男「とあるアイドルのお話をしようか」 (53)

 ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、マジで疲れてんっすけどー』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、マジ収録楽しいんっすけどー』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、マジこいつとズッ友だしー』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

男「また呟いてる」

男「やれやれ、こうも呟いてなにが楽しいんだろう」

男「さて、今話題のSNSは誰もが安易に繋がることが出来る」

男「一般人から、有名人まで様々が登録している」

男「そして、今巷を賑わせているチャラチャラ系アイドル、チャラドルこと“ガール”もその一人」

男「今やフォローしてない日本人はいないのではないかと思われるくらいだ」

男「人気な理由は頻繁に呟くこと」

男「またフォローしてる方と馴れ馴れしく話してくれること」

男「兎に角誰からも愛されるチャラドル」

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

男「あっ、また呟いてる」

男「本当に仕事してるのかな」

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、マジ今日ダリィんだけどー』


ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、どーでもいいけどコイツハンパないくらい面白いし』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、いい加減に消費税無くしてくんねぇかなー』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、それのせいで小銭が増えて仕方ないんだよねー』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、ってか、ブラックサンダーまじ美味くね?』

コーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、ガソリンスタンドでハイオク満タンって言ってみたくね?』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、たしかにアタシ免許もってねぇけど、んなことどーでもいいじゃん?』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、なんで話してくんねぇかな?』


ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、さっきの呟きは気にしないでねぇ』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、チョコレート食べたい』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、チョコレートってもアタシが言ってるのはチョコバットだし』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、ブラックサンダーを打ち砕いたチョコバット舐めんなし』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、これコンビニで見たんだけどなに?』


ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、大人のチョコバットってなに?』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、思わず買っちまったし』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、だいたいみんな知ってんの?』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、だいたいみんな知ってるよね?』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、明日アタシのニューシングルの発売ってことさあー』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、特典もついてるしさー』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、買わなきゃ損じゃね?』


男「まあ、こうして一日中呟いてるわけで」

男「しかも、こうしてちゃっかり自分の売り込みもするっていう」

男「こうして彼女のシングルは今週も一位を獲得してる」

男「昨今の邦楽は腐ってるけど、彼女の歌も腐ってるんだ」

男「なんで一位になれるかって?」

男「彼女自身言ってた通り“特典”のおかげ」

男「なんとか商法って一種」


男「それでも彼女が満足してるならいいんだけどね」

男「世間にとやかく言われる世界だ」


ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、まじ感謝。また一位だし』

男「ほら、喜んでるし。いいんだよ。今は、まだ」

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、最近落ち込んでんだよね』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、まじ落ち込んでるってぇか怒り心頭的な』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、なに?なんなの?』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、まあ、いいか』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、こっちに引っ越してきて二年になるけど未だに土地勘ないんだわー』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、教えてよー薬局のあるところー』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、唯一知ってるのは郵便局だけってアタシどーなのよ』

ピコーン……

@charadollさんが呟きました。

『あのさー、郵便局だけって言ったけどコンビニも知ってからね』


男「彼女が呟けば全世界の人が眼にして」

男「眼にしたら誰かが返事をする」

男「なんとも素晴らしい世界だ」

男「なんとも素晴らしい電波世界だ」

ピコーン……

ピコーン……

ピコーン……

『新曲まじ神っす』

『今日は収録ですかー?』

『ってか、一位取って調子のんなよ』

『また商法かよーどんだけオタクからせしめるんだよ』

『1stシングルからファンでーす』

『かわいいね、かわいいね、かわいいね』

『私の大学でライブしてくださーい』

『ちょー好きです!!』


男「多種多様老若男女問わず返事がくる」

男「誹謗中傷から熱烈なファンからのメッセージ」

男「姿が見えない分やりたい放題」

男「いいね、って言えば賛同していいねの嵐がくる」

男「中には例外もあるけど」

ピコーン……

@that_vipperさんから返信がありました。

『ガールさん、チョコバット美味しいですよ』

ピコーン……

@that_vipperさんから返信がありました。

『ガールさん、その芸人さん面白いです』

ピコーン……

@that_vipperさんから返信がありました。

『ガールさん、収録も押してて大変でしたね』

ピコーン……

@that_vipperさんから返信がありました。

『ガールさん、最近忙しくてね、疲れてるのかな。帰ったらすぐ寝ちゃうんだ』

ピコーン……

@that_vipperさんから返信がありました。

『ガールさん、だから話せなくてごめんなさい』

ピコーン……

@that_vipperさんから返信がありました。

『ガールさん、消費税は無くなりませんが財布の中の小銭は簡単になくせますよ』

ピコーン……

@that_vipperさんから返信がありました。

『ガールさん、仕事中なんであまり自由に返事出来ませんが頑張ります』

ピコーン……

@that_vipperさんから返信がありました。

『ガールさん、家の近くの薬局は自転車で5分程度でありますよ』

ピコーン……

@that_vipperさんから返信がありました。

『ガールさん、あの郵便局の中にある毎月替わる一輪の花が楽しみですよね』 

ピコーン……

『@that_vipperって奴なに?』

ピコーン……

『こいつまじやばい』

ピコーン……

『ガールちゃん気をつけて』

ピコーン……

『おい、まじ誰か通報してもいいんじゃね?』

ピコーン……

『事務所が対策練ってるっしょ』

ピコーン……

『ってか、これも事務所側の自演だったりして』

ピコーン……

『うわぁ、今度は炎上商法かよ』

ピコーン……

ピコーン……

ピコーン……

@that_vipperさんから返信がありました。

『ガールさん、周りのことは気にしないでいいからね』

ピコーン……

@that_vipperさんから返信がありました。

『ガールさん、何があっても僕が守るからね』

男「物語は終盤にいるわけで」

男「まあ、こんな呟いてる間に何かしら変化は多々起きている」

男「こうしてる間にも誰かの近くに誰かがいる」

男「ほら、また一人」

男「呟いてる暇なんてもうないんじゃないかな」


ガール「ただいまっー」ガチャ

ガール「って誰もいねぇか、つうかいたら怖いしね」

ガール「かあー疲れたー」

ガール「あっ、呟かないと」ポチポチ

ガール「『あのさー、疲れたーなう』と」


ガール「おお、めちゃ返事来てるしー」ドレドレ

ガール「うわ、またアイツからじゃん」

ガール「アラサーマネージャーにいったら、いい宣伝になるから利用しようっていって対処してくんねぇし」

ガール「何かあったらどーすんだってぇの」


マネージャー「何かあるわけないでしょ」ヤレヤレ

ガール「げ、いつからいたの?」ビクッ

マネージャー「ただいまっー、ってとこかな?」

ガール「それ最初っからじゃん」

ガール「おかえり位言えし」

マネージャー「取り敢えずアラサーってとこははっきり聞こえてたけど、まあいいわ」

マネージャー「そのネットの住人は貴女には危害を加えれるわけないわ」

マネージャー「そんな度胸あるならネットなんかで胸張ってるわけないもの」

ガール「……んなもんかなー?」

ガール「けど、アタシん家知ってんだよ?」


マネージャー「たかが薬局でしょ?」ハァ

マネージャー「大抵5分くらい自転車でダッシュすれば薬局くらいあるわよ」

ガール「で、でも郵便局は?あの花の件……」

マネージャー「それも郵便局全体で行ってることなんじゃないの?」

マネージャー「いい?気にしすぎても駄目よ。お肌が大変になるわ」

ガール「さすがアラサーマネージャー」

マネージャー「先人の知恵よ」フフン

ガール「ぐーぐーぐー」ウトウト

マネージャー「って寝てるし」ヤレヤレ

マネージャー「でも、そろそろ何か対処したほうがいいかしら」

プルプルー

マネージャー「ん?電話?はい、もしもし。あっ、わかりました」

ガチャ

マネージャー「ごめん、ちょっと社長さんから呼ばれたから行ってくるね」

マネージャー「って寝てたんだったわ」

ガール「ぐーぐーぐー」

マネージャー「じゃあ、また後で」ガチャン


ガール「ぐーぐーぐー」

ガール「ぐー……はっ!」

ガール「ね、寝てた。水ちょうだい、水」

ガール「あのさー、水ー」

?「はい、水」

ガール「ありがとう」

ガール「あのさー……って、ん?」

?「なに?」

ガール「きゃーーーー」

ガール「だ、だれよ!ま、マネージャー!?」ガタガタ

ガール「あ、あのさー!」

?「だから、なに?」ニコッ


ガール「あのさー!誰かー!」ビクビク

?「だから、なにってば!」ニコッ

ガール「お前に話してんじゃねぇし!」イラッ

?「でも、ずっと僕の名前呼んでるし」ニコッ

ガール「呼んでねぇし!」


?「でも、呟いてるでしょ?僕宛に」

ガール「はあ?」

?「今も『あのさー、疲れたーなう』って」

?「ふふふ、目の前にいるんだから呟かなくてもいいじゃない」

ガール「ひぇっ……」ガタガタ


?「なんで怯えてるの?」

ガール「ほ、ほんとに誰?」

?「ガールさんはずっと僕宛てに呟いてるんだもん」

?「毎日やり取りできて楽しかったんだけど、やっぱりガールさんも駄目で」

?「勿論僕も多忙だからすれ違ってたでしょ」

?「だから、二人で生活しないかな?」


ガール「べ、別にお前宛に呟いてるわけじゃないし!」

?「えっ?でも毎回『あのさー』って言ってんじゃん」ニコッ

?「だから僕も『ガールさん』って最初に呼ぶようにしてるんだ」


?「照れなくてもいいんだよ」ニコッ

ガール「……なんで?……なんで?」ガタガタ

?「僕の事呼んでよ」

?「さあ、いつもみたいに」

?「ほら『阿野』って……さぁ」ニコッ

以上

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