柩「これは惚れ薬です」(29)

柩「ぼくが独自に研究、実験を重ね調合した秘薬です。一応ここに4つあります」

伊介「急に呼び出して何かと思えば…惚れ薬ぃ?」

乙哉「へーすごーい!キレイな色だねー」

涼「ふむ。効果のほどは確かなのか?」

柩「ええ。…と言ってもマウス実験のみの結果ですが。相性の悪いつがいのネズミで試してみたところ、この薬を投与して1分足らずで効果が見られ数分後には交配を始めました」

伊介「ネズミの実験結果が100%人間にも反映されるもんなの?怪しくなあい?」

柩「それは…まぁ。100%と言い切れないのは実情ですけど」

乙哉「なるほどねー、あはっ。おかしいなーとは思ってたけど柩ちゃんの目論み読めちゃったー」

柩「!」

涼「武智もか?ワシも引っ掛かっておったんじゃがなるほどのう。要するにワシらに使用させその結果の程を確かめたいと、そういう事なんじゃろう?でなければこんな大層な薬をただで譲るわけがない」

乙哉「柩ちゃんも失敗はしたくないもんねー?」

柩「…あなた達にだって利はある筈。この薬が命を脅かす事はありえません。一か八かで大切な人の心を物にできるなら喉から手が出るほどに欲しいでしょう?利害の一致です」

伊介「怪しいわねぇ…何か企んでんじゃないの♪」

柩「何を言うんですか。ぼくはただ…千足さんの事を…」

柩「…あなた達にだって大切な人がいる筈です!その相手はいずれもこの暗い世界にそぐわない、日向の世界に近しい人達でしょう?」

伊介「!」

涼「ふむ…」

乙哉「えっ。大切な人?日向の世界ってはるっちのこと?」

柩「だからぼくはあなた方三人を選びました。到底手が届きそうにないならあちらから手を伸ばしてもらいましょう」

柩「一緒に大切な人を振り向かせてみせましょう!」

涼「そういう事ならよい。ワシは一抜けとさせてもらおう」ヒラリ

柩「な…っどうしてです?」

涼「興味がない。それだけじゃ」スタスタ

柩「首藤さん!」

涼「じゃあの。あまり騒ぎにするなよ」

乙哉「あははっ流石だねー」

柩「…はぁ。仕方ないですね。相手の神長さんはこの4人の中の想い人の中でも一番こちらの世界に近い位置にいる人ですから。ただ不器用なだけで人を殺す事には躊躇ないようですし」

柩「それなら手が届きそうですもん。日向の世界にいる人を愛してしまったぼくの気持ちなんて、彼女には分からない…っ」ギリッ

乙哉「相当焦ってるね」

柩「…それで、武智さんは…」

乙哉「うーん…」

乙哉「あたしもパスかな」

柩「な…っ!」

柩「どうして!」ガタンッ

乙哉「だってさー100%じゃないんでしょ?しかもこれ1人分でしょ?ならあたしはいっかなーって」

乙哉「あたしの好きな女の子はこれから出会う子も含め星の数ほどいるしね?あはっ」

柩「剣持さんの事はいいんですか?」

乙哉「え?しえなちゃん?」キョトン

伊介「なーに武智さん自覚ないの?」

乙哉「いやいやしえなちゃんのコトは好きだよ?え、もしかしてさっきの日向の世界の人~ってしえなちゃんのコト?やだーしえなちゃんは弱っちいだけで心理的にはこっち側だって絶対ー」アハハハハッ

柩「好きなんですよね?!だったら使ってください、この薬!」

乙哉「いや好きだけどさーんー…そんな特別なわけじゃないし。それになーんか」

乙哉「違うって思うなー」

柩「どういう…意味です…」

乙哉「薬で振り向いてもらえたら簡単だけどさ、そんなことして両想いになって意味あるの」

柩「!」

乙哉「そーいう駆け引きも恋愛の醍醐味だと思うしー」ヒョイッ

柩「武智さん…」

乙哉「それにー正直ださいかなっ。好きな女の子1人振り向かせられないの?あたしは今まで好きになった子全員落としてきたよーこんな薬無しでね。あははははは」チャポチャポ

柩「…も、いいです!あなたに話したぼくがバカでした!!」

乙哉「ごっめーん怒んないでよー」コト

柩「さようなら」

乙哉「あはっ。じゃーねー」スタスタ

伊介「……」

柩「…あなたもぼくの事を笑うんですか?」

伊介「んーん?」

柩「じゃあ薬を使ってくれるんですか」

伊介「そうねぇ。1つ貰うわ♪」

柩「ほ、ほんとうですか!」

伊介「ええ♪」

柩「ありがとう…ございます…」

伊介「伊介は首藤サンとは逆♪興味があるから使うわ。まだ誰も使った事のない薬なんて面白いじゃない♪」

柩「信じてました。犬飼さんは必ず受け取ってくれるって…」

伊介「あらそーお?」

柩「寒河江さんも千足さんや一ノ瀬さんと同じ、完全に日向の世界の人ですから」

伊介「ちょっと♪勘違いしないで。伊介はただ言う事を聞いてくれる下僕が欲しいだけよ」

柩「ふふ。そういう事にしておきましょう」クスッ

柩『無味無臭です。水にも溶けます。薄い紫色なので何かに溶け込ませる際は透明なものを避けてください』

柩『経過報告は任意ですがしていただけると嬉しいです』



伊介「うふふ♪」スタスタ

伊介(最近暇してたのよねぇ。いい退屈しのぎになりそう♪)

伊介(相手はもちろん春紀一択ー♪ほんとに効いたらパシりにしちゃお♪)

伊介(ま、こんなんハナから信用してないけど)

ガチャッ

伊介「ただいまー♪」

春紀「お。おかえり伊介様」

伊介「お土産持ってきたよ♪」

春紀「お土産?柩ちゃんらと教室に残ったんじゃなかったんかい?」

伊介「良いから良いから見てこれ」

春紀「ちっこい試験管に…なんだ?紫キャベツの色水?みたいな」

伊介「んなわけないでしょ。これは薬よ薬♪」

春紀「薬?」

伊介「惚れ薬♪」

春紀「……へー」

春紀「連中から貰ったのか?」

伊介「誰でもいいでしょ♪飲んでよ」

春紀「やだよまずそう」

伊介「味の問題ー?」

春紀「そもそも惚れ薬って相手に認識させてから飲ませる代物と違うだろ?」

伊介「惚れ薬って信じてくれるわけ?」

春紀「伊介様はそんなくだんねー嘘つかないだろ。少なくとも惚れ薬って名目で手に渡ったのは確かだろうなって」

伊介「ふふ。伊介はこんな薬信じてないよ♪だから試したいの」

春紀「あたしで?」

伊介「そう♪」

春紀「あたし実験台かよー」ノビ

伊介「いいから早く飲め♪」ズイッ

春紀「ちょ…ほんと勘弁してくれ」

伊介「ちょっと逃げないでよ手が焼ける」グイッ

春紀「服伸びる服伸びる」

伊介「早く飲みなさい♪そういえば味しないって」クイッ

春紀「もう味とかどうでも良くて生理的に嫌なんですけど」ググ…

伊介「いいから伊介は暇なの暇潰しになりなさいよ♪」グリグリ

春紀「なら自分で飲め、よ…」グッ…

伊介「生理的に嫌♪」ググッ

春紀「おい。あ、そういや…」

伊介「隙あり♪」ゴパッ

春紀「!!…っゴハッゲホッ」

伊介「あはは飲んだ♪」

春紀「かはっ、けほけほ…っ」

伊介「やだー大丈夫ぅ?」サスサス

春紀「ひどいよ伊介様…」ゴホゴホ

伊介「…ちょっとやりすぎちゃったかしら」

春紀「割りとね」ケホッ

伊介「…えっと、ごめんね?」

春紀「ん、許す」

春紀「でさ、伊介様。あたし是非とも飲む前に聞きたかった事があんだけど」ケホッ

伊介「なに?」

春紀「これが惚れ薬って事は分かったけど、この場合は誰に惚れるんだ?」

伊介「え?伊介でしょ?」

春紀「そうなのか?」

伊介「当たり前じゃないそういう流れでしょ♪」

春紀「条件は?」

伊介「条件?」

春紀「伊介様に、惚れる薬じゃないんだろ?飲んだ後にこうすれば…的な条件はないのか?」

伊介「……」

春紀「聞いてないのか」

伊介「…伊介、惚れ薬なんて信じてなかったから」

春紀「ちゃんと聞かなかったって?まぁあたしも信じちゃいないけどさ」

伊介「うん」

春紀「でも人に飲ませるんならちゃんと説明ぐらい聞いといてくれよなー副作用とかあるかもしれないんだし」

伊介「…うん」

春紀「ま、怒ってないけどね?今んとこ普通だし、やっぱデタラメだったんかね」

伊介「…」

春紀「拗ねんなよー伊介さま。らしくないよ」ナデ

伊介「…っ!///」ビクゥッ!

春紀「ん?」

春紀「あれ?どうしたの?」

伊介「ななななななんでも…っ///」

春紀「伊介さま?」

伊介「…///」カァア

春紀「顔赤っ。熱あんじゃ…」ピトッ

伊介「!! だだ、だめ…っ///」押し退け

春紀「ちょっと待ってなに、どうしたの?」

伊介「分かんないわよ…///」

伊介(惚れ薬なんて信じてない、けど…)

伊介(なんで飲んでもいない伊介がこんな胸キュンしてのよ!!!///)

春紀「あたしほんとーに怒ってないよ?」ナデ

伊介「や…っ///触んじゃないわよ!」ギュッ

春紀「って言いつつあたしの手を握るってどういう事?」

伊介「伊介が触る分にはいい…///」

春紀「あはは、何それジャイアンかよー」

伊介(笑顔…可愛い…)

伊介(待って待ってほんと何なのこれ!)

伊介「ちょ、ちょっと!アンタ伊介の事…」

春紀「ん?」

伊介「すすす…////」

春紀「ん?」

伊介「す、すすす、す好き、に…//」

春紀「? ああ、なってないよ」

伊介「…っ!!」ズドン!

春紀「やっぱただの色水だったんかなー」アハハ

伊介(今…ナチュラルにフラれた…)

熱40度出た死ぬかと思ったッス…
続くッスよ


伊介(もう訳分かんない…ただ暇潰ししたかっただけなのに)グスッ

春紀「伊介さま?」サスサス

伊介「…ちょっと電話掛ける♪」つ携帯

\ピンポーン/

春紀「! じゃあ外すついでにチャイム出てくるよ。ごゆっくり」スクッ

伊介(桐ヶ谷…直接説明聞かなきゃ気がすまないわよ)プルルル…

ガチャッ

柩『犬飼さんですか?薬の効果のほうはどうです?』

伊介「どう?じゃないわよあんなの問題外よ問題外。全然効き目ないじゃない!」

桐ヶ谷『全く、ですか?そんな筈は…』

伊介「それどころか、まるで伊介が…///」

柩『え?』

伊介「ぎゃ、逆みたいになってんのよ!伊介が、春紀のことを…//」ゴニョ

柩「まさか………今すぐそちらに向かうのでそれまで春紀さんを隔離してください!いいですか、絶対に誰にも会わせないでくださいね」

伊介「はぁ?」

バサバサーットサッ

伊介「! どうしたの春紀?」スクッ

伊介(玄関から音がしたわよねぇ?)

伊介「春紀?」ヒョコッ

春紀「神長?おい神長どうした?」ユサユサ

香子「」ポケー

柩<<誰にも会わせないでくださいね>>

伊介「げ♪」

伊介「ちょっとお?もう接触してる場合はどうすんの?」コソッ

柩『遅かったか…相手は誰です?』

伊介「神長さん♪」

柩『二次災害が増えぬようまずは全員部屋にこもっててください』

伊介「意味分かんな~い…そろそろ説明してくんない?イライラしてきちゃう♪」

柩『申し訳ないんですけど』

春紀「神長…?」

香子「」ジッ…

柩『いま寒河江さんは』

春紀「あたしの顔なんか付いてる?」サワサワ

香子「…」

柩『薬の効果で』

春紀「ってか紙落としたぞ?」ヒョイッ

香子「!」

柩『フェロモンが大量に分泌されているので』

春紀「はいよ」ニコッ

香子「/////」……ボンッ

柩『誰彼かまわずめちゃくちゃモテます』


伊介「…はぁ?」

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