洋榎「にんじんめっちゃ美味しいわ~」 (30)
愛宕家
雅枝「もう、洋榎はまたにんじんだけ残して!」
洋榎「だってにんじんなんて不味いだけやん」
雅枝「好き嫌いしてたら大きくなれへんで」
洋榎「うちはもう十分大きいからええわ」
雅枝「はぁ…絹恵はちゃんと食べとるのに」
洋榎「なら絹にやるわ。ほれ」ヒョイ
絹恵「ありがとうお姉ちゃん」
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雅枝「こら!嫌いやからって絹に押し付けたらアカン!」
洋榎「んなこと言っても嫌いなもんは嫌いやし」
雅枝「もう…次にんじん残しとるの見たらあんたの分のご飯作らへんで」
洋榎「ええ~っ!?そんな殺生な…」
雅枝「それが嫌やったらちゃんとにんじんも食べや」
洋榎「うう~…」
~~~
絹恵「お母さん怒っとったな、お姉ちゃん」
洋榎「んー…でも嫌いなもんを急に食べれるようになんてなれへんし」
絹恵「こうなったら神頼みでもしてみたら?」
洋榎「そうやなぁ…」
洋榎「神様、どうかうちをにんじんが食べれるようにしてください!」
洋榎「……なんて、簡単にいくわけないやろうな」
絹恵「まあ気休めにはなったんやない?それじゃあ私は自分の部屋に戻るわ」
洋榎「おう、お休み絹」
翌日
洋榎「あぁお腹減ったわ」
洋榎「今日の晩御飯は何やろな~」
洋榎「って何やねん!どの皿もにんじんだらけやないか!」
絹恵「へっ?」
洋榎「ちょっとおかん、これはうちへの嫌がらせかいな?」
雅枝「何いうてんのあんたは?今日の晩御飯はハンバーグやで」
洋榎「これのどこがハンバーグやねん!」
絹恵「お姉ちゃんこそ何言うてんの?…ハムハム」
絹恵「ん、今日のハンバーグは一段と美味しいわぁ」
洋榎「……は?」
洋榎「ひょっとしてこれ、ほんまにハンバーグなんか?」
雅枝「見れば分かるやろ。ええから早く食べ」
洋榎(どっからどう見てもにんじんにしか見えへんのやけど…)
洋榎(………ええい、ままよ!)
ぱくっ
洋榎「ハムハムハム……」
洋榎「………ハンバーグの味や!!」パアッ
洋榎(他の皿も試しに食べてみるか…)
ぱくっ
洋榎「ハムハムハム……」
洋榎「うお!こっちの皿のにんじんはパンの味がするで!」
洋榎「不思議やなぁ、見た目はにんじんやのに他の味がするなんて…」
絹恵「お姉ちゃんさっきから何おかしなこと言うてんの?」
雅枝「熱でもあるんとちゃう?」
洋榎「うん、これはあれやな」
洋榎「神様がええ子にしてたうちの願いを聞いてくれたんや!」
洋榎「でもこれやと食べてみるまで何なのか分からんなぁ」
洋榎「……いやまあ、でも」
洋榎「食べ物がみんなにんじんに見えるのに色んな味がするなんて」
洋榎「まるであてっこゲームみたいでおもろいやないか!」
さらに翌日
雅枝「洋榎、絹恵、晩御飯やで~」
絹恵「は~い」
洋榎「いただきま~す!」
洋榎「まずはこの皿やな」ヒョイ
洋榎「食べてみるまで何か分からんのはほんまおもろいわ」
ぱくっ
洋榎「ハムハムハム…」
洋榎「……ん?何やろこれ。こんな味の食べ物あったっけなぁ」
雅枝「おっ洋榎。あんたにんじん食べてるやないか。えらいで」
洋榎「へっ?これにんじんなん?」
雅枝「せやで」
洋榎「これは本物のにんじん……」
洋榎「うち、にんじんが食べれるようになったんや!」
洋榎「神様ほんまおおきに!!」
洋榎「さて、テレビでも見るかな~」パチッ
絹恵「世界のグルメ番組やって」
芸能人A「これムカデじゃないですかー」
芸能人B「サソリもいるー」
現地人「ちゃんとしたお料理なんですよ」
芸能人A「いやー、こうしてみると食べられない動物なんてないみたいですね」
現地人「そうです。偏見でものを言ってはいけないんですよ」
絹恵「うげ、そんなこと言ってもなぁ」
絹恵「あんなムカデやらサソリなんて食べれるわけないやん!」
絹恵「なぁお姉ちゃん」
洋榎「え、ああ、せやな」
洋榎(うちにはムカデもサソリもにんじんにしか見えへんのやけどな)
雅枝「洋榎~、ちょっと買い物いってきて」
洋榎「あいよ~」
てくてく
洋榎「……ん?」
近所のおばさん「~♪」
洋榎(何やあのおばちゃん、にんじんを散歩させとる……)
近所のおじさん「~♪」
洋榎(あっちのおっちゃんもにんじんに首輪つけとるし……)
洋榎(流行りの遊びなんかな?)
にゃああああっ!
洋榎「何やうるさいなぁ…」クルッ
洋榎「!?」
にんじんA「にゃーっ!」
にんじんB「ふにゃーっ!」
洋榎「塀の上でにんじんがケンカしあっとる……」
その夜
洋榎「さあ明日も学校やし寝るとするか」
洋榎「電気を消して、と…」
ぱちっ
洋榎「………」
洋榎「あのにんじんはどんな味なんかな……」
洋榎「もしかしたら、ハンバーグより美味しいのかも知れへんな」
洋榎「…………寝よ」
ZZZ…
翌朝
?「洋榎、いつまで寝てるんや」
?「さっさと起き!」
洋榎「う~ん、もう朝なんか…」
がばっ
洋榎「…あれ?おかんの声がしたと思ったのに」
洋榎「目の前にでっかいにんじんがあるわ」
ぐう~…
洋榎「ちょうどええわ。お腹も減ってたことやし」
洋榎「いっただきま~す!」
ぱくっ
洋榎「……うまいっ!!」
ぱくぱくぱくっ
洋榎「……ぷは~、残さず食べてすっかり満腹になったわ」
洋榎「こんなんで朝ごはん食べれるかなぁ」
がちゃっ
洋榎「おっはよ~さん!」
にんじん「…」
洋榎「あれ?にんじんが席に座っとる」
絹恵「あ、お姉ちゃんおはよう」
洋榎(…ん?にんじんの姿がぼやけて絹の姿に変わった)
洋榎「何や絹やったんかい」
絹恵「お姉ちゃんまだ寝ぼけとるん?」
絹恵「それよりお母さんはどうしたん?」
洋榎「へ?おかん?」
絹恵「さっきお姉ちゃんを起こしに行ったと思うんやけど」
洋榎「そうなん?うちの部屋には来てへんで」
絹恵「あれ?おかしいなぁ」
洋榎「こんな朝っぱらからどこ行ってもうてんおかんは」
洋榎「…ってはよ食べんと遅刻するわ!」
絹恵「せやな!いただきまーす」
洋榎「ああ、今日のにんじんもめっちゃ美味いなぁ」ムシャムシャ
カンッ
終わり。
元ネタは例の少女漫画です。
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