モバP「唐紅の天道」 (28)
書き溜めなし
地の分あり
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凛「蒼い薔薇・・・ね。」
凛「まぁ、悪くないかな。」
P「どうしたんだ凛?」
凛「ん、これなんだけどね。」
P「青いバラか、綺麗だな。」
凛「でしょ、今度ウチでも取り扱おうと思って。」
P「普通の花屋でも取り扱えるのか?」
凛「ちょっと高いんだけどね。」
凛「お仕事も増えてお店の評判も上がってきたしね。」
P「いいことじゃないか、凛が頑張っている証拠だろ?」
凛「そう・・・だね。」
凛「うん、評価されるのはなんだか嬉しいね。」
P「またハナコにも会いたいし。」
P「親御さんにも契約の更新が近いから報告に行かないとな。」
凛「そう?なら、来週の日曜日はどう?」
P「夕方からになっちゃうけどそれでもいいか?」
凛「わかった、じゃあお母さんたちにも言っておくね。」
P「それなら何か手土産でも買っていこうかな。」
凛「そんなのいいよ。」
P「そういうわけにもいかんしな。」
P「大事な一人娘を預かっているんだ。」
P「挨拶くらいはしっかりさせてくれ。」
凛「そこまで言うなら。」
凛「でも、あんまり高いのはやめてよね。」
P「わかったよ。」
凛「ちなみに、私はロールケーキがいいかな。」
P「それは凛の食べたいものだろ?」
凛「ふふ、Pさんかなり気を使いそうだからね。」
P「まぁ、参考くらいにはしておくよ。」
凛「期待して待ってるね。」
凛「それよりも時間いいの?」
P「もうこんな時間か、すまないこの話はまた後で。」
凛「ん、ならまたあとで・・・ね。」
P「それじゃあ、行って来る。」
凛「・・・もう」バタンッ
P「外は寒いな・・・」
P「車の中は理不尽だな、夏は熱く冬は寒い。」
階段を降りてすぐに車に乗り暖房をつける。
いつもは事務所の子がいるから余計に誰もいない車内は冷たく感じる。
P「最初は確か響子のラジオだったかな。」
慣れた道のりを進み響子のラジオを聴く。
P「もう五回目だからか大分なれてきたみたいだな。」
車内がほんのり暖まり初めラジオが終わりを告げる。
少しすると目的地が見えてきた。
車を停め、自動ドアをくぐるとすぐに響子の姿が見えた。
響子「あ!プロデューサーきてくれたんですね。」
P「今日はこれからすぐに料理番組の打ち合わせがあるから急ぐぞ。」
響子「はい♪」
手短に挨拶を済ませすぐさま車に乗り込む。
P「ラジオ、もう緊張せずにできてるか?」
響子「はじめたばかりの頃よりはうまく出来てるかなと。」
P「そうか、聞いててもう大丈夫だと思ったよ。」
響子「もうっ、聞いてたんなら言ってくださいよ。」
P「それもそうだな、うん。」
響子「人の反応みて楽しまないでくださいよ。」
P「悪い悪い、つい。」
響子「お料理は得意ですけど、トークはうまいかどうか心配なのに。」
P「響子には響子なりの魅力があるんだ。」
P「それをもっと信じてもいいと思うぞ。」
響子「プロデューサーが言うなら・・・」
P「少なくとも俺は響子のトーク好きだしな。」
響子「口説くならもっと雰囲気のいい時にしてくださいよ。」
P「響子はお嫁さんにしたいくらいだからな。」
響子「その言葉、本気にしちゃいますよ?」
P「結婚するにはあと一年待たないとな。」
響子「乙女の純情を弄ぶと酷い目見ちゃいますよ。」
P「まぁ、響子は家事万能だし可愛いし。」
P「お婿さんになる人は幸せものだろうな。」
響子「・・・プロデューサーは結婚する予定とかあるんですか?」
P「今は仕事が恋人だからな。」
響子「事務所の子で好きな子とかいないんですか?」
P「アイドルに手を出す訳にもいかんだろ。」
響子「でも好みのタイプとかあるじゃないですか。」
P「確かにうちの子は綺麗どころが多いがちゃんと割り切ってるよ。」
響子「それは綺麗なら誰でも良いってことですか?」
P「そこまでは言ってない。」
P「でもあえて言うなら髪の長い子が好きかな。」
響子「髪の長い・・・ですか。」
P「ほら、もうすぐテレビ局だぞ。」
響子「・・・まだまだ聞きたいことはありますけどこれで勘弁してあげますね。」
P「好きな人・・・か」
響子をテレビ局で降ろし次は早苗さんを迎えにいく。
好きな人と形容するのは簡単だがいつも違和感を覚える。
初めて凛に会った時、そのような感情があっただろうか。
惹かれこそすれ好きではなかった。
P「20も折り返し地点なのになんだろうなぁ。」
独り言が虚しく車内に響く。
案外早く着いたテレビ局前で早苗さんを拾う。
早苗「いやー最近めっきり寒くなったね。」
P「そうですね、早苗さんも風邪ひかないように気をつけてくださいね。」
早苗「なによーお姉さんまだ現役バリバリよー。」
P「また酔って薄着で徘徊することのないようにしてくださいよ。」
早苗「もう、Pくんはお姉さんを何だと思ってるのよ。」
P「素敵なアイドルですよ。」
早苗「そんなお世辞は良いから本当のこと言って頂戴。」
P「・・・頼りになる先輩・・・ですかね。」
早苗「そこは未来の恋人とかでしょ。」
P「自分にはまだそこまでの甲斐性はないですよ。」
早苗「お姉さんが一生君の面倒見ちゃうぞー。」
P「・・・洒落にならないんでやめてください。」
早苗「事務所の皆もだいたい独り立ちできるくらいには稼いでるからね。」
早苗「正直、小学生とかは適正な金額なのか困るときもあるけどね。」
P「その子の評価が正しくされているという点では良いんじゃないですか。」
早苗「そういうものなのかな。」
早苗「あたしが若いときはお金がなくて困ってたのに。」
P「早苗さんもまだ十分若いですよ。」
早苗「Pくんはあとでシメるから覚悟しといてね。」
P「何か気に障ること言いましたか!?」
早苗「素で言ってるなら説教が必要かな。」
早苗「Pくんは天然ジゴロの気があるからね。」
P「天然ジゴロだなんてそんな。」
早苗「言われたくないんだったら気をつけることね。」
早苗「ただでさえ事務所はPくんしか男がいないんだから。」
P「皆、事務所以外のところでの知り合いもいるでしょうに。」
早苗「そういうこを言ってるんじゃないよ。」
早苗「身近にいる異性ってとても大事だと思うの。」
P「身近に・・・ですか。」
早苗「そ、身近に心を通わせるとねどんどん惹かれていって。」
早苗「何気ない一言でコロっといっちゃうんだから。」
P「そんなものなんでかね。」
早苗「そんなもんよ。」
早苗さんをレッスンルームまで送り届け、事務所へ向かう。
何気ない一言に惹かれる。
なら何気ない一言で冷めることだってある。
俺は凛に一体どんな感情を抱いているんだろうか。
P「ブレンドをひとつ。」
事務所に車を置き近くの喫茶店に入る。
決してサボっているわけではない。
礼子「あら、こんなところサボり?」
P「いえ、サボりとかじゃなくてですね。」
礼子「たまには休まないとね。」
礼子「最近Pくん少し頑張りすぎてるものね。」
P「皆の頑張りがあってこそ今の自分があるんですよ。」
礼子「謙遜も良いけどたまには自分のことも考えなきゃね。」
P「ありがとうございます。」
P「礼子さんも最近とても頑張っているじゃないですか。」
礼子「大人だもの、きちんと果たすことはやるわ。」
P「自分はまだ大人に成りきれていませんね。」
礼子「ふふ、私が今から大人にしてあげましょうか?」
P「勘弁してください。」
P「プロデューサーがアイドルに手を出したらマスコミの餌食ですよ。」
礼子「私はそれも面白いと思うわよ。」
礼子「障害があればあるほど燃えるじゃない。」
P「自分はそこまで情熱的になれませんね。」
礼子「恋はね、どんな障害も壊してしまうのよ。」
P「自分も壊れたら意味ないですよ。」
礼子「もう、そんなこと言う。」
礼子「Pくんはもっと恋をするといいわ。」
P「礼子さんはしているんですか?」
礼子「その質問はどういう意図で聞いているのかしら?」
P「純粋にゴシップの危惧ですよ。」
礼子「つまらない男ね。」
P「つまらなくても堅実に生きる。」
P「それが長生きのコツだと教わりましたから。」
礼子「刺激がないと人は死んじゃうのよ。」
P「今この瞬間が十分に刺激的ですよ。」
礼子「そう、なら嬉しいわ。」
礼子「それとねPくん。」
礼子「女の子のその気を甘く見てたらダメよ。」
P「十分に気をつけます。」
礼子「・・・もういくわね。」
P「送りましょうか?」
礼子「大丈夫よ、自分の車で帰れるわ。」
P「そうですか。」
礼子「それとねPくん。」
礼子「お姉さんに一人称を気をつけなくていいわよ。」
礼子「・・・お説教ぽくなるのは年かしらね。」
P「礼子さんは十分お若いですよ、少なくとも俺はそう思います。」
礼子「・・・ありがとうね、Pくん。」
礼子さんが去った後に冷めたコーヒーを流し込んで事務所に戻った。
事務所には寝息を立てている凛以外おらず、少し寒かったので暖房の温度を上げた。
凛の姿はまるで死んでいるように美しくソファにすっぽり納まっているのがなんとも可愛らしい。
P「綺麗な寝顔だな。」
凛が目を覚ますまで見守っていることにした。
決して仕事がしたくないわけじゃない。
P「なんでアイドルなんだろうな。」
まるで死んでしまった恋人に問う様に独り言ちる。
P「なんでプロデューサーなんだろうな。」
恋とかはわからないけども愛している。
中学生並みの感受性に嫌気がさしてくる。
一つまた一つと針を動かす時計。
一秒、二秒と勘定するたびに鼓動が早くなる。
幾つ数えたのかわからなくなる頃に凛は目を覚ました。
凛「ぅ・・・ん、プロデューサー?」
P「おはよう、凛。」
凛「ふふ、恋人みたい。」
P「なんだそりゃ。」
凛「寝ている彼女を起こす彼氏?」
P「凛の彼氏はしっかり者だな。」
凛「意地悪言わないでよ。」
P「意地悪のつもりじゃないんだけどな。」
凛「Pさんはそういうところあるもんね。」
P「俺は小学生か。」
凛「・・・やっぱり、好きだよ。Pさん。」
P「・・・今、なんて?」
凛「好きだよ・・・Pさん。」
P「それは家族愛とかか?」
凛「あんまりボケるのもダメだよ。」
凛「ちゃんと、答えて。」
P「俺は・・・凛が好きだよ。」
凛「両思いだね、私たち。」
P「でもこれは恋とかじゃ・・・」
凛「わかってるよ。」
凛「Pさんは浮気性だからね。」
P「い、いやそういうわけじゃ。」
凛「ふふ、意地悪の仕返しだよ。」
P「なんだ・・・そうか。」
凛「でもね・・・Pさん。」
凛「早く決めないと、愛想尽かしちゃうよ。」
P「それは・・・いやだな。」
凛「しっかり私のリード離さないでね。」
P「そこはリードじゃないだろ。」
凛「そうだったかな。」
今はまだこの気持ちが恋かわからない。
でも、この気持ちは忘れたくない。
P「よし、仕事行くぞ。凛。」
凛「トップアイドルにしてくれるって信じてるからね。」
P「ああ、一緒に頑張っていこうな。」
凛「・・・うん♪」
いつか時がくれば解決するかもしれない。
気持ちの整理も出来る立派な大人に成っているかも知れない。
そっと、凛への気持ちを確かめてみる。
これが恋だと始めて気がついた。
完
まゆのパンツでコーヒーを淹れようと思ったらまゆのパンツがないことに気づき。
ふと、ベランダを見てみると妹のパンツが干してあるではありませんか。
まゆのではなくともパンツはパンツ。これは練習になるのではと思い実践して見ましたが、
粉が思いのほかこぼれてまともに淹れる事が出来ませんでした。
そして僕はそのパンツを隠すために本棚を整理していたら夏目漱石の夢十夜を見つけました。
パンツを隠し終えて、夢十夜を読んでいる時にこの話が浮かんだので書かせていただきました。
最後に見てくださった方ありがとうございました。
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