奴隷男「……ろくな人生じゃなかったなぁ」(14)


< 「おいヤバイぞ!! 坑道が崩れて……」

< 「誰か中にいるのかー!? しっかりしろ!!」

< 「おい、寝床にいる他の奴隷仲間を呼んでとっとと瓦礫をどかせ!!」

< 「この奥に何があると思ってやがる……!!」



   ガラッ…カランッ


奴隷男「……声なんか出せるわけもないなぁ」ゲホッゲホッ

奴隷男「あー……恐ろしいほどに動けない」

奴隷男「脚の感覚はそうだけど、左腕も潰れてそう……痛みがこんなに淡いとは思わなかった」

奴隷男「あーあ……」


奴隷男「……なんでこうなったんだろうなぁ」

奴隷男「産まれた時には母親は病気で歩けなくなってて……親父が過労で死んで」

奴隷男「……物心ついた時には、母親は娼館に売られてて…」

奴隷男「…………」

奴隷男「は、はは……ある程度働ける歳には奴隷としてここの採掘場にいたんだった」

奴隷男「なんだそりゃ……『外』じゃそれなりに生きてるヤツもいるのに」




奴隷男「……ろくな人生じゃなかったなぁ」




< ガラッ…

奴隷男(……まだ崩れるのか、俺の頭の上も崩れ落ちてきたら死ぬな)

奴隷男(何も知らないまま……こんな所で死ぬんだなぁ、俺は)

─────── ガラガラガラガラガラッッッ!!!

< ……シュゥゥウウウ……

奴隷男「……?」

奴隷男「なんだ……この、煙……」


< 「うわぁ!! 障気だぁあああ!!」

< 「逃げろぉ!! 吸ったら死ぬぞぉおおおお!!」

< シュゥゥウウウ……

奴隷男「……潰れて死ぬよりはマシ、かな…」

奴隷男「スゥー……」

奴隷男「………………」ガクンッ


< シュゥゥウウウ……

< …………


【起きて、お兄さん】


奴隷男「……ぁ…?」

奴隷男(……)

奴隷男(気のせい……か)


【気のせいじゃなくて、上を見てよ】


奴隷男「っ!? ……な…ッ」

奴隷男「なんだ、お前……魔物か……?」

精霊?「魔物ぉ? 違うけどまぁ近いかなー、精霊ってやつだね」

奴隷男「精…霊……?」


奴隷男「精霊が……どうしてここに…」

精霊?「どうしてーって、知らないのかなぁ」

奴隷男「……?」ゲホッゲホッ

精霊?「まぁ余り時間も無いしー、私としては手っ取り早く済ませたいなぁ」スッ

奴隷男「……ぅ…ゲホッ……な、なにを……っ」


< チュッ……


奴隷男「……!?……」

精霊?「はい、おしまい……これから頑張ってね『お父さん』」ニッコリ


【塔の町・北区祠】






奴隷男「……え?」パチッ









奴隷男(ここ……何処だ)

奴隷男(俺は、採掘場で崩落に巻き込まれて……)

奴隷男(……)

奴隷男(精霊の女にキスをされた……だけ)


奴隷男「一体どうなってる、瞬きをした時にはここに……」


< キィィ……

奴隷男「!!」ビクッ

奴隷男(扉を誰かが開けて……だれだ…!)

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