らしてダルが立ち上がる。

ダル「オカリン…俺、久々にキレちまったぜ…」

どこからともなく、ゴゴゴゴゴゴ…、という擬音が聞こえてくるようだ。若干ダルの右手が赤く光っているようにも見えるがアレは…?と、そこに

フェイリス「ニャニャ?ダルニャンはどうしちゃったのかニャ?」

注文の品を持ってフェイリスがやって来た。

ダル「フェイリスたんキターーー!」

岡部「おお!フェイリス!助かった! なにやらダルが俺とお前の事で少し勘違いしているみたいでな、お前から説明してやってくれ」

フェイリス「はニャ?凶真と私の事なら勘違いじゃないニャン」

岡部「おい!」

フェイリス「私たちはともに義勇軍を率いてユグドを駆け巡った戦友であり、ゆくゆくは結ばれる運命なのニャン!青い予言書にもその事はバッチリ記されているのニャ!」

もはや何を言う気も起こらない。


ダル「フェイリスたん…フェイリスたんが幸せなら僕は、僕は…………」ウルウル

まじかよコイツ泣いてやがる。ていうかダルの涙目とか誰得。

ダル「オカリン!」

バシン!と勢いよく机を叩くダル。

ダル「フェイリスたんを泣かせたら承知しないのだぜ!だから、幸せにしてやってくれコンチクショー!」

一人で盛り上がってやがる。やれやれ、これだから童貞は。まぁ俺もそうだが。

ダル「あと、これだけは言わせてくれお」

ダル「リア充は爆発しろ!」

どっちなんだダルよ。俺は不毛なやり取りに嫌気がさしてデュークの方を向いて言った。

岡部「どうだデューク、メイクイーン+ニャン2の居心地は」

ゴルゴ「…」

この賑やかな店内において、先ほどから彫像のようにピクリともしないデュークは明らかに浮いていた。他のご主人様たちもこの店のメイドたちも、恐る恐るその様子を伺っているように見える。


しかし、今のフェイリスは一味違った。

フェイリス「お待たせしましたニャン♪ はい、ダルニャンにはオムライスとアイスコーヒー、デュークニャンはホットコーヒーだニャ♪」

フェイリス「コーヒーのミルクとお砂糖は如何いたしますかニャ?」

ダル「もちろんお願いします!」

ゴルゴ「…必要ない」

フェイリス「まぁまぁデュークニャン、つれない事言わないで欲しいのニャ。せっかく初めてメイクイーンに来てくれたんだから、サービスさせて欲しいのニャ」

有無を言わせずデュークのコーヒーにミルクを少し垂らすと、フェイリスはあの必殺技の体勢へと素早く移行した。

ダル「フェイリスたんの『目を見て混ぜ混ぜ』ktkr!」

デュークとフェイリスの視線が交差する。フェイリス…お前。

フェイリス「まーぜ、まーぜ♪」ニャ-ン

ゴルゴ「…」

フェイリス「まーぜ、まーぜ♪」ニャンニャ-ン

ゴルゴ「…」

なんだ、この空間。狂ってやがる。フェイリスの熱い視線を受けてビクともしないデューク。ダルなら三回は昇天していてもおかしくないぐらい、入念にコーヒーをかき混ぜつつデュークを見つめ続けるフェイリス。

フェイリス「まーぜ、まーぜ♪」ニャンニャンニャ-ン

ゴルゴ「…」

フェイリス「まーぜ、まー」

ゴルゴ「もういい」

フェイリス「ぜ…、そうかニャ。さ!どうぞ召し上がれ!」

ゴルゴ「…」ゴクリ

何のためらいも無くコーヒーを口にするデュークに俺は、おや? と首をかしげる。

フェイリス「どうかニャどうかニャ?フェイリスがた~っぷり愛情を注いだコーヒーはお口に合いましたかニャ?」

ゴルゴ「…」ゴク…ゴク…カタン

フェイリスの問いかけには何も発せず、ただ黙ってそれを飲み干す事で答えるデューク。

フェイリス「ニャハハ!気に入ってくれたみたいで何よりだニャン♪」

フェイリス「お代わりをお持ちしますかニャ?」

ゴルゴ「…頼む」

フェイリス「かしこまりましたニャーン♪」

足取りも軽やかに厨房の奥に消えていくフェイリス。……ふふ、もう心配は要らないみたいだな。フェイリスよ、感謝するぞ。




ダル「あの~、僕は……?」


ラボメンの結束のため、犠牲となったダルに敬礼!

ーーPM6:20ーー
ーー未来ガジェット研究所ーー

岡部「鳳凰院凶真、ただいま帰還した!」

紅莉栖「…」カチャカチャ

岡部「なんだクリスティーナ、まだ居たのか」

紅莉栖「…」カチャカチャ

岡部「貴様…助手の分際であからさまに無視(ノービジョン)を決め込むとは、反抗期か?」

紅莉栖「…」カチャカチャ

岡部(……ん?ヘッドホンを付けているのか…。無視された訳じゃないらしいな……良かった)

紅莉栖「…」カチャカチャ

岡部(それにしても助手め、電話レンジの前でいったい何を…)

紅莉栖「……ふぅ、完成っと」ヘッドホンハズス

紅莉栖「ふふふ、岡部の奴きっと驚くわ、まさか電話レンジにこんな機能が隠されていたなんて、流石私のパパね」

紅莉栖「でも、タイムマシンだなんて、未だに信じられないわ。どう考えても科学史に残る大発明じゃない。私ってば天才! そして可愛い!…………あれ?私って完璧じゃね? あれれ?こんなに完璧超人なら岡部もイチコロなんじゃね? なんせ可愛くて天才なんだから。あー、そっかそっか、大事な事だからもう一回言っとこ、まゆり風に。クリスちゃんは世界一天才で世界一可愛い完璧超人なのです! なーんてねなんてね。あぁ、早く岡部帰ってこないかしら、そして私を抱きしめてナデナデしたらいいのに。なんでいつもしないのかしら、こんなに天才で可愛いのに。こーんなに岡部の事好きなのに。まぁいいわ、帰ってくる前に岡部の白衣クンカクンカしとこ。タイムマシン完成記念だから問題ないわよね、えぇ問題ない。全然変態行為なんかじゃないわ、むしろ必然よね、岡部が抱きしめてナデナデしてくれないのが悪いんだから、悪いのは岡部、私は正しい。というわけでアイツの白衣はっと、お、あったあっt………………」


岡部「……」


紅莉栖「」


岡部「じょ、く、紅莉栖よ……その、なんというか…………えーと……………スマン」


紅莉栖「」

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