赤城「ケッコンカッコカリとオニギリカッコカリ」 (39)

艦隊これくしょんのSSです
設定などを独自に解釈した部分が出てきます

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1415967408

提督「……よし、青葉たちは遠征に行ったみたいだな」

赤城「確か、通商破壊作戦でしたね。かなりの長丁場のはずです」

提督「これでしばらくは帰って来れないだろう」

赤城「そんな厄介払いみたいな事をしなくても」

提督「青葉には悪いが、聞かれると非常に困る話があってな」

赤城「彼女の耳に入ると、あっという間にみんなに知れ渡っちゃいますからね」

赤城「ところで、聞かれると困る話というのは一体…?」

提督「そうだな、まずはこの書類を見てくれ」

ガサガサ

赤城「これは……婚姻届?」

赤城「まさか提督、ご結婚なさるんですか?!」ガタッ

提督「赤城、もっと声を抑えて」

赤城「す、すみません…」


赤城「あの、相手は誰ですか?加賀さん…それとも金剛でしょうか?」

提督「落ち着け赤城。誰も俺が結婚するとは言っていないだろう」

赤城「しかし婚姻届を準備しているということは…」

赤城「ま、まさか、艦娘の誰かが?!」

提督「いや、それは俺の婚姻届で間違いない。と言っても俺が用意したものではないが」

赤城「どういうことでしょうか?」

提督「大本営から送られてきたんだ。多くの艦娘を指揮する立場の俺が、いつまでも未婚では良くないと」

赤城「なるほど、お固い大本営の事ですし早く身を固めて欲しいのでしょうか」

提督「それもあると思うが、鎮守府に男は俺だけだからな。色恋沙汰を避けて欲しいのだろう」

提督「普通の男女のいさかいなら、最悪でも刃物を持ち出す程度だと思うが、艦娘となれば話は別だ」

提督「俺が死ぬだけならともかく、艦娘同士が戦うような事になると国の存亡に関わるからな」



赤城「では、提督は今すぐに結婚するつもりは無いと」

提督「俺としてはそのつもりだったんだが」

赤城「つもりだった…ですか?」

提督「少し前に憲兵が来て、うちの鎮守府の環境調査をしてただろ?」

赤城「えぇ、私もいくつか質問されました」

提督「その時に誰かが余計なことを吹き込んだみたいで、大本営が俺に結婚するよう圧力をかけてくるんだ」

赤城「それなら素直に結婚すればいいのではないでしょうか?相手もたくさんいることですし」

提督「あぁ、だから結婚相手を探そうと思って、友人に何人か紹介してもらったんだが…」





赤城「……は?」

提督「よく考えたら深海棲艦相手だと休みもほとんど無くて、時間も作れないし」

赤城「提督」

提督「それにいくら高給取りと言えど軍人となると、規律や機密が多くて不自由だし、いつ死ぬかもわからない」

赤城「提督」イラッ

提督「そもそも、大本営には情報漏洩を避けるために、民間人とは結婚するなと釘を刺されてしまって…」

赤城「提督。そういうのはいいです」ギロッ

提督「あ、はい」


赤城「つまり、話というのは『上が艦娘と結婚しろと言っているがどうすればいいか分からない』ということですか?」

提督「有り体に言えばそういう事になる。この婚姻届けも艦娘用で公式な婚姻届ではないからな」

赤城「本当ですね、よく見ると(仮)と書いてあります」

赤城「そもそも、提督はなぜ艦娘に手を出さないのですか?」

提督「なぜって言われても…」

赤城「こう言うのもなんですが、提督なら100人以上の艦娘を食べ放題ですよ?」

提督「そんなバイキングみたいな言い方はやめろ」

赤城「バイキングみたいなものじゃないですか。よりどり赤城ですよ」

提督「海軍が海賊みたいなことしちゃダメだろ。しかも赤城は固定なのか」

赤城「とにかく、今日は根掘り葉掘り聞かせていただきますから!」

提督「……そうだな。まぁそのために話を聞いてもらってるわけだし」


提督「まぁ、今まで艦娘と男女の関係にならなかった理由は二つある」

赤城「二つですか?」

提督「まずひとつ、艦娘はみんな俺の部下じゃないか」

赤城「そうですね。それがどうしました?」

提督「重要なことだ」

提督「たとえば、俺が瑞鶴と結婚したとする」

赤城「……たとえばの話ですよね?」


提督「結婚したとなると秘書艦に任命するのが自然だろう。当然、第一艦隊の旗艦は瑞鶴になる」

赤城「そんなことになれば、加賀さんが黙っていないでしょう」

提督「加賀だけじゃない。空母以外の艦娘達からも不満が出るかもしれない」

提督「『実力なら私の方が上なのに、提督夫人だからって旗艦を務めるなんてずるい』ってね」

赤城「そうですね。それに艦種によってはそれだけで自分の出番がなくなるかも……」


赤城「でもそれなら、単純に秘書艦や旗艦には任命しなければ良いのではないでしょうか?」

提督「もちろんそれも考えたが、旗艦にしなくても艦隊に入れるだけで贔屓してると疑われそうで……」

赤城「それは考え過ぎだと思いますが」

提督「そうかもしれない。実際、この問題だけなら何とかなりそうなのだが……」

赤城「ということはもう一つの理由が大きいと?」

提督「あぁ、もうひとつの理由。それは『それしか選択肢がない』からだ」

赤城「それしか選択肢がない……ですか?」


提督「……艦娘は海軍の重要な機密兵器。書類上は人間ですらない」

提督「艦娘は任務以外で鎮守府外へは出れないし、出れるのも海という名の戦場のみ……」

提督「だから艦娘たちは、必然的に他人と知り合う機会が無いということになる」

赤城「外の情報は新聞や雑誌などに頼るしか無いですからね」

提督「そんな環境では、本当にいい男がどんなものかなんて分かるわけがない」

提督「だから、艦娘が恋愛をしようとすると男が俺しか居ない以上、俺しか選択肢がないんだよ」


赤城「中には同じ艦娘に片思いしている艦娘もいるようですが」

提督「詳しく聞かせろ」ガタッ

赤城「それは秘密です。魚雷を打ち込まれたくありませんから」

提督「……とにかく、俺が艦娘と結婚するというのは、何も知らないのを良いことに騙すようなものだと思うんだ」

赤城「騙すというのは言いすぎだと思いますが」


提督「そうだな……仮に、赤城が空腹で、目の前におにぎりしか無かったとしたらどうする?」

赤城「もちろん食べますね」

提督「そして、もし赤城が今までにおにぎりを一度も食べたことなかったとしたらどうなる?」

赤城「それでも美味しくいただけると思いますけど……」

提督「そうだろう。でもそのおにぎりは、本当はまずいおにぎりだった可能性もある」

提督「しかし、おにぎりを食べたことがない人にとっては、それがおにぎりの味なわけだ」


赤城「……そのおにぎりが提督ということですか?」

提督「そうだ。もっと美味しいおにぎりもあるかもしれないじゃないか」

提督「俺だって、もしかしたら他の男と比べると最低な男かもしれないんだぞ?」

赤城「そうかもしれません。ですがそんなことを考える必要なんてありません」

提督「どういうことだ?」

赤城「私たち艦娘にとっては、鎮守府と海だけがこの世界の全てです」

赤城「だから鎮守府に男性が提督しか居ないなら、私たちの世界に存在する男性は提督ただ一人だけ」

赤城「外の世界に男性がいたとしても、私たちにとっては存在しないのと同じです」


赤城「提督は私たちの事を世間知らずと思ってるかもしれません」

赤城「でもそれは、提督がこの地球の外に何があるかを知らないのと変わらないのです」

赤城「提督は、地球の外に素晴らしい女性が居るかもしれないとは思わないでしょう?」

提督「確かにそうだな。絶対に会うこともないだろうし、存在しているかも怪しい」

赤城「それと同じです。私たちは提督以外の男性を、雑誌や本の中でしか見たことがありませんから」

赤城「だから私たち艦娘には、提督しかいません」


赤城「そして提督は、私たち艦娘にとって世界にひとつしか無いおにぎり」

赤城「みんなは誰も食べたことがない、美味しそうなおにぎりに興味津々です」

赤城「でもそのおにぎりは、あろうことか手を伸ばそうとするだけで逃げてしまい、こう言うのです」

赤城「『味もわからない人に自分を食べさせるのはかわいそうだ』と……」


赤城「提督、私はあなたのことが好きです」

赤城「だから世界にただ一人しかいない大切な人に、相手にもされないというのはとても辛いです」

提督「赤城……」


赤城「……提督の結婚相手は、私のように提督の事を好きでいて、練度が高い艦娘から選べばいいと思います」

赤城「練度が高ければ、第一艦隊に配備されても不満不平は出にくいでしょうから」

提督「確か、練度評価が高い艦娘は、吹雪、赤城、蒼龍、北上、大井、伊勢あたりだったな」


提督「……ありがとう。よく心の内を聞かせてくれた。やはり赤城に相談してよかったよ」

提督「今までの俺は、艦娘を傷つけまいとして、余計に傷つけていたわけだ」

提督「済まなかった。みんなの気持ちがわかっていなかったよ」

赤城「いえ、大丈夫ですから」


赤城「それよりも、その……」

提督「そうだな。赤城が勇気を出してくれたんだ。俺もその勇気に答えなければいけないな」

提督「これからは俺も、心に秘め続けてきた想いを隠す必要も無くなりそうだし」

赤城「……ということは、提督には好きな艦娘がいると?」ドキドキ

提督「あぁ、長い付き合いになる。幸い練度も高いし、結婚できるならしたいと思っていた」

赤城「それはもしかして……」ドキドキ


提督「赤城」

赤城「は、はい!」ドキドキ

提督「もし俺が……」

赤城「………!!」ドキドキ











提督「吹雪と結婚したいって言ったらどう思う?」

赤城「………………は?」

提督「まぁ、だから赤城には悪いが、赤城の気持ちには……」

赤城「えっ……なぜ?なぜ吹雪なんですか?」

赤城「確かに長い付き合いでしょうし、練度も高いですけど……なぜ吹雪?なぜ??」

提督「……初恋なんだよ///」ポッ

赤城「頬を赤らめないでください!」ドンッ


赤城「は、初恋ってなんですか!?初等科生でもあるまいし!!」

提督「だって仕方ないじゃないか。ずっと男ばかりの軍学校で、女性と知り合う機会なんて無かったんだから」


提督「俺がここに来てから、初めて会った艦娘が吹雪だったんだよ」

提督「何もない所で、何もわからない状態からから二人で一生懸命やってきて、ずっと二人三脚でここまでやってきたんだ」

提督「それで…気づいたらいつの間にか好きになってて、もう吹雪のことで頭が一杯に……」

赤城「待ってください!」

赤城「吹雪はまだあんなに小さいじゃないですか!提督は少女愛趣味でもあったのですか?」

提督「じゃあ聞くが……赤城って何歳なんだ?」

赤城「……えっ?」

提督「言っちゃなんだが、吹雪も赤城も進水してから2年も経ってないと思うが」

赤城「それは……今まで考えたこと無かったですね」

提督「なら吹雪が一番最初に進水したんだから、一番年上になるわけだ」

提督「そういう意味では赤城を選んだほうが、少女愛趣味なのかもしれないな」

提督「しかも艦娘はみんな2歳以下と考えると、俺は少女愛趣味というよりは、乳児愛趣味になってしまう」


赤城「わ、私たち艦娘は艦船時代の艦種などから身体の特徴が決まってるんです!」

赤城「だから、空母などの大型艦の艦娘こそ大人と言えます!」

提督「でも、駆逐艦や潜水艦は小型だっただけで、未完成だったわけじゃないだろ?」

提督「小型艦だったから子供っぽい見た目なだけで、中身まで完全に子供ってわけではないと思うが」

赤城「ぐぬぬ……」

提督「あー……でも、暁とかは子供っぽいもんなぁ。中身にも関係有るのだろうか?」

赤城「そうですよ!きっとそうに違いないです」

提督「まぁ吹雪ならわりとしっかりしてるし、大丈夫だろうな。ははは」

赤城「……」

赤城「……提督、待ってください」

提督「どうした?」

赤城「もし提督が吹雪と結婚したとしましょう。もしそうなれば……」

提督「……そうなれば?」


赤城「……吹雪は死にます!!」

提督「な、なんだって?」


赤城「考えてみてください。提督は世界にひとつしか無いおにぎり」

赤城「そして、この鎮守府にはお腹をすかせた艦娘が140人以上も居るわけです」

赤城「吹雪がそのおにぎりを独り占めする所を、黙って見ているわけがありません」


赤城「もし提督を誰かに独り占めされてしまうような事があれば……」

赤城「今後は幸せそうにしている提督と相手の事を、ずっと指を加えて見てるしか無いのです!」ドンッ

赤城「なので、提督が吹雪の事を好きであることが知れ渡ると、吹雪は多くの艦娘たちにとっての恋敵に!」

赤城「いくら練度が高く夜戦に強いとはいえど、他の艦娘たちが手を組めば吹雪は……」

提督「そんな事になりそうだと言うなら、なおさら俺は艦娘とは結婚できないじゃないか」

提督「吹雪と結婚できないのはとても残念だが、大本営には艦娘との結婚自体が争いを生む可能性があると報告を……」

赤城「いえっ!違います!そういう事が言いたかったんじゃないんです!そうじゃないんです!」

提督「じゃあどうしろと言うんだ?」

赤城「重婚です!」

提督「はぁ?」

赤城「一夫多妻制にすればいいのです。これこそがみんなが幸せになれる道です!」

提督「たしかに出来なくは無いと思うけど……」

赤城「なら、大本営に婚姻届を追加で……」

提督「嫌だよ」


赤城「…………えっ?」

赤城「たくさんの女性を自分のものにできるんですよ?男性の夢ではないのですか?」

提督「そうだろうけど、相手のことを考えると良くないじゃないか」

提督「だって、浮気だろ?俺はそんなの嫌だよ」

提督「もし俺が吹雪と結婚して、吹雪が他にも好きな人が出来たからと別の男を連れてきたりしたら……」

提督「俺はその場でその相手を殺して俺も死ぬ」

赤城「うわっ、面倒くさい」

提督「赤城の方こそ面倒くさいんだが」


赤城「ですが提督、私たちは兵器です。軍人である提督が一人で兵器をたくさん所持するのは普通のことでしょう?」

提督「普通の兵器ならそうだが、艦娘はほとんど人間じゃないか」

提督「そもそも兵器だっていうのなら、兵器が結婚したがるなんておかしいだろ」

赤城「そうかもしれませんが……」

提督「だろう?だから俺だって今まで艦娘を兵器として扱ったことはないはずだ」

赤城「ぐぬぬぬ……」

赤城「ひ、ひどいですよ提督は!」

赤城「わ、私の……しょ、処女航海を奪っておいて、吹雪と結婚するだなんて!」

提督「はぁ!?」

赤城「私、初めてだったのに……」

提督「そんな誤解を生むような言い方はやめろ!!青葉が遠征に行ってなかったら大変なことになってるぞ!」

提督「そりゃ海軍の提督なんだから、艦娘の進水式も処女航海も俺の命令で行われるだろ!」

提督「それに、吹雪も加賀も、他の艦娘全員も処女航海は俺の命令でやったじゃないか!」

赤城「命令でやっただなんてそんな……提督の女たらし!女の敵!」

提督「だから誤解を招くようなことをだな……」


提督「はぁ……赤城なら色気より食い気だと思って相談したのに…」

赤城「そ、それは私が配属されたのが鎮守府の黎明期で、私以外は駆逐艦と軽巡の娘ばかりだったから……!」

提督「でも幸せそうにご飯を食べるからそんなイメージがあったんだよ」

赤城「うぅ………」

赤城「……」グスッ

提督「おい、赤城?」

赤城「……」ポロポロ

提督「なんだ、泣いてるのか?」


赤城「だって、もうおしまいじゃないですか……」

赤城「本当は私だっておにぎりを独り占めしたかったんです。でもそんな事をすれば他のみんなは食べられない……」

赤城「だからせめて、食べたい人みんなで分けれたらって思ってたんです」

提督「おにぎり一個を大勢で分けるってのもどうかと思うが」

赤城「でも提督には好きな人もいて、重婚するつもりも無いなら私にはもう……」

赤城「しかも提督の中では私は食いしん坊だと思われていたなんて」シクシク

提督「……」

提督「まぁ、好きな人を取られたくないという気持ちは俺にもわかるさ」

提督「俺が重婚が嫌な理由は、相手の浮気を許さないのに、自分だけが浮気を許されるのはどうかと思うからだ」

提督「だけど言っちゃなんだが、吹雪が重婚でもいいって言うなら……俺は別に……」

赤城「えっ……?」


提督「まぁ、正直な話、可愛い女の子たちに慕われるのは嬉しい事だしな」

提督「動物なんかでも一夫多妻制はよく聞くが、逆の多夫一妻制は聞いたことがないし……」

提督「男の俺は多夫一妻制なんて許せないが、女性は分け合えるなら気にしないのかもしれない」

提督「だからその、みんなが納得しているのならそれでいいかなと……」

赤城「提督……!本当ですか?!」

提督「でも俺は吹雪のことが好きだから、みんなの気持ちにはすぐに答えられないが」

赤城「いえ、十分です!」


赤城「では早速、吹雪と他に提督のことが好きな艦娘を説得してきます!」

赤城「失礼しました!」ガチャッ

赤城「ふぅ……上々よ、赤城」グッ

赤城「たくさんいる艦娘の中で、私だけが提督に選んでもらえるとは思っていなかったもの」

赤城「これが提督もみんなも、もちろん私も、みんなが幸せになれる道のはず……!」

赤城「まさか提督が選んだ相手が吹雪だとは思っていなかったけど……」

赤城「てっきり、加賀さんや金剛だと思ってたからびっくりしたわ」

赤城「でもこれで、あとは吹雪に許可をとって、提督を独り占めしたがっている艦娘を説得するだけ」

赤城「榛名や不知火を説得するのは大変そうだけど、それさえ乗り越えれば……」

赤城「ふふ……ふふふ………!」

吹雪「あっ、赤城さん。秘書艦のお仕事おつかれさまです!」

赤城「あら吹雪、丁度聞きたいことがあって探してたところよ」

吹雪「なんですか?」

赤城「そうね。もし吹雪が提督と結婚したとして、提督が綾波とも結婚したらどう思う?」

吹雪「う~ん、重婚ですか?」








吹雪「……嫌ですね」

赤城「………………は?」





夜戦END

以上になります
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