京太郎「新入部員が」ムロ「私だけ!?」 (1000)

京太郎スレです

咲原作から1年後のお話になります

初スレ立てなss初心者なので変なところあったらつっこんで下さい

ムロたんイェイ~

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1415972675

清澄高校 麻雀部部室


ムロ「失礼します。……はぁ」

京太郎「ようムロ。どうやらその様子じゃ……」

ムロ「はい……。今日も駄目でした」

京太郎「もう学校始まって一週間。バーーーローー年生のほとんどは部活が決まってる頃だ」

ムロ「そうですね」

京太郎「そんななか、我が清澄高校麻雀部はどうだ」

ムロ「新入部員は私だけ……ですね」

京太郎「どうしてこうなった」

ムロ「ホントですよ。ところで染谷部長は?」

京太郎「アレ、あそこだ。ベッドで寝てる」

ムロ「染谷部長も大変ですよね。相当疲れてるみたい」

京太郎「いや、部員来なさすぎて拗ねてるだけ」

ムロ「えぇー」



京太郎「ん?誰か来るぞ!?」

ムロ「ホントだ!もしかしてやっと新しい部員候補が……!」






ドア「ガチャ」





トシ「私だよ」

ムロ「はい」

京太郎「知ってた」

>>2 修正


清澄高校 麻雀部部室


ムロ「失礼します。……はぁ」

京太郎「ようムロ。どうやらその様子じゃ……」

ムロ「はい……。今日も駄目でした」

京太郎「もう学校始まって一週間。新一年生のほとんどは部活が決まってる頃だ」

ムロ「そうですね」

京太郎「そんななか、我が清澄高校麻雀部はどうだ」

ムロ「新入部員は私だけ……ですね」

京太郎「どうしてこうなった」

いきなりやらかして恥ずかしい///



トシ「おやおや、期待させて悪かったねぇ」

京太郎「いえ、もはやお約束みたいになっちゃってますから」

ムロ「それで、今日はどうしますか?」

トシ「それなんだけどね、もうそろそろ部として活動した方がいいと思うのよ」

京太郎「う……。それはもう新入部員の獲得は諦めろって事ですか?」

トシ「そこは随時募集中って事でね。もう他の部は本格的に動いてるし」

トシ「ウチもいつまでも勧誘してるわけにはいかないでしょ」

京太郎「それはそうなんですけど……。」

ムロ「私もちゃんと部活した方がいいと思います」

京太郎「ムロもか」

ムロ「はい。ただでさえ人数が少ないのに部活の実態もないって、ちょっとヤバイですよ」

トシ「それに、ちゃんと部活してるところを見せれば興味がわく子もいるだろうさ」

京太郎「んー、それもそうですね。」

トシ「さ、そういう事だからいつまでも拗ねてるんじゃないよ部長」

まこ「うぅ……別に拗ねとる訳じゃ」

京太郎「いやメッチャいじけてましたよ」

まこ「うっさいわ。メガネメガネ……っと、さて」

ムロ「始めますか」

京太郎「今日はずっと打つんですか」

トシ「そうだね。京太郎はすぐに入れるように、まこは基本通りにね。ムロにはちょっとアドバイスしながらだね」

ムロ「わかりました」

まこ「しっかし、部活時間いっぱいに打つのも久しぶりじゃのう」

京太郎「なんかずっと勧誘ばっかしてましたからね」

まこ「その割には収穫は無かったがの……」

トシ「他の学校なんかはもう大会にむけてスケジュール組んだりしてるからねぇ。こっちはその分密度上げてかないと」

ムロ「予選までもう2ヶ月もないですしね」

トシ「部員が少ないのも考え様で良い事にしましょう。その分一人一人に集中して指導できるからね」

京太郎「それはありがたいんですけどね。でも」


まこ「いっつも同じメンツというのはのう。わし的には色んなヤツと打ちたいんじゃが……」



トシ「そこはどうにかしたいところだねぇ」

ムロ「じゃ、サイコロ回しますね」

トシ「さぁ、今は目の前の局に集中集中!」

京太郎「はい」

まこ「わしが親じゃな」





こうして今日の部活が始まる。
たった3人だけの部員。これが清澄高校麻雀部の現在の姿だ。
3年生で部長の染谷まこ先輩。2年生の須賀京太郎先輩。
そして1年の私、室橋裕子。
顧問で監督の熊倉トシ先生が居るおかげでやっと麻雀が成立出来るギリギリの状態。

この後も部員集めに奔走したが私の他に入部してくれる人はなく、結局はこのメンバーで大会に臨む事になった。

今日はここまで

基本はムロまこコンビでお送りします

こんばんわ。思ったよりレスついててビビってます
荒らしでなければ雑談OKです。どうぞお気軽に

SSって難しいね。存外に筆が進まない……
ってことで少し投下します

風越女子高校 麻雀部部室


久保「ちょっとお前ら集まれ」

池田「全員集合するし!」

未春「みんなー集まってー!」


久保「今日で強化合宿3日目、最終日だ」

久保「ランキング上位の奴らは言うまでもなくわかってるだろうが……」

久保「いよいよ今日の最終成績で出る校内ランキングの結果でインターハイのレギュラーが決定する」

風越部員's「「ゴクリ……」」

久保「レギュラー圏内に居る奴らも、そうでない奴も気合入れてけよ!」



久保「それで今日はリーグ戦やって成績貼る予定だったが」

久保「少し予定変更して特別ゲストに参加してもらう」

文堂「えぇっ!?」

池田「そ、そんなの聞いてないし!」

未春「華菜ちゃん、キャプテンなのに……」


    「えー特別ゲストだってー」
      「誰だろー」
         「マジでー」
            「ランキング落としたくねェ」


久保「それでは入ってきてくれ」



まこ「ど、どうもー」

ムロ「こんにちわ」

トシ「お邪魔するよ」


未春「染谷さん!」

池田「ゲッ!清澄!」


    「清澄高校!?」
       「マジでー」
         「清澄だって!?」
           「落チタクナーイ!」


久保「うっせーぞお前らァ!」

トシ「清澄高校麻雀部です。今日はよろしくお願いするよ」

まこ「部長の染谷まこです。よろしゅうお願いします」

ムロ「む、室橋裕子です。よ、よろしくお願いします」


文堂「これはちょっと意外でしたね」

池田「しかもレギュラー決定する日にブチ込むとか、コーチェ……」

ムロ「染谷部長、凄い人数ですね。流石名門風越」

まこ「そうじゃのう、ウチとはエライ違いじゃ……」

ムロ「何ちょっと凹んでるんですか!」

まこ「むぅ……。確か今年は去年より少し増えて90人くらいおるっちゅーとったの」

ムロ「90人!凄いですね」

トシ「この部室の設備見てごらん」

ムロ「エアコンが最新型ですね」

トシ「そうだね」

まこ「いやいや、そこじゃのうて」


まこ「広いフロアに何台も自動卓が置いてあるじゃろ。最新型じゃ」

まこ「それだけじゃのうて牌譜を採るノートが大量に……そしてそれをまとめるPCが何台も、更にプリンターも複数ある」

ムロ「あ、コレ凄い!プリント1枚ずつ折れるやつだ!」

トシ「そうだね」

まこ「おい」

ムロ「それにしても結構お金掛かってそうですね」

トシ「うん。これだけの設備を使う費用も人材もある。それが全てってわけじゃないけど、やっぱり人を育てるのには必要だし」

トシ「何より強くなる為の近道になるわ」

まこ「うちには無い強みじゃ」

トシ「そこが名門と呼ばれる所以だね」

久保「池田ァ!準備できたか?」

池田「はい!できてます!」

久保「よしそれじゃあ、二人には早速だが卓に入ってもらう。ホワイトボードに表があるからソレ見てくれ」

まこ「わしはA卓じゃな」

ムロ「私はE卓です」

久保「いいかお前ら、去年の準優勝校だからってビビってんじゃねぇぞ!」

久保「倒す気で打てよ!」

風越部員's「「はい!!」」

ムロ(ハハ、私は1年だから実績なんてないんだけど……って言ってもしょうがないか)

風越部員a「お願いします……!」
      b「うっし、お願いしゃす!」
         c「それではお願いしますね!」

ムロ(随分モチベーション高いな。校内ランキングとかレートとかあるんだろうけど)

ムロ「よろしくお願いします」


ムロ(それだけじゃないんだろうな)

ムロ(入部した時からわかっていたケド……「清澄高校麻雀部」「インターハイ団体戦準優勝」)



ムロ(やっぱり軽くないな)

久保「改めて、今日はありがとうございます」

トシ「いやいやこちらこそありがたいわ。急に合宿に参加させてくれなんて無理聞いて貰っちゃって」

久保「いえ、こちらとしても全国プレイヤーとの対局は部員の良い経験になります」

トシ「それも今は一人しか居ないけどね」

久保「……それにしても意外でした。清澄に入部希望者が集まらないなんて」

トシ「本当ね。去年活躍した部員の5人のうち4人が居なくなっちゃってねぇ。『清澄』の名前だけが残っちゃったから……」

トシ「これから麻雀を始めようっていう初心者の子には、敷居が高いと思ってしまうのね」

久保「そうですね」


トシ「それに部室に麻雀卓が1台しかないのよ。これじゃ麻雀で強くなろうと思ったら他の設備の整ってる学校の方が魅力的だわ」

久保「如何ともし難いですね」

トシ「人員不足は私にもどうしようもないからねぇ。3人には苦労かけるよ」

久保「3人?もう一人部員が?」

トシ「ああ、その子は男子だから今日は連れてきてないんだよ」

久保「へぇ、あっもしかして金髪の。去年のインハイの中継で見た記憶があります」

トシ「そうそう去年は女子の付き添いで行ったみたいよ。なんでもそれまでは雑用ばっかりやってたとか」

久保「実質マネージャーって事ですか」

トシ「彼、須賀京太郎って言うんだけどね、去年の春から麻雀始めた初心者だっていうの」

トシ「腕前も県予選の午前で敗退しちゃうくらいでね」

久保「よく辞めなかったですね彼。周りは全員全国トップレベルの打ち手で居づらくなかったんでしょうか」

トシ「ふふっ。そこが彼の凄いところなのよ」

久保「え?」

トシ「圧倒的な実力差を見せつけられたら普通はそこで落ち込んだりするもんだけどね、彼は違ったの」

トシ「京太郎は麻雀が好きでね。どんなに負けてもいくら勝てなくても楽しいらしいのよ」

久保「楽しい……ですか」

トシ「それに最近は実力の方もついてきてどんどん成長してる。見てるこっちも楽しくなってくるわ」


トシ「楽しんだ者勝ちね、麻雀でもなんでもそれって大事なことよね」

久保「前向きなんですね」

トシ「うん、そこで満足しないで常に全力で前に進もうとしている」

トシ「きっと京太郎はこれからもっと強くなるわ」

久保「……そうですね。私もそう思います。」

久保「前に向かう者には、きっと……」

とりあえずここまで

こんにちわ

本当は京ムロでいちゃいちゃするSS描こうと思ったんですけどそんな事なかった
書いてるうちに話がデカくなる一方だよ……!


一応京太郎とムロのW主人公のつもりで書いてます
という訳で少し投下。side京太郎です

数時間前 清澄高校


トシ「それじゃあ悪いけど……」

京太郎「俺の事は気にせず、二人の指導に当たって下さい」

京太郎「こっちはこっちで何とかなりますから」

まこ「すまんのう。毎度毎度」

京太郎「いえ、そちらも頑張って下さい」

ムロ「それでは行ってきますね。先輩」

京太郎「ああ。風越は強いからな、気合入れてけよ!」

ムロ「はい!」

京太郎「さてと、ネト麻の準備でもするか」





京太郎「よっしゃツモ!我ながら良い待ちだったぜ。これで5連続トップ!」

京太郎「ってもう昼か。これ書いたらメシにするかな……」

京太郎「あ、そういや牌譜用のノートこれでもう最後だったんだ」

京太郎「すっかり忘れてた。予備の分も買いに行かなきゃ」

京太郎「ついでに色々買っておくとしますか。えーと紅茶とかまだあったっけかなぁ……」





京太郎「……なんか買い出し行くのも随分久しぶりな気がするな」

昼 ショッピングモール


京太郎「よし。とりあえず必要なものは買ったし、戻るとするか」

京太郎「ん?なんだこれ『あの懐かしの味が復刻!つぶつぶドリアンジュース』だって?」

京太郎「こんなん明らかに地雷じゃねーか……うわ、しかもコレってホットなのかよ!」

京太郎「なんで復刻しようとしたんだ?素直に廃番にしておけよ……メーカー何考えてんだ」


京太郎「……でも俺、こういうのキライじゃないぜ」

京太郎「男は度胸。なんでも試してみるものってな――」



??「ああ!それはすばらくない!」


京太郎「え?」

煌「あ、すみません。つい叫んでしまいました」

京太郎「すばらくないって……」

煌「ソレ!その飲み物は本当にすばらくない!」

煌「私は知っています。その飲み物がどんなに人を苦しめるものなのかを……」

京太郎「……そんなにヤバイんですか、コレ」

煌「ええ。それは数ヶ月前の事でした……」

1年前 冬 新道寺女子高校 麻雀部部室


哩「ロン、5200。これで仁美のトビで終了ばい」

江崎「なんもかんも政府のせい……」

姫子「あっぶなかー。親戚ん方切っといて助かったばい」

煌「これで今日の罰ゲームは江崎先輩ですね」

哩「だな。そいぎ、今日の罰ゲームばってん……」


哩「コレやけん」


江崎「なんそい」

姫子「ジュース?ですか?『つぶつぶドリアンジュース』……え」

煌「ド、ドリアンって……」

姫子「どきゃんでん臭いって言う」

美子「……」

哩「面白そうやけん買ってみた」

江崎「イヤイヤイヤイヤこぎゃんん絶対飲めんから!!」

哩「ばってん、せっかく買ってきたんそいけんがら」

姫子「うわ、これふるぬっかとよ」

哩「これ元々ホットやけん」

美子「……」

煌「みなさん何を言ってるのかわかんない!おもしろい!」

哩「まぁまぁ、そんなおらばんでちゃ(カシュッ)……うわっ臭ッ!!」

姫子「部長!だいじょ……うええ!なんっなっなんこん匂い!」

江崎「なんもかんも政治くっさ!」

美子「……!」

煌「み、みさなん!とりあえず外へ!あと換気!」

哩「ちょおおぉーー!手にかかっtうぉ臭ッ!クッサ!!」

姫子「部長ー!」

煌「窓開けてー!扉も全開にして!」


哩「おああーー!!」

姫子「ぶちょーー!!」

京太郎「……」

煌「その後他の部員や先生にこっぴどく絞られまして……。それでウチの学校ではドリアン禁止令が発令される始末……」

京太郎「そ、そんな事が……」

煌「はい。ですので卒爾ながら声を掛けさせてもらいました」

煌「アレで不幸を被った者として見過す事はできません!それで助かる命があるのなら、こんなすばらな事はない!」

京太郎「ま、まああんた程の実力者がそう言うのなら……」

京太郎「ところで、話を聞かせてもらって思ったんですけど……」

煌「はい?」


京太郎(優希達が言ってたっけ。中学の頃、面倒見が良くて困ってる人を見過ごせない、すばらが口癖で)

京太郎(パッと見フェモラリスな感じの特徴的な髪形をしてる先輩がいたって……)

京太郎(それって確か去年の福岡代表の先鋒だった)


京太郎「もしかして、新道寺高校の花田煌さんじゃないですか?」

煌「え!ど、どうして私の事を!?」

京太郎「やっぱり」

ここまで
このあと滅茶苦茶麻雀した

方言が間違ってたらごめんなさい……ジェネレータとか使ったんですけどやっぱり変かも
2次創作で方言キャラが謙遜されるのが身をもって分かった気がする

晩ごはん食べ終わる時間くらいにまた投下する予定です

>哩「ばってん、せっかく買ってきたんそいけんがら」

>姫子「うわ、これふるぬっかとよ」

なんとなく佐賀県民が翻訳してみたwwただし原文は状況から推定
「だけど、せっかく買ってきたんだから」→「ばってん、せっかく買(こ)うてきたとけん」
「うわ、これ温かいやつじゃないですか!」→「うわ、こいぬっかとじゃなかですか!」

>>50
ネイティブだー。ありがとうございます。参考にしますね

方言に馴染みがないと機械翻訳しても、ん?ってなる
博多弁で「無理」→「こまめちゃん」になって誰だよって思いました。これ本当に使うんでしょうか


21時頃に投下予定
風越で麻雀打ったりご飯食べたりする話です

久保「それじゃあ、対局が終わったところから昼休みに入れ!」


風越部員's「ありがとうございました」
        「ございましたー」
           「やっと昼休みだよ」
              「腹減ったァ。点棒も減ったァ……」

まこ「お疲れさんでした!」

ムロ「ありがとうございました……ふぅ」


まこ「おう、お疲れさん」

ムロ「あ、はい。お疲れ様です」


トシ「二人とも、昼食は食堂が開いてるからそこで食べる事にするよ」

久保「おい、誰か案内頼む」

風越部員「はい、あ、どうぞこっちです」

トシ「それじゃ行こうか」

ムロ「はい」


久保「牌譜まとめたか?」

未春「はい、今持っていきます」

深堀「これです。こっちが染谷さんでこっちが室橋さんの」

池田「1軍メンバーは集合するし!」

文堂「はい!」

食堂 券売機前


ムロ「流石名門風越。食堂のメニューも多いですね」

まこ「関係あるんかい……しかしこがぁ多いと迷っちまうわ」

トシ「うん、ドリンクも充実してるね!」


ムロ「あ、レディースランチ発見」

まこ「ここにもあったんか」

トシ「そういえば、京太郎がよく頼むわね」


ムロ「なんであんなに好きなんでしょうね」

まこ「前聞いたら品数多くて色んなおかずが食べられるからっちゅーとったわ」

まこ「普通の定食じゃ物足りんのじゃろ」

トシ「最近の男の子は皆そうなのかねぇ。男の食事といったら昔は塩っ辛い新巻鮭で白米を沢山食べるって感じだったけど」

まこ「ありゃあ京太郎だけですよ。基本男子でレディースランチ頼んどるのはあいつだけですし」

ムロ「あぁ、フリーパス……」

トシ「フリーパス?」


まこ「インターハイ終わった後、学校で祝賀会開いてもろうたんですけど」

まこ「京太郎も雑用やらなんやらでメンバーを支援したって事でレディースランチ専用フリーパスっての贈呈されたんですわ」

ムロ「唯一それを持ってる者が、男子だけどレディースランチを注文できるという須賀先輩以外誰得なチケットです」

トシ「そんなの貰ってたのね。でも、それくらい他の女子に頼んだらいいじゃない」

まこ「前は咲が代わりに買っとったみたいで」

トシ「ああ、なるほどねぇ」



トシ「でもなんだかそれはそれで損してるんじゃないかしら。男の子的に」

まこ「わしもそう思うんけど本人はどうなんじゃろ。ソッチ方面はあんま気にしとらんみたいで」

トシ「男振りはいいんだけどねぇ。気遣いもできるし」

まこ「ムロはどう思うん?」

ムロ「え!?私ですか?え、えーと……」

ムロ「そ、そういうのはまだちょっとわかんないっていうか……」

ムロ「別に。須賀先輩は今のままでいいと思います」

まこ「ほうほう」

トシ「ふーん、これが今流行りの草食系ってやつなのかい」

まこ「じゃけどおんし、こないだ……」



ムロ「食券!!」




ムロ「買いましょう、早く」

トシ「ふふ。そうしようか、それじゃあこの話はまた今度ね」

ムロ「ええ~」

まこ「クックック……諦めんさい」

ムロ「ハァ……それにしても」



ムロ「風越って女子高なのになんでわざわざレディースランチなんて置いとくんですかね」

トシ「言われてみれば」

まこ「そうじゃな」

ムロ「私はカツカレーうどん定食で」

まこ「わしも無難にカレーにするかのう……ん?」

まこ「なんじゃコレ『ハーフ&ハーフカレー』?」

ムロ「何が半々で入ってるんですかね」

トシ「ハーフ&ハーフといえば、そんな名前のカクテルがあるわ」

ムロ「お酒ですか!?」

まこ「いや、流石にアルコールは入っとらんじゃろ……ちょっと買ってみるかいのう」

ムロ「わぁ、思ってたよりボリュームあるなコレ」


ムロ「これは……うどんの上にカツが乗りその上にカレーがかかっていて、ご飯と味噌汁が別に付いている!!」

ムロ「うどんと味噌汁で汁物がダブってしまったな。……汁物?うどんって汁物なのか?」

まこ「結構な量じゃな。大丈夫か?」

ムロ「まぁなんとか。それで結局何がハーフ&ハーフなんですか?」

まこ「ああ、食堂のおばちゃんに聞いたところ……」


まこ「カレーとシチューのハーフ&ハーフじゃ」

トシ「それホワイトカレーじゃないのかい?」


まこ「食べてみんと何とも言えん。最低でもカレーじゃし大丈夫じゃろ」

まこ「それより先生の……なんですそれ?」

ムロ「パンと、なんかソースの入った容器に……固形燃料ですか?」


トシ「バーニャ・カウダよ」

まこ「バーニャ?」

ムロ「カウダ?」

トシ「チーズフォンデュみたいなものね」

トシ「こうやって(カチッ)火を点けて……ソースがよく温まったところでパンや野菜なんかを付けて食べるの」

ムロ「へぇ、なんかオシャレですねー」

トシ「みんな揃ったところで、頂きましょうか」

ムロまこ「「いただきま~す」」

ムロ「まずはうどんから攻めるか」


ムロ(カレーは結構とろみがあるな。カツの上にしっかり乗って、カツを持ち上げるとたっぷり付いてくる)

ムロ(味は結構あっさりしていてピリッと辛い。これならボリュームがあっても食べきれるな)

ムロ(カツの衣はうどんのつゆを吸ってシャクシャクした歯ごたえ。このつゆの濃さとカレーが調度良く合う)

ムロ(カツは豚肉。厚くて食べごたえバツグン!噛むと肉汁が溢れる!)

ムロ(このつゆが甘めなんだよね。上手くバランスとってるな)

ムロ(さて、ご飯にカツを乗っけてみよう。ミニカツカレーだ。やっぱりこれも美味しい)

ムロ(そして味噌汁。具は大根と、三つ葉が多いな。これは予想通りの薄口)

ムロ(そしてこの三つ葉が口の中をサッパリさせてくれる)


ムロ「うん。美味しい」

トシ「学食のでも結構イケるもんだねぇ」

ムロ「そうですね」

トシ「野菜は茹でてもらって正解だったね。体があったまるよ」

ムロ「染谷部長は?ハーフ&ハーフってどんな感じですか?」

まこ「そうじゃのう、なんか……」


まこ「ご飯にかけて食べるにはちょっとパンチが足らんというか」

ムロ「ああ……」

まこ「いや、ご飯にシチューかける人もおるっちゅうし、多分この組み合わせにわしが慣れてないだけじゃ。多分」

トシ「ハーフ&ハーフってカクテルがあるって、さっき話したじゃない?」

まこ「言ってましたね」


トシ「あれね、普通のビールと黒ビールを1:1の割合で作るカクテルなの」

ムロ「100%ビールじゃないですか」

まこ「わけわからんのう」


トシ「ふふ、アレはアレで美味しいし、色んな組み合わせがあって楽しいのよ」

トシ「ところで、『ギネス』って黒ビールは知っているかしら?」

まこ「まあ、名前くらいは」

ムロ「色んな世界記録を認定するギネスブックの会社ですよね」


トシ「そうそう。それで、そのギネスビールで煮込んで作ったギネスカレーっていうのがあるのよ」

ムロ「ええ~!」

まこ「ビールのカレー!?」

トシ「それがコクが出て美味しいっていうのよ。私は食べたこと無いけど」

まこ「えーでもそんなん苦そうじゃけぇ」

トシ「よく隠し味にコーヒーを入れるっていうじゃない、それと同じよ。それにギネスって見た目の割に苦味が無いの」

ムロ「ああ、他にもカレーにチョコとか入れるって聞いたことあります」

トシ「あとビール酵母で肉が柔らかくなるっていう効果もあって一石二鳥よ」

まこ「へぇ」

ムロ「ビールって凄い」




トシ「こんな話してたらなんだか飲みたくなってきたね……」

まこ「いや駄目じゃろ」

トシ「それで、どうだった?これだけの大人数相手に対局するのは」

ムロ「最初は、緊張してちょっと調子出ませんでした……」

まこ「まぁ最初じゃけえ無理もないの」

ムロ「やっぱり強豪校って違いますね。なんか、みんな相手を倒すぞって気持ちが前面に出てるっていうか」

トシ「風越は校内ランキングの順位が重要視されるからねぇ」

トシ「大人数を抱える学校に特有の競争心を煽って選手を鍛える方針だから、勝ちに貪欲なんだよ」

ムロ「でも少し面食らっただけで、決して気持ちで負けてる訳じゃないですからね!」

トシ「そうそう、その調子だよ」

まこ「今頃吉留さん達はムロの牌譜でも見て研究しとるじゃろうな」

ムロ「な、なんか複雑な気分ですね……。自分のデータを見られたり対策取られたりするのって」

まこ「もう明日には風越の麻雀部員総勢90人にムロの牌譜が見られるんじゃよ?」

ムロ「うう……!なんかムズムズしてきました」

トシ「全国行ったらもっと多くの人に見られるよ?確か高校生の競技人口は1万人だったかしら」

ムロ「うああ……!」


まこ「しかもテレビ中継もされるしのう」

トシ「視聴率40%!」



ムロ「う、うわあああああああああ!!」



ムロ「って、なんでそんなプレッシャー与えてくるんですか!?」

トシ「ちょっとした悪乗りよ。特に理由はないわ」

ムロ「えぇ……」

まこ「すまんすまん。でも、そんな深く考えんでもいいぞ?」

まこ「どうせ対局するんは自分と目の前の3人しかおらんのじゃけぇ」

まこ「そんでそれを何回か繰り返すだけじゃ」

ムロ「はぁ……気軽に言いますね」

まこ「ああ、あんまり気負い過ぎると潰れちまうけぇの。それで全力が出せんかったら本末転倒もいいとこじゃ」


まこ「期待を一身に受けて臨むのもええがの。結局、人が持てるもんなんて限られちょる」

まこ「アレもコレも持ってこうとせず、最後に一番大事なもんを持っとったら、それでええんよ」

トシ「まずムロはプレッシャーに慣れなきゃね。午後からの課題は自分の一番最適な状態を探す事」


ムロ「最適な状態……」

トシ「緊張しすぎるのもいけないけどね、適度な緊張状態は脳を活性化されるから」

まこ「緊張感を楽しめればベストじゃな」

ムロ「ベスト……須賀先輩みたいにですか?」

まこ「そうじゃな。そこいくと京太郎はその分野の極致に片足突っ込んどるの」

トシ「ムロはムロのいいようにしなさい」

トシ「世の中には一切プレッシャーを感じるどころかやる気さえ見えないような状態で打つ人間も居るんだから」

まこ「ハハハ……」



トシ「それじゃ、そろそろ時間だし戻ろうかね」

まこ「もうそんな時間か」

トシ「あ、そうそう。きっともうレギュラーに近いメンバーはすでに牌譜を読み込んでるだろうから」

トシ「そこのところちょっと意識してみなさい」

ムロ「は、はい」

まこ「早速緊張しとるのう、じゃが安心せい」





まこ「お前さんの打ち筋なんて分かったところで、まず対策は取れんけぇ」

トシ「二人ともそこが強みだね」

久保「よーし、片づけ全部終わったな!?全員集合!!」


久保「今日はお越し下さって本当にありがとうございました」

トシ「こちらこそ。こんな大人数相手に打てる事なんてまずないからね」

ムロ「本当にいい経験になりました!」

まこ「大会まであんまり時間も無いですが、お互い悔いを残さなんよう頑張りましょう」

池田「ウニャアー!今年は絶対龍門渕倒して全国行くし!個人戦でもな!」


久保「全員、清澄高校の皆さんに、礼!」


「「「ありがとうございました!!」」」


夜 駅前


トシ「じゃあね。気を付けて帰るんだよ」

まこ「そいじゃ、また明日の」

ムロ「はい、さようなら」





ムロ(……ふぅ。……ダル)

ムロ(……疲れた)



ムロ(体は疲れてるのに……でも頭は冴えてる……)

ムロ(まだ興奮してるのかな……。あと半荘2、3回は打てる気がする)

ムロ(打たないけど)

ムロ(……)


ムロ「あっ……月……」

ムロ「……」







ムロ「……あ、もしもし?須賀先輩ですか?私です。今大丈夫ですか」

ムロ「はい。今終わって帰ってるところです。先輩は?あ、先輩も……はい。今ハギヨシさんの車ですか」

ムロ「はい……はい……そうなんですか?こっちも風越の皆さんすっごく気合入ってて」

ムロ「ええ、そうなんですよ。……はい、でも私も頑張りましたよ!」


     「……ええ……だって…………そう……」

          「……はい……………それで……ホント……」

              「え……それ……すばらです……!」
                 
                  「……そうい……レディ…………あって……」


同時刻 風越女子高校


久保「染谷の牌譜は相変わらずわっかんねなァ」

文堂「まるで相手の手牌が見えてるみたいですよね。鳴いて相手の当たり牌をずらしたり要所を鳴かせたり」

未春「でも実際はその場の情報で対応してるんじゃなく、自分の記憶からイメージを引っ張ってきている……」

深堀「はい」

久保「しかもそのイメージがほぼ全ての局面で良いように適用できるってのが憎らしいな」



久保「ウチも一人くらい中国人留学生でもとりゃ良かったかね」

未春「いや、それはピンポイントすぎます」

池田「まぁ染谷に関しては有効策とれないってそれは分かってましたけどね。で、問題なのが」


池田「コイツ。新顔の室橋裕子」

久保「コイツはわかりやすいな」

文堂「異常ですよね、この放銃率の低さと和了率の高さ……。おかしいですよ」

池田「そこは置いといて……」

深堀「置いとくんですか」

池田「問題は結果じゃなくて過程だ。どうやってそんな数字を叩き出したかっていうと……」


未春「実際に打ってみても違和感あったけど……」

久保「コイツ、相手がリーチかけてもなかなかオリねぇのな」

未春「当たり牌持ってても握ったまま手変わりしてきて」

池田「うん。コレ、午後の対局のやつだけど」

久保「ああ、リーチせずに和了重視で打てって言っておいたやつだったな」

池田「はい。他家が速攻3順目テンパイしたけど流局したやつです」

久保「ダマでもおかまいなしか。」

池田「それが相手の当たり牌なら孤立するような牌ツモってきても、場に2枚切れの字牌でも絶対捨てません」

文堂「二家リーチしてても振り込まない。こんなの普通出ちゃいますよ」

久保「危険牌をビタ読みしてきやがる」


久保「それでもうひとつ異常なデータがある」

久保「コイツ、テンパイしてもまず即リーはかけねぇ」

池田「でも、たまにリーチをかける時があれば……」



久保「こりゃあまるで……」

久保「おい文堂、テメェは対局しててなんか感じ無かったか?」

文堂「いえ、なにか配牌に影響を及ぼしたりとか、ツモ牌が偏ってるとかは無かったと思います」

池田「少なくとも天江衣に似たモノではないか……」







久保「じゃ、今日は解散だ。まずは目の前の団体戦優勝に集中する事。いいな?」

風越部員's「「「はい!!」」」

池田「今年こそ絶対借りは返すし!」



久保「そういや、清澄はなんか研究とかしてたか?」

深堀「いえ、なんかビールの話で盛り上がってました」

久保「は?」

今日はここまで

風越編終了
終盤はムロの打ち筋についてでした
麻雀あんまり詳しくないけど、こんな感じで伝わったかな?

こんばんわ

寒いですね。今日はウイスキーのお湯割りで温まります
今NHKでマッサンやってますね。その影響でウイスキーブーム来てるみたいです
それはいいんだけど、竹鶴12年もう飲めないのは悲しい……


今回は京太郎のお話。時間軸がちょっと飛んでる気もしますが気にしないでください
24時頃投下予定

以下おまけ



現在公開可能な情報

文堂星夏

風越女子高校 2年
団体戦では先鋒を務める

能力:理牌する事で発動。配牌やツモ牌に対して他プレイヤーの支配を受けているかどうかがわかる
   効果範囲は自分のみ。なので他プレイヤーにどんな牌が集まっているのかは察知できない
   なお、プロ麻雀せんべいカードには適応されない

文堂「この配牌(アソート)はおかしい!」

夕方 駅前


煌「それでは。ムロによろしく言っておいて下さい」

京太郎「はい、花田さんもお元気で」

哩「そいきんた、さいならばい」

京太郎「今日はありがとうございました。鶴田さんも大会頑張って下さい」

姫子「須賀君も。お互い頑張りしゅうよ」

京太郎「はい。それじゃ、俺迎えが来てますからこの辺で」

煌「はい。今日この日の出会いは本当にすばらでした!」




煌「行ってしまいましたね」

姫子「ん?先輩。須賀君の迎えってあのクルマやろか……」

哩「え、まさか。あれってリムジンやろ……始めて見たばってん」

煌「もしかして須賀君のお家ってお金持ちなんでしょうか?」

ハギヨシ「お迎えに参りました」

京太郎「どうも、ハギヨシさん。いつもすみません」

ハギヨシ「いえ。ところで、あそこにおられる女性方は」

京太郎「新道寺女子の花田煌さんと鶴田姫子さん、OGの白水哩さんです」

京太郎「なんでも長野に旅行で来たみたいで」

ハギヨシ「なるほど。新道寺女子といえば北九州の強豪校としてその名が知れられていますね」

京太郎「そうですね。噂にたがわぬ強さでした」


京太郎「彼女達みたいな実力者と戦えるなんて……本当、龍門渕さんや天江さんに鍛えてもらったおかげです。感謝してます」

ハギヨシ「そういえば、須賀さんが龍門渕にいらっしゃる様になってからもう半年以上になりますか」

京太郎「そうですね、去年の秋頃からですね。最初は竹井先輩に連れられて……」

1年前 清澄高校


京太郎「だはーー!もう無理!」


まこ「お、出来たみたいじゃの」

京太郎「やっと、遂に、終わったー!これでこんな分厚い問題集ともオサラバだぜ」

和「お疲れ様です。それにしても……まだ取り組んでから1時間も経ってませんよ?須賀君は集中力が足りてないですね」

京太郎「そんなこと言われてもなー」

京太郎「もうテキスト飽きたし」


和「基礎知識は身についてるみたいですが、まだまだです。むしろここからですよ」

優希「修行が足りん!出直してこい小僧!」

和「そういう優希も、ケアレスミスが少なくないようですけど?」

優希「げげ!」

優希「でも私は東場で稼げるからいいんだじぇ!」

和「何言ってるんですか、たまたまです。いくら東場が調子よくても南場でボロ負けしてしまっては意味がありません」

和「ホラ見てください。さっきの南2局、この手牌からだと……」



まこ「お疲れさん。随分と詰め込んどったようじゃの。ホレお茶」

京太郎「あ、染谷部長どうもです。(ズズッ)……ふぅ。もう詰め込みに詰め込んで頭パンパンですよ」

京太郎「夏休み最終日かってくらいです」

まこ「ハハハ、まぁ和も気張っとるけぇの。女に求められたらそれに応えるのが男じゃろ」

京太郎「そうなんですけどね。でも流石にこう毎日勉強勉強だとちょっと……」


和「学生の本分は勉強ですよ」

京太郎「そーなんだけどさぁ……。それにしてもなんかこう、工夫というか?」

京太郎「モチベーション維持の為にもさ、なんかないかなって」

まこ「それは大事じゃな」

和「モチベーションの維持、ですか」

京太郎「うん。マンネリ解消とも言う」

優希「タコス食うかー?」

京太郎「要らん」


優希「要らん?……いらん、イラン!ソーレッ☆ダダダダダダダダ……ココ!イラン!」


和「優希、そこはアゼルバイジャン共和国です」



「どうやらお困りのようね」


優希「なに!?」



「お茶やコーヒーを飲むと、その中に含まれているタンニンによって鉄分の吸収が妨げられるの」

「食事中や、食後すぐに飲むのは控えるべきね」


「人それを鉄欠乏性貧血という」



まこ「一応聞いといたる。誰じゃ」


久「お前たちに名乗る名前はない!」

京太郎「あ、お疲れ様です竹井先輩」

久「おひさ~。なんか最近頑張ってるみたいじゃない。エライエライ」

まこ「もう生徒会の方はええんか?」

久「ええ、もう引き継ぎも済んだから晴れてお役御免ってわけ」

久「これからしばらくは須賀君の指導に集中できるわ」


京太郎「すいません。わざわざ」

久「ううん。後輩の面倒をみるのは先輩の役目よ。貴方にはなかなかかまってあげれなくて悪かったわ」

京太郎「はは……基本雑用ばっかしてましたからね」

久「それでもずっとこの麻雀部を支えてくれた貴方にせめてもの恩返し。遠慮なんてしないでね?」

京太郎「竹井先輩……」




久「別に受験勉強に飽きて気分転換しに遊びに来た訳じゃないわよ?ホントよ?」

京太郎「ええぇ」

まこ「全く、おんしは……」

久「でも須賀君の気持ちもわかるわ」

久「私も参考書の前には30分も居られないもの。なんかイライラするのよねー」

優希「まったくもって!」

京太郎「俺より酷いじゃないですか」

和「それで受験の方は大丈夫なんでしょうか……」



久「やっぱりモチベーションを保つのは大事よね」

京太郎「なんかいい方法とかってあります?」

久「そうねぇ。私がいつもしてるのだと、チェックリストの作成とかかしら」

京太郎「チェックリストですか?そういえば大会の時も色々書いてましたね」

久「ええ。内容は試合に行く前にする事、身だしなみとかバナナを食べるとかだけど」

久「まぁ別になんでもいいのよ」

京太郎「そうなんですか?」

久「いきなり『さぁ、勉強するぞ!』って、なかなかそんな気分にならないでしょ?」

久「だからそういう比較的面倒臭いと感じない事からステップアップしていって」

久「やる気を加速させてからの状態で課題に取り組むの。行動を起こした事を目に見える形にするのが重要ね」

京太郎「なるほど。へぇ、そういう事だったんですか!」



まこ「まさかほんに有能な話するとは思わんかったわ」

和「またワイドショーとかテレビで知ったトリビアを披露するものだとばかり……」

久「え、ひどくない?」

久「でも1番いいのは環境を変える事ね」

久「ずっと同じ環境や行動してると刺激が足りなくて悪い意味で慣れてきちゃうし」

京太郎「ですね」


優希「私は毎日タコスでも全然飽きないじぇ!」

和「それは栄養面で問題があります」


久「私も学校の図書室で勉強する事が多いわ。自分の部屋だと教科書すら開けないのよね」

京太郎「わかります。俺も自室だとネットやテレビの誘惑があって、なかなか勉強する気になりませんから」

久「あと一人でしてると、どうしてもだらけちゃうわよね」

久「だから最近は美穂子と一緒に、お互いの部屋で勉強してるの」

和「なんかいいですね。一緒に勉強会って」



久「おかげで前より部屋が綺麗になったわ」

まこ「おい」

久「あとよくカフェで勉強してる人とかいるじゃない?」

京太郎「居ますね」

久「あそこも集中するのにいいみたいよ。リラックスするBGMにコーヒーのカフェイン、ケーキの糖分」

久「適度な雑音も、人によっては集中しやすいっていうわ。静かすぎると落ち着かないって言う人多いし」

まこ「ちなみに、BGMを掛ける事で他の客の話声を緩和する効果があるんじゃ」

まこ「詳しい話は忘れちまったがの、まぁ人間の耳の仕組み上そうなるっつーことで」

久「あら、お株とられちゃった」

まこ「これでも一応家が飲食店なんでな」

久「でも1番大きな理由としては、タダじゃないってことね」

久「勉強しにお店に入ったのに、そこでダラダラしてたらもったいないじゃない」


優希「ミスドならカフェオレおかわり無料だじぇ!」

和「優希、まさかとは思いますが……」

京太郎「ふんふむ。環境を変える、つまり部室以外で打てばいいのか」

まこ「うちでたまに打っとるがの」

京太郎「でも普通に部活するみたいに長時間占拠するわけにもいきませんよ」

まこ「そりゃまぁそうじゃ」

京太郎「でも常連さんと打つの気分転換になります。実際に打つ雰囲気ってネト麻じゃ無理ですから」

久「やっぱり、リアルで色んな人と打ちたいわよね。うーん……」

和「私達だとプレイスタイルを変更して鳴き重視で麻雀するくらいはできますけど」

久「そういえば、須賀君のプレイスタイルって……」

京太郎「和了効率重視のデジタルですね。師匠が根っからのガチデジ派なんで」

和「ガチデジ……」


久「そうね……それじゃあ須賀君のプレイスタイルを模索してみましょうか!」


優希「京太郎の」

京太郎「プレイスタイル?」

久「ええ、世の中には色んな麻雀を打つ人が居るわ。鳴いて速攻を仕掛けたり打点上昇を狙ったり……」

久「デジタルの知識も大事だけど結局は自分の考え、好みによる選択よ」

まこ「麻雀っちゅーのはほんに性格が出るゲームじゃからの」


久「須賀君はなにかしてみたい事とかある?」

京太郎「え、うーん。急に言われても……そうですねぇ」

久「例えば誰誰みたいな打ち手になりたいとか、こんな麻雀してみたいとか」

京太郎「えーと……漠然とですけど、やっぱり咲みたいな特殊な打ち方は憧れるっていうか、やってみたいとは思います」

久「じゃあやってみましょうか」

京太郎「え?」

和「そんなオカルト、ありえません」

久「ふふ、言うと思ったわ。こんなのもたまにはいいでしょ?色んな打ち方を経験するのは悪くないわ」

久「それに今回はいつもと違う事をしてマンネリ解消するっていう、いわば息抜きみたいなものだし」

和「まぁ、そういう事なら……」

久「じゃあ決定!今日は須賀君にオカルト能力を開発しましょう!」

京太郎「ええ!?」

優希「おお!なんか面白そうだじぇ!」


まこ「久、マジで言っちょるんか」

久「まあまあ。言ったでしょ?息抜きだって。ほんのレクリエーションよ」

久「それで、もし何かしらの能力を習得できたらラッキーってことで」

まこ「ま、それもそうじゃのう」

今日はここまで
本編に回想ぶっこむスタイル(原作リスペクト)

こんばんわ。

面白いって言われると素直にうれしいです。ありがとうございます。
こんなSSでよければいくらでもって言いたいところだけど……
残念!今回の投下分で書き溜めが無くなってしまった!

少し短いけど投下します
今回はオカルト考察編です

久「早速だけどどうしようかしら」

京太郎「いきなりオカルト開発って言ってもなー。そういうのって大体知らずと身に付いてるものじゃないんですかね」

まこ「ここは近場の人間から考察してみるかの」



優希「私の能力『ビギニング・オブ・ザ・タコス』に目を付けるとは、オヌシなかなかやるな!」

まこ「さて、優希のは東場でのみかかるブーストじゃな」

久「基本的に門前でのプレイ、特にドラを絡ませてのリーチ・一発が目立つわね」

京太郎「それで点数もバカ高くなりますからね。跳満とか連発しますし」

優希「半端な打ち手じゃ止められないじぇ!東二局は来ない!」


久「それとスピード重視の鳴きのスタイル」

京太郎「ただでさえ5~6順目でテンパイするほど速いのに」

まこ「鳴いて加速するスタイルじゃがこの場合は安手ばかり入っちまうけぇ」

優希「身軽にならないと速く走れないんだじぇ」

京太郎「ちゃっかりドラは乗るけどな」

まこ「じゃが南場に入ると途端に弱っちくなるのう」

優希「う」

久「南場だと防御重視で固まってるけど、そこで相手に和了られまくってトータルでトントンって事が多々あるわね」

優希「う」

京太郎「南場だったら俺の方が強いかな」

優希「ええ~流石にもうちょっと強いじょ」


久「こんなところかしらね」

優希「参考になったか?」

京太郎「うーん……俺別に東場だから調子良くなるってのは感じた事ないなぁ」

久「それじゃ席は?東家とか西家とか」

優希「私はモチロン東家だじぇ!東場の東家で倍プッシュ!」

京太郎「それもないですね」

まこ「席に関しては結構好みがでるの。常連さんとか、よくこの席だと駄目だとかこの席だと勝てるとか言うとるわ」

久「オカルトっていうかジンクスみたいなものね」


久「そう言えば、永水の薄墨さんは北家に座る事で発動する能力だったわね」

優希「あのちっこいロリ巫女だじぇ」

京太郎「お前が言うのか」

久「あとは……咲はどうかしら」

京太郎「嶺上開花ですね」

まこ「普通、嶺上開花の成功確率は0.28%らしいわ」

優希「マジか」

久「そこいくと咲なんて有効牌持ってきてそこからリーチとか、当たり牌持ってきてもまた連槓しにいったり」

久「バリエーション豊かで嶺上牌を一つの戦術として組み込んでるわ」

京太郎「なんでそんなに槓できるのか」

優希「エニグマティックだじぇ~」

まこ「そこは本人に聞いてみんとわからんの」

白糸台高校 麻雀部専用第2休憩室


咲「…………うん、うん……それじゃあね、京ちゃんも元気でね。あんまり和ちゃん達に迷惑かけないでよ?」

咲「……え、私の方がって……大丈夫だから!……うん」

淡「サキー、テルがお菓子買って来てくれたって!」

咲「あ、はーい。それじゃね、また今度電話するから」

淡「あり、電話してた?」

咲「ん、もう終わったから大丈夫だよ」


誠子「なんか楽しそうだったじゃない」

尭深「うん。咲ちゃん……紅茶と緑茶どっちが良い?」

咲「じゃあ紅茶でお願いします。……久しぶりに長野の幼馴染から電話があって」

咲「世間話に花が咲いちゃいました」

尭深(咲だけに……)

誠子「ふぅん、元気してるかーとか?」

淡「サキは麻雀以外ポンコツだからねー」

咲「そんな事ないよ!」

咲「それで、麻雀で聞きたい事があるって。私の打ち方について教えてくれって話なんですけど……」

尭深「嶺上開花?」

咲「はい。それを普段何を考えて打ってるのかって」

誠子「へぇ、そういえば能力の細かい話は聞いた事無かったな」

淡「カンして好きな牌持ってきて和了るだけじゃないの?」

咲「ま、まぁ結果としてはそうなんだけどね……」


尭深「結果としては?」

咲「はい、そもそも私、嶺上牌から好きな牌を取ってくるなんてできません」

淡「ええ~嘘だあ!?」

誠子「え、何ドユコト?咲の能力って王牌を支配してるんじゃないの?」

咲「ち、違います……ただ嶺上牌はソレが何か見えるだけです」

尭深「そうなんだ」

咲「だから、それで和了れるように手牌を構築していくだけです。槓材も見えますから組みやすいですし」

誠子「でもだからってあんなに槓材は集まらないだろう……」

咲「あの牌(嶺上牌)で和了りたいなぁって思うと集まってくるんです」

誠子「ええ……」

淡「何それズッコイ!」

尭深「淡ちゃんが言える事じゃ……」

淡「ズッコイよー!だってサキ、穏乃が能力発揮しても効いてなかったじゃん!」

咲「ああ、アレは穏乃ちゃんの能力の効果範囲の問題じゃないかな?」

咲「淡ちゃんの支配領域はカン裏でしょ?」

淡「うん」

咲「ホラ、上段と下段で」

淡「え、そういう事?」


誠子「そっかーじゃあ私の『必殺・マウンテンサークル』は使えないかぁ」

淡「するつもりだったの……」




照(咲は自分で気づいてないみたいだけど)


照(咲が見ると、んぐ。嶺上牌がロックされるんだよね)

照(だからその嶺上牌は他の支配に影響を受けない……ごっくん)

菫「お前、ここにあったカスタードシューが足りないんだが知らないか?なぁオイ?」

照「し、知らんけど……ケプ」

菫「コッチ向け」

今日はここまで

一応これがこのSSでの能力設定です。ちょっとココ原作と違うジャンよーってなっても勘弁して下さい

こんばんわ。今回の投下分書き終わったー

早速投下します

京太郎「じゃあ次は竹井先輩」

まこ「悪待ちじゃな」

久「それなんだけど、私の場合はオカルトじゃない気がするのよね」

久「どっちかって言うと体質?」

優希「人生悪待ちだじぇ!」

久「そうね。鶴賀のモモちゃんのステルスと同じ様なものだと思うわ」

久「その人の体質が麻雀にも影響を及ぼすっていう、いい例ね」

京太郎「染谷部長は……」

まこ「わしか?わしはただ卓上のイメージを思い出しとるだけじゃけぇ」

まこ「オカルトとは違うのう」

京太郎「いや、あんなん俺から見たら十分にオカルトじみたアウトプットですよ……」

優希「それならのどっちもオカルトじみてるじぇ!」


和「え?わ、私ですか?」

久「なに?さっきから話に入れなくてむくれてる和のオカルトですって?」

和「む、むくれてません!」

優希「むくれてるじぇ!ほっぺもおっぱいも膨れっ面だじぇ」

和「優希!」

和「大体、私のどこがオカルトっていうんですか。私はれっきとしたデジタルです」


京太郎「オカルトが効かないオカルトかな?」

まこ「卓に着くと発情するオカルトかの?」

久「先輩のアドバイスをガン無視するオカルトかしら?」


優希「おっぱ……ムグッ」

和「言わせませんよ?」


和「あと、竹井先輩はソレ根に持ってたんですか」

久「いやぁ、あそこまでいくと逆に清々しいわ」

京太郎「それであとオカルト持ってる人って言ったら……」

まこ「近場におるじゃろ。もの凄いのが」

久「天江さんと龍門渕さんね」

京太郎「今年は全国に行けなかったけど、県予選決勝の天江さんは本当に凄かったな……」

優希「あのロリっ娘の実力は流石の私も認めるところだじぇ」

久「あれで去年の大会MVPだものね」


久「海底撈月に注目しやすいけど、それだけじゃなくて速攻・高打点の和了り、それに」

久「一向聴地獄……実際にやられると結構SAN値が削られちゃうのよね」

まこ「手が届きそうなところまで見えとるのに届かんとは、いやらしいのう」

久「それで海底牌取られちゃうのよねぇ」

優希「鳴いてツモ牌ずらしてもまた鳴かれてコースインしちゃうんだじぇ」

京太郎「恐ろしいですね……」

久「あれこそ場の支配ってやつね」

久「それから龍門渕さん。確か、治水だったかしら」

京太郎「へぇ、治水。それってどんな能力なんです?」

久「それはね、えーと……なんというか」

久「なんだっけ……」

京太郎「ええ!?覚えてないんですか?」

久「ちょ、ちょっとド忘れしただけよ!……和、なんだったかしら?」

和「私に聞きますか……わかりません。私と対局する時の龍門渕さんはいつも通りデジタルでしたから」

まこ「そういえばソコんところ、妙にこだわってたのう」


優希「今こそ真のアイドルを決める時ですわ!原村和!」

久「あ、似てる」

久「仕方ない、ちょっくら電話してくるわ」

まこ「ほーい」

優希「いってらー」



久「……もしもし、竹井久です。今龍門渕さんに替わってもらっても大丈夫ですか?」

久「……はい、ちょっと麻雀の事で……はい、お願いします」



京太郎「それにしてもオカルトかぁ。実際、俺にそんな事出来るのかな」

和「出来なくていいですよ。そんなものに頼らなくても須賀君は強くなれます」

まこ「まぁ、オカルトだろうがなんだろうが、自分の好きに打つのが1番じゃけぇ」

優希「東場でトバすのが快感なんだじょ……むふふん」

久「みんな、急で悪いけどすぐに出かける準備してくれる?」

和「え、なんですか?」

京太郎「どっか行くんですか?俺達が」

久「ええ、電話で教えてほしいって言ったら『百聞は一見に如かず』ですって」

まこ「なに今から龍門渕行くんか」

久「ソユコト」

優希「おお!」





清澄高校 校門前


ハギヨシ「お迎えに参りました」

久「あ、あら、ありがとうございます……すみませんお待たせしちゃったみたいで」

ハギヨシ「いえ、これも執事の勤めですから」



まこ「さっき久が電話してから10分も経っとらんよな?」

京太郎「まぁハギヨシさんですし」

優希「なんという説得力」

龍門渕高校 麻雀部部室


ハギヨシ「では、ごゆっくり」



透華「お待ちしておりましたわ!原村和!と、清澄高校麻雀部の皆様」

一「みなさん、お久しぶりです」

智紀「どうも」

純「お、来たか」


久「本日はお招きいただきありがとうございます」

透華「いえ構いませんわ。それより、この私の打ち筋に興味があるとか」

久「ええ。ちょっと後輩のプレイスタイルの参考になればと思ったんですけど」

透華「後輩?」

京太郎「どうも始めまして。須賀京太郎と言います」

純「オレは見た事あるぜ。県大会の時にタコスにタコスを届けてた奴だな」

一「タコスにタコスって……」


優希「タコスの恨みは深いがそれを許す寛大な心がタコスにはあるのだ。タコスに感謝するんだな」

純「そうだね」

透華「ふぅん。まぁ良いですわ。それで、私の能力の事ですけど」

透華「申し訳ありませんが簡単にお見せする事は出来ませんわ」

久「あら、企業秘密って事?でも合宿の時は見せてくれたじゃない」

透華「そういう意味ではありませんわ。実は、あの状態は私自身の意思でなれるものではありませんの」

久「そうなの?」

一「透華は強い相手に囲まれるとああなっちゃうんだ」

純「ま、あんまし自分でも気に入ってないみたいだからな。基本いつもの状態で打つんだが」

一「うん、ボクもいつもの透華の方が好きだな……」

透華「そういう事ですの。ですから」

透華「どうしても私を本気にさせたくば、力づくでいらっしゃいまし!」




 「成程、話は単純だな」



京太郎「え?」

衣「今宵は月が満ちている。衣の力を存分に発揮できるぞ」

まこ「出たの」

久「お久しぶり、天江さん」

衣「うむ!清澄が遊びに来たと聞いてとんできたぞ!」

透華「衣、貴方もですの?」

衣「うん、衣もひさびさに冷たい透華と遊びたい!」



透華「そうですの。では卓に着きなさい」

透華「さて、私を目覚めさせるには相応の強者でなければいけないのですわ。そう……原村和!」

透華「今こそ真のアイドルを決める時ですわ!」






和「あ、美味しい」

純「だろ?なんたって龍門渕特製のハンバーガーだからな」

優希「バーガーもなかなかイケるじぇ」


透華「ちょっ!?」

和「はむ、もぐ……んんっ」

優希「のどちゃん悪戦苦闘だじぇ」

和「し、仕方ないでしょう。ハンバーガーは今日始めて食べたんです」

智樹「イマドキ珍しい」

純「へぇ、それは悪い事しちまったなぁ」

純「最初にモンブチバーガーなんて食っちまったら、もう他のハンバーガーなんか食えねぇぜ」



純「ちなみに今日のはイタリア風だな。ビーフパティにマッシュルーム、レタス、トマト、チーズ、バジルが挟んである」

純「チーズは3種類。モッツァレラとチェダーとパルメザンだ」

優希「肉の香りと共にチーズの濃厚な香りが絡んできて食欲をそそるじぇ!」

和「でもトマトの酸味とバジルのおかげでそこまで重く感じませんね」

純「パティの味付けは黒胡椒と燻製塩でシンプルに。スパイスもクローブ・ナツメグなんかを使ってる」

和「どおりで。しっかりとした味の中にも爽やかさがあります」



透華「貴方達!何を食べてますの!」

和「あ、すみません……。美味しそうだったのでつい」

純「まぁまぁ、腹が減ってはなんとやらっていうだろ?」

優希「対局前の腹ごしらえは大事だじぇ」


久「あらあら、それじゃあ私と須賀君が入るわ」

京太郎「え、俺!?」

久「そうよ、一体誰のために此処に来たんだっけ?」

京太郎「でも、俺なんかが天江さんや龍門渕さんとなんて……」

久「いい経験になるわよ」

まこ「大丈夫じゃけえ、もっと自信もって行きんさい」

京太郎「いいんですかね」

久「いいのいいの、何なら1位獲ってもいいわよ」

京太郎「そんな……」

まこ「ホレ、最初からやる気無いようじゃとと相手にも失礼じゃけえ」

まこ「なあに、いつも通りでええ。お前さんならいいとこまでいけるわ」

京太郎「……それもそうですね。せっかくですから自分がどこまでやれるのか、胸を借りてきます」

透華「まったく、この対局が終わるまでに食べ終わりなさいましね」

和「はい、すみません。はむはむ」



透華「それでは始めますわよ!……ハギヨシ」

ハギヨシ「は、ここに」

透華「……なにか軽くつまめるものを用意なさい」

ハギヨシ「かしこまりました」

一(結局自分も食べるんだ……)





対局開始

東一局

東家 天江衣
南家 竹井久
西家 須賀京太郎
北家 龍門渕透華


衣「わーい、衣が親だー!」

衣「ツモ!海底撈月……!」

久「しょっぱなから」

透華「まだ日も落ちてきたばかりだというのに調子が良いですわね」

衣「また衣の親だ!一本場!」

京太郎「……」




純「ところで、アイツってどんくらい強いんだ?」

優希「春に始めた初心者だじぇ」

まこ「わしらがインターハイ決まってからは雑用ばっかさせてしまって、満足に稽古もつけてやれんかったの」

智樹「須賀京太郎、今年のインターハイ県予選で午前中に敗退している」

純「なんだ雑魚か」

一「ザコって……純君、ちょっとそれは……」








和「それはどうでしょうか」






   「リーチ」

今日はここまで

智樹→智紀で脳内変換お願いします
ごめんねともきー!

隙あらば食事描写挿入するスタイルは咲日和リスペクト

見返してみたら、誤字がひどいな……
次の更新まで少し時間かかるかもしれません

こんばんわ
PCフリーズして3時間無駄になるとか、そんなん考慮しとらんよ……

でも一応書けたんで投下します

純「あ?」

一「え?ウソ」

まこ「ほぉ……」


久(これは、思ってた以上の収穫かしら)

透華(衣の支配を受けていてリーチですって!?)

衣「……」

衣(なんだ……)



衣(衣は油断したのか?)

衣(いや、衣の支配は確かに発動している。それなのにテンパイしているだと……?)

衣(こいつ)


衣「そういえば、まだ名前を聞いていなかったな」

衣「聞かせてもらおうか」


   「俺は……」

京太郎「俺は清澄高校麻雀部1年、須賀京太郎です」

衣「キョータロー……」



純「おい、アイツどうなってんだ。初心者じゃないのか?」

優希「まだまだしりの青い初心者だじぇ」

智紀「まさか……ビ、ビ、ビギナーズラック……?」

一「ああ、ともきーのPTSDゾーンにドメスティックなバイオレンスが」

和「須賀君は確かに麻雀歴も短く実戦経験も少ないですが……」



和「鍛えられてますから。私達に」

純「いや、だからってちょっとやそっと鍛えた奴が衣相手にリーチなんて」

優希「……ちょっとやそっとなんかじゃないじぇ」

一「え?」





晩夏 清澄高校 麻雀部部室


久「これからは須賀君の強化に力を入れましょう」

京太郎「お願いします!」

和「それではまず須賀君の現在の実力を測ってみましょうか」

優希「座りな坊主」

まこ「ほんじゃ、和が京太郎の後ろから見るんじゃな」

和「はい。それでは私は最初は何も口出ししませんから、須賀君はいつも通りの打ち方でお願いします」

京太郎「おお、なんか緊張するな……」




和「うーん……」

久「和、どうかしら?」

和「スジやカベは分かる様ですが、まだ牌の切り出し順とかに違和感がありますね」

和「それに捨て牌の読みも甘いようですし」

久「そうね、迷彩もかけてなかったし。まぁコレは覚えなくてもいいんだけど」

優希「つまり初心者だじぇ」

京太郎「く、俺に少しでもビギナーズラックがあれば……」

まこ「何言っとんじゃ、そんなん言うてたらいつまでも実力つかんぞ」


和「そうですね。須賀君には運や流れに左右されない、合理的な選択で確実に勝利を掴める必勝法を伝授しましょう」

京太郎「な、何!?一体それは……!」





和「デジタル麻雀です!」





優希「うわー、のどちゃんメチャ良い笑顔だじぇ」

まこ「キリッってしとるのう」

久「ドヤァって感じだわ」

京太郎「ですよねー」

和「それでは、基礎の復習も兼ねて、この問題集から解いていきましょう」


京太郎「あの……和さん?」

和「なんですか」

京太郎「問題集ってコレ、1冊ですか?」

和「そうですよ、足りませんか?なんなら他の問題集も持ってきましょうか」

京太郎「いや、そうじゃなくて」



京太郎「コレ本当に1冊分か!?滅茶苦茶ブ厚いんだけど!?月刊少年ガンガンかよ!」

まこ「なんじゃ?辞書かコレ」

優希「もはや鈍器だじぇ」


和「はい、『目指せ!脱・初心者 捨て牌読み問題集 モダン・ウォーフェア』です。知りません?」

和「Amazonの麻雀カテゴリでもベストセラーに選ばれていて、結構有名だと思ったんですが」

京太郎「知らなかったそんなの」

和「初歩の初歩から応用まで懇切丁寧に書かれている良書です。まずはこれを終わらせましょう」

京太郎「まずはって……」

和「それから、これも」

京太郎「また問題集?ええと、『超上級者向け麻雀指南書 雀殺 ~リーチ・スティック・ペイ・バック~』」

京太郎「どれどれ……」



京太郎「うん、わからん!」

和「でしょうね」

京太郎「いや、でしょうねって……」


和「わからなくても読んでください」

和「いきなり難解な理論を見せられても頭に入りませんから、少しでも文章に慣れてください」

和「人間、自分が知らない事には抵抗感がありますから、それを少なくするためです」

京太郎「成程、つまりスムーズに知識を入れる為のウォーミングアップってところか」

和「そういう事です」

和「さて、これは自宅でやってもらうとして、学校の部活の時間内では実際に麻雀牌を使いましょうか」

和「優希や先輩方にも協力してもらいます」

優希「おっけー!」

久「ええ、もちろん良いわよ」

まこ「それで、わしらはどうすりゃええんじゃ?」

和「先程のように須賀君の相手をしてもらいます。同じく私も須賀君の後ろで見させてもらいますが……」

和「今度は私がアドバイスしますので、良く聞いてください」

京太郎「わかった。よろしく頼む」

和「では早速始めましょうか。東風戦で。終わったら牌譜を見ながら検討していきましょう」



和「あ、みなさんもデジタルに忠実に打ってくださいね。須賀君に変な癖が付いてしまいますから」

和「特に部長」

久「ア、ハイ」

3時間後


京太郎「……あ……あぅあ…………」

和「ふぅ、お疲れ様です。それでは牌譜検討しましょうか」

優希「……タ……タ、こ……す……」

久「うう、終わった……終わったの……?」

和「あとはこの牌譜で最後ですよ」

まこ「ふぅー……かなり根詰めたのう。つか、死屍累々なんじゃが」

優希「休憩無しで特打ち3時間はキッツイじぇ~……」

久「これ合宿の時より神経使うわね……」

優希「あとはのどちゃんに任せるじょ」

久「そうね、私ももう疲れちゃった……」

まこ「わしも店の手伝いがあるけぇ、すまんがそろそろ……」

和「そうですか、分かりました。あとは私と須賀君でやっておきます」

京太郎「なに」




優希「可及的速やかにタコス成分を補給しにいかなければ!早くしないとモールのタコス屋が閉まっちゃうじぇ!」

久「待ってー私も行くー!それじゃーねー!」

ダバダバダバダバダバ...

まこ「めっちゃ元気じゃのう!?」

まこ「ったくあいつら……すまんの、それじゃ鍵は置いとくけぇ」

和「はい、さようなら」

京太郎「お疲れ様です」


和「じゃあ、牌譜……」

京太郎「まぁ待てよ。今日はこれで最後なんだろ?少しゆっくりしようぜ、今お茶淹れるからさ」

和「そうですね、それじゃあお願いします」


和「ふぅ……」

京太郎「和もだいぶお疲れだな」

和「はい、ちょっと張り切っちゃいました」

京太郎「それにしても、和って結構人にモノ教えるの上手いんだな」

京太郎「ちゃんと俺のレベルに合わせて分かりやすく教えてくれるし」

和「実は昔、奈良に居た頃に赤土さんが麻雀教室を開いていて、私もそこに参加させてもらってたんです」

和「阿知賀こども麻雀クラブっていうんですけど」

和「そこで、私も下級生の子たちに色々教えてたりしてたんです」

京太郎「へぇ、どおりで。慣れてる感じだったよ」

和「あ、でも今日みたいなハードな感じではありませんでしたよ?」

京太郎「ハハハ、そりゃそうだ」

和「ふふ、そうですね」





和「もっと時間があればよかったんですけど……」





京太郎「……そこは量より質って事で。内容でカバーするしかないな」

和「そうですね……」

京太郎「はい、お待たせしましたお嬢様」

京太郎「ダージリンでございます」

和「あら、ありがとうございます」

京太郎「それと、お茶受けのスコーン」

和「わぁ、美味しそう」

京太郎「こっちがシナモンレーズンで、こっちがクランベリーチーズ」

京太郎「通常の値段だとちょっとお高いけど、セールで安くなってたんだ」

和「ここって結構有名店ですよね」

京太郎「そう。だから、アイツらには内緒な?」

和「ふふ。はい、秘密ですね」

和「……というわけで、こちら側の牌を切った方が受け入れが広くなるんです」

京太郎「なるほどなー」

和「はい。じゃあわかったところで今日は終了です。お疲れ様でした」

京太郎「おつかれさまでーす」





夜 帰り道


和「それではここでお別れですね……そうだ須賀君、コレ」

京太郎「ん?なにこれメモ?」

和「私のネト麻とチャットのIDです。もし分からない事があったら聞いてください」

京太郎「和……ありがとうな」



和「それでは、さようなら」

京太郎「ああ、さようなら」

龍門渕高校 麻雀部部室


優希「……てな感じで毎日が特訓特訓の日々なんだじぇ」

一「うわぁ、それは凄いね」

優希「部活では私達と打って、帰ったらテキストやって更にネト麻でのどっちとマンツーマンレッスン……」

優希「正直、私だったら耐えられないじょ」

純「ふぅん……タダの初心者じゃあねぇってわけか」

一(透華が聞いたら『のどっちとマンツーマンですって!?羨ましいですわ!』とか言いそうだな……)



透華(この男……のどっちとマンツーマンですって!?羨ましいですわ!)

透華(ですが、だからといってコレは……!)


純「だが不思議だな。少しはデキるみたいだが、それで衣と対局してこんな簡単にテンパイするのか?」

和「須賀君の手牌を見るに、至って効率的に打ってます」

和「テンパイ出来てもなんら不思議ではありませんよ?」

一「いや、不思議じゃないのが不思議っていうか……」



一(もしかして……彼、原村さんと同じなのか?)

今日はここまで
京和キテル……

回想シーンに回想シーン入れてしまった。混乱してませんか?自分はしてます

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今日の更新は残念ながらナッシングス・カーブド・イン・ストーンです

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こんばんわ

今日の書き溜め分を見直したり紅茶淹れたりした後に投下します
マグカップはいくつか持っていますが、最近はスノーピークのチタンマグがお気に入りです
チタンすごい

衣「ツモ!2100オール!」

京太郎「はい」

透華(アラ……?)


純「リーチは出来ても衣を止められるってわけじゃない、か」

一「なんなんだろうね」




衣(衣の支配を打ち破った者は以前にも居た……)

衣(たかかもしずの)

衣(衣は5回、海底撈月を和了るつもりでいた……しかし後半、まるで深い山に迷ったように海底牌を見失った)

衣(それで結局3回しか海底で和了れなかったんだ)

衣(そして次の日には……)

衣「2本場!」

衣(キョータロー……こいつが如何な能力を持っているのか、衣が見極めてやる!)





ブルッ

京太郎(やっばい……楽しいっ!!)


京太郎(まさか俺が天江さん相手にリーチかけるとかマジかよ!)

京太郎(だって天江さんだぜ?県予選で咲と戦った相手と俺が!)

京太郎(こないだまで素人で雑用ばっかしてた素人だぞ!そんなんでも!)

京太郎(戦える!戦えてる!みんなのおかげだ!)



衣「ロン!12000の2本場は12600!」

透華「あ、あら……これはちょっとキビしいですわね……」



一「今のも続けてたらテンパイしてたのかな?」

純「どうかな?透華が振っちまったからなぁ、早い順目で。つーかこの流れでそれ切るかよ?」

智紀「デジタルなら出ても不思議じゃない」

透華(聞こえてますわよ……純!)

久「うーん」

久(天江さんの親、そろそろ止めに入らないとマズイわね……)

衣「3本場だ!」




久「チー」

久「ポン」

京太郎(これって……)

久(須賀君には、今度改めて『相手を見る』麻雀を教えるとしましょうかね)

久「ポン」


京太郎「……」

久「ロン」

衣「!」


久「1000点の3本場は1900」

京太郎「はい」

衣(衣の親が流された!)

久「それじゃ、私の親番ね!」



一「差し込んだね」

和「まぁあれだけ鳴けば」

まこ「ちゃんと河も読んどるみたいでええの」



京太郎(よし、これで親の連荘ストップ)

京太郎(龍門渕さんが一人沈みしてるけど、天江さんが居るからな)

京太郎(振りこまないよう気を付けて……)

京太郎(まずはひとつ……和了る!)

東四局

親 龍門渕透華



京太郎(来た!)


京太郎「リーチ!」

衣(また!?)

透華(またですの!?)


一「またリーチした」

純「さて、今度は和了れるかな?」




ドクン ドクン

京太郎(やっべー!すげー緊張する……!でも、それ以上にワクワクする!)

京太郎(ここは絶対に和了りたい!)

京太郎(つか、天江さんめっちゃ見てるし!)

京太郎(来い、来い、来い来い来い……)

京太郎(和了るんだ、今まで特訓してきたんだ!)

京太郎(俺の、みんなの……)



キィィンッ

衣「!」

京太郎「ツモ!2000・4000!」

透華「親っ被り……!」



京太郎(和了った……)


京太郎(みんなが……生きてる)

純「マジかよ」

優希「やったじぇ京太郎!」

一「本当に和了ったよ……」

智紀「すごい」

まこ「どうやら、練習の成果はあったようじゃな」

和「当然です」



衣(今のは……)


純「さ、交代交代」

透華「え?」

優希「ノッポが入るなら私もやるじぇ!」

久「頑張ってね」

透華「あ、あら?」

純(さて、コイツが一体何者なのか)



対局開始

東一局

東家 片岡優希
南家 須賀京太郎
西家 井上純
北家 天江衣


純(直に見てみるか)

優希「私の親だじぇ!」



透華「ちょ……ちょっとお待ちなさい!今日は私の麻雀を見にいらしたのでは……」

一「まあまあ、落ち着きなよ透華」

一「ホラ、ハギヨシさんがお茶菓子持ってきてくれたからさ、食べよ?」

一「フランボワーズのフィナンシェだって、美味しそうだね」

透華「あら、私のお気に入りですわ」

ハギヨシ「皆様の分もご用意させていただきましたのでどうぞ」

久「ありがとうございます。それじゃ私達も頂こうかしら」

まこ「そうじゃの」

3順目


優希「リーチ!」

純(いきなりか。コイツ、インターハイを経験して更に伸びてきたな)

純(ま、俺が鍛えてやったんだがな)

京太郎「……」

純(流れがタコスに向いてくる……)

純「チー」

カシャッ

純(この流れは断っておく)

衣「ポン」

純(衣も乗ってきたか)

衣「ペーポンペーポン」

優希「一発ならずだじぇ~」

純(このままゲームが進行すれば衣が海底に辿り着く)

純(そこでお前はどうやってリーチするんだ?)



優希「うう、全然来ないじぇ……」

純(海底に近づくにつれ、衣に流れが来ている)

純(タコスはもう和了れないな)

京太郎「……」

純(しかし、何も感じないな。だがまだ東一局だ)

衣(……張っているな)



衣「ツモ!海底撈月!」

優希「くぅ~っ速攻リーチしたのに和了れないなんて……!」

衣「リーチ棒もらいー」


純(衣の和了。場の流れが一気に……)

純(なに?)

京太郎「ふぅ……これはダマで正解だったな」

純(オレやタコスからは流れが衣に出て行ってるのに、コイツの周りからはそんな気配が微塵もない……!)

純(衣の支配を受け付けないのはそういうことなのか?)



東二局

親 須賀京太郎


純(親だし、攻めに行くだろうな)

優希「親を流されてもまだまだ東場、まだ私の勢いは止まらないじぇ!」

純(相手の妨害を受けず、流れも寄越さない)

純(マイペースな野郎だ)



京太郎「リーチ!」


衣(来たか!)

純(親リー……この流れで?)

純(衣の支配の中でリーチかけるんだ、相当な勢いに乗ってなきゃ出来ないはずだろう?)

衣(しかし、コイツからは何か強大な気運を纏っている様子は見てとれない)

衣(あにはからんや)

京太郎「カン!」

衣「なっ!?」

純(まさか……!?)


純(そんなフラットな状態で槓だと?いや、コイツなら……)

衣(嶺上……!)


京太郎「……」

パシッ

衣(ではない……か)




一「ふぅ、和了るかと思ったよ」

和「咲さんじゃあるまいし、そんなオカルトありえません」

久「ふふふ。でも彼、和了る気満々だったみたいよ」

透華「なんですって?」

まこ「あいつの顔、見てみんさい」

京太郎(……開花、ならずか)

京太郎(やっぱり咲みたいにはいかないか。でも槓ドラ乗ったぜ!)

京太郎(これでリーチ・タンヤオ・イーペーコー・ドラ2……裏ドラ乗ったら跳満!)

京太郎(また和了ってやる!)



衣(コイツの手牌から感じる気配……12000程度か)

衣(これほどに充実した手牌を組んでおきながら、本人にはソレを感じられないのは然ばかり)

衣(でも……)



智紀「笑ってる」

一「須賀君、すごい楽しそう」

透華「リーチしているとはいえ、高い手を張っているのがバレバレですわ」

久「ふふ。あーあ、アレじゃあ丸わかりね」

まこ「ま、天江衣相手じゃし無理もないの」

和「ずっと基礎練習ばかりしてましたからね」

まこ「ウチの常連さんとは打った事あっても、ガチで麻雀やってる奴はウチら以外とは始めて打つけぇ」

まこ「自分の力が存分に試せて楽しいんじゃろう」



優希「ところがどっこい通らばリーチだじぇ!」

京太郎「来たな……!」

衣(ユーキから滾沸した気運が吹き込む!)

純(この流れ、タコスの手が高い!)

純(槓ドラか……!)




優希「ツモ!一発!裏乗って4000・8000!」

京太郎「ああ~!マジかよ!?」

優希「ふふん、まだまだだな坊主!」

京太郎「ちっくしょ!メッチャ悔しいい!」

久「残念だったわね」

京太郎「だってコレ、俺和了ってたら……って、俺も裏乗ってんじゃん!しかも3つ!」

まこ「倍満惜しかったのう」


純「ふぅん……」

衣「楽しそうだな」

京太郎「天江さん?」

衣「キョータロー、お前は楽しいのか?」

京太郎「ん?楽しいですよ。少し前まで素人だった俺が、皆とこんな風に麻雀できてホントに楽しいです」

衣「そ、そうか。衣と麻雀して、楽しいか……!」

京太郎「はい!」

東四局


優希「それだじぇ!ロン!」

優希「リーチ一発……のみ。2600だじぇ!」

純「やっす」



対局結果

1位 天江衣
2位 片岡優希
3位 井上純
4位 須賀京太郎


衣「わーい!衣が1位だー!」

優希「ぐぬぬ……僅差で届かなかったじぇ……」

京太郎「やっぱ強いなぁ」

衣「然もありなん!だが、キョータローもなかなかに手強かったぞ!」

京太郎「ありがとうございます、天江さんに言われると嬉しいです」



一「それじゃあ今度はボクとしようか」

和「優希、変わってもらえますか?」

衣「キョータロー!もっと衣と遊ぶぞ!」

30分後

1位 衣「またまた衣がトップだー!」
2位 和「悪くないツモでしたね」
3位 一「うーん、こんなもんかな?」
4位 京太郎「もう一度お願いします!」



1時間後

1位 衣「最早誰にも止められん!」
2位 京太郎「次は1位狙うぜ!」
3位 まこ「ふむ、いい対局じゃった」
4位 智紀「ラス……」



1時間30分後

1位 衣「敗北を知りたい」
2位 久「ちょっとは調子、出てきたかしら?」
3位 京太郎「まだまだ!もう一回!」
4位 透華「心が冷えそうですわ……」



2時間後

1位 衣「みんなありがとう!」
2位 優希「神に感謝」
3位 京太郎「順当な順位ですね」
4位 純「くっタコスに負けた……!」



2時間30分後

1位 和「ふぅ、ありがとうございました」
2位 衣「の、ののかは強いなぁ……」
3位 京太郎「まだいけるって!」
4位 一「あっれー」

京太郎「よし、それじゃ次……」

透華「そ、そろそろ休憩なさったらいかがかしら!?」

衣「さ、流石に衣も疲れたぞ……」

京太郎「あ、すみません。つい夢中になってしまって……」

衣「もう!衣の身体はひとつしかないんだからな!」

久「そうね、須賀君も打ちっぱなしで疲れが溜まってるんじゃない?」

京太郎「いや別にそんな……おっとと……」

久「もう、グラついてるじゃない」

まこ「ほれ、とりあえずこっちのソファ来んさい」

京太郎「は、はい。ふう……」


和「大丈夫ですか?」

京太郎「ああ、心配かけてゴメン。でも大丈夫だから」

京太郎「俺、楽しくなるとすぐ熱中しちゃってさ、昔っからこんな感じなんだ」

優希「そういえば咲ちゃんが言ってたじぇ。京太郎は一度走り出すと止まらないって」

まこ「イノシシか」

京太郎「ははは」

京太郎「でも、こんなに熱中したのは久しぶりだ……」

京太郎「中学校以来かな」


久「なにかやってたの?」

京太郎「はい、中学時代はハンドボール部に所属してまして、よくこんな感じになってたんです」

和「ハンドボールですか」

京太郎「ああ、これでも県大会で結構いいとこまで行ったんだぜ?」

まこ「ほお」

京太郎「その時もこんな感じで集中状態が続いてたんですよ」

優希「ランナーズハイってやつだじぇ!」

京太郎「んー、いや、それとは違うな」

京太郎「ランナーズハイはなんか苦痛とか無くなって、それでギアが下がらなくなる感じだけど」

京太郎「この場合はもっと神経が研ぎ澄まされるというか、なんでも出来る感じになってさ」

京太郎「相手の動きも味方の動きも、全部最初から分かってるみたいに思えたり」

京太郎「自分の意識の枠や時間の感覚が無くなったりするんだ。確か……」





京太郎「確かこういうの『ゾーンに入る』って言うらしいぜ」

夜 龍門渕高校 校門前


久「今日はありがとうございました」

透華「こちらこそ。衣も満足したようでなによりですわ」

京太郎「ありがとうございました」

衣「キョータロー!」

京太郎「ん、天江さん。なんですか?」

衣「衣はお前と打てて充足した気分だ!また遊びにくるがいい!」

京太郎「はい、俺からも是非お願いします」

ハギヨシ「皆様、車の準備が出来ました」

久「はい、それではまた」

 





衣「そういえばトーカは冷えなかったな」

透華「あ」

一「結局、原村さんとも打てなかったね……」

透華「な、なんという事ですの~!」






現在 車中


京太郎「……それで天江さんに気に入ってもらえて、たまに龍門渕に行くようになったんですね」

ハギヨシ「そうでしたね。時が経つのは早いものです。さて、到着いたしました」



龍門渕高校 麻雀部部室


純「おう、須賀じゃねえか」

智紀「いらっしゃい」

京太郎「どうも、お邪魔してます」

京太郎「ところで龍門渕さんはどちらに?」

純「ああ、衣を呼びにな。もうそろそろ来るんじゃねぇの?」



バタン



純「ほれ」

透華「まったく、衣にも困ったものですわ」

一「まぁたまには良いんじゃない?あ、須賀君来てたんだ、いらっしゃい」

透華「あら、いらっしゃってたのですね」

京太郎「はい、お邪魔してます。ところで、天江さんを呼びに行ったんじゃ……」

透華「それなんですけど、今日はどうしても衣の屋敷で打ちたいなどと言ってますの」

一「ボクは別に良いと思うけどね」

透華「須賀さんには悪いのですけど、衣の屋敷はここから少し歩きますの。ご足労願いますわ」

京太郎「いえ、それくらい全然構いませんよ」





透華「ところで、今年の清澄は団体戦には出場いたしませんの?」

京太郎「うーん……今から3人集めるのは実際厳しいでしょうね」

一「それにしても世知辛いよね」

智紀「盛者必衰」

純「マスコミなんか今年は全然取り上げないもんな」

京太郎「世間では一発屋みたいに思われてますから……」

衣の屋敷


京太郎「それより、皆さんはどうですか?今年の大会」

純「ま、正直オレらの敵は居ないって感じ?」

透華「もちろんですわ!今年こそ華々しく、全国にこの龍門渕透華の名を知らしめるのですわ!」

一「ははは。透華は見ての通りいつもと変わりないんだけど、今年は衣も気合が入ってて……!?」




ゴオォッ!




透華「!」

智紀「!」

純「オイオイ……」

京太郎「なるほど、これは滅茶苦茶気合入ってますね……!」

一「いやいや、ちょっと入りすぎでしょ」


京太郎「扉、開けますね」



ギギギギギギギ




 「よく来たな」


 「さぁ、衣と戯れようか」




京太郎(そういや、今日は)

京太郎(満月だったな……)

夜 帰り道


ハギヨシ「今日はお疲れ様でした」

京太郎「ええ、ホントに今日という今日は疲れましたよ……」

ハギヨシ「もうすぐ県予選ですからね。最後の追い込みといったところでしょう」

京太郎「あれからもうすぐ1年か……」







京太郎「ん、電話……ムロからか」

京太郎「すみませんハギヨシさん、ちょっと」

ハギヨシ「どうぞ。お気になさらず」



京太郎「すみません……もしもし?俺だけど……うん、大丈夫だ」

京太郎「そっちはもう終わり?……ああ、俺も今さっき終わって今ハギヨシさんに送られてる」

京太郎「それにしても、今日は本当にきつかったぜ。天江さんがメッチャ気合入っててさ……うん」

京太郎「県予選も近いからな……俺らも負けてられないぜ?」


     「そうだな……みんな……そう……」

          「……うん……そうい……花田さん…………」

                「……それで…………言って……」

                     「……えっ……マジで…………」

今日はここまで

これで龍門渕編は終了です。思ったより長くなっちゃった

こんばんわ

ビクトリノックスでパンにチーズ塗ると爪引っかけるトコにチーズ入ってああーってなる
一応キリのいいとこまで書けたので投下します。短いです

放課後 清澄高校 麻雀部部室


京太郎「とりあえずここに置いとくか」

京太郎「どうせ誰か来たら飲むだろうし」

京太郎「ふむ。ついでだし少し整理しておこう。まだ部活始まるまで時間あるしな」

京太郎「ノートはこっちの棚に置いて……と。えーと、食品はまとめて……ん?」


京太郎「あ、これ」


京太郎「コーヒーカップ……懐かしいな。買ってきたけど、結局みんな使わなかったやつだ」

京太郎「基本、俺とたまに竹井先輩しか飲まなくて……」

京太郎「ティーカップしかなかったから、これでコーヒー飲むのがおかしくて、そしたら『じゃあ揃えときましょうか』って」

京太郎「でも俺の分だけいちいち取りだすの面倒だから、最後には俺も使わなくなっちゃったやつ」

京太郎「1、2、3、4……5。うん、全部揃ってるな」

京太郎「あ、コーヒー豆も……げ、少し残ってる」

京太郎「流石に捨てるしかないな……もったいないけど」



ギィ……



京太郎「あ」





ムロ「失礼します」

京太郎「ムロか。早いな」

ムロ「先輩こそ、どうしたんですか?」

京太郎「いや、ちょっと買い出しの整理。昨日いろいろ備品買ってきたんだけど、そのまま龍門渕行ってたから」

ムロ「ああ。そういえば言ってましたね」

京太郎「その前に花田さん達にも会ったしな。ムロによろしく言ってくれって」

ムロ「私も久しぶりに花田先輩に会いたかったなぁ」

京太郎「向こうも会いたがってたよ」



京太郎「新しいお茶買ってきたからさ、飲むだろ?」

ムロ「はい」

京太郎「今日のお茶は白桃ジャスミンです」

ムロ「わぁ、いいですね!それじゃ私お湯沸かしときますね」

京太郎「了解。そうそう、昨日さ――」




1日前 ショッピングモール内 カフェ


煌「なんと!須賀君は清澄高校の生徒だったんですか!」

京太郎「ええ」

煌「と言う事は、室橋裕子という生徒を知っていますか?」

京太郎「はい、俺もムロと同じ麻雀部なんです」

煌「すばら!……と言う事は優希や和の事も?」

京太郎「同じ2年生ですからね、もちろん。でもアイツらは学年関係なく有名人ですよ」

煌「清澄高校といえば今や界隈では名の知れた学校ですからね!」

京太郎「ええ、おかげさまで」

煌「やはり今年も優勝を目指しているんでしょう?」

京太郎「あー……それなんですけど実は……」

煌「……そうなんですか。それはすばらくないですね」

京太郎「やっぱりあいつらが抜けた穴は大きいというか……」

京太郎「元々6人しか居ない部でしたけど、それを埋めるのは容易ではないです」


煌「……でも、その穴を塞ぐのは須賀君の役目ですよ」

京太郎「花田さん」

煌「清澄は2年前まで部活動として機能していなかったと聞きます」

煌「できますよ!人が少なくなっても須賀君達が頑張ればきっとまた人は来ます!」

煌「貴方は知っているはずですよ。そんな状況でも諦めなかった人が居た事を」

京太郎「……そうですね」


京太郎「そうですよね、今が良くなくてもこの先きっと良い事ありますよね。俺が諦めなければ」

煌「はい!」

京太郎「それに、気落ちしてるところなんてムロには見せられませんし」

煌「良い先輩ですね」


  「カプチーノとカフェオレのお客様~」

京太郎「あ、俺取ってきます」

煌「すみません、お願いします」


京太郎「お待たせいたしました、こちらカフェオレでございます」

煌「お、来ましたね」

煌「なんか須賀君ウェイターがさまになってますね。なにかアルバイトでも?」

京太郎「実は知り合いの執事の人に色々教わってるんですよ」

煌「執事ですか!?なにやらブルジョワジーな……」

京太郎「実際凄くブルジョワだと思います。麻雀がきっかけで知りあったんですよ」

煌「なるほど。それはそれは」

煌「……それにしても嬉しいものです」

京太郎「え?」

煌「後輩を、ムロを大切に思ってくれているようで」

京太郎「ああ、そんなの当たり前ですよ。俺の唯一の後輩ですから」

京太郎「人数が少ない分、支えあっていかないと」

煌「私が中学校の時の麻雀部も少人数でしたけど、そんな感じでしたね」

煌「お互いに教えあったり競い合ったり。どっちが大会でいい成績残せるか勝負したりして」

煌「私が3年の時はマホが来てくれて、なんとか団体戦に出場出来たのですばらでした」

京太郎「へぇ、まるでウチみたいですね。ウチも4人しかいなかった所に最後に咲が入部してやっと5人揃ったんですよ」

煌「それはすばら!まぁ、清澄と違って私達は県予選敗退でしたが……」

煌「でも次の年、和が全中王者になりましたけどね」

京太郎「結構話題になってたみたいですね」

煌「はい、派手な和了りはありませんがとても綺麗な打ち筋でプロアマ問わず評価されてました」


煌「それにあの見た目ですから」

京太郎「成程納得」

煌「そういえば、和が卒業したあとの高遠原の麻雀部は部員不足で団体戦に出られませんでした」

京太郎「それは……」

煌「ムロやマホには苦労をかけますね。先輩として必要なモノを残さないどころか要らないモノまで残してしまって」

京太郎「……そうだったんですか」

京太郎「でもそれは花田さんのせいではないですし、俺の課題でもあります」

煌「そう言ってくれるのはありがたい事です」

京太郎(俺がムロにしてやれる事か……)



煌「須賀君、改めてムロの事よろしくお願いします」

京太郎「俺が何をしてやれるのかはまだ分かりませんが、お願いされました」

京太郎「ところで、花田さんはどうして長野に?」

煌「実は私の先輩がこの近くの温泉旅館の宿泊チケットを手に入れたので観光に来ているんです」

煌「それで私の地元と言う事で観光案内を申し出たという訳なんです」

煌「私もたまには帰郷したかったですし。あ、今は先輩方はショッピングなのでしばらくフリーなんですよ」

京太郎「それは良かった。俺もまだ花田さんとお話していたいですしね」

今日はここまで
またすぐ回想入るしもー

おつー

マホはムロの1コ下だからマホ入学時にはすばら先輩はもう卒業後では?
それに和が入部時点でインターミドルの県予選は終わってて入部する前は3人だったぽいこと言ってるからすばら先輩はおそらく団体戦には出れてないかと

>>208
ご指摘ありがとうございます

ああーやっちゃったんだぜ!
すばムロミカ→和タコin→すばoutマホinですね
すばら先輩はIM個人戦のみ出場と言う事で

あとで修正版書いておきます……やっぱ酒の勢いで書くとダメだね

こんばんわ
今日は修正版のみの投下です

>>201はまちがい
↓がただしい

煌「……それにしても嬉しいものです」

京太郎「え?」

煌「後輩を、ムロを大切に思ってくれているようで」

京太郎「ああ、そんなの当たり前ですよ。俺の唯一の後輩ですから」

京太郎「人数が少ない分、支えあっていかないと」

煌「私が中学校の時の麻雀部も少人数でしたけど、そんな感じでしたね」

煌「お互いに教えあったり競い合ったり。どっちが大会でいい成績残せるか勝負したりして」

煌「私が3年の時に優希と和が来てくれたのですが、生憎エントリー期限が過ぎてて団体戦は出場できませんでした」

煌「でも次の年にはマホが来てくれたので、なんとか団体戦に出場できたのですばらでしたよ」

京太郎「へぇ、まるでウチみたいですね。ウチも4人しかいなかった所に最後に咲が入部してやっと5人揃ったんですよ」

煌「それはすばら!まぁ、清澄と違って高遠原は県予選敗退でしたが……」

煌「でもその年、和が全中王者になりましたけどね」

京太郎「結構話題になってたみたいですね」

煌「はい、派手な和了りはありませんがとても綺麗な打ち筋でプロアマ問わず評価されてました」


煌「それにあの見た目ですから」

京太郎「成程納得」

これであってますよね……?

やっちまったわー。ヤミテンを言い間違えた成香ちゃん並みにやっちまったわー
書き終わってもすぐに投下しないでちゃんと見直したり時間置いて読み直したりした方が良いかも
そう、上等なワインのようにね(キリッ
あ、そういえば今年のボジョレーヌーボーはどうなんでしょうね。自分はキャッチコピー見れば満足です

やっぱりストックあった方が精神衛生的にも良いですね
それではしばらく書き溜めを探す旅に出ます

こんばんわ

書き溜めを探す旅に出かけたはいいんですが風邪ひいてしまってあんまり探索できませんでした
少し短いですが収穫分、投下します

京太郎「それは臭いですねぇ」

煌「いやホント臭くって……おやぁ?」

京太郎「どうかしましたか?」

煌「いえ、どうやらもう買い物は終わったようですね」



姫子「先輩、花田のやつ男の人とおるばってん!?」

哩「ま、まさか彼氏か!?どうすっと、ここは空気読んだほうがよかとか?」


煌「その必要はありませんよ」

哩「花田!」

煌「とりあえずここに居ては他のお客さんの迷惑になります。こちらの席が開いてますので座って下さい」

姫子「ええの?」

煌「多分、お二人が考えているような事はありませんよ」



煌「紹介します。清澄高校の須賀京太郎君です」

京太郎「どうも、須賀京太郎です」

煌「それでこちらが同級生の鶴田姫子と先輩の白水哩さんです」

哩「これはどうも。白水哩です」

姫子「鶴田姫子です。清澄って事は麻雀部?」

京太郎「はい。花田さんの中学の時の後輩が今年清澄に入学したので、その縁で」

お大事に

哩「そういう話やったとね」

姫子「勘違いしてましたね」



煌「ところで、須賀君はお二人の事はご存知でしたか?」

京太郎「はい、もちろん。インターハイでも活躍してた新道寺のダブルエースですよね」

京太郎「白糸台や千里山相手に後半の追い上げは凄かったですよ!」

哩「いやぁ、そう言われると照れるばい」

姫子「あれは先輩が頑張ってくれたおかげで、私はなんもしとらんよ」

哩「何言っとる。姫子の頑張りがあったからやけん」

哩「結局最後は負けてしもうたけど、あそこまで行けたんは姫子のおかげたい」

姫子「先輩……」

哩「姫子……」




京太郎「仲良いんですね、あの二人」

煌「少し良すぎる気もしますが、仲良き事はすばらです」

煌「そういえば、準決勝が終わった後に優希が差し入れにタコスを持ってきてくれたんですよ」

京太郎「ああ、そういえば言ってたなぁ。試合の無い日なのにいきなりタコス作れとか言いだして……」



優希『京太郎!タコスだ、タコスを作るんだ!先輩の学校に持っていくから人数分な!』

優希『何?店で買え?ばっかもん!何処の馬の骨ともわからん店のタコスを持っていけるか!』

優希『とにかく頼んだからな!咲ちゃんの着替えが終わったらすぐ行くから早く早く!』


京太郎「とか、軽く無茶ぶりだったけど……」

煌「んん!?という事は、あのタコスは須賀君の手作りですか?」

京太郎「ええ、最初は優希の奴にせがまれて。いつの間にか得意料理になっちゃいました」



哩「え?アレ手作りやったと?」

姫子「ふつーにお店のかと思うてた」

煌「まぁまぁ!それは」


哩「すばら」

煌「すばらです!」

姫子「すばらやね」

哩「……しいな!」

京太郎(白水さんちょっと照れてる)

京太郎「お口に合えばよかったんですけど」

姫子「いやホントうまかったよ。お店で出てきてもおかしくなかレベルよ」

哩「ああ、アレはどきゃんでん美味かった。でも、それ以上に嬉しかったと……」


哩「あん時は試合に負けて、もう今までの努力とかなんも無くなっち思うとったばってん」

哩「そこに花田が差し入れ持ってきて、聞けば後輩が持ってきた言うて」

哩「そいで、後輩が持ってきてくれたモノを花田が受け取って、それをまた私が受け取って……」

哩「こうして繋がっていく思うたら、なんかまた先に進める気がしたんよ」


煌「すばら……!白水先輩……すばらです……!」

姫子「先輩!私も……私も先輩から……!」

哩「ああ……姫子!」

姫子「先輩……!」



京太郎「喜んでいただけたようでなによりです」




清澄高校 麻雀部部室


京太郎「……って事があったんだばい」

ムロ「へぇ、そうだったんですかばい」




ガチャ



まこ「おるかー」

京太郎「おるよー」


まこ「熊倉先生は会議で遅れるっちゅーとったわ」

ムロ「そうなんですか、始まるまで時間空きましたね。あ、お茶淹れますね」

まこ「頼むわ。で、なに話しとったん?」

京太郎「昨日、新道寺の人達に会ったんですよ」

まこ「新道寺って九州の学校じゃろ?」

京太郎「はい、学校関係でなくてあくまでプライベートです」

京太郎「ほら、ムロ達の中学の先輩だった花田煌さんっていたじゃないですか」

まこ「ああ、あの人か」

京太郎「それと白水哩さんと鶴田姫子さん」

まこ「インハイで副将と大将しとった二人じゃな」

京太郎「で、少し話したあと半荘1回だけ打ってもらったんですけど」

京太郎「結果から言うと白水さん・鶴田さん・俺・花田さんの順で、負けちゃいました……」

まこ「そういやあの二人の牌譜はちっとばかし特殊じゃったのう」


京太郎「最初は鶴田さん警戒で回し打ちしてたんですよ」

京太郎「あの人すごい高火力プレイヤーじゃないですか。でも、俺と打った時はそうでもなかったですけど」

京太郎「それで警戒してたらその隙に白水さんに和了られて……」

まこ「ああ、そりゃ惜しかったのう。つか知らんかったんか」

京太郎「え?」

まこ「ほんに警戒すべきは白水哩じゃ」

まこ「二人の牌譜を比べてみりゃ分かるんじゃが」

まこ「例えば白水が東一局で和了ると……」





京太郎「……そうだったんですか!」

まこ「ま、全部が全部そうなるっちゅー訳でもないがの。概ねこの通りの能力じゃろ」

京太郎「ああ、そうか!だから副将のポジションに白水さんがいたのか」

まこ「じゃろうな」


ムロ「私は知ってましたけどね~、お茶どうぞ」

まこ「お、すまんの」

京太郎「なんでムロが知ってんの?」

ムロ「花田先輩の居る学校って事で興味あって。調べてたら染谷部長に教えてもらったんです」

まこ「白水の牌譜は個人戦の為に集めとったからの」

京太郎「それいつ?」

ムロ「去年の秋ごろ」

京太郎「知らなかったの俺だけかよ!」

京太郎「ところで、最近雑誌とかテレビ見てるとインターハイ特集とか始まってますね」

まこ「そういやウチには取材来んかったの。去年は来とったが……まぁアレは和が居たからじゃが」

京太郎「インターミドルチャンピオンでしたからね」


ムロ「和先輩は今でも雑誌でよく見ますけど」

まこ「あの『のどっち』じゃけぇ、ファンも多いんじゃろ」

ムロ「そういえば大会終わって、なんかのインタビューでバレてましたね」


京太郎「ネット上で伝説とまで言われた謎の麻雀プレイヤー……」

まこ「なんと、その正体は元インターミドルチャンピオンで現役JKの爆乳(Kカップ)美少女だった……!」

ムロ「なんでちょっといかがわしい言い方するんですか」

まこ「そりゃあ騒がれるじゃろうて」

京太郎「しかも、のどバレしてから企業から広告に起用したいとかラブコールが殺到したらしい」


京太郎「実際……ホレ、Weekly麻雀TODAYの最新号。の裏表紙見てみ」

ムロ「某有名エナジードリンクの広告ですね……和先輩がコスプレしてます」

まこ「こりゃまるでリアルのどっちじゃのう。コピーの『翼を授ける』……ってまんまじゃな」

京太郎「でもこれで結構売り上げも伸びたそうで」



ムロ「ん、キャンペーン実施中?抽選で原村和のサイン入り千点棒当たる……」

まこ「ほっそいのう!」

京太郎「コレのサイン絶対『は ら む ら の ど か』ってなってますよ」

まこ「ふんふん。白糸台、千里山……春季大会で好成績残した学校が中心に組まれとるの」

京太郎「やっぱり名門ですね。去年活躍した3年生も強かったですけど、今年のメンバーも強そうです」

ムロ「選手の層が厚いのは流石ですよ」


京太郎「そういえば春季大会、咲は惜しかったなぁ」

まこ「大星が稼ぎまくっとったからのう」

ムロ「宮永先輩も凄かったですけどね」


京太郎「あの決勝だけで何回カンしたんだっていう……」

ムロ「符数がおかしい事になってましたね……」


京太郎「でも本人はそれほど悔しがってはなかったですけど」

京太郎「むしろ……」


咲『これで現チャンピオンは淡ちゃんになったから、インタビューは全部そっち行くよね』


京太郎「とか言ってました」

まこ「はは……緊張しぃは相変わらずか」

ムロ「有名人は大変ですね」



ガチャ


トシ「遅くなってすまないね」

ムロ「あ、お疲れ様です」

まこ「おう、やっと打てるのう」

トシ「ちょっと待って。まず話しておきたい事があるのよ」

京太郎「話ですか?」

トシ「うん。それで、今度の県予選なんだけどね。私らは個人戦だけの出場だけど」

トシ「団体戦も観に行く事になったからね」

まこ「お、そうですか。わし的に最新の対局を生で観れるのはありがたいわ」

ムロ「対策が捗ります」


トシ「あと、大会のルールだけど、麻雀のルールは去年と変わりないんだけどその他色々規則が変わってて」

トシ「女子は団体戦から始めるけど、今年から男子は個人戦を先に行うことになったわ」

京太郎「ええ!マジですか!?」

トシ「マジよ大マジ。いきなりだから気を引き締めていきなさいよ」


まこ「大会前に有名どころの牌譜研究せんとな」

ムロ「頑張って下さい先輩。私達は女子の団体戦観てますけど」

京太郎「クッ……薄情者め」



トシ「とまぁ、とりあえずのところはこんな感じだね」

トシ「全国行きが決まったらまた色々とスケジュール組まなきゃだね」

ムロ「気ィはや……」

今日はここまで
佐賀弁相変わらず難しいばい

>>219
なかに肌着着てからセーター着るより素肌にセーターの方が暖かくね?ってなったのがいけなかったのか……

こんばんわ

セーターチクチクませんよ?けっこう着古してるものだからですかね?ちなみにアクリル100%
セーターといえば、なんかの本で
「1週間くらい着っぱなしで、毛玉もいっぱい付いてドーナツのカスや芝生の芝もくっついててイイ感じ」
みたいな事が書いてあって、流石に洗濯しろよ!って思ったもんですが
一方でこんな風に気兼ねなく服を着たり道具を使うのには憧れてしまいます

今日の投下分は長めです。まったり落としていきます

期待待ち(裸靴下ネクタイ)



1年前 初秋 清澄高校 応接間


まこ「おお、来たか」

優希「染谷先輩」

まこ「なんでもあんたにお客さんが来とるそうじゃ」

優希「私に客?それは染谷先輩にも関係ある話なのか?」

まこ「関係大アリじゃ、なんせ……」



  「お待たせしました」



まこ「いえ」

アレクサンドラ「はじめまして。私、臨海女子高校麻雀部の監督やってます、アレクサンドラ・ヴィンドハイムと言います」

まこ「どうもご丁寧に。清澄高校麻雀部部長代行の染谷まこです」

優希「……」

まこ「……?ほれ、あんたも挨拶せんか」

優希「ハ、ハローエブリワン!」

アレクサンドラ「ああ、うんオハヨウ」

まこ「なに緊張しとるんじゃ」


優希「イエス!アイムファイン!」

アレクサンドラ「うん、元気なのはわかるよ」

まこ「落ち着けっちゅーに」



まこ「すみません……」

アレクサンドラ「いや、私の方こそ急に来ちゃってごめんなさいね」

優希「アイム、かた、片岡優希です!」

まこ「やっと言えたの」

アレクサンドラ「自己紹介ありがとう。それで、今日来たのは他でもなく片岡さんに用があっての事なの」

優希「私に?」

アレクサンドラ「そ。アナタ1年生なのにインターハイで凄く活躍したじゃない?」

優希「ふふん、自分で言うのもなんですが……活躍しました!」

まこ「臆面もなく」

アレクサンドラ「それでさ、来年はウチで活躍してみない?」

優希「……へ?」

まこ「……」

アレクサンドラ「単刀直入に言うけどね片岡さん、今日はアナタをスカウトしに来たの」

優希「スカウト……」

アレクサンドラ「うん。ウチの方針と大会のレギュレーション知ってる?」

アレクサンドラ「ウチのスポンサー的には世界で活躍してるプレイヤーで固めたい」

アレクサンドラ「でも大会規則的に先鋒は日本人でなくてはいけない。それが今年はサトハだった」

優希「辻垣内智葉……」

アレクサンドラ「そう、でもサトハは3年。今年で卒業。だから、それで代わりの選手を探してるって訳」

優希「……」

アレクサンドラ「私は片岡さんならサトハの代わりが務まると思っているわ」

優希「……それって私じゃないとダメなんですか?」

アレクサンドラ「うーん、正直言うとね。候補に挙がってる子はいくつか居るんよね」

アレクサンドラ「でも1年で候補に挙がってるのは片岡さんだけね」

優希「そうですか……」

アレクサンドラ「私的には片岡さん一押しなんだけどね。で、どうかな?」

優希「……まだわかんないじぇ」

アレクサンドラ「うん。だよね、もちろんすぐに決めろなんて言わないよ」


アレクサンドラ「これ置いてくから読んでよ、学校のパンフレット。あと転入に関しての色々な書類」

アレクサンドラ「寮とか学費とか免除されたりするから、コレは親御さんに見せてね」

優希「あ、どうも」

アレクサンドラ「それと、コレ私の名刺。何か気になった事があったら連絡して」

アレクサンドラ「編入試験とか実力テストとか、具体的な話はその後ね」

アレクサンドラ「まずは良く考えてみて」

優希「うん……分かったじぇ」

アレクサンドラ「それじゃ、急に来てゴメンナサイね」

まこ「いえ、こちらこそ。たいしてお構いもできませんで」

優希「……」

アレクサンドラ「良い返事を期待してます、片岡さん。それでは失礼します」

優希「どうも……」





まこ「はぁ……で、どうするんじゃ」

優希「わかんないじぇ……」

まこ「とりあえず皆にも話、しとかんといかんのう」

優希「うん。みんな何て言うかな?」

まこ「さぁのう……スマンが先に行っててくれんか。わしちょっと用事あるけえ」

優希「わかったじぇ」

生徒議会室


まこ「……ってわけじゃ」

久「そう、優希が臨海にねぇ……」

まこ「正直おったまげたわ」

久「私は今も驚いてるわよ。それにしても、なんでこう立て続けに……」

まこ「まったくじゃ。悪い事は重なるもんじゃのう」

久「アラ?悪い事だって決めつけるのかしら」

まこ「……久は優希が臨海に行くのは賛成か?」

久「私は優希にとって良い事なら賛成よ」

久「まこは反対なの?」

まこ「わしは……なんちゅうか、良いとも悪いとも言えん」


まこ「臨海に行った方が麻雀の腕も上がるとは思うが、あんましあの学校の方針は好かん」

久「1年の優希に目を付けたのも、大方長く先鋒に起用できるからなんでしょうね」

まこ「そういう駒みたいに使うのは好かん」

久「でも、もしプロになりたいって言うならそういう扱いには慣れておいた方がいいわ」

まこ「優希はまだ1年じゃ」

久「臨海に行く頃には2年よ」

まこ「……ひさぁ」

久「ふふふ、ごめんなさい。ちょっと意地悪だったわ」

まこ「ったく……」



久「まこ、さみしいんでしょ」

まこ「……そうかもしれん」

まこ「じゃけぇ、わしのワガママで優希の進路の邪魔はできん」

久「少しくらいワガママでも良いと思うわよ?」

まこ「わしのキャラじゃない」

久「キャラって……」



まこ「わしの事はええじゃろ」

久「まこだって部員じゃない」

まこ「もうすぐ部長じゃ」

久「もう」

麻雀部部室


まこ「すまんの、遅くなったわ」

和「あ、染谷先輩」

まこ「話、聞いたか?」

和「ええ……」

京太郎「とりあえず座って下さい。今お茶淹れますから」


優希「もぐもぐ」

まこ「何食っとんじゃ?」

和「部活が始まる頃に部長が来て、最近部活に顔出せないからってケーキ持ってきてくれたんです」

まこ「……わしの分は?」

京太郎「ちゃんとありますよ、どうぞ」



まこ「ふぅ、それで優希の事じゃが……」

優希「……もぐ」

まこ「和と京太郎はどう思っとる?」

京太郎「そうですね。やっぱり騒がしいのが居なくなると寂しい気もしますけど」

京太郎「こればっかりは優希の判断に任せるしかないかと……」

まこ「うん、わしも同じ考えじゃ。和は?」

和「私は……優希がこれからも麻雀で高みを目指すと言うのであれば、臨海に行くのもアリだと思います」

和「離れ離れになってしまうのはさみしいです。でも」

和「転校しても、また新しい出会いがあると言う事を優希が教えてくれましたから」

優希「のどちゃん……」

和「それに、インターハイで阿知賀の皆さんとも再開できましたし」

和「きっとまた会えますよ」

まこ「まぁ、まだ返事するには時間あるけぇ、他の人にも聞いてみんさい」

優希「うん、わかったじぇ」





週末 ファミレス


優希「……と、いう訳なんだじぇ」

睦月「それはスゴイね」

純「へぇ、お前がスカウトされるなんてな」

美穂子「しかも臨海女子……」


純「それで?オレらに何を聞きたいんだ?」

優希「私、臨海に行った方がいいのかな……自分じゃよくわかんないから皆の意見が聞きたいんだじぇ」

美穂子「片岡さんは、麻雀がしたいのよね?」

優希「うん」

美穂子「それってプロ麻雀プレイヤーになりたいって事?」

優希「それはまだわかんないじぇ」

美穂子「臨海みたいな有名校に転入するのなら、きっとその先、プロになる選択肢が出てくるわ」

美穂子「多分、そのようなカリキュラムもあると思うし」

睦月「優希ちゃんはプロ入りには興味無いの?」

優希「考えた事もないじぇ。でも、プロみたいな強い人とは戦ってみたくもあるじぇ」

純「ま、今のお前じゃボコられて終わりだな」

優希「そうだな……今の私ではな」



優希「……私は、強くなりたい」

優希「私にもっと力があれば、のどちゃんとも離れ離れにならなくてすんだかもしれない」

優希「そう思うとやり切れないんだじぇ」


睦月「それは、優希ちゃんのせいじゃないよ」

優希「うん、それでも……」

美穂子「片岡さん……」

純「それじゃあ何を迷うんだ?清澄より臨海の方がスキルアップが望めるのは明らかだろ」

優希「それは……」

優希「申し訳ないんだじぇ」


優希「ここまで連れてきてくれた部長達を置いて行くのは……」

優希「私が出て行ったら、もう清澄には部長と染谷先輩と京太郎だけ」

優希「いや、部長も来年卒業して居なくなっちゃう。のどちゃんも……」


睦月「うむ、部員不足はウチとしても悩ましい問題だけども」

睦月「私としては、これは残された者の課題だと思うんだ」

睦月「去っていく者がそれほど悩むものじゃないと思うよ」

優希「そうなのか?」

睦月「それにウチも人数ギリギリで、先輩達の引退後にこういう事態になるのは分かってた」

睦月「それでも、先輩が私に部長というバトンを渡してくれたから、私は全力でそれに応えるだけだよ」

優希「……」

美穂子「片岡さん、先輩っていうのはね、後輩が成長してくれると嬉しいものなのよ?」

美穂子「だから、申し訳ないとか思わないで。貴方がしたい事をしていいの」

美穂子「きっと清澄の人達もそう思っているはずよ」


純「ウチはそういう先輩後輩の関係ってのはないけどな」

純「ソイツがやりたい事があるってんなら応援するのが友達ってもんだろ」

純「なんて言うかさ、かたすぎんだよ。おまえは」





美穂子「少しは力になれたかしら」

優希「うん」

優希「なんだか自分の進むべき道が見えた気がしたじぇ」


優希「ありがとうだじぇ、福路先輩」

美穂子「ふふ、どういたしまして」

優希「むっきー先輩も」

睦月「うむ」



優希「あとノッポ」

純「おい」

長野県内 某蕎麦屋


アレクサンドラ「せっかく長野に来たんだ。ここは入るしかないね」


  「いらっしゃいませー。何名様ですか?」

アレクサンドラ「一人で」

  「それではこちらの席にどうぞ」


アレクサンドラ「何頼もうかな……。ざるそば、かけそば。ふむ、天丼ねぇ……」

アレクサンドラ「いや、今日は蕎麦に決めたんだ。……セットメニューもあるのか」

アレクサンドラ「ん、季節限定メニュー……」

アレクサンドラ「限定なんて謳い文句につられるなんて日本人みたいだけど……スイマセーン!」




  「お待たせしました、秋の天ぷらそばセットです」

アレクサンドラ「お、来たね」

  「蕎麦湯の方は店員にお声掛けください」

アレクサンドラ「はい、どうもー」

アレクサンドラ「さてさて、早速いただくとするか」

アレクサンドラ(ざるそば、天ぷら、漬物は大根ときゅうりか。薬味はシンプルにネギとわさび)

アレクサンドラ(最初は薬味を入れないで食べてみるか)

アレクサンドラ「ずずっ」

アレクサンドラ(ふんふむ。香りが強いな、これが新そばってやつか。すする時に蕎麦の濃い香りが口から鼻から入ってくる)

アレクサンドラ(それに歯ごたえもいい。しっかりしてて、丁寧に打たれた蕎麦なのが分かる)


アレクサンドラ(それじゃ、天ぷらいってみようか)

アレクサンドラ(天ぷらは大葉、かぼちゃ、茄子そして……)

アレクサンドラ「大きいな……コレはマイタケか」

アレクサンドラ(通常の天ぷらセットでは海老天だけどこの限定メニューではマイタケが変わりに入る)

アレクサンドラ(しかし、このボリューム)

アレクサンドラ「どうにも御しがたいな……。ん?これは……」


アレクサンドラ(天ぷら用の塩……抹茶塩、梅塩、柚子塩……なんだこれは!?なんでこんなに塩の種類が?)

アレクサンドラ(しかし、これで味を変えて飽きる事なく食べれそうだ)

アレクサンドラ「サクッ。もぐもぐ」

アレクサンドラ(マイタケのシャキシャキした歯ごたえ。天つゆで食べるのもいいが、これは塩との相性はバツグンだな)


アレクサンドラ「ずるるっ」

アレクサンドラ(マイタケの風味と蕎麦の風味!一緒に食べるとスゴイオイシイ!)


  「おまたせしました、蕎麦湯です」

アレクサンドラ「ありがとう。ふぅ……」

アレクサンドラ「蕎麦の茹で汁の美味さが分かれば日本人ってサトハが言ってた……お?」

アレクサンドラ「もう少しゆっくりさせてくれよ……って、片岡さんか」



アレクサンドラ「もしもし……うん……そう。この話受けてくれるのね」

アレクサンドラ「それじゃあ詳しい話をしましょう……明日また学校でお話したいんだけど……」

アレクサンドラ「そうね、それじゃあ時間は……」





翌日 清澄高校 麻雀部部室


京太郎「話し合い、そろそろ終わったかな」

和「どうでしょうねぇ」

京太郎「臨海の監督さん来て1時間くらいか……何話してんだろうな」

和「なんでしょうねぇ」

京太郎「部長は生徒会だし、染谷先輩も何処行ったんだろうな」

和「どこでしょうねぇ」


京太郎「話もう終わっ……」

和「少し落ち着いたらどうですか?」

京太郎「ご、ごめん。そうだな……お茶でも淹れて落ち着けるか」

和(6杯目はいりまーす)



ガチャ



優希「……」

まこ「すまんの、遅くなったわ」

和「あ、優希。染谷先輩も」

京太郎「お疲れさまです。染谷先輩も一緒だったんですね」

まこ「ああ。それでの……ホレ、優希……」


優希「私……」



優希「私、片岡優希は、この度、臨海女子に、行く事を、決意しました……!」




京太郎「そうか……。それがお前の決めた道だって言うなら、応援するぜ!」

和「私もです。応援してますよ優希」

まこ「まあ、その前に実力テストとか色々あるけえ、確実に臨海入りが決まったわけでもないんじゃがの」

和「あ、そうですね」

京太郎「お前、実力テストとか大丈夫か?これで落ちたらカッコ悪いぞ?」

優希「ふん、それは心配ご無用!コレを見るがいいじぇ!」


バンッ!


京太郎「こ、これは……」

和「麻雀大会のパンフレットですね。ってこれ……」

京太郎「京都東風フリースタイル……!?」

まこ「ああ。読んで字の如く、京都市で開かれる秋の東風戦の大会じゃ」

まこ「先方が言うには……」



アレクサンドラ『実のところ、片岡さんは個人での実績が無いから候補に挙げるにはちょっと弱いんよね』

アレクサンドラ『だから、この大会で好成績を収めて箔をつけてほしい』

アレクサンドラ『このタイトルは宮永照も持ってるけど、それは2年生の時の話』

アレクサンドラ『それを1年生のアナタが獲得する事で実力テストの成績とします』



まこ「っちゅーわけじゃ」

和「なるほど」

優希「だからテストで不合格になるとかありえないんだじぇ」

京太郎「滅茶苦茶強気だな」

優希「当たり前だ!東場なら私は誰にも負けない!」


優希「それが、相手が宮永照だろうが辻垣内智葉だろうがな……!」

まこ「それで、もしテストに合格したら冬を待たずに転校するらしい」

和「えっ」

京太郎「ちょ、ちょっと急すぎじゃないですか!?」

まこ「在籍期間が半年以上でないとインターハイの出場権が得られんそうじゃ」

京太郎「そう、ですか」

和「本当に急ですね……」





生徒議会室


久「……なるほど、そんな規則あったわね」

まこ「わしもすっかり忘れとった。しっかし、あと数ヶ月もしないうちに優希が臨海か……」

まこ「まだ心の整理がついとらんわ……」

久「私もよ。でもすぐに納得しなくてもいいでしょう?まだ時間は残されてるわ」

久「そして、時間が来るまでにちゃんと受け入れましょう」



久「それじゃあ、こんな時に渡すのもなんだけど、コレお願いね」

まこ「なんじゃ?」

久「部活の引き継ぎ書と新しい名簿」

まこ「おま……マジか」

まこ「部長:染谷まこ、か……あんまし実感ないのう」

久「習うより慣れろ、よ。そのうち貫録も出てくるわよ」

まこ「そんならええがの」

まこ「部員:片岡優希、須賀京太郎、原村和……」

まこ「優希もすぐにおらんくなるわ」

まこ「そしたらすぐ冬休みじゃ。年も明けて……学校始まって、春には和も転校する。残るんはわしと京太郎……」

久「もう、なんて顔してんのよ」

まこ「みんなバラバラになるっちゅーのに、それを知っとるのに、皆なんも言わん」

まこ「優希も和も京太郎も……でも、わしは……」


久「まこ」



まこ「……あ」

久「まだ何も終わってないわ」

まこ「ひ……さ……」

まこ「一度に全部背負い込む必要なんて、何処にも無いのよ?」

久「一歩ずつ、前に進めばいいの」

まこ「……ん」

久「ねぇ、覚えてる?前に、県予選の帰り道。夢を見てたって話」

まこ「夢……」

久「そう、私が1年の頃に見てた夢」


久「いつかこの部屋が部員でいっぱいになって、皆の笑い声で満ちて……そんな夢よ」

久「私達は先に居なくなっちゃうけど、でも、きっと来年は沢山の部員が入ってくる」


久「私に全国の夢を見せてくれた貴方ならきっと……」

まこ「わしが……」

久「うん」

まこ「……う……うぁ……」





久「頼んだわよ、部長」

まこ「ッ……」

久「今は泣いていいから……」

久「あの子たちの前では笑って、笑顔で送り出してあげましょう」





現在 電車内


   「……ょう……」

まこ「ん……」

   「ぶちょ……」

まこ「んあ……?」

京太郎「染谷部長、もうすぐ会場着きますよ」

まこ「ん?そか……」

ムロ「朝早かったですからね」

京太郎「大丈夫ですか?まだ寝ぼけてます?」

まこ「……夢、見とった」

ムロ「夢ですか?」

まこ「ああ、懐かしい夢じゃ」

トシ「起きたかい?まあ、二人とも今日は見学だからね」

トシ「京太郎の方は大丈夫?」

京太郎「はい。身体の調子も特に異常ありませんし、牌譜も読み込みました」

京太郎「良いコンディションです」

まこ「そりゃええわ」

京太郎「はい」



京太郎「ようやくか……インターハイ」





同時刻 東東京


優希(ようやくだじぇ……インターハイ)


ハオ「優希、ここに居たんですか」

優希「おお、出迎えごくろうだじぇ!」

ハオ「監督達は先に会場に入ってますよ」

優希「タコスを調達するのに少し手間取ったんだじぇ。京太郎が居ればすぐ作ってもらえるのに」

ハオ「早く行きましょう。ところで……」

ハオ「本当にそのままの格好でいいんですか?」

優希「ロンオブモチ!私といったらこのトレードマークのマントだじぇ!」

ハオ「別にいいですけど」

優希「それにコレはみんなから貰ったものだから……」

ハオ「清澄の人に買ってもらったんですか?」

優希「ううん。そうじゃなくて」

優希「コレは……」



まこ『この眼鏡はじいちゃんから貰ったモノなんじゃがな、そん時に』

まこ『わしの代わりにこの眼鏡でようけ景色を見てほしいっちゅーての』

まこ『わしも色んなモン見てきたが、まだまだじゃ。まだ見た事ない景色がたくさんある』

まこ『優希が清澄から巣立って、今よりもっともっと高いところまで行ったら……』

まこ『わしにその景色がどんなんだったか教えてくれんか』



優希「コレはみんなから貰った私の翼だからな!」

今日はここまで
またしばらく書き溜めを探しに行きます

>>235
セーターくらい着なさい

乙でした

そしてやっぱり挟まれる孤独のグルメっぽい要素

こんばんわ。あったかくない……

>>266
これが実際に孤独のグルメ(文庫版)片手に書いてるんですよーぅ
あんまり似せてないけど

ちなみに前回の食事シーンで出てきた 抹茶塩・梅塩・柚子塩 は
それぞれ まこ・ムロ(1年のリボンが赤)・京太郎 を表しているという
ホントどうでもいいお遊び要素が入ってます


最近、バターコーヒーなるものが流行っているようです
想像するにホット・バタード・ラム的飲料かと思ってたんですが
なんでもバター入りコーヒーでダイエットできるとか。マジかよ
朝に飲むといいらしいです。でも普通のバターじゃ駄目とか言う。マジかよ

そこで普通のバター入れて、さらに砂糖入れてみたらコレが美味しい!
まったりした甘さが口の中に広がって、あまりコーヒーを飲まない人にもオススメです
少し酸味が気になる時は、塩をほんのちょっぴり入れるといいですよ


それでは短いですが投下します



インターハイ長野大会 男子県代表選抜個人戦
地区予選1日目 A卓


京太郎(さて、これが俺の2回目の公式大会なわけだけど)

京太郎(去年は午前中に敗退決定なんて、笑えるような笑えないような結果だった……でも)

京太郎(今年はそうはいかない)

京太郎(学校のためとか仲間とか、鍛えてくれた人達のためとか、色々あるけど……)


京太郎(まずは自分のために)



京太郎「よろしくお願いします」



会場 ロビー


ムロ「始まりましたね。須賀先輩は大丈夫でしょうか」

まこ「アイツなら大丈夫じゃろ」

トシ「アレで肝っ玉強いからね。格上相手でもひるまないで冷静に対処できるさ」

まこ「伊達に全国プレイヤーに揉まれとらんわ」

ムロ「そうですよね」

トシ「それじゃ、私達も移動しようか」

まこ「最初はドコ見るんです?」

トシ「千曲東と今宮女子あたりから見ようかね」

ムロ「龍門渕とか風越はいいんですか?」

まこ「アイツらはシードじゃけぇ試合は午後からじゃ」

ムロ「あ、そうでした」

トシ「うん、それにまこなら主要メンバーの打ち筋は大体分かってるからね」

まこ「ここにきて変わっとらんがええがの」

トシ「奇襲戦法をとられたらその時はその時さ」


まこ「それに……もしかしたら無名校にもの凄い打ち手がおるかもしれんしの」

ムロ「去年の清澄みたいにですか?」

まこ「今年の清澄みたいにじゃ」

ムロ「も、もう!」


トシ「順当に行けばその2校は決勝に出てくるからね」

トシ「予選と決勝なら、決勝の打ち筋を研究した方がいいさ」

まこ「下手したら大将戦まで持たんかもしれんし、ここは数多く見れる方が得じゃ」

観戦室


ムロ「あんまり人居ませんね」

まこ「普通こんなもんじゃろ。部屋の外まで溢れる方がおかしいんじゃ」

トシ「龍門渕は全員3年生だし、なおの事注目されてるみたいだね」

まこ「あのお嬢様は目立ってナンボじゃけぇ、気分もええじゃろう」

ムロ「ははは……」




控室(龍門渕高校)


一「1回戦始まったみたいだね」

純「去年のインターハイの影響で女子の競技人口が増えてレベルが上がったとか言われてるけど」

純「ま、オレがいつも通りトバしてくるわ」

一「うん、頑張ってね純君」

透華「ふふふ……」

一「と、透華?」

透華「来てますわ……」

智紀「なにが?」

透華「来てますわ!龍門渕の時代が!」

透華「今年こそ、龍門渕が全国出場!そして全国優勝!」

透華「この私の華麗な闘牌にお茶の間の視線は釘づけ確定ですわ!」

純「まーた始まったよ……」


透華「純、獲物は残しておきなさいな」

純「えぇ……逆にメンドクセエよ」

透華「この私の対局を一つでも多く観客に見せるのは最早義務なのですわ!」

透華「きっと観客もそれを待ち望んでいるはず!」

一「まぁまぁ、落ち着きなよ透華。考えてもみなよ」


透華「嗚呼、この胸の奥から沸き起こる昂りは……て、なんですの?」

一「ホラ、予選からいきなり透華が出てくるのはちょっともったいなくない?」

透華「もったいない?」

一「うん。観客の期待に応えるのもいいと思うけど、すぐに出ていくのも味気ないと思うな」


一「バロック組曲でいうジーグみたいなものだよ。ここぞと言う時に出て行った方がより盛り上がるんじゃないかな?」

一「出し惜しみするくらいが調度いいと思うよ」

透華「なるほど。一の言う事も一理ありますわね」

透華「私のこの溢れ出る存在感はフィナーレにふさわしいと言う事ですわね!」

一「そうそう、つまりそういうことだよ」

純「いや、お前副将だろ……」

智紀「シー……」

透華「アイドルたるもの、エンターテイメントな演出も心得ておかなければいけませんわね」

一「そうそう、つまりそういうことだよ」



純「上手もんだなぁ国広君は」

一「透華の扱いならまかせてよ!」

智紀「良いブリーダーになれる」

観戦室


ムロ「そういえば、個人戦って初日は東風戦なんですよね」

トシ「そうだね」

まこ「2日目の本選は東南戦じゃけえ、間違えるなよ?」

ムロ「大丈夫ですよ、優希先輩じゃあるまいし」

まこ「それと、初日の地区予選は南北で分かれとる」

ムロ「ウチは南ブロックでしたよね」

まこ「そう、風越も同じじゃ。龍門渕は北ブロックじゃけぇ、あいつらとは本選で対局する事になる」

まこ「予選で稼げたからっちゅーても、本選でもそう上手くいくとは限らん」

ムロ「はい」


  『試合終了ー!』


トシ「終わったね、なんだか全体的に初歩的なミスが多かったね」

まこ「あんまし慣れとらんのでしょう、大きい大会で打つのは」


ムロ「……」

トシ「大丈夫だよ」

ムロ「はい……」

トシ「それじゃ、お昼食べに行こうか。京太郎の方も終わったろうしね」

食堂


京太郎「ああぁー……」


まこ「お、居た居た」

ムロ「ダラけてますね」

まこ「お疲れさん!」

京太郎「おつでーす」

トシ「どうだった?調子の方は」

京太郎「とーたる125てんで、6いでした」

まこ「お、やるのう!」

トシ「良い感じだね」

まこ「じゃが、これで午後は相手からチェック入るぞ」

京太郎「そーですねー」


トシ「そのダルそうな感じは早速ゾーンに入ってたんだね」

京太郎「はい。でもちょっとはりきりすぎてぺーすはいぶんが……」

ムロ「はい、先輩」

京太郎「むろぉ……あたまにのっけんな……なにこれぇ」

ムロ「マックスなコーヒーです。これ飲んで糖分でも補給してください」

京太郎「さんくす」


まこ「このまま順位をキープできればええのう」

ムロ「何位だったんですか?」

トシ「6位だってさ」

ムロ「うわ、凄いじゃないですか!」


京太郎「ゴクゴク……っぷはー」

トシ「相手はどんな感じだった?」

京太郎「んー、特にマークされてる感じはなかったですね」

京太郎「午前のうちに実績のあるプレイヤーとは粗方打ち終わったんで、午後は比較的に楽になりそうです」

まこ「油断しなさんなよ」

京太郎「もちろん。試合の空気にも慣れてきたんで、あとは自分のペースを意識してやってみます」

京太郎「女子の方はどんな感じでした?」

まこ「千曲東と今宮女子がおる対局見とったが、あんまパッとせんかったわ」

トシ「午後からは風越か龍門渕の試合を見る予定だよ」

ムロ「……」




トシ「それじゃあ、そろそろ私達は移動しようか」

京太郎「え、もうですか?」

トシ「シード校の対局は競争率が高いから。早く席を確保しないとね」

まこ「そういうわけじゃ。そんで……」


まこ「ムロは京太郎の応援にでも行っとれ」

ムロ「え?」

まこ「あんた、さっきの試合見て雰囲気に飲まれとったろ」

まこ「同じ1年の選手見て自分と重ねとったじゃろ?あの1年も滅茶苦茶緊張しとったからの」

トシ「感情移入しちゃったんだね」

まこ「じゃけぇ、京太郎の試合でも見て自信つけときんさい!」


トシ「じゃ、行こうか。京太郎、午後の試合も頑張るんだよ」

まこ「それじゃあの。ムロの事、任せたぞ」

京太郎「あ、はい……」

ムロ「……」

京太郎「緊張してたんだ」

ムロ「……ま、まぁそんな感じです」

京太郎「公式試合は初めてじゃないんだろ?」

ムロ「はい……インターミドルに出た事はあります。結果は散々でしたけどね」

ムロ「中2の時の団体戦は1回戦敗退。去年の個人戦は予選落ち……」

京太郎「奇遇だな、俺もだ。しかも午前中には結果決まってたんだぜ?」


ムロ「先輩は緊張してないんですか?プレッシャーとか……」

京太郎「プレッシャー?あるけど」

ムロ「……見えませんけど」

京太郎「そうか?まぁ、人から見てわかるようじゃちょっと緊張しすぎだな」

ムロ「う……」



京太郎「ムロって、結構人の事見てるよな」

ムロ「そうですか?」

京太郎「ああ。さっきの団体戦の選手見て、自分も緊張しちゃったんだろ?」

ムロ「そう、みたいです……」

京太郎「それに、俺が疲れてるの察してコーヒー買ってきてくれたし」

ムロ「いや、あれは誰でもわかりますよ」

京太郎「あはは、そうか」

ムロ「そうですよ、もう」

京太郎「……ムロはさ」



京太郎「ムロは人の気持ちがよくわかるから、それで自分の気持ちにしちゃうんだ」

ムロ「……」

京太郎「でも、あんまり自分を見ないでいると自分がなくなっちまうぞ」

ムロ「わたしが……」

京太郎「ほら、自分を信じるから自信って書くだろ?まず自分がいなきゃ」


ムロ「なんか金子みすゞみたいですね」

京太郎「懐かしいなぁ、教科書で見た事あるわ。つか、久しぶりに聞いたその名前」

ムロ「あんまり詩とか読まないですか?」

京太郎「いや、読まないな。読書は咲の専売特許だったし」

ムロ「いやいや、専売特許って……。別に先輩も読書していいでしょ。本くらい読みましょうよ」

京太郎「雑誌は読むけどな」

ムロ「それは読書とは言いません」

京太郎「それじゃあムロはどんな本読んでるんだ?」

ムロ「私ですか?えーと……」




ムロ「月刊MOEとか……?」

京太郎「雑誌じゃねぇか!」

ムロ「え、私読書するって言いましたっけ~?」

京太郎「言っ……たような気がするような。そういう流れだったろ!」

ムロ「先輩いつから流れ論者に……。和先輩が知ったらなんて言うか」

京太郎「お前はバリバリのオカルトのくせに!?」

京太郎「ったく」

ムロ「あははっ」


  『まもなく、午後の試合が始まります。各選手は対局室に移動してください』


京太郎「お、時間だな」

ムロ「ですね」

京太郎「それじゃあ行ってくる。……ムロ」

ムロ「なんですか?」



京太郎「ちゃんと見てろよ?」

ムロ「……はい!」

今日はここまで
思い出したように京ムロ入れる。久々に回想なかったなぁ

こんばんわ
雪降ると寒さの質が違いますね

進行速度が速くないスレなのですぐに追いつけてイイネ!
書いた後で、設定の矛盾とまではいかないけど不自然な流れになってるのに気が付いて
なんやかんや修正を試みるも結局リライトするっていう……

では投下します。今週はムロ強化週間です

インターハイ長野大会 男子県代表選抜個人戦
地区予選2日目

昼休み ロビー 談話スペース


京太郎「あれ、天江さん?」

衣「おお、キョータローではないか」

京太郎「こんにちは。どうしたんです?こんなところで」

衣「透華に呼び出されたんだ、衣が直々に奇幻な手合いを探していたのだが」

衣「藤田の奴に見つかってしまってな……」

京太郎「逃げてきたんですか……そういえば藤田プロは今年も解説されてましたね」


衣「そんな事よりキョータロー!見事な健闘ぶりだな!」

京太郎「ありがとうございます。これも天江さんやみんなのおかげです」

京太郎「まだまだ上に行きますよ!」

衣「うむ、その調子だ!勇往邁進だ!」

京太郎「ところで、誰か気になる選手は居ましたか?」

衣「いや、衣が見た限りでは目を掛ける程の才華はそんなに居なかったな」

京太郎「何人かは居たんですね」

衣「まぁな。それは清澄の2人も入っているぞ」

京太郎「お、そうですか。天江さんに認められるとは、染谷部長は流石としてもムロもですか」

衣「なかなか面白い打ち手ではないか」

京太郎「そっかぁ……へへ、なんか嬉しいですね」

衣「それに、あいつはなんだか昔の衣に似ている気がしてな……」

京太郎「え?」


  「ほう……天江衣がそこまで言うとは、興味深い」


京太郎「あ」

衣「げ」


靖子「げ、とはなんだ。げ、とは」

京太郎「藤田プロ!」

衣「何しに来た!」

靖子「こっちから天江衣の匂いがしたからな……よっ」

衣「うわぁ!」

衣「くっこの、離せ!」

靖子「よーしよしよしよし」

衣「なでるなぁ~……」


ムロ「せんぱーい!ここに居たんですか……って何これ」

京太郎「おうムロ。見てのとおりだ」

ムロ「いや見てわからないんですが……」

京太郎「女子の方も休憩?」

ムロ「はい、今さっき中堅戦の前半が終わったところです。部長達も待ってますよ」


衣「このゴミプロ雀士!あ、あまり衣の忌諱に触れない方がいい……!」

靖子「じゃあ頭に触れとくよ」

衣「ふわぁぁ……」


京太郎「それでは、俺たちはこの辺で失礼しますね」

靖子「ああ。……そうだ、お前あれからなかなか鍛えられたようじゃないか」

京太郎「そうですね。インハイが終わってから、皆さんにはお世話になってます」

靖子「あん時はまだまだひよっこだったがな」

靖子「あの久の置き土産だ。凡庸では無いとは思っていたが……面白い」

衣「い、いつまで撫でてる気だ!おい、お前たちも見ていないで助け……」


京太郎「それじゃお疲れ様でしたー」

ムロ「おつかれさまでーす。決勝頑張ってください」

衣「ちょ、待てえええぇぇ!キョータロー、ヒロコオォォ……!」



食堂


トシ「お、来たね」

京太郎「ただいま戻りました」

まこ「調子はどうじゃ?」

京太郎「良いですね。だいぶ落ち着いて打ててます」

まこ「そりゃええわ」

トシ「残りは半荘6回だね、頑張りなさいよ」

京太郎「はい!」


京太郎「あ、そういえばさっきそこで天江さんと藤田プロとお会いしましたよ」

まこ「藤田さんは女子の解説しとったからの。で、そこに天江衣か」

京太郎「撫でくり回されてました」

まこ「ははは、じゃろうな」


京太郎「ところで、女子の決勝はどんな感じでした?」

まこ「んーそうじゃのう……」

ムロ「先鋒戦では井上さんが活躍してましたね」

まこ「去年以上の大暴れでサンコロしとったのう」

トシ「他の3校も防御に徹してたんだけど、止まらなかったわねぇ」

京太郎「あの人、勢いに乗ると天江さんの支配すらブチ抜くからなぁ……」


京太郎「それで、次鋒戦は……あっ」

まこ「……」

ムロ「えーと、区間1位は鶴賀でした……」

京太郎「出たんだな……」

ムロ「はい」

トシ「あれは本当にビックリしたよ」

まこ「出やすいけぇ……四暗刻は出やすいけぇのう……よくあるよくある」


京太郎「ないです」

まこ「グオゴゴゴ……」

ムロ「中堅戦ではあまり点数が移動してませんね」

京太郎「へぇ、それじゃあ今は龍門渕がトップでいいのか?」

ムロ「はい。その次に鶴賀、風越、千曲東です」

トシ「風越はちょっと意外だったねぇ。やっぱり稼げるところで稼げないと厳しいわね」

まこ「中堅の子も結構攻めとったんですけどね」



京太郎「やはり次鋒が鬼門か」

まこ「……ありゃ無理じゃろ」

ムロ「あはは……」



京太郎「それじゃ、俺そろそろ行きますね」

まこ「しっかりのう」

トシ「京太郎、あんたはいつも通りでいいんだからね」

京太郎「はい!」

ムロ「先輩」

京太郎「おう、行ってくる。ちゃんとトロフィー持って帰るからな!」

ムロ「あはは、期待して待ってます!」



ムロ「行ってしまったか……」

まこ「そんな残念そうに」

ムロ「べ、別に残念とかじゃありませんから!」


ムロ「私、午後は男子の個人戦見てますからね!」

トシ「それは別にいいんだけどね、はいドリンク」

ムロ「え?」

トシ「まだ行かなくていいだろう?食後の一杯くらい付き合いなさいよ」

ムロ「あ、はい。ありがとうございます」

トシ「それにあんたらには聞きたい事もあったしね」

ムロ「はい?」

トシ「ほら、前に風越に行った時にさ、まこがなんか言いかけてたじゃない?」

ムロ「え、なんでしたっけ?」

まこ「ああ、あれか……」


まこ「そうそう。確か、あれは4月のまだ入学式の前の事じゃったのう……」




2ヶ月前 清澄高校 麻雀部部室



ムロ「おはようございまーすって、誰も居ない」

ムロ「でも鍵開いてたし、どこ行ったんだろ?」

ムロ「それにしても……大丈夫かな」


ムロ「清澄の制服、初めて着てみたけど似合ってるかな?」

ムロ「……」

ムロ「えと、鏡ないっけ?あ、そうだロッカーの扉の裏にあったか」

ムロ「ふぅ……うーん、まだちょっと固いな。下ろし立てだからしょうがないけど」

ムロ「スカートの裾長めだけど、短めの方が……いやいやそれは恥ずかしい」

ムロ「あんまり露骨に見えちゃうかもだし、この方が大人っぽいと思うし」

ムロ「あ、ストッキングとか履いとけばよかったかも!もっと大人っぽい感じで」


ムロ「カーディガンとか着るのはどうだろ。こう、ちょっと袖を長めにして」

ムロ「んーでも、それはちょっと私には合わないかな」

ムロ「マホだったら可愛くて似合うんだろうけど、私には……」

まこ「いや、ええと思うよ?」

ムロ「そうかな?でもそれだと少し幼い感じが出ちゃ……」



ムロ「いつから?」

まこ「ストッキングも履けばええと思うよ?」


ムロ「うっわあぁぁ……ちょー恥ずかしいぃぃ……!」

まこ「ククク、なんじゃ似合うとるけぇ安心しぃ」

ムロ「ああ、穴があったら入りたい……」


ムロ「いや、いっそ深い海の底の貝にでも……」

まこ「そんな死刑宣告されたかのような」

京太郎「おはようございまーす。あれ、ムロ来てたんだ……ってどうした?」

ムロ「フロランタン美味しうございました、バウムクーヘン美味しうございました……」

京太郎「おいおい、遺書を読むな。何があった?」

ムロ「ふわっ!出た!」

京太郎「俺はゴーストかなにかか」

まこ「ほれ、ムロがわざわざ京太郎に見せに来たんじゃ、言う事あるじゃろ?」

京太郎「お、そういやソレ清澄の制服だな」

ムロ「べ、別に先輩に見せに来たわけじゃ……」


京太郎「いいな、似合ってるぞ!」

ムロ「あ、ありがとうございます。ま、まぁ今日初めて着たんですけどね、その、サイズ合ってて良かったですけど、ちょっとまだ慣れないって言うか、いやすぐに慣れると思うんですけど、えっと、スカートとかもこれ長さ、そのもっと似合う長さとかあったら変えてもいいなぁとか、思って、そこのところどうかなーなんて、ちょっと自分じゃわかんない、客観的にね、見てどうかなーって、その、先輩的にはどのくらいのが似合うと思うのかなって、その、どういうのが、先輩はす、好きなのかなぁとか思ったりして、あ、ストッキングとかも、あれば履きますけど、あの、厚さとかカラーリングとか色々あるし、えっと……」

まこ「落ち着け」





まこ「ちゅー事がありまして」

ムロ「おあああああぁぁ……」

トシ「おやおや」

トシ「恥ずかしがる事ないじゃない。男に可愛く見られたいなんて、女の子なら当たり前だよ」

まこ「そうじゃそうじゃ~」

ムロ「ぐぬぬ……そんなニヤニヤして!」

ムロ「ホント、須賀先輩の為とかじゃなくて、新しい制服だったから、ただ単に似合ってるか心配で……!」


まこ「そんで、その日の前に京太郎に女の服装でどんなんが好みですかーなんて聞いとったんですわ」

トシ「これは計画的犯行だね」

ムロ「あっもう……!」

まこ「髪伸ばしとるのもな」

ムロ「……別にぃ」

トシ「いいじゃない、きっと似合うわよ」

ムロ「むぅ」


トシ「とき髪に室むつまじの百合のかをり消えをあやぶむ夜の淡紅色よ……」


ムロ「え?」

トシ「若いうちは時間なんていくらでもあると思うけど、過ぎて気づくものよ。とても大事なものなんだって」

トシ「でも、手を伸ばせば届くと思っていたものが、いつの間にか手に入らない事がある」

ムロ「与謝野晶子ですか……」

トシ「そうそう、よく知ってるわね。手をこまねいてたらいつか後悔しちゃうわよ」


ムロ「熊倉先生って結構肉食系ですよね……」

まこ「わしらよりバイタリティあるわ」

トシ「何言ってんだい、若いのがそんな事言ってちゃいけないよ」



ムロ「さて、ごちそうさまでした。私本当に行きますね」

まこ「おう、多分女子の決勝までには終わるじゃろうて。そしたら、わしらもそっち行くけぇ」

トシ「それじゃあ、あと頼んだよ」

ムロ「はい!」

ムロ「このまま行けば、先輩が全国に……」

ムロ(本当に、本当に和先輩や優希先輩達と同じ舞台に立つ事が……)


ムロ「それは嬉しい。自分の事のように、嬉しい事だ」

ムロ(でもそれは、そこに居るのは自分じゃない)

ムロ(私じゃない)

ムロ(同じ夢を持ってるけど、それは人に託すモノじゃなくて、自分で叶えるモノなんだ)

ムロ(私自信が、追いかけなきゃ……)


ムロ「はぁ……でも」

ムロ「今日くらい、脇に置いてもいいかな。明日の事は明日の自分に任せるとして」

ムロ「……もし、先輩が全国行きが決まったら」


ムロ「い、勢いで抱きつくくらいは許される……かな?」

今日はここまで

このSSのムロはロングスカートにストッキング装備です

おつおつ
ムロの変な髪型は変わってるようで安心した。
想像はつかないけどw

こんばんわ
インスタントのコンポタが美味しい季節です
ソースとかタバスコとか卵黄入れて飲むと、どろり濃厚で更に美味しいオススメ

>>300
まちがい
まこ「おう、多分女子の決勝までには終わるじゃろうて。そしたら、わしらもそっち行くけぇ」
ただしい
まこ「おう、多分女子の決勝が終わる前に、そっちが先に終わるじゃろうて。そしたら、わしらもそっち行くけぇ」
男子個人戦の本選と並行して女子団体戦決勝が行われていましたね

>>306
あとで参考画像でも用意しようかしら

投下します。短いです

インターハイ長野大会 女子県代表選抜団体戦
地区予選2日目 決勝

前半戦 南四局

親:天江衣



アナ「さぁ、前半戦もいよいよオーラス。ここで龍門渕高校、天江衣の親番だー!」


池田(天江の親……ここは差し込んででも流したい……でも)

桃子(ここに存在しない私は差し込めない……もう池田さんには私は見えていないっす)

池田(だから、あとは千曲東に頼るしか……)


池田(いや……)

池田(敵を頼ってどうする……!)

池田(自分の足で立たなきゃ、弱気になっちゃ駄目だ!)

池田(自分の手で、勝利を掴むんだ!)


衣(ふん。だがテンパイにすら辿り着けまい)

衣(今宵は満月ではないが、もう衣に増上慢など無い……)

衣(だから、今の衣の全力で屠ってやろう!)

衣「ポン!」


アナ「天江がダブ南をポン!」

靖子「コースイン」

桃子(あっちゃあ~天江さんには見えてたっすか……)

池田(クッ鳴けないし!)


衣「ツモ!2600オール!」

衣「1本場!」


桃子(えっ?)

アナ「親の連荘!また今年も大暴れするのかー!?」

靖子「ほぅ、海底まで行かずに和了るのか……ふふ」


桃子(うーん……去年はいくらか油断や驕りが見えたっすけど)

池田(付け入る隙が無い)

衣(夜の帳の降りるを待たず、ここでお前達は……)

衣「ロン!12300!」


桃子(……止まらないっすね)

池田(止めてやる……!)


桃子(……まぁ、正直言うとここまで来れただけでもありがたい事っす)

桃子(先輩達が抜けた後も、新しい部員が入ってくれて……)

桃子(そして、またこの舞台に立てたっす。しかも今年は加治木先輩と同じ大将で)

桃子(先輩は居ないけど、ここに先輩を感じるっす)


桃子(そう思うと……欲が出てくるっすね)

桃子(あの日、先輩と行けなかった夏の日)

桃子(そこに一体何が待っていたのか……見てみたい)


桃子(そのためには……!)

池田(コイツを倒す!)


池田(私は風越のキャプテンなんだ!)

池田(キャプテンとして、今年こそ皆を連れて行くんだ、全国に!)

池田(コイツを……天江衣を倒して!)


衣(お前達は……ここで)


 「リーチ!」

衣「……!」

桃子(ここで来るんすか)


 「ぎっひ」


アナ「あーっと、ここで千曲東、曲げてきたー!」

池田(千曲東大将、上柿恵……!)





1年前 千曲東高校 屋上


恵「大将、こんなとこに居たんですか」

棟居「恵……」

恵「大将まだ県予選の事……」

棟居「恵、私はもう大将じゃないよ」

恵「うぅっ」

棟居「別に、もう気にしちゃいないさ」


棟居「最初は無名校なんかに負けて、悔しいやら悲しいやらで、訳わかんなくなっちゃったけど」

棟居「終わってみれば清澄は全国準優勝。妥当だよ。うん、妥当な結果だ」

恵「た……部長……」

棟居「もうすぐ部長でもなくなるよ」

恵「うぅっ」


恵「で、でも部長はまだコクマが……」

棟居「それも、メンバー入りできるか分からないけどな」

恵「うぅっ」

棟居「ホラ、いつまでもメソメソしてんな」

棟居「恵はまだまだこれからなんだからさ」

恵「でも……」

棟居「……老兵は死なず、ただ消え去るのみってな」

恵「大将ぉ……」

棟居「後は任せたよ、恵」





恵(今になっても、本当にあたしがこのポジションでよかったのかわからない)

恵(でも、あたしはあの人に任されてここに居る……!)

恵(託されたんだ……だったら、腑甲斐ないところなんて見せられない!)



桃子「あ、ロンっす」

恵「うぅっ!?」

衣「にゅ?」

池田「え、そっち?」


アナ「前半戦終了ー!最後の和了は鶴賀学園、東横桃子!」

靖子「鶴賀の東横は去年のコクマでも活躍してたな」

アナ「さぁ、この時点で龍門渕高校が圧倒的リード!追撃する3校は果たして、追いつく事が出来るのかー!?」

トシ「おや、最後は割とあっさり和了らせてもらえたね」

まこ「うーん、今のは千曲東が和了るフラグなんじゃ……」

トシ「それじゃ、そろそろ行こうか?」

まこ「そうですね、もう最終戦も終わっとる頃でしょう」



男子個人戦会場


ムロ「大丈夫ですよね、きっと」

ムロ「終盤のペースも落とさずにいけましたし、確実に入ってるはずです」

京太郎「かみのみぞしるってやつだな」

京太郎「おれはやれるだけやったさ」

ムロ「ん、お疲れ様です」

京太郎「くまくらせんせいがいってた」

ムロ「なんですか?」

京太郎「これは、おれじしんとのたたかいだって」

ムロ「自分との、ですか」


京太郎「いままでやってきたことを、ぜんぶだせたら」

京太郎「かならずけっかはついてくるって」

ムロ「そうですね」

ムロ「先輩はずっと頑張ってきましたもんね」

ムロ「私が保証します!」

京太郎「おう、ありがとな」

ムロ「そうですよ。だって……」


ムロ「わ、私、先輩の事、ず、ずっと見て……」


まこ「おお、ここにおったんか!」

トシ「全行程終了、お疲れ様」

京太郎「おつかれさまでーす」

ムロ「て、て、テレッテッテー……」


トシ「それでどうだい、手応えの程は?」

京太郎「じぶんなりに、せいいっぱい」

トシ「そう。なら大丈夫だね」

まこ「おっ、どうやら最終結果出るようじゃ」


『男子個人戦の最終結果を発表いたします』

『全国行きの権利を獲得したのは、この3名です』


京太郎(あれから我武者羅に走ってきた)


ムロ「うわぁ、ドキドキする」

トシ「私はワクワクしてるよ」


京太郎(それも人より遅いスタートだったかもしれない)


まこ「おお!」

ムロ「先輩!」


京太郎(秋が過ぎて、冬が明けて、春が来て……また夏の日に)

京太郎(周回遅れな俺だけど、これで……)





京太郎(これで少しはお前達に……)




『そして1位は、清澄高校2年……』



今日はここまで
早く全国編に突入したい……

こんばんわ
うわわ、5レス分しか書けてない……

今日は参考画像だけ投下します
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org46344.jpg.html
なんか横になってる……?モニターを横にしてご覧ください

あんまり髪の毛いじるとムロ感が無くなるのが分かったので
ちょっと長くしてボリューム出して前髪いじって眉毛整えてサイドのメリハリつけて
そしたらこうなりました
おかっぱにすると凛子(cv.丹下桜)っぽくなる気がする

今日はこれまで。なるべく早く書き溜めを見つけてきます

こんばんわ
霜焼け辛すぎる……

咲キャラで好きなキャラはいっぱいいるので、今後色々なキャラを登場させたいと思っていますが
なんせ1年後の設定なので、ちょっと厳しい人達も居ます
無理しない程度に登場させたいなーって思ってます
ただし、新道寺は難易度高い(方言的な意味で)のでもう無理かな……

それでは投下します

インターハイ長野大会 女子県代表選抜個人戦
地区予選1日目

ロビー 談話スペース


京太郎「よーしよしよし、よーしよしよし」

ムロ「うぅぅ……うあぁ……」


まこ(一心不乱に撫でとる……)

まこ「え、ちょ、何やっとんじゃ……?」

京太郎「気合を入れてるんです!」

まこ「は?」

京太郎「ムロに気合を入れてるんです!」

まこ「いやわからん……」

京太郎「俺昨日1位通過したんで、今すごい流れ来てるはずなんですよ」

京太郎「それをムロに注入してやろうかと!」

トシ「なるほどね」

まこ「わかるんですか!?」

トシ「決まった方角にモノを置いたりするより、生きてる人間の方が力は強いからね」

トシ「なんなら、まこもしてもらうかい?それとも自分が触る方がいい?」

まこ「え……いや」

京太郎「俺はどっちでもいいですよ」

ムロ「あうぅ……お、おぅふ」


まこ「え……じゃあ、お願いします……」



女性用化粧室


ムロ「あーもう……髪ぐしゃぐしゃ」

まこ「わしは元とあんまり変わらん」

ムロ「はぁ……もしこれで本当に上位に入れたら御の字ですよ」

まこ「そうじゃのう、もし入れんかったら京太郎のせいにするか」

ムロ「あはは、いいですねソレ」

まこ「おどりゃ責任取らんかーい!ちゅーてな」

ムロ「撫でが足りんのじゃー!」



まこ「うんむ。ま、リラックスできとるようで何よりよ」

ムロ「そうですね……今、不思議と落ち着いています」

ムロ「私、早く麻雀を打ちたいと思ってる……」

まこ「まったく、効果は抜群じゃの……ムロ」

ムロ「はい」

まこ「こんなとこで躓いとるわけにはいかんぞ」

ムロ「はい」

まこ「一緒に行くけえの、全国」

ムロ「はい!」


  『各選手は、指定された対局室に移動してください』


まこ「時間じゃ」

ムロ「ですね、それじゃ行ってきます。染谷部長も頑張って下さい」

まこ「おう、しっかりのう」



ムロ「ふぅ……」

ムロ「……」

ムロ「こうかは ばつぐんだ!」

ムロ「……」

ムロ「思ってたより、私って単純なのかな」

観戦室


京太郎「もうすぐですね」

トシ「始まるね」

京太郎「ムロも染谷部長も頑張ってほしいです」

トシ「うん。まこの方はなかなかの落ち着きっぷりだね」

京太郎「流石、場馴れしてます。モニター越しにも大物感が出てるなぁ」

トシ「まこにとっちゃ実戦も研究だからね、今は特にそうなんだろうさ」

京太郎「研究中ですか」


トシ「そうだね。まこは常にインプットとアウトプットを繰り返している」

トシ「その最中でも試行錯誤をしてるから凄いのよあの子は」

京太郎「普通、気を抜くと流れ作業みたいになっちゃいますよね麻雀って」

トシ「うん、それが他の人とは違うところだね」

京太郎「そりゃ経験値溜まるよなぁ」


京太郎「お、モニター1面にムロのアップ」

トシ「清澄って事で注目を浴びてるね」

トシ「あんたのせいよ?」

京太郎「おれぇ!?」

トシ「そうよ、昨日あれだけ活躍したんだもの。そりゃあ目もつけられるわよ」

トシ「去年は初戦敗退だったのが今年は1位!だなんて」

京太郎「いや、元々清澄は有名でしたし」

トシ「あら、1日目の午前だったかしら、相手にマークされていなかったって」

京太郎「言いましたっけ?」

トシ「言ったわよ。あぁ……ムロも可哀そうね、無駄に衆目に晒される羽目になるなんて……」

京太郎「いやいや、え?なんですか?」

トシ「そんな可哀そうな後輩になにかしてあげたら?」

京太郎「なにかって……」

トシ「もう、気が利かないね」

京太郎「ええと……よくわかりませんが、考えときます」

トシ「うんうん、たんと労ってやるんだよ」


京太郎「それにしても、ムロのやつあんまり緊張してませんよね」

トシ「試合に行く前のアレが効いたんだろうさ」

京太郎「あんなので本当に効果あるんなら、いくらでもやってやりますけどね」

トシ「それがあるんだよ、特に女の子にはね」

京太郎「ふぅん?そんなもんですか」

京太郎「それにしても、ムロの初お披露目か」

トシ「能力開発期間でいうとエイスリンより急造仕上げだけど、大丈夫だろうさ」

トシ「確か発現したのが春の……」





2ヶ月前 清澄高校 麻雀部部室


ムロ「……あの、厚さとかカラーリングとか色々あるし、えっと……」

まこ「落ち着け」

京太郎「ん?ストッキングも似合うんじゃないか?」

ムロ「お、そ、そうですか!」

まこ「やれやれ良かったの。そんじゃ、ひとつお茶でも淹れてくれんか」

京太郎「わかりました」

ムロ「てつだいます」

京太郎「サンキュ」


まこ「ん?足音……?」



ガチャ


トシ「おはよう」

まこ「え?あ、おはようございます……」

京太郎「おはようございます……ええと、どちらさまで?」

トシ「ああ、いきなりやって来てすまなかったね」

まこ「んーこの人どっかで見た事あるのう……」

トシ「新任の熊倉トシです。この度清澄高校に赴任してきました」

京太郎「今度2年になる須賀京太郎です。そうだったんですか、でもここ旧校舎ですよ。もしかして迷ったりですか」

トシ「いやいや、私は趣味が麻雀でね。自然と牌のある場所に足が向くのさ」


まこ「あーっ!この人、宮守女子の監督さんじゃあ!」

京太郎「え?宮守女子って、確かインハイの2回戦で当たった学校……」

まこ「そうじゃ、岩手の!」

トシ「おや、覚えててくれてたんだね」

まこ「いやーそうですか。まさか宮守からウチに来るとは……あ、申し遅れました、今度3年になる部長の染谷まこです」

トシ「宮守の麻雀部はあの子達で最後だったからね、新天地を求めてきたんだよ」

ムロ「お茶はいりましたよーって誰っ!?」

京太郎「新任の熊倉先生。今年から清澄だって、お前と同じだな」

ムロ「あ、そうだったんですか」

トシ「おや、制服着てるけどアナタ新入生?」

ムロ「はい、1年の室橋裕子です」

トシ「それじゃ、せっかく4人そろったんだ」

京太郎「ここ麻雀部ですしね」

ムロ「ってことは?」

まこ「打つしかないのう」




トシ「ツモだよ、8700オール」

京太郎「グワーッ!」

ムロ「グワーッ!」

まこ「グワーッ!……この人ホンマに教師か!?」


京太郎「めっちゃつえー!」

ムロ「私もうボロボロ……」

トシ「ふむ……」

まこ「実業団の監督もしとったからの、熊倉先生は」

トシ「おや、知ってたのかい」

まこ「まぁ、色々と」

京太郎「いや、それにしてもつよすぎでしょ……」

トシ「ところで、室橋さんだったかい?」

ムロ「はい。あ、ムロでいいですよ、みんなそう呼んでます」

トシ「それじゃあムロ、あんたの手牌おかしくなかったかい?」

京太郎「おかしい?」

トシ「なんだか良くない気配がするんだよ」

京太郎「どういうことですか?」

まこ「ふぅむ、わしも何とも言えん違和感があった」

ムロ「実は最近めっきり運が悪くなっちゃって……」

京太郎「ああ、スランプだーっていってたな」

ムロ「はい、頑張って牌効率とか覚えてるんですけど、どうにも裏目ってりして駄目なんです……」


トシ「ふんふむ」

まこ「鬼のように勉強しとるし、実際その通りに打っとるんじゃがのう」

京太郎「でも勝つときは滅茶苦茶勝つよな」

ムロ「はは、たまに自棄になって打つと上手くいったりするんですけど……」

トシ「なるほどね」

京太郎「なにか分かったんですか?」

トシ「だったら適当に打っちゃいなさい」

ムロ「ええ!?……でも」

トシ「あんまり思いつめてもよくないわよ」

トシ「たまには理屈じゃなくて感覚で打ってみたらどう?」

京太郎「そうだな、最近のムロはなんていうか……」


京太郎「どれだけ入れても一袋198円のタマネギを主婦に目一杯入れられてるビニール袋みたいだ」

ムロ「そ、そんなにですか……」

まこ「そのスーパー後で教えてくれんか」

京太郎「破れちゃ元も子もないし、少し肩の力を抜いたらどうだ?」


トシ「私が後で見ててあげるから」

ムロ「えーと、それじゃあお願いします」

トシ「2人のどちらか二家やってくれるかい?」

京太郎「俺やります」

まこ「頼むわ」

ムロ「サイコロ回します」

京太郎「俺Aが親だな……さてさて」



東一局

ムロ「うう……」

トシ(5向聴……酷い牌姿だね、それに嫌な気配がする……)


4順目

まこ「ほい、ツモ!」

京太郎「はやいよ」



東二局
ドラ表示牌:九

一二二三四五八八②789東:九

トシ(今度の配牌は悪くないね……2向聴か。イッツウもしくは純チャンも狙える)

トシ(場風から切るんだね。現在の主流ではそれが……ん?)

ムロ「……」

トシ「どうしたの?」

ムロ「あ、いや。なんかコレ……」

ムロ「字牌捌いて平和イーペー狙いにでもしようかと思うんですけど」

ムロ「重なる気がして……」

トシ「言ったでしょ、感覚に任せて打ってみなさいって」

ムロ「わかりました」

トシ(1順目。手配で孤立している東……)

トシ(普通なら切るんだろうけど)


8順目

ムロ(張った……!)

トシ(ここで 一二二三三四五六八八九東東:七)

トシ(ホンイツ……あの形から789の順子を捨てるなんてデジタル的にはありえないけど)

ムロ(これはダマでいいな)

トシ(何かある……)

打:八


京太郎(萬子が余った感じ?……そろそろみたいだな)

まこ(高そうじゃし、降りるかの)

ムロ(……!)

ムロ「リーチ」

トシ(ツモ切りリーチ……!)


ムロ「……ツモ!」

一二二三三四五六八七九東東:四

ムロ「リーチ・一発・ツモ・ホンイツ・イッツウ・ドラ1……裏は」

ムロ「ありません。4000・8000!」

京太郎「親っ被り……」

まこ「イタタ、いきなり倍満かい」


トシ「やっぱり、ムロには何かあるね」

ムロ「え?」

京太郎「何かって、オカルト能力的な?」

トシ「うん。きっとムロ自身、気が付いていないうちに能力が発現してるんだよ」

ムロ「オカルト……私に?」

トシ「うん」

ムロ「宮永先輩の嶺上開花や天江さんの海底撈月みたいなのが……?」

まこ「アレはちーっとばかし特殊じゃがの。しっかし、ムロにオカルトか」

京太郎「なんなんだろ、染め手とか?」

トシ「それはまだ分からないね。だから色々試してみようか」

ムロ「わかりました」






トシ「……思えば、あの日からまだ2ヶ月しか経ってないね」

トシ「手探りの状態だったけど、とりあえずのところは解析できてよかったよ」

京太郎「能力を使った打ち筋も段々と顕著になってきましたしね」

トシ「それでハッキリとメリット・デメリットが浮き彫りになったから対策も立てやすいし」

京太郎「でも俺達だと限界もあるんで、例えば風越の人達がどんな打ち方してくるか興味あります」

トシ「そこも汲んでおかなきゃだね」

京太郎「と、言ってるそばから次の対局相手に風越」

対局室E 第3試合


ムロ「リーチ」

未春(室橋さんが曲げてきた……異常な一発成功率だけど)

未春(100%じゃない……そういう時は)

未春「チー」

ムロ(……!)

未春(必ず一発消しされてる)



対局者a「ツモ。500・1000です」

ムロ「はい」

未春(その後、和了る確立は一般的な数字とほぼ類似している)

未春(つまり、鳴かれると何かしらの能力が無効化されると見た!)



京太郎「鳴かれましたね」

トシ「この一発消し、分かってやってるね」



ムロ(Oh!バレテーラ)

ムロ(あの1日でどれだけ分析されたのやら……怖いなぁ)

ムロ(私の能力にはこういった弱点もある)

ムロ(それに、私自身も知らない効果がこれから出てくるかもしれない)

ムロ(最初の頃と比べると上手く使えてるつもりだったけど……)


ムロ「リーチ!」

未春「……!」

未春(鳴けない!)

ムロ(まだまだ学ぶべき事はたくさんある。つまり……)


ムロ「ツモ!リーチ・一発・ツモ・平和……」

ムロ「2000・3900!」


ムロ(つまりもっと強くなれる!)

今日はこれまで

本当は1日目にムロvs南浦さんの対局を書いてたんですけど
南浦さんとは予選ブロック違うじゃん!ってなっちゃって……
残念ながらボッシュートです。南浦先生の次回作にご期待下さい

こんばんわ

文庫本高い……消費税のせいでそう思うのか?
ページ数が同じようなのに値段が倍近く違うのがあってビビります
こういう時、グラム/値段で売ってーって思う
そういえば今年の漢字は「税」だそうです。このスレ的には「室」でしょうか

短いですが投下します

インターハイ長野大会 女子県代表選抜個人戦
地区予選1日目 北ブロック


対局室A 第6試合

東四局:オーラス

親:龍門渕透華



透華(龍門渕は団体戦でも個人戦でも優雅に上位入賞いたしますわ、どちらでも全国に行きますわよ!)

透華(そして……団体・個人でダブル優勝もいただきですわ!)

透華(でもその前に……)


佳織「えっと、えっと……」

透華(去年、このビギナーに嘗めさせられた辛酸を返してさしあげましょうか……!)

透華(やられたままでは収まりがつきませんわ……やり返す……倍返し、いや100倍返しで!)

佳織(ふたつずつ……ふたつずつ……)


透華(といっても、油断はできませんわね……相手を過小評価しない。何が起こるか分からないのが麻雀ですわ)

佳織「あ……出来ました!リーチします!」

透華「……!」

透華(早速来ましたわね!ここはベタオリしておきましょう……それにしても)

透華(何か……場にもの足りないような……)


佳織「あ、ツモです!やった!」

透華「な……!」

佳織「えと、リーチいっぱつチートイツ……?」

恵「そ、それは……!」


アナ「対局室A、最後に和了ったのは鶴賀学園の妹尾佳織!しかもこれは……」


東東南南西西北北白白發中中:發


透華「だ、大七星……」

恵「うぅっ」


アナ「役満ツモ!団体戦に続いてまたもや飛び出したー!」

アナ「それにしても、これは珍しい役が出ましたね」

靖子「この大会では字一色扱いだがな」

靖子「あまりに難易度が高い役だから、ルールによってはダブル役満とするところもあるくらいだ」


透華「そんな……ありえませんわ……」

靖子「龍門渕は手痛い失点だな……しかもオーラス」

靖子「直撃でないとはいえ、これは厳しい。今年も予選突破最有力候補だった……」

アナ「対局室A第6試合は、鶴賀学園妹尾佳織がトップで終了ー!」




京太郎「……」

ムロ「……」

トシ「すごいもんだねぇ」

  『対局室A第6試合は、鶴賀学園妹尾佳織がトップで終了ー!』


昼休み 食堂


京太郎「俺、あんなん初めて見たわ」

ムロ「うわーキレーだなー」


アナ『はい、インターハイ県予選女子個人戦の1日目午前の様子をハイライトでご覧いただきました』

アナ『午後からの試合は○時○○分からの予定となっております。引き続き……』


京太郎「いやぁ、北ブロックは強敵でしたね」

ムロ「こーわーいー」


まこ「ふぅ……この時間帯は混んどるのう、よーやっと買えたわ」

京太郎「遅かったですね」

ムロ「おかえりなさい」

まこ「先に買っといた方がよかったの……それでなんか面白い対局でもあったん?」

京太郎「1周して逆に笑えそうなのなら」

まこ「なんじゃそれ」

京太郎「……それで、妹尾さんがトップで終わりでした」

まこ「役満出したくらいじゃもう驚かんとは思っとったが……」

まこ「四暗刻大三元とかじゃのうて字一色で作って和了るとか、やっぱオカシイわ……」

ムロ「あはは……」

トシ「でもたまに役満を和了るだけだから、あんまり意識しなくてもいいよ」

京太郎「役満和了るだけって……」

トシ「インパクトは強いけど、まぁ当たったら事故みたいなものだからね」

トシ「こんな短いスパンだとリスクマネジメントも出来ないし」

トシ「それにムロだったら振り込む事もないだろう?最低でも親っ被りで16000」

ムロ「十分高いですよ……」



京太郎「そういえば、今年も活躍してましたね。あの南場の人」

まこ「ああ、南浦プロのお孫さんな」

ムロ「東風戦だっていうのに南入するんですよね」

京太郎「トップが30000点いかないと南入するルールだからな」

京太郎「それにしても随分点数調整が上手だな、まるで咲みたいだ」

ムロ「でも能力は南場でのブースト、優希先輩の南場バージョンですよね」

トシ「うーん、どうもそれだけじゃないみたいよ」

まこ「他にも何かあるっちゅー事ですか?」

トシ「他にもって言うか、その南場での能力に関連するんだけど……」

トシ「きっと東風戦での南入は彼女の能力によるものだと思うわ」

京太郎「南場で発動するんじゃなくて、南場に持っていく能力もある?」

トシ「そうだね。ホラ、天江衣の一向聴地獄ってあるじゃない?アレと同じ」

トシ「海底で和了る為の副次的な効果、一向聴地獄。それが彼女でいう南入する能力なのね」

まこ「なるほどのぉ~」

ムロ「自分の本領を発揮するために南入させる……」

京太郎「つまり元々持っている能力に付随した能力ってわけか」

トシ「そういう事」


トシ「能力をいくつも持ってるプレイヤーなんて、滅多にいないからね」

京太郎「いやいや……」

まこ「いやいや……」

ムロ「いやいや……」

まこ「そろそろ昼休みも終わりじゃな」

京太郎「頑張って下さい」

ムロ「行ってきます!」


トシ「ちょっと待って」

ムロ「なんですか?」

京太郎「なんかアドバイスでもし忘れました?」

トシ「アレ、やっておいた方がいいんじゃない?」

まこ「おう、アレか」

ムロ「アレ?」





京太郎「よーしよしよし、よーしよしよし」

ムロ「うぅぅ……うあぁ……」


まこ「よし、ほいじゃ先行ってきますわ」


トシ「うん、頑張ってね」

京太郎「いってらっしゃい」

ムロ「うぅぅ……も、もういいです!十分ですから……!」

京太郎「そうか?」

ムロ「はい……あぁ、髪直す時間あるかな……」

京太郎「じゃあ、俺が直してやるよ」

ムロ「え?」

京太郎「櫛くらい持ってるからな、ほらここ座れよ」

ムロ「ああ、わかりました。それにしても準備がいいというか」

京太郎「ふふん、デキる男の嗜みってやつさ」

ムロ「はいはい。ホントに時間無いんで、早くお願いします」

京太郎「はいはい。かしこまりましたお姫様」



京太郎「髪、伸びたな」

ムロ「そうですねぇ」

京太郎「もっと伸ばすのか?」

ムロ「まぁ、そのつもりです」

京太郎「クセもないし、いいんじゃないか?きっと似合うぞ」

ムロ「に、似合いますかね?」

京太郎「ああ、サラサラして手触りもいいし」

ムロ「手触り……あうぅ」

  『まもなく、午後の試合を開始します。各選手は、指定された……』


ムロ「あ、もう始まっちゃう」

京太郎「もうちょっと、あと仕上げだから」

ムロ「早く早く!」

トシ「ほら、時間無いよ。帰ったらしてもらいなさい」

ムロ「そうだ」

京太郎「ん、なに?」


ムロ「その、櫛、貸してもらえませんか?」

京太郎「いいぞ。ほらよ」

ムロ「あ、ありがとうございます!それじゃ行ってきます!」

京太郎「おお!頑張ってこいよー!」

トシ「おやおや」


京太郎「ふぅ、慌ただしくなっちゃったな」

トシ「それにしても、よく櫛なんて持ってたね」

京太郎「エチケットですよ。昔から女所帯に居ますから、自然と」

京太郎「それに、ハギヨシさんからも身だしなみには十分注意するよう言われてますし」

トシ「あの執事さんだね」

京太郎「ええ、ホントお世話になってます」


トシ「それにしても、ムロも櫛の一つや二つ持っててもいいのにね……」

トシ「ああ、そうだわ。京太郎?」

京太郎「なんですか」


トシ「ムロへのご褒美の話だけど……」



対局室D 第9試合


ムロ(なんだか謂れの無い事言われてる気がする……)

ムロ(ヘアブラシくらい持ってるけど、今はバッグの中なだけだし!)

ムロ(……さて、気をとりなおして)


ムロ「よろしくお願いします」


ムロ(目の前の対局に集中する)

ムロ(今だけは、上じゃなく前を向いていよう)

ムロ(そうすればいつかきっと……)

今日はここまで
PCめっちゃ重かった……

こんばんわ

サントリーがウイスキーの値上げするとか言ってます
25%は高すぎるよぉ……
しかも好きな銘柄のマッカランとかもリストに入っててもうね……

さてそれでは投下します



1年前 秋 清澄高校 麻雀部部室


和「それでは、今日はここまでです。お疲れ様でした」

ムロ「お疲れ様でした」

マホ「おつかれさまでしたぁ……」

優希「マホは今日もチョンボ連発だったじぇ!」

マホ「うぅ……せっかくの休日に和先輩達に教えてもらってるのに……」

和「他の人達の模倣も結構ですけど、まず自分自身の地盤を固めなければ」

ムロ「マホはすぐ集中力切れちゃうからなぁ」

優希「まだまだ修行が足りんじぇ!」

和「優希も。南場に入るとすぐに気を抜く、いけませんよ」


優希「うっ……そ、そうだ!今日モールのタコス屋行かないか?新作出たんだじぇ!」

和「また露骨に話題を逸らして……そんな事では臨海に行っても……」

マホ「わぁ!タコス食べたいです!」

優希「そうだろうそうだろう!よし、決定~!」

和「あ、もう……しょうがないですね」

ムロ「あはは……」

ショッピングモール内 タコス屋


優希「到着!だじぇ!」

マホ「ま、待って下さい~」

優希「早く早く!美味しいタコスは早いうちに食べるのが鉄則なんだじぇ!」

和「オーダーする速度は関係ありませんから」

ムロ「何食べよっかなー」


優希「オススメはこの牛肉とたっぷりのチーズが入ったビーフタコス!」

優希「辛いのが苦手な人にも美味しく食べれるシンプルながら食べ応えのあるタコスだじぇ!」

優希「牛肉とガーリックの匂いがたまらないんだじぇ。そこにとろとろアツアツのチーズが……ジュルリ」

マホ「美味しそうです!マホこれにします!」


ムロ「私は辛いの好きなんで、何かないですか?」

優希「うむ、スパイスこそタコスの真骨頂!ムロにお薦めのタコスはコレ!」

優希「豚肉ソーセージと特製サルサソースのコラボ!チョリソタコス!」

優希「ただ辛いだけじゃない、ウマ辛ソースとフレッシュトマトで一口、もう一口が止まらない!」

ムロ「美味しそうですね、私コレ食べよ」


和「私は照り焼きチキンタコスにしますか」

優希「のどちゃんはいつものだな」

和「それで、優希は?新商品を試すと言ってましたが」

優希「そうそう、今日私が食べるのは……」


優希「新商品、とんかつチョコタコス!」

和「チョコ……って、チョコレートですか!?」

ムロ「ええ?チョコってあの甘いやつですよね……それをタコスに?」

和「とんかつタコスまでは理解できますが……」

優希「お、知らないのか?チョコ入りとんかつ自体はふつうにあるじょ?」

和「ええ……」

ムロ「普通……普通ってなんだ?」


マホ「マホ、テレビであんこかつって見た事あります!」

和「餡子入りのとんかつですか……」

ムロ「もしかして、とんかつって甘いものと相性良かったりするんですかね」

和「どうなんでしょう……流石にオカルトとは言い切れませんし……」

ムロ(そこ判断基準がオカルトって……)



マホ「ハフハフ、ん~チーズが伸びちゃいますぅ!」

ムロ「んんっあっつ、辛い!でもウマッ」

和「それで、どうですか……?チョコかつの程は」

優希「モグモグ……んんっコレは!」


優希「あま~いチョコの中からジューシーな肉の旨味とほどよい塩味がやってきて」

優希「それらが混ざり合って、コレは……!」

和「ど、どうですか?」

優希「コレは……え、なんだ?」

ムロ「美味しくないですか?」

優希「いや、うまいまずいとかじゃなくて……」

マホ「?」

優希「味が新しすぎてアタマが混乱してるじぇ……例えるべきモノが見つからない……」

和「い、一体どんな味なんでしょうか……」

優希「え?え?なんだこれ……モグモグ……???」

マホ「タコスおいしかったですー」

ムロ「ごちそうさまでした」

和「ごちそうさまでした」

優希「うーむ。よくわからなかったじょ……ある意味もう一度食べたい味だじぇ」



帰り道


優希「臨海に行く前にチョコかつタコスの謎を解明しなければな」

ムロ「そう言えば、もうすぐ大会なんですよね。それで良い成績を残したら合格っていう」

優希「東風戦なら楽勝だじぇ!」

和「油断は禁物ですよ」


マホ「……優希先輩とこうしてタコスを食べられるのも、あとちょっとしかないんですね」

ムロ「マホ……」

優希「そうだなー」

和「でも、これは優希が決めた事ですから……」

優希「マホ」

マホ「はい?」

優希「お前が清澄に入学するとして、私と一緒に一緒に居られるのは1年間だけだじぇ」

マホ「はい、マホが1年生の時は先輩たちは3年生です」

優希「その1年間にお前達に伝えられるものは多くない……」

優希「ならば、私はより大きな存在にならなければいけないのだ……!」

マホ「優希先輩……!」

優希「ムロ、マホ……私はいずれ日本……いや、世界の麻雀界で活躍する人間だ」

和「これはまた大きく出ましたね」


優希「お前達はビッグになった私の背中を見て育つんだじぇ!」

マホ「はい!」

優希「そして清澄、いや長野を背負って立つ選手になるんだ!」

マホ「わかりました!マホ頑張ります!」

ムロ「気合十分だけど、道のりは遠いなぁ……」

和「二人とも、目標を掲げるのも大事ですが、ちゃんと足元を見ないと転びますよ?」

優希「ふっふっふ、路傍の石でつまずく私ではないのだよ?のどちゃん」

和「なるほど。わかりました」


和「では明日の練習からは全荘戦をやりましょう」

優希「え」

和「北場までの道のりは長いですが、優希ならきっと辿り着けるでしょう?」

ムロ「うわぁ……」

和「もし、もしもですけど、優希がオーラスまで行けなかったら。あぁ、例えばの話ですよ?」

優希「あ、あ……」

和「今やっているテキストありますね?アレ、最近続編が発売されまして……」

和「その名も『極!手牌構築 コンティニュアム・シフト2』!これを追加しますからね」

優希「いや、それは無理だじぇ……今やってるのだってまだ……」

和「え?須賀君はもう終わりましたよ?」

優希「なに!?京太郎のやつ、なかなかやりおるじぇ……」

和「ですから、優希も出来ますよね。ね?」

優希「ですからの意味がわからないじょ……」


ムロ「マホも参加させてもらうか?」

マホ「マホには自分のペースというものがあります……」

ムロ「もう少し加速したら?」

ムロ「私も来年は清澄に入るし、もっと頑張らないとな」

マホ「受験勉強大変そうです」

ムロ「まあ、それもやんなきゃだけど、やっぱり麻雀やりたいし」

ムロ「それに、清澄を名乗るからにはね」


和「でも、そんなに力を入れなくてもいいと思いますよ?」

和「清澄は別に強豪校というわけでもありませんし」

ムロ「いやいや、何と言っても夏の大会で全国2位じゃないですか」

和「それでも、もうメンバーも染谷部長しか居ませんから……」

ムロ「……それは残念ですけどね」

和「ですから、変にプレッシャーを与えたくはありません」

ムロ「プレッシャーだなんて……」

和「新しい世代には新しい清澄を作ってもらいたいです」

ムロ「……意識しますよ。でも、それはプレッシャーとかじゃなくて」


ムロ「凄い先輩が居たんだって、誇りに思います」

和「ムロ……」

優希「うむ!それでこそ私達の後輩だじぇ!」

ムロ「あはは、ありがとうございます」

ムロ「できれば、もっと指導してほしかったですけど……」

和「そうですね、私も色々と伝え足りません」

優希「今更言っても仕方ないじぇ」

優希「それに、私にはやるべき事があるからな。後ろ振り向く暇なんて無いんだじぇ!」


和「優希のそういうところ、ちょっとだけ尊敬します」

優希「ちょっと?ちょっとだけなのか~?」

和「ドヤ顔で近づかないでください」


ムロ「でも、本当すごいですよ。優希先輩は」

ムロ「どんな時でも前向きでいられて」

優希「ふふん、そうだろうそうだろう。でもムロ、それはな……」



優希「私には、背中を押してくれる人達がいるんだじぇ」



優希「だから、私は前を向いていられるんだ」

優希「ムロもきっといつか、そんな人達に巡り会えるじぇ」







ムロ(そう、言っていたっけ……)

ムロ(あれは、去年の秋頃だったかな……)

インターハイ長野大会 女子県代表選抜個人戦
地区予選2日目


対局室B 第10試合(最終戦)


南4局:オーラス

ムロ(あの時は気軽に言えたけど、やっぱり清澄の名前は重いよ)

ムロ(そして今、潰されそうに……)


東家:染谷まこ 28200
南家:深堀純代 18800
西家:室橋裕子 24000
北家:国広一  29000



ムロ(なんとかテンパイできた。でも)

ムロ(和了形を感じないから、この局は和了れないな……)

ムロ(現在3位、トップの国広さんが放銃してもプラスにはなれない……)



まこ(さて、この試合……)

まこ「チー」

まこ(わしが1位抜けしたとしても、総合で上位に入るのは厳しいかの……)

まこ(まったく、高火力プレイヤーが多くて困ったもんだわ)


まこ(一緒に全国に……か)

まこ(すまんの。自分で言っといて、そりゃちっとばかし無理っぽいわ)

まこ(それでも今、わしに出来ることは……)

まこ(……ムロ、そこにわしは行けんようじゃ。そん変わりお前は)


ムロ(染谷部長が海底牌を……これで終局か……)

まこ「……」


タンッ


ムロ「……!」


ムロ「ロ、ロン!……タンヤオ・ホーテイ・ドラ・赤1……」

ムロ「5200です……」



アナ「ただいま対局室Bの試合が終了しました」

アナ「最後に和了ったのは清澄高校1年、室橋裕子!」

アナ「まさに大逆転!この和了で見事1位で終わりました」

アナ「放銃したのは同じく清澄高校の染谷まこ。これは……」

靖子「……場に五筒は3枚出ていたから安牌だと思って、最後の最後に油断したな」

靖子「しかし、赤ウーしか持ってなかったとは……龍門渕の国広は残念だったな」

アナ「なるほど。さて、今全ての対局が終了した模様です。さぁ、全国にいくのは一体……」


靖子「ふぅ……」

靖子(……まったく、しょうがないやつだ。献身的にも程がある)

まこ「ほれ、いつまで突っ立っとんじゃ。はよ戻るぞ」

ムロ「染谷部長……」

ムロ「……私……あの、一緒に全国に……」

まこ「ああ……そりゃちぃっと厳しいみたいだわ」

まこ「なんとか圏内までは行けたんじゃがの、思うとるより上手くいかんかったわ」

ムロ「……」

まこ「でも、お前なら上に行けるけぇ」

ムロ「……」

まこ「ほれ、ともあれ結果発表見んとな、はよ行くぞ」

ムロ「はい……」



エントランス ロビー


京太郎「おかえり。よく頑張ったな」

ムロ「ありがとうございます……」

まこ「まったく、さっきからこんな調子じゃ」

京太郎「ムロ、あんまり気にすんなよ」

まこ「そうじゃよ」

ムロ「でも……」

ムロ「私のせいで染谷部長が……」

トシ「いいや、それは違うよ」

まこ「もともとあの時点で見込み無かったんじゃ」

まこ「そん変わり、結果的にムロがトップになれた……ええ事よ」

トシ「あんたが悪く思う必要ないんだからね」

ムロ「でも……」

京太郎「あ、結果出ました!」


まこ「今更何言うても仕方のない事じゃけぇ」



アナ「さぁ、結果が出ました!全国行きのチケットを手にしたのは、この3人!」

アナ「まずは第3位!風越学園3年、池田華菜!」


池田「にゃああああああぁぁぁぁっ!!」

未春「やったね!華菜ちゃん!」

文堂「おめでとうございます!」


アナ「団体戦では惜しくも敗れたものの、個人戦では名門の意地を見せました!」

靖子「池田は風越のコーチのお気に入りだからな」

久保「お気に入りじゃねーし!」

アナ「そして第2位!清澄高校1年、室橋裕子!」


ムロ「!!」

京太郎「やったな!」

トシ「おめでとう!」


まこ「これから大変じゃぞ?やらんといけん事が沢山じゃ」


アナ「清澄高校は個人戦のみの参加でしたが、去年の全国準優勝校は伊達ではありません!」

アナ「ちなみに、男子個人戦でも2年の須賀選手が全国出場を決めています」

靖子「この学校は少人数ながら地力がある。実力を伸ばすのは設備等の環境だけではないという事だ」


アナ「最後はこの人……第1位!平滝高校2年、南浦数絵!」


ムロ「あ……」

アナ「去年のコクマや春の大会でも活躍した南浦選手ですが、見事1位通過で全国出場!」

アナ「夏の大会での活躍に期待が高まります!」

靖子「後半の爆発力は凄いからな。それを生かして頑張ってほしい」


アナ「以上、3名が全国の舞台への切符を手にしました!」

まこ「じゃけぇ、お前は」

ムロ「うぅ……あっ……」

まこ「顔上げて、前だけ向いとりゃええんじゃ」

ムロ「あ……くっ……うあぁ……!」

まこ「夏までは長いがの、後ろ振り向く暇なんて無いけぇ」

ムロ「ああぁあぁっ……!」


トシ「ほらほら、涙拭いて。これから表彰式だよ」

京太郎「あーあ、鼻水まで……えーと、ティッシュは……」

まこ「くくっひどい顔じゃのう」

ムロ「ふわあぁぁ……ぐしゅ……うぅ……」

京太郎「はい、ちーん」

ムロ「ぶぅぅぅっ!……あうぅ……」


まこ「はよ行かんと遅れるぞ!」


グイッ


ムロ「うわわ……!」


  『でも、本当すごいですよ。優希先輩はどんな時でも前向きでいられて』

  『ふふん、そうだろう。でもムロ、それはな……』


ムロ「あっ……」



  『私には、背中を押してくれる人達がいるからなんだじぇ』

  『だから、私は前を向いていられるんだ』

ムロ(私にも……)


  『ムロもきっといつか、そんな人に巡り会えるじぇ』


ムロ「あ、うぅ……ふぅわあぁぁぁん……!」

京太郎「うお、また泣きだした!?」


まこ「ほれ、行くぞ行くぞ!」

ムロ「わぁっ」

まこ「動かんのなら無理にでも連れてくけぇの!」

ムロ「だ、大丈夫です!大丈夫ですから!」


京太郎「おーい、こっちこっち!」

まこ「京太郎が先に行っとるぞ?」

ムロ「は、はーい!」


トシ「ほら、みんな待ってるよ?」

ムロ「い、今行きまーす!」

まこ「ムロ」

ムロ「え?」





まこ「全国出場おめでとさん!」

ムロ「はい……!ありがとうございます」

ムロ「私、染谷部長の分も全国で……」

まこ「おう」


ムロ「全国で、麻雀打ってきますからね!」

今日はここまで

とんかつにチョコは、ご飯のおかずとしては、ちょっとミスマッチかと思いますが
お酒のおつまみには良いと思います


チョコソースとかいうものなのだろうか……
甘くしなけりゃ料理にも使えるのか?

>>386
むしろ同校で同卓させるルール自体まずい気が
通しされたらどうすんのよと

こんばんわ
今日はちょっとだけフォローを

県予選女子個人戦 結果
4位 龍門渕透華
5位 東横桃子
6位 沢村智紀
7位 吉留未春
8位 井上純



みたいな感じです
アニメ個人戦の結果を参考にしました

比べると池田が飛び抜けてますが、所謂3年生ブーストってやつです
龍門渕メンバーはブースト効果低そうな感じです
モモは強いし大きいです

ちょっとだけ投下します

roof-top


まこ「はい、お待ちどうさん」

靖子「お、きたきた」

久「それにしてもよく食べるわね……それに飽きないの?」

靖子「モグモグ……んっ、いや、全然飽きないな」

靖子「それにいつもカツ丼食べてるわけじゃないぞ」

久「ヤスコの場合はお昼にカレーライス挟んだからいつもではないって話でしょ?」

靖子「もぐもぐ……」

久「図星ね」


久「しっかし、見てると私まで小腹空いてくるわ。今さっき食べてたのに」

靖子「追加で頼んだらどうだ?今日は私がおごってやるぞ」

久「自分の分はタダだものね……まこが可哀そうだわ」

靖子「なーに、これくらい安いもんだよ」

久「ヤスコが言わないの」

まこ「ははは……」

久「別に、あれだってまこが差し込んだ証拠なんて無いでしょ?たまたま切った牌が当たっただけって話で」

靖子「そうだな……」


靖子「場に3枚出てたラス牌で、その時染谷はラス親で2位」

靖子「連荘狙いのテンパイにも見える」

久「でしょ?」

靖子「だがそれで室橋はトップで通過し、結果全国行き」

靖子「それも同じ学校からの放銃でだ」

久「疑わしいって事?」


靖子「そうだ、ありゃぶっちゃけグレイゾーンだった」

靖子「だが麻雀自体、偶然性が非常に高いゲームだからな、ハッキリとした証拠がないと何も言えない」

久「ハッキリとした証拠って?」

靖子「ガン牌やすり替えとかな」

靖子「だが、手元のカメラはもちろん表情なんかも映してるからな。まず無理だ」

久「たまに手牌すら見えないアングルとかあるけどね」

靖子「普通は見えるんだがな……たまに高校生とは思えないのが居るけど」


靖子「それを別室で監視員が何十人体制で監視している。サマなんてそうそう出来ないさ」

久「うら若き女子高生の顔やパーツを何十人もの大人が……」

靖子「変な風に言うな、彼らも仕事なんだ」

靖子「その道のプロが監視してるんだ。まず見逃さないし、やる方もリスクが段違いだ」

久「ふぅん」


靖子「だがな、グレイゾーンがあるからこそ揉め事も多いんだ」

靖子「だからさりげなくフォローしてやったんだよ」

まこ「藤田さんには感謝しとりますよ」


久「まこはアレ当たると思ってやったの?」

まこ「んー半々じゃな。当たるようにも見えたし、当たらんようにも見えた」

まこ「わしだって全てがハッキリ見える訳じゃないしの。むしろボンヤリしとるわ」

久「ねぇヤスコ、もしもよ?オカルトで牌の所在が分かる人間が居て……」

久「その人が差し込んだり」

久「またはテレパシーかなんかで通しが出来る人が居たらどうなるの?」


靖子「どうなるって、反則になるかって事か?」

久「そそ」

靖子「ならんだろうなぁ」

久「そうなの?」

靖子「そんなのどうやって証明すりゃいいんだよ」

久「いや、そうなんだけどね……」


靖子「そんな能力を持った人間が居たとして、まぁその能力ごと本人の実力って評価だろうな」

靖子「実際、宮永は嶺上牌やらカン材が見えてるようだし」

久「そういえばそうね」

久「つまりオカルトはオッケー。それ以外はイカサマでアウトって事ね」

靖子「そうだな、おかわり」

まこ「えっまだ食うんですか?」

靖子「今日は昼が控えめだったからな」

久「あ、私も注文いいかしら」

まこ「アンタもかい」

久「そーねー、じゃあシメにサンドウィッチでも頼もうかしら」



靖子「いやシメにサンドウィッチはないだろ……」

久「ヤスコに言われたくないわよ!?」

今日はこれだけ
即興で書いたから変なとこあるかも……
あとなんか疑問質問ありますかね?ネタバレ無しで

>>387
同校同卓禁止は無理でしょうね
あとチョコは、自分は普通のミルクチョコレート使いました

もんぶちは団体戦メインでブーストって感じなのかなー
とーかは個人であってもおかしくないとは思うんですが

>>395
基本デジタル雀士は不遇なので……
原作と同じ「運の要素が強く」「偶然性が高い」競技ルールなので
短いスパンだと結果を出しにくい感じです
やたら打点高い猫とか見えないのとかも居ますし……
個人戦だと顕著に出てきますね

一応能力とか原作に沿って書いてるつもりですが
このSS独自のオカルト設定とかお気に入り補正とかはあります

こんばんわ

遂にこれから全国編なわけですけど全くプロットというものが出来てません……
RPGで船とか飛行船とか手に入れて移動範囲広がったぞ!で、何処行けばいいんだ……って感じです

ちなみに本来ならムロがダントツ1位で予選突破でした
でもモモがなんかしてなんかギリギリになりました

投下します。今日は大人組

1日前 東東京 インターハイ地区予選会場


  『きィまったァァァアァ!!』


恒子「東東京最強のチームが今ここに誕生だァアア!!」

健夜「臨海女子は去年はもちろん、今年で16年連続地区代表だってば」

恒子「しかし、今年も国際色豊かなチームですね!」

健夜「うん、去年から先鋒に留学生をオーダーできないルールになりましたけど……」

健夜「それでも、世界で活躍しているプレイヤーが勢ぞろいしていますしね」

恒子「その唯一の日本人も、なんと去年の京都東風フリースタイルで優勝した……」


恒子「東風チャンピオン、片岡優希!」


恒子「その片岡選手が先鋒を務めます!」

健夜「そうですね。片岡選手は1年前のインターハイでは長野代表の清澄高校からの出場でしたけど」

健夜「今年は臨海女子での出場ですね」

恒子「清澄高校といえば去年、無名校ながら準優勝した学校ですね!」


恒子「そして清澄高校といえば……」


恒子「インターハイチャンピオン、宮永照!」

健夜「え?それちが……」

恒子「……の妹」

健夜「なんでフェイントかけたの!?」


恒子「インターハイチャンピオン、宮永咲!」


恒子「なんとこちら宮永(妹)選手、今年は白糸台高校からの出場!」

恒子「しかも!姉のポジションを受け継いで先鋒でのオーダー!」

恒子「もし臨海女子と白糸台が対戦する事になればそれは……!」


恒子「元同校対決!そして同じチャンピオンとして、真の日本一を決める戦いに!」

恒子「いやそれとも!また今年も新たなダークホースが現れるのかァアアァ!?」

健夜「いや、チャンピオンになったのは個人戦の話だから……少し気が早いよ」


健夜「でも、個人戦でもその二人は予選突破最有力候補ですけどね」

恒子「ところで、東風フリースタイルといえば……」

健夜「う、うん」

恒子「小鍛治プロも、リオデジャネイロ東風フリースタイルで銀メダル獲得という輝かしい経歴をお持ちです」

健夜「ええ、そうですね」

恒子「そんな世界レヴェルの東風プレイヤーから片岡選手は一体どのような評価を得ているのか!?」

健夜「えぇ!?そ、そうですね……」


健夜「片岡選手の爆発力は東場のみと限定的ですが」

健夜「その力は、高校生という枠内であればトップレベルだと思います」

恒子「さっすが小鍛治プロ、日本最強は若い子に相変わらず厳しいですね!」

健夜「若さは関係ないよ!あと相変わらずって何!?」


恒子「中継を終わります!」

健夜「えぇっ!?」

  「ハイ、オッケーでーす。お疲れ様でしたー」


恒子「んっんー終わったー!」

健夜「思ってたより早く終わっちゃったね」

恒子「そうだねー。それでどうする?まだお店も開いてないよね」

健夜「他の人達もまだだろうし、どこかで暇潰してようか?」

恒子「それじゃあさ、カラオケでも行かない?」

健夜「そうだね。それにしてもカラオケなんて久しぶり……あ」


健夜「……ちょっと待って、赤土さん今来れるって」

恒子「じゃあ赤土プロとは先に合流しちゃおっか」

健夜「それじゃメールしとくね……それでどこのカラオケ行く?」

恒子「駅前のアーケードのでいいんじゃない?」

健夜「うん、わかった」



カラオケ店


健夜「あ、来たね」

晴絵「どうも、お待たせしました」

健夜「ううん、別に待ってないですよ」

恒子「それじゃ先に入っちゃいましょうか。他の人はまだ遅れるみたいですし」

晴絵「東東京の地区予選はかなり早めに終わったみたいですね」

健夜「そうですねー、やっぱり臨海女子が頭ひとつ抜けてて……」

健夜「また大会規則が追加されるんじゃないかぐらいの強さでした」

晴絵「はは……でも、それはそれでまた躱されそうですけどね」

健夜「あんまり規則で縛っても他の学校にも影響しますからね」


恒子「それじゃ行きましょうか、401号室です。あ、ドリバでよかったですか?」

晴絵「はい、大丈夫です」

恒子「すこやん、コップ持って?」

健夜「あ、うん。恒子ちゃん何飲む?」

恒子「すこやんにおまかせで!」

健夜「わかった……それじゃあ」


ピッ


晴絵(えっ何あの何も書かれてないボタン!?)

晴絵「あの、なんのボタン押したんですか……?」

健夜「これ炭酸水ですよ。前に風越のコーチさんが発見したのでやってみたくて」

晴絵「そうなんですか……でも味しない上にカラオケで炭酸って……」

健夜「まぁちょっとお返しの意味もあるんですけどね」

晴絵「お返し?」

健夜「うん。いつも恒子ちゃんにドリンクバー任せると」


健夜「なんか変な色になるんです……」

晴絵(色?)



401号室


恒子「それじゃ順番は適当で、先に決まった人から入れていいですよね」

晴絵「はい。さて、何歌おっかなぁ」

健夜「カラオケ久しぶりだから……声出るかな?」

晴絵「お二人はよく行かれるんですか?」

健夜「そうですね、たまに」

恒子「赤土プロは?」

晴絵「プロ入りしてからは全然……阿知賀の監督やってた時は麻雀部の子達と行ったりしてましたけど……」

晴絵「……」

恒子「え、なにどうしたんですか!?」

晴絵「あ、いや、ちょっと……」


晴絵「その子達と一緒にカラオケ言った時の話なんですが……」




1年前 阿知賀 カラオケ店


宥『あの すばーらしい あーいーをー もういーちーどー』

穏乃「うわぁ宥さんめっちゃ上手!」

晴絵「それにしても、よくこんな古い歌知ってたね」

玄「ウチの旅館で、たまにお客様にリクエストされて歌う時があるんだ」

玄「演歌・歌謡曲からアイドル・アニソンまで、松実姉妹におまかせあれ!」

憧「宥姉の声質だと、しっとりとした曲とか合いそうだよね」

灼「バラードとかいいと思……」

宥「ふぅ……」

穏乃「宥さん、凄く上手でした!」

宥「ありがとう穏乃ちゃん、じゃあ次は玄ちゃんだね」

玄「私はコレにするよ!」

晴絵「おっ、オアシスか。まぁコレも有名だもんね」


灼「ハルちゃん」

憧「あぁ~ハルエ、あのさ」

晴絵「ん、なに?」


憧「今『オアシス』じゃなくて『オエイシス』って言うんだよ」

晴絵「え?お、おえ?」

玄『So Sally can wait~』

玄『she knows its too late as ウワー オーキナーオパーイ~』

穏乃「……ん?」

宥「穏乃ちゃん?」

穏乃「いえ……」



晴絵「え、おえいしす?って……」

憧「今はね、oasis は オエイシスって表記・発音されるんだよ」

晴絵「ナニソレ!?オアシスはオアシスでしょ!?」

憧「うーん、そうなんだけどね……」

灼「それがネイティブに近い発音らし……」

晴絵「なんだよソレ……」

憧「でも若い人は普通にオエイシスって言ってるよ?」

晴絵「わか……!?」

灼「あ」

玄『So Sally can wait~』

玄『she knows its too late as うわ~ 大きなオッパイ~』

穏乃「……んん!?」

宥「穏乃ちゃん?」

穏乃「い、いえ……」



晴絵「私はまだアラサーじゃない!」

憧「いやこそまで言ってないから!」

灼「ハルちゃん落ち着いて……ほ、ほら、次ハルちゃんの番だから曲選ばないと」

晴絵「そ、そうか。そうだね……じゃあ何でいこうかな」


晴絵「……」


晴絵「矢井田瞳って知ってる?」

憧「え……うーん?」

晴絵「知らない?ヤイコだよヤイコ!?」

憧「あ、aikoじゃなく……?」

晴絵「じゃ、じゃあ大塚愛は?さくらんぼ!」

憧「ああ、それなら知ってるかも」

晴絵「よし、じゃあ……」

灼「ハルちゃんそれ歌うの?」

晴絵「……やっぱ似合わないかぁ」

灼「い、いや別にいいと思……」


晴絵「倉木とかどう?コナンのOPだし、知ってるでしょ」

憧「TRY AGAINよね」

晴絵「え……Secret of my heartじゃなくて?」

灼「え」

憧「え」

晴絵「ナニソレ怖い」





晴絵「……って事がありまして」

健夜「ジェネレーションギャップ……!」

恒子「ま、まぁ一回り違うんですからしょうがないですよ」

晴絵「そうなんですけどね、でも実際やられると……」

健夜「それで、何歌ったんですか?」

晴絵「結局ランキングから歌えるのをいくつか見つけまして」

晴絵「ここに載っている曲なら若い子でも知ってますしね」


健夜「なるほど」

晴絵「小さな恋の歌とか残酷な天使のテーゼとか」

健夜「ああ、エヴァンゲリオン」

晴絵「でも、今の子的にはエヴァといえば宇多田ヒカルだそうですよ」

健夜「え?ヒッキー!?」

恒子「ブフォッ!」


健夜「こーこちゃん!?」

恒子「す、すこやん!イマドキ……今時ヒッキーとか誰も言わないよ!?」

健夜「え、えぇ!?そうなの?」

健夜(チラッ)

晴絵「ええ……あんまり聞かないかなーって」

健夜「そ、そうなんだ……」

晴絵「えーと、最近エヴァの劇場版が作られまして、そのテーマソングを担当したらしいんですよ」

健夜「へぇ……」


ガチャ


咏「どうも~いやぁ遅れちゃってすみません」

えり「こんばんわ」

恒子「あ、三尋木プロ」

晴絵「こんばんわー」

咏「んん、この雰囲気なに?わっかんね~」

恒子「今すこやんがジェネレーションギャップに打ちのめされてたところです!」

健夜「ち、違うよ!?赤土さんでしょ!?」

晴絵「うぅっ!」




咏「ふ~ん、なるほどねぃ」

えり「カラオケで年齢差は如実に出ますからね……」

恒子「三尋木プロはカラオケでなに歌うんですか?」

咏「ん~、私は流行唄とか疎いからね。古いよ?みずいろの雨とか歌っちゃうよ~」

健夜「うわ、それ私のお母さん世代だよ」

えり「でも意外と似合うと言いますか」

晴絵「着物ですしね、ビジュアル的にも演歌もいけそうですよね」

咏「いやーそう?照れるねぃ」


咏「んじゃあ、えりちゃんリクエスト聞いてくれる?」

えり「何がじゃあなんですか……」

咏「これ歌える?」

えり「あー、まぁメロディはうっすらと覚えてますけど……」

えり「イントロ聞いたら思い出すかもしれません」

咏「オッケー?なら入れるよ」


晴絵「あ、ヒステリックブルー」

健夜「なつかしいなー」


えり『こういう夢ならもういーちーど 逢ーいーたーいー』


咏「うはぁ、えりちゃん上手いねー!」

恒子「さっすが、声のお仕事してる人は違うなぁ!」

健夜「こーこちゃんもだよね!?」


えり『授業よりも 食事よりも もーっと大切ーなコト……!?』


健夜「あ」

恒子「あ」

晴絵「あ」

咏「ふふん」


えり『あ、あたしー うたが好きー!』


咏「うっはぁー!えりちゃん大胆ー!」

晴絵「狙ってましたね、コレ」

健夜「確実だね」

咏「いやぁ照れるねぃ!」

恒子「きゃー!先輩ダイターン!」

健夜「のっかってるとあとで怒られるよ……?」

居酒屋


えり「さっきは辱めを受けました……」

咏「いやぁよかったよ~あははっ」

健夜「う、うん。歌も凄く上手だったし」

恒子「そうですよー。それじゃ、飲み物揃いましたね?」

晴絵「はーい」

恒子「ではここで小鍛治プロに乾杯の音頭を」

健夜「えっ!?私……?」

咏「おねがいしまーす!」

健夜「え、えーと……では僭越ながら」


健夜「今年もインターハイの季節がやってきまして、皆さんも色々忙しくなってくるとは思いますが」

健夜「プロ麻雀業界におきましては、また続々と有望な新人が入ってきて、まだまだ自分も精進せねばと思う次第でございます」

恒子「すこやん長いよ」

健夜「頼んでおいて!?……えー高校生も、もちろん頑張っていますので私達も負けずに頑張りましょう!」

恒子「やっぱり若い子にキビシイ!」

健夜「そ、そういうんじゃないよ!もう……それでは、乾杯!」


咏「カンパーイ!」

晴絵「乾杯!」

えり「乾杯」

恒子「乾杯!んっんっ……ぷは~!」

今日はここまで
プロアナ達の夜は続く……

哩さんとかお酒強そうですよね
羊先輩ラム酒出したらどんなリアクションするのか気になる
今日は黒ビール飲みました。ねむい

乙!
>>1も豊音の刃牙スレ見てるな!?

こんばんわ
カラオケ独特の探り合いみたいな空気なんなんでしょ
自分のイメージを守りつつ相手の知ってそうなアーティストを考慮しつつ……みたいな

>>399
まちがい 1日前
ただしい 2日前
>>417
何の事かと思って見に行ったら……モロ被りでしたね!

投下します。今日は短いです

居酒屋


健夜「もう、最初から飛ばし過ぎだよ?」

恒子「今日も元気だビールがうまい!」

健夜「こーこちゃんはいつも美味しいんだろうね」


晴絵「やっぱり三尋木さんは日本酒なんですね」

咏「ご期待に添えたちゃったかな?」

えり「まぁ着物ですからね」

咏「いやぁでも今ドラマやってんじゃん。ウイスキーの」

咏「大正ロマンって感じでさ、逆に似合うんじゃね?知らんけど」

晴絵「そう言われるとそんな気もしますね」

えり「実際、日本酒以外にも色々飲みますからね」

咏「そう言えばさぁ、輸入ビールが揃ったいいお店見つけたんだよ、今度行かない?」

えり「一杯目も空けずにもう次ですか!?」

晴絵「はは、三尋木さんは明日も解説のお仕事でしょうし、ほどほどに……」

健夜「咏ちゃんは西東京の解説だっけ。今日の団体戦はどんな感じだった?」

咏「んっふ~、やっぱ白糸台は強いねぃ。特に2年のダブルエース!」

えり「松庵女学院も健闘していたんですけど、及ばずでした」

晴絵「夏・春のチャンピオンが揃ってますからね……」


咏「そういやチャンピオンで思い出したけど、今年本選の解説するらしいよ、宮永照ちゃん」

恒子「あ、そうなんですか?」

健夜「プロ1年目から解説のお仕事って凄いよね」

えり「インターハイのイメージが強いんでしょう。結構オファーあったみたいですよ」

恒子「インハイと言えばーでしたもんね。それにしても知らなかった……」

咏「いやそれね、こないだ照ちゃんに解説の仕方教えてくれって頼まれちゃってさぁ」

健夜「え、咏ちゃんに!?」

えり「びっくりですよね」


咏「少しくらいわっかんねーくらいが丁度いいんだよ」

えり「またそんな事……」

晴絵「実は私も……」

恒子「お!?」

健夜「え、赤土さんも?」

晴絵「はい、地元のローカル局なんですけどね」

咏「へぇ、そりゃめでたいねぃ。ささ、どうぞどうぞ」

晴絵「お、ありがとうございます。おっとっと……」

えり「おめでとうございます。そういえば、阿知賀は今年はどうでした?」

晴絵「それも無事、地区予選突破しました!」

恒子「わー!おめでとうございます!ささ、どうぞどうぞ」

咏「あ、こっち残り使いきってくんない?」

ガチャガチャッ

晴絵「どうもどうも……って溢れちゃいますよ!」

えり「そんな我先に注ごうとしなくても……」

健夜「ちょっとこーこちゃん!?……でも本当すごいですよね」


晴絵「ヱビスとヱビスのカクテルでちょっと贅沢なヱビスに……」

咏「こっちのビン空になっちゃった」

恒子「最初に2本頼んでおいて良かったですね」

健夜「それカクテルって言わないよ」

恒子「店員さん呼んで少し片づけてもらいましょうか」

咏「ついでにつまみ追加しようぜぃ」

えり「メニューどうぞ」


恒子「すこやん何飲む?」

健夜「なにしよっかなぁ……じゃあカシス・オレンジで」

恒子「女子か!」

健夜「女子だよ!?」

恒子「アラサーか!」

健夜「アラフォーだよ!!」


健夜「……あ、違う!」

店員「あの、空いた皿お下げします……」


健夜「ああぁぁすいません、お願いします……!」

咏「ついでに注文いいですかー?」


健夜「もぉぉぉぉぉ……」

晴絵「……どうぞ。お豆腐とアボカドのサラダ、美味しいですよ?」

健夜「こーこちゃんのせいだよ!」

恒子「引っかかったすこやんが悪い」


えり「それにしても阿知賀も強いですね。流石昨年のファイナリスト」

晴絵「子供たちが頑張ったおかげですよ」

晴絵「それに地元が盛り上げてくれましたしね。今年は個人戦にも参加するみたいです」

咏「ほほう、それは楽しみだねぃ」


晴絵「実は、阿知賀の予選突破は私もさっき知ったんですけどね」

晴絵「教え子がメールで送ってくれて、あった、コレ皆の写真」

恒子「おお!」

えり「へぇ、メンバーの顔ぶれは去年とあまり変わってませんね」

咏「あはは、ドラゴンロードちゃんのこのドヤ顔!」

健夜「そうだね、去年は3年生が一人だけだったし……あれ?」



健夜「なんでこの子が?」

晴絵「ああ、今年阿知賀に転校してきたんです」

咏「ふぅん、そうなんだ」

駅前


健夜「それじゃ今日はこれで解散と言う事で」

咏「ほーい!」

晴絵「お疲れ様でした。気を付けて帰って下さいね」

えり「はい、それでは。ほら三尋木プロ行きますよ」

咏「はっはっは~!」

えり「では、お疲れ様でした」

咏「じゃあねぃ~」

恒子「お疲れ様でーす」

赤土「それじゃ、私ホテルこの近くなんで」

健夜「はい、お疲れ様でした」



恒子の部屋


恒子「すこやん、お風呂入らなくていいの?」

健夜「うん、眠いし朝に入るよ」

健夜「それじゃ、おやすみ」

恒子「おやすみー」


健夜「……」

恒子「……」


ピピピ


恒子「あ、バッテリー切れか」

健夜「もう!寝顔は撮っちゃ駄目って言ったよね!?」

今日はここまで

お酒を飲む機会も多くなると思いますが、皆さんほどほどに
お酒を飲む機械になってはいけません

こんばんわ
クリスマスと言えば、コンビニで一人でケーキ買ったんですが店員さんが気を利かせてフォーク2つ付けてくれたという思い出があります
わざわざ予備を付けてくれるなんて優しい店員さんだなぁと思いました

投下します。長めです

地区代表選出インタビュー
第72回全国高等学校麻雀選手権大会
長野地区代表 女子個人戦第2位
清澄高校1年 室橋裕子


記者:まずは全国出場おめでとうございます。

室橋裕子(以下ムロ):ありがとうございます。

記者:今の心境を聞かせて下さい。

ムロ:あの日の事を思うと今でもドキドキします。まだ少し実感はありませんけどトロフィーや写真を見ると本当にやったんだなって思います。

記者:周囲の反応はどうでした?

ムロ:クラスの皆や今は遠くに居る先輩方からも電話もらったりお祝いしてくれました。

記者:先輩というのは元清澄高校の片岡優希さんや原村和さんですね。

ムロ:はい。中学時代からの先輩後輩の仲なんですけど(大会の)次の日には電話もらってとても嬉しかったです。

記者:お二人とも全中王者や東風王者といったタイトルをお持ちですが、やはりその影響は受けたのでしょうか?

ムロ:そうですね、最初は雲の上の存在の様に思ってましたけど私がまだ中学生の頃たまに清澄にお邪魔しに行く事があったんですよ。

記者:それはインターハイの終わった後に?

ムロ:はい、秋頃ですね。それでまた一緒に練習していくうちに、私もこの人に追いつきたいなと思うようになりました。

記者:全国準優勝のメンバーと練習していたんですね。

ムロ:はい。自分にとって凄く貴重な時間でした。

記者:その時の練習風景というのはどんな感じでした?

ムロ:うーん、正直練習よりもおしゃべりの方が多かったですね。なんせ雀卓が一つしかないんで(笑)

記者:そうなんですよね、意外でした(笑)

ムロ:須賀先輩や優希先輩は問題集を解いたりしてましたね。それでノルマが終わったら卓に入るという感じで。

記者:他のメンバーはどういった方が居たんでしょうか?

ムロ:基本的に私、和先輩、染谷部長、それと私の後輩のマホが卓に入ってて他の二人はテキスト。

記者:本当に少人数ですね。

ムロ:たまに竹井先輩が来るんですけど、ゲストを連れてくる時もありました。

記者:そうなんですか?ゲストというのは……。

ムロ:当時の風越のキャプテンさんとかですね。逆にこちらが出向くときもあります、龍門渕とか。

記者:他校との交流が深いんですね。

ムロ:そうですね。人数が少ないので他所にお邪魔して練習する事が多いです。

記者:清澄だけだと部員は3人しか居ませんからね。普段はどのように練習を?

ムロ:顧問の熊倉先生を交えて打っています。指導してもらう時には先生が後ろについて他の誰かが二家やって……と言う感じです。

記者:あまり良い練習環境とは言えませんが、それでも結果を出せたのは何故だと思いますか?

ムロ:熱心に指導してくれた先生や先輩方のおかげです。あと目標を持って諦めない事だと思います。

記者:ありがとうございます。それでは全国大会に向けての抱負を教えてください。

ムロ:代表に選ばれたからには良い成績を収めたいですし、応援してくれている人達の為にも頑張りたいと思います。


記者(?):ありがとうございました。ところでコレご覧になられましたか?

記者:大会の次の日の新聞ですね。

ムロ:う……ご覧になりましたけど……。

記者(?):インハイの記事が大きく取り上げられていますが……お、室橋さんの写真も載っていますね。

ムロ:そーですね……。

記者(?):よっぽど嬉しかったんですね、もう涙ボッロボロ出てますよ?

ムロ:それ皆にも言われましたよ……ムロ泣きすぎだじぇ!って。

記者(?);ちなみにネット版だと無駄に高い解像度で閲覧できます。

ムロ:うっそおぉぉ……マジですか……あ、それで和先輩なんか笑い堪えてる感じだったんだ……。

清澄高校 麻雀部部室


京太郎「世界中に泣き顔晒した訳ですが、それについてどう思いますか?」

ムロ「そうですね、まず目の前のニヤケ面して煽ってくる先輩をなんとかしたいですね……!」

ムロ「仲間が増えたのがそんなに嬉しいですか?」

久美子「あはは……ウチの記事ではちゃんとした写真使うからね?」

ムロ「ホント願いします……」

まこ「まぁ鼻水は出とらんかったしセーフじゃ」

ムロ「セーフかなぁ?」


トシ「愛嬌あっていいじゃない」

ムロ「イヤですよぅ……もっとこう、南浦さんみたいにキリッとしてたいです!」

京太郎「ふふふ……もう遅い」

ムロ「まぁダル顔ピースで1面飾った先輩には負けますけどね」

京太郎「ぐぬぬ……」

京太郎「はぁ……最初は可愛げがあったのに入部して2ヶ月たった今では……」

ムロ「先輩がおちょくるからですよ」

久美子「へぇ、室橋さんが清澄に来た頃ってどんな感じだったの?」

京太郎「そうですねぇ……」



1年前 初秋 清澄高校 麻雀部部室


京太郎「ようこそ。清澄高校麻雀部へ」

ムロ「あ、お、お邪魔しまs
優希「おお!よく来たなお前たち!」

京太郎「うおっいきなり突進してくんじゃねぇ!」

マホ「来ちゃいましたー」

まこ「おっ来たのう、未来の麻雀部員」


和「いらっしゃい。ムロ、マホちゃん」


和「紹介します。高遠原の後輩の……」

ムロ「む、室橋裕子です。3年です」

マホ「2年の夢乃マホです!」

京太郎「清澄高校1年の須賀京太郎だ、よろしくな」

京太郎「俺以外は皆知ってたのか」

まこ「インハイ前の四校合同合宿にも来とったからのう」

京太郎「ああ、俺は行けなかったもんな……」

和「し、仕方ありませんよ……」


マホ「うわぁ、すごく広いです。マホびっくりしました!」

ムロ「教会みたい……。ステンドグラス綺麗……」

優希「ふふん。そうだろうそうだろう」

京太郎「なんでお前が自慢げなんだ」

和「でも自慢したくなる気持ちもわかります。きっと他の学校にはないでしょうし」

和「あったとしても、そういう場所で麻雀はしないと思いますし」

まこ「ほんにキリスト教の学校でもないのに不思議じゃのう」

優希「清澄七不思議だな!」

マホ「ええ!?」

京太郎「なんか一気に怪しいスポットになったぞ」

マホ「ここで皆さん、いつも麻雀を打ってるんですね」

ムロ「卓が1台だけ……ホント最小限の設備ですね」

優希「雀卓の性能の違いが戦力の決定的な差ではないんだじぇ!」

まこ「そりゃそうじゃ」

和「基本的にはそうですね。そこのPCでネト麻をする事もあります」

京太郎「ちなみに合宿の時は宿泊施設までその自動卓とPCを持ってったんだ」


京太郎「俺が」


優希「流石使える犬だじぇ!」

ムロ「え、これを?」

京太郎「ああ」

まこ「いやぁホンマに感謝しとるわー」

京太郎「四校合同の時は龍門渕さんトコで用意してくれたんだけど……」

京太郎「まさか東京にまで持ってくとは」


京太郎「持たされるとは」


ムロ「それはそれは」

マホ「御苦労さまですー」

京太郎「本当にな」

優希「よし、それなら私がねぎらってやるじぇ!京太郎、口を開けろ!」

京太郎「は?なnコポォ!」

優希「褒美のタコスだじょ」

和「ちょ、ちょっと優希……」

マホ「タコスぢからです!」

ムロ「いやいや」

京太郎「褒美って、コレ俺が作ったやつだろ」

ムロ「須賀先輩って料理出来るんですか?」

京太郎「まぁな。最初はコイツがねだるからタコス作ってやって、そこから色々とな」

優希「タコスに関しては免許皆伝の腕前だじぇ!」

まこ「タコス以外の料理もなかなかでの、わしの店でも出したいくらいじゃ」

和「もしかしたら、この中では一番料理が上手かもしれませんね」


マホ「須賀先輩すごいです!マホは全然お料理できないです!」

和「そんなに堂々と……」

京太郎「いや、ホントそんなでもないぞ?」

ムロ「なにか上達する秘訣とかあるんですか?」

京太郎「うーん、俺自身はそんなこと考えた事ないな……やっぱり教えてくれる先生が良いからかな」

ムロ「先生?」

京太郎「ああ。実は龍門渕さんとこの執事の人に教わってるんだよ」

京太郎「あの人なんでもできるんだ」

マホ「マホ知ってます!黒くて背の高い人です!」

京太郎「ハギヨシさんっていう人なんだけど、教え方も上手くてな」

和「私のエトペンも直してもらいました。本当に感謝してます」

優希「良い師に出会えてよかったな!」

京太郎「そうだな。料理でも麻雀でも、良い先生に恵まれて俺は幸せだよ」

優希「え、なんだ急に……そ、そんなにストレートに来られると、流石の私でも照れるじぇ……」

京太郎「優希以外のな!」

優希「な、なにーー!!」


優希「どういう事だキサマッ!」

京太郎「いや、お前の言ってる意味全然わからんし。東場で風を感じるんだって言われてもわからんし」

京太郎「タコス食ってもダブリー出来ないし」

優希「それはお前のタコスぢからが足りないからだ!」

京太郎「ですってよ、和さん?」


和「……優希?」

優希「うぇっ……」


和「いつも言っていますけど」

和「そんなものは牌の偏りや偶然が重なったケースです」

和「たまたま東場で調子のいい時のシーンが記憶に強く残ってるだけですから」


和「そんな」

和「オカルト」

和「ありえません」


優希「うぅ…」

和「全く、あなたは……」

和「あなたはやればできる子なんです」

和「インターハイでもエースポジションの先鋒を任されて、全国の強豪と戦ってきたじゃないですか」

和「1年生でありながら上級生相手に一歩も譲らず、気持ちも負けず」

和「私達を引っ張っていってくれましたね」

優希「のどちゃん……」

和「最初の合宿ではまともに点数計算もできなかったあなたなのに」

和「今ではすっかり頼もしくなりましたね」

優希「うぅ……の、のどちゃ……」


和「ですから」

優希「う?」


和「今日は更に、いつもより上を目指しましょうか」

優希「ふぇ?」

和「それでは今日はこの『期待値で切れ!超上級向け何切る問題集イグゼクス アクセントコア』を使いましょう」

優希「げえぇええ!!そ、それは……!」

和「優希はやればできる子ですからね。もっともっと勉強して南場でも集中力が持続できるようになりましょう」

和「大丈夫。優希ならすぐにマスターできます、いやさせますから。うふふ」

優希「じぇ、じぇ、じぇええぇぇぇぇ!!」

まこ「ええか、あれが飴と鞭っちゅーやつじゃ」

京太郎「落として上げて、相手がガードを解いたところにズドンって寸法よ」

ムロ「勉強になります」

マホ「ムチ怖いですぅ……」


京太郎「で、さっきの話に戻るけど、わざわざ自動卓持ってかなくても良かったと思うんだ」

まこ「それまだ続いとったんかい」

京太郎「続きます。それがですね、俺、他の学校の人に聞いたんですよ」



京太郎「自動卓のレンタルってあるって」

まこ「ああ~」

マホ「ええ!?」

ムロ「え、雀卓ってレンタル出来るんですか?」

京太郎「うん、出来るみたいだ。ってか染谷部長そのリアクションは知ってましたね?」

まこ「ああいや……言われてみりゃあ、そういえばそんなんあった気がするのう」

まこ「いやでも、やっぱそれなりにするんじゃないか?」

京太郎「業者に知り合いが居て、しかも自分で運んで設置したからだいぶ安くなったわーって」

京太郎「レジェンドが言ってました」

まこ「レジェンドェ……」


まこ「阿知賀って、あの人らってやたら高そうなトコに泊まってたじゃろ。ようそんなとこケチるのう」

京太郎「卓のレンタル料はレジェンドの自腹だったみたいです」

まこ「ええー」


晴絵『急にドラゴン復活の儀式で必要になってね。でもこっちも色々入り用があるし困ってたんだけど』

晴絵『やっぱ持つべきものは人脈だよね!業者に知り合いが居てさー、すっごい安い値段で貸してくれて助かったよ』

晴絵『実は今度プロ入りするんだけど、そこも知り合いの人が紹介してくれたんだ。ホント、コネって大事だよねー』


京太郎「って」

まこ「いやコネを作るのは大事じゃが……なんかイメージ変わったのう」

ムロ「あの、レジェンドって?」

京太郎「ああ、阿知賀の監督の赤土晴絵さん。地元だと阿知賀のレジェンドって呼ばれてんだってよ」

京太郎「インターハイの団体戦終わった時に阿知賀の人達が遊びに来てさ、その時にな」


ムロ「へぇ」

京太郎「まあ、実際すごい人なんですけどね……」

まこ「コネとか使えるのは、そこは本人の人徳あっての事じゃしな」

京太郎「そういえば部長も結構コネ持ってますよね」

まこ「ああ、あいつは人を取り込むのが上手いっちゅーか」

マホ「マホもあんな素敵なお姉さんになってみたいです!」

ムロ(ムリダナ)

まこ「……タラシっちゅーか」

京太郎「身も蓋もない」


マホ「合宿にお邪魔できたのも竹井先輩のおかげです!」

まこ「そういやそうじゃった。久が和のインターミドルの時の牌譜を調べてて、そこで見つけたのがマホじゃったな」

ムロ「へぇ、そこまで調べるものなんですね」

まこ「普通は調べんよ。じゃがそういうところに何かあると思うのが久らしいというか」

優希「うじゅじゅあぁ……」

まこ「だいぶやつれたのう」

京太郎「おう、お疲れ」

ムロ「お疲れ様です」

マホ「おつかれさまですー」

優希「じょ、じょ、じょ……」

マホ「じょ?」


優希「ジョニィが来たなら伝えてほしいじぇ……2時間待ってたと……」

和「よくそんな古い歌知ってますね」


京太郎「今、お茶淹れてくるから待ってろ」

ムロ「あ、私も手伝います」

京太郎「おう、サンキュ。それで何飲みたい?」

優希「甘~いのがいいじぇ……今、私の脳は糖分を欲している……」

和「私はなんでもいいです」

まこ「わしもおまかせで」

マホ「マホもおまかせします」

京太郎「わかりました」

京太郎「それじゃコレ使うか」

ムロ「なんですか?」

京太郎「キャラメルティー」

ムロ「キャラメルですか」

京太郎「といっても、使うのは普通のティーバッグなんだけどな」

京太郎「茶葉に香りが付いてるんだ」

ムロ「へぇ」

京太郎「疲れてる時は甘いものを食べるのもいいけど、嗅覚で甘味を感じるのも大切なんだ」

ムロ「なるほどそういう事ですか、アロマ的な」

京太郎「そういう事です、悪いけど牛乳温めておいてくれるか?」

ムロ「はい」

京太郎「ちゃんとカップも温めておいてっと」

ムロ「抜かりないです」

ムロ「……それにしても手慣れてますね。いつもお茶汲みしてるんですか?」

京太郎「まあな。それにハギヨシさんから手ほどき受けてるらな」

ムロ「そうなんですか。でも、これからはお茶淹れる事も少なくなりますね」

京太郎「え?なんで」

ムロ「来年、私清澄に行きますから。上級生にお茶を運ばせるわけにはいきませんよ」

京太郎「別に気にしなくてもいいのに」


ムロ「だって、次は先輩の番でしょう?」


京太郎「え?」

ムロ「他の先輩達が言ってましたよ?今まで雑用させてばっかりだったから、これからは須賀先輩がいっぱい麻雀出来るようにするって」

京太郎「おお……」

ムロ「ですからソレ、私にも手伝わせて下さい」

京太郎「室橋……」

ムロ「『ムロ』でいいですよ。皆そう呼んでます」

京太郎「そっか、じゃあ頼むよ。ムロ」

ムロ「はい、任されました」

ムロ「お待たせしました」

まこ「お、すまんのう」

マホ「わぁ、甘い香りがします」

和「ホントですね。ほら、優希起きなさい」

優希「んぅ…………クンカクンカ……おおぅ!」

京太郎「ほら、ミルクと砂糖」

優希「たっぷりたっぷりだじぇ!」

京太郎「はいはい」

和「ん、良い香り。ほっとしますね」

優希「ぷはぁ。ぶっ生き返ったじぇ~」

マホ「おいしいです!」


まこ「さて、せっかく来たんじゃ。打ってかんか?」

京太郎「そうだな、どうだ?」

ムロ「はいそれではお願いしちゃいます」

和「さ、優希。早速成果を見せてもらいますよ?」

優希「もうちょっとゆっくりしてたいじぇ……」




久美子「へぇ、いい後輩してるじゃないですか」

京太郎「それが今では……」

ムロ「なにか?」

京太郎「いえ……オチャイレテキマス」

ムロ「ダッシュで頼みます」

まこ「ためらいもなく」


久美子「それじゃその間に写真撮っちゃいましょうか」

ムロ「きたか……お願いします!」

久美子「その後、熊倉さんにも少しお話伺わせていただきます」

トシ「かまわないよ」




京太郎「お~れがいたんじゃおよーめにゃいけぬ わかーっちゃいるんだいもうとよ~」

今日はここまで
クリスマスと言っても別に祝日ではないし、平日なのよね。おやすみなさい

こんばんわ
◆pyIN0e.HV2のコミケ参加情報
1日目…参加しません
2日目…参加しません
3日目…参加しません
東京ビッグサイトで僕と握手!

>>435
まちがい
記者(?);ちなみにネット版だと無駄に高い解像度で閲覧できます。
ただしい
記者(?):ちなみにウェブ版だと無駄に高い解像度で閲覧できます。
別に間違いって事もないけど、なんとなく

>>444
まちがい
京太郎「自動卓のレンタルってあるって」
ただしい
京太郎「自動卓のレンタルっていうのがあるって」

>>451
まちがい
京太郎「お~れがいたんじゃおよーめにゃいけぬ わかーっちゃいるんだいもうとよ~」
ただしい
京太郎「お~れがいたんじゃおよーめにゃゆけぬ わかーっちゃいるんだいもうとよ~」
京ちゃんが歌ってるのは「男はつらいよ」の主題歌です。BSでたまにやってます

それでは投下します。今回はショッピング編です

清澄高校 麻雀部部室


トシ「さて、全国大会に向けて練習するよ」

京太郎「おおー!」

ムロ「おおー!」

トシ「と思ったけど、今日はお休みしようか」

京太郎「ええー!?」

ムロ「ええー!?」


まこ「ちょっと報告しとかんといけんこともあるしの」

ムロ「何ですか?」

まこ「ホレ、去年は四校合同合宿やっとったじゃろ」

京太郎「ああ、俺は留守番してましたけどね……」

まこ「じゃが今年は京太郎も全国行くし、なんとかしようと思っての」

京太郎「おお……染谷部長……」

トシ「それで男子も女子も受け入れてくれる全国レベルの学校を探してたんだよ」

まこ「まずは龍門渕」

京太郎「いつもお世話になってます」

ムロ「最早定番ですね」

まこ「あとは奈良の晩成高校じゃな」

京太郎「奈良だと結構強豪校で有名でしたよね」

まこ「以上」


京太郎「え、それだけですか?」

トシ「そうだね。大きな学校に少人数で赴くのはあんまり歓迎されないみたいだね」

トシ「選手としてはまだ無名だし、しょうがないね」

ムロ「うーん清澄でもそういうものなのかなぁ」

まこ「逆に警戒されとるのかもしれん」

まこ「団体戦で出とる学校には個人代表も高確率でおるしの」

京太郎「そういうもんですかねぇ」

トシ「特殊な能力持ちの選手なら隠しておきたいだろうしね」

ムロ「それで、強化合宿はその2校相手に練習するんですか?」

トシ「いや、それだけじゃないよ」

まこ「もともと晩成高校は他の学校との合同練習の予定だったんじゃがな」

まこ「無理言って参加させてもらったんじゃ、つまり」

京太郎「それって……!?」

トシ「それに、学校に申し込めないなら個人に頼めばいいのさ」

ムロ「個人?」

トシ「そう。それで、これから大会までの毎週末は他校との練習試合になるよ」

京太郎「毎週末ですか!?」

ムロ「ハードスケジュールですね……それに旅費とか大丈夫なんですか?」

トシ「心配しなくていいよ。これでも自動卓がいくつか買えちゃうくらいは部費もらってるからね」

京太郎「それって結構もらってますよね……」

トシ「そこは前の議会長さんが融通してくれたのね」

京太郎「さっすが竹井先輩……」

トシ「それに、それだけ期待されてるって事よ。じゃあ頑張らなくちゃね」

ムロ「はい!」

トシ「というわけで今日の部活はこれで終わり。それぞれ合宿の準備しないとね」

トシ「それじゃ、コレ明日の電車のチケット」

京太郎「あ、ありがとうございます……明日!?」

ムロ「これ来週からの話じゃなかったんですか……えーと、大宮?仙台?」

トシ「色々乗り換えしなくちゃいけないからね、朝早いよ」

まこ「ちゅーわけで今日は終わり。さっさと帰って仕度しんさい」

京太郎「了解です」

ムロ「ふんふむ、お泊りするんですね。分かりました」



帰り道


京太郎「ムロ、ちょっと付き合えよ」

ムロ「なんですか?」

京太郎「今日買い物行くだろ?一緒に行こうぜ」

ムロ「いいですよ。あ、すぐ行きます?一旦帰ってからまた待ち合わせしませんか?」

京太郎「そうだな。それじゃあ準備出来たら迎え行こうか?」

ムロ「い、いえ、それは悪いですから。6時にモールの入口に集合って事で」

京太郎「おっけー」

ショッピングモール エントランス


ムロ「すみません、待たせちゃいました?」

京太郎「いや全然」

ムロ「それでどうしましょうか」

京太郎「うーん、とりあえず旅行に必要なものだな。生活用品とか」

ムロ「ならまず雑貨屋さん行きませんか?」

京太郎「良いけど、雑貨屋?」

ムロ「はい、タオルとか小瓶とか欲しいですし」

京太郎「小瓶?」

ムロ「シャンプーとか入れたりするんですよ」

京太郎「ホテルに備え付けのがあるだろ?」

ムロ「ありますけど、ボディソープとか肌に合わなかったら嫌ですし」

京太郎「ふーん」

ムロ「では行きましょうか」

ショッピングモール内 雑貨屋


ムロ「先輩、これどっちがかわいいですか!?」

京太郎「あー、どっちもかわいいと思うぞ?」

ムロ「ですよね!ああ、どうしようかなぁ……」

京太郎「どっちも買えばいいんじゃないか?タオルは何枚持っててもいいし」

ムロ「うーん、こっちはもふもふしてて吸水性高そう。こっちはリネンで肌触りいいな」


京太郎「それにしても、タオルだけでこんなに種類あるのか……」

京太郎「俺はこんな柄の付いてない普通ので十分だな」

京太郎「お、バスタオル……ふむ」

ムロ「うぅぅ、これもいいなぁ……」

京太郎「ムロー」

ムロ「はい?」

サッ

京太郎「うーん……」

ムロ「あ、バスタオルですか?それ気になります?」

京太郎「そうだな……」

ジー

京太郎「ふぅ~む、なかなかのなかなか」

京太郎「なるほどなー」

ムロ「いいんですか?」

京太郎「ああ、俺はホテルの備え付けのでいいや」

ムロ「うわ雑」

京太郎「いいだろ別に。それで、どれ買うか決まったか?」

ムロ「かなり悩みましたが決まりました。タオルは」

京太郎「タオルは?」

ムロ「あとスキンケアオイルでちょっと」

京太郎「まだかかるのか……」

ムロ「お肌のケアは大事ですからね!」

京太郎「そっかぁ……」


ムロ「んー、クナイプのオイルか……あ、ちっちゃいのもあるんだ、へぇ」

京太郎「長い……ムロも女の子って事か」

ムロ「そーですよー。なんだと思ってたんですかー」

京太郎「俺少し店の中まわってくるよ」

ムロ「はーい」

ムロ「せんぱーい?」

京太郎「うーむ、キズも目立たないしツヤもある……ボトムがちょっと擦れてるけど……」

ムロ「先輩?もう会計終わりましたけど」

京太郎「そうか」

ムロ「何見てるんです?マグカップ?」

京太郎「ああ、ファイヤーキングって言って昔アメリカで製造されたモノなんだけど。これがいいモノでな」

ムロ「へぇ……うぇ、7500って高っ!」

京太郎「いや、この年代でこのコンディションならこれくらいするぞ」

京太郎「リムやボディは良い状態だな……ぱっと見ではニアミント……」


ムロ「ちょっと、それ買うんですか?」

京太郎「……かなり悩んでる」

ムロ「まさか週末に持っていく気ですか?」

京太郎「ちょっとかさばるよなぁ……」

ショッピングモール内 カフェ


京太郎「今回は諦めるか……キープできたらしてるんだけど」

ムロ「残念でした。そんなシステムありません」

京太郎「あれでコーヒーでも飲んだら美味しいぜ、絶対」

ムロ「そうですか?」

京太郎「そうそう、なにも自由で救われてなきゃいけない……なんて言わないけどさ」


京太郎「何時何処で誰とっていうのは結構大事だと思うぜ?」

ムロ「それは……まぁそうですね、分かる気がします」

京太郎「そこに何のカップでってのが加わるんだよ」

ムロ「ふーん、私はそこまでこだわりはありませんけどね。マグでもティーカップでも」

京太郎「女の子がタオルを何種類も持ってるのと同じさ」

ムロ「……なんか上手い事返された気が」


京太郎「ちなみになんだけど」

ムロ「ちなみに?」

京太郎「女の子がこう、両手でマグカップ持つのってめっちゃ可愛いと思うんだよなー」

ムロ「……」


スッ


京太郎「……ティーカップじゃちょっと違うんだよなぁ」

ムロ「もおぉぉぉぉ……!」

京太郎「あっはっはっは」

ムロ「要らぬ恥をかきましたよ……」

京太郎「いやでも、ふふっ可愛かったぞ?」

ムロ「お世辞も要りません……」

京太郎「ははは、悪い悪い……じゃあコレ」

ムロ「え?」


京太郎「全国出場のお祝い。これも要らない?」

ムロ「え、先輩も全国にって……え、え、いいんですか?」

京太郎「おう、せっかく用意したんだ。できれば貰ってほしいな」

ムロ「あ、ありがとうございます。開けてもいいですか?」

京太郎「どうぞ」


ムロ「わぁ、これ」

ムロ「ヘアブラシ……しかもマークスアンドウェブの」

京太郎「男の俺じゃよくわかんないから色々調べたんだけど……大丈夫だったか?」

ムロ「いえ、問題無いです。むしろ、良いです」

京太郎「そっか、よかったー」

ムロ「ありがとうございます……えと、凄く嬉しいですけど、あー、その、上手く言えない……!」

京太郎「あはは」

ムロ「本当、ありがとうございます。うぅ……これしか言えなくてすみません……」

京太郎「いやいや大丈夫だよ。嬉しいのは見ればすぐわかるから」

ムロ「……!?」

京太郎「嬉しそうなムロの顔見てたら安心してきた。あーよかった!」

ムロ「うぅぅ……!」

京太郎「あっはっはっは」



ムロ「それで、なんでヘアブラシなんです?」

京太郎「ああ、こないだ言ってだろ?髪伸ばしてるって」

ムロ「あーそういえば」

京太郎「なんかムロにご褒美やんなきゃって思っててさ、そこで熊倉先生がこういうのどうかってさ」

ムロ「熊倉先生が?」

京太郎「恥ずかしながら、俺女の子にプレゼントした事って無くて……」

ムロ「そうなんですか!」

京太郎「お、おう。それで迷ってたんだけど、アドバイスもらったりしてな。それでヘアブラシになりました」

ムロ「そっかそっか……へへ」

京太郎「喜んでくれたようで何よりだ」

ムロ「はい!」


ムロ「では早速次の店行きましょうか!」

京太郎「ええ!?まだ買い物するのか?」

ムロ「はい。トリートメントにドライヤーに……まだまだ買わなくちゃいけないもの増えちゃいました!」

京太郎「いや、今日は合宿に必要なモノだけ……」

ムロ「必要ですよ!」

京太郎「そ、そうか……でも、もうちょっとゆっくりしてたいんだけど」

ムロ「却下です。明日早いんですからね、ちゃんと睡眠時間確保しとかないと」

京太郎「あ、あぁ……え?ならもう今日はお開きで」

ムロ「ホラホラ早く!」

京太郎「はぁ……はいはい、わかりましたよ」


京太郎「ムロの買い物って長いんだよなぁ……」

同時刻 岩手


塞「シロ、明日の準備できてる?」

白望「……まぁ、一応」

胡桃「1泊するんだからね。キチンと準備しないと!」

白望「足りないのあったら向こうで買えばいいし……」

胡桃「ダメ!いっつもそう言ってビニール傘とか増えたりするんだから!」

エイスリン「ナマケルナ!」

白望「ダル……」

豊音「でも、仙台でお買い物も楽しそうだよー」

塞「まぁね、岩手より栄えてるからね。特に駅前は」

胡桃「明日は遊びに行くんじゃないんだからね!」

豊音「分かってる」


豊音「熊倉先生に会える、久しぶりだよー」

エイスリン「ヒサシブリ!」

塞「ああ、そうだね」

胡桃「それにしてもまさか清澄に行くなんて」

豊音「うん、ちょーびっくり!」

塞「うちらとは因縁浅からぬ学校だしね」

エイスリン「……」

カキカキ

白望「エイスリン……」

塞「んっ?」

バッ

エイスリン「ソメヤマコ、タオスベキアイテ!」

豊音「わぁ、エイスリンさんちょー燃えてる!」

塞「あはは……インハイでやられちゃってたから」


塞「私も、原村和にしてやられたというか、かき回されたというか……」

胡桃「マナー悪かったら容赦なく注意してやる!」

塞「うーん、リベンジしたいけどもう居ないしなぁ」

豊音「それはしょうがないよ。でも、新しい清澄の人も楽しめそうだよー?」

塞「個人2位で県代表の1年……か」

エイスリン「ツヨイ!」

胡桃「明日は男の子も来るんだよね?」

豊音「この人もすごいよー。個人1位だって!」

塞「流石、熊倉先生の教え子だ」

胡桃「私達もだけどね」


豊音「あはは、それにしても……」

塞「うん……これは」

胡桃「最初見た時にも思ったけど……」

エイスリン「スゴク……」


『Weekly麻雀TODAY.NET フォトレポート:長野県男子個人戦1位は清澄高校 須賀京太郎!(ダル顔ピース)』


豊音「シロそっくりだよー」
塞「シロかよ……」
胡桃「シロみたい!」
エイスリン「ソックリ!」


白望「えっ」

今年はここまで

京ちゃんが後輩相手にバスタオルをかざしてトレースオンしてましたが
最高状態でやると真に迫ったボディラインが見えるとか見えないとか……

来年からは全国修行編突入します

こんばんわ
いつも乙ありがとうございます
そして、あけましておめでとうございます

!目指せ完結!

思い起こせば第133局のムロが可愛かったのがキッカケ
それですぐムロたんイェイだったからなんかしようと思って書いたのがこのSSです
書いた奴のひねくれた性格が設定に良く出ていますね

まだ続きが1文字も書けてない現状なので
早急にやる気・体力・女子力を回復させたいと思います
もうちょっと待ってて下さい

頭の中では色々ムロムロしているので
早くカタチにできればと、カタチにせねばと思ってます
それでは

Have a nice year!

こんばんわ
全国ご当地グルメ旅行編の始まりです

投下します

新幹線内


まこ「んんーっやっと着いたわー」

京太郎「荷物降ろしますね。よっと……よし、忘れ物無いな?」

ムロ「おっけーです」

トシ「それじゃ降りようか」



昼 仙台駅


ムロ「今日私始めて仙台に着きましたよ」

京太郎「着いた―!」

ムロ「へぇ、ここが仙台かぁ」

まこ「それで相手方は……」

トシ「もう来てるみたいだね。ホラ、あそこ」

京太郎「おお、見つけやすい」

まこ「便利じゃのう」



トシ「久しぶりだね、みんな」

豊音「お久しぶりです!熊倉先生!」

トシ「うん、豊音も元気そうだね。それにエイスリンも、よく日本に来たね」

エイスリン「ゴブサタ シテマス!」

トシ「また日本語上手くなったね」

塞「熊倉先生お久しぶりです」

胡桃「お久しぶりです!」

白望「おひさです……」

胡桃「コラッ!ちゃんと挨拶する!」

白望「お久しぶりです」

トシ「ふふふ、相変わらずだね。シロが元気だとどうしようかと思ったよ」


豊音「あはは。それでそちらの方々が……」

トシ「うん、清澄の麻雀部の子達だよ」

まこ「まぁ顔は見た事あると思うがの、改めまして清澄高校麻雀部部長の染谷まこです」

まこ「そんで……」

京太郎「はじめまして。2年の須賀京太郎です」

塞「ああ、よろしく」

胡桃「んん?」

京太郎「あの……どうかしましたか?」

豊音「リアルで見るとあんまりシロっぽくないよー」

京太郎「え、シロっぽいって……?」

白望「……」

カキカキ バッ

エイスリン「ダルイ!」

京太郎「あーそれは……」

ムロ「ほら、やっぱり」

京太郎「雑誌か何かでご覧になったんですね」

トシ「ふふ、京太郎はね、麻雀するとああなるんだよ」

塞「へぇ」

京太郎「俺も写真差し替えてもらえば良かったかな……ほらムロ」

ムロ「はい。えっと、清澄高校1年の室橋裕子です、よろしくお願いします」

豊音「姉帯豊音です、よろしくねー」

トシ「軽く挨拶も済んだところで、何処かお店に入らないかい?」

トシ「こんな所で大人数でいちゃ邪魔だろうし」

塞「そうですね」

トシ「それと……」


トシ「その大量の買い物袋をロッカーに入れておきなさい」

まこ「随分満喫したようじゃの」

豊音「ちょっとはしゃぎすぎちゃった」

ムロ「……ちょっと?」

京太郎「凄い量ですね、少し持ちましょうか?」

塞「いや、それはワル」

白望「お願い」

塞「いよ……ってオイ!」

胡桃「こういう時だけ反応早いんだから」

食事処


京太郎「へぇ、みなさん岩手の大学に進学したんですか」

豊音「そうなんだー。同じ学校で同じ家なんだー」

ムロ「ルームシェアってやつですか」

塞「まぁね、そんなオシャレな感じでもないんだけど」

豊音「みんなで一軒家借りて住んでるんだよ」

塞「その方が安上がりだしね。寮は狭いし規則とか色々面倒だから」


ムロ「一軒家って事は広いんですか?」

塞「5LDKだっけ」

京太郎「おお、結構大きいんですね」

豊音「うん、それにそんなに古くなくてキレイでねーよかったよー」

塞「急な来客が来ても大丈夫だし」

豊音「エイスリンさんが来た時はみんなリビングで寝たりしたけどね」

京太郎「エイスリンさんはニュージーランドでしたっけ」

塞「うん、今は冬休みなんだって」

ムロ「冬休み?」

豊音「南半球だから日本と季節が逆なんだ」

京太郎「へぇ」


ムロ「そうなんですか。ニュージーランドってどの辺にある国なんです?」

塞「エイスリンー?」

エイスリン「アッチノ ホウ」

塞「だって」

ムロ「いやいや大雑把すぎますよ!」

京太郎「オーストラリアの右下だってさ」

ムロ「わかったんですか!?……ってか右下って」

豊音「それより早くご飯来ないかな―。あっちの席ばっかりズルイよぉ……」

塞「しょーがない、混んでるから……これでも空いてる方なんだけどね」


まこ「すまんの、お先しとるわ」

エイスリン「マイウー!」

胡桃「牛タンってもっと固いと思ってたけどスゴク柔らかいね」

白望「噛むのダルくない……」

トシ「それ若者のセリフじゃないよ」


ムロ「おいしそう……」

京太郎「いや、漂ってくる匂いからして絶対美味い……」

塞「クッ、塞ぐか……!ふぬっ」

豊音「え、鼻を!?」


  「お待たせいたしました」


京太郎「おお、スゲー美味そう」

塞「お、きたきたきましたよ」

豊音「私達は牛タン定食で、ムロちゃんは牛タンカレーだね」

京太郎「攻めてきたな」

ムロ「辛いの好きなんで」

京太郎「牛タンっていっても厚いんだな」

塞「ほのかに炭の香りがしてきて……これはテンション上がる!」

豊音「テールスープも美味しいよー」


京太郎「カレーはどんな感じ?」

ムロ「牛タンの存在感がハンパないですね。それに柔らかいのに歯ごたえがあって……なんか新しいです」

京太郎「そっちも美味そうだなぁ……。なぁムロ、こっちの一切れやるからそっちの一口くれないか?」

ムロ「え?別にいいですけど」

豊音「!」

塞「?」


京太郎「じゃあ交換成立って事で、ハイ」

ムロ「どうも。それじゃあ……あ、カレーはこのままどんぶりに入れて良いですか?」

京太郎「ええと、取り皿は……無いのか」

豊音(無かったら?そのまま……)

塞(!?……あ、そっか)

京太郎「それじゃしょうがないから……」

豊音(あーん……)

塞(あーん……するの?しちゃうの?)


京太郎「どんぶりに入れちゃっていいよ」

ムロ「はい、どうぞ」


豊音「ええー」

ムロ「な、なんですか?」

塞「いや、何でもないよ」


京太郎「もぐもぐ……うん、カレーもなかなかイケるな」

ムロ「もしかして豊音さんも欲しかったですか?」

豊音「あ、貰えるならうれしいよー」

塞「ちゃんと一切れやるんだよ……私もお願いしていい?」

ムロ「はーい」

トシ「ホテルのチェックインの時間だし、そろそろ行くよ」

京太郎「はい」



ホテル ロビー


トシ「予約してた熊倉ですけど……」


ムロ「わぁ、広いですね」

胡桃「新しくて洋風な感じだけど、私達の部屋は和室なんだよね」

ムロ「あ、そうなんですか」

塞「大人数だと、大抵どこも畳部屋になっちゃうんだ」

エイスリン「タタミ ニホンノ ココロ」

豊音「それに今日は大部屋じゃないとね」


まこ「そうじゃの。ホレ、京太郎の部屋のカギ」

京太郎「ありがとうございます」

まこ「わしらはこっちじゃ。荷物置いたらまたロビーに集合じゃけぇ」

京太郎「分かりました」

塞「それじゃ、また後で」

白望「……ダル。もう寝ていい?」

胡桃「ダメ!私達は準備があるんだから!」

和室


京太郎「おじゃましまーす」

豊音「いらっしゃーい」

ムロ「お邪魔します。おぅ、雀卓がある」

胡桃「もう準備できてるよ」


まこ「ほいじゃ、早速始めるとするかの……メンツは」

エイスリン「ハイ!」

塞「よしいけエイスリン!」

豊音「リベンジマッチだねぇ、ほらシロ!」

白望「え……私?」

胡桃「じゃないと、そのままリクライニングにくっついちゃうでしょ」

白望「動きたくない……」


東家:エイスリン・ウィッシュアート
南家:染谷まこ
西家:小瀬川白望
北家:姉帯豊音

半荘終了

1位:豊音「私がトップだよー!」
2位:まこ「こんなもんかの。ちょっとやりづらかったわ」
3位:白望「……もう戻っていい?」
4位:エイスリン「マタ マケタ……」


塞「うーん、染谷さんの打ち方がよくわからないんだよなぁ」

まこ「わしか?わしは卓上の顔を変えとるだけじゃけぇ」

エイスリン「カオ?」

まこ「ああ。わしには卓上全体を人の顔の様に見えるんよ」

まこ「その顔が嫌いな顔じゃったらソレを歪ませりゃあええ」

胡桃「そんな能力があったんだ」

トシ「しかもこれはオカルトじゃなくて、まこ自身の技能なのよ」

豊音「ええ!?すごーい!」

まこ「昔から色んな人で作る卓上を見とったからの。まぁ経験だけなら負ける気せんわ」

エイスリン「ケーケン……ワタシ エクスペリエンス タリナイ……」

胡桃「そこは一朝一夕で埋められるものじゃないからね」

まこ「ほんじゃ次は……」

京太郎「俺が入ります。臼沢さん……」

塞「お、ご指名?」

京太郎「はい」



京太郎「この中じゃ俺が一番和に近いですから」

塞「へぇ……なら、ここで雪辱を果たすとしようか」

今日はここまで
この駆け足感。人数多いとね
次は少し丁寧に書きたいです

こんばんわ
三日酔いとかそんなん考慮しとらんよ……

投下します

南一局

東家:須賀京太郎
南家:鹿倉胡桃
西家:臼沢塞
北家:姉帯豊音


塞「リーチ」

豊音「あは! 追っかけるけど~」

タンッ

塞「ッ!」

豊音「通らばリーチ!」

まこ(出たの、追っかけリーチ)

塞「……!」

タンッ

豊音「あ? うぅ……」

塞「っはぁ……!」

塞(ちょい無茶だけど、これで……)


京太郎「ポン」


塞(また私のツモ番……!?)

塞(少しは休ませてよ……!)

豊音(んーそろそろ限界かなぁ?)

京太郎「チー」

塞「クッ」

塞(くっそ……清澄ィ)

塞(1巡目よりは落ちるけど、連続は……!)

トンッ

京太郎「ロン。2000です」

塞「はい」

塞(……結局、放銃かぁ)

豊音「さえお疲れだねー」

塞「誰のせいで……」

胡桃「うるさいそこ!」

トシ「塞の消耗が激しい。豊音の力が増してるみたいだね」


京太郎「……」


トシ「おや」

まこ「入ったみたいじゃの」

ムロ(今回は時間かかったな)

南一局 1本場


京太郎「リーチ」


塞(はぁ!?)

豊音「通らば……」

塞(絶対塞ぐもんか、振り込め!)

豊音「リーチ!」


エイスリン「イイノカナ?」

まこ「まぁ、見ときんさい」

キィィンッ

京太郎「……」

タンッ

豊音「え」

豊音(さえ?)

塞(違う……私じゃない)

白望「何……?」


豊音(あ……コレ、見た事あるかも)

胡桃「ツモ! 500・1000の1本場は600・1100!」ポン

京太郎「はい」

豊音「はい……ふぅん」

京太郎(そういえばダヴァンさんの時は……)




南二局

親:鹿倉胡桃


豊音「ポン!」

まこ「おっ」


豊音「チー!」

豊音「ポン!」

胡桃(ともびきとか……)

豊音「チー!」

ムロ(あっという間に4副露)


塞(流石にこれ以上は……)

ジィ

塞(塞ぐ……これがラスト……!)


  「そっちじゃないよ~」


豊音「カン!」

京太郎(加槓!?)

塞(空振った……! もうガス欠……)

ゴォッ

ムロ「うぉっ」


ドッ


豊音「ツモ! 嶺上開花ぉー!」


豊音「2000・4000!」

まこ「マジか」

エイスリン「ヤッタネ! トヨネ!」

ムロ(うぉって言っちゃった……)


対局終了

1位:豊音「またまたやらせていただきましたぁ!」
2位:京太郎「手ごたえはあったかな」
3位:胡桃「ありがとうございました」
4位:塞「キツさ限界……」

塞「あ゙ー疲れた……シロ交代」

白望「えっ」


京太郎「姉帯さん、さっきのなんですか?」

豊音「えへへ、宮永さんの真似~」

まこ「真似って……」

ムロ「そんなマホじゃあるまいし」


豊音「京太郎君もすごかったよー後半のアレ!」

胡桃「豊音の先負効いてなかったでしょ」

京太郎「集中するとああいう状態になるんですよ」

豊音「あれってさ、む、むきょ……むきゅ、むこ、むきょきゅ……」

エイスリン「ムキュ?」

胡桃「落ち着きなよ」

京太郎「俺はゾーンに入るって呼んでます。元々スポーツ用語なんですけど」

豊音「スポーツ?」

京太郎「はい、中学の頃はハンドボールやってたんですよ」

京太郎「麻雀してる時にこの状態になると、自分の手牌のみ相手のオカルトが無効になるみたいです」

胡桃「それで豊音の当たり牌を掴ませられなかったんだ」

京太郎「はい、でも絶対ではないんですけどね。あまりに強力なオカルトだと太刀打ちできないですし」


豊音「それじゃあ次はムロちゃんだね!」

ムロ「はい。お願いします」

京太郎「あ、ムロちょっと」

ムロ「はい?」

塞「がんばれシロ~」

白望「ダル……」


京太郎「……の……だけど……」

ムロ「ん……はい……」

豊音「それじゃあ準備いいかな?」

ムロ「はい。お待たせしました」


東家:小瀬川白望
南家:室橋裕子
西家:姉帯豊音
北家:鹿倉胡桃



東四局 5巡目

親:鹿倉胡桃


ムロ「ツモ。2000・3900」

胡桃「はい」

胡桃(門前で手組みしてるのにこの速度)

豊音(リーチしてこないかなぁ、間に合わないよー)

白望(なんだこの河……)


京太郎「ムロ、やりにくそうですね」

まこ「リーチできんし、鳴きも入るからの」

エイスリン「ナンニュー!」

塞(対局始まってからモノクルがずっと冷え切ってる……)

塞(つまりパッシブタイプ)



南一局

親:小瀬川白望


豊音(速いなぁ。それじゃあ私も……!)

ゴォォ

塞(あれは、スピード重視の)

白望(なんでここでなのかわかんないけど、スピード勝負ってわけ……ダル)


ムロ(コレ、なんか来てる?)

ムロ(和了形が見えないし、こっちも鳴いて仕掛けるか)

ムロ(加速して逃げ切る!)


ムロ「ポン!」

胡桃「ロン!」

ムロ「え」

京太郎「あ」

胡桃「5200!」

ムロ「はい」


ムロ(鳴いて飛び出る当たり牌……か)

ムロ(見えなかった……いや、それをさっき先輩から注意受けたのに……!)

ムロ(なんて自業自得)

ムロ(……)


オオォォォォン...


豊音「!」

胡桃(何!?)

白望(なんか……厄介なのがきたな)

豊音(なにかきたよー!)


京太郎「ったく、言ったそばから」

トシ「おやおや」

カキカキ

エイスリン「ハイッ」

塞「うん、雰囲気変わったね」

豊音(ちょーおもしろそうだよー)


ムロ「……」

うおォンかな?(すっとぼけ

今日はここまで

豊音の先負は1巡目に最も効力を発揮し、それ以降は順々に効力が弱まってくるイメージ
塞のモノクルはオカルト発動時に急激に冷える→曇るイメージ
です

あと、今まで「○順目」って書いてたけど「○巡目」が正しいようです

年目 月 週 



京太郎「何をしようかな」

【現在のステータス】

須賀京太郎 称号 

状態  おこづかい 

雀力:

戦闘力: 

体力:100

愛牌:ランク1 0/10

【成長方針】雀:戦=○:○



1 練習をします

A 麻雀

 a 通常練習

 b オリジナルスキルの開発

 c スキルの特訓


 B 戦闘

 a 通常練習

 b 技の特訓


2 うろつきます(解禁後)

3 ネットで買い物をします(ターン消費なし)

4 アイテムを使います(ターン消費なし)

5 誰かに連絡をします(メール・電話は1ターンに2人まで可能)

6 バイトをします

7 ヘブンズ・タイム

8 休む

やばいねぼけてたなんでもないです

>そっとしておこう


こんばんわ
風強い。マハガルダインかよ……

>>513
そんな人間火力発電所じゃあるまいし
ちなみにフジリューの封神演義に出てくる瘟(オーン)ってやつがパロ元です。特に深い意味は無いです

短いです投下します。今回はムロのオカルトについて

対局終了

1位:豊音「トップ獲ったけどー」
2位:白望「なんかおとなしくて変だったわ……」
3位:胡桃「ありがとうございました」
4位:ムロ「あらら」


京太郎「ムロ~?」

ムロ「うぅっ……せんぱい……」

京太郎「またやっちまったな」

ムロ「はい……」

京太郎「能力に頼り過ぎだ。手牌だけじゃなくてちゃんと他家の状況も見ないと」

ムロ「はい……」

京太郎「ちゃんとデジタルの勉強もしないとな」

ムロ「はい……」

ナデナデ

京太郎「俺もまだまだだからさ、一緒に頑張ってこうぜ?」

ムロ「あ……はい。先輩」


胡桃「うーん、あの何かありそうなプレッシャーで何もないとか」

白望「むしろ連続で放銃……」

豊音「熊倉先生! これはいったい!?」

トシ「ムロの力だよ」

エイスリン「ナ、ナンダッテー!」

トシ「と言っても反転しちゃったけどね」

塞「反転?」

トシ「振り込んだ次の局は向聴数が下がらなくなったりツモが裏目ったりして……」

トシ「それで大抵、放銃しちゃうんだ」

豊音「振り込んだら次もまた振り込むの? ちょーやばいよー」

トシ「そうだね」

塞「そうだねって……それでよく県代表になれたね」

まこ「まぁ、ムロは基本振り込む事はないけぇ」

エイスリン「ドユコト?」

まこ「それは……」


京太郎「つーか、オマエ俺が言ってた事忘れてただろ」

ムロ「わふれへないれふ!」

京太郎「本当に?ちょっと不注意だったんじゃないのかー?」

ムロ「……ひょっとらへ」

京太郎「油断大敵」

ムロ「ひゅいまひぇん」

まこ「本人に聞いた方がええじゃろ。ホレ、その辺にしときぃ」

ムロ「ふぅ……はい、まず振り込みません。相手の能力で何かされない限りは」

塞「それはムロちゃんの能力なの?」

ムロ「そうです。手牌の中に危険牌があったら、それがわかるんです」

豊音「言われてみれば変な避け方するよね」


京太郎「いつもはもっとリーチしたりするんですよ」

ムロ「その分、放銃率も上がりますけど」

胡桃「そういえば県大会の牌譜見たけど一発率高かったよね。それは……」

ムロ「和了形も分かるのであとはタイミング合わせて、ですね」

塞「和了形も分かる!?」

ムロ「はい。あくまでその時のツモ筋で、ですけど」

ムロ「途中で鳴かれてズラされたら見えなくなりますし」

塞「あ、そうなんだ」

ムロ「逆に見えなかったのがズレて見える事もあります」

胡桃「そりゃそっか。でも十分強力だよね」

ムロ「ありがとうございます。でも、胡桃さんみたいにテンパイ気配を遮断されたりすると……」

胡桃「振り込んじゃうかー」

ムロ「はい。それで県大会でちょっとピンチだったんですよね……」

京太郎「まさかのトップから4回連続放銃でラスだもんな」

まこ「ありゃあちょっと運も無かったわ」

ムロ「あの時、焦ってリーチしなかったらなぁ……」

トシ「2回マイナスでも1回で帳消しにできる火力があるから」

トシ「積極的にリーチしていく方針だし、ああいう事もあるよ」


塞「ふぅん、なるほどね。それじゃあちょっと私と打ってみようか」

京太郎「俺も入ろう」

エイスリン「ワタシモ ヤル!」

ムロ「わかりました。そしたら場決めを……」



同時刻 霧島神鏡


初美「姫様はお休みですかー?」

明星「初美さん、どうしました?」

初美「インターハイの出場校を調べてたのが大分まとまったのですよ」

湧「それはお疲れさまです」

初美「いえいえ、私は出場できないのでこれくらいしか姫様の力になれませんからね」

巴「牌譜を集めたのは私だけどね……」

明星「それはお疲れさまです……」

小蒔「……んぅ……ん」

春「あ……姫様起きた」

小蒔「……おはようございます」

初美「おはようございます。これ見てください」

湧「えーと、これは……個人戦の選手のデータですか?」

初美「神様ローテは団体戦メインに調整するとはいえ、手強い相手じゃないと強い神様はおりてきませんから」

初美「ズレこむ可能性もありますし、何事も備えあれば憂いなしですよー!」

小蒔「わぁ、ありがとう初美ちゃん」

明星「それで、誰かマークするような選手は居ましたか?」


初美「そうですねぇ、去年姫様と対戦した清すm……じゃなかった、臨海女子の片岡優希」

小蒔「あの方ですね」

初美「プレイスタイルも対策も変わりませんが爆発力が上がってるので要注意ですね」

巴「もし清澄が今年も揃って団体戦にエントリーしていたらって思うと……」

春「強敵……」

初美「後は白糸台の3人とかですけど……あ、清澄といえば、今年の1年生も出場していますよ」

湧「私達と同じ1年生……」

明星「どんな人なんですか?」

初美「これはユニークな牌譜なのですよー」

明星「ふんふむ……これは」

湧「よくわからない打ち方してますね」


霞「最終的に完成する形が分かっているかのような打ち筋ね」


巴「霞さん、きてたんですか」

霞「ええ、そろそろお夕飯の時間だから呼びにきたの。それにしても……」


霞「最終形、それに相手の当たり牌も読みきって……いえ、むしろ予知ね」

小蒔「予知ですか?」

巴「でも、たまに振り込む事もあるみたいですね。その後は……」

初美「連続で放銃する事が多いです」

霞「予知に従わなかったペナルティと言う事かしら。これはまるで……」

小蒔「まるで?」

霞「小蒔ちゃんは『オシラサマ伝説』って、知っているかしら?」

小蒔「はい、東北地方で信仰されている異類婚姻譚の民話ですね」

霞「オシラサマは狩猟の際に、どちらの山に行けばいいかとか」

霞「地震や火事などの災いを知らせてくれたりしてくれるけど」

巴「でも、その知らせに叛くと祟られる……」

初美「東北に伝わるオシラサマ信仰……」

霞「そんな伝承を彷彿とさせるわね」


霞「それじゃ、研究も一段落したところでご飯にしましょう」

初美「わぁ、もうぺこぺこでした!」

小蒔「私もお腹ペコちゃんです」

今日はここまで

宮守組の元ネタに興味あるひとは聞いた事あるかもね。オシラサマ

こんばんわ

甘酒飲みつつまったり投下します

トシ「そろそろいい時間だし、休憩にしようか」

エイスリン「オナカ スイタ……」

豊音「空いたよぉ……」

塞「つっかれたー。ああ……私はお風呂入ろうかな」

まこ「わしも先に風呂行こうかの」

トシ「2階のレストランでバイキングやってるよ。このチケット持っていきな」

ムロ「わかりました」

胡桃「それじゃ行こうか」

塞「シロはどうする?」

京太郎「ふろはいろうかな……」

塞「そか、それじゃあ早く準備して……って」


京太郎「だるい」


塞「京太郎君だコレー!?」ガビーン

胡桃「出たな偽シロ!」

まこ「この言われよう」

豊音「うわぁホンモノだよー!」

ムロ「ニセモノですよ」

豊音「本物のそっくりさんだよー!」

塞「ややこしい!?」

豊音「こうして並べてみるとホント似てるね」

エイスリン「シロ フエタ!」

京太郎「わざわざならべないでくださいよ」

まこ「ククク、なんか笑いがこみあげてくるわ」

京太郎「ひどい」

豊音「写真撮るよー」

白望「えー」

胡桃「というか、この状態は大丈夫なの?」

ムロ「集中力が切れるといつもこうで。少し休めば元通りになりますよ」

塞「本物の方はこれからどうするの?」

白望「おフロかな……」


豊音「あ、そうだ。京太郎君にコレあげるね」

京太郎「なんですか?」

豊音「パーッパパーッパ パパパパー! はい、レッドブル~!」

京太郎「ありがとうございますあねたいさん」

胡桃「ドラえもんみたいに出したけど効果音がキテレツだよ」

京太郎「きんきんにひえてやがるっ……! ありがてぇ……!」

豊音「実は家にたくさんあってね、スペース取っちゃってて困ってるんだー」

ムロ「え、なんでそんなに?懸賞で当たったりですか?」

胡桃「逆だよ……」

ムロ「逆?」

塞「懸賞で、じゃなくて懸賞を、当てたいからなんだ」

豊音「えへへ、見て見てこれ」


『は ら む ら の ど か』


まこ「和のサイン入り千点棒!?」

ムロ「応募した人居たー!」

京太郎「やっぱりかんじはかきにくかったんだな」


ムロ「コレ当てるのにどんだけ買ったんですか」

塞「まだ段ボールで……」

胡桃「飲みすぎは駄目だからね」

エイスリン「イチニチ イッポン!」

ホテル レストラン


ムロ「お、まだ人少ない」

胡桃「そうだね、先に料理選んじゃおっか」

エイスリン「リョウリ イッパイ アル」

豊音「どれ食べようかな―?」

胡桃「これだけ種類あると迷っちゃうよね」

ムロ「え?」

胡桃「真っ先にカレーの方に向かったね」

豊音「お昼もカレー食べてたよ」

ムロ「ホテルのカレーってあんまり食べる機会ないのでつい。他の料理も食べたいので少なめですけど」


エイスリン「スシ……」

胡桃「エイちゃんお寿司?ここにあるよ」

エイスリン「チガウ……」

胡桃「え?」

エイスリン「コレ スシジャナイ……」

胡桃「いや、すっごいお寿司だけど」

エイスリン「ニュージーランドノ スシ マルイ」

豊音「巻き寿司なのが一般的なのかな?」

ムロ「コッチに海苔ありますから巻いてみますか?」


胡桃「ニュージーズシの具はなんなの?」

エイスリン「サーモン」

豊音「へぇー他には?」

エイスリン「Besides アボカド!」

豊音「ええ!?」

胡桃「アボカドかぁ。日本の寿司ネタじゃ超マイナーだよ」

エイスリン「アボカド ナイノ……?」

胡桃「え、えっと……」


豊音「エイスリンさんはアボカドと鮭のお寿司が大好物なんだ」

豊音「よりによってこのにぎり寿司が鮭だから……」


ムロ「ありましたよ!サラダの中にアボカドが!」

胡桃「ムロちゃんでかした!」

胡桃「ちょっと豊音、欲張りすぎじゃない?」

豊音「胡桃こそ、もっと食べないとおっきくなれないよー?」

胡桃「んだと!?」

ムロ「サーモンの間にアドカドを挟んで……」

エイスリン「コウカナ?」


豊音「ローストビーフは鉄板だよねー」

胡桃「パエリアとかも普段は手間かかって作れないよね」

ムロ「普段料理されるんですか?」

胡桃「一応当番制だけど、部活のスケジュールで帰宅時間が変わるからやれる人がやってる感じかな」

豊音「基本、私と胡桃と塞でローテーションしてるんだ」

ムロ「それシロさんは……」


エイスリン「シロノ リョウリ オイシカッタヨ」

ムロ「え?」

胡桃「エイちゃんが来た時に珍しくシロが料理するってなったんだけどね」

豊音「普段料理しないのに私達の中で一番上手だったんだー」

ムロ「それはそれは……」

胡桃「塞なんて美味しい美味しいって言いながらずっと複雑な表情で食べてたよ」

ムロ「あはは……」


豊音「ムロちゃんは料理するの?」

ムロ「いえ、私はあんまり。夜食に簡単なの作るくらいで」

豊音「でもお料理できる女の子ってモテるよー?」

ムロ「そうですか?」


豊音「京太郎君に作ってあげたらきっと喜ぶよー」

ムロ「な、なんで!?」

胡桃「あぁ、やっぱり」

ムロ「やっぱりって何!?」

エイスリン「マァ カツドンデモ タベテ」

ムロ「取り調べみたいになってる!?」

豊音「だって、目つきが違うよー」

ムロ「そ、そうですか?」

豊音「うん。なんだか優しい感じ」

胡桃「うんうん、お姉さんにはわかるんだから!」

エイスリン「ワカルワカル ワカルヨー」


豊音「京太郎君を見る時は上目遣いしちゃってるよね」

ムロ「いや、ソレは先輩が背が高いから見上げてるんです」

豊音「私も背が高いから、顔上げるのと上目遣いの違いはわかるってばー。ね、胡桃?」

胡桃「うん、私も背が低いから……って何言わせるの!」

エイスリン「ネングノ オサメドキ ダナ」

ムロ「エイスリンさん日本のテレビ大好きですね」

豊音「お昼もさ……」


京太郎(豊音)「少し並んだけどすぐに席空くみたいでよかったよー」

ムロ(エイスリン)「ソウデスネ センパイ」


ムロ(本人)「なんか始まった……」

マーマレード入りのカリフォルニア巻きとか食べた事あるけど美味しかったよ
寿司と呼べるかは知らんが

京太郎(豊音)「この席だよー」

ムロ(エイスリン)「ソウデスネ センパイ」

胡桃(実況)「ここで京太郎さりげなく椅子を引いてあげる」

京太郎(豊音)「どうぞーお姫様ー」

ムロ(エイスリン)「アリガトウデス センパイ」

胡桃(実況)「椅子に座るムロ、京太郎の方へ振り返り……」


ムロ(エイスリン)「ニコッ」


胡桃(実況)「決まったーっ上目遣いからの笑顔! これは高得点だ!」

豊音(解説)「この流れるようなコンボはGOE高いですよー」

ムロ(本人)「ぐっはああぁぁぁぁ……!?」


豊音「どうだった?」

ムロ「オーバーキルです……そんなつもりないのになー」

ホテル 大浴場フロア 休憩室


京太郎「ふぅ……いい湯だった。ちょっと寝落ちしかけたけど」

京太郎「長湯になっちゃったな。みんなもうバイキング行ってんのかな」

京太郎「お?」


白望「あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁ……」


京太郎「隣いいですか?」

白望「どうぞ……」

京太郎「長時間打ってると背中とかにキますよねぇ」

京太郎「へぇ、コレ腰のあたりが暖かくなるんだ。お、おぉ……」

白望「あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁ……」

京太郎「ところで他の人達は?」

白望「先にレストラン行くって」

京太郎「そうですか、じゃあ俺らも早く行かなきゃですね」

白望「うん。でも……」

京太郎「でも?」


白望「マッサージチェアが離してくれない」

京太郎「ははは……わかります」

京太郎「やっぱり皆さん強いですね」

白望「そう?」

京太郎「はい。それにとても勉強になります」

白望「ふぅん……」

京太郎「ムロもいい経験だと思いますし、やっぱりオカルト持ちの人は少ないですから」

白望「うん」

京太郎「これからの課題も見えましたし、もっと頑張ってかないと」

白望「……」


京太郎「あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁ……」

白望「京太郎はさ……」

京太郎「なんですかー?」

白望「なんでそんなに頑張ってるの……?」

京太郎「うーん?そうですねー」

京太郎「去年、俺は県予選の午前で敗退しちゃったんですよ」

京太郎「くらべて他の皆は全国出場。咲と和は個人でも」

京太郎「それで、なんか俺だけ取り残されたみたいで……」

白望「……」

京太郎「咲なんて中学時代からの付き合いですけど、ホント俺が居ないとダメダメで」

京太郎「そんなアイツがテレビとかで活躍してるの見てると、羨ましいような悔しいような複雑な感情が出てきちゃうんです」

京太郎「小さい男ですよね。ヒーロー願望っていうか、認めてほしい気持ちばっかり大きくなっちゃって……」


京太郎「ははっ何言ってんだろ俺、忘れちゃってください。こんなの部の皆にも言った事ねー」

白望「フッ……いいんじゃない?」

京太郎「へ?」

白望「ヒーロー、なれば?」

京太郎「わ、忘れてくださいよ!?」


白望「それじゃあ、行こうか」

京太郎「え、何処へ?」

白望「ごはん。食べないの?」

京太郎「ああ……行きます行きます!」

ホテル レストラン


京太郎「ちょっと混んでますね」

白望「あそこ」

京太郎「あ、先生達いた。あのテーブル入れますね」


トシ「やっと来たね」

京太郎「すみません、マッサージチェアが離してくれなくて」

塞「なんか中身もシロに寄ってきたね」

まこ「他の客も増えてきたけぇ、はよ食べんさい」

京太郎「はい、それじゃ取りに行きましょうかシロさん」

白望「人ごみダルいから持ってきて……」

京太郎「ええ……」

塞「いやそれくらい自分で行きなさいよ」

白望「頼むよヒーロー」

京太郎「わ、わかりましたから!」

まこ「ひーろ?」

京太郎「シロさん食べれないものとかありますか?アレルギーとか」

白望「ない」

京太郎「わかりました」


京太郎「お待たせしました」

・ピッツァマルゲリータ
・あさりの酒蒸し
・手羽先
・きのこのスープパイ
・キウイフルーツ

白望「ありがと……」

塞「微妙に食べにくいのばっかだ」

まこ「クク、無精するからじゃ」

トシ「ドリンクは?」

京太郎「はい」

・ローズヒップティー

白望「すっぱい……」

京太郎「では、いただきます」

京太郎「へぇ、部内で複数のチームですか」

塞「そ、白糸台がやってるような感じでね」

塞「豊音とシロは攻撃型。私と胡桃は守備型のチーム」

まこ「わしの場合はどっちかって言えば守備型になるんかのう」

塞「それで新入生ながらチームリーダー任されちゃってね」

京太郎「それは凄いですね!」

塞「ありがと。でもこれが色々大変なんだよね、チームには上級生も居るし」

京太郎「そうなんですか」

塞「熊倉先生にはまだまだ教えてもらう事がいっぱいだよ」

トシ「監督時代の経験が今の若い子にも通用するのかわからないけどね」

塞「いえいえ、勉強になります」

トシ「学生とプロじゃ意識が違うからね。実業団でもチームによって全然違うし」

トシ「やっぱりそこは塞自身が実際に考えて、それで試行錯誤していかないと」

京太郎「大変なんですね」

塞「京太郎君も、夏が終われば部長になるんでしょ?」

京太郎「あ……」

まこ「まぁ、今はわしに任しときゃええ」

京太郎「……はい、お願いします」


白望「ダル……手もベタベタ……」

塞「もうナイフとフォークを放棄しだしたね」

白望「京太郎が責任持って食べさせて」

京太郎「どんだけー」

白望「……ちょいタンマ」

塞「え?ここで?」


オオォォォォン...


白望「……やっぱ自分で食べるわ」

塞「普通にそうしなさいよ」


豊音「ソロソロ オフロ イコウカー!」

胡桃「スゴク ヒロインダッテ!」

エイスリン「ちょー楽しみだよー!」

ムロ「……そうですね、行きましょうか」

今日はここまで
甘酒も微妙に飲みにくいですよね。スプーン必須

>>539
ナニソレ。そんなのあるんですか……

こんばんわ
みんな寿司好きだね。自分はアジとか、サバとか、とんかつロールが好きです

京太郎の一人称「俺」ではなく「オレ」なのかしら……
今回から変えていきます

投下します

ホテル 宿泊部屋(和室) am6:30


『WHEN THE GREEN RIVER HAS FROZEN OVER~♪』

『I'LL CROSS THE RIVER AND FOLLOW YOUR FOOTMARKS~♪』

豊音「……んんぅ」

豊音「あさ……?」

『YOU'LL LOOK THROUGH MY EYES AND――』

豊音「ふわああ……あれ、こんな早くアラームセットしてたっけ……」

豊音「……んー?」


胡桃「うぅ、ふあぁぁ」

豊音「あ、起きた」

胡桃「おはよう豊音。もう起きてたんだ」

豊音「うん、おはよー。ところで今日なんかあったっけ?」

胡桃「え?これから朝練でしょ。それに12時にはチェックアウトするんだからね。荷物もまとめとかないと」

豊音「そーだっけ……」

胡桃「そうだよ。ホラ、豊音も他のみんな起こして。エイちゃんー起きろー!」


豊音「さえーおきてー。おしりはみ出てるよー」

胡桃「くっ重……シロ起きてるでしょ……! 布団離して!」

エイスリン「ウウーン……」

ホテル 休憩スペース am6:40


トシ「あら、早いね京太郎」

京太郎「おはようございます熊倉先生」

トシ「よく眠れたかい?」

京太郎「はい、もうぐっすり。枕が合ってたみたいで」

トシ「それはよかったわ」

京太郎「他の二人は?」

トシ「私が部屋から出てきた時は寝てたけど、もうそろそろ起きてくるんじゃないかね」

京太郎「それでここでテレビ見てるんですか」

トシ「ここの方が大きいし、それに部屋じゃ大きな音出せないしね」


トシ「ところで朝食どうしようか。売店が無いのは盲点だったよ」

京太郎「あれ?ありませんでしたっけ?」

トシ「カップ麺の自販機ならあるよ」

京太郎「朝からカップ麺はちょっと……周辺になんかないかな」


トシ「おや、ムロじゃないか。おはよう」

ムロ「……ぉはようぉざま。っふあぁ……」

京太郎「よっ、おはよう」

ムロ「ぉはざーす……」

京太郎「まだ半分寝てるみたいだな」

ムロ「……うん」


京太郎「おっ、駅にあるパン屋なら朝から開いてるみたいですよ」

トシ「パン、いいね」

京太郎「オレ買ってきましょうか?」

トシ「そう?じゃあ、悪いけど頼むわね。財布とってくるからちょっと待ってて」

ムロ「んー?せんぱいどっか行くんですか?」

京太郎「皆の朝食を買いにな。駅の方に早い時間からオープンするパン屋があるみたいなんだ」

ムロ「あーそーなんですか」

京太郎「開店までもう少し時間あるし、テレビでも見てるか」


京太郎「こういう公共の場で見るテレビのチャンネルって、なんとなく変えにくいよな。ラーメン屋とかさ」

ムロ「リモコン置いてる席が勝ち組ですよね」

京太郎「微妙にテンポ悪いローカル局の旅番組とか」

ムロ「盛り上がりに欠けるバラエティとか」

京太郎「わざわざリモコン取りに行くほどでもないんだけど……もにょる」

ムロ「通販番組は変えてもいいと思います。むしろ変えるべき」

京太郎「だな。まさかこんなところで電話する人も居ないだろうし」

ムロ「居たら大変ですよね、個人情報ダダ漏れですよ」

京太郎「ははっ確かに。そりゃ大変だ」


京太郎「ムロの誕生日っていつだっけ?」

ムロ「11月14日です」

京太郎「って事は……」

ムロ「さそり座ですよ。先輩は2月2日ですよね?」

京太郎「そうそう、みずがめ座。ロマンチストなんだ」

ムロ「私、小さい頃みずがめ座の事を生き物の方の亀だと思ってました」

京太郎「うわーベタだな……俺もだけど」

ムロ「なかなか身近にカメってないですよね」

京太郎「黒酢とか焼酎入れてるのしかわかんない」

ムロ「なんとなく九州寄りのイメージですね……あ、占いのコーナー始まりますよ」

京太郎「朝から最悪とか言われたら結構感じ悪いよなぁ」


ムロ「さそり座2位。なかなかです」

京太郎「水瓶座は8位かよ。まぁギリセーフだ」


京太郎「相手の気持ちを察するようにしましょう、か」

ムロ「身近な人と居ると幸福を感じられるでしょう……」

トシ「お待たせ。はい、それじゃ領収書お願いね」

京太郎「お任せあれ。少し早いけど、ついでに散歩でもしてますよ」

ムロ「あ、私も行きます。荷物持ち要りますよね?」

京太郎「いいのか?そりゃ助かる。9人分はちょっと多いし」

ムロ「ね?一緒に行きましょう」

京太郎「そうだな、頼むわ。それじゃあ行ってきます」

トシ「いってらっしゃい、車に気を付けてね」



大通り am7:10


京太郎「知らない土地を歩くのって、ちょっとわくわくしない?」

ムロ「なんか新鮮ですよね」

京太郎「朝早いとなおさら。新しい風景の中に居ると日常のループから少し抜け出せたような気がする」

京太郎「それがなんか楽しいんだ。冒険心ってやつかな」

ムロ「男の子ですねー」

京太郎「なんだよ、そんなもんだよ」


ムロ「……東京行ったら少し遠出してみませんか?」

京太郎「それいいな。どこか行きたい場所ある?」

ムロ「うーん、急に言われるとすぐには思いつきませんね……別に、一緒ならどこでも……」

京太郎「ん?」

ムロ「い、いえなんでも……今度調べてみます」

京太郎「あんまり宿泊場所から遠いところは駄目だぞ」

ムロ「わかってますって」

ムロ「流石に休日この時間はあんまり人居ませんね」

京太郎「ああ、それにまだ気温も上がりきってないから過ごしやすいし。オレこの空気好きだなぁ」

ムロ「そうですねー。あ、アレかな?あの店ですかね」

京太郎「そうかも。さて、今のうちに出来立てをいただくとするか」



駅構内 パン屋 am7:35


ムロ「意外と人いっぱいでしたね」

京太郎「開店直後だってのにな。へぇ、店内にカフェのスペースがあるのか」

ムロ「そうですね。それで何買っていけばいいんでしょう」

京太郎「結構メニューがあって悩むなぁ……」

ムロ「焼き立てですからどれも凄く美味しそうです」

京太郎「うーん……定番のクリームパンとかクロワッサンとか」

京太郎「お、ウィンナーロールもいいな」

ムロ「サンドウィッチだと分けたりできて良いかもですね」

京太郎「それいいな。じゃあサンドを何個か買ってさ……」



ホテル 宿泊部屋(和室) am8:00


京太郎「おはようございまーす」

トシ「みんな起きてるかい?」

胡桃「おはようございます」

塞「はい。準備もオッケーです」

白望「ダ……ルぅ……」

まこ「約一名、屍と化しとるがの」

エイスリン「シロ ゾンビー」

ムロ「パン買ってきたので食べてください」

豊音「ありがとー。わぁ、パン屋さんのパンだー」

胡桃「いい匂いするね」

塞「こんな時間によく開いてたね」

京太郎「駅ナカの店なら早くに開いてると思って調べたんですよ」

塞「駅まで行ってくれたんだ。ありがとう」

京太郎「どういたしまして。いい散歩の時間になりましたし」


エイスリン「パン タベロ!」

白望「んぐんぐ……」


京太郎「これお釣りと領収書です」

トシ「確かに。わざわざすまないね、ムロもありがとね」

京太郎「いえ、これくらいどうって事ないですよ」

ムロ「私は勝手について行っただけですし」

まこ「はよ食わんとなくなるぞ」

ムロ「はーい」


京太郎「どれ食べよっかなー」

ムロ「クロワッサンもらい!」

京太郎「あっ!? ちょっと迷ってたのに!」

まこ「落ち着きんさい。二人で分けりゃええじゃろ」

ムロ「ではこのクロワッサン半分と、そのクリームパン半分とでトレードですね」

京太郎「それは……なんかズルくないか? 密度的に……」

塞「ポットのお湯沸いたよー。紅茶はここね」

ムロ「はーい、先輩も飲みますよね?」

京太郎「んぐ……頼む。砂糖とかは要らないから」

ムロ「分かりました。染谷部長は?」

まこ「わしは砂糖一つで頼むわ」

トシ「私は白湯でいいよ」


京太郎「そろそろ始めますか」

胡桃「食べ終わった人から入って。ホラ、お茶は持ってってもいいから」

塞「ではではお願いします」

ムロ「お願いします……って、なんかやりにくいなこのメンツ」

胡桃「これはトップ貰っちゃうかもね!」

塞「言ってな。サイコロ振るよー」

京太郎「オレが親ですね、ではでは……」



南四局:オーラス 15巡目
親:鹿倉胡桃


ムロ「リーチ」

塞(来たな)

ムロ「ツモ!」

胡桃「塞がないんだ?」

塞「ツモ牌が分かるのとツモを引き寄せるのとは違うからね」

塞「リーチしてから塞いでも、きっとツモってたよ」

豊音「そうなの?」

ムロ「多分そうだと思います。山に影響を与えるわけではないので」

胡桃「京太郎君もゾーンに入らないし」

京太郎「今回はデジタルに徹しようかと」

塞「そういう時の打ち方は原村和そっくりだよねーホント」

京太郎「オレの麻雀の基礎は和が作ってくれたんで、どうしても似ちゃいますよね」

京太郎「流石にあのレベルに到達するには経験値全然足りてないですけど」

ムロ「ネト麻だと和先輩は防御重視なんですけどね」

塞「あ、そうなんだ」

京太郎「リアルだと少し攻撃的になるんですよ」

京太郎「オレはそっちの打ち方の方が理想的なんでそうしてるんです」

豊音「ゾーンに入るとまた打ち方変わるよね」

京太郎「そうですね。入ってる時は他家の捨て牌をよく見たり」

京太郎「相手の視点移動とか理牌のクセを見抜いて状況を読んで打ってます」



ホテル ロビー


トシ「皆、忘れ物ないかい?」

京太郎「おっけーです」

豊音「だいじょーぶです!」

白望「塞がまとめてくれたから大丈夫……なハズ……」

塞「なにか忘れ物があっても苦情は受け付けませんのでご了承下さい」

駅前


トシ「皆、昨日今日と本当にありがとうね」

豊音「いえいえ。久しぶりに熊倉先生にも会えたし、私もちょー楽しかったです」

エイスリン「タノシカッタ!」

塞「うん、私もまた色んな事教えてもらってありがとうございました」

白望「お世話になりました……」

胡桃「二人ともインターハイ頑張ってね!」

京太郎「一生懸命頑張ります!」

ムロ「応援よろしくお願いします!」


エイスリン「ニュージーランドカラ オウエン シテルヨ!」

京太郎「おお、ありがとうございます!」

ムロ「ニュージーランドでも中継してるんですか?」

まこ「海外でインハイ放送しとるんは国営放送くらいじゃけぇ、個人だと決勝行かんと映らんかもな」

京太郎「へぇ、映ったらいいですね」

白望「そんな他人事みたいに……」

京太郎「いやぁ、絶対に決勝行きますなんて言えませんよ……でも」


京太郎「オレ自身はできるだけ頑張るつもりです」

大阪 カラオケ店


セーラ「洋榎、電話来とるで」

洋榎「えぇ、今からうちの番やのに。誰から?」

セーラ「えーと……お、監督やって」

洋榎「ほんならセーラ代わりに出といてくれへん?」

セーラ「はぁ?しゃーないな。ま、ええけど」

洋榎「すまんな。あ、恥ずいからはよドア閉めや。ゴホン……きーみーがー♪」


セーラ「もしもし?」

雅枝『もしもし……あっれー洋榎ちゃうのん?』

セーラ「あ、セーラです。お久しぶりです」

雅枝『セーラ?なんやめっちゃ久しぶりやん!アンタ洋榎とホンマ仲ええなぁ』

セーラ「いやまぁ、たまに遊ぶくらいですけどね」

雅枝『ふぅん……ほんならあの子、来週末はスケジュール空いとるはずやけどアンタは?』

セーラ「一応予定なんも入ってないですね……洋榎となんかしてると思いますけど」

雅枝『アンタらホンマ仲ええな。なら話早いわ、あんな……』

竜華「おかえりー」

洋榎「何の話やったん?」

セーラ「来週末な、予定無いんやったら付き合えっちゅー話や。ホレ返すわ」

洋榎「なんや監督から誘ってくるなんて珍しいな……って、監督ってオカンかい!?」

セーラ「せやで。俺らからしたら監督は監督や」

竜華「そやね。でもセーラはもうプロやし、紛らわしいから直せ言われてたやん」

セーラ「千里山時代からやし、すぐに直されへんわ」


怜「監督から呼ばれるって事は千里山か姫松行くん?」

セーラ「いや、清澄」

洋榎「清澄ぃ!?なんでやねん!」

セーラ「なんでも、今年の清澄の顧問の人が昔お世話になってた人だとか」

洋榎「清澄って長野やろ……どんだけやねんな」

セーラ「いや、あっちが来るらしいで」

竜華「でも、確か今年清澄出てへんよね」

洋榎「団体ではやろ?ちゅー事は個人か」

怜「あの1年生トリオもおらへんくなったし、他に誰か残ってたっけ?」

洋榎「去年、由子とやってた次鋒が2年やったから今年3年か」

洋榎「厄介な打ち方しとったけど、県代表になれるとは思えへんぁ」

竜華「って事は、新入生なんかな?」

怜「もしくは生死の境を彷徨って新しい能力を身に付けたとか」

竜華「それシャレにならんからやめっ」

洋榎「また着信……って浩子からかい」

セーラ「ああ、清澄のやつの牌譜送る言うてたわ」

洋榎「ふーん。どれ、見してもらおやないか~?」


セーラ「……」

洋榎「……」

竜華「……」

怜「……」

洋榎「これはこれは……」

怜「えっマジで?」

竜華「怜が変な事言うからやで」

怜「ウチのせいなん?」

セーラ「病弱なんは長野にもおったんか」

怜「そらおるよ」

怜「なぁなぁ、これウチらも行ってええんかな」

竜華「え、怜行く気なん?」

怜「ちょっとな、興味湧いてきたわ」

洋榎「ならオカンに言っとくけど、自動的に竜華も来るやんな?」

竜華「しゃーないなー。怜が行くならうちも行くわ」

怜「さすが竜華、話がわかるわ。ほんなら……」


怜「誰が最強の未来予知雀士か、白黒ハッキリさせたらなアカンな!」


怜「ってなわけで来週まで膝枕マシマシで頼むわー」

竜華「ええ、なんで!?」

怜「怜ちゃんも最強決定戦参加やで~」

竜華「いつの間にエントリーしたん!?」

怜「ああ~やっぱ竜華のひざまくらは気持ちええわぁ」スリスリ

竜華「はぁ。もう、しゃーないなー怜は」ナデナデ


洋榎「アンタら……ホンマ仲ええな……」
セーラ「お前ら……ホンマ仲ええな……」

今日はここまで
M(未来予知)ー1グランプリが開催されるようです

こんばんわ

ダヴァンがおもしろ外人坂を駆け上がってるのに対してガイトさんはずっとカッコイイですね
回想でガイトさんが烏龍茶飲むのに使ってた茶碗、似たようなカップを持ってるので最近はそれを使ってます
影響されやすいのです

ただ、ハンドルが無いと持ちにくいのと、お茶が冷めやすいのが難点
夏に淹れたてのホット飲むのには最適かもしれません

投下します。今回から大阪編です

ムロ「ここですか? 普通の喫茶店みたいですけど」

まこ「ウチみたいなもんじゃろ、ホレ看板見てみぃ」

京太郎「Mahjong Cafe&Bar……ってバーなんですか?」

トシ「昼は喫茶店だけど、夜になるとアルコールも出すんだよ」


京太郎「外観からして大人な雰囲気ありますね」

ムロ「ここだけ外国みたいです」

トシ「大阪に来る時によく立ち寄るんだよ」

トシ「京太郎も大人になったら行きつけの店くらい作りなさいね」

京太郎「それはちょっと憧れます」

まこ「roof-topとかどうじゃ?」

ムロ「行きつけがメイド喫茶かぁ……」

まこ「別にいっつもメイド服なわけじゃなぁがの」



大阪 マージャン・カフェ・アンド・バー『Strom und Drang』


京太郎「おぅ、内装もなんとオシャレな」

ムロ「素敵ですね」

まこ「ウチとはベクトルが正反対じゃのう」

トシ「もう来てるはずだけど……」


雅枝「こっちです、ご無沙汰してます熊倉さん」

絹恵「こんにちはー」

トシ「こちらこそお久しぶり。あら、娘さん昔のお母さんに似てきたねぇ」

絹恵「よく言われます」

雅枝「ほんでこの子らが清澄の。ああ、この子は知ってますわ。アンタ去年次鋒しとったやろ?」

まこ「どうも、3年の染谷まこです。知っとったようで恐縮ですわ」

雅枝「去年の決勝戦に出といてよう言うわ」


ムロ「えと、1年の室橋裕子です」

雅枝「ほっほう、アンタ1年で県代表なんて大したもんやなぁ」

ムロ「ありがとうございます」

絹恵「ホンマやね、長野も結構な激戦区やのに」

京太郎「2年の須賀京太郎です。今日はよろしくお願いします」

雅枝「お、エエ男やん。背も高いしシュッとして、アンタめっちゃモテるやろ?」

京太郎「いえ、そんな……」

絹恵「ちょとお母ちゃん、いきなり何言うてんの」


絹恵「すんません。あ、うちは姫松高校3年の愛宕絹恵です」

雅枝「愛宕雅枝です、千里山女子の監督やってます」

ムロ「千里山って北大阪の」

雅枝「せや。夏はちょっち不覚取ったけど、春の大会で汚名返上できて一安心や」

絹恵「お姉ちゃん達は遅れるみたいなんですよ、先にお昼頼みましょ?」

トシ「そうだね。ここは軽食も美味しいんだよ」

京太郎「ちょー期待」


まこ「わしは定番のナポリタンにするかの」

トシ「私はラザニアで。二人は決まった?」

ムロ「むむむ……」

京太郎「なにがむむむだ。お悩みですか?」

ムロ「このアイスバインカレーかソーセージカレーかでちょっと……どうしようかなぁ」

京太郎「どっちにしろカレーかよ。それでアイスバインってなんだ?」

ムロ「ドイツの料理で、豚のすね肉の塩漬けを煮込んだものだそうです」

京太郎「へぇ美味しそうじゃん。それにしたら?」

ムロ「でも、このソーセージカレーも本場ドイツのソーセージが3種類入ってて美味しそうなんですよ」

トシ「ここのソーセージは日本のより大きくて食べごたえあってね、ビールによく合うんだよ」

ムロ「ほら!」

京太郎「なにがほらだ」

京太郎「じゃあ、お前はアイスバインカレー頼め」

京太郎「オレはソーセージプレート頼むから」

ムロ「いいんですか?」

京太郎「オレも本場のソーセージは興味あるしな。そのかわり」

ムロ「わかってますよー」



店主「お待たせいたしました」

トシ「マスターも久しぶり。変わらないわねぇ」

店主「せやね」

雅枝「私とも久しぶりやんな」

店主「せやな」

雅枝「それでええんか接客業」


絹恵「きたきたー」

ムロ「うわぁ、すごいボリュームですね」

絹恵「せやろ? ここのフレンチトーストめっちゃボリューミーでお気に入りなんよ!」

まこ「これ食パンの厚さ5~6センチはあるぞ?」

京太郎「しかも上にバニラアイス乗ってるし、チョコソースにハチミツもたっぷりですね」

雅枝「絹おまえ、またこんなカロリー高いの頼んでおまえ」

絹恵「ちゃんと運動しとるからええんやもーん」

京太郎「おお、ラザニアからチーズの香ばしい匂いが……」

まこ「わしもナポリタンに粉チーズかけざるをえない」

トシ「セットの生ハムサラダもうれしいね」

ムロ「カレーのセットだとトマト多めになってるんですね」

京太郎「細かいなぁ」

雅枝「ちょ、なんで私のオムライスに国旗ささっとんねん!?」

絹恵「ぷぷぷ、マスターわかっとるね」

店主「せやろ」


ムロ「やっと会えたな、アイスバイン……!」

京太郎「RPGの主人公みたいに言ったな」

ムロ「カレーの上にほぐされた肉の山が乗っかってますね。これがアイスバインですか」

京太郎「肉に白いのが付いてるな、皮?」

ムロ「早速食べてみましょう」

京太郎「どうだ?」

ムロ「すねの肉は少し固いかと思ってたんですけど、ホロホロしてて柔らかいです」

ムロ「それに皮のところのゼラチンの食感がクニュクニュしててクセになりそう」


京太郎「ヘイヘーイ」

ムロ「そのパンに乗せればいいんですね?」

京太郎「どうぞどうぞ」

ムロ「茶色いですね」

京太郎「ライ麦パンだな。独特な風味」

京太郎「ちょっと食べ慣れない味だけど、肉と一緒に食べるとイケるな」

ムロ「ヘイヘーイ」

京太郎「ルーにダイブしていいのか?」

ムロ「どうぞどうぞ」


ムロ「ハーブが効いてるのとかスパイシーなのとか色々あるんですね」

京太郎「それはミュンヘナーとシンケンクラカワっていうらしいぞ」

ムロ「これはビールに合いますね。飲めないけど」

京太郎「あと5年待つんだな」


まこ「千里山は春の大会でも健闘しとりましたね」

雅枝「なんだかんだ言うても名門やで。層が違うわ」

絹恵「そうやね」

雅枝「ツッコまんぞー。そんで今年は全国1位獲ったる! ……って言いたいとこやけど」

まこ「やけど?」

雅枝「トップレベルのプレイヤーが1校に集中すんのはなぁ……あんまおもんないわ」

まこ「千里山の監督がそれ言いますか」

京太郎「それって……」

雅枝「アンタんとこの宮永咲や。やっと白糸台から宮永おらんくなったと思ったら今度は妹て!」

雅枝「しかもチャンピオンて!」

京太郎「ははは……」

絹恵「入れ換わりやもんね……」


雅枝「あと臨海にも行ったやろ? あの先鋒の子」

ムロ「優希先輩ですか」

雅枝「なんなん? 人材派遣なん? 清澄は人材派遣会社なんか!?」

まこ「ははは……」

トシ「人生なにがあるかわからないからねぇ」

雅枝「オーダー見た時はビックリしたわ。ホンマに」


雅枝「でもいきなり同級生3人も居なくなって淋しいやろ?」

京太郎「ええまあ、急な話でしたしね」

雅枝「せやんなぁ、新しい部員もこの子だけで……大事にせなアカンよ。アメちゃん食べる?」

絹恵「もう、お母ちゃんっ」

絹恵「大阪のオバちゃん丸出しやんか」

雅枝「そんなん言われてもここ大阪やし、私おばちゃんやし」

絹恵「もう……大阪言うても、こんなコテコテの人ばっかちゃうんですよ?」

京太郎「はは、わかってます」


ガチャ


洋榎「邪魔すんでー」

雅枝「邪魔すんやったら帰ってー」

洋榎「はいよー……ってなんでやねん!」


絹恵「……ちゃうんですよ?」

京太郎「……わかってます」

トシ「来たみたいだね」


絹恵「ちょっとお姉ちゃんタイミング悪すぎるわぁ~!」

洋榎「なんか分からんケドすまんな、泉の準備に手間取ってん」

泉「ええ? 私のせいですか!?」

泉「そんなん朝いきなり出かける言われても準備してませんよ」

セーラ「何をそんな時間かけとんねんって話や。袖も無いし」

泉「ノースリーブは関係ないです!」


竜華「監督お久しぶりです」

雅枝「もう監督ちゃうって。怜も元気しとるか?」

怜「いたって健康です。枕が合ってるみたいで」

雅枝「それはよかったわ。そんじゃ紹介するわ、清澄高校の皆さんや」

まこ「3年の染谷まこです」

竜華「去年は次鋒しとったね」

洋榎「ゆーこが世話なったな」

まこ「いやいや、準決ではやられとったけぇ」

京太郎「2年の須賀京太郎です。よろしくお願いします」

セーラ「おっ、思てたより男やなぁ!」

京太郎「そりゃ男ですよ!? まぁ、顔はちょっと女っぽいですけど」

ムロ「1年の室橋裕子です」

浩子「3年の船久保浩子です。うちもヒロコって言うんですよ」

ムロ「そうなんですか。じゃあ私の事はムロって呼んで下さい」

浩子「ほんならうちもフナQって呼んでもらってええですよ」


ムロ(船久保だからフナQなのか)
浩子(室橋やからムロなんやな)

怜「ムロちゃんやったな」

ムロ「はい。園城寺怜さんですよね」

怜「せや。誰が呼んだか知らんけど、1巡先を見る者とは……」


怜「ウチのことやで!」


ムロ「それって本当に……?」

怜「フナQに牌譜見せてもらったんやけど」

竜華「それが怜の牌譜に似てるって話になってな」

怜「これはどっちの予知能力が強いか決めなアカンと思ったんよ」

ムロ「……1巡先かぁ」

まこ「なんじゃ興味あるんか?」

ムロ「そうですね。私もある意味では未来を予知できるんで。それに……」


ムロ「あの千里山のエース相手にどこまでやれるのか、少し楽しみです」

今日はここまで

前回、カラオケで洋榎が歌ってたのは君が代です
普段は何歌うんでしょうね?もしかしてデスメタル……?

こんばんわ

花か……
ちなみに今は花芽形成段階に入ったくらいですかね、このSSの進行状況

カカオ99%やばい……72で止めとけばよかった
食べられる土とはよく言ったものですね
ホットチョコレートの具にしてやる

ダラっと投下します

対局開始

東家:室橋裕子
南家:須賀京太郎
西家:園城寺怜
北家:清水谷竜華

東一局
親:室橋裕子


京太郎(いつも通り平常心で)

ムロ「私が親ですね」

怜(まずは様子見やな)

竜華(……とか考えとるんやろ?)

一二二①②③④⑨266南西

竜華(悪いけど、スタートダッシュさせてもらうで!)

スリスリ

京太郎(ふともも?)

竜華(怜ちゃん出番や!)

ポワポワーン

枕神(はいよ~)


[二]―[南]―[(⑤)]―[6]―[②]


枕神(見えた?ほなな~)

竜華(おおきに~)


6巡目

京太郎「……」タンッ

打:②

竜華「それロンや。三暗刻・赤1で6400」
二二二②③④(⑤)666南南南:②

京太郎「はい」

ムロ「親がぁ」

室橋裕子  25000
須賀京太郎 18600
園城寺怜  25000
清水谷竜華 31400


怜「いきなりなん?」

竜華「出鼻くじき怜ちゃんやで」

怜「ちょっと、してやられた感じやわ……」

ムロ(ときちゃん?)

東二局
親:須賀京太郎


竜華「……」

スリスリ

京太郎(まただ……クセなのか? それとも何か仕掛けてきてる?)

怜(怜ちゃんの残り使用回数は、あと1回か2回くらいか)

怜(そんなすぐ使うとは思わんけどな)

怜(……なんて思ってると思って使うてきたりして)


6巡目

ムロ「ツモ! リーチ・一発・ツモ、1000・2000です」

怜「鳴かれへんかったかー」

京太郎「はえーし」

怜(でも、これでわかった事もあるわけやん)

東三局
親:園城寺怜


怜「ロン。7700」

京太郎「はい……なんかヤバげ?」

ムロ「ちょっと先輩、大丈夫ですか? 振り込むなら私にして下さい」

京太郎「ぬかしおる。一人沈みかぁ……」

怜「すまんね、見えちゃってどうも」

室橋裕子  29000
須賀京太郎  8900
園城寺怜  31700
清水谷竜華 30400


東三局 1本場
親:園城寺怜


絹恵「京太郎君、ちょっと危ないんちゃうか?」

泉「あれもうトビますよ?」

トシ「シラフの状態だと、まだこの3人は厳しいみたいだね」

まこ「うーん、そろそろなんじゃがの」

セーラ「なにが?」

浩子「そういえば須賀君は中盤以降、打ち方が変わりますね」

洋榎「おっ?」


京太郎「……」

キィィィ

8巡目

怜(テンパイ……)
一二三①②③⑤⑧789西西:⑦

怜(さて、リーチしとこか?)

ギュギュギュ

怜(遅かったか……この巡でムロちゃんが満貫ツモ)

怜(でも竜華が西出してくれるから、それでズラしとこか)

怜「ポン」

ムロ(やっぱり、リーチかけてなくてもバレてる?)

打:⑤

   「ロン」

怜「え」

京太郎「3900の1本場は4200です」

竜華「えっ怜?」

京太郎「……なんとか一矢報いたぜ」

怜「ああ、そっちの未来は見えへんかったわ」


絹恵「振り込んだで」

洋榎「せやなー」

セーラ「途中から待ちを寄せとる。京太郎も怜みたいな事すんなぁ」

泉「いや、これは……」

セーラ「なに? ああ、なるほどな」

浩子「よう気づいたな泉、被害者は警報ならすってやつか」

泉「ええまぁ……あはは」

東四局
親:清水谷竜華


竜華(須賀君って……なら、うちも負けてられへんな)

キィィィ

竜華(下家がテンパイ気配……早いうちに鳴くとかせんとな)

京太郎(ムロは、張った感じ?)

怜(この巡にツモるんかい)

ムロ(なんだろう、すごくやりにくい……)


怜「ポン」

ムロ(このツモ筋でも和了形が見える……! 張り替え間に合うかな)


ムロ「ノーテン」

京太郎「テンパイ」

怜「ノーテン」

竜華「テンパイ」

室橋裕子  27500
須賀京太郎 14600
園城寺怜  26000
清水谷竜華 31900


ムロ(次に辿り着く前にまたズラされるか……)

セーラ「みんな守備固なってきたなぁ」

絹恵「あれでようテンパイまで持っていけますね」

浩子「相手のダマテン止めるとかもちょっとオカシイけどな」

東四局 1本場
親:清水谷竜華


ムロ「テンパイ」
怜「テンパイ」
竜華「テンパイ」

京太郎「ノーテン」


怜(素で早いし打点も高いしで厄介やわ)

ムロ(リーチするの躊躇っちゃうな……)

怜(でも、逆にそれが潰し甲斐あんねんな)


雅枝「ムロは他家の状況には対応できてへんみたいやな」

浩子「危険牌は絶対に出さんみたいですけどね」

まこ「ムロが構築に手間取るとはのぅ」

トシ「そうだね」

南一局 流れ2本場
親:室橋裕子


竜華(そろそろキリ無いし、いっとこか)スリスリ

竜華(怜ちゃん頼むで!)

枕神(……)

フリフリ

竜華(えぇ、ハズレなん?)

枕神(ほなな~)

竜華(じゃあ、ここは守備に徹する……!)

ギュギュギュ

怜「リーチ」

ドッ

竜華(これは止められんのやね)

ムロ(あ、捲られる)


怜「ツモ。2本場やし3200・6200やな」

ムロ「親っ被りキツ」

室橋裕子  21300
須賀京太郎  8400
園城寺怜  40600
清水谷竜華 29700



ムロ(火力は同等、テンパイ速度は勝ってる。なのに)

ムロ(当たり牌を止められて確実に和了を潰される。ダマでもお構いなし)

ムロ(どうしたら……?)



対局終了

1位 怜「ウチに勝つには100巡早かったみたいな!」
2位 竜華「楽しかったで!」
3位 ムロ「対策の仕方がわからないよー」
4位 京太郎「1回しか和了れなかった……」

ムロ「ありがとうございました……はぁ」

京太郎「お疲れ様でした。強ぇわ、やっぱ」

怜「あんたらもなかなかやったで」

竜華「そやねー、って言うか須賀君よ!」

京太郎「はい? あっ」

ガッ

竜華「わわ」

絹恵「カップが……!」

京太郎「っ……!」

パシ

京太郎「ふぅ」

セーラ「おお~」

洋榎「スゴイなぁ。空中でキャッチしよったで」

泉「しかも中に入ったコーヒーこぼしてませんよ」


怜「もう、何しとんねん竜華」

竜華「ゴメンなぁ……ちょっとテンション上がりすぎたわ……」

京太郎「いえ、大丈夫ですから気にしないで下さい」

雅枝「流石やな。ちゅーか、まだゾーン入っとんのか」

泉「ええ!?」

セーラ「なるほどな。なんか竜華に似とると思たらそういう事か」

竜華「せや! それや!」

怜「だから、落ち着きって」

竜華「誠に申し訳ない」


京太郎「ふはぁ……」

まこ「落ち着いたようじゃの」

浩子「途中から須賀君は防御率上昇や出和了が多くなりますね」

ムロ「先輩のデータまで調べてるんですか」

浩子「なかなか興味深かったわ」

洋榎「ちゃんと相手の動き見とるみたいで良かったでー」

京太郎「ありがとうございます。それでも3人について行くのがやっとでしたけどね」

竜華「いやでもビックリしたわホンマ……って、ずっとその状態でいて大丈夫やったん!?」

京太郎「まあ慣れてますから」


竜華「慣れてるって言ってもメッチャ疲れるでしょソレ!」

京太郎「そうですね、2時間くらいでもうヘトヘトです」

竜華「2時間て……うちなんて2~3局でもうお疲れさんやわ」

怜「凄いなぁ、ウチにもその体力分けてほしいわ」

まこ「京太郎はハンドボールしとったからな」

絹恵「なんやて!?」

竜華「どしたん絹ちゃん」

絹恵「もしかしたら私にもできるかもしれへん……!」

洋榎「絹はサッカーやっとったしな」


絹恵「運動神経は自信あるで。そんで、なんかゾーンに入るコツとかあるん?」

泉「あ、それ私も聞きたいです」

京太郎「うーん、コツって言ってもな……特別な事はしてないんですけど」

浩子「普段やってる事とかはある?」

京太郎「そうですねぇ。部室に行って、お茶淹れて……」



京太郎「……こんな感じで部活動してますね」

絹恵「ほんとに特別な事は無いみたいやね」

泉「むしろ千里山に比べると大分ゆるい感じですけど」

浩子「言われてますよ、おばちゃん」

雅枝「ウチにはウチのやり方があるんや」

雅枝「それより、私としては須賀が今年になって急に伸びた原因が知りたいんやけど」

浩子「須賀君は去年は県予選敗退。しかも午前中に敗退決定してはります」

京太郎「うぇ、そんな事まで!?」

怜「なんや、生死の境を彷徨ったんは京太郎の方なんか」

京太郎「へ?」

竜華「ううん、なんでもないでー」

セーラ「それで今年県代表か」

トシ「きっと、前の先生が優秀だったんだろうねぇ」

絹恵「前の先生って?」

まこ「和じゃな」


泉「原村和ぁ!?」

ムロ「私の先生でもあります」

セーラ「ほーん、言っちゃ悪いけど意外」

竜華「そう? なんか『教科書○○ページ開いてください』とか言いそうやん」

怜「みなさんが静かになるまで5分かかりましたーとかな」

泉「それ朝の集会の校長先生ですやん……」

洋榎「あと、間違うたら夕食のからあげ1個抜くからなーとか言いそうやわ」

絹恵「それ家でのお母ちゃんとお姉ちゃんやん……」

京太郎「それが教えるの上手なんですよ、あいつ」

京太郎「昔、奈良に居た頃に年下の子供に麻雀教えてた事があるって言ってました」

浩子「その時は自分も子供やったろうに」

絹恵「原村さんの授業ってどんな感じなん?」

京太郎「具体的には……」



雅枝「……成程な。フロー体験ってやつか」

竜華「フロー体験?」

雅枝「簡単に言うと、明確な目標作ってな、それに向けてめっちゃ集中して学習する事や」

雅枝「例えば、その時の須賀のレベルに合った難易度に合わせて段階的に問題出したりな」

怜「ふむふむ」

雅枝「それがちゃんと次に繋がるようにしてるし、移行する時の理解レベルも高い」

雅枝「ステップアップする際も、ちゃんとどこに重点を置くとかも示してる」

セーラ「ほうほう」

雅枝「問題集のテキストも学習した内容を目に見える形で確認できるのもいいかもな」

雅枝「そうやって上手い事いくとめっちゃ集中した状態で学習できんねん」

絹恵「ふわぁー原村さんて凄いねんな……」

雅枝「まぁ、そこに須賀の持ち前の集中力があったおかげもあるんやろうけど」

洋榎「相乗効果ってやつやな」


トシ「私達みたいな大人が本読んで勉強する事を経験で理解してるのは凄いわよねぇ」

雅枝「それで将来教育者ならんかったらもったいないですわ」

竜華「それじゃあ、もっかいうちと打ってくれへん?」

竜華「今度は怜ちゃんナシでな!」

ムロ「その、さっきから気になってたんですけど怜ちゃんって?」

怜「ああ、それはな……」


竜華「怜ちゃんはな、怜とうちの絆の結晶の塊なんや!」

洋榎「結晶の塊て」

竜華「ここにな、怜ちゃんパワーがチャージされとるんよ」ペチペチ

京太郎「ふともも触ってたのはそういう事だったんですか」

ムロ「……対局中に何見てるんですか」

京太郎「と、対面だから目に入るんだよ……」

まこ「よくわからんがストレッチパワーみたいなもんか」

京太郎「それで怜ちゃんは何してくれるんです?」


怜「ま、要するに竜華もウチの能力が使えるんよ。限定的にやけどな」

京太郎「それって、未来予知を!?」

まこ「そりゃすごいわ」

ムロ「自分以外の人も使えるんですか!?」

浩子「色々試したけど清水谷先輩にしか付与されへんかったわ」

トシ「ふむ、オカルトの付与ねぇ……」


京太郎「それって一体どうやったんですか?」

怜「聞きたいん? ふっふっふ、それはな……」

京太郎「……だってさ、どうする? オレ達もやってみるか?」

ムロ「むむむ……」

京太郎「またむむむか」

ムロ(……やっぱり生足でしてあげた方がいいのかな? でも今日はストッキング履いてるしわざわざ脱ぐのも……っていうか、そもそも清水谷さんみたいにふとももに自信あるわけでもないし……運動とかもしないからなぁ、ぐにゃぐにゃしてたらどうしよう……そういえば最近体重が……高校入ってからさらに……)


まこ「ほんまに膝枕でオカルトが追加されるんか?」

怜「マジやって、ウチらが証人やで」

セーラ「でも結局、竜華の他には使えんかったけどな」

怜「竜華以外のふとももはなぁ……しっくりこんねん」

トシ「そういう問題なのかい?」

怜「竜華のふとももはホンマむちむちスベスベしてて気持ちええんですよ」

怜「顔のっけるとな、あったかいふとももに沈んでいく感覚がして、そらもう夢見心地なんです」

セーラ「誰がふともものレビューせぇつったん」


怜「絹ちゃんはなかなか惜しかってん」

絹恵「そうなんですか?」

怜「でもちょっと筋肉質やねん」

洋榎「絹はサッk……」

浩子「それもうええわ」

竜華「ちゅーわけで、今度は」


竜華「どっちが最強のゾーン雀士か、白黒ハッキリさせたるで!」


京太郎「そういう事なら望むところです」

セーラ「その卓俺も入れさせろ、泉も入れ!」

泉「わかりました」

洋榎「うちも打ちたなってきたわ。ヒロコー?」

ムロ「はーい?」
浩子「なんや?」

洋榎「二人とも来たな、よし入れ」

絹恵「うちもうちも」


怜「ウチはお休みや」

まこ「わし出番すくないのぅ」

今日はここまで

ゾーン系雀士って書くと海賊っぽくなるからやめときました

こんばんわ
まだ残ってる99%……

竜華のふともも触りは哩さんの牌を伏せるのと同じで
いつ発動しているのか悟られないように毎局やってます

では投下しますかね

対局終了

1位 セーラ「ま、こんなもんやろな」
2位 竜華「ちょっと無理してみたわ」
3位 泉「伊達に千里山のレギュラーじゃないですよ!」
4位 京太郎「防御で精一杯だわ」


セーラ「京太郎はゾーン入る前やと弱っちぃな」

京太郎「素の実力はあんなもんですよ……」

泉「でも麻雀歴1年ちょっとであれなら大したもんですわ」

竜華「最高状態で泉とおんなじくらいやろか」

セーラ「だってよ、本人的にどやった?」

泉「んー、まだまだ場数が足りてませんね」

セーラ「ほんまに口だけは高1最強やな」

泉「いやもう2年ですし、これでも私だって個人代表なんですからね」


竜華「それにしても、無理してゾーン入ってたから頭ボーっとしてきたわ」

京太郎「大丈夫ですか? なにか甘いものでも」

怜「竜華、あーん」

竜華「あーん。もぐもぐ……ん、うまっ美味しいなぁコレ。何食べさせたん?」

怜「ザッハトルテ。アインシュペンナー言うの頼んだら付いてきてん」

竜華「あいん……ナニソレ?」

雅枝「日本だとウィンナーコーヒーって呼ばれとるアレや」

セーラ「……」

泉「多分、先輩の考えてるのとちゃいますよ」

セーラ「なっ!?」


京太郎「クリームたっぷりで見た目にはパフェですね」

怜「すぐにコーヒーまで辿り着けへん」

怜「ほれ、クリームも食べ」

竜華「ん~あま~い」

怜「これでコーヒー飲めるわ」

泉「そんなら最初から普通のコーヒー頼めば……」

怜「メニューに知らん名前あったから、ちょっと冒険してみたかったんや」



竜華「……そんでな、相手の体温・呼吸・鼓動を感じ取るんよ」

京太郎「へぇ、そんな事できるんですか」

セーラ「京太郎はちゃうん?」

京太郎「オレは相手の視点移動・理牌のクセを読んでって感じですね」

京太郎「あとはオカルトにある程度の耐性がつきます」

竜華「支配とか妨害とかにな」

京太郎「やっぱ清水谷さんもですか?」

竜華「せやで。やっぱある程度、やけどな」

セーラ「大星淡には最初効かへんかったけど終盤はできてたな」

京太郎「配牌5向聴でしたっけ」

竜華「あれは大星の支配が弱まってたからな。多分穏乃ちゃんがなんかしたんやろうけど」

京太郎「そうだと思います。確かアイツそんな事言ってたような……」


泉「須賀君、高鴨穏乃と打った事あるん?」

京太郎「いや、去年のインハイの団体戦終わった時に阿知賀の人達が遊びに来たんだ」

京太郎「穏乃と新子さんと松実玄さんって、和の昔の知り合いらしくてさ」

怜「中学まで阿知賀やったっけ? あーん……」

京太郎「中1までですね。それで、オレは実際に対局したわけじゃないんですけどね」

竜華「……もぐもぐ。そっかー、くろちゃんと打ってみたいなぁうちも。あ、そうそう」


竜華「穏乃ちゃんな、アレ、能力の無効化だけやないみたいやで」

京太郎「え?」

対局終了

1位 洋榎「おつかれさんころりー」
2位 絹恵「やっぱお姉ちゃん強いなぁ」
3位 浩子「いいデータやったで」
4位 ムロ「リーチしても和了れないとかキツイ……」


ムロ「上手くかわされるなぁ……流石プロ」

洋榎「せやろーさすがやろー?」

洋榎「でもな、ムロもちょっとアカンところあるで」

ムロ「教えてください」

洋榎「アンタの河、並び滅茶苦茶やん? まぁ、普通の打ち手なら惑わされるんやろうけど」

浩子「人の事言われへんがな」

洋榎「そういう意味ちゃうわ! 最終的な手配が見えとる故に、過程をおろそかにしとるっちゅー話や」

ムロ「過程ですか」

洋榎「せやで。せやからツモをずらされると手配の構築に手間取るんや」

洋榎「捨て順が乱れとるイコール手配も乱れとるって事やからな」

ムロ「確かに……」

洋榎「ムロや怜のリーチ一発は強力やけどな、そればっかやとつまらんやろ」

浩子「こうゆうのは条件達成で和了れる能力のプレイヤーに多い打ち方やな」

洋榎「あんまし能力に縛られると袋小路の藪柑子やで」

怜「……なんかさっきから耳に痛い話が飛んでくるわ」

洋榎「怜も京太郎からさっきやられとったしな、油断したやろ」

怜「猛省しております」

浩子「でもホンマに頼り過ぎはアカンで」

ムロ「自戒します……」

浩子「早いうちから矯正せんとな。そういやインハイでもおったわ」


浩子「鳴くだけ鳴くやつとかな」

絹恵「東と北揃えすぎのとかな」

ムロ「あ、それ知ってる」


洋榎「しっかし連続で放銃とか、難儀やなぁ」

ムロ「点数低い状況だと躊躇っちゃってリーチ出来ないです」

絹恵「でも一発で取り戻せる火力持ってるやんな。団体戦やったら結構のびのび打てそうやね」

ムロ「団体戦かぁ……」

浩子「それは来年に期待やな。防御面なんやけど、危険牌は分かっとるんやろ?」

ムロ「はい」

洋榎「やっぱな。そんじゃ、そろそろネタばらししてもらおか」

怜「……ほんならウチよりも怜ちゃんに近い感じやな」

ムロ「怜ちゃんは具体的にどんな能力なんですか?」

竜華「その局の最高打点での和了が見えるんや」

ムロ「最高打点ですか。あれ、私はどうなんだろ? 多分最速の和了だと思いますけど」

まこ「後で調べてみるか」


怜「見えたら絶対和了れるんやでー」

ムロ「言いきりましたね」

竜華「和了れんかったらなんもせんと帰ってまうねん」

京太郎「見えたら、相手が鳴いたりしても和了れる?」

竜華「せや。自分で喰いタンもできるで」

ムロ「ツモ筋限定の私より高性能だ……!」

竜華「でも数回しか使えないし、毎回見えるムロちゃんの方が安定感あるわ」

竜華「怜ちゃんは見えんでも1回は1回やしな」


怜「ウチも毎巡見てる訳やないしな。しばらく見えん事もあるし」

ムロ「そうなんですか?」

怜「見えた未来を改変した時とかな」




京太郎「はぁ……これだけうってりゃさすがにつかれるな」

ムロ「あれ? 小瀬川さんじゃないですか。ちぃーっす」

泉「うわっ大丈夫なんこれ?」

絹恵「ああ、これは似とるね」

洋榎「どれ? おおそっくりやな!」

浩子「これはこれは……」

怜「竜華もゾーン入りっぱやったらあれになるんかな」

竜華「え、うちもこれなってまうん……?」

セーラ「それはちょっと見てみたいかもしれんな」

まこ「あれだのこれだのと」


トシ「そろそろお店のカフェ営業も終わる頃だし、ホテルに戻るかい?」

京太郎「もうそんなじかんですか。ずいぶんうってたなぁ」

ムロ「みなさんは宿とってるんですか? それとも日帰りで?」

竜華「今日は皆で洋榎の家でお泊りや!」

ムロ「え、全員で!?」

店主「お待たせいたしました」

雅枝「はいどうもー」

洋榎「うぉい、もう飲むんか!?」

雅枝「今日明日とオフなんやしええやろ。細かい事言いなや」

絹恵「バー営業なった途端コレかい」

トシ「そういう訳だから、先に戻ってなさい」

京太郎「まぁいいですけどねべつに……それにしてもくまくらせんせいのは、なんですか?」

怜「上と下で綺麗に色が分かれてんなぁ……プリンみたいや」

まこ「そ、それはまさか……!」

トシ「これかい? ハーフ&ハーフっていうカクテルだよ」

ムロ「やっぱり!」

京太郎「え? どしたの」

ムロ「先輩、これね……ビールに黒ビールのカクテルなんですよ」

京太郎「それって……」


京太郎「100%ビールじゃん?」

ムロ「ですよね!」

京太郎「ビールにビールってビールじゃん」

トシ「オトナになったら分かるよ」

京太郎「そういうもんですか。じゃあおれらさきにもどりますけどあまりのみすぎないでくださいね」

トシ「心配しなさんな。あんた達も遅くならないようにね」

まこ「わかっとります」

ムロ「ではお疲れ様でした」


雅枝「騒ぎすぎんなよー」

洋榎「わかっとるって」

雅枝「頼むで絹」

絹恵「わかっとるって」

洋榎「そっちかい!」


竜華「そんじゃお先に失礼します」

怜「お先です」

雅枝「おう、気を付けて帰り」



トシ「それじゃ、ちょっと早いけど乾杯といこうか」

雅枝「はい。えーそれでは、また今年もやってきた夏に向けて、乾杯」

トシ「乾杯」

店主「お待たせしました」

雅枝「お、来たなフラムクーヘン」

トシ「美味しそうだね」


雅枝「それにしても、良かったんですか?」

トシ「何が?」

雅枝「ムロの能力口止めしなくて。まだ1年生であんま知られてないしょうに」

トシ「団体で出れるなら隠し通す事も出来ただろうけどね」

雅枝「並の選手やったら対応できへんかもしれんですけど、上の奴らは……」

トシ「実際に隙を突かれてたね。でもバレて困る事はあまりないと思うわ」

雅枝「分かってても対応しきれんっちゅー訳ですか」

トシ「それでも上回る相手に対しては……また話が違ってくるわ」


雅枝「だから勝つためにはもう一手なんか必要だと思います」

トシ「そうだね。でも、私としては勝つための指導はしてないのよ」

雅枝「えぇ?」

トシ「私はあくまで、あの子達に強くなってもらいたいのよ。麻雀だけじゃなくて精神的にもね」

トシ「まだ1年生だからよ。能力に目覚めたのはまだ3ヶ月前、ムロにしてみれば降って湧いた様な話よね」

トシ「だからこそ、この短期間で視野を狭めてほしくないの」


トシ「インターハイには小さい頃から何年も練習を積み重ねた子もいる」

トシ「そんな選手を相手にしたりして、時には敗北を突きつけなきゃいけない」

雅枝「当然ですね。あそこではただ強い者だけが残る」

トシ「でも、あの場所だけが人生じゃないでしょ?」

雅枝「ああ……まぁ、子供出来ると特に人生観変わりますね」


トシ「そんな当たり前の事が大事なのよ。心に傷を負って麻雀から離れる人もいる」

トシ「それでも、また向き合っていく人もいる」

トシ「中には子供達に麻雀の楽しさを教える人もいたわ」

雅枝「それって……」

トシ「でね、思ったの。麻雀でどこまで世界が広がるかってね」

雅枝「へぇ、どんなですか?」


トシ「自分にできる事といえば人を育てる事だからね。考えたんだけど」

トシ「私だけじゃ足りないから、自分みたいな指導者を増やしちゃおうってね」

雅枝「つまり、指導者集団を作るって事ですか」

トシ「ううん。そうじゃなくて、今までは選手ばかりを育成してたけど……」


トシ「もう1から指導者を育成しようと思ったの」

雅枝「指導者の育成ですか」

トシ「国の育成事業じゃ、ちょっと遅いんじゃないかと思うのよ」

トシ「年齢とか資格なんか絡んできて、経歴も重要視されるけど」

雅枝「選手として活躍したからって監督でも優秀やとは一概に言えませんからね」

トシ「まずそういう先入観を外してみたらどうかって話よ」

トシ「そうすれば原石は意外と多く見つかるものよ」

雅枝「でも、石ころだって多くなりますよ? そんなんいちいち見てられないでしょう」

トシ「それは大丈夫よ」

雅枝「え、なんでです?」


トシ「私、人を見る目はあるわよ」

雅枝「それは存じてます」


トシ「私なりの人材発掘よ。試験とかじゃ測れない、自分自身の感覚を試したいの」

雅枝「つまりその計画は熊倉さんしかできない話や!」

トシ「ホントやりがいあるわ。マスターおかわり頂戴。次はケストリッツァーのシュバルツで」

雅枝「こっちもや!」

今日はここまで

ハーフ&ハーフはギネスとバスペールエールの組み合わせがオススメです

こんばんわ

無理してお酒飲んでも良い事なんてないですよ
ここはノンアルのビールでカクテルなんていかがですか?
ビールとジンジャーエールで作るシャンディガフとかどうでしょう

熊倉先生の育成方針は臨海女子と反対な感じのつもりです
さらっと国の育成事業~とか言ってるけど、まぁ、咲世界ならあるよねきっと

>>637
まちがい
雅枝「ムロの能力口止めしなくて。まだ1年生であんま知られてないしょうに」
ただしい
雅枝「ムロの能力口止めしなくて。まだ1年生であんま知られてないでしょうに」

投下します。今回で大阪編ラストです

京太郎「えーと、ここかな?」

ムロ「洋榎さんから教えてもらったお店、どんなんでしょうね」

まこ「楽しみじゃのう……お、ここか」

トシ「お好み焼き屋さんだね」

ガララッ


 「いらっしゃいませ! 何名様です……ああーっ!?」


ムロ「えっなになに?」

まこ「あれ、アンタ……」

京太郎「あっこの人」


漫「清澄の次鋒さんやないですか!」



大阪 昼 お好み焼き屋『上重』


恭子「なんやなんや?」

由子「どしたんー?」

まこ「こりゃ懐かしい顔が揃っとるのぅ」

恭子「ああっ!」

由子「染谷さんなのよー!?」

恭子「洋榎が清澄の麻雀部と打ってくるっては聞いとったけど、こんな所で会うとはなぁ」

由子「ビックリなのよー」

まこ「わしも驚いたわ、看板に上重って書いとったけぇまさかとは思っとったが」

恭子「そんで、彼女が今年の長野代表……」

ムロ「室橋裕子です」

由子「1年なのに凄いのよー」

まこ「一応コッチも代表じゃ」

京太郎「2年の須賀京太郎です」

由子「男子も凄いんやね」

恭子「ああ、去年の中継で見切れてた子か」

京太郎「はは、背が高いもんで……」


漫「はい、お冷です」

トシ「ありがとう」

由子「ちょっと聞いてー、1年で県代表やって!」

漫「へえ、それは凄いですねぇ!」

恭子「漫ちゃんも個人で代表やろ」

漫「まぁそうですけど」

恭子「相手を褒めつつも自分も代表ですけどーみたいな」

漫「ち、ちゃいますよ! 1年で代表なれるんって凄いなーって」

由子「3年やったら代表なれるんは当たり前ですよーみたいな」

漫「ち、ちゃいますよ! 3年でも凄いですよ!」

由子「自分で自分の事凄いですーとか、なかなか言えへんよ?」

漫「や、それは……!」

恭子「ええやんええやん! もっと自信持っていき!」

由子「そうよー。なりたくてもなれへん人もいっぱいおるんやから」

恭子「せや、もっと胸張り」

漫「そう……ですよね! うん、うちは凄いんや!」

恭子「そか、それよりうちのミックスまだ?」

由子「私のもよー」

漫「は、はいっ! 今持ってきます!」


京太郎「いじり慣れてるなぁ」

恭子「最上級生なってもあんな感じらしいわ」

まこ「下級生に好かれとる証拠じゃろ、上級生をいじれるなんて普通できんよ。なぁ?」

ムロ「ソウデスネ」

京太郎「うそつけこら」


まこ「ククク……じゃけぇ好かれとるんじゃろ」

ムロ「むぅ」

京太郎「もっと尊敬というかさぁ。ホラ、あるだろ? おまえ先輩にお茶汲みさせたりするし」

ムロ「うちは人数少ないからやれる人がやればいいんじゃないですか? 助け合いの精神ですよ」

京太郎「物は言いようだな」

ムロ「先輩のお茶美味しいからしょうがないんです」

京太郎「開き直ったな……。いや確かにハギヨシさんに師事してるから上手く淹れる自信あるけどね」

ムロ「ねー」

京太郎「ねーじゃねぇよ」

由子「二人とも仲良しさんよー」


恭子「青春しとんなぁ」


漫「はい、お待たせしました。ミックスと豚チーズです」

恭子「お、待ってたでー」

由子「それじゃお先すんね」

京太郎「おおウマそうだ」

漫「注文決まりました?」


トシ「私は豚モダンをお願いしようかね」

まこ「わし牛スジネギで」

京太郎「ここは基本の豚玉を」

ムロ「明太子チーズお願いします」

漫「はい、かしこまりました!」

恭子「ほんなら昨日はずっと打ってたん?」

京太郎「そうですね。昼食べてから夜まで、6時間くらいかな? あとは宿で牌譜検討したり」

由子「この辺の雀荘なん?」

京太郎「雀荘って言うか、カフェです。夜にはバーもやってるお店で……」

恭子「あそこか! そやったらうちも行きたかったわぁ」

由子「昨日は部活やったしな」

恭子「つか、園城寺も清水谷も部活来んと……ま、今はインカレに向けて忙しいけどな」


ムロ「同じ大学でしたっけ」

恭子「せや。つっても麻雀部ではあんまし会わへんのよ」

ムロ「そうなんですか?」

由子「怜ちゃん休みがちやから。それに竜華ちゃんも付き添いでな」

ムロ「それで園城寺さん自分で麻雀サークル作ったんですよね」

恭子「それは聞いてんの」

ムロ「はい。誘われました」

ムロ「ついでに免許皆伝もらいました」

恭子「えっマジで!?」

由子「すごいのよー!」

恭子「あんなん出来んのかい……セーラが意地でクリアしとったけど」

由子「って事はなんか持ってるわけ?」

ムロ「はい。大体怜ちゃんと同じような能力ですね」

恭子「なるほどなー。ってかそんなモン持っとったんかい」


京太郎「染谷部長も惜しかったですよね」

まこ「半荘2回で3回じゃけぇ、半分しか出せんかったわ」

由子「それでも十分なのよ……ずっと気になってたんやけど、染谷さんって……」

まこ「わしか? わしはの……」



由子「……へぇーそういう事やったんねー」

恭子「ほんならそっちの須賀にも何かありそうやな……と、その前に」

クルッパ ジュワー

京太郎「おお~」

トシ「上手いもんだね」

恭子「えへへ……まあこんなもんですよ。大阪の人間やったら必須スキルやで」

ムロ「私上手くひっくり返せるかな?」

由子「不安やったら無理せんでもお店の人頼んだらええんよ……ほっ」

クルッパ ジュワー

ムロ「そういうものなんですか。それにしてもお上手」

京太郎「でもオレはあえて挑戦するぜ!」


漫「お待たせしました! まず豚モダンと牛スジネギ」

トシ「豚モダンこっちね」

まこ「どうも。ほんじゃ、油ひくぞー」

漫「そんで豚と明太子チーズです」

京太郎「ありがとうございます」

ムロ「まぜまぜ」


漫「そしたらどうします? 自分で焼いてみたいですか?」

トシ「私はお任せしようかね」

ムロ「私もお任せします」

まこ「わしは自分でやるけぇ」

京太郎「オレも自分で焼きます」

漫「かしこまりました!」

恭子「あ、あっふ……もぐもぐ」

由子「おいひいのよー」


漫「……じゃ、和了まで裏目無しで辿り着けるって事かいな!?」

ムロ「そうです。でも鳴いてツモ筋がズラされると見えなくなりますけど」

漫「いやぁめっちゃ強いやん」

ムロ「でも、上重さんみたいに特定の牌を集める人とかには対応できませんけどね」

京太郎「上重さんなら鳴いてもチャンタとか三色狙えるからいいですよね」

漫「その分読まれやすいんやけどな」


漫「そろそろやな、失礼して……ほいっ」

クルッパ ジュワー

漫「はっ……どや!」

クルッパ ジュワー

トシ「いい焼き色」

ムロ「おお~」

まこ「流石じゃの。ほれ、京太郎の番……」


キィィィ


京太郎「おまかせあれ」

まこ「便利じゃのうソレ」

ムロ「え、ここで? ナンデ?」

トシ「京太郎の食に対する情熱がそうさせるのね」

ムロ「なんかもっともらしい事言ってるし」

恭子「こ、これは……!? もぐ」

由子「竜華ちゃんみたいなカンジなのよー! あむ」

まこ「食うか喋るかどっちかにしときんさい」


京太郎「ハッ!」

クルッパ ジュワー

ムロ「おっ」

京太郎「うっし! 100点満点だろこれ!」

ペシペシ

恭子「はい減点!」

京太郎「ええ!?」

由子「お好み焼きは上から押したらダメなのよー」

漫「そうしないと大阪のふんわりしたお好み焼きはできないんです」

京太郎「そんな……クッ油断したぜ」

ムロ「ふふ」


まこ「次はわしじゃな……よっ」

クルッ ベタン ジュジュー

まこ「おっとと、ネギが散ってしもうた」

漫「ネギ飛びやすいですからね、集めて形整えたら大丈夫ですよ」

漫「ではソースと……」

ジュジュワァー

京太郎「音ヤベ……!」

トシ「食欲をそそるねぇ」

まこ「ええ匂いもしてきたわ」

漫「マヨと鰹節と青のりをのっけて……」

ムロ「おお!」


漫「出来上がりました!」


京太郎「甘いソースの匂い」

ムロ「格子切り」

トシ「うん、大阪のお好み焼って感じだね」

まこ「ほいじゃ、アツアツのうちにいただくとしようかの」

ムロ「いただきます」


京太郎「おっでも結構ふわふわしてる。ンマイ!」

ムロ「チーズとろっとろだ……おっとと」

京太郎「ヘイヘーイ」
ムロ「ヘイヘーイ」


恭子「宮守のメンツ集めて打ってたんですか」

トシ「エイスリンがちょうど日本に遊びに来ててね、タイミング良く全員集合できたわ」

まこ「やっぱ実際に相手すると良い経験になるわ」

由子「私も再戦したかったのよー。それで、どうやった?」

ムロ「もぐ……んー、宮守の皆さんとは相性悪くて、思うようには打てなかったです」

漫「そうなん? なんかイケそうやけど」


ムロ「まず、小瀬川さんは能力が発動すると和了牌が見えなくなっちゃうんですよね」

ムロ「エイスリンさんにはこっちより先に和了られちゃうし」

ムロ「鹿倉さんの当たり牌は見えなくて振り込んじゃうし」

ムロ「臼沢さんはそうでもなかったですけど」

ムロ「姉帯さんはどうしようもないし」


由子「そんでも大したアドバンテージ持っとるんやから、もっと工夫せなアカンよー」

恭子「せやで。凡人からしたら持っとる武器は唯一、考える事しかないんやから」

恭子「逆に凡人でも天才でも考える事は出来るんやで」

ムロ「あはは……洋榎さんには頼りすぎるなって言われました」

まこ「改めて考えると、能力との付き合い方も難しいもんじゃの」

トシ「ごちそうさま。美味しかったわ」

漫「ありがとうございました! また大阪来たら寄ってくださいね!」

京太郎「インターハイ頑張ってください」

ムロ「頑張ってください!」

漫「そっちもな、当たったら手加減せぇへんから!」

ムロ「望むところです!」

恭子「二人とも頑張ってやー。大阪以外とやったら応援したるさかい」

由子「がんばってなー」

京太郎「はい、ありがとうございます」



大阪 梅田 夕方


京太郎「……」

ムロ「せんぱーい! 早くしないとバス出ちゃいますよ?」

京太郎「ん? ああ、わりぃ」

ムロ「何見てるんです? ポスター?」

京太郎「ゆかた祭だってさ」

ムロ「ほう、浴衣ですか」

京太郎「ムロは浴衣持ってる?」

ムロ「いや、ないです」

京太郎「そっかぁ……そういや去年は麻雀部の皆で夏祭り行ったんだよな」

ムロ「ああ、清澄花火大会ですね」

京太郎「そうそう。確か今年の開催日は来週だったな……」


まこ「行くんか?」

京太郎「行きます?」

ムロ「あ、でも私浴衣持ってないですけど……」

まこ「浴衣くらい仕立てちゃるわ」

ムロ「ホントですか!?」

まこ「そんかわり……作るからにはちゃんと採寸せんとな」ワキワキ

ムロ「うぅっ……その手つきやめてくださいぃ!?」

まこ「ふふふ、どんだけ成長しとるか楽しみじゃのう」

ムロ「やーめーてー!?」



京太郎「もうすぐ夏か……」

今日はここまで
自称凡人な末原先輩ですけど、きっと準決勝では覚醒して無双してるはず

おつ
ムロの乳成長してるといいね

こんばんわ
S&Bのシナモンと花椒の瓶の色が同じだからちくしょう!
カフェオレがスパイシーに……

>>667
こんだけ食べてりゃ成長してるハズ
進化予想図イメージすると、ハオっぽい?

投下します

清澄高校 麻雀部部室 放課後


京太郎「うっはぁ……全然風こねーし」

まこ「窓もドアも全開なんじゃがのう」

京太郎「あのシーリングファンってもっと早く回んないんですかね?」

まこ「扇風機じゃあるまいし。ちゅーか頭の上で高速回転されたら、怖い」

京太郎「ですよねー」


ムロ「失礼します」

京太郎「失礼するんやったら帰ってー」

ムロ「ナンデヤネーン。それにしても今日はあっついですねー」

まこ「無風状態じゃけえ」

京太郎「熱気こもるんだよなココ。冬は寒いし……」

ムロ「あんまり換気できてないですね。もうエアコンつけましょ?」

まこ「そうじゃのう」

京太郎「なら閉めるか」

まこ「熊倉先生は会議で部活には出れんそうじゃ」

京太郎「あらら」

ムロ「どうします?」

京太郎「うーん……こういう時こそ基礎練習だな」

ムロ「テキストでもするんですか」

京太郎「いっつもそれだと飽きるし……そうだ、理牌読みの練習でもするか」

まこ「ほんじゃ、わしはネト麻でデジタるかの。今日は徹頭徹尾、基本的にじゃ」


京太郎「まこっち」

ムロ「まこっち」

まこ「そがぁオカルトありえんけえ」


京太郎「ゾーンに入っていない時の理牌読みの精度を上げておきたいな」

ムロ「久々ですね、この訓練」

京太郎「そうだな。個人戦だと序盤でつまずく事が多かったし、そんな長く集中できないって分かったから」

京太郎「普通の状態でも全国プレイヤーに通用する力をつけたい」

ムロ「無理でしょ」

京太郎「素直だよね……せめて放銃率は下げたいと思う、切実に」

ムロ「デジタル打ちしてると必然的に上がりますよね」

ムロ「セオリーを超えた打ち筋するなら+αがないと」

京太郎「勝負勘とか経験則とか……オレには無いモノだな」


ムロ「視点移動を読むのはシラフじゃ無理なんでしたっけ」

京太郎「視線読みは集中力と眼精疲労のせめぎ合いでさ」

ムロ「あんまり無茶しないでくださいよ? 福路先輩だってここぞって時にしか使わないんですから」

京太郎「あの人は開眼してなくても強いけどな。でもオレは……」

ムロ「先輩も強くなったと思いますよ」

京太郎「そうかな。ムロが言うんだったら、そうかもな」


京太郎「片目の福路先輩でゾーンに入ったオレと同等くらいか」

ムロ「そうでs……いや、ソレ盛ってません?」

京太郎「……ちょっと」


京太郎「まだ集中力が安定しなかった時はよくコレしてたよな」

ムロ「理牌読みですか? そうですね……」

1年前 秋 清澄高校 麻雀部部室


久「それでは、今日の特別ゲストは風越女子高校麻雀部元キャプテンの福路美穂子さんの登場でーす」

美穂子「こんにちは。今日はよろしくお願いします」

京太郎「よろしくお願いしま―す」

優希「おお! 福路先輩だじぇ!」


ムロ「お久しぶりです。以前、合宿所でお会いしましたよね」

美穂子「久しぶりね室橋さん、マホちゃんも元気だった?」

マホ「はい! マホはいつでも元気です!」

美穂子「それと、コレお土産。よかったら食べてください」

和「ありがとうございます。わざわざすみません」

まこ「あとで茶でも淹れるか」


久「それで、最近もてあまし気味の須賀君?」

京太郎「変な言い方やめてください」

久「せっかく人並み以上の集中力を発揮できるというのに、十分に活用できていないんじゃないかしら?」

優希「そうなのか?」

京太郎「んーまぁな。上手くゾーンに入ったとしてもやる事がないっていうか……」

京太郎「相手のツモる動きとか打牌がスローに見えるけど、だから何?って感じだし」

久「……もったいないわ」

京太郎「え?」

美穂子「もったいないですね」

京太郎「福路さんまで……一体なんですか」

久「いい、須賀君? 確かに麻雀では手牌や相手の河を見て取捨選択するけど……」

久「判断材料はそれだけでいいのかしら?」

京太郎「えーと、点数状況とか」

久「それも大事だけど、意識するのはまずオーラス前でいいわ」

京太郎「じゃあ、今日は何を」


久「相手を見るのよ」


京太郎「相手を見る?」

久「そこで、須賀君には美穂子がやってる事をしてもらうわ!」

美穂子「そういう事で、よろしくね」

京太郎「福路さんがしている事ってなんですか?」

美穂子「それこそ相手を見る事ね。具体的には、理牌のクセを読んでどの牌が集まっているかとか」

マホ「そんな事が分かるんですかー!?」

和「マホちゃんも手出しの牌を覚えれば分かりますよ」

美穂子「高い精度で見抜くには相手の視点移動を確認するのも重要ね」

ムロ「なるほど、目の動きを読むのか……って無理ですよそんなの!」

京太郎「わかりました、やってみます」

ムロ「できるんですか!?」


京太郎「さぁな。でも、視線を読むのは得意なんだ」

京太郎「ハンドボールだと一瞬の間にどう動くか判断しなきゃいけないから」

和「以前、試合の様子を動画サイトで見ましたが、もの凄くパス回しが細かいんですよね」

優希「ジャンプシュート決める時とか、空中ですごい動いてるしな」

京太郎「あれはもうフェイントの掛け合いだよな。選手の一挙手一投足の動きを判断しないといけないし」

京太郎「それで特に視線を見極めるのが大事なんだ」

ムロ「へぇ、凄いんですね」

京太郎「視線でフェイント掛けるとか普通にあるしな」

久「これはなかなか素質ありそうね」

美穂子「そうみたいね。それじゃあまずは理牌の見極めから始めましょう」


チャッチャッ

美穂子「はい、それでは配牌が終わりました。これから理牌をするわけだけど……」

美穂子「そうね、まずは手出しの牌に注目しましょう。1・9牌を覚えてね」

京太郎「1・9牌ですか?」

美穂子「そこから数牌のグループの場所が大体わかるわよね?」

京太郎「そうか、その隣の牌は別のグループというわけですね」

美穂子「はいその通りです。こんな感じで手出しの牌を見ていって推理していくの」

美穂子「鳴いてくれたらもっと分かりやすいわね」


美穂子「あと端の牌なんか安牌を見抜くのには重要よ」

美穂子「さて。もし、向かって右端から四萬が出たら?」

京太郎「最低でも一~三は無いから、一萬・二萬は安牌ですね」

美穂子「正解です。それから、牌の上下も気にしてね?」

京太郎「上下ですか?」

美穂子「そう。例えば、一筒とかはひっくり返す必要の無いデザインでしょう」

京太郎「なるほど、言われてみれば」

美穂子「まずはこの辺から始めていきましょう」

京太郎「わかりました」

久「そっちに手積みの牌があるからそれ使って練習してね」


優希「よーし福路先輩! 私と勝負するじぇ!」

美穂子「あらあら。それじゃあ須賀君、後は頑張ってね」

京太郎「はい、ありがとうございます」

久「私も卓に入るわ。今日はずっと理牌もしないで盲牌して打とうかしら」

まこ「そんなら打牌の時に申告でもするか?」

久「いいわね。あ、そういえば向こうにサングラスがあったハズ」

優希「絶対途中で飽きるじぇ……」


和「さぁここはどの牌を切るべきでしょうか」

マホ「えっと……」チラ

和「私を見ても答えは出ませんよ?」

マホ「うぅ……」

京太郎「和とマホはネト麻か。それじゃムロ付き合ってくれ」

ムロ「はい」

京太郎「二人麻雀しつつ、相手の手牌を読むぞ」

ムロ「相手の河は読まないで打った方が分かりやすいですかね」

京太郎「そうだな、まずは真っ直ぐテンパイ目指していこう」


京太郎「まずは字牌の整理だな」

ムロ「先輩は字牌の切り方ってどうしてます?」

京太郎「オレは場風→三元→客風→自風かな」

ムロ「デジタルですね」

京太郎「すっかり教則本のやり方に染まってしまったよ。ムロは?」

ムロ「私は客風→場風→三元→自風です。ちょっと期待しちゃいます」



京太郎「もしかして三色作ってる?」

ムロ「……それ河見て言ってません?」

京太郎「アハハそんな……えっと、萬子が3つに筒子が6つだろ……」

ムロ「お、正解です。それから?」

京太郎「索子2つと字牌が2つ。234の三色」

ムロ「んー、惜しいです!」

京太郎「マジか!?」

ムロ「字牌無いですよ」

京太郎「じゃあ配牌時から字牌なかったんだ」

ムロ「はい、九索の暗刻落としでアタマにしました」

京太郎「やられた……じゃあ三色・ピンフか」

ムロ「まだ2向聴ですけどね。三色つくかなー」

京太郎「鳴いてもいいんだぜ?」

ムロ「それはちょっとヒント出し過ぎじゃないですか?」


京太郎「手ぇ伸びねー」

ムロ「リーチです。テンパイ即リー」

京太郎「きたな」

ムロ「さて、和了牌はなんでしょうか?」

京太郎「んん……い、一・四筒」

ムロ「ロン」

京太郎「ちょっ……!?」

ムロ「ふふふ。正解はー」

二三四②③④2234999

ムロ「二・五索でした」

京太郎「全然違うし! 九索重なってたのか……」

京太郎「結構当たってると思ったんだけどな」

ムロ「途中まではよかったですけどね」

京太郎「まだまだ始まったばっかだ! もう1回」

ムロ「はい」



京太郎「ムロって冷え症?」

ムロ「そうですけど、いきなりなんです?」

京太郎「洗牌してる時に指ぶつかって冷たかったから」

ムロ「すみません」

京太郎「いや謝る事じゃない、変な事聞いて悪かった」

ムロ「別にかまいませんよ。1年中、夏でも冷たくて困ってます」

京太郎「女の人に多いって聞くけど、大変そうだな」

ムロ「今の時期スーパーとかコンビニの冷房が強い場所は長居できないです」

京太郎「あれは効き過ぎ。汗かいてると余計冷えちゃうんだよな」


京太郎「んで、出る時ダルぅーってなる」

ムロ「なりますねー」

京太郎「……正解率低いなぁ」

ムロ「先輩って今年の春から麻雀始めたんでしたっけ」

京太郎「ああ、麻雀歴5ヶ月の初心者です」

ムロ「その割には読めてると思いますよ」

京太郎「ありがとな、でも大会では実力が全てだから」

ムロ「中学校ではハンドボールを?」

京太郎「そうそう」

ムロ「それはまたどうして麻雀部に」


京太郎「この辺の高校でハンドボールするとなると選択肢が限られるんだよ」

京太郎「どうせやるなら強い学校行きたいけど、その強豪校には通学に1時間もかかる」

京太郎「地元離れてまでやりたいかって言われると、ちょっとそこまでは……」

ムロ「それで麻雀?」

京太郎「本当は適当に運動部にでも入ろうかと思ってたんだけど」

京太郎「どうせなら新しい事やってみようと思って」

京太郎「人数少なくてゆったりできる思ったらインターミドルチャンピオンとか居るし」

ムロ「あはは、それはビックリしますね」

京太郎「団体戦のメンバー足りないからって咲連れてきたらめっちゃ強いし」

ムロ「宮永先輩って最初から麻雀部ではなかったんですか」

京太郎「アイツが入部したのは5月だったかな。オレが引っ張ってきたんだ、いっつも本読んでるし」

京太郎「そしたら県予選突破。全国でも大活躍」

ムロ「すごかったですよね……」


京太郎「随分と遠い存在になっちまったなぁ」

ムロ「……」

京太郎「なにしてもどんくさいと思ってたけど、あんな取り柄があるとは知らなかったぜ」

ムロ「インハイチャンピオンですからね……」

京太郎「練習すればするほどわかるんだ、レベルの違いってやつが」

ムロ「ホント、すごいですよね……」

京太郎「なんか取り残された気分」

ムロ「……」


京太郎「そんな凄い奴らからバトン受け取っちまったんだ」

ムロ「バトン……?」

京太郎「次は俺の番だからな」


京太郎「それに、自分自身の為にもこのままじゃいられない」

京太郎「ずっとモヤモヤしてるんだ」

ムロ「……」

京太郎「ほんの数ヶ月前の事なのに、もう夏以前はどういう気持ちで麻雀打ってたのか忘れちまった」

ムロ「忘れちゃったんですか?」

京太郎「ホントは何にも考えないで打ってたりして」

ムロ「もう……」

京太郎「ちょっと重いけどさ、受け取ったからには情けねートコ見せらんないじゃんやっぱ」

ムロ「はい」

京太郎「それに、手伝ってくれる人もいるし」


まこ「ホレ、お茶はいったからアンタらも休憩しんさい」

京太郎「あ、はーい」

ムロ「……でもわかるなぁ」

京太郎「ほい」

ムロ「ありがとうございます」

まこ「そのシナモンロール手作りだそうじゃ」

京太郎「マジですか!」

ムロ「お店のみたいだ」


京太郎「いただきます」
ムロ「いただきます」


ムロ「香りいいですね。シナモンと、ブラウンシュガー?」

京太郎「あ、そうだ。シナモンって冷え症にいいらしいぞ」

ムロ「へぇ、そうなんですか」

京太郎「少しはあったまったか?」

ムロ「そんな食べてすぐには効果出ないと思いますけど……でも」


ムロ「モヤモヤは少し取れたような気がします」

現在 放課後 清澄高校 麻雀部部室


まこ「ほんじゃ今日の部活は終了!」

京太郎「お疲れ様でした」

ムロ「お疲れ様でした。今日は早いんですね」

まこ「熊倉先生もおらんしの。それと、ちょいとムロには付き合ってもらうけえ」

ムロ「え、なんですか?」

まこ「ふっふっふ」ワキワキ

ムロ「う……」

京太郎「行ってら、期待してるぞ」

ムロ「先輩がそういうなら……」


まこ「優しくするけぇ、なんも心配しなさんな」

ムロ「言い方からして不安なんですけど……」

京太郎「ドナドナドーナード~ナ~♪」

ムロ「そのBGMやめてください!」

今日はここまで
ちょっとフライング気味だけど、京たんイェイ~

こんばんわ
体調不良でしばらく書けなさそうです

お詫びの品
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org146160.jpg.html
また横になってる……
前に描いたやつを手直ししようとしたら物理的にオダブツになったので描き直し

更にムロ度下がった……ボリューム出し過ぎな気がしますね。指で隠して調整してください
やっぱりムロは前髪短い方がいいですね
デコから何か出てる。フェロモンとかマイナスイオンとか

こんばんわ
健康状態と執筆速度は比例しないけど、前と同じペースを維持できればと思ってます
書いてない日でもずっとムロの事を考えてたよ。本編に活かせるか怪しいけど

では投下します

龍門渕高校 麻雀部部室

南二局
親:須賀京太郎


衣「……」タンッ

打:南

ムロ「ポン」

(五)六七3445566/南南南

ムロ(よし、イーペーコー捨てちゃうけどダブ南ゲット。ついでにテンパイ)

ムロ(ツモ筋に和了牌は無いけど、悪くない待ちだし出和了りに期待)


衣「……」

チャッ パシッ

ムロ(天江さんもテンパ……イ!?)

ムロ(3・4・5・6待ちの四面張? コレ……完全に狙ってきてる)

ムロ(つまり、さっきの南は鳴かされたのか)

衣「ふふん」

ムロ(この形が、ある……)

XXX3334455XXX

ムロ(悪い顔してるなぁ……天江さん相手にテンパイ出来たと思ってたらコレとは)

ムロ「……」

打:(五)


ムロ(どうせまた鳴いてコースインするんだ)

純「それチーだ」

/(五)三四

衣(赤五を? まさか純に鳴かせる為に)

ムロ(……『流れ』か)

ムロ(私にはよくわからないけど)

純「ツモ。タンヤオ・ドラ・赤1」

衣「ぐぬぬ」

ムロ「はい」



南三局
親:室橋裕子


純「ツモ」

衣「ぐぬぬ」

ムロ(さぁ、これで)



南四局:オーラス
親:天江衣


ムロ(引き摺り下ろせ……!)

京太郎(ムロ……お前)

純「ロン!」

衣「ふぅっ!?」

ムロ「よっし……!」

京太郎(そんなに罰ゲームがイヤなのか)


1位 純「乗るしかない、この流れに」
2位 ムロ「大逆転滑りこみセーフ!」
3位 衣「月が欠けてて力が出ないよぅ……」
4位 京太郎「地味にラス引いてるしオレ」


ムロ「イェーイ!」

純「イェー!」

京太郎「もうやめて下さい! 泣いてる子供もいるんですよ!」

衣「子供じゃない! 衣だ!」


純「はいはい、それじゃあ下位の二人は」

ムロ「バツゲーム!」

衣「うぅっ……」

京太郎「マジか」

純「須賀は炭酸コーヒー」

京太郎「コーヒーがシュワシュワしてちゃダメでしょ……」

ムロ「天江さんはこれです」

衣「見た目は普通のジュースだな……でも何かヘンなの入ってるんでしょ! 衣は知ってるぞ!」

透華「そちらの卓も終わりましたのね」

トシ「お疲れ様」

まこ「罰ゲームは京太郎と……天江か」

透華「あら、意外ですわね」

京太郎「お疲れ様です。そっちも終わりましたか」

まこ「なんとか上位に入れたわ。ほれ京太郎もグイっといかんか」

京太郎「そこの二人を見たらとてもいけませんよ……」


智紀「うす……から……」ズーン

一「ナニコレ……画用紙でも揚げたの……?」ズーン


京太郎「一体何食べさせたんですか!」

透華「智紀にはチリペッパーチョコ、一にはポテトチップス」

透華「ハギヨシが厳選した、輸入菓子の中でもとりわけ微妙な味のモノを用意しましたわ!」

京太郎「ハギヨシさん……」


純「衣、今すごい顔してるぞ」

ムロ「やっぱりルートビアはキツイみたいですね」

衣「くさ……ケホッ……」ズーン

まこ「ほれほれ」

京太郎「わかりましたよ……では、いただきます!」

ゴクリ

透華「い、いかがですの……?」

京太郎「あ、結構イケる」

まこ「うっそ」

トシ「コーヒーの炭酸割りは昔の喫茶店のメニューにもあったくらいだしねぇ」


ムロ「それじゃ罰ゲームにならないじゃないですか」

京太郎「そんな事言われてもな、ムロも飲むか?」

ムロ「え、私は……」

京太郎「ほら、なかなかうまいぞ」

ムロ「それじゃ……あ! ははーん、なるほど」

まこ「どしたんじゃ?」

ムロ「一見普通を装い警戒心を解かせ、私に飲ませる事で道連れにしてやろうという魂胆ですね!」

京太郎「深読みしすぎ」


一「衣、飲まないんだったらソレ貰っていいかい?」

衣「でもコレおいしくないよ?」

一「いいんだ。この際、強烈な味の方が助かる……」

衣「そ、それはどういう……」

グビグビ

ダン!

一「湿布だこれ!」

衣「だから言ったのに」


一「ふぅ……でも、これで自分が正常な味覚である事が証明されてよかったよ」

衣「え?」

一「このポテチ、油っこいのにボサボサするし塩気は少ないし……」

一「食べてくうちに分からなくなってくんだ……」

一「ボクが食べてるものは果たして本当に食べ物なのかって」

衣「恐ろしい……」

智紀「このチョコも負けてない……」

衣「と、ともき」


智紀「チョコにチリペッパーの組み合わせはよくあるけど、コレは駄目な部類」

智紀「まず基本的に甘さが足りない。ビターとかじゃなくて味が薄い……」

智紀「そこにピリピリした辛味が来る。じんわりした辛さじゃなくて、ただの刺激が」

智紀「チョコの薄い甘味に必要性を感じない辛味……その2つは剥離していて混ざる訳でもない」

智紀「もう何をしたいのか理解できない……何故誕生したのか、何故存在するのか……」


智紀「私は一体何者なのか……」

一「いけない! ともきーのアイデンティティが崩壊しそうだ!」

衣「チョコひとつで!?」

京太郎「レモンとか入れたら合うかも」

ムロ「ホントですか?」

純「つまんねーな、これなら国広君特製のタバスコジュースでも用意するんだったぜ」

京太郎「ジュースにタバスコは……」

トシ「トマトジュースにならタバスコはアリよ」

まこ「そうなんですか?」

トシ「ソースを加えたりパセリを振りかけたりしてね。冷たいトマトスープみたいな感じよ」

ムロ「そう言われると美味しそうですね」

京太郎「ちなみにそのタバスコジュースはどうだったんですか?」

純「さぁな、国広君が用意して国広君が飲んだからわかんね」

京太郎「え」


まこ「それにしてもよく天江相手に勝ち抜けたのう」

純「室橋が鳴かせてくれたおかげでな」

まこ「流れってやつか」

純「今夜はそんなに月が満ちてないしな。鳴くだけでよかったぜ」

衣「月さえ出ていれば……」

京太郎「その、流れに乗るってのは鳴く以外にも方法があるんですか?」

純「ああ。といっても、あんま説明すんの得意じゃないし、言葉だと余計わかんなくなりそうだけど」

純「実際に流れを感じる事ができないと乗るのは難しい」

純「いや、乗るだけなら誰にでもできる。須賀も経験あるんじゃないか?」

純「普段通りにしてるのにヤケに調子が良かったりする時とか」

京太郎「ありますね」

純「ソレだ。で、普通だったら予期しないタイミングでやって来るツキを任意で呼び寄せる事が出来たり、逆に……」

京太郎「相手のツキを断ったり」

ムロ「でも、知らずに流れに乗ってるって事は私達にも出来るって事ですよね」

純「出来ない訳じゃないが……例えばオレは目を開けてるけどお前らは目を閉じて綱渡りしてるようなモンだ」

純「ただでさえバランス感覚を要求されるのに目ぇつぶってたら、なぁ?」

ムロ「そうですか。うーん……そんなうまい話はないかぁ」


京太郎「思ってたんですけど、それで衣さんの支配を抜けるのってなんでですか?」

純「ん? 単純に運が良けりゃ抜けるだろ」

ムロ「そういう問題ですか!?」

純「まぁ衣ぐらいだと相当な運量をかき集めないと無理だけどな」


純「それより、須賀こそ衣の支配を受けないのはなんでだ?」

衣「なんでだ?」

ムロ「なんでですか?」

京太郎「なんでですか? 熊倉先生」

トシ「あれも流れの一種だと思うわ」

ムロ「ほうほう」

トシ「ただ、作用は真逆ね。運気を集めたりするんじゃなくて流れに左右されなくなる」

トシ「それで相手の能力も効かなくなるわ。もちろん絶対じゃないし限界はあるけど」

京太郎「満月に近い状態だとテンパイできなくなるしなぁ」

まこ「じゃが集中するだけでそんな効果が付くとはのう」

トシ「運気のベクトルが極端に自分自身に向いているからでしょうね。それに、ただの集中じゃないわ」

ムロ「流れとか運気とかって、結局なんなんですか?」

トシ「さぁ? 分からないわ。だからオカルトって呼ばれるのかもしれないわね」


1時間後

透華「牌譜の検討もこんなもんですわね」

一「そろそろ休憩にしない?」

透華「それもそうですわね。ハギヨシ」

ハギヨシ「は、ただいま用意いたします」

京太郎「オレも手伝います。また色々教えてください」

ハギヨシ「かしこまりました。では参りましょう」

京太郎「はい」


まこ「ふぅ~。とりあえずお疲れさん」

一「お疲れ様。あれ、衣は?」

透華「またどこかに行ってますわ」

純「しっかし、最近あっちぃよな。すっかり夏って感じだ」

まこ「そうじゃのう。ウチでもアイスコーヒーの注文が多くなってきたわ」

トシ「でも、冷やし過ぎは注意だよ」

ムロ「まったくもって」

智紀「冷房で思っているより身体は冷えてる」


透華「夏服はコーデに悩みますわね」

一「そうだよねー」

まこ「……」

純「……」

透華「今年は少しカジュアルな感じで攻めてみましょうかしら。スニーカーとか履いて」

一「いいんじゃない? ラフなファッションも似合うと思うよ」

ムロ「……」

智紀「……」


一「なに?」

純「いや」

智紀「どうかそのまま、まっすぐな一でいてほしい」

ムロ「そ、そういえば、沢村さんのストール素敵ですね」

智紀「ありがとう。肩を出すような服だと、冷えて肩こりがひどくなる」

まこ「肩がこるのは他にも理由ありそうじゃがな」


ムロ「井上さんはシンプルにポロシャツなんですね」

純「あんま着飾んのもらしくねーし、1枚でキメられるのがいい」

透華「ワイルドですわ」

一「硬派だよね」

智紀「女受け良さそう」

純「ありがとよ。なんか他意が見え隠れしてるが……」


まこ「夏服といえば、こないだムロに浴衣を仕立ててやったんじゃ」

ムロ「先週、花火大会があったので行って来たんですよ」

一「へぇ、浴衣か。風流で良いね」

トシ「そういえばそんな事言ってたわね。浴衣の柄はどんなのだい?」

ムロ「黒地にあやめの柄です」

透華「うん、室橋さんにぴったりですわね」

純「いいんじゃないか」

ムロ「えへへ、ありがとうございます」

一「花火大会たのしかった?」

ムロ「ん、ええ、まぁ。楽しかったですよ?」

純「なんか釈然としない良い方だな」

トシ「何かあったの?」

ムロ「あったというか、なかったというか……」

智紀「気になる」

透華「ハッキリしませんわね! もう全部喋ってしまいなさい!」



京太郎「お待たせしましたー」

ムロ「……」

透華「来ましたわね」

純「御苦労だったな、まあ座れよ」

京太郎「はぁ。え、なにこの雰囲気?」

一「ちょーっと須賀君に聞きたい事あってさ」

京太郎「なんですか?」


透華「貴方、室橋さんを袖にしたというのは本当ですの?」

京太郎「……」

ムロ「……」


ムロ(え、なにこの公開処刑……)

今日はここまで
輸入菓子は当たり外れ多い……

画用紙か画鋲って読んでて揚げた画鋲とか色んな意味でやべぇって思ってた

こんばんわ
暖かくなってきたかなーと思ったら一気に気温下げる地球規模のフェイントやめてください

>>722
それは普通にやべぇ
でも一ちゃんなら食べた画鋲がおもむろにポッケから出てくる気がします

投下します

京太郎「え、なになに?」

透華「お二人の問題ですからあまり深くは口出しいたしませんが……」

純「もうしてるけどな」

一「ボクらも共犯だけどね」

透華「その、あんまりではありませんの!?」

京太郎「すみません、状況説明を……」

まこ「あー、先週の花火大会の話じゃ」

智紀「須賀君が室橋さんの告白を断ったって聞いた」

京太郎「ムロがそう言ってたんですか?」

ムロ「いや、私は……」

透華「こっちは理由を聞きませんと納得できませんわよ!?」

ムロ「私は……」

透華「さぁ観念してお話しなさい!」

ムロ「話を……」

京太郎「ええと、じゃあ最初から説明させてもらいますね」

ムロ「あの……」

一「ごめんね、止まらなくて」

智紀「諦めて。もう一から聞かせた方が早い」

一週間前 夜 河川敷


ムロ「お待たせしました、先輩」

まこ「すまんすまん、少し着付けに手間取ったわ」

ムロ「……どうですか?」

京太郎「待った甲斐はあったよ。似合ってるぞ」

ムロ「えへへ、そうですかー」


京太郎「……で、どんな塩梅でした?」

まこ「……全体的に膨らんでてハリがあった。絶賛成長中じゃ」

京太郎「ふぅ~む、なるほどなるほど」

ムロ「?」


京太郎「ちゃんと髪形もセットしてきたんだな」


ムロ「そんなに長くないから、あんまりアレンジできないですけど」

まこ「後ろをアップにして巻いてみただけじゃけぇ。でも結構イメージ変わっちょるわ」

京太郎「うん、新鮮でいい感じ」

ムロ「あ、ありがとうございます。先輩も、似合ってますよ浴衣」

京太郎「サンキュ。たまに着るといいな、気が引き締まる」


まこ「花火までまだ時間あるし、屋台でも見るか」

京太郎「そうですね」

京太郎「そういや、去年はタコスの屋台なんてあったな」

ムロ「タコスですか、優希先輩が喜びそう」

京太郎「実際食いついてたぜ、すげぇ勢いで」

まこ「まずはグルっと屋台見てみるか」


ムロ「色んな屋台ありますね」

まこ「焼きそば、チョコバナナ、アメリカンドッグ……定番は一通り揃っとるわ」

京太郎「これぞお祭りって感じですね、ラインナップも……値段も」

まこ「そこは目ぇつむりんさい」

ムロ「あ、あった! ありましたよタコス」

京太郎「今年も出店してたか」

まこ「まぁまだ急いで買わんでもええじゃろ」

ムロ「まずは端の方まで一通り見てみますか」

京太郎「そうだな。お、お好み焼き」


ムロ「大阪を思い出しますね」

京太郎「オレは上重さんのお好み焼きを食べてしまったから、もう普通のお好み焼きは食べられない身体になってしまったんだ」

まこ「確かにアレはこの辺じゃ食えんからのう」

ムロ「今でも脳内再生余裕です」

京太郎「まだ思いだせるうちはなぁ……」

まこ「祭りの出店にあのレベルを要求する方が間違ってるがな」

京太郎「ですよねー」

ムロ「それじゃ他の見てみますか」

ムロ「このあたりはソースの匂いと焼き物の煙で凄い事に……」

京太郎「顔面にモロに当たって……これはたまらん」

ムロ「焼きもろこしの匂いが香ばしい」

まこ「甘じょっぱい。こん煙は焼き鳥のタレか」

ムロ「そこに颯爽とかき氷の店があるのが憎い配置」

京太郎「うむ」


まこ「甘いのもあるぞ」

ムロ「りんご飴にわたあめ、定番ですね」

京太郎「むしろ祭りでしか見ないな」

まこ「そう言えばそうじゃの」


京太郎「じゃあせっかくだし」

ムロ「わたあめ買うんですか?」

京太郎「おう。あ、そうだ……」

ムロ「どうしました?」

京太郎「袋の絵、プリティなのとかキュアキュアなのとかあるけど何にする?」

ムロ「えぇ……別に何でもいいですけど。じゃあスイートで」


まこ「こっちはなんか珍しいモン売っとるわ」

京太郎「へぇ、どれどれ?」

ムロ「ふーん。ソーセージマルメターノ……って、まんまだ」

京太郎「買っちゃうんですね、マルメターノ」

まこ「わたあめと並ぶとキャンディに見えんかのう」

ムロ「随分大きいカラメルですね」

京太郎「ケチャップに見えるのはストロベリーソースですか?」

まこ「あーん……ってコレ普通に上から食べたら落っこちそうじゃ」

ムロ「マルメターノがコボレターノになってしまう」

まこ「もぐもぐ。あつつ……焼き立てじゃ。んまい」


京太郎「そろそろいい時間かな」

まこ「人も増えてきたしの。場所取りしとくか」

ムロ「あっ、あの辺が空いてますよ!」


京太郎「シート設置完了!」

ムロ「ありがとうございます」

京太郎「携帯の虫よけも」

まこ「流石じゃの」

京太郎「ふふん、これくらいどうって事ないですよ」


『みみななささままたたいいへへんんおおままたたせせ……』

まこ「お、ついに始まるわ!」

京太郎「アハハ、反響して何言ってるかわっかんねー!」

ムロ「ちょっとドキドキしてきました」

『カカウウンントトダダウウンン……55……44……』


まこ「3!」


京太郎「2!」


ムロ「1!」






ムロ「わぁ……」


ドンッ


まこ「おおー!」

ドンッ ドンッ パパパンッ

京太郎「うおぉスッゲー! でっか!」

ムロ「すご……まぶし……」

京太郎「キレーだったなぁ」

ムロ「ホントですね」

まこ「オープニングじゃけぇ気合入ってたわ」


京太郎「あー、今日は風吹いてないのか……」

ムロ「風無い方がいいんじゃないんですか?」

まこ「あんまし強風じゃと危ないがの。ホレ、これじゃ煙が漂っとるまんまで花火が見えにくいじゃろ」

ムロ「あ、そうか」

京太郎「次の打ち上げまで少し時間かかりそうだ。よし、なんか飲み物買ってくるよ」

ムロ「お願いしまーす」

京太郎「何がいい?」

ムロ「先輩にお任せします」

まこ「わしの分はええから」

京太郎「そうですか? それじゃ行ってきます」


まこ「行ったか」

ムロ「ですね」

まこ「……あーなんかウチの店がヘルプ呼んどる気がするわー」

まこ「せっかくの花火大会じゃが手伝いせんとなーしょうがないのー」

ムロ「棒読みすぎる……なんか、スミマセン」

まこ「……さて、わしはもう帰るけぇ」

まこ「がんばれよ」

ムロ「っ……」コクン


京太郎「お待たせ。アレ? 染谷部長は?」

ムロ「い、家のお手伝いとかで、先に帰っちゃいました」

京太郎「そーなのかー。せっかくの花火大会なのに残念だな」

ムロ「そうですね……」

京太郎「じゃ、その分オレ達が楽しむとしますか。はい飲み物」

ムロ「ありがとうございます」


ドンッ パパパパッ

京太郎「おお~キレイだなー」

ムロ「色んな形がありますね」

京太郎「好きな形とかある?」

ムロ「牡丹とかいかにも花火って感じで良いですけど、私はしだれてるのか好きですね」

京太郎「そうなんだ」

ムロ「尾を引くのが余韻あって、風流だと思います。先輩は?」

京太郎「オレは昇ってる途中に小さいのが開いていって、最後に大きいのが咲くやつが好きだな」

ムロ「へぇ、なんだか通ですね」


京太郎「オレには小さい花火が大きい花火を上に上に押し上げていってるみたいに見えてさ」

京太郎「その小さいのがあるから、最後の花火が高く大きく咲けるんだなって思うんだ」

ムロ「成程……それ素敵です」

京太郎「なかなか通な見方だろ?」


京太郎「来週はまた龍門渕さんとこで練習か」

ムロ「久しぶりですね」

京太郎「毎週泊まりがけで疲れてないか?」

ムロ「大丈夫ですよ、心配ご無用。むしろ先輩の方が大丈夫ですか?」

ムロ「長時間打ってるとだらけるじゃないですか」

京太郎「これでも元運動部、体力には自信あるから。まァ、らくしょーってことで」

ムロ「ホントですか? 信じますよ」

京太郎「おう」


ムロ「先輩は……無理してませんか?」

京太郎「え?」

ムロ「なんだか、先輩はずっと頑張ってて、それは凄いと思いますけど」

ムロ「たまに、無理してるっていうか、辛そうな感じがして」

ムロ「毎回長時間ゾーンに入るのだって、それって普通じゃないですし……」

京太郎「……ムロはホントによく見てるな」

ムロ「やっぱり……」


京太郎「でも、無理するくらいが丁度いいんだ」

ムロ「なんで」

京太郎「オレみたいな初心者が全国なんて舞台に上がるにはな」

京太郎「自分以上の自分でないとダメなんだ」

ムロ「でも、そこまでして……」

京太郎「うーん、何でかって理由はあるんだけど、言葉にしにくいって言うか……」

ムロ「清澄だからですか?」

京太郎「まぁぶっちゃけ、言ってしまえばそうなんだけど……ちょっと違うかな」

ムロ「?」

京太郎「結局は自分の為で……」

京太郎「清澄に居るなら、アイツらと並ぶくらいの……」

京太郎「じゃないと」

ムロ「それは……」

京太郎「わかるだろ? ムロもさ」

ムロ「……そうですよ、私だって」

京太郎「だろ? だから、言いっこナシ」

ムロ「はぁ……」

京太郎「大丈夫だって。倒れちゃったら元も子もないし」

ムロ「当たり前です!」


ムロ「……ねぇ、先輩?」

京太郎「ん?」

ムロ「私ね、去年からずっと思ってました」

ムロ「この人は私と似てるなぁって……」

ムロ「どこか淋しがりで、ちょっと不器用で、つい我慢しちゃったり」

京太郎「……」

ムロ「そんな人ほっとけないです。私、ずっと見てました」

ムロ「そして、見ているうちに、見てるだけじゃ足りなくなって……」

ムロ「似てるって思ったら、もっと欲しくなって……」

京太郎「ムロ……」

ムロ「ねぇ、先輩」


ムロ「私のものになってくれませんか」






京太郎「……悪い……今は、応えられない……」


ムロ「……」

京太郎「今、オレってば自分の事で一杯一杯でさ……あんまりムロの事、気にかけてやれないと思うんだ」

ムロ「私は、それでもかまいませんけど……」

京太郎「駄目。オレがかまう、それはあまりに誠実じゃないから。それに……」

ムロ「それに?」

京太郎「オレが、ムロとそういう関係になったら……」


京太郎「思いっきり甘えちゃいそうで」

ムロ「私はそれでもかまいませんけどぉ!?」


京太郎「いや、この夏は麻雀に集中したいんで……」

ムロ「それって、私が麻雀に集中してないみたいじゃないですか!」

京太郎「い、いやそういうつもりじゃないって……」


ムロ「はぁ……はぁ……っていうか、なんなんですか」

京太郎「なんなんって」

ムロ「その、この夏は~って……それじゃ、その、夏、大会終わったら」

ムロ「その時は……」

京太郎「その時は、オレから言わせてくれ」


京太郎「絶対返事するから」

ムロ「……ソレ、期待していいですか?」

京太郎「悪いようにはしないよ」

ムロ「……うぅ」

京太郎「え」


ムロ「えぐっ……ふうぅ……」

京太郎「ちょ」

ムロ「うあぁ……あぁ……」

京太郎「えと、な、泣くなよ……ほら、どうした?」

ムロ「ふわあぁぁ……ぐしゅ……うぅ……」



京太郎「落ち着いたか?」

ムロ「……まぁまぁ」

京太郎「よしよし」

ムロ「んぅ……」

ムロ「ちょっと、ホッとしたら、なんか……」

京太郎「悪い」

ムロ「謝らないでください……でも、正直、少し不安です」

京太郎「悪い」

ムロ「また言った」

京太郎「申し訳ない」

ムロ「レパートリーを増やされても」


ムロ「だから、その、しるしというか……欲しいんですけど」

京太郎「しるし?」

ムロ「先輩を予約済みっていうしるし」

京太郎「えーと、定番だと指輪だったりか……?」

ムロ「んー、それは返事貰った後で買ってもらいます」

京太郎「お、ちゃっかりしてる」

ムロ「だから今日は……そうですね、唐揚げにじゃがバタ。あ、タコスを忘れるトコだった」

京太郎「食べ物かよ!」

ムロ「あとクレープと……先輩、前に言ってたじゃないですか」

ムロ「食事する時は何時何処で誰と食べるのかが大事だって」

京太郎「言ったような気が」

ムロ「だからね、一緒に食べましょ?」

京太郎「……そうだな。カタチじゃない、思い出作りも悪くない」

ムロ「それで目いっぱい楽しんじゃいましょ?」


ムロ「今夜の事は絶対に忘れられないくらいに!」





京太郎「……っていうわけです」

純「んだよ、結局ノロケじゃねぇかよ!」

智紀「こっちは修羅場を期待していたのに」

一「まぁいいんじゃない? ボクはメロドラマよりもラブコメの方が好きだな」

京太郎「おうおう、好き勝手言いなさる」


トシ「でも安心したよ」

まこ「わしもここまで細かくは聞いとらんかったけぇ」

透華「これにて一件落着ですわね!」

京太郎「いや、そもそもコレ立件する事案ではなかったんじゃ……」

衣「うむ、仲良きことは美しきことかな」

透華「あら、衣いらしてましたの」

衣「少し夜空を見上げていた。ところで」


衣「何故ヒロコは悶えているんだ?」

ムロ「おああぁぁぁぁ……」


まこ「そりゃ普通は恥ずかしいじゃろな」

智紀「告白シーン完全再現」

一「聞いててドキドキしちゃったよ」

トシ「若いっていいわねぇ」

京太郎「それで結局、返事は待ってもらう事になりました」

純「そうか、つまり……」


純「キープって事だな」

京太郎「えっ」


透華「そう言われると」

一「須賀君サイテー」

智紀「タラシ」

京太郎「あっいや……その……」

ムロ「都合のいい女です」

京太郎「そういうつもりじゃないから!?」

今日はここまで
そろそろ京ムロのギア上げなきゃいけない気がした

内Pだとキープは大抵0ポイントですよね

おつ
歯磨き終えた後の食い物描写って懲役何年くらいが適当ですかねえ!?

こんばんわ
今更だけど大掃除しました
しまってた本とか出てきて手が止まる王道パターンでした

>>744
歯磨きは食べる前派ならば何も問題はないです

投下します。短いです

昼 清澄高校 食堂


ムロ「あ、先輩だ」


京太郎「おう、ムロが学食とは珍しいな」

ムロ「今朝ホットサンドでも作って行こうかと思ったんですけど、パン食べられちゃってまして……」

京太郎「それは災難だったな」

ムロ「先輩はまたレディースランチですか?」

京太郎「おいおい、決めつけはよくないぞ」

  「はい、レディースランチお待たせ」

ムロ「やっぱりじゃないですか」


京太郎「たまたまだよ。結果論だな」

ムロ「今日のレディースランチは新メニューって、入口のブラックボードに書いてありましたよ」

京太郎「なるほど、なかなか鋭い洞察力を持っている」

ムロ「そして決め手はポケットからはみ出ているフリーパス」

京太郎「おっと……オレとした事がうっかりしてたぜ」

ムロ「はい、証明終了です」

京太郎「まいった、流石だな。おかずを一品だけ貰ってやってもいいぞ」

ムロ「わぁい……って先輩が貰うんですか!?」

京太郎「本日の御注文は?」

ムロ「キーマカレーですよ。他におかずはありません、残念ですね」

京太郎「あらら……あ、そうだ。さっきの推理だけど一個だけいいか?」

ムロ「なんです?」

京太郎「このフリーパスだけど、実は今日使っていないんだ。なんででしょー」

ムロ「えっ……それじゃあ、誰か他の女の人に買ってもらったんですか?」

京太郎「それも間違い……あと目が怖い」

ムロ「ふぅん、勿体ぶりますね」


京太郎「正解は……なんと、顔パスで注文できるようになりました!」

ムロ「どんだけ常連さんなんですか」


京太郎「去年の夏休み明けから使い続けてきたからな」

ムロ「そりゃ顔も覚えられますよね」

京太郎「それもあるけど、もう学校内じゃちょっとした有名人だからな。オレ達」

ムロ「自分で言うのもなんですけど、そうなんですよね」

ムロ「……はぁ」

京太郎「ど、どうしたの」

ムロ「いや、県予選終わった頃の話なんですけど……」

ムロ「クラスの友達に『おめでとう』とか『頑張ったね』とか言われたりするんですよ」

京太郎「オレも言われたぞ、良かったじゃん」

ムロ「でもたまに『めっちゃ泣いてたね』とか『世界中に泣き顔晒した気分はどうですか?』とか言われるんです」

京太郎「そんな事言うやつが居るのかー感心しないなー」

ムロ「ホントにですよ。こっち向いてください」


ムロ「そうそう先輩、また買い物付き合ってくれませんか?」

京太郎「いいぜ。何買いに行く?」

ムロ「んーと、リップクリームにモバイルバッテリーに入浴剤……」

京太郎「えー、わざわざ入浴剤持ってくのか?」

ムロ「結構いいですよ。リラックスできて。先輩もどうですか? いつもお疲れのようですし」

京太郎「検討してみよう。それより、室橋さんには目覚まし時計が必要なのでは?」

ムロ「なんでですか」

京太郎「起き抜けはいっつもダルそうにしてるし」

ムロ「ダルそうだなんて、先輩に言われちゃった……」

京太郎「おい」


ムロ「確かに朝は弱いですけど……別に遅刻とかしてないし、いいじゃないですか」

京太郎「睡眠時間のサイクルって知ってるかい?」

ムロ「ああ、レム睡眠だのノンレム睡眠だのっていう」

京太郎「そうそう。90分×n+30分の睡眠時間がいいらしいぜ」

ムロ「そうなんですか。でも私、布団に入ってもすぐに寝つけないから……」

京太郎「へぇ、そうなんだ。なんなら子守唄でも歌ってあげようか?」

ムロ「いりません」

京太郎「即答」

ムロ「寝るとき足先冷えちゃってなかなか……かと言って靴下履くと汗かいてまた冷えちゃうし」

京太郎「冷えてるのに汗かくんだ」

ムロ「人体の不思議ですよね」

京太郎「そういやこないだハギヨシさんにさ、旅行先に持ってく物で、あれば便利な物って何か無いですかって聞いたんだよ」

ムロ「ハギヨシさんかぁ、出先でも色々と何でも用意してそうなイメージですけど」

京太郎「そしたらさ『研石などはいつも持って行きますね』だって」

ムロ「研石? 研石ナンデ?」

京太郎「最初、旅行先のホテルの設備に付いてる包丁なんかは使わないで、自前のを持って行ってたらしい」

京太郎「で、もちろん研石も持って行くんだけど、どうせ研ぐなら向こうのを研げば荷物減らせるって事に気付いたんだそうだ」

ムロ「ふむふむ。なんでもかんでも持っていくよりは合理的ですね」


ムロ「それで、研石持ってくんですか?」

京太郎「いやいや、持ってかないから。参考にはならなかったけど、面白い話だったよ」


京太郎「基本的には現地調達なんだってさ」

ムロ「それが一番手っ取り早いですしね」

京太郎「まぁそれも時間があればの話だけどな」

ムロ「そうですね。今週末も既にスケジュール組んでありますから、買い物とか行けませんし」

京太郎「その分、事前に準備しとかないとな」

ムロ「はい。あぁ、それにしても惜しいなぁ……」


ムロ「せっかくの東京なのに」

夕方 東京 宮永家


照「ただいま」

咲「あ、お帰りなさいお姉ちゃん」

照「うん。なんか楽しそうだね、咲」

咲「週末は久しぶりに京ちゃん達に会えるからね。色々準備してたんだ」

照「ああ、今週なんだっけ」

咲「お姉ちゃんも来たら? なにか予定あったりする?」

照「その日は久しぶりに古書店巡りでもしようかと思ってた」

咲「そうなんだ、残念。それにしても、今はネットでも昔の本は買えるんじゃないの?」

照「買えるけど、やっぱり実際に行って見たいし。古い本は一つ一つコンディションとか違うから」

咲「そっか」


照「それに、目的以外の本を見るのも楽しい。興味無いジャンルの本でも面白そうなのがあるとつい買っちゃう」

照「ネットだと購入した本に関連するタイトルばっかり表示されて、新鮮味が無い」

咲「私、ネット使わないからわかんないよ」

照「そっか……咲はそれでいいと思う」

咲「でも、ついつい目的以外の本に目移りしちゃうのはわかるかな」

照「うんうん」

咲「本屋さんの入ってすぐの新刊コーナーとかランキングは目に入りやすいから、買う気はなくてもつい見ちゃうよ」


咲「そういうのも、ウィンドウショッピングって言うのかな?」

照「どうなんだろ?」


照「そういえば……今日はこんなの買ってきた」

咲「なに……あ、眼鏡? お姉ちゃん視力落ちちゃったの?」

照「違う。コレは変装用、度は入っていない」

咲「お姉ちゃん有名人だもんね」

照「咲もね」

咲「んん、そうかな」

照「そうだよ。咲も掛けてみる? 眼鏡」

咲「えっ、じゃあちょっとだけ……」

照「はい鏡」


咲「っと……こんな感じかな。どう? お姉ちゃん」

照「……」

照「……いい」

咲「え?」

照「いい。凄く」

咲「えへへ、そう?」

照「文学少女みたい」

咲「読書は好きだけどね。自分で文学少女って言うのはなんか抵抗あるなぁ……」


照「よし。合わせて服も買いに行こう」

咲「ええっ今から?」

照「まだお店閉まるまで時間あるし……」

咲「だ、ダメだよ。夕飯の用意しなきゃ。もうすぐお母さんだって帰ってくるし」

照「そう……」

咲「それに、お姉ちゃんも居ないと間に合わないよ……」

照「そう。それじゃあ、仕方ない」


照「手伝うから、ご飯一緒に作ろっか」

咲「うんっ」

今日はここまで
ネットで古書買って、いざ開いてみたら旧かな遣いで書いてあって「あっ……」ってなる
そしてそのまま積み本タワーの建築材に

こんばんわ
ハギヨシは癖が付かないように、あえて一つの道具を使い続けません

投下します。今回も短い

東京 新宿駅


ムロ「ここが新宿……噂に高い迷宮やらダンジョンやらがあるという」

京太郎「ああ、待ち合わせに宝くじ売り場とか指定したらダメなやつだ……」

まこ「このあたりは待ち合わせ向いてないからのう。スタバとかもいくつかあるし」

トシ「昔はもっとスッキリしてたんだけどねぇ」


ムロ「去年のインハイの時はどの辺に泊まったんですか?」

京太郎「代々木だったな。駅まで歩いて行けるくらい近かったぞ」

ムロ「なら結構賑やかな場所なんですね。いかにも都会って感じの」

まこ「それにもすぐ慣れるけぇ。部屋も落ち着いた和室じゃったし」

トシ「今年もそこにしようと思うの、風越の方にも連絡しておいたわ」

まこ「わかりました」

トシ「京太郎は私と同じ指導者用の棟の1人部屋ね」

京太郎「ああ、それも去年と同じですね」


ムロ「なんか1人だけ優遇」

京太郎「いや、そうでもないぞ? ランドリーまで距離あったりで難点あるし」

まこ「こうなると龍門渕も来るんじゃろうなぁ」

トシ「それじゃ、いってらっしゃい。ちゃんと勉強してくるんだよ」

京太郎「はい、夕飯までには帰ってきます」

ムロ「行ってきます!」



東京 府中市


京太郎「おお、親近感の沸く景色が広がってるな」

ムロ「東京って言っても落ち着いた住宅街が多いですもんね、この辺」

まこ「じゃが、こっから電車で1時間もかからずに都心のビル街じゃ」

京太郎「いいなぁ東京、そういうトコ」


 「ふっふっふ……いいだろーうらやましーだろー!」


京太郎「なにっ?」

ムロ「あ、この人は……!」

 「んー? これでも一応変装してたんだけど、バレちゃったなら仕方ないなぁ。私が……」

まこ「大星淡じゃあ」

淡「おおほ……うん、そう。アンタ菫と打ってた人だよね、そっちは県代表の1年坊?」

ムロ「ど、どうも」


淡「で、アンタが京ちゃん」

ムロ「京ちゃん……」

京太郎「どうも大星さん、須賀京太郎です。見ての通り、待ち人来らずって感じでさ」

淡「んとね、いくら待ってもサキは来ないと思うよ?」

まこ「なんじゃと」

ムロ「なにかあったんですか?」

淡「ほれ!」

京太郎「なになに……『ここどこ?』……知るか!」


まこ「はぁ、またか……」

ムロ「だ、大丈夫なんですか!?」

淡「まぁ、いつもの事だし大丈夫なんじゃないかな。部員に探させといたし」

まこ「こんな事に休日使わせるんは気ぃ引けるがのう……」

淡「3軍以下の仕事は部室の掃除・備品の買い出し・サキの捜索」

京太郎「当たり前のように部活内容になってる……」


まこ「じゃが、土地勘の無いトコで迷子はシャレにならんけぇ」

京太郎「正直、助かりますね」

ムロ「私達はどうしてましょうか?」

淡「じゃあ連絡くるまでテキトーにダベってよっか」

ファミレス


カランコロン

淡「ふぅ~、すずしぃー」

京太郎「大丈夫か?」

ムロ「はい」

まこ「4人、禁煙席で」


京太郎「そういやさっき3軍以下はって言ってたけど、白糸台って部員何人くらい居るんだ?」

淡「んーとね、私のチーム虎姫を含めて1軍が5チームで25人」

まこ「白糸台の麻雀部に複数チームがあるのは知っとったが……」

ムロ「1軍だけでうちの8倍ですね」

京太郎「言うなよ……」


淡「そんで2軍が40人で、えっと……あとの端数が3軍で、んー80人くらい?」

京太郎「つまり大体150人か……多いな!?」

まこ「風越の1.5倍おるんか」

ムロ「うちの50倍……」

京太郎「言うな」

  「お待たせいたしましたー」

京太郎「ほら、お食べ」


淡「私いちごパフェ」

まこ「わしはチーズケーキじゃ」

ムロ「クリームあんみつは私のです」

京太郎「で、オレがりんごパイか」


ムロ「こんなにのんびりしてていいんでしょうか」

まこ「なんもかんも迷子が悪い」

京太郎「ちゃんと待ち合わせ場所は連絡しといたんだろ?」

淡「んっ、バッチシ!」

京太郎「ならいい。下手にこっちも動いたら面倒になるし」


ムロ「あんみつ、日本茶がほしくなりますね」

淡「そうそう、尭深の淹れるお茶ってスッゴクおいしいんだよー」

まこ「中堅しとった人じゃな」

淡「いっつもお茶飲んでるの、尭深」

京太郎「試合中でも湯のみ持ってたよな」

淡「今日もね、世界のお茶展? だかなんかに行ってくるーって言ってた」

都内 某イベント会場


尭深「ふぅ……去年より人多い……」

尭深「でも、なんとか限定缶は確保できてよかった……」

尭深「紅茶はこれくらいでいいかな……みんなが飲む分」


尭深「あれは……ニルギリか。うん、試してみようかな」

ドンッ

尭深「あっ……す、すみません」

ハオ「いえ、こちらこそ不注意で……あ」

尭深「あ」

莉子「あれ? ねぇ友香ちゃん、アレって白糸台の渋谷尭深じゃない?」

友香「ホントでー! 臨海のハオ・ホェイユーも一緒でー!」




京太郎「ふーん、随分と凝ってるんだ」

淡「あの宮永照も認めたおいしさ、だよ」

ブロロン

淡「アレ? あの車は……」

京太郎「誰か知ってる人でも来たのか?」

淡「そういう事ね。アンタ達も知ってると思うけど」

カランコロン

咲「お、遅れちゃってごめんなさい……!」


まこ「咲!」

京太郎「おせーよ! ったく……久しぶりだな、咲」

咲「うん、久しぶり。京ちゃん」

ムロ「お久しぶりです、宮永先輩」

咲「ムロちゃんとは1年ぶりかな。あっ、全国出場おめでとう」

ムロ「ありがとうございます、宮永先輩もおめでとうございます」

まこ「コレばっかりは変わっとらんようじゃのう、咲」

咲「染谷先輩……いやぁお恥ずかしい」


 「まったくだ。今日だって私が偶然見つけたから良かったものの……」

咲「あう、すみません……」

淡「お疲れ様サマ、菫~」

菫「先輩を付けろ、淡」

淡「今日はどうしたの?」

菫「たまには遠くまで走らせようと思ってたんだが、途中で見知ったツノを発見してな、保護したんだよ」

咲「ホント助かりました」

菫「それに……なかなか興味深い顔にも会えた」


京太郎「初めまして。清澄2年の須賀京太郎です、咲が面倒かけてすいません」

菫「かまわないよ。一応、私の後輩でもあるからな。指導した期間は短いがね……紹介が遅れた、弘世菫だ」

ムロ「初めまして。室橋裕子です。清澄高校1年です」

菫「ああ、君が今年の長野個人2位の」

ムロ「知ってるんですか!?」

菫「それなりにな。インカレ強豪校のスカウトマンには小学生から目を付ける者も居る。流石に私はそこまでしないが……さて」


まこ「去年は世話になったのう」

菫「それはこちらの台詞だ、染谷まこ」

淡「随分やられちゃってたよねー」

菫「お前は……まぁ、そういう事もあったし、君とはまた打ってみたかったんだ」

まこ「わしはかまわんが」

菫「咲がな、君が存分に実力を発揮できていなかったと言うもので、ずっと引っかかっていた」

まこ「やりにくい相手が居たもんでのう。じゃが、そりゃただの言い訳に過ぎんけぇ」


菫「……よかったら、敗者に弁明の機会を与えてもらっても?」

まこ「……かまわんよ。わしも敗者じゃ」


咲「お昼なのに火花が見えるよ……」

京太郎「オレも見えるぞ」

ムロ「私にも」

淡「へぇ~面白そうジャン!」


淡「あの試合、阿知賀ばっか目立ってて他の3人とも地味だったしねー」

咲「ちょ、ちょっと淡ちゃん……!?」

菫「ほう……」

まこ「そこは玄人好みと言ってもらいたいわ」

淡「しかもテルの後の試合だったからなおさらね」

菫「お前も言うようになったな」


淡「これでも現チャンピオンですから!」

菫「新2・3年生しかエントリーしてないスプリングでだろう」

淡「ふっふん、新1年生にはわかるまい」

菫「お前……その理屈だと小学生に負けるぞ」

淡「実力で言えば100年生だもんね!」

ムロ(100年生?)

京太郎(バカなのか?)

菫(そっちは留年したのか……)


菫「まぁいい。では早速だが移動しようか」

咲(!? 私もケーキとか食べたかったよ……)

  「ありがとうございましたー」


ピピッ ガション

菫「さ、乗ってくれ。淡、今から行く雀荘の場所はわかるな」

淡「うん、あそこでしょ? 知ってる知ってる」

菫「それならいい。じゃ、先に行って待ってるぞ」

淡「ちょちょ!? ちょーい! え? 私は乗っけてくれないの!?」


菫「悪いな淡、この車は5人乗りなんだ」

咲「ごめんね、淡ちゃん」

淡「へ……」

まこ「ほんじゃの」

ムロ「お、お先でーす」

京太郎「バッグくらいなら預かるけど?」

淡「あ、うん。お願い……」

菫「では出発」

ブロロン

淡「……」

淡「行っちゃった……マジで」


ムロ「あの、いいんですか?」

菫「ここから歩いて10分ほどの店だ。腹ごなしのウォーキングには丁度いいだろう」

まこ「いや、ウォーキングっちゅうか……」


 「はぁ、はぁ……あ、あれあれー!? 車のくせに、お、遅いんじゃないのー!? っはぁ……!」


ムロ「凄い勢いで追いかけてきてるんですけど」

咲「わ、早っ!?」

菫「おっと、気が効かなくて悪かった。今、冷房を付けよう」

ウィーン

 「あ゙ー! 閉めるなコラーッ!!」


京太郎「……はしってんなァ」

今日はここまで
尭深のカフェイン摂取量が怖い

こんばんわ
トシさんが思ってた以上に若くてビックリしました

グレンマレイたそprprしつつ投下します

雀荘


淡「ついたああ……はぁ、はぁ……っはぁ……も……むり」


咲「お疲れ様、逆に遅かったね淡ちゃん。大丈夫?」

淡「か、片腹大激痛……」

咲「……食後にダッシュするからだよ」


淡「あ、あんなの……無理だよ。流石に、高校100年生でも、車は、無理……」

咲「いや、別に並走する必要はなかったんじゃないかな?」

淡「もう……喉かわいたーん!」

咲「持ってくるよ。なに飲む?」

淡「コーラ、炭酸抜きで」

咲「たいしたものだね」


淡「で、いま何局目?」

咲「東三局だよ。最初、東一局に染谷先輩が和了ってその後……」


ムロ「ツモ! メンタンピン・一発。1300・2600」


咲「またムロちゃん。連続で一発ツモだね」

淡「へー」

東四局
親:室橋裕子


菫(……まさか、これほどとはな)

菫(染谷まこは何かを読み取って和了っているフシがあった)

菫(周囲の状況によって柔軟に手牌を構築する……それゆえに狙いを定めにくい)

菫(それに比べて、この1年……)

ムロ「……」

菫(常に真っ直ぐ。それでいてギリギリの所で躱す……そこに違和感がある)


菫(愚直なまでに和了に向けて前進するクセに、ここぞという時はいとも簡単にそれを崩す)

菫(執着の色を一切見せずに切り捨てる。あまり深入りするのは……)


キイィィン


京太郎「……」

菫(それに、こちらも何か来ているようだ……)


咲「どこまでやれるか見せてもらおうかな、京ちゃん」

淡「なーんか嫌な感じィ」

まこ(見えるか? 京太郎)

まこ(松実宥が言っとった事じゃ。弘世菫が相手を射貫く時のクセ)

まこ(わしゃそこまで細かい動作はよう見えんがの。狙い撃つ時はまず……)

京太郎(右手が動く)


菫「……」

ピクッ


京太郎(動いた! ターゲットは……)

まこ(その後の視線……向けられた相手が次の標的)

まこ(お前なら見えるはずじゃ)


京太郎(……)

京太郎(見えない)


京太郎(ハハ……ってか、そりゃそうだよな)

京太郎(視線で狙いがバレるってんなら)

タンッ

菫「ロン。8000」

京太郎「……はい」


京太郎(目を伏せてればいいんだから)

ムロ「私の親がぁ」

菫「すまないな」

咲「京ちゃん……」

京太郎「ま、まだまだこれから!」

ムロ(……入ってたよな、先輩)



南一局
親:染谷まこ


まこ(それで振り込んだっちゅう事は……?)

京太郎(先負みたいに相手から当たり牌を引き出すタイプではないってわけか)

京太郎(現にオレが捨てたのは手出しの……いや、ツモ牌はくっついた)


京太郎(相手の手牌に不要牌を作りだす能力!? それが弘世さんの当たり牌に?)


京太郎(それって、不要牌が複数存在する場合はどうなるんだ? そもそも、捨てたのはオレの意思だ!)

菫(当惑しているようだな。この和了がよほど彼のお気に召したらしい。このまま揺れてくれればあるいは……)

京太郎(テンパイしてた状態でならともかく……待て、思い出せ。だって宥さんは)

京太郎「すぅ……はぁ……」

菫(持ち直した? 自分を抑える術を知っているようだ)


京太郎(よし! わからん!)


京太郎(わかんねーけど、100%射貫ける訳じゃないのは確かだ)

京太郎(狙われる確立は1/3。さっきは当たったけど、躱す事だってできる)

京太郎(宥さんだってやってた、それにムロだって……!)


ムロ「リーチ」

菫(またか)


まこ「チー」

ムロ(潰されたァ)

まこ(あんまし暴れさせとくわけにもいかんけぇ、ここは攻めに行くかの)

菫「……」ピクッ

京太郎(3人ともきてる。ここは素直にベタオリ……さぁ、殴りあえー)


まこ「ツモ。500オール」

まこ(安くても和了は和了じゃ)


まこ「1本場」

南1局 1本場
親:染谷まこ


淡「やっぱ地味ぃ~な和了」

まこ「そんなん自分でもわかっとるわい!」

咲「あはは……」


まこ「ローン! 2100!」

まこ「ツモ! 900オール!」

まこ「ロン! 3800じゃ!」

京太郎「おおぅ……」



南1局 4本場
親:染谷まこ


ムロ「調子いいですね」

京太郎「なんか意地になってません?」

まこ「なっとらん!」

咲「染谷先輩すごい」


菫(まったく、照じゃあるまいし。四連荘だと?)

菫(止める……次は少し無理をしてでも射てみよう)

まこ(おっと。こん顔、表情は……)

まこ「んー、これで」

タンッ

菫(避けた……のか? 的を絞ろうとするとこれだ)

菫(追いつけるか? それとも狙いを変えるか?)

ムロ「……」

菫(室橋は射貫けない。そうなると標的は須賀京太郎……)

菫(悪いな)

ピクッ

菫(討たせてもらう……)


京太郎「ポン」

菫「!?」

京太郎(捕まってたまるかってーの)

菫(……逃がさん!)

ムロ(お、ラッキー。和了形見っけ)

まこ(今度はコッチか)


まこ「チー」

ムロ(ん!? あーあ……)

まこ(ずらせたか)


ムロ「ポン!」

ムロ(なら、自分から仕掛けるまで!)

京太郎「それポン!」

ムロ(なぁ!?)


まこ(こりゃあ、ちっと場が乱雑すぎやしないか)

菫(ちょこまかと……これでは狙いが定まらない!)

タンッ

京太郎(逃げてるばっかと思ってた?)

菫(あ……これは)


京太郎「ロン!」


咲「おお~」

京太郎(ちったぁいいトコ見せねーとな)



対局結果

1位 まこ「安手でも数でカバーじゃ」
2位 ムロ「みんな待ちの切り替えが速いなぁ」
3位 菫「出和了にこだわりすぎたか」
4位 京太郎「後半は悪くなかったぞ」

淡「あれー、菫ってば精度落ちた?」

菫「そんな訳はない。相手の回避能力が一枚上手だったというだけの事だ」

咲「染谷先輩、流石です」

まこ「部長の面目躍如ってとこかの」

ムロ「お疲れ様でした。後半荒れましたね」

京太郎「ああ。でも上手い具合に乗れてよかったわ」


京太郎「それでさ、どうかな。少しは成長した?」

咲「うん。正直見違えたよ」

まこ「わしが育てた」

ムロ「いやいや『わしら』、でしょう」

京太郎「そうだな。先輩達や和、他校の人達やムロにも色々と世話になったよ」

咲「そっか」

京太郎「まぁ、ずうずうしくもこれからも世話になるつもりなんだけどな。やっぱ1人じゃ限界あるし」


咲「昔の京ちゃんだったら東場でトビだったよね」

京太郎「そりゃねーよ……って強く言えないのが悲しいぜ」

咲「男子三日会わざればってやつだね」

淡「ふぅ~ん。やるねぃ京ちゃん」

京太郎「こりゃどうも」

淡「それでさ、さっき菫の狙い撃ち躱してたじゃん。アレ何?」

菫「そうだな、私も聞いておきたい」

京太郎「何ってなぁ、宥さんの真似してみただけだけど」

菫「松実宥!? やはり何か知っていたのか……」

京太郎「去年のインハイの団体戦終わった後に、阿知賀の皆さんが遊びに来たんですよ。それで……」


宥『……えーそんな、凄くないよ。あれは赤土先生が教えてくれたの、弘世さんにクセがあるって』

宥『うん。相手から狙って出和了る時は、右手が数ミリうしろに動くの。その後の視線に注意すれば狙う相手がわかるから』

宥『動きを変えて撹乱。それで、追ってくる時は無理をしてるハズだから、その隙をついて……』

宥『赤土先生が映像とか牌譜とか用意してくれたおかげでね。そういう訳なの、それで……あのね?』

宥『あの……クーラー付けてもいいよ? みんな汗だくなのは流石に悪いし……』


京太郎「……って事です」

淡「だってさ!」

菫「そうか……全然気にもしていなかったぞ」

京太郎「そう聞いていたものですから、目を閉じてた時はビックリしましたよ」

菫「苦肉の策だ。改善するところが目線くらいしか見当たらなかったんだよ」


菫「それで、他に気になるところは無かったか? なにやら私に放銃した時、動揺していたようだが」

京太郎「ああ、実は……」

咲「……へぇ、京ちゃんにそんな能力が」

京太郎「スゲーだろ。姉帯さんの追っかけリーチとか無効化できるんだぜ」

淡「ああ、あのおっきい人ね。でもあの人私には追っかけてこなかったよ?」

京太郎「ダブリー+配牌5向聴じゃなぁ……」

菫「ふむ、そういう事か」

京太郎「はい。ですから、弘世さんも狙った相手から当たり牌を引き出すんじゃないかと」

菫「それは当てが外れたな」


菫「照が言うには、私の能力は相手を狙う事で、待ちをその相手の牌に絞る能力らしい」

京太郎「その待ちを絞るってのはどういう事ですか? まだ2~3向聴だったら目的地は複数ある」

ムロ「ですね(私は一つだけど)」

京太郎「つまり捨てる牌もいくつもある。でも、弘世さんはそんな状態でも直撃させるじゃないですか」

まこ「そういやぁそうじゃったの」

淡「菫はシャープシューターだからね!」

ムロ「どういう事ですか?」


菫「では、実際に射貫く時に私がどうしているか、簡単に説明しよう」

菫「まず、相手を見定める」

菫「射る」

京太郎「待って」


菫「当たる……ん、どうした?」

京太郎「はしょりすぎでしょ! もっと詳しくもっと細かく!」

まこ「簡単にも程があるわ……」

菫「そうか。しかし、私が意識しているのはそれくらいでな」


菫「実際の弓と同じだ。無心のうちに矢が放たれるように、私の待ちに相手の牌が嵌る時、私は相手を射貫いているんだ」


まこ「……」

ムロ「……?」

京太郎「は、はあ……」

菫「そう、無心……なるほど、右手が動いていたのに全く気が付かないのも無理はない」

淡「何ひとりで納得してるのかわかんないけど、みんなポカーンだよ?」

菫「うぐっ……!?」

咲「あ、案外自分の事なんてわからないものだよ! ね?」

ムロ「そ、そうですね。実は私も最近までよく分かってませんでしたし……」

淡「そうなんだ。へー」

ムロ「はい。私がこの能力に目覚めたのは今年の3月頃なんです」

咲「へぇ、なら半年も経ってないんだ」

淡「ほうほう、それで県代表……」


淡「……ちょっと試してみたいなぁ、ソレ」


菫「コラ、代表同士は対局してはいけないルールだろう。忘れたのか?」

淡「おぅ! そーだった!」

咲「それじゃあムロちゃんとは大会で、だね」

ムロ「はい。その時はよろしくお願いします」

淡「むーん、今ちょっともわもわーってやる気が出てきたのにぃ……」


淡「ん? もわもわ……いや、メラメラ……ムラムラ……?」

咲「私も、今すごく麻雀したい気分だよ」

京太郎「さて、次は咲が白糸台に行ってからどれだけ成長したのか……オレが直接確かめてやろう」

咲「ふふ……それはこっちのセリフだよ、京ちゃん」

京太郎「やるか!?」

咲「やらいでか!」

淡「ハイ! 私もヤる!」


まこ「残り一人、どうする?」

菫「私が直々に躾け直してやってもいいが、ここは……」

咲「!」ピクン


ゴゴゴゴ


淡「んっん~?」ゾクゾク

菫「……なんだと」

ムロ「っ!?」ゾワッ

京太郎「え、何?」

まこ「おぅ?」

淡「あっれー、なんでココに居んのー?」


淡「テルー」


ガチャ

 「……」

咲「お姉ちゃん!?」

 「咲……」


京太郎「ええ、照さん!?」

ムロ(あ、あれが……)

菫「お前どうして」

照「……」

ムロ(宮永先輩のお姉さんで、去年までずっと王位を守り続けていた)


ムロ(宮永照……!)

今日はここまで
ブラインドシューターすみれ(19)に進化しました

こんばんわ
春眠を貪ってたら随分と間が空いちゃった

今回で白糸台編はおしまい
投下します。長めです

咲「お姉ちゃん!?」

照「咲……」

淡「なんで居んのー? なんでメガネなのー?」

照「淡……」


照(これは一体……)



10分前 住宅街


照「この辺のはずなんだけど……」

照「もうそろそろ着いてもいいと思う」


照「なんでちょっとオシャレなお店って住宅街の中にあったりするんだろう?」

照「大通り沿いに出店してくれればわかりやすくていいのに……」

照「でも、そういう所だとお金かかっちゃうんだろうな」


照「だからって一見普通のアパートの一室で開いてるお店はちょっと困る」

照「まったくもって分かりにくい」

照「ただでさえ初めてのお店は困惑したりするのに……」

照「部屋の前に行けば看板とかプレートとか掲げてあって分かるけど」

照「2階にあるお店の場合は建物の入り口にも案内ほしいよ」

照「入ってもいい建物なのか迷っちゃう……」

照「だから隠れ家って言うのかな」

照「って、あんまり愚痴ばっか行ってもしょうがないか。ところで……」


照「ここどこ」


照「歩いても歩いても、同じような場所に見える」

照「これだから住宅街は……」

ゴ

照「似たような区画に、似たような家」

照「そのくせ道は入り組んでて、真っ直ぐ進んでるのにいつの間にか方向が変わってる」

ゴゴ

照「また同じ色の屋根……」

照「曲がりたくないのに丁字路に突き当たるっ……」

ゴゴゴ

照「こうなったら」

ゴゴゴゴ

照「右腕を使わざるを得なっああぁぁ……!?」

照「あ、アレ……あの看板」


照「あの雀荘見た事ある……!」


照「なんで、どうしてこんなところに?」

照「ま、まぁいいや。アウェイはもう疲れた……ホームでゆっくりしたい」

照「足もいい加減に棒になりかけてるし、喉もかわいた……」

照「ついでに何人かトバしてスッキリしよう」

ガチャ


 「お姉ちゃん!?」


照「咲……」


照(どゆこと)

雀荘


照(いや、落ち着け。まずは状況の把握)

照(咲と淡はいい。菫は……ひとまず置いといて)

照(隣に居るのは……)


照「京太郎君、久しぶりだね」

京太郎「はい。お久しぶりです、照さん」

まこ「なんじゃ、宮永照と面識あったんか?」

京太郎「ええ、正月に帰省されてたんで、新年の挨拶に咲の家に行ったら……いらっしゃって……それで……」


京太郎「あ、あぁ、あぁぁぁ……」

ムロ「せ、先輩!?」

まこ「ちょ、なにしたんじゃ!?」

咲「京ちゃんにちょっと家族麻雀に参加してもらっただけですよ」

淡「ナニソレすっごい楽しそう!」

菫(心中察するぞ……)


照(そういえば咲が昨日言ってたっけ。あれは染谷まこ、そして先輩呼びしてたのは1年の県代表の子……だと思う)

照(顔は写真でチラっと見ただけだけど、少し印象が違うかな)


菫「それで、なんでお前がここに居るんだ?」

照「私は……咲がお世話になった人が来るって聞いたから、私も何か力になれないかと思って」

菫「ふぅん? それは随分と殊勝な心掛けだな」

京太郎「おお!それはありがたいです!」


咲「あれ、でも今日は予定あるって言ってなかったっけ? 本屋行くとかなんとか」

照「いや……ああ、アレはもう済んだ。済んだ用事なの」

淡「それにしても良くここに居るって分かったね?」

照「それは……」

淡「サキなんて、前日に集合場所教えてもまた迷子になっちゃったんだよ」

咲「も、もう淡ちゃん!」

まこ「ホント相変わらずじゃけぇ」

咲「染谷先輩まで……」


照「また? それでよく合流できたね」

咲「あ、うん。途中で弘世先輩に送ってもらったんだ」

菫「ドライブしてたら偶然みつけたんだよ」

照「ドライブ……そうだったんだ」

照(……ドライブ、車、カーナビ、ナビ……)

照(これだ)


照「私は……えと、じ、じーぴーえす? を使って咲の居場所を検索した。ほらあの、スマホのやつ」

咲「え、そんな事できるの?」

照「できるっ」

照(たぶん)

菫「ほう、照にしては随分と機転がきいてるじゃないか」

照「にしては、は余計」

照(セーフ!)


咲「それなら連絡くれればよかったのに。私だって電話に出るくらいできるよ?」

照「サプライズです。……あとプロの威厳的なのとかあるし」

淡「ビックリしたー! ねえねえ久しぶりにさ、私と打とうよ!」

咲「そうだ、今ちょうど一人メンツが決まらなくて」


咲「早速だけどお姉ちゃん入ってくれないかな?」

東家:須賀京太郎
南家:宮永照
西家:宮永咲
北家:大星淡


京太郎「おおう……」

まこ「骨は拾っちゃる、安心せい」

ムロ「トブなとは言いません。せめて東場くらいは耐えて下さい!」

京太郎「東場……4回耐えれば……」

菫「誰かさんが連荘しそうだけどな」

まこ「宮永照は最初の局は見に徹するけぇ、少しは生存率も上がるじゃろ」



東一局
親:須賀京太郎


照「ツモ。300・500」

京太郎「話が違う」

まこ「あっれー」

照「京太郎君の本質は前に打った時見たから」

まこ「うーん、荒れる前に和了っときたかったの」

ムロ「唯一のチャンスでしたね……」

東二局 2本場
親:宮永照


照「ツモ。1000オールの2本場は1200オール」

京太郎「ほら、咲か淡どっちでもいいから照さん止めろよ」

淡「人任せか!」

京太郎「オレは振らないようにするだけで精一杯なんだ……!」

咲「京ちゃん……もうちょっと頑張ろうよ」

照「3本場」



東二局 3本場
親:宮永照


ムロ(先輩、まだ入れない?)

京太郎(この配牌がなぁ……照さんにも効果はあるはずなんだけど)

京太郎(いくら早くても6巡目以降って事はそういう事だろ?)

京太郎(生牌……誰か鳴いてくれ)


咲「カン」

京太郎(乗ってきた! ……え、カン? 咲?)

チャッ

京太郎(大明槓……)

咲「……」タンッ

京太郎(ふぅ……)

ムロ「ふぅ……」

菫「いや、まだだ」

咲「ポン」


まこ「こりゃあ加速の鳴きじゃのうて」

咲「カン」チャッ

ムロ「加槓……!」

照「……」

淡「あらぁ」


咲「ツモ」


咲「嶺上開花のみ。500・1000の3本場は800・1300です」

京太郎(まぁ、良しとするか)

東三局
親:宮永咲


キイィィ

京太郎(お……)

菫「ほう」

ムロ(3向聴!)

まこ(抜けおったわ)

京太郎(これは大事にしたい。門前で仕上げるか、鳴いてさらに進めるか……)

京太郎(わかんねぇ……普通に打って凌げる相手か? ……いや)


京太郎(そんなの関係ない。ここはいつもどおり、この配牌から最善の手牌を構築する)

京太郎(……和ならそうするだろ?)


照「ツモ。300・500」

京太郎「うぅーん……」

まこ「あー惜しい」

ムロ「これは和了たかったですね」


咲「ん? 京ちゃんのそんなにいい手だったの?」

菫「淡、お前の絶対安全圏、破られてたぞ」

咲「ええ!?」

淡「へー」

咲「へーって淡ちゃん、あんまり驚いてないね?」

淡「なんかね、京太郎のあのカンジ、そんな気がしてたんだ」

淡「でも……」



東四局
親:大星淡


淡「これならばどうかな!?」

ギャギャッ

淡「リーチ!」

京太郎(来たなダブルリーチ!)


菫「ダブリー掛けか、これだと」

京太郎「……」

ムロ(5向聴に戻ってる……)

まこ(ダブリー掛けじゃと? ダブリーする事でまた支配が強まるような言い方じゃ)


淡(どうやらコレは突破できないみたいだね! まぁ京太郎程度じゃ)

ギギギー

淡(私のダブリーは……)

淡「あァ?」


照「ッ……!」

対局結果
1位 照「これぞ我が必殺の奥義」
2位 淡「アレ、淡ちゃんのダブリー無双は?」
3位 咲「さすが宮永プロ、なんてね」
4位 京太郎「ハコったぁ……」


淡「うあ~終わっちゃったぁ!」

照「淡……?」

淡「京太郎がトバなかったら私が……んぅ?」

照「奥の手は、あまり簡単に見せびらかさない方がいいよ」

淡「うっ」

菫(えっお前は?)

照「それに、カドが遠い時に狙うのは危ないって言ったよね?」

淡「うぅっ」

菫(お前さっきギギギーって……)

照「淡?」


淡「だって、久しぶりにテルと打ったからいいとこ見せようとして……」

照「はぁ……もう」

ナデナデ

照「これから気を付けるようにね?」

淡「ほーい」

京太郎「久々にブッとんだぜぃ……」

咲「お疲れ様」

京太郎「おうお疲れ。いやぁ、咲に大明槓された時はマジでビビったぁ……」


咲「あはは、あの牌姿から暗槓だけで和了ろうとすると槓子以外の面子の構築に時間かかっちゃうみたいだし」

咲「あの局は出目が7で、先に淡ちゃんが和了っちゃうからね。京ちゃんから鳴いて進めさせてもらったよ」

京太郎「そうか、オレにしてみれば安く済んでよかったぜ」

京太郎(相変わらず何言ってんだ……コイツ)


菫「では、次は私達だな」

ムロ「宮永プロ、よろしくお願いします!」

まこ「ついにわしも覗かれるんかのう。噂の照魔鏡とやらに」


照「あまりプライベートな事までは見ないようにする」

ムロ「ドコまで覗く気ですか!?」


照「ジョークジョーク、ここはジョークアベニューです」

菫「親、お前だ。早く開門しろ」

20分後


照「ふぅ~む、なるほどなるほど」

照「……ん?」

咲「どうかしたの、お姉ちゃん?」

照「えっと、室橋さんの能力。自覚してるのでいいから詳細教えてもらっていいかな?」

照「隠しておきたいだろうし、無理強いはしないけど」

ムロ「いえ大丈夫です。私も能力に目覚めて日が浅いので、自分でもまだまだ分からない事もあるかと思いますが」

ムロ「私の能力は……」



淡「振り込まないの!? ズッコイ!」

ムロ「流石にリーチしたら無防備になっちゃいますけどね」

菫「しかし、その後は放銃してしまうのか」

ムロ「振り込んだ次の局は極端に運気が下がってるらしいです。前に井上さんに言われました」

咲「あと、和了形が分かるのもいいね。攻守のバランスが」


京太郎「それで、何か引っかかる事でもあったんですか?」

照「室橋さんの本質と、実際の能力に齟齬がある」

ムロ「それって、どういう……?」

照「今の姿は本来現れるべき姿ではない」

ムロ「ええと……え?」

照「何か外部的な影響を受けていて、今のカタチになったと思われる」

淡「へー」


まこ「ウ、ウチの子は大丈夫なんですか!?」

京太郎「なんか症状が悪化したりとかは!?」

ムロ「誰がウチの子ですか」

照「落ち着いてください。親御さんは心配されるでしょうが、今すぐ何かあるという訳ではありませんから」

菫「なんのコントだこれは」


照「ただ、その外部的影響がこれから無くなったり、変化する可能性は高いです」

京太郎「もし、その外部的影響がどうこうしたら……?」

照「今の能力は無くなります」

ムロ「ええええ!?」

京太郎「なんてこった……!」

まこ「せっかくオカルト使えるようになったっちゅーに……」

ムロ「そ、そんなぁ……」

照「無くなるはちょっと誤解を生む発言だった。オカルト自体は無くなりはしない」


照「能力が変化する。でも本質は変わらないから、たぶん危険牌の見極めとかは引き続き使用できる、と思う」

ムロ「本当ですか先生!」

照「多分ね。それで……コホン、えーと……」

ムロ「どうしました?」

照「いや、診断終わったし……ほら、あるんじゃないかなぁって」


京太郎「どうぞ、お納め下さい」

ムロ「あ、ちょ!? それ調布のパルコで買ったやつ!」

照「わるいね」


京太郎「いいだろ、元々は咲達に渡すつもりだったんだし」

咲「京ちゃん、お姉ちゃんの前でお菓子出すなんて……!?」

ムロ「そっちのカステラは自分用のって言ったじゃないですかぁ……」

京太郎「そうだっけ?」

照「じー」

ムロ「うぅ……」


ムロ「お納め下さい」

照「それを聞きたかった!」

咲「ちょっと、お姉ちゃん? ソレ元々私達にくれるって言ってたよね? 聞いてたよね?」

淡「マジでホント手加減してよテル……」

照「もらったのは私」

咲「受け取ったのは、でしょ!?」


ムロ「なんか揉めてますね」

京太郎(揉めるのは淡くらいだけどな……)

菫「個数で分けられるのならよかったんだが。ケーキみたいな切り分けるようなのだと」

菫「アイツ、そういう時は自分で切り分けると言って聞かないんだ……」


誠子『宮永先輩! コレおかしいでしょ!?』

菫『おい、なんで私の分にはイチゴのってないんだ!?』

尭深『薄い……ペラペラ……』

淡『テルー! 270度は取り過ぎだよ! もうほぼ1ホールじゃん!?』

咲『誤差ってレベルじゃないよっ!』


菫「はぁ……」

京太郎「よくわかりませんが、大変だったようですね」

まこ「カットされとるのがあったから、それにしときゃよかったかの」

淡「これは白糸台高校麻雀部が、責任を持って預かります!」

照「絶対行くから。明日も休みだし」

咲「お姉ちゃん、卒業してからもちょくちょく来るよね。食べに」

照「都内有数のお茶とお菓子を満喫できる場所だもん」

菫「いい加減、後輩の世話になるのはやめたらどうだ?」

照「お菓子と麻雀の指導。正当な対価、win-win、フェアトレード」

菫「ここぞとばかりにそれっぽい言葉を並べ立てる」


菫「あ、そうだ照」

照「なに?」

菫「私の能力について、説明をしてくれないか?」

照「は?」


京太郎「さっき本人に聞いたんですけど、能力発動中は無になってるそうなんで……」

照「しょうがない。対局中は頭空っぽの菫に変わりまして、説明いたします」

菫「オイ」

照「菫の能力は、待ちを相手の牌に絞る事ができる」

照「具体的にはツモ牌に変化を与える」

京太郎「待ちを寄せる為に有効牌を引き入れるって事ですか」

照「そう」

ムロ「手牌が良くなるのはわかりました。でも……」

京太郎「和了牌は相手から出るわけですよね。リーチしてない状態でも直撃させるっていうのは……」

まこ「数ある選択肢の中からその一つを、相手に選ばせてるわけじゃ」

咲「どういう事なの? お姉ちゃん」

照「それは」


照「菫はモテるから」

菫「……はぁ!?」


淡「まぁ確かに。弘世様ってば、それはそれはおモテになる」

菫「な、何を言ってるんだ照!?」

照「本当の事」


咲「ファンクラブって本当に存在するんだね、私ビックリしたよ」

京太郎「マジかよスゲェな弘世様」

淡「キャー、弘世様ー!」

菫「茶化すな! で、それが一体何だって言うんだ」

ムロ(モテるのは否定しないんだ……)

照「それが菫の人間性というか、そういう気質があるの」

照「人を惹きつける性質が麻雀にも表れている」


京太郎「咲なんかは牌に愛されてる、なんて聞きますけど、それとは違うんですか?」

照「それは、特定の牌を引き寄せる子達とは方向性が違う」

照「場の支配とか、山に影響を与えるんじゃなくて人間そのものに影響を与える」

淡「へぇ、菫すっごいね!」

菫「そ、そうか?」

ムロ「人に影響与えるなんて、そんなオカルト……」

京太郎「オカルト発揮するやつが言うかソレ」


照「そもそも、いわゆるオカルトというのは麻雀に限った話じゃない」

照「それが、たまたま麻雀のプレイに表れているというだけ」

咲「じゃあ、麻雀以外にもオカルトを発揮できる人が居るんだ」

照「よく周りを見渡したら思い当たるかもね」

まこ「あー言われてみりゃあ、そういうヤツおるわ」

ムロ「ええ? 本当にそんな人……」

ムロ「あっ」

京太郎「ムロ?」


  『ロン。5200っす』

  『いいんすか、それ……ドラっすよ?』

  『ロンっす』


ムロ「あ、あぁ、あぁぁぁ……」

京太郎「ど、どうした!? 急にカタカタして」

まこ「どうやら開けちゃイカン蓋を開いたようじゃな……」


照「そんなこんなで、菫は相手から当たり牌を引き出す事ができる」

京太郎「ふむふむ。でも、当たる時と外れる時がありますよね、それは何が違うんでしょう?」

照「ただ単に危険牌だった、意識的に菫の狙い撃ちを警戒していた……もしくは」


照「なにかがスイッチになっていた、とか」

ムロ「スイッチ?」

照「なにか、特定の動作が合図になって無意識への影響が阻害されている……のかもしれない」

菫「なるほど。ああ、それならさっき教えてもらったぞ」

照「え?」

菫「どうやら、射貫く時に右手がわずかに動いてしまうようだ」

照「そうだったんだ」

京太郎「逆にあの時は、目を伏せていたのに驚いて警戒が解けてたのかな」


照「私でもそんなに細かいところは気付かなかった。どうして分かったの?」

まこ「それも聞いた話での。阿知賀の、去年監督しとった赤土さんが調べて判明したそうじゃ」

照「赤土プロ……。やっぱりあの人の情報収集力はすごいな」



京太郎「今日はありがとうございました」

照「いえいえ、こちらも良いものを頂いて……」

淡「テルのじゃないからね!」

咲「渋谷先輩に切り分けてもらうからね!」


ムロ「能力の事、教えてくださってありがとうございました」

照「教えてよかったのかな」

ムロ「まぁ……診断結果にはビックリしましたけど、何も知らないよりはいいと思うので」

照「そう。インターハイ頑張ってね」

ムロ「はい!」

淡「私も頑張るからね! テルー!」

照「うん」

咲「私も。団体戦ではお姉ちゃんのポジションを受け継いだんだから」

咲「お姉ちゃんに負けないくらい活躍するよ!」

照「うん」

淡「個人戦でも活躍しちゃうよ! なんたって私は……」


淡「宮永照の後継者だもんね!」
咲「ちょっと待って」


淡「ん~?」

咲「それは昔の話でしょ?」

淡「なにがぁ?」

咲「その、宮永照の後継者って言うの」

照「咲……? 淡……?」


京太郎「おや? ふたりのようすが……」

咲「やっぱり実の妹である私にこそ、ふさわしいんじゃないかな?」

淡「何言ってんの? テルの後継者って言われてるのは私。それも去年からね」

咲「去年まで、でしょ? 今年は私が白糸台で同じ先鋒なんだから、これもう私以外いないと思うな」

淡「はぁ?」

咲「なに?」


照「……」


照「……どうしよう、菫」

菫「私に聞くな」

咲「お姉ちゃん! 聞いてよ、淡ちゃんが!」

淡「テルー! サキが!」

照「え、えぇ……そんなの、ソレ言ったのマスコミだし」

菫「仮にもお前の後継者なんだ。お前が決めてやったらどうだ?」


咲「妹の私だよね!?」

照「あ、そ、そうかな……?」

淡「カンケー無いね! エースの私が継ぐの! ね?」

照「……そう、かな?」

菫「おい、照……」


照「こ、こういうのは部長が決めた方がいいと思う……! え、えーと……」

同時刻 東京湾


『淡い日に僕らは揺れた~♪ ただ揺れた~そういう気になって~♪ 』

誠子「……アレ、宮永先輩から。なんだろ?」

『そう雪になっ――』

誠子「はい、もしもし……」

誠子「え、後継者……? はぁ……はい、はい……」


誠子「……知りませんよそんなの!?」



照「……うん、うん、わかった。じゃあね」

菫「どうだった?」

照「本人達で決めてくれって」

菫「だろうな」

照「あと、大会前の大事な時期だから、くれぐれも変な事言わないでって……」

菫「だろうな」


照「あと、今年のアジは大きいって」

菫「ほぅ」

咲「お姉ちゃん、聞いてるの?」

淡「早く決めちゃってよ、わーたーしーにー!」

照「あ、えっと……」


照「それじゃあ、インターハイで活躍した方……」

咲「活躍……うん、わかったよ」

淡「ま、待って! それって、どうやって決めるの? 総獲得点数とかじゃないよね?」

照「それじゃ駄目なの?」

淡「だって、それじゃ先鋒のサキが有利じゃん!」

照「え、そう?」


淡「だってサキが先鋒戦でトバしちゃったら、私の出番無くなっちゃうじゃん!」

照「ああ、そうか」


咲「……!」

淡「あ、その考えは無かったわーって顔してる……」

咲「でもそれは……しょうがないよね!」

淡「しょうがなくないし。不公平だし」


照「それでは個人戦の成績で、どうだろう?」

淡「個人戦かぁ」

咲「別にいいよ、私は」

照「私も個人戦では結構がんばってた方だから、そっちで活躍すればいいんじゃないかな?」

淡「てか、手っ取り早く優勝した方がテルの後継者でいいじゃん」

咲「そうだね。シンプルでいいね」


照「ふぅ……なんとかまとまった……ね? すみr」


ブロロン


菫「駅まで送ろう」

まこ「いやぁ、すまんの」

ムロ「お手数をかけます」

京太郎「い、いいんですか?」

菫「つきあってられん」


照「おぉお、おま……」

ブロロン

咲「ちょ、京ちゃん達行っちゃったの?」

淡「またか!?」

淡「もう、走る元気残ってないしぃ……」

咲「置いてくなんてヒドイよ!」

照「うろたえないで。インハイチャンピオンはうろたえない!」


咲「お姉ちゃん……?」

照「対局中は常に冷静な判断が勝敗を左右する」

照「こういう場合は、まず……」


照「こう、するの!」

バッ


淡(テルが右腕を……!?)

咲(突き上げた……!?)

照「……!」


キキー ガチャ バタン


照「前の車を追ってください!」
咲「前の車を追ってください!」
淡「前の車を追ってください!」

今日はここまで
いろいろ詰め込み過ぎた感あるね

こんばんわ

先日、うつわの本を読んでたら湯町窯っていうのを見つけまして
湯町ってシノハユで見た事あるって思って調べたらビンゴでした

島根県松江市にある湯町窯
そこのカップが、シルエットはポーランドとか東欧にあるような、ぽってりした姿なんですけど
釉薬の感じとか民藝品っぽさが和って感じで
なかなか趣があるように思います。思わずポチっちゃった

それでは投下します

京太郎「は……」

ムロ「は……」

まこ「は……」

はやり「はや?」


京太郎「はやりんだー!?」



夕方 ホテル


京太郎「えっなんで?」

ムロ「ほ、本物ですか?」

はやり「うんうん。モノホンの牌のおねえさん、瑞原はやりでっす!」

いちご「今時モノホンとかあんまり言わん方がええと思うんよ……」

ムロ「あ、ちゃちゃのんだ」

京太郎「なに、なんなの? これから撮影でも始まんの?」

いちご「撮影は昨日終わったけぇ。ちゃちゃのんまだ少し時差ボケ気味じゃ……」

トシ「あら、アンタ達もう帰ってたのね」

ムロ「熊倉先生! と……」

良子「グッドモーニングですー」

まこ「戒能プロじゃ!」

京太郎「もう夜ですよ……」

由暉子「あの、こんばんわ」

ムロ「真屋さんも!?」

京太郎「うわあ、なんか凄いことになっちゃったぞ」


トシ「今日ちょうど帰国してきたらしくてね。よかったら一緒に食事でもって」

京太郎「そういえば、さっき佐々野さんが時差ボケって言ってましたけど」

ムロ「どこ行ってきたんですか?」

はやり「今回はハワイでした! 雑誌のグラビアだったの。発売日は来月末をお楽しみに!」

ムロ「ハワイ、いいですね」

まこ「芸能人っぽいのう」

夜 そば屋


はやり「はぁ、やっと日本に帰って来たって感じするね」

良子「やはり畳は和の心ですね」

いちご「あぁ~落ち着くんじゃあぁ~」スリスリ

京太郎「ハワイにはどのくらい滞在してたんですか?」

はやり「今回は5泊7日だったっけ」

良子「そうですね」

由暉子「あっと言う間でした」


いちご「ハワイは楽しかったんじゃが、飛行機が疲れたけぇ……」

良子「日本から7時間ですから、とてもタイアードです」

ムロ「7時間ですか、それは大変ですね」

由暉子「私は明日また飛行機で北海道ですけどね」

まこ「そりゃあハードスケジュールじゃのう」

いちご「でも、すぐに夏休みじゃろ? あ、でも北海道って夏休み短いんかったっけ」

京太郎「いやいや」

ムロ「長野も負けてませんよ」

由暉子「そうなんですか?」

まこ「夏休みの短さでは日本で一番じゃ!」

いちご「それ誇るところなんか?」


由暉子「でも実際、北海道も短いですよ」

はやり「長期休暇あるだけいいよねぇ」

良子「そうですね、私もゆっくりプライベートでヴァケーションでもしたいです」

はやり「いいねー、温泉行きたいなー」

いちご「ハワイも楽しかったんじゃが、あんまり観光する時間は無かったけぇの」


トシ「アイドルも大変なんだねえ」

はやり「そうなんですよー。それで、毎年新人がたっくさんデビューしてくるんです」


いちご「都内で活動しとるのは密度高くて競争が激しくてのう」

由暉子「地方は地方で、同じローカルでも東京ローカルとはまた違いますし、知名度の問題もありますし」

良子「私達は基本的には麻雀プロのお仕事ですけど」

いちご「専業アイドルはつらいんじゃあ!」


いちご「それに最近、周りの扱いも変わってきとる気がするし……」

京太郎「扱い?」

いちご「学生時代はそれこそ、広島弁がポイントの正統派アイドルって感じで売りだしとったんじゃがの」

いちご「卒業したら、なんか体張る仕事増えて来たってゆうか」


いちご「言ってしまえばバラドル方面に転換してきとるとゆうか」

京太郎「あっ……」

ムロ「ああ……」

いちご「めっちゃ納得されとるぅ……やっぱり世間的にはちゃちゃのんバラドルなんか……」


まこ「まあ、テレビで見とる限りではそう受け取れなくもないっちゅーか……」

由暉子「でもそれで人気出てるじゃないですか」

いちご「でもでも、なんか思ってたのとは違うんよ。マネージャーも、前はそういう仕事入れんようしとったけど」

いちご「こないだなんか、ガーデニングって聞いとったのにガッツリ畑仕事させられたし……」


いちご「最近はスタッフだけじゃのうて、ファンの人達もそうゆう仕事するのに抵抗が無くなってきとる」

いちご「こんままじゃ、アイドルなのにスカイダイビングとかさせられそうじゃ……」

良子「それが大人にステップアップするという事です」

いちご「うう……現役JKに戻りたい」

由暉子「それはそれで大変ですけどね。佐々野さんも以前は……」


はやり「はやりも、ついこの前までは現役JSアイドルだったなぁ」

由暉子「つい?」

いちご「この前……?」

良子「それもう20年も前の話じゃないですか。この子達まだ生まれてませんよ?」

はやり「グハッ!?」

京太郎「かいしんの いちげき!」


ムロ「慈悲も無い……」

良子「リアル、これがリアルです。夢じゃありません。あ、そういえば」

良子「原村和、最近見ますね」

京太郎「お、そうですか」

まこ「雑誌とかでたまに載っとるの」


由暉子「原村さんはアイドルというより、カテゴリ的には有名高校生麻雀プレイヤーといったところでしょうか」

ムロ「前は企業広告とか色々やってましたけど、最近は麻雀雑誌でのインタビューとかが多いですね」

まこ「本人はアイドルとかタレントっちゅー自覚も無いじゃろう」

いちご「むぅ、それはそれで……」

京太郎「グラビアとかやんないんだよなぁ」


ムロ「……」グリグリ

京太郎「あ、痛い……いた、ゴメ……いたたた……」

まこ「アホじゃ」

トシ「バカだね」

いちご「はぁ、やっぱ現役は強いのう。ちゃちゃのんも来年には20じゃけぇ」

いちご「今の方針のまま成人迎えたらどうなるんじゃ……」

はやり「ふふふ……」

ムロ「あ、復活した」

京太郎「はやりんが おきあがり なかまに したそうに ちゃちゃのんを みている!」

いちご「ひぃっ!? はやりんが手招きしとるぅ……!」

はやり「オイデ……オイデ……」

いちご「いいえ! いいえ! いいえじゃあ!」


良子「まあその頃には、はやりさんまた一つ上のステージに上がってるんですけどね」

はやり「グハァッ!?」

京太郎「つうこんの いちげき!」

いちご「……悪は、滅んだ」



トシ「学業と芸能活動の両立は大変だろう?」

由暉子「そうですね。でも、やりがいのある仕事です」

まこ「北海道から通うのも時間かかるだろうしの」

由暉子「ローカルの仕事もさせてもらってますよ。でも、全国の人達にも見てもらいたいので」

良子「ちなみに明日からのスケジュールは……」

由暉子「北海道に戻って月曜から学校です。終業式終わったらすぐにまた東京に」

ムロ「じゃあそのままインハイ参戦ですか?」

由暉子「開会式に出たらまたお仕事があります。今年は個人戦のみの出場なんで、間が空くんです」

まこ「ウチと同じじゃな」

由暉子「……ままなりませんよね」


良子「あんまり移動が多いので東京のスクールに通う事も提案したんですが」

ムロ「……断ったんですか」

由暉子「確かに、事務所の方や学校の先生からも転校を薦められました。でも」

由暉子「やりたいことがあるんです」

京太郎「それって?」


由暉子「私、中学まではすごい地味で大人しくて、自覚はありませんでしたけどパシリとかさせられてて」

由暉子「そんな私を先輩達は変えてくれた……」


由暉子「こんな形ですけど、私は先輩に恩返ししたいんです」

ムロ「それが有珠山に残る理由……」

由暉子「地元を離れるのには、それなりの理由があると思います」

由暉子「私の場合は、幸いにも地元を拠点として活動できますから……ちょっと無理してますけど」

ムロ「悩みませんでした?」

由暉子「とても悩みました。東京に行ってできる事、地元に居てできる事とかを考えて比べたりして」

ムロ「できる事、ですか」

由暉子「でも、ひとつだけ、有珠山でしか出来ない事があった」


由暉子「私は今年も、そして来年も、有珠山高校の生徒としてインターハイに参加したいんです」

由暉子「先輩達が連れ出してくれて、受け入れてくれた、あの学校で」


由暉子「それに……」

京太郎「それに?」

由暉子「聖書を習う学校とか、カッコイイじゃないですか!」

京太郎「アッハイ」

ムロ「え、あぁ、そう、ですね……」

まこ(イタいやつじゃ……)

  「お待たせいたしました。お先、天そばのお客様」

はやり「はい、ありがとうございます」

良子「私です」

ムロ「はーい」

  「こちら、もりそばになります」

トシ「ソレこっちです」

まこ「おお、きたきた」

いちご「久しぶりの日本食じゃあ」

「お後のご注文の方、もう少々お待ち下さい」


はやり「悪いけど、お先ね」

由暉子「いえ、気にせず食べてください」

良子「いただきます」

京太郎「あー早くこねぇかな」


ムロ「天丼頼んだんでしたっけ? 揚げるの時間かかってるんじゃないんですか? ……シャクッモグモグ」

京太郎「……サクサクしてて美味しそうだな、その天ぷら」

ムロ「ムフ~」

まこ「そういや、ハワイではどういった料理食べとったんですか?」

ムロ「ハワイの料理かぁ。何だろ」

由暉子「ロコモコ食べてきましたよ。定番ですけど」

はやり「ステーキ出すお店多かったよね」

トシ「南国って感じね」

良子「サーモンやシュリンプを使った料理もよく出ました」


良子「でも、ハワイと言っても結構レストランのヴァリエーションあるんですよ」

はやり「イタリアンや焼き肉屋さんとかね」

ムロ「へぇ焼き肉ですか、意外」

いちご「一応、日本食の店もあったんじゃよ。焼き鳥とかお好み焼きとか」

由暉子「でも、ハワイで日本食を食べるのは負けた気がするって、はやりさんが……」

はやり「だって、せっかくの海外なんだもん」


良子「最後には日本でもハワイ料理は食べれるからイーブンって謎理論で解決になったんですけど」

いちご「時すでに遅しじゃ。移動時間とかフライトの時間が迫っての」

由暉子「日本食たべたい欲がピークのまま帰国、となったんです」

いちご「ありゃちょっとしたホームシックじゃけぇ」

はやり「うんうん。お蕎麦すすって、やっと帰ってきたって実感するよー」

由暉子「……それはよかったですね」


  「お待たせいたしました。こちら天丼になります。ご注文は以上でよろしかったですか?」

京太郎「はい、大丈夫です」

  「それではごゆっくりどうぞ」

京太郎「やっときたぜ。こう、周りでばっか食べられるとたまんねぇよ」

由暉子「全くです。それでは……」


京太郎「ククク、すぐに取るっていうのに、わざわざ御丁寧に蓋してくるなんて焦らすじゃねえか」

由暉子「左手を使ってもいいでしょうか?」

いちご「ええよー」

パカッ

由暉子「!」

フワァ

由暉子「すぅ~……ハァ、うふふ」


良子「いいスマイルです」

はやり「シャッターチャンス!」

由暉子「やはり日本人は米ですよ」

京太郎「オレもその意見に賛成だーっ」


はやり「こっちにまでタレのいい匂いが漂ってきてるよ」

まこ「タネも沢山じゃのう」

京太郎「そうですね。海老と大葉と、アナゴかな?」

由暉子「まだあるみたいですけど、ふふ、海老が大きくて下が見えませんね」


京太郎「さて、まずはこの丼からこぼれそうな、存在感のある海老天からいきますか」

由暉子「サクッ……モグモグ。ん、おっきくて美味しい」

京太郎「ホクホクしてて柔らかい。うん、タレも良く合う」

トシ「私も天ぷら付ければよかったかしら」


京太郎「お、コレはししとうかな? 海老の影に隠れてたのは」

由暉子「んっ!?」

はやり「あ、もしかして辛かった?」

由暉子「……甘いです。このししとう甘いです!」


由暉子「砂糖で味付けしたとかじゃなくて、自然に甘くて美味しいんです」

京太郎「そうか! だから、あえて甘辛いタレがかからないように隠れてたんだな」

いちご「ふぅ……ごちそうさまじゃ。後は蕎麦湯すすってまったりするかの」

まこ「わしも」


京太郎「それじゃアナゴいっちゃうか」

良子「モグモグ……ん」

良子(お品書きの下に小さくなにか書いてある……)

『※天そばの天ぷらは別盛りできます。お気軽に店員にお声掛けください』

良子「……モグモグ」

良子「ごちそうさまでした」


良子(見なかった事にしよう)


由暉子「うわぁ、アナゴもおっきいです」

京太郎「サックリ柔らかでコレも美味しい」


ムロ「あっ」

京太郎「どした?」

ムロ「天そばの天ぷら別盛りにできるのかぁ。そう頼んどけばよかったな……」

良子(見つけてしまいましたか)




トシ「今日は急に誘って悪かったね」

はやり「いえいえ。美味しいお店に連れて行って貰えて、はやり満足です!」

良子「それではみなさんグッナイです」

いちご「バイバイじゃあ」


ムロ「次に会う時はインハイですね」

由暉子「そうですね。お互いに悔いのないよう頑張りましょう」

ムロ「はい」


由暉子「油断することなく、あなたの心を守れ、命の泉は、これから流れ出るからである」


ムロ「えっ」

由暉子「聖書の言葉です。アドバイスというか、軽くライフハックくらいに受け取って下さい」

ムロ「どういう意味なんですか?」

由暉子「色んな解釈ができますが……簡単に言えば、確固たる信念を持って望むべし、と言ったところでしょうか」

ムロ「信念、ですか」

由暉子「はい。そうすれば、おのずと目の前の道は開けるでしょう」


由暉子「揺るがない信念を持てば、きっと輝ける未来は到来するはずです」


由暉子「もっと簡単に言ってしまえば、信じる者は救われるって感じですかね。だいぶチープになってしまいましたが」

ムロ「いえ、ありがとうございます」

由暉子「それでは、インターハイで会いましょう」

ムロ「はい」



由暉子「あ、そういえば」

ムロ「なんです?」

由暉子「さっきのは旧約聖書の箴言からの引用なんですけど……」

由暉子「これ、ソロモン王の作った格言って言われてるんですよね」


ムロ「へぇ……」チラ

まこ「ソロモン王……」チラ

京太郎「じゃあこれを抱負にでもすれば役満和了れるかな」チラ

良子「ないない、ノーウェイノーウェイ」

今日はここまで
ハワイアン料理って大体ハイビスカス添えてる気がする

こんばんわ
最近ホントねむい

ユキのマイルめっちゃ溜まってる設定出すの忘れてたけど特に問題無かった
今回から臨海編です。投下します

早朝 ホテル


京太郎「よっ、おはようさん」

ムロ「……おぁざーしゅ」

京太郎「朝弱いのにちゃんと起きてくるのはエライぞ」

ムロ「どもっす……あー、ソレなんすか?」

京太郎「ちょっくら近くのスーパーでな。トマトとレタス、あとチーズ買ってきた」

ムロ「あぁ~……えっと」

京太郎「タコスの具だ」

ムロ「そう、ソレ……」


京太郎「他の材料はあらかじめ作って持ってきたけど、野菜くらいは新鮮なの使いたかったんだ」

ムロ「ん、いい……いいね」

京太郎「だろ?」

まこ「なんじゃこの会話? ほれ、シャキっとせんかい」

ムロ「うぅ、あい……」

トシ「お茶、飲むかい?」

10分後


ムロ「コクコク、ふぅ……え、タコス作ってたんですか?」

まこ「さっきそう言っとったじゃろ」

京太郎「右から左だな」

ムロ「えー、全然覚えてないです」

京太郎「ちょっと面白かったぞ」

ムロ「むぅ、人で遊ばないでくださいよ」

まこ「ありゃあ仕方ないわ」

ムロ「ええ……」


トシ「そろそろ時間じゃないのかい?」

京太郎「そうですね。じゃあ、オレちょっと荷物まとめてきます」

まこ「わしは準備できとるけぇ」

トシ「ムロは仕度できてるかい?」

ムロ「はい、オッケーです。ブラッシングもしましたし」


トシ「メイクとかしなくてもいいの?」

ムロ「スッピンでも大丈夫なんで!」

トシ「若いっていいわねぇ」

東京 中央区


京太郎「はーるのーうらーらーのー♪」

ムロ「すーみーだーがーわー♪」

まこ「いや夏じゃけぇ」


京太郎「川沿いは涼しくていいな」

ムロ「そうですね。景色もいいし、散歩するのにも良さそうです」

京太郎「ずっと向こうまで舗装されてるし、なんか走りたくなるぜ」

まこ「ジョギングしとる人も、本読んどる人もおるわ」

ムロ「時間の流れがゆったりしてていいですね」


まこ「こっから少し行くと清澄庭園じゃ」

ムロ「清澄庭園かぁ」

京太郎「なんか巡り合わせの妙を感じる名前だ」


優希「フム。どうせなら、待ち合わせはソコにしといた方がよかったじぇ」


ムロ「優希先輩!」

優希「おひさだじぇ染谷先輩、ムロ!」

まこ「優希! と……」

ハオ「おはようございます」

ネリー「オハヨー」

ムロ「臨海の方ですね。はじめま……」


優希「そして京太郎! 例のブツは!」

京太郎「って、再会の挨拶もそのままに、いきなりかよ!?」

優希「タ・コ・ス! タコス! タ・コ・ス!」

京太郎「変な歌を歌うんじゃない。ほらこれが、1年ぶりの特製タコスだ!」

優希「うおおっ!」

ムロ「テンション高……」

まこ「しょうがないやつじゃのう。それにしても」


まこ「久しぶりじゃな」

ハオ「そうですね」

まこ「わざわざこんな朝早くに来てくれるっちゅー事は、今日はわしらと打ってくれるんじゃな?」

ハオ「ええ。私としても、強者と打つのは望むところです」

まこ「強者、か。期待に添えればええがの」

ネリー「ハオはそういうの好きだねー」

ムロ(ネリー・ヴィルサラーゼさん。去年のインハイの団体決勝大将戦……)

ネリー「強い相手と見たら打ちたがるの」

ハオ「そうですね。いや、ただ打つだけではなく……」

ムロ(宮永先輩や大星さんを抑えての区間1位)


ハオ「強い相手と打って、なおかつ勝利する」

ハオ「私は勝つ為にここにいるのです、ネリー」


ネリー「でも、スポンサー見てないよ?」

ハオ「それでもです。強敵と戦えば、それは必ず糧になります」

ムロ(もしこの人に勝てたら……)


まこ「今日はわしより強いのもおるけぇの!」バシッ

ムロ「わわっ!?」

まこ「どしたん? ぼけっとして」

ムロ「……いえ、なんでもないです」

優希「んん~っウマー!」

京太郎「落ち着け、喉に詰まっちまうぞ?」


ムロ「今日はよろしくお願いします」

ハオ「よろしく。あなたが県代表で優希の後輩の……」

ムロ「はい。室橋裕子です」

ハオ「そういえば、貴方が県代表に選ばれた時、優希が我が事のように喜んでしましたよ?」

ムロ「あはは。それはちょっと嬉しいような恥ずかしいような、こそばゆいですね。ねぇ、優希せんぱ……」


優希「むぐ……むぐぐ……」

京太郎「ほら! いわんこっちゃない!」

ムロ「いぃぃ……」


優希「ん、ん、ぷはぁ! タコスで死ぬなら本望だけど、タイミングと言うものがあるじぇ……」

ハオ「しかし、タコスには格別こだわりのある優希が絶賛するなんて、一体どんな味なんでしょうか」

優希「……」

ハオ「あ、食べちゃったならいいです。気にしてません」

ムロ「もう食べ終わったんですか……」

ムロ「ほらほら優希先輩? 後輩が来ましたよー?」

優希「うむ! ムロ、よくぞここまで辿りついた!」

ムロ「お久しぶりです。ダヴァンさんと清澄に遊びに来た以来ですね」

優希「そうだな」


ネリー「メグと会った事あるの?」

ムロ「はい、年末に。龍門渕に行くついでに寄ったって言ってました」

ハオ「ああ、あの時ですね……」

ネリー「ネリーから逃げた時か……」

ムロ「?」



1年前 清澄高校 麻雀部部室


京太郎「サーンタクロースがー 死んだ朝にぃー♪」

京太郎「ハァ……クリスマスだってのに、一人むなしく部活動か……」

京太郎「染谷部長は店の手伝い、和は家族旅行……オレはネト麻」

京太郎「わざわざ部室に来てまでやる事コレかよ」

京太郎「別にいいんだけどさ、昼飯買いに行ったついでになんとなくケーキ買っちゃったけどさ」

京太郎「それで店員に変に気ぃ使われてフォーク2つ付けられたけどさ」


京太郎「別にいいんだけど……ん?」

ガチャ

ムロ「こんにちわー。あ、ホントに居た」

京太郎「なんだ? ムロじゃん」

ムロ「なんだとはなんですか」


京太郎「クリスマスなのに暇なヤツだな」

ムロ「いや、それ先輩が言いますか……ってか、聞いてないのかな」

京太郎「ん?」

ムロ「先輩は今日どうして来たんですか?」

京太郎「染谷部長から今日は絶対に顔出せって言われたんだけどな、誰も居ねーでやんの」


京太郎「今日なんかあんの?」

ムロ「んー、私からは何も言えませんね」

京太郎「あんのね」

ムロ「……黙秘します」

京太郎「クリスマス会にしてはちょっとメンツ少なすぎじゃね?」

ムロ「そうですね。部室が広いから余計に」

京太郎「マホとか来ないの?」

ムロ「どうでしょう」

京太郎「今日は誰かに誘われて来たの?」

ムロ「……どうでしょう」

京太郎「ふーん」

ムロ「うぅ……」


京太郎「ケーキあるけど食べる?」

ムロ「食べます!」

京太郎「お前、嘘つけないタイプだろ」


ムロ「ええ、嘘なんですか!?」

京太郎「ホントだよ。オレほど正直者なんてまず居ないって。紅茶でいいか?」

ムロ「あ、はい。お願いします」

ムロ「おお、ショートケーキですね」

京太郎「コンビニスイーツで悪いけど」

ムロ「いえいえ、ありがたくいただきますよー」


ムロ「そういえば、先輩は春季大会にはエントリーするんですか?」

京太郎「いんや、様子見」

ムロ「何のですか……」

京太郎「自分の、かな」


京太郎「オレにとっての大会は、インターハイなんだ」

京太郎「どうせ出るなら夏に出たいね。その方がモチベーション上がると思うし」

ムロ「わからなくもないです」

京太郎「はい、お待たせしましたっと。砂糖は?」

ムロ「2つで」


京太郎「せっかくだし、クリスマスっぽいものが欲しいな」

ムロ「クリスマスっぽいの……なんかあります?」

京太郎「んー、ツリーとか?」

ムロ「いや流石に用意できないでしょ」

京太郎「そういや、モールのツリー見た?」

ムロ「あのスゴクおっきいやつですか?」

京太郎「そうそう。昨日モールに行った時に見たんだけどさ、飾り付けに変なのがあって……」

ムロ「ヘンなの?」

京太郎「うん、願い事が書かれた長方形の紙なんだけど」


ムロ「それ短冊じゃないですか!?」

京太郎「オレもまさかと思ったよ。季節違うだろ! って。そもそも竹じゃねぇし」

ムロ「ついにクリスマスツリーも日本風に魔改造されて……」

京太郎「せっかくだから書いてきたけど」

ムロ「書いたんですか……で、なんて?」


京太郎「ここに書いてある願い事全部叶いませんように」

ムロ「最低だー!?」


ムロ「よりによって書く事それって……。もっと他にないんですか」

京太郎「フッ……本当に叶えたい願いは自分の力で叶えるものさ」

ムロ「この話の後じゃカッコつきませんよ」

ムロ「それじゃ、先輩の本当に叶えたい事ってなんですか?」

京太郎「麻雀強くなりたい!」

ムロ「ですよねー」

京太郎「こればっかりは自分で頑張んないと」


ムロ「なんかオカルトでも使えるようになればいいのに」

京太郎「使おうとして使えるモンじゃないしなぁ」

ムロ「……ですよね」

京太郎「ここは地道にテキストや実戦で経験値溜めてレベルアップ……ん?」

ダダダ

ムロ「あ、来たのかな」

京太郎「なに? だれ?」


バタン!

優希「メリークリスマスだじぇ!」

ダヴァン「クリスマース!」

マホ「クリスマスです!」


京太郎「はぁ!?」

京太郎「優希、お前長野に帰ってたのか!」

優希「おうよ! ついさっき東京から来たばっかりだじぇ!」

京太郎「連絡くらいよこせばよかったのに」

優希「びっくりどっきりサプライズ作戦なんだじぇ。そして紹介しよう、我が同志のメグだ!」


ダヴァン「メガン・ダヴァンです。今日という日を心待ちにしていまシタ!」

京太郎「どうも。須賀京太郎です」

ムロ「室橋裕子です。ところで凄くテンション高いですね」

ダヴァン「フフフ……それは無理もありまセン」

優希「なぜならば!」

ダヴァン「長野には世にも珍しい、タコスラーメンなるものが存在すると聞きまシタ!」

京太郎「ああ、アレか。優希がラーメン屋の親父さんに作らせた」

ムロ「アレはなかなかのなかなかでしたね」

ダヴァン「それデス!」


京太郎「わざわざラーメン食べる為に長野に?」

ダヴァン「それもありマス」

優希「ほれほれ、わざわざ臨海の制服を着てきたんだ、何か言う事あるだろ?」

京太郎「あ、ああ。改めて見ると、結構女の子女の子してる制服だな」

ムロ「赤い襟とスカートにピンクのタイですもんね」

マホ「可愛いですよねー」

京太郎「アレ? でも、臨海の人ってあんまり制服着てたイメージ無いな……」

ダヴァン「そうでしょウネ。私とサトハ以外の3人は自前の衣装でしタシ」

優希「制服着れる時間は限られているというのに、もったいないじぇ!」


ダヴァン「それで、早速なんですが件のラーメン屋は……」

優希「うーん、開くのは結構遅くじゃないか?」

京太郎「7時くらいには開いてるかな」

ダヴァン「そうですか……待ちきれないデス」

ムロ「とりあえず紅茶淹れますね」



京太郎「へぇ、ダヴァンさんは来年からアメリカのプロリーグに行くんですね」

ダヴァン「そうデス。アメリカは複数プロリーグ制ですから、所属はかなり悩みまシタ」

ダヴァン「私としては、チームを転々として色んな相手と戦いたいデス」

ダヴァン「しかし、日本を離れるのはとても辛いデス……」

ムロ「そんなに日本に愛着を持ってもらえると、日本人として嬉しいですね」

ダヴァン「なぜ……何故アメリカには日本の様な素晴らしいラーメンが無いノカ!?」

京太郎「そっち!?」


ダヴァン「でもまぁ、このあいだ海外発送専門のカップ麺販売サイトを見つけたので、それで我慢しマス」

ムロ「そこまでして」

ダヴァン「ぶっちゃけ、アメリカのなんちゃってラーメンには期待してませンシ……」

京太郎「アメリカの食べ物はとにかく量が多いってイメージだな」

ムロ「あとカラフル」

優希「わかるぞメグ。私もタコスの無い生活には耐えられないからな」

優希「NO タコス NO LIFEだじぇ」


京太郎「じゃ、ラーメン食べるまで時間ありますし」

京太郎「ここ麻雀部の部室ですし」

ダヴァン「そうでスネ」

ムロ「打ちますか?」


優希「よーし、では私の進化っぷりをお見せしようではないか」

京太郎「そんなすぐに変わるものか? まだ臨海行って2ヶ月だろ」

優希「それは実際に対局してみてから言うんだな小僧!」

京太郎「メンツは高遠原組とオレ、でいいですか?」

ダヴァン「そうぞ、おさキニ」

マホ「マホ、今日は使っていいですか?」

ムロ「あー、ちょっと不安だけど……いいよ」


京太郎「なんとか南場まで回せ。それから先はオレがなんとかする」

ムロ「軽くムチャ言いますね……!」

優希「フッ……作戦会議は終わったか? それじゃあ」


対局開始
東家:片岡優希
南家:夢乃マホ
西家:室橋裕子
北家:須賀京太郎

東1局
親:片岡優希


優希「始めるじぇ!」

ゴゥッ

京太郎(何は無くとも和了らんと、親を流さなきゃ話にならんぜ)

京太郎(鳴いてサポートしたいところだが、下家に優希が居るからなぁ……)

ムロ(直撃だけは回避しなきゃ)

3巡目


優希「リーチ!」

ムロ「はやっ」

京太郎(門前でこのスピードか。ずいぶん調子いいじゃねぇか)

マホ「……」

チャッ ヒュン

ムロ(マホ……まほっちは現物、オリか?)

ダヴァン(素早い判断……さながら原村和のようでスネ。これがユーキの言ってイタ……)


優希「ツモ! リーヅモ・一発・三暗刻・ダブ東・赤1・ドラ3!」

優希「裏は……残念、12000オールだじぇ」

京太郎「おいおい、いきなり3倍満かよ……」

ムロ「うっはぁ……」


東二局 1本場


マホ(この孤立牌を処理して……)

チャッ

ムロ「マホっ!」

マホ「っはい!?」

ムロ「捨てる前にツモるの忘れてるぞ!」

マホ「え? ……あぅ、そうでした」

優希「チョンボ癖は改善されてないのか……」

ダヴァン「コレもユーキの言っていた通りでスネ」

優希「相も変わらず、永遠の初心者だじょ」

マホ「うう~危なかったです」

ムロ「私が注意しなかったらモロアウトだよ……」



対局結果
1位 優希「東二局に進むまでもなかったな!」
2位 マホ「マホ2位です!」
3位 ムロ「席順でな……」
4位 京太郎「点数は3人とも同じだよ」


京太郎「あーマジかよ」

マホ「まったくかないません……」

優希「私は日々進化、レボリューションしているんだじぇ」

ダヴァン「それを言うならエボリューション、でスヨ?」


京太郎「エボってんなぁ」

ムロ「ですね。優希先輩、臨海に行ってからずいぶん鍛え直したようですね」

優希「おかげさまでな。練習環境は多分日本で一番いいんじゃないか? 臨海って」

ダヴァン「そうでスネ。設備はともかく、強化合宿に海外行ったりしまスシ」

京太郎「へー、海外合宿ですか」

ムロ「なんかプロ見たいですね」


ダヴァン「日本の高校で世界レベルを意識しているのは、それこそ臨海くらいでしョウ」

ムロ「世界レベル……か」

マホ「なんだか凄過ぎて、マホにはよくわかりません」

優希「言葉で分からなければ、実際に試してみるといいじぇ」

マホ「え?」

ダヴァン「試してみまスカ? デハ……」


ダヴァン「お見せしましょう、世界レベルの打ちすジヲ!」

今日はここまで
マホはたまにドラ表示牌をめくる時、指で押してひっくり返そうとしてハジいてしまって山を崩します

一気読みした
ちょーおもしろいよー

こんばんわ
>>904
ありがとうございます。励みになります

最近更新頻度下がってきて申し訳ないです
てか2スレ目見えてきてるし。こんなに続くとは思わなんだ
このスレで臨海編がちょうど収まるかな?どうかな?

投下します

マホ「ツモ! 3000・6000です!」

京太郎「出たな、東場の」



東二局
親:メガン・ダヴァン


ムロ「親っ被りィ……」

ダヴァン(これはユーキの、でスカ)

ダヴァン(ヴァリエーション豊かで面白いデス)


ダヴァン(もっと見ていたいですケド……。ここからは私の親ですノデ)

京太郎(くるか……)


京太郎(お互いテンパイしたら3巡目以降に和了る、だっけ?)

京太郎(ダヴァンさん自身にしろ相手にしろ、かならず決着がつく)

京太郎(ここは速度よりも良形で構えるスタイルで……!)

ムロ(テンパった。でも、まだ高い手狙えそう)

ダヴァン(張りましタネ? ……デハ)

ダヴァン「リーチ」


ダヴァン(決闘!)

京太郎(ダヴァンさんの他にも誰か張ってるって事、だよな)

京太郎(……ここはベタオリしとく)

ダヴァン「ロン!」

ムロ「うっ」

京太郎(3巡目……)

優希「きっちりだったな」

ダヴァン「そうでスネ。どうやらいい流れのようデス」



東二局 1本場


マホ「ポン」
/(⑤)(⑤)⑤

京太郎「うおっ赤2とか」

マホ「チー」
/二三四

ムロ(ドラ2つあるし、喰いタン?)

ダヴァン(スピードで勝負というわけでスカ。しかし、すでに私の準備は整っていマス!)

ダヴァン(決闘!)


マホ「ポン!」

カシャッ

ムロ(また?)

ダヴァン(!? テンパイが崩レタ)

京太郎(3副露……)

ダヴァン(鳴イタ? 何故、躱わすタメ? ……いえ、それトモ)

ダヴァン(この鳴キハ……!)


3巡後

マホ「……」チャッ

ダヴァン(再度テンパイ。3副露してから3巡目……これデハ)

ムロ(これ、決勝の副将戦であったのと同じなら……)

ダヴァン(決闘を仕掛けても間に合わナイ……!?)


マホ「ツモ! タンヤオ・赤2、1000・2000です!」

東三局
親:夢乃マホ


ダヴァン(驚きまシタ……。いや、それヨリ)

ダヴァン(格下の相手と思い込んでいたようデス。リスペクトが足りませンネ……)

ダヴァン(龍門渕透華のためにとっておきたかったのですが)

ムロ「……!」ビクッ

ダヴァン(一度ダケ……)


ズズ


ダヴァン「ツモ! 4000・8000!」

マホ「あう!」

ムロ(今の……)

優希「使ってよかったのか?」

ダヴァン「ええ、なかなか侮れない相手のようなノデ」


優希「おお、世界レベルのお墨付きだじぇ!」

マホ「えへへ」

ムロ「……」

南二局
親:メガン・ダヴァン


マホ「ポン!」
/東東東

ダヴァン(また仕掛けてきましタネ)ピクン

ムロ(え、客風を……っ!?)ゾクッ

マホ「ポン!」
/北北北

京太郎(ん? ……あ)


京太郎「チー!」

京太郎(オレにはあいつらみたいに肌で感じるなんて出来ないけど)

ムロ「くっ……」タンッ

京太郎「ポン!」

京太郎(その顔と副露でわかるぜ。このパターンはヤバイ……!)


ダヴァン「ポン」

ダヴァン(急いだ方がよさそうでスネ。よし、テンパイ……決闘デス!)

京太郎「……」

キイィィン

京太郎「ツモ! 300・500……ふう、間に合った」

ダヴァン「ナニ……?」

マホ「あうぅ」

優希「役満惜しかったなー」

ダヴァン(私の決闘に応じないなンテ……)



南四局 オーラス
親:須賀京太郎


ダヴァン(清澄、予想以上デス。これは出し惜しみすべきではナイ? ならば、もういチド……)

マホ「あれ? もしかして……」


マホ「ダヴァンさん、テンパイしてますか?」

ダヴァン「!」


ムロ(マホ……)

マホ「リーチです!」

ダヴァン「ほう、いいでスネ! それでは……通らばリーチデス!」

ダヴァン(決闘!)

対局結果
1位 ダヴァン「イチバーン!」
2位 マホ「に、にばーん!」
3位 京太郎「終始ふり回されちゃった感じかねぇ」
4位 ムロ「……このメンツじゃあ、しょうがないよね」


ダヴァン「世界レベルを見せつける事ができまシタ」

優希「ギリギリだったけどな」

マホ「うぅ……マホもうちょっとでトップとれそうでした」

ムロ「惜しかったね」

京太郎「それでも今日は結構手強かったぞ?」

マホ「え、そ、そうですか?」


優希「そうだじょ、なかなか見ごたえある対局だったじぇ!」

ダヴァン「私も、全力を出させてもらいましタヨ」

マホ「わぁ!」


優希「でも、チョンボ癖は致命的だじぇ」

ムロ「地力も伸ばさないとな」

京太郎「手牌の善し悪しが顔に出るのも直さないと」

マホ「うわぁん!?」

数時間後


京太郎「そろそろ駅行くか? 今出ればいい時間かもしれない」

ムロ「あ、もうそんな時間ですか?」

優希「よし!」チャキ

ダヴァン「すぐ行きましょう今行きましょうさぁ行きましョウ!」

ムロ「じゃあパパっと片づけちゃいますね」



京太郎「よーし、忘れ物は無いか?」

優希「バッチシだじぇ!」

ダヴァン「No prob!」

ムロ「遅くなるけど、ちゃんと家に連絡した?」

マホ「はい、大丈夫です」

優希「うおお、タコスラーメンが私を呼んでるじぇ!」

京太郎「はいはい、じゃあ鍵閉めるぞー」


優希「しばらく歩きだじぇ。それにしてもこの道、懐かしいじぇ」

京太郎「まだ長野出てって数ヶ月だろ」

優希「でもでも、体感時間的にもっと長く離れてた気がするじょ?」

京太郎「ああ、子供って時間を長く感じるっていうもんな」

優希「なにをー!?」


マホ「マホ、今でも優希先輩が東京に行っちゃったって実感ありません」

優希「まぁ、学年ってか学校違うしな」

マホ「マホが高校生になっても、優希先輩とは一緒に居られないんですね……」

ムロ「マホ……」

優希「そうだな。でも、進学したらすぐ会えるじょ?」

マホ「え?」


優希「全国高校麻雀選手権! 高校生になって最初の全国大会だじぇ!」


マホ「インターハイですかぁ!?」

優希「おうよ! 夏になったら東京国際フォーラムで私と握手!」

京太郎「戦隊ヒーローか、お前は」

優希「まず来年、お前も来るんだじょ?」


京太郎「おう」

優希「ムロも。清澄のニューカマー、期待してるじぇ!」

ムロ「わ、私が……私も全国に?」

面白い

優希「東京で待ってるじぇ?」

ムロ「でも、私なんか……」


ダヴァン「オヤ? もしかして、あの屋台でスカ……!?」

京太郎「ああ、アレですね」

優希「なに!? おお、アレはまさしく! うおおぉぉぉ!」

ダダダッ

京太郎「転ぶなよー」


優希「オヤジ、来たじぇー!」

店主「ん? 優希ちゃんじゃねぇか、帰ってたのか。しばらくぶりだなぁ」

優希「お久しぶりだじぇ。では早速……タコスラーメンを頼む!」

ダヴァン「私もタコスラーメンをお願いしマス!」

京太郎「じゃ、オレもせっかくなんでタコスラーメンで」

ムロ「私も同じく」

マホ「マホもタコスラーメンお願いします」


店主「あいよ! タコス5人前ね!」


優希「楽しみだじぇ~」

ダヴァン「そうでスネ」

ダヴァン(匂いから察するに、普段は醤油ラーメンを出しているハズ……)

ダヴァン(という事はスープは魚介、それと鶏ガラが予想されマス)

ダヴァン(それで一体どうやってタコスの味を再現するのでしょウカ?)


店主「ちょーっと待っててよ!」

ゴト

ダヴァン「!? ……ア、アレハ?」

ダヴァン(別に鍋を取り出シタ?)

店主「よっと」

ダヴァン(どうやら中身はスープ……いや、もっと濃い、タレのようでスガ……なるホド)

ダヴァン(アレにタコスラーメン専用のかえしが入ってるとみて間違いないでスネ)


店主「ほいさ」



ダヴァン(鶏ガラのダシと合わさって……こ、この匂イハ!?)

優希「おお! うまそうな匂いがしてきたじょー!」


店主「ほっ!」

チャッチャッ

ダヴァン(麺を湯切りして、具をトッピングして……オオ!)

店主「はい、お待ち!」

優希「キター! いっただきまーっす!」ズズー

京太郎「って、早ぇよ!?」

マホ「いただきます!」

ムロ「いただきます。ふーっふーっ」

ダヴァン「ユーキはいつも食べっぷりがいいでスネ。……サテ」


ダヴァン(まずはスープ。気になってしょうがナイ)

ダヴァン(少し白く濁っていて、この香り。やはり牛骨でスカ……!)

ダヴァン(嗅ぎなれた定番の鶏ガラに牛の独特の匂いが顔をのぞかセル)

ダヴァン(アッサリしているようでコクのある、甘い匂い)


ダヴァン「いただきマス……ズズ」

ダヴァン(ホウ……)

ダヴァン(白系の割にはさっぱりとした口に入りやすいスープ)

ダヴァン(ダシとかえしが絶妙な割合で配合されていまスネ)


ダヴァン(それでは、お待ちかねの麺にいきましョウ)

ダヴァン(麺は細麺ストレート)

ダヴァン「ズズーッ」

ダヴァン(いいでスネ!)モグモグ


ダヴァン(豚骨とも、鶏白湯とも違うコク……)

ダヴァン「はふ、はむ」

ダヴァン(そして独特の牛の匂いがクセにナル)


マホ「タコスラーメンおいしいです!」

優希「んっんっプハァ、ふぃー。どうだメグ?」

ダヴァン「ええ、これはスゴク美味しいでスネ」


ダヴァン(……おっと、つい食べすぎてしまった。ペース配分が乱れるところでシタ)

ダヴァン(トッピングはレタス、チーズ、そして挽肉。見た目にはコレがタコスをアピールしていマス)

ダヴァン(正直タコスラーメンというよりタコス風ラーメンですが、屋台の設備を考えたら上出来と言えまスネ)


ダヴァン(では、タコミートの山を崩して、まずはスープといっしョニ……)

ダヴァン「ズズ……」

ダヴァン(じわっと辛味が広ガル……。味付けはシンプルに塩とスパイスだけでしょウカ)

ダヴァン(ビーフの味が一段と強くなった、噛むほどに肉汁が出てきマス)


ダヴァン「フゥ……!」

京太郎「あっちー!」

マホ「タコス辛いのに箸が止まりません」

ムロ「私にはちょうどいい辛さ」

ダヴァン「スパイスが食欲を増進させマス」

優希「うむ! これならいくらでも食べれるじぇ! オヤジ、おかわり!」

店主「あいよ!」

ムロ「早っ!?」

京太郎「お前はタコが付いてりゃなんでもよさそうだけどな……」


ダヴァン「フフ、私もこれくらいにして、かっこむとしまスカ!」ズズー

優希「おっと、私も負けてられないじぇ!」

京太郎「別に大食い早食いしてるわけじゃねぇから」

マホ「優希先輩、いい食べっぷりです!」

ムロ「そうだね。私達は自分のペースで食べようか」

1時間後 駅 構内


優希「……まだちょっと苦しいじょ」

京太郎「替え玉5つも頼むからだよ」サスサス

ムロ「マホはさっき家に着いたそうです」

京太郎「そっか。しっかし、さみぃな……」

ムロ「なにか、あったかい飲み物でも買ってきましょうか?」

京太郎「わりぃ、頼むわ」

ダヴァン「私も行きましョウ」


ダヴァン「それにしても、ヒロコはマホのお母さんみたいでスネ」

ムロ「えっそうですか? ……そうかもしれません」

ムロ「マホ、少し抜けてるところがあって、ホント私が居ないとダメダメで」

ダヴァン「ほほえましいでスネ」

ムロ「麻雀でも、いつまでたってもチョンボするの直らなくて。ずっと面倒見てたんです。けど……」

ダヴァン「ケド?」


ムロ「そんなマホが先輩達を相手に活躍してるの見てると、羨ましいような悔しいような複雑な感情が出てきちゃって」

ムロ「なんで、私には……」

ダヴァン「その気持ちはよく分かりマス。自分より下にいた相手に上回られた時、劣等感を持ってしまうのは仕方のない事デス」

ムロ「……」

ダヴァン「結局、そういう時は自分が変わらなきゃいけないんデス」

ムロ「……そうなんですけどね」


ダヴァン「ヒロコの場合、一度先輩と後輩という関係を無くしてみてはいかがでスカ?」

ムロ「え?」

ダヴァン「マホを対等な相手として認める事から始めてはどうでしョウ」

ムロ「対等な相手……」


ダヴァン「正面から向き合えば、きっとリスペクトが生まれまるはずでスヨ」

ムロ「マホが……うーん」

ダヴァン「難しいでスカ? 私も常に心がけている事ですが、逆に言えば意識しないとできナイ」

ダヴァン「ついつい調子に乗ったりしてしまいマス」


ダヴァン「どんな時でも正々堂々としていたいものデス」

ムロ「ダヴァンさんは私達に対しても真剣に打ってくれました」

ムロ「私なんか、メンタルも麻雀もまだまだ未熟で……」


ムロ「……相手を認めるのって難しいですね」

ダヴァン「ハイ」

ムロ「なんか、愚痴聞いてもらっちゃって、ありがとうございます。ちょっと恥ずかしい事言っちゃった……」

ムロ「どうしたら真っ直ぐに相手と向き合えるんでしょうか。ダヴァンさんは、どうやって?」

ダヴァン「そうでスネ。やはり正々堂々、全力で勝負する事ですカネ」

ムロ「おお、カッコイイ」

ダヴァン「実は、それにはカッコよくない理由があったりシテ」

ムロ「え?」


ダヴァン「私は、昔から素で運が無クテ……。何かに頼ってないといけなかったんデス」

ダヴァン「アナタ達の言う、オカルトと呼ばれるモノとか、ケンカトカ」

ムロ(ケンカって……)

ダヴァン「ヒロコはこう思った事はありませンカ?」

ムロ「なんですか?」


ダヴァン「オカルトを持っているのはズルい、卑怯じゃないのかッテ……」

ムロ「っ!?」


ダヴァン「世の中、どうしても持つ者と持たざる者に分かれマス。勝負の世界ならなおさらデス」

ムロ「それは……しょうがないじゃないですか」

ダヴァン「きっかけは何であれ、持つ者になったらそれなりの気構えが必要になってきまシタ」

ムロ「その、オカルトを使用するのが正々堂々?」

ダヴァン「ハイ。ですが、それとほぼ同時に、私の打ち方は偏っていったんデス」

ムロ「それは、悪い事なんですか?」

ダヴァン「ワカリマセン。でも、分かった事もありマス」


ダヴァン「結局、オカルトは才能の一つなんデス」

ダヴァン「絵が上手いとか歌が上手い、足が速いと一緒なんデス」

ムロ「じゃあ、なんの才能も無い私って……」

ダヴァン「大丈夫、それはまだ見つかっていないダケ」


ダヴァン「オカルトが無いなら無いなりの打ち方がありマス」

ダヴァン「身近な例で言うと、サトハなんかそうでスネ。ハオなんか日本でも中国式の麻雀を打っていマス」

ダヴァン「ヒロコの近くはそういう人は居ませンカ?」

ムロ「……居ます」

ダヴァン「麻雀もソウ……色んな人が居て色んな打ち方がアル」

ムロ「はい」


ダヴァン「ヒロコにもヒロコの才能があるはずデス。アナタもそのうち持つ者になりまスヨ」

ムロ「そうですかね?」

ダヴァン「何もオカルトだけじゃナシ。勝負に勝ったらば、それで持つ者デス」

ダヴァン「サトハの言葉ですが、何かの上に立つ者はその何かを背負っている、との事デス」

ダヴァン「もし、ヒロコが学校や大会などで代表に選ばれた時は、この言葉を思いだしてくだサイ」

ムロ「……はい」

ダヴァン「私もようやく自分のオカルトの扱い方、というか向き合い方がわかってきたところですガネ」

ダヴァン「すぐ逃げてしまいがちな性格は、なかなか変えられまセン……」



優希「ああ~だいぶ楽になってきたじぇ」

京太郎「しっかし、よくこのちっこい身体に収まるもんだ」

ムロ「買ってきましたよー。優希先輩、大丈夫ですか?」

優希「なんとか」

京太郎「おっサンキュ」

ダヴァン「ユーキ、動けまスカ?」

優希「まだちょっと消化に時間かかりそうだじょ……」

ダヴァン「しょうがないでスネ」

優希「すまんな」


ダヴァン「それでは暇つぶしに、ひとつ私も恥ずかしい話でもしまスカ」

ムロ「?」

ダヴァン「私が長野に来た理由デス」

ムロ「ラーメンじゃないんですか?」

ダヴァン「それもありますが、もう一つ」


ダヴァン「龍門渕透華との再戦デス」


京太郎「そういえば、2年前のインハイで龍門渕と臨海は対戦してましたね」

ダヴァン「ええ、その年に私は龍門渕透華と戦ったんデス」

ダヴァン「皆さんは見た事がありまスカ? 突如豹変する彼女のすがタヲ……」

京太郎「治水ですか。何度か」

ムロ「私も」


ダヴァン「なら、話は早いでスネ。2年前の大会で私は彼女を恐れ、怯んでしまッタ」

ダヴァン「本来なら真っ向から勝負を仕掛けるところなのに、他の高校をトバして逃げたんデス……」

京太郎「あの状態の前で動けるんですか……」

ムロ「それはそれで凄いですね」

ダヴァン「しかし、今回は逃げまっセン!」

優希「そ、その意気だじぇ……ふぅ」

京太郎「もういいのか?」

優希「うん、世話をかけたな。もう大丈夫だじぇ」



帰り道


京太郎「それじゃ、また来年だな」

優希「うむ、よいお年を!」

ダヴァン「私はユーキの家に泊まるので、ここまででスネ」

ムロ「お二人とも、よいお年を」

優希「京太郎、ムロ!」


京太郎「ん?」

ムロ「なんですか?」

優希「私……待ってるからな」


優希「来年、また一緒に遊ぶんだじぇ!」

東京


優希「そして約束通り、お前達は来てくれた」

京太郎「おう!」

ムロ「優希先輩……」


優希「ムロ、よくぞここまで辿りついた!」


ムロ「……うぅ」

優希「成長したな。高遠原の、清澄の先輩として嬉しく思うじぇ」

まこ「わしらの自慢の後輩じゃ」

京太郎「ですね」

ムロ「も、もう……」

優希「照れんな照れんな、そーしーてー」



優希「どうやらココも成長してるようだな!」モミモミィ

ムロ「きゃ、あっやっあぁ、ち、ちょぉぉぉぉ!?」

まこ「デリケートな部分じゃけぇ、優しくな」

京太郎「そういう問題ですか……」

今日はここまで
>>915
モチベ上がります

亦野さんの能力って結構メタれる相手多い気がします
ダヴァン無双の予定でしたが意外にマホがやってくれました

こんばんわ
憧や淡がアレなんだからムロだってきっと……

>>926
まちがい
京太郎「そういえば、2年前のインハイで龍門渕と臨海は対戦してましたね」
ただしい
京太郎「そういえば、去年のインハイで龍門渕と臨海は対戦してましたね」
久しぶりに時空が歪んでた

短め。投下します

ダヴァン「ハイ……ええ、そうデス。年明けの……日本時間で3日にはそちらに戻る予定デス」

ネリー『ほんと? ネリー待ってるから、早く帰ってきてね!』

ダヴァン「フフ、これはボーイングには頑張ってもらわないといけませンネ」


ダヴァン「……ハイ、では良いおとシヲ」



1年前 龍門渕邸


ダヴァン「すみまセン。急に着信がきたノデ」

智紀「かまわない」

ダヴァン「それにしても、龍門渕透華はまだ目覚めないのでしょウカ? 少し心配デス」

一「うん。あの状態になると、しばらく眠っちゃって……」

純「いつもの事だから心配すんな」


ダヴァン「天江衣はどうしまシタ?」

純「アイツも寝てるよ。まぁ、アイツの場合はこの時間いつも寝てるし、平常運転だ」

ダヴァン「それは良かったデス。こんな夜遅くまで付き合ってくれて感謝してマス」

一「いえいえ、衣もすごく楽しんでましたよ」


『モールは元旦朝9時から開店!』

純「それにしても、年末年始のテレビってつまんねーの」

一「特番とかスペシャルとか、普段から結構やってるしね」

智紀「マンネリ」

『新春セール! 3日まではお年玉キャンペーン実施中!』

ダヴァン「……」

ダヴァン「この、お年玉ってなんなんでスカ?」

一「うーん。正月に子供にあげるおこづかい、みたいなものですかね」

ダヴァン「おこづカイ……」

智紀「昔はお供え物のおもちを子供にあげてたけど、今はお金をあげる」

純「ボーナスみたいなもんだな」

ダヴァン「ボーナス……おカネ……ハッ!?」


ネリー『え~、メグお正月は日本に居ないの?』

ネリー『早く帰ってきてね。ネリー待ってるよ!』


ダヴァン(まサカ……)


透華「お待たせいたしましたわ」

一「透華! 起きて大丈夫なの?」

透華「ええ、もう結構ですわ。それで、何のお話をしていたのかしら?」

純「ああ、ダヴァンがお年玉を知らないって言うからさ」

透華「お年玉ですの?」

ダヴァン「ハイ。まさか、日本にこんな風習があるなンテ……去年はアメリカに帰ってましたカラ」

透華「といっても、アレは子供のもらうものですから」


透華「普通、私達くらいの年齢ではもらいませんわ」

ダヴァン「あ、そうなんでスカ……フゥ」

純「いや、お前毎年めっちゃ貰ってるじゃんかよ」

ダヴァン「エッ」


透華「あれは……受け取っておかないと色々と面倒なんですもの」

透華「誰々から貰っただの貰ってないだのと……」

透華「新年早々、見栄の張り合いに巻き込まないでほしいですわ」

一「あはは……」

ダヴァン「差し支えなければ教えてほしいのでスガ……いくら程あげるものなんでしょウカ?」


透華「といってもXXXXXXX円程しかたいただいておりませんわ」


ダヴァン「ッ……!?」

智紀「スケールが違う」

純「アッハッハッハ! 政治献金かよ!」

一「まぁ、透華のこれは例外中の例外だから、全然参考にはならな……ダヴァンさん?」




ネリー「それでね、結局メグってば学校始まるまで帰ってこなかったんだよ?」

京太郎「逃げたんだな……」

ムロ「高飛び……」

まこ「気持ちは分からんでもないがの」


智葉「普段のお前を知っていれば、誰もが逃げ出すさ」

ハオ「ですね」

ネリー「あ、サトハ」



昼 辻垣内邸


智葉「すまないな、こんなものしか用意できなくて」

ムロ「いえ、とんでもないです!」

まこ「いきなり押しかけて、その上お昼ご飯もいただいてしもうて」

京太郎「こちらこそすみません」

智葉「貰いもので沢山あるから、遠慮せずに食べてくれ」

ミョンファ「いただきます」

優希「いただきまーす!」

ネリー「素麺おいしいね」チュルー

優希「これぞ日本の夏だじぇ」ズルルー

智葉「まったく、お前はいつも突然やって来るな。おい、聞いてるのか」

ネリー「もぐ、ん、聞いてるお」

智葉「ああ、飲みこんでからしゃべろ」


ハオ「すみません、ネギとってもらえますか?」

京太郎「どうぞ」

ムロ「私にも、生姜ください」

京太郎「はいはい」


まこ「ミョウガくれ」

優希「大葉くれ」

ミョンファ「オクラください」

ネリー「トマトちょうだい」

京太郎「もう自分でとって」


智葉「ふむ、薬味の追加を持ってこようか」

ハオ「ふぅ……ごちそうさま。智葉、私も手伝います。ついでにお茶を淹れましょう」

智葉「そうか、頼む」

ムロ「いやぁ、至れり尽くせりですねぇ」

まこ「じゃのう。炎天下で待ちぼうけなんて、どうなる事かと思っとったが」

優希「万事塞翁が馬ってやつだじぇ……ズズーッ」



1時間前


優希「さて、感動の再会もひとまず終えたところで」

ムロ「ハァ、ハァ……辱められた……んっ……」


優希「ミョンファ遅いなー」


10分後

ハオ「これ絶対寝てますよ」

優希「一応、早めの予定で教えといたのに連絡すら入れないとは」

ネリー「寝てたら予定の時間とか関係ないんじゃない?」


10分後

ネリー「ふわぁぁ……」

優希「くっ……電話かけても反応ナシか!?」

ムロ(電話に出んわ……つって)

10分後


まこ「中国の麻雀は役が難しくてのう」

ハオ「日本式に慣れている方からすればそうでしょうね」

まこ「組合龍とかの。筋で組める役なんぞはカルチャーショック受けたわ」

ハオ「こっちではありえないルールですからね」


優希「くそう、出やがらねーじぇ……」

ネリー「あつい……」

京太郎「照りつけてきやがる……なぁ、場所変えないか? 日も上がってきたしさ」

ムロ「この辺、どこか涼める場所ありませんか?」

ネリー「あるよ」

京太郎「それじゃあすぐに移動しようぜ」

ネリー「ユーキ、ちょっと電話貸して?」

優希「え? ホレ。って、ドコにかける気だ」


ネリー「もしもし、サトハ? ネリーだよ」

智葉『ん、なんだネリーか。どうした?』

優希「おい」

辻垣内邸


智葉「よく来たな。歓迎する」

優希「急でゴメンだじぇ、智葉先輩……」

智葉「後輩の訪問を断りはしない。遠慮するな」

優希「謝謝……謝謝、智葉先輩!」


ネリー「来たよー」

智葉「お前は少しは遠慮したらどうだ」

ネリー「えー」

ハオ「こんにちわ智葉。どうぞ、これを」

智葉「わざわざすまないな。茶葉か?」

ハオ「はい。日本茶です」


智葉「ハオが日本茶とは珍しいな」

ハオ「昨日、詳しい人達に出会って。せっかくなのでこの機会に手を広げようかと」

智葉「そうか。後で淹れてみよう」

優希「智葉先輩、清澄のみんなだ!」


智葉「ああ、外は暑かったろう。まず入ってくれ」

京太郎「おじゃましまーす」
ムロ「おじゃましまーす」
まこ「おじゃましまーす」

同時刻 白糸台高校 麻雀部部室


照「じゃあ、そういうわけだから」

咲「……」

淡「……」

誠子「……」


照「一人10万点持ちの1000点=1mmで100の位は繰り上げ、いいね?」


誠子(咲が持ってきてくれたおみやげ、カステラは30cmが2本)

誠子(虎姫の5人+宮永先輩の6人で割ると、一人10cmは食べられる……)

淡(一切れ2cmだとして、一人当たり5切れ……普通ならね)

咲(いくらお姉ちゃんでも、配牌5向聴の淡ちゃんと鳴いて速攻の亦野先輩相手じゃ分が悪いハズ……)


尭深「ええっと……」

照「待っててね、尭深。まだナイフは入れないで……いや」


照「ナイフなんて必要、無い」


ギギギー


誠子「ちょ」
淡「うぇ!?」
咲「わわっ!」

辻垣内邸 客間


智葉「話には聞いていたが、部員3人とはな……」

優希「……実はちょっと責任感じてるんだじぇ」

まこ「何言うとるんじゃ」

京太郎「お前が居たところで、入部希望者が増えてたか怪しいもんだぜ」

優希「な、なんだとー!?」


京太郎「それよりさ、優希がやりたい事やって、それで活躍できてる方がオレは嬉しいぜ」

優希「え……そ、そう……なのか?」

ムロ「そうですよ。こっちはこっちで任せといて下さい」

まこ「じゃけぇ、心配せんでもええよ」

優希「みんな……うぅ」


     「おやぁ? 寝坊して来てみれば」


ハオ「明華」

ミョンファ「身の上話に花が咲いていますか」

優希「わわ……お、遅いじょ! ってゆうか、やっぱ寝てたな?」


ミョンファ「すみません。一度起きたのですが、まだ目覚ましの時間じゃないからもったいなくって……」

智葉「二度寝したな」

ムロ「あるある」

優希「そこは起きてろよ……」

優希「紹介するじぇ。知ってると思うけど、雀明華は3年生で世界ランカーなんだじぇ」

ミョンファ「こんにちは」

優希「欧州選手権ではなんと……ぱ、ぱ……」


優希「パンテーン? と呼ばれているんだじぇ!」

ハオ「惜しいですね」

まこ「そりゃあシャンプーじゃろが」


京太郎「えっと、本当はなんでしたっけ?」

ミョンファ「最近はクロラーヌを使ってますよ」

智葉「シャンプーから離れろ」


ネリー「ヴァントゥールでしょ」

ミョンファ「そう、それです」

優希「それそれ! 日本語で風神って意味だじぇ」

ムロ「なんかいいですね、二つ名って」

京太郎「オレも欲しい」

優希「東風王者!」ビシィッ

まこ「称号は分かりやすいの。イメージも東場に強い優希のプレイスタイルに結びついとる」

ハオ「あと、去年の決勝で智葉達と対戦した……ほら阿知賀の」

ムロ「ドラゴンロード。松実玄さんですね」

智葉「特殊な打ち手であれば、また通り名も付けられやすいな」


まこ「あんたも、三尋木プロに付けてもらうか?」

京太郎「いやぁ……それはちょっと、遠慮しときます」

ネリー「ネリーも二つ名とか付けられたら、お金貰えるかな?」

ハオ「直接はわかりませんが、ネームバリューは上がりますね」

ネリー「バリュー……おーっいいね!」


京太郎「ムロだったら三尋木プロに目ぇ付けられそうだな」

ムロ「ええ……」

智葉「ほう、そういう打ち手なのか?」

優希「ムロは私が臨海行った後に急成長したんだじょ。だから私もよく知らないけど……」


優希「知り合いである事を差し引いても、要注意プレイヤーの一人だじぇ」

ムロ「……!」

ムロ(ヤバ……ちょっとコレ、マジで嬉しいかも)


ミョンファ「それはそれは」

智葉「少し興味が出てきた」

優希「……だそうだ。それで、どうだ?」

ムロ「いいですよ。お見せしましょう」

ネリー「え、ここで見せるの? いいの?」

ムロ「はい、かまいません」


ムロ「私はいつでも正々堂々、全力で勝負します」

智葉「ふっ……いい気概だ」


優希「よぅし! では早速、卓の準備……」

グウゥゥゥ

ムロ「え」


優希「……の前に、お腹空いちゃったじょ」

京太郎「お前さっきタコス食ったじゃねぇか!」

優希「タコスは別腹なんだじぇ!」


智葉「はぁ……少し待ってろ。今食べるもの用意してくる」

ミョンファ「起きてから食べてなかったので、ちょうどいいですね」

ハオ「もう昼ですけどね」

今日はここまで

>>926
まちがい
ダヴァン「なら、話は早いでスネ。2年前の大会で私は彼女を恐れ、怯んでしまッタ」
ただしい
ダヴァン「なら、話は早いでスネ。去年の大会で私は彼女を恐れ、怯んでしまッタ」
これも訂正

次で臨海編&このスレのラストの投下になるハズ……

こんばんわ
粛々と投下します

白糸台高校 麻雀部部室


照「はい……はい……いや、そんなつもりじゃなくて」

照「ただ、みんながもっと真剣になれればって思って……それで、ちょっと趣向を凝らしてみたっていうか」

照「あくまで、練習に付き合うっていう……」

照「いや……はい。私が食べたかった……というのは、なくもなかった、かと……」


尭深「あの、もうその辺で……」

菫「まったく!」


淡「ん~、おーいすぃー!」

咲「うん。しっとりしてるのに重過ぎなくて、一口で満足感あるよね」

淡「尭深の淹れてくれたお茶にも合うね」

誠子「そうだなー」

菫「亦野も亦野だ」

誠子「なんかコッチきたー」


菫「お前がこの部の部長なんだぞ? だというのに、こんなのをのさばらせておいてどうする」

誠子「うぅ……スイマセン」

照「まあまあ、そのへんで」

菫「お前なぁ、そもそもの発端はお前が」

尭深「お茶もはいりましたし、どうぞ……」

菫「ん、そうか。すまないな尭深……はぁ」


淡「菫も大変だねー」

菫「本当にな。あと先輩を付けろ」

照「なんで菫の方が多いの……」

菫「分けてもらっただけ有難く思え」


咲「わざわざ来てもらってすみません、弘世先輩……」

菫「お前の姉さんに手を焼かされるのは慣れているよ。まさか、卒業した後も続くとは思わなかったが」

照「だねーモグモグ」

咲「もう。お姉ちゃんってば、ちゃんと聞きなよ……モグモグ」


菫「はぁ……引き継いだ時にも言ったはずだが、部長というものは部員をまとめるだけじゃない」

誠子「……はい」

菫「外部の人間とやり取りする際、その部がどの程度のものなのか部長の態度で判断されるんだ。部の代表として……」

誠子「はい……」

照(菫が説教に夢中になってる。こうなると、なかなか終わらないんだよね)


照(つまり、他はおろそかになっていて隙だらけってわけ……今のうちに)

淡(そうはさせないよテルー!)

照(くっ、ここにも私のカステラを狙うハイエナが……)

淡(テルのじゃないよ!)

照(大体、私が2切れで菫が3切れっていうのがおかしいんだ)


菫「私は、亦野になら任せられると思ったんだ」

誠子「弘世先輩……」

菫「周りをよく見ていて、それでいて責任感を持てる。そんなお前うおおぉぉぉ!?」

誠子「わあっ!?」


菫「なに私の分にまで手を出してるんだ!」

照「違う、淡がとろうとして」

淡「ちょ」

菫「お前らぁ……そこになおれ!」

ガミガミ

誠子「……」

尭深「おかわり、いる?」

誠子「あ、うん、ありがと……ズズ……ふぅ」


誠子(二人が来ると、まともに練習できないや……)

まこ「ほんじゃ、腹もふくれた事じゃし。ん?」

ハオ「卓の準備は出来ていますよ」

ムロ「ではでは、始めますか」

優希「どれだけ成長したか見せてもらうじぇ」



対局開始
東家:染谷まこ
南家:ハオ・ホェイユー
西家:辻垣内智葉
北家:室橋裕子


東一局
親:染谷まこ

まこ(さぁて、リベンジ開始じゃ。一応、中国麻将も勉強しとったが)

まこ(それじゃあ、付け焼刃に過ぎん)


まこ「チー」

カシャッ

ハオ(攻めてきている? けれど)

優希(眼鏡はずしてないじぇ)

まこ(しっかし、それだけじゃ駄目なんじゃな)

まこ(見えん……)


まこ(見えんのは、怖いのう)

まこ(今まではなんとなく、ボンヤリとでもわかっとった)

まこ(そのせいか、わからん事には怯えるようになって……あん時も)


まこ(みんなが居なくなるなんて、微塵も思わんかったから)

ハオ「和――ツモ」


ハオ「300・500です」
一二三七八九①③⑦⑧⑨55:②

京太郎「ええ、なんですかソレ?」

ムロ「チャンタにとらない……? それも中国の役ですか?」

智葉「三色双龍会という役だな」



東二局
親:ハオ・ホェイユー


まこ(今までは先が見えんでも、いや……むしろ悪い方に向かっとっても、喜んで進んでくのがおったが)

まこ(もうおらん。じゃけぇ……)


まこ(わしが代わりになっちゃるかの)

バッ

ムロ(はずした。動くのかな)

まこ「リーチ!」

パシッ

優希「なっ」

ハオ(眼鏡を外して……リーチ?)

ネリー「ふーん」

ミョンファ(聞いていたのと違うようですね)

智葉(門前でのプレイスタイルは、ハオの中国麻将対策……だが、そうなのか?)


京太郎(こりゃあ基本的、とは言えないよな)

優希(辺張……いや、それ以前に待ち牌は場に3枚出てる)

優希(悪待ち……!?)


まこ(結局、先の事なんざわからんもんじゃし)

まこ(良い事も悪い事も、不意にやってくる。ほんなら……)


まこ(このまま不完全なイメージを抱えて進むだけの事じゃ)

まこ「ツモ。一発じゃったか、2000・3900」

優希「おお、染谷先輩!」

まこ「スマンの、ムロ。お株奪っちまったわ」

ムロ「いえ」


ハオ「これは」

智葉「去年よりも、また一段と腕を上げたようだな」

まこ「いやぁ、たまたまですわ」

智葉「それとも、何か心構えに変化でもあったのか?」

まこ「んー。そうですのう……」


まこ「やっぱし、部長になったからですかの」


智葉「ほう」

まこ「こいつら背負っていかにゃならんと思ったら、気ぃ引き締まるっちゅーか、だらしない真似できんし」

まこ「自分の子供ができたみたいで、なんか親の気持ちですわ」

ムロ「私達子供ですか」

まこ「上の子らがみんな出てって少しさみしいが、まぁなんとかやっとりますけぇ」

優希「姉はいつでも見守っているじょ、弟よ」

京太郎「誰がだ」

ムロ「ホントでっかい弟ですよねー」

京太郎「えっ」


ハオ「ところで先程、お株がどうのと……」

ミョンファ「かぶ、ですか?」

ネリー「それネリーは絶対やっちゃダメって言われてる……」

ハオ「それは株式」


優希「GMにムロの牌譜あつめさせて調べたんだけど」

優希「やけに一発率が高いんだじぇ!」

智葉「そうなのか?」

ムロ「はい。次にツモる牌が有効牌なのかどうか分かるんです」


ミョンファ「もしかして、ツモが見えるんですか?」

ムロ「特定はできませんが、手牌に入るのかは分かります」

ネリー「構築が不自然だったしね」

ムロ「できるだけ効率的、デジタルに打ってるように見せてるんですけど、バレちゃいますか」

ネリー「でも、特定の種類の牌が寄ってくるんだと思ったよ」


ネリー「流れを見ているわけでもなさそうだったし」

優希「やってる事はネリーと同じだけどな」

ムロ「私の場合、鳴いてズラされるとまず和了れないですけどね」

優希「そうなのか?」

ムロ「私が見えてるのはツモ筋ですから」



東三局
親:辻垣内智葉


ムロ「ツモ。1000・2000」

ネリー「うわぁ……」

ムロ「っとまぁ、最終形が見えてるわけですから、こんな風にもできます」

智葉「これはまた滅茶苦茶な捨て牌だな」

ムロ「ただ、途中で鳴かれたりすると修正するのがキツイんですよ」

ミョンファ「防御面ではいいかもしれませんね」




まこ「ツモ。これで終わりじゃな」

ハオ「む、最後の最後にまくられてしまいましたか」


まこ「よっしゃリベンジ達成じゃ!」

京太郎「おめでとうございます!」

優希「さっすが染谷先輩! ハオも惜しかったじぇ」

ハオ「今回は私の負けです」

智葉「ああ、いい対局だった。しかし……」


智葉「お株というわりには、室橋は何故リーチせずにダマでばかり通すんだ?」

ムロ「……リーチしたら一発付けないとデメリットが現れるんです」

優希「そういえば、県予選じゃどうしようもない放銃が多かったな」

京太郎「最近は安定性重視でめっきりリーチしなくなったけど」


ムロ「火力が欲しい場面って点数が少ない時なんで、そういう時に下手にリスクを背負うのもどうかなぁって」

ムロ「それに、個人戦だと25000点持ちですからね。そういうプレイングは向いてないかと」

智葉「団体戦はどうするんだ?」

ムロ「いえ、今年は団体戦は……」

智葉「今年じゃなくても来年があるだろう」

ムロ「あ」


智葉「それに、秋にはコクマだってある。県代表ならば候補にあがっているはずだ」

ムロ「そっか……夏から先の事、考えてなかった」


優希「おお! 今年の長野のジュニアBで、もしかしてムロマホコンビが見れるのか!?」

ムロ「んー、マホかぁ……どうでしょ?」

京太郎「でもさ、せっかくだしリーチ掛けてみたらどうだ?」

ムロ「……まだちょっと怖いです。けど」


ムロ「来年入ってくる後輩達の為に……やってみようと思います」



対局開始
東家:チェー・ミョンファ
南家:室橋裕子
西家:須賀京太郎
北家:辻垣内智葉


ミョンファ「あ、そうだ」

ムロ「?」

京太郎「なんです?」

ミョンファ「歌ってもよろしいでしょうか?」

東一局
親:チェー・ミョンファ


ミョンファ「LAAAAAA!!」

ムロ「ひゃ!?」

京太郎「んが!?」

まこ「のわ!?」


まこ(久が言うとったがこりゃ……)

京太郎(実際にその場に居合わせると……)

ムロ(びっくりした……)

智葉「おっと、悪いがカーテンを閉めてくれないか」

ハオ「わかりました」


ムロ「リ、リーチ!」

ミョンファ「LAAAAAA!!」

ムロ(おかまいなし!?)

智葉「ポン」

ムロ(くっ……鳴かれた)

ムロ(あ、でもまだ和了系が見える。このルートでも和了れ……)


智葉「ロン」


ムロ「っ……」

京太郎「あっちゃあ……」


オオォォォン

ネリー「……なにこれ」

優希「ひっどいコトになってるじょ……」

ムロ「……久々にきたなぁ」

智葉「続けよう」



東二局
親:室橋裕子


ミョンファ「LAAAAAA!!」

京太郎(まだ歌うのね……)

ミョンファ(おやぁ? やけに調子いいみたいですね。いや……)


ミョンファ「ロン」

ムロ「……」

優希「早っ! 3巡目……で」

まこ「おお?」

ネリー「一方的だね」


東東東南南南西②②②555:西


ミョンファ「四暗刻です」

ムロ「……はい」

ネリー「流れもなにもあったもんじゃないよ」

優希「ムロの運気がダダ下がりしてるのは一目瞭然だじぇ」

ハオ「これでは敬遠するのもわかりますね」


智葉「ふむ。和了への道を示すものの、そこから逸れるとしっぺ返しを食らうというわけか」

まこ「これさえなけりゃのう」

ムロ「うあー、役満直撃なんて……」

ミョンファ「ムロちゃんのソレと合わせて、私も歌ってノッてましたから」

ネリー「プラスとマイナスの差が大きくひらいちゃった結果だね」


智葉「ではもう一回だ」

ムロ「ええ……?」

智葉「これくらいでへこたれてどうする。ネリー、入ってくれ。お前と須賀は、リーチされたら鳴け」

京太郎「わかりました」

ネリー「はーい」


智葉「室橋は一発狙いな」

ムロ「ふぇぇ……」

ムロ「リーチ」
京太郎「チー」
智葉「ロン」

ムロ「リーチ」
ネリー「ポン」
ハオ「和――ロン」

ムロ「リーチ……」
まこ「チー」
智葉「ロン」

ムロ「……リ、リーチ」
ハオ「ポン」
ネリー「ロン」

ムロ「りーち」
ミョンファ「ポン」
智葉「ロン」


ムロ「やだもー」

智葉「なるほどな、ツキが下がるのは放銃した次の局だけなのか」

ネリー「他家が流れに乗ってたら相対的にマイナスになっちゃうよ」

ネリー「運気は奪い合いなんだから」

京太郎「そういうものなのか?」

ネリー「運の総量には限度があるんだよ。だから、自分の方によせるんだ」

京太郎「へぇ、流れを操るってそういう事なのか」


ネリー「相手に向かう運気を遮断したり、場を変えたり」

京太郎「場を変えるって?」

ネリー「副露。ツモをズラすだけじゃなくて、牌を晒す事でもまた流れは変わるんだ」

ネリー「さすがに2副露しただけで役満和了れるとかは破格だけどね」

京太郎「そうだったのか。流れヤベェな……」


ミョンファ「でも、所詮はアドバンテージの話ですから」

ハオ「結局、いつだって勝敗を決めるのは人の働きです」

優希「そうだな」

ムロ「……そうかなぁ」

智葉「そうだよ」


智葉「ただ漫然と牌をツモって捨てる。それだけでは自分で打っているとは言えない」

智葉「そこに自分が居ないなら、牌も応え甲斐がないというものだ」

智葉「だから、そろそろ顔をあげろ」

ムロ「うっ……くぅ……」

智葉「思い出してみろ。何でお前は麻雀を打ってるんだ?」

ムロ「なんで……」



対局開始
東家:辻垣内智葉
南家:須賀京太郎
西家:ネリー・ヴィルサラーゼ
北家:室橋裕子


ムロ(来た)

ムロ(次のツモで和了れる。それは分かる……でも)


ムロ(一発消し……)


智葉「どうした?」

ムロ(……分かんない)

智葉「曲げるのか?」

ムロ(また誰か鳴くんじゃ……)

智葉「迷っているのか?」

ムロ(……)


智葉「全力で勝負するんじゃなかったのか?」

ムロ(勝負? 誰と……)


ムロ(……私だ)

ムロ(辻垣内さんや園城寺さんが言っているのは)


智葉「生半可な気持ちでは、道は開けないぞ」



怜『なんかな、ええツモ来るんちゃうかって時あるやん?』

ムロ『一巡先を見たわけでもなく?』

セーラ『せやな。ここぞって場面で来てまうやろってのあんなぁ』

怜『オカルトやな』

ムロ『私にはそんなオカルト無いです……』


怜『ん? ちゃうちゃう。ムロが言ってんのは能力としてのオカルトやろ?』

怜『本来の意味でのオカルトっちゅーか、ん~第六感的な?』

竜華『それはあるかもな』

ムロ『へぇ、そうなんですか?』


竜華『気合入ってる試合なんかは、配牌とかいつもよりええ気ぃするわ』

怜『ウチがそれを感じる事ができたんは高3の時やな』

怜『3軍レベルやったウチが倒れてレギュラー入りして、インハイ出るってなって』


怜『あん時は、今のままじゃアカン、どうしても負けられへん、もう自分はどうなってもええからってなってもうて』

竜華『それで倒れてまうねんから、ホンマしゃーないなー』

怜『その節はガチで申し訳なかったし、迷惑かけたと思っとるわ。でもな』


怜『そこで止まらんと、最後まで無茶したのは後悔してへん』

怜『あそこで3巡先見えたんも、諦めんと自分を貫いたからかなぁ、なんて』

ムロ『ほぉ』

怜『まぁ、そこまで無茶しろとは言わんけど。使うんやったら絶対成功させるんやで~』

ムロ『キッツイわー』



ムロ(私は、先輩達を追ってきて)

ムロ(全国まで来た。でも……)

ムロ(まだだ)


優希(ムロ……)

ムロ(まだ背中を捉えたにすぎない)

ムロ(まだ、始まってもいない……!)


ムロ「……リーチ」

ドッ


ミョンファ「!」

ハオ「リーチ棒が」

京太郎(立てたな)

優希「リー棒が立ってるじぇ! これって」


ネリー(なに? 流れが……)

ネリー(あのリー棒が場をロックしてるの?)

智葉(意識が変わったか)

ムロ(少し先だって見えたんだ。こんなとこで)


チャッ

ムロ「! ……ツモ」

ムロ(ここから私は)


ムロ「リーチ・一発・ツモ・チートイドラドラ。3000・6000です」


優希「やったじぇムロ!」

まこ「はぁ……はは、やっとか」

智葉「和了れたな」

ムロ「はい!」


智葉「さ、もう一回」

ムロ「え」

数時間後


ムロ「和了らなきゃ、斬られる……一発で……一発、掴まないと……斬られ……」カタカタ

京太郎「大丈夫だから! もう終わったから、しっかりしろ!」

智葉「フフ、あまりにも真剣だったものだから、つい熱が入ってしまった」

まこ「生きとるかー?」

優希「半々ってとこだじぇ」


ハオ「片付け終わりましたよ」

智葉「御苦労だった」

ミョンファ「まだ明るいですけど、もうこんな時間ですか」

ネリー「夏だからね」



京太郎「今日は急に押しかけてすいませんでした」

優希「ありがとうだじぇ、智葉先輩」

智葉「うん」

ムロ「ありがとうございました」


智葉「やるからには徹底的だ。インターハイでも、その姿勢を貫いてほしい」

ムロ「はい」

智葉「全国の舞台ではな、そこに立って初めて分かる事もある」

智葉「ゴールではなくスタートだ。忘れるなよ」

ムロ「肝に銘じておきます」

優希「次に会う時は」

ムロ「インハイですね」

優希「団体戦では、私の勇姿をとくとごろうじるんだじぇ!」

京太郎「ずいぶんと強気じゃん。ま、お前はそうだったよな」


優希「先鋒はエースポジション! 私がテンション上げてかないと締まらないじぇ!」


ハオ「私はいつも通り、自分の麻雀を打つだけです」

ミョンファ「日本の大会でも対局中に歌えればうれしいんですけど」

ネリー「大将戦まで他の学校トバさなければなんでもいいよ」

優希「……締まらないんだじぇ!」

まこ「これはこれで、逆にチーム色が出とって面白いわ」


優希「できれば団体戦でもお前と戦いたかったけど……」

ムロ「それは来年のお楽しみって事で」

優希「ん、そうする」



優希「じゃあな、ムロ。あんまし泣くんじゃないじぇ?」

ムロ「な、泣きませんよもう!」

今日はここまで
次回投下する時にスレ立てようかな


今のうちに立てても問題はないと思う

>>985
スレ立てしてもSS載ってないとさみしいと思うので
ホント書き溜め無い……

微妙に残りレス数余っちゃった
なんか質問とかツッコミあったらどうぞ

一応ネリーの能力とか考えてるんですけどね
原作でお披露目したらそっちに寄るけど


誘導が出来るくらいには残した方がいいのか
ところで元清澄の面々はムロたちのことを応援してるということでいいのかな?無論恋愛的な意味で

>>988
まこは応援してくれてます
咲・和・優希は、そもそもそういう関係だとは知りません
京太郎・ムロも、今はちゃんとお付き合いをしてる訳じゃないので、別に報告とかしなくてもいいかなぁって思ってます
久は、まこから聞いててニヤニヤしてます

ムロは先輩方と会う時は背筋伸びてるし、京太郎もお勉強しに行ってるので、そういう雰囲気はあんまし、そんなに出てないはずです

まだかな?

>>993
おまたせ!

京太郎「新入部員が」ムロ「私だけ!?」 2スレ目
京太郎「新入部員が」ムロ「私だけ!?」 2スレ目 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430051134/)

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