< 「おいヤバイぞ!! 坑道が崩れて……」
< 「誰か中にいるのかー!? しっかりしろ!!」
< 「おい、寝床にいる他の奴隷仲間を呼んでとっとと瓦礫をどかせ!!」
< 「この奥に何があると思ってやがる……!!」
ガラッ…カランッ
奴隷男「……声なんか出せるわけもないなぁ」ゲホッゲホッ
奴隷男「あー……恐ろしいほどに動けない」
奴隷男「脚の感覚はそうだけど、左腕も潰れてそう……痛みがこんなに淡いとは思わなかった」
奴隷男「あーあ……」
奴隷男「……なんでこうなったんだろうなぁ」
奴隷男「産まれた時には母親は病気で歩けなくなってて……親父が過労で死んで」
奴隷男「……物心ついた時には、母親は娼館に売られてて…」
奴隷男「…………」
奴隷男「は、はは……ある程度働ける歳には奴隷としてここの採掘場にいたんだった」
奴隷男「なんだそりゃ……『外』じゃそれなりに生きてるヤツもいるのに」
奴隷男「……ろくな人生じゃなかったなぁ」
< ガラッ…
奴隷男(……まだ崩れるのか、俺の頭の上も崩れ落ちてきたら死ぬな)
奴隷男(何も知らないまま……こんな所で死ぬんだなぁ、俺は)
─────── ガラガラガラガラガラッッッ!!!
< ……シュゥゥウウウ……
奴隷男「……?」
奴隷男「なんだ……この、煙……」
< 「うわぁ!! 障気だぁあああ!!」
< 「逃げろぉ!! 吸ったら死ぬぞぉおおおお!!」
< シュゥゥウウウ……
奴隷男「……潰れて死ぬよりはマシ、かな…」
奴隷男「スゥー……」
奴隷男「………………」ガクンッ
< シュゥゥウウウ……
< …………
【起きて、お兄さん】
奴隷男「……ぁ…?」
奴隷男(……)
奴隷男(気のせい……か)
【気のせいじゃなくて、上を見てよ】
奴隷男「っ!? ……な…ッ」
奴隷男「なんだ、お前……魔物か……?」
精霊?「魔物ぉ? 違うけどまぁ近いかなー、精霊ってやつだね」
奴隷男「精…霊……?」
奴隷男「精霊が……どうしてここに…」
精霊?「どうしてーって、知らないのかなぁ」
奴隷男「……?」ゲホッゲホッ
精霊?「まぁ余り時間も無いしー、私としては手っ取り早く済ませたいなぁ」スッ
奴隷男「……ぅ…ゲホッ……な、なにを……っ」
< チュッ……
奴隷男「……!?……」
精霊?「はい、おしまい……これから頑張ってね『お父さん』」ニッコリ
【塔の町・北区祠】
奴隷男「……え?」パチッ
奴隷男(ここ……何処だ)
奴隷男(俺は、採掘場で崩落に巻き込まれて……)
奴隷男(……)
奴隷男(精霊の女にキスをされた……だけ)
奴隷男「一体どうなってる、瞬きをした時にはここに……」
< キィィ……
奴隷男「!!」ビクッ
奴隷男(扉を誰かが開けて……だれだ…!)
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