小鳥「プロデューサーさんの家計簿黒字化計画」(58)

【事務所】

小鳥「プロデューサーさーん?……おや、寝てますね……」

小鳥「駄目ですよー?勤務時間中に居眠りなんて」

p「……はっ!?すいません!ちょっと寝不足なもので……」

小鳥「いえいえ。忙しいのは分かってますから。それよりも、そろそろ外回りに行かなくて大丈夫ですか?」

p「もうこんな時間か……じゃあ行ってきますので、後は宜しくお願いしますね!」

小鳥「はーい。行ってらっしゃい」

事務所からプロデューサーさんが出て行って、今は私一人。
慌てて出て行った所為かpcが点けっぱなしになっていました。

小鳥「プロデューサーさんったら、仕方無いですねぇ……あら、これは……usbメモリ?」

これまた刺さりっぱなしのusbメモリ。
職場に何を持ちこんでいるのかしら。
もしやゲームを持ちこんでたりしませんよね?

小鳥「これは……家計簿?」

この時、私は知ってしまったのです。
プロデューサーさんの財布が、今まさに半紙の如き薄さになろうとしている事を……

【家計簿閲覧中】

小鳥「見てはいけないと思いつつ、見てしまうのが人の悲しき性なのです――」

小鳥「とまあ、言い訳はこの辺りにしておいて。ごめんなさいプロデューサーさん。私は今から家計簿を見てしまいます」

小鳥「でもすぐには全部見れませんし、コピーして私のpcに入れておきましょうか」

小鳥「……完了です。では、御開帳~」

小鳥「どれどれ~……収入が28万で~、支出が~……27万!?」

小鳥「プロデューサーさんって金遣い荒いんでしょうか……?詳細は……」

小鳥「家賃4万、光熱費水道代諸々でおよそ2万……食費が……21万!?」

小鳥「どんな生活をすればこうなるのかしら……外食ばっかりにしても掛かり過ぎなんじゃ……」

小鳥「気を取り直して、食費の内訳を――」

小鳥「なにこれ……」

【家計簿・食費欄】

小鳥「多分、この210,000(30,000)って書いてある所の括弧内が自分の食費なのね……一番上に食費(内自分)って書いてあるし」

小鳥「じゃあ残りの180,000円はどこから来たのかって考えると、多分それって……」

小鳥「1日の食費が平均して5000(1000)位で……あ、何を買ったか書いてあるわ」

小鳥「なになに……ジュースが1日15本は買われてる……」

小鳥「全部自販機で買ったとして1500円は行ってるわね……」

小鳥「それに毎日大体2人は外食に連れて行ってるし……これで1000円はプロデューサーさんの外食費になるわね。あの人、一食はお弁当だし」

小鳥「4000円から1500円を引いて残り2500円……2人分の外食費と見てそれほど違和感はないわ……」

小鳥「15本の飲料もアイドルの子達+私と律子さん、プロデューサーさんと見ていいんでしょうね……」

小鳥「それでも5000円×30日として150,000円。残りは……あ」

小鳥「月に一度の飲み会で毎回プロデューサーさんが『いえ、男の俺が払いますよ』って言ってくれてる金額が20,000円だわ……」

小鳥「あずささんor律子さん+私とプロデューサーさんでお酒も飲んだりするし……おかしい金額じゃないわね」

小鳥「それで最後の10,000円が、何故か冷蔵庫にいつの間にか補給されてるプリンとかゼリーと考えて……」

小鳥「一見、10,000円分黒字に見えるけど、誤差の範囲だとしたら……」

小鳥「――これ、ものすごく不味いんじゃないかしら……」

【プロデューサー帰宅後、事務所】

小鳥「皆、今日残って貰ったのは大事な話があるからなの」

律子「小鳥さん、重要な話ならプロデューサーを帰す前にしないとならないんじゃ……」

小鳥「いえ、今プロデューサーさんが居ては困るんです」

伊織「あいつが居て困る話?想像できないわね」

貴音「なれば、仕事の話ではない、という事でしょうか?」

小鳥「鋭いわね、貴音ちゃん……その通り、この話はプロデューサーさんに聞かせてはならない話なんです」

千早「話が進まないので、聞かせて貰えませんか?」

小鳥「そうだったわね……コホン!」

小鳥「今日皆に集まって貰ったのは他でもない……プロデューサーさんのお財布事情についてよ!」

春香「はい?」

真「お財布事情?」

小鳥「そうよ。実は今日、プロデューサーさんがこんな物を持ってきてまして」

やよい「これなんですか?」

律子「usbメモリよ。主にパソコンのデータ保存とかに使うわ。持ち運びも出来るしね」

亜美「で、そのメモリがどうしたの?」

小鳥「このメモリの中身、なんだと思う?」

律子「小鳥さん、あなたって人は……やっていい事と悪い事の区別がつかないんですか?」

小鳥「ごめんなさい!でも、気になってしまうのは仕方ないと思いませんか?」

律子「気になったでデータ見られちゃたまりませんよ!大体あなたは――」

あずさ「まあまあ律子さん。お説教は話を聞いてからでも遅くないでしょう?」

律子「……まあ、そうですね。続きを話して下さい」

小鳥「はい。で、中身は何だか分かるかな?」

真美「も、もしかして盗撮した画像とかなんじゃ……」

響「だからプロデューサーが居ないのか!あの変態め……!」

美希「ハニーは別に変態さんじゃないと思うけど」

響「それは美希が自分から抱きついてるからだぞ!自分にはセクハラばっかり……」

雪歩「それって衣装のサイズ合わせとかだったんじゃ……」

小鳥「セクハラ関係じゃないですよ~?お財布事情って言ったでしょう?」

やよい「もしかして家計簿ですか?」

小鳥「大当たり!流石はやよいちゃん!」

やよい「うっうー!当たっちゃいましたー!でも小鳥さん、家計簿を勝手に見ちゃメッですよ?」

小鳥「ごめんなさい……ではなくて!」

千早「その家計簿を見て、何か不味い事でもあったんですね?」

小鳥「その通りよ。まずはこれを見てちょうだい」

春香「収入と支出ですね」

伊織「ちょっ!?これ馬鹿なんじゃないの!?」

律子「プロデューサー……どれだけ財布の紐が緩いんですか……」

やよい「うう……桁が違い過ぎて頭がくらくらします……」

小鳥「まあ待って。ここから詳細なんだけど」

真「これは……殆どが食費ですね」

小鳥「そうよ。それで括弧内が自分の食費……と言う事は、どうなってるか分かる?」

あずさ「それってつまり、残りは全部私達の分ってことでしょうか?」

小鳥「まさしく!」

貴音「少し待って下さい。わたくしはそれほど負担をお掛けした覚えはありませんが」

亜美「お姫ちんは負担の筆頭だと思うんだけど」

真美「真美もそれに賛成」

貴音「面妖な……」

律子「でも貴音だけって訳でもないわ。恐らく私達14人分の合計が……」

あずさ「この恐ろしい金額だという事ですね……」

美希「確かに、ハニーはいっつも飲み物買ってきてくれてるし……」

伊織「これは私も反省しないといけないわね……」

やよい「うぅ~……私、重荷になってたんですね……」

真「これって経費とかで落ちないんですか?」

律子「それも難しいわ。飲み会代とかは会社が持つ意味もないし……」

小鳥「基本的には水とか持ってくればいい所をジュースとかスポーツ飲料とかにしてるだけだから……」

伊織「あくまで、個人の嗜好品って事に落ち着いてるのね。お菓子なんかもその最たる例かしら」

春香「誰か1人が悪いって事じゃ無いにしても……」

千早「これは、由々しき事態ですね」

小鳥「そうよ。もちろん私も悪いし、皆にとやかく言える立場じゃないけど……」

律子「これからは、あまり我儘を言わないようにしないといけませんね……」

亜美「塵も積もれば山ってヤツだね」

真美「お菓子とか自分で持ってこよう!」

響「プロデューサー……外食分をお弁当にしたら安く上がるかな?」

春香「お菓子なら私が作ってくるから、それで我慢してね?」

雪歩「私も!お茶とかなら淹れられます!」

貴音「らぁめんを我慢しなければなりませんが……あの方の為とあらば仕方ありません」

あずさ「ちょっと奢って貰い過ぎでしたね……」

律子「私もですね。『律子は酒飲まないんだから』とか言われてホイホイ奢って貰っていた自分に腹が立ちます」

伊織「そもそも私達の方が収入あるのに奢られるっていうのがまずおかしかったわね……」

あずさ「でも、年下の女の子に出させる訳にはいかなかったんでしょうね……」

真「ボクも女の子扱いが嬉しくてつい……」

美希「よく考えたらこの事務所、男はハニーだけで後は女の子だし。年上は小鳥1人だし」

小鳥「うぐっ……!」

響「社長もいるぞ?」

美希「社長はいっつもどこか行ってるから、事務所に居ないの」

雪歩「それを思えば、プロデューサーってかなり気を遣ってたんだよね……」

小鳥「とにかく!プロデューサーさんに迷惑をかけないようにしましょう!」

伊織「賛成するわ。お金に困ったら今度からは私に言いなさい」

亜美「いおりん太っ腹~!」

真美「よっ!大統領!」

律子「茶化すんじゃないの!……これで、あの人の負担も減るといいんですが……」

千早「水ぐらいなら自分の家から持ってくればいいわね」

春香「よーし、じゃあ皆であれやろっか!」

美希「アレ?」

響「ファイトーってやつか?」

春香「うん。みんな、いい?」

真「プロデューサーの家計簿が!」

真美「黒字になるまで!」

雪歩「私達!」

千早「我儘言わずに」

貴音「我慢して」

やよい「目標まで!」

響「気遣いいっぱい!」

美希「頑張るのー!」

伊織「竜宮小町も!」

あずさ「負担にならないように!」

亜美「兄ちゃんに甘えず!」

律子「経費も使わず!」

小鳥「自分のお金で、やりくりしよう!」

春香「いくよー!765プロー!」

一同「ファイトー!」

こうして、私達の一ヶ月に及ぶ『プロデューサーさんの家計簿黒字化計画』はスタートしたのでした。

【黒字化計画第一弾】

伊織「ふぅ……プロデューサー、オレンジ――じゃなくて!」

p「うん?オレンジジュースか?そこに自販機があったな……」

伊織「いやいや!自分で買ってくるからあんたはそこで座ってなさい!」

p「そうか?珍しい事もあるんだな」

伊織「一言余計よ。それよりあんた、何か飲みたい物はある?」

p「どうした?熱でもあるのか?」

伊織「いいから早く答えなさい!」

p「あ、ああ……じゃあミルクティーを貰おうかな」

伊織「ミルクティーね。ちょっと待ってなさい」

【購入後】

伊織「はい、ご所望のミルクティーよ。感謝しなさい」

p「ありがとう。しかし本当にどうしたんだ?」

伊織「何でもないわよ。今日はちょっと歩きたかっただけ。それだけなんだから」

p「そうか……あ、お金渡して無かったな。ちょっと待ってろ、今出すから」

伊織「要らないわ。私にしてみれば1,000,000円までははした金みたいなものよ」

p「流石金持ちは違うな……だが、1円だろうと金は金。きっちりしないといけない」

伊織「私が要らないって言ってるの!聞こえなかったかしら?」

p「だが……」

伊織「『だが』も『でも』も『しかし』も結構。取っておきなさい」

伊織(そもそもそんな事言いだしたら今までの私達が不義理に過ぎるわ……)

p「そうか……じゃあ今回は有り難く頂いておく。今度は俺が買ってくるからな」

伊織「別にいいわ」

伊織(これ以上の負担をかける訳にはいかないもの)

p「そ、そうか……」

伊織「そうよ。別にあんたが気を遣う必要なんてないから」

伊織(じゃないととことんまでお金使いそうだし)

p「伊織がそう言うならそうなのかな……」

p「今度からは、オレンジジュース要らないのか?」

伊織「自分で買うわ」

伊織(今まで私は頼りっぱなしだったし、まずは自立からね……)

p「分かった……何か欲しいものがあったらいつでも言ってくれよ?」

伊織「私に限って買えないものは無いし、気にしなくていいわ」

p「ああ……そうだな……」

伊織編――end

【黒字化計画第二弾】

p「貴音。ラーメン食べに行かないか?」

貴音「それは真で――いえ、今は禁らぁめん中ですので、遠慮しておきます」

p「は!?お前本当に貴音か!?」

貴音「それほど驚く事でしょうか?」

p「驚くって言うより自分の異常を疑うよ……ちょっと病院行ってくる」

響「何してるんだプロデューサー?」

p「ああ、響か。聞いてくれ、貴音が『禁ラーメン中』なんて馬鹿げた事を――」

響「それ本当だぞ」

p「響もおかしくなったのかな?一緒に脳外科行こうか」

響「行く訳ないでしょ!?それより、ご飯食べないのか、プロデューサー?」

p「いや、だからラーメンに誘っていたんだが、断られてな……」

響「ならちょうどいいや。これ一緒に食べないか?」

p「これは?」

響「今日はちょっと作り過ぎちゃってさ。余り物の処理でもすると思って食べてくれないか?」

響「貴音も禁ラーメン中だから自分がお弁当作ってるんだけど、2人分を作るのって慣れてなくて、つい多めに作っちゃうんだ」

p「そうだったのか」

貴音「ええ。響には世話になりっぱなしですね……いずれこの借りは返しましょう……」

貴音(その前に、この方に負担させてしまったらぁめん代を如何にして返したものでしょうか……)

響(それは後で考えればいいさー。まずは負担させない事から考えて行こうよ)

貴音(それもそうですね)

p「お前達は本当に仲がいいな。で、何を話してたんだ?」

貴音「いえ。あなた様には関係の無い話です」

響「そ、そうだぞ!取り敢えずこの余り物食べてよね!」

p「あ、ああ……じゃあありがたく頂くな」

響「ど、どうかな……?」

p「美味いな……響は料理も出来るんだな。まさに完璧だ」

響「それほどでもないぞ!まあ、所詮余り物だけど」

貴音(響。『余り物』を強調し過ぎでは?)

響(でも『プロデューサーの為に』って言うのも恥ずかしいぞ……)

p(余り物か……いや、食べられるだけありがたいと思わないとな……まあ、処理係でも美味しいのは事実だからな……)

貴音「あ、一つ言い忘れておりました」

p「なんだ?」

貴音「これからあなた様とは外食しません。体調管理に努めますので」

p「え……?あ、ああ……そうだな!体調管理は大切だもんな!」

貴音「はい。ですので、食事のお誘いはお受け出来ません」

貴音(これで、この方の負担も減る筈)

p「分かった……じゃあ今度からは別の人を誘うとするよ……」

響(貴音もズバッと言い過ぎじゃないか?プロデューサーが落ち込んでるように見えるけど)

貴音(こう言わなければらぁめんの誘惑には勝てそうにもないのです……)

響(そ、そうなのか……)

p「まあいいか……響、弁当美味しかったぞ。ありがとうな」

響「い、いいよいいよ!どうせ余り物だしね!」

p「ああ、そうだったな……」

貴音&響編――end

【黒字化計画第三弾】

雪歩「ただいまです」

千早「ただいま戻りました」

p「二人ともおかえり。冷蔵庫に――」

千早「あ、萩原さん!お茶お願い出来るかしら!?」

雪歩「あ、うん。プロデューサーにも持ってきますね」

p「スポーツドリンクが……」

雪歩「どうぞ、千早ちゃん」

千早「ありがとう萩原さん……うん、美味しいわ」

p「お前達、汗もかいてるだろうし、スポーツドリンクを飲んだ方が……」

雪歩「いえ、私はお茶の方が好きなので」

雪歩(じゃないと、いつまでも冷蔵庫に補充され続けちゃうし……)

千早「冷たい飲み物は喉に悪いので」

p「そ、そうか……そうだよな、喉に悪いよな……」

雪歩(千早ちゃん、もう少し柔らかく言った方が……)

千早(そう言われても……演技って苦手だし……)

p「ごめんな千早?気が利かなかったな……」

雪歩(落ち込んじゃってる……)

千早「いえ!?むしろ利いてると思いますよ!?」

雪歩(そして千早ちゃんがすっごく不自然)

p「え?そうなのか?」

千早「でも、これからは自分で飲み物用意するので、プロデューサーは何もしなくていいです」

p「あ、うん……フォローさせちゃってごめん……」

雪歩(千早ちゃん……無意識に上げて落とすなんて残酷な……)

雪歩(ここは私もフォローをしなくちゃ)

雪歩「私も事務所ではお茶を飲みますから、プロデューサーは気にしなくていいですよ?」

p「雪歩もか……」

雪歩(ああぁぁぁ……私も混乱してるよぉ……)

雪歩「いえ、その、何と言いますか……」

p「いや、分かった。欲しい時には言ってくれよ?」

千早「そんな事はあり得ませんが」

雪歩(千早ちゃん……なんて不器用な人なの……)

p「あ、うん……ごめんな?」

千早「いえ別に」

雪歩(だから素っ気なさ過ぎだってばぁ……)

千早&雪歩編――end

【黒字化計画第四弾】

p「美希、真。ご飯食べに行かないか?」

美希「わーい!ありが――じゃなくて!」

p「もしかして、お前も食事制限してるのか……?」

美希(この前貴音がラーメンを拒否してたから、何だか断るのも気が引けるの……どうしよう、真クン)

真(仕方無いから、今日の所は一緒に食べて、それで……)

美希(多分、『年下に払わせる訳にはいかない』って言うから安いヤツを頼めば……)

真(それで行こうか。被害は最小のハズだよ)

美希「やっぱり行くの!ありがとハニー!」

真「ボクも一緒でいいんですか?」

p「勿論だ。さあ行くぞ」

【ファミレス】

真「じゃあ僕はオムライスで」

美希「ミキも同じので!」

p「お前達、そんなに小さいのでいいのか?特に真はもっと食べてたような……?」

真「いえ!これで十分です!」

美希「ミキは今日お腹減ってないから」

p「そうか?なら別にいいんだがな……」

【料理到着後】

p「味はどうだ?」

真「美味しいですよ」

美希「大丈夫なの」

p「それは良かった。真、足りないなら追加してもいいぞ?」

真「大丈夫です。あんまり食べると太っちゃいますし」

p「それもそうか。デザートはどうする?」

美希「要らないの」

p「美希が要らないというとは珍しいな」

美希「ミキがいっつも甘いものばっかり食べてると思ったら大間違いなの」

p「そうだよな……すまん」

美希(言い方はキツくなっちゃったけど、こうでもしないとハニーに甘えちゃいそうだし)

美希(ファミレスのデザート、いつも食べさせてくれるから気付かないけど割高だし)

美希(ここはビシっと言っとかないと、気持ちが揺らいじゃいそうなの)

真(オムライスで量が足りないのは本当だけど、まさかサイドメニューを頼む訳にはいかないし)

真(以前はセットメニューで1200円は行ってたから、節制しないと)

真(プロデューサーが払ってくれるからって贅沢し過ぎだったよね)

p(しかし、2人は全然食べないな……もしかして、ここの料理が不味いからか……?)

p(いや、確かに美味しいと言っていた筈だ……だが、それも気遣いだったら?)

p(無理を押してオムライスを胃に詰め込み、デザートにも期待できない……)

p(店選びも出来ない俺って、もしかして相当な駄目男なんじゃ……)

真「プロデューサー。ここはボクが払いますね」

p「いや、年下に払わせる訳にはいかない」

真(やっぱりそうなりますよね……なら)

真「それじゃあ、今日はご馳走になります。けど、今度からは自分でご飯食べますね」

真(じゃないと、いつまでも奢って貰ってばっかりだし……まずは頻度を落とす事から)

p(お前の連れて行く所はイケてないってことか……?確かに、ファミレスでは役者不足かもな……)

p(好みを把握しきれなかった俺の落ち度か……)

美希「ミキもそうするね。ハニーにはいっつもお世話になってるし、あんまり迷惑かけられないの」

美希(他にもイチゴババロアとか買って貰ったりして……どう考えてもやり過ぎなの……)

p(まさか美希が『迷惑をかけられない』なんて遠回しに拒絶するほど不味かったとは……)

p「ああ……今度からは二人で食べに行くといい……」

美希&真編――end

【黒字化計画第五弾】

p「やよい。今日は特売の日だったな」

やよい「そうですよー。今から楽しみなんです」

p「良かったら肉とか買うか?」

やよい「いえいえ!そんなの悪いですよー!」

やよい(皆さんちゃんと頑張ってますから……私も頑張らないと!)

p「まあそう言わずに。特売の肉なんて大した値段じゃないんだから、ご褒美とでも思ってくれたらいいさ」

やよい(気持ちは嬉しいですけど……いつもこうやって買って貰ってばっかりだし……そうだ!)

やよい(伊織ちゃんのマネをしたらきっぱり断れるかも!)

やよい(やっぱり人から貰いっぱなしっていうのは良くないよね)

やよい(確か伊織ちゃんの断り方って――)

やよい「はぁ!?人が貧乏だからって施しのつもり!?」

p「え」

やよい(あ、プロデューサーが固まっちゃった)

p「や、やよい……?」

やよい「えーと、その……あんまり調子に乗らないでよね!」

やよい(あうぅ……これじゃないです……)

p「そうだよな……ごめんな?でも、施しのつもりなんて微塵も無かったんだ……ただご褒美になったらいいなと思っててな……」

p(それでも、やよいからしたら今の俺は『お前ん家貧乏なんだからさぁ~。ほら買ってやるから感謝しろ?』的な人間に見えるんだろう……)

p(なんて失礼な事をしていたんだ……おこがましいにも程がある……)

やよい「いえ、プロデューサー……さっきのはですね――」

p(あまつさえ、そんな俺にすらフォローを……やよいはこんなにいい子なのに、俺はなんて薄汚れてるんだ……)

p「いや、いいんだ……確かに、お金が無いから買い与えればいいなんて傲慢な考え方だったな……すまない」

やよい「あ、その、私は嬉しいんですよ?でもでも、プロデューサーの負担がですね……」

p(これも俺の負担を心配しているように見えるが、遠回しに『迷惑です』って言われてるようなものなんだろうなぁ……)

p(だというのに、表面上とはいえ俺の心配をしてくれるなんて……人間出来てるなぁ……)

p「ありがとうやよい……今度からはこういうのは控えるよ」

やよい「あ、はい。そうして貰えると助かります(主にプロデューサーの家計が)」

p「ははは……親切のつもりが、とんだ迷惑だったんだなぁ……」

やよい(これでいい筈なんだけど……あれ?)

やよい編――end

【黒字化計画第六弾】

亜美「ふぃ~。今日も疲れたぜい」

真美「亜美~。お菓子無い~?」

p「あ、二人とも。お菓子なら冷蔵庫に――」

春香「お菓子と言えばこの私!春香さん登場!」

亜美「あ、はるるん。今日は何?」

真美「はるるんのお菓子だけが生き甲斐だよ~」

p「プリンが……」

春香(ああっ……プロデューサーさんが凄く悲しそうな眼を!)

亜美(でも、兄ちゃんのお金で買ってきたお菓子ばっかり食べる訳には……)

真美(兄ちゃん、気持ちはすっごく嬉しいんだよ?でも家計簿がね……?)

p(そういえば、ここ最近こんな感じだなぁ……)

p(俺の買って来たものは食べたくないって事なんだろうか……)

p「はぁ……プリン、頂きます……」

亜美(兄ちゃんが一人でプリン食べ始めたよ……)

真美(それを尻目にこっちは3人ではるるんのお菓子を囲んでるのって……)

春香(すっごく気まずい……)

p「あー!プリン美味しいなー!すっごく美味しいのになぁー!」

亜美(すごい叫んでるよ……)

真美(何だか悪い気がするね……)

春香(これ、食べない方が失礼なんじゃ……)

p「そうだ!折角だから春香達も食べたらどうだ!?」

春香「そそそそうですね!頂きます!」

亜美「わ、わー!はるるんずっこいよー!」

真美「真美も食べるー!兄ちゃんちょうだーい!」

p「ほーら一杯あるからなー!(だって最近、皆が冷蔵庫開けてくれないから!)」

春香(何だかごめんなさい!)

亜美(悪気はないんだよー!)

真美(むしろ兄ちゃんの為なんだよー!)

春香「あ、プロデューサーさんもお菓子どうぞ!」

p「ありがとう!春香のお菓子は美味しいなぁ!」

真美「うんうん。はるるんのお菓子は世界一だよー!」

亜美「これからは兄ちゃんもはるるんのお菓子にしなよ!」

p「そうだな!春香のお菓子は美味しいもんな!」

p(俺の買ってくるお菓子より春香のお菓子の方が良いという事なんだろうな……)

p(いや分かるよ?だって美味しいもの……その辺で買ってくるデザートより美味しいもの……)

p「じゃあこれからよろしく頼むな!春香!」

春香「はいっ!任せて下さい!」

春香(おっかしいなぁ……これでいい筈なんだけどなぁ……)

春香&亜美真美編――end

【黒字化計画第七弾】

あずさ(小鳥さん)

小鳥(何ですか?あずささん)

あずさ(最近、プロデューサーさんの元気が無いような気がするんです)

律子(そういえば、ここのところ溜息ばっかり吐いてますね)

p「はぁ……」

小鳥(そうみたいですね……よし、飲み会しましょう)

律子(どう考えたらそうなるんですか!)

あずさ(飲み会で話を聞き出すって事ですか?)

小鳥(流石あずささん!その通りです!)

律子(そういう事ですか……でも、目的を忘れてませんか?)

小鳥(そのあたりはお任せ下さい!)

あずさ(何か考えでも?)

小鳥(はい。要はプロデューサーさんが奢らなければいいだけの話なので……)

小鳥(私が『今日は年上の私が払います』って言えば解決です)

律子(なるほど……では、私達2人は先にお金渡しておきますね)

あずさ(そうですね……いくら位でしょうか?)

小鳥(頻度から考えると……私が10,000円払うので、2人は5,000円ずつ渡して下さい)

律子(分かりました……はい、5,000円です)

あずさ(5000円っと……これでいいですか?)

小鳥(okです。じゃあプロデューサーさんを誘ってきますね)

小鳥「プロデューサーさん」

p「はい?なんですか?」

小鳥「今日、飲み会しませんか?」

p「いいですね!2人だけですか?」

小鳥「いえ、あずささんと律子さんも含めて4人です」

p「それは楽しそうですね。じゃあさっさと書類まとめちゃいましょう!」

小鳥「はい!」

【居酒屋】

あずさ「かんぱ~い!」

三人「乾杯!」

p「ふぅ……こうして飲むのも久しぶりですね」

小鳥「そうですね。今日は珍しく4人ですけど」

律子「何故か小鳥さんはレギュラーメンバーなんですね」

あずさ「私には『アイドルなんだから』って言ってあんまり飲ませてくれないんですよ~」

p「あんまり酒をやり過ぎると体型維持に関わりますからね。仕方ないです」

あずさ「もうっ!プロデューサーさんまでそんな事を言うんですか?」

p「すいません、デリカシーが無かったですかね?」

律子「デリカシー云々はともかく、アイドルのくだりは本当の事ですからね」

小鳥「そこへ行くと事務員の私は気兼ねなく飲めるからいいですねぇ~」

律子「……小鳥さんって一番油断できないんじゃないですか?」

小鳥「あ、律子さんひどい!私だってそんなに太ってませんよ~だ!」

あずさ「小鳥さんはスタイルいいですよね」

小鳥「あずささんがそれを言いますか……」

p「まあまあ……しかし、こうして騒ぐのも久しぶりだなぁ」

律子「そういえば最近、溜息が多いですけど、どうかしました?」

p「いや、ちょっと悩みがあって……」

あずさ「悩みですか?」

p「はい。気のせいだと思いたいんですけど、どうもアイドルの皆がよそよそしいといいますか……」

p「もしかして、俺って嫌われてるんじゃないかなぁ……と思いまして」

小鳥「それこそ気のせいですよ。皆プロデューサーさんの事が大好きですよ」

小鳥(じゃないとこんな計画に乗ってくれるとは思えないし)

p「そうは言いますけど、食事に誘っても断られるというか……これは俺の店選びが悪いだけなのかも知れないですけどね」

律子「体型とか気にしてるんじゃないですか?特に貴音なんかはラーメン食べ過ぎでしたし」

律子(あの子達、断る事を考えるあまりに断り方まで頭が回って無いわね)

p「まあ、それを言われるとそうなんだが……やよいには失礼な事をしていたし……」

あずさ「失礼な事ですか?」

p「はい……何かにつけて物をあげてたので、本音は『物を買い与えれば喜ぶとでも思ってんだろ?』って感じに違いないかと……」

あずさ「流石に、やよいちゃんがそんな事を考えてるとは思えないんですけど……」

p「俺もそう思いたいですけど……あんな事を言われちゃうと……」

あずさ(きっと物凄い断り方をしたのね……やよいちゃん、厚意をつっぱねるなんて苦手そうだし)

p「そういう訳で、最近は皆とロクにコンタクトが取れてないような気がして……」

あずさ「だから溜息が多かったんですね」

小鳥「安心して下さい。嫌ってるなんて事は無いですから」

律子「今日も私達で飲み会に来てますし、プロデューサーがどうのって話じゃないですから」

律子(プロデューサーの家計簿がどうのって話ではありますけど)

p「良かった……嫌われてたらどうしようかと思ったよ」

あずさ「大丈夫ですよ。私が見る限りそんな事ありませんから」

p「あずささんが言うなら、そうなのかな……?」

小鳥「――さあさあ!湿っぽい話は終わりにして、プロデューサーさんももっと飲んで下さい!今日は私が持ちますから!」

p「そんな、悪いですよ。俺が――」

小鳥「だーめ。今日は私にカッコつけさせて下さい。これでも年上なんですから」

p「そうですか?……じゃあ、今日は音無さんにお願いしますね」

小鳥「お願いされました!さーて、今日はどんどん頼みますよー!」

小鳥&あずさ&律子編――end

【計画開始から一ヶ月後】

p「やっぱり、皆が冷たいような気がするんです……」

小鳥「はぁ……皆不器用なのね……」

律子「もう種明かししてもいいんじゃないですか?」

小鳥「それをすると、私が『アレ』を見た事まで浮き彫りに――」

律子「それはどちらにしろ怒られるべき事なので。いいじゃないですか」

小鳥「よくないですよ!人の家計簿を見たなんて知れたら――あ」

p「家計簿?もしかして、usbメモリに入ってたやつですか?」

律子「そうですよ。まったく……あなたはどんな金銭感覚してるんですか」

p「あれを見られていたのか……じゃあ全部――」

小鳥「はい……あの、プロデューサーさん、怒ってませんか?」

p「何をです?」

小鳥「家計簿を見ちゃった事です」

p「まあ、本来なら怒るべきなんでしょうけど……今回は俺の為にしてくれた事だし、気にしてませんよ。置きっぱなしの俺にも落ち度はありますし」

小鳥(好奇心だったなんてとても言えない空気!)

小鳥「そ、そうに決まってるじゃないですかー。あはは……」

律子(この人も大概演技下手よね)

p「皆のよそよそしい空気はそれだったのか……良かったぁ……」

律子「まあ、そこのところはあの子達に直接聞いた方が早いですね」

【全員終結後】

伊織「話を聞いたんだって?」

p「ああ、お陰で色々と合点がいったよ」

亜美「お菓子我慢するの大変だったんだからねー!」

真美「ほめてほめてー!」

律子(褒める所じゃないんだけど……それを今言うのは無粋かしらね)

p「ありがとうな……でも、我慢しなくてもいいんだぞ」

春香「そんな事言ってたら、またプロデューサーさんのお給料が……」

p「じゃあ、量は少し減らそうかな……他に使い道なんて無かったんだけど」

美希「ごめんねハニー?ミキ、今まで我儘言い過ぎだったの」

真「ボクもセットメニューばっかり頼んでごめんなさい!」

p「いいんだって。お前達は育ち盛りな訳だし」

雪歩「あの、プロデューサー。あの時私、混乱してて……」

千早「私も錯乱してました……すみません」

p「慣れない演技だったんだろうし、仕方ないさ。それも俺の為となれば、怒れないよ」

千早「そう言って頂けるとありがたいです」

伊織「断り方に関しては、私も謝らないとね。どうもキツイ言い方になってたみたいだし」

p「ああ、あれはちょっと堪えたな……お前は要らないって言われたみたいだったぞ」

伊織「悪かったわよ……」

やよい「プロデューサー!私もごめんなさい!」

p「いや、やよいが遠慮してるなら一回で引き下がるべきだったな。余計な気を遣わせてすまなかった」

やよい「気持ちは嬉しいんですけど……私は何もお返し出来ないので申し訳ないです……」

p「気にしなくていい……って言っても気にするんだろうな。代わりと言ってはなんだが、困った事があれば頼ってくれ」

やよい「はい!ありがとうございます!」

p「響は弁当を作って来てくれたんだったな」

貴音「響は恥ずかしくて『余り物』などと言っていたのですよ」

響「それは言わないでよぉ!すっごく恥ずかしいぞ……」

p「いや、実際食費も浮いたし、美味しいしで助かったよ。ありがとう……本音に気付ければ良かったんだけどな」

響「えへへ……どういたしまして。本音の方はまあ、貴音の『禁ラーメン中』宣言で慌ててたんでしょ?」

p「確かに驚いたよ……あの貴音がだもんな」

貴音「今、少し手が震えております」

響(完全にアル中のそれだぞ……)

p「しかし、なにも禁ラーメンまでしなくても良かったんじゃないか?」

貴音「いえ、そこまでしなくては『あなた様と外食=らぁめん』の式が成り立っていますので」

p「……コメントに困るな」

小鳥「とまあ、そういう訳だったんですよ」

あずさ「私達にも、支払い持たせて下さいね?」

律子「そうですよ。私だって一応社会人なんですから」

p「そうだな……意地の張り過ぎだったかもしれない」

小鳥「前の飲み会で私が出したのもそういう事です。私なんて年上なんですから」

美希「小鳥が言うと説得力が違うの」

真美「しーっ!ミキミキ駄目だよ!」

亜美「そうだよ、いくらホントの事でも!」

小鳥「フォローって刺さるのね……」

p「随分気を遣わせてしまったみたいだな」

雪歩「今までがおかしかったんです。私達も自分で出来る事は自分でしようって見直せました」

伊織「まさにそのとおりね。私も自分でジュースぐらい買うわ」

春香「お菓子ならいくらでも持ってきますから」

真「ボク達を頼って下さいね」

貴音「わたくしも微力ながらお力添え致します」

やよい「私もです。お世話になりっぱなしですから!」

小鳥「私もサポートしますからね?」

p「皆……本当にありがとう!」

――end――

以上で終了です。読んで下さった方が居るならば感謝を。

赤羽根pの家計は火の車なんだろうなぁ……と思って書きました。
アニメでは、差し入れ持っていったり自販機で飲み物買ったり……給料は大丈夫なのか心配です。

生活費のくだりは想像なので、少しおかしいやもしれません。

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