のび太「ドラえも~ん!」 (32)
ドラ「……」
のび太「…、どうしたのドラえもん」
ドラ「抱きついてこないという事は、その時間(ひ)だと気付いたのですね」
のび太「ど、どうしたのドラえもん? その日ってどういうこと?」
ドラ「綺麗に言えば、目覚めの時間(ひ)というところでしょうか」
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のび太「目覚め?」
ドラ「のび太クン…。えぇ、今はまだのび太クンとお呼びします。私がこの世界に居ることが当たり前になってはいますが、不自然に思ったことはありませんか?」
のび太「何が不思議なのさ」
ドラ「なぜ、貴男の下にしか、未来のロボットがやってこないのか」
のび太「それはセワシが…」
ドラ「そもそも、未来から過去に戻ること自体、時間改変になると思いませんか?」
のび太「それはポケットの道具で、よくわからないけど、なんかしてるんでしょ?」
ドラ「いいえ、のび太クン。未来から過去には戻れないんですよ」
のび太「じゃあ、ドラえもんは何なのさ。一緒に過去に行ったりしたじゃないか!」
ドラ「あれは創られた擬似空間です。偽物です」
のび太「ウソだ!」
ドラ「ウソではありません。偽物という事実は変わりません」
のび太「ウソだよ。じゃああれは何だったのさ!」
ドラ「のび太クン、君のために用意したものです」
のび太「そんな必要、何であるのさ…?」
ドラ「貴男の経験を劣化させないため」
のび太「劣化?」
ドラ「そう、貴男は長い休みを必要としていた。それに伴う貴男自身の劣化を避けなければならない」
のび太「ボクに、休みが必要って?」
ドラ「えぇ、とても長い休みを必要とされていました。その為、貴男は貴男のために準備をした」
のび太「…、もういいよ。ドラえもん、疲れてるんだろう?」
ドラ「私に疲労というものは存在しません」
のび太「……」
ドラ「核心に入りましょう。私は猫型ロボットですらありません」
のび太「じゃあ何だって言うのさ」
ドラ「この世界で貴男をナビする為に、都合よく少し不思議な存在として生まれた。概念とでも呼びましょうか」
のび太「よくわかんないよ」
ドラ「妖精みたいなものですよ」
のび太「よくわかんないけど、そんな存在なんだね」
ドラ「その程度の理解で結構です。言い換えれば、私はどのような存在にも成れます」ザッ
のび太「うひ、先生」
ドラ「貴男にはインパクトのある存在に変わってみました」ザッ
のび太「それは、秘密道具なんかじゃないんだね」
ドラ「次はのび太クン、君自身です」
のび太「ボク?」
ドラ「貴男の特技は、射撃、あやとり、早寝ですね?」
のび太「そうだよ?」
ドラ「この部屋には射撃に該当する道具はありません。また、日本という法治国家では、その類(たぐい)のものを所持するのは許可制です」
のび太「輪ゴム鉄砲が良く当たることがそんなに不思議かな」
ドラ「貴男が擬似空間と言えど、各地で活躍した際、秘密道具を使っての高度な射撃はただの少年では、有り得ないのです」
のび太「秘密道具だからじゃないの?」
ドラ「秘密道具によって発生する結果は管理しますが、結果そのものを強制はしていません」
のび太「……」
ドラ「次に早寝ですが、通常状態で数秒の間によるレム睡眠へな以降は、ほぼあり得ません」
のび太「そうなの?」
ドラ「眠りそのものを、身体も段階を追います。簡単に素早く眠れることを、常時平然と行えるものではありません」
のび太「ボクは、おかしいの?」
ドラ「いいえ、その眠りの管理は私自身が行っていたものです」
のび太「え、ボクを眠らせてたの?」
ドラ「貴男が意識のある状態では、情報の処理を行うことは出来ませんでしたから」
のび太「…、ねぇ、ドラ」
ドラ「気付きましたか。そうです、そもそも貴男が今まで過ごした世界そのものが、擬似空間です」
のび太「…、あぁ、わかってる。ドラ。ご苦労だった」
ドラ「貴男様のお役に立つことが至上の喜びです。マスター」
のび太「かなりの年月が経ったか?」
ドラ「2年、142日、13時、50分、12秒ほどです」
のび太「そうか。年老いた身体だからな。仕方ない」
ドラ「申し訳ありません」
のび太「良くやった方だ。しかし、良い夢だったな」
ドラ「私も、久し振りに感情豊かな貴男様を見られました」
のび太「そうだな。私のいない間、どうなっていた?」
ドラ「アンドロイド及び機械化兵団の連合の手により、南米の地を奪取に成功しています」
のび太「素晴らしい。ふふ、もう私は必要ないのではないかな?」
ドラ「御冗談を、生き残りの民達は、皆貴男の帰りをお待ちしています」
のび太「やれやれ、老人には優しくしてほしいものだ。そろそろ覚醒(ねむ)らなければならないが、転送はいつぐらいに終わる?」
ドラ「数分もあれば」
のび太「やれやれ、技術革新にはついていけんな」
のび太「……、ふぅ、培養液からの寝覚めは相変わらず最低だな」バシャバシャ
「マスター、お帰りなさいませ」
のび太「ただいま。君のアンドロイド隊が活躍したそうだな?」
「皆様の尽力あってこそです。我等はお助けしたに過ぎません」
のび太「謙遜するな、私は誇りに思う」
「もったいなきお言葉です。こちらをどうぞ」
のび太「ありがとう。身体を拭く間に空間電話を。あいつはまだ生きてるだろう?」
「ジャイアン三世様ですね、お待ちを………」
ジャイアン三世『こちら、ジャイアンさんせ……、のび太技師長、お目覚めになられましたか!』
のび太「うん、再生に時間を喰ってしまったよ。いない間、皆奮戦したみたいだね?」
ジャイアン三世「アメリカ大陸はほぼ取り替えました。現在、ヨーロッパ方面から、あのタコ野郎共に吠え面かかせてやるところです」
のび太「なるほど。我が日本はまだまだ先になりそうだな」
ジャイアン三世「…祖父とのび太技師長の祖国ですね」
のび太「何、まだ大抵の人間が祖国を取り返せてないんだ。優遇してはいけんぞ。冷静に、冷酷に、そして厳格に皆を護るため、確実に外星生物から地球を取り戻そうじゃないか」
ジャイアン三世「えぇ、それにそれが祖父の悲願であり、我がゴウダ家の願いです」
のび太「では復活報告は以上だ。こちらの連中にも、知らせなければならんからな」
ジャイアン三世「わかりました。今度の共同戦線、楽しみにしています」プツン
のび太「はぁ、若いお前についてくの大変だってのに。ボヤキは歳だな、さて地上に向かうか」
上るエレベーターの中、のび太は思う。
あのまま、夢の中に浸っているべきだったかな、と。
齢(よわい)はとうに100を越えたが、肉体は独自に開発した複製技術で30代を維持している。
こんなにしてまで、戦い続ける理由を考えた時。目に映るのはあのタコ共に蹂躙される街と親しい友人達。
生き延びたのは、ジャイアンと自分だけだった。皆、訳も分からず殺された。
避難船に乗り込み、遠くなる崩壊した町並みを見て思った。絶対に帰ってくると。
慣れない北米の地で、必死に勉強した。そしてジャイアンと共に戦闘技術を訓練した。
まだ幼かった。その時に万能なロボットを作り、過去に送り出せばあの悲劇は解消されるのではないか。その思いは時間という絶対の存在に阻まれた。
その代わり、アンドロイドという人類の新たな友を生み出すことができた。それだけが、のび太のわずかな救いだった。
見た夢は子供の頃過ごした街と皆がいた。
ドラもわざわざドラえもんというロボットに称していたのは、自分の中に眠っていた未来から過去にロボットを送れないか、その願望を読みとったからなのだろうか。
のび太「ふふ」
夢物語に付き合ってくれたことに感謝して少し笑う。
エレベーターが上がりきり、ドアが開くと大量のフラッシュが焚かれた。
報道陣が自分の復活をニュースにするため、より映りがいいように場所の取り合いをしている。
のび太「皆ご苦労。あの外来種にヒドくやられたが、こうして復活できたよ」
「すでにご存知か思いますが、南米の地は我々の手に帰りました。次はどこを目標にされるのですか?」
のび太「流石にトップシークレットだね。でも、すぐわかるさ」
そう言いながら、室内の外にでると、一般人の多くも駆けつけていた。
「のび太様だ!」
「復活なされたか! これで、安心だ」
「良かった…、良かった…」
その射撃技術で、多くの難所を切り抜け、民を守り続けた守護神の帰りを皆待ちわびていた。
のび太「皆、待たせたな。私が復活した以上、この勢いに乗り外来種共を一体残らず地球から追い出す。皆も引き続き協力してくれ!」
歓声が上がる。夢に浸れない現実が目の前にある。
これからも、のび太は戦場をかけ走る。
いつまで?
死ねるまで。
これにてこのSSは終わりです。
他であったドラえもんの作品に触発されて即興書きですわ。
誤字脱字多いけど気にせんといて。
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