末原「…………………………」洋榎「もうそろそろ外に出たらどうや」(177)

   末原家にて

末原「……」

洋榎「そんな引き籠ってばかりやとダメになるで~、嫌やろそんなニートなんて」

末原「……」

洋榎「下では絹恵も来とるし久しぶりにゆっくり話でもしようや、な?」

末原「……」

洋榎「たこ焼きも買うてきてるで!恭子の好きな醤油味やで!ツウな食べ方知っとんなぁ恭子は」

末原「……」

洋榎「ああ……そうやな、しばらく下で待っとるから気が向いたら顔出してや、ほいじゃ」

 スタスタスタスタ……

末原「……」

   末原家一階にて

洋榎「ハァ……」

絹恵「どうやった末原先輩の様子は?」

洋榎「あかん、うんともすんよも言わへん、ずっと引き籠ったままや」

絹恵「あかんかぁ……もう何年も説得してるんやからそろそろ出てきてほしいんやけどなぁ」

洋榎「それだけココロの傷の深さが尋常やないってことやろな、全国の舞台であんなことさてれもうたらうちやって……」

絹恵「そうやんなぁ……あれ以来末原先輩が喋ったところうち見たことないもん」

洋榎「うちもやなぁ……」

末原母「いつも本当にごめんなさいね、うち恭子のためにわざわざ……」

洋榎「あ、ママさん、別に嫌々来てるわけやないから気にせんといてください」

絹恵「そうですよ、うちらやって先輩に早く出てきてもらいたくてこうして毎週きてるんですから
   先輩の笑顔が見たいんですよみんな」

洋榎「せやせや、来週は由子や漫やって来るさかい今度こそ恭子を更生させるで!」

末原母「ありがとうね二人とも……」

洋榎「もう時間やしそろそろお暇しますわ」

絹恵「これお土産のタコ焼きです、恭子に渡しといてやってください」

洋榎「ほなさいなら」

末原母「いつも本当にごめんなさいね、うち恭子のためにわざわざ……」

洋榎「あ、ママさん、別に嫌々来てるわけやないから気にせんといてください」

絹恵「そうですよ、うちらやって先輩に早く出てきてもらいたくてこうして毎週きてるんですから
   先輩の笑顔が見たいんですよみんな」

洋榎「せやせや、来週は由子や漫やって来るさかい今度こそ恭子を更生させるで!」

末原母「ありがとうね二人とも……」

洋榎「もう時間やしそろそろお暇しますわ」

絹恵「これお土産のタコ焼きです、先輩に渡しといてやってください」

洋榎「ほなさいなら」

洋榎「あかん!急がなテレビの収録に間に合わへんで!」

絹恵「ほんまやん!すっかり忘れとったで!!」

  ビューーーン!!

洋榎「絹恵待ちぃや!姐ちゃんを置いてっちゃいかんで!」

  スタタタタタッ

絹恵「お姉ちゃんが遅すぎるんや!運動ぐらい常日頃からしといたほうがええで!」

洋榎「アホか絹恵が早すぎんや!元サッカー部には勝てへんわ!」

   スタタタタタタタッ

恭子「……」

そんな二人を部屋の窓から眺める末原恭子

 シュッ……

見えなくなったところでカーテンを閉めた

末原「……」

末原「……」

末原「……」

末原「……」

末原「……」

末原「……」

末原「……」

末原「……」

末原「……」

  コンコン

末原「!!」

末原母『洋榎ちゃんが持ってきてくれたタコ焼き、ここに置いとくわよ」

末原「……」

末原「……」

 スタスタスタスタ……

末原「……」

末原「……」

末原「……」

末原「……」

末原「……」

末原「……」

ムクッ

末原「……」トコトコ

  ガチャン

末原「……」

  サササッ!

  ガチャン

末原「……」

末原「……」カサカサ

末原「……」パカッ

末原「……」

 ヒョイ

末原「モグモグ」

末原「ゴクン」

末原「……」

 ヒョイ

末原「モグモグ」

末原「ゴクン」

末原「……」

 ヒョイ

末原「モグモグ」

末原「ゴクン」

末原「……」

末原「……」

末原「……」ポイッ

空になったタコ焼きの容器を適当に投げ捨てる

末原「……」 トコトコ

部屋の隅にある自分専用の冷蔵庫から烏龍茶を取りだす

末原「ゴクゴク」 

末原「……」

末原「……」

末原「……」

末原「……?」

ふとタコ焼きの容器を見ると、その中に折りたたんだ紙が挟まっていた

末原「……」ペラッ

『早く先輩の笑顔が見たいです   絹恵』

末原「……」

末原「……」ペラッ

『来るで―――!今度は由子や漫も来るで―――!楽しみにして待っとるんやで~    ひろえ』

末原「……」

末原「……」

末原「う……う……」ボロボロ

末原「ご、ご、ご、ごめんなみんな……」ボロボロ

  テレビ局にて

洋榎「ほんまテレビの仕事は嫌やわ、ああしんど」

絹恵「なに言うてるんや、仕事があるだけ喜ばなあかんよ」

洋榎「せやけどなんでうちらがしょうもない芸人相手に麻雀を打たなあかんねん
   みんなそろいもそろって素人すぎて相手にならんわ」

絹恵「素人なのはしょうがないやん、みんなお姉ちゃんみたいなプロとは違うんやで」

洋榎「素人なのは別にええんよ、うちは下手なのに自分が上手いと思うてる輩が気にいらないねん、それに……」

絹恵「それに?」

洋榎「なにが美人姉妹プロ登場や!本当はうちはオマケで本当の目的は絹恵やと言うのを知ってるんやで!」

絹恵「何言うてるん!お姉ちゃんのほうが美人に決まっとるやないか!ほな帰るで!」

  帰りの車の中にて

絹恵「そうやお姉ちゃん」

洋榎「なんや?ガンバなら今日負けとったで」

絹恵「ちゃんよ!サッカー関係あらへん!末原先輩のことや!」

洋榎「ああ恭子……」

絹恵「お姉ちゃんはゆっくりでいいから社会復帰を目指そうと末原先輩に言うてたけど
   そろそろそんな悠長なことは言ってられん状況やと思うんや」

洋榎「なんでや?」

絹恵「この前先輩のお母さんの愚痴をたまたま聞いてしまったんよ」

洋榎「愚痴……?どんなんや」

絹恵「もう私も年だし恭子を養っていくのもきついって」

洋榎「……」

絹恵「先輩のお母さん毎日パートに行ってるみたいやで、旦那さんのお給料だけやと生活がままならんみたいやし」

洋榎「ほんまか……」

   ボロロロロロロロ……

絹恵「先輩のお母さん最近体調を壊してるらしいで」

洋榎「そうは見えへんかったけどなぁ……」

絹恵「お姉ちゃんの目はフシアナなん?歩くのもめっちゃきつそうやったやん!」

洋榎「そ、それは大変やな……」

絹恵「そやしそろそろ先輩を社会復帰させんとあかんと思うのよ」

洋榎「そうやけどなぁ……でも無理矢理に部屋から出したら恭子も可哀想やし……」

絹恵「お姉ちゃん、先輩今年でいくつになるんやっけ?」

洋榎「年か?そうやなたしか……」

絹恵「……」

洋榎「……うちと同い年やから25や」

絹恵「せやろ、普通だったら働いてなきゃおかしい年齢や」

洋榎「せやけど社会に放り投げたところで何になるんや、このご時世働き口やって見つけるのは難しいで」

絹恵「無理に難しい仕事はしないでええやん、工場のラインとか、せめてバイトぐらいしないと」

洋榎「そうやけどなぁ……」

絹恵「最後の切り札としてうちらのマネージャーってのもあるで」

洋榎「昔の恭子なら出来そうやけど今の恭子やとちと難しいんやないかな、それに……」

絹恵「それに?」

洋榎「もう恭子は麻雀のこと嫌ってるんとちゅうかな……」

絹恵「あ、そうかもしれんね……」

洋榎「……」

絹恵「……」

洋榎「ま、まぁ大丈夫や!今度の休日は由子も漫も来るし絶対恭子も出てくるで!」

絹恵「そうやとええんやけど……」

洋榎「大丈夫やって!ちょっとラジオをつけるで!」 ガガーピーピー

洋榎「なんやオリックス負けとるやないか!」ムキー!

絹恵(先輩大丈夫やろか……)

 そして翌週

由子「洋榎も絹ちゃんも久しぶりなのよー」

洋榎「先月会ったやん、それも恭子の家で」

漫「……」

絹恵「ん?漫ちゃんどうしたん?」

漫「いや本物のプロを眼の前にすると緊張して……」

洋榎「別にそんな堅くならんでもええで、そやいまペン持っとるし久しぶりにあれやろか?」

漫「嫌ですよ!うち今日は負けてないやないですか!」

絹恵「そういえば漫ちゃんとは大学卒業以来やね、いま何してるん?」

漫「子供たちに麻雀を教えてるで、小さい教室やけどな」

洋榎「漫が麻雀の先生?ホンマは逆に教えてもろうとるんやろ?」

漫「そんなわけないでしょう!さすがに子供相手には勝ちますって!」

由子「みんな相変わらずなのよー、そろそろ恭子の家に行くのよー」

洋榎「鍵がたしか植木鉢の下やったな」ガサガサ

漫「なにやってるんですか先輩……」

洋榎「あったで!ほな邪魔するで~」

 ガチャン

漫「ちょっと先輩……勝手に家の中に入っていいんですか」

洋榎「今日はママさんパートやから家にいないねん、そやしときどきこうやって家に入るんよ」

絹恵「たまに仕事が休みで家にいるときもあるんやけどね」

漫「それならええんやけど……」

洋榎「ほなさっそく説得に行くで~」

漫「大丈夫やろか……」

  スタスタスタスタ……

末原「……」

洋榎「約束通りまた来たで~」

絹恵「お邪魔します」

末原「……」

洋榎「それと今日は由子や漫も来とるで!」

由子「来たのよー」

漫「お久しぶりです先輩……あの……その……」

末原「……」

漫「ホンマに引き籠ってはったんですね」

洋榎「アホなに言うとるんや」

漫「いやだって冗談やと思ってまして……まさかあの末原先輩が引き籠るなんて……」

絹恵「こんな品の無い冗談言うわけないやろ……」

由子「アホな子なのよー」

洋榎「空気を読めない漫はバツとしてデコに喝や!」

漫「わっ!やめてくださいそれ油性やないですか!」

洋榎「絹!漫をしっかり押さえるんや!」

絹恵「うん!」ガシィ!

漫「そんな!あかん!あかんですよ!そんなぁ!」

洋榎「どやっ!」キュッキュッキュッ!

漫「あああ~~ああ~~……」

 ワイワイワイ ハハハ キャッキャッキャッ

末原「……」

漫「なにを書いたんです!うちのデコになに書いたんです!」

洋榎「なんでもええや~ん」

絹恵「お姉ちゃんすごいやん!よくそんな難しい感じ書けるなぁ」

洋榎「当たり前田のクラッカーや!うちはこう見えても漢字は得意なんやで」

由子「漢字”だけは”得意だったのよー」

洋榎「由子!余計なことは言わんでええねん!」

 ワイワイワイ ハハハ キャッキャッキャッ

末原「……」

洋榎「どうや恭子!昔みたいにみんなでワイワイやろうや!楽しいで~」

絹恵「そやからそこから出てきてください先輩」

末原「……」

洋榎「やっぱダメやなぁ……」

洋榎「天岩戸作戦はあかんかったか……」

漫「むしろ逆効果やないですか……」

洋榎「まぁええわ、恭子、少しは話でもしようや」

末原「……」

洋榎「単刀直入に言うで、恭子、そろそろそこから出ようや」

末原「……」

洋榎「もう25やないか、もういい加減自立せなあかん」

末原「……」

洋榎「あれは恭子が悪かったわけやない、周りが怪物すぎたんや
   うちやってあんな連中に勝てる自信無いで正直」

末原「……」

洋榎「だからいつまでも気にしてたらしょうがないで、引き籠ってるだけやとなんも解決せん」

漫「そうですよ先輩、困ったときはうちらも協力しますし」

洋榎「せやせや、漫の言う通りや、助けてほしいときはいつだってうちらを頼ればええねん
   うちらだって恭子に助けてもらったことは何度もあるんやし」

洋榎「特に漫は恭子に助けてもろうてばかりやったやろ、そやからいつでも好きなときに漫をこき使ってええんやで」

漫「そ、それは困りますよ先輩……」

絹恵「早く出ましょ先輩、ね?」

末原「……」

由子「ダメみたいなのよー……」

漫「相当重症やな……」

洋榎「ハァ……」

絹恵「先輩!返事ぐらいしたらどうですか!みんな先輩のことを思って今日も集まってきてるんですよ!」

 ドンドン!!

末原「……」

洋榎「絹やめぇや!恭子が怖がるやろ!」

絹恵「やけど!うち嫌やねんこんな先輩を見るのはもう!昔の先輩はもっとかっこよくて頼もしかったのに……」

洋榎「絹……」

絹恵「もう辛いんよ……」ボロボロ

末原「……」

洋榎「お、落ち着こうや!な?」ギュッ

絹恵「お姉ちゃん……」ボロボロ

洋榎「大丈夫や、恭子なら大丈夫やから」

絹恵「ううう……」ボロボロ

末原「……」

洋榎「わかったやろ恭子、みんな恭子のこと心配してるんやで、誰も責めてなんかおらん」

由子「少なくともうちらは誰も恭子のことを恨んでないのよー」

末原「……」

洋榎「本当は恭子やってそこから出たくてたまらないんやろ?」

末原「……」

洋榎「恭子……」

末原「……」

洋榎「……」

絹恵「やっぱダメなんかな……」

洋榎「大丈夫や……恭子ならきっと……」

漫「あ……」

  ガタンッ!

洋榎「なんや漫!急にびっくりするやないか!」

漫「すんませんした!カバン落としてしもうたんです!」

洋榎「気をつけやホンマ、しっかしけったいなカバンやなそれ」

絹恵「なに入ってるんそれ?」

漫「えっと、これです……」ガサゴソ

洋榎「あ、それは……」

漫「必要無かったですよね……」

洋榎「いや大丈夫やで、せっかくやしこれを使ってみよ!」

洋榎(これが最後の賭けや!これであかんかったら恭子は……)

 部屋の中

末原「……」

洋榎<いつまでも気にしてたらしょうがないで、引き籠ってるだけやとなんも解決せん>

末原(わたしだってわかっとるんや……わかっとるんやけど……)

洋榎<恭子が悪かったわけやない、周りが怪物すぎたんやうちやって、あんな連中に勝てる自信無い>

末原(そうやけど……そうやけどな……)

由子<誰も恨んで無いのよー>

末原(洋榎や由子にはわからないんよ……私の本当の苦しみを……)

洋榎<ホンマは恭子もここから出たいと思うとるんやろ?>

末原(もちろんや!今すぐにでもここから出たい!)

末原(でも怖いんや……)

末原(……)

末原(音がしないけどみんな帰ったんかな……)

末原「……」

末原(あのころは楽しかったで、みんなで麻雀打って、笑って泣いて……)

~回想~

洋榎「リーチや!」

由子「ダブリーなのよー」

末原「さすがですね洋榎は」

洋榎「せやろせやろ!一発くるで!」カチッ!

洋榎「ってこないんかい!!」カチッ!

由子「そうそう一発なんて出ないもんなのよー」カチッ

洋榎「それロンや」カタタタッ

由子「のよー」

洋榎「さすがやろ!一発やないのは相手を油断させるためやったんやな!」

末原「三人だけで麻雀というのもさびしいものですね」カチッ

洋榎「しょうがないやん、うちらの学年はこの3人しかおらへんのやし」カチッ

由子「みんなやめちゃったのよー」カチッ

洋榎「でもこの三麻も悪くないと思うで」カチッ

末原「というと?」カチッ

由子「のよー」カチッ

洋榎「麻雀なんて楽しければええんや!三麻やけどうちは恭子と由子と打てて楽しいで」カチッ

末原「洋榎……」カチッ

由子「ロンなのよー」スタタタタタッ

末原「あ……」

洋榎「まぁ、そこやろなぁ、恭子はまだまだやなぁ~」

 ワイワイワイ キャッキャッキャッ ハハハハ

・・・・・・

・・・

末原「……」

末原(洋榎と由子と三麻……ホンマ楽しかったなぁ……)

末原(あのあと漫ちゃんや絹ちゃんも入部してきてもっと楽しくなったんやったな……)

漫『こ、これは通るやろさすがに……』

カチッ

洋榎『残念やな!ロンや!』

スタタタタッ

漫『げげげげっ!』

由子『また漫ちゃんが最下位なのよー』

漫『次こそは!次こそは勝ちますって!』

 ジャラジャラ

絹恵『うちだけ焼き鳥……』

末原「……」

末原(ハァ……とうとう幻聴まで聴こえてきたで……私はもうダメやろなぁ……)

漫『と、通らばリーチですっ!』

 カチッ!

洋榎『通らないで!ロン!』

 スタタタタッ!

漫『なんや……なんなんやいったい……』

絹恵『ばくはつま~だ~?』

漫『代行のモノマネはやめてぇな……』

末原「……」

洋榎『じゃあ次行くで~』

末原「……」

末原(幻聴の中でもみんな楽しそうやな……せめて幻聴なら私も入れてーな)

絹恵『流局や~』

末原(楽しそうや……ホンマ楽しそうや……)ボロボロ

末原(私も入れてーな……またみんなで楽しく麻雀がしたいんや……)ボロボロ

由子『ポンなのよー』カチッ

絹恵『あかん!リーチや!』カタンッ!

漫『あ!それロンや!タンヤオドラドラ!』

洋榎『残念やったな漫、うちもロンなんや』スタタタタッ!

末原「……」

漫『うわぁ頭ハネやんか!』ズサーッ

洋榎『今日の漫はいつもより増して運が無いな』

漫『ホンマですよ!本当はいつも勝ちまくりやのに』

絹恵『小学生相手やけどね』

漫『それは言わんといて!』

  ワイワイワイ ザワザワザワ

末原「……」

末原(ホンマに幻聴なんやろか……)

末原(幻聴にしてはリアルすぎる……まさか……)

末原「……」ソローリ

ドアに寄りそおっと耳をすます

末原「……」

絹恵『ローン!ホンイツドラ3!ハネ満!』

漫『ぐぬぬ……』

洋榎『漫……昔より下手になったんやないか……』

漫『た、たまたまですって!ほらこの当たりも事故みたいなもんやないですか!』

漫『次行きますよ次!』

 ジャラジャラジャラ

末原「……」

末原(ホンマに麻雀やってるやないか!こんなところで……)

由子『ロンなのよー』

漫『あかん!』

末原「……」

末原「……」

末原(みんな楽しそうやな……あんなワイワイやって……)

洋榎『ローン!』

末原(声聞くだけでみんなの顔が浮かんでくる……)

漫『速攻!チィ!』

末原(入りたい……私も入りたい……)

絹恵『それロンや!』

末原(で、でも……またここから出たらまた苦しみを味わうかもしれへんし……)

由子『のよー』

末原(そやけど……みんなと……みんなとまた麻雀がしたいんや!)

漫『また振り込んでしもうた……』

洋榎『相変わらずあかんなぁ、さぁ次いくで~』

末原(私も……私もその面子に!!)スクッ!!

 ガチャン

末原「私もそのメンバーにまぜてーな!!」

洋榎・絹恵・漫「あ……」

末原「あ……」

由子「出て来たみたいなのよー」

洋榎・絹恵・漫「……」

末原「……」

洋榎・絹恵・漫「……」

末原「……」

洋榎・絹恵・漫「……」

末原「……」ソローリ

洋榎「なにまた部屋の中入ろうとしとるんや!あかんやろ!」

末原「あ、ごめん……」

洋榎「とうとう観念して出て来たみたいやな」

由子「お久しぶりなのよー」

末原「そ、そうやな……」

洋榎「天岩戸作戦Bプランが大成功やな!」

絹恵「せんぱぁい!」ダキィ!

末原「く、苦しい……」

絹恵「すっごく心配したんやで!もう離さないんやから!」ボロボロ

末原「ホンマすまんなみんな……」ボロボロ

洋榎「ほら絹、恭子が苦しそうにしてるやろ離してやりぃ」

絹恵「うん……」グジュ

洋榎「しかし久しぶりやなぁ、顔を合わせるのはホンマ久々や!」

末原「そうやな、みんなごめんな、私のせいでみんなに迷惑かけてもうて
   みんな私のことを構わずに自分たちのことをしたほうがええはずなのに……」

洋榎「あんたの子やなし孫やなし~いらんお世話やほっちっち~
   うちらはまた恭子と麻雀が打ちたいからこうして来てるだけや」

由子「そうなのよー」

漫「……」

洋榎「なんや漫、ひょっとして感動して泣いてるんか!?」

漫「そうやないです、ただ……」

洋榎「ただなんや」

漫「いや、先輩がすごく臭くてたまらないです……」

末原「」

洋榎「なにアホなこと言うとるんや!」

絹恵「感動に水を差すのはやめてほしいわ!」

漫「す、すんません……」

末原「漫ちゃんは相変わらずですね」

洋榎「お、なんか昔の恭子みたいやな」

末原「さっきから麻雀でもダメみたいですし、日ごろの練習を怠ってるのではないですか?」

漫「いやそんなハズは無いです……カタカタ

末原「久しぶりに漫ちゃんの特訓に付き合いたい気分です、良いですか絹ちゃん?」

絹恵「は、はいどうぞ先輩!」

漫「可愛がりが始まる……」

末原「ロン!」

漫「ぐぎゃー!」

洋榎「恭子は漫に容赦せんなぁ」

末原「愛のムチやな」

漫「ただのムチですやんそれ~」

末原「しかし漫ちゃん……」プププッ

漫「どうしたんですか、急に笑いだして……」

末原「いやそのデコなんや……なんでそんなの書いてるんや……」プププッ

漫「そうやった!愛宕先輩!うちのデコになんて書いたんですか!」

洋榎「鰻や」

漫「鰻ィ!?」

洋榎「せやで、今年の鰻はめっちゃ高いみたいやで」

漫「うちの名前の漢字に似てるからってデコに鰻を書かんといてくださいよ!!」

末原「ハハハハハ……」ポロポロ

  1時間後

末原「久々のお風呂気持ち良かったな」

漫「鰻が全然消えへん!」

洋榎「ひとつええか恭子」

末原「なんや?」

洋榎「なんで引き籠るようになったんや、やっぱあのトラウマで……」

末原「ちゃうんや、別に清澄、宮守、永水の大将のせいやない」

洋榎「ほななんで……」

末原「世間の……世間の目が怖いんや……」

洋榎「……」

末原「洋榎たちは許してくれてるかもしれへんけど世間はそうもいかへん」

絹恵「でも先輩は……」

末原「別に叩かれるだけならええんや、そのうちみんな忘れて関心は次の世代に移る、でも……」

洋榎「でも?」

末原「本当に怖いのは叩かれることやなくネタにされることや」

洋榎「ネタ…?どういうことそれ?」

末原「洋榎はネットとかしないんか?」

洋榎「あんませーへんな、機械は苦手やねん」

末原「そうやったら絹ちゃんにやってもらい、そこで末原と検索するんや、すると……」

洋榎「すると?」

末原「私を馬鹿にした書き込むやサイトがいっぱい出てくるんや!
   戦犯だのなんだの!挙句の果てに死刑囚扱いされてるんやで!もう耐えられなかったんや……」

絹恵「そんな……酷い……」

末原「みんな私をネット上であることないこと書き込んで馬鹿にするんや徹底的に……」

漫「ネットと言えども死刑囚扱いは酷いですね……」

末原「あいつらは馬鹿にされる側の気持ちがなんも分かってないんや……もう辛くて……めげるわ……」

由子「でもあれから何年も経ってるのよー、みんなそろそろ忘れて……」

末原「ネットをなめたらあかんで、あいつらはおもちゃが壊れるまで遊び続けるんや……」

洋榎「……」

末原「何度自殺を考えたことか……でもできないんや……また笑われそうで……」ボロボロ

末原「もうどうすればええんやろ……外に出たらみんなに後ろ指を指されそうで……」

絹恵「先輩……」

洋榎「みんなに馬鹿にされない方法がひとつだけあるで恭子」

末原「それはなんなんや……」

洋榎「それは恭子が麻雀で強くなることや!」

末原「!!」

洋榎「強くなって!全国大会で対戦したあいつらにリベンジすればええねん!」

末原「そんな……ただの凡人のわたしが勝てるわけ……」

洋榎「なに弱気になってんねん!!将来のスーパースター候補であるうちが徹底的に指導したげるで!」

絹恵「そうですよ先輩、それに私だってプロなれたんやし末原先輩だってなれますよ」

由子「そうなのよー」

末原「みんな……」

漫「もうそんなしょげないでくださいよ、もっと末原先輩は堂々としてください」

洋榎「なに調子に乗ってるんや!」カキカキ!

漫「なにやってはるんですか!せっかく薄くなったのに!」

絹恵「もうお姉ちゃん!」プププ

末原「ちょっとやりすぎやないか?」プププ

由子「そうなのよー」ケラケラ

漫「ちょっと今度はなんて書いたんですかぁ!!」

洋榎「鯰」

漫「また魚ですか!もう意味わかんないですよ……」トホホ

 ワイワイワイ キャッキャッキャッ ハハハハ

末原(みんなホンマにありがとう……こんな良い仲間を持てて私は幸せや……)

   1ヶ月後

漫「迎えにきましたよ先輩」

末原「ありがとうな漫ちゃん」

漫「ええんですって、先輩を車で乗せてくの嫌いやないですし」

末原「ならええんやけど」

あれからひと月が経った
末原恭子は引き籠りから脱却し、漫の麻雀教室でスタッフとして働くことになったのだった

漫「しかしそのグラサンとマスクはどうなんですか?すごく怪しいですよ」

末原「そうやけど、素顔で外を歩くのはさすがにまだ辛いんや……」

漫「辛いんだったらしょうがないですけど……まぁ先輩の好きなようにしてください」

末原「うん」

漫「そういえば今度特別にプロ編入試験を受けるみたいですね」

末原「赤阪代行が色々と便宜を図ってくれたみたいなんや」

漫「今や浪速の女帝と呼ばれてますからねあの人は」

末原「意外とええ人なんやな、まぁ受かる自信はまったくないんやけど……」

漫「大丈夫ですって!先輩の腕なら絶対合格します!うちが太鼓判押しますさかい」

末原「……なんか上から目線やな最近の漫ちゃんは」

漫「だって上司ですし」

末原「そうやったな」

漫「あ、ラジオつけますね」

アナウンサー『……阪神は中日に破れてこれで4連敗……』

漫「また阪神負けたんか!今年はダメやなぁ……」

末原「……」

アナウンサー『次のニュースです、麻雀全英オープンを日本人として初めて制した宮永咲が昨日日本へと凱旋帰国しました』

漫「先輩!あの宮永咲ですよ!覚えてますか!」

末原「当たり前やろ忘れたくても無理やあれは」

漫「今や世界のチャンピオンですよ、ホンマすごいわぁ」

末原「……」

咲<もっと麻雀を楽しもうよ!麻雀って楽しいよね!>

末原(宮永咲……私が倒すべき相手……)

漫「あ、もうすぐ着きますよ先輩」

末原(今度こそ……私が勝つんや……宮永に勝って今までの過去を振り払うんや!)

そして末原恭子は打倒宮永咲を決心したのであった―――

末原「絶対勝つんや!宮永咲に!!」

        末原「…………………………」洋榎「もうそろそろ外に出たらどうや」        カン      

以上です
読んでくれたサンキュー

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