主人公「家事はメイドさんがやってくれるし、生活費は振り込まれてくるから心配しなくてもいい」
主人公「突発性難聴という、突然耳が遠くなる持病を除けば俺は何の変哲もない普通の男だ」
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主人公「今日も今日とて学校に通う。
俺の通う学校はかなり規模の大きなマンモス校だ」
主人公「進学コースやスポーツ特待生コースは人気実力ともに格上だが、一般コースは学費さえ払えばアホでも入れる」
主人公「尋常ならざる天才や他に類を見ないバカタレが同じ学校に通っていてもなんら不思議ではないのである」
主人公「その中にあっても、俺は何の変哲もない普通の男だ」
幼馴染「おはようキー君」
主人公「おはようサナ」
主人公「校門であいさつしたこいつは俺の幼馴染だ。この学校で同じクラスに通っている」
主人公「家が近所で、幼稚園からの仲だ」
主人公「いたって普通の登校風景である」
主人公「はたから見れば女の子といっしょの登校風景に見えるが、この幼馴染に関しては俺にとっては妹のようなものである」
幼馴染「えへへ、キー君といっしょに登校出来て嬉しいな」
主人公「え、なんだって?」
幼馴染「あっ、キー君また耳が?」
主人公「ん、また急に一瞬だけ聞こえが悪くなったみたいだ。もう治ったけど」
幼馴染「そっか。良かったー」
主人公「と、このようにあたりまえのいつもの登校であった」
男友「よぉキーさん。おはよう」
主人公「おはようトモキ」
主人公「同じクラスの友人にあいさつし、普通に席につく。いつも通り普通だ」
男友「なぁ、今日転校生来るらしいぜ」
主人公「この時期にか?」
男友「ああ。なんでも女の子らしい。可愛いといいな!」
主人公「人数の多い学校だ。転校生もさほど珍しくはない」
ガラッ
担任「みんな席について。転校生を紹介します」
転校生「・・・。」
男友「おいおい可愛いじゃねーか」ひそひそ
主人公「・・・?」
主人公「あの子、どこかで会った事があるような・・・?」
転校生「・・・!」チラッ
主人公「?」
主人公「今、目があったような・・・?」
担任「自己紹介を」
転校生「ヒロセ テンマです。よろしくお願いします」
主人公「名前を聞いてもよく思い出せない・・・どこで会ったのだろうか?」
主人公「その後の授業はこれと言ったことのない普通の一日だった。転校生が来た事を除けばだが」
主人公「放課後、今日は部活が休みだし帰るとしよう」
主人公「ちなみに部活はバドミントン部だ。この学校においては弱小部で、部員も半数は籍を置いているだけの幽霊部員だ」
主人公「俺個人の成績は県大会で5位までが全国大会に行けるところで6位だった程度の見事な凡人っぷりである」
主人公「あと数人くらい強い選手が現れれば全国行きも狙えるのだが、それが集まれば苦労は無い」
主人公「ともかく、今日は部活は休みなので帰ってたまっている勉強でもしよう・・・」
転校生「・・・。」
主人公「?」
主人公「他に誰も居ない教室に、転校生だけがいた」
転校生「ニシ キミト君ですよね?」
主人公「!!」
主人公「どうして、名前を?」
転校生「・・・。担任のタジマ先生から名簿を頂いたので」
主人公「あ、ああ。そうだったのか・・・」
転校生「・・・。私の名前は憶えていますか?」
主人公「え?えっと、ヒロセさん?」
転校生「・・・そうです。また、明日。キミト君」
主人公「あ、ああ・・・」
主人公「やはり、俺は彼女に会った事がある気がする。思い出せないが」
主人公「それをたずねようかと思ったが転校生・ヒロセは帰ってしまった」
主人公「と、まあ。転校生と何気ない会話をするだけの、いたって普通の放課後だった」
メイド姉「おかえりなさいませ、若」
主人公「ただいま姉さん」
主人公「メイド服姿のこのお姉さんは、この家で家事をしてくれている方だ」
主人公「彼女と、彼女の妹の部屋もこの家にある。子どもの頃からいっしょに育った家族だ」
メイド姉「若、食事はもう少しお待ちください。お風呂の支度はすでに出来ておりますが、いかがなさいますか?」
主人公「ありがとう姉さん。それじゃあ、先にお風呂いただくよ」
メイド姉「ごゆっくりどうぞ」ニコッ
主人公「ちなみに、とても美人だ」
ガラッ
メイド妹「きゃっ!?お、お兄ちゃん!?///」
主人公「あ・・・メイちゃん!?」
メイド「あ、えっと、おかえり?お兄ちゃん?」
主人公「た、ただいま・・・」
主人公「こちらが先ほどのメイドさんの妹、メイちゃんだ。中学生である」
メイド妹「きゃ、きゃーーっ!!」ばしゃーん
主人公「ぶっ!?」びちゃっ
主人公「お湯をかけられてしまった。マズイ事をしてしまったな・・・」
主人公「ともあれ、普通にいっしょに生活をしていれば、普通にこういう事もあるさろう」
メイド妹「もうっ!もうっ!お兄ちゃんってば、お兄ちゃんってばっ///」かぁぁ
主人公「ごめんごめん。機嫌なおしてくれよメイちゃん」
メイド姉「そうですよメイ。ちゃんと入浴中のプレートを掛けていなかったのでしょう?」
メイド妹「それは・・・確かにそうだけど・・・」ぶつぶつ
主人公「なかなか機嫌をなおしてくれない妹だ。中学生は難しい」
主人公「それを横目に、メイド服姿の姉さんはテキパキと食事の支度をする」
主人公「ちなみにこのメイド服は姉さんの趣味だ。私服である」
主人公「自分の家なのだ。自分の好きな服を着るのが普通というものである」
主人公「俺は姉さんを姉さんと呼び、メイちゃんは俺をお兄ちゃんと呼ぶ」
主人公「おかしな事はない。法律上俺たちは兄弟姉妹なのだから」
主人公「つまり、彼女らは俺の家の養子にあたる」
主人公「両親を早くに亡くし、親戚のいなかった彼女らは生前親交があり、資産家でもあった俺の父に引き取られたのだという」
主人公「当時の父はまだひとかどの人物であったのだ」
主人公「気を使わなくてもいいというのに、姉さんはかいがいしくも俺の身の回りの世話をしてくれている」
主人公「彼女が居なければ、俺は今頃どうなっていただろうか?」
主人公「いや、それは彼女らにとっても同じか」
主人公「何はともあれ彼女らは肩身のせまい扱いを受け、貧乏くじを引かされたのは間違いない」
主人公「7年前に義母を撲殺しようとした俺とともに、やっかい者としてこの家に放任され続けている」
主人公「今日も今日とて、俺はあの日義母の頭に一撃を入れた居間で家族と食事をとる」
主人公「俺は何の変哲もない、いたって普通の男。両親とは現在別居中だ」
続きはまたいずれ
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