【艦これ】陸奥「戦艦陸奥よ。よろしくね♪」 (175)

艦これssです

独自解釈・設定が入ります

突然オリジナル艦娘が出てくるかもしれません
不快に思う方は戻るを押してください

書き溜め無しなのでゆっくり投下でマイペースになります ご了承ください

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1415700299

今日は20時くらいから投下を開始します

説明がわかりづらくて申し訳ないです
オリジナル艦娘は実在未登場の艦を登場させたいと思ってます

それでは本日の分の投下を開始します

1943年6月8日 柱島泊地

そこで私の記憶は途切れている

突如爆発した第三砲塔により真っ二つに折れた船体

敵戦艦と砲撃戦を行うことも、航空機と対空戦闘を繰り広げることもなく

私は柱島泊地で海中へと没した

━━━━それから約70年後

呉鎮守府・建造ドック

??「落ち着かないようだな、提督」

提督「んん…久しぶりにでた5時間の建造時間だからな…」

??「また私の予備艤装だったらどうする?」

提督「その時は保管庫に41センチ砲の予備が増えるだけさ」

??「私としてはそろそろ妹が欲しいのだが…」

提督「その言い方は色々誤解を招くと思うぞ…長門」

長門「何?そうなのか?」

提督「まぁ…俺もお前の妹が早く出来て欲しいとは思ってるが…」

建造妖精「提督さん、まもなく建造完了です」

提督「もう時間か…ドック前に行こう」

すごく長い時間…漂っていた気がする

ゆっくりと手を動かしてみた

手?

なんで私に手が?

そう考えていると手が何かに当たる

そっと撫でてみると不思議とそれが何かがわかった

私の自慢の主砲、41センチ連装砲だ

これがあると言うことは私は紛れもなく『陸奥』なのだろう

でも手?どういうことなの…?

まだはっきりとしない頭で考えていると私を呼ぶ声が聞こえてきた

長門「陸奥!陸奥なんだな!?」

提督「ついに我が鎮守府に陸奥が…やったぞ!」

ゆっくりと目を開けると真っ白い軍服を着た男性と、長髪の女性が立っている

その周りには小さくて可愛らしい二頭身ほどの存在が嬉しそうに飛び回っていた

陸奥「長門…なの?」

軍服の男性と小人はわからないが、長髪の女性はなぜかすぐに長門だとわかった

長門「そうだ!長門型一番艦の長門、お前の姉だぞ!」

陸奥「え…えぇ…そうね…」

何が何なのかわからない

ゆっくりと視線をさまよわせると私の体には自慢の主砲が囲うように設置されている

目の前の姉にはないので取り外しはできるようだ

提督「まだ艦娘になった実感が沸いてないようだな…」

艦娘?私は戦艦陸奥じゃないの?

長門「ふむ…説明が必要だな…提督、とりあえず陸奥を執務室へ連れて行こう」

提督「そうだな…他の戦艦連中にも声をかけておく。長門は先に陸奥と執務室へ向かってくれ」

長門「了解した。陸奥、行こう」

混乱した頭のまま、私は長門に手を引かれ、気がつくと立派な作りの部屋のソファに腰掛けていた

長門「とりあえずこれを飲んで落ち着くといい」

目の前のテーブルに湯気を漂わせる湯呑が置かれた

ゆっくり手を伸ばし湯呑に触れる

熱いという感覚が白い手袋越しでもわかる

そっとその湯呑のお茶を口に含むと少し渋い味が口いっぱいに広がる

長門「む…苦かったか?どうもお茶を入れるのは苦手でな…」

長門が申し訳さそうにぽりぽりと頭をかきながら向かい側に腰掛けた

陸奥「少し苦いけど…暖かくて美味しい…」

顔をあげ、長門の方を見るととんでもない光景が飛び込んできた

短いスカートにも関わらず、長門は大きく股を開き座っていたからだ

もちろんその奥も丸見えである

陸奥「ちょっと!長門、見えてる!」

長門「ん?何がだ?」

きょとんとしている姉に隠すように告げる前にふと気付く

視線を落とすと自分も同じ、色違いの黒のスカートである事に気付いた

しかもすごく短い。姉と色違いの同じものであるから当然ではあるが…

更にヘソまで出ている

陸奥「~~~!!!!」

顔を真っ赤にしてスカートを抑えて座り直したちょうどその時、先ほどの白い軍服の青年が数名の女性をつれて部屋へと入ってきた所だった

提督「悪いな二人共、少し遅くな…陸奥、どうしたんだ?」

陸奥「ななな…なんでもないわ…!」

提督「そうか…おい長門、パンツ見えてるぞ」

長門「ん?おお…ははは、悪い悪い」

陸奥(な…なんなの…もう…)

スカートの裾をきゅっと掴んだまま部屋に入ってきた人物に視線を向ける

入ってきた女性は全部で四人

ポニーテールの女性が二人、ショートカットの女性が一人、そして個性的なツインテールのメガネの女性が一人だ

共通しているのは全員短いスカートということである

陸奥(よくわかんないけど…艦娘って短いスカートじゃないとダメなの…?)

なぜ自分が人間と同じ姿になっているかわからない

提督、と呼ばれている人の事もよくわからない

わからない事だらけで頭がどうにかなってしまいそうだ

提督「こほん…自己紹介も遅れてしまって申し訳ないな。私は皆から提督と呼ばれている」

提督「中には司令や司令官と呼んでくるものいるが…まぁそこらへんは自由にしてくれ」

陸奥「はぁ…」

真っ白の染み一つない海軍式の軍服に身を包んだ青年は長門の隣、陸奥の対面に腰掛ける

その後ろには先ほどの女性たちがずらりと並んだ

陸奥「あの…」

提督「ふむ…どこから話したものかな…」

??「とりあえず私たちを紹介してはどうかな、提督よ」

個性的なツインテールのメガネの女性が口を開く

個性的なのは髪型だけではない

その豊満は胸はわずかなサラシだけで隠されている

陸奥(あの人も艦娘なのかしら…?足につけているのは…徹甲弾?)

提督「そうだな…まずは大和達から自己紹介してもらおうかな」

陸奥(大和……大和…!?)

ちょっと休憩挟みます

大和「お久しぶり…でいいのかしら?私は大和型一番艦大和です」

大和と名乗った女性は深々と頭を下げる

陸奥「よ…よろしく…」

陸奥(頭についてるのは…どうみても電探…よね?)

長いポニーテールにも目が行くがそれを結っている髪飾りは紛れもなく21号電探であろう

武蔵「大和型二番艦武蔵だ!また同じ戦場に立てることを光栄に思うぞ、陸奥よ」

次いで挨拶をしたのは褐色ポニーテールメガネの武蔵だった

姉である大和とは違い豪快な性格であることがその口調からわかる

陸奥(あのサラシはどうにかならないのかしら…)

溢れんばかりの豊満な胸をサラシのみで隠しているため、すこし動いただけでもぷるんと揺れていた

陸奥「また…会えて嬉しいわ」

伊勢「伊勢型戦艦一番艦、伊勢よ。今は航空戦艦だけどね」

日向「同じく伊勢型戦艦二番艦、日向だ。水上機運用の事ならなんでも聞いてくれ」

次いで挨拶をしたのは道着のような格好に刀をさした二人組だった

陸奥(やっぱりスカート短い…)

自分のものよりは長いようだがそれでもやっぱりミニである

陸奥「二人共よろしくね。なんとなく誰だかわかってたけど…」

提督「他に金剛姉妹と扶桑姉妹がいるんだが今出撃と遠征に行っててな。帰ってきたら改めて自己紹介させよう」

陸奥「う…うん」

金剛型に扶桑型までいるとなると聯合艦隊の戦艦勢揃いじゃない…

長門「どうだ、陸奥。艦娘の体はまだ慣れないかもしれんが…懐かしい顔ぶれだろう?」

陸奥「そうね…何もかもが懐かしい…でも一体何なの…?なんで私達は人間になっているの?」

提督「まずそこから説明しなければいけないか…建造完了の時点で思っていたが…やはり記憶に混乱が見られるな」

陸奥「私が艦娘になってしまった事…それに長門達の事はなんとか理解できたわ…でもそれ以外は…」

提督「わかった…それでは説明させてもらおう。大和、悪いがスクリーンを用意してくれ。他の者は悪いが書庫から今から言う資料を頼む」

提督「陸奥、君はそこに座ってていい。すぐに状況説明の用意を済ます」

陸奥「は、はぁ…」

結局よくわからないまま、皆が慌ただしく動く中を私は呑気にお茶をすすっていた

カーテンが閉められ、薄暗くなった部屋の壁の一角に巨大なスクリーンが降りてきていた

提督「それじゃあ大和、頼むよ」

大和「はい、了解しました」

指示を受けた大和がプロジェクターを操作するとスクリーンには黒煙を上げ傾き、今にも沈みそうなタンカーが映し出される

陸奥「なにこれ…?」

カシャン、カシャンと切り替わる写真

海面には多数のボートが浮かんでおり、タンカーの乗組員と思われる人間が乗っている

カシャン、と次の写真に切り替わったとき黒煙から出てくる物体が映し出されれているのに気付いた

陸奥「鯨…?いえ、イルカかしら…」

私の問には誰も答えない

不思議そうに思っていると、次に映し出された写真を見て、私は思わず言葉を失った

緑色に光る目、生物のようにも金属のようにも見える真っ黒な外見

大きく開いた口にはまるで人間のような歯が並んでいる

そんな物体が黒煙の中から次々と現れ、海面に漂う重油と共に、浮かんでいる人を喰っている

陸奥「なんなのよ…これ…」

次に映し出された写真には、その物体の体から生えているモノに目を惹かれる

それはどう見ても単装砲に魚雷発射管であった

陸奥「船なの…?でも人を食べて…」

皆その写真を険しい目で見つめるのみで誰も口を開かない

次々に映し出される写真にはほとんどその物体が写っており、砲撃や雷撃を行っているものもあった

大和「次が最後です」

映し出された写真には例の物体が大口を開け、写真を撮っていた主に接近しているものであった

その口の中は真っ暗で、見ているだけで吸い込まれそうになる

提督「この写真は救難信号を受けて急行した部隊が回収したカメラに入ってた。食われる直前に袋に入れ投げたものが運良く回収されたようだ」

陸奥「なんなのよこれ!ねぇ!」

私は思わず立ち上がり声を荒げて『提督』へと詰め寄る

提督「……」

陸奥「何とか言いなさいよ」

提督「深海棲艦…我々はそう呼んでいる」

陸奥「しんかい…せいかん…?」

鶴翼設定メインか

提督「突如海より現れ、今現在も私たちの生活を脅かしている存在だ」

陸奥「その深海…棲艦…が何なの!?」

お互いの息がかかるほど近い距離に顔を近づけ、私は『提督』を睨みつける

わからない事だらけなのに、更にわからない事が増えてしまった

私はそれがなぜか無性にイラついたのだ

提督「長門、陸奥はやはり正真正銘、お前の妹だ。よく似てるよ」

長門「当然だろう。ビッグ7の一隻だぞ」

黙って見ていた長門が腕を組んだまま満足げに口を開いた

その他の艦娘達は特に口を出すこともなく見守っている

陸奥「私の質問に答えてもらってないわ」

提督「陸奥、その前に少し離れてくれ。このままだと我慢できずにキスしてしまいそうだ」

陸奥「は…?へ……ひゃう!」

気付けば相手の瞳に自分が映るほどの距離まで顔を近付けていた

もう唇が触れそうだ

びっくりした私は思わず後ろへと飛ぶように下がった

提督「ふむ…長門ですらここまで近付いたことはなかったな…中々いい香りもしたよ。今度長門の香りも堪能させてもらうかな」

長門「私の…?別に構わんが磯臭いと思うぞ」

陸奥「………」

提督「おっと…そんな睨まないでくれ。冗談だよ…さて…話が脱線してしまったな。質問に答えよう」

提督が大和に視線で合図する

大和は小さく頷くとプロジェクターに別の物をセットし、スクリーンに映し出した

海を埋め尽くさんばかりに存在している黒い物体、そしてそれに対し砲撃を行っている存在

提督「先程も言ったが突如現れ、我々の生存を脅かしているモノ。それが深海棲艦、そしてそれに唯一対抗しうる存在、人類の希望」

提督「それが君たち、艦娘だ」

陸奥「質問の答えになってないわ」

提督「深海棲艦についてだな?残念ながら私たちにもわからない事だらけでね。人類共通の敵だと思ってくれ」

陸奥「で、私はどうすればいいわけ?」

提督「単刀直入に言う。奴らと戦って欲しい」

奴らと、戦う

私はその言葉を聞いて胸が高鳴るのを感じた

自慢の主砲で敵を打ちのめす。私はそのために生まれてきたのだから

艦時代には成し得なかった砲撃戦、艦隊決戦

砲塔爆発という不幸な事故で沈んでしまった自分

どんな姿であれ生まれ変わり、その夢が叶うのだ

私はこれほどまで幸運に思ったことはなかった

陸奥「戦えるのね…私…ついに…」

握り締めた拳が僅かに震えている

決して怖いわけではない

いわゆる武者震いというやつだろう

陸奥「それで…敵はどこなの!?」

提督「落ち着け、陸奥。今は金剛達が出撃している」

陸奥「だったら私たちも出しなさいよ!また温存するつもり!?」

提督「だから落ち着けって。お前らをまとめて出撃させたら資材が全部吹っ飛んでしまう」

ぐるっと周りを見渡した提督の視線から戦艦娘達は一斉に視線を逸らした

大和だけが困ったような笑みを浮かべて口を開く

大和「私達は艦時代と同じで、燃料や弾薬の消費が激しいんです…」

提督「そのうえ大食らいだからな…最近はようやく遠征が安定して行えるようになったばかりでまだまだ資材の備蓄が足りないんだ」

陸奥「燃料に弾薬不足…いつの時代も変わらないのね…」

ふと、提督の言葉に気になったものがあった

陸奥「大食らいって…他に何か補給するの?」

提督「何って…そりゃあ普通に何か食わないと腹減るだろ?」

陸奥「はぁ?私達は重油と真水さえ補給できればとりあえず動くことは…」

ぐぅ~

そこまで言いかけて何かがなったことに気付いた

陸奥「…あれ?私?」

自らのお腹に手を当ててみる

ぐぅ~

再び間の抜けた音が鳴り響く

陸奥「これが…空腹?」

武蔵「提督よ、ひとまず昼食にしよう」

提督「そういえばそんな時間か…朝一で建造したからな」

伊勢「今日の当番は鳳翔さんだったよね?」

日向「あぁ、赤城と加賀もいないからゆっくり食えるだろう」

鳳翔に赤城、加賀?空母の艦娘もいるのね

そんな事をぼんやりと考えていると大和がカーテンを開ける

突然のまぶしさに思わず目を細めてしまったが次第に目が慣れてきて外の景色がはっきりと見えた

全然気にもしていなかったがここは二階のようだ

外に港と大きなクレーンが見える

私はくるりと提督の方へ向き直り

陸奥「戦艦陸奥よ。よろしくね♪あまり火遊びはしないでね。お願いよ?」

手を差し出しながら改めて自己紹介をした

提督「我が艦隊にようこそ。これからもよろしく頼むよ」

がっちりと握手を交わす

長門「よし、私が食堂まで案内しよう。艦隊、この長門に続け!」

ぽん、と長門が肩を叩いてくる

ぐっと手を挙げて歩き出す長門に続いて、私達は部屋を後にした

本日は以上です

非常に読みにくい文章で申し訳ないですが私が書きやすいのでこのままやっていきます

>>17
鶴翼の設定が私が考える艦これの設定と似ていたので流用…もとい丸パクリ気味になってます

これからも読んでもらえると幸いです

投下間隔ですがなるべく一週間に一度は投下したいと思ってますのでよろしくお願いします

執務室を出てから少し歩くとすぐに『食堂』と書かれた部屋の前まで着いた

本日の当番と書かれたプレートのしたに『鳳翔』と書かれている

陸奥「食堂も二階にあるのね」

私はそんな疑問を誰ともなしに呟いた

提督「一階は倉庫や出撃の際に使うスペースに割り振られててな。その辺も食いながら説明しよう」

提督はそう答えながらのれんをくぐり食堂へと入っていく

他の艦娘達もそうしたので私も後ろから着いていった

鳳翔「あら、提督。いらっしゃいませ」

白い割烹着を身にまとった小柄な女性が柔らかな笑みを浮かべ歓迎してくれる

お皿を洗う手を止め、私に気付くとまるで我が子を見守る母親のような優しい笑みを浮かべてくれた

鳳翔「お話は妖精さん達から聞いています。陸奥さんですね?お会い出来て光栄です」

陸奥「よろしくお願いするわ、鳳翔さん」

その人の柔らかな物腰に私も思わず笑みがこぼれる

陸奥(流石は世界で初の航空母艦…艦種は違うけどお母さんみたい)

提督「鳳翔さん、悪いんですが軽くでいいので何かいただけませんか?」

鳳翔「それでしたらおでんはいかがですか?味見ついでに食べてもらえると助かるのですが…」

提督「鳳翔さんのおでんだったら大歓迎ですよ。お願いしますね」

鳳翔「はい、すぐに準備しますので座ってお待ちくださいね」

そう告げると鳳翔は厨房へと引っ込んでいく

私達はとりあえず手近な席へと腰掛けた

陸奥「で、質問ばかりで悪いのだけどいいかしら?」

提督「私に答えられる範囲の事であれば構わないよ」

陸奥「まずここはどこなの?窓から見える景色から察するに港だと言うことはわかるのだけど…」

食堂の窓からも巨大なクレーンや港の施設が見える

ただそれだけではどこの港なのか全然わからなかった

提督「ここは呉。呉鎮守府だ」

陸奥「あらあら。まさか呉だとは思わなかったわ」

私が艦時代に沈んでしまったのは呉鎮守府にほど近い柱島泊地だ

そんな私が再びこの世に生を受けた場所が呉とはなんとも皮肉なものだ

提督「元々は海上自衛隊のものだったんだけどね。深海棲艦の出現…それに君たちの出現により鎮守府に戻ったわけさ」

陸奥「海上自衛隊…?帝国海軍とは違うの?」

提督「この国はあの戦争で負けた。その時帝国海軍は解体され、自衛隊という組織が発足されたんだ」

陸奥「ふーん…そうなの」

薄々感づいてはいたのだがやはり負けていたのか…

提督「自衛隊も深海棲艦との戦いで全滅に近い損害を受けて事実上解体されたよ」

陸奥「それじゃあ私達はどこの所属なのよ」

提督「政府は対深海棲艦特別対策チームなどという呼び方をしているがね…君たちには関係ないことだろう」

長門「私はその呼び方は嫌いだ。聯合艦隊でいいではないか」

腕を組んで黙っていた長門が突然口を開く

その顔には不満の色が浮かんでいる

提督「実を言うと私も対策チームなどという呼び方は嫌いでね。なによりかっこわるい」

陸奥「かっこわるいって…」

武蔵「また話が脱線しているぞ」

足を組み椅子にふんぞり返るように座っていた武蔵も口を開く

自動的に胸を張っているような格好のためサラシが切れないか見ているこっちが心配になってくる

提督「っと…すまんすまん」

提督が帽子をかぶり直し、背筋を伸ばしたところでパタパタと足音が聞こえてくる

振り返ると大きな鍋を抱えた鳳翔がニコニコしながら立っていた

鳳翔「おまちどうさま。提督、久しぶりに新しい子を迎えることが出来て嬉しいようですね」

テーブルの真ん中に鍋を置き、いつの間に持ってきていたのか小皿を並べていく鳳翔

柔らかい笑みを浮かべたままテキパキと食事の準備を済ませてくれた

陸奥「ありがとう、鳳翔さん」

鳳翔「どういたしまして。艦娘になってから初めて食べる料理が私のであるのが申し訳ないですが…」

陸奥「そんなことないわ。すごくいい匂いだもの…」

フタをしてあっても鍋から漏れてくるいい匂いは私の鼻をくすぐった

このような食事は初めてであるが楽しみでしょうがない

ニコニコ笑っている鳳翔さんを見ているとふと疑問が頭をよぎる

陸奥「鳳翔さんも艦娘なのよね?戦いながらこうやって食事の準備って大変じゃない?」

鳳翔「私はもう一線を退いているんです。今はこうやって食事や皆さんの身の回りのお世話をしてるんですよ」

陸奥「あら…そうだったの…」

そのあたりは鳳翔の艦時代によく似ていた

改装を受け、外海に出ることができなくなったのが原因ではあるのだが艦娘になってからもとは…

提督「鳳翔さんが待っててくれるから皆、安心して帰って来れるのさ」

提督のその言葉に、その場にいた全員が頷いた

陸奥(やっぱりお母さんみたい)

ニコニコと優しげな笑みを浮かべている鳳翔を見ながら私はそんな事を思っていた

たくさんの乙コメありがとうございます

本日の投下はここまでとします

たくさんの乙コメありがとうございます

秋イベなんとか完走しました

朝雲が攻略中に落ちてくれて一安心ですが夏に取りきれなかった清霜がでない…

ちょっと間が空きましたが今回の分投下します

提督「さて…食べながらで構わないから陸奥、質問したいことがまだまだあるんじゃないか?」

熱々の大根を頬張ったところで突如提督が口を開いた

陸奥「いひなひははしかへなひでよ」

口をはふはふとさせながら喋ったため自分でも何を言ったかわからない

提督「すまんすまん、それを食べてからでいいよ」

やっと思いで大根を飲み込んで、お茶を啜る

危うく喉を火傷するところだった

陸奥「そりゃあ聞きたことなんて山ほどあるわ」

提督「先程も言ったが、私に答えられる事ならなんでも聞いてくれ」

陸奥「そうねぇ…それじゃあ私たち、艦娘の事を教えてくれない?」

提督「難しい質問だが…君たちが現れたのは深海棲艦の出現と重なっていてね」

陸奥「あら、そうなの?」

提督「奴らが現れた時、同時に出現したのが君らなんだ」

陸奥「私達は深海棲艦を倒すために再び生を受けたのかしら?」

提督「そう考えている研究者も大勢いる。一説では奴らは前大戦で沈んだ艦の亡霊や怨念だとも言われているからな」

陸奥「ふーん…なんか胡散臭い話ね」

提督「胡散臭いも何も…君らも艦の生まれ変わりじゃないか」

陸奥「それは…そうなんだろうけど…」

艦の生まれ変わりという事は紛れもない事実であることは自分でもわかっていた

自分が戦艦陸奥だと分かっているし、艦時代の記憶も保持していたからだ

提督「君たちが艦の生まれ変わりであれ、それ以外の存在であったとしても私達は感謝しているよ」

陸奥「感謝?」

提督「君たち艦娘が居なければ人類はすでに滅んでいたかもしれない」

陸奥「そう…そう言われれば、悪い気はしないわ。ありがと」

提督「質問の答えになってなくてすまないな。艦娘の事も実はまだわからない事だらけでね」

陸奥「あら、いいじゃない。私達はあなた達の味方。それ以上の理由が必要なの?」

提督「いいや…それだけで十分だ。さて、他に何かあるかな?」

陸奥「そういえば…いつの間にか私の武装が全部消えてるんだけど…どういうこと?」

建造ドックでは確かにつけていた艤装が、長門に執務室に連れて行かれた時にはすでに消えていた

あの時は私も混乱していたので気にもしてなかったのだが、やっと疑問を口にすることができた

提督「あぁ、艤装に関しては艦娘に聞いたほうが早いな。誰か説明してくれるか?」

提督は黙々とおでんを口に運んでいる他の艦娘達の方を見る

大和「それでしたら、この大和が説明させて頂きますね」

箸を置き、口元をナプキンで拭くと大和が立ち上がり少し距離を取った

大和「私たち、艦娘の艤装は任意に取り外しもできるのですが…」

そう言いながら大和は携えていた朱色の傘を杖のように構える

大和「私たちの意思で好きなように呼び出せるのです」

バッと傘を開き、肩にかける様に構えると同時にまばゆい光が食堂を包む

思わず私は目を閉じてしまったが、恐る恐る目を開いた

陸奥「あれ…?いつの間に…」

目の前の大和には、どういうわけか巨大な艤装が展開していた

一際目を引く主砲である46センチ三連装砲は両脇に二門、背面に一門

両脇の主砲二門は船体を真ん中から割ったような艤装に支えられており、対空砲がこれまでかと言わんばかりに設置されている

陸奥(そういえば私が生まれた時もこんな感じだったような…)

大和「こんな感じですね。口で説明するのは難しいので、感覚を掴んでもらえばと思うのですが…」

陸奥「感覚って言われても…出てこいって念じればいいの?」

大和「そう…ですね…。それに近いと思います」

どこか釈然としないが、私も大和に習い席から離れるとすっと目を閉じて念じてみた

陸奥(もうどうにでもなれ!)

私はぐっと拳に力を込め、念じる

陸奥(出てこい!)

更に強く念じると私の体の周りに先ほどと同じような光が纏う

提督「ふむ…流石は長門の妹だな…実に筋がいい」

提督の言葉に目を開けてみると、私の体の周りには艤装が展開されていた

腰周りに装着された事以外は大和のものとかなり似ている

陸奥「目が覚めたときは全然気にしなかったけど…重さを感じないわね…」

不思議に思い、そっと主砲を撫でてみる

手袋越しでもその冷たさが分かるのだが、全然重さを感じない

大和「フィットした主砲を装備しているときはそうなんです。試しにこれを装備してみます?」

大和は自分の主砲から何かを抜き取ると陸奥に差し出してきた

手帳ほどの大きさのそれは、46センチ三連装砲と書かれた紙である

陸奥「なにこれ?」

提督「艦娘の装備は、その装備カードをスロットに装着することによって変更することができるんだ」

それまで口を閉ざしていた提督が話に割って入った

陸奥「装備カード…?スロット…?」

また訳のわからない事が増えてしまった

私が首を傾げていると提督が話を続ける

提督「君ら艦娘は、そのカードを装備することで簡単に装備の換装が行えるんだ」

大和が差し出しているカードを手にとった提督が私の元へ近づいて来た

提督「とりあえず、君の一番スロットに装着してみよう」

陸奥「ちょっと待って!私に46センチ砲を搭載するつもり!?」

提督「そうだが…嫌なのか?」

陸奥「嫌も何も…私沈んじゃうじゃない!」

陸にいるのだから沈むも何もないだろうが私は焦って後ずさった

提督「安心しろ。これも君ら艦娘の強みだ」

そう言うと提督は私の第一砲塔にある縦長の穴へと先ほどのカードを差し込んだ

陸奥「ちょ…!んん……!」

突如体が右前に引っ張られるように重くなる

大和「どうです?」

陸奥「お…重い…」

見ると第一砲塔が三連装砲に変わっている

にわかに信じられないが、本当に主砲が換装されている

大和「陸の上ではきついみたいですね」

苦笑しながら大和がカードを抜き取った

それと同時に重さが消え、私はほっと胸を撫で下ろす

提督「しかし便利なものだろう?巨大なクレーンも、ドックも必要ないのだからな」

陸奥「確かにそうね…でもこの4って数字は何?」

私の頭の中には艤装を展開した時からずっと浮かんでくるこの数字が気になった

提督「それは君が装備できるカードの数だ。今は41センチ砲が1つに14センチ単装砲が1つ、それに零式水上偵察機が装備されてるだろう?」

ちょっと注意して念じてみると確かにそう書いてある

4番目のみが空欄になっているのでまだ装備できるのだろう

陸奥「なんだか変な感じ…頭の中に直接浮かんできて…」

そこでふとした疑問が頭を過る

陸奥「なんで提督は私の装備…スロットだっけ?それがわかるの?」

提督「それが君ら艦娘を指揮するうえで必要な素質だからさ」

陸奥「ふーん…そういうものなのね」

提督「まぁ…最近の研究結果で元の主砲よりサイズの大きい物をたくさん装着すると命中率が下がるという結果が出てね」

陸奥「それじゃあ装備できても意味ないんじゃ…」

提督「2スロットまでなら何とか誤差の範囲らしい。躍起になって大量に作った46センチ砲が無駄にならずに済んだ」

陸奥「ちょっと気になるんだけど…この装備カード全部抜いたらどうなるの?」

提督「別に全部抜いたからといって君の艤装がなくなるわけじゃないぞ。ただな…」

陸奥「ただ?」

提督「火力が大幅に下がる。下手すれば敵の駆逐艦クラスすら沈めれないかもな」

陸奥「ふーん…なんか変なの」

そう言われてみれば、先ほどカードを抜いた大和の主砲はそのままだ

換装し、見た目が変わる時だけ変化するのだろう

日向「陸奥…これを装備するといい」

それまで黙っていた日向がそっと近寄ると一枚のカードを差し出してきた

カードには『瑞雲』と書かれている

陸奥「あ…ありがと」

少し困惑しつつもカードを受け取り、空いている4番目のスロットへと差し込もうとする

が、全然カードが入らない

陸奥「あれ?このカード、装備できないんだけど…」

提督「陸奥、カードをよく見てみるんだ」

陸奥「んん?」

カードをじっと見つめると装備可能艦種と書かれた文字が視界に浮かぶ

そこには『水上機母艦』『航空戦艦』と書かれていた

陸奥「私…戦艦なんだけど…」

日向「まぁ…そうなるな」

カードを私の手からとった日向がぽつりと呟く

日向「やはりこれからは…航空火力艦の時代だな」

席に戻った日向は再びおでんを食べ始めた

提督「こほん…まぁこのように、装備不可のカードもあるということだ」

陸奥「そ、そうみたいね…」

苦笑を浮かべる私に向かって伊勢が「ごめんね…日向が迷惑かけて」と謝ってきた

一旦ここまでとします

時間が取れたらまた夜に投下するかもしれません

陸奥「そういえば…やけに静かなんだけどここって私たちの他に誰もいないの?」

提督「いや、この鎮守府には140名以上の艦娘が所属しているよ」

陸奥「そんなに!?」

この静かさからは想像もできない数の答えが返ってきて私は思わず大声を上げてしまった

提督「本来なら佐世保や横須賀、舞鶴などの鎮守府も復活させて分散させるはずだったんだがね」

陸奥「なにか事情があるの?」

提督「艦娘を指揮する人間が私以外居ないのさ。だから設備がある程度整っている呉を鎮守府として復活させたんだ」

陸奥「そういえばさっき提督になるには素質がどうこう言ってたような…」

提督「その通り。特殊な力…と言ったほうがわかりやすいかもしれない」

陸奥「私たちの装備スロットを見れたりすること?」

提督「まず重要なのはそこだな。君たちの能力や装備を私は見る力を持っている」

陸奥「ふ~ん…提督も大変なのね」

提督「あとは妖精さんとの意思疎通だな…」

陸奥「妖精さん?」

提督「陸奥がドックで生まれた時に私と長門の周りにいただろう?」

そう言われれば…小人のような存在が飛び回っていたような…

提督「妖精さんに関しては艦娘や深海棲艦以上にわからないことが多くてね…」

長門「ここに呼んだらどうだ?建造ドックの妖精さん達は今の時間なら暇してるだろう」

提督「そうだな…ちょっと待っててくれ」

そう言い残すと提督は食堂の隅にある電話機まで行き、ぼそぼそと喋っていた

提督「すぐこちらに来てくれるそうだ」

提督がそう言いながら椅子に座った瞬間、私の目の前にひょっこりと何かが現れた

建造妖精「どうも陸奥さん、自己紹介が遅れて申し訳ないですー」

黄色いヘルメットを被り、右手にはスパナを持った小人が私の前でふわふわと浮きながら頭を下げてくる

陸奥「この子が…妖精さん?」

建造妖精「そうですー。建造関係を任されておりますー」

陸奥「か…………」

建造妖精「か?」

陸奥「可愛い~♪」

私は思わず妖精さんを抱きしめると胸に埋め、そのヘルメットに頬ずりをしていた

提督「妖精さん羨ましいな……大和、私にも同じことを…」

大和「お断りします」

提督「満面の笑みで断らないでくれ。逆に怖い」

建造妖精「陸奥さんー…少し苦しいですー…」

妖精さんの言葉に私はハッと我に返る

慌てて妖精さんを開放すると彼女?はふわ~っと私の顔の前で浮いた

陸奥「ごめんなさい…あまりにも可愛くて…」

陸奥「この子が妖精さんなのね?」

目の前でふわふわ浮く妖精さんの頬を優しく指で撫でながら私は提督の方へ向き直る

提督「そうだ。その子は建造ドック専属だがね。他にも入渠ドック専属の妖精さんや装備を管理している妖精さんもいる」

陸奥「装備を?」

提督「うむ、まぁ…なんと言ったらいいか…。乗員のようなものだと思ってもらえばいい」

陸奥「機関科とか砲術科みたいなものかしら…?」

提督「あぁ…その言い方の方がしっくりくるな」

陸奥「てっきり私一人で戦闘を行うのかと思ってたわ」

大和「艦娘だけでも砲撃などを行うことはできるのですが…操艦・照準・砲撃等すべてをこなすのは難しいですから」

陸奥「そう言われればそうね…艦時代ですら戦艦級には1000人以上乗ってたものね」

副砲ですら撃つのに最低数名は必要になる

戦艦級の主砲に至っては照準の調整や装填作業、さらには弾道計算など更に多くの人員が必要なのだ

提督「それらをサポートしてくれるのが妖精さん達なんだ。深海棲艦との戦いでは心強いパートナーになるだろう」

建造妖精「私は作ることしかできませんが…精一杯頑張りますー」

陸奥「ふふ♪よろしくね」

建造妖精「それでは私はドックに戻りますー。艤装や機関の事で何かあったら気軽にお越し下さいー」

妖精さんは頭を下げるとふわふわと食堂から出て行った

提督「妖精さんがいるからこそ、この鎮守府や艦隊が機能しているといっても過言ではない」

陸奥「そうね…私もあの子らがいてくれると心強いわ」

提督「ちなみに先程も言ったが妖精さんの事はわからないことが多すぎてね…」

陸奥「あら、可愛いからいいじゃない」

提督「そういうものなのか…?」

陸奥「可愛いは正義よ?」

長門「その通りだ」

長門がうんうんと大きく頷いている

凛とした表情の多い長門だが案外可愛いものが好きなのかもしれない

そういえば私、艦娘の長門のこと全然知らないな…

今日生まれたばかりなのだから仕方ないとは言え、少し悲しい気持ちになる

提督「少しづつ慣れていけばいい」

そんな私の気持ちに気付いたのか、提督がぽつりと呟いた

陸奥「ありがと」

セクハラばっかり言ってるかと思ったけど…案外いい人なのかも

そんな事を思っていると、提督のつけている腕時計からピピピと小刻みに音がなった

提督「そろそろ金剛達が帰ってくる時間か…出迎えに行こう」

その言葉に他の艦娘達はお皿を重ねたり、テーブルを拭き始めた

鳳翔「片付けは私がやっておきますので、皆さんは金剛さん達を出迎えてやってください」

いつの間にきたのか、鳳翔さんが変わらぬ笑顔でテーブルの上をテキパキと片付け始めた

提督「すいません…お願いしますね」

軽く頭を下げると提督は歩き出し食堂から出て行く

私も鳳翔さんに頭を下げ、慌てて皆のあとを追った

本日はここまでとします

全艦娘が所属していることにしましたが全部出せるかどうか…

実は今の艦娘の数を知らないので140名以上と曖昧な表現にしたのですが…間違ってますかね?

もし間違ってたら申し訳ないです

次の投下は一週間以内を目指します

提督「港はこっちだ」

食堂を出て、立派な階段を降り一階のロビーから玄関へと皆は歩いていく

その後ろを私はキョロキョロと見回しながらついていった

提督「鎮守府の中も後でちゃんと案内するからな」

陸奥「そうしてくれると助かるわ」

正面玄関らしい大きな扉を抜けるとすぐ目の前には港が広がっている

陸奥「ふぅん…鎮守府からすぐ港に出れるなんて便利ね」

提督「君たちの出撃の事を考えてこう作ったらしい。ただ、艦砲射撃でもされたら木っ端微塵だろうがね」

冗談で言っているのか本心なのかわからないが、私にも港から近すぎるという考えはよぎった

陸奥「まぁ、あまり歩かなくていいのは助かるわ」

提督「そう言ってくれると助かる」

長門「む…見えたぞ」

陸奥「……?」

長門の言葉に私は目の前に広がる海の彼方を見つめる

よくよく目を凝らしてみると水平線の上にぽつりと黒い影が見て取れた

陸奥「私には艦娘の姿は見えないんだけど…」

見える影は一つのみ

しかも近づいてくるにつれその艦影はどう見ても空母であった

提督「あれは君たち艦娘を作戦海域周辺まで輸送するための艦だ」

陸奥「え?私たちってここから直接向かうわけじゃないの?」

港から伸びている桟橋には海上へと降りれるように階段がついてるのが見える

てっきり直接そこから海へと降りるものかと思っていた

提督「もちろん、鎮守府周辺海域への出撃や輸送艦が使えない時はそうする」

陸奥「普段は輸送艦に運んでもらえるなんて…いいことづくめじゃない」

大和「その辺りは艦時代と大きく違うところですね。まとめて私たちを運べばその分、燃料の消費を抑えれますから」

陸奥「そうねぇ…便利な時代になったものだわ」

提督「そうは言っても運べるのはやつらの占領海域のかなり手前までだがな。あの輸送艦はまともな自衛手段がないのでね」

陸奥「護衛の航空機も艦もないの?」

提督「もちろん付けてあるがそれでも最低限だ。まだまだ余裕がなくてね」

陸奥「そう…やっぱり色々大変なのね」

私は戦時中を思い出す。私やその他の戦艦が温存されたのは燃料などの節約が原因だからだ

例の輸送艦が近づいてくると艦影が更にはっきりと確認できる

右舷側に設置されたやや巨大な艦橋、そして飛行甲板

艦首付近には「183」と数字が書いてある

陸奥「ちょっと変わった艦橋の形だけど…立派な空母を持ってるじゃないの」

提督「空母じゃない。あれはヘリコプター搭載護衛艦だ」

陸奥「へりこぷたぁ?」

提督「そうだな…オートジャイロのようなものだと言えばわかりやすいか?」

陸奥「あぁ…それなら知ってるわ。飛行機じゃなくてヘリコプター…だっけ?それ用の船ってことね」

提督「そうだ、元々はそのような運用をする予定だった。今は君らの輸送艦として活躍しているがね」

陸奥「でもどう見ても空母…」

提督「ヘリコプター搭載護衛艦だ」

陸奥「は…はい…」

提督の謎の気迫に押されつい改まって頷いてしまった

きっと何か理由があるんだろう

日向「ちなみにあの船に搭載されるヘリコプターはロクマルと言ってな。きっと航空戦艦である私にも搭載でき…むぐ!」

伊勢「はい、日向は黙っててね~」

伊勢が私に向かってごめんねとするように手を振っている

航空戦艦も大変ねぇ…などと考えながら私は近付いてくる輸送艦を見つめていた

例の輸送艦が近づいてくると予想以上の大きさに驚いた

全長は250m近くあるだろう

陸奥「ちなみにこの子の名前はなんていうのかしら?」

提督「いずもだ」

陸奥「この子も旧国名にちなんでるのね」

提督「戦後になって命名基準が変わったからな。ちなみにこのいずも型の前級はひゅうが型だ」

陸奥「命名基準は変わっても艦名を引き継ぐのは変わってないのね」

日向「ヘリ搭載護衛艦になったら私が姉になったからな」

伊勢「こればかりはしょうがないのよねぇ…」

勝ち誇った表情を浮かべる日向に納得いかなそうな表情を浮かべる伊勢

だが先代までは姉だったのに次代からは妹になるというのは船名では珍しいことでない

陸奥「ちなみにそのひゅうが型は使ってないの?」

提督「残念なことに沈んでしまったよ」

陸奥「そう…」

提督「先程も話したが、海上自衛隊は深海棲艦との戦いで事実上壊滅的な被害を受けてね」

陸奥「この子は無事だったのね」

提督「いずもはまだ就役前だったんだ。搭載するヘリもほぼ失い途方にくれていた所に輸送艦としての仕事が舞い込んだのさ」

あれこれ話しているうちにいずもがほれぼれするような動きで接舷した

いつの間に現れたのか水兵たちがテキパキと係留作業を行い、いずもからはタラップが降ろされる

しばらくすると50代前半ほどの男性が水兵数名を引き連れて船から降りてくる

提督「艦長、ご苦労様でした」

いずも艦長「いずも、ただいま帰投しました。おや…そちらの方はもしや…」

提督「我が艦隊にもようやく彼女が来てくれましたよ」

いずも艦長「おぉ…それはめでたい!お初にお目にかかります。いずも艦長です」

陸奥「長門型二番艦、陸奥です」

差し出された手を握り返しながら私はそう答えた

いずも艦長「姉の長門さんと同じで実にお美しい。作戦行動を共にするようになったらよろしくお願いします」

陸奥「あら…そんな…あらあら…」

まったくいやらしさを感じない言葉に恥ずかしくなり頬が熱くなったのがわかる

いずも艦長「もう少しお話したいのですが…仕事が山ほど残ってましてな…申し訳ない」

提督「今度ゆっくりとお話できる時間と場所を用意しましょう」

いずも艦長「そうですな…楽しみにしております」

手を離したあと、お手本のような敬礼を返すと艦長は再び艦へと戻っていく

陸奥「結構いい男ねぇ…」

提督「目の前にもいい男がいるじゃないか」

陸奥「あら、貴方はまだまだ若いじゃない。お姉さんの目に留まるには十年は早いかな~」

提督「それでは、十年たったら相手をしてくれるのか?」

陸奥「さぁ…それは貴方次第ね」

提督「なかなか手厳しいな」

肩を竦める彼を見て、私は自然に笑みがこぼれた

いずもの周りにはたくさんの水兵が忙しそうに動き回っている

陸奥「そういえば肝心の金剛達は…?」

提督「いつもならタラップが降りた瞬間に出てくるんだが…珍しいな」

船を見上げる提督達の耳に、何かが聞こえてきた

??「離すデース!私は提督に早く会いたいデース!」

??「ですがお姉さま!そのまま出て行くと色々見えて…」

??「とにかく何か羽織る物を…」

??「私の分析によると、そのまま出て行くと少なくとも上半身は丸見えね」

ここからでは見えないが甲板の上から四人の女性の声が聞こえてくる

大和「甲板の上には出てきてるようですが…」

武蔵「やけに騒がしいが、何かあったのか?」

提督「わからん…とにかく呼んでみよう。おーい!お前ら何騒いでるんだ?」

??「提督の声デース!!」

??「あ!しまった!お姉さま…!せめてこれを…」

??「間に合わなかった…」

??「はぁ…まったく…金剛姉さんは…」

タラップを二段飛ばしに猛スピードで駆け下りてくる一人の女性

特徴的なカチューシャをつけており長い髪は両脇でくるくる巻き、頭頂部にはひょこひょこ動くくせ毛

白い巫女服に茶色がかったスカート、それにロングブーツ

だがその服装は所々焼け焦げたり破けたりしている

一番の問題は上着である巫女服だった

もはやちぎれかかっており、彼女の白い肌はほぼ露出している

??「テートク~!会いたかったデース!」

彼女はそんな事おかまいなしといった様子で提督の元へと両手を広げて駆け寄ってくる

風が拭き、その巫女服が飛ばされたのと提督の顔が二つの柔らかい物体で覆われのはほぼ同時だった

支援どうもです

前回の投下よりちょっと間が空いて申し訳ありません

今回はここまでとさせていただきます

皆の目の前には巫女服姿の女性が四人、そして遅れて降りてきた赤と青の弓道着姿の女性二人が横一列に並んでいる

なお上半身裸で降りてきた女性の服装は元に戻っていた

すぐに追いかけてきた三人の女性により提督はすぐに引き離され目を塞がれた

そして女性には緑色のバケツの水をかけたのだ

不思議な事に水をかけただけで服や汚れがあっという間に綺麗さっぱり直っていた

また聞くことが一つ増えたようだ

提督「中々いいものを堪能させてもらったよ」

帽子をかぶり直しながらぽつりと提督が呟く

大和「……」

提督「コホン…それでは皆自己紹介をしてもらおうかな」

その提督の言葉に先ほどまで服が破けてアラレもない姿を晒していた女性が一歩前に踏み出してきた



金剛「金剛型戦艦一番艦の金剛デース!よろしくお願いしマース!」

なんか変な喋り方…と思ったが金剛は確かイギリスで建造されたんだっけ…

そう思っていると二人目が前に出てくる

比叡「金剛型戦艦二番艦の比叡です!気合!入れて!よろしく!」

他の姉妹と比べてちょっと小柄だが元気いっぱいのようだ

榛名「金剛型三番艦の榛名です。お会い出来て光栄です」

静かに前に出てきた三人目の彼女は姉二人と違って物静かなようだ

霧島「金剛型四番艦の霧島よ。戦況分析なら任せてね」

四人目に出てきたメガネの彼女は知的な雰囲気が漂っている

陸奥「戦艦陸奥よ、よろしくね♪」

提督「よし、次は君らの自己紹介も頼むよ」

提督のその言葉に残りの二人が前に一歩踏み出してきた

赤城「航空母艦、赤城です。空母機動部隊の運用なら任せてください!」

加賀「加賀です。よろしくおねがいするわね」

陸奥「こちらこそよろしくね」

柔らかい物腰の赤城にちょっと冷たい感じのする加賀

実に対照的な二人だが一航戦所属の空母とだけあってその実力は確かなものに違いない

提督「慌ただしい紹介で悪いな」

陸奥「あら、私は構わないわよ。ゆっくり話ができる時間はあるでしょう?」

提督「そうだな…金剛達は補給と整備を済ませればしばらく出撃予定はない」

金剛「これでまたテートクと一緒に居れマース!」

霧島「金剛お姉さまはドックに入って念入りに整備です」

金剛「why!さっきバケツで修復は終わってるネ!?」

比叡「それでもです!ドックじゃない場所でバケツを使ったのでちゃんと直っているか見てもらいます!」

榛名「さぁ、早く行って提督と一緒にいる時間を増やしましょう?」

金剛「あぁ…そんな…テートク~…!」

三人の妹に抱えられ金剛は引きずられていく

陸奥「彼女たちっていつもこうなの?」

大和「えぇ。賑やかで面白い姉妹ですよね」

姉妹艦なのにあそこまで違いが出るんだなぁ…などと引きずられていく金剛を私は目で追っていた

ちょっと短いですけどここまでです

また明日書きます

赤城「提督、私たちは艦載機の整備があるので工廠へ向かいますね」

加賀「陸奥さん、ごめんなさいね。夕飯の席で会いましょう」

陸奥「えぇ、またね」

一航戦コンビはそう言い残して鎮守府の方へと歩いていく

提督「やはり帰投してからすぐはタイミングが悪かったな…」

陸奥「私は別に気にしてないわ。次の出撃に備えての整備や点検は大事だもの」

提督「そう言ってくれて助かるよ」

そう言いながら彼は帽子を被りなおす

どうやら癖のようだ

陸奥「金剛姉妹には会えたから…あとは扶桑姉妹だけね」

私は艦時代の扶桑達を思い出していた

一度見ると忘れられない独特な艦橋

艦全体に設置された6基12門の35.6センチ砲

欠陥戦艦などと言われてはいたのだが私は彼女たちが弱いとは思っていない

提督「扶桑達ももうすぐ帰ってくるよ。っと…噂をすればってやつだな」

彼の視線の先、水平線の彼方にポツリポツリと黒い点が現れた

いずもの時とは違いずいぶん大所帯である

提督「今回の北号作戦も無事に完遂できたようだ」

陸奥「北号作戦って?」

提督「航空戦艦を基幹とした強行輸送船団による物資輸送任務だ」

陸奥「ちょっと待って…航空戦艦ならそこに日向達がいるじゃない」

私は沈むまでの記憶しかないが扶桑達は航空戦艦になっていなかった

そういった計画があったのは知っているが実現したのだろうか

提督「そこも艦娘の特徴の一つだ。たとえペーパープランであっても艦娘なら現実のものとなる」

次第に近付いてくる船団の先頭に人影が見え始めた

その数は六人

その内二人は金剛達のような白い巫女服の衣装を纏っている

更に目を引いたのはその艤装だった

黒光りする巨大な三基の砲塔

まさに超弩級戦艦という言葉が相応しい

そしてその手には飛行甲板が抱えられている

船団の上空には数十機の航空機の姿も確認できた

すべて下駄履きであるようだがたった二隻の航空戦艦がこれだけの航空戦力を展開できることに私は驚いた

陸奥「すごいわねぇ…」

伊勢「そうでしょう?艦時代には成し得なかった、航空戦艦としての真価を発揮できるのよ!」

日向「まぁ…そうなるな」

日向は相変わらずだが伊勢までもがキラキラと目を輝かせている

まるで自分のことのように喜んでいるようだった

陸奥「ねぇ、私も航空戦艦になれないの?」

提督「残念ながらそういった改装設計図は見つかってないな」

陸奥「あらあら、本当に残念。航空戦艦陸奥!ってやってみたかったのに」

提督「伊勢たちか扶桑たちに飛行甲板を借りてやってみたらどうだ?」

陸奥「そんな事で航空戦艦になれるの?」

提督「いや…無理だな。もしそれだけで艦種が変わるなら私は君らを空母にしていたかもな」

陸奥「あらあら…怖いこと」

そんな話をしているうちに船団は港内へと次々と入ってきた

そして桟橋からは六人の艦娘が上がってきて、私たちの目の前に並び提督へと敬礼する

また短いですがここまでです

続きはなるべく早いうちに書きます

今年最後の投下を開始します

あまり長くできませんがよろしくです

扶桑「提督…扶桑艦隊、ただいま帰投しました」

提督「お疲れ様。今回も無事に帰ってきてくれて嬉しいよ」

山城「提督…そちらの方は?」

提督「あぁ…やっと我が艦隊に着任してくれた…」

陸奥「戦艦陸奥よ、よろしくね♪」

扶桑「まぁ…貴女が…私は扶桑型戦艦一番艦扶桑です。こちらこそよろしくお願いしますね」

山城「扶桑型二番艦山城です。よろしく」

扶桑「陸奥さん…貴女とはいい関係が築けそうだわ…」

陸奥「そうねぇ…なんだか私達似てる雰囲気かも?」

提督「き、君たちが仲良く出来そうでよかったよ…さて次は君たちに紹介をしてもらおうかな」

提督が見た方には黒い制服を着た四人組が立っていた

共通しているのは皆赤いネクタイをしていることだ

白露「はい!白露型駆逐艦一番艦の白露です!一番艦ですよ!」

時雨「白露型二番艦の時雨だよ。よろしくね」

村雨「はいは~い、白露型三番艦の村雨です。よろしくお願いします」

夕立「白露型四番艦の夕立です!よろしくおねがするっぽい!」

陸奥「こちらこそよろしくお願いするわね」

元気一杯の彼女たちであったが私は駆逐艦の艦娘を見てびっくりした

どう見ても私たちより年下、中学生くらいにしか見えない

陸奥「ねぇ…この子達も艦娘なんでしょう?」

提督「そうだ。見た目は子供っぽくても彼女たちは勇猛果敢に敵艦隊に飛び込んで行く」

陸奥「でも…こんな子たちが…」

提督「艦娘はその艦種に応じて背格好がある程度決まっているようでな。まぁ例外もたまにあるが」

たしかに駆逐艦は小さい。艦時代であったなら彼女らは私の水線長の半分もないのだ

提督「見た目に惑わされると痛い目を見るぞ?今度演習でもしてみるといい」

夕立「夕立も陸奥さんと演習してみたいっぽい~♪」

無邪気な笑顔を浮かべる夕立だったがその瞳が一瞬赤く染まった気がして私は思わず後ずさってしまった

提督「陸奥の慣熟訓練が終わったら予定を立てるよ」

夕立「やった~♪陸奥さん、約束ね?」

陸奥「え、えぇ…」

提督「さて…扶桑艦隊諸君は暫く休暇を与える。各自しっかり休むように」

扶桑「ありがとうございます…提督。さぁ、皆聞いたとおりお休みよ。しっかり休むようにね?」

白露型「「「「了解しました!」」」」

扶桑「では、提督…私達はドックにいきますので…」

山城「さぁ扶桑姉さま…長旅の疲れを癒しましょう」

そうして扶桑艦隊の面々は各々の方へと去っていく

それを見送ったあと提督が私の方へと向き直った

提督「随分慌ただしくなってしまったがひとまず戦艦の紹介は終わったな」

大和「提督、ビスマルクさんはいいんですか?」

陸奥「ビスマルクですって?」

ビスマルクといえば同盟国であったドイツの戦艦だったはず

艦娘が存在するのははどうやら日本だけじゃないらしい

提督「彼女は厳密に言うとうちの鎮守府の管轄じゃないからな…まぁ機会があったら紹介するよ」

陸奥「そう、それは残念ね…ねぇ、艦娘って世界中にいるの?」

提督「うむ、ここ日本以外にも世界中に艦娘はいるぞ」

陸奥「やっぱりアメリカも?」

提督「もちろんだ。この小さな島国が奴らに本格侵攻を受けてないのはアメリカのおかげだといってもいい」

提督「日本とアメリカの艦娘が太平洋の深海棲艦を挟撃している形となっているからな」

陸奥「それでも複雑な気分だわ…かつての敵国と手を組んでいるだなんて…」

提督「敗戦国といっても悪い事ばかりじゃないさ。日本がここまで復旧したのはアメリカのおかげである所も大きい」

陸奥「でも…目の前にいきなりアメリカの艦娘が現れたら…私…」

提督「君ならきっと現実を受け入れられる。かつての敵であっても今は心強い味方なんだ…わかってくれ」

そう言いながら彼は私の肩に手を置き、じっと見つめてきた

その置かれた手に私は自分の手を重ねる

陸奥「わかったわ…」

提督「君は強い…だから頼りにしているよ」

陸奥「うん…ありがと…」

きゅっと彼の手袋を掴みながら私は小さく頷いた

大和「おほん!提督、そろそろお時間ですよ?」

提督「ん?あぁ…そうだ。鎮守府に戻るか」

すっと引いていった彼の手を私は名残惜しそうに見つめた

だが何か急ぎの事があるようだ

提督「さて…それでは行こうか、陸奥」

あまりにも自然な動きで彼は私の手を握ってくる

陸奥「あら…あらあら」

彼に手を引かれながら私達は鎮守府へと道を戻っていった

今年の投下終了です!

と言いたいところでしたが若干時間オーバーしてしまいました…

今年はなるべく更新頻度をあげたいと思います

それでは皆さん、今年もよろしくお願いします!

鎮守府に戻ってからは施設や部屋の案内をしてもらった

工廠や入渠ドック、艤装保管庫など回った末に私達はとある部屋の前に立っている

陸奥「大広間って…またそのまんまの部屋の名前ね」

提督「一階のスペースはほぼこの部屋が占めているからな」

陸奥「ふーん…で、ここは普段何に使っているの?」

提督「お偉方を招いての立食会や艦娘を集めての集会が主な使い道だな」

陸奥「開けてみていい?」

提督「……あぁ、いいよ」

妙な間が気になったが私はノブに手をかけてドアを押した

ギィ…と音を立てて開いたドアの先は真っ暗である

陸奥「なによ…カーテン閉め切ってて何も見えないじゃない」

提督「遠慮せずに入ってみてくれ」

彼に背中を押されて私は部屋へと入る

陸奥「やっぱり真っ暗で何も見えないわ…」

そう呟いた直後、パァン!という音と共に私の視界に光が広がった

陸奥「な…何事!?」

「「「「陸奥さん、鎮守府着任おめでとうございまーす!!」」」」

目の前には音の正体であるくす玉が割れ、煌びやかな紙吹雪が舞っている

そしてその周りには100名を超える少女達が一斉に敬礼をしていた

陸奥「え?……え?」

訳もわからないまま視線を巡らすと入渠したはずの金剛や扶桑達の姿も見える

陸奥「ま、まさか…」

提督「そのまさかだ。彼女たちには君の歓迎会の準備が終わるまでの時間稼ぎをしてもらった」

いつの間にか彼が隣に立っている

陸奥「あら、あらあら…歓迎会なんて…あらあら…」

私は嬉しいやら恥ずかしいやら、柄にもなくもじもじとしてしまった

提督「陸奥、我が鎮守府へようこそ。盛大に歓迎しよう」

陸奥「こちらこそ、よろしくお願いするわ」

差し出された手をがっちりと握り、何度目かの挨拶を済ます

大広間には陸奥の事を暖かく包むような拍手が響いていた

提督「さぁ、皆。好きなだけ食べて飲んでくれ」

彼のその一言でわっと艦娘達は料理へと群がった

百名以上の艦娘でごった返しているが、各艦それぞれ名札を付けていた

提督「ある程度同型艦で行動するように伝えてある。行ってみるといい」

私はとりあえずきゃぁきゃぁと楽しそうに騒いでいる駆逐艦娘達の所へと向かった

彼女たちの人数はとにかく多いので各艦ネームシップ子らに挨拶をしてもらう

駆逐艦娘達に囲まれて質問攻めにあっている所に軽巡洋艦娘達も群がってきて更に賑やかになる

なんとかその場を抜け出して次は重巡洋艦娘達の所へ

まだまだ幼さの残る駆逐艦や軽巡洋艦と違い重巡洋艦達は随分落ち着いた雰囲気だった

簡単な挨拶を済ませて次は戦艦と空母の所へ向かう

こちらは酒も入っていてある意味駆逐艦達より賑やかだった

さらには潜水艦、そして工作艦の明石に給糧艦の間宮に伊良湖と挨拶を交わす

そして陸軍から出向してきたあきつ丸とまるゆとも挨拶を交わした

長門「さぁ陸奥、祝杯をあげるぞ!飲め飲め!」

姉から差し出されたお酒を一気に飲み干すと、大広間の賑わいは頂点へと達した

陸奥「…………ん…んん…」

頭の中から殴られているような痛みで目を覚ます

陸奥「これが二日酔いってやつね…」

確か歓迎会でお酒を飲んだことは覚えている

その後軽空母たち数名が近寄ってきて更に飲んだのも

痛む頭を抑えながらゆっくりと起き上がるとどうやらちゃんと布団に寝ているようだ

陸奥「誰かが部屋に運んでくれたのかしら…」

ここはどう見てもあの大広間ではない

六畳ほどの部屋の隅に置いてあるベッドの上だ

陸奥「くぅ~…頭が……」

こめかみ辺りを抑えて痛みに耐えているとろこにふと違和感を覚えて視線を落とす

陸奥(あら…私ってば…中々立派な物を持ってるわね…)

視線の先には自らが持つ豊満なバスト

シーツが引っかかって隠れてはいるがその大きさは十分立派なものである

陸奥(腰周りも結構くびれてるし…)

陸奥「は……?なんで私裸…」

提督「出るとこは出ていて引き締まっている所はしっかり引き締まっている。理想的な体つきじゃないか」

声の方へと顔を向けると彼が部屋の入口で薬と水を持って立っている

提督「陸奥…悪いと思ったんだがな…昨日は俺の…」

私はシーツで体を隠しつつ、彼目掛けて思いっきり枕を投げつけた

本日はここまでです

次はなるべく近いうちに投下します

陸奥「ご…ごめんなさい…」

姉が持ってきてくれた服を着ながらドアの向こうの彼へと謝る

提督「気にしてないさ…いきなり部屋に入った私も悪かったよ」

彼が持ってきてくれた薬のお陰で二日酔いはかなり楽になっている

陸奥「まさか私が…」

どうやら私は酔うと脱ぐ癖があるらしい

あの歓迎会で軽空母達と飲んでいた所までは覚えている

日本酒に焼酎、ビールにワインとそれはもう浴びるように飲んでいた

そこで私は突然脱ぎ始めたそうだ

流石にまずいと思った提督は戦艦数名に頼んで私をこの部屋へと曳航したとの事

ちなみにこの部屋は工廠の隣にある仮眠室でよく夕張や明石が使用しているらしい

陸奥「恥ずかしくてこの部屋から出たくない…」

提督「気持ちはわかるがな…出てきてくれないと困るぞ」

陸奥「でもぉ…」

提督「この鎮守府には酒で乱れたくらいで馬鹿にしたりする子はいないよ」

陸奥「ホントに?」

提督「本当だとも」

そっとドアを開け、顔を半分だけ出して外を伺うと彼が壁にもたれて腕を組んでいた

隣には長門が同じように腕を組んでたたずんでいる

長門「やっと出てきたか」

陸奥「ん……」

すーっとドアに顔を隠そうとすると長門が私のヘアバンドを掴んで強引に引っ張った

陸奥「やめて!マスト壊れちゃうから!」

長門「だったらちゃんと部屋から出るんだな」

ずれてしまったヘアバンドを戻しながら私は部屋の外へと渋々出る

提督「出てきてくれて嬉しいよ、陸奥」

陸奥「ねぇ…見た?」

提督「見た?何をだ?」

陸奥「その…私の体…」

提督「あぁ…残念ながら見えなかった。是非今度じっくりとだな」

そう言った直後、彼目掛けてどこからともなく九一式徹甲弾が飛来してきた

カーン!と甲高い音を立てて頭に直撃する九一式徹甲弾

やはり痛いのか彼は頭を抑えてしゃがみこんでしまった

提督「や…大和…流石にこれは痛いぞ」

大和「ご安心を、提督。それはただのレプリカですので」

声の方へと向くと大和と武蔵が立っていた

よく見てみると大和が太ももに装着しているホルダーから徹甲弾が一つなくなっている

陸奥(あれってレプリカだったんだ…)

大和「陸奥さん、気分はどうですか?」

陸奥「え?えぇ、薬のお陰で何とか…かなり楽になったわ」

武蔵「まぁあれだけ飲めば二日酔いにもなるだろう。しかし驚いたぞ」

陸奥「え?」

武蔵「私の胸部装甲が一番よ!と言って脱ぎだした時はな」

陸奥「は…?」

武蔵「なんだ…全然覚えてないのか?」

どうやら私はただ普通に脱いだだけではなく、意味不明な事を言って脱いだようだった

武蔵「まぁなんだ。同性の私から見ても陸奥の体付きは中々…どうした?」

穴があったら入りたいとはこの事だろう

耳まで真っ赤になっているのが自分でもわかる

大和「武蔵!ちょっと…!」

武蔵「なんだ?何か気に障るようなことでも言ってしまったか?」

二人が何か喋っているが全然頭に入ってこない

昨晩の記憶が徐々に思い出されてきたからである

軽空母の千歳と飲んでいるときの事だった

千歳「陸奥さんってスタイルいいですよねぇ」

陸奥「何言ってるのよ。貴女も相当なモノ持っているじゃない」

千歳「これは…高速給油艦時代の名残ですから…それに妹の方が大きいし」

そう、最初はこれくらいの話だった

だが酒が手伝い徐々にエスカレートしていく

陸奥「ねぇ、こうやって胸を寄せて…ほらここにお酒注いでみて」

隼鷹「ひゃっはぁ~!こりゃエロいねぇ!」

千歳「そんなのわらひにもできましゅよぉ~」

千代田「おねぇ…もうそれくらいしといたほうが…」

こうやって一人、また一人と酒に撃沈されていく中

私は最後まで飲み続けていたのだ

そして何を思ったのか私は

陸奥「私の胸部装甲が一番なのよ!ほらほらぁ!」

などと叫びただでさえ面積の少ない長門型の制服を脱ぎ捨てたのだった

陸奥「ねぇ…私…標的艦にでもしてくれない?」

長門「な!何を言い出すんだ!考え直せ!」

陸奥「それか第三砲塔に火を放って!」

長門「陸奥!落ち着け!」

暴れだす私を必死に押さえ込む長門

そこに大和と武蔵も加勢して私はがっちりと押さえられてしまった

陸奥「もうおしまいよ…いくらバカにしたり気にしたりする子がいないからって…心の中では皆私を痴女扱いするんでしょう!」

大和「だ…誰もそんな事思いませんから!」

武蔵「私の発言が気に障ったのなら謝る!」

鎮守府生活二日目にして大失態を犯してしまった

このまま消えることができたらどんなに楽か…

そんな私の頭を誰かが優しく撫でてくれた

涙目のまま見ると彼が手を伸ばして撫でていた

提督「陸奥…冗談でもそんな悲しいことを言わないでくれ」

陸奥「でも…私…」

提督「生きていれば大きな失敗の一つや二つ…必ずあるさ」

提督「でもな…この鎮守府の仲間たちはその失敗を笑ったりなんかしない。馬鹿にしたりもしない」

陸奥「ん…」

提督「他人の失敗でも自分のことのように考えてくれる子達ばかりだ」

いつの間にか私の拘束をといていた長門と大和姉妹がうんうんと頷いている

陸奥「暴れたりして…ごめんなさい…」

彼は撫でている手を離し、俯いてしまった私の肩へと手をのせる

提督「気にしなくていいさ。皆、元気になった陸奥を待っているよ」

顔を上げると彼が優しく微笑みかけている

陸奥「提督…」

彼の手に自分の手を乗せ、見つめ合う

そこへ一枚の紙が足元へと飛んできた

どうやら新聞のようであるが、見出しには

【戦艦陸奥!驚異の胸囲!?やはりビッグ7は格が違った!】

提督「青葉ああああああああああああ!」

あぁ…彼ってあんな大きい声出すんだ…

新聞を握り締めどこかへ走り去っていく提督

その姿を見届けてから、私は再び仮眠室へと引きこもった

本日はここまでとします

何だか意味不明な展開になってしまって申し訳ない

次回から徐々に戦闘パートへと入ってきます

大和「陸奥さんがこの鎮守府に着任してからもう三ヶ月ですねぇ…」

陸奥「そうねぇ…時間の流れって早いわねぇ…」

武蔵「まったくだ…」

ここは執務室

だが本来の主である提督の姿はなかった

部屋の中央には置いてあったソファとテーブルを撤去して設置されたコタツ

そのコタツに超弩級戦艦が三隻、暖をとっていた

大和「あ、陸奥さんお茶飲みます?」

陸奥「頂こうかしら」

武蔵「大和、お茶を淹れに行くなら悪いがミカンの補給を頼む」

大和「はいはい、ちょっと待っててくださいね」

ちょっとだるそうに立ち上がった大和は普段の格好ではなかった

トレーナーとGパンというラフな格好である

電探カチューシャもしていないためとても戦艦の艦娘には見えない

陸奥「はぁ~…口うるさい提督が居ないから快適ねぇ…」

提督は現在出張しており呉鎮守府には艦娘達だけだった

武蔵「長門も同行しているからな…秘書艦殿は大変だ」

陸奥「その秘書艦って結構ハードよね」

武蔵「そうなのか?私はまだやったことないんだ」

陸奥「一度長門の入渠中にやったんだけど…それが大変でね」

武蔵「陸奥はそういった仕事は器用にやるイメージがあるのだが…」

陸奥「とにかくあの人仕事しないのよ」

武蔵「長門からそのような話は聞いたことないな」

陸奥「姉の性格上率先してやってるみたいなのよね」

武蔵「なるほどな。それで提督が仕事をしなくなったと」

陸奥「ちょっとした雑務から書類整理までほっとくと全然やってないんだもの」

武蔵「ははは、大和が聞いたら怒りそうだな」

大和「そうね、提督が帰ったら詳しく話を聞かないと」

驚いて振り返るとお盆に湯呑とミカンをのせた大和が立っていた

うっすらと笑みは浮かべているが明らかに怒っている

武蔵「ご愁傷様だ、提督」

陸奥「あら、あらあら」

陸奥「そういえば私っていつ実戦にでれるのかしら」

大和が持ってきてくれたミカンを頬張りつつ私はポツリと呟く

武蔵「慣熟訓練はもう済んだんだろう?」

陸奥「先月までに終わらせたわ」

大和「今は大規模作戦の予定もないのですから…出せる海域がないのでしょう」

武蔵「そうだな…私達もここ暫く出撃してないからな」

陸奥「でも金剛達は毎日のように出てるじゃない」

大和「彼女達は燃費いいですからね…大食らいの私たちと違って…」

既に何個目かのミカンを食べていた大和が遠い目をしながら呟いた

カゴにいれて大量に持ってきたミカンは既に残り僅かになっている

武蔵「それに加えて修理に使う資源も…な」

大量に積まれたミカンの皮を見つめながら武蔵が口を開いた

陸奥「ちょっと…それじゃ私達って大飯食らいの役立たずって事?」

何気なしにゴミ箱をみるとミカンの皮が溢れるほど溜まっている

まだこの部屋に私たちがきて一時間も経ってないはずなのに

さっき掃除してゴミ箱を空にしたはずなのに

陸奥「……」

大和「……」

武蔵「……」

陸奥・大和・武蔵(このままじゃ駄目だ……!)

誰か言ったわけではないが私達はコタツを片付けて元のソファとテーブルを設置する

ソファに座り直した戦艦三人は深刻な表情を浮かべて向き合っていた

陸奥「どうすれば私たちが出撃できるのか考えましょう」

大和「奇遇ですね。大和も同じことを考えていました」

武蔵「やはり戦艦というのは敵艦と撃ち合ってこそだからな!」

ホワイトボードまで持ち出してあれやこれやと議論を続ける

果ては輸送任務をしてはどうかという話題まで出始めた







-数時間後-


陸奥「どう考えてもダメね…」

大和「戦艦の集中運用って難しいですね…」

武蔵「あの戦争で私たちを温存していた理由がわかったな…」

テーブルに突っ伏して完全に撃沈した戦艦三隻

陸奥(私の初陣っていつになるのかしら…)

あと数日は帰ってこない彼の顔を思い浮かべながら、私はちいさくため息をついた

呉鎮守府の港は蜂の巣をつついた様な大騒ぎとなっていた

入港待ちの船が水平線の向こうまで続いているのを私は桟橋に腰掛けて眺めていた

陸奥「慌ただしいわねぇ…」

長門「仕方ないだろう、今回の輸送船団は特に大規模なものだったからな」

陸奥「ここまで大騒ぎになるって事は何かあるんでしょう?」

長門「まだ正式には決まってないが近々大きい作戦がある」

陸奥「ふーん…まぁどうせ私は留守番でしょ」

長門「いや、次の作戦には陸奥も出すと提督が言っていたぞ」

陸奥「あら、あらあら。そのセリフは聞き飽きたわ」

長門「今回ばかりは本気のようだぞ?」

陸奥「ふぅん…期待しないで待ってるわ」

長門「敵戦艦との殴り合いになるかもしれん」

陸奥「本当なの?」

長門「あぁ、ソロモン諸島で哨戒任務にあたっている伊号潜水艦からの情報だ」

陸奥「ガダルカナルにでも進出してきてるわけ?」

長門「私たちがヘンダーソン飛行場を攻略した事は知っているな?」

陸奥「えぇ、書庫で過去の作戦の事は一応勉強しておいたわ」

長門「飛行場姫との熾烈な戦いがあった場所だ…その末に私達は再び飛行場を奪還したのだが…」

陸奥「また敵が来ていると?」

長門「伊号潜水艦達からの報告によるとここ数日、ソロモン諸島付近に深海棲艦が集結しているらしい」

陸奥「そこに戦艦が混じっている…と」

長門「あぁ…ル級でもタ級でもなく戦艦棲姫でもない、未確認の個体がな」

陸奥「新種の深海棲艦の可能性があるって事ね」

長門「数は2隻、いずれも30ノット近い速度で航行しているらしい」

陸奥「金剛型とほぼ同じ…か」

長門「艦時代に比叡と霧島が沈んでしまった場所の近くでもある…最近の深海棲艦の傾向からいけば…」

陸奥「駆逐棲姫や軽巡棲姫に似たような存在かもしれないわね…」

長門「そこで提督は我々を派遣する予定を立てている」

陸奥「大和達じゃダメなの?」

長門「大和達には本土防衛のためにあまり動かすわけにはいかんのだ」

陸奥「そう…なんだっていい…今から腕が鳴るわ」

もし本当に彼が私たちを派遣するとなれば私にとって初の実戦任務となる

更に敵戦艦との撃ち合いにでもなれば実に華々しい初陣になるのは間違いない

長門「まだ決定事項じゃないんだぞ?」

陸奥「あら、でも戦力の増強はどの道必要なんでしょう?」

長門「確かにその通りだが…ひとまず頭に入れておいてくれ。私はそろそろ執務に戻る」

遠ざかっていく姉の後ろ姿を見送りながら私は拳を力強く握り締めた

ついに私に白羽の矢が立ったのだ

この呉鎮守府で建造されて既に四ヶ月が経とうとしている

その間まともに外洋にも出れず、ひたすら演習場で的を撃つ毎日だった

だがそんな生活にも終わりが来るかもしれない

続々と入港してくる船団を見つめる私の瞳は、爛々と闘志に燃えていた

短いですがここまで

また明日書きます

明石「陸奥さん、どうです?違和感とかないですか?」

陸奥「特に違和感は感じないわねぇ…ちょっと重いけど」

明石「少し動かしてもらえますか?」

陸奥「わかったわ」

滑らかな動きで私の主砲が旋回する

砲身も問題なく仰角を取れている

明石「うん、問題ないみたいですね。あとは演習場で試射をしましょう」

陸奥「いよいよこの主砲を使える時が来たのね。腕が鳴るわ」

妖精さん達は新しい主砲に寄り添ってニコニコ笑っている

喜んでくれたようだ

陸奥「さぁ、この試製41センチ三連装砲の威力を見せてもらいましょうか」

明石に別れを告げ、私は演習場へと早足で向かった

鎮守府正面海域から少し沖に出た場所に演習場はあった

当然一般の船舶は進入禁止で鎮守府所属の艦娘ですら入るのに許可が必要である

雪風「陸奥さーん!それではいきますねー!」

陸奥「いつでもいいわよ」

時津風「さぁ!はじめちゃいますかー!」

雪風と時津風がそれぞれの方向へと標的を曳航して離れていく

実際の駆逐艦に標的を曳航させることでより実戦に近い訓練内容となっている

陸奥「皆、頼んだわね」

機関妖精「了解!機関最大!両舷全速!!」

まず見えてきたのは赤い的を曳いている時津風だった

特に回避行動は取っておらずほぼ真っ直ぐ走っている

見張妖精「左舷10時方向に敵艦発見!距離およそ6000!」

主砲妖精「第一、第二主砲、敵艦を追尾開始!諸元入力!」

陸奥「今よ!撃って!」

主砲妖精「右からー!撃て!」

少しずつずらして発射された砲弾が的目掛けて飛来する

演習弾とは言え41センチ砲の上げる水柱は凄まじいものだった

時津風「ひゃぁ~、怖いいいいい!」

的とそれを曳航する時津風の距離は500mはあるのだがそれでも怖かったらしい

彼女は思わずそこにしゃがみこんでしまった

観測妖精「目標の撃沈を確認!」

水柱が晴れる頃にはそこに的の姿はなかった

曳航用のロープのみがゆらゆらと海面を漂っている

時津風「ちぇ…もうやられちゃったー」

ようやく立ち上がった時津風は不満げに頬を膨らませながら海域より離脱していく

陸奥「次は雪風ね…」

見張妖精「3時方向より雷跡ー!」

陸奥「左停止!右いっぱい!とーりかーじ!」

左へと急速に回頭する私の目の前を一本の魚雷が横切った

少しでも舵を切るのが遅かったら艦首に直撃していただろう

見張妖精「でもなぜ左へと…」

陸奥「居たわ、雪風よ」

陸奥の視線の先には黄色い的を曳航している雪風が見えた

進行方向は同じ、いわゆる同航戦の形になった

雪風「えぇ!右に切って避けると思ったのに~!」

距離を取ろうと転舵する雪風

だがもう遅かった

陸奥「戦艦相手に横腹を向けたことを後悔しなさい…全主砲斉射!」

時津風の時と同じように、水柱が晴れた頃には的の姿はなかった

陸奥「いいわねぇ…この主砲…」

明石「うん…何も問題ないようですね!」

砲塔や砲身を覗き込んでいた明石が顔をあげてグッと親指を立てた

陸奥「本当に私がもらっていいのかしらね」

明石「提督がそうおっしゃってるならいいんじゃないですか?」

陸奥「まぁ…ありがたく使わせてもらおうかな」

明石「次の作戦が初参加になる陸奥さんを気遣っての事だと思いますよ」

陸奥「そうかしら?」

明石「そうに決まってます!だって提督ってすぐ陸奥さんの事を聞きに来るんですよ」

陸奥「え?そうなの?」

明石「陸奥さんもスミにおけませんねぇ~」

明石が肘で小突いてくるがそんな事はどうだっていい

彼が私の事を……

そんな事を考えるだけで第三砲塔がどうにかなりそうだ

陸奥(私…どうしちゃったんだろ)

大規模作戦前だというのにこの胸のモヤモヤは…

きっと今は彼の顔すらまともに見れないだろう…

そう思っているとき、私を呼び出す放送が流れる

よりにもよって場所は執務室だった

本日はここまでとします

ソロモン諸島へと向かう20隻の船団

若干変則的な輪形陣の中央にある護衛艦「いずも」の艦尾に私は立っていた

白く伸びるウェーキの向こうには巨大なタンカーが追従しているのが見える

その船団の合間を埋めるように駆逐艦娘達が忙しそうに動き回っていた

上空には数十機の紫電改と数機の烈風が編隊を組んで警戒に当たっている

波は穏やか、空は真っ青に晴れ渡っていてとても深海棲艦の支配海域とは思えない

陸奥「どんな時でも海は変わらないな…」

手すりに寄りかかっているとふとそんな言葉が口から漏れる

これから戦いに向かうような雰囲気にはとても思えない

提督「ここに居たのか、陸奥」

陸奥「ひゃい!」

突如聞こえてきた彼の声に私は思わず変な上ずった声を出してしまった

陸奥「び、びっくりさせないでよ!」

提督「すまん…普通に声をかけたつもりだったんだが」

そう言ってから彼は帽子を被り直した

だが私が緊張するのも無理はなかった

試製41センチ三連装砲のテストの日に執務室に呼び出された私は結局彼に会うことはなかった

執務室には秘書艦の長門だけが居て、彼は深海棲艦対策本部へと出向いていたからだ

その後もなんだかんだで彼と会うことはなく、今日にまで至っていた

陸奥「それで…何か用?」

提督「いや…特に用があるわけじゃないんだが…会いたかったからじゃダメかな?」

陸奥「な…何言ってんのよ…」

スッと彼から顔をそらして再び海を見つめる私

私は鏡を見なくても分かるくらい顔が真っ赤なのがわかった

陸奥(不意打ちすぎるでしょ…)

悟られないように横目で彼を見ると、私と同じように海を見ている

提督「ここ数日君と会えなかったからね」

陸奥「忙しかったんでしょ?仕方ないわよ」

どうしても返事が素っ気なくなってしまう

自己嫌悪に陥っていると彼が胸ポケットから何かを取り出していた

白い箱から何か細長い棒を取り出している

陸奥(たばこ…?)

どうやら正解だったようで、彼はタバコに火をつけた

陸奥「あらあら、タバコ吸ってたのね。全然知らなかったわ」

提督「私の教官だった人が大規模作戦前に必ずやっていた願掛けでね。それを真似しているのさ」

ゆっくりと紫煙を吐く姿はなかなか様になっている

陸奥「それで…その願掛けはちゃんと効果あるのかしら?」

提督「今の所は…ね」

陸奥「そう、なら安心ね」

その時私はふとした疑問が頭をよぎった

陸奥「その教官さんは今は何を?」

提督「眠っているよ、この海でね」

そう言って彼はタバコを海へと放り投げた

陸奥「ごめんなさい…変なこと聞いちゃって…ただ、ポイ捨てはあまり関心しないわね」

提督「君が謝ることじゃない。それに…この願掛けはタバコを海に投げ入れるまでが願掛けなんだよ」

陸奥「変わった願掛けをする教官さんだったのね」

提督「確かに少し変わっていはいたが…面白い人だったよ」

陸奥「私も会ってみたかったわ」

提督「いや…止めておいたほうがいいな。とんでもないセクハラオヤジだったから」

陸奥「ふふふ、何それ。提督はそこをしっかり受け継いでるんじゃない?」

提督「私はそんなつもりはないんだが…」

そう言いながら彼はまた帽子を被り直した

陸奥「その帽子をすぐ被り直すのもその人の影響かしら?」

提督「ん?あぁ…そうだな…陸奥はよく私の事を見ているんだな」

陸奥「…ち、違うわよ!そこまで被り直されたら嫌でも目に入るもの!」

提督「そんなに被り直していたか?」

陸奥「えぇ、初めて会った時から結構な頻度よ?」

提督「自分の癖はわからん…」

そう言いながら帽子に手を伸ばす彼

その姿を見て私はついに堪えきれなくなり大笑いしてしまった

陸奥(この時間がずっと続けばいいのに)

戦う為の船である私がそう思ってしまうほど、彼と過ごす時間は心地がよかった

本日はここまでとします

次の投下は火曜日を予定してます

楽しい時間というものはあっという間に過ぎるものである

提督「おっと…もうこんな時間か」

陸奥「何かあるの?」

提督「今後の事で打ち合わせがな」

陸奥「あらあら、だったら早く行かないとまずいんじゃない?」

提督「名残惜しいが仕方ない…陸奥、また夕飯の時にでも話そう」

彼はそう言うと艦内へと消えていった

陸奥(もっと話したかったんだけど…しょうがないわよね)

少し冷えてきたこともあり、私も艦内へと入り割り振られた自室へと戻った

陸奥「普通に話せてよかった…」

ベッドに横になりぽつりと呟く

思い出すのは彼の笑顔、仕草、優しい声

陸奥(ちょっと待って…これってまるで…)

陸奥(いや…まさかそんな…)

私は長門型二番艦の陸奥、戦艦なのに

陸奥(彼の事が…)

陸奥(す、す…好き…なの?)

軍艦の魂の生まれ変わり、それが艦娘だと言われている

艦娘自体は艦時代の記憶を持っているし、私達艦娘自身がそう思っている子が多い

私だって沈む前の記憶を保持している

唯一不思議なのが70年近くたってからの生まれ変わりなのに現代の知識がある程度あることである

私も今では支給してもらったスマホやPCがある程度使えるしコンビニで買い物だってできる

時には泣いたり怒ったり笑ったりと年相応の女の子をしているのである

だから当然恋の話だってでる

ちょっとませている駆逐艦娘達はあの水兵がイケメンだのとよく話をしているのを聞く

テレビの俳優を見てかっこいいと思うことだってある

以前長門が駆逐艦の子達から恋愛漫画を借りてきたことがあった

私も暇な時に読んでいたのだが

陸奥(私やっぱり恋…してる?)

その時読んだ漫画の主人公と考えがそっくりだった

何かあればずっと彼の事を考えている

話をしているときが何より楽しい

そしてその時に共通しているのが

陸奥(ずっとドキドキしてる…)

陸奥(どうしよ…考えだしたら余計に…)

きっと今の自分の顔はリンゴやトマトより赤いんだろうな

彼に抱く特別な感情をどう伝えればいいんだろう…

金剛や酒匂のようにストレートにぶつければいいのだろうか

如月や伊19のように妖艶に迫ってみればいいのだろうか

陸奥(駄目だ…素っ気ない態度を取る自分が容易に想像できる)

枕に顔を押し付けて自己嫌悪に陥っていた時、コンコンと扉がノックされた

陸奥「は、はい!」

変に裏返った声で返事をしてしまった

そして扉の向こうから聞こえてきた声は

提督「陸奥、ちょっといいか?」

私を悶々とさせる原因の人物の声だった

短いですがここまでとします

続きは近いうちに投下予定です

陸奥「なななな…何!?打ち合わせじゃないの?」

提督「長門がな、陸奥も呼んだらどうかと…ダメか?」

陸奥「だ、ダメじゃないけどちょっと待って!」

私はベッドから飛び起きると洗面台の前に向かった

さっき艦尾で会った時は突然だったので気にする余裕もなかったメイクの確認をする

陸奥(うん…問題ない)

スカートのシワを軽くのばして髪型を少しだけセットしなおす

陸奥(よし!)

鏡の前で気合を入れると私は扉へと向かいゆっくりと開けた

陸奥「お…お待たせ」

提督「なんだかすまんな、バタバタさせたようで」

陸奥「別にいいわよ」

提督「長門の奴がな、陸奥はこのような大規模作戦は初めてだから打ち合わせにも参加させると言ってな」

陸奥「あら、別にいいのに。確かに少し緊張はしてるけど大丈夫よ」

そうは言ったものの内心長門に感謝していた

こうやって彼と二人で話せる時間がまたできたのだから

提督「それでは行こうか。会議室はこっちだ」

陸奥(たった数分だけど…こうやって一緒に歩けてよかったわ)

先を歩く彼の背中を見つめながら自然に笑みが浮かぶ

陸奥(やっぱり好きなんだろうな…)

きっとこの気持ちは嘘でも間違いでもないのだろう

この作戦が終わったらどこか遊びに誘おうか…

そう想いを巡らせていた時だった

『総員!対空戦闘よーい!』

艦内のスピーカーから緊迫した声が流れる

提督「対空戦闘だと!?」

陸奥「敵機襲来!?」

艦内の通路にいる私たちにも聞こえてくるほど盛んな砲音が聞こえてきた

提督「陸奥、私は戦闘指揮所へと向かう」

陸奥「私は甲板に上がってみるわ。場合によってはそのまま海に出るわよ?」

提督「すまん…気をつけてくれ」

そのまま私と彼は各々の方へと走っていく

陸奥(深海棲艦…許さないわよ…)

彼との時間を邪魔してくれたことを恨みつつ、私は甲板へと続く階段を駆け上がった

甲板に上がるとすでにそこは戦場へと変貌していた

「いずも」の甲板上に増設された対空砲はひっきりなしに砲弾を吐き出してる

海上に展開してる駆逐艦娘達も必死になって上空へと向け発泡をしていた

その火線の先をたどる

陸奥(あれが深海棲艦の航空機…)

なんとも形容し難い形状の飛行物体が黒煙に曇る空を飛んでいる

資料映像や写真では何度も目にしたが実際に見るのは今日が初めてだった

キイィィィ…

独特の風切り音を響かせながら四機の編隊を組んで船団上空を飛び回っている

陸奥「ねぇ!戦闘機隊はどうしたの!?」

すぐ側の対空砲を操作していた水兵に向かって私は叫んだ

船団上空は蒼龍・飛龍所属の戦闘機隊が守っていたはずだ

だがその姿はない…不意をつかれて全滅したのだろうか

水兵「陸奥さん!?それが…戦闘機隊の交代の隙をつかれたようで…」

発艦と収容の合間を狙われたようだ

陸奥(それだとしたら…)

陸奥(この船団の動向をずっと見ていたことになるわね…)

この船団をたまたま発見して攻撃してきたのにしてはタイミングがよすぎる

恐らく敵の空母が近くにいるのだろう

陸奥「近くに空母がいる可能性が高いわ!提督と艦長にそう報告して!」

水兵「はい!了解しました!」

水兵にそう告げてから私は甲板から飛び降りる

途中で艤装を展開し海面に降り立つ

既に私の主砲は仰角最大で空を睨んでいる

陸奥「さぁ…私の初陣を見せてあげるわ!撃てー!」

試製41センチ三連装砲から合計12発の三式弾が発射される

明らかに駆逐艦の砲音とは違うそれに対空砲火を展開している駆逐艦娘達が驚いた顔でこちらを向いた

黒煙の中を悠々と飛び回っていた敵艦載機に突如大量の焼夷弾子が降り注ぐ

撃墜には至らなかったが驚いたようで敵機は編隊を解いて散り散りになった

陸奥(敵に対しての初砲撃はこんなものかなぁ)

撃墜できなかったのは残念だが、戦果としては上々だったようだ

どうやら敵機の内の二機は三式弾で損傷したようで煙の尾を引いていた

本日はここまでとします

戦闘表現がグダグダで申し訳いないです

また近いうちに書きます

-護衛艦「いずも」CIC-

いずも艦長「やはり長門型の砲撃は強力ですな。三式弾の一斉射で二機も損傷させるとは」

提督「試製ですが三連装になった41センチ砲です。砲撃範囲なら大和型にも劣りませんよ」

いずも艦長「それは頼もしい…しかし…あの敵編隊、何が目的でこの船団に…」

提督「恐らく偵察でしょう」

いずも艦長「爆装してですか?」

提督「大戦中の米軍の偵察機も爆装していたそうです。奴らが同じことをしても不思議じゃないでしょう」

いずも艦長「ふむ…しかし妙ですな」

提督「と、言いますと?」

いずも艦長「仮に偵察だとするとすでに我々の位置を友軍に伝えているのでは?」

提督「そうでしょうね…発見されているとみていいでしょう」

いずも艦長「あの敵編隊が我々を見つけてどれだけ時間がたったのか分かりませんが、既に敵機が襲来していてもおかしくないでしょうか?」

提督「確かに…それにわざわざ我々に発見されたのも気になりますね…」

いずも提督「爆撃するわけでも爆弾を投棄して逃げるわけでもなく船団上空を飛んでいる理由が理解できかねますな」

提督「何かあるのか…わざわざ艦載機を我々に晒した理由が…」

深海棲艦とは厄介なものである

まず現代のレーダーにはほぼ感知できないのだ

深海棲艦の表面装甲はレーダー波を吸収してしまうらしくステルス機に近いこと

そしてその表面温度が海水に近いため熱源探知もほぼ不能なのである

軽巡級までなら現代艦の主砲でも十分に対抗できるが有視界戦闘を想定していない現代艦に主砲での撃ち合いは不利であった

更に重巡級以上になると現代艦の主砲では撃破は難しくなる

サイズこそ人間なのだが艦娘同様の特殊な装甲らしく貫くのは容易ではなかった

戦艦級ともなると対艦ミサイルを数発撃ち込んでやっとという有様だった

そのミサイルを当てるのにも赤外線誘導が必要で常に戦艦級の射程内に留まらなければならないという欠点があった

そのような強大な力を持った存在が現在世界中の海で暴れまわっている

考えて行動し、戦術と戦略を駆使して人類に立ちはだかっている

だからこそ深海棲艦には同等の力を持った艦娘が適任であった

提督(考えるんだ…奴らがどのようにしてこの船団を狙ってくるか…)

私が必死になって考えを巡らせるのをあざ笑うかのような報告が耳に飛び込んでくる

CICクルー「船団左列、第104号輸送艦に魚雷が命中した模様!被害状況は不明!」

提督「雷撃…だと…!」

いずも艦長「これは一杯食わされましたな…上ばかりに気を取られすぎた…」

帽子を被り直した私の目に映るモニターには、既に傾斜が始まっている輸送艦の姿があった

短いですがここまでとします

ちょっと強引になりましたが私なりの深海棲艦の設定を入れてみました

もしよかったら皆さんの深海棲艦に対する設定等あれば教えてください

参考にさせてもらいます

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