凛「塾に行くにゃ」 (375)
真姫「凛、ちょっといい?」
凛「なに?今ちょっと奥歯のニラを取ってるから忙しいよー」
真姫「なるほど忙しくないのね」
花陽「凛ちゃん夏休み塾の講習行かない?」
凛「え、塾!?」
真姫「一教科だけなら安いわよ、私も花陽も行くからどうかしら」
花陽「真姫ちゃん、元々2年になったらスクールアイドルも一段落つけて勉強頑張るつもりだったから……どうせなら私たちも一緒に」
凛「そんな……凛には無理だよ」
真姫「何言ってんのよ、この前私が数学教えたときも勉強に火が付いたって言ってたじゃない」
凛「ね、ねつ造だにゃ」
真姫「言ってたじゃない!言ったわよ!」
花陽「まあまあ……真姫ちゃんは凛ちゃんと一緒に行きたいんだよね、私もそうだよ」
凛「ふふん、初めからそう言えばいいのに、なら凛もいくことにするよ」
真姫「もう、素直じゃないわね。じゃあこれ登録用紙よ」
凛「あいあいさー、でもどの教科にしようかな」
花陽「うーん、興味のある教科にした方がいいんじゃないかなぁ」
真姫「そうね……直感でいいと思うわ」
凛「じゃあ数学にするにゃ、かよちんと真姫ちゃんは何にしたの?」
花陽「私は英語にしたよ、授業時間も同じだから一緒に帰れるね」
凛「やったにゃ」
真姫「私は全教科よ」
凛「」
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夏期講習1日目
凛「お母さんに塾に行きたいっていったら泣いて喜ばれた……」
凛「よーし、頑張ろう、3日に1回くらいならそんなに疲れないよね」
凛「あっ二人が来た」
花陽「凛ちゃん、お待たせ」
凛「かよちん、真姫ちゃん、さあ行くにゃ」
真姫「意外とノリノリじゃない」
凛「お金払ってる以上全力だにゃ!お母さんに申し訳ないにゃ!」
花陽「うう…りんちゃん、えらいよ!」グスン
真姫「そうね、えらいわ!」グスン
凛「……なんでみんな泣くの」グスン
凛「さてと…」
凛「教室に入ったら一人でちょっと淋しいなぁ」
凛「まだ時間あるし、テキストの問題でも見とこっと」
凛「あっ真姫ちゃんとかよちんに教えてもらった範囲だ!そこそこ自信あるもんね」
凛「……2次関数」ペラッ
凛「……確率」ペラッ
凛「……平面幾何」ペラッ
凛「あれ、ぜんぜんわからないにゃ」ゾゾーッ
凛「帰りたくなってきた……そうだ、落書きしよっと」
凛「フンフン~」カリカリ
希「何描いて遊んどんのー?」
凛「あっ希ちゃん!これは真姫ちゃんが落とし穴にハマる絵にゃ!」
希「へぇ~」
凛「ってええええええ!?なんで希ちゃんがいるの!?」
希「なんでやろなぁ~」
凛「あ、希ちゃんもしかして浪人かにゃ!?」
希「ちゃうよ!夏の間この塾でお手伝いさせてもらってんよ」
凛「なーんだ」
希「どっちかというと凛ちゃんが塾おるのが驚きや」
凛「もうそんな感じのセリフ1億回くらい言われたよ、でも希ちゃんはなんでこの塾に?」
希「フフフ…実はうちが大学受かれたのはこの塾のおかげや」
凛「やっぱり!希ちゃん塾行ってたの知らなかったよ」
希「3年の終わりくらいの最後の詰めに、な。高校の授業もええけど、やっぱり人気の講師は受ける価値十分や」
凛「へぇー」
希「それにこの塾は自習環境が優れてる、個別ブースに講堂型自習室、アロマ自習室なんてのもあるんよ」
凛「スピリチュアルだにゃ」
希「あと、担任講師の進路相談、それに模試のフォローアップも、いつでも質問できる体制も整ってるし」
希「学生の質も高いし、何より合格実績やね。この数字を見れば凄さは明白やで」
凛「ちょっと宣伝くさくないかにゃー?」
希「お手伝いするんやったらちゃんと宣伝文句くらい覚えとかなな、ところで凛ちゃんはどこ目指しとるん?」
凛「第一志望…まだまだ決めてないなぁ、凛は真姫ちゃんとかよちんについてきただけだよ」
希「真姫ちゃんは東京の医科大、花陽ちゃんは農学部志望やったでな」
凛「はぁ、2人とも賢いし……そういえばなんか凛だけ置いてけぼりだなぁ…」
希「ええやんか、凛ちゃんは凛ちゃんや、それに今から勉強したらどこでも行けるで」
凛「ええーっ!どこでもは無理だよ」
希「そうかなー?うちは凛ちゃんはすごい頑張り屋なの知ってるで」
凛「そうかなぁ……じゃあ東大でも行こうかな、なんつって」
希「……うーん、流石にもう2年もないから東大は厳しいかもな、それに凛ちゃん英語苦手やったでな、英語は配点も大きいしなかなか苦しい戦いになるで」
凛「うう……冗談なのに」
希「ふふっほなそろそろ授業始まるで、うちは下におるからいつでも相談しにおいで」
凛「うん!ありがとう!」
希「……ほんまにええ子やなぁ、凛ちゃんは」
希「凛ちゃんの進路や、ウチはこれ以上口出しせんでもええ」
希「でも……『素直さ』と『努力』」
希「それがちゃんと伴ってたらなんだってできる」
希「うちは凛ちゃんはどっちも素質はあると思ってるで、今まで見てきた誰よりも、な」チラッ
凛「さて、落とし穴真姫ちゃんの続きを描くにゃ、次は水攻めにするにゃ」カリカリ
チョット、ヤメナサイヨ!キャアー!ザザザー!
凛「ぷぷぷ、けっさくだにゃ」
今日はここまで
凛「あ、先生がきた……」
「エーっ!どうもこんばんわー!みなさん!」
凛「こんばんはー!」
「夏期講習、ベーシック数学第一講ですね。この講座は全8講で数学1A2Bの基礎的な説明をしていきます」
「当然高校2年生の皆さんは当然まだまだ基礎、ですが基礎さえできてしまえばもう数学は得意科目になります」
「みなさんの中にも数学が苦手な方がいるかも知れません、しかし多くの人は「数字の使い方」をまだ知らないだけなんです」
「この8日間で入試数学に必要な「道具」はほぼすべて伝えられると思います、後はそれを使って皆さんの頭で考えてみてください」
「そして、数学という言語の扱い方を、何より楽しさを皆さんに学んでほしいと思います」
「では時間も惜しいので早速授業に入りましょう、テキストの4ページを開いて下さい…」
凛「うわあああちょっと油断してたスキにすごいしゃべるにゃ」
凛「と、とにかく言われたこと出来るだけたくさん持ち帰れるようにしなきゃ!」
「関数ってのはつまるところ数をいじる「ルール」のことであって……」
凛「ふんふん……」カリカリカリカリ
花陽「おつかれ、凛ちゃん」
凛「かよちーん、90分も会えなくてさびしかったよー」
真姫「私も塾は初めてだけど、90分はなかなかしんどいわね」
凛「でも思ってたより面白かったよ」
花陽「そうだね、私もたった1日で賢くなった気がするよ、へへ……」
真姫「ちゃんと復習しないとだめよ、二人とも、理解したつもりになっただけじゃ…」
凛「わかってるよー、むしろ、習ったことを早速試したくてウズウズしてるにゃー」
花陽「ふふふ、こんな凛ちゃんも好きだよ」
真姫「…もう9時ね、さ、帰りましょう」
凛「え、ラーメン食べに行こうよ!」
真姫「突然すぎるわよ!だめにきまってるじゃない!」
部室
穂乃果「おっはよー、今日も練習がんばろー!」
ことり「あれ?2年生の3人がいないね」
海未「…あっ!すみません、私が練習日程を組み間違えました、今日は3人とも用事で…」
ことり「ええっ3人で?何の用事なの?」
海未「午前中に塾の講習があるそうです」
穂乃果「塾!?」
ことり「ええ……なんか凛ちゃんも行ってるってのが意外だね…」
穂乃果「そうだねー、じゃあ今日は私たち3人かぁ、頑張ろう!」
海未「……いえ、今日の練習は昼からにしましょう、そうすれば6人で出来ます」
穂乃果「え……じゃあ午前中はなにするの?」
海未「決まってるでしょう、勉強です、私たちは受験生ですよ。2年生の3人が頑張ってるというのに……」
穂乃果「ひっどーい!だいたい練習の時間が被ったのは海未ちゃんの管理ミスじゃん!」
ことり「えーっと…でも連絡網回すのは穂乃果ちゃんの仕事じゃ…」
海未「そうです、あなたがちゃんと昨日の夜に3人に連絡してたらこんなことにはなりませんでした」
穂乃果「だってその時間ことりちゃんとスマブラのwi-fi対戦してたし……ことりちゃんのガノンドロフ強いし……」
海未「!!またゲームなんかしてるんですか!没収しに行きますよ!」
穂乃果「ごめんなさい!勉強します!します!します!だからスマブラだけは!」
ことり「あはは……海未ちゃん、反省してるから許してあげてよ」
海未「あなたは対戦相手が欲しいだけでしょう!」
ことり「グアッ」
穂乃果「あ、ガノンドロフそっくり!」
海未「穂乃果ーッ!」
穂乃果「ひぃぃ!」
凛「ふぅ、やっと夏期講習終わった!」
真姫「お疲れ様、よく頑張ったわね」
凛「デレてるにゃー」
真姫「今日はデレてあげるわ」
凛「じゃあラーメン行こう」
真姫「イイワヨ」
凛「いえーい!じゃああの向かいの店ね!」
真姫「はいはい……もしもしママ?今日は友達と食べて帰るわ」
凛「ふふふ、だんだん真姫ちゃんがラーメンフリークになってきたね、ちょろいちょろい」
真姫「さて!今日は味玉チャーシューよ!」
凛「凛はマンモス野菜にゃ!」」
ズルルルルルルルルルルルーーーー
真姫(凛も勉強頑張ってるみたいね……)
真姫(本当、私みたいなひねくれ物より、よっぽど吸収は早いかもしれないわ)
凛「真姫ちゃんとも話せてお腹もいっぱいで幸せにゃ」
真姫「ふふふ、明日から学校よ」
凛「…そしてテストもあるにゃ!数学だけなら真姫ちゃんにも負けないよ!」
真姫「1か月の叩き上げで私に勝てるかしら?」
凛「凛が勝ったらお願いごとなんでも1つ聞いてほしいにゃ!」
真姫「いいわよ、その代り私が勝ってもなんでも1つよ」
凛「ふっふっふ、まきちゃん、いつまでもお山の大将ではいられないってこと教えてあげるよ」
真姫「あなたこそ、まだ山の入り口に入っただけじゃないかしら?」
凛「ぜったい負けないにゃ!真姫ちゃんを絶対服従させてやるにゃ!一日奴隷にしてやるにゃ!」
穂乃果「あ、2年生の廊下に校内テストの順位が張り出されてるよ、ことりちゃん、見てみよ!」
ことり「なんか他学年の順位を見に行くのってどうなのかなぁ」
1位 西木野 真姫 473点
ことり「ほぇ~、さすが真姫ちゃんだね」
穂乃果「ううーん…私も真姫ちゃんの脳みそがほしいなぁ」
ことり「でもそれって穂乃果ちゃんの体をしただけの真姫ちゃんになるんじゃないかな」
穂乃果「うげ、そうだね。でも試験当日はそうやって替え玉受験したいぐらいだよ」
ことり(ことりの脳みその一部を穂乃果ちゃんに与えれたら、穂乃果ちゃんはどんな景色が見えるんだろう)
8位 小泉 花陽 418点
穂乃果「花陽ちゃんもすごいねー、さすが部長!」
ことり(わたしが穂乃果ちゃんを見る目で穂乃果ちゃんが自分をみたら、穂乃果ちゃんはじぶんに恋をするんだろうか)
穂乃果「ことりちゃーん……?なんか目が絶滅してるよ」
ことり「ええー?なんでもないよ?」
穂乃果「…………あれっ!ちょっとことりちゃん見て!」
24位 星空 凛 340点
ことり「わぁ、凛ちゃんすっごい上がってる!」
穂乃果「この前は圏外だったのにねー、2年生は90人だから…すごいよ凛ちゃん!」
ことり「私たち3年も頑張らないとね」
海未「そうですね」
穂乃果「ギョギョッ!!」
海未「3年の校内テスト、穂乃果は何位でしたっけ」
穂乃果「えーっと、6位?」
海未「それは私です!」
穂乃果「ごめんなさぁい!つぎがんばりまぁす!」
ことり(穂乃果ちゃんが海未ちゃんをidentify(同一視)している……うらやましい)
凛「敗けたーー!!!敗けたー!西木野に負けたー!西木野マケちゃんにゃー!」
花陽「凛ちゃん……でもすっごい成績あがってるよ!」
穂野果「あっ、みんな!やっほー!」
凛「穂乃果ちゃぁぁん」メソメソ
穂乃果「わわっ!どうしたの、嬉し泣き?」
凛「違うよぉ、真姫ちゃんに負けちゃったんだ」
海未「凛、立派じゃないですか。この夏でよく頑張りましたね。私たちも見習いたいです」
花陽「凛ちゃん、5教科の総合点じゃなくて数学だけで真姫ちゃんと勝負してたんだ」
ことり「どうだったの?」
真姫「私は92点よ、……凛は70点ぐらいだったわ」
穂乃果「70点!そんな点数わたしとったことないよ!」
ことり「凛ちゃん、まだ今は伸びてる時期だよ、まだまだ頑張ったら……」
凛「ちがうにゃー!」
ことり「ええっ?」
凛「成績なんか別に欲しくないにゃー…凛はただ真姫ちゃんに勝手一日絶対服従させたかっただけにゃ…」
真姫「……約束通りいうことを1つ聞いてもらうわ、凛」
凛「煮るなり焼くなりフードプロセッサーにかけるなりすきにするにゃ……」
花陽「凛ちゃん…」
真姫「お願いは……そうね、私と一緒にあの塾に入りなさい」
凛「ええっ?」
真姫「2学期も続けてあの塾に通いなさい、それが私の要求よ」
凛「……」
真姫「私を1日服従させたいなら、今度は3学期の初めの校内テストで勝ってみせなさい」
凛「……ふふふふ」
真姫「どうしたの?」
凛「にゃーっはっはっは!そんなんでいいのかにゃ!凛に機会を与えたことを後悔するにゃ!」ピュー
花陽「あ!凛ちゃん!」
真姫「1人にさせてあげなさい、元気そうに振舞ってるけど、すごくショックを受けてるはずよ」
真姫(凛、あの数学のテストの平均点は40点程度…相当な難問だったはずよ)
真姫(それをあの1か月で70点になるまで叩き上げた……)
真姫(最初はたわごとだと思っていたわ、まさかここまで肉薄するなんて)
真姫(私は今、あなたの中になにか恐ろしいものが眠っていることを確信してしまったわ)
真姫(あのラーメン屋の日からぼんやりと感じ始めていた、あなたの中の「爆弾」)
真姫(友人として、そして単なる好奇心から……それが見たくてたまらないわ)
真姫(私の所までよじ登って来なさい……そして追いついてみなさい、そして……)
凛(悔しい……悔しい、すごく、生まれて初めて、こんなに悔しいと……)
凛(でほんとうは勝ち負けなんてどうでもよかった、3人で塾に行けるのが楽しかった)
凛(だから凛が勝ったらまた3人で通えるように、真姫ちゃんにおねがいするつもりだった)
凛(頑張ろう、真姫ちゃんと、かよちんと、凛の3人で。だれも敵なんかじゃないにゃ)
今回はここまで
「9月をお知らせします」チュンチュン
花陽「あははは、なにこの校内放送」
真姫「穂乃果が考えたみたいね」
花陽「必要あるかなぁ?」
真姫「無いと思うわ、ところで凛、最近授業中寝てないわね」
花陽「スイッチ入っちゃったね、楽しいこと見つけたら周り見えなくなるタイプだから凛ちゃん」
真姫「あなたたち2人とも、そういうところ結構似てるわよね」
花陽「えぇ……私は別にそんなことないよ」
真姫「まぁ悪いことじゃないからいいわよ」
花陽「そういえば凛ちゃん、入塾は申し込んだの?」
凛「今日の帰りに持っていくつもりだよ……えーっと書類は……あったあった」
真姫「あら、物理も受けるの?」
凛「へへ……なんだか興味湧いちゃって」
真姫「ホント、極端な理系ね、凛は」
凛「やっぱり文系の科目は覚えること多いからしんどいよ……」
真姫「そうかしら、要は工夫よ」
凛「だって真姫ちゃんは記憶力もいいから……」
真姫「……」
凛「どうしたの?」
真姫「いや、何でも無いわ」
凛「ラーメン食べたいの?」
真姫「斜め上すぎるわよ」
花陽「あっ2人とも、そろそろ練習の時間だよ」
凛「あいあいさー」
放課後
凛「じゃあねーかよちんばいばーい」
花陽「ばいばい、凛ちゃん」
凛「ふぅー……」テクテク
凛「最近部活も勉強も忙しいにゃ」
凛「μ'sが解散してからはちょっとのんびり出来るかと思ったけど」
凛「身体が忙しさを覚えちゃってなんだか暇だとウズウズするにゃ」
凛「塾に着いたにゃ」ウィーン
凛「あれ、受付窓口に誰もいない……」
希「あら、凛ちゃん、入塾すんの?」
凛「希ちゃん!夏の間だけじゃなかったの?」
希「お給料ええし、続けることにしたわ、それに凛ちゃんたちもおるしな」
凛「嬉しいにゃー、あっ、これ入塾申込書ね」
希「はいはい、渡しとくわ」
凛「希ちゃん、にこちゃんと絵里ちゃんはどうしてるの?生きてる?」
希「2人とも大学行ってるで、えりちは休学して海外やけどな」
凛「おおっ、ロシア?」
希「残念、イギリスや」
凛「ええー、キャラがぶれてるにゃ」
希「えりちは国際人やなぁ、今は忙しいけどまた皆で集まりたいな」
凛「そうだねー、じゃあ今日はもう帰るよ、ばいばい希ちゃん」
希「はーい、おやすみー」
星空宅
凛「宿題の一問解いてから寝よっと」
凛「えいえい」カリカリ
凛「んん……」
凛「わかんないなぁ、一回別の方向から……」カリカリ
凛「あ、やっぱり角度がいっしょだ」
凛「あとは相似だから簡単だもんね」カリカリ
凛「…よし、解けたにゃー!」
凛「むふふ、まんぞく」
凛「電気消して寝よーっと」パチン
凛「すぅ……」
凛「……」
凛「……」
凛「……わざわざ相似を使わなくてもベクトルでも解けるような…」
凛「……あれをこうして……」
凛「んん?やっぱりできないかなぁ……?」
凛「モヤモヤする……」
凛「電気つけよ、紙に書いて考えないとスッキリしないや」パチン
凛「……」カリカリ
凛「ええっと……あっ、やっぱりこっちの方がわかりやすいにゃ」
凛「模範解答より絶対凛の答えの方が綺麗だよ、やったー!」
凛「さて、寝よーっと」パチン
凛「……」
凛「……あっ」
凛「PQをx軸、中点Mを原点に乗せて座標平面で考えてもいけるんじゃないかにゃ……」
凛「うう……モヤモヤする……もう一回だけ……」
次の日
凛「夜中に別解5つも考えてたら、お昼まで寝ちゃったにゃ、休みで良かったぁ」
凛「今日は練習も塾もお休みだし……誰かと遊ぼっと」
凛「もしもしー?かよちん、今日は暇かにゃ?」
花陽「ごめんね凛ちゃん、今日は米-1グランプリで島根に来てるんだ」
凛「腑に落ちないけど残念だにゃ、じゃあ……」
凛「もしもしー?真姫ちゃん?今日は暇かにゃ?」
真姫「あら、凛、ごめんなさい、今日は親戚の結婚式があるの」
凛「真姫ちゃんもいつか結婚するののかにゃ」
凛「あーあ、2人に振られちゃった、3年生は受験だし誰か遊べる人いないかなぁ……」
凛「……1年生がいたにゃ」
凛「雪穂ちゃん、今日は暇かにゃ?」
雪穂「あ、凛ちゃん。いいよ」
凛「やったにゃ!……何しようかな」
雪穂「じゃあウチにおいでよ、ちょっと頼みたいこともあるんだ」
凛「あ…でも穂乃果ちゃん勉強してるんじゃないの?邪魔じゃない?」
雪穂「今は海未ちゃんの家に拉致されてしごかれてるから大丈夫だよ」
凛「なるほど、じゃあお邪魔するにゃ」
雪穂宅
雪穂「あげまんじゅうどうぞ」コト
凛「やった、これ最高にゃ」パクパク
雪穂「凛ちゃん、今年もラブライブ出るつもりなの?」
凛「今年は出ないにゃ」
雪穂「え!そうなんだ、どうして?」
凛「6人で色々話し合って決めたことだにゃ、作曲の真姫ちゃん、衣装のことりちゃんも受験が近いし…」
凛「それに海未ちゃんに至っては弓道部と生徒会と部活の練習と作詞、それに受験で5重だにゃ」
雪穂「海未ちゃんってもしかして……鉄で出来てるんじゃないかな」
凛「3人とも問題ないって言い張ってたけど…凛と穂乃果ちゃんとかよちんはやっぱり少し休んで欲しくて」
雪穂「あべこべだね」
凛「だから今年は雪穂ちゃんたちのグループに期待してるよ」
雪穂「ありがとう、がんばるね」
凛「……それに優勝できたからいろんなイベントにも呼ばれるし、今も結構忙しいんだよ」
雪穂「けど、お姉ちゃんはなんだか暇そうに見えるんだけど……スマブラしてるし、勉強はしてるのかな?」
凛「海未ちゃんはそのことでカリカリしてるよ…6重目の仕事だね、海未ちゃん」
雪穂「妹として申し訳ない……海未ちゃんのためにもお姉ちゃんのスマブラは取り上げておこうかなぁ」
凛「よく出来た妹だにゃ」
雪穂「だいたいあれ私が買ったやつだよ!なんか腹立ってきた!没収する!」
凛「やっぱダメな妹だにゃ……」
凛「ぎゃはははは、やっぱりこち亀は最高だにゃ」ペラペラ
雪穂「凛ちゃん……ちょっと頼みごとが……」
凛「どうしたの?」
雪穂「……凛ちゃん数学得意だって聞いたから、私の宿題教えてほしいかなーって」
凛「ええっ!そんなこと言われたのこの世に産まれ落ちて始めてだにゃ、感激しちゃうにゃかきくけこ!」
雪穂「最初は真姫ちゃんに聞いたら、数学なら凛に教えて貰うといいわって」
凛「……真姫ちゃんめんどくさかったのかな?」
雪穂「でも凛ちゃんのこと、自分より教えるの上手いって褒めてたよ」
凛「むぐぐ……真姫ちゃんの方が成績いいくせに……単なる皮肉じゃないかにゃ?」
雪穂「あはは……そうなのかな?」
凛「まぁどんな問題か見せてよ」
雪穂「えーっとこの二項定理ってやつなんだけど…」
凛「あ!これ凛も最初意味わかんなかったよ 」
雪穂「そうだよねー、なんだかCだとか色々出てきてサッパリで…公式は覚えてもすぐ忘れるし…」
凛「大丈夫だよ、こういう記号って最初は凛をいじめるためにあると思ってたけど、実はすっごく便利なんだよ」
雪穂「そうなんだ?」
凛「当たり前のことを当たり前に表してるだけなんだ、こうこうこう……でね」
雪穂「あっ…!なるほど!確かに当たり前だ!」
凛「当たり前すぎて地球が爆発するにゃ」
雪穂「本当だね、頭のなかでビッグバンがおきたよ!」
凛「雪穂ちゃんは飲み込みが早いにゃ」
雪穂「ありがとう!凛ちゃん!」
凛「なはは」
雪穂「じゃあねー凛ちゃん!」
凛「あげまんじゅうくれるなら何度でも教えに行くにゃ」
凛「はぁ、勉強を教える側になるなんて……、凛もやれば出来るにゃー」
凛「やれば出来る……かぁ……」
凛「凛は……どこまで出来るんだろう」
凛「最初は3人で塾に行くのが楽しくて」
凛「だんだん勉強も楽しくなってきて」
凛「かよちんにも真姫ちゃんにも追いつきたくなって」
凛「そして今日……雪穂ちゃんが凛を頼ってくれた…すごく嬉しかった」
凛「凛も誰かのためになれるんだ……」
凛「……もっと」
凛「もっといっぱい、色んなこと知りたいな」
凛「楽しいだけじゃなくて……誰かのためになれるように……」
1月
希「凛ちゃん、もう3学期やな」
凛「うん、2年もあっという間だね」
希「穂乃果ちゃんらもそろそろ卒業やなぁ、まぁ、あの3人は問題ないやろ」
凛「穂乃果ちゃん、雪穂ちゃんにスマブラ奪われてから反動で凄い頑張り始めたもんね…」
希「そうなんや」
凛(ことりちゃんも連鎖して頑張り始めたのは謎だけど)
希「凛ちゃん、3学期初めに校内テストまたあったやろ?」
凛「あ、そうだ!希ちゃん!また真姫ちゃんに勝てなかったんだよ!ギリギリ!」
希「ああ、残念やったな、真姫ちゃんは医学部狙ってるからな、そんな子にギリギリで負けちゃっても、凛ちゃんも十分すごいで」
凛「違うよ、負けてないけど同点だったの!2人とも95点!」
希「……」
凛「悔しいよぉ!」
希「いやいや、すごいやん!めっちゃすごいやん!」
凛「そうかなぁ」
希「総合順位はどうやったん?」
凛「6位だったよ」
希「そっかぁ、6位かぁ…って6位!?」
凛「むふふ、これはちょっと嬉しいにゃ、そうだ!物理も生物も90越えてたにゃ」フフン
希「もともと生物も物理も結構できてたもんな…でもおどろいたわ」
希「でも……逆にそんだけとって6位って……」
凛「うう…国語は60点にゃ」
希「んー……まぁそんなもんかぁ、英語は?」
凛「…40点くらい?」
希「平均点は?」
凛「たしか60後半くらい……」
希「あちゃー……まぁ、前より高いからよしとしよか」
凛「悔しいけど英語はあんまりやる気でないにゃー、真姫ちゃんに総合で勝ちたいにゃ」
希「それにしても……凛ちゃんまともに勉強始めたの8月…まだ半年やのにな」
凛「そんなに特別なことしてないけど……学校の授業も寝ないようになったからかなぁ」
希「今まで全く聞いてなかったんやね…3学期から英語の授業も受ける?ちょっと心配や」
凛「英語!かよちんと一緒の授業うけたいにゃ!」
希「いや、それはちょっと無理やけどな……」
今回はここまでです
乙
>>1は理数系かな?
>>47
理転した中途半端な輩です
凛「かよちん、真姫ちゃん、3学期からは凛も英語の授業受けるよ」
花陽「エエー!!り、凛ちゃんがついに弱点をコクフクシチャウヨ!!まきちゃんあやうし!まきのうんめいやいかに!」
真姫「……っていうか凛、もうそろそろ3年生なのに、私を倒すことばっかり考えててどうするのよ」
凛「ええっ」
真姫「早めにどこの大学受けるのか決めないと、後々泣き目をみるわよ」
花陽「凛ちゃん、将来は何になりたいのかなぁ」
凛「うーん、みんなを幸せにしたいかな」
真姫「立派な志だけど……何も決まってないのと同じじゃないの?それって」
凛「凛もお医者さんとか和菓子屋さんの娘だったら迷わないのになぁ」
真姫「何言ってるのよ、なんでも選べるって素敵じゃない」
花陽「私も農業を勉強できるなんて、好きなことができてしあわせだよ」
凛「何でも選べるって一番難しいよ……だいたい真姫ちゃんはなんでお医者さんになりたいの?」
真姫「なんでって……パパが医者だから……じゃなくて、そうね…あえて言うなら、ノブレス・オブリージュってとこかしら」
凛「横文字は苦手だにゃ、かよちん、どういう意味かわかる?」
花陽「えーっと、noble(貴族の)……oblige(義務)……かな」
真姫「流石ね、花陽、ノブレス・オブリージュは「高潔な者が持つ義務」よ」
凛「真姫ちゃんは自分のことを高潔だとおもってるの?ナルシストにゃー」
真姫「……転じて身分制が消えた現代では、才能や環境に恵まれた人間が社会のために尽くす「義務」のこと言うわ」
凛「義務って……なんだか堅くていやだにゃ、もうちょっと楽しく生きたいにゃ」
真姫「凛、あなたの才能を活かして人を幸せにしなさいってことよ」
凛「な、なに突然!凛には才能なんか……」
花陽「へへへ……周りのみんなはとっくに気づいてるよ」
真姫「あなたが今、すっごく熱中しているものがあるじゃないの」
凛「あ……」
真姫「わかった?」
凛「そうだ、そんな簡単なことだったのかにゃ……」
凛「頑張って大学に入って、色んな凄い人たちに会って、いろんなことを知りたい……それが凛のしたいこと」
凛「よーし……やってやるにゃ!!!」
卒業式後、部室
凛「うぇぇん…穂乃果ちゃん、ことりちゃん、海未ちゃぁああん」ボロボロ
花陽「うう…もうμ`sの元メンバーも私達3人だけになっちゃったね」
真姫「……音ノ木坂は立派な学校になったわ、穂乃果、あなたのおかげよ」
穂乃果「あはは…照れるなぁ…うう…うわぁああああん」ボロボロ
海未「3人とも、今日は、いえ、2年間ありがとうございました」
ことり「時々アルパカさん、見に来るね」
亜里沙「いつでもきてください!私が責任を持ちます!」
雪穂「……さて亜里沙、そろそろ呼んじゃおっかー」
亜里沙「はい、入って来て下さい!」
ガララ
「ハラショーよ、3人とも」
「穂乃果ちゃん、ことりちゃん、海未ちゃんおめでとさんや」
「お疲れ様ね」
穂乃果「あれれ…」
海未「……絵里!それに希とにこも!」
ことり「うわーっ、久しぶり!」
穂乃果「うう…うわああああああん」ボロボロ
海未「あらら……ちょっと止まりませんね」
絵里「……賑やかになったわね、この学校も」
希「ははは、こんだけ入ったら人口密度高すぎるわ」
にこ「花陽、ちゃんと部長やってたみたいね」
花陽「はい!」
海未「絵里はほぼ1年イギリスに?」
絵里「そうね、でもちょっと日本に帰ってるだけ、1週間後にまた戻るわ」
穂乃果「えりちゃん、なにしにいってるの?」
絵里「深い意味はないわ、ただ広い世界を見に行きたかっただけよ」
にこ「だそうよ、凛も受験だし、この際絵里に英語教えてもらったらー?」ニヤニヤ
凛「い、イヤミだにゃー!だいたい最近英語もじわじわ上がって来てるにゃ!」
花陽「ことりちゃんは、どうなったの?」
ことり「私もちょっと遅れちゃったけど留学するんだ、あの時のお誘い断ってごめんなさいって言って」
にこ「なんだかみんなすごいわね…地元でコツコツアイドルやってる自分がちっちゃく見えてくるわ」
希「海未ちゃんは、大学進学?」
海未「ええ、都内の女子大です、また弓道をやろうかと」
穂乃果「わーっ!ばぁーんってやってばぁーんって!」
海未「穂乃果ァー!だいたいあなた、本当にギリギリだったじゃないですか!」
穂乃果「正直wiiUを買ってたらこの合格はなかったね」ドヤ
真姫「なんだか情けない話ね…希はずっと見てるから久しぶりって感じはしないわね」
希「来年も塾のバイト続けるで、真姫ちゃんらの合格見送るまでな」
にこ「っていうかここアイドル研究部でしょ?アイドル活動やってんのあんたたち?」
真姫「3人ユニット『まきりんぱな』で今後は活動予定よ……忙しいくて既存曲しかできてないけど」
にこ「ふふん、忙しい、ねぇ、私は3年の間も勉強と並行してラブライブ!優勝よ」
希「にこちゃーん?一人の手柄にしたらあかんで?」
絵里「……そうね、今だから言うけど、にこは受験直前に不安で不安で希に泣きついてきたのよ」
にこ「にごぉ……」
にこ「ってもう!なんだか狭苦しいわね!9人でどこか行きましょ!」
希「そやなー、このままどっか遊びにいこか!」
凛「わーい、久しぶりだにゃー、闇鍋でもするかにゃー!」
ことり「あはは……」
凛「じゃあねー!みんな、ばいばーい!」
絵里「凛も受験頑張ってね」
穂乃果「またいつでも遊びに来てねー」
海未「それでは、さようなら」
ことり「次会うのはいつかなぁ…楽しみだね」
希「おつかれさんー」
真姫「ええ、お疲れ様」
にこ「そうだ花陽、ちょっと学校についてきて。部室ゆっくり見に行っていい?」
花陽「うん、いいよ、にこちゃんの私物探したらまだ残ってたし」
にこ「わざと残してたのよ」
花陽「えっ?そうだったんだ」
にこ「なんだかあの部室……3年間もいたから、きれいさっぱり引き揚げれなくてね」
にこ「物を置いてくって形で、未練も残してきたの、でももう大丈夫よ」
花陽「……置いて帰ってもいいよ?」
にこ「いい話してたのになに人のもの狙ってんのよ!」
にこ「窓から差し込む夕焼けがなつかしいわ」
花陽「ちょうど下校時間くらいだね、服を着替えたくなっちゃう」
にこ「何言ってんのよ……あんた二人になるとなかなか問題発言するわよね」
花陽「ぴゃああ」
にこ「えーっと……この箱に……」ゴソゴソ…
にこ「なんでこの棚こんなに紙で溢れかえってんのよ…邪魔ねぇ」
花陽「あ、それはねーー」
にこ「あったあった!これで全部よ!ふぅ、やっと私も卒業ね」
花陽「ははは……またガラガラになっちゃうね、やっぱりにこちゃんが部室にいないとなんだか静かで…」
にこ「なんだか妙な言い方ね……」
花陽「ちょっとごめん、トイレ行って来るね」
にこ「はいはい、まったく…汚い部室ね、片付けてあげようかしら」
にこ「埃っぽさっていうより……なんでこんなに物が多いのよ」ガタガタ
にこ「なにこのゴーレム人形……ちゃんと使い終わったら持って帰りなさいよ」
にこ「この山積みのコピー用紙も、何に使うつもりかしら、勧誘?」
にこ「……ってなにこれ、よく見たら全部シャーペンでびっしり数式が書いてる」
にこ「しかもこの字、どう見ても凛よね……なんか奇妙ね……」
花陽「ただいまぁ、ってにこちゃん!片付けしてくれてるのォ!?」
にこ「こんなに汚い部室、じっとしてられないわよ!」
花陽「あ、でもそこはいじらないであげて、凛ちゃんの「けんきゅーけっか」らしいから」
にこ「どういうことよ、なんだかよく分からないけど、勉強がんばってるのね」ガタガタ
にこ「……ん?これ模試の成績表?」
にこ「すっご…数学の偏差値82もあるじゃない、これ」
にこ「裏に判定が……誰の?」
東大 理科一類 C
東工大 第一類 B
阪大 理学部 B
にこ「ほげっ?誰のよこれ!誰のよこれ!」
にこ「なんか学部が花陽でも真姫でもなさそうだし……なんか嫌な予感が」
花陽「あ、それ凛ちゃんのだよ」
にこ「やっぱり凛ね…ってえええええええええ!?えええ!?」
にこ「ちょっと!ええ!?どういうことよ!?なんでドヴォウヘ!?」
花陽「凛ちゃん、ますます燃えてきちゃって……もう部活のとき以外ずーーっと勉強してて、起きても、お風呂でも、寝る前も」
花陽「英語はまだまだ平均点くらいだけど…、塾が終わったら例文覚えながら毎日いっしょに帰ってるんだ」
花陽「1年の頃は英語なんてぜんぜん楽しくないって言ってた凛ちゃんなのに、最近急に文句も言わなくなっちゃって」
花陽「にこちゃん、なんだか……すっごくカッコいいんだよ、最近の凛ちゃん」
にこ「……塾に行きはじめたのは聞いたけど、まだ1年たってないんでしょ…」
花陽「凛ちゃんの中の何かが、爆発しちゃったみたい」
にこ「ふつーに天才じゃないの……それって」
花陽「そうなのかな……ううん、天才じゃないよ、凛ちゃんはいつもの凛ちゃん、すっごく頑張ってるんだよ」
にこ「だからそれがおかしいのよ……頑張りどころじゃないでしょ、あまりに非現実的だわ……」
花陽「真姫ちゃんもそうだけど…凛ちゃん自身がいちばんびっくりしてたよ」
にこ「たぶん私のほうが驚いてると思うわ、なんだかあなたたち3人で見えない輪を作ってるみたい」
花陽「私たちはいつも通りだよ……」
今回はここまで。知人が若干モデルになってたりします
春休み、部室
凛「今日も練習終わったにゃ」
花陽「はぁーっ……春休みだね」
真姫「春休みね」
花陽「もう3年だし、今まで以上に頑張らないと」
真姫「それはそうだけど、花陽、最近ちゃんと眠ってる?」
花陽「うぅ…んちょっと寝不足かなぁ。今日もお昼まで寝ちゃって…」
真姫「やっぱり。ちゃんと体調管理しないとだめよ」
凛「春は眠たいし、仕方ないよねーかよちん」
真姫「凛も夜更かししてるの?」
凛「なんか塾から帰った後って脳みそが興奮してて寝つけないよ」
花陽「私も…そんな感じかな」
真姫「春季講習もあるんだから、ダラダラしてちゃだめよ」
凛「へーきへーき、若いウチは多少ムチャしなきゃ」
花陽「わたしたち、でも部活は休まないよね…」
凛「やっぱり身体動かさないと頭もボヤーっとしてくるにゃ」
真姫「そうね、一日中座ってるだけじゃ効率も悪いわ」
凛「そういえば真姫ちゃんこのまえ座りすぎて腰痛になってたにゃ」
真姫「キィー!ナルワケナイジャナイ!」
花陽「へへへ……そうだ、凛ちゃん!にこちゃんが凛ちゃんの成績表みてびっくりしてたよ!」
凛「え!にこちゃんが?」
花陽「うん、おったまげてた!」
真姫「まぁある日突然凛がああなってたらビックリするわよ」
凛「あはは……なんか恥ずかしいなぁ」
真姫「なんだか自信なさげね」
凛「あくまでも模試は模試だから……本番形式の試験じゃないし、C判定とか出てもそんなに信用できるもんじゃないよ」
花陽「凛ちゃん、冷静だね」
凛「模試は判定のためよりも、出来ない所を見つけるために使わなきゃ」
真姫「そうね、結局本番の点数がすべて。ひたすら出来ないことを潰さないと時間も足りないわ」
凛「うーん、出来ないところかぁ…ははは」
真姫「英語も国語も、ちゃんとやってるんでしょ?」
凛「理系科目はもっと伸びたのに…頑張ってるつもりなんだけどなぁ…特に国語!」
真姫「……国語ね」
凛「それも特に古文と漢文!」
花陽「凛ちゃん、古文単語もずーっとやってるのにね」
凛「塾の授業も受けてるけど、なんだか教科へのイマジネーションが湧いてこないにゃ……」
花陽「うーん……イマジネーションかぁ」
真姫「理系でも古典はぜひ得点源にしときたいところね」
凛「そうだねよーし、クヨクヨしてもいられないにゃ!勉強の不安は勉強することでしか解決しないにゃ!」
花陽「凛ちゃんがんばれ!」
凛「というわけで、今から凛はそのまま塾の自習室に行ってくるよ」
真姫「そうね、私は一旦家に帰ってから行くわ」
花陽「わたしもそうしようかな」
真姫「じゃあね、凛、またね」
凛「ばいばーい」
真姫「凛…やっぱり苦戦してるかしら」
花陽「う、うん、そうみたい」
真姫「まだまだ絶対量が足りないわね、ここからが正念場よ」
花陽「凛ちゃん、文系科目も頑張るようになったんだけど……」
真姫「どうかしたの?」
花陽「なんだか自習してる凛ちゃん見てたら、やっぱり理系科目にかけてる時間が長いかなぁ…って」
真姫「そうね、あと一年もないし、一旦集中して文系科目の克服に力を注ぐべき時期かも知れないわ」
花陽「で、でも、そんなの私が偉そうに言えることじゃないし……凛ちゃん、もう私よりずっと賢いし……」
真姫「そうね……なら相談できそうなひとがいるわ」
花陽「塾の先生?」
花陽「もっと身近な人よ、それも国語のエキスパート、国語と共に育ってきた人」
9時です、当塾は閉館の時刻です
お忘れ物の無いよう、気をつけてお帰り下さい
凛「ふぅ~……今日もよくやったなぁ」
真姫「ちょっといい?凛を呼んでる人がいるの」
凛「ん~?凛のサインでもほしいのかな?」
海未「凛、突然ですがお話があります」
凛「う、海未ちゃん!ごめんなさーい!」
真姫「なんで突然謝るのよ!」
凛「脊髄反射で!」
海未「古典が苦手なんでしょうか、凛」
凛「そうだよ、今日も文法を勉強してたんだ」
海未「では少々質問を……助動詞「らむ」の意味、わかりますか?」
凛「ええ…っと現在推量…原因推量、あと婉曲、伝聞にゃ」
海未「では「まし」はなんでしょうか」
凛「えーっと…「まし」は願望……」
海未「それは「まほし」ですね」
凛「あ、そうだ、反実仮想!」
海未「では単語の意味を聞きましょう、「かたはらいたし」は?」
凛「恥ずかしい、……あとなんだったっけ、うう…でてこない…」
海未「でも凛、よく勉強してるみたいですね」
凛「こんなのじゃぜんぜんダメだよ……ちゃんと単語帳で覚えなおさなきゃ……」
海未「なるほど…凛は古文を少し無味乾燥なものに捉えているようですね」
凛「どういうこと?」
海未「花陽から聞きました、イマジネーションが湧かない、と」
凛「うう…まったくその通りにゃ「をかし」とかよくわかんないし、なんだか現代語訳見てもすっきりしないし……」
海未「……明日、朝の8時に迎えに行っても大丈夫でしょうか」
凛「え?なになに!?」
海未「私の知っているすべてを伝えようと思います、構いませんか?」
凛「……うん!わかった!海未ちゃんのお話、聞いてみたい!」
海未「分かりました、では……」スッ
凛「あっ!待って!」
凛「闇の中に消えて行った…ジャパニーズニンジャかにゃ?」
真姫「らしいわ、凛」
凛「らしいわ、って……ぜったい真姫ちゃんが呼んだでしょ!」
真姫「ヴェェ」
花陽「海未ちゃんなら…海未ちゃんなら何とかしてくれるって思って!」
凛「にひひ、怒ってないにゃ」
凛「……二人とも、ありがとう」
凛「今日は明日にそなえて早く寝よっと」
翌朝
海未「・り・・・ん!・・・・凛!」
海未「凛!起きなさい、行きますよ!」
凛「ふむにゃぁ……あれ、海未ちゃん?もう8時?」
海未「そうです、ジャスト8時ですよ!」
凛「……ハッ!そうだ、昨日は夜中まで3次方程式の解の公式を作ろうとして寝ちゃったんだった!」
海未「勉強熱心なのはいいですが、約束は守って下さい!受験当日に寝坊したらどうするんですか!」
凛ママ「海未ちゃーん、ごめんなさいね、凛がおねぼうさんで」
海未「いえいえ、こちらこそ早朝からお騒がせして申し訳ありません」
凛ママ「それじゃあ、3日間よろしくお願いするわね」
海未「はい、こちらこそご期待に添えるように尽力します」
凛「にゃっ、3日間?なんの話?」
海未「抜き打ちですが、すみません、9時までに用意して下さい」
凛「えっ…どっか出かけるの?」
海未「そうです、10時の新幹線で出発、奈良で1泊、京都で1泊です」
凛「ほえ!?」
海未「行きましょう、古文アタックです!!」
凛「なんでー!?約束は守ってほしいにゃー!」
凛「わーい!新幹線はじめて!」
海未「ふふふ。では、車内で古文の動詞の勉強から始めていきましょう」
凛「ちょっとまって!それよりなんで突然奈良まで行くの!?」
海未「凛にはショッキングな体験をして欲しいんです。ががーんです」
凛「意味がわかんないにゃー!」
海未「古文単語をすぐ忘れてしまうと言いましたね?」
凛「ええっと……うん、なんだか英語に比べて言葉の意味がふわふわしてて……頭に残らないの」
海未「ふわふわ……ですか、仕方ないですね、英語に比べて覚えるべき多義語が非常に多いのは」
凛「でも、英語よりも古文の方が日本語に近いはずなのに、変だよぉ」
海未「あながち変でもありませんよ、日本語の多くは西洋の言葉の翻訳のためにほんの1世紀前に造られたものなんです」
凛「どういうこと?」
海未「社会、個人、権利、自由、……あとは愛といった言葉もこの国には存在しなかったんです、古文にも出てきませんよね」
凛「あっ…確かに見たことない」
海未「そうです、言ってしまえば「社会」は「society」を漢字で書いたようなものですね、だからそもそも両者は同値なんです」
凛「そっかぁ……じゃあ古文はどんな風に「社会」とかを表してたの?」
海未「それは…「世の中」であったりとか「人々の暮らすところ」であったり、でしょうね」
凛「なるほどー…なんだか回りくどく感じるにゃ」
海未「今の私達の感覚からしたらそうですね、何せ西洋から来た語で私達は物を考えることに慣れています」
凛「だから古文の文章って現代語訳見てもいまいちすんなり心に沁み込んでこないのかにゃ」
海未「当時の言葉は今以上にものすごく繊細な……微妙な気持ちを表した語が多いですね。はっきりとものをいう現代語に置き換えるとなんだか言葉が命を失ったように感じます」
凛「じゃぁどうすればいいのかにゃぁ」
海未「まずは訳語を覚えて「訳そう!」とするんじゃなくて…書いてある言葉を生きたまま、読めるようになって欲しいです」
凛「なんだか難しそうだけど……要は、古文の考え方に慣れて、そのまま読めるようにしろってことかにゃ」
海未「そうですね、ある程度の思考、文章の展開のクセもあります、正しく読めるには少しづつ慣れるしかありません」
凛「ふむふむ」
海未「いろいろ理論から攻めることもできますが、やはり書いた人間の心をおざなりにしてはいつまでも読めません」
海未「逆に言えば心情の理解ができれば文章は読めます、読めるなら、あとは入試向けに答案の作成を訓練すればいいでしょう」
海未「……なにも美しさを知ってほしいとまでは偉そうなことは言いませんが…一旦入試から離れて、古文がどういうものかは知ってほしかったんです」
凛「……なんだか目からウロコにゃ」
海未「もちろん、受験ですから遊んでられません、並行して理論も詰めていきましょう」
凛「はーい、もしかして、奈良と京都にいくのもそういうことかにゃ?」
海未「はい文章を読んでも「いまじねーしょん」が湧きにくいというなら、一度、文章の舞台を肌で感じてもらいたかったので」
凛「なるほど……なんだか旅行もできて、海未ちゃんも教えてくれて、至れり尽くせりだにゃ」
海未「なるべく印象に残るように、ショックを与えようとしたつもりでバタバタしてしまいましたが、すみません」
凛「ううん、ありがとう海未ちゃん……ところでホテルの予約ってどうしたの?宿代もってこなくて大丈夫だったの…?」
海未「ホテル?ありませんよ、今夜は父の知り合いの方のお寺で寝ます」
凛「ええっ!?」
海未「「出家」のシチュエーションを想定しました。ついでに精進料理を食べて当時の生活ぶりも知ってもらいましょう」
凛「うう…なんだか不安だよ」
海未「こんなゆっくりできるのも春休みならではですよ、じゃあ動詞から順に勉強していきましょうか……」
凛「はーい!」
花陽「ええ!リンチャンナラニイッチャッタノォ!?」
真姫「……はっきり言って予想外だったわ。海未もたまに暴走しだすから……」
花陽「でも海未ちゃんなら大丈夫そうだね、ちゃんと勉強して帰って来そう」
真姫「そうね、もし穂乃果と行ったらしかせんべいと宇治抹茶を食べて帰って来るだけだわ、たぶん」
花陽「凛ちゃんはしかじゃないヨォ!」
真姫「シカのような愛くるしさはあるわ」
花陽「私もそう思う////」
真姫「////」
今回はここまで。所々ミスしててすみません、出来るだけ気をつけて書きます。
凛「すっごいおおきい門だにゃ」
海未「平城京の正門、朱雀門です。当時のものではありませんが」
凛「これってあの羅生門じゃないの?」
海未「羅生門跡はこの道をを戻るとありますね、現在は石碑が建ってるだけです」
凛「なぁんだ、登りたかったなぁ」
海未「芥川龍之介の羅生門は平城京じゃなくて平安京ですけどね」
凛「海未ちゃん……博識だにゃ……」
海未「父からの受け売りですよ。小さい頃から何度か連れてこられましたし」
凛「へぇー……いいなぁ」
海未「当時はあんまり楽しくなかったんですけどね、凛に教えられることができたなら有益な体験でした」
凛「照れるにゃ」
海未「そうですか、「まし」は?」
凛「反実仮想!」
海未「「べし」は?」
凛「強い推量だにゃ、細かく言うと推量、意志、可能、当然、命令、適当」
海未「……やっぱりすぐ覚えれるじゃないですか」
凛「朝から移動中ずーっとテストされたらさすがに覚えるにゃ」
海未「特別なシチュエーションで覚えたことは忘れにくいんですよ」
凛「にゃるほど、確かにラブライブ!本戦前にかよちんが食べてたおにぎりの具は完璧に覚えてるにゃ」
海未「本番前に食べるとは……、まぁ、そんなふうな濃い3日間にしましょう」
凛「はぁい」
花陽「はは…なんだか私もついていけば良かったかな」
真姫「別に舞台を観に行ったからといってそんなに問題を解くのに影響しないとは思うんだけど……」
花陽「関心を持つきっかけにはなるんじゃないかな?」
真姫「どうかしらね、無駄な時間にならなきゃいいんだけど」
花陽「そういうのじゃなくて、わたしは凛ちゃんと旅行に行きたかったの!凛ちゃんと奈良公園でシカちゃんをさわりたかったの!」
真姫「それってあそぶ気満々じゃないの!」
花陽「それって「おくゆかし」と思うんだ……」
真姫「「かたはらいたし」よ、花陽」
花陽「ぷえええ」
奈良、某寺
海未「ごちそう様でした」
凛「ごちそうさま、……うすあじであんまり食べた気しないなぁ」
海未「そういうものですから。仏教での僧の殺生は禁止されているので、精進料理はどうしても野菜ばかりになります」
凛「お魚よりは野菜の方が好きだからまだいいにゃ、ところで出家って寺に住むことなのかにゃ?」
海未「出家は俗世間との関わりを絶ち、仏門に入ることです。逆から読んだら「家出」ですけど、まさに意味はそんな感じです」
凛「煩悩を断ち切る……大変だなぁ、結婚もできないんでしょ?」
海未「そうですね、それだけ戒律も厳しく、真剣だったんでしょう」
凛「ふーん、昔の人はまじめだったんだにゃー」ポリポリ
海未「ちょっと凛!何を食べてるんですか!」
凛「じゃがりこにゃ」ポリポリ
海未「修業僧がじゃがりこなんか食べますか!?イマジネーションが乱れます!」
凛「じゃがりこもジャガイモだから精進料理の一種だにゃ!」
海未「ダメです!煩悩まみれです!」
凛「そんなぁ……いっぱいお菓子もってきたのに」
海未「また明日食べなさい、今日は没収します」
凛「ひどいにゃ、海未ちゃんの不動明王!」
海未「だれが不動明王ですか!」
凛「その顔!今日資料館で見たのとそっくりだにゃ!」
海未「もう許しません!あなたは最低です!」ペチーンペチーン
凛「にゃぁー!暴力も仏教じゃ禁じられてるはずだにゃ!」
海未「不動明王だからいいんです!」
海未「まったく…今日はもう寝ますよ、明日は京都ですからね」
凛「お寺って静かすぎてこわいにゃ、うみちゃん…」ダキッ
海未「!?ちょっと、離れて下さい!出家は孤独なシチュエーションなんですよ!」
凛「やっぱり俗世は離れがたいにゃ、凛は海未ちゃんに帰依するにゃ」
海未「まじめにしてください!」
凛「////」
海未「もう…凛は…」ウトウト
凛「あれ?」
海未「」スヤスヤ
凛「寝ちゃった……今日一日疲れちゃったよね」
凛「ありがとう、海未ちゃん」
凛「さて、英語の宿題やらなきゃ、その前にじゃがりこを取り戻すにゃ」
部室
花陽「おかえり、凛ちゃん」
凛「ただいま!」
真姫「ちゃんと勉強して来たのかしら」
凛「ばっちりだよ!海未ちゃんから得た知識は絶対に忘れないにゃ!」
真姫「海未に迷惑かけなかったでしょうね」
凛「……それはよくわかんないけど、なんだかんだで海未ちゃんも楽しそうだったにゃ、来年も行きましょうって言われたし」
花陽「凛ちゃん!来年は私と行こうね!」
凛「もちろん、かよちんも真姫ちゃんも一緒だよ」
真姫「私も?まぁ別にいいけど……お寺はイヤヨ」
花陽「それより凛ちゃん、3日間古文ばっかりやって、英語とかなまってない?」
凛「ノープロブレムにゃ、海未ちゃんが寝た後にもローソクつけて勉強してたにゃ」
真姫「……さすがね」
花陽「あはは、視力落ちないようにね」
凛「そうだ、かよちん、頼んでたおみやげ!生八つ橋だにゃ!」
花陽「わぁ!ありがとう!」
凛「真姫ちゃんは……何が欲しいかわかんなかったから、しかせんべいをあげるにゃ」
真姫「ナンデヨ!タベラレナイジャナイ!」
凛「あと、不動明王のストラップ(540円)もあるよ!なかなかチャーミングな顔だと思わないかにゃ?」
真姫「……そうね、ありがとう」
花陽「いいなぁ、真姫ちゃん」
真姫「凛、次からはお土産はみんな同じものを買うようにしなさい」
凛「旅行なんかあんまり行った事ないからよくわかんなかったや、はぁい」
花陽「凛ちゃん、まだ袋残ってるけど、それって誰へのお土産?雪穂ちゃんと亜里沙ちゃん?」
凛「もう二人には不動明王タペストリー(648円)をあげたにゃ、これは希ちゃんの分だよ」
真姫「嫌な予感がするわね……中身はなにかしら?」
凛「千手観音のプラモデルだにゃ」
花陽「わぁ!すごい!」
真姫「希も大変ね……」
凛「もう!これはちゃんと希ちゃんに頼まれたやつだよ!」
真姫「ヴェェ」
今回はここまで
「4月をお知らせします」チュンチュン
凛「ついに3年生だね!」
真姫「なんだか実感ないわね……3年生になったらもっと大人になってるつもりだったんだけど」
花陽「2人とも、1年のころとは全然違うと思うよ」
真姫「私は別になんでもないと思うけど……凛はいろいろこの2年であったわね」
凛「1年生のときのμ'sも楽しかったし、2年から塾に行ったのも楽しかったね」
花陽「うう…わたしは受験が近づいてくるのがこわくてこわくて……」
凛「かよちん、数学で困ったら凛におまかせだよ!あと物理も教えれるにゃ!」
真姫「凛、いっつも英語教えてもらってるのに偉そうにしないの」
凛「真姫ちゃんにはもう数学で勝っちゃったもんねー」
真姫「ナニヨ!入試は総合点なのよ!凛なんか偏ってばっかりじゃない!」
花陽「まあまあ……ところで、凛ちゃん、テストで勝ったんでしょ?なにか真姫ちゃんに1つお願いきいてもらったの?」
凛「むふふ……それはそれはもう、真姫ちゃんを一日ひとりじめしたよ」
真姫「ちょっと!言わないで!」
凛「真姫ちゃん、汗だくになってハァハァしてたにゃ」
花陽「はわわわ……真姫ちゃん、いくらなんでも高校生同士で……」
真姫「違うわよ!一緒にラーメン食べに行っただけよ!なによハァハァって!冷ましてただけじゃない!」
凛「一緒にラーメン……(意味深)だね」
真姫「(意味深)じゃないわよ!」
花陽「真姫ちゃんを一日奴隷にするんじゃなかったの?」
凛「かわいそうだからやめてあげたよ」
真姫「うう……なんでこんなことになるのよぉ」
ガラッ
理事長「こんにちは」
花陽「うわっ!理事長先生!」
理事長「急にごめんなさいね、部活動についてお話があるの」
凛「はいはーい!お話をするなら、部長のかよちんだよ!」
花陽「は、はい、なんでしょうか」
理事長「アイドル研究部の新入部員、今年はますます増えたんでしょう、部室をもう一室増やそうと思うの」
花陽「えっ!ありがとうございます!」
理事長「すし詰め状態だって、苦情の報告がきてたの」
凛「だっていま40人もいるもんね…確かに狭かったにゃ」
花陽「3年は私たち3人だけだもんね…」
理事長「ラブライブ優勝の伝説のμ'sのメンバーとして、よくあなたたちの話は聞いていますよ」
凛「それはいいんだけど…ユニット名は『まきりんぱな』だよ!」
花陽「そうです!よく誤解されますけど、『ゴッド3』とか『伝伝伝』とかじゃないですよ!」
真姫「『三権分立』とかも呼ばれてるわね…変な呼び方が絶えないわ」
理事長「…!ごめんなさい、学校の広報誌に『ゴッド3』って書いてしまったわ」
凛「ちょ、ちょっとなにやってるにゃー!理事長せんせー!」
花陽「ははは……もう『ゴッド3』でいいかな……」
真姫「わたしは『三権分立』のほうがいいわ」
凛「……それ、聞いたことないんだけど……真姫ちゃんが勝手に考えたんじゃないの?」
真姫「チガウワヨ!誰かがいってたの!」
凛「あやしいにゃ」
花陽「……私もきいたことないなぁ」
真姫「ほんとよ!ほんとよ!」
理事長「……本当に、ごめんなさい」
南家
理事長「もしもし、ことり」
ことり「お母さん!」
理事長「元気かしら」
ことり「へへへ…まだまだ慣れないけど、友達できたよ」
理事長「よかったわね。今月分の仕送り、振り込んでおいたわ」
ことり「ありがとぉ、ところで『三権分立』ってスクールアイドルのユニット知ってる?なんだか音ノ木坂で話題みたいだよぉ!」
理事長「あら……はるばる海を越えてちゃんと使ってる人いるじゃない、知ってるわよ」
ことり「メンバー誰なの?1年生?」
理事長「3年生よ……『まきりんぱな』が間違ってそう呼ばれてるらしいわ」
ことり「えっ、3年ってことは真姫ちゃんたちだよね、『まきりんぱな』……?」
理事長「えーっと…『ゴッド3』のことよ」
ことり「ああ!『ゴッド3』かぁ!お母さん、マイナーな呼び方はダメだよぉ、失礼だよ!」
理事長「やんやん」
5月
部室
真姫「……凛、ちょっとここ解るかしら?」
凛「うん?どれどれ……うーん……なかなか掴みどころのない問題だね」
真姫「解答をみても、どうやったらこの発想に行きつくのかわからないわ」
凛「……とりあえずn=3ぐらいにてきとーに設定してやってみれば?」カリカリ
真姫「n=3ね…………あっ…なるほど」カリカリ
凛「んっ、いけそうだね、やっぱり具体的に考えたら見えてくること多いよ」
真姫「ありがとう、凛……私もしっかりしなくちゃ」
凛「数学ならおまかせだにゃ」
真姫「なんだか凛に教えてもらうなんて、変な感じね」
凛「えへへー」
真姫「……やっぱり志望校は決めたの?」
凛「うん、東大……なんだか口に出すのも恥ずかしいなぁ」
真姫「東大、ね……いいと思うわ」
凛「凛みたいなバカが受けさせていただくだけでも幸せだよ」
真姫「だれも今の凛なんかバカにしないわよ、お互い頑張りましょう」
凛「真姫ちゃんには負けないにゃ!」カリカリ
真姫(負けない……か)
凛「真姫ちゃん?どうしたの?」
真姫「べ、べつに何でもないわよ」
凛「手が止まってたよ?」
真姫「ちょっと考え事してただけよ、もう」カリカリ
凛「ふーん」カリカリカリカリ
真姫「……」カリカリ
凛「………」カリカリ
真姫(できたわ…答えはどうかしら)
真姫(! また間違えてる……)
真姫「うう……やり直しだわ」ゴシゴシ
凛「真姫ちゃん、がんばれー」
真姫(……最近なんだか調子が悪いわ……)
真姫(細かい所でミスするし、覚えた事は抜けていくし……)
真姫(なによ、それに比べて凛はこんなにもグングン伸びちゃって……)
真姫(あれ以来古文も調子良くなってきたみたいだし……)
真姫「あれ……なんだったっけ、disputeって…」
凛「議論するだよ」
真姫「あっ…そうね、ありがとう」
真姫(………)
真姫(私なんか一年生のころからずーっと頑張ってるのに……)
真姫(お医者さんにならないといけないのに…この前の模試も結果出せなかったし…)
真姫(ずーっと頑張ってるのに……なんで…私、才能ないのかなぁ……)
真姫(………なんで…)グスン
真姫(なんで涙が出てくるのよ……止まってよ……うう…)
凛「真姫ちゃん?」
真姫(ほら、凛もみてるじゃない……なんで……)ううぅ
真姫「うわぁぁぁん」ガバッ
凛「……真姫ちゃん!?何で泣いてるの!?」
真姫「うぇぇぇぇん……」グジグジ
凛「と、突然どうしたの!?凛が何かした!?」
真姫「」ガタッ
凛「あっ!」
凛「あ、かよちん」
花陽「どこいってたの?さっき来たら二人とも荷物だけおいちゃって……」
凛「かよちん、真姫ちゃんのノート見て」
花陽「え?……濡れてる……涙?」
凛「真姫ちゃん、今は屋上でひとりだよ」
花陽「どうしたの?真姫ちゃん……ケンカ?」
凛「わかんない……でも凛に怒ってる感じじゃなかったよ」
花陽「むむう…」
凛「……なんで泣いてたんだろう?」
花陽「わかんないなぁ」
ガチャ
真姫「……もう大丈夫よ、スッキリしたわ」
凛「あっ!真姫ちゃん……」
真姫「さ、勉強のつづき、初めましょ、中断させて悪かったわね」
凛「……うん」
花陽「……」
凛「……やっぱりダメだよ!真姫ちゃん!ちゃんと話して!」
真姫「!」
凛「ちゃんと話してくれないとやだ!」
真姫「!……もういいわ、それより次のセンター模試も近いし、集中しましょ」
凛「真姫ちゃんが話してくれるまで勉強なんかやめちゃうにゃ!」ポイッ
真姫「あっ!」
凛「……真姫ちゃん、なんだか最近元気なかったよ」
真姫「……なんでよぉ、もう、さっき泣き止めたのに……」グスン
凛「お願い……すこしでもいいから、教えて?」
真姫「……ごめんなさい、帰るわ」ガタッ
凛「あ!」
真姫「一人にさせて!」
バタン
花陽「出て行っちゃった……」
凛「……まさか帰っちゃうなんて」
花陽「追いかけなくていいの?」
凛「ううん……なんだか深刻だにゃ、明日学校来たときの様子をみよっか」
花陽「真姫ちゃんが悲しんでるの、悲しいよぉ」
凛「まったく、迷惑な真姫ちゃんだよ……」
花陽「勉強のことだよね、希ちゃん、なにか知らないかなぁ」
凛「相談しにいこっか」
塾
希「あ、凛ちゃん、この前貰った千手観音のプラモ、完成したで♪」
凛「わぁ!すっごーい!鬼気迫るね!」
希「これおもしろいなぁ、よく見たら歯ブラシとかサイリウムとか持ってるやん」
花陽「あはは……バチ当たりだなぁ」
凛「あのね、希ちゃん、相談があって……」
希「よしよし、なんのことや?言ってみ」
希「真姫ちゃんが…そっか」
花陽「なにかわかるの?」
希「うー…ん、勉強してる時に、泣いちゃったんやろ?心当たりはあるわ」
凛「おおっ」
希「この前ここの塾で模試受けたやろ?その結果、昨日帰ってきたねん」
凛「凛はまだ貰ってないにゃ」
希「あー、凛ちゃんは昨日授業なかったからなぁ、今から返すわ……はい」
凛「ふむふむ……」
花陽「凛ちゃん、良かった?」
凛「まーだまだ、D判定だよ」
花陽「そっかぁ…」
凛「模試が変われば判定も変わっちゃうし、まぁこんなもんだよね……」
希「そや、凛ちゃん、その通りや」
凛「それで、真姫ちゃんはどうしたの……もしかして」
希「判定は気にするなって言ったんやけどなぁ、ずっとBやったからCになっちゃってショックみたいで」
花陽「そうなんだ、でもあの真姫ちゃんそんなぐらいで泣いちゃうのかなぁ…しっくりこないや」
凛「凛がそんなところで偉そうに教えちゃったからかも……」
希「ん?」
凛「凛がね、真姫ちゃんが数学分からないっていうから教えてあげたの、そしたらしばらくして……」
希「そっかぁ……うーん」
凛「真姫ちゃんに謝らなくちゃ!」
希「待ち、凛ちゃん。たぶんそれだけやない」
凛「……?」
希「今までの積み重ねやと思うな、親もお医者さんやし、プレッシャーもあったんやと思う」
凛「でも、凛のせいで!」
希「一人にしてほしいって言ってたんやろ?……そうさせてあげり」
凛「希ちゃん!真姫ちゃんは苦しんでるんだよ!」
希「よう聞き……苦しまなあかん。自分のことは、精一杯悩まなあかん」
凛「……」
希「それが3年生や。大学が全てやないけど、どう生きていくんかは、もう自分で決めらなあかん」
希「頭いっぱいつかって、苦しんで、泣いて、それで納得いく答え出さなあかん」
凛「……」
希「真姫ちゃんは今、壁にぶつかっとる。壁を越えさせる手伝いはウチらに出来るかもしれん」
希「…でもそれでどうするん?真姫ちゃん、ほんまに立ち直れるやろか?
希「友だちに慰められても、何にも問題は解決しとらん。それは感覚が麻痺してるだけや」
希「考えさせたり……ちゃんと時間をあげたり」
凛「……」
花陽「希ちゃんもそうだったの?」
希「あはは……ウチはあんまりかな、でも真姫ちゃんは真面目やからよっぽどウチより悩んでるわ」
凛「うん……わかった、とりあえずはそっとしておくよ」
希「……難しいこと言うけど、ほんまに潰れてしまう前には助けてあげてな」
凛「うん」
花陽「真姫ちゃん、あしたは元気になったらいいね」
次の日
真姫「おはよう、凛」
凛「……おはよう、真姫ちゃん」
真姫「昨日あれから、いろいろ考えたわ」
凛「なにか答えは出たの?」
真姫「……わからないわ、答えなんか出ないし、やめたいのかもしれない」
凛「……」
真姫「だけど、今日は学校に行くわ、そして練習して、塾にも行くわ」
真姫「敷かれたレールじゃなくて……ちゃんと自分で敷いたレールだって気が付いたの」
真姫「だからあとは私が頑張るだけ、いつか凛が言ってた言葉よ」
凛「なにかな?」
真姫「『勉強の不安は勉強でしか解消できない』よ。μ'sのときもなにもかも、きっとそれだけのこと」
凛「…やったぁ!かっこいい真姫ちゃんが帰って来たにゃ!」
真姫「なんなのよ!もう!昨日のことはワスレテ!」
凛「忘れないもーん」
真姫「凛!」
凛「忘れないよ、凛だって、真姫ちゃんに偉そうにしちゃって、ごめんね」
真姫「……ずーっと偉そうなこと言ってたのは、私の方。ごめんなさい」
凛「これでおあいこ!さ、行こ!」
真姫「もう!サッパリしてるんだから!」
センター模試 会場
花陽「またセンター模試かぁ、本番は二日に分けてやる分量なのに、一日でやるから疲れちゃうなぁ」
真姫「センター、2次試験、色々あるけど、どっちも手ごわいわね」
凛「試験の難易度はいろいろあるけど、受験者の層は一緒だもんね」
真姫「みんなギリギリまで点数を最大化しようとして望んでくるわ」
花陽「怖いなぁ……1問も気が抜けないよ」
凛「模試で慣れるにゃー、凛はこのピリピリした雰囲気嫌いじゃないかな、ライブ前と似てるや」
真姫「そうね、全力を尽くしましょう」
花陽「うぅ……ちょっとトイレ……」トコトコ
凛「またー?かよちん朝から3回目だよ」
真姫「花陽はあがり症ね……」
凛「そこがいいんだにゃ///」
真姫「///」
今回はここまで。他に変なSS書いてたのでちょっと投稿遅れました
凛(まずは…地理かぁ)
凛(7~8割までは世界史、日本史に比べて取りやすい科目)
凛(だけどそれ以上は…9割以上は難易度が跳ね上がるそうだにゃ……)
凛(でもコストパフォーマンスからしても、倫政と並んでやっぱり理系からの人気は根強いよね)
キーンコーンカーンコーン
凛(よし!いくぞぉ!)
凛()カリカリカリ……
凛(むふふ…農林水産業関連の話はかよちんがアツく語ってくれるから得意だにゃ)
凛(でも工業…民族問題…読図…大変だぁ)
凛(うーん……あれぇ)
凛(終わった……6割あるかなぁ?)
凛(うーん……まだまだ演習量が足りないなぁ、だめだ)
凛(ふん!切り替え切り替え!)
凛(次は国語だよ!)
凛(……こいつもなかなか苦手だにゃ)
凛(最近は難化の傾向にあるから点差が付きにくいって意味じゃ嬉しいけど……)
凛(二次試験もあるからなぁ、ちゃんと記述も見通した訓練をしなきゃ)
キーンコーンカーンコーン
凛(よし、いくぞぉ!まずは現代文から!)
凛(ふむ…ふむ)
凛(……むずかしいにゃ……用語のレベルも高くて、つかみどころが……)
凛(頭に入ってこない……)
凛(いけない、落ち着け……落ち着け…)
凛(思い出せ……海未ちゃんの言葉を……!)
海未「センター国語ですか?」
海未「そうですね……最近のものは難しいですね、全部しっかり頭に残そうとしちゃダメですよ」
海未「あんな厳しい時間制約の中で、お世辞にも簡単とは言えない文章です」
海未「高校生が学校の授業を受けた程度では一読で理解するのはまず無理でしょう」
海未「……だからちゃんと強弱のリズムをつけて下さい」
海未「文章は一列に並んでますが、筆者が声を大にして言っていることを掴んで下さい」
海未「大丈夫です、設問で問われるのもそういうところだけです」
凛(くそぅ……海未ちゃんはああ言うけど、やっぱり難しい)
凛(何が正しくて、何が間違ってるのか……)
凛(むぅー!だめだ、25分以上もつかったら!)
凛(難問はみんなにとっても難問!解ける問題を確実に解かなきゃ!)
凛(次いこう!小説!……うん、これはそんなに難しい問題じゃなさそう)
凛(登場人物の心情をちゃんと確認して……積極的に選択肢を選ぶにゃ)
凛(うん……いや、でもこれ、かな?自信ないなぁ)
凛(いや、でもここにちゃんと根拠がある!よし、オッケー!)
凛(あわわ…もうあと35分しか残ってない)
凛(次は古文!今回の目玉だにゃ!)
凛(問われていること自体はシンプルだから…語句と文法の知識さえ整っていれば……)
凛(くそぅ、でも読めない)
凛(いや、些末な部分は拘っちゃだめだ!話しの流れをつかまなくちゃ!)
凛(ううーん……)
凛(あれっ、この人いつ死んでたの!?)
凛(さっきまで生きてたじゃん!どういうこと!?)
凛(いや、でも出家しただけ?うーん?)
凛(いやいや、だめだめ立ち止まりすぎちゃ!問題みよう!)
凛(えーっと…設問は、傍線部のときの姫君の心情?)
凛(よし…!これならここに書いてある)
凛(文章は完全には理解できないけど……設問には喰らいついてやる!)
凛(漢文…だね)
凛(こいつも2次試験でも出てくるから気を抜けない)
凛(問われているのは基礎事項……句形が中心だから、何を聞いているのか把握しないと)
凛(ほうほう……うーん、なかなか面白い話だにゃ)
凛(うん、なんとか読めた、これならまだ解けそう)
凛(はぁ……疲れたぁ)
凛(ざっと見積もって…6割程度かにゃ?)
凛(うーん…最低でも8割はとれるようになりたいなぁ)
お昼休み
真姫「国語、難しかったわね。特に現代文」
凛「小説の方はまだ簡単だったけどね……」
真姫「そうかしら、合ってると思っても解答みたらものの見事にスカしたりしてるときも多いわ」
花陽「つかれたぁ…おにぎりおにぎりおにぎり」ポンポンポン
凛「かよちん、お昼はおにぎり3つかにゃ」
花陽「地理の時間にお米の問題出てたから、お腹すいちゃって……」
真姫「地理の時間ってまだ9時だったじゃない、お腹すくのはやくない?」
花陽「午後からは英語、数学、理科とヘビーだからね、持続力がいるよ!」
凛「なるほど、凛はレッドブルを飲むにゃ、ぐびー」ツバサヲサズカル
花陽「凛ちゃん!ちゃんと栄養は自然の物からとらないと!」
凛「なんだか雰囲気出るにゃー、前から飲んでみたかったんだよね」
真姫「まったく、あんまり飲みすぎないようにね、トイレが近くなるわ」モグモグ
凛「真姫ちゃん、それカツサンド!?」
真姫「そうだけど……」
凛「むほー、カツサンドねぇ、意気込んでるにゃぁ……」
真姫「ナニヨォ……イイジャナイ!」モグモク
凛(次は英語……筆記80分、リスニング30分の合計110分……時間が長くて大変だよぉ)
凛(センター英語はバラエティ豊かな問題への処理能力が問われる)
凛(ただ、この程度の難易度だったら理系であっても確実に9割の得点率が求められる)
凛(手前からスピーディに、かつ正確に!特に読解問題は満点を取るつもりでいかないと!)
キーンコーンカーンコーン
凛(うぉぉぉぉぉ!!!!!!!)ババババ
凛(発音、アクセント!文法!語句整序!語句類推!反応!反射!音速!高速!)
凛(ふむふむ…うんうん…)
凛(……って時間ヤバい!うわ!)
凛(うおおお!パラグラフリーデング(未完成)にゃ!)
凛(…次はリスニングだよ)
凛(うーん、なんか絵里ちゃんの声ににてるにゃ)
凛(……ぼうっとして聞き逃した)
凛(ぜぇぜぇ……英語は体力がいるにゃ……1秒たりとも時間が余らなかった……)
凛(でも設問はちゃんと読めたもんね…うーん…でも7割くらいかなぁ、まだまだ)
凛(英語はなぁ……!いけない、苦手意識は危険だよほしぞらくん!)
凛(…とりあえず本日の佳境は乗り切ったにゃ、次からは理系科目…むふふ)
凛(数学1Aと2B…ウズウズするよ)
キーンコーンカーンコーン
凛(うおおおおおお!)ガリガリガリガリガリ
凛(フンッ!おわり!……15分も余ったもんね!)
凛(ただ計算ミスも多いにゃ、ゆっくり見直そう……)
キーンコーンカーンコーン
凛(センターの物理は基礎事項、奇問はすくないにゃ)
凛(……はぁ、やすらぐ)
キーンコーンカーンコーン
凛(相変わらず生物は変な問題が多いや)
凛(ゴキブリの感覚器官……うぇーっ?なんか過去問でもゴキブリあったよね)
凛(ちょっぴりめんどくさいけど、ちゃんと読んだら解けるもんね……)カリカリ
凛「はぁ…終わった」
花陽「おつかれさま、おにぎり食べる?」
真姫「まだ持ってたの?」
花陽「へへへ……2次関数がおにぎりに見えてきちゃって……」
凛「さすがかよちん!」
真姫「……」クルクル
花陽「今回は…総合で6割~7割くらいかなぁ、私は」モグモグ
真姫「9割にちょっと届かないくらいだったわ」
凛「さすが……凛は7割くらいかにゃ…国語がずっこけたにゃ、120点」モグモグ
真姫「数学は?」
凛「もちろん両方満点だにゃ、むふふ」
花陽「凛ちゃんすごいよぉ」
真姫「もったいないわね、偏ってちゃ」
凛「そうだね……なんとかしないと」
花陽「じわじわ伸びてるよね、がんばれ!」
真姫「……そろそろ帰りましょ、今日は疲れたわ」
花陽「そうだね、ゆっくりお風呂はいりたいよぉ」
凛「ううー」
星空宅
凛「理系科目はほぼ完ペき、国語が120点と英語が130点、地理は66点」
凛「総合で得点率77%…ううーん……まぁ5月にしてはまずまずかなぁ」
凛「最終的に90%近く取らないといけないとなると……大変だなぁ」
凛ママ「凛ー!?お友だちよー!」
凛「はいはーい!今いくよ!」
凛「だれかな?」ドタドタ
穂乃果「凛ちゃん、ひさしぶり!」
凛「あっ、穂乃果ちゃんに雪穂ちゃん!」
雪穂「凛ちゃん、今日模試だったんだね、おつかれさま」
凛「ありがとー」
穂乃果「勉強してたでしょ?ごめんね」
凛「いやいや、思索に耽ってただけだよ」
穂乃果「ははは、これ、うちの和菓子!差し入れだよ!」
凛「わあ!あげまんじゅう!」
雪穂「お父さんが作りすぎちゃったって……」
穂乃果「あげまんじゅう好きな友だちがいるって言ったら、次の日に…」
凛「むふふ、素直じゃ無いなぁ、いいお父さんだにゃ」
穂乃果「海未ちゃんはほむまんを毎日買いに来るし…やっぱり腕はいいのかなぁ」
凛「ほのかちゃんはお父さんの後を継ぐんじゃないの?」
穂乃果「俺みたいなアホになるな、ちゃんと若いうちは大学行って勉強しろだってさ……」
雪穂「お父さんあと20年は看板を渡すつもりはないみたいだからさ」
凛「ひえええ」
雪穂「凛ちゃん、今年は忙しいだろうから遠慮してるけど…来年は勉強教えてね!」
凛「おーるおっけーだよ、しごいてやるにゃ」
穂乃果「私も凛ちゃんに教えてもらいたかったなぁ、数学」
凛「……海未ちゃんは教えてくれなかったの?」
穂乃果「そう!海未ちゃん数学のことになるとなんか不機嫌そうな顔するの、あからさまに!」
穂乃果「しかたないから希ちゃんに教えてもらったけど、すぐわしわしするし……」
穂乃果「にこちゃんはなんかにこにこにーしてごまかすし…」
穂乃果「絵里ちゃんも『ごめんなさい数学は苦手なの』とかはっきり断るし……」
穂乃果「ことりちゃんはすぐ『うーん、スマブラしよ?』とか言うし」
穂乃果「数学なんてまともにやった覚えないよ!ひとりでもできないし!」
凛「ははは……凛も塾に行かなかったらそんな感じだったかも……」
今回はここまで
6月
凛「Around 70 percent of processed foods in the U.S. contain genetically modified ingredients……」
凛「A private research firm estimated that ……」ブツブツ
凛「Recently published data show ……」ブツブツ
凛「ふぅ……音読おわり」
凛「うーん、効果あるのかなぁ、これ?でも塾の先生がやった方が良いって言うし」
凛「楽しいからいいけどね」
凛「えーっと……次は数学……」
凛「いけない、ちょっと数学はお休み……国語やらないと……」
凛「うーん、『豈』は疑問、反語……」
凛「……」ウトウト
凛「……すぅ…すぅ……」
凛「んんっ!!ヤバい、寝ちゃいそうだった!」
凛「あっついシャワーでも浴びて目を覚まそう!」ヌギヌギスポーン
シャアアアアアアア
凛「はぁ…いきかえるぅ」
凛「よし、ふんばるにゃ」キュッ
凛「県の四年五年果てて、例のことどもみなし終へて、解由など取りて……」
凛「ふむふむ…」
凛「あっ…もう12時」
凛「寝る前に英単語……」
凛「exclude……rag…scorn…trait……」
凛「……すぅ…すぅ…」
チュンチュン
凛「ううん……あれぇ、もう朝ぁ?」
凛「ふわぁ~……数学しよっと」カリカリ
凛「うーん、えーっと」カリカリ
凛「……」カリカリ
凛「よぉし、できた!」
凛「ふぅ~、目覚めが良いよ、朝ごはん食べよ」
凛「かよちん、真姫ちゃん、おはよう!」
花陽「おはよう~、凛ちゃんは最近は何やってるの?」
凛「センターに向けて対策中だよ、理系科目は1日一問ずつにして英語と国語に集中してるにゃ」
真姫「もうそろそろ7月ね、夏休み。夏は受験の天王山、とはよく言うわ」
凛「それは変だと思うな」
真姫「どうして?」
凛「なんで夏休みがあるかって…それは暑いからだにゃ!暑くて学業が捗らないから学校もお休みなんだよ!」
花陽「わたしも去年はバテちゃって……ぜんぜんダメだったよぉ」
真姫「もう、塾の自習室はクーラーきいてるじゃない」
凛「そうそう、だから今年は頑張るにゃ」
花陽「……ちょっとバテるのも楽しみなんだけどなぁ」
亜里沙「花陽ちゃん、真姫ちゃん、凛ちゃん、今日は練習しないんですか?」
凛「ごめんね、今日は塾があるんだ」
亜里沙「ははーっ、そうですか」
真姫「ごめんね、最近全然顔出せなくて……」
亜里沙「いえいえ、ユニットも違うし、練習は問題ありませんよっ」
亜里沙「ただ、みんな『ゴッド3』に会いたがっています!」
花陽「亜里沙ちゃあん……私、今日練習行くよ!」
真姫「ちょっと、花陽も授業あるでしょ、サボっちゃだめよ」
花陽「はぃぃ……じゃあまた明日」
凛「明日は模試だにゃ」
花陽「ぴぎゃぁ……」
亜里沙「がんばってください!ファイトです!ハラッショ!」
花陽「ううぅ……、わたし、部長失格だよぉ……」
真姫「……そういえば、最近忙しくてイベントにも参加できてないわね」
凛「なんだか練習も楽しいけど……これじゃあみんなに悪いにゃ」
花陽「……」
花陽「……決めました!!休止です!『まきりんぱな』は休止します!」
凛「ええっ!突然どうしたの!?」
花陽「ダラダラやるくらいならやらない方がマシですっ!」
花陽「こんな練習時間も確保できないような状態……お客さんにも失礼だよ!」
真姫「……」
凛「そうかもしれない…でも、名残惜しいよ……」
花陽「だから、アキバでもう一回…それで一旦最後にしよう」
真姫「花陽が決めた事なら……私は構わないわ」
凛「そんなぁ……」
花陽「凛ちゃん!」ガシッ
凛「ウグッ!?」
花陽「解散じゃない、休止だよ!『まきりんぱな』は死なないよ!」
凛「ううっ苦しい、かよちん、意図せずチョークきまってるにゃ」
花陽「それに凛ちゃん……目指してるところも凄いんだから、頑張らないと!」
花陽「どっちも中途半端なんて、そんなのダメだよぉ!」
凛「OKOK!わかったにゃ、ほどいて、ほどいて、ぎぶぎぶ」パンパン
真姫「いけない、脳に酸素が行き届いていないわ」
花陽「…!ごめんね凛ちゃん」
凛「げほげほ、凛はチョーク決めてくるかよちんも好きだよ」
花陽「ありがとう……」
真姫「練習時間をとれるのは…夏期講習のはじまる前くらいね」
花陽「よぉし、その2週間でおもいっきりやりましょう!」
凛「あいあいさー」
塾
希「『まきりんぱな』解散するん?」
凛「解散じゃないよ、休止だにゃ」
希「そっかぁ……花陽ちゃんが決めたんやろ?」
凛「なんだか悲しいなぁ……」
希「ん?」
凛「かよちん……アイドルやめちゃうんだなぁって思って」
希「そやな……でもウチもえりちも、穂乃果ちゃんもみんな、アイドルやめたけど元気に過ごしてる」
凛「でもみんな卒業式までずーっと練習して…希ちゃんだって」
希「もー、ウチらも大変やったんやで?それに…大学も受かりたいやろ?」
凛「でも…でも……」
希「考えてみたら……3人が一番アイドル歴長いんやもんな」
凛「……そうだね…ってにこちゃんは?」
希「にこっちは今でも活動してるから例外や」
凛「……そっか、休止だもんね!凛たちもにこちゃんみたいに大学行ってからやればいいんだ!」
希「そやそや、だから今ある自分の夢めざしてがんばり」
凛「……」ガバッ
希「わわっ、どうしたん?」
凛「……うわぁぁぁん……」ボロボロ
希「……凛ちゃん」
凛「わかってるよ、わかってる希ちゃん」
希「……」
凛「泣きたくて、泣いてるだけだから……気にしないで……うわぁぁあん…」ボロボロ
希「……おつかれさん、凛ちゃん……それに、花陽ちゃん、真姫ちゃん」
7月
海未「穂乃果!またスマブラしてるんですか!」
穂乃果「待ってよー終わったらレポートするから」
海未「昼間から一人でゲームなど……まったく…!」
穂乃果「ふふふ」ニタァ
海未「何がおかしいんですか!」
穂乃果「海未ちゃん、これ誰かわかる…?」
海未「誰がと言ったって……ハッ、このchu-nとKKEとはまさか……」
穂乃果「そう、このガノンドロフはことりちゃん、このピカチュウは絵里ちゃんなんだよ!」
海未「何っ!?なぜことりと絵里が!?二人はイタリアとイギリスのはずです!」
穂乃果「海未ちゃんは機械に弱いなぁ、wi-fiは海外対戦もできるんだよ?」
海未「なんと……」ウズウズ
穂乃果(今だっ!ダメ押しにもう一手!)
穂乃果「あと1人いれば4人で出来るのになぁ……」ウワメヅカイ
海未「穂乃果、ちょっと待っていて下さい」ガタガタ
穂乃果(やったね)
30分後
海未「ゼェ…ゼェ…3dsとスマブラを買ってきました」
穂乃果「すごい!電気屋まで2キロはあるのに!やっぱり海未ちゃんもやりたかったんだね!」
海未「違います!ただ、対象を知らずに批判するのは愚かなことですから!」
穂乃果「ふっふっふ…じゃあ早速対戦しようか」
海未「突然すぎます!……そうですね……このカービィというキャラにしますっ…ふふふふ」ニタァ
穂乃果「ニヤけてるよ、海未ちゃん」
海未「ニヤけてません!(穂乃果と対戦!)」ニタニタ
穂乃果「あっ、そうだ」
海未「ひゃふっ?」
穂乃果「来週『まきりんぱな』の最後のライブやるから来てって花陽ちゃんが」
海未「そうですか……わかりました、みんなを呼びましょう!」
ことり「あれっ、このカービィ……umimi…?」
絵里「ハラショー……か、かわいい……」
秋葉原
司会「今日の最後のゲストはー……『まきりんぱな』こと『ゴッド3』です!」
花陽「逆です!『ゴッド3』こと『まきりんぱな』です……」
司会「あれっ…すみません!それはそうと、今日は重大なお知らせがあるそうです!」
「ガヤガヤ」
ツバサ「何かしら」
あんじゅ「新曲?」
英玲奈「気になるな」
花陽「はい…みなさん、日々のご声援ありがとうございます!」
凛「今日のライブをもって『まきりんぱな』は休止いたします!」
ツバサ「ほげーーーーっ!?」
あんじゅ「んのーーーーっ!?」
英玲奈「衝撃とでもいうのだろうか、今、胸に駆け巡るこの感情」
真姫「私事では申し訳ないですが、3年も終わりになり、学業も差し迫ってきたので」
花陽「またいつか、戻ってきます!今日は精一杯歌いますので、聞いてください!」
「うわああああああ!」
「まきちゃーん!」
「りんちゃーん!」
「かよちーん!」
ツバサ「まきりんぱなぁぁぁぁ」
あんじゅ「私の心、いま完全にフルハウスぅぅぅ」
英玲奈「しかし圧倒的アイドル力……惜しい人材がいなくなるものだ」
真姫「I say……」
凛「HEY!HEY!HEY!START:DASH!」
花陽「HEY!HEY!HEY!START:DASH!」
ツバサ「ヘイ!ヘイ!」
あんじゅ「ヘイ!ヘイ!」
英玲奈「ヘイ!ヘイ!」
にこ「ヘイ!ヘイ!」
海未「ヘイ!ヘイ!」
穂乃果「ヘイ!ヘイ!」
希「ヘイ!ヘイ!」
雪穂「ヘイ!ヘイ!」
亜里沙「ヘイ!ヘイ!」
今回はここまで。進行遅くてすみません
凛「じゃあね!みんなー」
花陽「ありがとうございますぅ…」グスン
真姫「ヴェェェン」
穂乃果「すごぉい!さすが3年間もやってきただけあるね!」
海未「正確には2年ですけどね、まったく……あなたたちは最高です!」
亜里沙「ハラッセオ!最高の断末魔でした!」
雪穂「亜里沙!使い方違うってば!失礼だからそれ!」
にこ「ふふん、やるじゃない、宇宙No2ってところかしら」
希「これでおしまいかぁ……始まりも終わりも、START DASHやったなぁ……」
ツバサ「まきりんぱなぁぁぁぁ」
あんじゅ「フルハウスぅぅぅぅ、私の涙腺フルハウスよぉぉぉ」
英玲奈「私たちの出番はおそらくこれだけとでも言えばいいのだろうか」
8月
凛「夏期講習だー」
花陽「わぁ……もう1年経ったんだぁ、早いなぁ」
凛「ごーいんぐ矢の如しだね」
真姫「光陰矢のごとしでしょ……」
凛「夏期はもちろん英語と国語の強化にいそしもう」
花陽「凛ちゃん、そんなに講座とって大丈夫ナノォ」
凛「かよちん、受験は甘くないよ!……それにせめて秋にはB判定くらい取らなきゃ!」
真姫「……なかなか厳しいわね、だいたいBって合格者平均よ」
凛「まぁ無理なら仕方ないにゃ、どうせ凛は合格最低点のギリギリスライディングで線形計画法的合格を計画してるにゃ」
花陽「なんだかよくわかんないけどすごいよ凛ちゃん!凛ちゃんはすごい!」
真姫「……要は結構危ういんでしょ」
凛「ごめいとう」
花陽「ファイトですぅ」
凛「じゃあ凛はこっちの教室だから、またね」
花陽「お昼ごはんは一緒にたべようね」
凛「ふぅ……さて、授業、授業」
凛「」カリカリカリ
星空宅
凛「ふんふん…」カリカリ
凛「うわっ、間違えた」
凛「むーっ、こーゆー地味な計算はつまんないにゃ」
凛「でも結局最後は計算ミスで点差がつくんだよね……あーあっ」
凛「……」ウトウト
凛「ハッ、また寝てた」
凛「お風呂場お風呂場……水かぶろっと」
ジャバー
凛「よぉし、元気ハツラツ」
凛「国語国語……」
凛「ふむふむ……」
凛「……」ウトウト
凛「ダメダメ!まだ寝ちゃダメ!」
凛「コーヒー淹れよっと」
トクトクトク
凛「石油みたいに濃いコーヒーができたにゃ」
凛「大人だからブラックで飲んじゃうもんね」グビー
凛「まっず……都バスみたいな味がする……」
凛「お砂糖お砂糖……ないっ!クエン酸しかないっ!」
凛「ええいっ、ままよ!のんじゃぇ…」グビッ
凛「おぇぇ……気分悪っ」
凛「でも目は覚めた……」
凛「……」ウトウト
凛「あーっもう!まだ寝るには早すぎるよ!」
凛「最終おーぎ、歯磨き粉を使おう」
凛「これをまぶたに塗ると…覚醒!UR凛ちゃんだにゃ」
凛「……」
凛「予想以上にスースーする」
凛「やめときゃよかった……」
凛「……」ウトウト
凛「」グニッ(唇を噛みしめる)
凛「なんで自分で噛んでも目が覚めないんだろ…」
凛「そういえばパパがロデオマシーン買ってたなぁ、あれって眠気とれるかも……」
凛「よいしょ」ピッ
凛「うーん」グワングワン
凛「なんか気持ちいいなぁ」グワングワン
凛「だめだ、眠気とれない、最強モードにして…座るところに頭を直接当ててみよう」ピッ
凛「おおおおおおおおおおおお」グワングワン
凛「ぬおおおおおおおおおおお」グワングワン
凛「ハァッ…ハァッ…予想以上だよ、頭がシェイクされて偏差値下がるかとおもった……」
凛「ああ……いろいろやったせいで逆に眠たくなってきたにゃ」
凛「ふわぁ……もう寝よ……」
凛「ぐぅ…ぐぅ…」
凛「番号番号……ない!ない!どこにもない!」
凛「うわああああああん」
希「残念やったね…これは浪人確定や、親が泣いとるで」
にこ「大口叩いて、無様ねぇ」ケラケラ
海未「あなたは最低です、マリアナ海溝より最低です」
ことり「凛ちゃんまた受験?スマブラ買っちゃいなよ、楽しいよ?」
穂乃果「だっさーい、凛ちゃん、やっぱり3バカだね」
真姫「えっ、凛は大学落ちちゃったの?」
花陽「凛ちゃん、来年があるよっ」
凛「おいてかないでー2人ともー」
真姫「さあ、花陽、この真姫ちゃんターボに乗りなさい」
花陽「凛ちゃんさようなら、一年早く就職するね」
真姫「凛はもう一年頑張りなさい、じゃあね」
ブゥゥゥゥン
凛「うわぁぁぁぁんひどいよぉぉぉぉ」
凛「こんなのってないよぉぉぉぉぉぉ」」
ガバッ
凛「ハァハァ…」
凛「寝不足のせいで悪夢を見た…みんなはあんなこと言わないよ……」
凛「もう徹夜はやめよっと……」
今回はここまで
9月
花陽「凛ちゃん、ご飯たべよ?」
凛「」カリカリ
花陽「凛ちゃーん……」
凛「」カリカリ
花陽「無視しないでよぉ……」
真姫「聞こえてないの?」
凛「ん?かよちん!真姫ちゃん!」スポッ
花陽「わっ、耳栓してたのォ」
凛「無音だと結構はかどるんだよ、かよちんもつけてみる?」
花陽「わぁ、じゃぁ……」スポッ
真姫「ちょっと花陽!人の耳栓なんてやめときなさいよ!」
凛「真姫ちゃんの声なんか、いまのかよちんには届かないにゃ」
花陽「ワアアアアアアアアア!!!!シズカダヨオオオオオオ!」
真姫「」ビクッ
凛「かよちんの声は凛に蝉の声のようにしみるなぁ」
花陽「エエエエエエエエッ!?ナンテイッタノ!?リンチャン!?」
真姫「花陽!ちゃんと聞こえてるからもうちょっと声量下げなさい!」
凛「真姫ちゃんの声なんか、いまのかよちんには届かないにゃ」
花陽「ありがとう凛ちゃん、私も買おうかな」スポッ
真姫「ハナヨォ!」
花陽「わっ!真姫ちゃん、こわいよぉ……」
凛「よしよし、凛が守ってあげるからね」
真姫「なんか最近このパターン多くないかしら……」
凛「そうだ、凛ね、この前初めて東大実践模試を受けたんだぁ」
真姫「へぇ、どうだったの?」
凛「全体的に時間切れだにゃ」
真姫「時間があったら出来たみたいな言い方ね……」
凛「数学はそこそこ、6割はとれてるっぽいけど、英語とかね、もう……」
花陽「あわわ……英語は配点高かったよね、たしか……」
凛「そうだよ、数学と英語がどっちも120点満点、理科はふたつで120点、国語は80点だよ」
花陽「そうなんだぁ、本当に高いね」
凛「分量がものすごいから、ちょっと得意なくらいじゃ解ききれないよ……」
花陽「えーっと、難しいなら差がつかなくていいんじゃないの?」
凛「問題が難しいだけなら差はつきにくいにゃ、でも時間制限が厳しい試験は……解ききれる量で序列化するんだ」
真姫「点数と問題の処理速度の相関関係が大きいのね……確かに誤魔化しの効かない実力差が表れるわ」
凛「うわぁぁん、大変だよぉ、脳みそがオーバーヒートしちゃうよ」
真姫「たそがれてる暇なんてないわ、勉強の不安は勉強でしか解消できない、でしょ?」
凛「……もちろん!11月にはあんな試験ボッコボッコにしてやるにゃ!」
真姫「…さすがにそれは、もうちょっと現実みなさいよ」
凛「真姫ちゃんはリアリストだね」
真姫「そうよ、私は冷静よ」
凛「今年もサンタさんくるかな」
真姫「来るに決まってるじゃない、ていうか今それ関係あるの?」
凛「ないとおもう?」
真姫「ないとおもうわ」
凛「ふぅん……」
真姫「なによ」
凛「やっぱり真姫ちゃんはかわいいにゃ」
花陽「まきちゃ~ん」
真姫「ナニヨ……」
10月
星空宅
凛「朝7時に起きて、登校中はipodでリスニングの練習」
凛「学校ではお昼休みに図書室にいって40分で数学1問」
凛「5時から9時までは塾」
凛「帰宅中はかよちんと真姫ちゃんと、毎日英語の例文を5つずつ覚えていく」
凛「10時に家に帰る、そこから家で1時間は塾の復習、12時には寝る」
凛「なかなか時間は確保できてるし、量もこなしてるはずだね」
凛「でもなぜだか最近成果が上がらないんだよね……」
凛「集中できてるんだけどなぁ、後から振り返ったらあんまり頭に入ってないだよね……」
凛「んー……でも、特に方向性は間違ってないはずだし……」
凛「ちゃんと勉強してたら成績は落ちないよね……伸びやすい時期とそうでない時期があるだけだよね、うん」
凛「これからは淡々と……ひたすら重ねて、重ねて、重ねて……そして運用、運用、運用……」
凛「今日は早めに寝よう、徹夜はNOだよ………」
凛「すぅ…すぅ…」
「ただいま」
「おかえりなさい」
「凛も今帰ったんだな」
「ええ、でもあの子、今日ももう疲れて寝ちゃったみたいで」
「最近寝るのが早いな、毎日疲れてるんだろうな」
「みたいね」
「……なんだかうちの家に勉強道具が散らばってるのも不思議だな」
「ほんと凛、高校入ってから、色々やってるわよね……予想できないことばっかり」
「いいんじゃないかな、親は黙っとくもんさ。おいしいご飯でも作ってあげるのが一番の助けだ」
「そうね……あと凛、塾にいっぱいお金使ってるのが気になってるみたいで……」
「凛が?けっこう色々気にしてるんだな、それで、おまえは何て言ったんだ?」
「子どもの学費なんて、親が一番払いたいお金じゃない、むしろもっと払わせてよって言ってあげたわ」
「はははっ、面白い返し方だ」
「そしたらね、凛がありがとうって言ってくれて、すごく嬉しかったわ」
「……いい子に育ってるじゃないか、うちの娘は」
「そうね……」
希「真姫ちゃん、牛乳おいしい?」
真姫「ちゅうちゅう」
凛「りんにものませて!」
真姫「いやよ、あっちいって!ちゅうちゅう」
凛「まきちゃんのいじわる!」
真姫「ほしかったら、のぞみにもらいなさい」
凛「のぞみちゃぁん、りんも牛乳のみたいよぉ」
希「りんちゃんのぶんは無いよ」
凛「そんなぁ……」
花陽「りんちゃん、わたしとおこめたべよう」
凛「かよちん、わぁい、かよちん」
真姫「あっ、わたしもたべたいわ」
凛「まきちゃんはいじわるするからあげない!」
真姫「ひょい、もう食べちゃったわよ、もぐもぐ」
凛「ああっ、凛のおにぎりがぁ。かよちん、かよちん」
真姫「げっぷ」
凛「うわぁぁぁぁぁん」
凛「カオスな夢を見てしまった……ものも言えないにゃ」
凛「凛、おかしくなっちゃたのかなぁ……」
凛「ううっ…頭が痛い、今日は午前中は休んでおこう」
凛「ううん……」
穂乃果「あ、真姫ちゃん、花陽ちゃん、いらっしゃい!」
真姫「穂乃果、あげまんじゅうを買いに来たわ」
穂乃果「えっ、真姫ちゃんもあげまんじゅうにぞっこんなの!?」
真姫「なによぞっこんって……」
花陽「凛ちゃんが今日学校休んじゃって、お見舞いに持っていくんだ」
穂乃果「あっ、そうなんだ!じゃあちょっと待ってて……お父さーん!」ドタドタ
穂乃果「こっちの方にしなよ、超あげまんじゅうだよ!」
花陽「…っ!すごい、このツヤ!普通のあげまんじゅうとは格が違いますね、見ただけでわかります!」
真姫「ちょっと……美味しそうだけど、これ一個900円もするじゃないの……」
穂乃果「何言ってるの、タダだよ、タダ!友達のお見舞いにお金なんかとらないよ!」
真姫「………ってお父さんに許可貰いに行ってたの?」
穂乃果「ばれちゃった?そうだよ、二つ返事でオッケーだよ」
花陽「穂乃果ちゃんのお父さん、素敵です!」
真姫「ありがとう、穂乃果」
穂乃果「フフフ……真姫ちゃん、しばらく見ないうちに、ちゃんとお礼言えるようになったんだぁ」
真姫「前からそのくらい言ってたわよ!」
星空宅
ピンポーン
真姫「西木野です」
「あら、真姫ちゃんと花陽ちゃん」
花陽「凛ちゃんにお土産……じゃなくて、お見舞いの品をもってきました!」
真姫「凛はもう元気にしてますか?」
「……そうね、だいたい回復したみたいだけど、まだ疲れてるみたいで寝てて……」
花陽「ええっ……凛ちゃん、どうしちゃったのお」
真姫「そうですか…大事に、と伝えておいてください」
花陽「うぅん…しんぱいだなぁ、さようならー……」
「ごめんね、来てくれてありがとうね2人とも」
「凛、お友達がお見舞いに来てくれたわよ」
凛「……」
「寝てる、のね。おまんじゅう、置いとくわね、おやすみ」
凛「……」
凛「……なんでだろう」
凛「……なんで2人が来たのに寝たふりなんかしちゃったんだろう」
凛「わかんないや……」
凛「疲れてるんだね、明日は学校いこっと……」
真姫「りん、りん、りん」
凛「真姫ちゃん」
真姫「りん、りん、りーん」
凛「どうしたの、真姫ちゃん、こっち見てよ」
真姫「いやよ、見たくないわ、ぜったい」
凛「なんで?かよちんも、こっち向いてよ、凛としゃべってよ」
花陽「凛ちゃんは、わかるの?どうしてなのかって?それがなんでかって?」
凛「なにいってるの?なんのこと?ぜんぜんわかんないよ」
花陽「わからないんだぁ、おもしろぉい」
凛「やめてよ、やめてよ、おかしいよ二人とも」
凛「おかしいよ……おかしいよ……」
凛「ハァッ……ハァッ……」
凛「変な夢……きもちわるい……」
凛「今日も学校休もっと……塾は、……行けたらいいな」
ピンポーン
真姫「西木野です」
「2人とも、今日もありがとう」
花陽「凛ちゃんは、凛ちゃんはどうなんですか……もう3日ですよねっ」
「もうだいぶ元気になったみたい、今日なら会えるって言ってるわ」
真姫「……おじゃまします」
凛「2人とも、来てくれてありがとー!さびしかったにゃー!」
花陽「あれぇ!凛ちゃん、元気になってるよ!」
真姫「風邪じゃないんでしょ、3日も休んで、なんだったのよ」
凛「ちょっと恋の病だよ、うんうん」
真姫「そんなわけないじゃない!もう!」
花陽「とにかく、元気になって良かったよ!明日は学校これる!?」
凛「もちろん!ガンガンいくにゃ!」
真姫「良かった……じゃぁ、また明日ね」
凛「ばいばーい!」
凛「……はぁ」
凛「うん、だいぶ落ち着いてきたから……明日はいけるよね」
凛「2人もわざわざ来てくれたんだし、行かないとね……」
今回はここまで
凛「んんっ……」
凛「今日はいけそう、良かったぁ」
凛「勉強、できたらいいなぁ」
凛「真姫ちゃん、おはよ!」
真姫「凛!よかったぁ……」
凛「もう大丈夫、体力満タンだよ!」
真姫「今日からまた頑張りましょ」
凛「うんうん」
凛「……」
凛(なんだかなぁ……)
凛(先生が前で授業してるんだけど)
凛(うーん……)
凛(ペンが重たい……)
凛(ちょっと休憩……)
凛「……スゥスゥ」
真姫(凛、授業中に寝てる……久しぶりに見た姿ね……)
花陽(やっぱりまだ良くないのかなぁ、朝は元気そうだったけど…)
凛「塾に行くにゃ」
真姫「まだ体調悪いんじゃないの?授業ほとんど寝てたじゃない」
凛「……体力温存だよ!今日はこっからが本番!」
花陽「病み上がりだから無理しないようにねぇ……」
真姫「……」
凛「もう、どうしたの?しんみりしちゃって!」
真姫「凛、今日のノート見せて」
凛「えっ」
真姫「見せて!」バッ
凛「ああっ!」
まきちゃんげきじょう
↓落とし穴にはまる真姫ちゃん(かわいい)
まきちゃん「ヴェェェン、だしてぇぇぇ」
凛「あはは……ごめんね真姫ちゃん」
真姫「そんなの別にいいわよ……内容なんてべつにどうでも……」
凛「えっ……」
真姫「なに落書きしてんのよ!それに字も汚いし、休む前のノートと全然違うじゃない!」
真姫「ずっと真面目にやって来たじゃない!なんで急に!」
凛「……」
真姫「……凛、正直に言って、3日間なにやってたの?」
凛「前にもこんなことあったよね、真姫ちゃんが急に泣いて、飛び出て行っちゃって……」
真姫「ちがうわよ、私のときよりずっとひどいじゃない!」
花陽「凛ちゃん、どうしたの?……まだ、疲れてるの?」
凛「疲れてなんかないよ、元気だよ……」
凛「昨日も家で一人でやってたにゃ、サボってないもんね」
凛「凛、サボってないもん……」
凛「……う……うう……うわぁぁぁぁん」ボロボロ
凛「ペンは握れるよ、ほら……でも書いてたら、すぐ嫌になっちゃう」
凛「やりたい気持ちはいっぱいあるんだ、やる気はちゃんとあるんだよ」
凛「今日だって、学校で今までの分、取り戻そうとして……」
凛「でも何にも出来なくて……」
凛「やだよ……こんなので終わっちゃうの? いやだよ……」
凛「ずっと頑張って来たのに……もう10月だよ……?」
凛「うわぁぁぁん………」
花陽「凛ちゃん……」
真姫「……」
花陽「……お医者さんのところには行ったの?」
凛「行ってない……行っちゃったら、もう、ぜんぶ終わっちゃいそうで、怖くて……」
花陽「だめだよ!ちゃんと診てもらわなくちゃ、何にも出来ないよ!」
真姫「凛……今日はもう、塾はやめときなさい、来ちゃダメよ」
凛「やだよぉ……勉強したいのに……」
真姫「だめ、すぐに家に帰って、お医者さんのところに行って来て……おねがい」
凛「……わかったよ」
花陽「凛ちゃん、やっぱり気持ちが震えちゃってるね……」
真姫「……他人事に思えないわ、明日は我が身かもしれない」
花陽「私たちと喋ってるときは元気そうなのに……」
真姫「机に向かうと気分が悪くなるみたいね」
花陽「あれって、受験ノイローゼってやつかなぁ……」
真姫「病名をつけるなら、多分そうかもね……でもそんなの解決にもならないわ」
花陽「凛ちゃん、あんなに一生懸命頑張ってたのに……かわいそうだよぉ」
真姫「一生懸命すぎたのかもしれないわ……アイドルもやめちゃって、気の晴らしどころもなかったのかも」
花陽「私たち、何かできないかなぁ」
真姫「残念だけど……素人が下手に動けないわよ」
花陽「そうだね……凛ちゃんが元気になったときに、ノートとっといてあげよっと……」
真姫「私も手伝うわ」
「しんどくなったのは、10月に入ってから?」
凛「はい、そうです……はい。」
「うーん、この季節、受験生が一番相談しに来るんだよね」
凛「……」
「勉強時間は一日何時間くらい?」
凛「だいたい13時間くらいでした」
「よく頑張ってたんだね、体を動かしたりとか、気晴らしは何か意識してやってることはあった?」
凛「部活を8月にやめて、そこからはあんまり運動もしてません」
「ふんふん……親御さんは、受験に関して何か言っていますか?」
「いえ……娘には特に何も」
「では、塾に行きはじめたのも」
「ええ、本人の意思です」
「そうですか……えーっと、星空さん」
凛「はい」
「不安かもしれませんが、何日か勉強道具は机の中にでも片付けておいてください」
凛「はい……」
「それと、この土日はどこか、遊びに行ったり……」
「部活をしていたなら、そういったことをして、一旦受験勉強から離れるようにしてみてください」
凛「わかりました」
「焦る気持ちが湧いてくるかもしれませんが、今は毒です」
「大丈夫です、乗り越えて来てきちんと合格してきた子たちも毎年みてますので」
「もう一回机に向かう気力が戻るまで、とにかく自分を休めてあげて下さい」
「お大事に」
凛「わかりました……ありがとうございます」
「凛、お医者さんも言ってるし、明日はどこかに遊びに行って来たら?」
凛「ははは……勉強ばっかりしてたから、遊び方、忘れちゃったなぁ」
「お母さんもね、息抜きは大切だと思うわ、あなた最近頑張りすぎてたから……」
凛「心配かけてごめんね、お母さん。明日はちょっと出かけるね」
「本当に、体だけは大事にね……それだけが、お願い」
凛「うん」
凛「お医者さんも、ああは言ってくれたけど……ちょっとくらい、やらないと不安だよ……」
凛「……」
凛「……やっぱりだめだ、ちゃんということ聞かなきゃ!」
凛「勉強で解決できない勉強の不安だって、たまにはある!あるときはあるにゃ!」
凛「おかあさーん!段ボール箱持って来て!」
「何に使うの?……はいどうぞ」
凛「よいしょっと……」ゴソゴソ
凛「さて」
凛「勉強道具、ぜんぶ封印しちゃうにゃ!ぽいぽいぽい!」ドサドサドサ
凛「塾のテキストも、学校の問題集も、筆箱も、ノートも、ぜんぶ!」ドサドサドサ
凛「そしてガムテープで封っ!びしっ!ふんっ!これで目にもつかないよっ!」
凛「……なんかスッキリしてきたにゃ」
凛「明日は誰かと遊びにいこっと!かよちんと真姫ちゃんは忙しいから……」
凛「海未ちゃん……もテスト近いらしいし、希ちゃんも塾のバイトあるし……」
凛「亜里沙ちゃんも雪穂ちゃんもテスト……それに穂乃果ちゃんも店番がある」
凛「……となると、なんか消去法みたいになっちゃったけど、うん」
凛「もしもしーっ!にこちゃん、明日あそぼっ!」
にこ「ええっ!?アンタ受験でしょ!?」
凛「受験?そんなの段ボールの中だよっ!」
にこ「何言ってんのよ……」
凛「ええい、細けぇことはいいの!明日暇なの!?」
にこ「暇……だけど、まぁ」
凛「よし、じゃあ朝の8時にそっち行くね!」
にこ「はぁ!?早すぎない!?」
凛「大丈夫!?」
にこ「ああもう、大丈夫よ!ノープロブレムよっ!なんでもいいわよ!」
凛「よしっ、じゃあまた明日ね!」ガチャン
凛「むふふ」
翌日
凛「ぴんぽーん」
にこ「ふわぁぁ……」
凛「おはよう!……って元気ないね、どうしたの」
にこ「うーっ……ちょっと夕べ飲んじゃって……」
凛「ああっ、お酒飲んだの!?大学生は許される風潮があるかもしれないけど……未成年はダメだよ!」
にこ「うるさいわね、もう私は7月で20歳よっ!」
凛「えっ……」
にこ「なによ」
凛「……ぷぷぷ……あははははははっ!!!!」
にこ「なにが可笑しいのよ、むきーっ!」
凛「あははははははは……おかしーっ」
今日はここまで
凛「なんか成り行きで駅まで来ちゃったけど……どこ行く?」
にこ「……何にも考えてなかったのね、どこでもいいわよ、好きにして」
凛「そんな素っ気無いこと言わなくてもいいのにー」
にこ「休日にあんたと2人なんて初めてよ、要領がわかんないわ、しかもほぼ2年ぶり!」
凛「うっそ!もう2年!?」
にこ「2年よ!残酷にも時の女神は私たちを老いさせるのよ!」
凛「早いなぁ、なんだか悲しいよ、時計を止めてしまいたい……」
にこ「時計を止めたきゃ、電池を抜けばいいじゃないの」
凛「もののたとえだよ!にこちゃんの問答はマリー・アントワネットを彷彿とさせるにゃ」
にこ「『パンがなければお菓子を食べればいいじゃない』のこと?」
凛「そう、それそれ!」
にこ「あんなの作り話よ……あっ!新しいフレーズが思いついたわ!
凛「なに?」
にこ「『愛がなければ、にこにーを呼べばいいじゃない』……にこっ!!」
凛「これはギロチンものだにゃ」
にこ「なんか言ったぁ!?」
凛「うわぁぁっ!聞こえてるくせに!」
にこ「アイドルたるもの、ユーモアも無ければいけないわよ!」
凛「ユーモアというより滑稽だにゃ!」
にこ「なにこの2年でボキャブラリー増やしてんのよ!にゃーにゃー言ってただけのくせに!」
凛「ひどい!せいぜい三日に一回ぐらいだよ!」
にこ「んなわけないでしょ!一回こっそりカウントしたら38回も言ってたのよ!」
凛「なんでそんな下らないこと2年も覚えてるの!?」
にこ「ふふん、自分で下らないって言ったわね、私の勝ちよ」
凛「下らないのはにこちゃんの方だよ、ガキみたいなことばっかり言って」
にこ「だぁれがガキよ!悔しかったらお酒のんでみなさい!」
凛「うわばみにこちゃんめ、肝硬変になれーー!!」
にこ「なんですってぇっ!!」
凛「しゃーっ!」
ガタンゴトン
にこ「うっぷ……」
凛「どうしたの?」
にこ「電車乗ってたら気持ち悪くなってきて……」
凛「やっぱりお酒のせいじゃん!もうっ!」
にこ「実は……昨日初めてお酒のんだの……まずかった……」
凛「にこちゃん、いかにも弱そうだもんね」
にこ「もう禁酒するわ、お酒は20才からなんて、あんなの嘘よ、あと100年は飲める気がしないわ」
凛「下戸なんだね、にこちゃん。いわゆる矢澤げこちゃんだよ」
にこ「げっこげっこげー!!……ってなにやらせんのよ!」
凛「あははははは」
にこ「調子くるうわ……ていうか、この電車どこ向かってんの?」
凛「さぁ……東北あたり?」
にこ「はぁっ!?」
凛「うそうそ!海の方だよ、東京湾!」
にこ「海かぁ……潮風に当たりたいわね」
凛「凛は海の家で焼きそばが食べたいにゃ」
にこ「海の家って……もうそろそろ冬じゃない」
凛「寒いときこそ焼きそばだよ!」
にこ「うーん、そんなもんかしら」
ガタンゴトン
凛「着いた!園田だにゃー!」
にこ「海でしょ!!」
凛「ナイスツッコミだよ、やっぱりにこちゃんはμ'sの逸材だにゃ」
にこ「ツッコミ要員ってこと?腑に落ちないわ」
凛「真姫ちゃんとかよちんとで3人になっちゃったらなんだか会話の構図が固まっちゃって」
にこ「どんなの?」
凛「えっとね凛が真姫ちゃんをいじって、かよちんが凛をフォローするんだよ」
にこ「ただの集中攻撃じゃない!」
凛「真姫ちゃん、すっごくツッコミ上手くなってきたんだよ!」
にこ「知らないわよ!」
凛「この前もね、凛がタラバガニのものまねしてたら……」
真姫『もう凛ったら、タラバガニってヤドカリの仲間なのよね、知ってた?』
凛「ってツッコんでくれたにゃ!」
にこ「死ぬほどツッコミ下手くそじゃない!ただのうんちくよそれ!」
にこ「階段があるわ、砂浜におりましょ」
凛「うわぁ、この感触、久しぶりだなぁ」
にこ「けっこうこの足を取られる感じ、気持ちいいわね」
凛「さくさく」
にこ「靴に砂入るわよ」
凛「もう入ってるよ」
にこ「ああそう……」
凛「あはは……」
にこ「すぅーっ……風が心地よいわ」
凛「すぅーっ……」
にこ「海はいいわね、なんだか生き返るわ」
凛「そうだねぇ……なんだか肺が洗われるきぶん。だれもいないのは寂しいけど」
にこ「だからもう冬よ、泳ぎに来る人なんていないし」
凛「冬かぁ……それで、その次は春になって………」
にこ「なーに感傷的になってんのよ、もうすぐ卒業、それだけじゃない」
凛「そっかぁ、卒業だよね、もう」
にこ「過ぎてしまえばなんてことないわよ、あんなの」
凛「にこちゃん、泣いてたくせにー」
にこ「泣くくらいで済む程度の出来事よ、そんなの大したことないわよ」
凛「あれ?なんかそのセリフかっこいいにゃ」
にこ「そぉ?やっぱりアイドルたるもの、言葉で人の心を動かすくらい……」
凛「あはは、それはかっこ悪いセリフ」
にこ「最後まで言わせなさいよ!」
凛「そっかぁ……にこちゃんは、今も一人でアイドルしてるの?」
にこ「そうよ。あんたたちも全国優勝っていうご立派な肩書きあるんだから、もっと続ければいいのに」
凛「凛たちも、遊びでやってるつもりはなかったけど、そこまで本気なのはにこちゃんだけだにゃ」
にこ「なによ、本気で何が悪いのよ……」
凛「悪くなんかないよ、すごくかっこいいにゃ」
にこ「……そうよ、本気でやらないなら、何もしない方がマシ」
凛「……」
にこ「花陽に聞いたわよ、あんたのこと」
凛「……!あははっ……やっぱり調べられてた」
にこ「ちょっと話させて、聞いてくれる?」
凛「うん」
にこ「今なら言えるわ、はっきり言って私の高校生活はとんでもないバクチだったわ」
にこ「1年のときにアイドルはじめて、部員はそののち私以外退部」
にこ「2年になったらまともな活動もせず、ずーっと一人で夢にふけってた」
にこ「そしたら、3年になって穂乃果たちがアイドル始めた」
にこ「引き留めたわよ、そりゃもう。本気に見えるはずないじゃない」
にこ「上手くいかなかったどうなるか、中途半端にやるとどうなるか、私が一番よく知ってたわよ」
にこ「だけど、やっぱり根負けしちゃって、μ'sについていった」
にこ「結果は、確かに上手くいったわよ。上手くいきすぎたくらい」
にこ「でも、あれは9人の奇跡。結局私ひとりじゃなんにも出来ないわ」
にこ「大学生になって、また一人になって、いろいろと悩んで」
にこ「歌も踊りも、一番になれない自分が改めてよーくわかっちゃったわ」
にこ「だからこそ、本気にならなきゃマズいのよ、天才なんかじゃないから」
にこ「ただの凡人が、身を粉にして、やっと1人のお客さんの笑顔がもらえる」
にこ「辛いわよ、でも、誰が私にやれという訳でもないわ」
にこ「やめたきゃいつでもやめれるし、別にやめても私は困らない」
にこ「結局、最後はひとり、私が決めるだけ」
にこ「苦しくても、辛くても、自分がひとりでやってるだけ」
にこ「そんな人たちの集まりなのよ、アイドルの世界なんてものは」
にこ「だからこそ、本気にならない奴なんて失礼、最低よ。とっととやめちゃいなさい」
凛「あはは……本気じゃないならやめちゃえって、凛に言ってるの?」
にこ「そうよ、みんなおなじことよ」
凛「やめちゃえなんて、はじめて言われた」
にこ「なによ、嫌なら本当に、いつでもやめれるわよ」
凛「……」
にこ「いい?一番ダメなのは自分を見失うこと。自分がやりたいことができないこと」
凛「うん、うん」
にこ「あんたは受験生。同じ夢を持った人を一人蹴落として、そうやって大学に入ろうとしているの」
にこ「実力の世界とはいうけど、本当は志の低い、なんとなくな人間なんて身を引くべきなのよ」
にこ「もがいて、もがいて、それでも自分のわがままを通したい人、それが自分のやりたいことをしてる人よ」
にこ「ましてや東大でしょ?……普通の受験生じゃないのよ、もっと責任を持ちなさい」
凛「……そうだね」
にこ「勉強、手につかないのよね」
凛「うん、だからにこちゃんに会いに来たの」
にこ「そんな時期もあるわ、ゆっくり休むのは正しいと思うわ」
凛「へへへっ……今日はね、受験の事、思い出さないようにしようとしてたんだ」
にこ「……そうよね、偉そうにベラベラと……悪かったわね」
凛「むーっ」
にこ「ああっ、癖なのよ、もう!花陽にも止められてたのに、ああっ、もう……」
凛「……ううん……すっごく嬉しい、ありがとう、にこちゃんに会いに来て、本当に良かったよ」
にこ「えっ……そう?」
凛「うんっ、ホントはね、受験、やめちゃいたいって、何度も思ってたんだ」
凛「こんな成績で受かるはずなんかない、受けないほうがいいってずーっと心のどこかで思ってた」
凛「でもね、みんな優しいから、がんばれ、やめないでって言ってくれて」
凛「すっごく嬉しいんだけど、だんだん、何のためにやってるのか分からなくなって」
凛「そしたら、なんだか動けなくなっちゃったの」
にこ「……周りの人たちにはちゃんと感謝しなさいよね」
凛「ははは……してるよ、今はね、凛が自滅してるだけ」
凛「……だから、にこちゃんがやめても良いって言ってくれて嬉しかった」
凛「やめたいのに続けて、ボロボロになって……そんなの馬鹿馬鹿しいよね、うん」
凛「そう言ってくれて、一番救われた気がする、ほんとに」
凛「よーくわかったよ、やめたくてもやめれない、でも理由がわからない、それが苦しかったの」
凛「なんでやめれないか、それはみんなの期待のせいじゃない」
凛「やめれないのは、凛のわがまま」
凛「これからやめないのも、凛のわがまま」
にこ「じゃあ、やめるつもりないの?」
凛「もちろん、ぜーーーーったい諦めないもんね!!」
凛「周りがいくら諦めろって言っても、ぜったいやってやるもんね!」
凛「にこちゃんにやめろって言われて、がぜん燃えて来たにゃ!」
凛「自分のために、やってやる!!最後までわがままに燃え尽きてやるにゃ!」
にこ「よかった……やる気まんまんじゃない」
凛「スッキリしたよ、あははっ」
にこ「じゃあ明日から再開ね!やってやりなさい!」
凛「いや、ドクターストップがかかってるから、再開はもうちょっとあとだにゃ」
にこ「にごぉ……冷静ね」
凛「冷静?凛はいつだって冷静だよ!」
にこ「どの口が言うのよ!」
凛「あははははっ……ありがとう、にこちゃん、ありがとう!」
にこ「声大きいわよ、恥ずかしいからやめなさい!」
凛「人なんか誰もいないもんね!にこちゃん、にこちゃーん!」
にこ「ちょっと、ちょっと!そんなに叫びたいなら、海に向かって言いなさいよ!」
凛「あっ……それいいにゃ」
凛「いくよ?」
にこ「よしっ、せーの」
凛・にこ「わーーーーーーーーーーっっ!!!!!!!」
にこ「ーーーーっ………」
凛「んんーっ……青春だにゃーっ!きもちいい!……あっ、にこちゃんの春は終わってたっけ」
にこ「なぁに言ってんの、まだまだぶっとばすわよ!」
凛「もう理屈なんて抜きだにゃー!!ぶっこんでやるにゃー!」
にこ「そうよ、勢いよ勢い!パッションよ!うじうじしててもどーしょうもないわ!」
凛「うおーっ!鬼ごっこだよ、まてーっ!」
にこ「はっはっはーー!捕まえてみなさい!わーんだふぉーー!」
ドタドタドタドタ
にこ「ぜぇーっ……ぜぇーっ……」
凛「ひゅーっ……ひゅーっ……」
にこ「久しぶりに……こんなに激しく走ったわ……」
凛「部活やめて、3か月で……こんなに体力って落ちるんだ……」
にこ「はぁ……はぁ……」
凛「……よぉし、ご飯たべにいこっ!やきそばやきそば!」
にこ「ようし!どこでも行くわよ、任せなさいっ!!」
凛「とりゃぁぁぁっ!とっこー矢澤たいちょーっ!」
にこ「ついてきなさぁぁいっ!おりゃぁぁぁ!」
ドタドタドタ
今回はここまで
凛「あっ、海の家、営業してるよ、やきそば、やきそば!」
にこ「ほんとね、道路沿いだし、オフシーズンでも客がはいるのかしらね」
凛「にこちゃんは何食べる?」
にこ「私はちょっと気分悪いし……なんかあっさりした物がいいわね、シジミのお吸い物とか……」
凛「にこちゃん、なんだか嗜好まで老けてきてない?」
にこ「大人になったのよ、私はもうガールじゃないの、レディなの」
凛「レディがお吸い物ってのはなんだかピンとこないなぁ」
にこ「いいのよ!シジミは二日酔いにもよく効くんだから!」
凛「その妙な家庭のまめ知識……やっぱりおばあちゃんっぽいにゃ、にこちゃんの知恵袋にゃ」
にこ「だれがおばさんよ!!」
凛「もうっ、早く食べにいこうよ、ねっ」
にこ「はぁ……売ってたらいいのになぁ、シジミ」
凛「希望を捨てないことは立派だけど、多分売ってないと思うにゃ、ビーチにお吸い物なんてあまりにもそぐわないよ」
にこ「雰囲気に合うかどうかなんて後づけよ!焼きそばが海に合うんじゃなくて、海の家に焼きそばが置いてあるだけよ!」
凛「なるほど、なかなか鋭い視点だね、でもそもそも、メニューってのは需要に支えられてるから、売れなさそうなものは売ってないと思うんだけどなぁ」
にこ「あのね、グダグダ言ってても仕方ないわよ、店を見てみるまで売ってるかどうかなんてわかんないわよ!」
凛「凛は無い方に賭けるもんね!」
にこ「面白いわ、シジミ一本勝負よ!」
凛「えーっと……メニューメニュー」
にこ「……ああっ!あるわっ!シジミのお吸い物が売ってるわ!」
凛「ホワッツ!?そんなばかにゃ!」
にこ「ふふん、見なさい、やっぱり二日酔いで海水浴にくる日本人は一般的なのよ」
凛「なんで二日酔いの人しかシジミを食べない前提になってるの?それに凛にはそんなのメニュー見えないにゃ」
にこ「はあ?見えないってどういうことよ」
凛「凛は今、シジミのお吸い物が売っていない、パラレルワールドの海の家にいるにゃ」
にこ「頭おかしくなったの?」
凛「おかしくないよ、今は二つの世界線が同時に存在してるの」
にこ「なぁにがパラレルワールドよ!ここに、ちゃんとメニューに書いてるでしょうが!読みなさい!」
凛「なんにも書いてないもんね!凛には見えないもんね!にこちゃんの側の世界には存在してるかもね!」
にこ「わけのわからないこと言わないでよ!」
凛「科学的にもあり得る話だにゃ、『シュレディンガーの猫』理論だよ」
にこ「箱を開けるまで猫が死んでるかわからない、ってやつね、って何の関係があるのよ!」
凛「この場合は『YAZAWAのシジミ』理論だよ」
にこ「はぁ?」
凛「にこちゃんが海の家にくるまで、シジミのお吸い物が存在する世界と、存在しない世界が同時にあるにゃ」
にこ「はぁ……それで?」
凛「そして海の家でメニューを観測したとき、その2つの世界は1つに収束するにゃ」
にこ「だから一つに収束してるでしょうが!シジミのお吸い物が存在する世界に!」
凛「違うよ、そこでなんらかのバグが起きてにこちゃんと凛の世界がずれちゃったにゃ」
にこ「何らかのバグって何よ!話が長い割に最後はテキトーじゃない!」
凛「だいたいシジミは淡水だよっ!海の家で売ってるなんて、凛、認められないワァ!」
にこ「んだとーっ!?お情際が悪いのよ!箱の中に閉じ込めてやろうかこの猫がーっ!!」
凛「そうしたら、にこちゃんが死ぬ世界と死なない世界の2つが発生するにゃ」
にこ「なんで私が死ぬのよ、箱の中身はあんたよ!」
凛「箱の大きさを∞とすると、凛は箱の中にいるように見えて、実は箱の外にいるんだもんね!」
にこ「んなわけあるか!」
凛「うわぁ、おいしそう!いただきまーす」モグモグ
にこ「はぁ……しみるわねぇ」
凛「しじみだけにしみじみ、だね」
にこ「ははははは……しょうもなっ」
凛「にこちゃんもちょっとやきそば食べる?」
にこ「んー……っ、遠慮しとくわ」
凛「おいしいのになぁ」
にこ「ふーん、あんた麺類好きよね」
凛「麺類?そうだね、たしかに好きかも」
にこ「穂乃果はパン、花陽は米、あんたは麺。炭水化物トリオでユニット組んだら?」
凛「おおっ、なんだかエネルギッシュだね」
にこ「カロリー的な意味でね」
凛「へへーん、穂乃果ちゃんとかよちんとは違って、凛はいくら食べても太らないもんねー」
にこ「ああ、多分、私も太らない側の人間だと思うわ」
凛「おおっ、今日初めて意見が合ったね」
にこ「ふふーん、その気持ちはよーくわかるわよ」
凛「うん、こっち側だもんね、にこちゃんも」
にこ「うんうん、こっち側よね」
凛「……でも、もうちょっとついてくれてもいいのに……」
にこ「……そうね……今日初めて意見が合ったわね……」
凛「はぁーっ、今日は楽しかったぁ!久しぶりに遊んだよ!」
にこ「もう、はしゃぎすぎたわ」
凛「やっぱりバカなことやるならにこちゃんとがいいねーっ」
にこ「はぁ!?誰がバカよ!?」
凛「バカやったらバカ返してくれるから、にこちゃんの前では思いっきりバカになれるにゃー」
にこ「確かに、今日の会話は全体的に中身が無かったわね」
凛「うんうん、こういう無駄なこともたまには大事だよ」
にこ「たまには、よ」
凛「じゃぁ、そろそろお別れだね、カラスが鳴いたらかえりましょー」
にこ「はぁ、疲れたわーっ……今日はこれから晩ご飯も作らないといけないし……」
凛「あれっ、お母さんは?」
にこ「仕事よ、今日は帰らないわ」
凛「ふふーん」
にこ「なによ」
凛「にこちゃん、もうお酒は気持ち悪くない?」
にこ「もう大丈夫よ、帰りの電車も何ともなかったし」
凛「じゃあさ、凛が家に泊まりにいっても、いいかなぁ」
にこ「……そうくるのね」
凛「どうかな、どうかなぁ」
にこ「……しょーっがないわねぇ!いいわよ!来なさいよ!」
凛「ほんと!?わーいっ、にこちゃんとお泊まりだぁ!」
にこ「誰かを家に泊めるの自体初めてだわ」
凛「経験が浅いなぁ、凛はかよちんと通算300回はお泊まり会してるもんねー」
にこ「やりすぎよそれは……」
凛「よーしっ、じゃあいこいこ!矢澤家にれっつごー!」
にこ「はいはい、帰りましょ」
矢澤家、夜
にこ「………」
凛「すう……すぅ……」
にこ「寝るのはやっ……」
にこ「おなかも出して、だらしないわね……」
にこ「……あーもうっ!しかも布団蹴り飛ばしてっ!風邪引くじゃないの!」ガサガサ
凛「むにゃむにゃ……にこちゃーん……」
にこ「……」
にこ「……東大かぁ」
にこ「……なんだか遠い世界に行っちゃった気もするけど…」
にこ「……絶対、合格しなさいよね」
にこ「あんだけ言った以上、諦めたらしょーちしないわよ」
にこ「……ふわぁ……」
にこ「私も寝よっと……」
にこ「……」
凛「昨日、昨夜はお世話になりました、私、星空凛は矢澤家を立ちます」
にこ「気ぃつけて帰りなさいよね、以上」
凛「素っ気ないね」
にこ「グダグダしてたから、終わりくらいはサッパリいくわよ」
凛「ははは……じゃあ、ばいばーい!またくるねーっ!」
にこ「ふん、またきなさいよねーっ!」
凛「いえーーーーい!」
星空宅
凛「段ボールの中には勉強道具」
凛「いつもう一度これを開けるべきなのか」
凛「とりあえず、もう少し様子をみることにしよう」
凛「もう二度と途中で倒れないように、2月の本番まで突っ走れるように」
凛「今一度、最後の深い休憩を味合うにゃ」
凛「うん、今度は大丈夫、今度こそは大丈夫」
凛「自分のために闘う決意ができた」
凛「かよちん、真姫ちゃん、ありがとう、にこちゃん」
凛「ううん、それだけじゃない、海未ちゃんも、希ちゃんも」
凛「みんな、ありがとう、みんなの期待をお荷物にして、つぶれちゃった凛を許してね」
凛「これはあくまで、凛の、凛による、凛のための闘い」
凛「好意は黙って受け止め、期待は軽く流す、恩返しは合格で!それが一番正直でカッコいいよねっ!」
凛「この箱を開けるのが楽しみだなぁ、今までよりずっと頑張れそう」
凛「ふっふっふっふ……いまに見てろーっ!たっぷり遊んであげるからにゃー!」
園田宅
海未「息を限界まで吸って……出来るだけゆっくり吐き出してください」
凛「んんーッ……ぷはぁぁぁぁ……」
海未「この時、この行為以外は何も意識してはいけません。息を吸って、吐く。」
凛「すぅぅぅ……はぁぁぁぁぁ……」
海未「やがて、呼吸の意識も消えていき、魂が現実から抜け出します、これが瞑想の基本的な型です」
凛「まだ上手くできないけど……なんだか心がおちつくにゃー」
海未「ふふふ、いいですね、その調子です」
凛「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
海未「今日はこの辺にしておきましょうか、また何時でも来てくださいね」
凛「ありがとー、ばいばーい」
東條宅
希「凛ちゃん、どないしたん?塾以外で会うのも、久しぶりやね」
凛「いつもありがとう、希ちゃん、今日は別のお願いがあるの」
希「ふーん、何かなぁ」
凛「実は今、気持ちをリラックスさせる方法を研究してるにゃ」
希「なるほど、そういう話かぁ」
凛「今まで勉強一筋だったけど、ここからは体調管理も一つの入試教科として対策しなくちゃね」
希「えらいでぇ、凛ちゃん。その心意気や」
凛「だからさっきは海未ちゃんに瞑想を教えて貰ったの、希ちゃんにはとっておきのスピリチュアルネタを期待してるにゃ」
希「よーし、まかせときっ!そういうときの為に、色々集めてきたからね」ゴソゴソ
凛「これは…、お線香?」
希「お香や、いい匂いのする煙を出して、いろいろ神経にプラスの効果を与えてくれるんよ」
凛「いろいろあるにゃ、ひのき、パイン、シナモン」
希「シナモンは凛ちゃんにおすすめやな、スパイシーな香りで、孤独感の解消、抗うつの効果がある」
凛「孤独感……確かに家で一人でやってたら感じないこともないにゃ」
希「よーし、じゃあ何本かあげるから、使ってみ」
凛「やったぁ、ありがとう!」
希「朝起きたときとか、お風呂に入った後とか、10分くらいに集中して使うんよ、あんまり焚きすぎてもキツすぎて逆効果やからね」
凛「ふっふっふ、早速帰って使ってみるにゃ」
希「また欲しくなったらおいでー」
凛「……あれ、まだ色々種類あるね」
希「あっ、あはは、これは関係ないからね、凛ちゃんは使わなくてもええよ」
凛「気になるにゃ、とりゃっ!」バッ
希「ああっ!」
凛「なになに……『美人の香り』『失恋の甘酸っぱさ』『愛の燃える香り』『切ない恋の」
希「もーっ!読み上げんといて!それはなおしといて!!」
凛「希ちゃんも女の子だにゃ……ん?『アヘン』?」
希「あっ、それは……」
凛「ええーっ!!アヘンって麻薬だよねっ!?希ちゃん、だめだよ!」
希「違うよ、それはジョークグッズ、あはは、よく売ってるの」
凛「ほんとかなぁ……」
希「もー、ほんとやってば!!流石に麻薬はスピリチュアルこえとるよ!!」
凛「じゃあなにかにゃ?」
希「サイケディリックやね」
凛「ははは……希ちゃん、怪しいことはいいけど、くれぐれも危険なことだけはしないように!」
希「はぁーい、凛ちゃん」
凛「いい返事だにゃ!じゃあ、ありがと!」
希「ばいばーい」
星空宅
凛「希ちゃんにもらったシナモンのお香を試すにゃ」
凛「もわもわ……おおーっ、スピリチュアルやね」
凛「ああ……たしかにこれは落ち着く、いいにおいだにゃー……」
凛「………」
凛「このお香と、海未ちゃんの瞑想を組み合わせたら効果が2倍に……」
凛「よーし、やってみるにゃ」
凛「お香をめいいっぱい吸い込んで、ゆっくり吐き出す…」
凛「すぅぅぅぅぅ……」
凛「!!!!」
凛「ぶへっ!!!ごほっ!!!!ごほっ!!!!」
凛「ごほっ!!!ごほっ!!!!!!!」
凛「うわぁぁ……ぜぇ……ぜぇ……死ぬかと思った、強烈すぎるよ」
凛「瞑想はもうちょっと離れてやろっと……すぅぅぅ……はぁぁぁ……」
凛「すぅぅぅ……はぁぁぁぁ……」
凛「すぅぅぅ……はぁぁぁ……」
凛「すうぅぅ…はぁ……………」
凛「………………………」
凛「すぅ………すぅ……」
凛「すぴーーーーーーー」
凛「気がついたら寝てた」
凛「しかも一晩中シナモンのお香に浸かったせいで、全身がシナモンくさいにゃ」
凛「でも、今の凛は歩くアロマ人間にゃ!うーん、存在がスピリチュアルだね!」
凛「わっはっはっはっは……癒されたい人はおいでーっ!」ドタドタ
「凛……なんかすごい匂いするわよ、どうしたの?」
凛「……はい、シャワーあびてくるね………ごめんなさい」
今回はここまで
凛「3連休明けの学校はたのしーにゃ」
真姫「凛!大丈夫なの、まだ休まなくて……」
凛「だいじょーぶ、以前より調子いいくらいだよ、はっはっは」
花陽「3日で治ったの、すごいよぉ」
凛「あはは……全快したのかよくわかんないけど、とりあえずペンも握れるし、大丈夫かな」
真姫「無理しちゃだめよ」
凛「どこまで無理していいのか天秤にかけるのが難しいにゃ」
真姫「まぁ……それはわかるけど」
凛「とりあえず!この1週間のロスは大きいよ!挽回、挽回!」
真姫「ああーっ、もう!素直に応援しづらいじゃない!体調管理だけは気をつけなさいよっ!」
凛「希ちゃんとかからスピリチュアルなお香貰ったから大丈夫だもんね」
花陽「あっ、だから今日の凛ちゃんはヒノキの香りがするんだぁ、でもそんなので大丈夫なのかなぁ……」
真姫「まぁ、こんだけ回復の早いノイローゼも珍しいわ」
凛「へっへーん、バカはノイローゼひかないもんね。凛はバカじゃないにゃ」
真姫「ネタにするあたりも心配なさそうね」
花陽「そうだね」
凛「という訳で久々に……塾に行くにゃ!」
凛「久しぶりに段ボールから取り出した勉強道具は、なんだか手触りがよかった」
凛「まるで洗濯機にかけたみたいにピカピカになって凛のもとに戻ってきたにゃ」
凛「1週間くらい離れたから勘が鈍ってるかと思ったら逆だった」
凛「なんだか以前より一歩引いてモノを見れるようになった気がする」
凛「もしかしたら、いろいろ詰め込みすぎて脳みそもギブアップしてたのかもしれないにゃ」
凛「限界まで膨らんで、破裂して、中から新しい風船がでてきたにゃ」
凛「運動と一緒で、勉強もやっぱり超回復ってやつがあるのかなぁ」
凛「まぁ忘れてることは忘れてるんだけど……また覚えなきゃ、ね」
凛「もうそろそろ誕生日かぁ……19才」
凛「まだまだ人生長いなぁ、うんうん」
11月
穂乃果「お誕生日おめでとー、凛ちゃん!どんどんぱふぱふ!はい、これプレゼント!」
雪穂「それとこっちはお父さんからのプレゼントだよ、スペシウムまんじゅう」
凛「わーい、ありがとう!なんか意味わかんないけど、美味しそうだにゃ!」
穂乃果「あ、あとね、絵里ちゃんとことりちゃんからもメッセージカード預かってるんだ」
凛「えっ!ほんと!」
穂乃果「はいどうぞ!……あと、心配してるかもしれないから、何事もなく私から届いたって、メールしておいてあげてね」
凛「分かったけど、それってなんか回りくどくないかにゃー?」
雪穂「ところで凛ちゃん、勉強の方はどうなの?」
凛「うーん、勉強というより、この時期は点取りゲームって感じかなぁ」
雪穂「どういうこと?」
凛「まー早い話が、学問的というより、受験テクニックを磨いてる感じ……1点でも多く上げるためにね……」
穂乃果「そうそう!1点1点の積み重ねは大事だよ、本当に!成績開示見たけど、私あと6点低かったら落ちてたもん!」
凛「ええっ!」
穂乃果「本番は精神的にまずかったの!キンチョーして、カチカチになっちゃって……やっぱり紙のテストだけじゃ学力は測れないよね、うんうん!」
雪穂「お姉ちゃんはただ単に学力に余裕が無いからそういう窮地におちいるんだよ……」
穂乃果「なんだとぉ!志望校を下げなかったのは偉かったでしょ!」
雪穂「出願した後、めちゃくちゃ現実逃避してたじゃん!『受験こわぁい、うわぁ、格安航空ってすごぉい、国外逃亡がこんな値段で出来るんなんてぇ』とか言ってたし!」
穂乃果「私そんなアホっぽい声じゃないもん!それに、あんまり人のことバカにしてると、あとでしっぺ返し食らうよっ!」
凛「まぁまぁ……落ち着きたまへ、2人とも」
穂乃果「そういえば、凛ちゃんもギリギリ……って言ってたね」
凛「もうギリギリってレベルじゃないよ、天井から吊るされたひもQを必死に上ってる気分だにゃ」
雪穂「わけわかんないけど緊迫感は伝わってくるよ」
凛「ボーダーラインには誤差5点くらいでワラワラと合格者、不合格者がひしめいてるにゃ。凛もギリギリの層だから、どちら側に入るかは、ちょっとした心がけの違いになりそうなんだよね……」
雪穂「やれることはやる!そういうことだね」
凛「もちろんだよ、だから傾向、対策、誠意けんきゅー中だよ」
穂乃果「……あっ!そうだ、私、店番あるんだった!ごめんね、もう帰らなきゃ!」
凛「ええーっ、もうちょっと喋りたかったのに、残念だなぁ、また来てね」
穂乃果「じゃあねー」
凛「ばいばーい」
凛「…………じゅるり」
凛「………」モグモグ
凛「!!このスペシウムまんじゅう、なんだか『デュワッ!』て感じの味がする、すごい!」
凛「やっぱり穂乃果ちゃんのお父さんは天才だにゃー、ノーベル平和賞、貰うべきだよね」
雪穂「お姉ちゃん、店番なんてないのに……もしかして」
穂乃果「うん、なんだかしょうもない話をしてて凛ちゃんの時間を奪っている気がしてきて……」
雪穂「ははは……ちょっと同感、もしかしたら私たちが行ってなかったら1点くらい、点数あげれたかもね、凛ちゃん」
穂乃果「もー!そんなネガティブな話はやめようよ!誕生日に友達を祝わないのはダメだよ!」
雪穂「そういえば、えーっと……次のμ’sメンバーの誕生日って、誰になるの?」
穂乃果「つぎは1月に花陽ちゃんだね!私たちのプレゼントに加えて、ライスまんじゅう(おにぎり)持っていってあげよう!」
雪穂「いえーい!悪ノリがすぎるね!高坂家!」
凛「ことりちゃんからのお手紙読もっと、デコレーションがかわいらしいにゃ」
凛ちゃんへ
凛ちゃん、19才のお誕生日おめでとう!
メールでも良かったかもしれないけど、きちんと書いた字を届けたくなりました
長い間会えていないけど、お手紙書きながら元気な凛ちゃんを思い浮かべてます
真姫ちゃん、花陽ちゃんの元気な顔も見たいです、また機会があれば日本に戻りたいです
だけど、こっちはこっちですっごく充実していて、急がしいけど、楽しいです
受験をひかえた凛ちゃんは、そんな私よりも、ずーっと大変だと思います
それでも、自分のペースで頑張ってください、海の向こうから応援してます!
また終わったら、イタリアにも遊びにきてね!
凛ちゃんに、素敵な未来が待ってますように
あらためて、おめでとう!
ことり(・8・)
凛「ううーんうれしいなぁ、そしてこの不意打ちの顔文字は笑えるにゃ、ありがとうことりちゃん」
凛「もう半年経つから、それなりにイタリア語も喋れるのかなぁ?すごいなぁ」
凛「よーし、つぎは絵里ちゃん……」
凛へ
凛には伝えたいことがたくさんあって、手紙じゃ伝えきれなさそうです
まず、19歳のお誕生日、おめでとう。
思い返せば、私と凛は一緒にいたのは1年もないはず、驚くほど短いです。
でも、それはカレンダー上の話です、あの1年は私の人生の中で最も輝いていました。
そんな中、供に過ごした8人の仲間には、時間なんて関係ありません。
これからもずっと、あそこから始まった私の時計は、ゆっくりと、心地よく、針を動かしています。
そして、凛。
何でも突き放していたあの頃、元気いっぱいの凛は、私にとってちょうど正反対のような人間だと思ってました。
こんな真っ直ぐな子と、ひねくれ者の私が、仲良くなんてできるんだろうか、凄く不安でした。
でも、話してみて、すっきりと分かりました、「ああ、同じ人間なんだなぁ」って。
同じように笑うし、泣くし、悩んで、そうやって精一杯生きてる、人間でした。
凛は、今まで知らなかったことをたくさん教えてくれました。
凛は、わたしなんかより、ずっとずっといろんなことを知っていました。
凛は、時々バカにしてきたり、いたずらしてきたりもしたけど、私はそれに情熱的になって、本気で返して。
こんな自分が自分の中にいたなんて、全く知りませんでした。それを、凛が教えてくれました。
とっても嬉しかったです。本当に人と、初めて繋がれたような……そんな気持ちでした。
それから、いろんな人達に会ってみたくなりました。昔の私じゃ、考えられなかったことです。
外国は、日本以上に見たことも、考えたこともないような人達で溢れています。
けれども、今の私は、そんな人達と、話したい、友達になりたい……そう思えるようになりました。
あなたが私に、勇気をくれました。この場を借りて、お礼を言わせてもらいます。ありがとう。
そして、おめでとう。
これからも、そして、いつまでも応援しています
素敵な19年目を願います
絵里
凛「……心に響くにゃ、ちょっぴり涙が……」
凛「絵里ちゃんが凛のことをそんなに褒めてくれるなんて、照れくさいなぁ、やっぱり」
凛「この2枚のお手紙は永久保存だね、うん」
凛「よーし、そんなこんなで、やる気でてきたにゃ!がんばろーっ!!」
英国、ロンドン
絵里「今日が11月1日……あああ……あの手紙……」
絵里「凛にちゃんと届いてるのかしら……穂乃果に頼んで大丈夫だったかしら……」
絵里「もしあんなに真剣に書いたのに、誕生日に遅れてしまったらカッコわるすぎるわ……」
絵里「いざとなったら日本との時差のせいに……いや……そんなのでゴマかせるはずが……」
絵里「あああ……凛に嫌われちゃったらどうしよう……そんなの嫌ぁ……」
ワーンダフォーーーー
絵里「!!メール!」ダダッ
送信者:星空 凛
絵里ちゃんお誕生日のお手紙、ありがとう!
すっごくうれしかったよ~、また終わったら遊ぼうね!
絵里「はぁぁぁぁ~~~っ……届いてた、よかったぁ……」
絵里「喜んでくれてこっちも嬉しいわ、もちろんよ、私も会いたいわ……っと、ふふふ……」ニヤニヤ
絵里「まったく、やっぱり最後は上手く行くのよ」
絵里「私たちの、固い絆があればね」(ドン!)
今回はここまで
うわああやってしまった
18に置き換えて読んでください、すみません
東大実践模試 会場
凛「とうとう11月の東大模試だよ……周りの空気がいつもと違う気が……」
凛「こんな猛者たちの中で一人で受験なんて胃が痛いにゃ」
凛「いやいや、ここで本番になれなくちゃ、そのための模試だもんね……」
凛「まずは……国語かぁ、うう」
キーンコーンカーンコーン
凛(現代文、古文、漢文……3つもある割には配点はそれほど高いとは言えない)
凛(だけど、絶対に手は抜けない。周りも全力で得点しにくるにゃ)
凛(心を落ち着けて……これは、頭の中から引き出す試験じゃなくて、文章を使った論理ゲーム、パズルだよ)
凛(採点基準を想像するんだ……自分が今、何を書かされているのか考えて、要求に近づけていく)
凛(………よし、次は古文)
凛(語彙と文法の知識。設問要求は単純……あとは内容を読み解けるかが勝負!)
凛(だけどこの逐語訳という作業も意外と難しい、油断するとボロボロ点が抜けていくにゃ)
凛(基本を大事に……とにかく、論理で支えながらっ!)
凛(漢文も同じ、主題を掴んで、基本を引き出し、答案に投影する)
凛(文章の書き手……そして試験問題の作成者、この2人の意図をどれだけ理解できるか、結局はそこだね)
凛(それにしても……ぼんやりと解答は浮かぶけど、いざ書くとなると戸惑う問題ばっかり……くぅー)
凛(…………)
凛「はぁ……とりあえず乗り切ったけど、こりゃマズいなぁ」
凛「結局、国語は最後まで付きまとってくるのかぁ……まぁ、理系の宿命なのかな……」
凛「次は数学、挽回だよ」
キーンコーンカーンコーン
凛(とにかく数学は『地雷』を見抜いて、その他の問題を正確に解くこと)
凛(だけど、凛は英語での不利もあるし、ある程度の難問も手を出す必要がある)
凛(んー……でもやっぱり、難易度が安定しないから、何問解けたら安心ってのが解らないのも怖いんだよね……)
凛(だけどやることは同じ。易しい問題から順番に、易しい問題こそ丁寧に解いていく)
凛(それを時間切れまでどれだけできるか……、長期戦だよっ)
凛(んーっ……この問題はちょっと触った感じ、いけそう……)
凛(図形は……とりあえず色々やってみないと……)
凛(……………)
星空宅
凛「うーん、数学はよく出来たなぁ、簡単だったのかな?」
凛「……いやいや、むしろ並の理系より稼がなきゃいけないんだから、相当厳しいはずだよ、これでも」
凛「明日は理科と英語……どっちも手強いなぁ」
凛「緊張してきた……シナモン焚いて寝よっと」
2日目
キーンコーンカーンコーン
凛(時間制限の厳しさは理科も例外じゃないよね)
凛(それにしても、物理生物選択ってほとんどいないね……テキトーに興味湧いた教科から塾の講座とったら、こうなっちゃったけど……)
凛(まぁ、少数派だろうと構わないにゃ、まずは物理から)
凛(力学……惑星軌道?よし、これは誘導通りで問題なくいけそう……)
凛(電磁気学は……変な形の鉄芯が出てきた、んーっ、いけるかなぁ)
凛(……意外と素直だった、よし)
凛(最後は波動、スリットと干渉縞……ふんふん、ヤングさんだね)
凛(……あれ、だんだん複雑になってきたぞ)
凛(……うーん)
凛(ええい、生物だ、生物っ)
凛(独特なんだよね、これも……リード文長いっ)
凛(読み取って知識と合わせて……これってほとんど国語の問題じゃないかにゃ?)
凛(……ほうほう)
凛(んん!?……んーー)
凛「ふぅぅ………終わった」
凛「今日の試験は手が疲れるにゃ、ペンだこがカチカチだよ」
凛「理科もなかなか悪くないんじゃないかなぁ?うんうん」
凛「……まあ、英語が悲惨になりそうな未来が見えてるんだけど……」
凛「いいやっ入試は総合点だよ、偏ることは問題じゃないはず、合格点に達しさえすれば!」
凛「よし……最後の英語、行くぞぉ」
キーンコーンカーンコーン
凛(要旨要約、自由英作文、空欄補充、不要文排除……その他色々……どれもこれも一筋縄じゃいかないにゃ、脳みそが焦げそうだよ)
凛(文章自体は難解とは言えないけど……やっぱり、英語に追いつけても、日本語に変換する作業に骨が折れるなぁ)
凛(ああっ……時間が押してくる………)
凛(うーん、やっぱりこの問題は捨てよう……)
凛(………リスニング……スピーカーは聞こえにくいなぁ)
凛「終わった……ぷしゅー……こりゃだめだ」
凛「頭がくらくらする……もうダメ……寝よ」
凛「ふわぁぁ……」
凛「すぅ……すぅ……」
12月
真姫「12月ね、もうクリスマスシーズン、センターまで30日ちょっと」
凛「うわーっ!カウントダウンは怖いからやめて欲しいにゃ!」
真姫「凛!現実は直視しないとだめよ、ここから立てれる対策だっていくらでもあるんだからっ!」
花陽「あああああっもう、怖いよぉ、真姫ちゃん」
凛「凛も助けて欲しいにゃ、真姫ちゃん」
真姫「ダメよ、試験は結局一人で受けるの。私はあなたたちの『マッキー!知恵袋』にはナレナイワ」
花陽「まきちゃん」
凛「まきちゃん」
真姫「ヴェェェェ、せっかくちょっとボケたのに、ききなさいよ!」
凛「現実の直視……そういえば、今年のサンタさんはどうかにゃ、真姫ちゃんの家には来るのかにゃ?むふふ」
真姫「………」
花陽「凛ちゃん、それはいじわるすぎるよ、だめだよぉ!」
真姫「……実はね、この前私、知ってしまったの、サンタさんは……」
凛「えっ、もしかして……」
花陽「あっ……ついにこの日が」
真姫「高校生までしか来ないのよぉ!もう大人になっちゃうから!」
凛「ずこー」
花陽「ずこー」
真姫「だから今年がラストシーズン、ああっ……寂しいわ」
凛「凛の家には中学校までだったんだけど……きっと、真姫ちゃんはいい子なんだね、うんうん」
花陽「最後のプレゼントは、何を貰うの?」
真姫「言えないわ、誰にも言っちゃダメって、パパから言われてるの」
花陽「パパからかぁ……でもパパには何が欲しいか言ったの?」
真姫「……!こっそりよ、こっそり!」
花陽「ほほう……言っちゃったんだぁ」
真姫「そんな、ちゃんとサンタさんは来てくれるわよ!」
凛「かよちん、真姫ちゃんを追いつめるのはやめるにゃ……」
真姫「うううっ……来てくれないなんて、いやよ、今年で最後なのよ」
花陽「すごい情熱……雪も溶け、靴下も破れる勢いだよっ」
凛「うんうん……大人になるって、かなしいことだにゃー」
真姫「だめよ、いい子にしてないと、だから今日も勉強しなくちゃね」
花陽「うん、じゃあそろそろ自習しよっか」
凛「うーん、どこの自習室もこの時期になったらすっごく混んでるにゃ、外部から誰か来てるんじゃ……」
花陽「私、あんまり人がいっぱいいるのは苦手で……ついつい、いっぱいだと家でやっちゃうの」
凛「凛は、周りに人がいた方が緊張感あって好きだけどなぁ」
真姫「私はどっちでもいいわ、環境なんてドンウォーリーよ」
凛「か、かっこいい」
花陽「あっ、あの席空いてるっ!今だよっ」
真姫「って、三人横に並ばないとだめじゃないの、あれ……ギチギチよ」
凛「じゃあ真姫ちゃんを凛とかよちんで挟んで座るにゃ」
真姫「なんか落ち着かないわね……それ」
凛「環境はドンウォーリよ(口マネ)」
真姫「ヤメテヨっ!」
凛(そっかぁ、センターまで30日ちょっとかぁ)
凛(なんとか得点率は、8割5分くらい、かなぁ……今で)
凛(9割まで到達するには……英語、国語。当然だね)
凛(といっても英語はセンターくらいならそれなりにとれるにゃ、やっぱり国語。どーも記述より選択式の方が苦手だにゃ……)
凛(はぁ……それにしても、もうそろそろ受験勉強もおしまいかぁ、長かったようで、短かったようで……)
凛(楽しいことだけじゃなく、試されることもたくさん)
凛(濃厚な一年間、彼氏もいないし、全然遊んでないけど、凛は『りあじゅう』だったはずだにゃ)
25日
希「じんぐるべ~~じんぐるべ~~」
凛「りんりんり~~んがべ~~~」
花陽「わぁっ!希ちゃん、サンタさんだぁ!」
真姫「その帽子と付け髭、ナニヨ」
希「ふっふっふ、今日は受験を頑張るみんなに、ウチがプレゼント持ってきたんよ」
凛「ええっ!やったぁ!」
花陽「わぁい!」
希「まず花陽ちゃんにはこれ!どうぞ!」ポンッ
花陽「わー……って、これなぁに?お箸?金ぴかできれい……」
希「タダのお箸とちゃうで、学問の神様、北野天満宮で買った合格祈願、幸運のお箸や」
凛「北野天満宮!そこ、海未ちゃんと行ったよ!」
花陽「学問の神様のお箸……なんだかご飯を食べてる間も成績が上がる気がしますっ!」
希「それは多分無いとおもうけど……とにかく、このお箸で合格をつまみ取るんやっ!がんばってね」
花陽「ありがとうございます!たくさん知識を食べて蓄えますっ」
希「真姫ちゃんにはこれ、幸運のコップ!あとリポビタンD!」
真姫「ありがとう、でもなんでリポビタンDなの?」
希「さぁ……セットでしか売ってなかったから……でもこの組み合わせは縁起がいいらしいんよ」
真姫「そうなの?でもきれいなコップね、キラキラしてて……」
希「すっごく丈夫なコップらしいからね、割れない不屈の心を!ってことみたいやけど……」
真姫「なんだかムリヤリじゃないのそれ…?でも素敵ね、大事に使うわ」
凛「そういえば真姫ちゃん、サンタさんには何もらったの?」
真姫「なにも貰ってないわよ」
凛「あれっ?サンタさん来なかったの……?」
真姫「いや、ちゃんと来たわよ、パパとママが見たっていってるもの」
凛「どうして何もプレゼント頼まなかったの?」
真姫「あのね……私ももう大学生になるのよ、いつまでもワガママ言ってられないわ」
凛「そっかぁ、今年は何もお願いしなかったんだ」
真姫「お願いはしたわよ」
凛「えっ」
真姫「今年でもう最後だし、私のことはいいから……パパとママに幸せを届けてあげて下さいって……もうっ、凛に言うのは恥ずかしいわよっ!」
凛「……」
花陽「……」
真姫「な、何黙ってるのよ!」
希「……泣けるなぁ……」
凛「涙腺崩壊だにゃ……」
花陽「真姫ちゃぁぁん、いい子だよぉぉ………」
真姫「ゔぇぇ、泣かないでよぉ」
希「はぁ、ウチの心もほかほかや、さて、最後に凛ちゃんにプレゼント!」
凛「わくわく、凛はどんな幸福グッズかなぁ!?」
希「はいっ!これっ!」ピラッ
凛「んん、なんかの紙……?わかった、幸運のおふだ、だねっ!」
希「ちゃうよ、第二回東大模試の成績表、その返却や」
凛「ひどいにゃーーーーーーっ!!夢もカケラもないにゃーーーーっ!!!」
希「ふふっ、ちゃんと見てみ、夢はあるで、成績表が凛ちゃんにそう告げるんよ」
凛「あっ……B判定でてる……」
真姫「ええっ!」
花陽「凛ちゃん、目標、達成だね!すごいよ!」
凛「あれぇ……そんなに出来てたんだ……英語とか全然ダメだと思ってたのに……」
希「数学と理科で十分補えてる……、おめでとう、凛ちゃんが掴んだ幸福や、よくがんばったね!」
凛「ううっ……」ウルウル
希「………ん、どうしたん?」
凛「嬉しいけど、すっごく嬉しいけど、なんか納得いかないよ!凛も幸福グッズほしいよーっ!」
希「あはははっ、ごめんごめん、ちゃんと凛ちゃんのもあるよ、はい、どうぞ」
凛「やったぁ!……どんぶり?」
希「幸福のどんぶりや!おまけにサッポロ一番(しお)つき!」
凛「サッポロ一番!やったぁ!」
希「そう、このどんぶりに入れたラーメンのように……合格をたいらげるんやっ!」
凛「おおおお!頑張るよっ!希ちゃん!」
真姫「もはやなんでもありね……」
希「じゃあね~、サンタさんは、北の国に帰るのだ、ばいば~い」
凛「ありがと~のんたんサンタさ~ん」
真姫「北の国というより、北野天満宮ね」
花陽「おおっ、ざぶとん一枚、です!」
凛「まきちゃ~ん、写真撮るから、どんぶり被ってよ~」
真姫「イヤヨ!」
凛「逃げるなぁー!」ドタドタ
真姫「ヤメテ!」ドタドタ
花陽「ふふふ……黄金のお箸……これでお米を……つまみつまみ……」
星空宅
凛「んん……お腹すいた……今日お母さん、遅くなるんだっけ……」
凛「そうだ、希ちゃんから貰ったどんぶりでラーメンを食べよっと」
凛「♪~~」グツグツ
凛「いい匂い……ネギも切るにゃ」
凛「さらに、こんなこともあろうかと、くんせいタマゴとメンマとナルトを用意しておいたってばよ」
凛「インスタントラーメンも、具をたくさん入れたら豪華だもんね、ふふふ」
凛「できたぁ、いただきまーす」
凛「ふーっふーっ、ちゅるるる」
凛「ああ、おいしー」
凛「……」
凛「B判定かぁ………」
凛「模試の過信は禁物……でも、素直に嬉しいなぁ」
凛「……これなら堂々と勝負できる、とうとう、ここまで来れたんだ……」
凛「……みんな、ありがとう、そして凛、よく頑張った!」
凛「よし、食べたらもうひと頑張り!センター対策の総仕上げに入らないと!」
凛「ラーメンもたべて、あつくなってきたにゃ!よーし、ラストスパートだよ!」
凛「限界知らない、おーるらいと!」
今回はここまで
1月2日
凛「あけましておめでとーっ」
真姫「おめでとう」
花陽「あわわ……ついに年が変わってしまいました」
海未「明けましておめでとうございます」
穂乃果「やっほー、あけおめだよっ」
真姫「おめでとう、穂乃果、海未」
凛「わー、おめでとーっ!……あれ、雪穂ちゃんは?」
穂乃果「雪穂はね、亜里沙ちゃんと初詣行くって言ってたよ」
海未「ふふふ……なんだか、凛たちを見ると落ち着きます」
穂乃果「んーっ……この懐かしい感じ、やっぱり大学も楽しいけど、地元もいいねっ」
凛「地元って、穂乃果ちゃん、そんなに大学遠くなかったよね」
穂乃果「いやいや、気持ちの問題だよ、海未ちゃんとことりちゃんがいない学校生活なんて初めてだし……異国のようだよっ」
海未「まぁ、私も新鮮ですけど……穂乃果、ところで、この前のレポート出したんですか?」
穂乃果「うん……まぁまぁかな」
海未「出したか聞いてるのに、まぁまぁってどういうことですか!」
穂乃果「ごめんなさーい!だって難しいんだよ、あれ!……あっ、凛ちゃんに書いてもらおうかなぁ」
凛「えっ?凛が?」
海未「穂乃果!高校生に頼るなど、なんと情けない!不埒です!破廉恥です!」
穂乃果「ううっ、ひどいよ、さすがに破廉恥じゃないもん……」
海未「だいたい、凛はあなたの何倍も忙しいんですよ!」
穂乃果「あはは……そうだったね、凛ちゃん、今日も授業あるの?」
凛「うん、まだ2日だけど、午後からあるよ……」
穂乃果「ひょええ……すごいなぁ、ファイトだよ!最終決戦、ファイナルファイトだよっ!」
海未「そうですね、真姫も花陽も、頑張ってください」
花陽「ありゅがとぅぉごじます……あぁぁ、緊張します、あと2週間もないなんて……」
真姫「大丈夫、練習は本番のように、本番は練習のようにやるだけよ」
凛「真姫ちゃんがまた名言を製造したにゃ、脳内メモしとこっと」
真姫「凛、そんなの覚えてる暇あったら英単語でも覚えてなさい」
穂乃果「ああっ、このやりとりも懐かしいよぉ!」
希「あけましておめでとー」
にこ「おめでと」
穂乃果「おめでとう!」
凛「にこちゃん、今日は二日酔いじゃないの?」
にこ「ふん、もうあれ以来飲んでないわよ……アイドルはねぇ、酒もタバコもギャンブルも恋愛もしないのっ!」
凛「すっごく禁欲的!まるで出家僧みたいだにゃ」
海未「現世への執着は強そうですけど……」
にこ「うっさいわね!私だって必死で生きてんのよ!」
希「そうや、穂乃果ちゃん、レポートやったん?年末は慌ててたけど……」
穂乃果「こんなおめでたい日に、なんで私を見てみんなレポートのことばっかり言うの……」
にこ「みんな心配なのよ、せっかく必死で合格したのに、留年したらもったいないわよ、ぷくく」
穂乃果「単位はちゃんと足りてるよ!そのぐらい計算してるもんね!……ほんとだよ!」
海未「3人とも、穂乃果みたいにならないように気をつけてくださいね」
凛「大学はじごくなのかな」
花陽「こわいです……」
真姫「さすがにサボらなきゃ大丈夫なんじゃないの……」
パンパン
凛「ごーかくできますよーに!」
真姫「凛、お願いごとは心の中で言うのよ」
凛「あっ、ついつい……じゃあ改めて……」
パンパン
凛(ごーかく、できますように……)
真姫(本番で全力が出せますように……)
花陽(試験中に胃が痛くなりませんように……)
希(3人とも、合格できますように……)
にこ(ライブのお客さんが増えますように……)
穂乃果(留年しませんように……)
海未(穂乃果が留年しませんように……)
センター試験 3日前
「えーっ、みなさん、センター試験も3日後に迫ってきました」
「まだまだやれることはあります。知識は直前まで詰め込めますよ」
「だけど、なにより、体調のことを気遣ってくださいね、これまでつけた力を惜しみなく出せるように!」
「それでは、悠然と。パニックになったら少し手を休め、落ち着いて、頑張ってきてください」
凛(ああっ……あと3日かぁ)
凛(やれることはやってきた……よね? あとは、どんな問題が来るか)
凛(うん、とにかく、風邪ひかないようにしよっと……)
花陽「はぅぅぅ……あと3日……」
凛「かよちん、へいき?なんだか元気なさそうだけど」
花陽「なんでもないよぉ……、ちょっと緊張してるだけだから……」
凛「……かよちんが頑張ってきたの、凛はずっと見てたよ」
花陽「ううっ……」
真姫「花陽、試験はあなたの敵じゃないわ、あなたの努力を、大学に伝えるための手紙……」
花陽「……」
真姫「花陽が知ってることを、普段通りに書けばいいの。大丈夫、あなたが知らないことは、他の誰も知らないわ、そんな気持ちでいいの」
花陽「……そうだね」
凛「かよちん、怖がらなくて。本番も、いつも通り……いつも通りの朝を迎えれば、きっと上手くいくよ」
花陽「ありがとう……2人とも、ちょっと、元気出てきたよ」
真姫「……私も今日は早く寝ようかしら」
凛「……本番、寝坊しないようにしないとね、それが一番怖いにゃ」
凛「直前に国語の見直しでも……」
凛「……」
凛「あれ?ここ……」
凛「ああっ……やっぱり、間違えてる」
凛「こんな基礎、今まで知らなかったなんて……危ない危ない、本番じゃなくてよかった……」
凛「……」
凛「うーん、大丈夫なのかなぁ、センター……こんなので9割……取れるかなぁ」
凛「かよちんが緊張するのも、ほんとは痛いほどわかるよ……」
凛「ううっ……上手く行きますように……神さま……」
センター試験 1日目
凛「おはよう、かよちーん!」
花陽「おはよう、凛ちゃん」
真姫「良かった、花陽も元気そうじゃない」
花陽「うん……くよくよしても、いつかやらないくちゃいけない、今が峠だなんだね」
真姫「じゃあ、行きましょう」
凛「よし……いざっ!……となると燃えてきたよ!冷たく燃えてるよ、メタンハイドレートのようにっ!」
キーンコーンカーンコーン
凛(まずは地理……覚えるべきことは覚えた、後はグラフにどれだけ食らいつけるか)
凛(それにしても、見たことのある問題が毎年ほとんどないのはすごいにゃ……全部新傾向に見えるよ)
凛(よしっ……でも、根拠が出るように作られてる……いけるはず)
凛(……)
キーンコーンカーンコーン
凛(次は国語っ!ある意味で最大の難所だよ)
凛(時間を常に気にして……機械的にいかないと)
凛(今年の評論……は、くぅぅ……例年通り、重たいにゃ)
凛(……)
凛(……なんとか、確信もって解答できた……でも20分超えちゃった)
凛(小説は少し急いでいこう……人物関係と時系列、あとは心情だけ拾ってテキパキと……)
凛(うーん……でもなんか2択で残っちゃう……)
凛(いいや、本文にぼんやりとしか書いてないんだから、解答もぼんやりとしか出ないはず)
凛(これはちょっと深読みし過ぎ、まちがい、だよね……)
凛(よし、次は古文!これは……見たことない出典だなぁ)
凛(時間も少ないし、細かいところは抜きにして、読める部分だけ読んでいこう)
凛(うんうん……)
凛(じっくり読みすぎた……仕方ない、問6は時間かかりそうだし、捨てちゃえ)
凛(最後、漢文!……うわぁ!漢詩だぁ!)
凛(いやいや、面くらってもしかたない、聞いてくることは、対句とか押韻とかだけのはず……)
キーンコーンカーンコーン
凛(あぁっ……ちょっと時間切れ……)
キーンコーンカーンコーン
凛(一日目の最後は英語、これはちゃんと対策したし、大丈夫のはず)
凛(手前からきっちり解いていこう)
凛(うーん、文法、やっぱりちょっと難しいの出るなぁ)
凛(いやいや、それより読解の方が配点が高くて重要だにゃ、こっちにウエイト置いて……)
凛(リスニング……)
凛(うん、たぶんこれ、でOK)
凛(イヤホンつけて、毎日練習しててよかった……)
凛「終わった終わった……おつかれさまー」
花陽「はぁぁ……国語、難しかったよぉ」
真姫「まだ明日もあるわ、振り返るのは全部終わったとき、よ」
凛「じゃあ、きょうは早めにばいばいだにゃ」
花陽「また明日ねー」
センター試験 2日目
キーンコーンカーンコーン
凛(今日は理系科目!まずは数学、片付けてやるにゃ)
凛(うぉぉぉぉぉぉっ!)ガリガリ
凛(こんなの、2次試験に比べたらどってことないよ!)
凛(……とはいうものの、計算ミスは気をつけるにゃ、思わぬ勘違いが悲劇を呼ぶよ)
凛(ⅡBもおんなじ、例年通りの問題)
凛(ひたすら正確に計算、それだけだにゃ)
凛(うおおおお)ガリガリ
キーンコーンカーンコーン
凛(物理も、生物も、難しくないもんね)
凛(っていうか、そもそも理系はほとんど満点近くとるのが前提になってるんだけど……)
凛(そうなったら細かいところでミスをしない、それが一番怖い……)
凛(うーん、精神力が……削られる、マークミスしないように……)
凛(……)
キーンコーンカーンコーン
凛「……終わった……終わったよ……」
花陽「終わったね……」
真姫「終わった……のね」
凛「もう二度とこんな試験受けたくないにゃ……」
花陽「私も……寿命が縮んだ気がする……」
真姫「本番はやっぱり……精神的にくるわね……」
星空宅
凛「自己採点……事故祭典……?どっちになるかなぁ、ドキドキだよ」
凛「解答速報見て……くぅぅぅ、胸が痛くなる……」
凛「まる、まる、まる、まる……ばつ、まるまる……」
凛「…………」
凛「合計、で………」
凛「でた……89%」
凛「よし……よし、9割はダメだったけど……これなら平均くらいはとれてる、足切りも多分大丈夫……」
凛「首の皮一枚つながった……」
凛「はぁぁぁ~……よかったぁ………」
学校
凛「おはよ!」
真姫「おはよう、凛」
凛「真姫ちゃん、かよちん……どうだった?」
真姫「私は目標点は取れたわ、けど……」
花陽「………」
凛「あっ……かよちん……」
花陽「……うんっ、まだ、まだ2次試験がある……」
凛「そうだよ、頑張って!」
花陽「……うう」
凛「かよちーん……」
花陽「ははは………凛ちゃん……私、だめだったよ」
凛「……」
凛「なんて言ったらいいのかわかんなくて」
真姫「……私だってわかんないわよ」
凛「かよちん、あんなに頑張ったのに……」
真姫「どうしようもないわよ、凛、今は自分の心配をしなさい」
凛「そうだね……」
2月
凛「センターも大事だけど、やっぱり東大は2次だね」
凛「比率は4:1。100点満点にしたら、2次試験だけで80点分を占めてるにゃ」
凛「ううー、なのに、まだセンター脳から抜け出せてない気が……」
凛「私立受験もあるし、なかなかハードだにゃ」
花陽「凛ちゃん、凛ちゃん」
凛「かよちん、どうしたの?」
花陽「ごめんね、ここがちょっと分からなくて……」
凛「ふーむ……、わかんないときは、表を書いてみるにゃ、こんな風に……」サラサラ
花陽「あっなるほど、ありがとう……やっぱり凛ちゃんは、すごいなぁ……私なんかより、ずっと賢くて……」
凛「ううん、ちがう、かよちんのほうが、ずっと……」
花陽「えっ……」
凛「知ってるよ、志望校……下げなかったんだよね」
花陽「……うん、そうだよ……もう、いよいよ逃げれないね」
凛「……」
花陽「……」
凛「……逃げない……違うよ!かよちんは、最初から、逃げてなんかないよ!」
花陽「……」
凛「かよちんは本当はすっごく強いんだよ!知ってるよ!凛がμ'sに入ったのも、塾に入ったのも、かよちんがいてくれたから!……ここまで来れたのも、ぜんぶ!ぜんぶ!」
花陽「……うん」
凛「頑張れ……頑張れかよちーん!」
花陽「うん、ありがとう、ありがとう凛ちゃん……」
凛「ふぁいと!ふぁいと!ふぁいと………」
花陽「やりますっ……花陽っ…やります!」
凛「ゔっ……ゔっ……がんばれ、がんばれ……かよちん」
2次試験 2週間前
希「いよいよやね……凛ちゃん」
凛「もう、心臓ばっくんばっくん、それなのに頭は冷えきって、大混乱だよ」
希「ははは……この時期、独特の雰囲気やね……それにしても、センター上手くいって良かったね」
凛「目標ギリギリだった感じだにゃ、ちょっぴり届かなかったけど、悪くもないかんじ」
希「真姫ちゃんもいい感じみたいやし……あっ……でも花陽ちゃんは」
凛「希ちゃん」
希「んっ?」
凛「かよちんは負けないよ、ぜったい」
希「……そうやね、3人とも、負けへん」
凛「凛たちは強いにゃ、3人合わせたら、宇宙最強だもんね」
希「うん、行ってき、全力で。」
2次試験 1週間前
凛「センターリサーチの結果は……合格可能性、50%。」
凛「凛と同じような人が、1人落ちて、1人受かる」
凛「もし、2回目があったら、その2人は逆になるかもしれない」
凛「だけど、試験はたった1回きり」
凛「頭の良さなんて、テストで正確に測れるわけない」
凛「採点者にとって好ましい文字を並べて書くだけ」
凛「60点の答案が、55点の答案より、本当に優れてるのか、そんなのわからない」
凛「でも、みんなそんなの承知の上でこの闘いに挑んでくる」
凛「最後は運で決められる、そんなのみんなわかってる」
凛「もし、1つ志望校を落とせば、80%まで、2つ落とせば99%まで、可能性は高くなるかもしれない」
凛「大学なんて、そんなに変わらないよね、きっと入った後にいくらでも逆転されるし、逆転できる」
凛「なのに、失敗しそうな、危ないところに挑戦したくなる」
凛「すっごく不合理……危険で危険で、ばからしいこだわり……」
凛「努力が報われないかもしれないのに、それでもあくまで、第一志望」
凛「あの日にこちゃんに言われたよね、嫌なら、怖けりゃ、やめたきゃ、やめればいい」
凛「それでもやめられない、怖いし、やめたいけど、やめられない」
凛「最後は理屈を超えたわがまま。将来の夢、未来の希望、全部見えない。今見えるのは、目の前の壁だけ」
凛「だったらやるしかない」
凛「体当たりするしかない」
凛「50%で破れる壁」
凛「50%で破れない壁に」
今回はここまで。次で終わります
もうちょっとかかります、すみません
2次試験 前日
凛「もしもし、真姫ちゃん」
真姫「どうしたの?凛」
凛「明日が試験、だから真姫ちゃんの声が聴きたくて!」
真姫「……ふぅん、別にいいけど……」
凛「真姫ちゃん、緊張してる?」
真姫「……思ったよりしてないわ、精一杯やってきたつもりだし。これでダメなら仕方ないわよ」
凛「ダメだったら……かぁ」
真姫「私は落ちたらもう一年。……凛は私学も受験したんでしょ」
凛「私立は受かってると思うけど、行かないかも」
真姫「どうして?」
凛「一回上を見ちゃったから……諦めきれなくて」
真姫「……落ちたら、もう一年?」
凛「……ただの意地だにゃ、意地」
真姫「意地…ね。そうね、最後はそこに行き着くかもね」
凛「だから凛も緊張してないよ」
真姫「そうなの?」
凛「出来ないことは今さら出来ないもんね、もう明日なんだし」
真姫「私と一緒ね」
凛「うん、真姫ちゃんといっしょ」
真姫「………」
凛「………」
真姫「………」
凛「真姫ちゃん」
真姫「なに?」
凛「えへへ」
真姫「何よ」
凛「真姫ちゃーん」
真姫「もう、何よ!」
凛「ありがとう」
真姫「……」
凛「3年間、ありがとう、真姫ちゃん」
真姫「……」
凛「えへへ……ずっと言いたかったんだ」
真姫「……ありがとう、凛」
凛「……」
真姫「……もう寝ましょ、明日、頑張ってね」
凛「うん!おやすみ!」
真姫「おやすみなさい」
ピッ
凛「……」
凛「……じゃあ、次は……」
ピリリリリリリリリリ
凛「わっ、……もしもし」
花陽「もしもし、凛ちゃん」
凛「かよちん! 今ね、凛もかよちんに電話しようと思ってたの」
花陽「そうなんだ……考えること、同じだね」
凛「最後にかよちんの声聴いて、そしたら寝るつもりだったんだよ」
花陽「一緒だね、あはは」
凛「真姫ちゃんにも電話したんだ」
花陽「あはは……それも一緒だぁ」
凛「あははは……」
花陽「……」
凛「明日、本番だね」
花陽「そうだね」
凛「……これでかよちんとも、一旦、お別れかな」
花陽「そうだね……幼稚園から、いや、その前からだったね」
凛「ちっちゃいかよちんも覚えてるよ」
花陽「私だってちっちゃい凛ちゃん覚えてるよ」
凛「小学校のかよちんも、中学校のかよちんも」
花陽「私も、覚えてる」
凛「それでね、かよちんが勉強教えてくれなかったら、凛は音ノ木坂、受かってなかったんだ」
花陽「そうだったかなぁ、凛ちゃん、教えたらすぐ出来るようになるし、私は別に……」
凛「それにね! かよちんと一緒に、アイドル出来てよかったよ」
花陽「……私も、凛ちゃんと一緒で、良かった」
凛「……よーく覚えてるよ」
花陽「……私も、覚えてる。絶対忘れないよ」
凛「かよちんのいない生活なんて、考えたことも無かった」
花陽「……私も」
凛「……」
花陽「……」
凛「……明日、本番、頑張るにゃー!」
花陽「う、うん!頑張ろー!」
凛「それじゃ、おやすみ、かよちん!」
花陽「うん!おやすみ!」
ピッ
凛「ふぅぅ……」
凛「なんだか、言葉が出て来ないにゃ」
凛「……」
凛「それじゃあ、最後に」
凛「希ちゃんから貰った、お香を焚こう」
凛「絵里ちゃんと、ことりちゃんからのお手紙を、もう一回読もう」
凛「穂乃果ちゃんの家のおまんじゅうを食べよう」
凛「海未ちゃんと行った旅行で買ったこの仏像……は、どう使おう」
凛「ううっ、にこちゃんのものは、あの海に行った日に、こっそり貰ったシジミくらいしかない……」
凛「……とりあえず、この仏像にお祈りでもしようかな……」
凛「ええっと……」
凛「不動さまー」
凛「どうにか」
凛「どうにか、おねがいしまーす」
凛「迷いを打ち砕きたまえー」
凛「障りを除きたまえー」
凛「願いを成就せしめたまえー」
凛「ええっと……そして『YAZAWAのシジミ』よー」
凛「50%の確率をくぐり抜け、この世に存在するシジミよー」
凛「凛も、この50%の賭けに勝たせたまえー」
凛「どうにか」
凛「どうにか、おねがいしまーす」
凛「……」
凛「あはは……結局最後は神頼み、シジミ頼みかぁ……ってなにやってんだろ」
凛「はぁ……緊張はしてないんだけど、気持ちの整理がまだつかない感じが……」
凛「………」
凛「……この積み上げられた塾のテキスト」
凛「こんなにやってきたんだ……凄い量」
凛「うんっ……きっと大丈夫」
凛「……歯磨いて、寝よっと」
凛「明日はがんばるぞ……おーっ……」
当日
凛「んんーっ……」
凛「爽やかな朝だぁ」
凛「頭すっきり、いい感じ」
凛「鼻水も出てないし、体調は万全だよ」
凛「……これでようやく土俵に乗れた、あとは真っ向勝負!」
凛「……ふわぁ……」
凛「コーヒーでも飲もっかな…」
トクトクトク
凛「えーっと、牛乳、牛乳……」
凛「お砂糖も……よし、あったあった」
凛「入れてっと……ふぅ」
凛「……いい苦さ」
凛「………」
凛「家は……7時くらいに出よっと」
凛「………」
凛「行ってきまーす」
「頑張ってね、凛」
凛「お母さん、もちろん!全力だよ!」
凛「家から会場が近くて嬉しいなぁ」
凛「もう結構向かってるのかな……たぶんこの人の流れだね」
凛「この人達とたたかうのかぁ」
凛「なんだかみんな賢そう……」
凛「いやいや!気持ちで負けないよ、気持ちだけは負けないもんね!」
受験会場
凛(えーっと……席は、ここかな)
凛(よいっしょ……)
凛(……空気がぴりぴりしてる……)
凛(ああっ……ここにきて、緊張してるじゃないか)
凛(………落ち着け)
凛(すぅーっ……はぁーっ……)
凛(…………)
凛(うん……落ち着いて)
凛(まずは国語から……そして数学、明日は理科、英語……)
凛(とにかく、1点でも多く拾おうっ!正確なことを、丁寧に!)
凛(うん……難しさ、時間、ぜんぶ予想は出来てるんだ!)
凛(やるんだ……今、やってやる……)
凛(結果は全部……これから!やれることをやり尽してやるっ!!)
キーンコーンカーンコーン
凛(いくぞっ……!)
凛(…………………)
凛(…………………)
……………………………………………………
塾に行き始めたのが、2年生の夏休み、8月でした
きっかけは友達に誘われたから。勉強は、苦手でした
今でも、たぶん苦手です。頭の回転も、人と比べて速いとは思いません
でも少しずつ、少しずつ、出来ることを増やしていきました
どんな些細なことでも、一つずつ、知らないことを知ろうとしてきました
そして、一つのことを知ると、そこから、もう一つ知りたいことが出てきます
いくら知ってもキリがありません
自分のダメなところは、いつまで経っても埋まってくれません
賢くなっていくたびに、自分のダメなところがどんどん見えてきます
そうやってグルグル回ってるうちに、気がつけば、1年と5ヶ月、勉強、勉強の毎日でした
逃げちゃったり、泣いちゃったりもしました
ときどき、やめちゃいたくもなりました
でも、やめられませんでした
最後まで、やめたくありませんでした
一度、目指してしまったのが、運の尽きでした
ここで逃げたら一生、逃げ続けてしまう気がしました
自分で作った壁でした
自分が壊す義務がありました
そんな長い時間と比べれば、その試験……その2日間は、あっという間に終わりました
すべてが終わった後は、ゆっくり、結果を待ちました
本当に、どうなるか分かりませんでした
国語、数学、理科、英語……全部が、全力を少し下回る、そんな手応えでした
後期は受けるつもりがなかったので、塾のテキストを再び段ボールにつめ直しました
そうやって、すべてから離れないと、気が気でありませんでした
とっくに終わった、今更どうしようも無いはずの試験の結果を、このとき、ずっと祈っていました
…………………………………………………………………………
希「もしもし、凛ちゃん」
凛「もしもし!」
希「今日、発表やね」
凛「うん……いよいよだね。どっちでも、すぐに連絡するね」
希「焦らなくてもええよ……また、落ち着いてからでいいから」
凛「ううん、大丈夫、覚悟はできてるから」
希「そう……」
凛「もう、泣かないもんね。どうであろうと、ちゃんと真っ向から受け止めるよ」
希「そっか」
凛「……」
希「……凛ちゃん、強くなったなぁ」
凛「……ありがとう」
希「それじゃ、待ってるで」
凛「うん」
ピッ
凛「………さて」
凛「合格発表は……正午ぐらいから、インターネットで………」
凛「あああ……心臓が爆発しそうだよ………」
凛「深呼吸……ふーっ、ふーっ」
凛「まだかな、まだかな……」
凛「あっ!出た……」
凛「………」
凛「ここに書いてあるのかぁ……」
凛「ううっ……怖い……」
凛「でも見なきゃ……」
カチッ
凛「番号…………番号……」
凛「………………」
凛「………」
凛「……………あっ」
凛「……………」
凛「………」
凛「………うっ…………ゔゔっ……」
凛「ぁ……」
凛「ぁぁ………」
「凛!………どうだったの」
凛「お母さぁん………」
「…………」
凛「うううっ……うわぁぁぁん……」
「……おめでとう、凛」
凛「うわぁぁぁぁあん………」
…………………………………………………………
この日、この瞬間は、今も鮮明に思い出せます
喜びよりも、嬉しさよりも、まずは疲れがどっと吹き上がって、ふと、眠ってしまいました
暫くして目が覚めて、ようやく終わりを受け止めました
すっきりしたところで、両親のところに行きました
2人とも、凛のことを喜んでくれました
お父さんとお母さんにありがとう、とお礼を言うと、不意にまた涙が溢れてきました
なんだか恥ずかしくなって、自分の部屋に戻りました
携帯を取り出し、友達のみんなに連絡しました
たった3文字のメールでした
「合格!」
こうして、熱くて、怖くて、楽しかった、ジェットコースターみたいな高校生活は終わりました
振り返ってみると、のんびり過ごす暇もありませんでした。入学、部活、受験、おしまい。
だから大学に入ったら、1年くらいはぐったり、休憩しようかな、と思っていました
しかし、そうもいきませんでした。まだまだ勉強は続きました
元々、ギリギリで入学した以上、周りのみんなについていくため、人一倍頑張らなきゃいけませんでした
『まきりんぱな』の3人でもう一回集まって、みんなの前で歌ったりもしました
なんだか、高校の頃と同じくらい、いや、それ以上大変だったような……。一回、急発進した人生は止まってくれないみたいです
だけど、忙しさに身を任せて、奮闘し続ける生活も悪くありませんでした
今は、そんな競争からは身を引いて、多少気楽な世界に生きています
けれども、どんな環境にいたって、新しいことはどんどん学ばなきゃいけません
だからときどき、こんなふうに活気に満ちたあのころ思い出して、自分を激励しています
……そんなわけで、今日もいろいろしながら、生きています
……………………………………………………
キーコーンカーンコーン
「あ、先生が来た……」
「みんなこんにちはー」
「こんにちはーっ!」
「えーっと、それじゃ、前回の続き、205の2番からいきましょー」
カッカッカッ…………
タッタッタッタ
凛「はぁ………はぁ……はぁ……」
ガラッ
凛「ごめーんっ!」
真姫「もう、遅いわよ」
花陽「凛ちゃん、まだ何も注文してないから大丈夫だよ」
凛「わーい、おビール、冷えたおビールが欲しいよぉ」
真姫「はいはい……まったく、何年経っても落ち着きがないわね」
花陽「今日は3人集まれて良かったぁ」
凛「うんっ、真姫ちゃん、かよちん、久しぶりだね!」
真姫「5ヶ月前に会ったばっかりじゃないの」
凛「それを久しぶりって言うんだよ!」
真姫「まぁそうかも知れないけど……忙しくて時間の感覚が狂ってきちゃうの」
凛「そっかぁ、やっぱり研修は大変?」
真姫「そうよ、大学の同期の子たちも、いっぱい辞めていっちゃったわ」
花陽「ひぇぇ、6年も勉強して、それでもお医者さんってなれないんだ……」
凛「真姫ちゃんは頑張ってるんだ、すごいなぁ」
真姫「ふふん、私はまだまだ諦めないわよ」
凛「お医者さんかぁ、かっこいいなぁ……」
真姫「もう、そんないいものじゃないわよ」
凛「ううん、目指してたものになれるのが、かっこいいなぁ、って……」
真姫「……」
凛「凛も研究者になりたくて、頑張ったんだけど……周りの人の頭についていけなくて……結局、教職に切り替えちゃった」
花陽「私も……大学入ったら、いろんな凄い人がいて、ちょっと自信無くしちゃったかも……」
真姫「……いいじゃない、凛が先生なんて、素敵だと思うわ」
凛「そうかなぁ……」
花陽「そうだね、凛ちゃんは教えるの上手だって、雪穂ちゃんもずっと褒めてたよ」
凛「えへへ、照れるなぁ」
花陽「ところで、音ノ木坂って今どんな感じになってるの?」
凛「すっかり進学校になっちゃったね、凛の中学生の頃の学力じゃ絶対入れないよー」
真姫「音ノ木坂が進学校になっていったのは多分、凛が原因だと思うんだけど……」
花陽「あはは……学校に垂れ幕も飾られてたし、アイドル研究部の後輩も何人か凛ちゃんに続いちゃったもんね」
凛「うーん、そうなのかなぁ? 元々、音ノ木坂は名門なんだし……それが元に戻っただけだよ」
真姫「なかなか、かっこいい台詞じゃない」
凛「……かっこいいかなぁ……ふふ」
花陽「凛ちゃん、数学の先生で、アイドル研究部の顧問もやってるんだよね」
凛「そうだよ、あそこが凛の原点だもんね!すっごく頼み込んだんだよっ」
真姫「いまや音ノ木坂もすっかり強豪校になっちゃって……顧問もなくて、屋上で好き勝手やってたのは遠い過去の話ね」
花陽「『あの』にこちゃんが作った部ってこともあって、なかなか世間でも伝説になってるみたいで……」
真姫「『あの』……ね」
凛「ふっふっふ、そんなこんなで、活気のある高校で働くと、こっちも元気いっぱい貰えるよ」
真姫「やっぱり楽しいんじゃない、良いじゃないの」
凛「うん……先生になって、本当に良かったよ」
凛「かよちんは最近は何してるの?」
花陽「えーっと……昨日はずっとサンプルのデータをとってて……ちょっと寝不足かな」
凛「……稲の?」
花陽「うん、水稲の……品種改良のデータ」
真姫「まさか本気でお米の道に進むとは……思ってなかったわ」
花陽「もうっ、そのために農学部に入って……私だって色々考えたんだよっ」
真姫「へぇ……聞かせてくれる?」
花陽「えーっと……どうやったらみんなを笑顔に出来るかなぁ……って考えてたの」
凛「笑顔を届ける……アイドルのお仕事だよね」
花陽「うん、そうだよ……でも、アイドルとして届けられる笑顔なんて、にこちゃんと違って、私なんかじゃ限界があるし……だけど、もっともっといっぱい……皆の役に立ちたくて」
凛「ふむふむ」
花陽「それでね、生きてるうちで一番不幸なことは……やっぱり、食べるものが無いことだと思ったんだ。お腹が減って、なにも出来なくなって死んじゃうなんて……そんなのあんまりだよ」
真姫「……なるほど、ね」
花陽「だからね、世界中の人がお腹いっぱいになれたら、今よりも笑顔に、平和になるんじゃないかな……って」
凛「……おおっ、すごい、かよちん!ミラクルだよ!緑の革命だよ!」
花陽「あわわわ、私ひとりの力じゃ無理だよぉ、だからみんなで頑張ってるの……」
真姫「すごい夢じゃない、私なんかよりずっと……」
花陽「そ、そんなことないよぉ、まだまだなにも出来てないし……」
真姫「まだまだこれから、よ。応援してるわ」
凛「凛もだよ!『ミラクルかよちんライス』、期待してるよ!」
花陽「うう、ありがとうふたりとも……」
凛「ごくごく……」
タンッ
凛「んんっ……」
凛「ふわぁぁ~~……まきちゃぁあぁん……」
真姫「な、なによ」
凛「へへへ……まきちゃん、おいしそうだにゃ……」
真姫「ちょっと、離れてよっ、もう!」
花陽「あわわ、凛ちゃん、飲み過ぎじゃないの……?」
凛「凛はお酒強いし、明日お休みだから大丈夫だにゃ~………」
真姫「あっ……なんだか懐かしい語尾ね」
花陽「ほんとだ、ふふふ……久しぶりに聞いたね」
凛「ふにゃ……全然酔ってないにゃー……」
真姫「もうっ……どう見てもべろんべろんじゃないの……どうやって帰るのよ」
凛「酔い止め酔い止め……シジミ……にこちゃんのシジミが欲しいにゃ……」
花陽「にこちゃんのシジミ……?真姫ちゃん、どういうことかわかる?」
真姫「イミワカンナイわ。……ただのたわごとだから、気にしちゃダメよ」
凛「シジミ……シジミ……」
凛「すぅ……すぅ……」
真姫「寝ちゃった……」
花陽「ははは……そういえば凛ちゃん、東大卒なんだよね」
真姫「誰も信じなさそうね……この間抜けた寝顔を見たら」
花陽「全然自慢もしないし、すっかり忘れちゃってた」
真姫「……そうね、でも、そこが凛の良いところじゃないかしら」
花陽「……そうだね」
真姫「で、どうするの、このへべれけ」
花陽「私は飲んでないから、凛ちゃんは車で送って帰るよ」
真姫「そう、ありがとう花陽」
花陽「お礼は凛ちゃんに言わせないとね」
真姫「ふふっ……。じゃあね、また時間が出来たら会いましょ」
花陽「うん、ばいばーい、今日はありがとう」
凛「むにゃむにゃ……」
花陽「凛ちゃーん……起きて、帰るよ……」
凛「うーん……こす……」
花陽「こす…?」
凛「たす……ろく、よん……だいにゅーして……ろくぶんのいち……」
花陽「……授業してる夢でも見てるのかな」
……………………………………………………………………………………
凛「これで方程式は出たから……あとは図示しておしまい」
凛「……というわけで、問3の解答解説は以上」
凛「では、補修を終わりまーす、お疲れさま……」
生徒「先生、すっごく分かりやすかったよ!……また補修受けに来ようかな」
凛「そう?良かったぁ。でも赤点はこれっきりにしてね……」
生徒「はーい、さようならー」
凛「さようならー」
凛「……若い子たちはみんな吸収力がすごいや」
凛「やっぱり、ちゃんと聞いてくれる子に授業するのは楽しいな……」
凛「さーて……凛も帰ろっと……」
凛「……あれ?あの子……帰らないのかな」
凛「……」
生徒「……」
凛「………どうしたの?座り込んで……」
生徒「あっ……先生、ちょっと……聞きたいことがあって」
凛「ん、今日の授業のことかな?よーし、なんでもどうぞ」
生徒「いえ……数学の質問なんですけど、数学の質問じゃないんです」
凛「……?」
生徒「なんで数学を勉強しなくちゃいけないんですか?」
凛「えっ」
生徒「教えてください、どうしてなんですか?」
凛「……あはは……なかなか、答え辛い質問だね」
生徒「数学、苦手なんです、何の役に立つのかも全然分かんないし……因数分解とか、三角関数とか、複素数平面とか……」
凛「うーん、数学が無くなっちゃったら、先生のお仕事が無くなって困るかな」
生徒「……」
凛「それに、数学が無かったら、パソコンも携帯電話も作れなかったし、不便じゃないかな」
生徒「……違うんです、そんなのは、頭のいい人がやればいいんです……私はバカなのに、どうしてこんなことしなくちゃいけないんですか……」
凛「……えっと、教える側の立場として言っちゃマズいかもしれないけど……」
生徒「なんですか」
凛「先生はね、数学がすっごく嫌いなら、数学なんかやめちゃえばいいと思うな」
生徒「えっ」
凛「うん、嫌いなものは、いくらやっても嫌いになっていくだけ……だからね、一旦離れてあげて」
生徒「……」
凛「それよりも、大切な高校生活の時間……英語でも、国語でも、いや、部活でも、恋愛でも、友達と過ごすことでも……何でも良いから、なにか、別の大好きなことに使って欲しいな」
生徒「……」
凛「そして、しばらくしたら、数学のことも思い出してあげて欲しいな。『こいつ、ちょっと遊んでやるか』って気持ちで……それでも嫌なら、また離れてくれて良いと思う。それから二度と人生で触れなくても。」
生徒「………いんですか、そんなので」
凛「うん、嫌いな教科なんてあって当たり前!いま出来なくても、気にしない、気にしない!」
生徒「だったら……ますます分かりません、なんで嫌いな人もやらなくちゃいけないのか……」
凛「うーん、それじゃあ、発想を変えてみて。『なんで生徒が、嫌いな教科をやらされるか』じゃなくて……
凛「『なんで学校は生徒に嫌いな教科もやらせるか』……そこにヒントがあると思うな」
生徒「……全然わかりません」
凛「生徒にどんな才能が眠っているか、結局、教師は見抜けないからだよ」
凛「だから、いろんな種類の教科を与えて、気に入ったもの、気に入らないものを、生徒に選んで貰わなくちゃいけない」
生徒「……」
凛「数学を嫌っても、その代わりに何か面白い、興味のあることを一つでも見つけそれを頑張って欲しいな……」
生徒「じゃあ結局、私が数学をやる必要はないんですか」
凛「必要は……突き詰めてしまえば、無いかな?……でもやらされてるからには、何の役に立つのか、それは自分で考えて欲しいな」
生徒「……先生は、東大出てるんですよね」
凛「そうだね……一応」
生徒「学生の頃、どんな人だったんですか……勉強のできない人間の気持ちは、先生には分かるんでしょうか」
凛「先生はね、バカだったよ、超が付くバカ。クラスでビリ近く。部活ばっかりやって、勉強なんか手もつけない!」
生徒「……本当ですか?」
凛「だって、勉強なんて、嫌いだったからね。……というより、よく知らないし、怖かったんだ」
生徒「それなのに現役で……よっぽど、地頭が良かったんですね」
凛「うーん……全然効率のいい勉強できなかったけどね……1日14時間やって、秋には一回ノイローゼで倒れちゃったし」
生徒「えっ……」
凛「……思い出したら、泣きそうになっちゃった……ごめんごめん」
生徒「先生もそんなにいっぱい……」
凛「うん、やるからには一生懸命……きっと、極度の負けず嫌いだったんだね、あはは」
生徒「なんだか、安心しました……そんなにも、努力できるなんて……すごい……」
凛「先生だって、みんなと同じ人間だよ。普段考えてることも、9割以上は同じことじゃないかな……」
生徒「そんなものでしょうか……」
凛「ところで……数学、出来るようになりたいのかな」
生徒「はい……正直いって、なりたいです。でも、なかなかモチベーションが湧きません……やっぱり、必要性が、わからないので……」
凛「必要性……っていうと、ちょっと窮屈だなぁ……」
凛「よし……さっきの話の続き。先生とあなたは同じような人間、それ踏まえて、次の質問、いいかな?」
生徒「……はい、なんでしょうか」
凛「好きな教科はあるかな?」
生徒「うーん……文系なんで、英語、ですかね」
凛「うんうん……じゃあ、英語の何が好きか、何が面白いか……説明できるかな?」
生徒「えーっと……やっぱり、外国の言葉がわかるってことが、一番楽しいかもしれないです」
凛「そっかぁ……じゃあ次、数学の好きな友達はいるかな?」
生徒「……はい、居ますよ」
凛「……友達だよね?」
生徒「……はい、大切な友達です」
凛「ありがとう。質問はこれでおしまい。……そうだよ、英語が好きな人、数学が好きな人、どっちも同じ人間。仲良く出来る、友達。」
生徒「どういうことですか」
凛「心を許せる、気持ちを分かってあげられるから友達なんだよ。
その子になんで数学が好きなのか、聞いてごらん。そして、その面白さを、理解してあげようとしてごらん
心の通じ合える友達が好きなものを、好きになれないはずが無い!……そう思って欲しいな
……そうしたら、どんな教科も、必要性とかじゃなくて、もっと身近なものに……そうやって、好きになっていけると思うよ」
生徒「………」
凛「数学だけじゃないよ、勉強するってこと……いや、学校の勉強に限らない。何かを学ぶ、新しいことを知るってことは結局……自分に壁を作らず、他人の気持ちを理解してあげることだと思うんだ」
生徒「………」
凛「長くなっちゃったね……でもこれが一番言いたいこと」
凛「数学をやる理由は、単純に数学自体が役に立つし、楽しいから」
凛「でも、もっと広く……『何かを学ぶ』ことの理由は……自分の知らないことを知ろうとする、『思いやり』を育てて欲しいから……だと思うな」
凛「……ごめん。質問には、答えられたかな」
生徒「……正直、まだよくわかりません」
凛「うん、そうだよね……先生も、実は良く分かってないのかも」
生徒「……いいえ、大丈夫です。答えは自分で探そうと思います、先生、ありがとうございました」
凛「……うん、ここからがスタートだよ……頑張ってね!」
生徒「……はいっ!」
凛「はぁぁー…………」
凛「軽く流せば良かったのかもしれないけど……真剣に答えると難しいなぁ」
凛「でも、精一杯、伝えることは伝えれたかな……」
凛「なにより、凛は教師なんだから……勉強のテクニックよりも……楽しさを伝えてあげなくちゃ……」
凛「生徒は教師を選べないのに……生徒の未来を大きく決めてしまう、ああっ、考えれば考えるほど、重大な仕事だ」
凛「ようし……授業内容、もう一回、考え直してみよう……」
凛「あの日、塾で教えてもらったみたいな、面白い授業、できるようになったらいいなぁ」
………………………………………………………………………………………
凛「むにゃむにゃ……」
花陽「凛ちゃーん」
凛「んん……?」
花陽「もう帰るよー……」
凛「ふわぁぁぁ……」
花陽「あっ、起きた」
凛「あれっ……かよちん?……今、凛は、学校で生徒と話してて……」
花陽「あはは、仕事してる夢見てたんだね」
凛「夢……だったのか、なぁ?……そういえばあの生徒の顔……なんだか誰かに似てたような……」
花陽「凛ちゃん、なんだか幸せそうな顔してたよ」
凛「……そうかにゃ?」
花陽「さぁ、お会計済ませたから、私たちも帰るよ」
凛「あっ……そうだ……かよちん、かよちーん……まきちゃんは?」
花陽「もうっ、凛ちゃんが寝てるうちに帰っちゃったよ」
凛「しょんなぁ……うわぁぁん、まきちゃんに嫌われちゃったにゃ……」
花陽「そんなことないよ……凛ちゃん、肩貸さなくても歩ける?」
凛「う、うん、大丈夫だにゃ……」
花陽「じゃあ、送るから……私の車に乗って」
凛「あ、ありがとう……」
ブゥゥゥゥゥゥン……
花陽「……凛ちゃん」
凛「……にゃ」
花陽「凛ちゃん、起きてる?」
凛「うん、なんとか……」
花陽「もう……どうして酔い潰れるまで飲んじゃったの」
凛「なんだか、かよちんと真姫ちゃんにあえて、嬉しくて、気分が乗っちゃって……」
花陽「……あはは……凛ちゃんらしいや」
凛「むぅ……」
花陽「あのね、私、凛ちゃんと真姫ちゃんに会うとね、高校時代に戻った気がして……なんだか凄くあったかい気持ちになれるの」
凛「……凛もそうだよ、いっしょに練習して、塾に行って、受験してた毎日を思い出すにゃぁ……」
花陽「3人いっしょに合格できて、本当に、いっぱい泣いちゃって……」
凛「凛も同じだにゃー……」
花陽「………そして卒業……μ'sのみんなも、本当にお別れ……寂しかったよ」
凛「………凛もだにゃ」
花陽「みんな、元気かなぁ」
凛「きっと元気だよ」
花陽「……うん」
凛「そうだ、この前ね、希ちゃんに会ったんだ」
花陽「希ちゃん、可愛くなってるよね」
凛「可愛いというか……妖艶だにゃ……」
花陽「大人っぽいってこと?」
凛「うん……なんだか職場でも人気らしいし……羨ましいなぁ」
花陽「凛ちゃんも大人になったと思うな、私は」
凛「ぜんぜん、そんなことないにゃ……高校生みたいって、生徒たちからも言われるし……」
花陽「親しみやすいってことじゃないかな……みんなきっと、安心できるんだよ」
凛「ものは言いようだにゃ……」
花陽「あぁぁ……私も、凛ちゃんが先生だったら良かったなぁ」
凛「うーん……凛は嫌かなぁ……」
花陽「ええっ、なんで?」
凛「やっぱり、かよちんは同級生が一番いいにゃ……」
花陽「……もう」
凛「えへへ……」
花陽「希ちゃんと言えば……絵里ちゃんはどうしてるの?何か聞いた?」
凛「絵里ちゃん、今はモスクワ……だってさ」
花陽「モスクワっ!……想像もつかないね」
凛「日本語、ロシア語、英語……三ヶ国語ペラペラだもんね……お手上げだにゃ……」
花陽「海外でお仕事なんて、怖くて出来ないなぁ……」
凛「ことりちゃんも海外だよ。今はイタリアでデザイナー」
花陽「ひぇぇ……なんだか、改めて考えたら、凄いメンバーだったんだね」
凛「凛も何度か旅行には行ったけど、やっぱり日本が一番だにゃ……」
花陽「私もそうかな……」
凛「穂乃果ちゃん、海未ちゃんは、継ぐ仕事があるもんね」
花陽「真姫ちゃんもそうだね」
凛「うーん……みんな、いいお仕事してるにゃ……凛は、音ノ木坂で教師かぁ……」
花陽「私なんか、大学の研究室にこもってるだけだよ……」
凛「かよちんのお仕事も素敵だにゃ……」
花陽「凛ちゃんこそ、素敵だと思うな」
凛「なんだか、気がついたらこの職、って感じだったからにゃ……」
花陽「……思い出した、μ'sの歌にもあったよね」
凛「ふにゃ……?なに……」
花陽「『それぞれが好きなことで頑張れるなら……』」
凛「『新しい場所が、ゴール』……だね」
花陽「ふふっ……やっぱり凛ちゃんも覚えてるんだ」
凛「……そんなの、忘れるわけないにゃー……」
花陽「新しい場所……ちゃんと、見つけられたんだよね、私たち」
凛「まだまだゴールじゃないよ……生きてる限り、ずっと走り続けなきゃ」
花陽「凛ちゃん……お仕事、大変なの?」
凛「……学校にはいろんな子がいるにゃ、そんな子たちの人生に手をだしちゃう……先生って、こわいお仕事だにゃ………」
花陽「……そうだね。でも何度も言うけど、凛ちゃんなら、素敵な先生になれるよ」
凛「あはは……嬉しいな、……頑張るにゃ」
花陽「……それに、たまには、休憩してもいいんじゃないかな」
凛「……うん、今日はいい休憩になったにゃ」
花陽「うん、私も」
ブゥゥゥン…………
花陽「さ、着いたよ、凛ちゃんの家」
凛「にゃっ……もう?」
花陽「そうだよ、もう夜も遅くなっちゃってるよ」
凛「ふわぁぁ……ありがとう、かよちん、送ってくれて」
花陽「うん……あんまり飲みすぎちゃダメだよ」
凛「はい、気をつけるにゃ……」
花陽「歩ける?」
凛「だいじょーぶ……、うん」
花陽「それじゃあ、おやすみ……また、みんなで会おうね。……今度は9人で。連絡してね」
凛「うん、おやすみ……かよちん」
ブゥゥゥン………
凛「ふぅ………」
凛「……みんな、頑張ってるんだよね」
凛「精一杯、かぁ」
凛「凛は精一杯……生きて来れたかな?」
凛「……うん、大丈夫」
凛「きっと、何一つ間違ってない」
凛「やりたいこと、頑張りたいこと……自分のために、ずっとやってこれたんだ」
凛「……それに、ひとりぼっちじゃない……」
凛「ふぅー……、明日は土曜日……お昼間で寝ちゃおっかな……むふふ」
凛「また素敵な一日になりますように……」
凛「……」
凛「……おやすみなさい」
凛「………………」
………………………………………………
花陽「凛ちゃん、夏休み、塾の講習行かない?」
凛「え、塾!?」
真姫「一教科だけなら安いわよ、私も花陽も行くからどうかしら」
花陽「真姫ちゃん、元々2年になったらスクールアイドルも一段落つけて勉強頑張るつもりだったから……どうせなら私たちも一緒に」
凛「そんな……凛には無理だよ」
真姫「何言ってんのよ、この前私が数学教えたときも勉強に火が付いたって言ってたじゃない」
凛「ね、ねつ造だにゃ」
真姫「言ってたじゃない!言ったわよ!」
花陽「まあまあ……真姫ちゃんは凛ちゃんと一緒に行きたいんだよね、私もそうだよ」
凛「ふふん、初めからそう言えばいいのに、なら凛もいくことにするよ」
真姫「もう、素直じゃないわね。じゃあこれ登録用紙よ」
凛「あいあいさー、でもどの教科にしようかな」
花陽「うーん、興味のある教科にした方がいいんじゃないかなぁ」
真姫「そうね……直感でいいと思うわ」
凛「じゃあ………数学にするにゃ………」
終
読了ありがとうございました
所々ミスってすみませんでした
感想書いてってくれたら嬉しいです
それでは
このSSまとめへのコメント
完結待ち
完結待ち
もう学生ではなくなって何年も経つけど、親近感が湧く題材、しっかりとした文体でキャラが崩れたりもせず『こういう未来もありえそうだなあ』と思える素晴らしいSSでした。
壁にぶち当たって右往左往していたところだったのですが、今このお話に出会えて良かった思えます。ありがとう。
面白かった
フィクションなんだけど、妙に現実味があって引き込まれる
多分作者も色々あったんだろな、って思わせる
来年受験だから自分と重ねたわ!
今日も勉強頑張るわ
まだ高1だけど読んでて
頑張らなくてはってそんな気持ちになった。
俺も頑張る。
見ていてとても元気をもらえるような作品だった!!
俺も勉強頑張るぞーーーー(≧∇≦)
最後の数学、勉強に対する考えを元にこのSSが出来たと思うと本当に作者は凄いと思う
あなたは神ですか。
とても感動した。
まきりんぱなはお互い助け合いながら高め合っていくんだなーって改めて感じた。
ありがと!
泣いた。
乙
面白かったです(≧∇≦)
読んでいると自分の高校入試を思い出して涙が出てきました。
凛ちゃんが頑張ってるなら自分もまったく手をつけていない冬休みの課題しようと思いますw
素敵な話をありがとうございました!
とても感動しました!
高校入試、あと二ヶ月切ってますが頑張れそうです
センター試験5日前
やる気湧いてきた
とても感動しました!
高校入試、あと二ヶ月切ってますが頑張れそうです
もう10年前になるけど..自分が受験失敗した理由がわかったような気がする..w
これから頑張るよ..
良い作品をありがとう!
自分もわがままに燃え尽きようと思いました。
素晴らしい作品をありがとうございます!!
素晴らしい作品
来月からの2次試験に向けて頑張らなきゃって気持ちになりました!
こんな良作があったとは……
所々ミスはあったけど、しっかりと芯が通ってて面白かった
感動しました!これを読めば、勉強嫌い子でも興味持ってもらえると思います。自分も塾講なので、こんな授業が出来たらな…て思います。自分も秋頃すごい無力感に苛まれて、2週間ほどほぼ何も出来なかったので、ノイローゼのところは、自分の受験思い出しましたw
超良作すぎて泣けた
「素晴らしい」その一言に尽きます。
これは良作すぎる
俺もがんばらねーばねばねばぎぶあっぷ
勉強から逃げてssを読んでいてこの作品を見つけたけれど、勉強しようって思った
ありがとう
受験勉強する気になった
面白かったけど学生時代頑張らなかった自分を思い出して暗鬱な気分になったわ…
やはり勉強は、大切ですね
このSSは、とても良い作品です。
まきりんぱなの団結力は、伊達じゃない!?
なんか、なんていえばいいんだろう
基礎の基礎も出来ない僕だけど、これ読んで頑張りたいって思った
良作をありがとう
東大志望です。
これを読み返す度に大切なことを思い出せます。作者様には感謝しかないです。
僕も頑張ります。
5年前にもこのssを読んで7番にコメントを打っていました。
このssはもう5回程読んでいますが、毎回りんちゃんが合格したところで涙を流しています。
あの頃はまだ学生で、現在は社会人。
立場が変わり、読んだ際の受け取り方もあの頃と比べ、より深いものになっています。
感動するssをありがとうございます。
中3です。
「受験勉強なんてまだやんなくていいでしょ」とかさっきまで思ってました
でもこれ読んで勉強する気になりました、ありがとうございます
μ's復活おめでとうございます!!