男「許嫁が人間じゃなかった」(21)
ドンドン ドンドン
男「ん……」
ドンドン ドンドン
男「何だ……? 朝っぱらから騒がしいな……」
『男、開けるぞ』
男「と、父さん!?」
ガチャ
男「ど、どうしたんですか。こんな遅くまで家に居るなんて」
父「お前、今日は18歳の誕生日だったな」
男「は、はいっ(覚えててくれたのか……)」
父「…………単刀直入に言う。お前、結婚しろ」
男「……………………はい?」
男「え、いや、え?」
父「実はな、お前には許嫁がいるんだ」
男「い、許嫁!? そ、そんな急に言われても……」
父「もう来ている。ほら、入れ」
『は、はい……』
ガチャ
許嫁「し、失礼します……」
男(綺麗な人だ……この人が俺の許嫁……ってええ!?」
許嫁「ひうっ」ビクッ
父「どうした?」
男「い、いえ、何でもありません」
父「そうか。……そうだな、いきなり結婚なんて言われても困るだろう。まずは二人きりでお互いのことを知るといい」
男「二人きりって……」
父「……」ポン
男「?」
父「上手くやれよ。これで会社が大きくなるかが決まる」ボソッ
バタン
男「……父さん(やっぱり俺より会社のほうが大事なのか……)」
許嫁「あ、あの……」
男「あーっと、すみません。あなたもいきなり僕みたいのと結婚って言われて困ってますよね」
許嫁「いえ、あの、私は、ずっと……」ボソボソ
男「え?」
許嫁「な、何でもないです。そ、それよりあなたのほうが年上なんですから敬語なんて使わないでください」
男「そうなんです……そうなの?」
許嫁「はい、私は十万と五十歳なので人間で言うとまだ16ですから……」
男「じゅ、十万!? えーっと……」
男「ちょっとごめん」
許嫁「う……近い……」ボソッ
男「……」グニッ
許嫁「ひゃ、あっ!?」ビクンッ
男「うわっ! い、痛かった?」
許嫁「いえ、その、あの……うぅ///」
許嫁「と、とにかく、そこはエルフにとって大事な場所なのでさわらないでくださいっ」
男「ごめん……って、やっぱりエルフなんだ」
許嫁「はい、私はエルフですよ」
男「現実に居たのか……お話の中だけだと思ってた」
許嫁「私たちエルフの存在は、一部の人間しか知りません。それこそ、大企業の重役レベルじゃないと」
許嫁「なので、小さな会社ではエルフの会社と取引をすることができません」
男「ふーん……じゃあ何で俺に存在を知らせるどころか、結婚の話にまでなったんだろう」
許嫁「恐らく私のお父様……あ、私のお父様はエルフ国で一番の大企業の社長なんですが」
許嫁「そのお父様があなたのお父様……この国で一番の大企業の社長と太いパイプを作ろうとしてるのだと思います」
男「なるほど……」
許嫁「先程、大企業でないとエルフの存在は知られず、取引もできないと言いましたが、エルフ側も同じです」
許嫁「小さな会社では人間の会社と取引ができないので、小さな会社はなかなか大きくなることができません」
>>3
ミス
男の一人称、僕じゃなくて俺
許嫁「しかし私たちが結婚することで、否が応にも人間にエルフの存在が、エルフに人間の存在が公になります」
許嫁「そうすれば人間とエルフの取引が増え、どちらも豊かになるはずです。私たちのお父様はそれを望んでいるのだと思います」
許嫁「長々と話してすみません」
男「いや、俺はいいけど。えーと、名前は」
許嫁「許嫁です」
男「許嫁は大丈夫なのか? 途中で声が枯れてたけど」
許嫁「ちょっと一生懸命喋りすぎました……少し横になれば大丈夫です」
男「そうか、じゃあ俺のベッドで横になってくれ。俺は水を持ってくる」
許嫁「あ、はい。ありがとうございます」
バタン
許嫁(男さんのベッド……)ポスン
許嫁「……」クンクン
許嫁(これが男さんの匂い、なのかな?)
許嫁(温かい……)
ガチャ
男「水持ってきたぞ」
許嫁「ひゃあ! ぅ……けほっけほっ!」
男「大丈夫か!? ほら、水を……」
許嫁「んぐ……んぐ」
許嫁「ぷはっ」
男「落ち着いた?」
許嫁「はい、ありがとうございます」
許嫁「それより、時間は大丈夫ですか? 学校に行く時間じゃ……」
男「うわっ、そうだった! ……ってあれ? 何でそんなこと知ってるんだ?」
許嫁「え、いや、その……」
男「ん?」
許嫁「お、お父様から聞いたんです! 男さんは学校に通ってるって!」
男「そうなのか……って悠長に話してる場合じゃない! 遅刻するっ!」
許嫁「ふぅ、誤魔化せた」ボソ
男「あ」
許嫁「え?」ビクッ
男「あ、いや、着替えたいからここに居ると困るなあ……って」
許嫁「ご、ごめんなさいっ!」
バタン
男「……」
男(許嫁かあ……)
男(あんなに美人な人と結婚できるなんて、良いことなんだろうけど)
男(あっちはどう思っているんだろう)
男(俺はお世辞にもイケメンとは言えないしな……)
男(まあいいや、あとで考えよう。今は学校に行かないと)
ーーーーーー
男「ただいまっと」ガチャ
男「……ってあれ? 開かない」ガチャガチャ
スタスタ
男「あ、使用人! 扉が開かないんだけど……」
使用人「旦那様から言伝を預かっております」
男「父さんから言伝? なんか嫌な予感がするな」
使用人「『許嫁との仲を深める為に二人で暮らせ。家は用意してある』とのことです」
男「は、はああぁぁ!?」
男「どういうことだよ!」
使用人「私におっしゃられても困ります。私は伝えただけですので」
男「ぐ……」
このSSまとめへのコメント
最後まで書く気がないなら書いてんじゃねーよ