勇者「賢者さんと僕」(22)
勇者「賢者さん、賢者さん」
賢者「どうしました?勇者さん」
勇者「カジノ行って来ていい?」
賢者「ダメです」
勇者「けち」
賢者「ほら、街についたら先に何をするんでしたっけ?」
勇者「情報収集と宿探し」
賢者「よく出来ました」
賢者「それでは、どうすればいいのか分かりますね?」
勇者「うん」
勇者「情報収集と宿代を稼ぎにカジノに行って来る」
賢者「だからダメですってば」
勇者「でも、メタルキングの剣欲しい」
賢者「ほら、すぐに本音が出る」
勇者「けちー」
賢者「はいはい、宿探しに行きますよ」
勇者「……けちー!!」
賢者「だだ捏ねないで下さい」
勇者「賢者さん、賢者さん」
賢者「何ですか?」
勇者「ぱふぱふ屋行って来ていい?」
賢者「ダメです」
勇者「どうして?」
賢者「あんなお店、本当に女の人がやってるわけないですよ」
勇者「でも、分からないでしょ?」
勇者「だから、僕が調査してくるよ」
賢者「必要ありません」
賢者「私たちには、世界を救う使命があるんですよ?」
賢者「ぱふぱふなんて、平和になってから好きなだけしてもらえばいいでしょう?」
勇者「……それじゃあ、お金払うから賢者さんがしてよ」
勇者「それならいいでしょ?」
賢者「ダメです」
勇者「どうして?」
賢者「私がしたくないからです」
勇者「お金足りない?」
賢者「そういう問題じゃありません」
賢者「私は俗世から悟りを開いて賢者になったんです」
賢者「ですから、ダメです」
勇者「でも、元は遊び人で、あんなこぼれそうな服着てたのに」
賢者「こぼれそうとか言わないで下さい」
賢者「それと、昔の話はngです」
勇者「ちぇー」
勇者「賢者さん、賢者さん」
賢者「どうしました?」
勇者「新しい装備欲しいんだけど」
賢者「それなら構いませんよ」
賢者「最近はモンスターも手強いですし、出来るだけいい物を揃えておきたいですからね」
賢者「で、何が欲しいんですか?」
勇者「踊り子の……」
賢者「却下です」
勇者「ええっ!?装備買っていいって言ったのに」
賢者「だって、それ誰が着るんです?」
勇者「賢者さん」
賢者「ほら、やっぱり」
賢者「ダメです、そんなの破廉恥です」
勇者「でも、ここでは一番強いんだよ?」
賢者「騙されているんです」
賢者「あんなどこを守っているともしれない布切れに、そんな防御力があるはずがありません」
勇者「えー」
勇者「でもさ、本当かもしれないじゃない?」
勇者「騙されたと思ってさ」
賢者「いーやーでーす」
賢者「着るなら勇者さんが着てください」
勇者「じゃあ、僕も着るからさ」
賢者「それはもっと嫌です」
勇者「え?何で?」
賢者「……とにかく、私より自分の装備をどうにかして下さい」
勇者「それじゃあ、こっそり買っておくよ」
賢者「いりませんから!」
勇者「賢者さん、賢者さん」
賢者「何ですか?」
勇者「回復してくれない?」
賢者「ええ、構いませんよ」
勇者「ありがとう」
賢者「でも、薬草もあるのに何で回復魔法をかけさせたんです?」
勇者「賢者さんに治して貰いたかったから」
賢者「これでもmp消費するんですよ?」
勇者「大丈夫だよ」
賢者「どうしてですか?」
勇者「もし賢者さんのmpが無くなっちゃったらね」
賢者「はい」
勇者「こう、ギリギリまで回復しないで、いつしてくれるのかな?って期待する賢者さんが見られるから」
賢者「……もう回復してあげません」
勇者「えっ!?冗談だよ」
賢者「いーえ、あれは本気の目でした」
勇者「……半分くらいだよ?」
賢者「許しません」
賢者「今日はお金が掛かってもベッドが二つの所に泊まりますから」
勇者「で、でも、いつも節約しなくちゃって…」
賢者「ふーんだ」
勇者「あやまるから、許してよー」
賢者「絶対許してあげませーん」
勇者「賢者さん、賢者さん」
賢者「はい?」
勇者「どうして賢者さんは賢者になれたの?」
賢者「それは、きちんと悟りを開いたからですよ」
勇者「どうやったら悟りを開けるの?」
賢者「……例えば、悟りの書を読むとか」
勇者「そうすれば、僕も賢者になれる?」
賢者「それは無理ですね」
勇者「どうして?」
賢者「勇者さんは勇者さんですから」
勇者「ズルくない?」
賢者「ズルくないです」
勇者「僕も賢者になりたいな」
賢者「どうしてですか?」
勇者「だって、賢者さん魔法も攻撃も出来るでしょ?」
勇者「凄く強いと思うから」
賢者「勇者さんも出来るでしょうに」
勇者「賢者さんの方が僕より出来るじゃん」
賢者「私に使えない魔法や装備もありますけど」
勇者「とにかく、賢者になりたいの」
賢者「……それでは、今日からカジノもぱふぱふ屋も無しです」
勇者「よし、次の街までがんばろうね、賢者さん」
賢者「本当現金な人ですね」
賢者「勇者さん、勇者さん」
勇者「何ー?」
賢者「どうして勇者さんは他の仲間を雇わないんですか?」
賢者「旅を始めてから、ずっと私しか居ませんけど」
勇者「えっとね」
勇者「最初は面倒…、もといお金が…、もとい自分で頑張ろうと思ってさ」
賢者「…そういえば、私、当時は最安値でしたね」
勇者「違うってば」
賢者「…まあ、そういうことにしておきましょう」
賢者「それでは、今は何故ですか?」
勇者「賢者さんとの旅を邪魔されたくない……」
賢者「ん?」
勇者「…というのは冗談で」
勇者「賢者さん一人で十分だからね」
賢者「本当ですか?」
勇者「もちろん」
賢者「……実はさっき、ボインボインな僧侶の方がいらっしゃったのですが」
勇者「え!」
賢者「断って正解でしたね」
勇者「こ、断っちゃったの?」
賢者「私一人で十分なんですよね?」
勇者「そ、そうだけどさ……」
賢者「……まあ、嘘ですけど」
勇者「なんだぁ」
賢者「…勇者さんなんて嫌いです」
勇者「え!?」
賢者「もう話しかけて来ないで下さい」
勇者「ま、待ってよー!」
賢者「これからは一人で戦ってもらいますから」
勇者「無理だよ、そんなの」
賢者「つーん」
勇者「ねえ、許してよ」
勇者「もう浮気しないからさ」
賢者「知りませーん」
勇者「賢者さん、賢者さん」
賢者「どうかしましたか?」
勇者「僕と賢者さんの頭のやつ、似てるよね」
賢者「サークレットですか?」
賢者「まあ、確かに」
勇者「これって運命かな?」
賢者「デザインですね」
勇者「つれないなぁ」
賢者「調子に乗せるとロクなことありませんから」
勇者「そんなことないよ」
勇者「こう、魔法の出とか、剣捌きのキレが良くなるよ」
賢者「どうでしょうね」
勇者「冷たくない?」
賢者「いつもこんなものです」
賢者「私、ちょっと用事を思い出しました」
賢者「ここで待っていてください」
勇者「?うん、分かった」
賢者「絶対ですよ?」
勇者「分かってるってば」
賢者「……ふぅ」
賢者「……お揃い、かぁ」
賢者「うん、悪くないかも」
勇者「何が?」
賢者「!!」
賢者「待っててって言ったじゃないですか!」
勇者「うん、でも僕トイレ行きたくて」
賢者「……もう知りません!」
勇者「何で怒るのさー?」
勇者「賢者さん、賢者さん」
賢者「何ですか?」
勇者「たまには一緒に稽古しない?」
賢者「構いませんよ」
勇者「よし、僕が勝ったらこの危ない水着を着てね」
賢者「それでは、私が勝ったら勇者さんが着てくださいね?」
勇者「い、いいよ」
賢者「それでは、ちょっと本気でやりますね」
勇者「え?あの、これ稽古何だけど……」
賢者「はっ!!!」
勇者「ぎゃぁぁぁぁ」
賢者「……もう、機嫌なおして下さいよ」
勇者「だって、賢者さん本気で魔法使ったもん」
賢者「男でしょう?そんなに泣いたらダメです」
勇者「だって、痛いもん」
賢者「完全に治療しましたから、痛みも無いはずです」
勇者「……痛いもん」
賢者「……はいはい、撫でてあげますから」
勇者「痛くなくなるまでしてよ?」
賢者「分かってますよ」
賢者「もう、子供みたいなこと言って」
勇者「賢者さん、賢者さん」
賢者「何ですか、勇者さん」
勇者「ここの街に、水の羽衣ってのがあるんだってさ」
賢者「着ませんよ」
勇者「今度は凄く強いよ?」
賢者「水なんて頼りなさすぎます」
賢者「鎧とかがいいです」
勇者「でも、それだと可愛くないよ?」
賢者「可愛さより機能性重視です」
勇者「だから、機能性と可愛さを兼ね備えた装備があるのに」
賢者「嫌です」
勇者「頑なだなぁ」
賢者「勇者さん、勇者さん」
勇者「どうしたの?」
賢者「そろそろ休憩しませんか?」
賢者「今日は歩き詰めですし」
勇者「そうするかな」
勇者「もうすぐ次の街が見えてもいいころなんだけどねぇ」
賢者「道は間違えて居ないはずですけど」
勇者「まあ、賢者さんのキレイな脚がムキムキになったら嫌だもんね」
賢者「それは別にどうでもいいです」
勇者「大切な事だよ?」
勇者「魔王を倒したら全部終わりってわけじゃないんだからさ」
賢者「そうしたら、その時に考えます」
勇者「それじゃあ遅いよ」
賢者「今は魔王で手いっぱいですし」
勇者「魔王なんて、僕がちゃちゃっとやっつけるからさ」
勇者「そしたら、さ」
賢者「?」
勇者「その、僕と……」
賢者「あ、魔物ですよ勇者さん」
勇者「あーもう!空気読んでくれよ、まったく!」
勇者「賢者さん、賢者さん」
賢者「何ですか、勇者さん」
勇者「頑張って世界を救おうね」
賢者「はい、お供しますよ」
勇者「それと、ぱふぱふもよろしくね」
賢者「それはこれからの勇者さん次第です」
勇者「え?」
賢者「何でもありませーん」
勇者「ま、待ってよ!」
おしまい
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