【百合】幸せってなにか考えてしまったんだ (7)


私「今日で私も30代か……」

上司「おう、おめでとう!式の日取りは早めに言えよ?俺にも色々準備ってもんがあるからなっ」

私「いつ誰が結婚すると」

上司「なんだまだしないのか。お前30才になったんだろ、そろそろそういう…」

同僚「上司、今のこの晩婚の時代、三十路になったら結婚という考えは古すぎます」

上司「いや、だが出産を考えた場合30前半には籍を入れておかないとだな」

同僚「確かにそうですがそれはあくまで本人次第で女性が経済的に自立出来る世の中でなんちゃらかんちゃら」

私「あ、あはは……はは」

私(今日は残業しないで帰って……そうだ、ワイン開けよう)

上司「そもそもお前彼氏いるんだろ、彼氏はなんにも言わんのか」

私「え?」

同僚「そういえばそうですね、彼氏の話あんまりしないよな。なにしてる人なんだ」

私「……」

上司「年上か?もしかして年下とか」

同僚「まさか自営か?自営は止めとけ、苦労するぞ」




私(……ワイン開けて……ケーキは楽しみにしててって言ってたな……)

私(楽しみ)フフッ






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ーーーー自宅


ガチャ

私「ただいま」

「おかえり!」

私「わ、すごい。もうご飯出来てる」

「うん、今日は定時で帰るって言ってたから準備してたんだー」

私「そっか」

「ね、お風呂先に入る?それとももう始めちゃおうか」

私「こんなに好物ばっかり並べられててお風呂の後なんて待てないよ、お腹すいたっ」

「だよね、あ、ワインワイン」タタッ

私「着替えてくるね」

「はーい。グラスっと」カチャカチャ




私(11月16日、今日で30才。血液型はB型、家族構成は父母と兄ひとり)

私(地元の大学を卒業して東京に出て来て8年。仕事は普通の会社員、土日休み……平均収入)

私(趣味は散歩とか映画、お酒はもちろん好き)

私(特に大きな挫折やトラウマもなく、ごく普通に、本当に平々凡々と生活してきた)


「まーだー?ワイン開けるよー」


私(平々凡々……何事もなく……)


「はーやーくーー」


私(まあ……変わってる事がない訳ではない)


「あっ、こらにゃんこ!イタズラ駄目っ!めっ」


私(でもそれは……恋人が同性の女ってだけ。……私にとったら普通の事)








二人「「カンパーーイ」」

チン

女「お誕生日おめでとう、私ちゃん」

私「ん、ありがと」

女「今日でついに三十路かー、もうオバサンだね!オバサンの仲間入り」

私「だね、ババアだよ私、BBA」

女「なんか私ちゃんはずっと子供なイメージだからやだー、BBAになっちゃやだー」

私「そんなん言われてもなあ……てか女ちゃんなんて既にババアじゃん。私より誕生日早いんだからさ」

女「私はいいんだよー、私ちゃんが老化してくのがなんか嫌なのー」

私「なんだそら」



私(物心ついた頃には自分がどっちもイケる事を自覚していた。それについて悩みもしなかったし、むしろ倍楽しめると楽観していた)

私(でも学生時代、恋人は出来なかった。なんとなく男は友達、女子高でもないから漫画みたいな展開にもならなかった)

私(というかカミングアウトというものをしていなかった)


女「このワイン正解。ヤバいうまい」グビグビ


私(彼女とは東京に出て来て割りとすぐ出会った。だからかれこれ7年目?くらい)

私(出会いは元同僚。田舎者発想で2丁目行けば女のひとりやふたり的な思惑を実行する前に、ほんと偶然出会って始まった)

私「それってあらためて考えても奇跡だよな……」ボソ

女「ん?なんか言った?」

私「ううん、なにも」

大人百合、大いにアリですね


・・・・・・・・・・・・・


ギシッ……ギシッ……

女「んう……はあっ…」

私「はぁはぁ……」


ゴロン

私「……お風呂する?」

女「んーん、このまま寝る」



私(彼女と7年、いや約8年か。破局の危機とかあったかなかったのか、もはや思い出せない……そのくらい彼女との時間は流れるように過ぎて)

私(きっとなにかしら涙するような喧嘩や事件があったんだろうとは思うんだけどやっぱり思い出して葛藤する程度ではない……ような)

私(そんな、平和?というか安定……というか、自然でいて、でも意識し出すと不思議な日常)


女「ねえ」

私「なに?」

女「誕生日おめでとう」

私「………うん」

にゃんこ「ニャー」ゴロゴロ

女「ご飯?ほらおいて」ギシ

にゃんこ「ゴロゴロゴロゴロ」


私(……彼女がいて、にゃんこがいて……仕事に行って、生活して……私は幸せなんだよね)

私「………」

私(なんだろう……この気持ち。なんなんだろう、この寂しい気持ち)

私(寂しい?なんでそんな気持ちになるの……ひとりじゃないのに)





ーーーーーー寂しい理由が解らない、30才の私編


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