【ラブライブ】色の無い世界 (45)

オリキャラ、オリ設定有り

書き溜めほぼ無しなのでゆっくりと書いていきます

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『アンコール アンコール アンコール』

会場内に鳴り響く声援を聞きながら私たちは衣装を変えてステージ裏に集まる

私たち9人はお互いに見つめ合いそして頷いた

穂乃果「みんな、行くよ!!」

これが私のスクールアイドルとしての本当のラストステージだ

夢の舞台で夢のようなシチュエーションで私たちは夢を叶える

(これが夢ならお願いだから絶対に覚めないで)

PiPiPiPiPi…

「もう、朝か…」

「少し暖かくなってきたけど朝はまだ寒いわね」

「もうすぐ卒業式かぁ」

「あ、早く準備しないと…」

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私は矢澤にこ 音ノ木坂学院に通う3年生 アイドル研究部の部長として活動をしている

今は新しい生徒会長の就任という事で全校生徒と共に講堂に集まっている

理事長の話が終わり一人の少女が舞台の袖から現れた



「みなさんこんにちは」

先ほどまで静まりかえっていた講堂のあちらこちらから歓声が上がる

「この度新生徒会長となりました。スクールアイドルでお馴染み、わたくし高坂穂乃果と申します」

右側に結んだサイドテールを揺らしつつ自己紹介をする彼女

私は彼女の事をよく知っている

音ノ木坂学院にあるスクールアイドル《μ's》のリーダーであり

アイドルの名を冠するもうひとつの部活 アイドル部の部長

そして第一回ラブライブに優勝し この音ノ木坂を廃校から救った英雄である

「はぁ、今日も暇ね」

広過ぎる部室の中で大き過ぎる机と多過ぎる椅子に囲まれつつ私は呟いた

アイドル研究部と言っても部員は私一人で活動内容もこれといって決まっていない

昔はスクールアイドルとして活動した事もあったがメンバーが一人辞め二人辞め そして今の惨状である

今では部室内の備品の数だけが当時のままの賑わいを残している

する事も無いので私はパソコンを起動させてネットサーフィンを開始する

ある検索サイトへ行き『スクールアイドル』と入力すれば《μ's》のサイトは1ページ目に出る程の人気のグループとなっていた

昔はここに散々と批判を書いてやったものだが

「今やればファンから総叩きでしょうね」

嫌味と嫉妬が混ざり合った黒い感情を呟くくらいしか今の私には出来なかった

部室の窓から屋上を見上げるとそこでは毎日のように《μ's》のメンバーが練習をしている

今日もリズム良く叩かれる手拍子に合わせて8人の少女達が汗にまみれながら踊るのが見えていた

アイドル研究部とアイドル部、どうしてここまでの差が付いたのだろうか

灰色の雲の隙間から覗く太陽の眩しさにあてられた私はカーテンを閉め再びパソコンの前に座り込んだ

私がこの部活で身に付けたものはブラインドタッチだけだろうか

そんな事を考えてしまい 自棄になった私はパソコンの電源ボタンを押す

ウォーンとパソコンのファンが止まる音を聞きながら私は背もたれに身体を預けそっと目を閉じることにした

「……にこ、……にこ、にこったら…」



絵里「もう、にこったらこんなところで寝てたら風邪ひくわよ」

にこ「んっ…あれ?絵里?どうしたの?」

絵里「どうしたのじゃないわよ、朝は穂乃果に文句言ってやるんだって息巻いてたのにもうすぐ下校時刻よ」

にこ「そうだったわ!穂乃果はどこにいるかわかる?」

絵里「さっき生徒会の資料を持って廊下を歩いているのは見たけれど」

にこ「ありがと、さっそく行ってくるわ」

にこ「穂乃果待ってなさい、絶対にラブライブに出場してやるんだから」

にこ 「痛っ、ちょっともう少し優しくしてよ」

ことり「ごめんね、でもちゃんと消毒しないと痕が残ったら大変だし」

絵里 「まったく、顔を怪我するなんて。アイドル失格なんじゃないの?」

にこ 「うっ…仕方ないじゃない。こっちは必死だったのよ」

ことり「でも階段でこけたのに少し擦りむいただけで済んだんだからよかったよ」

絵里 「それに穂乃果もラブライブ出場を決めてくれたわけだし、結果的にはにこの願いは叶ったわけね」

にこ 「何言ってるのよ、まだ予選すらも始まって無いんだから」

にこ 「大変になるのはこれからよ、あんた達もビシバシしごいてあげるから覚悟しなさい!」

絵里 「みんなをしごくのは私の仕事だと思うんだけど」

ことり「あははは」

絵里 「ねぇ、にこ」

にこ 「ん?何よ」

絵里 「にこはアイドルになる事を諦めたこと無かったの?」

にこ 「無いわね」

絵里 「即答できるのね」

にこ 「当たり前じゃない。アイドルは私の夢よ。絶対に諦めないわ」

絵里 「そう…あなたの事少し羨ましいと思うわ」

にこ 「あんたが私を?何でよ?」

絵里 「私は小さい頃に諦めてしまったから…自分の夢を」

にこ 「そんなこと?だったら新しい夢を見つければいいじゃない、別に夢が一つである必要なんて無いでしょ」

にこ 「私だって夢はアイドルだけってわけじゃない。オリコンで1位を取ったりCDをミリオンヒットをさせたり」

にこ 「のちのちは女優になってドラマや映画に出たり…イケメンでお金持ちな相手と結婚して子供を作って幸せな家族を築いて…まあ、夢なんてのはそんな漠然としたものでも良いと思うのよ」

にこ 「それに今叶えなきゃいけない夢は他にあるでしょ」

絵里 「そうね…そうかもしれないわ。にこにこんな真面目な事言われるなんて思ってもいなかった」

にこ 「なっ!あんたやっぱり私の事馬鹿にしてるでしょ」

絵里 「そんな事無いわよ、一緒に夢を叶えるんでしょ。みんなでラブライブに出場して優勝するって夢を」

にこ 「ふんっ!」

ことり(夢…夢か…)

PiPiPiPiPi…

いつものように目覚ましの音で目を覚ます

眠い目を擦りながらベッドから起き上がった私はいつものように動きやすい格好に着替えて家を後にする

毎朝10分程のランニング これは高校に入りアイドル研究部を立ち上げた時からの日課である

一番始めは1時間目標だったがその後の授業に多大な影響が出たため徐々に短くしていき今の時間に落ち着いた

必要なのは距離や時間では無く続けること そう思いながらこの3年間続けている

他の部員が辞めた時に私も辞めてしまおうかと考えた

しかしアイドルになるという夢が諦められなくて必死に続けてきたのだ

そう、私は絶対に諦めない アイドルは私の唯一つの夢なんだから

空を見上げるとずっと覆われていた雲の隙間から光が差し込んでいる

その先にはまるで私を応援してくれているように水色に広がっていた

今日はこれで終わりです

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今日も一人きりの部室で時間を潰してから帰路につく

別に無理に時間を潰しているわけでは無い ただ自分にとってはそれが都合が良かっただけだ

パソコンがあり好きなアイドルの情報が手に入るし

帰りに夕飯の買い物をするのにも安売りが始まってありがたい

家に帰れば家事やら妹たちの世話でプライベートの時間など無いし

部室は私にとって一人になれる貴重な空間なのである

靴を履き替えて門を出ると風にのって聞こえてくるメロディに気づき私は屋上を見上げた

流石にここからでは屋上の様子は見ることは出来ないがまだ練習を行っていることだけはわかる

ただチヤホヤされているだけのアイドルじゃない

そんな事はどんなファンよりもわかっているつもりだ

わかっているからこそ彼女達と私の違いに胸が締め付けられそうになる

私は風から逃げるように早足で学校を後にした

夕飯の片付けが終わった後 私はそのままベッドに倒れこんだ

いつもと変わらない1日だったが今日はいつもよりも疲れた気がする

以前に比べて体力が落ちているのだろうか

早朝のランニングだけは欠かしていなかったが筋トレはサボりがちだった事を思い出す

ふと思い立ってベッドの上で腕立て伏せの体勢を取ってみる

いつだったか誰かに教えて貰った笑顔のままでの腕立て伏せ

「いーーーーーっ……」

最初の数字が言い終わることも一度折り曲げた腕が戻ることも無い

元の体勢に戻ることを諦めた私はそのままベッドにもぐって目を閉じることにした

絵里 「にこったら、テントの中でまでそのパックをして寝るつもりなの?」

にこ 「ん、何よ?文句あるの?」

絵里 「文句は無いけど…」

にこ 「毎日のお手入れは欠かせないんだから」

絵里 「それよりもさっきは真姫と何を話してたのよ」

にこ 「たいした話じゃないわよ。真姫ったらね…」

真姫 「ちょっと、にこちゃんたら余計なこと言わないでよ」

にこ 「別に恥ずかしがるようなことじゃないでしょ?」

真姫 「私が嫌なの!」

にこ 「もう、相変わらず素直じゃないんだから」

真姫 「そんなこと……にこちゃんが少し羨ましいわ、自分の思ってる事ズバズバ言えて」

にこ 「ズバズバって、私そんなに言ってる?」

真姫 「言ってるわよ。さっきだって私は3年生の事を思って…」

にこ 「だから余計な事考えずに全員の事を思って…」

絵里 (私から見たらどっちも似た者同士なのよね)

にこ 「あーもう、この話は終わり!真姫、あんたが思ってる事を口に出すのが苦手っていうのなら自分の得意な事で伝えてみなさい」

真姫 「どういう意味よ」

にこ 「案外察しが悪いのね、思いを曲にのせて伝えてみなさいって言ってるの」

真姫 「そ、そんなに簡単に言わないでよ」

にこ 「あんたならできるわよ。あ、もしかして自信無いの~?」

真姫 「なっ……できるわよ!見てなさい、絶対最高の曲を作ってやるんだから!!」ダッ

にこ 「あぁ、行っちゃった…こんな時間に出ていって風邪ひかなきゃいいんだけど」

絵里 「ふふっ、部長さんも大変ね」

にこ 「…あんた、やっぱりさっきの話聞こえてたんでしょ」



真姫 「いつもどんな時も全員のために…か」

真姫 「私だけじゃない、みんなの思いを全部のせた曲を作ってみせるわよ」

今朝はいつもの時間よりも少しだけ早く起きた


とくに何か理由があったわけでは無いが偶然に目覚ましよりも先に目が覚めてしまったのだ


顔でも洗おうと洗面所に向かう途中でテーブルに置いた二本のリボンが目に入る


いつからだっただろうか、私がこのリボンを使わなくなっていたのは


小さい頃に親にねだって買って貰ったのを思い出す


「可愛いね、まるでアイドルみたいだ」


私はリボンを手にとって洗面所へと向かった


頭の少し高い位置にまとめた左右二つのおさげ


鏡に映る私の瞳はリボンと同じく赤く輝いているように見えた

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